説明

多色サーマル画像生成材料

画像生成部材であって、第1および第2の対向する表面を有する基材を含み、該表面は、少なくとも第1の発色層、第1の断熱中間層、第2の発色層、第2の断熱層および第3の発色層を保持し、該第1の発色層は、該第2の発色層より高い活性化温度を有し、そして該第2の発色層は、該第3の発色層より高い活性化温度を有し、該サーマル画像生成部材は、該第1の発色層内に位置するまたは任意の他の発色層より該第1の発色層に近い層中に位置する放射線吸収材料をさらに含む画像生成部材を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は、2009年10月5日に出願された米国特許出願第12/573,850号に対する優先権を主張する。上記米国特許出願第12/573,850号は、2009年2月11日に出願された米国特許出願第12/369,600号の一部継続出願である。上記米国特許出願第12/369,600号は、2007年1月22日に出願された米国特許出願第11/656,267号の継続出願であり、現在米国特許第7,504,360号として発行されている。上記米国特許出願第11/656,267号は、2004年2月27日に出願された米国特許出願第10/789,648号の継続出願であり、現在米国特許第7,176,161号として発行されている。上記米国特許出願第10/789,648号は、2003年2月28日に出願された米国仮特許出願第60/451,208号の利益を主張する。上記の内容はすべてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、以下の共同所有される米国特許および特許出願に関連したものであり、これらのすべての開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる:
本発明において使用される発色組成物を記載および特許請求している、米国特許第6,801,233号;
本発明において使用される発色組成物を記載および特許請求している、米国特許第6,951,952号;
本発明において使用される発色組成物を記載および特許請求している、米国特許第7,008,759号;
本発明において使用される発色組成物を記載および特許請求している、米国特許第7,279,264号;
本発明において使用される画像つなぎ合わせ方法を記載および特許請求している、米国特許第7,388,686号;
本発明において使用される発色組成物を記載および特許請求している、米国特許第7,282,317号;
本発明において使用される予熱を含む画像生成方法を記載および特許請求している、米国特許第7,408,563号;
2005年6月23日出願の「Print Head Pulsing Techniques for Multicolor Printers」と題する米国特許出願第11/159880号;
本発明において使用される画像生成方法を記載および特許請求している、2006年4月6日出願の米国特許出願第11/400734号;
本発明において使用される熱応答補正システムを記載および特許請求している、2004年8月4日出願の米国特許出願第10/910,880号;
本発明において使用される熱応答補正システムを記載および特許請求している、2009年5月19日出願の米国特許出願第12/468,413号;
本発明において使用される画像生成方法を記載および特許請求している、2008年1月30日出願の米国特許出願第12/022,955号;および
本発明において使用される画像生成部材を記載および特許請求している、2009年8月3日出願の米国特許出願第12/462,421号。
【0003】
発明の分野
本発明は、画像生成部材、画像を形成するための画像生成方法、およびサーマル画像生成部材を製造するための方法に関し、より詳細には、結晶形態の化合物が該結晶形態とは異なる色を本質的に有する非晶質形態に少なくとも部分的に変換されたときに画像の形成が起こる画像生成部材および方法に関する。本発明は、熱源がレーザーまたはレーザーアレイである多色ダイレクトサーマル画像生成にも関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
サーマル・プリント・ヘッド(個別アドレス指定可能レジスタの線形アレイ)の開発は、多種多様な感熱媒体の開発につながった。「熱転写」システムとしても既知の、これらの一部では、熱を用いてドナーシートからレシーバシートに呈色材料を移動させる。あるいは、熱を用いて、「ダイレクトサーマル」画像生成として既知のプロセスで、単一シート上の無色コーティングを呈色画像に変換することができる。ダイレクトサーマル画像生成は、単一シートの単純な熱転写より有利である。その一方で、定着工程を組み込まない限り、ダイレクト・サーマル・システムは、サーマル印刷後でも感熱性である。非定着式ダイレクト・サーマル・システムからの安定した画像が必要とされる場合、呈色温度は、その画像が通常の使用中に遭遇する可能性の高いいずれの温度より高くなければならない。呈色温度が高いほど、加熱による印刷の際の媒体の感度が低くなるという問題が生じる。高感度は、最大印刷速度のために、サーマル・プリント・ヘッド(使用する場合)の寿命を最大にするために、および携帯用電池式プリンタのエネルギー節約のために重要である。以下により詳細に説明するように、安定性を維持しながら感度を最大にすることは、ダイレクトサーマル媒体の呈色温度が加熱時間に実質的に非依存型である場合、より容易に達成される。
【0005】
ダイレクトサーマル画像生成部材を印刷するための1つの方法は、サーマル画像生成部材の表面と接触した状態でサーマル・プリント・ヘッドを使用する。サーマル・プリント・ヘッドは画像の線を1度に1本ずつアドレス指定する。妥当な印刷時間のために、画像の各線を約50ミリ秒以下加熱する。しかし、(印刷前の、または最終画像の形態での)媒体の保管が何年にもわたって必要とされることがある。従って、高い画像生成感度のために短い加熱時間で高い呈色度が求められる一方で、良好な安定性のために長い加熱時間にわたって低い呈色度が求められる。
【0006】
レーザーにより露光されるダイレクトサーマル画像生成部材は、当該技術分野において既知である。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4により、発色層の温度が発色時間の間に発色温度より上に上昇すると色の変化を被るように適合させられた発色組成物を含有する発色層を含む画像生成媒体が記載および特許請求されている。これらの特許に記載されているダイレクトサーマル画像生成部材は、電磁スペクトルの近赤外(NIR)領域で(すなわち、約700〜約1200nmの範囲にわたる波長で)放射するレーザーによって露光され、黄色、シアンおよびマゼンタ感熱発色組成物を含有する3つの独立した発色層を含む。これらの発色組成物のそれぞれが、所望の色を生じさせることができる発色化合物と、赤外線を吸収することができ、それにより発色層において熱を発生させることができる赤外線吸収材とを含む。この3つの発色層は、異なる波長で吸収する赤外線吸収材を使用しているため、各発色層を独立して画像生成することができる;例えば、これらの特許に開示されている特定の画像生成媒体は、おおよそ792、822および869nmでのピーク吸収を有する赤外線吸収材を使用している。
【0007】
多くのダイレクトサーマル画像生成システムは、熱によって呈色化合物に変えられるロイコ(すなわち無色)色素を含む。概して、ロイコ色素は、色の変化をもたらすのに十分な熱を生じさせるために好都合な波長で放射するレーザーから十分な放射線を吸収しない。例えば、(多くの他の例の中でも)米国特許第4,602,263号および同第4,826,976号には、紫外で吸収するロイコ色素が記載されている。現時点で、画像生成用途のための安価な紫外レーザーは容易には入手できない。さらに、レーザーによって加熱する予定のない層に紫外線放射に対する透明性を与えることは困難であり得る。可視波長を使用してもよいが、この場合、白色であること(すなわち、入射可視光の可能な限り多くの反射)が予定される最終画像領域内の吸収材を漂白する必要があり、または入射レーザー放射線の小部分のみを吸収するように吸収材を組み込まなければならない。これらの理由のため、先に説明したように、NIRで放射するレーザーとこれらの波長で効率的に吸収するが可視波長ではごく微量しか吸収しない吸収材とを併用することが、多くの場合好ましい。そのような吸収材は、例えば、米国特許第5,227,498号、同第5,227,499号、同第5,231,190号、同第5,262,549号、同第5,354,873号、同第5,405,976号、同第5,627,014号、同第5,656,750号、同第5,795,981号、同第5,919,950号、同第5,977,351号および同第6,482,950号に記載されている。赤外におけるさらに長い波長、例えばCOレーザーなどのガスレーザーの出力を用いることもできる。
【0008】
赤外線吸収材を発色層自体に組み込むことは必ずしも必要でないが、これは好ましい選択肢である。国際特許出願番号PCT/US87/03249は、赤外線吸収材を画像生成層に隣接する層内に備えさせて赤外線放射の熱への変換を支援できることを記載している。
【0009】
サーマル画像生成システムにおいて使用される赤外線吸収材についての要件は厳しい。生成される画像の感度および解像度は、多くの場合、感熱要素内の層の厚さの影響を受けるので(システムの感度は、加熱を必要とする材料の質量に逆比例するので)、時には1マイクロメートルといったような厚さの薄層内への高い赤外線吸収度を生じさせる必要がある。サーマル画像生成システムにおいて要求される他の成分を含有する層においてこの吸収度を生じさせるには、使用する赤外線吸収材が、少なくとも約100,000Lmol−1cm−1といったような高い吸光係数、および低い分子量を有する必要がある。加えて、前記吸収材は、既存の近赤外レーザーで好都合に使用できるように約700〜1200nmの範囲内でその最大吸収を明示すべきであり、可視波長で最小の吸収を有するべきである。現状の技術では、約760〜1200nmで放射する固体ダイオードレーザーが単位コストあたり最高の出力を与える。約1000〜1200nmで放射するYAGおよび他の希土類ドープ型レーザーもサーマル画像生成プロセスにおいて有用である。
【0010】
米国特許第5,534,393号は、化学線を熱に変換することにより像様加熱が誘導される場合、画像生成媒体が、画像生成工程の前または途中に非像様の一般的な加熱を受けることがあることを規定している。そのような加熱は、加熱プラテンもしくは被加熱ドラムを使用して、または媒体要素を露光しながら加熱するための追加のレーザービーム源もしくは他の適切な手段の利用により、達成することができる。この特許は、(単一波長で放射する)単一レーザーの焦点の深度を制御することによって、異なる層のアドレス指定をも提供する。
【0011】
米国特許第7,314,704号には、レーザー放射線用の吸収材を無色ロイコ色素、活性化剤および定着剤と共に含有する画像生成記録媒体が記載されている。
【0012】
米国特許出願第2008−0111877号には、レーザーによって露光することができるフルカラーラベルを生じさせるダイレクトサーマル画像生成組成物を保持する光学ディスクが記載されている。
【0013】
大抵の化学反応は、温度の上昇に伴って加速する。従って、サーマル・プリント・ヘッドからの利用可能な短い加熱時間での呈色に必要な温度は、長い保管期間の間に呈色を生じさせるために必要な温度より通常は高いであろう。温度に対するこの秩序を逆にすることは、非常に難しい課題であるが、長時間の呈色温度と短時間の呈色温度の両方が実質的に同じになるように実質的に時間非依存型の呈色温度を維持することが、本発明によって達成される望ましい目標である。
【0014】
時間非依存型呈色温度が望ましいだろう理由は他にもある。例えば、印刷後に比較的長い加熱時間を必要とする第2の熱的工程を行う必要がある場合がある。そのような工程の一例は、画像の熱ラミネーションであろう。熱ラミネーションに必要とされる時間の間の媒体の呈色温度は、そのラミネーション温度より高くなければならない(でなければその媒体はラミネーション中に着色してくるだろう)。画像生成温度は、時間非依存型呈色温度の場合と同様に、可能な限り小差でラミネーション温度より高いことが好ましいであろう。
【0015】
最後に、先に述べた米国特許第6,801,233号に記載されているように、サーマル画像生成部材は1つより多くの発色層を含むことができ、サーマル画像生成部材を単一サーマル・プリント・ヘッドで印刷されるように設計することができる。そのようなサーマル画像生成部材の1つの実施形態において、最上発色層は、比較的短時間で比較的高温で発色するが、下のほうの層(単数または複数)は、比較長時間(単数または複数)で比較的低温(単数または複数)で発色する。このタイプのダイレクトサーマル画像生成システムのための理想的な最上層は、時間非依存型呈色温度を有するであろう。
【0016】
先行技術のダイレクトサーマル画像生成システムは、色の変化を生じさせるために幾つかの異なる化学的メカニズムを用いてきた。あるものは、本質的に不安定である化合物であって、加熱されると分解して可視色を形成する化合物を利用してきた。そのような色変化は、単分子化学反応を伴うことがある。この反応は、無色前駆体から色を形成させることがあり、または呈色材料の色を変化させることがあり、または呈色材料を漂白することがある。その反応の速度は、熱によって加速される。例えば、米国特許第3,488,705号は、加熱により分解および漂白されるトリアリールメタン色素の熱不安定性有機酸塩を開示している。米国再発行特許第29,168号として再発行された米国特許第3,745,009号、および米国特許第3,832,212号は、−−OR基、例えばカーボネート基で置換されている複素環式窒素原子を含有するサーモグラフィー用の感熱性化合物を開示しており、これらの化合物は、加熱により窒素−酸素結合のホモリシスまたはヘテロリシス開裂を受けてRO+イオンまたはRO’ラジカルおよび色素基または色素ラジカル(これらは部分的にさらにフラグメント化することがある)を生成することにより脱色する。米国特許第4,380,629号は、活性化エネルギーに応じて開環および閉環することにより、可逆的にまたは不可逆的に、呈色または漂白を被るスチリル様化合物を開示している。米国特許第4,720,449号には、無色分子を呈色した形態に変換する分子内アシル化反応が記載されている。米国特許第4,243,052号には、色素を形成するために使用することができるキノフタロン前駆体の混合炭酸塩の熱分解が記載されている。米国特許第4,602,263号には、色素を明らかにするためにまたは色素の色を変化させるために使用することができる熱除去可能な保護基が記載されている。米国特許第5,350,870号には、色変化を誘導するために用いることができる分子内アシル化反応が記載されている。単分子発色反応のさらなる例は、「New Thermo−Response Dyes:Coloration by the Claisen Rearrangement and Intramolecular Acid−Base Reaction」Masahiko Inouye、Kikuo Tsuchiya、およびTeijiro Kitao、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.31、204−5頁(1992)に記載されている。
【0017】
先に述べた例のすべてにおいて、化学反応の制御は、温度を変化させることで起こる速度の変化によって達成される。相変化不在の場合の化学反応速度における熱によって誘導される変化は、絶対温度の逆数が減少するにつれて(すなわち温度が上昇するにつれて)速度定数が指数関数的に増加するアレニウスの式によって、多くの場合、概算することができる。速度定数の対数を絶対温度の逆数に関係づける直線の傾きは、いわゆる「活性化エネルギー」に比例する。先に説明した先行技術の化合物は、画像生成前に非晶質状態でコーティングされ、それ故、室温と画像生成温度との間で発生すると予想または記載されている相変化はない。それ故、先行技術で用いられているようなこれらの化合物は、時間依存性呈色温度を強く呈示する。これらの先行技術の化合物の一部は、結晶形態で単離されたと記載されている。それにもかかわらず、この先行技術では、それらの化合物の結晶が溶融するときに発生し得る発色反応の活性化エネルギーのいずれの変化にも決して言及されていない。
【0018】
