説明

多糖リポソーム、その調製法及びその使用

多糖リポソーム、より特定的にはレンチナンリポソーム、その調製方法、リポソームを含む医薬組成物、及び抗腫瘍または免疫調製剤を製造するためのリポソームの使用が開示されている。リポソームは、多糖、リン脂質、コレステロール、界面活性剤及びポリエチレングリコールを含む原料から調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、多糖リポソーム、多糖リポソームの調製法及び多糖リポソームの使用に関し、より特定的には、レンチナンリポソームに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多糖類は自然界に広く存在する。多糖類は、生命体の重要な部分であり、生命を維持するために必要な多くの生理的機能と関連する。多糖類は、抗腫瘍効果、抗感染効果、血管心臓障害、糖代謝、老化防止効果などの場面で特別な役割を有し、体の免疫力を向上することもできる。
【0003】
しかしながら、実際の臨床分野において、多糖類は意図した望ましい薬理活性を達成することはほとんどできない。これは、生体内で影響を受けた病巣に到達する前に、多糖薬物が代謝されてしまい、病巣を標的にしないことが主な理由である。したがって、技術的に緊急の解決を必要とする深刻な問題は、病巣に到達する前に多糖薬物の最小の代謝にする方法、及び、病巣を標的として望ましい臨床効果を得る方法にある。
【0004】
リポソームの運搬システムは、臨床分野において示されるよい効果のため、多くの利益を引き込む。しかしながら、調製法、特に高いカプセル化率の多糖リポソームの調製法は、よく起こる問題がある。高いカプセル化率と小さい粒子径とを有する多糖リポソームを得ることは非常に難しい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
【0006】
本発明者は、繰り返し研究した結果、多糖薬物のカプセル化するリポソーム及びその調製方法を得た。さらに、本発明者は、驚くべきことに、本発明の多糖リポソームが高いカプセル化率と小さい粒子径とを有することを見出した。
【0007】
したがって、本発明は、多糖、リン脂質、コレステロール、界面活性剤及びポリエチレングリコール(PEG)を含む出発原料から調製されたリポソームを提供する。
【0008】
また、本発明は、a.リン脂質、コレステロール、界面活性剤及びポリエチレングリコールを含む前記出発原料を有機溶剤に溶解して油相混合物を得るステップと、b.多糖及び界面活性剤を含む出発原料を水または水溶液に溶解して水相混合物を得るステップと、c.前記水相混合物を前記油相混合物に加えて乳化を行うステップと、d.一定温度で減圧された保護ガス下、蒸発により前記溶剤を除去するステップと、e.水または水溶液を加え、その後水浴中で前記生成物を放置(定温放置)するステップとを備える調製方法を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、上述したリポソームを含む組成物を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、リポソーム、または、抗腫瘍薬剤または人間または動物の免疫機能を制限するための薬剤を製造するためのリポソームを含む組成物の使用を提供する。
【0011】
本発明の多糖リポソームは、1μm以下の粒子径で均一な径分布に制御可能である。本発明の多糖リポソームは65%以上のカプセル化率を有する。本発明の多糖リポソームは、リポソーム中にカプセル化されていない多糖と比較して、投与後に生体内で非常に向上した薬理活性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1における本発明のリポソームの粒子径分布を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1における本発明のリポソームの透過電子顕微鏡の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の詳細な説明
本出願において開示された化合物、組成物、方法、試薬は、ここで具体的に挙げられたものに限定されず、異なっていてもよい。ここでの具体的な実施形態は、本発明のよりよい理解の目的のために提供されるものであって、本発明の範囲を制限するものではない。
【0014】
具体的な実施形態を参照して、本発明を詳細に説明する。
【0015】
ここで用いられる「リポソーム」という用語は、薬理活性材料がカプセル化された脂質二分子層の構造を有する囲まれた小胞を意味する。リポソームは、単層リポソームであっても複数層リポソームであってもよい。本発明のリポソームは、修飾された表面を有するリポソームである。
【0016】
本発明の多糖は、レンチナン(lentinan)、アストラガリン(astragalan)、トレメラ(Tremella)多糖、トレメラ・フシホミス(Tremella fuciformis)、パナキサン(panaxan)、レイシ(ganoderan)、チョレイマイタケ(umbellatus)多糖からなる群より選択されてもよい。好ましくは、多糖は、レンチナンまたはアストラガリンである。もっとも好ましくは、多糖はレンチナンである。
【0017】
ここで用いられる「リン脂質」という用語は、大豆リン脂質(soybean phosphatide)、レシチン(lecithin)、水素化大豆リン脂質(hydrogenated soybean phosphatide)、水素化レシチン(hydrogenated lecithin)、ホスファチジル・エタノールアミン(phosphatidyl ethanolamine)、ジステアロイルホスファチジルコリン(distearoyl phosphatidylcholine)、PEGにより修飾されたリン脂質(PEGylated phospholipid)、及びそれらの混合物からなる群より選択されてもよい。
【0018】
本発明のポリエチレングリコールは、PEG800−5000、リン脂質修飾ポリエチレングリコール誘導体(phospholipids-modified polyethylene glycol derivatives)及びその混合物からなる群より選択されてもよい。好ましくは、ポリエチレングリコールは、PEG1000−2400である。より好ましくは、ポリエチレングリコールは、PEG2000である。
【0019】
本発明の界面活性剤は、デオキシコール酸塩(deoxycholates)、ポロキサマー(poloxamer)、ポリソルベート80(Tween-80)及びそれらの混合物からなる群より選択されてもよい。好ましくは、界面活性剤は、デオキシコール酸ナトリウム及びデオキシコール酸カリウムのようなデオキシコール酸塩である。
【0020】
本発明のリポソームを調製するための出発原料は、リポソームを調製するために適したものをさらに含んでいてもよい。本発明の一実施形態において、例えば、出発原料は、リポソームの保存安定性を向上するための抗酸化剤をさらに含む。本発明のリポソームの別の実施形態において、リポソームが、凍結乾燥された粉末注射剤に処方されることが可能になるように、出発原料は、凍結乾燥のための保護剤をさらに含む。
【0021】
本発明の抗酸化剤は、ビタミンE、ビタミンC、システイン、メチオニン、亜硫酸水素ナトリウム及びそれらの混合物のような薬学的に許容される抗酸化剤のいずれかであってもよい。
【0022】
本発明の凍結乾燥のための保護剤は、マンニトール(mannitol)、トレハロース(trehalose)、スクロース(sucrose)、グリシン(glycine)及びその混合物のような薬学的に許容される凍結乾燥のための保護剤のいずれかであってもよい。
【0023】
本発明の一実施形態において、出発原料は以下の比の成分を含む。1部のレンチナン、30〜100部のリン脂質及び2〜20部のコレステロール(レンチナン1部に対して、リン脂質30〜100部、コレステロール2〜20部);好ましくは、1部のレンチナン、40〜90部のリン脂質及び5〜15部のコレステロール;より好ましくは、1部のレンチナン、50〜70部のリン脂質、5〜15部のコレステロール。
【0024】
特別の定めがない限り、ここで用いられる「部」は、重量部である。
【0025】
本発明の一実施形態において、出発原料は3〜12部の界面活性剤を含む。本発明の他の実施形態において、出発原料は1〜8部のポリエチレングリコールを含む。
【0026】
本発明のさらに別の実施形態において、出発原料は、当業者の標準的な知識にしたがって容易に決定できる適量の抗酸化剤を含む。例えば、1〜8部の抗酸化剤を用いることができる。
