説明

多軸粉砕機

【課題】コンパクトかつ省スペースを実現することができる多軸粉砕機を提供する。
【解決手段】第1のモータ11及び第1の減速機12それぞれを一方の側壁51に沿って基台1上に並置する。また、第2のモータ21及び第2の減速機22それぞれを他方の側壁52に沿って基台1上に並置する。第1の伝動チェーン13を、一方の軸壁53に沿ってスプロケット132、131を並置するようにして設け、第2の伝動チェーン23を、他方の軸壁54に沿ってスプロケット232、231を並置するようにして設ける。第1の伝動チェーン13は、第1の減速機12及び第1の回転軸10にスプロケット131、132を連結してあり、第2の伝動チェーン23は、第2の減速機22及び第2の回転軸20にスプロケット231、232を連結してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の回転軸に固定した複数の回転刃により被粉砕物を粉砕する多軸粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
環境汚染あるいは産業廃棄物の増加などの問題を解決するため、循環型社会の形成が益々重要になってきている。例えば、プラスチックに代表される合成樹脂を用いて成形品又は成形部品を製造する射出成形工場では、成形時に発生するスプルランナと称される不要部分あるいは成形不良品などを回収し、回収したスプルランナを粉砕機で所定の大きさの粉砕材にしてリサイクル原資としている。このような粉砕機は、投入ホッパから投入されたスプルランナ(被粉砕物)を粉砕刃に食い込み易くするため、まず粗砕刃で粗砕し、粗砕された材料を粉砕刃で所定の粒形状の粉砕材に粉砕している。粗砕刃及び粉砕刃などの回転刃を1つの回転軸に固定した1軸式の粉砕機は、回転軸を駆動する駆動部品が少なく構造もシンプルであるため、工場内リサイクルを目指す多くの事業所で利用されている。
【0003】
一方で、大型のブロー成形や真空成形のような場合、バリや成形不良パリソンあるいは成形不良品等の大型の被粉砕物を粉砕するため、回転刃を固定した回転軸を適当な間隔を設けて2つ又は3つ以上平行に配置し、回転刃の間に被粉砕物を噛み込ませる多軸粉砕機も利用されている。
【0004】
このような多軸粉砕機では、回転刃が固定された第1回転軸に減速機を介してモータのモータ軸に直結するとともに、第1回転軸と他の第2回転軸との間にギアを介装してある。そして、モータを作動させると減速機を介して第1回転軸が回転し、さらにギアを介して第2回転軸を回転させることができる(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−1139号公報
【特許文献2】特開2004−105794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の多軸粉砕機では、両方の回転軸を1台のモータで回転させるので、第1回転軸は、自身に固定された回転刃による粉砕時のトルクに加えて、第2回転軸に固定された回転刃による粉砕時のトルクも受ける。すなわち、第1回転軸が受けるトルクは、第2回転軸が受けるトルクの2倍近いトルクを受けることになる。
【0007】
このため、第1回転軸の軸強度及びねじれの剛性などを第2回転軸の2倍にしなければならず、さらにモータも大きな定格のものを使用しなければならない。また、第1回転軸から第2回転軸へ回転を伝動するギアにも大きなオーバーハングロード(軸に作用する懸垂荷重、すなわち軸を曲げようとする力)が生じる。比較的軽負荷な被粉砕物(例えば、車両のバンパー、インパネなど)を粉砕するのであれば、特に問題とはならないものの、重負荷な被粉砕物(例えば、樹脂製ガソリンタンク、ドラム缶などの大型厚肉樹脂製品など)を粉砕する場合には、モータの定格を大きくするとともに、回転軸の軸径とベアリングなどを大きくして強度を高める必要があり、粉砕機全体の形状、寸法が大きくなるとともに重量が重くなり高価な機械になるという問題があった。また、第1回転軸から第2回転軸へトルクを伝達するギアの許容伝達トルクを超えるという問題もあった。
【0008】