他の先行技術のサーマル画像生成媒体は、溶融に依存して画像形成を誘発する。概して、互いに反応して色変化を生じさせる2つ以上の化合物を、それらが互いに離隔されるように、例えば小結晶の分散体として、基材上にコーティングする。化合物自体の、または追加の可融性ビヒクルの溶融が、それらを互いに接触させ、可視画像を形成させる。例えば、無色色素前駆体は、試薬との熱誘導接触により色を形成することができる。この試薬は、「Imaging Processes and Materials」、Nebletteの第8版、J.Sturge、V.Walworth、A.Shepp編、Van Nostrand Reinhold、1989、274〜275頁に記載されているようなブレンステッド酸、または例えば米国特許第4,636,819号に記載されているようなルイス酸であり得る。酸性試薬と共に使用される好適な色素前駆体は、例えば、米国特許第2,417,897号、南アフリカ国特許第68−00170号、南アフリカ国特許第68−00323号および独国特許出願公開第2,259,409号に記載されている。そのような色素のさらなる例は、「Chemistry and Applications of Leuco Dyes」、Muthyala編、Plenum Press、New York、1997におけるIna FletcherおよびRudolf Zinkによる「Synthesis and Properties of Phthalide−type Color Formers」において見つけることができる。前記酸性材料は、例えば、フェノール誘導体または芳香族カルボン酸誘導体であり得る。そのようなサーマル画像生成材料およびそれらの様々な組み合わせが今では周知であり、これらの材料を用いて感熱性記録素子を作製する様々な方法も周知であり、例えば、米国特許第3,539,375号、同第4,401,717号および同第4,415,633号に記載されている。
【0019】
少なくとも2つの独立した成分が融解転移後に混合される先行技術のシステムは、サーマル・プリント・ヘッドによって非常に短時間で画像を形成するために必要とされる温度が、より長い加熱期間の間にその媒体を着色するために必要とされる温度より実質的に高いことがあるという欠点を有する。この差は、熱を非常に短期間にわたって印加するときには限定的になり得る、溶融成分を互いに混合するために必要とされる拡散速度の変化に起因する。この遅い拡散速度を克服するために、温度を個々の成分の融点より十分に高い温度に上昇させる必要があるだろう。拡散速度は、長い加熱期間の間に限定的でなくなるだろうが、これらの場合に呈色が起こる温度は、結晶質材料の混合物の共融点で発生するので、いずれの個々の成分の融点より実際には低いだろう。
【0020】
従って、ダイレクトサーマル画像生成システムの多くの先行技術の例にもかかわらず、画像形成温度が実質的に時間非依存型であるものはない。特に、結晶質化合物を、その結晶形態とは異なる色を本質的に有する液体形態、または非晶質形態に変換する、画像を生成するための方法は、以前に記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第5,627,014号明細書
【特許文献2】米国特許第5,153,169号明細書
【特許文献3】米国特許第5,342,816号明細書
【特許文献4】米国特許第5,534,393号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
発明の要旨
従って、本発明の目的は、新規画像生成方法を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、画像を形成する温度が時間非依存型である、サーマル画像生成方法を提供することである。
【0024】
別の目的は、結晶形態の固体化合物を少なくとも部分的に非晶質形態に変換することによって画像が形成される、画像生成方法を提供することである。
【0025】
さらに別の目的は、結晶形態の固体化合物を少なくとも部分的に非晶質形態に変換することによって少なくとも1色の画像が形成される、多色サーマル画像生成方法を提供することである。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、新規画像生成部材を提供することである。
【0027】
本発明の別の目的は、結晶形態の発色化合物と入射NIR線用の付随吸収材とを含む新規画像生成部材を提供することである。
【0028】
本発明の1つの態様に従って、結晶形態の化合物を少なくとも部分的に、そして好ましくは実質的に完全に、または完全に、非晶質形態に変換する画像生成方法であって、前記非晶質形態が前記結晶形態とは異なる色を本質的に有するものである画像生成方法を提供する。前記非晶質形態への変換は、サーマル画像生成に関する既知の技術のいずれかによりサーマル画像生成部材に熱を印加することによって行うことができる。好ましい実施形態では、画像を形成するために必要とされるエネルギーをレーザーによって供給する。
【0029】
別の実施形態において、結晶質材料である1つ以上の熱溶剤をサーマル画像生成部材に組み込むことができる。前記結晶質熱溶剤(単数または複数)は、加熱されると溶融して溶解または液化し、それによって少なくとも部分的にその結晶質画像形成材料を非晶質形態に変換して画像を形成する。
【0030】
本発明の別の態様では、新規サーマル画像生成部材を提供する。本発明のサーマル画像生成部材は、先に説明したように少なくとも部分的に非晶質形態に変換することができる結晶形態の化合物であって、該非晶質形態が該結晶形態とは異なる色を本質的に有するものである化合物を含む、少なくとも1つの画像形成層を保持する基材を一般に含む。前記サーマル画像生成部材は、単色であることがあり、または多色であることがあり、画像形成層うちの少なくとも一層において画像が形成される温度は、時間非依存型である。
【0031】
本発明の多色サーマル画像生成部材は、先に説明したように少なくとも部分的に非晶質形態に変換することができる結晶形態の化合物であって、該非晶質形態が該結晶形態とは異なる色を本質的に有するものである化合物を含む少なくとも1つの画像形成層と、異なるメカニズムによって色を形成する材料を含む少なくとも1つの画像形成層とを含むことがある。
【0032】
本発明の別の態様では、本発明のサーマル画像生成部材を製造するための方法を提供する。一般に、この方法は、任意の好適な方法、例えば粉砕、磨砕などによって、結晶質固体および場合により結合剤の、該化合物が不溶性であるまたはほんのわずかにしか可溶性でない溶剤中の分散液を形成する工程、および任意の好適な方法、例えばコーティング分野において周知の技術のいずれかを用いる基材上への流体のコーティングなどによって、基材上に画像形成材料の層を形成する工程を含む。これらは、スロット、グラビア、マイヤーロッド、ロール、カスケード、スプレーおよびカーテンコーティング技術を含む。そのようにして形成された画像形成層に保護層(単数または複数)を場合によりオーバーコートする。
【0033】
本発明のさらなる態様において、少なくとも第1の発色層、第1の断熱中間層、第2の発色層、第2の断熱層および第3の発色層を保持する基材であって、該第1の発色層内にある、または任意の他の発色層より該第1の発色層の近くに位置する放射線吸収材料を含む基材を提供し、この場合、該第1の発色層は、該第2の発色層より高い活性化温度を有し、該第2の発色層は、該第3の発色層より高い活性化温度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明ならびに本発明の他の目的および利点およびさらなる特徴をよりよく理解するために、添付の図面を併用して本発明の様々な好ましい実施形態についての後続の詳細な説明を参照する。
【図1】図1は、本発明に従って画像を形成することができる2つの異なる化学的メカニズム、タイプIおよびIIを図示するものである。
【図2】図2は、図1に示したタイプIメカニズムを経る材料に特有のプロトン移動平衡を図示するものである。
【図3】図3は、タイプIIメカニズムを経る材料の化学的メカニズムを図示するものである。
【図4】図4は、本発明のサーマル画像生成部材を図示するものである。
【図5】図5は、本発明のサーマル画像生成部材を露光するためのヒートパルス法を図示するものである。
【図6】図6は、本発明のサーマル画像生成部材を露光するためのヒートパルス法を図示するものである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
結晶状態の化合物は、同化合物の非晶質形態のものとは非常に異なる特性(色を含む)を一般に有する。結晶において、概して、分子は、格子の充填力によって単一の配座で(または、より希には少数の配座で)保たれる。同様に、分子が1つより多くの相互変換性異性体形態で存在し得る場合、通例、そのような異性体形態のうちの1つだけが結晶状態で存在する。その一方で、非晶質形態または溶液の場合、化合物は、その全配座および異性体空間を探ることができ、いつでも、その化合物の個々の分子の集団のほんの小さな割合は、結晶において選択される特定の配座または異性体形態を呈示するだろう。これらの現象は、3つの類似したやり方で本発明の組成物、画像生成方法および画像生成部材に活用される。
【0036】
さて、図1を参照すると、本発明に従って活用される2つのタイプの化学平衡、所定のタイプIおよびIIが示されている。第1のタイプは、一定の色素分子が溶液中で互変異性を示す(すなわち、平衡時にそれらが異なる相互変換性異性体として存在する)ことを利用する。これを相互変換性化学エンティティーAおよびB間の平衡として図1、タイプIに示す。図1、タイプIには2つの化学種しか示されていないが、これは、単に簡略化のためであり、いかなる点においても本発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書に提供する論述は、任意の数の相互変換性互変異性体に同等にあてはまる。結晶状態の場合、先に説明したように、可能な異性体形態のうちの1つしか通常は存在しない。従って、AとBとの混合物の結晶化は、用いる条件に依存して純粋なAの結晶または純粋なBの結晶を生成する場合がある。
【0037】
異なる互変異性体は、互いに異なる電子構造を有することができ、従って、異なる電磁放射線吸収性を有することができる。従って、異なる互変異性体が異なる色を有することは珍しくない。互変異性体の平衡分布は、それらが溶解する媒体の極性に依存するであろう。それ故、極性互変異性体は、極性媒体中で有利である一方で、あまり極性が高くない互変異性体は、あまり極性が高くない媒体中で有利であろう。互変異性を呈示する色素分子を単一互変異性体形態に結晶化させることができる場合、その結晶状態は、その特定の互変異性体の色を呈示するであろう。そのような結晶形態を加熱して液体形態に変換するまたは溶剤に溶解すると、互変異性体の平衡が再び確立されて、その結晶中に存在しない少なくとも一部の互変異性体(単数または複数)が、その溶融状態または溶液の極性に依存する相対量で存在することとなる。その結晶中に存在しない互変異性体からの寄与が見られるであろうから、その溶融物または溶液の色は、その結晶のものとは異なる可能性が高い。
【0038】
本発明に従って、少なくとも一方の互変異性体形態が無色であり、少なくとも別の互変異性体が呈色している、互変異性を呈示する分子を同定した。これは、分子Aが無色であり、分子Bが呈色しているならば、図1、タイプIで表される。AとBとの平衡混合物の結晶化を行って、純粋なAの無色の結晶を生成する。結晶化を行うために選択される溶剤は、概して、溶液中でのAとBとの間の平衡の点で、または溶剤への溶解度がBより低い点でAに有利であるような極性(および他の化学的特性、例えば水素結合能力)のものであるだろう。溶剤の選択は、通常、互変異性体の特定の混合物について経験的に決定される。
【0039】
純粋な結晶のAが非晶質形態に変換されると、結果として生じた非晶質(液)相中で互変異性体AとBとの平衡が再び確立される。呈色している非晶質材料の割合(すなわち、B互変異性体形態である割合)は様々であり得るが、好ましくは少なくとも約10%である。
【0040】
本発明の分子の呈色および無色互変異性体形態は、画質および画像保存性についての一定の基準を満たさなければならない。結晶形態であることが好ましい無色形態は、最小の可視吸収を有すべきである。光、融点未満での加熱、湿気、および他の環境因子、例えばオゾン、酸素、窒素酸化物、指紋油などに対して安定であるべきである。これらの環境因子は、画像生成技術分野の技術者に周知である。呈色している非晶質形態も、先に述べた条件に対して安定であるべきであり、加えて、画像の通常の取り扱い条件下で再結晶して無色の形態なってはならない。前記呈色形態は、デジタル演色に適するスペクトル吸収を有するべきである。概して、前記呈色形態は、意図されたものでないスペクトル領域での過度な吸収を伴うことなく、黄色(青色吸収性)、マゼンタ(緑色吸収性)、シアン(赤色吸収性)、または黒色であるべきである。しかし、非写真用途については、前記呈色形態が、減法混色の1つでなく、特定のスポットカラー(例えば、オレンジ色、青色など)であることが求められることがある。
【0041】
本発明のサーマル画像生成部材は、画像が該部材自体において形成されるダイレクトサーマル画像生成部材である場合があり、または画像形成材料が受像部材に転写される熱転写画像生成部材である場合がある。本発明のダイレクトサーマル画像生成部材において使用される分子の融点は、好ましくは、約60℃〜約300℃の範囲である。約60℃より低い融点は、画像生成前または後の該部材の取り扱い中に偶発的に遭遇する温度に対して不安定であるダイレクトサーマル画像生成部材をもたらす一方で、約300℃より高い溶融温度は、それらの化合物を従来のサーマル・プリント・ヘッドで着色することを難しくする。しかし、本発明の一定の新規化合物には、サーマル・プリント・ヘッドを使用する必要がない用途(例えば、レーザー画像生成)があることに注目すべきである。
【0042】
本発明の結晶質化合物の加熱または溶解によるその結晶形態から非晶質形態への変換は、高粘度の材料を生成することもあり、低粘度の材料を生成することもある。概して、1012Pa・sより高い粘度を有する非晶質材料はガラスと呼ばれる。結晶形態の溶融は、冷却するとガラスになる易流動性の液体を生じさせることがある。冷却により粘度が1012Pa・sに達する温度は、ガラス転移温度、すなわちTgと呼ばれる。望ましい安定度を有する画像を形成するには、結晶形態への液体または非晶質形態の再結晶が起こらないことが好ましい。再結晶は、液体または非晶質形態がガラスであるとき、すなわち、そのTgより低い温度であるとき、遅いであろう。この理由のため、本発明の化合物の液体または非晶質形態のTgは、実質的に室温より高いことが好ましい。好ましいTgは、約50℃以上である。
【0043】
本発明の多色サーマル画像生成部材は、すべての発色層が基材の同じ側に保持されているもの、ならびに少なくとも1つの発色層が基材の第1の側に保持されており、少なくとも1つの発色層がその基材の第2の側に保持されているものを含む。
【0044】
本発明の好ましい互変異性平衡は、プロトン移動を伴う。図2に示すように、酸性および塩基性部位を含有する分子は、プロトン化酸および非プロトン化塩基互変異性体形態で存在することもあり、または非プロトン化酸およびプロトン化塩基形態で存在することもある。これら2つの形態は、その分子の酸性部位または塩基性部位のいずれかがインジケータ色素を構成する場合、異なる色を有するだろう。従って、前記分子は、酸に共有結合で連結している無色の塩基性インジケータ色素(これは酸の存在下で呈色状態になる)または塩基に共有結合で連結している無色の酸性インジケータ色素(これは脱プロトン化されると呈色状態になる)から成り得る。勿論、前記分子は、酸性インジケータ色素に共有結合で連結している塩基性インジケータ色素から成ることもある。前記酸性および塩基性部位の強度は、大抵の条件下で2つの互変異性体のうちの一方に圧倒的に有利でない平衡を確立することができるようなものでなければならない。これは、前記酸および前記塩基が弱い場合、最も容易に達成される。特に好ましい酸性原子団はフェノールであるが、塩基性部位は多種多様であり得、一般には電気的に陰性のヘテロ原子、例えば酸素または窒素である。
【0045】
本発明のタイプIの互変異性体分子の好ましい例としては、下記のキサンテン誘導体が挙げられる。キサンテン誘導体の2つの互変異性体形態を示す(式IおよびIIによって表す)が、これによりこの分子のさらなる互変異性体形態を排除するつもりはない。幾つかの文献が、キサンテン分子の可能な互変異性体の一方だけを報告していることに注意すべきである。
【0046】
【化1】

