説明

多軸式掘削軸の変位計測装置

【課題】 安価で故障が少く、複数本掘削軸全体の変位を計測することができる装置を提供する。
【解決手段】 複数本掘削軸を連結バンドで一体的に結合した多軸式掘削軸において、
直線状ねじれ従動軸を、該ねじれ従動軸下端において上記下方寄りの連結バンド上に固定すると共に、上記ねじれ従動軸下端から上端まで回転自在に保持しつつ、ねじれ従動軸上端を上記掘削軸上端近くまで延長し、上記ねじれ従動軸上端に、該ねじれ従動軸の受けるねじれの角度表示手段を設けると共に、上記ねじれ角度表示を検出するセンサーを配置し、
上記下方寄り連結バンド上に、傾斜角度検出計を配置した、
多軸式掘削軸の変位計測装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の掘削軸を互に平行に垂下すると共に連結バンドにて一体的に連結してなる多軸掘削軸の掘削時における変位を計測する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ及び減速機構を内装してなる回転駆動部を起立マストに昇降自在に吊支し、上記回転駆動部の下面から突出された複数本の出力軸に、複数本の掘削軸の上端部をそれぞれ接続して各掘削軸を互に小間隔をあけて平行に垂下すると共に、各掘削軸相互を上下複数個所で連結バンドにて一体的に結合してなる多軸式掘削機において、上記複数本掘削軸により地盤を掘削するとき、複数掘削軸の掘削下端の変位を計測する装置として、上記各掘削軸内に傾斜計をそれぞれ内装し、該傾斜計により各掘削軸の傾斜角度を計測して掘削軸全体の曲がり傾向を把握しようとする構造のものが知られている。
【0003】
しかし、上記のような多軸式掘削機においては、削孔列にねじれが生じることがあるため、各掘削軸の傾斜角度計測だけでは掘削軸下端の正確な変位を算出することができない。
【0004】
そこで、上記掘削軸の傾斜角度計測にジャイロセンサーを組み合わせた計測装置が新たに提案され、広く利用されるに至ってはいるが、ジャイロセンサーが高価であるばかりでなく、精密機器であるため掘削時の振動や浸水等による故障が多い難点があり、さらには傾斜計を内部に組みこんだ特殊な掘削軸を使用しなければならない不便もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安価で故障が少く、複数本掘削軸全体の変位を計測することができる装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数本の掘削軸を連結する連結バンドが、各掘削軸を回転自在に保持しつつ、複数本掘削軸を一体的に結合するものであることに着目し、該連結バンドを介して複数本掘削軸全体のねじれ角度及び傾斜角度を計測しようとするもので、その要旨は、
複数本の掘削軸を互に小間隔をあけて平行に垂下すると共に、各掘削軸相互を、上下複数個所で連結バンドにて、各掘削軸を回転自在の状態で、一体的に結合した多軸式掘削軸において、
直線状ねじれ従動軸を、該ねじれ従動軸下端において上記下方寄りの連結バンド上に固定すると共に、上記ねじれ従動軸下端から上端まで回転自在に保持しつつ、ねじれ従動軸上端を上記掘削軸上端近くまで延長し、上記ねじれ従動軸上端に、該ねじれ従動軸の受けるねじれの角度表示手段を設けると共に、上記ねじれ角度表示を検出するセンサーを配置し、
上記下方寄り連結バンド上に、傾斜角度検出計を配置した、
多軸式掘削軸の変位計測装置にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多軸式掘削軸の変位計測装置によれば、ねじれ角度計測には、ねじれ従動軸1本を連結バンドに固定しただけの安価で故障の少い構造のものであるから、従来装置に比較して経済的に極めて有利である。しかも傾斜角度計測には、傾斜角度検出計1つを連結バンドに設置するだけでよいから、掘削軸は傾斜計を内装しない通常のものを使用することができ、経済的にさらに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(イ)本発明による多軸式掘削軸を備える掘削装置の正面図である。 (ロ)同上多軸式掘削軸の略線正面図である。
【図2】多軸式掘削軸の一部省略拡大正面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【実施例】
【0009】
以下図面を参照して本発明の実施例について詳述する。
図1(イ)、(ロ)において、ベースマシン(1)の前端部に垂直に支持されたマスト(2)に、モータ、減速機を内装する回転駆動部(3)を上下摺動自在に係合すると共に、ワイヤロープ(4)により昇降自在に吊支し、該回転駆動部(3)の下端から平行に突出した3本の出力軸(5)‥に、3本の掘削軸(6)‥の上端部を接続して、互に小間隔をあけた平行状態に垂下してある。
【0010】
上記各掘削軸(6)‥は、下端に掘削ヘッド(7)を、その上位の軸外周面に撹拌翼(8)…をそれぞれ設けたもので、これら3軸の掘削軸(6)‥を、その上、下端近く2箇所、及び中間部3個所において、連結バンド(9)…により、各掘削軸(6)‥を回転自在に抱持した状態で、一体的に結合している。
