多臭素化アルカンの水素化
多臭素化アルカンの水素化のための方法およびシステムが本明細書中に提供される。本発明の実施形態の1つは、少なくとも水素および多臭素化アルカンを触媒の存在下で反応させ、水素と反応させられる多臭素化アルカンよりも少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンを含む水素化された流を形成することを含む方法を含む。本方法の実施形態はさらに、臭素化アルカンを形成することを含むことができる。本方法の実施形態はさらに、生成物炭化水素を臭素化アルカンから形成することを含むことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多臭素化アルカンの水素化に関連し、より具体的には、1つまたは複数の実施形態において、一臭素化アルカンが、多臭素化アルカンを含む流を水素と接触させることによって形成される方法およびシステムに関連する。
【背景技術】
【0002】
モノハロゲン化アルカンが、アルコール、エーテル、オレフィンおよび高級炭化水素(例えば、C3、C4およびC5+のガソリン範囲の炭化水素、ならびに、より重質の炭化水素など)(これらに限定されない)を含めて、様々な望ましい製造物の製造において使用され得る。例えば、モノハロゲン化アルカンを、金属酸化物により、対応するアルコールに変換することができる。別の例では、一臭素化アルカンを、適切な触媒により、より高分子量の炭化水素に変換することができる。
【0003】
モノハロゲン化アルカンを製造するために、アルカンを臭素源により臭素化することができる。1つの例では、より低分子量のアルカンを含むガス状供給物を、臭素化アルカンを形成するために臭素蒸気と反応させることができる。アルカンの臭素化は、一臭素化アルカンに関してはそれ相応に選択的であり得るが、著しい量の多臭素化アルカンもまた生じ得る。例えば、メタンの非触媒的臭素化が約4:1〜約9:1の範囲における過剰なメタンとともに行われる場合、反応選択性が一般に、約70%〜約80%の一臭素化メタンおよび約20%〜約30%の二臭素化メタンの範囲であり得る。しかしながら、応用に依存して、多臭素化アルカン(例えば、二臭素化メタンなど)はそれほど望ましい副生成物でない場合がある。例として、二臭素化メタンは、二臭素化メタンの存在がコークス形成を促進させることがあり、また、合成触媒を失活させることがあるという点で、その後の炭化水素合成反応において望ましくないことがある。
【0004】
一臭素化アルカンに関する選択性を改善するために、臭素化反応が、より過剰なアルカンとともに行われることがある。しかしながら、アルカンの量を増大することは、系における生成物および反応物を希釈し、そのため、より多量のメタンおよび他の軽質アルカンを系内において再循環することが潜在的に要求され、このことは、例えば、より多量のアルカンを取り扱うために必要とされる反応槽および配管の増大したサイズに起因する増大した電力コストおよび処理コストをもたらし得る。別の例では、多臭素化アルカン(例えば、二臭素化メタンなど)を軽質アルカン(例えば、メタンよりも反応性であり得るC2〜C4アルカンなど)と反応させて、一臭素化アルカンを形成させることができる。しかしながら、軽質アルカンとの二臭素化アルカンおよび三臭素化アルカンの反応は一般に速度論的には遅く、そのため、1分以上に至るまでの長い滞留時間を必要とし、かつ、一臭素化アルカン(例えば、一臭素化メタンおよび一臭素化エタンなど)に対してあまり選択的ではなく、また、もしかすると、フリーラジカル連鎖反応に起因するかもしれないある程度のコーキングもまた生じることがあり、そのため、有用な製造物への炭素変換の効率が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は多臭素化アルカンの水素化に関連し、より具体的には、1つまたは複数の実施形態において、一臭素化アルカンが、多臭素化アルカンを含む流を水素と接触させることによって形成される方法およびシステムに関連する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の1つは、少なくとも水素および多臭素化アルカンを、水素と反応させられる多臭素化アルカンよりも少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンを含む水素化された流を形成するために触媒の存在下で反応させることを含む方法を含む。
【0007】
本発明の別の実施形態は、臭素化アルカンを含む臭素化生成物を、アルカンおよび臭素を含む臭素化反応物から形成すること(ここで、臭素化アルカンは一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含む);さらなる一臭素化アルカンを含む水素化生成物を、水素と、臭素化反応物から形成される多臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む水素化反応物から形成すること;および、炭化水素を含む合成生成物を、反応物である一臭素化された臭素化合物を含む合成反応物から形成すること(ここで、反応物である一臭素化された臭素化合物は、臭素化反応物から形成される一臭素化アルカンの少なくとも一部と、水素化反応物から形成されるさらなる一臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む)を含む方法を含む。
【0008】
本発明の別の実施形態は、臭素化アルカンを含む臭素化生成物を、アルカンおよび臭素を含む臭素化反応物から形成するために構成される臭素化リアクターであって、臭素化アルカンが一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含む、臭素化リアクター;臭素化リアクターと流体連絡しており、かつ、さらなる一臭素化アルカンを含む水素化生成物を、水素と、臭素化リアクターからの多臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む水素化反応物から形成するために構成される水素化リアクター;および、水素化リアクターと流体連絡しており、かつ、反応物である一臭素化された臭素化合物を含む合成反応物からの炭化水素を含む合成生成物を形成するために構成される合成リアクターであって、反応物である一臭素化された臭素化合物が、臭素化リアクターからの一臭素化アルカンの少なくとも一部と、水素化リアクターからのさらなる一臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む、合成リアクターを含むシステムを含む。
【0009】
本発明の特徴および利点が当業者には容易に明らかになる。数多くの変化が当業者によってなされ得るが、そのような変化は本発明の精神の範囲内である。
【0010】
これらの図面は本発明の実施形態のうちのいくつかの特定の局面を例示しており、本発明を限定するために、または、本発明を規定するために使用してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、多臭素化アルカンの水素化のためのプロセスの例示的ブロック図である。
【図2】図2は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、臭素化を含む多臭素化アルカンの水素化のためのプロセスの例示的ブロック図である。
【図3】図3は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、臭素化および水素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスの例示的ブロック図である。
【図4】図4は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、臭素化および水素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスの別の例示的ブロック図である。
【図5】図5は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、臭素化および水素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスの別の例示的ブロック図である。
【図6】図6は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、水素化のための水素が水蒸気メタン改質により生じる、臭素化および水素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスの別の例示的ブロック図である。
【図7】図7は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、水素化のための水素が電気分解により生じる、臭素化および水素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスの別の例示的ブロック図である。
【図8】図8は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、水素化のための水素が電気分解により生じる、臭素化および水素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスの別の例示的ブロック図である。
【図9】図9は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、水素化のための水素が電気分解により生じる、臭素化および水素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスの別の例示的ブロック図である。
【図10】図10は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、一臭素化アルカンが水素化を迂回する、水素化および臭素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスのさらなる例示的ブロック図である。
【図11】図11は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、一臭素化アルカンが水素化を迂回する、水素化および臭素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスのさらなる例示的ブロック図である。
【図12】図12は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、一臭素化アルカンが水素化を迂回する、水素化および臭素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスのさらなる別の例示的ブロック図である。
【図13】図13は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、一臭素化アルカンが水素化を迂回する、水素化および臭素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスのさらなる例示的ブロック図である。
【図14】図14は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、一臭素化アルカンが水素化を迂回する、水素化および臭素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスのさらなる例示的ブロック図である。
【図15】図15は、本発明の1つの実施形態による水素化の期間中における時間に対する二臭素化メタンの変換のグラフである。
【図16】図16は、本発明の1つの実施形態による水素化の期間中における、水素化リアクターに入る二臭素化メタンおよび一臭素化メタンの濃度ならびに水素化リアクターから出る二臭素化メタンおよび一臭素化メタンの濃度のグラフである。
【図17】図17は、本発明の1つの実施形態による水素化の期間中における、水素化リアクターに入る水素および臭化水素の濃度ならびに水素化リアクターから出る水素および臭化水素の濃度のグラフである。
【図18】図18は、本発明の1つの実施形態による水素化の期間中における時間に対する二臭素化メタンの変換のグラフである。
【図19】図19は、本発明の1つの実施形態による水素化の期間中における、水素化リアクターに入る二臭素化メタンおよび一臭素化メタンの濃度ならびに水素化リアクターから出る二臭素化メタンおよび一臭素化メタンの濃度のグラフである。
【図20】図20は、本発明の1つの実施形態による水素化の期間中における、水素化リアクターに入る水素および臭化水素の濃度ならびに水素化リアクターから出る水素および臭化水素の濃度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は多臭素化アルカンの水素化に関連し、より具体的には、1つまたは複数の実施形態において、一臭素化アルカンが、多臭素化アルカンを含む流を水素と接触させることによって形成される方法およびシステムに関連する。
【0013】
本発明の方法およびシステムに対する多くの潜在的な利点が存在し得るが、そのうちの一部のみが本明細書中において言及されるだけである。そのような多くの潜在的な利点の1つが、多臭素化アルカンの水素化は、形成されるモノハロゲン化アルカンの量を増大させるにちがいないことであるかもしれない。したがって、より大きい割合の一臭素化アルカンが所望される技術もまた改善されるかもしれない。例えば、有用な生成物への炭素変換効率が、例えば、炭化水素を製造するための臭素化アルカンの変換などにおいて、一臭素化アルカンに関する改善された選択性のために改善されるかもしれない。とりわけ、一臭素化アルカンのより大きい割合は、炭素変換効率を、例えば、コークスの形成の減少および触媒のより遅い失活のために改善するかもしれない。
【0014】
図1を参照すると、多臭素化アルカンの水素化のためのプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。例示される実施形態において、多臭素化アルカンを含む水素化供給流2を水素流4と一緒にすることができ、水素化リアクター6に導入することができる。水素化リアクター6において、多臭素化アルカンが水素と反応して、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成する。図1は、水素化供給流2および水素流4が水素化リアクター6に先立って一緒にされることを例示するが、当業者は、これらの流がリアクターにおいて一緒にされ得ることを理解しなければならない。例として、水素化供給流2および水素流4を、触媒がリアクターに存在するならば、リアクターに存在する触媒と接触する前に、それらが混合するように、水素化リアクター6に導入することができる。
【0015】
水素化供給流2は一般に多臭素化アルカンを含み、圧力が、例えば、約1atm〜約100atmの範囲にあってもよく、あるいは、約1atm〜30atmの範囲にあってもよい。アルカンには、例えば、より低分子量のアルカンが含まれ得る。本明細書中で使用される用語「より低分子量のアルカン」は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンまたはそれらの混合物を示す。特定の実施形態において、より低分子量のアルカンはメタンであり得る。多臭素化アルカンには、二臭素化アルカン、三臭素化アルカン、四臭素化アルカンまたはそれらの混合物が含まれ得る。特定の実施形態において、水素化供給流2はまた、一臭素化アルカン、臭化水素またはそれらの組合せを含むことができる。
【0016】
水素流4は一般に水素を含み、圧力が、例えば、約1atm〜約100atmの範囲にあってもよく、あるいは、約1atm〜30atmの範囲にあってもよい。下記においてより詳しく議論されるように、水素流4に存在する水素は、水蒸気メタン改質、一酸化炭素の水性ガスシフト反応、あるいは、水、金属ハロゲン化物塩または臭化水素の電気分解を含めて、いずれかの好適な供給源により提供され得る。下記において記載される実施形態では、臭化水素が生じるので、臭化水素の電気分解が、水素を本発明の特定の実施形態において生じさせるための特に好適な技術であり得る。臭化水素の電気分解はまた、水蒸気メタン改質よりもエネルギー集約的でないかもしれないことが考えられる。特定の実施形態において、水素化リアクター6に導入される混合物における水素(H2)対多臭素化アルカンのモル比率が、例えば、少なくとも約1:1であり得る。例えば、水素化リアクター2に導入される混合物は約1:1の水素(H2)対二臭素化メタンのモル比率を有することができる。
【0017】
水素化リアクター6において、多臭素化アルカンが水素と反応して、臭化水素と、多臭素化アルカンに関してより少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成することができる。例えば、二臭素化アルカンが水素と反応して、一臭素化アルカンを形成することができる。二臭素化メタンの場合には、水素との反応が下記の一般的な反応に従って生じ得る:
【0018】
【化1】
本発明の実施形態によれば、水素化リアクター6は、多臭素化アルカンの100%に至るまでが一臭素化アルカンに変換され得るという点で、高い、100%に至るまでの選択性により、一臭素化アルカンおよび臭化水素を形成するために操作され得ることが考えられる。しかしながら、ある程度少量のコーキングが一般に生じるにちがいなく、その結果、触媒の緩やかな失活が生じるようになる。より高い温度は、多臭素化アルカンの大きい見かけ上の変換をもたらす一方で、コーキングもまた加速させることが考えられる。したがって、より大きいリアクターが、多臭素化アルカンの高い変換を達成するために要求されるという犠牲を払うが、より低い温度での操作が、コークスの形成に起因する損失がより少ないことのために、また、より遅い触媒失活のために許容され得ることがある。高い活性が酸素含有ガス混合物または空気による再生によって触媒に戻り得ることが見出されている。
【0019】
多臭素化アルカンおよび水素の間での水素化リアクター6における反応は、本発明の実施形態によれば、それらの均一な気相反応または不均一な触媒反応であり得る。水素化リアクター6における反応は、例えば、約150℃〜約650℃の範囲における温度および約1atm〜約100atm、あるいは、約1atm〜30atmの範囲における圧力で行われ得るが、当業者は、本開示の利益により、より高い温度では、均一な気相反応が行われ得ることを理解しなければならない。特定の実施形態において、多臭素化アルカンおよび水素を約300℃〜約650℃の範囲における温度で反応させることができる。
【0020】
前記段落において述べられるように、水素化リアクター6における反応は触媒的に行うことができる。水素化リアクター6のための好適な触媒の例には、臭素との1つまたは複数の熱的に可逆的な錯体を形成することができる金属が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、好適な触媒には、臭素との多数の熱的に可逆的な錯体を形成することができる2つ以上の酸化状態を有する金属が含まれるが、これらに限定されない。臭素との多数の熱的に可逆的な錯体を形成する好適な触媒の具体的な例には、鉄、銅、タングステン、モリブデン、バナジウム、クロム、白金およびパラジウムが含まれ得るが、これらに限定されない。ただ1つだけの酸化状態を有し、かつ、臭素とのただ1つの錯体を形成し、また同様に、何らかの活性を有すると考えられる好適な触媒の例には、ニッケル、コバルト、亜鉛、マグネシウム、カルシウムおよびアルミニウムが含まれ得るが、これらに限定されない。特定の実施形態において、これらの金属は、例えば、Cuまたは他の遷移金属により促進され得る。好適な触媒のさらなる例には、ルイス酸官能性を有する金属ハロゲン化物塩、および、金属オキシハロゲン化物が含まれる。特定の実施形態において、触媒には、担体に付着する、そのような金属の酸化物または臭化物が含まれ得る。例えば、金属を、不活性な担体に、例えば、シリカおよびアルミナなどに臭化物(例えば、臭化鉄)または酸化物(例えば、酸化鉄)として付着させることができる。さらなる例として、金属(例えば、白金)を、不活性な担体に、例えば、低表面積のシリカ担体などに分散させることができる。
【0021】
より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンを含む水素化された流8を水素化リアクター6から抜き取ることができる。例として、水素化リアクターから抜き取られる水素化された流8は、水素化リアクター6において生じる一臭素化アルカンを含むことができる。
【0022】
図2を参照すると、臭素化および多臭素化アルカンの水素化を含むプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。例示される実施形態において、プロセスは、臭素化リアクター10と、水素化リアクター6とを含む。例示されるように、アルカンを含むガス状供給流12を臭素流14と一緒にすることができ、得られた混合物を臭素化リアクター10に導入することができる。図2は、ガス状供給流12および臭素流14が臭素化リアクター10に先立って一緒にされることを例示するが、当業者は、本開示の利益により、ガス状供給流12および臭素流14が臭素化リアクター10において一緒にされ得ることを理解しなければならない。
【0023】
ガス状供給流12は一般にアルカンを含み、圧力が、例えば、約1atm〜約100atmの範囲にあってもよく、あるいは、約1atm〜約30atmの範囲にあってもよい。ガス状供給流に存在するアルカンには、例えば、より低分子量のアルカンが含まれ得る。前記で述べられるように、特定の実施形態において、より低分子量のアルカンはメタンであり得る。また、本発明の実施形態において使用されるガス状供給流12は、天然に存在しようとも、または、合成的に製造されようとも、より低分子量のアルカンを含有するガスのどのような供給源であってもよい。本発明のプロセスの実施形態において使用され得る好適なガス状供給物の例には、天然ガス、炭層メタン、再ガス化された液化天然ガス、ガスの水和物またはクラスレート(chlathrate)または両方に由来するガス、有機物またはバイオマスの嫌気性分解に由来するガス、合成的に製造された天然ガスまたはアルカン、および、それらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、ガス状供給流12は、供給ガスと、それに加えて、再循環ガス流とを含むことができる。特定の実施形態において、ガス状供給流12は、イオウ化合物および二酸化炭素を除くために処理することができる。どのような場合でも、特定の実施形態において、少量の二酸化炭素が、例えば、約2mol%未満の二酸化炭素がガス状供給流12には存在し得る。
【0024】
臭素流14は一般に臭素を含み、圧力が、例えば、約1atm〜約100atmの範囲にあってもよく、あるいは、約1atm〜約30atmの範囲にあってもよい。特定の実施形態において、臭素は、水の蒸気を実質的に含まないという点で乾燥状態であり得る。特定の実施形態において、臭素流14に存在する臭素は、ガス状状態、液体状態、または、それらの組合せであり得る。例示されていないが、特定の実施形態において、臭素流14は、プロセスに導入される補給臭素だけでなく、プロセスにおいて回収される再循環臭素を含有することができる。同様に例示されていないが、特定の実施形態において、ガス状供給流および臭素の混合物を、臭素化リアクター10への導入に先立って臭素を蒸発させるために熱交換器に通すことができる。
【0025】
前記で述べられるように、ガス状供給流12および臭素流14を一緒にすることができ、臭素化リアクター10に導入することができる。ガス状供給流12におけるアルカンの、臭素流14における臭素に対するモル比率は、例えば、2.5:1超であり得る。例示されないが、特定の実施形態において、臭素化リアクター10は、アルカンおよび臭素の混合物を、例えば、約250℃〜約400℃の範囲における反応開始温度に加熱するための入口側プレヒーター域を有することができる。
【0026】
臭素化リアクター10において、アルカンを臭素と反応させて、臭素化アルカンおよび臭化水素を形成することができる。例として、メタンが臭素と臭素化リアクター10において反応して、臭素化メタンおよび臭化水素を形成することができる。メタンが臭素と反応する場合、一臭素化メタンの形成が下記の一般的な反応に従って生じる:
【0027】
【化2】
気相臭素化反応のフリーラジカル機構のために、多臭素化アルカンもまた、臭素化リアクター10において形成され得る。特定の実施形態において、臭素化リアクター10において形成される臭素化アルカンの約10%モル分率〜約30%モル分率が多臭素化アルカンであり得る。例えば、メタンの臭素化の場合、メタン対臭素の比率が約6:1である場合には、一臭素化された臭化メチルに対する選択性が、反応条件(例えば、滞留時間、温度、乱流混合など)に依存して、平均しておよそ88%であり得る。これらの条件で、二臭素化メタン、ならびに、ほんの非常に少量にすぎない三臭素化メタンおよび他の臭素化アルカンもまた、臭素化反応において形成されるにちがいない。例として、およそ2.6対1のより低いメタン対臭素比率が使用されるならば、一臭素化メタンに対する選択性が、他の反応条件に依存して、約65%〜約75%の範囲に低下し得る。約2.5対1よりも著しく少ないメタン対臭素比率が使用されるならば、一臭素化メタンに対する一層より低い選択性が生じ、かつ、そのうえ、望ましくない炭素ススの著しい形成が観測される。高級アルカン(例えば、エタン、プロパンおよびブタンなど)もまた容易に臭素化されることがあり、これにより、一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカン(例えば、臭素化エタン、臭素化プロパンおよび臭素化ブタンなど)が生じる。
【0028】
特定の実施形態において、臭素化リアクター10における臭素化反応は、例えば、約250℃〜約600℃の範囲における温度で、かつ、約1atm〜約100atmの範囲における圧力で、あるいは、約1atm〜約30atmの範囲における圧力で、発熱的に生じる。この温度範囲の上限は、臭素化反応の発熱的性質のために、供給混合物が加熱され得る反応開始温度範囲の上限よりも高くなり得る。当業者によって理解されるように、本開示の利益により、臭素化リアクター10における反応は均一な気相反応または不均一な触媒反応であり得る。臭素化リアクター10において使用され得る好適な触媒の例には、白金、パラジウム、あるいは、Olahら、J.Am.Chem.Soc.1985、107、7097−7105に記載されるような担持された非化学量論的な金属オキシハロゲン化物(例えば、FeOxBryまたはFeOxClyなど)または担持された化学量論的な金属オキシハロゲン化物(例えば、TaOF3、NbOF3、ZrOF2、SbOF3など)が含まれるが、これらに限定されない。そのような触媒の使用は選択的な一臭素化を約200℃〜250℃の範囲でのより低い温度で可能にし得るが、変換速度が典型的には、これらのより低い温度では低い;これに対して、より高い温度では、選択性がより小さくなり、より多くの多臭素化アルカンが形成される。
【0029】
上記で示されるように、臭素化リアクター10に供給される臭素は、本発明の特定の実施形態においては乾燥状態であり得る。実質的にすべての水の蒸気を臭素化リアクター10における臭素化反応から排除することは、望まれない二酸化炭素が形成することを実質的に排除し、それにより、臭素化アルカンに対するアルカン臭素化の選択性を増大させ、また、二酸化炭素がアルカンから形成することにおいて発生する多量の廃熱を潜在的になくす。さらに、実質的にすべての水の蒸気を排除することは、本発明の特定の実施形態においては、使用されるかもしれない下流側の触媒の水熱分解を最小にするにちがいない。
【0030】
図2において例示されるように、臭素化された流16を臭素化リアクター10から抜き取ることができる。一般に、臭素化リアクター10から抜き取られる臭素化された流16は臭素化アルカンおよび臭化水素を含む。臭素化された流16に存在する臭素化アルカンは一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含むことができる。例示される実施形態において、臭素化された流16を水素流4と一緒にすることができ、水素化リアクター6に導入することができる。図10〜図14に関して下記においてより詳しく議論されるように、臭素化された流16に存在する一臭素化アルカンおよび臭化水素の大部分は、特定の実施形態においては水素化リアクター6を迂回することができ、その結果、水素化流リアクター6には、反応物のより濃縮された流が供給される。
【0031】
