説明

多軸粉砕機

【課題】回転軸等が受けるトルクを軽減して軽量、小型化を図ることができる多軸粉砕機を提供する。
【解決手段】各回転刃15、16それぞれを回転軸10、20の周りの異なる位置に設けてある。例えば、各回転軸10、20の軸方向に適長離隔して5枚の回転刃15、16が固定され、各回転刃15、16の刃部151、161が周方向に沿って90度ずつずれて4個あるとする。この場合、1つの回転軸10、20の周りに20個(4個×5枚)の刃部151、161があるので、各回転刃15、16の刃部151、161の位置は、回転軸10、20の周りに18度ずつずれて設けてある。回転制御部は、回転軸10に固定された各回転刃15の刃部151と、回転軸20に固定された各回転刃16の刃部161とが異なる回転角となるように回転軸10、20の少なくとも1つの回転を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の回転軸に固定した複数の回転刃により被粉砕物を粉砕する多軸粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
環境汚染あるいは産業廃棄物の増加などの問題を解決するため、循環型社会の形成が益々重要になってきている。例えば、プラスチックに代表される合成樹脂を用いて成形品又は成形部品を製造する射出成形工場では、成形時に発生するスプルランナと称される不要部分あるいは成形不良品などを回収し、回収したスプルランナを粉砕機で所定の大きさの粉砕材にしてリサイクル原資としている。このような粉砕機は、投入ホッパから投入されたスプルランナ(被粉砕物)を粉砕刃に食い込み易くするため、まず粗砕刃で粗砕し、粗砕された材料を粉砕刃で所定の粒形状の粉砕材に粉砕している。粗砕刃及び粉砕刃などの回転刃を1つの回転軸に固定した1軸式の粉砕機は、回転軸を駆動する駆動部品が少なく構造もシンプルであるため、工場内リサイクルを目指す多くの事業所で利用されている。
【0003】
一方で、大型のブロー成形や真空成形のような場合、バリや成形不良パリソンあるいは成形不良品等の大型の被粉砕物を粉砕するため、回転刃を固定した回転軸を適当な間隔を設けて2つ又は3つ以上平行に配置し、回転刃の間に被粉砕物を噛み込ませる多軸粉砕機も利用されている。
【0004】
このような多軸粉砕機では、回転刃が固定された第1回転軸に減速機を介してモータのモータ軸に直結するとともに、第1回転軸と他の第2回転軸との間にギアを介装してある。そして、モータを作動させると減速機を介して第1回転軸が回転し、さらにギアを介して第2回転軸を回転させることができる(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−1139号公報
【特許文献2】特開2004−105794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の多軸粉砕機では、両方の回転軸を1台のモータで回転させるので、第1回転軸は、自身に固定された回転刃による粉砕時のトルクに加えて、第2回転軸に固定された回転刃による粉砕時のトルクも受ける。すなわち、第1回転軸が受けるトルクは、第2回転軸が受けるトルクの2倍近いトルクを受けることになる。
【0007】
このため、第1回転軸の軸強度及びねじれの剛性などを第2回転軸の2倍にしなければならず、さらにモータも大きな定格のものを使用しなければならない。また、第1回転軸から第2回転軸へ回転を伝動するギアにも大きなオーバーハングロード(軸に作用する懸垂荷重、すなわち軸を曲げようとする力)が生じる。比較的軽負荷な被粉砕物(例えば、車両のバンパー、インパネなど)を粉砕するのであれば、特に問題とはならないものの、重負荷な被粉砕物(例えば、樹脂製ガソリンタンク、ドラム缶などの大型厚肉樹脂製品など)を粉砕する場合には、モータの定格を大きくするとともに、回転軸の軸径とベアリングなどを大きくして強度を高める必要があり、粉砕機全体の形状、寸法が大きくなるとともに重量が重くなり高価な機械になるという問題があった。また、第1回転軸から第2回転軸へトルクを伝達するギアの許容伝達トルクを超えるという問題もあった。
【0008】
そこで、発明者らは、第1回転軸をモータで駆動させるとともに、第2回転軸を別のモータで駆動させることで、第1回転軸が受けるトルクを半減することを試みた。しかし、第1回転軸に固定された回転刃で被粉砕物を粉砕するタイミングで第2回転軸に固定された回転刃が被粉砕物を粉砕していない場合には、第1回転軸と第2回転軸とで受けるトルクに差が生じする。このトルクの差が第1回転軸と第2回転軸との回転を同期させるギアに作用し、ギアに大きなストレスを与え、ギア破損に繋がる。このため、大きなトルクに耐えうる大きなギアが必要となる。そして、大きなギアを用いることは、第1回転軸と第2回転軸の軸間距離を大きくする必要があり、回転軸、回転刃の寸法が大きくなり、粉砕機が大型化するという問題があった。
【0009】
次に、発明者らは、第1回転軸と第2回転軸とを同期させるギアを無くして、第1回転軸と第2回転軸とを独立に別個のモータで駆動させることを試みた。回転軸の軸方向に適長離隔して複数の回転刃を固定し、各回転刃の周方向に沿って刃部を形成した多軸粉砕機において、粉砕時に生じるトルクを分散させるために各回転刃の刃部の位置を回転軸の周りの異なる位置に形成した。被粉砕物を回転刃の刃部で切断する場合、切断トルクを負担しているのは、当該刃部から受ける力である。しかし、第1回転軸と第2回転軸の刃部による被粉砕物の粉砕(切断)タイミングが重なった(一致した)場合には、切断トルクが2倍となり、重負荷な粉砕物を粉砕するときには、許容トルクを超えて、粉砕機がストール停止に陥る可能性があるので、モータの定格を小さくすることができず、粉砕機を小型化することもできなかった。