説明

多管式反応器シェル内のガス抜き不良を検出する方法。

【課題】多管式反応器のシェル内のガス抜き不良を容易に検出する方法を提供すること。
【解決手段】本発明の多管式反応器シェル内のガス抜き不良を検出する方法は、シェルの上管板部にガスの抜き出し配管を有する多管式反応器を使用し、該シェル内と該反応器の外部に配置した熱媒の循環タンクとの間を、熱媒を循環して反応を行う際に、該循環タンクに液面計を設け、熱媒液面の上昇を把握して該シェル内のガスの抜き出し不良を検出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多管式反応器のガス抜き不良を検出する方法に関する。詳しくは、熱媒を循環して反応を行う多管式反応器のシェルの上管板部に設けられたガスの抜き出し配管からのガス抜き不良を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多管式反応器では、外部に配置した熱媒の循環タンクと該反応器のシェル内との間を、熱媒を循環して反応を行うことが多い(例えば、特許文献1参照。)。
循環する熱媒にはガス(通常、空気)の混入が避けられず、反応器のシェル内上部に溜まることがある。ガスが溜まると伝熱が不十分となり、反応に影響し、収率が低下するなどの不都合を引き起こす恐れがある。
熱媒の循環配管は、施工上、反応器の管板とはある程度の距離を置いて取り付けざるを得ず、ガスが溜まる部分を無くすることは困難である。このため、通常、溜まるガスを抜き出す配管が多管式反応器の上管板部に設けられている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
このガスを抜き出す配管が熱媒で詰まる場合がある。特に熱媒が無機塩からなる溶融塩である場合には、温度が下がると固まり易く、詰まり易い。
したがって、この配管が詰まり、ガス抜き不良を容易に検出できる方法が望まれている。
【特許文献1】特開2005−306734号公報
【特許文献2】特開2001−137689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、多管式反応器のシェル内のガス抜き不良を容易に検出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、多管式反応器のシェルの上管板部に設けられたガスの抜き出し配管が詰まり、ガス抜きが不良になると、熱媒の循環タンクの液面が上昇することを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち本発明は、シェルの上管板部にガスの抜き出し配管を有する多管式反応器を使用し、該シェル内と該反応器の外部に配置した熱媒の循環タンクとの間を、熱媒を循環して反応を行う際に、該循環タンクに液面計を設け、熱媒液面の上昇を把握して該シェル内のガスの抜き出し不良を検出することを特徴とする多管式反応器シェル内のガス抜き不良を検出する方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法は、多管式反応器のシェル内のガス抜き不良を容易に検出することができ、ガス抜き不良を早期に把握できるので容易に対策をとることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明の一実施態様を示す図である。多管式反応器1の外部に熱媒の循環タンク2が配置されている。循環タンク内に配置された循環ポンプ4によって、循環ライン6を経て熱媒が多管式反応器のシェル内と循環タンクの間を循環している。シェルに供給するラインには熱交換器(通常、加熱器)3が配置され、温度調節される。通常、反応原料が反応器の上方から供給され、生成物が下方から排出され、熱媒はシェルの下方から供給され、上方から排出されるが、これに限定されるものではない。反応原料が反応器の下方から供給される方法、熱媒がシェルの上方から供給される方法でも良い。
【0009】
シェルの上管板部にガスの抜き出し配管7が設けられ、先端は循環タンクに接続されている。抜き出し配管はシェル内を上管板に沿って、または上管板内に孔を開けて設けられている。
また、循環タンクにはオーバーフロー配管8が設けられており、熱媒が循環タンクから溢れそうになる場合には、この配管を通って熱媒タンク(図示されていない。)に回収される。なお、反応器のシェルから循環タンクに熱媒をはり込む場合などには、熱媒タンクから循環タンクに供給(供給ラインは図示されていない。)して行われる。
【0010】
循環タンク2には液面計5が設けられている。液面計としては、公知の液面計、例えばバブラー管式液面計やガンマ線式液面計が用いられるが、これに限定されるものではない。
ガスの抜き出し配管7が閉塞して反応器のシェル内上部にガスが溜まると、循環タンク内の熱媒の液面が上昇する。従って、液面を監視することによって、反応に影響を及ぼす前に、早期に対策を講じることができる。なお、フランジなどから熱媒の漏れがある場合には、液面の低下によって容易に検知することができる。
【0011】
循環タンク内の熱媒の液面の変動幅は、通常、数%である。循環タンクの容量、形状によって変わるものの、通常、液面が約10%上昇したらガスの抜き出し配管が閉塞したと見なし、ガスの抜き出し配管の導通を行う。その際、約10%上昇したら配管閉塞の警報を鳴らすようにするのが好ましい。また、約10%下降したら熱媒漏れの警報を鳴らすようにするのが好ましい。
【0012】
多管式反応器は、通常、反応管に固体触媒を充填して、接触気相反応を行うものであり、本発明において、その反応は限定されるものではなく、例えば、プロピレン、イソブチレン、ベンゼン、キシレン、ナフタレン、アクロレイン、メタクロレインまたは塩酸ガスなどを原料ガスとし、アクロレイン、メタクロレイン、無水マレイン酸、無水フタル酸、アクリル酸、メタクリル酸または塩素ガスなどを得る反応が挙げられる。
【0013】
熱媒としては、目的とする反応温度、熱媒の取扱いの容易さなどに応じて適宜選択されるが、例えば、亜硝酸ナトリウムと硝酸カリウムの混合物、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの混合物などの溶融塩(HTS : Heat Transfer Salt)、アルキルビフェニル類、ビフェニル類とジフェニルオキサイド類との混合物、ビフェニル類とジフェニルエーテル類との混合物、トリフェニル類、ジベンジルトルエン類、アルキルベンゼン類、アルキルナフタリン類、アリールアルキル類などが挙げられる。
【実施例】
【0014】
多管式反応器の反応管に主成分がモリブデンである担持触媒を充填してプロピレンの酸化反応を図1と同様に行う。
亜硝酸ナトリウムと硝酸カリウムの混合物からなる熱媒を熱交換器で約315℃に加熱し、反応器シェルに供給し、循環させる。
液面計としてバブラー管式液面計を使用してモニタリングを行い、液面上昇を把握してガス抜き不良を検出する。約10%上昇したらガス抜き不良と判断し、ガスの抜き出し配管の導通を行う。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施態様を示す図である。
【符号の説明】
【0016】
1 多管式反応器
2 循環タンク
3 熱交換器
4 循環ポンプ
5 液面計
6 循環ライン
7 ガス抜きライン
8 オーバーフローライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルの上管板部にガスの抜き出し配管を有する多管式反応器を使用し、該シェル内と該反応器の外部に配置した熱媒の循環タンクとの間を、熱媒を循環して反応を行う際に、該循環タンクに液面計を設け、熱媒液面の上昇を把握して該シェル内のガスの抜き出し不良を検出することを特徴とする多管式反応器シェル内のガス抜き不良を検出する方法。
【請求項2】
液面計としてバブラー管式液面計を使用し、熱媒液面が通常の液面より10%上昇した時にガス抜き不良とすることを特徴とする請求項1記載の多管式反応器シェル内のガス抜き不良を検出する方法。


【図1】
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【公開番号】特開2009−214031(P2009−214031A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60815(P2008−60815)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】