水素化リアクター6において、臭素化された流16に存在する多臭素化アルカンを水素と反応させて、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成することができる。本発明の実施形態によれば、水素化リアクター6は、多臭素化アルカンのほぼ100%に至るまでが一臭素化アルカンに変換され得るという点で、高い、100%に至るまでの選択性により、一臭素化アルカンおよび臭化水素を形成するために操作され得ることが考えられる。しかしながら、ある程度少量のコーキングが一般に生じるにちがいなく、その結果、触媒の緩やかな失活が生じるようになる。より高い温度は、多臭素化アルカンの大きい見かけ上の変換をもたらす一方で、コーキングもまた加速させることが考えられる。したがって、より大きいリアクターが、多臭素化アルカンの高い変換を達成するために要求されるという犠牲を払うが、より低い温度での操作が、コークスの形成に起因する損失がより少ないことのために、また、より遅い触媒失活のために許容され得ることがある。高い活性が酸素含有ガス混合物または空気による再生によって触媒に戻り得ることが見出されている。水素化リアクター6および水素流4は上記において図1に関してより詳しく記載される。
【0032】
より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンを含む水素化された流8を水素化リアクター6から抜き取ることができる。例として、水素化リアクター6から抜き取られる水素化された流8は、水素化リアクター6において生じる一臭素化アルカンを含むことができる。水素化された流8はまた、臭素化リアクター10において生じた一臭素化アルカンおよび臭化水素を含むことができる。
【0033】
本発明の実施形態によれば、多臭素化アルカンの水素化のための図1および図2に関して上記において記載されるプロセスは、生成物炭化水素を脱水素ハロゲン化/オリゴマー化触媒により製造するためのプロセスにおいて使用することができる。生成物炭化水素には一般に、例えば、C3、C4およびC5+のガソリン範囲の炭化水素、ならびに、より重質の炭化水素が含まれ得る。これらには、例えば、分岐アルカン、置換芳香族、ナフテンまたはオレフィン(例えば、エチレンおよびプロピレンなど)が含まれる。一臭素化アルカンの増大した形成のために、生成物炭化水素を製造するためのプロセスは、有用な生成物への炭素変換効率が、例えば、コークスの形成の減少および触媒のより遅い失活のために改善され得るという点で改善され得る。
【0034】
図3を参照すると、臭素化および水素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。例示される実施形態において、プロセスは、臭素化リアクター10と、水素化リアクター6と、合成リアクター18とを含む。合成反応が後に続く臭素化を含む生成物炭化水素の製造のための例示的プロセスが、米国特許第7,244,867号、米国特許第7,348,464号および米国特許出願公開第2006/0100469号においてより詳しく記載される(それらの開示全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0035】
図3において例示されるように、アルカンを含むガス状供給流12を臭素流14と一緒にすることができ、得られた混合物を臭素化リアクター10に導入することができる。臭素化リアクター10において、アルカンを臭素と反応させて、臭素化アルカンおよび臭化水素を形成することができる。ガス状供給流12、臭素流14および臭素化リアクター10は図2に関して上記においてより詳しく記載される。
【0036】
臭素化された流16を臭素化リアクター10から抜き取ることができる。一般に、臭素化リアクター10から抜き取られる臭素化された流16は臭素化アルカンおよび臭化水素を含む。臭素化された流16に存在する臭素化アルカンは一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含むことができる。例示される実施形態において、臭素化された流16を水素流4と一緒にすることができ、水素化リアクター6に導入することができる。水素化リアクター6において、臭素化された流16に存在する多臭素化アルカンが水素と反応して、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成することができる。本発明の実施形態によれば、水素化リアクター6は、多臭素化アルカンのほぼ100%に至るまでが一臭素化アルカンに変換され得るという点で、高い、100%に至るまでの選択性により、一臭素化アルカンおよび臭化水素を形成するために操作され得ることが考えられる。水素化リアクター6および水素流4は図1に関して上記においてより詳しく記載される。
【0037】
より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンを含む水素化された流8を水素化リアクター6から抜き取ることができ、合成リアクター18に導入することができる。例として、水素化リアクター6から抜き取られる水素化された流8は、水素化リアクター6において生じる一臭素化アルカンを含むことができる。水素化された流8はまた、臭素化リアクター10において生じた一臭素化アルカンおよび臭化水素を含むことができる。例示されていないが、水素化された流8は、発熱的合成反応に起因する温度上昇に備えるために、合成リアクター18に導入される前に、約150℃〜約450℃の範囲における温度に熱交換器で冷却することができる。合成リアクター18において、臭素化アルカンを触媒の存在下で発熱的に反応させて、生成物炭化水素と、さらなる臭化水素とを形成することができる。この反応は、例えば、約150℃〜約500℃の範囲における温度で、かつ、約1atm〜約100atmの範囲における圧力で、あるいは、約1atm〜約30atmの範囲における圧力で行うことができる。
【0038】
触媒は、生成物炭化水素への臭素化アルカンの変換を触媒するための様々な好適な物質のいずれかであり得る。特定の実施形態において、合成リアクター18は触媒の固定床を含むことができる。合成触媒の流動床もまた、特定の状況において、特に、より大型の適用において使用することができ、合成触媒の流動床はいくつかの利点を有することができる(例えば、コークスの絶え間ない除去および生成物組成に対する安定した選択性など)。好適な触媒の例には、酸性のイオン交換体であるという共通する機能性を有し、また同様に、合成された結晶性アルミノケイ酸塩酸化物骨格を含有するかなり幅広い様々な物質が含まれる。特定の実施形態において、結晶性アルミノケイ酸塩酸化物骨格におけるアルミニウムの一部が、マグネシウム、ホウ素、ガリウムおよび/またはチタンにより置換され得る。特定の実施形態において、結晶性アルミノケイ酸塩酸化物骨格におけるケイ素の一部が必要な場合にはリンにより置換され得る。結晶性アルミノケイ酸塩触媒は一般に、例えば、H、Li、Na、KまたはCsの群、あるいは、Mg、Ca、SrまたはBaの群から選択される元素のカチオンによってバランスされ得る、結晶性アルミノケイ酸塩酸化物骨格構造の内部における著しいアニオン電荷を有することができる。ゼオライト系触媒がナトリウム形態で一般に得られ得るが、(水酸化アンモニウムとのイオン交換、および、その後の焼成による)プロトン形態または水素形態が好ましく、あるいは、混合型のプロトン/ナトリウム形態もまた使用することができる。ゼオライトはまた、他のアルカリ金属カチオン(例えば、Li、KまたはCsなど)とのイオン交換によって、または、アルカリ土類金属カチオン(例えば、Mg、Ca、SrまたはBaなど)とのイオン交換によって、または、遷移金属カチオン(例えば、Ni、Mn、VおよびWなど)とのイオン交換によって改変することができる。そのようなその後のイオン交換は電荷バランスの対イオンを置き換えることができ、しかし、さらにはまた、酸化物骨格におけるイオンを部分的に置き換えることができ、これにより、酸化物骨格の結晶性の組成および構造の改変をもたらすことができる。結晶性アルミノケイ酸塩または置換された結晶性アルミノケイ酸塩には、ミクロ多孔性またはメソ多孔性の結晶性アルミノケイ酸塩が含まれ得るが、特定の実施形態においては、合成ミクロ多孔性の結晶性ゼオライト、および、例えば、MFI構造のもの、例えば、ZSM−5などが含まれ得る。そのうえ、結晶性アルミノケイ酸塩または置換された結晶性アルミノケイ酸塩は、特定の実施形態において、Mg塩、Ca塩、Sr塩またはBa塩の水溶液により続けて含浸することができる。特定の実施形態において、塩はハロゲン化物塩(例えば、臭化物塩など、例えば、MgBr2など)であり得る。必要な場合には、結晶性アルミノケイ酸塩または置換された結晶性アルミノケイ酸塩はまた、約0.1重量%〜約1重量%の間のPt、約0.1重量%〜5重量%の間のPd、または、約0.1重量%〜約5重量%の間のNiを金属状態で含有することができる。そのような物質は主として最初は結晶性であるが、いくつかの結晶性触媒は、最初のイオン交換または含浸に起因するか、あるいは、反応条件での操作または再生期間中の操作に起因するかのどちらであっても、結晶化度のある程度の喪失を受けることがあり、したがって、著しい非晶質特性もまた含有することがあり、それにもかかわらず、依然として、著しい活性を保持し得ること、また、いくつかの場合には改善された活性を保持し得ることに留意しなければならない。
【0039】
合成リアクター18において使用される具体的な触媒は、例えば、所望される具体的な生成物炭化水素に依存する。例えば、主としてC3、C4およびC5+のガソリン範囲の芳香族化合物、ならびに、より重質の炭化水素画分を有する生成物炭化水素が所望されるときには、ZSM−5ゼオライト触媒を使用することができる。オレフィンおよびC5+生成物の混合物を含む生成物炭化水素を製造することが所望されるときには、X型またはY型のゼオライト触媒、あるいは、SAPOゼオライト触媒を使用することができる。好適なゼオライトの例には、X型ゼオライト(例えば、10−Xゼオライトなど)またはY型ゼオライトが含まれ、だが、種々の細孔サイズおよび酸性度を有する他のゼオライトを本発明の実施形態において使用することができる。
【0040】
合成リアクター18が操作される温度は、所望される具体的な生成物炭化水素への反応の選択性を決定する際の1つのパラメーターである。例えば、X型またはY型のゼオライト触媒、あるいは、SAPOゼオライト触媒が使用され、かつ、オレフィンを製造することが所望されるときには、合成リアクター18は約250℃〜約500℃の範囲内の温度で操作することができる。合成リアクター18における、約450℃を超える温度は、軽質炭化水素(例えば、望まれないメタンなど)の増大した収量、および、同様にまた、コークスの堆積をもたらし得るが、これに対して、より低い温度は一般に、エチレン、プロピレン、ブチレン、および、より重い分子量の炭化水素の収量を増大させるにちがいない。例えば、10−Xゼオライト触媒による臭化アルキルの反応の場合には、環化反応もまた生じることがあり、その結果、C7+の画分が相当の置換芳香族を含有するようになることが考えられる。例えば、温度を上げて約400℃に近づく場合、臭素化メタンの変換が一般に、約90%以上に向かって増大するにちがいないことが考えられる;しかしながら、C5+の炭化水素に対する選択性が一般に、より軽質の生成物(例えば、オレフィンなど)に対する増大した選択性により低下するにちがいない。例えば、約550℃を超える温度では、臭素化メタンからメタンおよび炭素質コークスへの高い変換が生じることが考えられる。温度範囲が約300℃〜約450℃の間である場合、反応の副生成物として、より少量のコークスが恐らくは、運転期間中の時間の経過とともに触媒上に堆積することになり、これは、触媒活性における低下を、反応条件および供給ガスの組成に依存して、数時間から数百時間に至るまでの範囲にわたって引き起こす。逆に、範囲の下端での温度(例えば、約300℃未満の温度)はまた、より重質の生成物が触媒から脱離する低下した速度のためにコーキングの一因になり得る。したがって、合成リアクター18における約250℃〜約500℃の範囲内での操作温度、しかし、好ましくは、約350℃〜約450℃の範囲での操作温度は一般に、所望されるオレフィンおよびC5+の炭化水素の増大した選択性と、炭素形成に起因する失活のより低い速度とを、通過あたりのより高い変換に対してバランスさせなければならず、このことは、要求される触媒量、再循環割合および設備サイズを最小にするにちがいない。
【0041】
例えば、所望される生成物炭化水素が主として、C3、C4およびC5+のガソリン範囲の炭化水素画分、ならびに、より重質の炭化水素画分である場合、合成リアクター18は約150℃〜約450℃の範囲内の温度で操作することができる。合成リアクター18における、約300℃を超える温度は、軽質炭化水素の増大した収量をもたらし得るが、これに対して、より低い温度は一般に、より重い分子量の炭化水素の収量を増大させ得る。例として、臭素化メタンが約150℃もの低い温度でZSM−5ゼオライト触媒により反応する温度範囲の下端では、約20%の程度での著しい臭素化メタン変換が、C5+の炭化水素に対する大きい選択性とともに生じ得る。例えば、ZSM−5ゼオライト触媒による臭素化メタンの反応の場合には、環化反応もまた生じ、その結果、C7+の画分が主として置換芳香族を含み得るようになる。例えば、温度を上げて約300℃に近づく場合、臭素化メタンの変換が一般に、約90%以上に向かって増大するにちがいない;しかしながら、C5+の炭化水素に対する選択性が一般に低下し得るが、より軽質の生成物(具体的には望ましくないメタン)に対する選択性が増大し得る。驚くべきことに、ベンゼン成分、エタン成分またはC2〜C3オレフィン成分が、特定の実施形態によれば、例えば、ZSM−5触媒が約390℃の温度で使用されるときなどにおいては、反応流出物において典型的には存在しないか、または、ほんの非常に少量で存在するだけある。しかしながら、例えば、約450℃に近づく温度では、臭素化メタンからメタンおよび炭素質コークスへのほとんど完全な変換が生じ得る。操作温度範囲が約350℃〜約420℃の間である場合、反応の副生成物として、少量の炭素が運転期間中の時間の経過とともに触媒上に堆積することがあり、これは潜在的には、触媒活性における低下を、反応条件および供給ガスの組成に依存して、数時間から数日に至るまでの範囲にわたって引き起こす。より高い反応温度(例えば、約420℃を超える反応温度)は、メタンの形成に関連しては、臭素化アルカンの熱的クラッキング、および、炭素またはコークスの形成を容易にし、したがって、触媒の失活速度における増大を容易にすることが考えられる。逆に、範囲の下端での温度(例えば、約350℃未満の温度)はまた、より重質の生成物が触媒から脱離する低下した速度のためにコーキングの一因になり得る。したがって、合成リアクター18における約150℃〜約450℃の範囲内、しかし、好ましくは、約350℃〜約420℃の範囲、最も好ましくは、約370℃〜約400℃の範囲での操作温度は一般に、所望されるC5+の炭化水素の増大した選択性と、炭素形成に起因する失活のより低い速度とを、通過あたりのより高い変換に対してバランスさせなければならず、このことは、要求される触媒量、再循環割合および設備サイズを最小にするにちがいない。
【0042】
触媒は、合成リアクター18を通常のプロセスフローから切り離し、例えば、約1atm〜約5atmの範囲における圧力で、約400℃〜約650℃の範囲における高い温度において、不活性なガスによりパージして、触媒に吸着している未反応の物質を実用的である限りにおいて除くことによって現場で定期的に再生することができる。そのとき、堆積しているコークスは、空気または不活性ガス希釈の酸素を、例えば、約1atm〜約5atmの範囲における圧力で、約400℃〜約650℃の範囲における高い温度において合成リアクター18に加えることによって、CO2、COおよびH2Oに酸化することができる。酸化生成物、および、残留する空気または不活性なガスを、再生期間中、合成リアクター18から排出することができる。しかしながら、再生オフガスは、過剰な未反応の酸素だけでなく、少量の臭素含有化学種を含有し得るので、再生ガス流出物をプロセスの酸化部に向けることができ、プロセスの酸化部において、臭素含有化学種を元素状臭素に変換することができ、プロセス内における再使用のために回収することができる。
【0043】
図3において例示されるように、合成出口流20を合成リアクター18から抜き取ることができる。一般に、合成出口流20は、合成リアクター18において生成する生成物炭化水素およびさらなる臭化水素を含むことができる。合成出口流20はさらに、臭素化リアクター10において生成する臭化水素と、もしかすると、未反応のアルカンとを含むことができる。例として、合成出口流20は、オレフィン、C5+の炭化水素、および、さらなる臭化水素を含むことができる。さらなる例として、合成出口流20は、C3、C4およびC5+のガソリン範囲の炭化水素画分、ならびに、より重質の炭化水素画分、同様にまた、さらなる臭化水素を含むことができる。特定の実施形態において、合成出口流20に存在する炭化水素は主として芳香族を含むことができる。特定の実施形態において、合成出口流20に存在する炭化水素のC7+の画分は主として置換芳香族を含むことができる。
【0044】
図4を参照すると、図3の生成物炭化水素の製造のためのプロセスであって、生成物回収と、臭素の回収および再循環のための湿式プロセスとをさらに含むプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。例示される実施形態において、プロセスは、臭素化リアクター10と、水素化リアクター6と、合成リアクター18と、臭化水素セパレーター装置22と、臭化物酸化装置24と、生成物回収装置26とを含む。臭素化、合成、臭素の回収および再循環、ならびに、生成物回収を含むプロセスの様々な例が、米国特許第7,244,867号、米国特許第7,348,464号および米国特許出願公開第2006/0100469号においてより詳しく記載される(それらの開示全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0045】
図4において例示されるように、アルカンを含むガス状供給流12を臭素流14と一緒にすることができ、得られた混合物を臭素化リアクター10に導入することができる。臭素化リアクター10において、アルカンを臭素と反応させて、臭素化アルカンおよび臭化水素を形成することができる。臭素化された流16を臭素化リアクター10から抜き取ることができる。一般に、臭素化リアクター10から抜き取られる臭素化された流16は、多臭素化アルカンを含み得る臭素化アルカンと、臭化水素とを含む。例示される実施形態において、臭素化された流16を水素流4と一緒にすることができ、水素化リアクター6に導入することができる。水素化リアクター6において、臭素化された流16に存在する多臭素化アルカンが水素と反応して、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成することができる。臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンとを含む水素化された流8を水素化リアクター6から抜き取ることができ、合成リアクター18に導入することができる。水素化された流8はまた、臭素化リアクター10において生じた一臭素化アルカンを含む。合成リアクター18において、臭素化アルカンを触媒の存在下で発熱的に反応させて、生成物炭化水素およびさらなる臭化水素を形成することができる。合成出口流20を合成リアクター18から抜き取ることができる。一般に、合成出口流20は、合成リアクター18において生成する生成物炭化水素およびさらなる臭化水素を含むことができる。合成出口流20はさらに、臭素化リアクター10において生成する臭化水素と、もしかすると、未反応のアルカンとを含むことができる。
【0046】
上記で示されるように、図4のプロセスはさらに臭化水素セパレーター装置22を含む。例示される実施形態において、合成出口流20を臭化水素セパレーター装置22に導入することができる。臭化水素セパレーター装置22において、合成出口流20に存在する臭化水素の少なくとも一部を生成物炭化水素から分離することができる。特定の実施形態において、約98%を超え、かつ、ほぼ100%に至るまでの臭化水素を生成物炭化水素から分離することができる。臭化水素セパレーター装置22において使用される好適なプロセスの一例は、ガスであり得る合成出口流20を液体と接触させることを含むことができる。合成出口流20に存在する臭化水素は液体に溶解することができ、混合物を臭化水素流28により臭化水素セパレーター装置22から取り出すことができる。下記においてより詳しく記載されるように、生成物炭化水素を含み得る炭化水素流30を臭化水素セパレーター装置22から取り出すことができる。
【0047】
臭化水素を生成物炭化水素からスクラビング処理するために使用され得る好適な液体の1つの例には、水が含まれる。これらの実施形態において、臭化水素が水に溶解し、少なくとも一部がイオン化し、水性の酸溶液を形成する。臭化水素を生成物炭化水素からスクラビング処理するために使用され得る好適な液体の別の例には、金属水酸化物化学種、金属オキシ臭化物化学種、金属酸化物化学種またはそれらの混合物を含有する水性の部分的に酸化された金属臭化物塩溶液が含まれる。部分的に酸化された金属臭化物塩溶液に溶解する臭化水素は、金属水酸化物化学種、金属オキシ臭化物化学種、金属酸化物化学種またはそれらの混合物によって中和されて、金属臭化物塩を、臭化水素セパレーター装置22から取り出され得る臭化水素流28において形成するにちがいない。臭化物塩の好適な金属の例には、Fe(III)、Cu(II)およびZn(II)が含まれる。これは、これらの金属はあまり高価でないことがあり、また、より低い温度において、例えば、約120℃〜約200℃の範囲で酸化され得るからである。しかしながら、酸化可能な臭化物塩を形成する他の金属もまた使用することができる。特定の実施形態において、酸化可能な臭化物塩を同様に形成し得るアルカリ土類金属(例えば、Ca(II)またはMg(II)など)を使用することができる。
【0048】
前記で述べられるように、プロセスはさらに臭化物酸化装置24を含むことができる。例示される実施形態において、臭化水素流28を臭化水素セパレーター装置22から取り出すことができ、臭化物酸化装置24に導入することができる。一般に、臭化水素流28は、水を、それに溶解する臭化水素または金属臭化物塩の1つもしくは複数とともに含むことができる。臭化物酸化装置24において、臭化水素流28に存在する臭化物塩を酸化して、元素状臭素、水、および、元の金属水酸化物化学種または金属オキシ臭化物化学種(あるいは、担持された金属臭化物塩の実施形態においては金属酸化物)を形成することができる。酸素流36を、酸化のために必要とされる酸素を臭化物酸化装置24に供給するために使用することができる。酸素流36は、酸素、空気、または、酸素の別の好適な供給源を含むことができる。臭化物酸化装置24において形成される水を含む水の流38を臭化物酸化装置24から取り出すことができる。例示されていないが、特定の実施形態において、水の流38は、臭化水素を生成物炭化水素からスクラビング処理するために使用される液体として臭化水素セパレーター装置22に再循環することができる。
【0049】
臭化物酸化装置24における酸化を、例えば、約100℃〜約600℃の温度、あるいは、約120℃〜約180℃の温度で、かつ、およそ周囲圧〜約5atmの圧力で行うことができる。臭化水素が臭化物酸化装置24に先立って中和されていないならば、臭化水素を、臭化物塩を形成させるために臭化物酸化装置24において中和することができる。例として、臭化水素を、金属臭化物塩を形成するために金属酸化物により中和することができる。好適な金属塩の例には、Cu(II)、Fe(III)およびZn(II)が含まれる。だが、酸化可能な臭化物塩を形成する他の遷移金属もまた使用することができる。特定の実施形態において、酸化可能な臭化物塩を同様に形成し得るアルカリ土類金属(例えば、Ca(II)またはMg(II)など)を使用することができる。
【0050】
図4において例示されるように、臭素流14を臭化物酸化装置24から取り出すことができる。臭素流14は一般に、臭化物酸化装置24において形成される元素状臭素を含むことができる。特定の実施形態において、臭素流14を液体として臭化物酸化装置24から取り出すことができる。例示される実施形態において、臭素流14を再循環することができ、上記において記載されるように、ガス状供給流12と一緒にすることができる。したがって、臭素をプロセス内において回収および再循環することができる。
【0051】
上記において記されるように、生成物炭化水素を含む炭化水素流30を臭化水素セパレーター装置22から取り出すことができる。一般に、炭化水素流30は、臭化水素が分離された生成物炭化水素を含む。図4において例示されるように、炭化水素流30は、例えば、C5+の炭化水素を液体生成物流32として回収するために生成物回収装置26に導入することができる。液体生成物流32は、例えば、分岐アルカンおよび置換芳香族を含めて、C5+の炭化水素を含むことができる。特定の実施形態において、液体生成物流32はオレフィン(例えば、エチレンおよびプロピレンなど)を含むことができる。特定の実施形態において、液体生成物は、液化石油ガスおよびガソリン燃料の範囲における様々な炭化水素を含むことができ、この場合、そのような炭化水素は相当の芳香族含有量を含むことができ、そのため、ガソリン燃料範囲における炭化水素のオクタン価を著しく増大させる。例示されていないが、特定の実施形態において、生成物回収装置26は脱水および液体回収を含むことができる。天然ガスまたは精油所ガスの流を処理するために、また、生成物炭化水素を回収するために使用されるような、脱水および液体回収のどのような従来的方法でも、例えば、固体床乾燥(dessicant)吸着、それに続く冷凍凝縮、極低温膨張、あるいは、循環する吸収油または他の溶媒などを本発明の実施形態において用いることができる。
【0052】
生成物回収装置26からの残留蒸気流出物の少なくとも一部をアルカン再循環流34として回収することができる。アルカン再循環流34は、例えば、メタンと、潜在的には他の未反応のより低分子量のアルカンとを含むことができる。例示されるように、アルカン再循環流34を再循環することができ、ガス状供給流12と一緒にすることができる。特定の実施形態において、再循環されるアルカン再循環流34は供給ガスのモル体積の少なくとも1.5倍であり得る。図4において例示されていないが、特定の実施形態において、生成物回収装置26からの残留蒸気流出物の別の一部をプロセスのための燃料として使用することができる。加えて、図4において同様に例示されていないが、特定の実施形態において、生成物回収装置26からの残留蒸気流出物の別の一部を再循環することができ、合成リアクター18に導入される臭素化アルカンの濃度を希釈するために使用することができる。臭素化アルカンの濃度を希釈するために使用される場合、残留蒸気流出物は一般に、合成リアクター18が、変換対選択性を最大にし、かつ、炭素質コークスの堆積に起因する触媒失活の速度を最小にするために、選択された操作温度において、例えば、約300℃〜約450℃の範囲で維持されるように反応熱を吸収するために所定の速度で再循環されなければならない。したがって、再循環される蒸気流出物によってもたらされる希釈は、合成リアクター18における温度を調節することに加えて、臭素化リアクター10における臭素化の選択性が制御されることを可能にするにちがいない。
【0053】
図5を参照すると、図3の生成物炭化水素の製造のためのプロセスであって、生成物回収と、臭素の回収および再循環のための乾式プロセスとをさらに含むプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。例示される実施形態において、プロセスは、臭素化リアクター10と、水素化リアクター6と、合成リアクター18と、金属酸化物HBr除去装置40と、金属臭化物酸化装置42と、生成物回収装置26とを含む。
【0054】
図5において例示されるように、アルカンを含むガス状供給流12を臭素流14と一緒にすることができ、得られた混合物を臭素化リアクター10に導入することができる。臭素化リアクター10において、アルカンを臭素と反応させて、臭素化アルカンおよび臭化水素を形成することができる。臭素化された流16を臭素化リアクター10から抜き取ることができる。一般に、臭素化リアクター10から抜き取られる臭素化された流16は、多臭素化アルカンを含み得る臭素化アルカンと、臭化水素とを含む。例示される実施形態において、臭素化された流16を水素流4と一緒にすることができ、水素化リアクター6に導入することができる。水素化リアクター6において、臭素化された流16に存在する多臭素化アルカンが水素と反応して、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンとを形成することができる。臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンとを含む水素化された流8を水素化リアクター6から抜き取ることができ、合成リアクター18に導入することができる。水素化された流8はまた、臭素化リアクター10において生じた一臭素化アルカンを含むことができる。合成リアクター18において、臭素化アルカンを触媒の存在下で発熱的に反応させて、生成物炭化水素およびさらなる臭化水素を形成することができる。合成出口流20を合成リアクター18から抜き取ることができる。一般に、合成出口流20は、合成リアクター18において生成する生成物炭化水素およびさらなる臭化水素を含むことができる。合成出口流20はさらに、臭素化リアクター10において生成する臭化水素と、もしかすると、未反応のアルカンとを含むことができる。