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、回転軸等が受けるトルクを軽減して軽量、小型化を図ることができる多軸粉砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る多軸粉砕機は、複数の電動機で個別に駆動される複数の回転軸を平行に横置きし、前記回転軸それぞれに複数の回転刃を前記回転軸の軸方向に離隔して固定してあり、各回転刃の周方向に沿って刃部を形成した多軸粉砕機において、各回転刃の刃部それぞれを回転軸の周りの異なる位置に設けてあり、一方の回転軸に固定された各回転刃の刃部と、他方の回転軸に固定された各回転刃の刃部とが異なる回転角となるように前記回転軸の少なくとも1つの回転を制御する回転制御部を備えることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る多軸粉砕機は、第1発明において、前記回転軸それぞれの回転刃の回転位置を検出する複数の位置検出部を備え、前記回転制御部は、前記位置検出部で検出した検出結果に基づいて、前記回転軸の回転を制御するように構成してあることを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る多軸粉砕機は、第1発明において、前記回転軸を駆動する電動機それぞれの駆動トルク又は該駆動トルクに関連する特徴量を検出する複数の特徴量検出部を備え、前記回転制御部は、前記特徴量検出部で検出した検出結果に基づいて、前記回転軸の回転を制御するように構成してあることを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る多軸粉砕機は、第3発明において、前記特徴量検出部で検出した駆動トルク又は特徴量の差分を算出する特徴量差分算出部と、該特徴量差分算出部で算出した差分を小さくすべく、前記特徴量検出部で検出した駆動トルク又は特徴量のうち小さい方の駆動トルク又は特徴量を大きくすべく制御する特徴量制御部とを備えることを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る多軸粉砕機は、第4発明において、前記特徴量制御部は、前記特徴量差分算出部で算出した差分を小さくすべく、前記特徴量検出部で検出した駆動トルク又は特徴量のうち小さい方の駆動トルク又は特徴量を大きくし、大きい方の駆動トルク又は特徴量を小さくすべく制御するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
第6発明に係る多軸粉砕機は、第3発明において、前記回転軸を駆動する電動機それぞれの電動機軸の回転速度を検出する複数の回転速度検出部と、前記回転速度検出部で検出した回転速度の差分を算出する回転速度差分算出部とを備え、前記回転制御部は、前記回転速度差分算出部で算出した差分を小さくすべく、前記回転速度検出部で検出した回転速度のうち速い方の回転速度を遅くすべく制御するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
第7発明に係る多軸粉砕機は、第6発明において、前記回転制御部は、前記回転速度差分算出部で算出した差分を小さくすべく、前記回転速度検出部で検出した回転速度のうち速い方の回転速度を遅くし、遅い方の回転速度を速くすべく制御するようにしてあることを特徴とする。
【0018】
第8発明に係る多軸粉砕機は、第3発明において、一の回転軸を駆動する電動機の電動機軸を所定の回転速度で動作させた状態で、前記特徴量検出部それぞれで検出した駆動トルク又は特徴量が等しくなるように制御する特徴量制御部を備えることを特徴とする。
【0019】
第1発明にあっては、各回転刃の刃部それぞれを回転軸の周りの異なる位置に設けてある。例えば、各回転軸の軸方向に適長離隔して5枚の回転刃が固定され、各回転刃の刃部が周方向に沿って90度ずつずれて4個あるとする。この場合、1つの回転軸の周りに20個(4個×5枚)の刃部があるので、各回転刃の刃部の位置は、回転軸の周りに18度(360度/20個)ずつずれて設けてある。同様に他方の回転軸の周りにも18度ずつずれて各回転刃の刃部を設けてある。回転制御部は、一方の回転軸に固定された各回転刃の刃部と、他方の回転軸に固定された各回転刃の刃部とが異なる回転角となるように回転軸の少なくとも1つの回転を制御する。例えば、一方の回転軸のいずれかの回転刃の刃部の位置が、当該回転軸の軸中心と水平の位置であって他方の回転軸のカラー(円筒部)に最も近接するタイミング(この場合、回転角を0とすることができる)で、他方の回転軸のいずれかの回転刃の刃部の位置が、当該回転軸の軸中心と水平の位置であって一方の回転軸のカラー(円筒部)に最も近接する位置(回転角が0)からずれる(例えば、回転角が9度程度)ように回転軸の回転を制御する。これにより、両方の回転軸の回転刃が同時に被粉砕物を切断しないようにして回転軸等(回転軸、軸受けなど)に生じるトルクのピークのタイミングをずらすことができ、回転軸が受けるトルクを軽減して軽量、小型化を図ることができる。
【0020】
第2発明にあっては、回転軸それぞれの回転刃の回転位置を検出する複数の位置検出部を備える。位置検出部は、例えば、金属を検出することができる高周波発振形の近接センサ、反射光又は透過光などを用いた光電センサ等で構成することができる。位置検出部は、各回転刃に形成された刃部の位置を検出することができる適宜の箇所に設けることができる。回転制御部は、位置検出部で検出した検出結果に基づいて、回転軸の回転を制御する。例えば、一方の回転軸のいずれかの回転刃の刃部の位置が、当該回転軸の軸中心と水平の位置であって他方の回転軸のカラー(円筒部)に最も近接するタイミングにあるときに一方の位置検出部で刃部を検出し、他方の回転軸のいずれかの回転刃の刃部の位置が、当該回転軸の軸中心と水平の位置であって一方の回転軸のカラー(円筒部)から最も離れるタイミングにあるときに他方の位置検出部で刃部を検出するように位置検出部を所定位置に設ける。そして、両方の位置検出部で刃部を検出するタイミングが同じタイミングになるように回転軸の一方又は両方の回転を制御する。これにより、両方の回転軸の回転刃が同時に被粉砕物を切断しないようにして回転軸に生じるトルクのピークのタイミングをずらすことができ、回転軸等が受けるトルクを軽減して軽量、小型化を図ることができる。
【0021】
第3発明にあっては、回転軸を駆動する電動機それぞれの駆動トルク又は駆動トルクに関連する特徴量を検出する複数の特徴量検出部を備える。特徴量は、例えば、電動機(モータ)のトルク電流又は電動機の負荷電流などである。特徴量として、電動機のトルク電流又は電動機の負荷電流を検出する場合には、検出したトルク電流又は負荷電流を駆動トルクに変換すればよい。なお、特徴量は、駆動トルクに関連する特徴量であるが、駆動トルクを含むと考えることもできる。回転制御部は、特徴量検出部で検出した検出結果に基づいて、回転軸の回転を制御する。例えば、各回転軸に5枚の回転刃が固定され、各回転刃の刃部が周方向に沿って90度ずつずれて4個あるとする。1つの回転軸の周りに20個(4個×5枚)の刃部があるので、被粉砕物を回転刃で切断させた場合、回転軸が1回転する間に特徴量のピークが20回検出される。両方の特徴量検出部で検出した特徴量(特徴量のピーク)が同じタイミングにならないように回転軸の一方又は両方を制御する。これにより、両方の回転軸の回転刃が同時に被粉砕物を切断しないようにして回転軸に生じるトルクのピークのタイミングをずらすことができ、回転軸等が受けるトルクを軽減して軽量、小型化を図ることができる。