これらの分子中、
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、ハロゲン、または置換もしくは非置換酸素、窒素もしくは硫黄原子であり;
は、水素、アルキル、アリール、または不在であり;
は、置換または非置換酸素、窒素、硫黄またはハロゲンであり;
、R10、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、ハロゲン、ニトロ、または置換もしくは非置換酸素、窒素もしくは硫黄原子、または不在であり;
は、カルボニル、メチレンまたはスルホニルであり;
は、水素、アルキル、アリールまたは窒素で置換されている、酸素または窒素であり;
およびXは、それぞれ独立して、酸素、硫黄または窒素であり;ならびに
は、炭素または窒素である。
【0047】
これらの化合物において、式Iの酸性原子団は、水素原子を有する基Xを含み、式Iの塩基性部位は、原子Xを含む。XからXへのプロトンの移動により、式IIの化合物が得られる。
【0048】
式Iのキサンテンの1つの好ましい部分群は、式中のXが酸素であり、Rが、水素、アルキルまたはアリールで置換されている酸素であり、Xがカルボニルであり、Xが酸素であり、Xが酸素であるフルオレセイン化合物である。
【0049】
上のサブタイプの多くのフルオレセイン誘導体が当該技術分野において既知である。そのような化合物の1つの互変異性体形態(式Iに対応する)は、無色である(電磁スペクトルの紫外領域で吸収する)が、第2の互変異性体形態(式IIに対応する)は、多くの場合、黄色い色である。フルオレセイン自体は、式中のRが不在であり、Rがヒドロキシル基であり、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12がそれぞれ水素原子であり、Xがカルボニルであり、X、XおよびXがそれぞれ酸素であり、Xが炭素である、式Iの化合物である。これらの先行技術の化合物の多くに難があることが判明した。フルオレセイン自体は、無色形態で結晶化することが難しく、非晶質形態では、幾つかの別様に呈色する種を含む複雑な平衡を呈示する。Rがエーテル原子団であるならば単純化することができる。例えば、Rがベンジルオキシ基であることを除いて置換基がフルオレセインについて先に説明したとおりである、既知の化合物ベンジルフルオレセインは、容易に無色形態に結晶化される。ベンジルフルオレセインの非晶質形態は、黄色である。
【0050】
ベンジルフルオレセインは、非晶質形態のほんの小さな割合(約4%)が呈色している(すなわち、非晶質形態の約96%は、式Iに対応する互変異性体形態であり、この構造うちの約4%が、式IIに対応する)という欠点を有する。後述の実施例1においてより詳細に説明するように、式I中のR、R、RおよびRのうちの少なくとも2つがアルキル置換基を含むとき、はるかに高い割合の非晶質形態の呈色互変異性体を得ることができることが判明した。
【0051】
本発明の特に好ましいフルオレセイン誘導体は、式中のR、R、RおよびRのうちの少なくとも2つが、分岐または直鎖の、アリールまたはヘテロ原子置換基を含むことがある、1個〜約12個の炭素原子を有するアルキル基を含み、Rが不在であり、R、R、R、R10、R11およびR12がそれぞれ水素であり、Rがエーテル原子団であり、Xがカルボニル基であり、X、XおよびXがそれぞれ酸素であり、Xが炭素である、式Iの誘導体である。
【0052】
式Iの特定の好ましい化合物は、式中のRが不在であり、R、R、R、R10、R11およびR12がそれぞれ水素であり、Xがカルボニルであり、X、XおよびXがそれぞれ酸素であり、Xが炭素であり、他の置換基が以下のとおりであるものである:
化合物F−1:RおよびRがそれぞれ水素であり、RおよびRがそれぞれn−ヘキシルであり、Rがベンジルオキシである;
化合物F−2:RおよびRがそれぞれ水素であり、RおよびRがそれぞれn−ヘキシルであり、Rがエトキシである;
化合物F−3:RおよびRがそれぞれ水素であり、RおよびRがそれぞれエチルであり、Rがベンジルオキシである;
化合物F−4:RおよびRがそれぞれ水素であり、RおよびRがそれぞれn−ヘキシルであり、Rがエトキシである;
化合物F−5:RおよびRがそれぞれメチルであり、RおよびRがそれぞれ水素であり、Rがベンジルオキシである;
化合物F−6:RおよびRがそれぞれメチルであり、RおよびRがそれぞれ水素であり、Rが2−メトキシエトキシである;
化合物F−7:RおよびRがそれぞれ水素であり、RおよびRがそれぞれエチルであり、Rが3−メチルブタ−1−オキシである;
化合物F−8:RおよびRがそれぞれ水素であり、RおよびRがそれぞれエチルであり、Rが2−メチルベンジルオキシである;
化合物F−9:RおよびRがそれぞれ水素であり、RおよびRがそれぞれエチルであり、Rが3−メチルベンジルオキシである;
化合物F−10:RおよびRがそれぞれ水素であり、RおよびRがそれぞれベンジルであり、Rがベンジルオキシである;
化合物F−11:RおよびRがそれぞれ水素であり、RおよびRがそれぞれプロピルであり、Rがベンジルオキシである;および
化合物F−12:RおよびRがそれぞれ水素であり、RおよびRがそれぞれベンジルであり、Rが3−メチルブタ−1−オキシである。
【0053】
式Iのキサンテンの第2の好ましい部分群は、式中のXが酸素であり、Rが不在であり、Rが2つの置換基(これらのそれぞれが、独立して、水素、アルキルまたはアリールである)を有する窒素であり、Xがカルボニルであり、X、XおよびXがそれぞれ酸素である、ロードール型化合物である。
【0054】
前記ロードール型の好ましい化合物は、式中のRが水素、ハロゲンまたはアルキルであり、Rが不在であり、Rが電子求引性置換基、例えばハロゲン、スルホニルまたはニトロであり、Rが少なくとも1つのアリール置換基を有する窒素であり、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12がそれぞれ水素であり、Xがカルボニルであり、X、XおよびXがそれぞれ酸素であり、Xが炭素であるものである。ロードール型化合物は、Rが電子求引性置換基、例えばハロゲン、スルホニルまたはニトロであり、Rが少なくとも1つのアリール置換基を有する窒素であるという条件で、良好なマゼンタ(緑色吸収)発色団をもたらすことができることが判明した。Rに電子求引性置換基が不在、またはRに窒素原子上のアリール置換基が不在であると、吸収波長はより短くなり、その分子の呈色互変異性体は、マゼンタではなく赤色を呈示する。
【0055】
式Iの特定の好ましいロードール型化合物は、式中のRが不在であり、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12がそれぞれ水素であり、Xがカルボニルであり、X、XおよびXがそれぞれ酸素であり、Xが炭素であり、他の置換基が以下のとおりであるものである:
化合物Rh−1:Rが水素であり、Rが臭素であり、Rがフェニルアミノである;
化合物Rh−2:Rが水素であり、Rが臭素であり、RがN−エチル−N−フェニルアミノである;
化合物Rh−3:Rが水素であり、Rが臭素であり、RがN−ブチル−N−フェニルアミノである;
化合物Rh−4:Rが水素であり、Rが臭素であり、RがN−ヘキシル−N−フェニルアミノである;
化合物Rh−5:Rが水素であり、Rが臭素であり、RがN−ベンジル−N−フェニルアミノである;
化合物Rh−6:Rが水素であり、Rが臭素であり、RがN,N−ジフェニルアミノである;
化合物Rh−7:Rがメチルであり、Rが臭素であり、RがN−ヘキシル−N−フェニルアミノである;
化合物Rh−8:Rが水素であり、Rが水素であり、RがN−インドリニルである;および
化合物Rh−9:Rが水素であり、Rが臭素であり、RがN−ヘキサデシル−N−フェニルアミノである。
【0056】
式Iのキサンテンの第3の好ましい部分群は、式中のR、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12がそれぞれ水素、アルキル、アリールまたはハロゲンであり、Rが水素、アルキルまたはアリールであり、Rが2つの置換基(これらのそれぞれが、独立して、水素、アルキルもしくはアリールであり得る)を有する窒素、またはアルキルもしくはアリール置換基を有する酸素であり、Xがカルボニルであり、Xが酸素であり、Xが酸素であり、Xが窒素であり、Xが炭素である、ローダミン型化合物である。
【0057】
式Iの特定の好ましいローダミン型化合物は、式中のR、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12がそれぞれ水素であり、Xがカルボニルであり、XおよびXがそれぞれ酸素であり、Xが窒素であり、Xが炭素であり、他の置換基が以下のとおりであるものである:
化合物R−1:Rがフェニルであり、Rがフェニルアミノである;
化合物R−2:Rが2−メチルフェニルであり、Rが2−メチルフェニルアミノである;
化合物R−3:Rが2−エチルフェニルであり、Rが2−エチルフェニルアミノである;
化合物R−4:Rが2,4,6−トリメチルフェニルであり、Rが2,4,6−トリメチルフェニルアミノである;
化合物R−5:Rが2−クロロフェニルであり、Rが2−クロロフェニルアミノである。
【0058】
式Iの別の特定の好ましいローダミン型化合物は、式中のR、R、R、R、RおよびRがそれぞれ水素であり、Rが2−メチル−4−オクタデシルオキシフェニル基であり、RがN−インドリニル基であり、R、R10、R11およびR12がそれぞれフッ素であり、Xがカルボニルであり、XおよびXがそれぞれ酸素であり、Xが窒素であり、Xが炭素である、化合物R−6である。
【0059】
タイプIのメカニズムに従って使用される分子を設計する際、一般に、2つの問題が発生する。第1に、その分子の無色互変異性体形態を結晶化させることが結局不可能であることが分かることがある。例えば、先に説明したロードール型化合物の多くは、無色形態で容易に結晶化させることができない。第2に、前記無色形態は、結晶化させることができることがあるが、理想的でない融点を呈示することがある。その融点を変えるには、分子の完全再設計、すなわち長く退屈なプロセスが必要であろう。しかし、米国特許第4,097,288号に記載されているように、一定のフェノール系またはアミノ化合物が水素結合受容体または供与体との共結晶を容易に形成することは周知である。そのような水素結合受容体または供与体を、本明細書では以後、「複合体形成剤(complexing agent)」と呼ぶ。水素結合複合体形成剤を伴う本発明の所定の分子の共結晶は、該複合体形成剤自体または本発明の分子自体のいずれかと同じ融点を必ずしも有さない。
【0060】
先に述べたように、式Iの好ましいタイプのそれぞれにおいて、原子Xは、水素置換基を有する。この水素原子は、その分子の呈色互変異性体形態を生成するために使用される内部の酸であることに加えて、水素結合受容体による複合体形成にも利用可能である。先に記載したような複合体形成は、分子の無色互変異性体形態の結晶化を、別の方法ではこれを達成することが難しい場合に可能にすることができるばかりでなく、融点の制御を可能ならしめることもできる。好ましい複合体形成剤は、アミノ化合物、特に複素環式材料、例えばピリジンである。特定の好ましい複合体形成剤としては、フェナントロリン、2,9−ジメチルフェナントロリン、4,5,6,7−テトラメチルフェナントロリン、ピコリン酸メチル、ピコリン酸エチル、ピラジン、4,4’−ビスピリジン、2,2’−ビスピリジン、テレフタルアミド、例えばN,N,N’,N’−テトラメチルテレフタルアミドおよび対応するテトラブチル誘導体、ならびに環式オキサルアミド、例えば1,4−ジメチル−2,3−ジオキソピペラジンが挙げられる。後述の実施例4は、本発明において使用するロードール型化合物の無色互変異性体形態を結晶化する、ならびに本発明のこれらのおよび他の分子の融点を調整する、複合体形成の効果を例証するものである。
【0061】
本発明は、異なる互変異性体形態で存在する化合物に限定されない。図1、タイプIIに図示する本発明の第2の実施形態の場合、確立される平衡は、Cとして示す無色付加体と、DおよびEとして示すその2つの成分との間でのものである。Dは呈色色素であり、一方、Eは、Dに付加してそれを無色にさせることができる無色分子である。概して、Dは、カチオン性色素(求電子性)であり、Eは、求核性である。Cの結晶化中、Dが殆ど存在しないようにEの濃度を十分に高く(そしてDの濃度よりはるかに高く)することができる。しかし、Cが溶融すると、DおよびEの濃度は同じになるだろう。このように、Cの溶融の結果として生じる非晶質形態での平衡の位置は、最初にCが結晶化された溶液中に存在した平衡の位置とは異なるだろう。図3は、本発明のタイプIIに用いることができる平衡の2つの例を示すものである。図3のスキーム1は、ヘミシアニン色素と第3級アミンの付加により形成される無色付加体との間の平衡を示すものである。スキーム2は、キサンテン色素と第3級アミンとの間で確立される類似した平衡を示すものである。多種多様な求核分子を使用して、図3に示すものなどの平衡を確立することができるが、色素と求核試薬との間で形成される付加体は、最終色素と同じ電荷を有することが好ましい。そうでない場合、例えば、付加体は中性であるが色素は正電荷を有する場合、電荷バランスを維持するために、解離状態の該求核試薬は負電荷を有さなければならない。この場合、前記求核試薬は、静電引力のため色素と密接に会合したままであろう。前記付加体および色素は、例えば、色素が正電荷を有し、求核試薬が第3級アミン、第3級ホスフィンまたはチオエーテルである場合、両方とも正電荷を有するであろう。
【0062】
ダイレクトサーマル画像生成システムを形成するために、先に説明したタイプIまたはIIの化合物の結晶無色形態を、当該技術分野において既知の分散液形成方法のいずれかによって、該化合物が不溶性であるまたはほんのわずかにしか可溶性でない溶剤中の分散液にする。そのような方法としては、粉砕、磨砕などが挙げられる。選択される個々の溶剤は、個々の結晶質材料に依存するであろう。使用することができる溶剤としては、水、有機溶剤、例えば炭化水素、エステル、アルコール、ケトン、ニトリル、ならびに有機ハロゲン化物溶剤、例えば塩素化およびフッ素化炭化水素が挙げられる。分散した結晶質材料を、高分子のものあり得る結合剤と併せることがある。適する結合剤としては、水溶性ポリマー、例えばポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)およびセルロース誘導体、水分散ラテックス、例えばスチレン/ブタジエンもしくはポリ(ウレタン)誘導体、または代替的に炭化水素可溶性ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとノルボルネンとのコポリマー、およびポリスチレンが挙げられる。このリストは、排他的であることを意図したものではなく、高分子結合剤に利用可能な選択の幅を示すことを意図したものにすぎない。前記結合剤を溶剤に溶解する、または分散させることができる。
【0063】
本発明の化合物の分散液の調製、および高分子結合剤の任意の添加の後、コーティング技術分野において周知の技術のいずれかを用いて、その得られた流体を基材上にコーティングする。これらとしては、スロット、グラビア、マイヤーロッド、ロール、カスケード、スプレーおよびカーテンコーティング技術が挙げられる。そのようにして形成した画像形成層に保護層(単数または複数)を場合によりオーバーコートする。
【0064】
本発明の材料を使用して、米国特許第6,801,233号に記載されているタイプの画像生成媒体を作製する場合、画像生成層のそれぞれについて、先に説明したプロセスに従う。連続する層を逐次的にコーティングすることができ、タンデムでコーティングすることができ、または逐次コーティングとタンデムコーティングの併用でコーティングすることができる。
【実施例】
【0065】
さて、例として特定の実施形態に関して本発明をさらに詳細に説明するが、これらが単に例証を意図したものであり、そこに列挙する材料、量、手順およびプロセスパラメータなどに本発明が限定されないことは理解されるであろう。列挙するすべての部および百分率は、特に別の指定がない限り、重量によるものである。
【0066】
(実施例1)
この実施例は、式Iの新規フルオレセイン誘導体の調製および特性を説明するものである。
【0067】
A.新規フルオレセイン誘導体を以下の一般的手法で調製した(化合物F−11の調製によって例示する)。
【0068】
4−プロピル−1,3−ジヒドロキシベンゼンの調製。
【0069】
i.1,3−ジヒドロキシ−4−プロパノイルベンゼン(10g;60.2mmol)およびトリフルオロ酢酸(10当量;0.6mol;68.4g)を、すべての材料が溶解するまで、室温で攪拌した。得られた溶液に、トリエチルシラン(2.5当量;0.15mol;17.5g)を室温でゆっくりと添加した。添加後、その反応混合物を4時間、75℃で加熱しながら攪拌した。混合物を室温に冷却し、水に入れて失活させ、ジクロロメタンで抽出して2層の油生成物を得た。上のほうの層(トリエチルシラン過剰)をデカントして除去し、残留油生成物に加熱しながらヘキサンとジクロロメタンとの混合物(比率約7:3)を添加して固体生成物を得た。1H NMRおよびエレクトロスプレー質量分析(ES MS)によって構造を確認したその生成物(7.3g;収率80%)を、さらに精製せずに次の工程で使用した。
【0070】
ii.2,7−ジプロピルフルオレセインの調製。
【0071】
4−プロピル−1,3−ジヒドロキシベンゼン(6.0g;40mmol、先の(i)において説明したように調製したもの)と無水フタル酸(20mmol;3.0g)との混合物に、73%(w/w)濃硫酸を室温で添加し、その後、その混合物を3時間、150℃で加熱しながら攪拌した。冷却した後、混合物をビーカーの中で攪拌しながら水(200mL)に注入し、濾過し、水で数回洗浄して、定量的収率で黄色生成物を得た。その生成物の構造を1H NMRおよびES MSによって確認した。
【0072】
iii.化合物F−11の調製。
【0073】
2,7−ジプロピルフルオレセイン(3g;7.2mmol、先の(ii)において説明したように調製したもの)および無水炭酸カリウム(4当量、28.8mmol)を室温でジメチルホルムアミド(DMF、35mL)に分散させ、その後、赤みを帯びた透明な溶液が現れるまで、その混合物を100℃で加熱しながら攪拌した。得られた溶液に、DMF(5mL)に溶解した臭化ベンジル(4当量、28.8mmol;4.9g)を10分にわたってゆっくりと添加した。添加が完了した後、その混合物をさらに3時間、100℃でさらに攪拌した。混合物を室温に冷却した後、それを水(400mL)に注入して沈殿を生じさせた。その粗生成物(モノエーテル、モノエステル)をさらに精製せずに加水分解した。そのモノエーテルモノエステル生成物をアセトン(60mL)と水(20mL)との混合物に溶解し、この溶液に水酸化ナトリウム水溶液(4当量、28.8mmol;1.2g;12mLの10%水溶液)を添加した。その混合物を室温で一晩攪拌した。アセトンの蒸発後、混合物を水(200mL)で希釈し、濾過した。濾液を希塩酸で中和して淡黄色沈殿を得た。その粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって(ジクロロメタン中の3%メタノールで溶離して)精製し、その後、ヘキサンとアセトンとの混合物から再結晶させて、無色結晶を得た(1.75g、収率48%、融点202〜203℃)。
【0074】
B.先に記載した構造を有する、そのようにして調製したフルオレセイン誘導体は、以下の特性を呈示した:
【0075】
【表1】

