説明

多結晶シリコンの精製及び析出の効率を改善するための方法及び装置本出願は、参照によって本明細書に全体が組み込まれる2006年8月18日出願の米国特許仮出願第60/838,479号の優先権を主張する。

【課題】不純シリコン源からの調整されたレベルのn‐型及びp‐型不純物を有する精製多結晶シリコン粒の商業規模の生産装置を提供する。
【解決手段】精製システムは、温度及び滞留時間の厳密な制御によって様々な度合いの固体シリコンの精製及び析出が実現されるよう固体と気体が輸送される二相流動床を含む温度制御された反応装置又は槽の1つ以上の系列と、FeSi及びFeI等の高融点不純物の化合物の分離及び回収と、四ヨウ化シリコンの精製、分離及びリサイクルと、ヨウ素還流によって促進された、連続分別蒸留塔の中のAlI等の低沸点液体不純物のヨウ化物化合物の分離及び回収と、分別蒸留塔の下流の液体混合物中の不純物ヨウ化物及び元素シリコンを含む非常に細かな固体粒子の分離及び回収と、プロセスからの固体及び液体のヨウ化物不純物廃棄物の流れの酸化からの原料ヨウ素の回収を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン原料を製造する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ヨウ素化学的気相輸送によって不純なシリコンを精製し、光起電力デバイス及びその他の半導体デバイスを製造するのに用いられる純シリコン原料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上昇する石油価格及び地球温暖化のような環境問題に対処する政策を含む要因によって、光起電力電池(PV)の形の太陽エネルギー捕集システムへの市場の需要は、地球規模で年率25%を超えて成長しつつある。主要なPV用基板材料はシリコンであり、現時点で設置済み商業装置の約90%を占める。しかし、シリコン系PVの価値連鎖(value chain)における重大な欠点は、現時点で、PVグレードの多結晶シリコン(PV‐Si)を競争力ある価格で製造する直接的な方法がないことである。この状況の主な理由は、歴史的にPV産業が、大部分はマイクロエレクトロニクス産業からリサイクルされたスクラップシリコン材料に依存していたことである。最近、地球規模のPV‐Siへの需要が、リサイクルされたエレクトロニクス・グレードのシリコン(REG‐Si)の供給を凌駕した。予測によると、このシリコン供給源は、もはやPV産業からの需要を満たすことができないであろう。
【0003】
多くのPV製造業者は、今やエレクトロニクス・グレードのシリコン(EG‐Si)の直接購入を考慮している。EG‐Siも供給に余裕がないが、EG‐Siの価格は過去のREG‐Siの平均価格の10倍にもなる。EG‐Siの高価格は、主に現時点でこの産業の主流であるトリクロロシランプロセス及びシランプロセスの複雑さ及び高い資本コストに原因がある。また、多くの場合にEG‐Si製造業者は、下流のマイクロエレクトロニクス価値連鎖の中へ統合されており、そのため、これらのプロセスはそちらの末端ユーザ市場に最適化されている。PV産業界に必要なのは、これまでの主流のEG‐Siプロセスよりも簡単で、経済的で、制御するのに安全なプロセスである。
【0004】
特許文献1及び2において、ワン(Wang)らは、PV‐シリコン及びEG‐シリコンの製造のための3段階プロセスを開示している。第1の段階では、不純な冶金品位のシリコン(MG‐Si)を、四ヨウ化シリコンSiIの生成に有利な温度(T<900℃)でヨウ素と反応させる。そして、このようにして十分なSiIが製造され、貯蔵タンクを満たす。必要量のSiIが製造されたら、次に温度が1200℃より高温に高められた最初の反応装置の段階へリサイクルされ、SiIをMG‐Siと反応させて相当量の不安定二ヨウ化シリコン蒸気化合物SiIを製造する。SiIは、自然対流によって「低温壁」反応装置の低温領域へ輸送され、固体基板上で分解し、多結晶シリコンとして析出する。固体基板は、不活性又は高純度シリコンロッドであってよい。
【0005】
しかし、この発明及び従来技術における他の発明の教示に関しては複数の問題が存在し、これらの問題が一緒になって、拡張性があり、経済的なPV‐シリコン及びEG‐シリコンの製造方法の実現を妨げている。これらの欠点を以下に詳しく記す。
【0006】
1.ワンらによって開示されている発明の方法及び装置にとって、シリコンの反応及び析出のための「低温壁」槽の使用は非常に重要である。しかし、これは3つの要因によって、シリコン析出の空間分布の制御を悪化させる。すなわち、1)シリコンを生成させるSiI分解反応は温度の関数であり、2)SiIは固体基板の要件が満たされなくても容易に分解して気相中で固体シリコンを生成し、3)反応装置のSiI生成区域(すなわちT〜1200℃)と壁区域(すなわちT=200〜700℃)との間の温度勾配が少なくとも500℃である。さらに、SiIで飽和した生成物蒸気が反応装置の底部で形成されると、この蒸気の一部が低温の壁の方へ移動し、それによって気相内の微細なシリコン粉体の核形成への熱力学的推進力を作り出す。シリコン粉体の量は、任意の所定の時点で製造される全シリコンの10〜50%のどこかであってよい。このシリコン粉体は均一に製造され、液体四ヨウ化シリコンSiIの流れがバッチ蒸留塔の中へ注入されるときに随伴されることになる。随伴されたシリコン微粉の分離のための設備がないので、蒸留塔動作性能は低下し、プロセスは頻繁な清掃のためにシャットダウンされる必要があり、それによってプロセスの実行性が低下する。また、こうして製造されたシリコンは非常に微細であり、末端ユーザのインゴット及びウエハ製造業者の施設における周囲条件で空気によって酸化される傾向があるため、使用できない形態になることがある。要約すると、上述した3つの要因の相互作用の結果、販売には不適であると同時にプロセスから除去するのが困難であり、それによってワンらの経済的実現性を低下させる、相当量のシリコン生成物が製造される。
【0007】
2.MG‐Si中の不純物の重量の半分を超える量は、通常、Fe原子からなる。Feは低温壁チャンバの下方部分の中で約1250℃の温度でSiIと反応してFeI蒸気を形成するが、低温壁の近くで蒸気温度が700〜800℃へ低下すると、Feは固体FeSiへ変化する。低温壁反応装置の中の不十分な温度制御によって、四ヨウ化シリコンの液体の流れが蒸留装置へ向かうときに、Fe原子の大部分がその中に固体として随伴されることになる可能性が高い。