【0022】
第4発明にあっては、特徴量検出部で検出した駆動トルク又は特徴量の差分を算出する特徴量差分算出部と、特徴量差分算出部で算出した差分を小さくすべく、特徴量検出部で検出した駆動トルク又は特徴量のうち小さい方の駆動トルク又は特徴量を大きくすべく制御する特徴量制御部とを備える。例えば、各電動機の電動機軸を所定の回転速度で回転させることにより、各回転軸を同じ回転数で回転させる。そして、特徴量検出部で検出した駆動トルク又は特徴量に差分がある場合、検出した駆動トルク又は特徴量が小さい方の電動機の駆動トルク(又は電動機のトルク電流若しくは負荷電流)を大きくする。これにより、両回転軸等が受けるトルクを平衡化することができる。
【0023】
第5発明にあっては、特徴量制御部は、特徴量差分算出部で算出した差分を小さくすべく、特徴量検出部で検出した駆動トルク又は特徴量のうち小さい方の駆動トルク又は特徴量を大きくし、大きい方の駆動トルク又は特徴量を小さくすべく制御する。すなわち、特徴量検出部で検出した駆動トルク又は特徴量に差分がある場合、検出した駆動トルク又は特徴量が小さい方の電動機の駆動トルク(又は電動機のトルク電流若しくは負荷電流)を大きくし、検出した駆動トルク又は特徴量が大きい方の電動機の駆動トルク(又は電動機のトルク電流若しくは負荷電流)を小さくする。例えば、駆動トルク又は特徴量の差分ΔTの1/2を小さい方に加算し、差分ΔTの1/2を大きい方から減算する制御を行う。これにより、両方の回転軸等が受けるトルクを補完し合い、一方の回転軸等が受けるトルクが増大することを防止することができる。
【0024】
第6発明にあっては、回転軸を駆動する電動機それぞれの電動機軸の回転速度を検出する複数の回転速度検出部と、回転速度検出部で検出した回転速度の差分を算出する回転速度差分算出部とを備える。回転制御部は、回転速度差分算出部で算出した差分を小さくすべく、回転速度検出部で検出した回転速度のうち速い方の回転速度を遅くすべく制御する。例えば、各電動機の電動機軸を所定の回転速度で回転させることにより、各回転軸を同じ回転数で回転させる。そして、回転速度検出部で検出した電動機軸の回転速度に差分がある場合、検出した回転速度が速い方の電動機の電動機軸の回転速度を遅くする。これにより、負荷トルクが小さい方の回転軸を駆動する電動機の駆動トルクを増加させて負荷トルクを補い、両回転軸等が受けるトルクを平衡化することができる。
【0025】
第7発明にあっては、回転制御部は、回転速度差分算出部で算出した差分を小さくすべく、回転速度検出部で検出した回転速度のうち速い方の回転速度を遅くし、遅い方の回転速度を速くすべく制御する。すなわち、回転速度検出部で検出した回転速度に差分がある場合、検出した回転速度が遅い方の電動機の電動機軸の回転速度を速くし、検出した回転速度が速い方の電動機の電動機軸の回転速度を遅くする。例えば、回転速度の差分ΔVの1/2を遅い方に加算し、差分ΔVの1/2を速い方から減算する制御を行う。これにより、両方の回転軸等が受けるトルクを補完し合い、一方の回転軸等が受けるトルクが増大することを防止することができる。
【0026】
第8発明にあっては、一の回転軸を駆動する電動機の電動機軸を所定の回転速度で動作させた状態で、特徴量検出部それぞれで検出した駆動トルク又は特徴量が等しくなるように制御する特徴量制御部を備える。所定の回転速度で動作させた電動機で駆動される回転軸が受けるトルクが増加(駆動トルク又は特徴量が増加)した場合、他方の電動機の駆動トルク又は特徴量も増加するので、負荷に対する駆動トルクが常に等分化され、両回転軸等が受けるトルクを平衡化することができる。
【発明の効果】
【0027】
第1発明、第2発明及び第3発明によれば、両方の回転軸の回転刃が同時に被粉砕物を切断しないようにして回転軸等(回転軸、軸受けなど)に生じるトルクのピークのタイミングをずらすことができ、回転軸が受けるトルクを軽減して軽量、小型化を図ることができる。
【0028】
第4発明及び第6発明によれば、両回転軸等が受けるトルクを平衡化することができる。
【0029】
第5発明及び第7発明によれば、両方の回転軸等が受けるトルクを補完し合い、一方の回転軸等が受けるトルクが増大することを防止することができる。
【0030】
第8発明によれば、負荷に対する駆動トルクが常に等分化され、両回転軸等が受けるトルクを平衡化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態1の多軸粉砕機の構成の一例を示す要部斜視図である。
【図2】実施の形態1の多軸粉砕機の構成の一例を示す要部側面図である。
【図3】実施の形態1の多軸粉砕機の構成の一例を示す要部正面図である。
【図4】実施の形態1の多軸粉砕機の構成の一例を示す要部平面図である。
【図5】実施の形態1の多軸粉砕機の回転刃の配置例を示す模式図である。
【図6】実施の形態1の多軸粉砕機の回転刃の配置例を示す要部斜視図である。
【図7】実施の形態1の多軸粉砕機による被粉砕物の粉砕の一例を示す模式図である。
【図8】実施の形態1の多軸粉砕機による被粉砕物の粉砕の一例を示す模式図である。
【図9】粉砕時の負荷トルクの成分の一例を示すタイムチャートである。
【図10】比較例としての回転軸の回転を同期させるギアを具備しない場合の粉砕機による回転刃の回転の様子を示す模式図である。
【図11】実施の形態1の多軸粉砕機の構成の一例を示すブロック図である。
【図12】実施の形態1の多軸粉砕機による回転刃の回転の様子を示す模式図である。
【図13】実施の形態1の多軸粉砕機のセンサによる回転刃の位置検出の一例を示すタイミングチャートである。
【図14】実施の形態2の多軸粉砕機の構成の一例を示すブロック図である。
【図15】実施の形態2の多軸粉砕機によるトルク制御の一例を示すタイムチャートである。
【図16】実施の形態1、2の多軸粉砕機による負荷トルクの平衡化の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は実施の形態1の多軸粉砕機100の構成の一例を示す要部斜視図であり、図2は実施の形態1の多軸粉砕機100の構成の一例を示す要部側面図であり、図3は実施の形態1の多軸粉砕機100の構成の一例を示す要部正面図であり、図4は実施の形態1の多軸粉砕機100の構成の一例を示す要部平面図である。
【0033】
多軸粉砕機(以下、「粉砕機」ともいう)100は、金属製であって中央部に開口部(不図示)を設けた基台1上に粉砕機本体をボルト等で固定してある。粉砕機本体は、上側と下側が開口した筐体50を備える。すなわち、筐体50は、基台1に設けた前述の開口部を囲んで基台1上に対設した2つの側壁51、52及び2つの軸壁53、54で構成され平面視が矩形状をなす(図4参照)。