【0027】
本発明のリポソームは、対象者に投与するために適したいかなる処方中にも存在可能である。例えば、本発明のリポソームは、注射液または粉末注射剤のような注射、または、タブレット、カプセル、または顆粒のような経口剤に処方されることが可能である。好ましくは、本発明のリポソームは、注射液または粉末注射剤の形態である。
【0028】
本発明のリポソームは、前記ステップa〜eを備える方法により得られる。
【0029】
本発明のリポソームが粉末注射剤に処方される場合、本発明のリポソームの製造方法は、ステップeから得られた溶剤を分離して、凍結乾燥するステップfをさらに備える。
【0030】
ステップaにおいて、用いられる溶剤は、クロロホルム、クロロホルム−メタノールまたはジエチルエーテルのような出発原料を溶解するために適したいずれの有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、出発原料が溶解可能な量、用いられる。その量は原料に依存し、一般的に当業者による標準的な知識にしたがって容易に決められる。
【0031】
ステップbにおいて、用いられる水溶液は、リン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、重炭酸ナトリウム緩衝液または酒石酸塩緩衝液などのような緩衝液、または、生理食塩水のような塩化ナトリウム溶液であってもよい。ステップbで用いられる水または水溶液は、出発原料が溶解可能な量、用いられる。その量は原料に依存し、一般的には当業者による標準的な知識にしたがって容易に決められる。
【0032】
ステップcにおいて、本発明の調製方法の乳化は、超音波処理または高圧での実施により達成され得る。乳化は、一般的には、10℃以下のような低温で実施される。乳化時間は、粒子径に依存するが、当業者により既知の方法を用いて適切に決定され得る。例えば、乳化時間は、3〜10分であってもよい。好ましくは、本発明の超音波処理は、超音波バッチ処理であることが好ましく、高圧での乳化は、高圧での循環乳化であることが好ましい。
【0033】
本発明の調製方法のステップdにおいて、保護ガスは、窒素を含む不活性ガスであってもよい。
【0034】
本発明の調製方法のステップdにおいて、回転蒸発装置は適切な温度で実施されてもよく、35〜45℃の範囲内の一定温度で行われることが好ましい。
【0035】
本発明の調製方法のステップeにおいて、放置は、水浴中で35〜50℃の範囲の温度で実行されることが好ましく、より好ましくは40℃である。
【0036】
本発明の調製方法のステップeにおいて、放置は1〜2時間実施されることが好ましい。
【0037】
本発明の調製方法のステップeにおいて、水溶液は、塩化ナトリウム溶液、または、リン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、炭酸水素ナトリウム塩緩衝液、酒石酸塩緩衝液などのような緩衝液であってもよい。
【0038】
好ましくは、ステップbにおける反応環境のpH値は、ステップeと異なる。より好ましくは、ステップbにおける反応環境の酸性度または塩基性度は、ステップeと反対である。反対の酸性度または塩基性度は、ステップb及びeにおける反応環境が酸性であり、他方が塩基性である場合を意味する。特に好ましくは、ステップbにおける反応環境は塩基性であり、ステップeにおける反応環境は酸性である。
【0039】
本発明のリポソームの一実施形態において、ステップaにおける出発原料は、抗酸化剤を含む。
【0040】
本発明のリポソームの他の実施形態において、ステップeにおける水溶液は凍結乾燥のための保護剤を含む。凍結乾燥のための保護剤は、当業者による標準的な知識にしたがって容易に決められる。
【0041】
本発明の多糖リポソームは、肝臓、骨、脊髄、腫瘍及び炎症組織のような特定組織または細胞を特に対象とし、循環を引き延ばす。
【0042】
本発明の多糖リポソームは、肝臓、卵巣、腸、肺、胸、前立腺、膵臓、腎臓、胃、子宮内膜、食道、頭、首、悪性胸水、腹水腫瘍などのような腫瘍を処置するための補助的療法、または腫瘍のための補助的療法として用いることができる。本発明の多糖リポソームは、免疫調節効果も有する。例えば、肺炎、リウマチ性関節炎またはエイズで苦しむ患者の免疫を向上するために用いることもできる。多糖をそのまま投与する場合と比較して、リポソームにカプセル化された形態で投与された場合に、多糖は大きく向上した効能を示す。
【0043】
本発明の多糖リポソームは、高いカプセル化率を有する。本発明の多糖リポソームのカプセル化率は、65%以上である。カプセル化率は、70%以上が好ましく、80%以上であることがより好ましい。高いカプセル化率に加えて、本発明の多糖リポソームは、小さい粒子径を有する。リポソームの粒子径は、略1μm以下であり、100〜500nm以下であることが好ましく、140〜300nmであることがより好ましい。
【0044】
ここでのリポソームのカプセル化率は、リポソームを製造するための出発原料における多糖の全量に対するリポソームにおいてカプセル化された多糖の量の割合を意味し、割合は重量パーセントで表される。
【0045】
医薬組成物は、本発明のリポソームから調製され、以下の薬学的に有効な成分と組み合わせられる。
細胞毒性剤、例えば、ブレオマイシン(Bleomycin)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、マイトマイシン(Mitomycin)、カルムスチン(Carmustin)、カルボプラチン(Carboplatin)、シスプラチン(Cisplatin)、イプロプラチン(Iproplatin)、シクロホスファミド(Cyclophophamide)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ドセタキセル(Docetaxel)、エトポシド(Etoposide)、フルオロウラシル(Fluorouracil)、メルファラン(Melphalan)、メトトレキサート(Methotrexate)、ビノレルビン(Vinorelbine)、ビンクリスチン(Vincristine)、パクリタキセル(Paclitaxel)などのような抗腫瘍薬剤、及び、アミノグルテチミド(Aminoglutethinmide)、アナストロゾール(Anastrozole)、ビカルタミド(Bicalutamide)、イリノテカン(Irinotecan)、リツキシマブ(Rituximab)、タモキシフェン(Tamoxifen)、トラスツブマブ(Trastuzumab)などのようなホルモンまたは抗ホルモン、
抗炎剤、例えば、ガンシクロビル(Ganciclovir)、リバビリン(Ribavirin)、ビダラビン(Vidarabine)、ファムシクロビル(Famciclovir)、ラミブジン(Lamivudine)、アバカビル(Abacavir)、ネビラピン(Nevirapine)、インジナビル(Indinavir)などのような抗ウイルス剤、アスピリン(Aspirin)、イブプロフェン(Ibuprofen)、インドメタシン(Indometacin)、ピロキシカム(Piroxican)、ニメスリド(Nimesulide)、グルコサミン(Glucosamine)などのような抗感染症薬剤、及び、
免疫調節薬剤、例えばインターフェロン薬剤(interferon agent)またはインターロイキン剤(interleukin agent)のような免疫調節薬剤。
【0046】
本発明のリポソーム組成物は、充填剤、吸着剤、潤湿剤、接着剤、潤滑剤、着色剤、芳香薬、安定剤、防腐剤、バッファー、崩壊剤、塗布材料、拡散剤、 沈殿防止剤などのような医薬品添加剤及び補助剤のように、薬学的に許容可能な担体と組み合わせて用いられることもできる。
【0047】
本発明の多糖リポソームまたは組成物は、様々なルートにより対象の目標領域に運ばれることが可能である。例えば、リポソームまたは組成物は、静脈注射、筋肉注射、腹腔内注射及び皮下注射のように、経口投与または注射を介して適した形態で処理されるためにその場で標的とされ、改善された免疫調節性効果または抗腫瘍効果を得る。
【0048】
本発明のリポソームは、治療効果を得るために、1種またはそれ以上の例えば上述したような他の薬学的活性剤と組み合わせて投与されることもできる。
【0049】
本発明の実施形態は、以下の実施例を参照してさらに説明される。本実施例で用いられる化合物及び薬剤は市販の、または、その技術分野における既知の標準的な方法を用いて当業者により調製されることが可能であり、本実験で用いられる装置も、市販のものである。
【0050】
実施例1
リポソーム1の出発原料の処方