【0055】
上記において示されるように、図5のプロセスはさらに金属酸化物HBr除去装置40を含む。例示される実施形態では、合成出口流20を金属酸化物HBr除去装置40に導入することができる。金属酸化物HBr除去装置40において使用される好適なプロセスの一例は、合成出口流20に存在する臭化水素を金属酸化物と反応させて、臭化物塩および水蒸気を形成することを含むことができる。ガス状臭化水素が金属酸化物(例えば、酸化マグネシウムなど)と反応する場合、金属臭化物塩および水蒸気の形成が下記の一般的な反応に従って生じる:
【0056】
【化3】
したがって、臭化水素を生成物炭化水素から分離することができる。特定の実施形態において、少なくとも約90%の臭化水素、潜在的にはほぼ100%に至るまでの臭化水素を生成物炭化水素から分離することができる。下記においてより詳しく記載されるように、生成物炭化水素と、過剰な未反応のアルカンと、水蒸気とを含み得る炭化水素流30を金属酸化物HBr除去装置40から取り出すことができる。
【0057】
臭化水素を、例えば、約600℃未満の温度で、あるいは、約50℃〜約500℃の間の温度で金属酸化物HBr除去装置40において金属酸化物と反応させることができる。例として、金属酸化物HBr除去装置40は、固相の金属酸化物の床を含有する容器またはリアクターを含むことができる。特定の実施形態において、臭化水素と、固相の金属酸化物との反応により、水蒸気と、固相の金属臭化物とが形成する。金属酸化物のための好適な金属の例には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)またはスズ(Sn)が含まれるが、これらに限定されない。臭化物塩を形成するための臭化水素との反応が約500℃未満の温度では可逆的であり得るマグネシウム、銅または鉄を特定の実施形態において使用することができる。しかしながら、特定の金属酸化物に関しては、例えば、銅および鉄に関しては、臭化水素との反応温度を、炭化水素生成物の望ましくない臭素化をもたらし得る還元された金属臭化物塩および元素状臭素への金属臭化物の熱分解を実質的に避けるために、約200℃未満および100℃未満にそれぞれ制限しなければならないことに留意しなければならない。特定の金属酸化物に関しては、例えば、酸化ニッケルに関しては、金属酸化物による炭化水素の酸化の可能性を実質的に避けるために、臭化水素との金属酸化物の反応の温度を制限することもまた重要であり得る。特定の実施形態において、固体の金属酸化物を好適な耐摩耗性担体に固定化することができ、例えば、シリカまたはアルミナなどに固定化することができる。低い比表面積〜中間の比表面積を有する不活性な担体、好ましくは、約1m2/g〜400m2/gの範囲、より好ましくは、約5m2/g〜50m2/gの範囲での比表面積を有する不活性な担体が、本発明の特定の実施形態においては、炭化水素の吸着を最小にすることにおいて好都合であり、一方で、臭化水素除去のための高い能力を達成するための良好な分散とともに、金属酸化物の比較的高い充填のための十分な面積を可能にすることが見出されている。
【0058】
以前に述べられたように、プロセスはさらに金属臭化物酸化装置42を含むことができる。本発明の特定の実施形態によれば、金属臭化物酸化装置42は、金属酸化物HBr除去装置40において形成される金属塩を、元の金属酸化物と、元素状臭素とを形成するために酸素流36と接触させることを含むことができる。酸素流36は、酸素、空気、または、酸素の別の好適な供給源を含むことができる。金属臭化物塩の酸化の場合には、酸素が下記の一般的な反応に従って金属臭化物塩(例えば、臭化マグネシウムなど)と反応する:
【0059】
【化4】
特定の実施形態において、固相の金属臭化物を、例えば、約100℃〜約500℃の温度で、酸素を含むガスと接触させることができる。当業者によって理解されるように、本開示の利益により、この乾式プロセスは、特定の実施形態において、循環様式で作動する少なくとも2つの容器またはリアクターを含むことができる。例として、そのような容器またはリアクターの1つを、臭化水素を金属酸化物との反応により除くための金属酸化物HBr除去装置40として使用することができ、一方、それ以外のリアクターまたは容器が、金属臭化物を元素状臭素に酸化するための金属臭化物酸化装置42として使用される。
【0060】
図5において例示されるように、臭素流14を金属臭化物酸化装置42から取り出すことができる。臭素流14は一般に、金属臭化物酸化装置42において形成される元素状臭素を含むことができる。特定の実施形態において、臭素流14を液体として金属臭化物酸化装置42から取り出すことができる。例示される実施形態において、臭素流14を再循環することができ、上記において記載されるように、ガス状供給流12と一緒にすることができる。したがって、臭素をプロセス内において回収および再循環することができる。
【0061】
上記において記されるように、生成物炭化水素を含む炭化水素流30を金属酸化物HBr除去装置40から取り出すことができる。一般に、炭化水素流30は、臭化水素が分離された生成物炭化水素および過剰な未反応のアルカンを含む。図5において例示されるように、炭化水素流30を、例えば、C5+の炭化水素を液体生成物流32として回収するために生成物回収装置26に導入することができる。液体生成物流32は、例えば、分岐アルカンおよび置換芳香族を含めて、C5+の炭化水素を含むことができる。特定の実施形態において、液体生成物流32はオレフィン(例えば、エチレンおよびプロピレンなど)を含むことができる。特定の実施形態において、液体生成物流32は、液化石油ガスおよびガソリン燃料の範囲、ならびに、より重質の範囲における様々な炭化水素を含むことができ、この場合、そのような炭化水素はガソリン範囲における相当の芳香族含有量を含むことができ、そのため、ガソリン燃料範囲における炭化水素のオクタン価を著しく増大させる。例示されていないが、特定の実施形態において、生成物回収装置26は脱水および液体回収を含むことができる。天然ガスまたは精油所ガスの流を処理するために、また、生成物炭化水素を回収するために使用されるような、脱水および液体回収のどのような従来的方法でも、例えば、固体床乾燥(dessicant)吸着、それに続く冷凍凝縮、極低温膨張、あるいは、循環する吸収油または他の溶媒などを本発明の実施形態において用いることができる。
【0062】
生成物回収装置26からの残留蒸気流出物の少なくとも一部をアルカン再循環流34として回収することができる。アルカン再循環流34は、例えば、メタンと、潜在的には他の未反応のより低分子量のアルカンとを含むことができる。例示されるように、アルカン再循環流34を再循環することができ、ガス状供給流12と一緒にすることができる。特定の実施形態において、再循環されるアルカン再循環流34は供給ガスのモル体積の少なくとも1.5倍であり得る。図5において例示されていないが、特定の実施形態において、生成物回収装置26からの残留蒸気流出物の別の一部をプロセスのための燃料として使用することができる。加えて、図5において同様に例示されていないが、特定の実施形態において、生成物回収装置26からの残留蒸気流出物の別の一部を再循環することができ、合成リアクター18に導入される臭素化アルカンの濃度を希釈するために使用することができる。臭素化アルカンの濃度を希釈するために使用される場合、残留蒸気流出物は一般に、合成リアクター18が、変換対選択性を最大にし、かつ、炭素質コークスの堆積に起因する触媒失活の速度を最小にするために、選択された操作温度において、例えば、約150℃〜約500℃の範囲で維持されるように反応熱を吸収するために所定の速度で再循環されなければならない。したがって、再循環される蒸気流出物によってもたらされる希釈は、合成リアクター18における温度を調節することに加えて、臭素化リアクター10における臭素化の選択性が制御されることを可能にするにちがいない。
【0063】
図1に関して上記において記載されるように、水素化リアクター6に供給される水素流4に存在する水素は、水蒸気メタン改質(「SMR」)、一酸化炭素の水性ガスシフト反応、あるいは、水、金属ハロゲン化物塩または臭化水素の電気分解を含めて、いずれかの好適な供給源により提供され得る。図6〜図9は、水素を水素化リアクター6に提供するための本発明の種々の実施形態を例示した。図6は、水蒸気メタン改質が、水素化リアクター6において使用されるための水素を提供するために使用される本発明の実施形態を例示する。図7〜図9は、電気分解が、水素化リアクター6において使用されるための水素を提供するために使用される本発明の実施形態を例示する。図7および図8は、水性電気分解を含む本発明の実施形態を例示し、一方、図9は蒸気相電気分解を例示する。
【0064】
図6を参照すると、図4の生成物炭化水素の製造のためのプロセスであって、SMRをさらに含むプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。図6では、湿式での臭素の回収および再循環を含む図4の実施形態が例示されるが、当業者は、本開示の利益により、乾式での臭素の回収および再循環をSMRとともに含む図5の実施形態もまた、本発明の実施形態に従って使用され得ることを理解する。例示される実施形態において、水蒸気メタン改質装置44が、水素化リアクター6において使用されるための水素を提供するために使用される。例示されるように、SMR供給流46を水蒸気メタン改質装置44に供給することができる。一般に、SMR供給流46はガス状供給流12の一部を含むことができる。したがって、SMR供給流46は、例えば、天然に存在しようとも、または、合成的に製造されようとも、より低分子量のアルカンを含むことができる。より低分子量のアルカンの好適な供給源の例には、天然ガス、炭層メタン、再ガス化された液化天然ガス、ガスの水和物またはクラスレート(chlathrate)あるいはそれらの組合せに由来するガス、有機物またはバイオマスの嫌気性分解に由来するガス、合成的に製造された天然ガスまたはアルカン、および、それらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、十分な量のガス状供給流12をSMR供給流46により水蒸気メタン改質装置44に供給して、水素化リアクター6に供給される多臭素化アルカンの1モルあたり少なくとも約1モルの水素を提供することができ、また、特定の実施形態においては、二臭素化メタンの1モルあたり少なくとも1モルの水素を提供することができる。
【0065】
水蒸気メタン改質装置44において、SMR供給流46におけるより低分子量の炭化水素を、例えば、触媒の存在下で、例えば、ニッケル系の触媒などの存在下で水蒸気と反応させることができる。水蒸気を水供給流48により水蒸気メタン改質装置44に供給することができる。例示される実施形態において、空気供給50は、例えば、ガス供給および/またはSMRプロセスガスの一部を燃焼させて、吸熱的な改質反応のために要求される熱を提供するために酸素を提供することができる。水蒸気メタン改質装置44は、例えば、約700℃〜約1,100℃の温度で操作することができる。メタンの場合、水蒸気は下記の一般的な反応に従ってメタンと反応し得る:
【0066】
【化5】
水蒸気メタン改質装置44において生じる水素を含む水素流4を水蒸気メタン改質装置44から取り出すことができ、水素化リアクター6に供給することができる。上記において示されるように、水素が多臭素化アルカンと水素化リアクター6において反応して、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成することができる。水素流4に加えて、二酸化炭素および水を含む二酸化炭素/水の流52もまた、水蒸気メタン改質装置44から取り出すことができる。
【0067】
図7を参照すると、図4の生成物炭化水素の製造のためのプロセスであって、電気分解をさらに含むプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。例示される実施形態において、液相電気分解装置54が、水素化リアクター6において使用されるための水素を提供するために使用される。例示されるように、臭化水素供給流56を電気分解装置54に供給することができる。一般に、臭化水素供給流56は、臭化水素セパレーター装置22から取り出され得る臭化水素流28の一部を含むことができる。したがって、臭化水素供給流56は、例えば、水と、水に溶解する臭化水素とを含むことができる。
【0068】
液相電気分解装置54において、臭素を、臭化水素供給流56に存在する臭化水素から回収することができる。電気エネルギーを使用して、臭化水素の少なくとも一部を電気分解して、元素状の臭素および水素を形成することができる。水性の塩酸溶液(HCl)の電気分解では、Uhdeプロセスが使用され得るが、Uhdeプロセスはまた、もしかすると、水性臭化水素酸の電気分解のために、例えば、臭化水素供給流56に溶解する臭化水素の電気分解のために適合化され得る。図9において例示されていないが、1つまたは複数の電気分解セルを液相電気分解装置54において含むことができる。当業者は、本開示の利益により、それらの電気分解セルが、本発明の特定の実施形態によれば、並行または連続して操作され得ることを理解する。臭化水素の電気分解では、電気エネルギーを、水と、水に溶解する臭化水素とを含む臭化水素供給流56に通すことができ、臭素が電気分解セルのアノードで生じ、水素が電気分解セルのカソードで生じる。例示されていないが、水素および臭素を分離するために要求されるエネルギーを電力供給によって提供することができる。
【0069】
例として、臭化水素の電気分解を、電気分解セルのアノード電極およびカソード電極においてそれぞれ生じる下記の一般的な半反応に従って行うことができる:
【0070】
【化6】
特定の実施形態において、十分な量の臭化水素流28を臭化水素供給流56により電気分解装置54に供給して、水素化リアクター6に供給される多臭素化アルカンの1モルあたり少なくとも約1モルの水素を提供することができ、また、特定の実施形態においては、二臭素化メタンの1モルあたり少なくとも1モルの水素を提供することができる。
【0071】
液相電気分解装置54において生じる水素を含む水素流4を液相電気分解装置54から取り出すことができ、水素化リアクター6に供給することができる。上記において示されるように、水素が多臭素化アルカンと水素化リアクター6において反応して、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成することができる。水素流4に加えて、液相電気分解装置電気分解装置54において生じる臭素を含む生じた臭素流58を取り出すことができ、臭素化リアクター10に供給される臭素流14と一緒にすることができる。
【0072】
酸化された水性の金属塩溶液が、臭化水素を、臭化水素が中和されて、金属臭化物塩および水を形成するようにスクラビング処理により除くために使用される場合、液相電気分解装置54への臭化水素供給流56は金属臭化物塩および水を含む。これらの実施形態においては、水性の金属臭化物が電気分解されて、元素状臭素と、還元された金属イオンまたは元素状金属とを生じさせることができる。さらなる例として、金属臭化物塩(例えば、Fe(III)Br2)の電気分解を、電気分解セルのアノード電極およびカソード電極においてそれぞれ生じる下記の一般的な半反応に従って行うことができる:
【0073】
【化7】
特定の実施形態において、空気または酸素を、下記の反応に従って金属イオン(例えば、第一鉄イオン)を金属水酸化物にさらに酸化し、かつ、電極を部分的に脱分極するために、カソードを覆って通すことができる:
【0074】
【化8】
図8を参照すると、図5の生成物炭化水素の製造のためのプロセスであって、電気分解をさらに含むプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。例示される実施形態において、液相電気分解装置54が、水素化リアクター6において使用されるための水素を提供するために使用される。例示されるように、プロセスはさら、液相電気分解装置54と、臭化水素吸収装置60とを含む。合成出口流20の一部は金属酸化物HBr除去装置40を避けて迂回することができ、吸収装置供給流62により臭化水素吸収装置60に供給することができる。したがって、吸収装置供給流62は生成物炭化水素および臭化水を含むことができる。特定の実施形態において、十分な量の臭化水素を迂回させて、水素化リアクター6に供給される多臭素化アルカンの1モルあたり少なくとも約1モルの水素を提供することができ、また、特定の実施形態においては、二臭素化メタンの1モルあたり少なくとも1モルの水素を提供することができる。
【0075】
臭化水素吸収装置60において、臭化水素を、吸収装置供給流62に存在する生成物炭化水素から分離することができる。臭化水素を生成物炭化水素から分離するための好適なプロセスの一例は、ガスであり得る吸収装置供給流62を液体(例えば、スクラビング処理流64など)と接触させることを含む。吸収装置供給流62に存在する臭化水素を液体に溶解させることができる。臭化水素を生成物炭化水素からスクラビング処理により除くために使用され得る好適な液体の1つの例には、水が含まれる。例示されるように、スクラビング処理流64は、生成物回収装置26からの水を含むことができる。これらの実施形態において、臭化水素が水に溶解し、少なくとも一部がイオン化し、水性の酸溶液を形成する。他の実施形態において、上記において記載されるように、酸化された水性の金属塩溶液を使用して、臭化水素を、臭化水素が中和されて、金属臭化物塩および水を形成するようにスクラビング処理により除くことができる。臭化水素がスクラビング処理されている生成物炭化水素を含むスクラビング処理された炭化水素流66を、その後、生成物回収装置26に提供することができ、また、水と、水に溶解する臭化水素(または金属臭化物塩)とを含む電気分解供給流68を液相電気分解装置54に提供することができる。
【0076】
液相電気分解装置54において、臭素を、電気分解供給流68に存在する臭化水素から回収することができる。電気エネルギーを使用して、臭化水素の少なくとも一部を電気分解して、元素状の臭素および水素を形成することができる。水性の塩酸溶液(HCl)の電気分解では、Uhdeプロセスが使用され得るが、Uhdeプロセスはまた、もしかすると、水性臭化水素酸の電気分解のために、例えば、電気分解供給流68に溶解する臭化水素の電気分解のために適合化され得る。臭化水素の電気分解では、電気エネルギーを、水と、水に溶解する臭化水素とを含む電気分解供給流68に通すことができ、臭素が電気分解セルのアノードで生じ、水素が電気分解セルのカソードで生じる。臭化水素の電気分解を、式(7)および式(8)において上記で示される半反応に従って行うことができる。酸化された水性の金属塩溶液が、臭化水素を、臭化水素が中和されて、金属臭化物塩および水を形成するようにスクラビング処理により除くために使用される場合、水性の金属臭化物が電気分解されて、元素状臭素と、還元された金属イオンまたは元素状金属とを形成することができる。金属臭化物塩(例えば、Fe(III)Br2)の電気分解を、式(9)および式(10)において上記で示される半反応に従って行うことができる。特定の実施形態において、空気または酸素を、式(11)において上記で示される反応に従って金属イオン(例えば、第一鉄イオン)を金属水酸化物にさらに酸化し、かつ、電極を部分的に脱分極するために、カソードを覆って通すことができる。
【0077】
特定の実施形態において、十分な量の臭化水素流28を臭化水素供給流56により電気分解装置54に供給して、水素化リアクター6に供給される多臭素化アルカンの1モルあたり少なくとも約1モルの水素を提供することができ、また、特定の実施形態においては、二臭素化メタンの1モルあたり少なくとも1モルの水素を提供することができる。
【0078】
液相電気分解装置54において生じる水素を含む水素流4を液相電気分解装置54から取り出すことができ、水素化リアクター6に供給することができる。上記において示されるように、水素が多臭素化アルカンと水素化リアクター6において反応して、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成することができる。水素流4に加えて、液相電気分解装置54において生じる臭素を含む生じた臭素流58を取り出すことができ、臭素化リアクター10に供給される臭素流14と一緒にすることができる。
【0079】
図9を参照すると、図3の生成物炭化水素の製造のためのプロセスであって、生成物回収および電気分解をさらに含むプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。例示されるように、プロセスはさらに、生成物回収装置72と、蒸気相電気分解装置76と含む。例示される実施形態において、蒸気相電気分解装置76は、水素化リアクター6において使用されるための水素を提供するための、プロセスで生じる臭化水素の気相電気分解のために使用される。加えて、図9の実施形態はまた、過剰な水素を生成物として生じさせることができる。
【0080】
図9において例示されるように、合成出口流30を、例えば、C5+の炭化水素を液体生成物流32として回収するために生成物回収装置72に導入することができる。液体生成物流32は、例えば、分岐アルカンおよび置換芳香族を含めて、C5+の炭化水素を含むことができる。特定の実施形態において、液体生成物流32はオレフィン(例えば、エチレンおよびプロピレンなど)を含むことができる。特定の実施形態において、液体生成物流32は液化石油ガスおよびガソリン燃料の範囲における様々な炭化水素を含むことができ、この場合、そのような炭化水素は相当の芳香族含有量を含むことができ、そのため、ガソリン燃料範囲における炭化水素のオクタン価を著しく増大させる。例示されていないが、特定の実施形態において、生成物回収装置72は脱水および液体回収を含むことができる。天然ガスまたは精油所ガスの流を処理するために、また、生成物炭化水素を回収するために使用されるような、脱水および液体回収のどのような従来的方法でも、例えば、固体床乾燥(dessicant)吸着、それに続く冷凍凝縮、極低温膨張、あるいは、循環する吸収油または他の溶媒などを本発明の実施形態において用いることができる。
【0081】
生成物回収装置72からの蒸気流出流74を蒸気相電気分解装置76に供給することができる。特定の実施形態において、蒸気流出流74は、生成物回収装置72において回収されなかったメタンおよび他の未反応のより低分子量のアルカンを含むことができる。加えて、蒸気流出流74はさらに、生成物回収装置72に導入された合成出口流30に存在した臭化水素を含むことができる。蒸気相電気分解装置76において、臭化水素の電気分解は、電気エネルギーを使用して、臭化水素の少なくとも一部を電気分解して、元素状臭素をアノードで形成し、水素をカソードで形成することを含むことができる。臭化水素の電気分解を、式(7)および式(8)において上記で示される半反応に従って行うことができる。臭化水素の蒸気相電気分解のための例示的プロセスが米国特許第5,411,641号に記載される(その開示全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0082】
1つの実施形態において、蒸気流出流74を、カチオン輸送膜と、膜のそれぞれの面と接触してそれぞれが配置されるアノードおよびカソードとを含む電気分解セルの入口から導入することができる。電気分解セルにおいて、臭化水素の分子がアノードで還元されて、臭素ガスおよび水素カチオンを生じさせることができる。水素カチオンは、プロトンの水素カチオンがカソード表面で電子と一緒になって、水素ガスを形成するカソード側にまで膜を通って輸送され得る。好適なカチオン輸送膜の例には、フルオロモノマーまたはペルフルオロモノマーを含むカチオン性膜、例えば、ペンダントスルホン酸基をそれらのうちの少なくとも1つが含有する2つ以上のフルオロモノマーまたはペルフルオロモノマーのコポリマーなどが含まれる。好適なカチオン輸送膜の別の例には、プロトン伝導性のセラミックス、例えば、β−アルミナなどが含まれる。
【0083】
別の実施形態において、蒸気流出流74を、アニオン輸送膜(例えば、溶融塩飽和膜)を、膜の反対側にそれぞれが配置されるアノードおよびカソードとともに含む電気分解セルのカソード側に導入することができる。電気分解セルにおいて、臭化水素の分子がカソードで還元され、そして、電子と一緒になって、水素ガスおよび臭化物アニオンを生じさせることができる。その後、臭化物アニオンは、臭化物アニオンが電子を遊離させ、一緒になって、臭素を形成するアノード側にまで膜を通って輸送され得る。
【0084】
蒸気相電気分解装置76において生じる水素を含む生成物水素流78を蒸気相電気分解装置76から取り出すことができる。生成物水素流78の一部を水素流4として水素化リアクター6に供給することができる。特定の実施形態において、十分な量の水素を水素化リアクターに提供して、水素化リアクター6に供給される多臭素化アルカンの1モルあたり少なくとも約1モルの水素を提供することができ、また、特定の実施形態においては、二臭素化メタンの1モルあたり少なくとも1モルの水素を提供することができる。生成物水素流78における水素の残る部分を生成物としてプロセスから抜き取ることができる。特定の実施形態において、例えば、水素に対する局在的な要求がないかもしれない場合には、さらに2つの電気分解セルを並行して使用することができ、この場合、1つまたは複数が、空気がカソードを覆って通される空気脱分極されたカソードとともに操作され、これにより、水素ではなく、むしろ、水の蒸気が生じる。セルを空気脱分極されたカソードとともに操作することは、電気分解のために要求される電圧および電力を減らすことができる。
【0085】
蒸気相電気分解装置76において生じる臭素をアルカン/臭素再循環流77により臭素化リアクター10に再循環することができる。臭素に加えて、アルカン/臭素再循環流77はまた、蒸気相電気分解装置76に導入される蒸気流出流74に存在したアルカンの少なくとも一部を含むことができる。アルカン/臭素再循環流77は、例えば、臭素、メタン、および、潜在的には他の未反応のより低分子量のアルカンを含むことができる。例示されるように、アルカン/再循環流34を再循環することができ、ガス状供給流12と一緒にすることができる。アルカン/再循環流77における臭素が臭素化リアクター10においてガス状供給流12と反応することができる。例示されていないが、特定の実施形態において、ガス状供給流はまた、臭素の補給流と一緒にすることができる。特定の実施形態において、アルカン/臭素再循環流34において再循環されるアルカンは供給ガスのモル体積の少なくとも1.5倍であり得る。図9において例示されていないが、特定の実施形態において、蒸気相電気分解装置76から回収されるアルカンの別の一部をプロセスのための燃料として使用することができる。加えて、図9において同様に例示されていないが、特定の実施形態において、蒸気相電気分解装置76から回収されるアルカンの別の一部を再循環することができ、合成リアクター18に導入される臭素化アルカンの濃度を希釈するために使用することができる。臭素化アルカンの濃度を希釈するために使用される場合、残留蒸気流出物は一般に、合成リアクター18が、変換対選択性を最大にし、かつ、炭素質コークスの堆積に起因する触媒失活の速度を最小にするために、選択された操作温度において、例えば、約300℃〜約450℃の範囲で維持されるように反応熱を吸収するために所定の速度で再循環されなければならない。したがって、再循環される蒸気流出物によってもたらされる希釈は、合成リアクター18における温度を調節することに加えて、臭素化リアクター10における臭素化の選択性が制御されることを可能にするにちがいない。
【0086】
図10〜図14は、一臭素化アルカンおよび臭化水素が水素化リアクター6を避けて迂回される、生成物炭化水素の製造のための本発明の実施形態を例示する。図10〜図14の構成における水素化リアクター6は、以前に記載される一連の構成よりも濃縮された反応物の減少した流を有するので、水素化リアクター6は、より小さいサイズのものにすることができ、このことは潜在的には、より少ない触媒を必要とし、また、プロセス全体にわたる圧力低下を減らす。
【0087】
図10〜図14において例示されるように、臭素化された流16を臭素化リアクター10から取り出すことができる。一般に、臭素化された流16は臭素化アルカンおよび臭化水素を含むことができる。臭素化された流16に存在する臭素化アルカンは一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含むことができる。多臭素化アルカンの分離のために、臭素化された流16を第1の熱交換器80に導入することができる。多臭素化アルカンは、臭素化された流16の他の成分(例えば、一臭素化アルカン、臭化水素、および、残留メタンまたは他の軽質アルカンなど)と比較して高い沸点を有するので、多臭素化アルカンを、臭素化された流16を第1の熱交換器80において冷却することによって容易に凝縮させることができる。臭素化された流16は、例えば、約10℃〜約90℃の温度に冷却することができる。
【0088】