【0008】
再び、気相シリコン生成の場合と同じく、これらの不純物は、リサイクルの流れを汚染すること、及び蒸留塔内部の閉塞によって、蒸留塔の動作に影響を及ぼす。ワンらの教示は、これらの不純物の除去に対応していないので、これらの不純物はプロセス中に蓄積される傾向にあり、低温壁反応装置へリサイクルされて戻り、そこで全体的な精製効率をかなり低下させる。
【0009】
3.低温壁反応装置は、自然対流駆動システムとして動作する。これは、反応装置の最上部領域の近くに位置する蒸気雲の形成をもたらす。この蒸気雲の存在が原因となって、四ヨウ化シリコン、ヨウ素、及びその他の不純物等の、蒸気雲中の他の多数の化合物からホウ素(B)及びリン(P)のヨウ化物を優先的に除去するために作られた設備がないので、反応装置の上部区間でのこれらの元素の選択的な除去は起らない。また、反応装置のこの区間から不作為に除去されたいかなるシリコン元素又はシリコンヨウ化物は、ワンらの教示によっては再生できない。
【0010】
4.ワンらは、原料SiIの流れを底部区間に導入して、バッチモードで動作する蒸留塔の中で四ヨウ化シリコンを精製するための方法及び装置を教示している。この型のシステムは、「還流なしバッチ蒸留」と呼ばれる。この動作モードでは、精製のレベルは一般にあまり良好でなく、プロセスがリサイクルループ中で有効であるために必要な10,000対1以上のSiI中の不純物減少レベルを満たすことはもちろんできない。さらに、立ち上げ及びシャットダウン動作に伴う高いコストのため、バッチ蒸留の大規模な使用は一般に実際的でない。
【0011】
5.プロセスに加えられるヨウ素原料は、通常MG‐Siより高価である。したがって、プロセス内のヨウ素の使用を最小限にし、不純物排出の流れからヨウ素を回収する必要性は、経済的で拡張可能なプロセスを保証する重要な部分である。ワンらの方法及び装置は、生成した固体及び液体のヨウ化物(例えばFeI及びAlI)からヨウ素をどのように回収するか教示していない。さらに、ワンらは、プロセス内のヨウ素の使用をどのように最小限にして、商業プラントの初期資本コスト及び運転コストを最小限にするか示していない。
【0012】
6.ワンらの方法及び装置は、第2の動作段階が開始され、四ヨウ化シリコンが低温壁反応装置の中へリサイクルされれば、システム中に遊離ヨウ素(すなわちI又はI)は残されていないと仮定している。しかし、熱力学計算によると、1100〜1300℃の間で、反応装置底部の中の固体SiとSiI蒸気との間の反応によって、下記化学量論を有する以下の化合物が作り出されることは明らかである。
【化1】

塔の頂部に還流設備がないので、この蒸留塔設計は、遊離ヨウ素の存在を考慮することを省略し、この高価な原料を凝縮させ、精製し、リサイクルさせる必要性を無視している。
【0013】
7.商業プロセスにおいて、ヨウ素原料は、除去する必要がある不純物を含んでいる。ヨウ素の源がカリーチ鉱床なら、これらの不純物は一般に水、不揮発性固体及び塩化物‐臭化物化合物である。ワンらにはこれらの不純物を除去する手段が開示されていない。
【0014】
8.ワンらは、EG‐Siを製造するための経済的な方法を提供していない。例えば、彼らの教示によって提供される実験結果は、精製されたSiIのリサイクルのない場合に、B及びPについて、それぞれ4及び7ppm原子の純度レベルを示している。B及びPのレベルをパーツパービリヨン(ppb)であるEG‐Si規格にまで減少させるには、100〜1,000の範囲の、原料MG‐Siに対するSiIのリサイクル比が必要になる。この量のリサイクル動作は、商業システム中では実行不可能なほど高価である。したがって、SiIリサイクル比及び蒸留塔のサイズを大幅に小さくして、この化学法を既に考察した競合するトリクロロシラン法及びシラン法に対して経済的にする方法が必要である。
【0015】
9.「低温壁」反応装置中では、自然対流が物質輸送の主モードである。反応体を混合するこの方法は、高い生産性につながらない。この方法は、不必要に高いプラント及び装置のための資本コストをもたらすので、商業用途の化学プロセスシステムでは通常回避される。
【0016】
10.CIより高い沸点を有するバッチ蒸留塔中の液体ヨウ化物不純物を除去する手段がない。
【0017】
要するに、上記発明中の欠点によって、商業規模で精製されたシリコンを経済的に製造することは非常に難しい。
【0018】
他の関連技術は、モーツ(Moates)らの特許文献3、ヘリック(Herrick)の特許文献4、ジェイン(Jain)の特許文献5及びワン(Wang)らの特許文献6を含む。
【0019】
関連刊行物は、非特許文献1、2、3、4、5及び6を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第6,712,908号
【特許文献2】米国特許第6,468,886号
【特許文献3】米国特許第3,006,737号
【特許文献4】米国特許第3,020,129号
【特許文献5】米国特許第4,910,163号
【特許文献6】米国特許第6,281,098号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】ヘリック(Herrick, C.S.)ら、”High-purity Silicon from an Iodide Process Pilot Plant,” J. Electrochem. Soc., Vol.107, No.2, 111-117 (1960)
【非特許文献2】グラング(Glang, R.)ら、”Silicon”, in The Art and Science of Growing Crystals, John Wiley and Sons, New York, 1963, 80-87
【非特許文献3】ゼクリー(Szekely, G.)、”Preparation of Pure Silicon by Hydrogen Reduction of Silicon Tetraiodide,” J. Electrochem. Soc., Vol.104, No.11, 663-667 (1957)
【非特許文献4】リットン(Litton, F. B.)ら、”High Purity Silicon,” J. Electrochem. Soc., Vol.101, No.6, 287-292 (1954)
