説明

多結晶シリコン反応炉

【課題】ベルジャ型反応炉の内壁面への胴部の内壁面を流下したポリマーの付着を最小限に抑え、炉内の洗浄を簡略化することができる多結晶シリコン反応炉を提供する。
【解決手段】多結晶シリコン反応炉10は、シリコン芯棒20が立設される炉底40の外周部に、その炉底40の上面40aを隆起させてなる環状段部40eが設けられ、環状段部40eの上面40fと、その上面40fに重ねられて設置される胴部30の下端部30eの下面30fとの間に、これらを気密に接合するガスケット70が設けられ、胴部30の下端部30eの内周部に、環状段部40eの上面40fより下方に延びる突出部33が周方向に沿って設けられ、突出部33の半径方向外方に、環状段部40eの上面40fが配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコンを製造する際に用いられる多結晶シリコン反応炉に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体材料となる高純度の多結晶シリコンの製造方法として、シーメンス法が知られている。シーメンス法は、クロロシランと水素とを含む原料ガスを、加熱したシリコン芯棒(シード)に接触させ、その表面上での熱分解および水素還元反応によって多結晶シリコンを析出させる方法である。この方法を実施する装置として、反応炉に多数のシリコン芯棒を立設する多結晶シリコン反応炉が用いられている。
【0003】
このような多結晶シリコン反応炉においては、反応後の排ガス中には、未反応の原料ガス、シリコン粉末や副生成物である四塩化珪素、塩化水素ガスとともにポリマー等が含まれており、クロロシランポリマー等のポリマーは、空気に触れると発火したり空気中の水分により加水分解して塩化水素を発生させたりするおそれがあるため、炉内ガスの漏出を防ぐための対策がなされている。
【0004】
また、シリコン芯棒の装入や多結晶シリコンの取り出しのため、特許文献1に示すような反応炉の胴部と炉底(架台)とが分離可能に形成されたベルジャ型反応炉が採用されている。このようなベルジャ型反応炉においては、これら胴部と炉底とは炉内ガスの漏出を防止するためにガスケットを挟んで接合されているとともに、反応に伴う熱による反応炉の温度上昇を抑制するために、一般的には反応炉の胴部及び炉底は冷却されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−114815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような反応炉壁が冷却された状態で、クロロシランと水素とを含む原料ガスを導入して、高温下で多結晶シリコンを析出する場合、反応に伴いクロロシランよりも沸点の高い高沸点生成物等が副生する。
これらの高沸点生成物が上記の冷却されている炉内壁面等に接触すると、その内壁面上で凝縮され、その結果、高沸点物であるポリマーが生成される。このポリマーは、粘性をもった液状の状態をとる場合があり、反応炉の内壁面が平滑であれば内壁面上を流下して炉底に達することがあるが、内壁面上に凹凸があると、これらに遮られてポリマーが滞留して付着する。
上記のベルジャ型反応炉においては、ガスケットを介在させて胴部と炉底とが接合される構造をとるため、その接合部に凹部が形成され、炉内壁面で凝縮により生じたポリマーが流下する際に、ポリマーがこの凹部に滞留して接合部やガスケットの汚れを生じやすい。このため、反応終了後に、炉内壁面に付着したポリマーを洗浄、除去する際に手間がかかる。また、凹部に滞留したポリマーがガスケットに付着すると、反応中の高温ガスや輻射熱による熱の影響を受けて、変形、劣化しやすくなり、反応中に炉内ガスが漏出するおそれもある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ベルジャ型反応炉の胴部と炉底との接合部に形成された凹部への胴部の内壁面を流下したポリマーの滞留を防止し、炉内の洗浄を簡略化することができるとともに、ガスケットの劣化を防止することができる多結晶シリコン反応炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、加熱したシリコン芯棒の表面に原料ガスを接触させることにより多結晶シリコンを析出させる多結晶シリコン反応炉であって、前記シリコン芯棒が立設される炉底の外周部に該炉底の上面を隆起させてなる環状段部が設けられ、前記環状段部の上面と、その上面に重ねられて設置される胴部の下端部の下面との間に、これらを気密に接合するガスケットが設けられ、前記胴部の下端部の内壁面側に、前記環状段部の上面よりも下方に延びる突出部が周方向に沿って設けられ、該突出部の半径方向外方に、前記環状段部の上面が配置されていることを特徴とする。