ガス状の臭素化された流出物82を第1の熱交換器80から取り出すことができ、合成リアクター供給流86を形成するために第2の熱交換器84において再加熱することができる。第2の熱交換器84において、ガス状の臭素化された流出物82を、例えば、約300℃〜約400℃の温度に加熱することができる。一般に、ガス状の臭素化された流出物82は、第1の熱交換器80において凝縮されなかった臭素化された流16の一部を含むことができる。例として、ガス状の臭素化された流出物82は、一臭素化アルカン、臭化水素、残留メタンまたは他の軽質アルカン、および、凝縮していない一部の残留する多臭素化アルカンを含むことができる。
【0089】
凝縮した臭素化された流88を第1の熱交換器80から取り出すことができ、水素化リアクター供給流92を形成するために第3の熱交換器90において蒸発させることができる。第3の熱交換器90において、凝縮後の臭素化された流88を、例えば、約200℃〜約450℃の温度に加熱して、多臭素化アルカンを蒸発させることができる。一般に、凝縮後の臭素化された流88は、第1の熱交換器80において凝縮された臭素化された流16の一部を含むことができる。例として、凝縮後の臭素化された流88は、多臭素化アルカンと、多臭素化アルカンと一緒に凝縮されている少量の一臭素化アルカンとを含むことができる。例えば、臭素化リアクター10において形成される多臭素化アルカンの少なくとも一部を第1の熱交換器80において凝縮させることができ、その後、第3の熱交換器90において蒸発させることができる。
【0090】
例示される実施形態において、第3の熱交換器90からの水素化リアクター供給流92を水素流4と一緒にすることができ、水素化リアクター6に導入することができる。水素化リアクター6において、水素化リアクター供給流92に存在する多臭素化アルカンが水素と反応して、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成することができる。本発明の実施形態によれば、水素化リアクター6は、本質的にはすべての多臭素化アルカンが一臭素化アルカンに変換され得るという点で、高い、ほぼ100%に至るまでの選択性により一臭素化アルカンおよび臭化水素を形成するために操作され得ることが考えられる。より高い温度は、多臭素化アルカンの見かけ上の高い変換をもたらす一方で、コーキングもまた加速させることが考えられる。したがって、より大きいリアクターが、多臭素化アルカンの高い変換を達成するために要求されるという犠牲を払うが、より低い温度での運転が、コークスの形成に起因する損失がより少ないことのために、また、より遅い触媒失活のために許容され得ることがある。高い活性が酸素含有ガス混合物または空気による再生によって触媒に戻り得ることが見出されている。
【0091】
臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンとを含む濃縮された水素化された流94を水素化リアクター6から抜き取ることができる。例として、水素化リアクターから抜き取られる濃縮された水素化された流94は臭化水素および一臭素化アルカンを含むことができる。水素化リアクター6および水素流4は上記において図1に関してより詳しく記載される。濃縮された水素化された流94を合成リアクター供給流86と一緒にすることができ、合成リアクター18に導入することができる。図10〜図14の合成リアクター18および他の構成要素は上記においてそれらの図に関してより詳しく記載される。
【0092】
本発明のより良い理解を容易にするために、いくつかの実施形態の特定の局面の下記の実施例が示される。いかなる点においても、下記の実施例は、本発明の範囲全体を限定するために、または、規定するために理解してはならない。
【実施例】
【0093】
(実施例1)
二臭素化メタン、メタンおよび水素の混合物を、およそ750hr−1のガス毎時空間速度(これは、リットル単位での総リアクター触媒床体積(触媒床多孔度を含む)によって除される1時間あたりの標準リットルでのガス流速として定義される)で、触媒上で60psigにおいて390℃で反応させた。触媒は、低表面積のシリカ担体に分散される臭化第二鉄を含んでいた。図15は、時間に対する二臭素化メタンの変換を例示するグラフである。図16は、リアクターに入る流およびリアクターから出る流における二臭素化メタンおよび一臭素化メタンの濃度を例示するグラフである。図17は、リアクターに入る流およびリアクターから出る流における臭化水素および水素の濃度を例示するグラフである。本実施例によって例示されるように、一臭素化メタンへの二臭素化メタンの変換をほぼ100%の選択性により行うことができる。加えて、二臭素化メタンが、この触媒による水素化に関しては、一臭素化メタンよりも実質的に反応性であることもまた、これらの結果から推測することができる。その他の点では、臭素化メタンが部分的または完全にメタンおよびHBrに変換されていると考えられる。
【0094】
(実施例2)
二臭素化メタン、メタンおよび水素の混合物を、およそ750hr−1のガス毎時空間速度で触媒上で390℃および60psigで反応させた。触媒は、低表面積のシリカ担体に分散される白金を含んでいた。図18は、時間に対する二臭素化メタンの変換を例示するグラフである。図19は、リアクターに入る流およびリアクターから出る流における二臭素化メタンおよび一臭素化メタンの濃度を例示するグラフである。図20は、リアクターに入る流およびリアクターから出る流における臭化水素および水素の濃度を例示するグラフである。加えて、二臭素化メタンが、この触媒による水素化に関して、一臭素化メタンよりも実質的に反応性であることもまた、これらの結果から推測することができる。その他の点では、臭素化メタンが部分的または完全にメタンおよびHBrに変換されていると考えられる。
【0095】
したがって、本発明は、述べられる目的および利点、ならびに、本発明において固有である目的および利点を達成するために十分に適合化される。上記において開示される具体的な実施形態は単に例示にすぎない。これは、本発明が、本明細書中の教示の利益を有する当業者には明らかな、異なるが、同等な様式で改変および実施され得るからである。さらに、どのような限定も、下記の特許請求の範囲において記載されるような限定以外は、本明細書中に示される構成または設計の細部に対して意図されない。したがって、上記において開示される具体的な例示的実施形態は変更または改変することができ、かつ、すべてのそのような変化が、本発明の範囲および精神の範囲内であると見なされることが明白である。特に、本明細書中に開示される(「約a〜約b(約aから約bまで)」、または、同等に、「およそa〜b(およそaからbまで)」、または、同等に、「およそa〜b(およそa−b)」の形態の)値の範囲はどれも、値のそれぞれの範囲のべき集合(すべての部分集合の集合)を示すとして理解しなければならず、また、値のより広い範囲の範囲内に包含されるどの範囲も示すものとする。そのうえ、不定冠詞の「a」または「an」は、特許請求の範囲において使用される場合、不定冠詞が付け加えられる要素の1つまたは2つ以上を意味するために本明細書中では定義される。また、特許請求の範囲における用語は、特許権者によって明示的かつ明確に別途定義される場合を除き、その平易な通常の意味を有する。
(項目1) 少なくとも水素および多臭素化アルカンを、触媒の存在下で反応させ、該水素と反応させられる該多臭素化アルカンよりも少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンを含む水素化された流を形成する工程、
を含む方法。
(項目2) 前記多臭素化アルカンが二臭素化メタンを含み、かつ、前記より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンが一臭素化メタンを含む、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記触媒が、臭素との多数の熱的に可逆的な錯体を形成することができる触媒を含む、項目1に記載の方法。
(項目4) 前記触媒が、担体に付着する酸化鉄、および、担体に分散される白金からなる群から選択される触媒を含む、項目1に記載の方法。
(項目5) 臭素化アルカンを含む臭素化生成物を、アルカンおよび臭素を含む臭素化反応物から形成する工程であって、ここで、該臭素化アルカンは一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含む、工程;
さらなる一臭素化アルカンを含む水素化生成物を、水素と、該臭素化反応物から形成される該多臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む水素化反応物から形成する工程;および
炭化水素を含む合成生成物を、反応物である一臭素化された臭素化合物を含む合成反応物から形成する工程であって、ここで、該反応物である一臭素化された臭素化合物は、該臭素化反応物から形成される該一臭素化アルカンの少なくとも一部と、該水素化反応物から形成される該さらなる一臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む工程、
を含む方法。
(項目6) 前記臭素化アルカンに存在する前記多臭素化アルカンが二臭素化メタンを含む、項目5に記載の方法。
(項目7) 前記臭素化生成物を形成する工程が、少なくとも前記アルカンおよび前記臭素を触媒の存在下で反応させる工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目8) 前記水素化生成物を形成する工程が、少なくとも前記水素および前記多臭素化アルカンの一部を触媒の存在下で反応させる工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目9) 前記触媒が、臭素との多数の熱的に可逆的な錯体を形成することができる触媒を含む、項目8に記載の方法。
(項目10) 前記触媒が、担体に付着する酸化鉄、および、担体に分散される白金からなる群から選択される触媒を含む、項目8に記載の方法。
(項目11) 少なくともアルカンと、生成水素を形成するための流とを反応させる工程であって、ここで、前記水素化反応物に存在する前記水素が該生成する水素を含む工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目12) 臭化水素を電気分解して、生成水素を形成する工程であって、ここで、前記水素化反応物に存在する前記水素が該生成水素を含む工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目13) 金属臭化物塩を電気分解して、生成水素を形成する工程であって、ここで、前記水素化反応物に存在する前記水素が前記生成水素を含む工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目14) 前記合成生成物を形成する工程が、少なくとも前記反応物である一臭素化アルカンを触媒の存在下で反応させる工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目15) 前記触媒が、合成結晶性アルミノケイ酸塩酸化物骨格を含む、項目14に記載の方法。
(項目16) C5+の炭化水素を含む液体生成物流を回収する工程であって、ここで、該C5+の炭化水素が、合成生成物を形成する工程において形成される前記炭化水素に存在する工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目17) オレフィンを含む液体生成物流を回収する工程であって、ここで、該オレフィンが、合成生成物を形成する工程において形成される前記炭化水素に存在する、項目5に記載の方法。
(項目18) 該臭化水素を水に溶解することによって、前記合成生成物に存在する前記炭化水素の少なくとも一部から臭化水素を分離する工程;
該臭化水素の少なくとも一部を中和し、金属臭化物塩を形成する工程;および
該金属臭化物塩の少なくとも一部を酸化し、回収臭素を含む酸化生成物を形成する工程;および
該酸化工程において形成される該回収臭素を再循環させる工程であって、ここで、該回収臭素は、さらなる臭素化アルカンを形成することにおいて使用される、工程、
を含む、項目5に記載の方法。
(項目19) 前記臭化水素の別の一部を電気分解し、生成水素およびさらなる回収臭素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該生成水素を再循環する工程;および
該さらなる回収臭素を再循環する工程
を含む、項目18に記載の方法。
(項目20) 前記金属臭化物塩の別の一部を電気分解し、生成水素およびさらなる回収臭素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該生成水素を再循環する工程;および
該さらなる回収臭素を再循環する工程
を含む、項目18に記載の方法。
(項目21) 臭化水素を、前記合成生成物に存在する前記炭化水素の少なくとも一部から分離する工程であって、前記臭化水素を金属酸化物と反応させ、金属臭化物を形成する工程を含む、工程;
該金属臭化物を酸化し、該金属酸化物と、回収臭素とを含む酸化生成物を形成する工程;および
該酸化工程において形成される該回収臭素を再循環する工程であって、ここで、該回収臭素は、さらなる臭素化アルカンを形成する工程において使用される、工程
を含む、項目5に記載の方法。
(項目22) 前記臭化水素を分離する工程に先立って、前記合成生成物を、第1の合成生成物の流と、第2の合成生成物の流とに分離する工程であって、ここで、該第1の合成生成物の流は、前記金属酸化物と反応させられる前記炭化水素の前記一部を含む、工程;
さらなる臭化水素を該第2の合成生成物の流に存在する炭化水素から分離する工程;および
該さらなる臭化水素の少なくとも一部を電気分解し、生成水素およびさらなる回収臭素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該生成水素を再循環する工程;および
該回収臭素を再循環する工程
を含む、項目21に記載の方法。
(項目23) 前記臭化水素を分離する工程に先立って、前記合成生成物を、第1の合成生成物の流と、第2の合成生成物の流とに分離する工程であって、ここで、該第1の合成生成物の流は、前記金属酸化物と反応させられる前記炭化水素の前記一部を含む、工程;
さらなる臭化水素を該第2の合成生成物の流に存在する炭化水素から分離する工程;
該さらなる臭化水素を中和し、金属臭化物塩を含む中和生成物を形成する工程;
該さらなる金属臭化物塩の少なくとも一部を電気分解し、生成水素およびさらなる回収臭素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該生成水素を再循環する工程;および
該さらなる回収臭素を再循環する工程
を含む、項目21に記載の方法。
(項目24) 前記合成生成物を生成物回収装置に導入する工程であって、ここで、前記合成生成物は、臭化水素および未反応のメタンをさらに含む、工程;
生成物炭化水素を含む液体生成物流を前記生成物回収装置から取り出すこと;
該臭化水素および該未反応のメタンを含む流を該生成物回収装置から取り出す工程;
該臭化水素の少なくとも一部を電気分解し、回収臭素および生成水素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該回収臭素を再循環する工程;および
該生成水素の少なくとも一部を再循環する工程
を含む、項目5に記載の方法。
(項目25) 前記電気分解工程において使用される少なくとも1つの電気分解セルを、前記電気分解生成物がさらに水を含むように空気脱分極モードで操作する工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目26) 前記臭素化生成物を、バイパス流と、前記水素化反応物を含む水素化供給流とに分離する工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目27) 前記分離工程が、前記臭素化生成物を冷却することを含む、項目26に記載の方法。
(項目28) 前記バイパス流を加熱する工程;および
前記水素化供給流を加熱する工程
を含む、項目27に記載の方法。
(項目29) 臭素化アルカンを含む臭素化生成物を、アルカンおよび臭素を含む臭素化反応物から形成するために構成される臭素化リアクターであって、該臭素化アルカンが一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含む、臭素化リアクター;
該臭素化リアクターと流体連絡しており、かつ、さらなる一臭素化アルカンを含む水素化生成物を、水素と、該臭素化リアクターからの該多臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む水素化反応物から形成するために構成される水素化リアクター;および
該水素化リアクターと流体連絡しており、かつ、反応物である一臭素化された臭素化合物を含む合成反応物からの炭化水素を含む合成生成物を形成するために構成される合成リアクターであって、該反応物である一臭素化された臭素化合物が、該臭素化リアクターからの該一臭素化アルカンの少なくとも一部と、該水素化リアクターからの該さらなる一臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む、合成リアクター
を含むシステム。
【技術分野】
【0001】
本発明は多臭素化アルカンの水素化に関連し、より具体的には、1つまたは複数の実施形態において、一臭素化アルカンが、多臭素化アルカンを含む流を水素と接触させることによって形成される方法およびシステムに関連する。
【背景技術】
【0002】
モノハロゲン化アルカンが、アルコール、エーテル、オレフィンおよび高級炭化水素(例えば、C3、C4およびC5+のガソリン範囲の炭化水素、ならびに、より重質の炭化水素など)(これらに限定されない)を含めて、様々な望ましい製造物の製造において使用され得る。例えば、モノハロゲン化アルカンを、金属酸化物により、対応するアルコールに変換することができる。別の例では、一臭素化アルカンを、適切な触媒により、より高分子量の炭化水素に変換することができる。
【0003】
モノハロゲン化アルカンを製造するために、アルカンを臭素源により臭素化することができる。1つの例では、より低分子量のアルカンを含むガス状供給物を、臭素化アルカンを形成するために臭素蒸気と反応させることができる。アルカンの臭素化は、一臭素化アルカンに関してはそれ相応に選択的であり得るが、著しい量の多臭素化アルカンもまた生じ得る。例えば、メタンの非触媒的臭素化が約4:1〜約9:1の範囲における過剰なメタンとともに行われる場合、反応選択性が一般に、約70%〜約80%の一臭素化メタンおよび約20%〜約30%の二臭素化メタンの範囲であり得る。しかしながら、応用に依存して、多臭素化アルカン(例えば、二臭素化メタンなど)はそれほど望ましい副生成物でない場合がある。例として、二臭素化メタンは、二臭素化メタンの存在がコークス形成を促進させることがあり、また、合成触媒を失活させることがあるという点で、その後の炭化水素合成反応において望ましくないことがある。
【0004】
一臭素化アルカンに関する選択性を改善するために、臭素化反応が、より過剰なアルカンとともに行われることがある。しかしながら、アルカンの量を増大することは、系における生成物および反応物を希釈し、そのため、より多量のメタンおよび他の軽質アルカンを系内において再循環することが潜在的に要求され、このことは、例えば、より多量のアルカンを取り扱うために必要とされる反応槽および配管の増大したサイズに起因する増大した電力コストおよび処理コストをもたらし得る。別の例では、多臭素化アルカン(例えば、二臭素化メタンなど)を軽質アルカン(例えば、メタンよりも反応性であり得るC2〜C4アルカンなど)と反応させて、一臭素化アルカンを形成させることができる。しかしながら、軽質アルカンとの二臭素化アルカンおよび三臭素化アルカンの反応は一般に速度論的には遅く、そのため、1分以上に至るまでの長い滞留時間を必要とし、かつ、一臭素化アルカン(例えば、一臭素化メタンおよび一臭素化エタンなど)に対してあまり選択的ではなく、また、もしかすると、フリーラジカル連鎖反応に起因するかもしれないある程度のコーキングもまた生じることがあり、そのため、有用な製造物への炭素変換の効率が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は多臭素化アルカンの水素化に関連し、より具体的には、1つまたは複数の実施形態において、一臭素化アルカンが、多臭素化アルカンを含む流を水素と接触させることによって形成される方法およびシステムに関連する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の1つは、少なくとも水素および多臭素化アルカンを、水素と反応させられる多臭素化アルカンよりも少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンを含む水素化された流を形成するために触媒の存在下で反応させることを含む方法を含む。
【0007】
本発明の別の実施形態は、臭素化アルカンを含む臭素化生成物を、アルカンおよび臭素を含む臭素化反応物から形成すること(ここで、臭素化アルカンは一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含む);さらなる一臭素化アルカンを含む水素化生成物を、水素と、臭素化反応物から形成される多臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む水素化反応物から形成すること;および、炭化水素を含む合成生成物を、反応物である一臭素化された臭素化合物を含む合成反応物から形成すること(ここで、反応物である一臭素化された臭素化合物は、臭素化反応物から形成される一臭素化アルカンの少なくとも一部と、水素化反応物から形成されるさらなる一臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む)を含む方法を含む。
【0008】
本発明の別の実施形態は、臭素化アルカンを含む臭素化生成物を、アルカンおよび臭素を含む臭素化反応物から形成するために構成される臭素化リアクターであって、臭素化アルカンが一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含む、臭素化リアクター;臭素化リアクターと流体連絡しており、かつ、さらなる一臭素化アルカンを含む水素化生成物を、水素と、臭素化リアクターからの多臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む水素化反応物から形成するために構成される水素化リアクター;および、水素化リアクターと流体連絡しており、かつ、反応物である一臭素化された臭素化合物を含む合成反応物からの炭化水素を含む合成生成物を形成するために構成される合成リアクターであって、反応物である一臭素化された臭素化合物が、臭素化リアクターからの一臭素化アルカンの少なくとも一部と、水素化リアクターからのさらなる一臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む、合成リアクターを含むシステムを含む。
【0009】
本発明の特徴および利点が当業者には容易に明らかになる。数多くの変化が当業者によってなされ得るが、そのような変化は本発明の精神の範囲内である。
【0010】
これらの図面は本発明の実施形態のうちのいくつかの特定の局面を例示しており、本発明を限定するために、または、本発明を規定するために使用してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、多臭素化アルカンの水素化のためのプロセスの例示的ブロック図である。
【図2】図2は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、臭素化を含む多臭素化アルカンの水素化のためのプロセスの例示的ブロック図である。
【図3】図3は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、臭素化および水素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスの例示的ブロック図である。
【図4】図4は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、臭素化および水素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスの別の例示的ブロック図である。
【図5】図5は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、臭素化および水素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスの別の例示的ブロック図である。
【図6】図6は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、水素化のための水素が水蒸気メタン改質により生じる、臭素化および水素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスの別の例示的ブロック図である。
【図7】図7は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、水素化のための水素が電気分解により生じる、臭素化および水素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスの別の例示的ブロック図である。
【図8】図8は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、水素化のための水素が電気分解により生じる、臭素化および水素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスの別の例示的ブロック図である。
【図9】図9は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、水素化のための水素が電気分解により生じる、臭素化および水素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスの別の例示的ブロック図である。
【図10】図10は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、一臭素化アルカンが水素化を迂回する、水素化および臭素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスのさらなる例示的ブロック図である。
【図11】図11は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、一臭素化アルカンが水素化を迂回する、水素化および臭素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスのさらなる例示的ブロック図である。
【図12】図12は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、一臭素化アルカンが水素化を迂回する、水素化および臭素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスのさらなる別の例示的ブロック図である。
【図13】図13は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、一臭素化アルカンが水素化を迂回する、水素化および臭素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスのさらなる例示的ブロック図である。
【図14】図14は、本発明の1つの実施形態によるプロセスで、一臭素化アルカンが水素化を迂回する、水素化および臭素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスのさらなる例示的ブロック図である。
【図15】図15は、本発明の1つの実施形態による水素化の期間中における時間に対する二臭素化メタンの変換のグラフである。
【図16】図16は、本発明の1つの実施形態による水素化の期間中における、水素化リアクターに入る二臭素化メタンおよび一臭素化メタンの濃度ならびに水素化リアクターから出る二臭素化メタンおよび一臭素化メタンの濃度のグラフである。
【図17】図17は、本発明の1つの実施形態による水素化の期間中における、水素化リアクターに入る水素および臭化水素の濃度ならびに水素化リアクターから出る水素および臭化水素の濃度のグラフである。
【図18】図18は、本発明の1つの実施形態による水素化の期間中における時間に対する二臭素化メタンの変換のグラフである。
【図19】図19は、本発明の1つの実施形態による水素化の期間中における、水素化リアクターに入る二臭素化メタンおよび一臭素化メタンの濃度ならびに水素化リアクターから出る二臭素化メタンおよび一臭素化メタンの濃度のグラフである。
【図20】図20は、本発明の1つの実施形態による水素化の期間中における、水素化リアクターに入る水素および臭化水素の濃度ならびに水素化リアクターから出る水素および臭化水素の濃度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は多臭素化アルカンの水素化に関連し、より具体的には、1つまたは複数の実施形態において、一臭素化アルカンが、多臭素化アルカンを含む流を水素と接触させることによって形成される方法およびシステムに関連する。