【非特許文献5】グラング(Glang R.)ら、”Impurity Introduction during Epitaxial Growth of Silicon,” IBM Journal, Jul., 299-301 (1960)
【非特許文献6】イレル(Hillel, R.)ら、”Stabilite Thermique et Proprietes Thermodynamiques des Iodures de Phosphore a l'etat Condense et Gaseux,” J. Chimie Physique, Vol.73, No.9-10, 845-848 (1976)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
したがって、本発明は、多くの商業用途のためのシリコンをさまざまな原料から製造するか、又は精製するための方法及びシステムを提供する。本発明は、さらに、冶金品位又は化学品位のシリコン(通常98〜99.5%純度のシリコン)等の不純なシリコン源から、PV品位及びEG品位のシリコンを製造するための、商業製造能力(すなわち年産500〜5,000トン)まで規模拡大可能なプロセスを提供する。
【0023】
本発明の別の態様は、ストリングリボン電池又は球状電池を用いる先進的PV製造業者の連続プロセスにおける利用に有用な、純シリコン粒を析出させる経済的な高スループット方法も提供する。
【0024】
本発明は、純粒状シリコン原料を製造する装置も提供する。
【0025】
本発明のいくつかの実施態様は、不純なシリコンと、精製されたリサイクルSiI及びIを含む流れとを、第1の装置(2段階流動床反応装置システム)の中へ連続的に供給することによって純粒状シリコン原料を製造する方法を提供する。第1の流動床は、反応装置の体積の全体にわたって一定の温度に維持されたシリカ等の不活性な固体材料を含んでよい。そこから、SiI、SiI、I、Iの蒸気、及びMG‐Si中に含まれる不純物元素のヨウ化物の蒸気を含む蒸気混合物と、未反応MG‐Siを含む随伴固体微粉とが放出される。この蒸気/固体混合物は、温度をほとんど低下させずにサイクロンなどの分離槽の中へ移送され、そこで固相と気相は基本的に分離され、その結果、不純シリコンを含む随伴微粉の大部分が回収され、残る気相は、実質的に低い温度に維持され、最初にある程度の純シリコン種晶粒子を懸濁させて含む流動床へ導かれ、そこでSiIが蒸気相中で反応して純固体シリコン核を作り出すとともに、純固体シリコン種晶粒子上で反応して薄膜を形成する。
【0026】
種晶粒子シリコン生成に対する気相シリコン生成の比率は、流動床温度、蒸気組成及び種晶粒子の量を変化させることによって制御することができる。こうすると、流動床種晶粒子は時間とともにサイズが大きくなり、気相中で新しいシリコン核が形成されて流動床を補充する。第2の流動床の高表面積によって、シリコンの高い生産速度及び商業生産のための規模変更可能な方法が可能になる。流動床の中の温度の優れた制御によって、プロセス全体の制御可能性及び最適化がさらに促進される。
【0027】
第2の流動床反応装置から出てくる蒸気の流れは、主としてSiI、I、I及びSiIの蒸気、MG‐Siの元素不純物のヨウ化物の蒸気、及び蒸気相析出反応の間に形成された随伴純シリコン核を含む。この蒸気/固体混合物は、第2の流動床の下流の気相中の余分なシリコン核形成を最小限にするように、第2の流動床より若干低い温度に保持されたサイクロンなどの固体/気体分離装置へ移送される。純シリコン核はサイクロンの中で捕集され、次に流動床へ戻されてさらに別のシリコン析出のための種晶粒子として働く。第2の流動床の中の純シリコン粒はプロセスから取り出し、販売してもよく、又は別の二相流動床反応装置システムが前述した反応/析出プロセスを繰り返す第2の装置の中のさらに別の精製工程へ移送してもよい。
【0028】
こうすると、結果として得られるシリコン粒の純度は、粒状シリコン生成物中のn‐型及びp‐型不純物の組成を変化させる1つ以上の装置を用いて調整することができる。第2の装置の析出流動床は、第1の装置から入って来るシリコン粒より10〜100倍高いシリコン純度範囲を有する。さらに別の装置の中でこのプロセスをさらに繰り返してよいが、通常は、経済性によって装置の最大数が決まることになる。
【0029】
第1の装置の中の気体/固体分離装置から出て来る蒸気の流れは、次に熱交換器ネットワークによって、FeSiなどの固体を捕集するために700〜800℃の間の温度へ急速に冷却され、次に、高温気体フィルタシステムへ移送される。高温気体フィルタシステムは、気体の流れの中のこれらの固体及び他の固体を除去する。
【0030】
蒸気混合物の残りは別の熱交換器システムへ導かれ、そこで温度をさらに200〜300℃の間へ下げられ、それによって蒸気の一部が凝縮され、次にこの液体/蒸気混合物は連続分別蒸留塔の中へ、塔の長さの中間点の近く及び塔の下部の近くの2つの位置で導入される。蒸留塔の中の液体及び蒸気の組成は大部分SiIである。このプロセスでは、ヨウ素補充分が必要なので、分別蒸留塔の中の塔の上部区間に近いところへ比較的純粋なヨウ素蒸気/液体の流れが導入され、塔内でさらに精製される。蒸留塔の中で、生成物及びそれらの取り出し位置は以下の通りである。すなわち、底部区域の近くで高沸点ヨウ化物(すなわちAlI、TiI、CI及びPI)が取り出され、中央区域の近くでSiIが取り出され、上部区域の近くで低沸点化合物(すなわちBI)が抜き出され、頂部では精製されたヨウ素が取り出されて塔への還流として働き、それによって定常状態動作を提供する。このようにして製造された純ヨウ素の液体及びSiIは、液体/固体フィルタへ移送され、液体/固体フィルタは、蒸留塔の中へ随伴されたか又は蒸留塔内で形成された微粒子をすべて除去する。ヨウ素及びSiIを含むろ過された液体の流れの一部は、次に第1の装置の流動床反応装置へリサイクルして戻され、最終シリコン純度目標のために必要なら、一部はシリコンのさらなる精製を支援するような比率で、第2の装置の二相流動床反応装置へ導かれる。プロセス全体は、通常100kPa絶対圧より若干高い圧力で動作するが、蒸留塔は真空条件下で動作させてもよい。
【0031】
第1の装置又は第2の装置の一方の中で回収された不純物ヨウ化物(例えば固体FeI、液体AlI及び液体PI)は、液体/固体スラリーの中ですべて一緒に混合され、酸素を含む乾燥雰囲気中で400〜900℃に加熱された反応装置の中へ連続的に注入される。これらの条件下で、不純物元素のほとんどの酸化物は、対応するヨウ化物より安定であり、したがって90〜95パーセントの変換効率でヨウ素を蒸気として放出させる。ヨウ素を含む気体の流れは、次にヨウ素の融点より低い温度へ段階的に冷却され、結果として得られる純液体ヨウ素は、蒸留塔の上流の純ヨウ素原料の流れへリサイクルされる。こうすると、ポリシリコン製造プロセスへ供給されるヨウ素のほとんどが回収され、再使用される。