そこで、発明者らは、第1回転軸をモータで駆動させるとともに、第2回転軸を別のモータで駆動させることで、第1回転軸が受けるトルクを半減することを試みた。しかし、第1回転軸に固定された回転刃で被粉砕物を粉砕するタイミングで第2回転軸に固定された回転刃が被粉砕物を粉砕していない場合には、第1回転軸と第2回転軸とで受けるトルクに差が生じする。このトルクの差が第1回転軸と第2回転軸との回転を同期させるギアに作用し、ギアに大きなストレスを与え、ギア破損に繋がる。このため、大きなトルクに耐えうる大きなギアが必要となる。そして、大きなギアを用いることは、第1回転軸と第2回転軸の軸間距離を大きくする必要があり、回転軸、回転刃の寸法が大きくなり、粉砕機が大型化するという問題があった。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、コンパクトかつ省スペースを実現することができる多軸粉砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る多軸粉砕機は、基台上に対設した2つの側壁及び2つの軸壁それぞれで構成された筐体と、前記側壁に平行に横置きされ、前記軸壁に両端が取り付けられた第1及び第2の回転軸とを備え、該回転軸それぞれに複数の回転刃を前記回転軸の軸方向に離隔して固定してあり、各回転刃の周方向に沿って刃部を形成した多軸粉砕機において、一方の側壁に沿って前記基台上に並置した第1の電動機及び該第1の電動機の電動機軸の回転数を減速する第1の減速機と、他方の側壁に沿って前記基台上に並置した第2の電動機及び該第2の電動機の電動機軸の回転数を減速する第2の減速機と、複数のスプロケット及び該スプロケットに張吊されたチェーンを有し、一方の軸壁及び他方の軸壁に沿って前記スプロケットをそれぞれ並置した第1及び第2の伝動部とを備え、前記第1の伝動部は、前記第1の減速機及び第1の回転軸に前記スプロケットを連結してあり、前記第2の伝動部は、前記第2の減速機及び第2の回転軸に前記スプロケットを連結してあることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る多軸粉砕機は、第1発明において、前記第1及び第2の伝動部は、大小のスプロケットを有し、前記小スプロケットを前記第1及び第2の減速機に取り付けてあり、前記大スプロケットを前記第1及び第2の回転軸に取り付けてあることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る多軸粉砕機は、第1発明又は第2発明において、前記第1及び第2の減速機を、前記筐体の角部近傍に設けてあることを特徴とする。
【0013】
第1発明にあっては、筐体は、基台上に対設した2つの側壁及び2つの軸壁それぞれで構成してある。第1の回転軸及び第2の回転軸は、側壁に平行に横置きされ、軸壁に両端を取り付けてある。第1の電動機及び第1の電動機の電動機軸の回転数を減速する第1の減速機それぞれを一方の側壁に沿って基台上に並置する。また、第2の電動機及び第2の電動機の電動機軸の回転数を減速する第2の減速機それぞれを他方の側壁に沿って基台上に並置する。複数のスプロケット及びスプロケットに張吊されたチェーンを有する第1の伝動部を、一方の軸壁に沿ってスプロケットを並置するようにして設け、第2の伝動部を、他方の軸壁に沿ってスプロケットを並置するようにして設ける。そして、第1の伝動部は、第1の減速機及び第1の回転軸にスプロケットを連結してあり、第2の伝動部は、第2の減速機及び第2の回転軸にスプロケットを連結してある。
【0014】
すなわち、第1の電動機、第1の減速機及び第1の伝動部により第1の回転軸を駆動し、第2の電動機、第2の減速機及び第2の伝動部により第2の回転軸を駆動することで、2つの回転軸が別箇独立に駆動されるので、電動機の定格出力が小さいものを使用することができ軽量化、小型化を図ることができる。また、筐体のそれぞれの側壁に沿って電動機と減速機を並置し、それぞれの軸壁に沿って伝動部を並置することで、2つの電動機、減速機及び伝動部が、筐体の周りに点対称(180度点対称)のレイアウトとなり、例えば、回転軸と同軸状に減速機及び電動機を設置する場合に比べて粉砕機の回転軸方向の寸法を短くすることができ、コンパクトかつ省スペースを実現することができる。
【0015】
第2発明にあっては、第1及び第2の伝動部それぞれは、大小のスプロケットを有し、小スプロケットを第1及び第2の減速機に取り付けてあり、大スプロケットを第1及び第2の回転軸に取り付けてある。大小のスプロッケトを有する伝動部により、伝動部で回転数(回転速度)を減速することができるので、減速機の出力トルクを小さくすることができ、軽量小型の減速機を採用して、粉砕機の小型化、軽量化をさらに図ることができる。
【0016】