【0034】
粉砕機100は、側壁51、52に平行に横置きされ、軸壁53、54に両端が取り付けられた第1の回転軸10及び第2の回転軸20を備える。第1の回転軸10には、回転軸10方向に適長離隔して複数の回転刃15(図4の例では5枚)を固定してある。同様に、第2の回転軸20には、回転軸20方向に回転刃15の離隔寸法と同じ寸法離隔して複数の回転刃16(図4の例では5枚)を固定してある。
【0035】
一方の側壁51に沿って基台1上にモータ(第1の電動機)11及びモータ11のモータ軸(電動機軸)の回転数を減速する第1の減速機12を並置してある。また、他方の側壁52に沿って基台1上にモータ(第2の電動機)21及びモータ21のモータ軸(電動機軸)の回転数を減速する第2の減速機22を並置してある。
【0036】
小スプロケット131、大スプロケット132及び各スプロケット131、132を連結するチェーン133を有する第1の伝動チェーン13を軸壁53に並置してある。また、小スプロケット231、大スプロケット232及び各スプロケット231、232を連結するチェーン233を有する第2の伝動チェーン23を軸壁54に並置してある。
【0037】
第1の伝動チェーン13は、第1の減速機12の回転を第1の回転軸10に伝動し、第2の伝動チェーン23は、第2の減速機22の回転を第2の回転軸20に伝動する。すなわち、第1のモータ11、減速機12、伝動チェーン13と、第2のモータ21、減速機22、伝動チェーン23は、筐体50を間にして点対称の位置に設けてある。
【0038】
なお、上述の例では、伝動チェーン13の大スプロケット132を回転軸10に接続し、伝動チェーン23の大スプロケット232を回転軸20に接続してあるが、大スプロケット132を回転軸20に接続し、伝動チェーン23の大スプロケット232を回転軸10に接続してもよい。これにより、大小スプロケットの離隔距離を広げることができ、大小スプロケットによる減速比をさらに大きくとることができ、さらに軽量かつ小型の減速機を採用することができる。
【0039】
基台1の下側には、粉砕機100で粉砕(切断)された粉砕物を収容する収容箱(不図示)が配置される。
【0040】
筐体50の上方には、被粉砕物を投入するための投入ホッパ2を設けてある。投入ホッパ2の内部は開放され、投入口から投入された被粉砕物は粉砕機本体の筐体50内へ供給される。
【0041】
基台1上には、粉砕機100(モータ11、21も含む)の動作を制御するための制御盤30を設けてある。制御盤30は、粉砕機100の動作を制御するための各種操作スイッチ、粉砕機100の作動状態を表示する表示灯(いずれも不図示)などを備える。
【0042】
図5は実施の形態1の多軸粉砕機100の回転刃15、16の配置例を示す模式図である。筐体50を構成する側壁51、52の内側に2つの回転軸10、20を平行に横置きしてある。回転軸10、20それぞれは、減速機12、22、伝動チェーン13、23を介してモータ11、21で個別に駆動され、図5中の矢印で示す回転方向に回転する。
【0043】
回転軸10には、複数枚(例えば、5枚)の大径の回転刃15が、回転軸10の軸方向に沿って所定の離隔寸法を設けて配置してある。回転軸10の隣接する回転刃15の間には、小径の円筒状のカラー(円筒部)153を嵌着してある。回転刃15は、周方向(回転刃15の回転方向)に沿って複数(図5の例では4つ)の刃部151を形成してある。
【0044】
同等に、回転軸20には、複数枚(例えば、5枚)の大径の回転刃16が、回転軸20の軸方向に沿って所定の離隔寸法を設けて配置してある。回転軸20の隣接する回転刃16の間には、小径の円筒状のカラー(円筒部)163を嵌着してある。回転刃16は、周方向(回転刃16の回転方向)に沿って複数(図5の例では4つ)の刃部161を形成してある。
【0045】
刃部151は、回転刃15の刃元部152から回転方向に向かって先端部(刃先)が湾曲したアーム状をなしている。図5から分かるように、カラー(円筒部)153の径(例えば、回転軸10の中心からの半径)をR1、刃部151の先端部(刃先)の回転径をR2、刃元部152の径をR0とすると、R1<R0<R2の関係が成り立つ。
【0046】
同様に、刃部161は、回転刃16の刃元部162から回転方向に向かって先端部(刃先)が湾曲したアーム状をなしている。図5から分かるように、カラー(円筒部)163の径(例えば、回転軸20の中心からの半径)をR1、刃部161の先端部(刃先)の回転径をR2、刃元部162の径をR0とすると、R1<R0<R2の関係が成り立つ。
【0047】
刃部151は、回転刃15の周方向に沿って等間隔に設けられている。すなわち、1つの回転刃15の隣り合う刃部151と回転軸10の軸中心とがなす角は90度である。同様に、刃部161は、回転刃16の周方向に沿って等間隔に設けられている。すなわち、1つの回転刃16の隣り合う刃部161と回転軸20の軸中心とがなす角は90度である。
【0048】
図5に示すように、回転軸16に固定された隣り合う回転刃16の刃部161は、回転軸20の軸中心に対して角度θだけずらして設けてある。例えば、回転刃16の数が5枚で、1つの回転刃16に4つの刃部161を90度ずつずらして設けてある場合、角度θは、18度{360度÷(5×4)}となる。図5の例では、簡略化のため他の回転刃15、16の刃部は図示していないが、他の刃部についても同様である。
【0049】
側壁51、52の内側には、案内壁154、164が設けられている。案内壁154の下側にはスクレーパ155を設けてある。スクレーパ155は、カラー153の外周と摺動可能に当接してあり、回転刃15の回転軌道に合わせて先端が櫛形状をなす。また、案内壁164の下側にはスクレーパ165を設けてある。スクレーパ165は、カラー163の外周と摺動可能に当接してあり、回転刃16の回転軌道に合わせて先端が櫛形状をなす。
【0050】
図6は実施の形態1の多軸粉砕機100の回転刃15、16の配置例を示す要部斜視図である。図6の例では、簡略化のため、回転刃15、16をそれぞれ2枚だけ示している。回転刃15の刃部151の刃先の回転軌跡と、カラー(円筒部)163の外周とは、2つの回転軸10、20の軸中心を結ぶ仮想直線上で、最も近接する。また、同様に、回転刃16の刃部161の刃先の回転軌跡と、カラー(円筒部)153の外周とは、2つの回転軸10、20の軸中心を結ぶ仮想直線上で最も近接する。このときの刃部151、161の回転角を便宜上0度とすることができる。
【0051】
刃部151、161は、対応するカラー(円筒部)163、153と協働して、刃部151、161が被粉砕物に押し込まれて被粉砕物を必要な寸法に切断(せん断、シャーリング)する。シャーリングによる負荷は、切断の時だけに生じ、不連続にかつピークを有して個々の刃部に作用するトルクとなって現れる。