【0032】
以下の記載及び添付の図面によって考慮すれば、本発明のその他の目的及び利点はさらに明らかとなり理解される。以下の記載は、本発明の特定の実施態様を記載する特定の詳細を含むことがあるが、これは本発明の範囲に対する限定ではなく、好ましい実施態様の例を示すものと解釈するべきである。本発明のそれぞれの態様について、本明細書中に示唆されるように当業者に既知の多数の変化形が可能である。本発明の技術思想から逸脱することなく本発明の範囲内でさまざまな変化形及び変更形を実施することができる。
【0033】
(参照による組込み)
本明細書中で言及されるすべての刊行物及び特許出願は、それぞれの個別の刊行物又は特許出願が参照によって組み込まれると特異的に個別に示されたと同じ程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0034】
添付の図面は、本明細書中に組み込まれ本明細書の一部を形成するが、本発明の好ましい実施態様の例を示し、明細書の記載と一緒に本発明の原理を説明する役を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】PVシリコン及びEGシリコンの商業生産のための材料の流れの例を示す装置の概略線図である。
【図2】図1に記載のプロセスの廃棄物の流れからのヨウ素の回収のための材料の流れの例を示す装置の概略線図である。
【図3】二連反応チャンバを有する統合化シリコン精製又は析出システムの線図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、調整されたレベルのn‐型不純物及びp‐型不純物を含む1つ以上のポリシリコン原料生成物を発生させるための方法及び装置を提供する。本明細書に開示されるプロセス及び装置によって、高いスループット及び低いコストで可変品位のシリコンを製造することができる。
【0037】
一般的に図1を参照すると、不純なシリコン原料が、配管11を通って装置1の中の第1の流動床10の高密度相の中へ導入される。流動床10は二相流動床システムである。リサイクルされた液体SiI及びヨウ素を含む液体混合物52が蒸発し、アルゴンなどの不活性ガス10aの補助を受けるか、又は受けないで、流動床10の底部部分を通って装置1の中へ圧送される。不純なシリコン原料に対するリサイクルされた液体の比は、モル基準で通常約20:1を超えない。
【0038】
流動床10は、その体積全体にわたって、1200〜1350℃の範囲の一定の温度に維持される。流動床10は、適切な混合挙動を促進し、リサイクル液体52に対するMg‐Siの比も調節するために、高純度石英などの不活性粒子を含んでよい。装置1及び2の中の流動床10、20、60、70のための反応装置又は槽を含む、本発明によって提供される反応装置又は槽は、構造的な強度を可能にする外部金属合金シェルと、内部に含まれるハロゲン含有蒸気による高温腐食に対して抵抗性の床粒子に露出される内部セラミックシェルとで通常は構成される構築材料で作ることができると理解されよう。
【0039】
不純なシリコン原料は、主としてシリコンを含むが、ホウ素及びリンなどのp‐型不純物及びn‐型不純物も含み、広い範囲の金属元素及び非金属元素を含んでよい。石英粒子は、適切なサイズとし、通常は高密度相の中へとどまり、蒸気とほとんど反応しない。流動床10の中の不純なシリコン原料粒子は、ヨウ素及びSiIの蒸気と反応し、主としてSiI、SiI、I、SiIの蒸気化学種と、不純物元素の一部のヨウ化蒸気とを作り出す。この蒸気の流れは、流動床10の高密度相の中から、等温条件下の配管13を通ってサイクロン分離装置などの分離装置14へ輸送される。不純なシリコンが反応するにつれて、その粒子サイズ及び質量は減少し、残りの小さな粒子を流動媒体が分離装置14の中へ輸送するのに十分な運動量を有する点に達する。小さな粒子は、配管16を通ってプロセスから除去される。通常、分離装置14は、直径が1マイクロメートル以下の小さな粒子まで除去することができる。不作為に流動床から飛来した大型粒子は微粉から分離され、配管12を通って流動床10へ戻ることができる。
【0040】
こうして、本発明による以降のプロセス処理のために、粒子が除去されて減った蒸気の流れを分離することができる。こうして形成された、好ましくは粉体を含まない蒸気が分離装置から出され、配管15を通って熱交換器25へ輸送される。熱交換器25は、短い距離で温度を数100度低下させる。このようにして蒸気が冷却されると、シリコンが気相中で非常に小さな核として、又は熱交換器表面上で薄膜として、析出する傾向にある。熱交換器内の短い滞留時間及び流れパターンは、これらの傾向を実質的に最小限にする。こうして形成され冷却された蒸気は、次に配管24を通って、第2の流動床20の下部区間の中へ供給される。第2の流動床20は、800〜1000℃の範囲の一定の温度に維持されている。あるいは、熱交換器25は、第2の流動床20の中の分流板の直ぐ上流に配置してよい。第2の流動床20は、シェルの上又は高密度相の中に熱交換ジャケットを含むさらに別の代案が提案される。この場合、固体粒子を含まない蒸気15は、第2の流動床20の高密度相へ入り、その後低い温度にある粒子の塊によって冷却されるまで、第1の流動床10の動作温度に保持される。
【0041】
第2の流動床20は、プロセスの立ち上げ期の間に、高純度シリコンの初期種晶粒子を有する高密度相を含んでよい。流動床20は、2つの異なる相、すなわち蒸気の中に浸っている良好に混合された懸濁粒子を含む高密度相と、ほとんど垂直の方向に上方へ移動する蒸気の泡を含む第2の相と、みなしてよい。気泡形成の利点は並外れて高い固体の混合速度を提供し、床の体積全体にわたって一様な温度をもたらすことである。不利益は、気泡によって蒸気が反応区域を素通りし、生産性が全体として低下することである。この場合、気泡の中に閉じ込められた蒸気は主として気相中のシリコンを作り出す傾向にあり、高密度相の中の蒸気はシリコンを粒子上の薄膜として析出させる傾向にある。したがって、高密度相粒子はプロセスの間に成長するが、蒸気相内のSiIの均一気相反応によって新しいシリコン粒子核が追加される。この挙動のため、流動床20の動作の間に新しい高純度種晶シリコン粒子を加える必要は通常ない。高密度相シリコン粒子が大型サイズに達すると、これらを流動床20から配管22を通して取り出すことが有用になる。これらの粒子は、販売する23か、又は配管21を通して装置2の中の流動床70へ導いて、既に記載したものと同様な第2の精製系列のための出発原料として役立たせることができる。