【0013】
本発明の方法およびシステムに対する多くの潜在的な利点が存在し得るが、そのうちの一部のみが本明細書中において言及されるだけである。そのような多くの潜在的な利点の1つが、多臭素化アルカンの水素化は、形成されるモノハロゲン化アルカンの量を増大させるにちがいないことであるかもしれない。したがって、より大きい割合の一臭素化アルカンが所望される技術もまた改善されるかもしれない。例えば、有用な生成物への炭素変換効率が、例えば、炭化水素を製造するための臭素化アルカンの変換などにおいて、一臭素化アルカンに関する改善された選択性のために改善されるかもしれない。とりわけ、一臭素化アルカンのより大きい割合は、炭素変換効率を、例えば、コークスの形成の減少および触媒のより遅い失活のために改善するかもしれない。
【0014】
図1を参照すると、多臭素化アルカンの水素化のためのプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。例示される実施形態において、多臭素化アルカンを含む水素化供給流2を水素流4と一緒にすることができ、水素化リアクター6に導入することができる。水素化リアクター6において、多臭素化アルカンが水素と反応して、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成する。図1は、水素化供給流2および水素流4が水素化リアクター6に先立って一緒にされることを例示するが、当業者は、これらの流がリアクターにおいて一緒にされ得ることを理解しなければならない。例として、水素化供給流2および水素流4を、触媒がリアクターに存在するならば、リアクターに存在する触媒と接触する前に、それらが混合するように、水素化リアクター6に導入することができる。
【0015】
水素化供給流2は一般に多臭素化アルカンを含み、圧力が、例えば、約1atm〜約100atmの範囲にあってもよく、あるいは、約1atm〜30atmの範囲にあってもよい。アルカンには、例えば、より低分子量のアルカンが含まれ得る。本明細書中で使用される用語「より低分子量のアルカン」は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンまたはそれらの混合物を示す。特定の実施形態において、より低分子量のアルカンはメタンであり得る。多臭素化アルカンには、二臭素化アルカン、三臭素化アルカン、四臭素化アルカンまたはそれらの混合物が含まれ得る。特定の実施形態において、水素化供給流2はまた、一臭素化アルカン、臭化水素またはそれらの組合せを含むことができる。
【0016】
水素流4は一般に水素を含み、圧力が、例えば、約1atm〜約100atmの範囲にあってもよく、あるいは、約1atm〜30atmの範囲にあってもよい。下記においてより詳しく議論されるように、水素流4に存在する水素は、水蒸気メタン改質、一酸化炭素の水性ガスシフト反応、あるいは、水、金属ハロゲン化物塩または臭化水素の電気分解を含めて、いずれかの好適な供給源により提供され得る。下記において記載される実施形態では、臭化水素が生じるので、臭化水素の電気分解が、水素を本発明の特定の実施形態において生じさせるための特に好適な技術であり得る。臭化水素の電気分解はまた、水蒸気メタン改質よりもエネルギー集約的でないかもしれないことが考えられる。特定の実施形態において、水素化リアクター6に導入される混合物における水素(H2)対多臭素化アルカンのモル比率が、例えば、少なくとも約1:1であり得る。例えば、水素化リアクター2に導入される混合物は約1:1の水素(H2)対二臭素化メタンのモル比率を有することができる。
【0017】
水素化リアクター6において、多臭素化アルカンが水素と反応して、臭化水素と、多臭素化アルカンに関してより少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成することができる。例えば、二臭素化アルカンが水素と反応して、一臭素化アルカンを形成することができる。二臭素化メタンの場合には、水素との反応が下記の一般的な反応に従って生じ得る:
【0018】
【化1】
本発明の実施形態によれば、水素化リアクター6は、多臭素化アルカンの100%に至るまでが一臭素化アルカンに変換され得るという点で、高い、100%に至るまでの選択性により、一臭素化アルカンおよび臭化水素を形成するために操作され得ることが考えられる。しかしながら、ある程度少量のコーキングが一般に生じるにちがいなく、その結果、触媒の緩やかな失活が生じるようになる。より高い温度は、多臭素化アルカンの大きい見かけ上の変換をもたらす一方で、コーキングもまた加速させることが考えられる。したがって、より大きいリアクターが、多臭素化アルカンの高い変換を達成するために要求されるという犠牲を払うが、より低い温度での操作が、コークスの形成に起因する損失がより少ないことのために、また、より遅い触媒失活のために許容され得ることがある。高い活性が酸素含有ガス混合物または空気による再生によって触媒に戻り得ることが見出されている。
【0019】
多臭素化アルカンおよび水素の間での水素化リアクター6における反応は、本発明の実施形態によれば、それらの均一な気相反応または不均一な触媒反応であり得る。水素化リアクター6における反応は、例えば、約150℃〜約650℃の範囲における温度および約1atm〜約100atm、あるいは、約1atm〜30atmの範囲における圧力で行われ得るが、当業者は、本開示の利益により、より高い温度では、均一な気相反応が行われ得ることを理解しなければならない。特定の実施形態において、多臭素化アルカンおよび水素を約300℃〜約650℃の範囲における温度で反応させることができる。
【0020】
前記段落において述べられるように、水素化リアクター6における反応は触媒的に行うことができる。水素化リアクター6のための好適な触媒の例には、臭素との1つまたは複数の熱的に可逆的な錯体を形成することができる金属が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、好適な触媒には、臭素との多数の熱的に可逆的な錯体を形成することができる2つ以上の酸化状態を有する金属が含まれるが、これらに限定されない。臭素との多数の熱的に可逆的な錯体を形成する好適な触媒の具体的な例には、鉄、銅、タングステン、モリブデン、バナジウム、クロム、白金およびパラジウムが含まれ得るが、これらに限定されない。ただ1つだけの酸化状態を有し、かつ、臭素とのただ1つの錯体を形成し、また同様に、何らかの活性を有すると考えられる好適な触媒の例には、ニッケル、コバルト、亜鉛、マグネシウム、カルシウムおよびアルミニウムが含まれ得るが、これらに限定されない。特定の実施形態において、これらの金属は、例えば、Cuまたは他の遷移金属により促進され得る。好適な触媒のさらなる例には、ルイス酸官能性を有する金属ハロゲン化物塩、および、金属オキシハロゲン化物が含まれる。特定の実施形態において、触媒には、担体に付着する、そのような金属の酸化物または臭化物が含まれ得る。例えば、金属を、不活性な担体に、例えば、シリカおよびアルミナなどに臭化物(例えば、臭化鉄)または酸化物(例えば、酸化鉄)として付着させることができる。さらなる例として、金属(例えば、白金)を、不活性な担体に、例えば、低表面積のシリカ担体などに分散させることができる。
【0021】
より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンを含む水素化された流8を水素化リアクター6から抜き取ることができる。例として、水素化リアクターから抜き取られる水素化された流8は、水素化リアクター6において生じる一臭素化アルカンを含むことができる。
【0022】
図2を参照すると、臭素化および多臭素化アルカンの水素化を含むプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。例示される実施形態において、プロセスは、臭素化リアクター10と、水素化リアクター6とを含む。例示されるように、アルカンを含むガス状供給流12を臭素流14と一緒にすることができ、得られた混合物を臭素化リアクター10に導入することができる。図2は、ガス状供給流12および臭素流14が臭素化リアクター10に先立って一緒にされることを例示するが、当業者は、本開示の利益により、ガス状供給流12および臭素流14が臭素化リアクター10において一緒にされ得ることを理解しなければならない。
【0023】
ガス状供給流12は一般にアルカンを含み、圧力が、例えば、約1atm〜約100atmの範囲にあってもよく、あるいは、約1atm〜約30atmの範囲にあってもよい。ガス状供給流に存在するアルカンには、例えば、より低分子量のアルカンが含まれ得る。前記で述べられるように、特定の実施形態において、より低分子量のアルカンはメタンであり得る。また、本発明の実施形態において使用されるガス状供給流12は、天然に存在しようとも、または、合成的に製造されようとも、より低分子量のアルカンを含有するガスのどのような供給源であってもよい。本発明のプロセスの実施形態において使用され得る好適なガス状供給物の例には、天然ガス、炭層メタン、再ガス化された液化天然ガス、ガスの水和物またはクラスレート(chlathrate)または両方に由来するガス、有機物またはバイオマスの嫌気性分解に由来するガス、合成的に製造された天然ガスまたはアルカン、および、それらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、ガス状供給流12は、供給ガスと、それに加えて、再循環ガス流とを含むことができる。特定の実施形態において、ガス状供給流12は、イオウ化合物および二酸化炭素を除くために処理することができる。どのような場合でも、特定の実施形態において、少量の二酸化炭素が、例えば、約2mol%未満の二酸化炭素がガス状供給流12には存在し得る。
【0024】
臭素流14は一般に臭素を含み、圧力が、例えば、約1atm〜約100atmの範囲にあってもよく、あるいは、約1atm〜約30atmの範囲にあってもよい。特定の実施形態において、臭素は、水の蒸気を実質的に含まないという点で乾燥状態であり得る。特定の実施形態において、臭素流14に存在する臭素は、ガス状状態、液体状態、または、それらの組合せであり得る。例示されていないが、特定の実施形態において、臭素流14は、プロセスに導入される補給臭素だけでなく、プロセスにおいて回収される再循環臭素を含有することができる。同様に例示されていないが、特定の実施形態において、ガス状供給流および臭素の混合物を、臭素化リアクター10への導入に先立って臭素を蒸発させるために熱交換器に通すことができる。
【0025】
前記で述べられるように、ガス状供給流12および臭素流14を一緒にすることができ、臭素化リアクター10に導入することができる。ガス状供給流12におけるアルカンの、臭素流14における臭素に対するモル比率は、例えば、2.5:1超であり得る。例示されないが、特定の実施形態において、臭素化リアクター10は、アルカンおよび臭素の混合物を、例えば、約250℃〜約400℃の範囲における反応開始温度に加熱するための入口側プレヒーター域を有することができる。
【0026】
臭素化リアクター10において、アルカンを臭素と反応させて、臭素化アルカンおよび臭化水素を形成することができる。例として、メタンが臭素と臭素化リアクター10において反応して、臭素化メタンおよび臭化水素を形成することができる。メタンが臭素と反応する場合、一臭素化メタンの形成が下記の一般的な反応に従って生じる:
【0027】
【化2】
気相臭素化反応のフリーラジカル機構のために、多臭素化アルカンもまた、臭素化リアクター10において形成され得る。特定の実施形態において、臭素化リアクター10において形成される臭素化アルカンの約10%モル分率〜約30%モル分率が多臭素化アルカンであり得る。例えば、メタンの臭素化の場合、メタン対臭素の比率が約6:1である場合には、一臭素化された臭化メチルに対する選択性が、反応条件(例えば、滞留時間、温度、乱流混合など)に依存して、平均しておよそ88%であり得る。これらの条件で、二臭素化メタン、ならびに、ほんの非常に少量にすぎない三臭素化メタンおよび他の臭素化アルカンもまた、臭素化反応において形成されるにちがいない。例として、およそ2.6対1のより低いメタン対臭素比率が使用されるならば、一臭素化メタンに対する選択性が、他の反応条件に依存して、約65%〜約75%の範囲に低下し得る。約2.5対1よりも著しく少ないメタン対臭素比率が使用されるならば、一臭素化メタンに対する一層より低い選択性が生じ、かつ、そのうえ、望ましくない炭素ススの著しい形成が観測される。高級アルカン(例えば、エタン、プロパンおよびブタンなど)もまた容易に臭素化されることがあり、これにより、一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカン(例えば、臭素化エタン、臭素化プロパンおよび臭素化ブタンなど)が生じる。
【0028】
特定の実施形態において、臭素化リアクター10における臭素化反応は、例えば、約250℃〜約600℃の範囲における温度で、かつ、約1atm〜約100atmの範囲における圧力で、あるいは、約1atm〜約30atmの範囲における圧力で、発熱的に生じる。この温度範囲の上限は、臭素化反応の発熱的性質のために、供給混合物が加熱され得る反応開始温度範囲の上限よりも高くなり得る。当業者によって理解されるように、本開示の利益により、臭素化リアクター10における反応は均一な気相反応または不均一な触媒反応であり得る。臭素化リアクター10において使用され得る好適な触媒の例には、白金、パラジウム、あるいは、Olahら、J.Am.Chem.Soc.1985、107、7097−7105に記載されるような担持された非化学量論的な金属オキシハロゲン化物(例えば、FeOxBryまたはFeOxClyなど)または担持された化学量論的な金属オキシハロゲン化物(例えば、TaOF3、NbOF3、ZrOF2、SbOF3など)が含まれるが、これらに限定されない。そのような触媒の使用は選択的な一臭素化を約200℃〜250℃の範囲でのより低い温度で可能にし得るが、変換速度が典型的には、これらのより低い温度では低い;これに対して、より高い温度では、選択性がより小さくなり、より多くの多臭素化アルカンが形成される。
【0029】
上記で示されるように、臭素化リアクター10に供給される臭素は、本発明の特定の実施形態においては乾燥状態であり得る。実質的にすべての水の蒸気を臭素化リアクター10における臭素化反応から排除することは、望まれない二酸化炭素が形成することを実質的に排除し、それにより、臭素化アルカンに対するアルカン臭素化の選択性を増大させ、また、二酸化炭素がアルカンから形成することにおいて発生する多量の廃熱を潜在的になくす。さらに、実質的にすべての水の蒸気を排除することは、本発明の特定の実施形態においては、使用されるかもしれない下流側の触媒の水熱分解を最小にするにちがいない。
【0030】
図2において例示されるように、臭素化された流16を臭素化リアクター10から抜き取ることができる。一般に、臭素化リアクター10から抜き取られる臭素化された流16は臭素化アルカンおよび臭化水素を含む。臭素化された流16に存在する臭素化アルカンは一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含むことができる。例示される実施形態において、臭素化された流16を水素流4と一緒にすることができ、水素化リアクター6に導入することができる。図10〜図14に関して下記においてより詳しく議論されるように、臭素化された流16に存在する一臭素化アルカンおよび臭化水素の大部分は、特定の実施形態においては水素化リアクター6を迂回することができ、その結果、水素化流リアクター6には、反応物のより濃縮された流が供給される。
【0031】
水素化リアクター6において、臭素化された流16に存在する多臭素化アルカンを水素と反応させて、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成することができる。本発明の実施形態によれば、水素化リアクター6は、多臭素化アルカンのほぼ100%に至るまでが一臭素化アルカンに変換され得るという点で、高い、100%に至るまでの選択性により、一臭素化アルカンおよび臭化水素を形成するために操作され得ることが考えられる。しかしながら、ある程度少量のコーキングが一般に生じるにちがいなく、その結果、触媒の緩やかな失活が生じるようになる。より高い温度は、多臭素化アルカンの大きい見かけ上の変換をもたらす一方で、コーキングもまた加速させることが考えられる。したがって、より大きいリアクターが、多臭素化アルカンの高い変換を達成するために要求されるという犠牲を払うが、より低い温度での操作が、コークスの形成に起因する損失がより少ないことのために、また、より遅い触媒失活のために許容され得ることがある。高い活性が酸素含有ガス混合物または空気による再生によって触媒に戻り得ることが見出されている。水素化リアクター6および水素流4は上記において図1に関してより詳しく記載される。
【0032】
より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンを含む水素化された流8を水素化リアクター6から抜き取ることができる。例として、水素化リアクター6から抜き取られる水素化された流8は、水素化リアクター6において生じる一臭素化アルカンを含むことができる。水素化された流8はまた、臭素化リアクター10において生じた一臭素化アルカンおよび臭化水素を含むことができる。
【0033】
本発明の実施形態によれば、多臭素化アルカンの水素化のための図1および図2に関して上記において記載されるプロセスは、生成物炭化水素を脱水素ハロゲン化/オリゴマー化触媒により製造するためのプロセスにおいて使用することができる。生成物炭化水素には一般に、例えば、C3、C4およびC5+のガソリン範囲の炭化水素、ならびに、より重質の炭化水素が含まれ得る。これらには、例えば、分岐アルカン、置換芳香族、ナフテンまたはオレフィン(例えば、エチレンおよびプロピレンなど)が含まれる。一臭素化アルカンの増大した形成のために、生成物炭化水素を製造するためのプロセスは、有用な生成物への炭素変換効率が、例えば、コークスの形成の減少および触媒のより遅い失活のために改善され得るという点で改善され得る。
【0034】
図3を参照すると、臭素化および水素化を含む生成物炭化水素の製造のためのプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。例示される実施形態において、プロセスは、臭素化リアクター10と、水素化リアクター6と、合成リアクター18とを含む。合成反応が後に続く臭素化を含む生成物炭化水素の製造のための例示的プロセスが、米国特許第7,244,867号、米国特許第7,348,464号および米国特許出願公開第2006/0100469号においてより詳しく記載される(それらの開示全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0035】
図3において例示されるように、アルカンを含むガス状供給流12を臭素流14と一緒にすることができ、得られた混合物を臭素化リアクター10に導入することができる。臭素化リアクター10において、アルカンを臭素と反応させて、臭素化アルカンおよび臭化水素を形成することができる。ガス状供給流12、臭素流14および臭素化リアクター10は図2に関して上記においてより詳しく記載される。
【0036】
臭素化された流16を臭素化リアクター10から抜き取ることができる。一般に、臭素化リアクター10から抜き取られる臭素化された流16は臭素化アルカンおよび臭化水素を含む。臭素化された流16に存在する臭素化アルカンは一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含むことができる。例示される実施形態において、臭素化された流16を水素流4と一緒にすることができ、水素化リアクター6に導入することができる。水素化リアクター6において、臭素化された流16に存在する多臭素化アルカンが水素と反応して、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成することができる。本発明の実施形態によれば、水素化リアクター6は、多臭素化アルカンのほぼ100%に至るまでが一臭素化アルカンに変換され得るという点で、高い、100%に至るまでの選択性により、一臭素化アルカンおよび臭化水素を形成するために操作され得ることが考えられる。水素化リアクター6および水素流4は図1に関して上記においてより詳しく記載される。
【0037】
より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンを含む水素化された流8を水素化リアクター6から抜き取ることができ、合成リアクター18に導入することができる。例として、水素化リアクター6から抜き取られる水素化された流8は、水素化リアクター6において生じる一臭素化アルカンを含むことができる。水素化された流8はまた、臭素化リアクター10において生じた一臭素化アルカンおよび臭化水素を含むことができる。例示されていないが、水素化された流8は、発熱的合成反応に起因する温度上昇に備えるために、合成リアクター18に導入される前に、約150℃〜約450℃の範囲における温度に熱交換器で冷却することができる。合成リアクター18において、臭素化アルカンを触媒の存在下で発熱的に反応させて、生成物炭化水素と、さらなる臭化水素とを形成することができる。この反応は、例えば、約150℃〜約500℃の範囲における温度で、かつ、約1atm〜約100atmの範囲における圧力で、あるいは、約1atm〜約30atmの範囲における圧力で行うことができる。
【0038】
触媒は、生成物炭化水素への臭素化アルカンの変換を触媒するための様々な好適な物質のいずれかであり得る。特定の実施形態において、合成リアクター18は触媒の固定床を含むことができる。合成触媒の流動床もまた、特定の状況において、特に、より大型の適用において使用することができ、合成触媒の流動床はいくつかの利点を有することができる(例えば、コークスの絶え間ない除去および生成物組成に対する安定した選択性など)。好適な触媒の例には、酸性のイオン交換体であるという共通する機能性を有し、また同様に、合成された結晶性アルミノケイ酸塩酸化物骨格を含有するかなり幅広い様々な物質が含まれる。特定の実施形態において、結晶性アルミノケイ酸塩酸化物骨格におけるアルミニウムの一部が、マグネシウム、ホウ素、ガリウムおよび/またはチタンにより置換され得る。特定の実施形態において、結晶性アルミノケイ酸塩酸化物骨格におけるケイ素の一部が必要な場合にはリンにより置換され得る。結晶性アルミノケイ酸塩触媒は一般に、例えば、H、Li、Na、KまたはCsの群、あるいは、Mg、Ca、SrまたはBaの群から選択される元素のカチオンによってバランスされ得る、結晶性アルミノケイ酸塩酸化物骨格構造の内部における著しいアニオン電荷を有することができる。ゼオライト系触媒がナトリウム形態で一般に得られ得るが、(水酸化アンモニウムとのイオン交換、および、その後の焼成による)プロトン形態または水素形態が好ましく、あるいは、混合型のプロトン/ナトリウム形態もまた使用することができる。ゼオライトはまた、他のアルカリ金属カチオン(例えば、Li、KまたはCsなど)とのイオン交換によって、または、アルカリ土類金属カチオン(例えば、Mg、Ca、SrまたはBaなど)とのイオン交換によって、または、遷移金属カチオン(例えば、Ni、Mn、VおよびWなど)とのイオン交換によって改変することができる。そのようなその後のイオン交換は電荷バランスの対イオンを置き換えることができ、しかし、さらにはまた、酸化物骨格におけるイオンを部分的に置き換えることができ、これにより、酸化物骨格の結晶性の組成および構造の改変をもたらすことができる。結晶性アルミノケイ酸塩または置換された結晶性アルミノケイ酸塩には、ミクロ多孔性またはメソ多孔性の結晶性アルミノケイ酸塩が含まれ得るが、特定の実施形態においては、合成ミクロ多孔性の結晶性ゼオライト、および、例えば、MFI構造のもの、例えば、ZSM−5などが含まれ得る。そのうえ、結晶性アルミノケイ酸塩または置換された結晶性アルミノケイ酸塩は、特定の実施形態において、Mg塩、Ca塩、Sr塩またはBa塩の水溶液により続けて含浸することができる。特定の実施形態において、塩はハロゲン化物塩(例えば、臭化物塩など、例えば、MgBr2など)であり得る。必要な場合には、結晶性アルミノケイ酸塩または置換された結晶性アルミノケイ酸塩はまた、約0.1重量%〜約1重量%の間のPt、約0.1重量%〜5重量%の間のPd、または、約0.1重量%〜約5重量%の間のNiを金属状態で含有することができる。そのような物質は主として最初は結晶性であるが、いくつかの結晶性触媒は、最初のイオン交換または含浸に起因するか、あるいは、反応条件での操作または再生期間中の操作に起因するかのどちらであっても、結晶化度のある程度の喪失を受けることがあり、したがって、著しい非晶質特性もまた含有することがあり、それにもかかわらず、依然として、著しい活性を保持し得ること、また、いくつかの場合には改善された活性を保持し得ることに留意しなければならない。
【0039】
合成リアクター18において使用される具体的な触媒は、例えば、所望される具体的な生成物炭化水素に依存する。例えば、主としてC3、C4およびC5+のガソリン範囲の芳香族化合物、ならびに、より重質の炭化水素画分を有する生成物炭化水素が所望されるときには、ZSM−5ゼオライト触媒を使用することができる。オレフィンおよびC5+生成物の混合物を含む生成物炭化水素を製造することが所望されるときには、X型またはY型のゼオライト触媒、あるいは、SAPOゼオライト触媒を使用することができる。好適なゼオライトの例には、X型ゼオライト(例えば、10−Xゼオライトなど)またはY型ゼオライトが含まれ、だが、種々の細孔サイズおよび酸性度を有する他のゼオライトを本発明の実施形態において使用することができる。
【0040】
合成リアクター18が操作される温度は、所望される具体的な生成物炭化水素への反応の選択性を決定する際の1つのパラメーターである。例えば、X型またはY型のゼオライト触媒、あるいは、SAPOゼオライト触媒が使用され、かつ、オレフィンを製造することが所望されるときには、合成リアクター18は約250℃〜約500℃の範囲内の温度で操作することができる。合成リアクター18における、約450℃を超える温度は、軽質炭化水素(例えば、望まれないメタンなど)の増大した収量、および、同様にまた、コークスの堆積をもたらし得るが、これに対して、より低い温度は一般に、エチレン、プロピレン、ブチレン、および、より重い分子量の炭化水素の収量を増大させるにちがいない。例えば、10−Xゼオライト触媒による臭化アルキルの反応の場合には、環化反応もまた生じることがあり、その結果、C7+の画分が相当の置換芳香族を含有するようになることが考えられる。例えば、温度を上げて約400℃に近づく場合、臭素化メタンの変換が一般に、約90%以上に向かって増大するにちがいないことが考えられる;しかしながら、C5+の炭化水素に対する選択性が一般に、より軽質の生成物(例えば、オレフィンなど)に対する増大した選択性により低下するにちがいない。例えば、約550℃を超える温度では、臭素化メタンからメタンおよび炭素質コークスへの高い変換が生じることが考えられる。温度範囲が約300℃〜約450℃の間である場合、反応の副生成物として、より少量のコークスが恐らくは、運転期間中の時間の経過とともに触媒上に堆積することになり、これは、触媒活性における低下を、反応条件および供給ガスの組成に依存して、数時間から数百時間に至るまでの範囲にわたって引き起こす。逆に、範囲の下端での温度(例えば、約300℃未満の温度)はまた、より重質の生成物が触媒から脱離する低下した速度のためにコーキングの一因になり得る。したがって、合成リアクター18における約250℃〜約500℃の範囲内での操作温度、しかし、好ましくは、約350℃〜約450℃の範囲での操作温度は一般に、所望されるオレフィンおよびC5+の炭化水素の増大した選択性と、炭素形成に起因する失活のより低い速度とを、通過あたりのより高い変換に対してバランスさせなければならず、このことは、要求される触媒量、再循環割合および設備サイズを最小にするにちがいない。
【0041】