【0009】
反応炉胴部の内壁面に凝縮により生成したポリマーが流下する際に、胴部の下端部に設けられた突出部に沿って流下する。この突出部は、炉底に胴部が接合された状態では、環状段部の上面よりも下方に延び、環状段部の半径方向内方位置で、炉底と胴部との間の接合部に形成される凹部を内側から覆うように設けられているので、胴部内壁面上のポリマーを凹部に滞留させずに炉底まで円滑に流下させることができ、ポリマーの反応炉の凹部への滞留を防止して、炉内の洗浄を簡略化することができる。また、この突出部により、反応炉内の高温ガスが炉底と胴部との接合部に入り込むことを低減できるので、接合部に設けられたガスケットへの熱影響を低減できるとともに、高温ガスが冷やされてガスケットにポリマーが付着することも低減できる。さらに、突出部を形成することで、反応時の輻射熱が凹部のガスケットに直接当ることが防止できるので、ガスケットが熱の影響により変形、劣化しにくくなり、ガスケットを複数回使用することが可能となる。また、ガスケットが劣化し難くなることで、反応中の炉内ガスの漏出も低減できる。
【0010】
本発明の多結晶シリコン反応炉において、前記ガスケットは、前記環状段部の幅の中心より外側に配置されているとよい。
ガスケットを、環状段部の幅の中心より外側に配置することで、炉内空間からガスケットまでの距離が離れて配置されることにより、反応時の輻射熱の影響が低減でき、ガスケットの変形、劣化が低減できる。
【0011】
本発明の多結晶シリコン反応炉において、前記ガスケットは、前記突出部の下端と、前記環状段部の上端との両方に接する線の延長線が、前記胴部の下面に当接する位置よりも、外側に配置されているとよい。
反応時の輻射熱がガスケットに直接当ることが防止できるので、ガスケットの変形、劣化が低減でき、ガスケットが劣化し難くなることで、反応中の炉内ガスの漏出も低減できる。
【0012】
本発明の多結晶シリコン反応炉において、前記胴部内には、前記下端部の内側まで延びる胴部冷却路が設けられ、前記炉底内には、前記環状段部の下側まで延びる炉底冷却路が設けられているとよい。
胴部冷却路及び炉底冷却路により、胴部下端部及び環状段部を冷却することで、反応炉を気密に保っているガスケットを効率的に冷却することができる。したがって、熱の影響によるガスケットの変形、劣化が低減できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、反応炉胴部の内壁面上に凝縮により生成されたポリマーが流下する際、反応炉の胴部と炉底との接合部に形成される凹部に滞留することを防止できるので、凹部やガスケットの汚れが生じにくく、反応後の炉内の洗浄が簡略化できる。また、反応中の高温ガスや輻射熱によるガスケットへの熱影響を低減できるので、ガスケットの変形、劣化を低減でき、繰り返し利用することができるとともに、反応中の炉内ガスの漏出の低減もできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る多結晶シリコン反応炉において、胴部と炉底との接合部近傍を示す断面図である。
【図2】多結晶シリコン反応炉を示す斜視図である。
【図3】図2の多結晶シリコン反応炉を示す縦断面図である。
【図4】ガスケットの説明図である。
【図5】ガスケットの配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る多結晶シリコン反応炉の一実施形態について説明する。本実施形態の多結晶シリコン反応炉10は、加熱したシリコン芯棒20の表面に原料ガスを接触させることにより、多結晶シリコンを析出させる装置であり、図2に示すように、シリコン芯棒20を覆う胴部30と、胴部30が着脱自在に取り付けられるとともにシリコン芯棒20が立設される炉底40とを備える。
【0016】
炉底40には、シリコン芯棒20が取り付けられる電極ユニット22と、クロロシランガスと水素ガスとを含む原料ガスを炉内に噴出するための噴出ノズル(ガス供給口)12と、ガスを炉外に排出するためのガス排出口14とがそれぞれ複数設けられている。噴出ノズル12は、各シリコン芯棒20に対して均一に原料ガスを供給するように、炉底40の上面40aのほぼ全域に分散して適宜の間隔をあけながら複数設置されている。これら噴出ノズル12は、外部の原料ガス供給源62に接続されている。また、ガス排出口14は、炉底の上面40aの外周部に周方向に適宜の間隔をあけて複数設置され、外部の排ガス処理系64に接続されている。電極ユニット22には、電源回路66が接続されている。
【0017】