)によって示されていない限り、示差走査熱分析(DSC)により4℃/分の温度ランプ速度で融点を決定した。()は、毛管融点装置を使用して融点を得たことを示す。
【0076】
(実施例2)
この実施例は、本発明の新規ロードール型誘導体の調製を説明するものである。
【0077】
誘導体Rh−1〜Rh−7を以下の一般的手法で調製した(Rh−7によって例示する)。
【0078】
ia.2−(5−ブロモ−2,4−ジヒドロキシベンゾイル)安息香酸(Rh−1〜Rh−6およびRh−9のための出発原料)の調製。
【0079】
塩化アルミニウム(8.48g、64mmol)を窒素下でテトラクロロエタン(40mL)中の無水フタル酸(2.36g、16mmol)の攪拌懸濁液に添加した。ニトロメタン(6mL)を添加して反応物を溶解した。4−ブロモレゾルシノール(3g、16mmol)を添加し、その混合物を窒素下で攪拌し続けた。2時間にわたって高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により反応をモニターした。最初の30分以内に出発原料が残ったまま反応が停止したことが観察された。その溶液を酢酸エチル(約150mL)で希釈し、1M塩酸(2×100mL)で洗浄した。生成物を有機層から水中の重炭酸ナトリウムの飽和溶液(200mL)に抽出した。その塩基性水相を3M塩酸でpH5に酸性化した。生成物を水相から酢酸エチル(150mL)に抽出し、ブライン(2×100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮してオレンジ色の油を得、この油は、約10分間放置すると凝固した。その固体をジクロロメタン(20mL)でスラリーにし、濾過して、所望の生成物とフタル酸との混合物を得た。水(20mL)中でのスラリー化、その後の濾過により、所望の生成物をベージュ色の粉末として得た(1.72g、5.1mmol、収率32%)。
【0080】
ib.2−(5−ブロモ−2,4−ジヒドロキシ−3−メチルベンゾイル)安息香酸(Rh−7のための出発原料)について例証する、代替調製。
【0081】
工程1:塩化アルミニウム(21.4g、161mmol)を窒素下でテトラクロロエタン(200mL)中の無水フタル酸(6g、40mmol)の攪拌懸濁液に添加した。1,3−ジヒドロキシ−2−メチルベンゼン(5g、40mmol)を添加し、その混合物は急速に増粘した。沈殿物をスパチュラで破壊した後、反応を1時間継続した。その溶液を酢酸エチル(約600mL)で希釈し、1M塩酸(2×200mL)で洗浄した。生成物を有機層から水中の重炭酸ナトリウムの飽和溶液(600mL)に抽出した。その塩基性水相を3M塩酸でpH5に酸性化した。生成物を水相から酢酸エチル(400mL)に抽出し、ブライン(2×100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮して褐色を帯びた固体を得た。その固体をジクロロメタン(20mL)でスラリーにし、濾過して、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−メチルベンゾイル)安息香酸をオフホワイトの粉末として得た(4.6g、16.9mmol、収率42%)。
【0082】
工程2:酢酸(42mL)に溶解した工程1からの生成物(4.6g=16.9mmol)の攪拌溶液に臭素(2.6g、16.9mmol)を滴下した。HPLCによるモニタリングは、1時間以内に完全な臭素化を示した。その溶液を濃縮して黄色粉末を得た。ジクロロメタンでのスラリー化、その後の濾過により、所望の生成物をオフホワイトの粉末として得た(5g、14.3mmol、収率85%)。
【0083】
ii.化合物Rh−7の調製。
【0084】
2−(5−ブロモ−2,4−ジヒドロキシベンゾイル)安息香酸(先のiaにおいて説明したように調製したもの、1g、2.86mmol)を酢酸(14mL)に溶解した。N−ヘキシル−N−(3−ヒドロキシフェニル)フェニルアミン(0.77g、2.86mmol)をその溶液に添加し、その後、メタンスルホン酸(8.58mmol)を添加した。その溶液を4時間、還流させながら攪拌した。溶液を酢酸エチル(100mL)で希釈し、水(2×50mL)、pH7リン酸緩衝液(2×30mL)およびブライン(2×30mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮して暗紫色の固体にした。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製により、ジクロロメタン中の5%アセトンで生成物を溶離した(0.75g、1.28mmol、収率45%、λmax=548nm)。この生成物の構造を1H NMRおよびES MSによって確認した。
【0085】
他のロードール誘導体を類似の手法で調製した:
Rh−1:3.08gの2−(5−ブロモ−2,4−ジヒドロキシベンゾイル)安息香酸および1.69gの3−ヒドロキシジフェニルアミンにより、3.45g(収率76%)の化合物Rh−1を得た。
【0086】
Rh−2:1.5gの2−(5−ブロモ−2,4−ジヒドロキシベンゾイル)安息香酸と1.0gのN−エチル−N−(3−ヒドロキシフェニル)フェニルアミンを反応させて、1.78g(収率77%)の化合物Rh−2を得た。
【0087】
Rh−3:418mgの2−(5−ブロモ−2,4−ジヒドロキシベンゾイル)安息香酸と300mgのN−ブチル−N−(3−ヒドロキシフェニル)フェニルアミンを反応させて、401mg(収率59%)の化合物Rh−3を得た。
【0088】
Rh−4:1.0gの2−(5−ブロモ−2,4−ジヒドロキシベンゾイル)安息香酸と0.83gのN−ヘキシル−N−(3−ヒドロキシフェニル)フェニルアミンを反応させて、1.2g(収率71%)の化合物Rh−4を得た。
【0089】
Rh−5:413mgの2−(5−ブロモ−2,4−ジヒドロキシベンゾイル)安息香酸と340mgのN−ベンジル−N−(3−ヒドロキシフェニル)フェニルアミンを反応させて、343mg(収率59%)の化合物Rh−5を得た。
【0090】
Rh−6:2−(5−ブロモ−2,4−ジヒドロキシベンゾイル)安息香酸とN−フェニル−N−(3−ヒドロキシフェニル)フェニルアミンを反応させて、0.410g(収率15%)の化合物Rh−6を得た(λmax=542nm)。
【0091】
Rh−9:467mgの2−(5−ブロモ−2,4−ジヒドロキシベンゾイル)安息香酸と480mgのN−ヘキサデシル−N−(3−ヒドロキシフェニル)フェニルアミンを反応させて、435mg(収率44%)の化合物Rh−9を得た。
【0092】
(実施例3)
この実施例は、新規ローダミン型誘導体の調製および特性を説明するものである。
【0093】
一般手順(化合物R−2について例示する):
ジクロロフルオラン(5.55g、15mmol)、o−トルイジン(5.2g、48mmol)、無水塩化亜鉛(4.5g)および酸化亜鉛(1.5g)の混合物を200℃で1.5時間攪拌した。その後、そのまだ高温の反応混合物を攪拌しながら8%塩酸溶液(300mL)に入れて失活させ、90℃で30分間攪拌し、その後、濾過した。フィルターケーキを水(100mL)で洗浄し、乾燥させ、温メタノール(100mL)に溶解した。その溶液をメタノール(15mL)中の濃アンモニア溶液(7mL)の溶液の添加によって塩基性にし、その後、攪拌しながら冷水(700mL)に入れて失活させた。そのスラリーを濾過し、フィルターケーキを水(150mL)で洗浄し、減圧下で一晩乾燥させて、暗紫色の固体(22g)を得た。この材料を高温塩化メチレン(100mL)で研和し、濾過した。濾液を、ジクロロメタン/メタノールを溶離剤として用いるシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。そのわずかに不純な得られた材料をトルエンからの再結晶によってさらに精製して、淡紫色の柱体(2.6g)を得た。ジクロロメタン研和からの固体を還流トルエン(25mL)で加熱し、熱濾過し、ヘプタン(20mL)で希釈し、20℃に冷却し、濾過して、さらに1.2gの淡紫色の柱体を得た。トルエン熱濾過からの残留固体を還流キシレン(15mL)に溶かし、冷却して、追加の1.0gの淡紫色固体を析出させた。
【0094】
化合物R1〜R5は、以下の特性を呈示した。殆どの場合、結晶化の溶剤が結晶に組み込まれた。
【0095】
【表2】