【0051】
リポソーム1の調製:
8.0gの大豆リン脂質、1.0gのコレステロール、0.2gのPEG2000及び0.2gのビタミンEを、撹拌しながら900mlのクロロホルムに溶解し、油相混合物を得た。0.1gの注射可能なグレードのレンチナン及び0.9gのデオキシコール酸ナトリウムを300mlの注射用水に添加し、レンチナンが溶解するまで適量の0.1mol/LのNaOH溶液を添加した。0.1mol/LのHCl溶液によって溶液をpH7.0〜8.0に調製し、油相混合物を得た。氷水浴中の油相混合物に水相混合物をゆっくり添加し、その後にバッチ乳化超音波を5分間実施し、均質な乳白色のW/Oエマルジョンを得た。回転蒸発装置により減圧下40℃で窒素の保護下で溶剤を除去し、淡黄色の濃厚な乳液状の物質を生じた。200mlの0.9%NaCl溶液を添加し、その後、結果として生じる混合物を40℃で1時間放置し、リポソーム1の溶液を得た。リポソーム溶液は、100アリコットのレンチナンリポソームの注射液に分割する前に、ミリポアフィルターを介して殺菌された。
【0052】
リポソーム1の評価:
(1)カプセル化率
0.2mlのリポソーム1を10mlのテーパー状の遠心管に添加し、0.2mlのプロテイン(10mg/ml)を添加した。それらを均一に振動し、3分間放置し、その後、合計量が5mlに達するように0.05mol/LのNaOH溶液を添加した。結果として生じる混合物を、室温の下30分間、3000r/minで遠心分離した。2mlの上澄み液を取り除き、4mlの0.2%アンスロン硫酸溶液(0.2gのアンスロン及び100mlの濃硫酸から調製された)を添加した。結果として生じる混合物を均一に振動させ、沸騰水浴中で6分間加熱し、氷水浴で2分間冷却し、10分間室温で放置し、その後、吸光度を測定した。それに加えて、対象群として、一定重量を有するようにP25で乾燥された適正な量のレンチナンを、正確に秤量し、粉砕により少量の0.5mol/LのNaOH溶液に溶解させ、水で希釈して、20μg/mlの濃度の溶液を作製した。吸光度を上述した方法と同様に決定した。リポソームにカプセル化されなかったレンチナンの量を算出した。カプセル化率を以下の式により算出した。
カプセル化率(%)=(1−カプセル化されなかったレンチナンの量/レンチナンの全量)×100%
サンプルのレンチナンのカプセル化率は82.8%と決定された。
【0053】
(2)粒子径及び顕微鏡的形態
リポソーム1は、200〜400nmの範囲における粒子径、及び、レーザ粒子径分析器(DELSA 440S laser particle size analyzer, Beckman, USA)(図1)を用いることによって316nmの平均径を有していることが決定された。リポソーム1は、透過電子顕微鏡(Tecnai G212 transmission electron microscope, FEI, Holland)(図2)の下、球形の外観及びはっきりと見える輪郭を有することが観察された。
【0054】
実施例2
リポソーム2の出発原料の処方:

【0055】
調製:
8.0gの大豆リン脂質、1.0gのコレステロール、0.2gのPEG2000及び0.2gのビタミンEを撹拌しながら900mlのクロロホルムに溶解し、油相混合物を得た。0.1gの注射可能なグレードのレンチナン及び0.9gのデオキシコール酸ナトリウムを300mlの注射用水に添加し、レンチナンが溶解するまで適量の0.1mol/LのNaOH溶液を添加した。0.1mol/LのHCl溶液によって溶液をPH7.0〜8.0に調製し、油相混合物を得た。氷水浴中の油相混合物に水相混合物をゆっくり添加し、その後にバッチ乳化超音波を5分間実施し、均質な乳白色のW/Oエマルジョンを得た。回転蒸発装置により減圧下40℃で窒素の保護下で溶剤を除去し、淡黄色の濃厚な乳液状の物質を生じた。pHが6.0〜6.5であり、200mlのリン脂質バッファー溶液中の2%のマンニトールを添加し、その後、結果として生じる混合物を40℃で1時間放置し、リポソーム2の溶液を得た。
リポソーム溶液を、100アリコットに分割する前に、ミリポアフィルターを介して殺菌し、2時間−50℃で予め凍結させた。温度を8時間で−6℃ずつ徐々に高め、その後、12時間かけて30℃まで徐々に高め、淡黄色の固まり、つまりリポソーム2の粉末注射剤を得た。
【0056】
生成された粉末注射剤を再構成した後、実施例1の方法によれば、リポソーム2は、84.3%のカプセル化率を有し、318nmの平均粒子径を有することが測定された。リポソーム2は、透過電子顕微鏡下で、球形の外形及びはっきりと見える輪郭を有することが観察された。
【0057】
実施例3
リポソーム3の出発原料の処方:

【0058】
調製:
6.1gの大豆リン脂質、0.8gのコレステロール、0.2gのPEG1000及び0.2gのビタミンEを撹拌しながら900mlのクロロホルムに溶解し、油相混合物を得た。0.1gの注射可能なグレードのレンチナン及び0.5gのデオキシコール酸ナトリウムを300mlの注射用水に添加し、レンチナンが溶解するまで適量の0.1mol/LのNaOH溶液を添加した。0.1mol/LのHCl溶液によって溶液をpH7.0〜8.0に調製し、油相混合物を得た。水相混合物は、氷水浴中で、油相混合物にゆっくり添加され、その後にバッチ乳化超音波を6分間実施し、均質な乳白色のW/Oエマルジョンを得た。回転蒸発装置により減圧下40℃で窒素の保護下で溶剤を除去し、淡黄色の濃厚な乳液状の物質を生じた。pHが6.0〜6.5であり、200mlのリン脂質バッファー溶液を添加し、その後、結果として生じる混合物を40℃で1.5時間放置し、リポソーム3の溶液を得た。
実施例1の方法によれば、レンチナンのカプセル化率は82.2%であり、平均粒子径は302nmであることが測定された。リポソーム3は、透過電子顕微鏡下で、球形の外形及びはっきりと見える輪郭を有することが観察された。
【0059】
実施例4
リポソーム4の出発原料の処方:

【0060】
調製:
5.2gの大豆リン脂質、0.7gのコレステロール、0.2gのPEG2000及び0.2gのビタミンEを撹拌しながら900mlのクロロホルムに溶解し、油相混合物を得た。0.1gの注射可能なグレードのレンチナン及び0.7gのデオキシコール酸ナトリウムを300mlの注射用水に添加し、レンチナンが溶解するまで適量の0.1mol/LのNaOH溶液を添加した。0.1mol/LのHCl溶液によってpH7.0〜8.0に溶液を調製し、油相混合物を得た。氷水浴中での油相混合物に水相混合物をゆっくり添加し、その後にバッチ乳化超音波を6分間実施し、均質な乳白色のW/Oエマルジョンを得た。回転蒸発装置により減圧下40℃で窒素の保護下で溶剤を除去し、淡黄色の濃厚な乳液状の物質を生じた。200mlの2%マンニトールを添加し、その後、結果として生じる混合物を40℃で1.5時間放置し、ミリポアフィルターを介して殺菌し、リポソーム4の溶液を得た。リポソーム4の粉末注射剤を実施例2の方法にしたがって調製した。再構成の後、実施例1の方法によれば、レンチナンのカプセル化率は75.1%であり、平均粒子径は297nmであることが測定された。リポソーム4は、透過電子顕微鏡下で、球形の外形及びはっきりと見える輪郭を有することが観察された。
【0061】
実施例5
リポソーム5の出発原料の処方:

【0062】
調製:
10.0gの大豆リン脂質、1.5gのコレステロール及び0.3gのPEG2000を撹拌しながら900mlのクロロホルムに溶解し、油相混合物を得た。0.2gのアストラガリン及び1.0gのデオキシコール酸ナトリウムを撹拌しながら300mlの注射用水に溶解し、水相混合物を得た。氷水浴中の油相混合物に水相混合物をゆっくり添加し、その後にバッチ乳化超音波を6分間実施し、均質な乳白色のW/Oエマルジョンを得た。回転蒸発装置により減圧下40℃で窒素の保護下で溶剤を除去し、淡黄色の濃厚な乳液状の材料を生じた。200mlの注射用水を添加し、その後、結果として生じる混合物を40℃で1.5時間放置し、ミリポアフィルターを介して殺菌し、100アリコットのアストラガリンの注射液に分割した。実施例1の方法によれば、アストラガリンのカプセル化率は75.2%で、平均粒子径は293nmであることが測定された。リポソーム5は、透過電子顕微鏡下で、球形の外形及びはっきりと見える輪郭を有することが観察された。
【0063】
実施例6
リポソーム6の出発原料の処方:

【0064】
調製:
10.0gの大豆リン脂質、1.5gのコレステロール及び0.7gのPEG2000を撹拌しながら900mlのクロロホルムに溶解し、油相混合物を得た。0.2gのアストラガリン及び0.9gのデオキシコール酸ナトリウムを撹拌しながら300mlの注射用水に溶解し、水相混合物を得た。氷水浴中の油相混合物に水相混合物をゆっくり添加し、その後にバッチ乳化超音波を6分間実施し、均質な乳白色のW/Oエマルジョンを得た。回転蒸発装置により減圧下40℃で窒素の保護下で溶剤を除去し、淡黄色の濃厚な乳液状の物質を生じた。pHが6.5で、200mlのリン脂質バッファー溶液中の2%のマンニトールを添加し、その後、結果として生じる混合物を40℃で1.5時間放置し、リポソーム6の溶液を得た。
リポソーム6の粉末注射剤を実施例2の方法にしたがって調製した。リポソームの再構成の後、実施例1の方法によれば、アストラガリンのカプセル化率は84.5%であり、平均粒子径は308nmであることが測定された。リポソーム6は、透過電子顕微鏡下で、球形の外形及びはっきりと見える輪郭を有することが観察された。
【0065】
実施例7
リポソーム7の出発原料の処方:

【0066】
調製:
5.0gの大豆リン脂質、0.6gのコレステロール、0.2gのPEG2000及び0.2gのビタミンEを撹拌しながら900mlのクロロホルムに溶解し、油相混合物を得た。0.1gの注射可能なグレードのレンチナン及び0.4gのポリソルベート80を300mlの注射用水に添加し、レンチナンが溶解するまで適量の0.1mol/LのNaOH溶液を添加した。0.1mol/LのHCl溶液によってpH7.0〜8.0に溶液を調製し、油相混合物を得た。氷水浴中の油相混合物に水相混合物をゆっくり添加し、その後にバッチ乳化超音波を6分間実施し、均質な乳白色のW/Oエマルジョンを得た。回転蒸発装置により減圧下40℃で窒素の保護下で溶剤を除去し、淡黄色の濃厚な乳液状の物質を生じた。pHが6.0〜6.5で、200mlのリン脂質バッファー溶液を添加し、その後、結果として生じる混合物を40℃で1.5時間放置し、リポソーム7の溶液を得た。実施例1の方法によれば、レンチナンのカプセル化率は80.2%であり、平均粒子径は293nmであることが測定された。リポソーム7は、透過電子顕微鏡下で、球形の外形及びはっきりと見える輪郭を有することが観察された。
【0067】
実施例8
リポソーム8の出発原料の処方:

【0068】
調製:
6.1gの大豆リン脂質、1.5gのコレステロール、0.2gのPEG2000及び0.2gのビタミンEを撹拌しながら900mlのクロロホルムに溶解し、油相混合物を得た。0.1gの注射可能なグレードのレンチナン及び0.4gのポリソルベート80を300mlの注射用水に添加し、レンチナンが溶解するまで適量の0.1mol/LのNaOH溶液に添加した。0.1mol/LのHCl溶液によって溶液をpH7.0〜8.0に調製し、油相混合物を得た。氷水浴中の油相混合物に水相混合物をゆっくり添加し、その後にバッチ乳化超音波を6分間実施し、均質な乳白色のW/Oエマルジョンを得た。回転蒸発装置により減圧下40℃で窒素の保護下で溶剤を除去し、淡黄色の濃厚な乳液状の物質を生じた。pHが6.0〜6.5で、200mlのリン脂質バッファー溶液中の2%のマンニトールを添加し、その後、結果として生じる混合物を40℃で1.5時間放置し、リポソーム8の溶液を得た。リポソーム8の粉末注射剤を実施例2の方法にしたがって調製した。リポソームの再構成の後、実施例1の方法によれば、レンチナンのカプセル化率は82.1%であり、平均粒子径は305nmであることが測定された。リポソーム8は、透過電子顕微鏡下で、球形の外形及びはっきりと見える輪郭を有することが観察された。
【0069】
実施例9
リポソーム9の出発原料の処方:

【0070】
調製:
7.0gの大豆リン脂質、0.8gのコレステロール、0.6gのPEG1000及び0.2gのビタミンEを撹拌しながら900mlのクロロホルムに溶解し、油相混合物を得た。0.1gの注射可能なグレードのレンチナン及び0.5gのデオキシコール酸ナトリウム(deoxysodium cholate)を撹拌しながら300mlの注射用水に溶解し、レンチナンが溶解するまで適量の0.1mol/LのNaOH溶液を添加した。0.1mol/LのHCl溶液によって溶液をpH7.0〜8.0に調製し、水相混合物を得た。氷水浴中の油相混合物に水相混合物をゆっくり添加し、その後にバッチ乳化超音波を約6分間実施し、均質な乳白色のW/Oエマルジョンを得た。回転蒸発装置により減圧下35℃で窒素の保護下で溶剤を除去され、淡黄色の濃厚な乳液状の物質を生じた。pHが6.0〜6.5で、200mlのリン脂質バッファー溶液を添加し、その後、結果として生じる混合物を40℃で1.5時間放置し、リポソーム9の溶液を得た。実施例1の方法によれば、レンチナンのカプセル化率は75.0%であり、平均粒子径は312nmであることが測定された。リポソーム9は、透過電子顕微鏡下で、球形の外形及びはっきりと見える輪郭を有することが観察された。
【0071】
実施例10
本発明の多糖リポソームの生体内の抗腫瘍及び免疫調節性効果を、上記の実施例のように調製されたレンチナンリポソーム(リポソーム9)を用いて実験した。治療効果は、マイクロファージ、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)及びリンパ球の活性を評価することで測定され、腫瘍阻止率も測定した。
【0072】
マウス腫瘍モデル:
(華中科技大学の同済医科大学の動物研究センターにより提供された)20〜24gの重さの健康で成熟したオスの昆明のマウスを用いた。マウスは、(武漢大学の医学部の教育及び研究部により快く提供された)H22肝癌細胞が接種され、少なくとも3代継代された。腹水を継代されたマウスの腹腔から取り出し、RPMI1640培養液(ギブコ)で2×107/mlの細胞濃度に希釈した。腫瘍に接種するために1回0.2ml/マウスで、希釈液をマウスの右肢下に皮下注射した。モデルのマウスにおいて、腫瘍は、0.4gの平均重量で、1.13gから3.1gの範囲内であった。
【0073】
グループ分け及び投与:
試験される薬品及びその量によって、腫瘍モデルグループ、シクロホスファミドグループ、レンチナン+シクロホスファミドグループ、及びレンチナンリポソームシクロホスファミドグループにマウスをグループ分けした。グループ分けの情報を、下記の表1に具体的に示す。
【0074】

【0075】
肝臓マクロファージの食作用活性、脾臓リンパ球の形質転換活性及びNK細胞の活性において、動物は、H22肝癌細胞の接種2日後に、上述の4のグループにランダムにグループ分けされ、薬品は15日間腹腔内に投与された。腫瘍阻害率の分析において、動物は、H22肝癌細胞の接種4日後に、上述の4のグループにランダムにグループ分けされ、薬品は15日間腹腔内に投与された。
【0076】
(1)マクロファージ活性の分析
マウスは最終投薬から24時間後に犠牲になった。肝細胞の停止を、以下のように調製した。マウスを75%エタノールにしばらく浸け、肝臓を殺菌して取り除き、3分間D-Hank's溶液で洗浄し、秤量した。同じグループの動物の肝臓を、RPMI1640培養液(ギブコ)に入れ、ホモジネートした。細胞の最終濃度を2×105/mlに調製した。
【0077】
得られた肝細胞の懸濁液は、96wellマイクロプレートに100μl/well入れた。プレートは、CO2培養器中で24時間培養し、その後、RPMI1640培養液(ギブコ)で3度洗浄し、粘着性のマクロファージの短分子層を得た。その後、通常生理食塩水溶液における0.072%のニュートラルレッド(Solarbio社)を、10μ/wellの量で添加した。細胞を4時間培養し、上澄み液を廃棄した。酢酸エタノール溶液(1:1)を150μm/wellの量、添加した。結晶を完全に溶解させるために、96wellのマイクロプレートを撹拌器で10分間振動した。その後、吸光度をプレートリーダー(ZS-3, Xinfeng Mechanical-Electronic Technology Inc., 北京、中国)において各ウエル492nmで測定し、マクロファージの食作用活性(OD値)を算出した。その結果をSPSS統計ソフトウエアを用いることにより分析した。

群間の比較は、t検定により行った。その結果を下記の表2に示した。
【0078】

注:腫瘍モデルグループと比べて、**p < 0.01;レンチナン+シクロホスファミドグループと比べて##p < 0.01
【0079】
結果を以下のように示す。
シクロホスファミドグループと腫瘍モデルグループとの間のマクロファージ活性の差は小さく、このことから、シクロホスファミドは、担癌マウスの肝臓マクロファージの食作用活性の効果が小さいことが示唆された。
レンチナン+シクロホスファミドグループとシクロホスファミドグループとの間のマクロファージ活性の差は小さく、このことから、レンチナンも、担癌マウスのマクロファージの食作用活性の効果が小さいことが示唆された。
マクロファージの食作用活性は、レンチナンリポソーム+シクロホスファミドグループにおけるレンチナンにおいて、腫瘍モデルグループまたはシクロホスファミドグループ(p<0.01)を有するものと比較して、大幅に向上されており、このことから、レンチナンリポソームは、担癌マウスのマクロファージの食作用活性を大幅に向上させることが示唆された。
レンチナンリポソーム+シクロホスファミドグループにおける担癌マウスのマクロファージの食作用活性も、同一用量(p<0.01)のレンチナン+シクロホスファミドグループに比べて大幅に向上させた。
したがって、リポソームの形態のレンチナンは、肝臓のマクロファージの活性を大幅に向上させることが示された。
【0080】
(2)ナチュラルキラー細胞分析
マウスは最終投薬から24時間後に犠牲になった。肝細胞の停止は、以下のように調製された。マウスを75%エタノールにしばらく浸け、肝臓を殺菌して取り除き、3分間D-Hank's溶液で洗浄し、秤量した。同じグループの動物の肝臓を、RPMI1640培養液(ギブコ)に入れられ、1:1の比重量でホモジネートした。細胞の最終濃度を2×106/mlに調製した。
【0081】
100mlのエフェクター細胞(上述した方法で調製された脾臓細胞)及び100μlのRPMI1640培養液(ギブコ)を96wellマイクロプレートのEwellに入れ、100μmのターゲット細胞(K562 cells, 華中科技大学の同済医科大学の研究センターにより提供された)及び100μmRPMI1640培養液(ギブコ)をTwellに入れ、100mlの効果細胞及び100mlのターゲット細胞をE+Twellに入れ、それぞれ3つ作製した。プレートはCO2培養器中で37℃24時間培養した。培養終了前4時間、5mg/mlのMTT(Sigma)を20μl/wellの量、添加し、細胞をさらに4時間培養した。上澄み液を捨て、DMSOを150μl/wellの量、添加した。結晶を完全に溶解させるために、96wellのマイクロプレートを撹拌器で10分間振動した。その後、ブランク溶剤としてDMSOを用い、それぞれの細胞の吸光度を492nmで測定した。その結果を以下のように算出した。NK細胞の殺傷率=[1−(DE+T−DT)]×100%。その結果を、SPSS統計ソフトウエアを用いることにより分析した。