第3発明にあっては、第1及び第2の減速機を、筐体の角部近傍に設けてある。これにより、減速機に連結されるスプロケットの側面と軸壁との離隔距離を小さくすることができ、大小のスプロケットでのオーバーハングロード(軸に作用する懸垂荷重、すなわち軸を曲げようとする力)を小さくすることができる。そして、回転軸又は軸受けに作用するトルクを減少することができるので、軸径やベアリング等を大きくする必要がなく粉砕機を小型化、軽量化することできる。
【発明の効果】
【0017】
第1発明によれば、2つの電動機、減速機及び動部を筐体の周りに点対称(180度点対称)のレイアウトとなり、コンパクトかつ省スペースを実現することができる。
【0018】
第2発明によれば、減速機の出力トルクを小さくすることができ、軽量小型の減速機を採用して、粉砕機の小型化、軽量化をさらに図ることができる。
【0019】
第3発明によれば、回転軸又は軸受けに作用するトルクを減少することができるので、軸径やベアリング等を大きくする必要がなく粉砕機を小型化、軽量化することできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態の多軸粉砕機の構成の一例を示す要部斜視図である。
【図2】実施の形態の多軸粉砕機の構成の一例を示す要部側面図である。
【図3】実施の形態の多軸粉砕機の構成の一例を示す要部正面図である。
【図4】実施の形態の多軸粉砕機の構成の一例を示す要部平面図である。
【図5】実施の形態の多軸粉砕機の回転刃の配置例を示す模式図である。
【図6】実施の形態の多軸粉砕機の回転刃の配置例を示す要部斜視図である。
【図7】実施の形態の多軸粉砕機による被粉砕物の粉砕の一例を示す模式図である。
【図8】実施の形態の多軸粉砕機による被粉砕物の粉砕の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本実施の形態の多軸粉砕機100の構成の一例を示す要部斜視図であり、図2は本実施の形態の多軸粉砕機100の構成の一例を示す要部側面図であり、図3は本実施の形態の多軸粉砕機100の構成の一例を示す要部正面図であり、図4は本実施の形態の多軸粉砕機100の構成の一例を示す要部平面図である。
【0022】
多軸粉砕機(以下、「粉砕機」ともいう)100は、金属製であって中央部に開口部(不図示)を設けた基台1上に粉砕機本体をボルト等で固定してある。粉砕機本体は、上側と下側が開口した筐体50を備える。すなわち、筐体50は、基台1に設けた前述の開口部を囲んで基台1上に対設した2つの側壁51、52及び2つの軸壁53、54で構成され平面視が矩形状をなす(図4参照)。
【0023】
粉砕機100は、側壁51、52に平行に横置きされ、軸壁53、54に両端が取り付けられた第1の回転軸10及び第2の回転軸20を備える。第1の回転軸10には、回転軸10方向に適長離隔して複数の回転刃15(図4の例では5枚)を固定してある。同様に、第2の回転軸20には、回転軸20方向に回転刃15の離隔寸法と同じ寸法離隔して複数の回転刃16(図4の例では5枚)を固定してある。
【0024】
一方の側壁51に沿って基台1上にモータ(第1の電動機)11及びモータ11のモータ軸(電動機軸)の回転数を減速する第1の減速機12を並置してある。また、他方の側壁52に沿って基台1上にモータ(第2の電動機)21及びモータ21のモータ軸(電動機軸)の回転数を減速する第2の減速機22を並置してある。
【0025】
小スプロケット131、大スプロケット132及び各スプロケット131、132に掛け渡されたチェーン133を有する第1の伝動チェーン13を軸壁53に並置してある。また、小スプロケット231、大スプロケット232及び各スプロケット231、232に掛け渡されたチェーン233を有する第2の伝動チェーン23を軸壁54に並置してある。
【0026】
第1の伝動チェーン13は、第1の減速機12の回転を第1の回転軸10に伝動し、第2の伝動チェーン23は、第2の減速機22の回転を第2の回転軸20に伝動する。すなわち、第1のモータ11、減速機12、伝動チェーン13と、第2のモータ21、減速機22、伝動チェーン23は、筐体50を間にして点対称の位置に設けてある。
【0027】
なお、上述の例では、伝動チェーン13の大スプロケット132を回転軸10に接続し、伝動チェーン23の大スプロケット232を回転軸20に接続してあるが、大スプロケット132を回転軸20に接続し、伝動チェーン23の大スプロケット232を回転軸10に接続してもよい。これにより、大小スプロケットの離隔距離を広げることができ、大小スプロケットによる減速比をさらに大きくとることができ、さらに軽量かつ小型の減速機を採用することができる。