(実施例4)
この実施例は、複合体を形成した材料の調製および特性を説明するものである。
【0096】
一般手順A:
複合体形成剤(1.0または0.5当量)を発色剤と併せ、高温のメチルエチルケトンとシクロヘキサンとの適切なブレンドに溶解した。成功した場合、冷却するにつれて複合体が無色またはほぼ無色の結晶としてその高温溶液から晶出した。それらの結晶を吸引濾過によって回収し、メチルエチルケトン/シクロヘキサンの適切なブレンドで洗浄した。この洗浄は、結晶の表面に呈色材料が沈殿しないように注意深く行わなければならない。1H NMR分光法による分析により、複合体の組成を規定した。色素の複合体形成剤に対する1:1および2:1という整数比が最も一般的に観察され、これらは色素の構造にも複合体形成剤の構造にも依存した。
【0097】
一般手順B:
複合体形成剤(1.0または0.5当量)および発色剤を併せ、めのう乳鉢および乳棒で粉砕した。その後、その得られた均質混合物を、乳鉢を用いて少量のシクロヘキサンでスラリーにし、粉砕を継続した。その後、少量のメチルエチルケトンを添加して、それらの成分の溶剤への溶解を助長し、結晶成長を助けた。無色の複合体が形成されるまで粉砕を継続した。多くの場合、強いほうの溶剤(メチルエチルケトン)を粉砕プロセスの間に臨界濃度に達するまでゆっくりと蒸発させた。この時点で、多くの場合、結晶化が進行した。結晶化が発生したら、追加のシクロヘキサン/メチルエチルケトンを添加し、結晶のスラリーを、さらなる熟成(加熱および攪拌)のための容器に移すか、吸引濾過によって直接回収した。その後、結晶の表面に呈色色素が沈殿しないようにシクロヘキサン/メチルエチルケトンの適切な混合物で注意深く結晶を洗浄した。この手順からの結晶は、手順Aを用いる結晶化のシーディングに使用することができた。
【0098】
【表3】

(実施例5)
この実施例は、本発明によるサーマル画像生成部材およびサーマル画像生成方法を例証するものである。これらのサーマル画像生成部材は、黄(画像生成部材5Aおよび5B)およびマゼンタ(画像生成部材5C)色を生じさせる。
【0099】
以下の材料をこの実施例で用いた:
Topas 8007、エチレンとノルボルネンとのコポリマー、07901 ニュージャージー州Summit、90 Morris AvenueのTiconaから入手可能;
Airvol 540、ペンシルバニア州AllentownのAir Products and Chemicals,Inc.から入手可能なポリ(ビニルアルコール)の銘柄;
Zonyl FSA、界面活性剤、デラウェア州WilmingtonのDuPont Corporationから入手可能;
Hymicron ZK−349、ケンタッキー州ElizabethtownのCytech Products Inc.から入手可能なステアリン酸亜鉛の銘柄;
Klebosol 30V−25、スイス、MuttenzのClariant Corporationから入手可能なシリカ分散液;
Glyoxal、ウィスコンシン州MilwaukeeのAldrich Chemical Co.から入手可能;
Melinex 534、おおよそ96マイクロメートルの厚さの白色ポリ(エチレンテレフタレート)フィルムベース、バージニア州Hopewell、1 Discover Drive、P.O.Box 411のDuPont Teijin Films U.S.Limited Partnershipから入手可能。
【0100】
A.画像形成層を次のように作製した:
ガラスビーズを装備した磨砕機を使用して、Topas 8007(0.15gのメチルシクロヘキサン中10%溶液)およびメチルシクロヘキサン(1.2g)を含む混合物に本発明の化合物(0.15g)を分散させ、18時間、室温で攪拌した。得られた分散液の全固形分は、11%であった。
【0101】
上記の分散液を使用して、以下に述べる割合で色素形成層用のコーティング液を作った。このように調製したコーティング組成物を、#18マイヤーロッドを使用してMelinex 534上にコーティングし、乾燥させた。目的コーティング厚は、3.9マイクロメートルであった。
【0102】
【表4】

B.おおよそ2.6マイクロメートルの目的厚のために#12マイヤーロッドを使用してメチルシクロヘキサン中のTopas 8007の10%溶液を塗布することにより前記画像生成層上にバリア層をコーティングした。
【0103】
C.スリップオーバーコートを前記バリア層上にコーティングした。このオーバーコートは、以下に述べる割合で調製した。1.6マイクロメートルの目的厚のために#18マイヤーロッドを使用してオーバーコートコーティング組成物を塗布した。
【0104】
【表5】

得られた画像生成部材を、サーマルヘッドを装備した実験室用テスト・ベッド・プリンタ、モデルKYT106−12PAN13(日本国京都府伏見区竹田鳥羽殿町6の京セラ株式会社(Kyocera Corporation,6 Takedatobadono−cho,Fushimi−ku,Kyoto,Japan))を使用して印刷した。
【0105】
以下の印刷パラメータを用いた:
プリントヘッド幅:4インチ
1インチあたりの画素数:300
レジスタサイズ:70×80マイクロメートル
抵抗:4047オーム
線速度:7ミリ秒毎線
圧力:1.5〜2ポンド/リニアインチ
ドットパターン:長方形格子。
【0106】
次のもの用いて作製した画像生成部材から以下の結果を得た:
画像生成部材5A:ベンジルフルオレセイン(融点191℃);
画像生成部材5B:本発明の新規フルオレセイン化合物(F−11、融点210℃);および
画像生成部材5C:新規ロードール型化合物Rh−4および2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリンから調製した本発明の新規複合体(融点109℃)。
【0107】
【表6】

【0108】
【表7】

【0109】
【表8】

以下の結論を導き出し得る:
a.印刷エネルギーを印加しなかった場合の濃度は、前記3つの画像生成部材について、0.04、0.06および0.09であった。これは、発色層を形成するためにコーティングした非溶融結晶分散液が、最初は実質的に無色であったことを示している;
b.前記3つの画像生成部材について達成される最大濃度は、それぞれ、0.51、1.1および0.7であった。先に説明したように、前記3つの発色層中の唯一の活性成分は、それぞれ、ベンジルフルオレセイン、F−11、およびRh−4と2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリンとの間で形成された複合体であった。顕色剤または他の化学的アジュバントは存在しなかった。従って、形成された色は、これらの材料の固有の変色によって発生したはずである。
【0110】
c.融点がそれぞれ191℃および210℃であった画像生成部材AおよびBについては、16Vをプリントヘッドに印加したときに画像生成が起こったが、14Vの印加では殆ど色変化が観察されなかった。その一方で、融点109℃を有する画像生成部材Cについては、16V印刷条件下でも14V印刷条件下でも実質的な色変化が観察された。14Vでの印刷中に印加したエネルギーの量は、16Vでの印刷中に印加したものより少なく、その結果、発色層内で達成される温度は、16V印刷についてより14V印刷についてのほうが低い。従って、色が形成されるかされないかは、発色層の融点および加熱温度に依存すると結論づけることができる。
【0111】
d.画像生成部材Aにおいて達成される最大濃度(0.51)は、画像生成部材Bにおいて達成されるもの(1.1)より低い。画像生成部材Aは、ベンジルフルオレセイン、すなわち既知の化合物を含むが、画像生成部材Bは、F−11、すなわち本発明の好ましい新規フルオレセイン誘導体を含む。
【0112】
(実施例6)
この実施例は、本発明によるサーマル画像生成部材およびサーマル画像生成方法を例証するものである。このサーマル画像生成部材は、シアン色を生じさせる。
【0113】
先の実施例5において説明した材料に加えて、この実施例では以下の材料を使用した:
Piccotac 1115、テネシー州Kingsport、100 North Eastman Road、P.O.Box 511のEastman Chemical Companyから入手可能;
Melinex 6265、おおよそ96マイクロメートルの厚さの白色ポリ(エチレンテレフタレート)フィルムベース、バージニア州Hopewell、1 Discover Drive、P.O.Box 411のDuPont Teijin Films U.S.Limited Partnershipから入手可能。
【0114】
A.画像形成層を以下のように作製した:
ガラスビーズを装備した磨砕機を使用して、Topas 8007/Piccotac 1115(比率1:1.25、0.08gのメチルシクロヘキサン中10%溶液)およびメチルシクロヘキサン(0.76g)を含む混合物に本発明の化合物R−6(0.08g)を分散させ、18時間、室温で攪拌した。得られた分散液の全固形分は、10%であった。
【0115】
上記の分散液を使用して、以下に述べる割合で色素形成層用のコーティング液を作った。このように調製したコーティング組成物を、#9マイヤーロッドを使用してMelinex 6265上にコーティングし、乾燥させた。目的コーティング厚は、おおよそ2マイクロメートルであった。
【0116】
【表9】

B.おおよそ2.6マイクロメートルの目的厚のために#12マイヤーロッド使用してメチルシクロヘキサン中の1:1.25 Topas 8007/Piccotac 1115の10%溶液を塗布することにより前記画像生成層上にバリア層をコーティングした。
【0117】
C.スリップオーバーコートを前記バリア層上にコーティングした。このオーバーコートは、以下に述べる割合で調製した。1.6マイクロメートルの目的厚のために#18マイヤーロッドを使用してオーバーコートコーティング組成物を塗布した。
【0118】
【表10】

得られた画像生成部材を、サーマルヘッドを装備した実験室用テスト・ベッド・プリンタ、モデルKYT106−12PAN13(日本国京都府伏見区竹田鳥羽殿町6の京セラ株式会社)を使用して印刷した。
【0119】
以下の印刷パラメータを用いた:
プリントヘッド幅:4インチ
1インチあたりの画素数:300
レジスタサイズ:70×80マイクロメートル
抵抗:4291オーム
線速度:7ミリ秒毎線
圧力:1.5〜2ポンド/リニアインチ
ドットパターン:長方形格子。
【0120】
以下の結果を得た:
【0121】
【表11】

