説明

多部品構成の自動車用ドアヒンジ

固定の車体構造体に対する閉鎖パネルの運動を容易にするようになっている自動車用のヒンジ・アセンブリに関する。このヒンジ・アセンブリは、枢支ピンによって構造的に接続されたプレス成形による2つのL字ブラケットから構成され、車両の閉鎖パネルへと取り付けられるようになっているドア側構成要素と、単純に形成された特徴部および枢支ピンによって構造的に接続されたプレス成形による2つのL字ブラケットから構成され、車両の車体構造体へと取り付けられるようになっている車体側構成要素とを備えている。枢支ピンは、上記2つのヒンジ部品を構造的に組み立て、上記2つのヒンジ部品の間の相対の回転運動を容易にし、かつ上記多数のプレス成形によるL字ブラケットを構造的に接続し、したがって、得られるアセンブリが、従来技術よりもはるかに高い材料の効率を達成し、関連するコストも大きく低減される。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、ヒンジに関し、さらに詳しくは、独自の多部品構成を使用して、固定の車体構造体に対する閉鎖パネルの運動を容易にするとともに構造的ヒンジ構成要素の構成を簡素化する自動車用ヒンジに関する。
【発明の背景】
【0002】
自動車用のヒンジは、通常は、閉鎖パネルへと剛に取り付けられるドア側構成要素と、車体構造体へと剛に取り付けられる車体側構成要素とを含むように構成される。これらの構成要素の構造的な取り付けは、溶接、リベット、ボルト締め、または同様の機械的な固定手段によって達成することができる。通常は、車体側構成要素に対するドア側構成要素の単純な回転運動が、枢支ピンおよび関連のベアリング面によって達成される。枢支ピンが、ヒンジ構成要素の一方に剛に取り付けられるように構成される一方で、他方の構成要素が、1つ以上のベアリング面を介して枢支ピンを中心にして自由に回転する。閉鎖パネルを車体構造体に取り付けるために、このようなヒンジ・アセンブリを2つ、枢支ピンを同軸に整列させつつ上下にずらして使用することが、通常の実務である。
【0003】
自動車用ヒンジの車体側およびドア側構成要素は、通常は、打ち抜き、鍛造、鋳造、ロール成形、または押し出しを使用して、鋼またはアルミニウムで作られる。各構成要素は、通常、1つ以上の取り付け面と、枢支穴を収容する1対の枢支アームとを備えて構成されている。枢支アームは、何らかの形態のブリッジまたは取り付け面によって、構造的に接続されている。ブシュをドア側構成要素の枢支穴へと組み付けることによって必要とされる枢支ベアリング面を作り出すことが、一般的な実務である。枢支ピンが、ドア側構成要素の枢支ブシュを通して挿入され、ローレット、締まり嵌め、リベット、杭、または同様の素材据え込み手段を使用して、枢支穴を介して車体側構成要素へと構造的に取り付けられる。
【0004】
車体側構成要素は、自身の取り付け面を介して、ボルト締め、溶接、接着、リベット、または同様の固定手段を使用して車体構造体へと構造的に取り付けられる。ドア側構成要素も、同様に、自身の取り付け面を介して、ボルト締め、溶接、接着、リベット、または同様の固定手段を使用して車両の閉鎖パネルへと構造的に取り付けられる。
【0005】
ボルト付けによる自動車用ヒンジ・システムは、典型的には、ヒンジ構成要素ごとに少なくとも2つの固定具を使用する。したがって、1部品構成の構成要素において、必要とされる枢支穴の位置、取り付け面、構造的な完全性、固定具の位置、および逃げ用のオフセットをもたらすために、複雑な成形が必要とされる。鍛造および鋳造は、これらの必要とされる複雑な形状をもたらすために充分に適しているが、プレス形成される金属の打ち抜きに比べ、かなりのコストの不利を伴う。金属の打ち抜きは、通常は、ヒンジ部品の製作において最も費用対効果に優れる方法と考えられるが、形成される形状が或る程度限定される。さらに、複雑な形状ゆえ、通常は、プレス成形プロセスにおいて、使用されないスクラップ材料が大量に生じる。
【0006】
図1が、プレス成形による車体側構成要素(2)、プレス成形によるドア側構成要素(3)、枢支ピン(4)、および2つの枢支ブシュ(25)、(26)から構成された自動車用ドアヒンジ・アセンブリ(1)の一般的な従来技術の実施形態を示している。車体側構成要素(2)が、1対の枢支アーム(6)(7)および大きな取り付け面(8)を備えて構成されており、取り付け面(8)が、取り付け穴(9)(10)および2つの相応のねじ式の固定具を介して車体構造体に構造的に取り付けられるようになっている。これらの取り付け穴(9)(10)は、車体構造体への荷重が充分に分散されるように保証するため、適切な距離だけ離間している。枢支アーム(6)(7)は、枢支ピン(4)を受け入れて、ローレット、締まり嵌め、リベット、杭、または同様の素材据え込み手段によって剛に捕捉するようになっている1対の枢支穴(11)(12)を備えて構成されている。