【0011】
上記のように結合された3軸掘削軸(6)‥における中間部連結バンド(9)…のうちの下方寄りの連結バンド(9)の、本例では左側の軸(6)、(6)間位置に、図2に示すように支持台板(10)を固定し、該支持台板(10)上に、中空軸からなるねじれ従動軸(11)の下端座板(12)をボルト(13)…により固定し、従動軸(11)上端を掘削軸(6)、(6)上端近くまで掘削軸(6)、(6)と平行に延長させている。
【0012】
(14)は、上記ねじれ従動軸(11)が横切る他の連結バンド(9)、(9)に固定されたブラケットで、上記ねじれ従動軸(11)を回転自在に支持している。
【0013】
上記ねじれ従動軸(11)のねじれ角度表示手段は次のようである。上記ねじれ従動軸(11)の上端に、図3に示すように円周に沿って目盛を付した目盛円板(15)を垂直に固定し、一方、上記回転駆動部(3)の下面に基準表示板(16)を固定して、表示板(16)下端を上記目盛円板(15)の円周近くに垂下させ、その垂下下端部に基準線(矢印)(17)を記入する。掘削前には、目盛円板(15)の目盛0点を基準線(17)に合致させておく。
【0014】
上記目盛円板(15)の上方には、上記基準線(17)に対する目盛円板(15)の目盛数すなわちねじれ従動軸(11)のねじれ角度を検出するための検出センサー(18)を回転駆動部(3)下面に取りつけてある。
【0015】
上記ねじれ従動軸(11)の下端を固定した連結バンド(9)の右側の軸(6)、(6)間位置に、支持台板(19)を固定し、該台板(19)上に傾斜角度検出計(20)をボルト(21)…により固定し、該検出計(20)により連結バンド(9)の前後、左右の傾斜角度を検出するのである。
【0016】
上記ねじれ角度検出センサー(18)及び傾斜角度検出計(20)の各信号は、それぞれ信号線を介して地上に設置された演算装置(22)に送信し、そこで一体的に結合された3軸掘削軸(6)、(6)、(6)全体の変位を、一定深さ掘削毎のねじれ角度及び傾斜角度の2要素の変化に基いて総体的に把握するのである。
【0017】
なお、上記傾斜角度検出計の信号線は、上記ねじれ従動軸(11)の下端から中空内に通し、従動軸(11)上端部から外部へ引き出して演算装置(22)に接続するとよい。
【0018】
上例の作用を使用例と共に、次に説明する。回転駆動部(3)のモータの始動により3軸の掘削軸(6)‥を回転させ、その下端の掘削ヘッド(7)‥により地盤に掘削を開始する。
【0019】
一定深さ(本例では10cm)掘進する毎に、ねじれ角度検出センサー(18)からのねじれ従動軸(11)のねじれ角度、及び傾斜角度検出計(20)からの連結バンド(9)の傾斜角度をそれぞれ演算装置(22)に送信する。ここで、上記ねじれ従動軸(11)のねじれ角度は、図3に示す3軸掘削軸(6)、(6)、(6)の中心を結ぶ直線(l)の角度(α)分の変位であり、又上記傾斜角度検出計(20)の傾斜角度は、図2における一体的に結合された3掘削軸(6)、(6)、(6)を1つの壁とみた場合の該壁の垂直面に対する前後左右への傾斜の角度であるから、上記ねじれ角度検出センサー(18)及び傾斜角度検出計(20)のデータ変位によって3軸掘削軸(6)、(6)、(6)、の変位を把握できるのである。
【0020】
上記3軸掘削軸(6)、(6)、(6)の変位が増大し、これ以上は許されない領域に至ったときは、掘削を中止し、掘削軸(6)‥を地上に引き上げて掘削し直し等の手段を採らなければならない。
【符号の説明】
【0021】
6 掘削軸
9 連結バンド
11 ねじれ従動軸
14 ブラケット
15 目盛円板
17 基準線
18 ねじれ角度検出センサー
20 傾斜角度検出計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の掘削軸を互に小間隔をあけて平行に垂下すると共に、各掘削軸相互を、上下複数個所で連結バンドにて、各掘削軸を回転自在の状態で、一体的に結合した多軸式掘削軸において、
直線状ねじれ従動軸を、該ねじれ従動軸下端において上記下方寄りの連結バンド上に固定すると共に、上記ねじれ従動軸下端から上端まで回転自在に保持しつつ、ねじれ従動軸上端を上記掘削軸上端近くまで延長し、上記ねじれ従動軸上端に、該ねじれ従動軸の受けるねじれの角度表示手段を設けると共に、上記ねじれ角度表示を検出するセンサーを配置し、
上記下方寄り連結バンド上に、傾斜角度検出計を配置した、
多軸式掘削軸の変位計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−32807(P2011−32807A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182175(P2009−182175)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【Fターム(参考)】