【0042】
流動床20の気相中で形成されたシリコン核のあるものは、配管29を通って輸送され、サイクロンなどの分離装置27へ入り、そこで蒸気から分離され、分離装置を通って出され、配管26を通って流動床へ戻される。分離装置27は、約800℃より低い温度に保持され、流動床20の下流の残留シリコンの生成を最小限にする。
【0043】
分離装置27から出る蒸気は、配管28を通って熱交換器32へ輸送される。熱交換器32は、蒸気温度を500〜700℃へ低下させる。次に、蒸気は、配管31を通って高温フィルタ30へ流れる。高温フィルタ30は、FeSi及び高融点ヨウ化物などの不純物の微粒子をフィルターケーキとして捕捉する。不純物は、フィルタ30から定期的に取り出され、槽33の中に集められる。
【0044】
フィルタを通過した蒸気は、配管34を通って熱交換器35へ移送される。熱交換器35は、蒸気の温度を200〜300℃の間に低下させてSiIを凝縮させる。結果として得られた蒸気‐液体混合物は2つの流れに分割され、材料の一部は配管36を通って連続トレイ‐塔蒸留塔40の中央区間の中へ圧送され、材料の一部は配管36aを通ってリボイラ区間46の中へ圧送される。市販品位のヨウ素原料又は廃棄物回収プロセス(図2に示すような)からのリサイクルヨウ素が気化され、配管81及びコンデンサ80を通り、配管82を通って蒸留塔の中へ供給される。蒸留塔40の連続取り出し流れは、液体SiI(沸点288℃)44、液体ヨウ素(沸点183℃)51、及び存在するならアルゴン気体49を含む。カラムの頂部において、連続還流42は、主としてヨウ素である。ヨウ素は、還流交換器41内で中に凝縮する。プロセスの中でアルゴンなどの不活性気体が用いられるなら、それは冷却され、ヨウ素蒸気から分離され、配管49を通り、配管10a及び70aを通ってそれぞれプロセス装置1及び2へ戻される。塔の底部において、連続リボイラ46は、上昇蒸気47の温度を制御するように働く。上昇蒸気47は、主としてヨウ化アルミニウム(沸点382℃)及びヨウ化チタン(沸点377℃)などの高沸点不純物を含む。蒸留塔の動作時に、以下の塔棚段からバッチ基準である量の液体不純物が除去される。すなわち、ヨウ化ホウ素(沸点210℃)43、ヨウ化リン(沸点316℃)及びヨウ化炭素(沸点320℃)45、ヨウ化アルミニウム及び高沸点液体ヨウ化物48。これらの液体の流れは、次に図2に示される廃棄物ヨウ素回収プロセスへ送られる。還流ループからの液体ヨウ素は配管51を通って輸送され、配管44を通る精製された液体のSiIと合流し、液体‐固体フィルタ50の中でろ過されて液体中に懸濁している微粉をすべて除去される。これらの固体微粉は、不純物ヨウ化物と、気‐固フィルタ30によって捕捉されなかった他の不純物化合物、精製されたシリコン、及び原材料によってプロセスの中へ持ち込まれたか又はプロセス槽壁上の腐食作用によって作り出された他の固体汚染物質を含む。蒸留塔の下流でこれらの固体微粉を除去すると、リサイクルされた流れの中の固体がプロセス装置1及び2を汚染しないことが確実となる。フィルターケーキ53は、定期的にプロセスから取り出される。精製された液体のヨウ素とSiIとの混合物は、配管52又は54を通って、それぞれプロセスの装置1及び2へリサイクルされる。
【0045】
装置2の中で、二相流動床システムは、装置1の場合と同様に繰り返される。しかし、プロセスのこの区間の中の装置のサイズ及び材料の流量は、装置1の中のものと必ずしも同一ではない点に注意する。さらに、この装置からの精製されたシリコンは、前段の装置からの精製されたシリコンと種々の比率で組み合わされて、n‐型不純物及びp‐型不純物の最終的なシリコン生成物組成物のさらなる調整を行ってよい。
【0046】
流動床20の温度下の精製されたシリコン粒子は、スクリューフィーダー又は他の機械的な手段によって、流動床70の高密度相の中へ連続的に供給される。この高密度相は、1200〜1350℃の温度に保持されている。液体SiIとヨウ素とのリサイクルされた混合物が加熱され、配管54を通って流動床の底部の中へ導入される。プロセスの中で必要なら、不活性気体流70aも提供されてよい。装置1におけると同じく、配管21を通る精製されたシリコン原料に対する配管54を通るリサイクルされた液体の比は、モル濃度基準で通常約20:1を超えない。流動床70は、体積全体にわたって1200〜1350℃の範囲の一定の温度に維持され、高純度石英などの不活性粒子を含んでよい。金属元素及び他の非金属元素のほとんどは既に概要を示したプロセス工程によって除去されるので、流動床70の中の精製されたシリコン粒子は、ヨウ素及びSiIの蒸気と反応して主としてSiI、SiI、I、SiIの蒸気化学種と、主としてB、P及び炭素のヨウ化物不純物の蒸気とを作り出す。この蒸気の流れは、流動床70の高密度相の中から等温条件下で配管74を通って分離装置72へ輸送される。既に精製されたシリコン粒子が反応すると、粒子サイズ及び質量は小さくなり、流動化媒体が残りの小さな粒子をサイクロン72の中へ輸送するのに十分な運動量を有する点に達する。小さな粒子は、サイクロン72から捕集され、配管71を通って流動床70へ戻される。除去するには小さすぎる既に精製されたシリコンの粒子は、分離装置72からの蒸気とともに配管73を通って熱交換器62の中へ輸送されることになる。熱交換器62は、温度を短い距離で数100°低下させる。これらの粒子は、最後は流動床60の中で種晶粒子となる。この蒸気/固体混合物がこのように冷却されるとき、シリコンが気相中で非常に小さな核として析出するか又は熱交換器表面上の薄膜及び精製されたシリコンの随伴粒子として析出する傾向にある。熱交換器内の短い滞留時間及び流れパターンは、これらの傾向を実質的に最小限にする。あるいは、熱交換器62は、第2の流動床60内の分流板の直ぐ上流に配置してよい。こうして形成された冷却された蒸気は、次に配管61を通って第2の流動床60の下部区間の中へ供給される。第2の流動床60の下部区間は、800〜1000℃の範囲の一定の温度に維持されている。既に示したように、この温度低下は、ジャケット上に又は高密度相内に冷却媒が供給されるなら流動床60の中で起ってもよい。流動床60の高密度相は、プロセスの立ち上げ期には高純度シリコンの種晶粒子を含むが、既に記載した理由によって動作時には通常いかなる補充も必要としない。高密度相シリコン粒子が大型サイズに達すると、配管63を通してこれらを流動床60から除去することが有用になる。これらの粒子は、高純度シリコンとして販売してもよく、又はさらに高純度の生成物の生産のために第3の装置以降へ導いてもよい。