【0052】
回転刃15の刃元152の外周(回転軌跡)とカラー(円筒部)163の外周とは適宜の間隔を設けてある。同様に、回転刃16の刃元162の外周(回転軌跡)とカラー(円筒部)153の外周とは適宜の間隔を設けてある。当該間隔は、粉砕機自身の大きさにも依存するが、例えば、25〜40mmなどである。なお、この寸法に限定されるものではない。刃元152、162は、対応するカラー(円筒部)163、153と協働して、両回転軸10、20間に被粉砕物を巻き込んで圧延する。例えば、60mm程度の肉厚の被粉砕物を25mm程度の厚みまで圧延することができる。圧延による負荷は、全ての回転刃にほぼ連続的に作用するトルクとなって現れる。
【0053】
回転刃15と隣り合う回転刃16とは、適宜の離隔寸法を設けてある。回転刃15と隣り合う回転刃16とは、それぞれの側面同士が反対方向に回転することにより、幅広の被粉砕物を長手方向に切断(スリッティング)する。スリッティングによる負荷は、全ての回転刃にほぼ連続的に作用するトルクとなって現れる。
【0054】
筐体50上方の開口部から被粉砕物を投入した場合、回転刃15、16、カラー153、163の協働により、被粉砕物に対してシャーリング、圧延、スリッティングそれぞれの加工が行われる。粉砕された粉砕片は、回転刃15、16の回転に伴って筐体50の下方へ排出される。
【0055】
図7及び図8は実施の形態1の多軸粉砕機100による被粉砕物の粉砕の一例を示す模式図である。なお、図7、図8では、簡便のため、1つの回転刃16と対応するカラー153だけを示している。
【0056】
例えば、樹脂製のガソリンタンク又はドラム缶などの被粉砕物(ワークともいう)90を投入ホッパから投入すると、図7に示すように、所定の回転数(例えば、5rpm)で回転する回転刃16の刃部161の刃先が被粉砕物に押し込まれ、刃部161とカラー153との協働により被粉砕物のシャーリング加工が開始される。同時に刃元162とカラー153との協働による圧延加工が開始される。また、回転刃16と隣り合う回転刃15(不図示)との協働によるスリッティング加工が開始される。
【0057】
さらに回転が進むと、図8に示すように、被粉砕物90は、必要な肉厚に圧延されるとともに必要な大きさに切断された粉砕物91となって、筐体50下方に設けられた収容箱に収容される。
【0058】
図9は粉砕時の負荷トルクの成分の一例を示すタイムチャートである。図9において、横軸は時間、縦軸は負荷トルクを示す。図9中、符号Aで示す波形は、シャーリングによる負荷トルク(トルク成分)を表し、符号Bで示す波形は、圧延による負荷トルク(トルク成分)を表し、符号Cで示す波形は、スリッティングによる負荷トルク(トルク成分)を表す。なお、符号A、B、Cで示す波形は、簡略化したものであり、実際には時間的な変動成分を有する。また、各トルク成分は、被粉砕物の材質、形状(厚み、幅、圧延量)などによって異なる。
【0059】
各負荷トルク成分の割合は、一例として、シャーリングによる負荷トルクのピークが60%程度、圧延による負荷トルクが30%程度、スリッティングによる負荷トルクが10%程度である。なお、図9に示す負荷トルクは、それぞれの回転軸に別個に作用する。
【0060】
上述のように、1つの回転軸に5枚の回転刃を設け、各回転刃に刃部を周方向に90度の間隔で4個形成した場合、1つの回転軸には20個の刃部が回転軸の周りに18度ずつずれて配置される。すなわち、回転軸が1回転する間に20回シャーリングが行われる。したがって、符号Aで示すシャーリングによる負荷トルクの隣り合うピーク同士の時間間隔tは、回転軸の回転数をn(rpm)とすると、t=3/nで表すことができる。例えば、1分間に3回転とすると、20秒間に1回転することになり、刃部の数が20個であるから、t=1秒となる。同様に、1分間に5回転とすると、t=0.6秒となる。
【0061】
次に、本実施の形態による回転軸10、20の回転制御について説明する。まず、本実施の形態について説明する前に、従来の粉砕機の場合について説明する。図10は比較例としての回転軸の回転を同期させるギアを具備しない場合の粉砕機による回転刃の回転の様子を示す模式図である。図10に示すように、回転軸10、20それぞれがモータにより別個に駆動され、両方の回転軸10、20の回転を同期させるギアを具備しない場合、被粉砕物を粉砕する過程で回転刃15、16、回転軸10、20等にトルクが生じ、いずれかの回転軸の回転がトルク増加により遅くなるときがある。そのような場合、図10に示すように、1つの刃部151の刃先の先端部と1つの刃部161の刃先の先端部とが、回転軸10、20の軸中心を結ぶ仮想直線上に同時に位置するタイミングでは、刃部151と刃部161とが同じタイミングで回転することとなり、被粉砕物の切断(シャーリング)による大きなトルク(図9の符号A参照)が同時に両方の回転軸10、20に作用する。以下、この点について説明する。
【0062】
図5で示したように、刃部151、161の先端部の径R2は、カラー153、163の径R1より大きく、例えば、2倍程度(R2=2×R1)ある。このため、回転軸10、20の回転数が同じであっても、負荷によるトルクの大きさは、刃部151、161による切断トルクにより回転軸に作用するトルクの方が、径の違いだけを考慮しても、カラー(円筒部)153、163により回転軸に作用するトルクより大きくなる(例えば、2倍程度大きい)。
【0063】
さらに、回転軸10、20の回転数が同じであっても、刃部151、161の周方向の移動速度(回転速度)は、カラー(円筒部)153、163の移動速度(回転速度)より2倍程度速く、加工半径の違いから、刃部151、161による切断トルクにより回転軸に作用するトルクの方が、加工半径の違いだけを考慮しても、カラー(円筒部)153、163により回転軸に作用するトルクより大きくなる(例えば、2倍程度大きい)。
【0064】
すなわち、被粉砕物を介して、粉砕に要する負荷トルクの多くを負担しているのは、被粉砕物に刃部が押し込まれた際の当該刃部を回転させる回転軸となる。
【0065】
次に、本実施の形態の多軸粉砕機100による回転軸10、20の回転制御について説明する。図11は実施の形態1の多軸粉砕機100の構成の一例を示すブロック図である。図11に示すように、インバータ41は、50Hz又は60Hzの交流電圧を所要の周波数に変換し、変換した周波数の出力電圧をモータ11へ供給する。モータ11は、例えば、誘導電動機であり、インバータ41から供給された周波数の交流電圧に応じて駆動される。モータ11のモータ軸の回転数は減速機12で減速される。減速機12には、伝動チェーン13の小スプロケットを設けてあり、チェーンを介して小スプロケットの回転を大スプロケットに伝動し、大スプロケットの回転を回転刃15が固定された回転軸へ伝える。すなわち、多軸粉砕機100の一方の回転軸は、減速機12、伝動チェーン13により減速された回転数で回転する。