(実施例7)
この実施例は、先に述べた特許出願第10/151,432号に記載されているような単一のサーマル・プリント・ヘッドで印刷するように設計した、1つより多くの発色層を含むサーマル画像生成部材を例証するものである。この実施例において、比較的短時間で比較的高温で印刷される最上層は、本発明の材料を含む。比較的長時間、比較的低温で印刷される下のほうの層は、互いに反応して色を形成する2つの化合物(ロイコ色素および酸性顕色剤)が溶融および拡散によって結び付けられている、先行技術の発色組成物を含む。
【0122】
先の実施例5および6において説明した材料に加えて、この実施例では以下の材料を使用した:
ロイコ色素Red 40、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチル−インドール−3−イル)フタリド(日本国和歌山県の山本化学工業株式会社(Yamamoto Chemical Industry Co.,Ltd.,Wakayama,Japan)から入手可能);
酸性顕色剤TGSA、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、日本国東京都の日本化薬株式会社(Nippon Kayaku Co.,Ltd.,Tokyo,Japan)から入手可能;
Airvol 205、ペンシルバニア州AllentownのAir Products and Chemicals,Inc.から入手可能なポリ(ビニルアルコール)の銘柄;
Airvol 325、ペンシルバニア州AllentownのAir Products and Chemicals,Inc.から入手可能なポリ(ビニルアルコール)の銘柄;
Zonyl FSN、界面活性剤、デラウェア州WilmingtonのDuPont Corporationから入手可能;
Elvacite 2045、テネシー州Cordova、7275 Goodlett Farms ParkwayのLucite International Inc.から入手可能なポリ(イソブチルメタクリレート)の銘柄;
Aerosol OT−100、ニュージャージー州West PatersonのCytec Industries,Inc.から入手可能な界面活性剤。
【0123】
白色の反射層を125マイクロメートル厚の透明なポリ(エチレンテレフタレート)基材(Cronar 512、バージニア州Hopewell、1 Discover Drive、P.O.Box 411のDuPont Teijin Films U.S.Limited Partnershipから入手可能)の背面にコーティングした。この基材の反対側に以下の層を塗布した:
A.マゼンタ色を生じさせる、先行技術の発色層。
【0124】
マゼンタ発色剤(Red40)、ポリ(ビニルアルコール)(Airvol 205)および界面活性剤(Zonyl FSN)の水性分散液を、酸性顕色剤(TGSA)、ポリ(ビニルアルコール)(Airvol 205)および界面活性剤(Zonyl FSN)の水性分散液と混合した。水中のポリ(ビニルアルコール)結合剤(Airvol 540)の溶液を添加し、得られた流体を、Red 40:300mg/m2、TGSA 1139mg/m2、Zonyl FSN 13mg/m2、および複合ポリビニル(アルコール(Airvol 205およびAirvol 540)661mg/m2の乾燥付着量を得るためにコーティングした。
【0125】
B.断熱中間層。
【0126】
メチルシクロヘキサン中のElvacite 2045の溶液をコーティングして8016mg/m2の乾燥付着量を得た。
【0127】
C.本発明の黄色発色層。
【0128】
本発明の化合物F−11の分散液を次のように調製した:
化合物F−11(600g)、界面活性剤Aerosol OT−100(30g)、ヘプタン(1.1kg)および酢酸エチル(600g)を併せ、6.3kgムライトビーズが入っている1S−Attritorの中に移した。ジャケット温度を10℃に設定し、その磨砕機を100rpmで24時間運転した。粉砕媒体を濾過して除去し、ヘプタン(500g)で洗浄した。得られた結晶質化合物F−11懸濁液を濃縮乾固させて、620gの白色固体を得た。この固体を、界面活性剤(Zonyl FSN)を含有するポリ(ビニルアルコール)(Airvol 540)の水溶液に再び分散させてコーティング液を生成し、それをコーティングして、化合物F−11:1184mg/m2、Aerosol OT−100:59.2mg/m2、Airvol 540:344mg/m2およびZonyl FSN 11mg/m2の乾燥付着量にした。
【0129】
D.酸素バリア層。
【0130】
水溶液から次の材料をコーティングして、示された乾燥付着量を得た:ポリ(ビニルアルコール)(Airvol 325、1454mg/m2)、ホウ酸架橋剤(125mg/m2)およびZonyl FSN(32mg/m2)。
【0131】
E.UV吸収バリア層。
【0132】
水性液をコーティングして、以下の乾燥付着量を得た:
ナノ粒子状酸化亜鉛(UV吸収剤、2153mg/m2)、ポリ(ビニルアルコール)(Airvol 325、1615mg/m2)、Zonyl FSN(32mg/m2)。
【0133】
F.スリップコート。
【0134】
水性コーティング液をコーティングして、以下の乾燥付着量を得た:
Hymicron ZK−349(312 32mg/m2)、Airvol 540(635 32mg/m2)、Klebosol 30V−25(517 32/m2)およびZonyl FSN(32 32/m2)。
【0135】
得られた画像生成部材を、サーマルヘッドを装備した実験室用テスト・ベッド・プリンタ、モデルKPT163(日本国京都府伏見区竹田鳥羽殿町6の京セラ株式会社)を使用して印刷した。
【0136】
以下の印刷パラメータを用いた:
1インチあたりの画素数:300
レジスタサイズ:70×120マイクロメートル
抵抗:3135オーム
線速度11.1ミリ秒毎線
圧力:1.5〜2ポンド/リニアインチ
電圧:40.9V
ドットパターン:長方形格子。
【0137】
各線を印刷するためにかかった時間を667の均等時間要素に分割した。「デューティサイクル」と呼ばれるこれらの時間要素それぞれの割合についてプリントヘッドにエネルギーを供給した。印刷の際の平均電力が高い場合、デューティサイクルは、その時間要素の全継続時間に対して高い割合であったが、平均電力が低い場合、デューティサイクルは、その時間要素の全継続時間に対して低い割合であった。熱拡散にかかる時間と、各時間要素の間に画像生成要素により伝えられる距離に対して大きいレジスタサイズとの両方のため、時間要素それぞれの熱パルスは、画像生成要素上に個々のドットとして解像されなかった。その代り、画像生成要素は、個々のパルスの電力の平均化を経た。
【0138】
以下の結果を得た:
【0139】
【表12】

【0140】
【表13】

高電力、短時間印刷条件で、青色濃度が緑色濃度より高い(すなわち、黄色がマゼンタ色より優勢である)ことは、容易に分かる。低電力、長時間印刷条件では、緑色濃度が青色濃度より高い(すなわち、マゼンタ色が黄色より優勢である)。黄色を印刷したときに観察される望ましくない緑色濃度は、主に、黄色色素による緑色光の吸収に起因する。同様に、マゼンタ色素を印刷したときに観察される望ましくない青色濃度は、主に、マゼンタ色素による青色光の吸収に起因する。従って、本発明の化合物F−11は、先に述べた特許出願第10/151,432号に記載されているような単一サーマル・プリント・ヘッドで印刷するように設計した、1つより多くの発色層を含むサーマル画像生成部材中の要素としての役割を有効に果たすことができる。
【0141】
(実施例8)
この実施例は、本発明によるサーマル画像生成部材の発色温度の時間非依存性を例証するものである。
【0142】
先の実施例5において説明した画像生成部材Aの発色層を、マサチューセッツ州HyannisのSencorp Equipmentから入手できる熱圧力ラミネーター/シーラーを使用して加熱に付した。この装置は、サンプルの加熱時間および温度の独立した制御を可能にする。得られた光学濃度(青色)は、次のとおりである:
【0143】
【表14】

