説明

多軸押出機

スリップオン部材(1)が、スリップオン部材の最大径、スリップオン部材のコア径、およびスリップオン部材(1)の中心間距離に対応する円弧からなる断面形状を有している押出機において、スリップオン部材(1)が、スリップオン部材のコア径に対応する円弧の領域においては、軸‐ハブの接続を有しておらず、かつ/またはスリップオン部材(1)の端部に補強セグメント(13、14)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの支持軸を有している請求項1の冒頭部分に記載の押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
支持軸をスクリュまたは同様のスリップオン部材(slip‐on element)に回転できないように接続するために、種々の軸‐ハブの接続が知られている。
【0003】
すなわち、DE‐C813154が、2つの軸を有する機械であって、フェザー・キーまたは正方形の形状を軸‐ハブの接続として使用している機械を開示している。DE7701692U1によれば、多数のスプラインを持つ軸が、一体化されたスプラインとの軸‐ハブの接続として使用される一方で、DE2750767A1およびEP0001970A1は、同じピッチ角を有する3つの別個の沈みキーを備える円形の軸を記載し、EP0330308A1は、異なるピッチ角の2つのキーを記載している。しかしながら、現在では、DIN5480によるインボリュート軸が、主として用いられている。
【0004】
さらに、直接的および間接的な形態の閉鎖を有するさまざまな嵌合軸‐ハブの接続が、「Konstruktionsbuecher」、Springer‐Verlag、1984年、210および211頁において、機械設計の基本である切り欠き係数および疲労強度を検討しつつ、説明および比較されている。しかしながら、これらの場合においては、ハブが一定の肉厚を有している。しかしながら、スクリュ部材または同様のスリップオン部材が全周において密に噛み合う請求項1の冒頭部分に記載の形式の押出機においては、スリップオン部材の軸の形状が、スクリュの外径、スクリュのコア径、および軸の中心間距離に対応する3つの円弧によって決定されている(EP0002131B1を参照)。
【0005】
最も経済的なスクリュ軸は、搬送容積が最大であると同時に、入力トルクが最大であるスクリュ軸である。スクリュ式の搬送システムの総断面積は、ハウジング穴の直径および隣り合うハウジング穴の間の距離によって制約される。技術的要件および可能性ならびに需要に応じて、4つの断面へと比例配分されなければならない。製品を搬送するために、スクリュ部材の外径およびフライト深さ(flight depth)によって決定される自由搬送面が、最初に定められる。これが、スクリュ部材のコア径および隣の支持軸に対する中心間距離をさらに定める。第2に、支持軸が、後続のスリップオン部材のために必要とされる軸トルクを軸方向に伝えるために計算された使用可能表面部分を必要とする。第3に、スリップオン部材のために比例したトルクを伝えるために構造上必要とされる表面の要件が考慮されなければならず、第4には、信頼できるスリップオン部材のための支持軸トルクに関するスリップオン部材の残りの断面積が残される。
【0006】
支持軸はそれぞれ、通常はハウジング穴の直径の少なくとも20倍に相当する長さを有しており、多数のスリップオン部材が、支持軸上に密接して滑り込まされている。最大の計算された使用可能支持軸直径dTiへと伝達できる最大の可能なトルクが、押出機の経済的な使用を決定的に決定する。
【0007】
したがって、押出機の効率および経済性は、押出機の最高の体積収量と同時の最高の許される長期トルクによって決定される。
【0008】
2軸スクリュ押出機の性能を限定している機械要素が、主としてスクリュのコア径であることが、「Kunststoffe」、2005年2月、75頁に記載されている。しかしながら、スクリュ部材が深く切り込まれるほど、すなわちスクリュ部材の自由体積の増加が大きいほど、スクリュのコア径、したがって軸‐ハブの接続のための残りの断面が小さくなる。ここで、問題は、DINまたは同様の形状の歯の付け根の強度に見られ、したがって非対称な歯が、より良好な力の伝達および応力の分散のために提案されている。非対称の歯の複雑な製造を別にすれば、この押出機の性能も、さらに向上させることが可能である。
【特許文献1】DE‐C813154
【特許文献2】DE7701692U1
【特許文献3】DE2750767A1
【特許文献4】EP0001970A1
【特許文献5】EP0330308A1
【特許文献6】EP0002131B1
【非特許文献1】「Konstruktionsbuecher」、Springer‐Verlag、1984年、210および211頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、等しいトルクにおける押出機の体積収量を大きく増加させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これは、本発明によれば、請求項1に特徴付けられる押出機によって達成される。本発明の有利な実施の形態が、従属請求項に示されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、搬送用または同様のスリップオン部材のフライト深さが、軸‐ハブ接続の高いトルク伝達において大きくされる。すなわち、同じ中心間距離において、同じ手段によって、スリップオン部材の外径がより大きく、スリップオン部材のコア径が小さくされ、これが搬送用の部材の自由搬送面または作業用部材の作業面を大きく増加させ、したがって押出機の性能を大きく向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この目的のため、断面が請求項1の冒頭部分に記載の3つの円弧からなるスリップオン部材が、(1)スリップオン部材のコア径に対応する円弧の領域においては、支持軸に対して平坦に接することで、軸‐ハブの接続がないように構成され、かつ/または(2)スリップオン部材の端部に補強セグメントが設けられる。