【0028】
基台1の下側には、粉砕機100で粉砕(切断)された粉砕物を収容する収容箱(不図示)が配置される。
【0029】
筐体50の上方には、被粉砕物を投入するための投入ホッパ2を設けてある。投入ホッパ2の内部は開放され、投入口から投入された被粉砕物は粉砕機本体の筐体50内へ供給される。
【0030】
基台1上には、粉砕機100(モータ11、21も含む)の動作を制御するための制御盤30を設けてある。制御盤30は、粉砕機100の動作を制御するための各種操作スイッチ、粉砕機100の作動状態を表示する表示灯(いずれも不図示)などを備える。
【0031】
図5は本実施の形態の多軸粉砕機100の回転刃15、16の配置例を示す模式図である。筐体50を構成する側壁51、52の内側に2つの回転軸10、20を平行に横置きしてある。回転軸10、20それぞれは、減速機12、22、伝動チェーン13、23を介してモータ11、21で個別に駆動され、図5中の矢印で示す回転方向に回転する。
【0032】
回転軸10には、複数枚(例えば、5枚)の大径の回転刃15が、回転軸10の軸方向に沿って所定の離隔寸法を設けて配置してある。回転軸10の隣接する回転刃15の間には、小径の円筒状のカラー(円筒部)153を嵌着してある。回転刃15は、周方向(回転刃15の回転方向)に沿って複数(図5の例では4つ)の刃部151を形成してある。
【0033】
同様に、回転軸20には、複数枚(例えば、5枚)の大径の回転刃16が、回転軸20の軸方向に沿って所定の離隔寸法を設けて配置してある。回転軸20の隣接する回転刃16の間には、小径の円筒状のカラー(円筒部)163を嵌着してある。回転刃16は、周方向(回転刃16の回転方向)に沿って複数(図5の例では4つ)の刃部161を形成してある。
【0034】
刃部151は、回転刃15の刃元部152から回転方向に向かって先端部(刃先)が湾曲したアーム状をなしている。図5から分かるように、カラー(円筒部)153の径(例えば、回転軸10の中心からの半径)をR1、刃部151の先端部(刃先)の回転径をR2、刃元部152の径をR0とすると、R1<R0<R2の関係が成り立つ。
【0035】
同様に、刃部161は、回転刃16の刃元部162から回転方向に向かって先端部(刃先)が湾曲したアーム状をなしている。図5から分かるように、カラー(円筒部)163の径(例えば、回転軸20の中心からの半径)をR1、刃部161の先端部(刃先)の回転径をR2、刃元部162の径をR0とすると、R1<R0<R2の関係が成り立つ。
【0036】
刃部151は、回転刃15の周方向に沿って等間隔に設けられている。すなわち、1つの回転刃15の隣り合う刃部151と回転軸10の軸中心とがなす角は90度である。同様に、刃部161は、回転刃16の周方向に沿って等間隔に設けられている。すなわち、1つの回転刃16の隣り合う刃部161と回転軸20の軸中心とがなす角は90度である。
【0037】
図5に示すように、回転軸16に固定された隣り合う回転刃16の刃部161は、回転軸20の軸中心に対して角度θだけずらして設けてある。例えば、回転刃16の数が5枚で、1つの回転刃16に4つの刃部161を90度ずつずらして設けてある場合、角度θは、18度{360度÷(5×4)}となる。図5の例では、簡略化のため他の回転刃15、16の刃部は図示していないが、他の刃部についても同様である。
【0038】
側壁51、52の内側には、案内壁154、164が設けられている。案内壁154の下側にはスクレーパ155を設けてある。スクレーパ155は、カラー153の外周と摺動可能に当接してあり、回転刃15の回転軌道に合わせて先端が櫛形状をなす。また、案内壁164の下側にはスクレーパ165を設けてある。スクレーパ165は、カラー163の外周と摺動可能に当接してあり、回転刃16の回転軌道に合わせて先端が櫛形状をなす。
【0039】
図6は本実施の形態の多軸粉砕機100の回転刃15、16の配置例を示す要部斜視図である。図6の例では、簡略化のため、回転刃15、16をそれぞれ2枚だけ示している。回転刃15の刃部151の刃先の回転軌跡と、カラー(円筒部)163の外周とは、2つの回転軸10、20の軸中心を結ぶ仮想直線上で、最も近接する。また、同様に、回転刃16の刃部161の刃先の回転軌跡と、カラー(円筒部)153の外周とは、2つの回転軸10、20の軸中心を結ぶ仮想直線上で最も近接する。このときの刃部151、161の回転角を便宜上0度とすることができる。
【0040】