【0066】
同様に、インバータ42は、50Hz又は60Hzの交流電圧を所要の周波数に変換し、変換した周波数の出力電圧をモータ21へ供給する。モータ21は、例えば、誘導電動機であり、インバータ42から供給された周波数の交流電圧に応じて駆動される。モータ21のモータ軸の回転数は減速機22で減速される。減速機22には、伝動チェーン23の小スプロケットを設けてあり、チェーンを介して小スプロケットの回転を大スプロケットに伝動し、大スプロケットの回転を回転刃16が固定された回転軸へ伝える。すなわち、多軸粉砕機100の他方の回転軸は、減速機22、伝動チェーン23により減速された回転数で回転する。
【0067】
制御部40は、多軸粉砕機100の動作、すなわちインバータ41、42の動作を制御し、回転制御部としての回転数制御部43を備える。
【0068】
位置検出部としてのセンサ31は、回転刃15の回転位置を検出する。センサ31は、例えば、金属を検出することができる高周波発振形の近接センサ、反射光又は透過光などを用いた光電センサ等で構成することができる。センサ31は、回転刃15に形成された刃部151の位置を検出することができる適宜の箇所に設けることができる。なお、センサ31により、1つの刃部151の所定位置への到達又は所定位置の通過を検出してもよく、複数の刃部151の位置を検出してもよい。センサ32は、回転刃16の回転位置を検出し、構成はセンサ31と同様である。
【0069】
回転数制御部43は、一方の回転軸10に固定された各回転刃15の刃部151と、他方の回転軸20に固定された各回転刃16の刃部161とが異なる回転角となるように回転軸10、20の少なくとも1つの回転を制御する。
【0070】
図12は実施の形態1の多軸粉砕機100による回転刃の回転の様子を示す模式図である。図12に示すように、例えば、回転軸20のいずれかの回転刃16の刃部161の位置が、回転軸20の軸中心と水平の位置であって他方の回転軸10のカラー(円筒部)153に最も近接するタイミング(この場合、回転角を0とすることができる)で、他方の回転軸10のいずれかの回転刃15の刃部151の位置が、回転軸10の軸中心と水平の位置であって回転軸20のカラー(円筒部)163に最も近接する位置(回転角が0)からずれる(例えば、回転角が9度程度)ように回転軸10、20の一方の回転を制御する。これにより、両方の回転軸10、20の回転刃15、16が同時に被粉砕物に押し込まれて被粉砕物を切断しないようにして回転軸等(回転軸、軸受けなど)に生じるトルクのピークのタイミングをずらすことができ、回転軸10、20が受けるトルクを軽減して粉砕機100の軽量、小型化を図ることができる。
【0071】
次に、センサ31、32を用いた回転制御について具体的に説明する。図13は実施の形態1の多軸粉砕機100のセンサ31、32による回転刃の位置検出の一例を示すタイミングチャートである。図13において、矩形状のパルス波形は、センサ31、32が刃部151、161を検出したタイミングを示す。回転数制御部43は、センサ31、32で検出した検出結果に基づいて、回転軸10、20の一方又は両方の回転を制御する。具体的には、回転数制御部43は、インバータ41、42の一方又は両方に速度指令を出力する。
【0072】
例えば、図12に示すように、回転軸20のいずれかの回転刃16の刃部161の位置が、回転軸20の軸中心と水平の位置であって回転軸10のカラー(円筒部)15に最も近接するタイミングにあるときセンサ32で刃部161を検出するようにセンサ32の設置位置を設定するとともに、回転軸10のいずれかの回転刃15の刃部151の位置が、回転軸10の軸中心と水平の位置であって回転軸20のカラー(円筒部)163から最も離れるタイミングにあるときにセンサ31で刃部151を検出するようにセンサ31の設置位置を設定する。このようにセンサ31、32の位置を設定した場合、回転刃15、16が図10に示すような状態になった場合、センサ31、32の検出結果は図13Aに示すようになる。
【0073】
そして、回転数制御部43は、図13Bに示すように、両方のセンサ31、32で刃部を検出するタイミングが同じタイミングになるように回転軸10、20の一方又は両方の回転を制御する。刃部の検出タイミングが図13Bに示す場合、回転刃15、16の回転刃、図12に示すような状態となる。これにより、両方の回転軸の回転刃が同時に被粉砕物を切断しないようにして回転軸に生じるトルクのピークのタイミングをずらすことができ、回転軸等が受けるトルクを軽減して粉砕機100の軽量、小型化を図ることができる。
【0074】
上述のセンサ31、32による回転軸の回転制御、すなわち、回転刃の位置のタイミング補正は、被粉砕物を投入しない無負荷運転、被粉砕物を投入した負荷運転時、いずれの場合でも行うことができる。
【0075】
上述の実施の形態1では、センサ31、32で回転刃の刃部を検出する構成であったが、回転刃の位置(回転位置)の検出は、これに限定されるものではない。例えば、回転刃の側面に所定のマークを付しておき、当該マークを検出することもできる。また、回転刃の刃元に位置検出用の部位を設けてもよい。
【0076】
(実施の形態2)
上述の実施の形態1では、センサ31、32により回転軸10、20の回転を制御する構成であったが、回転刃の刃部の位置を検出する代わりに駆動トルク等の特徴量を検出することもできる。
【0077】
図14は実施の形態2の多軸粉砕機110の構成の一例を示すブロック図である。図14において、実施の形態1と同様の箇所は同一符号を付して説明を省略する。制御部60は、トルク量検出部61、トルク差分算出部62、トルク制御部63、回転速度検出部64、回転速度差分算出部65、回転数制御部66などを備える。
【0078】
トルク量検出部61は、回転軸10、20を駆動するモータ11、21の駆動トルク又は駆動トルクに関連する特徴量を検出する複数の特徴量検出部としての機能を有する。特徴量は、例えば、モータ11、21のトルク電流又はモータ11、21の負荷電流などである。特徴量として、モータ11、21のトルク電流又は負荷電流を検出する場合には、検出したトルク電流又は負荷電流を駆動トルクに変換すればよい。なお、特徴量は、駆動トルクに関連する特徴量であるが、駆動トルクを含むと考えることもできる。
【0079】