群間の比較は、t検定により行った。その結果を下記の表3に示した。
【0082】

注:シクロホスファミドグループと比べて、*p < 0.05;レンチナン+シクロホスファミドグループと比べて#p < 0.05
【0083】
結果を以下のように示す。
シクロホスファミドグループのNK細胞の殺傷率は、腫瘍モデルグループ(P<0.05)と比較して非常に小さく、このことから、シクロホスファミドは、担癌マウスのNK細胞の殺傷率への抑制効果を有することが示唆された。
レンチナン+シクロホスファミドグループのNK細胞殺傷率は、腫瘍モデルグループのそれと比較して非常に小さく、シクロホスファミドグループのそれと比較して統計学上わずかに増加しており、このことから、シクロホスファミドと組み合わせたレンチナンは、担癌マウスのNK細胞へのシクロホスファミドの有毒性及び副作用を部分的に殺傷することが示唆された。
レンチナンリポソーム+シクロホスファミドグループのNK細胞の殺傷率は、腫瘍モデルグループまたはシクロホスファミドグループ(P<0.05)のいずれとも比較して、大幅に向上されており、このことから、シクロホスファミドと組み合わせたレンチナンは、担癌マウスのNK細胞へのシクロホスファミドの有毒性及び副作用を部分的に殺傷するだけでなく、担癌マウスのNK細胞の殺傷率を大幅に増加することが示唆された。
レンチナンリポソーム+シクロホスファミドグループのNK細胞の殺傷率も、同一用量(P<0.05)のレンチナン+シクロホスファミドグループに比べて大幅に向上され、このことから、レンチナンと比較して、レンチナンリポソームは、担癌マウスのNK細胞の殺傷率を大幅に増加することが示唆された。
【0084】
(3)リンパ球増殖分析
脾臓細胞の懸濁液を、上述したように調製した。懸濁液を96wellマイクロプレートに100μl/well入れた。対照用ウエル及び試験用ウエルを、試験される個々の薬品ごとにセットした。100μl(12.5μg/ml)のPHA−P(Sigma)を、それぞれの試験用ウエルに入れ、100μlのRPMI1640(Gibco)をそれぞれの対照用ウエルに入れた。5%CO2中37℃24時間、プレートを培養した。その次のステップは、上記(2)で述べた。その結果を、以下のように算出した。分解率=(ODtest well−ODcontrol well)/ODcontrol well×100%。その結果は、SPSS統計ソフトウエアを用いることにより分析した。

群間の比較は、t検定により行った。その結果を下記の表4に示された。
【0085】

注:シクロホスファミドグループと比べて、*p < 0.05;レンチナン+シクロホスファミドグループと比べて#p < 0.05
【0086】
結果を以下のように示す。
シクロホスファミドグループの脾臓リンパ球の増殖率は、腫瘍モデルグループ(P<0.05)のそれと比較して非常に小さく、このことから、シクロホスファミドは、担癌マウスの脾臓リンパ球の増殖率への抑制効果を有することが示唆された。
レンチナン+シクロホスファミドグループの増殖率は、腫瘍モデルグループのそれからわずかに変化しているが、シクロホスファミドグループのそれと比較して増加しており、このことから、シクロホスファミドと組み合わせたレンチナンは、担癌マウスのリンパ球へのシクロホスファミドの有毒性及び副作用を減少することが示唆された。
レンチナンリポソーム+シクロホスファミドグループのリンパ球の増殖率は、腫瘍モデルグループまたはシクロホスファミドグループ(P<0.05)のいずれとも比較して、大幅に増加しており、このことから、シクロホスファミドと組み合わせたレンチナンは、担癌マウスのリンパ球へのシクロホスファミドの有毒性及び副作用を部分的に殺傷するだけでなく、担癌マウスのリンパ球の増殖率を大幅に増加することが示唆された。
レンチナンリポソーム+シクロホスファミドグループのリンパ球の増殖率も、同一用量(P<0.05)のレンチナン+シクロホスファミドグループに比べて大幅に増加され、このことから、レンチナンと比較して、レンチナンリポソームは、担癌マウスの脾臓リンパ球の増殖率を大幅に増加することが示唆された。
【0087】
(4)腫瘍抑制率の分析
最終投薬から24時間後にマウスは犠牲になった。腫瘍をマウスから分離し、秤量した。そして、腫瘍抑制率を算出した。その結果は、SPSS統計ソフトウエアを用いることにより分析した。