刃部151、161は、対応するカラー(円筒部)163、153と協働して、刃部151、161が被粉砕物に押し込まれて被粉砕物を必要な寸法に切断(せん断、シャーリング)する。シャーリングによる負荷は、切断の時だけに生じ、不連続にかつピークを有して個々の刃部に作用するトルクとなって現れる。
【0041】
回転刃15の刃元152の外周(回転軌跡)とカラー(円筒部)163の外周とは適宜の間隔を設けてある。同様に、回転刃16の刃元162の外周(回転軌跡)とカラー(円筒部)153の外周とは適宜の間隔を設けてある。当該間隔は、粉砕機自身の大きさにも依存するが、例えば、25〜40mmなどである。なお、この寸法に限定されるものではない。刃元152、162は、対応するカラー(円筒部)163、153と協働して、両回転軸10、20間に被粉砕物を巻き込んで圧延する。例えば、60mm程度の肉厚の被粉砕物を25mm程度の厚みまで圧延することができる。圧延による負荷は、全ての回転刃にほぼ連続的に作用するトルクとなって現れる。
【0042】
回転刃15と隣り合う回転刃16とは、適宜の離隔寸法を設けてある。回転刃15と隣り合う回転刃16とは、それぞれの側面同士が反対方向に回転することにより、幅広の被粉砕物を長手方向に切断(スリッティング)する。スリッティングによる負荷は、全ての回転刃にほぼ連続的に作用するトルクとなって現れる。
【0043】
筐体50上方の開口部から被粉砕物を投入した場合、回転刃15、16、カラー153、163の協働により、被粉砕物に対してシャーリング、圧延、スリッティングそれぞれの加工が行われる。粉砕された粉砕片は、回転刃15、16の回転に伴って筐体50の下方へ排出される。
【0044】
図7及び図8は本実施の形態の多軸粉砕機100による被粉砕物の粉砕の一例を示す模式図である。なお、図7、図8では、簡便のため、1つの回転刃16と対応するカラー153だけを示している。
【0045】
例えば、樹脂製のガソリンタンク又はドラム缶などの被粉砕物(ワークともいう)90を投入ホッパから投入すると、図7に示すように、所定の回転数(例えば、5rpm)で回転する回転刃16の刃部161の刃先が被粉砕物に押し込まれ、刃部161とカラー153との協働により被粉砕物のシャーリング加工が開始される。同時に刃元162とカラー153との協働による圧延加工が開始される。また、回転刃16と隣り合う回転刃15(不図示)との協働によるスリッティング加工が開始される。
【0046】
さらに回転が進むと、図8に示すように、被粉砕物90は、必要な肉厚に圧延されるとともに必要な大きさに切断された粉砕物91となって、筐体50下方に設けられた収容箱に収容される。
【0047】
上述のとおり、筐体50は、基台1上に対設した2つの側壁51、52及び2つの軸壁53、54それぞれで構成してある。第1の回転軸10及び第2の回転軸20は、側壁51、52に平行に横置きされ、軸壁53、54に両端を取り付けてある。第1のモータ11及び第1のモータ11のモータ軸の回転数を減速する第1の減速機12それぞれを一方の側壁51に沿って基台1上に並置する。また、第2のモータ21及び第2のモータ21のモータ軸の回転数を減速する第2の減速機22それぞれを他方の側壁52に沿って基台1上に並置する。複数のスプロケット131、132及びスプロケット131、132に張吊されたチェーン133を有する第1の伝動チェーン13を、一方の軸壁53に沿ってスプロケット132、131を並置するようにして設け、第2の伝動チェーン23を、他方の軸壁54に沿ってスプロケット232、231を並置するようにして設ける。そして、第1の伝動チェーン13は、第1の減速機12及び第1の回転軸10にスプロケット131、132を連結してあり、第2の伝動チェーン23は、第2の減速機22及び第2の回転軸20にスプロケット231、232を連結してある。
【0048】
すなわち、第1のモータ11、第1の減速機12及び第1の伝動チェーン13により第1の回転軸10を駆動し、第2のモータ21、第2の減速機22及び第2の伝動チェーン23により第2の回転軸20を駆動することで、2つの回転軸10、20が別個独立に駆動されるので、モータ11、21の定格出力が小さいものを使用することができ軽量化、小型化を図ることができる。また、筐体50のそれぞれの側壁51、52に沿ってモータ11、21と減速機12、22を並置し、それぞれの軸壁53、54に沿って伝動チェーン13、23を並置することで、2つのモータ11、21、減速機12、22及び伝動チェーン13、23が、筐体50の周りに点対称(180度点対称)のレイアウトとなり、例えば、回転軸と同軸状に減速機及びモータを設置する場合に比べて粉砕機の回転軸方向の寸法を短くすることができ、コンパクトかつ省スペースを実現することができる。