約4桁の加熱時間にわたって、色変化が公称160℃と公称177℃との間で起こった。
【0144】
さて、本発明のサーマル画像生成部材で画像を形成するためのレーザー露光の使用をさらに詳細に説明しよう。サーマル・プリント・ヘッドを使用する加熱と比較して、レーザー活性化の利点は多い。サーマル・プリント・ヘッドを画像生成部材の表面に押し付けて、画像形成中、滑り接触を維持しなければならない。これは、サーマル画像生成部材の表面および/またはサーマル・プリント・ヘッドに傷をつけるおよび/またはそれらを摩耗させる結果となり得る。さらに、正確な熱接触が維持されなければ、不均一な加熱に起因する画像生成アーチファクトが見られるだろう。対照的に、レーザー露光は、物理的接触を必要としない。
【0145】
物理的接触の必要なく、移送機構におけるスティック/スリップすなわち「ビビリ」につながり得る滑り接触の摩擦を受けずに、画像生成部材を熱源の下により容易に移送することができる。
【0146】
サーマル・プリント・ヘッドからの圧力を支持するために、画像生成部材は、通常、回転プラテンによって裏打ちされる。そのようなプラテンの形状および均一性の欠陥が印刷に影響を及ぼす場合がある。レーザー露光は、回転プラテンを必要としない。
【0147】
サーマル・プリント・ヘッドにおける加熱要素は線形アレイで固定されるので、画像生成部材をそのサーマル・プリント・ヘッドに対して平行に移動させたとき、各要素が同じ動きを実行して同時に1本の線を印刷する。レーザーまたはレーザーアレイでは、光出力を印刷方向に走査して、同時に多数の線を印刷することができ、従って、画像全体を印刷する時間を低減することができる可能性がある。
【0148】
サーマル・プリント・ヘッドは、それが接触しているサーマル画像生成部材の表面からしか熱を導入することができない。レーザー露光は、その構造の内部に熱を導入する可能性をもたらす。加えて、勿論その基材が用いられる波長に対して透明であるという条件で、レーザー出力をサーマル画像生成部材の背部から導入することができる。
【0149】
多色ダイレクトサーマル画像生成部材にレーザー光を用いる1つの方法は、その部材の表面または該表面付近に光吸収層を配置することである。この層で入射するレーザーからの出力が吸収され、局部加熱を生じさせることとなる。この源は、媒体の表面と熱接触している小型電熱器(例えば、サーマル・プリント・ヘッドにおいて見いだされるもの)によって生成される熱に非常によく似た機能を果たすであろう。
【0150】
レーザー光を使用する別の方法は、サーマル画像生成部材内に埋め込まれたそれぞれの個々の発色層または該発色層付近にレーザー放射線の吸収材を含めること、およびその特定の発色層を活性化するが他のものは活性化しないために必要なだけの長さのレーザーのみを照射することである。この方法は、3つの非可視レーザー波長、およびこれらの波長に合わせた3つの吸収材を必要とし得る。あるいは、(浅い被写界深度を有するように光学素子を配列して)単波長レーザーの焦点面を変えて、画像生成部材の異なる深度に埋め込まれた3つの吸収材の1つを選択的に加熱することができる。勿論、いずれの吸収材もスペクトルの可視領域において吸収すべきでない。そのような吸収は、視覚的に呈色しており、呈色画像の目視に干渉するだろうからである。先に述べたように、本発明の実施の際、レーザーは電磁スペクトルの近赤外(NIR)領域で放射することが好ましい。
【0151】
NIR放射線用の好適な放射線吸収材料は、当該技術分野において周知であり、それらとしては、色素材料、例えばシアニン、ヘミシアニン、スクアラインおよびスクアリリウム、クロコニウム、ポルフィリン、フタロシアニン、有機ニッケルおよび有機白金化合物、ならびに無機材料、例えば金属酸化物、カーボンブラック、およびこれらに類するものが挙げられる(が、それらに限定されない)。当該技術分野において既知である好適な放射線吸収化合物は、「Infrared Absorbing Dyes」、Matsuoka,Masaru編、Plenum Press、New York、1990および「Near− Infrared Dyes for High Technology Applications」、Daehne、Resch−Genger、Wolfbeis、Kluwer Academic Publishers、ならびに先に言及した米国特許第5,227,498号、同第5,227,499号、同第5,231,190号、同第5,262,549号、同第5,354,873号、同第5,405,976号、同第5,627,014号、同第5,656,750号、同第5,795,981号、同第5,919,950号、同第5,977,351号および同第6,482,950号において見つけることができる。COレーザーなどのガスレーザーから入手できるものなどの、より長いIR波長を使用するとき、好適な吸収材としては、ケイ酸塩材料、例えば、クレー、例えばモンモリロナイト、ベントナイト、ラポナイトおよび同様の材料が挙げられる。
【0152】
単一の非可視レーザー波長を使用する、より実際的な状況については、米国特許第6,801,233号に記載されているタイプの多色サーマル画像生成部材の表面に単一の吸収層を配置することができ、または1つ以上の吸収層をその構造の内部に置くことができる。これらの吸収層のレーザー照射は、熱を生じさせて発色層を活性化することができる。米国特許第6,801,233号に詳細に記載されているように、レーザーパルス電力およびパルス長の適切な選択により発色層の加熱の時間および温度を制御して、発色層の少なくとも部分的に独立したアドレス指定を達成することができる。
【0153】
本発明の好ましい実施形態において、サーマル画像生成部材は、3つの発色層を含み、これらのそれぞれが、減法混色(すなわち、黄色、マゼンタおよびシアン)のうちの1つを与える。画像生成技術分野の当業者には明らかであるように、黒色などのような色を生じさせる他の任意の発色層を設けてもよい。これら3つの発色層を隔てているのが2つの断熱中間層であり、これらの特性は、米国特許同時係属出願第12/462,421号に詳細に記載されている。当該技術分野において周知であるように、紫外線、酸素および水からの保護、機械的支持などのような目的で追加の層をこの組み合わせの内側または外側に含めることができる。
【0154】
前記3つの発色層は、異なる活性化温度を有する。最高活性化温度を有する発色層を本明細書では以後「T−high層」と呼び、中間活性化温度を有する層を「T−medium」層と呼び、最低活性化温度を有する層を「T−low」層と呼ぶ。これらの発色層によってもたらされる色は、先に述べたように、好ましくは黄色、マゼンタおよびシアンであるが、特定の活性化温度を特定の色と関連づける必要はない。
【0155】
本明細書では以後、記号「IL」を用いて、2つの発色層を隔てる断熱中間層を表す。
【0156】
さて、図4を参照すると、本発明の好ましいサーマル画像生成部材400が示されている。
【0157】
基材402は、不透明または透明である場合があり、可撓性ウェブまたは剛性材料、例えばカードもしくは光学ディスクである場合がある。基材402は、紙、プラスチック、金属、または当業者が考え付くであろう他の材料から構成されることがある。基材402は、3つの発色層404、408および412と、2つの断熱中間層406および410(これらは好ましくは同じ厚さでない)と、任意の保護層414とを保持する。
【0158】
前記発色層のために選択される活性化温度は、一般に、約90℃〜約300℃の範囲である。活性化温度T−low層は、好ましくは、運送および保管中の画像生成部材の熱安定性を両立しながら可能な限り低く、好ましくは約90℃以上である。T−high発色層の活性化温度は、好ましくは、本発明に従って入射レーザー照射を吸収したときにT−mediumおよびT−low発色層の活性化を可能にすることを両立しながら可能な限り低く、好ましくは約200℃以上である。T−medium発色層の活性化温度は、T−low層のものとT−high層のものとの間であり、好ましくは約140℃〜約180℃である。
【0159】
本発明の1つの実施形態において、前記発色層は、先に詳細に説明したように、結晶形態では無色であり非晶質形態では呈色している材料を含む。T−high層は、この層での活性化温度が可能な限り加熱時間に非依存であることが重要であるので、結晶質発色材料を除いて他の可融性材料を好ましくは含まない。
【0160】
サーマル画像生成部材の一定の好ましい実施形態では、結晶質で可融性の材料である1つ以上の熱溶剤を発色層に組み込むことがある。前記結晶質熱溶剤(単数または複数)は、加熱されると溶融し、その後、前記結晶質発色材料を溶解または液化させ、その結果、それを非晶質形態に変換し、色変化(すなわち画像)を生じさせる。熱溶剤は、発色層が結晶質発色材料自体の融点より低い活性化温度を有することが求められるとき、有利に使用することができる。そのような場合、結晶質発色材料の融点ではなく熱溶剤の融点が、発色層の活性化温度を確立するだろう。
【0161】
結晶質材料の混合物を含む発色層の活性化温度が、いずれの個々の成分の融点とも異なり得ることは、当業者には明白であろう。例えば、2つの結晶質成分の共融混合物は、単離状態のそれらのいずれの成分より低い温度で溶融する。逆に言うと、溶融熱溶剤中の結晶質発色材料の可溶化速度が遅い場合、その混合物の活性化温度は、その熱溶剤の融点より高いだろう。結晶質発色材料と熱溶剤との混合物の活性化温度は、その混合物の色が変化する温度、すなわち、十分な量の結晶質発色材料が溶融熱溶剤に溶解して目に見える色変化を生じさせる温度であることを思い出すこと。結晶質発色材料と熱溶剤(単数または複数)との混合物の活性化温度が加熱速度に依存し得ることは、上の論述から明白であろう。従って、本発明のサーマル画像生成部材の設計の際、組成物の実際の活性化温度の判定を実験的に行うことが好ましい。
【0162】
任意の好適な熱溶剤を本発明のサーマル画像生成部材の発色層に組み込むことができる。好適な熱溶剤としては、例えば、芳香族および脂肪族エーテル、ジエーテルおよびポリエーテル、少なくとも約12個の炭素原子を含有するアルカノール、少なくとも約12個の炭素原子を含有するアルカンジオール、少なくとも約12個の炭素原子を含有するモノカルボン酸、そのような酸のエステルおよびアミド、アリールアミド、特にベンズアニリド、アリールスルホンアミドならびにヒドロキシアルキル置換アレーンが挙げられる。
【0163】
特定の好ましい熱溶剤としては、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、テトラデカン−1−オール、ヘキサデカン−1−オール、オクタデカン−1−オール、ドデカン−1,2−ジオール、ヘキサデカン−1,16−ジオール、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ドコサン酸メチル、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、ジアリールスルホン、例えばジフェニルスルホン、4,4’−ジメチルジフェニルスルホン、フェニルp−トリルスルホンおよび4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、ならびにp−トルエンスルホンアミドが挙げられる。
【0164】
特に好ましい熱溶剤は、エーテル、例えば1,2−ビス(2,4−ジメチルフェノキシ)エタン、1,4−ビス(4−メチルフェノキシメチル)ベンゼン、ビス(4−フェノキシフェノキシメチル)ベンゼンおよび1,4−ビス(ベンジルオキシ)ベンゼンである。
【0165】
熱溶剤による結晶質発色材料の溶解は、非晶質形態であって、形成される色の量が、その結晶質発色材料のみの溶融の結果として(すなわち、熱溶剤との相互作用なしに)生じる非晶質形態中に存在するであろう量とは異なるものである非晶質形態をもたらすことができる可能性がある。概して、本発明の結晶質発色材料は、少なくとも一方の互変異性体が無色であり、少なくとももう一方の互変異性体が呈色している、互変異性化合物である。前記結晶形態は、無色の互変異性体を実質的に含むが、前記呈色形態は、特定の発色材料の構造およびそれが位置する環境に依存する割合で両方の互変異性体を含む。前記非晶質材料中の呈色互変異性体の割合を水素結合または酸性アジュバントの使用により増すことができる。そのような材料は、実際には、発色材料をプロトン化して新たな呈色化合物を生成できる可能性がある。呈色形態である発色材料の割合を増加させる材料を、本明細書では以後「顕色剤」と呼ぶ。同化合物は熱溶剤および顕色剤の機能を果たすことができる可能性がある。好ましい顕色剤としては、4,4’−ブチリデンビス[2−(1,1−ジメチルエチル)−5−メチル−フェノール]、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、ビス[2−ヒドロキシ−5−メチル−3−(1−メチルシクロヘキシル)フェニル]メタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチルベンジル)イソシアヌレート、2,6−ビス[[3−(1,1−ジメチルエチル)−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メチル]−4−メチルフェノール、2,2’−ブチリデンビス[6−(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール、2,2’−(3,5,5−トリメチルヘキシリデン)ビス[4,6−ジメチル−フェノール]、2,2’−メチレンビス[4,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−フェノール、2,2’−(2−メチルプロピリデン)ビス[4,6−ジメチル−フェノール]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノール)、および3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルスルフィドなどのフェノールが挙げられる。
【0166】
非晶質発色剤によって形成された画像が結晶形態に戻る再結晶に対して安定であるためには、好ましくは、発色剤および熱溶剤および/または顕色剤の非晶質混合物のガラス転移温度(Tg)は、最終画像が存続しなければならないいずれの温度よりも高くあるべきである。概して、非晶質呈色材料のTgは、少なくとも約50℃であり、理想的には約60℃より高い。前記Tgが、安定な画像を形成するために十分高くあることを確実にするために、高いTgを有する追加の材料を発色組成物に添加することができる。そのような材料を、発色剤と任意の熱溶剤と任意の顕色剤との非晶質混合物に溶解して画像の熱安定性を増加させる役割を果たすとき、本明細書では以後「安定剤」と呼ぶ。
【0167】
好ましい安定剤は、少なくとも約60℃であり、好ましくは約80℃より高いTgを有する。そのような安定剤の例は、上述の1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチルベンジル)イソシアヌレート(Tg 123℃)および1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(Tg 101℃)である。前記安定剤分子は、熱溶剤または顕色剤としての役割を果たすこともある。
【0168】
例えば、前記発色材料自体が、所望の画像生成温度より高い溶融温度および約60℃のTg(非晶質形態で)を有することがある。所望の温度で溶融する発色組成物を生成するために、それを、所望の画像生成温度で溶融する熱溶剤と併用することができる。しかし、熱溶剤と発色材料との併用は、実質的に60℃より低いTgを有することがあり、これは(非晶質)画像を不安定にする。この場合、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチルベンジル)イソシアヌレートなどの安定剤を添加して、非晶質材料のTgを上昇させることができる。加えて、顕色剤、例えば、フェノール系化合物、例えば2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)を供給して、非晶質相の呈色形態である発色材料の割合を増加させることができる。
【0169】
好ましくは、本発明の発色化合物、(任意の)熱溶剤、(任意の)顕色剤および(任意の)安定剤は、それぞれ、画像生成前は主としてそれらの結晶形態である。「主として」とは、少なくとも約50%、好ましくはそれより多くを意味する。画像生成中、これらの材料の少なくとも1つが溶融し、該材料の非晶質混合物が形成される。先に述べたように、非晶質混合物は呈色しているが、結晶質出発原料は無色である。
【0170】
溶融(および従って呈色)が起こる温度範囲は、特に、フルカラー画像を形成できるサーマル画像生成部材に結晶質発色化合物が組み込まれている場合、できる限り狭くあるべきである。結晶質の発色化合物を含む発色組成物の(示差走査熱分析によって測定したときの)溶融温度範囲は、半ピーク高で測定したとき15℃未満、好ましくは、半分の高さで測定して10℃未満であることが好ましい。
【0171】
非晶質の呈色混合物中の成分の1つが、画像を形成した後に再結晶し得る可能性がある。そのような再結晶が画像の色を変化させないことが望ましい。発色剤、熱溶剤、顕色剤および安定剤を使用する場合、該熱溶剤は、概して、画像の色に大きな影響を及ぼすことなく再結晶することができる。
【0172】
発色層は、先に説明した画像形成材料のいずれか、または任意の他の熱活性化着色剤を含むことがあり、概して約0.5〜約4.0μmの厚さである。発色層は、同一組成を有さないことがある1つより多くの層(本明細書では以後「副層」と呼ぶ)も含むことがある。例えば、ある副層に結晶質発色材料が組み込まれていて、別の副層に熱溶剤が位置することがある。化学的拡散の速度を制御するための副層を含む他の配置が、当業者の心に浮かぶことだろう。そのような場合、構成要素の副層のそれぞれは、概して約0.1〜約3.0μmの厚さである。