例えば、所望される生成物炭化水素が主として、C3、C4およびC5+のガソリン範囲の炭化水素画分、ならびに、より重質の炭化水素画分である場合、合成リアクター18は約150℃〜約450℃の範囲内の温度で操作することができる。合成リアクター18における、約300℃を超える温度は、軽質炭化水素の増大した収量をもたらし得るが、これに対して、より低い温度は一般に、より重い分子量の炭化水素の収量を増大させ得る。例として、臭素化メタンが約150℃もの低い温度でZSM−5ゼオライト触媒により反応する温度範囲の下端では、約20%の程度での著しい臭素化メタン変換が、C5+の炭化水素に対する大きい選択性とともに生じ得る。例えば、ZSM−5ゼオライト触媒による臭素化メタンの反応の場合には、環化反応もまた生じ、その結果、C7+の画分が主として置換芳香族を含み得るようになる。例えば、温度を上げて約300℃に近づく場合、臭素化メタンの変換が一般に、約90%以上に向かって増大するにちがいない;しかしながら、C5+の炭化水素に対する選択性が一般に低下し得るが、より軽質の生成物(具体的には望ましくないメタン)に対する選択性が増大し得る。驚くべきことに、ベンゼン成分、エタン成分またはC2〜C3オレフィン成分が、特定の実施形態によれば、例えば、ZSM−5触媒が約390℃の温度で使用されるときなどにおいては、反応流出物において典型的には存在しないか、または、ほんの非常に少量で存在するだけある。しかしながら、例えば、約450℃に近づく温度では、臭素化メタンからメタンおよび炭素質コークスへのほとんど完全な変換が生じ得る。操作温度範囲が約350℃〜約420℃の間である場合、反応の副生成物として、少量の炭素が運転期間中の時間の経過とともに触媒上に堆積することがあり、これは潜在的には、触媒活性における低下を、反応条件および供給ガスの組成に依存して、数時間から数日に至るまでの範囲にわたって引き起こす。より高い反応温度(例えば、約420℃を超える反応温度)は、メタンの形成に関連しては、臭素化アルカンの熱的クラッキング、および、炭素またはコークスの形成を容易にし、したがって、触媒の失活速度における増大を容易にすることが考えられる。逆に、範囲の下端での温度(例えば、約350℃未満の温度)はまた、より重質の生成物が触媒から脱離する低下した速度のためにコーキングの一因になり得る。したがって、合成リアクター18における約150℃〜約450℃の範囲内、しかし、好ましくは、約350℃〜約420℃の範囲、最も好ましくは、約370℃〜約400℃の範囲での操作温度は一般に、所望されるC5+の炭化水素の増大した選択性と、炭素形成に起因する失活のより低い速度とを、通過あたりのより高い変換に対してバランスさせなければならず、このことは、要求される触媒量、再循環割合および設備サイズを最小にするにちがいない。
【0042】
触媒は、合成リアクター18を通常のプロセスフローから切り離し、例えば、約1atm〜約5atmの範囲における圧力で、約400℃〜約650℃の範囲における高い温度において、不活性なガスによりパージして、触媒に吸着している未反応の物質を実用的である限りにおいて除くことによって現場で定期的に再生することができる。そのとき、堆積しているコークスは、空気または不活性ガス希釈の酸素を、例えば、約1atm〜約5atmの範囲における圧力で、約400℃〜約650℃の範囲における高い温度において合成リアクター18に加えることによって、CO2、COおよびH2Oに酸化することができる。酸化生成物、および、残留する空気または不活性なガスを、再生期間中、合成リアクター18から排出することができる。しかしながら、再生オフガスは、過剰な未反応の酸素だけでなく、少量の臭素含有化学種を含有し得るので、再生ガス流出物をプロセスの酸化部に向けることができ、プロセスの酸化部において、臭素含有化学種を元素状臭素に変換することができ、プロセス内における再使用のために回収することができる。
【0043】
図3において例示されるように、合成出口流20を合成リアクター18から抜き取ることができる。一般に、合成出口流20は、合成リアクター18において生成する生成物炭化水素およびさらなる臭化水素を含むことができる。合成出口流20はさらに、臭素化リアクター10において生成する臭化水素と、もしかすると、未反応のアルカンとを含むことができる。例として、合成出口流20は、オレフィン、C5+の炭化水素、および、さらなる臭化水素を含むことができる。さらなる例として、合成出口流20は、C3、C4およびC5+のガソリン範囲の炭化水素画分、ならびに、より重質の炭化水素画分、同様にまた、さらなる臭化水素を含むことができる。特定の実施形態において、合成出口流20に存在する炭化水素は主として芳香族を含むことができる。特定の実施形態において、合成出口流20に存在する炭化水素のC7+の画分は主として置換芳香族を含むことができる。
【0044】
図4を参照すると、図3の生成物炭化水素の製造のためのプロセスであって、生成物回収と、臭素の回収および再循環のための湿式プロセスとをさらに含むプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。例示される実施形態において、プロセスは、臭素化リアクター10と、水素化リアクター6と、合成リアクター18と、臭化水素セパレーター装置22と、臭化物酸化装置24と、生成物回収装置26とを含む。臭素化、合成、臭素の回収および再循環、ならびに、生成物回収を含むプロセスの様々な例が、米国特許第7,244,867号、米国特許第7,348,464号および米国特許出願公開第2006/0100469号においてより詳しく記載される(それらの開示全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0045】
図4において例示されるように、アルカンを含むガス状供給流12を臭素流14と一緒にすることができ、得られた混合物を臭素化リアクター10に導入することができる。臭素化リアクター10において、アルカンを臭素と反応させて、臭素化アルカンおよび臭化水素を形成することができる。臭素化された流16を臭素化リアクター10から抜き取ることができる。一般に、臭素化リアクター10から抜き取られる臭素化された流16は、多臭素化アルカンを含み得る臭素化アルカンと、臭化水素とを含む。例示される実施形態において、臭素化された流16を水素流4と一緒にすることができ、水素化リアクター6に導入することができる。水素化リアクター6において、臭素化された流16に存在する多臭素化アルカンが水素と反応して、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成することができる。臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンとを含む水素化された流8を水素化リアクター6から抜き取ることができ、合成リアクター18に導入することができる。水素化された流8はまた、臭素化リアクター10において生じた一臭素化アルカンを含む。合成リアクター18において、臭素化アルカンを触媒の存在下で発熱的に反応させて、生成物炭化水素およびさらなる臭化水素を形成することができる。合成出口流20を合成リアクター18から抜き取ることができる。一般に、合成出口流20は、合成リアクター18において生成する生成物炭化水素およびさらなる臭化水素を含むことができる。合成出口流20はさらに、臭素化リアクター10において生成する臭化水素と、もしかすると、未反応のアルカンとを含むことができる。
【0046】
上記で示されるように、図4のプロセスはさらに臭化水素セパレーター装置22を含む。例示される実施形態において、合成出口流20を臭化水素セパレーター装置22に導入することができる。臭化水素セパレーター装置22において、合成出口流20に存在する臭化水素の少なくとも一部を生成物炭化水素から分離することができる。特定の実施形態において、約98%を超え、かつ、ほぼ100%に至るまでの臭化水素を生成物炭化水素から分離することができる。臭化水素セパレーター装置22において使用される好適なプロセスの一例は、ガスであり得る合成出口流20を液体と接触させることを含むことができる。合成出口流20に存在する臭化水素は液体に溶解することができ、混合物を臭化水素流28により臭化水素セパレーター装置22から取り出すことができる。下記においてより詳しく記載されるように、生成物炭化水素を含み得る炭化水素流30を臭化水素セパレーター装置22から取り出すことができる。
【0047】
臭化水素を生成物炭化水素からスクラビング処理するために使用され得る好適な液体の1つの例には、水が含まれる。これらの実施形態において、臭化水素が水に溶解し、少なくとも一部がイオン化し、水性の酸溶液を形成する。臭化水素を生成物炭化水素からスクラビング処理するために使用され得る好適な液体の別の例には、金属水酸化物化学種、金属オキシ臭化物化学種、金属酸化物化学種またはそれらの混合物を含有する水性の部分的に酸化された金属臭化物塩溶液が含まれる。部分的に酸化された金属臭化物塩溶液に溶解する臭化水素は、金属水酸化物化学種、金属オキシ臭化物化学種、金属酸化物化学種またはそれらの混合物によって中和されて、金属臭化物塩を、臭化水素セパレーター装置22から取り出され得る臭化水素流28において形成するにちがいない。臭化物塩の好適な金属の例には、Fe(III)、Cu(II)およびZn(II)が含まれる。これは、これらの金属はあまり高価でないことがあり、また、より低い温度において、例えば、約120℃〜約200℃の範囲で酸化され得るからである。しかしながら、酸化可能な臭化物塩を形成する他の金属もまた使用することができる。特定の実施形態において、酸化可能な臭化物塩を同様に形成し得るアルカリ土類金属(例えば、Ca(II)またはMg(II)など)を使用することができる。
【0048】
前記で述べられるように、プロセスはさらに臭化物酸化装置24を含むことができる。例示される実施形態において、臭化水素流28を臭化水素セパレーター装置22から取り出すことができ、臭化物酸化装置24に導入することができる。一般に、臭化水素流28は、水を、それに溶解する臭化水素または金属臭化物塩の1つもしくは複数とともに含むことができる。臭化物酸化装置24において、臭化水素流28に存在する臭化物塩を酸化して、元素状臭素、水、および、元の金属水酸化物化学種または金属オキシ臭化物化学種(あるいは、担持された金属臭化物塩の実施形態においては金属酸化物)を形成することができる。酸素流36を、酸化のために必要とされる酸素を臭化物酸化装置24に供給するために使用することができる。酸素流36は、酸素、空気、または、酸素の別の好適な供給源を含むことができる。臭化物酸化装置24において形成される水を含む水の流38を臭化物酸化装置24から取り出すことができる。例示されていないが、特定の実施形態において、水の流38は、臭化水素を生成物炭化水素からスクラビング処理するために使用される液体として臭化水素セパレーター装置22に再循環することができる。
【0049】
臭化物酸化装置24における酸化を、例えば、約100℃〜約600℃の温度、あるいは、約120℃〜約180℃の温度で、かつ、およそ周囲圧〜約5atmの圧力で行うことができる。臭化水素が臭化物酸化装置24に先立って中和されていないならば、臭化水素を、臭化物塩を形成させるために臭化物酸化装置24において中和することができる。例として、臭化水素を、金属臭化物塩を形成するために金属酸化物により中和することができる。好適な金属塩の例には、Cu(II)、Fe(III)およびZn(II)が含まれる。だが、酸化可能な臭化物塩を形成する他の遷移金属もまた使用することができる。特定の実施形態において、酸化可能な臭化物塩を同様に形成し得るアルカリ土類金属(例えば、Ca(II)またはMg(II)など)を使用することができる。
【0050】
図4において例示されるように、臭素流14を臭化物酸化装置24から取り出すことができる。臭素流14は一般に、臭化物酸化装置24において形成される元素状臭素を含むことができる。特定の実施形態において、臭素流14を液体として臭化物酸化装置24から取り出すことができる。例示される実施形態において、臭素流14を再循環することができ、上記において記載されるように、ガス状供給流12と一緒にすることができる。したがって、臭素をプロセス内において回収および再循環することができる。
【0051】
上記において記されるように、生成物炭化水素を含む炭化水素流30を臭化水素セパレーター装置22から取り出すことができる。一般に、炭化水素流30は、臭化水素が分離された生成物炭化水素を含む。図4において例示されるように、炭化水素流30は、例えば、C5+の炭化水素を液体生成物流32として回収するために生成物回収装置26に導入することができる。液体生成物流32は、例えば、分岐アルカンおよび置換芳香族を含めて、C5+の炭化水素を含むことができる。特定の実施形態において、液体生成物流32はオレフィン(例えば、エチレンおよびプロピレンなど)を含むことができる。特定の実施形態において、液体生成物は、液化石油ガスおよびガソリン燃料の範囲における様々な炭化水素を含むことができ、この場合、そのような炭化水素は相当の芳香族含有量を含むことができ、そのため、ガソリン燃料範囲における炭化水素のオクタン価を著しく増大させる。例示されていないが、特定の実施形態において、生成物回収装置26は脱水および液体回収を含むことができる。天然ガスまたは精油所ガスの流を処理するために、また、生成物炭化水素を回収するために使用されるような、脱水および液体回収のどのような従来的方法でも、例えば、固体床乾燥(dessicant)吸着、それに続く冷凍凝縮、極低温膨張、あるいは、循環する吸収油または他の溶媒などを本発明の実施形態において用いることができる。
【0052】
生成物回収装置26からの残留蒸気流出物の少なくとも一部をアルカン再循環流34として回収することができる。アルカン再循環流34は、例えば、メタンと、潜在的には他の未反応のより低分子量のアルカンとを含むことができる。例示されるように、アルカン再循環流34を再循環することができ、ガス状供給流12と一緒にすることができる。特定の実施形態において、再循環されるアルカン再循環流34は供給ガスのモル体積の少なくとも1.5倍であり得る。図4において例示されていないが、特定の実施形態において、生成物回収装置26からの残留蒸気流出物の別の一部をプロセスのための燃料として使用することができる。加えて、図4において同様に例示されていないが、特定の実施形態において、生成物回収装置26からの残留蒸気流出物の別の一部を再循環することができ、合成リアクター18に導入される臭素化アルカンの濃度を希釈するために使用することができる。臭素化アルカンの濃度を希釈するために使用される場合、残留蒸気流出物は一般に、合成リアクター18が、変換対選択性を最大にし、かつ、炭素質コークスの堆積に起因する触媒失活の速度を最小にするために、選択された操作温度において、例えば、約300℃〜約450℃の範囲で維持されるように反応熱を吸収するために所定の速度で再循環されなければならない。したがって、再循環される蒸気流出物によってもたらされる希釈は、合成リアクター18における温度を調節することに加えて、臭素化リアクター10における臭素化の選択性が制御されることを可能にするにちがいない。
【0053】
図5を参照すると、図3の生成物炭化水素の製造のためのプロセスであって、生成物回収と、臭素の回収および再循環のための乾式プロセスとをさらに含むプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。例示される実施形態において、プロセスは、臭素化リアクター10と、水素化リアクター6と、合成リアクター18と、金属酸化物HBr除去装置40と、金属臭化物酸化装置42と、生成物回収装置26とを含む。
【0054】
図5において例示されるように、アルカンを含むガス状供給流12を臭素流14と一緒にすることができ、得られた混合物を臭素化リアクター10に導入することができる。臭素化リアクター10において、アルカンを臭素と反応させて、臭素化アルカンおよび臭化水素を形成することができる。臭素化された流16を臭素化リアクター10から抜き取ることができる。一般に、臭素化リアクター10から抜き取られる臭素化された流16は、多臭素化アルカンを含み得る臭素化アルカンと、臭化水素とを含む。例示される実施形態において、臭素化された流16を水素流4と一緒にすることができ、水素化リアクター6に導入することができる。水素化リアクター6において、臭素化された流16に存在する多臭素化アルカンが水素と反応して、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンとを形成することができる。臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンとを含む水素化された流8を水素化リアクター6から抜き取ることができ、合成リアクター18に導入することができる。水素化された流8はまた、臭素化リアクター10において生じた一臭素化アルカンを含むことができる。合成リアクター18において、臭素化アルカンを触媒の存在下で発熱的に反応させて、生成物炭化水素およびさらなる臭化水素を形成することができる。合成出口流20を合成リアクター18から抜き取ることができる。一般に、合成出口流20は、合成リアクター18において生成する生成物炭化水素およびさらなる臭化水素を含むことができる。合成出口流20はさらに、臭素化リアクター10において生成する臭化水素と、もしかすると、未反応のアルカンとを含むことができる。
【0055】
上記において示されるように、図5のプロセスはさらに金属酸化物HBr除去装置40を含む。例示される実施形態では、合成出口流20を金属酸化物HBr除去装置40に導入することができる。金属酸化物HBr除去装置40において使用される好適なプロセスの一例は、合成出口流20に存在する臭化水素を金属酸化物と反応させて、臭化物塩および水蒸気を形成することを含むことができる。ガス状臭化水素が金属酸化物(例えば、酸化マグネシウムなど)と反応する場合、金属臭化物塩および水蒸気の形成が下記の一般的な反応に従って生じる:
【0056】
【化3】
したがって、臭化水素を生成物炭化水素から分離することができる。特定の実施形態において、少なくとも約90%の臭化水素、潜在的にはほぼ100%に至るまでの臭化水素を生成物炭化水素から分離することができる。下記においてより詳しく記載されるように、生成物炭化水素と、過剰な未反応のアルカンと、水蒸気とを含み得る炭化水素流30を金属酸化物HBr除去装置40から取り出すことができる。
【0057】
臭化水素を、例えば、約600℃未満の温度で、あるいは、約50℃〜約500℃の間の温度で金属酸化物HBr除去装置40において金属酸化物と反応させることができる。例として、金属酸化物HBr除去装置40は、固相の金属酸化物の床を含有する容器またはリアクターを含むことができる。特定の実施形態において、臭化水素と、固相の金属酸化物との反応により、水蒸気と、固相の金属臭化物とが形成する。金属酸化物のための好適な金属の例には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)またはスズ(Sn)が含まれるが、これらに限定されない。臭化物塩を形成するための臭化水素との反応が約500℃未満の温度では可逆的であり得るマグネシウム、銅または鉄を特定の実施形態において使用することができる。しかしながら、特定の金属酸化物に関しては、例えば、銅および鉄に関しては、臭化水素との反応温度を、炭化水素生成物の望ましくない臭素化をもたらし得る還元された金属臭化物塩および元素状臭素への金属臭化物の熱分解を実質的に避けるために、約200℃未満および100℃未満にそれぞれ制限しなければならないことに留意しなければならない。特定の金属酸化物に関しては、例えば、酸化ニッケルに関しては、金属酸化物による炭化水素の酸化の可能性を実質的に避けるために、臭化水素との金属酸化物の反応の温度を制限することもまた重要であり得る。特定の実施形態において、固体の金属酸化物を好適な耐摩耗性担体に固定化することができ、例えば、シリカまたはアルミナなどに固定化することができる。低い比表面積〜中間の比表面積を有する不活性な担体、好ましくは、約1m2/g〜400m2/gの範囲、より好ましくは、約5m2/g〜50m2/gの範囲での比表面積を有する不活性な担体が、本発明の特定の実施形態においては、炭化水素の吸着を最小にすることにおいて好都合であり、一方で、臭化水素除去のための高い能力を達成するための良好な分散とともに、金属酸化物の比較的高い充填のための十分な面積を可能にすることが見出されている。
【0058】
以前に述べられたように、プロセスはさらに金属臭化物酸化装置42を含むことができる。本発明の特定の実施形態によれば、金属臭化物酸化装置42は、金属酸化物HBr除去装置40において形成される金属塩を、元の金属酸化物と、元素状臭素とを形成するために酸素流36と接触させることを含むことができる。酸素流36は、酸素、空気、または、酸素の別の好適な供給源を含むことができる。金属臭化物塩の酸化の場合には、酸素が下記の一般的な反応に従って金属臭化物塩(例えば、臭化マグネシウムなど)と反応する:
【0059】
【化4】
特定の実施形態において、固相の金属臭化物を、例えば、約100℃〜約500℃の温度で、酸素を含むガスと接触させることができる。当業者によって理解されるように、本開示の利益により、この乾式プロセスは、特定の実施形態において、循環様式で作動する少なくとも2つの容器またはリアクターを含むことができる。例として、そのような容器またはリアクターの1つを、臭化水素を金属酸化物との反応により除くための金属酸化物HBr除去装置40として使用することができ、一方、それ以外のリアクターまたは容器が、金属臭化物を元素状臭素に酸化するための金属臭化物酸化装置42として使用される。
【0060】
図5において例示されるように、臭素流14を金属臭化物酸化装置42から取り出すことができる。臭素流14は一般に、金属臭化物酸化装置42において形成される元素状臭素を含むことができる。特定の実施形態において、臭素流14を液体として金属臭化物酸化装置42から取り出すことができる。例示される実施形態において、臭素流14を再循環することができ、上記において記載されるように、ガス状供給流12と一緒にすることができる。したがって、臭素をプロセス内において回収および再循環することができる。
【0061】
上記において記されるように、生成物炭化水素を含む炭化水素流30を金属酸化物HBr除去装置40から取り出すことができる。一般に、炭化水素流30は、臭化水素が分離された生成物炭化水素および過剰な未反応のアルカンを含む。図5において例示されるように、炭化水素流30を、例えば、C5+の炭化水素を液体生成物流32として回収するために生成物回収装置26に導入することができる。液体生成物流32は、例えば、分岐アルカンおよび置換芳香族を含めて、C5+の炭化水素を含むことができる。特定の実施形態において、液体生成物流32はオレフィン(例えば、エチレンおよびプロピレンなど)を含むことができる。特定の実施形態において、液体生成物流32は、液化石油ガスおよびガソリン燃料の範囲、ならびに、より重質の範囲における様々な炭化水素を含むことができ、この場合、そのような炭化水素はガソリン範囲における相当の芳香族含有量を含むことができ、そのため、ガソリン燃料範囲における炭化水素のオクタン価を著しく増大させる。例示されていないが、特定の実施形態において、生成物回収装置26は脱水および液体回収を含むことができる。天然ガスまたは精油所ガスの流を処理するために、また、生成物炭化水素を回収するために使用されるような、脱水および液体回収のどのような従来的方法でも、例えば、固体床乾燥(dessicant)吸着、それに続く冷凍凝縮、極低温膨張、あるいは、循環する吸収油または他の溶媒などを本発明の実施形態において用いることができる。
【0062】
生成物回収装置26からの残留蒸気流出物の少なくとも一部をアルカン再循環流34として回収することができる。アルカン再循環流34は、例えば、メタンと、潜在的には他の未反応のより低分子量のアルカンとを含むことができる。例示されるように、アルカン再循環流34を再循環することができ、ガス状供給流12と一緒にすることができる。特定の実施形態において、再循環されるアルカン再循環流34は供給ガスのモル体積の少なくとも1.5倍であり得る。図5において例示されていないが、特定の実施形態において、生成物回収装置26からの残留蒸気流出物の別の一部をプロセスのための燃料として使用することができる。加えて、図5において同様に例示されていないが、特定の実施形態において、生成物回収装置26からの残留蒸気流出物の別の一部を再循環することができ、合成リアクター18に導入される臭素化アルカンの濃度を希釈するために使用することができる。臭素化アルカンの濃度を希釈するために使用される場合、残留蒸気流出物は一般に、合成リアクター18が、変換対選択性を最大にし、かつ、炭素質コークスの堆積に起因する触媒失活の速度を最小にするために、選択された操作温度において、例えば、約150℃〜約500℃の範囲で維持されるように反応熱を吸収するために所定の速度で再循環されなければならない。したがって、再循環される蒸気流出物によってもたらされる希釈は、合成リアクター18における温度を調節することに加えて、臭素化リアクター10における臭素化の選択性が制御されることを可能にするにちがいない。
【0063】
図1に関して上記において記載されるように、水素化リアクター6に供給される水素流4に存在する水素は、水蒸気メタン改質(「SMR」)、一酸化炭素の水性ガスシフト反応、あるいは、水、金属ハロゲン化物塩または臭化水素の電気分解を含めて、いずれかの好適な供給源により提供され得る。図6〜図9は、水素を水素化リアクター6に提供するための本発明の種々の実施形態を例示した。図6は、水蒸気メタン改質が、水素化リアクター6において使用されるための水素を提供するために使用される本発明の実施形態を例示する。図7〜図9は、電気分解が、水素化リアクター6において使用されるための水素を提供するために使用される本発明の実施形態を例示する。図7および図8は、水性電気分解を含む本発明の実施形態を例示し、一方、図9は蒸気相電気分解を例示する。
【0064】
図6を参照すると、図4の生成物炭化水素の製造のためのプロセスであって、SMRをさらに含むプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。図6では、湿式での臭素の回収および再循環を含む図4の実施形態が例示されるが、当業者は、本開示の利益により、乾式での臭素の回収および再循環をSMRとともに含む図5の実施形態もまた、本発明の実施形態に従って使用され得ることを理解する。例示される実施形態において、水蒸気メタン改質装置44が、水素化リアクター6において使用されるための水素を提供するために使用される。例示されるように、SMR供給流46を水蒸気メタン改質装置44に供給することができる。一般に、SMR供給流46はガス状供給流12の一部を含むことができる。したがって、SMR供給流46は、例えば、天然に存在しようとも、または、合成的に製造されようとも、より低分子量のアルカンを含むことができる。より低分子量のアルカンの好適な供給源の例には、天然ガス、炭層メタン、再ガス化された液化天然ガス、ガスの水和物またはクラスレート(chlathrate)あるいはそれらの組合せに由来するガス、有機物またはバイオマスの嫌気性分解に由来するガス、合成的に製造された天然ガスまたはアルカン、および、それらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、十分な量のガス状供給流12をSMR供給流46により水蒸気メタン改質装置44に供給して、水素化リアクター6に供給される多臭素化アルカンの1モルあたり少なくとも約1モルの水素を提供することができ、また、特定の実施形態においては、二臭素化メタンの1モルあたり少なくとも1モルの水素を提供することができる。
【0065】
水蒸気メタン改質装置44において、SMR供給流46におけるより低分子量の炭化水素を、例えば、触媒の存在下で、例えば、ニッケル系の触媒などの存在下で水蒸気と反応させることができる。水蒸気を水供給流48により水蒸気メタン改質装置44に供給することができる。例示される実施形態において、空気供給50は、例えば、ガス供給および/またはSMRプロセスガスの一部を燃焼させて、吸熱的な改質反応のために要求される熱を提供するために酸素を提供することができる。水蒸気メタン改質装置44は、例えば、約700℃〜約1,100℃の温度で操作することができる。メタンの場合、水蒸気は下記の一般的な反応に従ってメタンと反応し得る:
【0066】
【化5】
水蒸気メタン改質装置44において生じる水素を含む水素流4を水蒸気メタン改質装置44から取り出すことができ、水素化リアクター6に供給することができる。上記において示されるように、水素が多臭素化アルカンと水素化リアクター6において反応して、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成することができる。水素流4に加えて、二酸化炭素および水を含む二酸化炭素/水の流52もまた、水蒸気メタン改質装置44から取り出すことができる。
【0067】
図7を参照すると、図4の生成物炭化水素の製造のためのプロセスであって、電気分解をさらに含むプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。例示される実施形態において、液相電気分解装置54が、水素化リアクター6において使用されるための水素を提供するために使用される。例示されるように、臭化水素供給流56を電気分解装置54に供給することができる。一般に、臭化水素供給流56は、臭化水素セパレーター装置22から取り出され得る臭化水素流28の一部を含むことができる。したがって、臭化水素供給流56は、例えば、水と、水に溶解する臭化水素とを含むことができる。
【0068】