群間の比較は、t検定により行った。その結果を下記の表5に示した。
【0088】

注:シクロホスファミドグループと比べて、*p < 0.05
【0089】
抗腫瘍薬剤の薬理学のガイドラインにおける治療効果の評価の基準にしたがうと、効果のない基準は腫瘍抑制率が40%以下で、効果のある基準は腫瘍抑制率が40%以上で、統計学上(腫瘍モデルグループと比べて)p<0.05である。
【0090】
結果を以下のように示す。
レンチナン+シクロホスファミドグループの腫瘍抑制率は、シクロホスファミドグループのそれと比較して増加しており、このことから、レンチナンは、シクロホスファミドの腫瘍抑制効果を向上させるが、その差は統計学上大きくないことが示唆された。
レンチナンリポソーム+シクロホスファミドグループの腫瘍抑制率は、シクロホスファミドグループ(p<0.05)と比較して大幅に増加しており、このことから、レンチナンリポソームは、シクロホスファミドの腫瘍抑制効果を大幅に向上させることが示唆された。
したがって、レンチナンリポソームは、レンチナンより優れた、大きな抗腫瘍活性を有することが示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポソームにおいて、前記リポソームの製造のための出発原料は、多糖、リン脂質、コレステロール、界面活性剤及びポリエチレングリコールを含むことを特徴とする、リポソーム。
【請求項2】
前記多糖は、レンチナン、アストラガリン、トレメラ多糖、トレメラ・フシホミス多糖、パナキサン、レイシ、チョレイマイタケ多糖またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項3】
前記多糖は、レンチナンまたはアストラガリンであることを特徴とする、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項4】
前記リン脂質は、大豆リン脂質、レシチン、水素化大豆リン脂質、水素化レシチン、ホスファチジル・エタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルコリン、PEGにより修飾されたリン脂質、またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項5】
前記界面活性剤は、デオキシコール酸塩、ポロキサマー、ポリソルベート80またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項6】
前記界面活性剤は、デオキシコール酸ナトリウムまたはデオキシコール酸カリウムであることを特徴とする、請求項5に記載のリポソーム。
【請求項7】
前記ポリエチレングリコールは、PEG800−5000、リン脂質修飾ポリエチレングリコール誘導体及びその混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項8】
前記ポリエチレングリコールは、PEG1000−2400であることを特徴とする、請求項7に記載のリポソーム。
【請求項9】
前記ポリエチレングリコールは、PEG2000であることを特徴とする、請求項8に記載のリポソーム。
【請求項10】
前記出発原料は、抗酸化剤及び/または凍結乾燥のための保護剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項11】
前記出発原料は、1部の多糖、30〜100部のリン脂質、2〜20部のコレステロール、3〜12部の界面活性剤及び1〜8部のポリエチレングリコールを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項12】
前記出発原料は、1重量部のレンチナン、40〜90重量部のリン脂質及び5〜15重量部のコレステロールを含むことを特徴とする、請求項11に記載のリポソーム。
【請求項13】
前記出発原料は、1部のレンチナン、50〜70部のリン脂質、及び5〜15部のコレステロールを含むことを特徴とする、請求項11に記載のリポソーム。
【請求項14】
1〜8部の抗酸化剤を更に含むことを特徴とする、請求項12に記載のリポソーム。
【請求項15】
前記リポソームのカプセル化率は、65%以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項16】
前記リポソームのカプセル化率は、70%以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項17】
前記リポソームのカプセル化率は、80%以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項18】
前記リポソームは、1μm以下の粒子径を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項19】
前記リポソームは、100〜500nmの粒子径を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項20】
前記リポソームは、140〜300nmの粒子径を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項21】
前記リポソームは、注射液または粉末注射剤の形態である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載のリポソームを含む、組成物。
【請求項23】
前記組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
1種またはそれ以上の抗腫瘍または免疫調節性有効成分をさらに含むことを特徴とする、請求項22または23に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物は、注射液または粉末注入剤の形態であることを特徴とする、請求項22または23に記載の組成物。
【請求項26】
請求項1〜21のいずれか1項に記載のリポソームを調製する方法であって、
a.リン脂質、コレステロール、界面活性剤及びポリエチレングリコールを含む前記出発原料を有機溶剤に溶解して油相混合物を得るステップと、
b.多糖及び界面活性剤を含む前記出発原料を水または水溶液に溶解して水相混合物を得るステップと、
c.前記水相混合物を前記油相混合物に添加して乳化を行うステップと、
d.一定温度で減圧された保護ガス下、蒸発により前記溶剤を除去するステップと、
e.水または水溶液を加え、その後水浴中でその生成物を放置するステップとを備える、方法。
【請求項27】
f.ステップeから得られた溶液を分離して、凍結乾燥するステップをさらに備えることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ステップaにおける前記有機溶剤は、クロロホルムまたはクロロホルム−メタノールであることを特徴とする、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
ステップcにおける前記乳化は、超音波バッチ処置または高圧での循環乳化であることを特徴とする、請求項26または27に記載の方法。
【請求項30】
ステップeにおける前記水浴中での放置は、35〜50℃の範囲内の温度で実施されることを特徴とする、請求項26または27に記載の方法。
【請求項31】
ステップeにおける前記水浴中での放置は、40℃で実施されることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ステップbにおける反応環境のpH値は、ステップeにおける反応環境のpH値と異なることを特徴とする、請求項26または27に記載の方法。
【請求項33】
ステップbにおける反応環境の酸性度または塩基性度は、ステップeにおける反応環境の酸性度または塩基性度と反対であることを特徴とする、請求項26または27に記載の方法。
【請求項34】
ステップeにおける前記放置は、1〜2時間実施されることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ステップaにおける前記出発原料は、抗酸化剤をさらに含むことを特徴とする、請求項26または27に記載の方法。
【請求項36】
ステップeにおける前記水溶液は、凍結乾燥する保護剤をさらに含むことを特徴とする、請求項26または27に記載の方法。
【請求項37】
抗腫瘍または免疫調節性剤を製造するための請求項1〜21のいずれか1項に記載のリポソームの使用。
【請求項38】
抗腫瘍または免疫調節性剤を製造するための請求項22〜25のいずれか1項に記載のリポソームの使用。
【請求項39】
請求項1〜21に記載のいずれか1項に記載のリポソームを対象者に投与するステップを備える、腫瘍の処置または免疫を調製する方法。
【請求項40】
請求項22〜25に記載のいずれか1項に記載のリポソームを対象者に投与するステップを備える、腫瘍の処置または免疫を調製する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−522730(P2012−522730A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502414(P2012−502414)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000361
【国際公開番号】WO2010/111807
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(511239041)
【Fターム(参考)】