【0047】
流動床60の気相中で形成されるシリコン核の一部は配管66を通って輸送され、分離装置65へ入り、そこで蒸気から分離され、配管67を通って流動床へ戻される。分離装置65は、約800℃未満の温度に保持されて流動床60の下流の残留シリコン形成をすべて最小限にする。分離装置65から出る蒸気は、配管64を通って熱交換器32へ輸送され、したがって先述した前のプロセス工程へ再び入る。
【0048】
図2は、図1の廃棄物の流れからのヨウ素の回収のためのプロセスの流れ図を示す。このプロセスのスループットは、既に記載したプロセスのスループットの通常約1/100でしかなく、MG‐Si中の不純物の量ならびに最終的に廃棄物の流れの中に来る装置腐食生成物の量とともに変化する点に注意すべきである。
【0049】
図1の蒸留塔40からの液体の流れ43、45、48が個別に又は一緒に配管11を通って200〜300℃の間の温度にある撹拌槽10へ供給される。図1に記載のプロセスからのフィルターケーキ固体の流れ33、53が個別に又は一緒に配管12を通って混合槽10の中へ供給される。流れ11と流れ12との相対的な比率は、汚染物組成、特にホウ素、リン、鉛、ヒ素及び水銀のレベルによって変化する。これらの特定の不純物の含有率が適切なヨウ素回収率を実現するには高すぎる場合、不純物を含む特定の流れを、これから記載されるように個別にプロセス処理する。
【0050】
液体‐固体混合物は、配管13を通ってヒータ30へ移送される。ヒータ30は、流れの温度を約400℃へ上昇させる。次に、加熱されたスラリーは、配管31を通って、シリカなどの不活性粒子を含み、約1000kPa未満の絶対圧で動作している流動床反応装置50の下部区間の中へ噴霧される。流動床50は、配管31内の流れの中の不純物元素の組成に応じて400〜900℃の範囲の温度に維持される。配管21を通ってシリカゲル又は他の吸収媒を含む塔の中へ酸素含有気体が供給される。シリカゲル又は他の吸収媒は、水分含有量を数パーツパーミリヨンまで低下させる。この工程は、リサイクルされたヨウ素とともに顕著な量の水が、図1のプロセスへ入る可能性を減らすのに有効である。乾燥された酸素含有気体は、次に配管22を通ってガス燃焼ヒータ40の中へ圧送される。ヒータ40は、流れ41の温度を500〜900℃へ上昇させ、流れ41は、次に不活性粒子の適切な混合を提供するのに十分な速度で、流動床50の底部区間の中へ導入される。
【0051】
流動床50の中で、気体の流れ41の中の酸素は、流れ31の中に含まれる固体及び液体不純物ヨウ化物と反応して固体酸化物と、I及びIを含む蒸気とを作り出す。不純物ヨウ化物の95重量%を超える量がこのようにして反応する。化学量論過剰量の酸素を含む雰囲気の中700℃で完全に回収される重要な元素の安定な固体酸化物は以下の通り、すなわちFe、Al、VO、TiO、CaO、NiO、Mn、Cr、MgO、ZrO、CuO、CdO、SnO、Bi、SbO、SrO、TeO、In、Co及びGaである。これらの不純物元素の固体酸化物は、流動床の中でシリカ粒子表面上又は気相中で作り出される。ホウ素の酸化物B及びヒ素の酸化物Asは、温度がそれぞれ約450℃及び600℃より高いか又は低いかに応じて流動床中で固体であっても液体であってよい。液体酸化物の存在によって脱流動化が起こる場合には、2段階酸化が適切であるか、又は流動床50を高速流動化領域で動作させてこの潜在的問題を効果的に取り除いてよい。
【0052】
酸化物がシリカ粒子上で形成されるなら、これらの粒子は、時間とともにサイズが大きくなり、最終的に配管53を通して流動床から取り出される。同様に、気相中で形成される酸化物の核が流動床中に懸濁されてとどまるのに十分大きければ、それらも時間とともに成長し、最終的に配管53を通って取り出されることになる。しかし、気相酸化物の一部は小さすぎ、したがって、流動床10から飛散し、分離装置51へ入り、そこで粒子又は液滴を形成する。粒子又は液滴は、流れ54の中で気体から分離することができる。分離装置51へ入るホウ素及びヒ素の液体酸化物は、低い動作温度によって固体へ変換されると考えられる。
【0053】
300〜400℃の温度にある粒子を含まない蒸気の流れは、分離装置51から出され、配管52を通って1つ以上の熱交換器60の中へ導かれる。熱交換器60は、蒸気の流れの温度を出口において約200℃へ低下させる。次に、蒸気は、配管61を通ってコンデンサ70へ移送される。コンデンサ70は、蒸気の温度をヨウ素の融点(すなわち113℃)より若干高温にする。コンデンサの中で、ヨウ素蒸気は、コンデンサ70の入口の近くにおいて約183℃で凝縮し始める。コンデンサの長さに沿って、純ヨウ素蒸気の分圧は、入口における760mmHgから出口の近くにおける約80mmHgまで低下させられる。このようにして、コンデンサ70へ入って来るヨウ素の約80〜90重量%が液体形へ変換される。凝縮した液体ヨウ素は、次に配管71を通って液体‐固体フィルタ72の中へ圧送される。液体‐固体フィルタ72は、サイクロン51によって捕集されなかった残留微粒子をすべて除去する。さらに、フィルタ72は、リン酸化物((P)も除去する。この固体は、コンデンサ70の中で同じ組成の蒸気から約200℃で形成される。フィルタ72の中で作り出されたフィルターケーキは、配管73を通って取り出される。ろ液ヨウ素は、図1に示した精製されたヨウ素原料へ送られる。
【0054】
コンデンサ70からの蒸気の流れは、次に配管74を通って冷却水熱交換器80の中へ圧送され、配管81を通って冷却器90の中へ圧送され、続いて配管91を通って約10℃より低い温度で動作するろ布フィルタ100の中へ輸送される。これらのプロセス工程の間に、ヨウ素蒸気は固体形へ変換され、フィルターケーキとして回収される。フィルターケーキは、図1のプロセスの中の精製されたヨウ素原料へリサイクルされる。これらの温度における気体の流れの中の純ヨウ素の分圧は、約0.1mmHg未満まで低くなるので、こうすれば残っているヨウ素の大部分が回収される。酸素及び少量のCOを含むろ布を通過した気体の流れは、次に配管101を通って分流器へ移送される。分流器から、気体の一部は102を通ってヨウ素回収プロセスの流れ21へリサイクルされ、気体の一部は周囲環境中へ放出される。