【0049】
また、第1の伝動チェーン13及び第2の伝動チェーン23それぞれは、大小のスプロケット132、232、131、231を有し、小スプロケット131、231を第1及び第2の減速機12、22に取り付けてあり、大スプロケット132、232を第1及び第2の回転軸10、20に取り付けてある。大小のスプロッケト132、232、131、231を有する伝動チェーン13、23により、伝動チェーンで回転数(回転速度)を減速することができるので、減速機の出力トルクを小さくすることができ、軽量小型の減速機を採用して、粉砕機の小型化、軽量化をさらに図ることができる。
【0050】
また、第1及び第2の減速機12、22を、筐体50の角部近傍に設けてある。角部近傍とは、例えば、減速機12、22の小スプロケット131、231との連結側の面が軸壁53、54の外側の面と略同一面になるような位置をいう。これにより、減速機12、22に連結される小スプロケット131、231の側面と軸壁53、54との離隔距離を小さくすることができ、チェーン133、233を張架した大スプロケット132、232の側面も同様に軸壁53、54との離隔距離を小さくすることができ、大小のスプロケット131、132、231、232でのオーバーハングロード(軸に作用する懸垂荷重、すなわち軸を曲げようとする力)を小さくすることができる。そして、回転軸又は軸受けに作用するトルクを減少することができるので、軸径やベアリング等を大きくする必要がなく粉砕機を小型化、軽量化することできる。
【0051】
上述の実施の形態では、2つの回転軸を備えた多軸粉砕機について説明したが、本発明は2軸粉砕機だけでなく、3軸以上の他軸粉砕機についても適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10、20 回転軸
11、21 モータ(電動機)
12、22 減速機
13、23 伝動チェーン(伝動部)
131、231 小スプロケット
132、232 大スプロケット
133、233 チェーン
15、16 回転刃
151、161 刃部
152、162 刃元
153、163 カラー
30 制御盤
50 筐体
51、52 側壁
53、54 軸壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台上に対設した2つの側壁及び2つの軸壁それぞれで構成された筐体と、前記側壁に平行に横置きされ、前記軸壁に両端が取り付けられた第1及び第2の回転軸とを備え、該回転軸それぞれに複数の回転刃を前記回転軸の軸方向に離隔して固定してあり、各回転刃の周方向に沿って刃部を形成した多軸粉砕機において、
一方の側壁に沿って前記基台上に並置した第1の電動機及び該第1の電動機の電動機軸の回転数を減速する第1の減速機と、
他方の側壁に沿って前記基台上に並置した第2の電動機及び該第2の電動機の電動機軸の回転数を減速する第2の減速機と、
複数のスプロケット及び該スプロケットに張吊されたチェーンを有し、一方の軸壁及び他方の軸壁に沿って前記スプロケットをそれぞれ並置した第1及び第2の伝動部と
を備え、
前記第1の伝動部は、
前記第1の減速機及び第1の回転軸に前記スプロケットを連結してあり、
前記第2の伝動部は、
前記第2の減速機及び第2の回転軸に前記スプロケットを連結してあることを特徴とする多軸粉砕機。
【請求項2】
前記第1及び第2の伝動部は、
大小のスプロケットを有し、
前記小スプロケットを前記第1及び第2の減速機に取り付けてあり、
前記大スプロケットを前記第1及び第2の回転軸に取り付けてあることを特徴とする請求項1に記載の多軸粉砕機。
【請求項3】
前記第1及び第2の減速機を、前記筐体の角部近傍に設けてあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多軸粉砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−61430(P2012−61430A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208340(P2010−208340)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000146054)株式会社松井製作所 (70)
【Fターム(参考)】