【0173】
発色層は、固体材料の分散物、封入液体、非晶質もしくは固体材料、または高分子結合剤中の活性材料の溶液、または上述のものの任意の組み合わせを含むことがある。
【0174】
発色層において使用される好ましい結合剤材料としては、水溶性ポリマー、例えばポリ(ビニルアルコール)、エチレンビニルアルコールポリマー、ポリアクリルアミド、ゼラチン、セルロース系材料、およびカルボキシル化ポリマーの塩(例えば、アクリル酸単位を含有するポリマーのアンモニウム塩)が挙げられる。
【0175】
加えて、当該技術分野において周知であるように、他の層(図示なし)が、例えば画像を光、湿気、酸素などから保護するために、または接着性などの物理的特性を助長するために存在することがある。
【0176】
図4には、断熱層406が断熱層410より厚く示されているが、これは本発明の要件ではない。一般に、T−lowをT−medium層から離隔する断熱層は、T−medium層をT−high層から離隔する断熱層より厚いほうが好ましい。好ましくは、これらの断熱層は、厚さが少なくとも2倍異なる。
【0177】
米国特許同時係属出願第12/462,421号に詳細に記載されているように、断熱層の熱拡散率が、発色層の加熱のタイミングを支配する。
【0178】
説明したばかりの層命名規則を用いると、発色層404、408および412の活性化温度についての6つの異なる順序付けがある。基材402から保護層414の方向に(すなわち、順序404/406/408/410/412で)カウントすると、それらは、
a.T−high/IL/T−medium/IL/T−low;
b.T−high/IL/T−low/IL/T−medium;
c.T−medium/IL/T−high/IL/T−low;
d.T−medium/IL/T−low/IL/T−high;
e.T−low/IL/T−high/IL/T−medium;および
f.T−low/IL/T−medium/IL/T−high
である。
【0179】
T−high層中の発色組成物が最高活性化温度を有するので、通常は、入射レーザー放射線用の吸収材は、T−high層中にあるかT−high層にぴったりと隣接しているのこととなる。この好ましい実施形態において、他の2つの発色層は間接的に加熱され、それらは、T−high層の付近から拡散した熱によって活性化される。
【0180】
この場合、T−low層がT−high層とT−medium層との間に位置すると、T−highからT−mediumへの熱の拡散およびT−mediumの活性化もT−lowを活性化することとなるので、システムを作動させることが難しくなることは当業者には明白であろう。従って、上に列挙した6つの順序付けのうちの2つは実用的でない。作動可能な組み合わせは:
1.T−high/IL/T−medium/IL/T−low;
2.T−medium/IL/T−high/IL/T−low;
3.T−low/IL/T−medium/IL/T−high;および
4.T−low/IL/T−high/IL/T−medium
である。
【0181】
第1および第3の組み合わせの場合、層スタックは、T−high層で(それぞれ底部または頂部で)加熱され、熱が層から層へと連続的に拡散する。第2および第4の組み合わせの場合、加熱は中央の発色層で行われ、同時に両方向に他の発色層へと拡散する。
【0182】
先に論じたように、各活性化温度の層が1つだけあると想定する。しかし、1つより多くの層が同じ温度で同じ色を形成することがある可能性もある。例えば、さらに複雑な構造:
T−low/IL/T−medium/IL/T−high/IL/T−medium/T−low
を用いてもよく(ここでアスタリスクは、レーザー放射線用の吸収材の存在を示す)、多くの他のそのような構造が当業者の心に浮かぶことだろう。
【0183】
層の順番付けに関するさらなる考慮事項は、他の表面の存在である。画像が見られる媒体の表面(本明細書では以後、発色複合材の「頂」面と呼び、この場合の発色複合材は、図4の少なくとも層404、406、408、410、412および414の組み合わせを指す)は、一般に、コーティングと空気との間の界面である。レーザー活性化の場合、この表面と接触している物体はないと言ってよく、従ってこの表面の冷却は弱いであろう。しかし、前記発色複合材の下のほうの表面は、多くの場合、なんらかの種類の支持構造(例えば、その上に活性層がコーティングされる支持基材402、またはコーティング層が塗布されたなんらかの物理的物体)と接触している。この表面(本明細書では以後、発色複合材の「底」面と呼ぶ)は、印刷中に、支持体への熱の自然拡散、または冷却を支援するために設けられた任意の追加の手段のいずれかにより、さらなる冷却を受けるだろう。
【0184】
通常は熱源から最も遠いT−low層は、熱の良導体に隣接している場合、加熱がより難しくなる。従って、レーザー露光を意図した本発明の好ましい実施形態では、T−low層は、T−mediumまたはT−high層より発色複合材の頂面に近い。この基準は、上記の構造#1または#2の使用に有利である。基材402、または発色複合材の底部と接触している支持体を、T−highまたはT−medium層付近での熱の蓄積を最小にするために、比較的熱伝導性であるように選択することも好ましい。
【0185】
レーザー照射は、発色複合材の表または裏のいずれからの入射であってもよいが、但し、レーザー侵入点と吸収層との間の材料は、使用する波長のレーザー光に対して適度に透明であることを条件とする。
【0186】
T−low層が最低活性化温度を有したとしても、それは通常は加熱層から最も遠く、各画素の印刷に利用可能な時間内に十分に加熱することが難しいことがある。従って、本発明の一定の実施形態では、特に、高速印刷が所望されるときには、媒体を予熱することが好ましい。米国特許第7,408,563号において詳細に論じられているように、そのような予熱は、T−low層に対して最も有意な効果がある。この層の「ベースライン温度」をその活性化温度に近づけることができ、発色を達成するために必要な追加の熱の量を大きく低減することができるからである。
【0187】
本発明の1つの実施形態において、放射線吸収材料は、T−low層に最も近い層中に、またはたT−low層自体の中に位置し、予熱は、この放射線吸収材料により吸収される波長でサーマル画像生成部材を照射することによって達成される。前記放射線吸収材料を、先に論じたような当該技術分野において既知の材料から選択することができ、レーザーで画像を形成するために使用するものと同じまたは異なる波長で吸収するように選択することができる。
【0188】
サーマル画像生成部材の(特に、T−low層の付近での)予熱は、多数の手段、例えば、加熱されたプラテンの使用、基材もしくは基材上のコーティングによるレーザー光の残留吸収、または画像を形成するために使用するものと同じもしくは異なる波長の別のレーザーもしくは光源による加熱の使用、によって果たすことができる。
【0189】
T−low層の付近での予熱は有益であり得るが、これは、T−mediumまたはT−high層の周囲の予熱には通常は当てはまらない。後者の場合、その加熱は、層の十分な活性化に必要な全熱量の有意でなく一部であるが、T−low層上に書き込むために使用されるエネルギーがT−mediumまたはT−high層における任意の色を活性化できるかどうかの判定に大きな影響を及ぼす。
【0190】
サーマル印刷法に適用される場合の用語「熱履歴制御」は、従来、サーマル・プリント・ヘッドの、それを印刷するにつれての変動温度を補償するためにとられる手段を指してきた。このタイプの制御は、電力出力またはレーザーのスペクトルがその温度に伴って変化する場合、レーザープリンタにも必要とされるであろう。しかし、本発明の実施の際のより有意な熱履歴制御の問題は、サーマル画像生成部材自体の中への熱の蓄積である。
【0191】
サーマル画像生成部材内の熱の蓄積を補償するための熱履歴制御アルゴリズムは、本出願人が所有する米国特許同時係属出願第12/468,413号に記載されている。多色印刷を目的としてサーマル印刷媒体に印加される連続熱パルスを併用して追加の熱パルスそれぞれについて補正を生じさせることができる方法がそこに記載されている。この補正に起因して、同じ画素内でまたは同じ加熱要素により印刷される次の画素内で、各パルスから未来のパルスに熱が持ち越される。どの色を印刷するかを選択するために熱の拡散が用いられる多色サーマル画像生成部材へのレーザー印刷の場合、その媒体の表面は空気によってあまり冷却されないだろう。その結果、主な冷却は、通常、さらにコーティングおよび基材の本体への熱の拡散からのもの、および/または裏材として備えられている任意のプラテンもしくは基材による冷却からのものであろう。これらの冷却形態は、通常、サーマル・プリント・ヘッドによってもたらされる冷却より有効性が劣るので、レーザー印刷の場合、サーマル画像生成部材の構造内への熱の蓄積を厳密に補償することがより重要である。
【0192】
レーザー露光で本発明のサーマル画像生成部材上に多色画像を生成するために、レーザーに該媒体の各画素位置を「訪問」させること、および選択した量の各色素を活性化するように規定された一連の熱パルスを送達することが必要である。2008年1月30日出願の米国特許出願第12/022,955号に記載されているように、この露光間隔は、3つの個々の色素層を印刷する1セットの時間区間から成り得る。前記露光は、通常、
1)比較的高い平均電力がT−high層を活性化する、短い区画;
2)中間平均電力の熱露光がT−medium層を活性化する、中間長の区画;および
3)低い電力の露光がT−low層を活性化する、比較的長い区画
から成る。
【0193】
サーマル・プリント・ヘッドの場合のように、電力を多数の変調方法によって変動させることができ、それらのうちの2つを図5に示す。図5aは、3つの間隔のそれぞれにおける平均電力を、レーザーへの電流を変動させることにより、またはレーザービームの強度を変動させる変調装置を介在させることにより、変化させる方法を図示するものである。図5bは、レーザーが全電力の短パルスを生じさせ、平均電力がそれらのパルスのデューティーサイクル(すなわち、全時間に対するON時間の比)を変動させることによって調節される方法を図示するものである。
【0194】
次に進む前に各画素に対して図5の全パルス系列を行う(本明細書では一画素逐次走査プロセスと呼ぶ)代案として、図6に図示するようなマルチパス印刷を行うことが可能である。例えば、第1のパスでは、レーザーを高電力に設定することができ、レーザーを使用してT−high層中の多数の画素を、画像全体に至るまで印刷することができる(図6a)。第2の走査は、より低い電力およびより長い露光時間でそのレーザーを使用して、多数の画素でT−medium画像を印刷することとなる(図6b)。最後に、低い電力および長い露光時間でのパスが、多数の画素でT−low画像コンテンツを生成することとなる(図6c)。図6に図示するプロセスを本明細書では多重画素逐次走査と呼ぶ。
【0195】
多重画素逐次走査の一画素バージョンにまさる利点は、特定の画素を再びアドレス指定する前に発色層から熱が拡散する時間があり、その結果、熱履歴補償をより簡単にすることができることがある点、そてことによると、発色層間の「クロストーク」減少のため達成できる色域をより大きくすることができる点である。
【0196】
所望の画像中のあらゆるポイントにレーザー露光を指向させる方法を用いることが明らかに必要である。これは、レーザー露光を生じさせている装置の下に画像生成部材を移送すること、画像生成部材に対してレーザーを移送すること、鏡、プリズムもしくは他の光学装置を使用して、1つ以上のレーザービームを動的に偏光して画像生成部材上のポイントごとに走査すること、1つのレーザービームを多数のビームに分割し、媒体上の異なるポイントに1つずつ再指向させること、またはそれぞれが媒体上の異なるポイントへの露光をもたらすレーザーのアレイを使用することをはじめとする、多くのやり方で達成することができる。
【0197】
これらの方法の1つより多くを併用して、媒体の完全露光を生じさせることができると予想される。例えば、媒体の比較的遅い移送を用いて、垂直方向に沿ってレーザー露光を行う装置を通り越して一方向に媒体を移送することができる。これは、サーマル・プリント・ヘッドであって、該サーマル・プリント・ヘッド上のヒーターの線形アレイに対して垂直に移動している媒体上に同時に1本の線を書き込むものであるサーマル・プリント・ヘッドに類似している。
【0198】
レーザー光の走査は、振動鏡、回転反射体もしくはプリズム、または当該技術分野において既知の他の装置を用いて果たすことができる。各位置で、レーザー(単数もしくは複数)の電源(単数もしくは複数)を変調することにより、またはレーザー光の光路に1つ以上の変調装置を挿入することにより、熱パルスを変調することができる。
【0199】
レーザーを走査する1つの方法は、単一レーザースポットを使用すること、およびラスターパターンでそれを移動させることだろう。それは、先ず、ある行に沿って画素から画素へと連続して移動し、その後、次の行の始点に引き返すだろう。このタイプの走査では、一画素逐次走査モードの場合は3色すべてを書き込むために必要な時間、または多重画素逐次走査モードの場合は個々の色のうちの1つを書き込むために必要な時間、スポットが各画素の位置にあらねばならない。本発明の方法において色を識別するために用いる熱拡散プロセスのため、画素印刷時間は、おおよそ10ミリ秒である。線に沿って1インチあたり300画素の典型的な画素分解能では、書き込み速度が、線の1リニアインチあたり約3秒に制限される。4×6インチプリントについては、3色すべてを印刷するために各線に12秒より長くかかり、プリント全体に12秒×1800線=21,600秒=36分かかる。これは、多くの用途にとって許容しがたいほど長い。
【0200】
従って、本発明のサーマル画像生成部材での最も実用的な書き込み方法は、多数の画素の同時印刷を含む。最近、固体IR放射レーザーのアレイが利用可能になり、画像の1本の線をレーザーの線形アレイで同時に印刷する可能性を開いた。先に説明したように、IR吸収材をサーマル画像生成部材に組み込んで、レーザー光を吸収し、熱を生じさせる。このように用いると、固体レーザーアレイは、個々に制御可能なエネルギー源の線形アレイを画像生成に妥当な間隔で提供する点でサーマル・プリント・ヘッドに似ている。このアレイをサーマル画像生成部材に近接して配置し、または該部材上に光学投影し、それによって行単位(line−at−a−time)様式で印刷する。同じエネルギーを画素に送達するサーマル・プリント・ヘッドおよびレーザー・プリント・ヘッドについての印刷時間および変調要件は同等である。
【0201】
印刷を1、2または3パスで行うことができる。パス数に関係なく、3色を印刷するために媒体の各画素を高温の短パルス、中程度の温度の中程度の長さのパルス、および低温の長パルスに露光しなければならない。3パス印刷では、短い高温パルスを第1のパスの際に、中程度の長さの中程度の温度のパルスを第2のパスの際に、そして長い低温パルスを第3のパスの際に与えることができる。1パス印刷では、3パルスを各線に、次の線に進む前に、連続して印加することができる。
【0202】
光学素子を使用して単一レーザービームを個々のビームのアレイに分割することおよび細分された各ビームについて別個の変調器を使用することにより、光学源のアレイを獲得することもできる。
【0203】
本発明を本発明の様々な好ましい実施形態に関して詳細に説明したが、本発明がそれらに限定されず、変形および変更をそれらに加えることができ、該変形および変更が本発明の精神および補正クレームの範囲の中に含まれることは当業者には理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマル画像生成部材であって、第1および第2の対向する表面を有する基材を含み、該第1の表面は、少なくとも第1の発色層、第1の断熱中間層、第2の発色層、第2の断熱層および第3の発色層を保持し、該第1の発色層は、該第2の発色層より高い活性化温度を有し、そして該第2の発色層は、該第3の発色層より高い活性化温度を有し、該サーマル画像生成部材は、該第1の発色層内に位置するまたは任意の他の発色層より該第1の発色層に近い層中に位置する放射線吸収材料をさらに含む、サーマル画像生成部材。
【請求項2】
前記放射線吸収材料が、700〜1200nmの範囲の波長を有する放射線を吸収する、請求項1に記載のサーマル画像生成部材。
【請求項3】
前記放射線吸収材料が、700〜1200nmの範囲の波長の入射放射線の少なくとも5%を吸収する、請求項2に記載のサーマル画像生成部材。
【請求項4】
前記第2の発色層が、前記第1の発色層と第3の発色層との間に位置しない、請求項1に記載のサーマル画像生成部材。
【請求項5】
前記第1の発色層が、前記第2の発色層および前記第3の発色層より前記基材の前記第1の表面から大きく距離を隔てたところに位置する、請求項1に記載のサーマル画像生成部材。
【請求項6】
前記第1および第2の断熱層が、厚さに少なくとも2倍の差がある、請求項1に記載のサーマル画像生成部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−506582(P2013−506582A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532135(P2012−532135)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/051337
【国際公開番号】WO2011/044049
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(511029637)ズィンク イメージング, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】