液相電気分解装置54において、臭素を、臭化水素供給流56に存在する臭化水素から回収することができる。電気エネルギーを使用して、臭化水素の少なくとも一部を電気分解して、元素状の臭素および水素を形成することができる。水性の塩酸溶液(HCl)の電気分解では、Uhdeプロセスが使用され得るが、Uhdeプロセスはまた、もしかすると、水性臭化水素酸の電気分解のために、例えば、臭化水素供給流56に溶解する臭化水素の電気分解のために適合化され得る。図9において例示されていないが、1つまたは複数の電気分解セルを液相電気分解装置54において含むことができる。当業者は、本開示の利益により、それらの電気分解セルが、本発明の特定の実施形態によれば、並行または連続して操作され得ることを理解する。臭化水素の電気分解では、電気エネルギーを、水と、水に溶解する臭化水素とを含む臭化水素供給流56に通すことができ、臭素が電気分解セルのアノードで生じ、水素が電気分解セルのカソードで生じる。例示されていないが、水素および臭素を分離するために要求されるエネルギーを電力供給によって提供することができる。
【0069】
例として、臭化水素の電気分解を、電気分解セルのアノード電極およびカソード電極においてそれぞれ生じる下記の一般的な半反応に従って行うことができる:
【0070】
【化6】
特定の実施形態において、十分な量の臭化水素流28を臭化水素供給流56により電気分解装置54に供給して、水素化リアクター6に供給される多臭素化アルカンの1モルあたり少なくとも約1モルの水素を提供することができ、また、特定の実施形態においては、二臭素化メタンの1モルあたり少なくとも1モルの水素を提供することができる。
【0071】
液相電気分解装置54において生じる水素を含む水素流4を液相電気分解装置54から取り出すことができ、水素化リアクター6に供給することができる。上記において示されるように、水素が多臭素化アルカンと水素化リアクター6において反応して、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成することができる。水素流4に加えて、液相電気分解装置電気分解装置54において生じる臭素を含む生じた臭素流58を取り出すことができ、臭素化リアクター10に供給される臭素流14と一緒にすることができる。
【0072】
酸化された水性の金属塩溶液が、臭化水素を、臭化水素が中和されて、金属臭化物塩および水を形成するようにスクラビング処理により除くために使用される場合、液相電気分解装置54への臭化水素供給流56は金属臭化物塩および水を含む。これらの実施形態においては、水性の金属臭化物が電気分解されて、元素状臭素と、還元された金属イオンまたは元素状金属とを生じさせることができる。さらなる例として、金属臭化物塩(例えば、Fe(III)Br2)の電気分解を、電気分解セルのアノード電極およびカソード電極においてそれぞれ生じる下記の一般的な半反応に従って行うことができる:
【0073】
【化7】
特定の実施形態において、空気または酸素を、下記の反応に従って金属イオン(例えば、第一鉄イオン)を金属水酸化物にさらに酸化し、かつ、電極を部分的に脱分極するために、カソードを覆って通すことができる:
【0074】
【化8】
図8を参照すると、図5の生成物炭化水素の製造のためのプロセスであって、電気分解をさらに含むプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。例示される実施形態において、液相電気分解装置54が、水素化リアクター6において使用されるための水素を提供するために使用される。例示されるように、プロセスはさら、液相電気分解装置54と、臭化水素吸収装置60とを含む。合成出口流20の一部は金属酸化物HBr除去装置40を避けて迂回することができ、吸収装置供給流62により臭化水素吸収装置60に供給することができる。したがって、吸収装置供給流62は生成物炭化水素および臭化水を含むことができる。特定の実施形態において、十分な量の臭化水素を迂回させて、水素化リアクター6に供給される多臭素化アルカンの1モルあたり少なくとも約1モルの水素を提供することができ、また、特定の実施形態においては、二臭素化メタンの1モルあたり少なくとも1モルの水素を提供することができる。
【0075】
臭化水素吸収装置60において、臭化水素を、吸収装置供給流62に存在する生成物炭化水素から分離することができる。臭化水素を生成物炭化水素から分離するための好適なプロセスの一例は、ガスであり得る吸収装置供給流62を液体(例えば、スクラビング処理流64など)と接触させることを含む。吸収装置供給流62に存在する臭化水素を液体に溶解させることができる。臭化水素を生成物炭化水素からスクラビング処理により除くために使用され得る好適な液体の1つの例には、水が含まれる。例示されるように、スクラビング処理流64は、生成物回収装置26からの水を含むことができる。これらの実施形態において、臭化水素が水に溶解し、少なくとも一部がイオン化し、水性の酸溶液を形成する。他の実施形態において、上記において記載されるように、酸化された水性の金属塩溶液を使用して、臭化水素を、臭化水素が中和されて、金属臭化物塩および水を形成するようにスクラビング処理により除くことができる。臭化水素がスクラビング処理されている生成物炭化水素を含むスクラビング処理された炭化水素流66を、その後、生成物回収装置26に提供することができ、また、水と、水に溶解する臭化水素(または金属臭化物塩)とを含む電気分解供給流68を液相電気分解装置54に提供することができる。
【0076】
液相電気分解装置54において、臭素を、電気分解供給流68に存在する臭化水素から回収することができる。電気エネルギーを使用して、臭化水素の少なくとも一部を電気分解して、元素状の臭素および水素を形成することができる。水性の塩酸溶液(HCl)の電気分解では、Uhdeプロセスが使用され得るが、Uhdeプロセスはまた、もしかすると、水性臭化水素酸の電気分解のために、例えば、電気分解供給流68に溶解する臭化水素の電気分解のために適合化され得る。臭化水素の電気分解では、電気エネルギーを、水と、水に溶解する臭化水素とを含む電気分解供給流68に通すことができ、臭素が電気分解セルのアノードで生じ、水素が電気分解セルのカソードで生じる。臭化水素の電気分解を、式(7)および式(8)において上記で示される半反応に従って行うことができる。酸化された水性の金属塩溶液が、臭化水素を、臭化水素が中和されて、金属臭化物塩および水を形成するようにスクラビング処理により除くために使用される場合、水性の金属臭化物が電気分解されて、元素状臭素と、還元された金属イオンまたは元素状金属とを形成することができる。金属臭化物塩(例えば、Fe(III)Br2)の電気分解を、式(9)および式(10)において上記で示される半反応に従って行うことができる。特定の実施形態において、空気または酸素を、式(11)において上記で示される反応に従って金属イオン(例えば、第一鉄イオン)を金属水酸化物にさらに酸化し、かつ、電極を部分的に脱分極するために、カソードを覆って通すことができる。
【0077】
特定の実施形態において、十分な量の臭化水素流28を臭化水素供給流56により電気分解装置54に供給して、水素化リアクター6に供給される多臭素化アルカンの1モルあたり少なくとも約1モルの水素を提供することができ、また、特定の実施形態においては、二臭素化メタンの1モルあたり少なくとも1モルの水素を提供することができる。
【0078】
液相電気分解装置54において生じる水素を含む水素流4を液相電気分解装置54から取り出すことができ、水素化リアクター6に供給することができる。上記において示されるように、水素が多臭素化アルカンと水素化リアクター6において反応して、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成することができる。水素流4に加えて、液相電気分解装置54において生じる臭素を含む生じた臭素流58を取り出すことができ、臭素化リアクター10に供給される臭素流14と一緒にすることができる。
【0079】
図9を参照すると、図3の生成物炭化水素の製造のためのプロセスであって、生成物回収および電気分解をさらに含むプロセスの例示的ブロック図が本発明の1つの実施形態に従って例示される。例示されるように、プロセスはさらに、生成物回収装置72と、蒸気相電気分解装置76と含む。例示される実施形態において、蒸気相電気分解装置76は、水素化リアクター6において使用されるための水素を提供するための、プロセスで生じる臭化水素の気相電気分解のために使用される。加えて、図9の実施形態はまた、過剰な水素を生成物として生じさせることができる。
【0080】
図9において例示されるように、合成出口流30を、例えば、C5+の炭化水素を液体生成物流32として回収するために生成物回収装置72に導入することができる。液体生成物流32は、例えば、分岐アルカンおよび置換芳香族を含めて、C5+の炭化水素を含むことができる。特定の実施形態において、液体生成物流32はオレフィン(例えば、エチレンおよびプロピレンなど)を含むことができる。特定の実施形態において、液体生成物流32は液化石油ガスおよびガソリン燃料の範囲における様々な炭化水素を含むことができ、この場合、そのような炭化水素は相当の芳香族含有量を含むことができ、そのため、ガソリン燃料範囲における炭化水素のオクタン価を著しく増大させる。例示されていないが、特定の実施形態において、生成物回収装置72は脱水および液体回収を含むことができる。天然ガスまたは精油所ガスの流を処理するために、また、生成物炭化水素を回収するために使用されるような、脱水および液体回収のどのような従来的方法でも、例えば、固体床乾燥(dessicant)吸着、それに続く冷凍凝縮、極低温膨張、あるいは、循環する吸収油または他の溶媒などを本発明の実施形態において用いることができる。
【0081】
生成物回収装置72からの蒸気流出流74を蒸気相電気分解装置76に供給することができる。特定の実施形態において、蒸気流出流74は、生成物回収装置72において回収されなかったメタンおよび他の未反応のより低分子量のアルカンを含むことができる。加えて、蒸気流出流74はさらに、生成物回収装置72に導入された合成出口流30に存在した臭化水素を含むことができる。蒸気相電気分解装置76において、臭化水素の電気分解は、電気エネルギーを使用して、臭化水素の少なくとも一部を電気分解して、元素状臭素をアノードで形成し、水素をカソードで形成することを含むことができる。臭化水素の電気分解を、式(7)および式(8)において上記で示される半反応に従って行うことができる。臭化水素の蒸気相電気分解のための例示的プロセスが米国特許第5,411,641号に記載される(その開示全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0082】
1つの実施形態において、蒸気流出流74を、カチオン輸送膜と、膜のそれぞれの面と接触してそれぞれが配置されるアノードおよびカソードとを含む電気分解セルの入口から導入することができる。電気分解セルにおいて、臭化水素の分子がアノードで還元されて、臭素ガスおよび水素カチオンを生じさせることができる。水素カチオンは、プロトンの水素カチオンがカソード表面で電子と一緒になって、水素ガスを形成するカソード側にまで膜を通って輸送され得る。好適なカチオン輸送膜の例には、フルオロモノマーまたはペルフルオロモノマーを含むカチオン性膜、例えば、ペンダントスルホン酸基をそれらのうちの少なくとも1つが含有する2つ以上のフルオロモノマーまたはペルフルオロモノマーのコポリマーなどが含まれる。好適なカチオン輸送膜の別の例には、プロトン伝導性のセラミックス、例えば、β−アルミナなどが含まれる。
【0083】
別の実施形態において、蒸気流出流74を、アニオン輸送膜(例えば、溶融塩飽和膜)を、膜の反対側にそれぞれが配置されるアノードおよびカソードとともに含む電気分解セルのカソード側に導入することができる。電気分解セルにおいて、臭化水素の分子がカソードで還元され、そして、電子と一緒になって、水素ガスおよび臭化物アニオンを生じさせることができる。その後、臭化物アニオンは、臭化物アニオンが電子を遊離させ、一緒になって、臭素を形成するアノード側にまで膜を通って輸送され得る。
【0084】
蒸気相電気分解装置76において生じる水素を含む生成物水素流78を蒸気相電気分解装置76から取り出すことができる。生成物水素流78の一部を水素流4として水素化リアクター6に供給することができる。特定の実施形態において、十分な量の水素を水素化リアクターに提供して、水素化リアクター6に供給される多臭素化アルカンの1モルあたり少なくとも約1モルの水素を提供することができ、また、特定の実施形態においては、二臭素化メタンの1モルあたり少なくとも1モルの水素を提供することができる。生成物水素流78における水素の残る部分を生成物としてプロセスから抜き取ることができる。特定の実施形態において、例えば、水素に対する局在的な要求がないかもしれない場合には、さらに2つの電気分解セルを並行して使用することができ、この場合、1つまたは複数が、空気がカソードを覆って通される空気脱分極されたカソードとともに操作され、これにより、水素ではなく、むしろ、水の蒸気が生じる。セルを空気脱分極されたカソードとともに操作することは、電気分解のために要求される電圧および電力を減らすことができる。
【0085】
蒸気相電気分解装置76において生じる臭素をアルカン/臭素再循環流77により臭素化リアクター10に再循環することができる。臭素に加えて、アルカン/臭素再循環流77はまた、蒸気相電気分解装置76に導入される蒸気流出流74に存在したアルカンの少なくとも一部を含むことができる。アルカン/臭素再循環流77は、例えば、臭素、メタン、および、潜在的には他の未反応のより低分子量のアルカンを含むことができる。例示されるように、アルカン/再循環流34を再循環することができ、ガス状供給流12と一緒にすることができる。アルカン/再循環流77における臭素が臭素化リアクター10においてガス状供給流12と反応することができる。例示されていないが、特定の実施形態において、ガス状供給流はまた、臭素の補給流と一緒にすることができる。特定の実施形態において、アルカン/臭素再循環流34において再循環されるアルカンは供給ガスのモル体積の少なくとも1.5倍であり得る。図9において例示されていないが、特定の実施形態において、蒸気相電気分解装置76から回収されるアルカンの別の一部をプロセスのための燃料として使用することができる。加えて、図9において同様に例示されていないが、特定の実施形態において、蒸気相電気分解装置76から回収されるアルカンの別の一部を再循環することができ、合成リアクター18に導入される臭素化アルカンの濃度を希釈するために使用することができる。臭素化アルカンの濃度を希釈するために使用される場合、残留蒸気流出物は一般に、合成リアクター18が、変換対選択性を最大にし、かつ、炭素質コークスの堆積に起因する触媒失活の速度を最小にするために、選択された操作温度において、例えば、約300℃〜約450℃の範囲で維持されるように反応熱を吸収するために所定の速度で再循環されなければならない。したがって、再循環される蒸気流出物によってもたらされる希釈は、合成リアクター18における温度を調節することに加えて、臭素化リアクター10における臭素化の選択性が制御されることを可能にするにちがいない。
【0086】
図10〜図14は、一臭素化アルカンおよび臭化水素が水素化リアクター6を避けて迂回される、生成物炭化水素の製造のための本発明の実施形態を例示する。図10〜図14の構成における水素化リアクター6は、以前に記載される一連の構成よりも濃縮された反応物の減少した流を有するので、水素化リアクター6は、より小さいサイズのものにすることができ、このことは潜在的には、より少ない触媒を必要とし、また、プロセス全体にわたる圧力低下を減らす。
【0087】
図10〜図14において例示されるように、臭素化された流16を臭素化リアクター10から取り出すことができる。一般に、臭素化された流16は臭素化アルカンおよび臭化水素を含むことができる。臭素化された流16に存在する臭素化アルカンは一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含むことができる。多臭素化アルカンの分離のために、臭素化された流16を第1の熱交換器80に導入することができる。多臭素化アルカンは、臭素化された流16の他の成分(例えば、一臭素化アルカン、臭化水素、および、残留メタンまたは他の軽質アルカンなど)と比較して高い沸点を有するので、多臭素化アルカンを、臭素化された流16を第1の熱交換器80において冷却することによって容易に凝縮させることができる。臭素化された流16は、例えば、約10℃〜約90℃の温度に冷却することができる。
【0088】
ガス状の臭素化された流出物82を第1の熱交換器80から取り出すことができ、合成リアクター供給流86を形成するために第2の熱交換器84において再加熱することができる。第2の熱交換器84において、ガス状の臭素化された流出物82を、例えば、約300℃〜約400℃の温度に加熱することができる。一般に、ガス状の臭素化された流出物82は、第1の熱交換器80において凝縮されなかった臭素化された流16の一部を含むことができる。例として、ガス状の臭素化された流出物82は、一臭素化アルカン、臭化水素、残留メタンまたは他の軽質アルカン、および、凝縮していない一部の残留する多臭素化アルカンを含むことができる。
【0089】
凝縮した臭素化された流88を第1の熱交換器80から取り出すことができ、水素化リアクター供給流92を形成するために第3の熱交換器90において蒸発させることができる。第3の熱交換器90において、凝縮後の臭素化された流88を、例えば、約200℃〜約450℃の温度に加熱して、多臭素化アルカンを蒸発させることができる。一般に、凝縮後の臭素化された流88は、第1の熱交換器80において凝縮された臭素化された流16の一部を含むことができる。例として、凝縮後の臭素化された流88は、多臭素化アルカンと、多臭素化アルカンと一緒に凝縮されている少量の一臭素化アルカンとを含むことができる。例えば、臭素化リアクター10において形成される多臭素化アルカンの少なくとも一部を第1の熱交換器80において凝縮させることができ、その後、第3の熱交換器90において蒸発させることができる。
【0090】
例示される実施形態において、第3の熱交換器90からの水素化リアクター供給流92を水素流4と一緒にすることができ、水素化リアクター6に導入することができる。水素化リアクター6において、水素化リアクター供給流92に存在する多臭素化アルカンが水素と反応して、臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する1つまたは複数の臭素化アルカンとを形成することができる。本発明の実施形態によれば、水素化リアクター6は、本質的にはすべての多臭素化アルカンが一臭素化アルカンに変換され得るという点で、高い、ほぼ100%に至るまでの選択性により一臭素化アルカンおよび臭化水素を形成するために操作され得ることが考えられる。より高い温度は、多臭素化アルカンの見かけ上の高い変換をもたらす一方で、コーキングもまた加速させることが考えられる。したがって、より大きいリアクターが、多臭素化アルカンの高い変換を達成するために要求されるという犠牲を払うが、より低い温度での運転が、コークスの形成に起因する損失がより少ないことのために、また、より遅い触媒失活のために許容され得ることがある。高い活性が酸素含有ガス混合物または空気による再生によって触媒に戻り得ることが見出されている。
【0091】
臭化水素と、より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンとを含む濃縮された水素化された流94を水素化リアクター6から抜き取ることができる。例として、水素化リアクターから抜き取られる濃縮された水素化された流94は臭化水素および一臭素化アルカンを含むことができる。水素化リアクター6および水素流4は上記において図1に関してより詳しく記載される。濃縮された水素化された流94を合成リアクター供給流86と一緒にすることができ、合成リアクター18に導入することができる。図10〜図14の合成リアクター18および他の構成要素は上記においてそれらの図に関してより詳しく記載される。
【0092】
本発明のより良い理解を容易にするために、いくつかの実施形態の特定の局面の下記の実施例が示される。いかなる点においても、下記の実施例は、本発明の範囲全体を限定するために、または、規定するために理解してはならない。
【実施例】
【0093】
(実施例1)
二臭素化メタン、メタンおよび水素の混合物を、およそ750hr−1のガス毎時空間速度(これは、リットル単位での総リアクター触媒床体積(触媒床多孔度を含む)によって除される1時間あたりの標準リットルでのガス流速として定義される)で、触媒上で60psigにおいて390℃で反応させた。触媒は、低表面積のシリカ担体に分散される臭化第二鉄を含んでいた。図15は、時間に対する二臭素化メタンの変換を例示するグラフである。図16は、リアクターに入る流およびリアクターから出る流における二臭素化メタンおよび一臭素化メタンの濃度を例示するグラフである。図17は、リアクターに入る流およびリアクターから出る流における臭化水素および水素の濃度を例示するグラフである。本実施例によって例示されるように、一臭素化メタンへの二臭素化メタンの変換をほぼ100%の選択性により行うことができる。加えて、二臭素化メタンが、この触媒による水素化に関しては、一臭素化メタンよりも実質的に反応性であることもまた、これらの結果から推測することができる。その他の点では、臭素化メタンが部分的または完全にメタンおよびHBrに変換されていると考えられる。
【0094】
(実施例2)
二臭素化メタン、メタンおよび水素の混合物を、およそ750hr−1のガス毎時空間速度で触媒上で390℃および60psigで反応させた。触媒は、低表面積のシリカ担体に分散される白金を含んでいた。図18は、時間に対する二臭素化メタンの変換を例示するグラフである。図19は、リアクターに入る流およびリアクターから出る流における二臭素化メタンおよび一臭素化メタンの濃度を例示するグラフである。図20は、リアクターに入る流およびリアクターから出る流における臭化水素および水素の濃度を例示するグラフである。加えて、二臭素化メタンが、この触媒による水素化に関して、一臭素化メタンよりも実質的に反応性であることもまた、これらの結果から推測することができる。その他の点では、臭素化メタンが部分的または完全にメタンおよびHBrに変換されていると考えられる。
【0095】
したがって、本発明は、述べられる目的および利点、ならびに、本発明において固有である目的および利点を達成するために十分に適合化される。上記において開示される具体的な実施形態は単に例示にすぎない。これは、本発明が、本明細書中の教示の利益を有する当業者には明らかな、異なるが、同等な様式で改変および実施され得るからである。さらに、どのような限定も、下記の特許請求の範囲において記載されるような限定以外は、本明細書中に示される構成または設計の細部に対して意図されない。したがって、上記において開示される具体的な例示的実施形態は変更または改変することができ、かつ、すべてのそのような変化が、本発明の範囲および精神の範囲内であると見なされることが明白である。特に、本明細書中に開示される(「約a〜約b(約aから約bまで)」、または、同等に、「およそa〜b(およそaからbまで)」、または、同等に、「およそa〜b(およそa−b)」の形態の)値の範囲はどれも、値のそれぞれの範囲のべき集合(すべての部分集合の集合)を示すとして理解しなければならず、また、値のより広い範囲の範囲内に包含されるどの範囲も示すものとする。そのうえ、不定冠詞の「a」または「an」は、特許請求の範囲において使用される場合、不定冠詞が付け加えられる要素の1つまたは2つ以上を意味するために本明細書中では定義される。また、特許請求の範囲における用語は、特許権者によって明示的かつ明確に別途定義される場合を除き、その平易な通常の意味を有する。
(項目1) 少なくとも水素および多臭素化アルカンを、触媒の存在下で反応させ、該水素と反応させられる該多臭素化アルカンよりも少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンを含む水素化された流を形成する工程、
を含む方法。
(項目2) 前記多臭素化アルカンが二臭素化メタンを含み、かつ、前記より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンが一臭素化メタンを含む、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記触媒が、臭素との多数の熱的に可逆的な錯体を形成することができる触媒を含む、項目1に記載の方法。
(項目4) 前記触媒が、担体に付着する酸化鉄、および、担体に分散される白金からなる群から選択される触媒を含む、項目1に記載の方法。
(項目5) 臭素化アルカンを含む臭素化生成物を、アルカンおよび臭素を含む臭素化反応物から形成する工程であって、ここで、該臭素化アルカンは一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含む、工程;
さらなる一臭素化アルカンを含む水素化生成物を、水素と、該臭素化反応物から形成される該多臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む水素化反応物から形成する工程;および
炭化水素を含む合成生成物を、反応物である一臭素化された臭素化合物を含む合成反応物から形成する工程であって、ここで、該反応物である一臭素化された臭素化合物は、該臭素化反応物から形成される該一臭素化アルカンの少なくとも一部と、該水素化反応物から形成される該さらなる一臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む工程、
を含む方法。
(項目6) 前記臭素化アルカンに存在する前記多臭素化アルカンが二臭素化メタンを含む、項目5に記載の方法。
(項目7) 前記臭素化生成物を形成する工程が、少なくとも前記アルカンおよび前記臭素を触媒の存在下で反応させる工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目8) 前記水素化生成物を形成する工程が、少なくとも前記水素および前記多臭素化アルカンの一部を触媒の存在下で反応させる工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目9) 前記触媒が、臭素との多数の熱的に可逆的な錯体を形成することができる触媒を含む、項目8に記載の方法。
(項目10) 前記触媒が、担体に付着する酸化鉄、および、担体に分散される白金からなる群から選択される触媒を含む、項目8に記載の方法。
(項目11) 少なくともアルカンと、生成水素を形成するための流とを反応させる工程であって、ここで、前記水素化反応物に存在する前記水素が該生成する水素を含む工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目12) 臭化水素を電気分解して、生成水素を形成する工程であって、ここで、前記水素化反応物に存在する前記水素が該生成水素を含む工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目13) 金属臭化物塩を電気分解して、生成水素を形成する工程であって、ここで、前記水素化反応物に存在する前記水素が前記生成水素を含む工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目14) 前記合成生成物を形成する工程が、少なくとも前記反応物である一臭素化アルカンを触媒の存在下で反応させる工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目15) 前記触媒が、合成結晶性アルミノケイ酸塩酸化物骨格を含む、項目14に記載の方法。
(項目16) C5+の炭化水素を含む液体生成物流を回収する工程であって、ここで、該C5+の炭化水素が、合成生成物を形成する工程において形成される前記炭化水素に存在する工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目17) オレフィンを含む液体生成物流を回収する工程であって、ここで、該オレフィンが、合成生成物を形成する工程において形成される前記炭化水素に存在する、項目5に記載の方法。
(項目18) 該臭化水素を水に溶解することによって、前記合成生成物に存在する前記炭化水素の少なくとも一部から臭化水素を分離する工程;
該臭化水素の少なくとも一部を中和し、金属臭化物塩を形成する工程;および
該金属臭化物塩の少なくとも一部を酸化し、回収臭素を含む酸化生成物を形成する工程;および
該酸化工程において形成される該回収臭素を再循環させる工程であって、ここで、該回収臭素は、さらなる臭素化アルカンを形成することにおいて使用される、工程、
を含む、項目5に記載の方法。
(項目19) 前記臭化水素の別の一部を電気分解し、生成水素およびさらなる回収臭素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該生成水素を再循環する工程;および
該さらなる回収臭素を再循環する工程
を含む、項目18に記載の方法。
(項目20) 前記金属臭化物塩の別の一部を電気分解し、生成水素およびさらなる回収臭素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該生成水素を再循環する工程;および
該さらなる回収臭素を再循環する工程
を含む、項目18に記載の方法。
(項目21) 臭化水素を、前記合成生成物に存在する前記炭化水素の少なくとも一部から分離する工程であって、前記臭化水素を金属酸化物と反応させ、金属臭化物を形成する工程を含む、工程;