シリコン芯棒20は、多結晶シリコンの種棒(シード)であり、炉底40に固定された電極ユニット22に下端部が差し込まれた状態に固定され、炉底40から上方に伸びている。各シリコン芯棒20の上端部には、シリコン芯棒20と同じシリコンにより形成され、二本のシリコン芯棒20を対として連結する連結部材24が取り付けられている。これら二本のシリコン芯棒20およびこれらを連結する連結部材24によって、全体としてΠ字状をなすシード組立体26が構成されている。電極ユニット22が反応炉10の中心から同心円状に配置されていることにより、シード組立体26は全体として概略同心円状に配列されている。
【0018】
そして、各シリコン芯棒20および連結部材24が直列に接続されるように電極ユニット22間が接続されるとともに、直列接続の両端の電極ユニット22に接続された電源回路66によって電力が供給されることにより、シリコン芯棒20および連結部材24が通電され、電気抵抗による発熱状態となる。高温となったシリコン芯棒20および連結部材24の表面に噴出ノズル12から供給された原料ガスが接触することにより、熱分解および水素還元反応が生じて、シリコン芯棒20および連結部材24の表面に多結晶シリコンが析出する。
【0019】
胴部30は、天井がドーム形釣鐘形状を有し、炉底40に取り付けられることにより、中央部が最も高く外周部が最も低い反応処理空間を形成する。この胴部30は、図3に示すように、内部に冷却水を流通させるジャケット構造の胴部冷却路32を有し、この胴部冷却路32によって冷却される。
【0020】
炉底40は、図3に示すように、上面40aが中心に向けてテーパーとなっている凹形となるように形成され、略円板状の炉底冷却路42が内部に設けられているジャケット構造を有している。炉底冷却路42は、炉底40の下面40bに開口した給水口42aと、炉底40の側面40cに開口した排水口42bとを備える。冷却水を、給水装置(図示略)から給水口42aを通じて炉底冷却路42に供給し、排水口42bを通じて炉外へ排出することにより、上面40aを冷却することができる。なお、図3においては、シード組立体26、噴出ノズル12、ガス排出口14等の図示は省略されている。
【0021】
上面40aの中心、すなわち最下部には、炉底40を上下方向に貫通する流路44の開口部44aが設けられている。すなわち、炉底40は、中心に設けられた開口部44aから周方向外側に向かって、水平面に対して約1°の傾斜で上昇する傾斜面である。また、この炉底40の外周部には、炉底40の上面40aを隆起させてなる環状段部40eが設けられている(図1参照)。流路44は、炉内への原料ガスの供給または炉内の洗浄水の排出に用いられる。この流路44の開口部44aには、着脱可能なプラグ50が備えられる。プラグ50が流路44の開口部44aに取り付けられることにより、流路44を上面40aから一段高い位置で開口させることができる。プラグ50が開口部44aに取り付けられていない場合には、流路44を上面40aの勾配の最下部で開口させることができる。
【0022】
流路44は、図3に示すように、炉底40を上下方向に貫通するとともに上面40aに開口するように固定された内管46によって形成されている。流路44(内管46)は原料ガス供給源62に接続されており、この流路44を通じて炉内に原料ガスを送り込むことができる。この内管46が同軸状に挿入された外管47が、炉底40の下面40bに固定されている。この外管47と内管46との間に形成された円筒状の冷却水用流路45の上端が、炉底冷却部42にリング状に開口する給水口42aとなっている。
【0023】
内管46および外管47の下端には、円筒状の冷却水用流路45が、流路44の外周を囲むように設けられていることによって、流路44も冷却される。外部配管60は、図2に示すように、バルブ60aによって開閉されるドレン配管60Aと、バルブ60bによってガス供給を遮断できる原料ガス供給源62からのガス配管60Bとの2経路に分かれて形成されている。これらのバルブ60a、60bを適宜開閉することにより、流路44を通じての炉内への原料ガスの供給と炉外への排水とを切り替えることができる。
【0024】
また、図1に示すように、炉底40の環状段部40eの上面40fと、その上面40fに重ねられて設置される胴部30の下端部30eの下面30fとの間に、これらを気密に接合するリング状のガスケット70が設けられている。ガスケット70は、例えば、縦断面が四角形に設けられている。胴部30の下端部30eの内壁面側には、ガスケット70に接している下面30fより下方に延びる突出部33が、周方向に沿って形成されている。この突出部33は、その内壁面が胴部30の内壁面と面一な垂直面に形成されている。一方、炉底40の環状段部40eの上面40fの内周縁は、胴部30の内壁面の直径より大きい直径に形成されており、炉底40に胴部30が接合された状態では、突出部33は環状段部40eの上面40fよりも下方に延び、環状段部40eの上面40fを突出部33の半径方向外方位置に配置するように設けられる。突出部33は、炉底40と胴部30との間に形成される接合部15を内側から覆った状態となる。この突出部33により、胴部30の下面30fと、炉底40の環状段部40eの上面40fとの間の隙間が、上下に屈曲した形状に形成される。