【0013】
スリップオン部材の肉厚は、スリップオン部材のコア径に対応する円弧の領域において最小である。軸がトルクを伝達するとき、この軸が、軸よりも硬くてねじり剛性が大きいスリップオン部材にくらべ、より大きくねじれる。したがって、スリップオン部材は、この力を軸の特定の領域において吸収する。この力の伝達において、スリップオン部材の最も小さな厚さの端部が、最も大きな荷重にさらされる。
【0014】
すなわち、スリップオン部材のコア径を有する円弧の領域において、少なくともスリップオン部材の最小限の肉厚を保つことが必要である。
【0015】
これが、本発明においては、この領域において軸‐ハブの接続の力の伝達を設けないことによって達成される。すなわち、この領域において、通常であれば軸‐ハブの接続によって占められる断面積を、この領域のスリップオン部材の断面積に加算することができ、したがって支持軸の強度を損なうことなくフライト深さを適宜大きくすることができる。
【0016】
使用できる支持軸の直径dTiは変化しないため、伝達可能なトルクが減少することはない。
【0017】
本発明に従って構成される支持軸は、スリップオン部材のコア径の円弧に対応するスリップオン部材の最も薄い領域に対向する領域において、従来からの支持軸(例えば、DIN 5480によるインボリュート軸)から軸の歯を除去する(例えば、研削によって)ことによって、簡単なやり方で製造可能である。
【0018】
スリップオン部材のコア径に対応する円弧を有するスリップオン部材の領域において、支持軸およびスリップオン部材が嵌合する表面は、円弧に湾曲した表面であってよく、あるいは平坦な表面、すなわち断面が直線に一致する表面であってよい。
【0019】
さらには、一条(single‐start)のスリップオン部材の場合において、スリップオン部材の端部を、トルクの伝達時にスリップオン部材の端部に生じる上述の大きな力を吸収するために、好ましくは環状の補強セグメントによって補強することができる。
【0020】
製品の流れは、補強セグメントによって遅くなるが、この影響は部分的であり、実務においていかなる役割も果たさないほどにわずかである。
【0021】
計算および実験によって示されているとおり、本発明の押出機は、同じトルクにおいて約30%も体積収量を向上させることができる。
【0022】
さらに、本発明は、材料がスリップオン部材と軸との間に進入して、そこにクラッキング(cracking)することがないようにするシール面を増加させる。
【0023】
本発明の押出機における軸‐ハブの接続は、好ましくは、インボリュート、セレーション、またはスプラインによる軸の接続で構成される。適切な接続は、とくには、スリップオン部材のキー溝および軸の歯が丸められた構成である接続であることが分かっている。
【0024】
本発明の押出機は、少なくとも2つの支持軸を有しているが、より多数の支持軸を有することも可能である。すなわち、押出機は、例えば、押出機の軸に対して平行であって、円または円弧に沿って等しい中心角距離で押出機ハウジングの空洞内に配置された少なくとも3つの軸を有することができ、押出機ハウジングの空洞の半径方向内側および外側には、押出機の軸に平行な凹状の円形セグメントが設けられ、スリップオン部材が、これらのセグメント上で案内される。空洞は、環状の構成であってもよい。そのような押出機は、例えばEP0788867Bに記載されている。
【0025】
搬送用のスリップオン部材が、とくにはスクリュ部材によって構成され、作業用のスリップオン部材が、例えば反対方向のねじ山、ニーダーブロック(kneader block)、ブリスター(blister)、または歯付きディスクを有する逆送りのスクリュ部材によって構成される。搬送および作業部を有するスリップオン部材を設けることも可能である。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明を、例示を目的として、添付の図面を参照ながら、さらに詳しく説明する。
【0027】
図1に示されているとおり、互いに噛み合う2つのスリップオン部材1が、円弧A‐B、E‐F、およびA‐Eによって画定される横領域または断面形状領域2を有している。円弧A‐Bは、スリップオン部材の最大径DAに相当する直径を有しており、円弧E‐Fは、スリップオン部材のコア径Dkに相当する直径を有しており、円弧A‐Eは、その半径が最大で組み合わせられた2つのスリップオン部材1の中心間距離Axに相当する直径を有している。
【0028】
スリップオン部材1は、支持軸4の外面の歯5が係合する内面の歯3を有している。このように、スリップオン部材は、直径DAおよびフライト深さによって定められる自由搬送面6を有している。さらに、軸‐ハブの接続のための表面部分7が必要であり、これは、dTAおよびdTiからもたらされる。
【0029】
図2および図3によれば、スクリュ部材として構成されたスリップオン部材1が、同様に支持軸4の外面の歯5が係合する内面の歯3を、全周にわたって有している。ここでは、インボリュートの歯が設けられている。スリップオン部材1の両端には、それぞれの端部に設けられた環状の補強セグメント8、9が存在している。
【0030】