【0055】
図3は、1つ以上のシリコンプロセス用モジュールの系列を提供する本発明の別の態様の例を示す。モジュールは、特定の用途に応じて、シリコン精製、シリコン析出、又は他のシリコンプロセス用に構成してよい。本発明の好ましい実施態様は、二連の反応チャンバを有するシリコンプロセス用モジュールを提供する。例えば、ヨウ化シリコン蒸気生成物を発生させるために、反応チャンバ#1を温度調節し、第1の温度範囲で動作させてよい。このチャンバは、本明細書の他の箇所に記載されている不純なシリコン原料、不活性気体/固体材料、及びヨウ素又はシリコンヨウ化物蒸気混合物などのシリコンプロセス用材料の1つ以上のさまざまな供給体又は原料を受け入れてよい。本発明の好ましい実施態様では、各チャンバは、2つの役割すなわち、本発明の別の態様によるシリコンと不活性材料との流動床を有するシリコン反応装置と、シリコンヨウ化物蒸気生成物を分離するための分離装置(サイクロン分離装置など)とを果す装置を組み込んでよい。本発明の代わりの実施態様では、それぞれの役割は、一連の熱的に制御され、流体連結された反応装置及び分離装置(図1参照)などの個別の装置の中で実行されてよい。反応チャンバ#1の中で作り出されたシリコンヨウ化物蒸気生成物は、温度調節装置を通って、第2の温度範囲内で動作する反応チャンバ#2へ流れてよい。本発明によると、したがって、反応チャンバ#2内にシリコン種晶粒子が存在しても存在しなくても、反応チャンバ間の温度勾配の結果として、選ばれたレベルの純度を有する固体のシリコン生成物が形成されてよい。温度調節装置は、所望の中間温度範囲を作り出すか又は維持するための任意の装置であってよい。本発明の好ましい実施態様は、第1の温度調節された槽と第2の温度調節された槽との間に配置されて両者の間に選択可能な温度勾配を提供し、固体シリコン生成物の形成を促進する熱交換器を含む。好ましい実施態様では、シリコンヨウ化物蒸気生成物は、比較的低い温度に維持されている反応チャンバ#2内の流動床へ移送されてよい。この流動床は、少なくともいくらかの純シリコン種晶粒子を懸濁させて含んでよい。したがって、SiIなどのシリコンヨウ化物蒸気生成物は、蒸気相の中で反応して純固体シリコン生成物を作り出してもよく、種晶粒子上で反応して薄膜を形成してもよい。この薄膜は、反応チャンバ#2から取り出してよい。シリコン粒子が大型サイズに達したら、市販の最終生成物そのものとして取り出してもよく、あるいは、別のプロセス又は精製系列のための出発原料又はシステム入力として用いられてよい。別のプロセス又は精製系列は、別の連続するシリコンプロセス用モジュールの中で、上記に記載のように繰り返してよい。本明細書中の本発明の他の実施態様の場合と同じく、例を示したシリコンプロセス用モジュールは、直列につないでよい。シリコンヨウ化物蒸気及び/又は他の原料を連続するモジュールの中へ渡すことによって、さらに別のプロセス又は精製を実現させてよい。
【0056】
以上の記載は、本発明の主題の例を示すにすぎないとみなされる。さらに、当業者は多数の変更形及び変化形を思い付くことになるので、本発明を示され記載された構築物及び動作そのものに限定する意図はなく、したがって、すべての適切な変更形及び均等物は、以下の請求項によって定義される本発明の範囲内に属するものとする。
【符号の説明】
【0057】
10 流動床反応装置
10a 配管(不活性ガス)
11 配管
12 配管
13 配管
14 分離装置(サイクロン)
15 配管(蒸気)
16 配管
20 流動床析出装置
21 配管
22 配管
23 配管
24 配管
25 熱交換器
26 配管
27 分離装置(サイクロン)
28 配管
29 配管
30 高温フィルタ
31 配管
32 熱交換器
33 槽(フィルターケーキ)
34 配管
35 熱交換器
36 配管
36a 配管
40 棚段‐塔蒸留塔
41 熱交換器
42 配管(還流)
43 配管(ヨウ化ホウ素)
44 配管(液体SiI
45 配管(ヨウ化リン、ヨウ化炭素)
46 リボイラ
47 配管(蒸気)
48 配管(ヨウ化アルミニウム、高沸点液体ヨウ化物)
49 配管(アルゴン気体)
50 固体‐液体フィルタ
51 配管(液体ヨウ素)
52 配管(液体混合物)
53 槽(フィルターケーキ))
54 配管(液体混合物)
60 流動床析出装置
61 配管
62 熱交換器
63 槽
64 配管
65 分離装置(サイクロン)
66 配管
67 配管
70 流動床反応装置
70a 配管(不活性気体))
71 配管
72 分離装置(サイクロン)
73 配管
74 配管
80 コンデンサ
81 配管
82 配管
10 撹拌槽
11 配管
12 配管
13 配管
20
21 配管
22 配管
30 ヒータ
31 配管
40 燃焼ヒータ
41 配管
50 流動床反応装置
51 分離装置(サイクロン)
52 配管
53 配管
54 配管
60 熱交換器
61 配管
70 コンデンサ
71 配管
72 液体‐固体フィルタ
73 配管(フィルターケーキ)
74 配管
80 熱交換器
81 配管
90 冷却器
91 配管
100 ろ布フィルタ
101 配管
102 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンを精製する方法であって、
(a)不純な固体シリコン原料と、精製されたリサイクルシリコンを含む蒸気とを第1の流動床反応装置の中へ供給する工程、
(b)過剰の不純な固体シリコンと蒸気混合物とを含む生成物を、前記第1の流動床反応装置から取り出す工程、
(c)前記生成物を固‐気分離装置の中へ移送する工程、
(d)前記生成物を分離された固体と分離された蒸気とに分離する工程、
(e)前記分離された固体の微粉部分を前記固‐気分離装置から取り出し、前記分離された固体の粗粒部分を前記第1の流動床反応装置へ戻す工程、
(f)前記分離された蒸気を第2の流動床反応装置へ移送する工程、
(g)最初に純シリコン種晶粒子を前記第2の流動床反応装置へ供給する工程、及び
(h)純シリコン粒を前記第2の流動床反応装置から取り出す工程
を含む方法。
【請求項2】