環状段部40eの上面40fの外周部には、リング状のガスケット70を嵌め込むための環状凹部71が形成されており、ガスケット70は、環状段部40eの幅の中心より外側の外周縁部近傍に配置されている。
また、上述したように、胴部30および炉底40の内部には、胴部冷却路32および炉底冷却路42が設けられており、胴部冷却路32は、胴部30の下端部30eの内側まで延びて設けられ、炉底冷却路42は、環状段部40eの下側まで延びる位置まで設けられている。したがって、胴部冷却路32および炉底冷却路42により、胴部30と炉底40との間の接合部15を冷却することができ、反応時の熱によるガスケットの変形、劣化を防止することができる。
【0025】
このように構成された多結晶シリコン反応炉10においては、原料ガスは炉底40の噴出ノズル12から炉内に導かれ、加熱されたシリコン芯棒20に沿って上昇する間に、熱分解および水素還元反応が生じて、シリコン芯棒20および連結部材24の表面に多結晶シリコンが析出する。そして、高温の未反応ガスおよび分解されたガスの一部は、胴部30の内壁面に沿って流下し、炉底40の上面40aの外周部に設けられたガス排出口14から外部に排出される。この際、反応により生成した高沸点の副生物が冷やされて胴部30の内壁面上にポリマーとなって付着するが、胴部30の内壁面上を下ってきたポリマーの流れは、胴部30の下端部30eに設けられた突出部33によって案内され、炉底40に滴下する。突出部33は、胴部30の内壁面と面一に形成されているので、ポリマーを胴部30の内壁面上に滞留させずに炉底40まで円滑に流下させることができ、ポリマーが胴部30と炉底40との間の接合部15に形成された凹部に回り込み滞留することを防止できる。
また、反応炉内の高温ガスの流れも、突出部33によって案内され、また、突出部33を形成することで炉内の高温ガスが接合部15に設けられたガスケット70に直接当ることを防止できる。したがって、高温ガスが、接合部15に設けられたガスケット70へ与える熱影響を低減できる。さらに、この突出部33を胴部30の下端部30e全周にわたって形成することにより、凹部15への反応時の輻射熱を遮蔽することができ、接合部15に設けられたガスケット70が直接熱の影響を受けることを防止する。このように、反応中の胴部30において内壁面のポリマー流下時に、接合部15に形成される凹部へのポリマー滞留を防止でき、ガスケット70への高温ガスによる熱影響の低減や、輻射熱の遮断による熱影響を防止できることより、ガスケット70の変形、劣化を低減でき、繰り返し利用することができる。
また、本実施形態の多結晶シリコン反応炉10においては、ガスケット70を、環状段部40eの幅の中心より外側に配置したことにより、炉内空間からガスケット70までの距離Lが離れて配置されることになり、反応時に加熱されたシリコン芯棒20からの輻射熱が、炉底40の上面40aで反射してガスケット70に直接当ることが防止できる。したがって、ガスケット70が熱の影響により変形、劣化することがより低減され、ガスケット70を複数回使用することが可能となる。
なお、ガスケット70は、図5(a)に示すように、胴部30の下端部30eに形成される突出部33の下端と、炉底40の環状段部40eの上端(上面40f)との両方に接する線の延長線Eが胴部30の下面30fに当接する位置(P点)よりも、外側に配置されているとよい。図5(b)に示すように、ガスケット70を、P点よりも内側に配置した場合には、輻射熱が直接ガスケットに当ることがあるが、図5(a)に示すように、P点よりも外側に配置した場合には、ガスケット70に輻射熱が直接当ることが防止できる。
【0026】
なお、反応炉の洗浄は、反応処理が終了し、反応炉内の雰囲気置換および不活性化処理が終了した後に、胴部30を取り外し、多結晶シリコンを取り出した状態で行われる。