なお、モータ11、21の入力電圧と入力電流との位相角をθとすると、トルク電流Ir=負荷電流I×cosθの関係がある。cosθは力率である。力率cosθは、負荷状態に応じて、例えば、20%〜80%程度の値を用いることができる。また、駆動トルク(トルク、負荷トルク)Tmとトルク電流Irとの関係は、例えば、Tm=k×Pw/Vf、Pw=V×Ir×ηと関係付けることができる。ここで、kはモータ11、21により決定される定数、Pwは出力電力、Vfはモータ11、21のモータ軸の回転速度、Vは入力電圧、ηは効率である。すなわち、モータ11、21のトルク電流Ir又はモータ11、21の負荷電流Iを検出することにより、モータ11、21の駆動トルクTmを求めることができる。
【0080】
トルク差分算出部62は、トルク量検出部61で検出したモータ11、21それぞれの駆動トルク又は特徴量の差分を算出する特徴量差分算出部としての機能を有する。
【0081】
トルク制御部は、トルク差分算出部62で算出した差分が小さくなるように、モータ11、21の一方又は両方の駆動トルク又は特徴量の大小を制御する特徴量制御部としての機能を有する。なお、トルク制御は、モータ11、21に印加されるトルクの指令をインバータ41、42へ与え、インバータ41、42は、当該指令に対して、トルクが一致するように自動的にインバータの速度を変える制御である。
【0082】
回転速度検出部64は、回転軸10、20を駆動するモータ11、21のモータ軸の回転速度を検出する。
【0083】
回転速度差分算出部65は、回転速度検出部64で検出したモータ11、21のモータ軸の回転速度の差分を算出する。
【0084】
回転数制御部66は、トルク量検出部61で検出した駆動トルク又は特徴量に基づいて、回転軸10、20の一方又は両方の回転を制御する回転制御部としての機能を有する。なお、回転速度制御(回転数制御)は、モータ11、21に回転させたい速度の指令をインバータ41、42へ与え、インバータ41、42は、当該指令に基づいてモータ11、21のモータ軸を回転させる制御である。
【0085】
図15は実施の形態2の多軸粉砕機110によるトルク制御の一例を示すタイムチャートである。なお、図15に示すトルク波形は、図9で示す負荷トルクの各成分を合計したものである。また、トルク波形の隣接するピークの時間間隔tは、図9と同様の時間tである。回転刃15、16の回転位置が図10に示すように、両方の回転刃の刃部151、161で被粉砕物を切断するタイミングが同じタイミングになった場合、トルク量検出部61で検出したモータ11、21それぞれのトルク(駆動トルク)は、図15Aに示すように、トルクのピークが同じになる。
【0086】
回転数制御部66は、トルク量検出部61で検出した検出結果に基づいて、回転軸10、20の一方又は両方の回転を制御する。例えば、上述のように、各回転軸10、20に5枚の回転刃15、16が固定され、各回転刃15、16の刃部151、161が周方向に沿って90度ずつずれて4個あるとする。1つの回転軸10、20の周りに20個(4個×5枚)の刃部151、161があるので、被粉砕物を回転刃15、16で切断させた場合、回転軸10、20が1回転する間にトルクのピークが20回検出される。
【0087】
図15Bに示すように、回転数制御部66は、トルク量検出部61で検出したモータ11のトルクのピークと、モータ21のトルクのピークが同じタイミングにならないように回転軸10、20の一方又は両方を制御する。例えば、トルクのピークが時間t/2だけずれるように、回転軸10、20の回転を制御する。これにより、両方の回転軸10、20の回転刃15、16が同時に被粉砕物を切断しないようにして回転軸10、20に生じるトルクのピークのタイミングをずらすことができ、回転軸等が受けるトルクを軽減して粉砕機110の軽量、小型化を図ることができる。
【0088】
次に、回転軸10、20に作用するトルク(負荷トルク)を平衡化する方法について説明する。なお、以下の負荷トルクの平衡化は、実施の形態1についても実施の形態2と同様の構成を備えることにより、同様に実現することができる。
【0089】
第1の負荷トルク(トルク)平衡化の方法は、各モータ11、21のモータ軸それぞれを所定の回転速度で回転させることにより、各回転軸10、20を同じ回転数で回転させる。そして、トルク量検出部で検出したモータ11、21のトルク(又はモータ11、21のトルク電流若しくは負荷電流)に差分がある場合、差分を小さくすべく、検出したトルクが小さい方のモータのトルク(又はモータのトルク電流若しくは負荷電流)を大きくする。これにより、両回転軸10、20等が受けるトルクを平衡化することができる。
【0090】
第2の負荷トルク(トルク)平衡化の方法は、各モータ11、21のモータ軸それぞれを所定の回転速度で回転させることにより、各回転軸10、20を同じ回転数で回転させる。そして、トルク量検出部で検出したモータ11、21のトルク(又はモータ11、21のトルク電流若しくは負荷電流)に差分がある場合、差分を小さくすべく、検出したトルクが小さい方のモータのトルク(又はモータのトルク電流若しくは負荷電流)を大きくし、検出したトルクが大きい方のモータのトルク(又はモータのトルク電流若しくは負荷電流)を小さくする。
【0091】
図16は実施の形態1、2の多軸粉砕機100、110による負荷トルクの平衡化の一例を示す説明図である。図16に示すように、モータ11、21のトルクを検出した場合に、モータ21のトルクが大きく、モータ11のトルクが小さく、両者の差分があるときは、モータ21のトルクを小さくし、モータ11のトルクを大きくする。例えば、トルクの差分ΔTの1/2を小さい方に加算し、差分ΔTの1/2を大きい方から減算する制御を行う。これにより、両方の回転軸10、20等が受けるトルクを補完し合い、一方の回転軸等が受けるトルクが増大することを防止することができる。
【0092】
第3の負荷トルクの平衡化の方法は、各モータ11、21のモータ軸それぞれを所定の回転速度で回転させることにより、各回転軸10、20を同じ回転数で回転させる。そして、回転速度検出部64で検出したモータ11、21のモータ軸の回転速度に差分がある場合、差分を小さくすべく、回転速度の速い方のモータのモータ軸の回転速度を遅くして、モータの駆動トルクを増やす。なお、この場合、回転速度の制御は、予め定められた範囲(±ΔVs)で行うことができる。一般的に回転速度が速くなるのは駆動トルクが軽くなっているためであり、回転速度を遅くすることにより、トルクを増やす。これにより、負荷トルクが小さい方の回転軸を駆動するモータの駆動トルクを増加させて負荷トルクを補い、両回転軸等が受けるトルクを平衡化することができる。
【0093】