前記第2の流動床反応装置は800℃から1000℃の間の温度に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の流動床反応装置は1200℃から1350℃の間の温度に維持される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記精製されたリサイクル蒸気はSIの蒸気及びIの蒸気を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記蒸気混合物はSI、SI、I、I及び前記不純な固体シリコン原料からのヨウ素含有不純物蒸気を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記固‐気分離装置は、前記第1の流動床反応装置と同様な温度に維持される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の流動床反応装置は、前記第1の流動床反応装置より実質的に低い温度に維持される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の流動床反応装置内で、前記分離された蒸気中のSIは、蒸気中にある間に反応して純粋な固体シリコンの核を形成し、前記初期シリコン種晶粒子と反応して前記種晶粒子の上に前記純シリコン粒の膜を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
SI、I、I、SI及び前記不純なシリコン原料からのヨウ素含有不純物蒸気の混合物が、前記第2の流動床反応装置から取り出される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物及び前記純シリコン粒は、第2の固‐気分離装置へ供給される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の固‐気分離装置は、前記第2の流動床反応装置より低い温度に維持されて、前記第2の流動床の下流の前記気相中のシリコン核形成を最小限にする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の固‐気分離装置からの純粋な固体シリコンの核は前記第2の流動床反応装置へ戻される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
内部空洞を有して形成された、温度制御された反応装置、及び
前記空洞内の流動床、
を含み、前記流動床は、シリコン材料と少なくとも1つの不活性材料との組み合わせによって形成されているシリコンを精製するための槽。
【請求項14】
前記不活性材料は、シリカ、アルゴン又は不活性気体の少なくとも1つである、請求項13に記載の槽。
【請求項15】
請求項13に記載の槽であって、蒸気/固体混合物を分離する分離装置も組み込まれている槽。
【請求項16】
シリコンを精製する方法であって、
初期レベルの純度を有するシリコン原料とヨウ素ベースの蒸気とを、第1の温度に設定された第1の温度調節された槽の中へ供給する工程、
前記シリコン原料を、前記ヨウ素ベースの蒸気と反応させてシリコン蒸気生成物を提供する工程、
前記シリコン蒸気生成物を、第2の温度に設定された第2の温度調節された槽の中へ移送する工程、及び
前記第2の温度調節された槽内で、前記シリコン蒸気生成物から、前記シリコン原料の前記初期レベルの純度より高いレベルの純度を有する固体シリコン生成物を形成させる工程
を含む方法。
【請求項17】
前記第1及び第2の温度制御された槽は、温度調節を支援するための流動床を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記流動床は、シリコン材料及び不活性材料で形成される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記シリコン材料はシリコン種晶粒子からなる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の温度制御された槽の温度と前記第2の温度制御された槽の温度との間に、温度勾配が存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
第2の温度制御された槽は、前記第1の温度制御された槽より実質的に低い温度に維持される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記蒸気生成物は、SI、SI、I、I、ヨウ素含有不純物蒸気、リサイクルSI、リサイクルI蒸気、又はそれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記シリコン蒸気生成物は、前記第2の温度調節された槽への移送の前に、固体‐蒸気分離装置を用いて分離される、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記シリコン蒸気生成物は、熱制御条件下で、熱交換器を通して前記第2の温度調節された槽へ移送される、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記固体シリコン生成物は、前記第2の温度調節された槽内で、シリコン種晶粒子の存在下に形成される、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
第1の温度範囲内で動作する、シリコンヨウ化物蒸気生成物を発生させるための第1の温度調節されたチャンバ、
第2の温度範囲内で動作する、前記シリコンヨウ化物蒸気生成物を受け取るための第2の温度調節されたチャンバ、及び
前記第1の温度調節されたチャンバと前記第2の温度調節されたチャンバとの間に配置された、それらの間に選択可能な温度勾配を提供して固体シリコン生成物の形成を促進するための熱交換器
を含むシリコン処理モジュール。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−501459(P2010−501459A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525713(P2009−525713)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/076303
【国際公開番号】WO2008/022348
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(509047410)イオシル エナジー コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】