例えば、炉底40の洗浄は、プラグ50が取り付けられた状態で炉底40上に洗浄水を供給し、炉底40上に洗浄水を溜めた状態で暫時放置させる。炉底40に付着したポリマーを洗浄水により加水分解させた後に、洗浄道具を用いて上面40aの付着物を剥離し、付着物を洗浄水とともに炉底40上から取り除く。次に、流路44に装着されたプラグ50を取り外し、バルブ60aを開放すると、流路44の開口部44aが上面40aの最下部に開口して、洗浄水が炉底40の上面40aの斜面に沿って開口部44aに向かって流されながら上面40aを洗浄し、付着物とともに流路44からドレン配管60Aを通じて炉外へと排出される。なお、プラグ50を取り外した状態で洗浄水を流しながら、上面40aの付着物を剥離する作業を行うこともできる。この洗浄作業において、環状段部40eの上面40fも洗浄するが、前述したように、ポリマーの付着が防止されているので、その洗浄作業を容易にすることができる。
以上のように、本発明の多結晶シリコン反応炉によれば、反応炉の胴部と炉底との接合部に形成された凹部へのポリマーの滞留を防止して、炉内の洗浄を簡略化することができる。また、反応中の高温ガスや輻射熱によるガスケットへの熱影響を低減できるので、ガスケットの変形、劣化を防止でき、繰り返し利用することができる。これにより、反応中の炉内ガスの漏出も低減でき、安全性が向上する。
【0027】
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、突出部33の内壁面は、胴部30の内壁面と面一な垂直面に形成したが、垂直方向に対して僅かに傾斜して設けられるものも含むものとする。
また、ガスケットの縦断面は、四角形の他にも、丸形や台形等の他の形状で形成することもできる。例えば、図4に示すように、胴部30の下端部30eの下面30fと接触する面の両端部を切り取った形状の台形状のガスケット70Aとした場合には、使用による変形で生じるバリを抑制でき、好適である。この場合、反応炉内壁面側の端部75は、外周面側の端部76と比較して熱影響を受け易いので、胴部30の下端部30eの下面30fとの接触面が十分に確保できる範囲で端部76よりも大きく切欠いておくとよい。なお、図中の二点鎖線で示すガスケット70Aの形状は、胴部30と炉底40との間に挟んだ状態を示す。
また、ガスケットはリング状のものに限らず、帯状のガスケットの端部を突合せて炉底40の環状凹部71に配置することによりリング状に構成して用いることもできる。
【符号の説明】
【0028】
10 多結晶シリコン反応炉
12 噴出ノズル(ガス供給口)
14 ガス排出口
15 凹部
20 シリコン芯棒
22 電極ユニット
24 連結部材
26 シード組立体
30 胴部
30e 下端部
30f 下面
32 胴部冷却路
33 突出部
40 炉底
40a 上面
40b 下面
40c 側面
40e 環状段部
40f 上面
42 炉底冷却路
42a 給水口
42b 排水口
44 流路
44a 開口部
45 冷却水用流路
46 内管
47 外管
50 プラグ
60 外部配管
60A ドレン配管
60B ガス配管
60a,60b バルブ
62 原料ガス供給源
64 排ガス処理系
66 電源回路
70 ガスケット
71 環状凹部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱したシリコン芯棒の表面に原料ガスを接触させることにより多結晶シリコンを析出させる多結晶シリコン反応炉であって、前記シリコン芯棒が立設される炉底の外周部に該炉底の上面を隆起させてなる環状段部が設けられ、前記環状段部の上面と、その上面に重ねられて設置される胴部の下端部の下面との間に、これらを気密に接合するガスケットが設けられ、前記胴部の下端部の内壁面側に、前記環状段部の上面よりも下方に延びる突出部が周方向に沿って設けられ、該突出部の半径方向外方に、前記環状段部の上面が配置されていることを特徴とする多結晶シリコン反応炉。
【請求項2】
前記ガスケットは、前記環状段部の幅の中心より外側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の多結晶シリコン反応炉。
【請求項3】
前記ガスケットは、前記突出部の下端と、前記環状段部の上端との両方に接する線の延長線が、前記胴部の下面に当接する位置よりも、外側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の多結晶シリコン反応炉。
【請求項4】
前記胴部内には、前記下端部の内側まで延びる胴部冷却路が設けられ、前記炉底内には、前記環状段部の下側まで延びる炉底冷却路が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の多結晶シリコン反応炉。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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