図4および図5による実施の形態においては、二条(two‐start)のスリップオン部材1が、円弧E‐Fに対応する薄い領域11、12には軸‐ハブの接続を持たないように構成されている。すなわち、スリップオン部材1および支持軸4の両者が、円弧E‐Fに相当する領域の全体において、平滑な構成であって互いに嵌合している。したがって、インボリュートの歯3のキー溝は、両端において、円弧A‐EおよびA‐Bに相当するスリップオン部材1の厚肉領域にのみ延びている。すなわち、領域11および12が、両端のキー溝によって弱体化することがない。歯3は、薄肉領域11、12の両側、すなわち円弧A‐Bに対向する領域において、どちらの場合も4つの歯を有しており、支持軸4の5つのスプラインが、2つの歯3のそれぞれに係合する。すなわち、トルクの伝達は、それぞれ4つの歯および5つのスプラインからなる2つのグループによって行われ、したがって一方のグループから他方のグループまでの距離は、グループ内の歯から歯またはスプラインからスプラインの距離よりも大きい。
【0031】
図6〜図8による実施の形態においては、一条のスリップオン部材の円弧E‐Fに対応する領域が、第1に、軸‐ハブの接続を持たずに構成され、さらには、補強リング13、14が両端に設けられ、補強リング13、14は、同心リングとして構成されている。さらには、軸‐ハブの接続が、図4および図5と同様に、支持軸の軸に同心に構成されている。支持軸4は、スリップオン部材1の平滑に構成された領域が、支持軸4に一致するように製作されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】2軸の押出機において外周を密に噛み合わせた2つのスクリュ部材の横断形状である。
【図2】第1の実施の形態によるスリップオン部材の側面図である。
【図3】第1の実施の形態によるスリップオン部材の正面図である。
【図4】第2の実施の形態によるスリップオン部材の斜視図である。
【図5】第2の実施の形態によるスリップオン部材の正面図である。
【図6】第3の実施の形態によるスリップオン部材の側面図である。
【図7】第3の実施の形態によるスリップオン部材の正面図である。
【図8】第3の実施の形態によるスリップオン部材の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの軸平行な支持軸(4)を有しており、搬送用および/または作業用の部材として構成されたスリップオン部材(1)が前記支持軸(4)上に軸‐ハブの接続によって回転不能に滑り込まされており、前記部材が隣接する軸(4)に噛合することで、スリップオン部材(1)の少なくともいくつかが、スリップオン部材の最大径(D)、スリップオン部材のコア径(d)、および最大でスリップオン部材(1)の中心間距離(Ax)に対応する円弧(A‐B、E‐F、およびA‐E)からなる断面形状(2)を有している押出機であって、
前記スリップオン部材(1)が、スリップオン部材のコア径(d)に対応する円弧(E‐F)の領域においては、前記支持軸(4)に対して平坦または部分的に平坦に接することで、軸‐ハブの接続のトルクの伝達がないように構成されること、および
それぞれが少なくとも2つのスプラインまたは歯からなる2つのグループが、トルクの伝達のために設けられ、グループからグループまでの距離が、歯から歯までの距離よりも大きい
ことを特徴とする押出機。
【請求項2】
前記2つのグループのそれぞれが、少なくとも3つの歯を有していることを特徴とする請求項1に記載の押出機。
【請求項3】
前記スリップオン部材(1)が、軸‐ハブの接続のない領域において、円弧または直線の形態で前記支持軸(4)に対して平坦または部分的に平坦に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の押出機。
【請求項4】
補強セグメント(8、9;13、14)が、環状の構成であることを特徴とする請求項1に記載の押出機。
【請求項5】
補強セグメントが、同心リング(8、9)またはカム状の口広げリング(13、14)として構成されていることを特徴とする請求項4に記載の押出機。
【請求項6】
前記軸‐ハブの接続が、インボリュート、セレーション、またはスプラインによる軸の接続であることを特徴とする請求項1に記載の押出機。
【請求項7】
前記搬送用の部材が、スクリュコンベア部材によって構成され、前記作業用の部材が、反対方向のねじ山、ニーダーブロック、ブリスター、または歯付きディスクを有するスクリュ部材によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の押出機。
【請求項8】
周上の一部分においてのみ有効である複数のスプラインによる軸接続が、トルクの伝達のために設けられていることを特徴とする請求項1に記載の押出機。
【請求項9】
前記補強セグメント(8、9;13、14)が、前記スリップオン部材のコア径(Dk)よりも大きくかつ最大で前記中心間距離(Ax)に一致する直径を備えて製作されていることを特徴とする請求項1に記載の押出機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−514704(P2009−514704A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539275(P2008−539275)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009847
【国際公開番号】WO2007/054173
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(507179520)ブラハ・フェアバルツングス・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー (4)
【Fターム(参考)】