該金属臭化物を酸化し、該金属酸化物と、回収臭素とを含む酸化生成物を形成する工程;および
該酸化工程において形成される該回収臭素を再循環する工程であって、ここで、該回収臭素は、さらなる臭素化アルカンを形成する工程において使用される、工程
を含む、項目5に記載の方法。
(項目22) 前記臭化水素を分離する工程に先立って、前記合成生成物を、第1の合成生成物の流と、第2の合成生成物の流とに分離する工程であって、ここで、該第1の合成生成物の流は、前記金属酸化物と反応させられる前記炭化水素の前記一部を含む、工程;
さらなる臭化水素を該第2の合成生成物の流に存在する炭化水素から分離する工程;および
該さらなる臭化水素の少なくとも一部を電気分解し、生成水素およびさらなる回収臭素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該生成水素を再循環する工程;および
該回収臭素を再循環する工程
を含む、項目21に記載の方法。
(項目23) 前記臭化水素を分離する工程に先立って、前記合成生成物を、第1の合成生成物の流と、第2の合成生成物の流とに分離する工程であって、ここで、該第1の合成生成物の流は、前記金属酸化物と反応させられる前記炭化水素の前記一部を含む、工程;
さらなる臭化水素を該第2の合成生成物の流に存在する炭化水素から分離する工程;
該さらなる臭化水素を中和し、金属臭化物塩を含む中和生成物を形成する工程;
該さらなる金属臭化物塩の少なくとも一部を電気分解し、生成水素およびさらなる回収臭素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該生成水素を再循環する工程;および
該さらなる回収臭素を再循環する工程
を含む、項目21に記載の方法。
(項目24) 前記合成生成物を生成物回収装置に導入する工程であって、ここで、前記合成生成物は、臭化水素および未反応のメタンをさらに含む、工程;
生成物炭化水素を含む液体生成物流を前記生成物回収装置から取り出すこと;
該臭化水素および該未反応のメタンを含む流を該生成物回収装置から取り出す工程;
該臭化水素の少なくとも一部を電気分解し、回収臭素および生成水素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該回収臭素を再循環する工程;および
該生成水素の少なくとも一部を再循環する工程
を含む、項目5に記載の方法。
(項目25) 前記電気分解工程において使用される少なくとも1つの電気分解セルを、前記電気分解生成物がさらに水を含むように空気脱分極モードで操作する工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目26) 前記臭素化生成物を、バイパス流と、前記水素化反応物を含む水素化供給流とに分離する工程を含む、項目5に記載の方法。
(項目27) 前記分離工程が、前記臭素化生成物を冷却することを含む、項目26に記載の方法。
(項目28) 前記バイパス流を加熱する工程;および
前記水素化供給流を加熱する工程
を含む、項目27に記載の方法。
(項目29) 臭素化アルカンを含む臭素化生成物を、アルカンおよび臭素を含む臭素化反応物から形成するために構成される臭素化リアクターであって、該臭素化アルカンが一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含む、臭素化リアクター;
該臭素化リアクターと流体連絡しており、かつ、さらなる一臭素化アルカンを含む水素化生成物を、水素と、該臭素化リアクターからの該多臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む水素化反応物から形成するために構成される水素化リアクター;および
該水素化リアクターと流体連絡しており、かつ、反応物である一臭素化された臭素化合物を含む合成反応物からの炭化水素を含む合成生成物を形成するために構成される合成リアクターであって、該反応物である一臭素化された臭素化合物が、該臭素化リアクターからの該一臭素化アルカンの少なくとも一部と、該水素化リアクターからの該さらなる一臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む、合成リアクター
を含むシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水素および多臭素化アルカンを、触媒の存在下で反応させ、該水素と反応させられる該多臭素化アルカンよりも少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンを含む水素化された流を形成する工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記多臭素化アルカンが二臭素化メタンを含み、かつ、前記より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンが一臭素化メタンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒が、臭素との多数の熱的に可逆的な錯体を形成することができる触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒が、担体に付着する酸化鉄、および、担体に分散される白金からなる群から選択される触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
臭素化アルカンを含む臭素化生成物を、アルカンおよび臭素を含む臭素化反応物から形成する工程であって、ここで、該臭素化アルカンは一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含む、工程;
さらなる一臭素化アルカンを含む水素化生成物を、水素と、該臭素化反応物から形成される該多臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む水素化反応物から形成する工程;および
炭化水素を含む合成生成物を、反応物である一臭素化された臭素化合物を含む合成反応物から形成する工程であって、ここで、該反応物である一臭素化された臭素化合物は、該臭素化反応物から形成される該一臭素化アルカンの少なくとも一部と、該水素化反応物から形成される該さらなる一臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む工程、
を含む方法。
【請求項6】
前記臭素化アルカンに存在する前記多臭素化アルカンが二臭素化メタンを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記臭素化生成物を形成する工程が、少なくとも前記アルカンおよび前記臭素を触媒の存在下で反応させる工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記水素化生成物を形成する工程が、少なくとも前記水素および前記多臭素化アルカンの一部を触媒の存在下で反応させる工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が、臭素との多数の熱的に可逆的な錯体を形成することができる触媒を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒が、担体に付着する酸化鉄、および、担体に分散される白金からなる群から選択される触媒を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
少なくともアルカンと、生成水素を形成するための流とを反応させる工程であって、ここで、前記水素化反応物に存在する前記水素が該生成する水素を含む工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
臭化水素を電気分解して、生成水素を形成する工程であって、ここで、前記水素化反応物に存在する前記水素が該生成水素を含む工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
金属臭化物塩を電気分解して、生成水素を形成する工程であって、ここで、前記水素化反応物に存在する前記水素が前記生成水素を含む工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記合成生成物を形成する工程が、少なくとも前記反応物である一臭素化アルカンを触媒の存在下で反応させる工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒が、合成結晶性アルミノケイ酸塩酸化物骨格を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
C5+の炭化水素を含む液体生成物流を回収する工程であって、ここで、該C5+の炭化水素が、合成生成物を形成する工程において形成される前記炭化水素に存在する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項17】
オレフィンを含む液体生成物流を回収する工程であって、ここで、該オレフィンが、合成生成物を形成する工程において形成される前記炭化水素に存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項18】
臭化水素を水に溶解することによって、前記合成生成物に存在する前記炭化水素の少なくとも一部から該臭化水素を分離する工程;
該臭化水素の少なくとも一部を中和し、金属臭化物塩を形成する工程;および
該金属臭化物塩の少なくとも一部を酸化し、回収臭素を含む酸化生成物を形成する工程;および
該酸化工程において形成される該回収臭素を再循環させる工程であって、ここで、該回収臭素は、さらなる臭素化アルカンを形成することにおいて使用される、工程、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項19】
前記臭化水素の別の一部を電気分解し、生成水素およびさらなる回収臭素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該生成水素を再循環する工程;および
該さらなる回収臭素を再循環する工程
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記金属臭化物塩の別の一部を電気分解し、生成水素およびさらなる回収臭素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該生成水素を再循環する工程;および
該さらなる回収臭素を再循環する工程
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
臭化水素を、前記合成生成物に存在する前記炭化水素の少なくとも一部から分離する工程であって、前記臭化水素を金属酸化物と反応させ、金属臭化物を形成する工程を含む、工程;
該金属臭化物を酸化し、該金属酸化物と、回収臭素とを含む酸化生成物を形成する工程;および
該酸化工程において形成される該回収臭素を再循環する工程であって、ここで、該回収臭素は、さらなる臭素化アルカンを形成する工程において使用される、工程
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項22】
前記臭化水素を分離する工程に先立って、前記合成生成物を、第1の合成生成物の流と、第2の合成生成物の流とに分離する工程であって、ここで、該第1の合成生成物の流は、前記金属酸化物と反応させられる前記炭化水素の前記一部を含む、工程;
さらなる臭化水素を該第2の合成生成物の流に存在する炭化水素から分離する工程;および
該さらなる臭化水素の少なくとも一部を電気分解し、生成水素およびさらなる回収臭素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該生成水素を再循環する工程;および
該回収臭素を再循環する工程
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記臭化水素を分離する工程に先立って、前記合成生成物を、第1の合成生成物の流と、第2の合成生成物の流とに分離する工程であって、ここで、該第1の合成生成物の流は、前記金属酸化物と反応させられる前記炭化水素の前記一部を含む、工程;
さらなる臭化水素を該第2の合成生成物の流に存在する炭化水素から分離する工程;
該さらなる臭化水素を中和し、金属臭化物塩を含む中和生成物を形成する工程;
該さらなる金属臭化物塩の少なくとも一部を電気分解し、生成水素およびさらなる回収臭素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該生成水素を再循環する工程;および
該さらなる回収臭素を再循環する工程
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記合成生成物を生成物回収装置に導入する工程であって、ここで、前記合成生成物は、臭化水素および未反応のメタンをさらに含む、工程;
生成物炭化水素を含む液体生成物流を前記生成物回収装置から取り出すこと;
該臭化水素および該未反応のメタンを含む流を該生成物回収装置から取り出す工程;
該臭化水素の少なくとも一部を電気分解し、回収臭素および生成水素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該回収臭素を再循環する工程;および
該生成水素の少なくとも一部を再循環する工程
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項25】
前記電気分解工程において使用される少なくとも1つの電気分解セルを、前記電気分解生成物がさらに水を含むように空気脱分極モードで操作する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項26】
前記臭素化生成物を、バイパス流と、前記水素化反応物を含む水素化供給流とに分離する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項27】
前記分離工程が、前記臭素化生成物を冷却することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記バイパス流を加熱する工程;および
前記水素化供給流を加熱する工程
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
臭素化アルカンを含む臭素化生成物を、アルカンおよび臭素を含む臭素化反応物から形成するために構成される臭素化リアクターであって、該臭素化アルカンが一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含む、臭素化リアクター;
該臭素化リアクターと流体連絡しており、かつ、さらなる一臭素化アルカンを含む水素化生成物を、水素と、該臭素化リアクターからの該多臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む水素化反応物から形成するために構成される水素化リアクター;および
該水素化リアクターと流体連絡しており、かつ、反応物である一臭素化された臭素化合物を含む合成反応物からの炭化水素を含む合成生成物を形成するために構成される合成リアクターであって、該反応物である一臭素化された臭素化合物が、該臭素化リアクターからの該一臭素化アルカンの少なくとも一部と、該水素化リアクターからの該さらなる一臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む、合成リアクター
を含むシステム。
【請求項30】
前記アルカンが、天然ガス、炭層メタン、再ガス化された液化天然ガス、ガスの水和物および/またはクラスレート(chlathrate)に由来するガス、有機物またはバイオマスの嫌気性分解に由来するガス、タールサンドの処理において得られるガス、合成的に製造された天然ガスまたはアルカン、あるいは、これらの供給源の混合物から供給される、請求項5に記載の方法。
【請求項31】
前記アルカンが、合成的に製造されたアルカンから供給される、請求項5に記載の方法。
【請求項32】
前記アルカンが、合成的に製造された天然ガスから供給される、請求項5に記載の方法。
【請求項33】
前記アルカンが、タールサンドの処理において得られるガスから供給される、請求項5に記載の方法。
【請求項1】
少なくとも水素および多臭素化アルカンを、触媒の存在下で反応させ、該水素と反応させられる該多臭素化アルカンよりも少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンを含む水素化された流を形成する工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記多臭素化アルカンが二臭素化メタンを含み、かつ、前記より少ない臭素置換基を有する臭素化アルカンが一臭素化メタンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒が、臭素との多数の熱的に可逆的な錯体を形成することができる触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒が、担体に付着する酸化鉄、および、担体に分散される白金からなる群から選択される触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
臭素化アルカンを含む臭素化生成物を、アルカンおよび臭素を含む臭素化反応物から形成する工程であって、ここで、該臭素化アルカンは一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含む、工程;
さらなる一臭素化アルカンを含む水素化生成物を、水素と、該臭素化反応物から形成される該多臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む水素化反応物から形成する工程;および
炭化水素を含む合成生成物を、反応物である一臭素化された臭素化合物を含む合成反応物から形成する工程であって、ここで、該反応物である一臭素化された臭素化合物は、該臭素化反応物から形成される該一臭素化アルカンの少なくとも一部と、該水素化反応物から形成される該さらなる一臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む工程、
を含む方法。
【請求項6】
前記臭素化アルカンに存在する前記多臭素化アルカンが二臭素化メタンを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記臭素化生成物を形成する工程が、少なくとも前記アルカンおよび前記臭素を触媒の存在下で反応させる工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記水素化生成物を形成する工程が、少なくとも前記水素および前記多臭素化アルカンの一部を触媒の存在下で反応させる工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が、臭素との多数の熱的に可逆的な錯体を形成することができる触媒を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒が、担体に付着する酸化鉄、および、担体に分散される白金からなる群から選択される触媒を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
少なくともアルカンと、生成水素を形成するための流とを反応させる工程であって、ここで、前記水素化反応物に存在する前記水素が該生成する水素を含む工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
臭化水素を電気分解して、生成水素を形成する工程であって、ここで、前記水素化反応物に存在する前記水素が該生成水素を含む工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
金属臭化物塩を電気分解して、生成水素を形成する工程であって、ここで、前記水素化反応物に存在する前記水素が前記生成水素を含む工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記合成生成物を形成する工程が、少なくとも前記反応物である一臭素化アルカンを触媒の存在下で反応させる工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒が、合成結晶性アルミノケイ酸塩酸化物骨格を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
C5+の炭化水素を含む液体生成物流を回収する工程であって、ここで、該C5+の炭化水素が、合成生成物を形成する工程において形成される前記炭化水素に存在する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項17】
オレフィンを含む液体生成物流を回収する工程であって、ここで、該オレフィンが、合成生成物を形成する工程において形成される前記炭化水素に存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項18】
臭化水素を水に溶解することによって、前記合成生成物に存在する前記炭化水素の少なくとも一部から該臭化水素を分離する工程;
該臭化水素の少なくとも一部を中和し、金属臭化物塩を形成する工程;および
該金属臭化物塩の少なくとも一部を酸化し、回収臭素を含む酸化生成物を形成する工程;および
該酸化工程において形成される該回収臭素を再循環させる工程であって、ここで、該回収臭素は、さらなる臭素化アルカンを形成することにおいて使用される、工程、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項19】
前記臭化水素の別の一部を電気分解し、生成水素およびさらなる回収臭素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該生成水素を再循環する工程;および
該さらなる回収臭素を再循環する工程
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記金属臭化物塩の別の一部を電気分解し、生成水素およびさらなる回収臭素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該生成水素を再循環する工程;および
該さらなる回収臭素を再循環する工程
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
臭化水素を、前記合成生成物に存在する前記炭化水素の少なくとも一部から分離する工程であって、前記臭化水素を金属酸化物と反応させ、金属臭化物を形成する工程を含む、工程;
該金属臭化物を酸化し、該金属酸化物と、回収臭素とを含む酸化生成物を形成する工程;および
該酸化工程において形成される該回収臭素を再循環する工程であって、ここで、該回収臭素は、さらなる臭素化アルカンを形成する工程において使用される、工程
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項22】
前記臭化水素を分離する工程に先立って、前記合成生成物を、第1の合成生成物の流と、第2の合成生成物の流とに分離する工程であって、ここで、該第1の合成生成物の流は、前記金属酸化物と反応させられる前記炭化水素の前記一部を含む、工程;
さらなる臭化水素を該第2の合成生成物の流に存在する炭化水素から分離する工程;および
該さらなる臭化水素の少なくとも一部を電気分解し、生成水素およびさらなる回収臭素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該生成水素を再循環する工程;および
該回収臭素を再循環する工程
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記臭化水素を分離する工程に先立って、前記合成生成物を、第1の合成生成物の流と、第2の合成生成物の流とに分離する工程であって、ここで、該第1の合成生成物の流は、前記金属酸化物と反応させられる前記炭化水素の前記一部を含む、工程;
さらなる臭化水素を該第2の合成生成物の流に存在する炭化水素から分離する工程;
該さらなる臭化水素を中和し、金属臭化物塩を含む中和生成物を形成する工程;
該さらなる金属臭化物塩の少なくとも一部を電気分解し、生成水素およびさらなる回収臭素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該生成水素を再循環する工程;および
該さらなる回収臭素を再循環する工程
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記合成生成物を生成物回収装置に導入する工程であって、ここで、前記合成生成物は、臭化水素および未反応のメタンをさらに含む、工程;
生成物炭化水素を含む液体生成物流を前記生成物回収装置から取り出すこと;
該臭化水素および該未反応のメタンを含む流を該生成物回収装置から取り出す工程;
該臭化水素の少なくとも一部を電気分解し、回収臭素および生成水素を含む電気分解生成物を形成する工程;
該回収臭素を再循環する工程;および
該生成水素の少なくとも一部を再循環する工程
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項25】
前記電気分解工程において使用される少なくとも1つの電気分解セルを、前記電気分解生成物がさらに水を含むように空気脱分極モードで操作する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項26】
前記臭素化生成物を、バイパス流と、前記水素化反応物を含む水素化供給流とに分離する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項27】
前記分離工程が、前記臭素化生成物を冷却することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記バイパス流を加熱する工程;および
前記水素化供給流を加熱する工程
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
臭素化アルカンを含む臭素化生成物を、アルカンおよび臭素を含む臭素化反応物から形成するために構成される臭素化リアクターであって、該臭素化アルカンが一臭素化アルカンおよび多臭素化アルカンを含む、臭素化リアクター;
該臭素化リアクターと流体連絡しており、かつ、さらなる一臭素化アルカンを含む水素化生成物を、水素と、該臭素化リアクターからの該多臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む水素化反応物から形成するために構成される水素化リアクター;および
該水素化リアクターと流体連絡しており、かつ、反応物である一臭素化された臭素化合物を含む合成反応物からの炭化水素を含む合成生成物を形成するために構成される合成リアクターであって、該反応物である一臭素化された臭素化合物が、該臭素化リアクターからの該一臭素化アルカンの少なくとも一部と、該水素化リアクターからの該さらなる一臭素化アルカンの少なくとも一部とを含む、合成リアクター
を含むシステム。
【請求項30】
前記アルカンが、天然ガス、炭層メタン、再ガス化された液化天然ガス、ガスの水和物および/またはクラスレート(chlathrate)に由来するガス、有機物またはバイオマスの嫌気性分解に由来するガス、タールサンドの処理において得られるガス、合成的に製造された天然ガスまたはアルカン、あるいは、これらの供給源の混合物から供給される、請求項5に記載の方法。
【請求項31】
前記アルカンが、合成的に製造されたアルカンから供給される、請求項5に記載の方法。
【請求項32】
前記アルカンが、合成的に製造された天然ガスから供給される、請求項5に記載の方法。
【請求項33】
前記アルカンが、タールサンドの処理において得られるガスから供給される、請求項5に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2011−524368(P2011−524368A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513718(P2011−513718)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/047155
【国際公開番号】WO2009/152405
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(509158819)マラソン ジーティーエフ テクノロジー, リミテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/047155
【国際公開番号】WO2009/152405
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(509158819)マラソン ジーティーエフ テクノロジー, リミテッド (6)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]