第4の負荷トルクの平衡化の方法は、各モータ11、21のモータ軸それぞれを所定の回転速度で回転させることにより、各回転軸10、20を同じ回転数で回転させる。そして、回転速度検出部64で検出したモータ11、21のモータ軸の回転速度に差分がある場合、差分を小さくすべく、回転速度の速い方のモータのモータ軸の回転速度を遅くし、回転速度の遅い方のモータのモータ軸の回転速度を速くする。例えば、回転速度の差分ΔVの1/2を遅い方に加算し、差分ΔVの1/2を速い方から減算する制御を行う。これにより、両方の回転軸等が受けるトルクを補完し合い、一方の回転軸等が受けるトルクが増大することを防止することができる。
【0094】
第5の負荷トルクの平衡化の方法は、モータ11、21のモータ軸の一方のみを所定の回転速度で動作させた状態で、トルク量検出部61で検出したモータ11、21それぞれトルク(又はモータのトルク電流若しくは負荷電流)が等しくなるように、モータ11、21のトルクを制御する。所定の回転速度で動作させたモータで駆動される回転軸が受けるトルク(又はモータのトルク電流若しくは負荷電流)が増加した場合、他方のモータのトルクも増加させることができるので、負荷に対するトルクが常に等分化され、両回転軸等が受けるトルクを平衡化することができる。
【0095】
図14の例では、制御部60は、回転速度制御とトルク制御との両方制御を行うための構成を具備しているが、回転速度制御のみ、あるいはトルク制御のみを行う構成だけを具備することもできる。また、使用に応じて、回転速度制御とトルク制御とを切り替えて行うこともできる。
【0096】
上述の実施の形態1、2では、2つの回転軸等(回転軸、軸受けなど)に生じる負荷トルクのアンバランスを相互に補うことができるので、大きな駆動トルクを確保するための定格の大きなモータ(例えば、11kW)を必要とせず、定格の小さなモータ(例えば、5.5kW)を使用することが可能となる。また、各回転軸に生じるトルクをバランスさせて軽減することができるので、回転軸を別個に駆動した場合でも、一方の回転軸の強度、ねじれの剛性などを他方の回転軸の2倍のものを使用する必要がなく、回転軸に作用するトルクによるオーバーハングロードも軽減することができるので、回転軸の軸強度、軸受けの寿命などの弱点が無くなり、さらには粉砕機の軽量コンパクト化を図ることができる。
【0097】
上述の実施の形態では、2つの回転軸を備えた多軸粉砕機について説明したが、本発明は2軸粉砕機だけでなく、3軸以上の他軸粉砕機についても適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
10、20 回転軸
11、21 モータ(電動機)
12、22 減速機
13、23 伝動チェーン
15、16 回転刃
151、161 刃部
152、162 刃元
153、163 カラー
31、32 センサ(位置検出部)
40 制御部
41、42 インバータ
43 回転数制御部(回転制御部)
60 制御部
61 トルク量検出部(特徴量検出部)
62 トルク差分算出部(特徴量差分算出部)
63 トルク制御部(特徴量制御部)
64 回転速度検出部
65 回転速度差分算出部
66 回転数制御部(回転制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電動機で個別に駆動される複数の回転軸を平行に横置きし、前記回転軸それぞれに複数の回転刃を前記回転軸の軸方向に離隔して固定してあり、各回転刃の周方向に沿って刃部を形成した多軸粉砕機において、
各回転刃の刃部それぞれを回転軸の周りの異なる位置に設けてあり、
一方の回転軸に固定された各回転刃の刃部と、他方の回転軸に固定された各回転刃の刃部とが異なる回転角となるように前記回転軸の少なくとも1つの回転を制御する回転制御部を備えることを特徴とする多軸粉砕機。
【請求項2】
前記回転軸それぞれの回転刃の回転位置を検出する複数の位置検出部を備え、
前記回転制御部は、
前記位置検出部で検出した検出結果に基づいて、前記回転軸の回転を制御するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の多軸粉砕機。
【請求項3】
前記回転軸を駆動する電動機それぞれの駆動トルク又は該駆動トルクに関連する特徴量を検出する複数の特徴量検出部を備え、
前記回転制御部は、
前記特徴量検出部で検出した検出結果に基づいて、前記回転軸の回転を制御するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の多軸粉砕機。
【請求項4】
前記特徴量検出部で検出した駆動トルク又は特徴量の差分を算出する特徴量差分算出部と、
該特徴量差分算出部で算出した差分を小さくすべく、前記特徴量検出部で検出した駆動トルク又は特徴量のうち小さい方の駆動トルク又は特徴量を大きくすべく制御する特徴量制御部と
を備えることを特徴とする請求項3に記載の多軸粉砕機。
【請求項5】
前記特徴量制御部は、
前記特徴量差分算出部で算出した差分を小さくすべく、前記特徴量検出部で検出した駆動トルク又は特徴量のうち小さい方の駆動トルク又は特徴量を大きくし、大きい方の駆動トルク又は特徴量を小さくすべく制御するようにしてあることを特徴とする請求項4に記載の多軸粉砕機。
【請求項6】
前記回転軸を駆動する電動機それぞれの電動機軸の回転速度を検出する複数の回転速度検出部と、
前記回転速度検出部で検出した回転速度の差分を算出する回転速度差分算出部と
を備え、
前記回転制御部は、
前記回転速度差分算出部で算出した差分を小さくすべく、前記回転速度検出部で検出した回転速度のうち速い方の回転速度を遅くすべく制御するようにしてあることを特徴とする請求項3に記載の多軸粉砕機。
【請求項7】
前記回転制御部は、
前記回転速度差分算出部で算出した差分を小さくすべく、前記回転速度検出部で検出した回転速度のうち速い方の回転速度を遅くし、遅い方の回転速度を速くすべく制御するようにしてあることを特徴とする請求項6に記載の多軸粉砕機。
【請求項8】
一の回転軸を駆動する電動機の電動機軸を所定の回転速度で動作させた状態で、前記特徴量検出部それぞれで検出した駆動トルク又は特徴量が等しくなるように制御する特徴量制御部を備えることを特徴とする請求項3に記載の多軸粉砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−61428(P2012−61428A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208338(P2010−208338)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000146054)株式会社松井製作所 (70)
【Fターム(参考)】