取り付け穴(9)(10)から枢支穴(11)(12)までの距離は、車両の閉鎖パネルおよび車体の構成によって決まり、かなり大きくなりうる。ドア側構成要素(3)は、1対の枢支アーム(13)(14)、構造ブリッジ(21)、および1対の取り付け面(15)(16)を備えて構成されており、取り付け面(15)(16)が、取り付け穴(17)(18)および2つの相応のねじ式の固定具を介して車両の閉鎖パネルに構造的に取り付けられるようになっている。これらの取り付け穴(17)(18)は、車両の閉鎖パネルへの荷重が充分に分散されるように保証するため、適切な距離だけ離間している。枢支アーム(13)(14)は、枢支軸(4)を中心として回転を容易にする枢支ブシュ(25)(26)を受け入れるようになっている1対の枢支穴(19)(20)を備えて構成されている。取り付け穴(17)(18)から枢支穴(19)(20)までの距離は、車両の閉鎖パネルおよび車体の構成によって決まり、かなり大きくなりうる。車体側構成要素(2)およびドア側構成要素(3)のどちらも、鋼の平坦なシートからプレス成形され、その複雑な形状ゆえ、打ち抜きのプロセスにおいて、かなりの量のスクラップ材料が生じる。図2が、従来技術の車体側構成要素(2a)およびドア側構成要素(3a)の両者について、平坦な未加工品の配置を示しており、さらに打ち抜きプロセスに関係するスクラップ材料(22)が、斜め平行線模様で示されている。この構成において生じるかなりのスクラップ材料(22)にもかかわらず、プレス成形による製造技法は、依然として鋳造または鍛造よりも費用対効果に優れている。
【発明の概要】
【0007】
したがって、プレス成形による金属の打ち抜きを使用して製造され、しかしながら車両の閉鎖パネルおよび車体の構成によって決まる複雑な形状に関係するスクラップを低減または解消するヒンジ・アセンブリを作り出すことが、好ましい。ヒンジ構成要素のプレス成形において大量の材料が使用およびスクラップされる直接的な原因は、取り付け穴と枢支ピンの支持のための特徴部との間に必要とされる距離によって決まる形状の複雑さにある。したがって、これらの特徴部の相互の接続をより効率的な方法で達成できれば、既存の技術に対する大きな改善になると考えられる。
【0008】
本発明は、枢支ピンを主たる構成要素として利用することによって、プレス成形による金属製打ち抜きヒンジ構成要素に使用される総材料を少なくすることを目的とする。1部品構成のドア側構成要素および1部品構成の車体側構成要素を使用する従来からの構成の自動車用ドアヒンジにおいては、枢支ピンが、2つの部品を構造的に組み立てる一方で、2つの部品の間の相対の回転運動を容易にするという2つの主要な機能を実行している。本発明は、枢支ピンを、さらにそれぞれの構成要素の複数の部品を構造的に接続するという追加の主たる機能にも利用する。従来の方法で製造される1部品構成のプレス成形ドア側構成要素は、通常は、2つの取り付け面および2つの枢支アームを一体の構造ブリッジによって接続している。本発明は、この構造ブリッジを取り除き、それぞれの取り付け面と関連の枢支アームとを、個別のプレス成形L字ブラケットとして構成し、そのような2つのL字ブラケットを独自に構成された枢支ピンを使用して一体に構造的に接続する。さらに、本発明は、2つの単純なプレス成形L字ブラケットから構成され、それら2つのL字ブラケットが単純に形成された特徴部および枢支ピンによって構造的に接続されている独自の車体側構成要素を使用する。
【0009】
本発明の枢支ピンは、中央の円柱形の枢動面と、ローレットが施された2つの円柱形の両端部とを備えて構成され、両端部の直径が、中央の円柱形の枢動面から段差によって小さくされている。車体側構成要素の2つのプレス成形L字ブラケットが、枢支アーム上に単純に形成された特徴部によって構造的に接続され、ただ1つの枢支ブシュが、フランジ式の構成によって枢支穴に組み付けられる。枢支ピンが、中央の円柱形の枢動面が自由に回転できるように、枢支ブシュへと配置され、車体側構成要素のプレス成形L字ブラケットが、リベット、杭、または同様の素材据え込み手段によって、枢支ピンのローレットが施された円柱形の両端部へと構造的に接続されるように構成されている。
【0010】
本発明の他の実施形態においては、枢支ピンの円柱形の両端部が、ローレットを施さずに構成され、中央の円柱形の枢動面と2つの円柱形の両端部との間の段差が、組み立てプロセスの際に車体側構成要素の厚さの公差を補償するわずかなテーパを備えて構成されている。構造的な接続を生む材料の締まり嵌めが、テーパが付けられている段差とドア側構成要素のプレス成形L字ブラケットとの間に生じる。
【0011】
本発明のさらに別の実施形態においては、枢支ピンが、いくつかの自動車組み立て工場において求められるようなドア側および車体側構成要素の簡単な分離および再組み立てを促進する片持ち梁の特徴部を備えて構成される。
【0012】
本発明の主たる態様によれば、自動車用のヒンジ・アセンブリが、(a)プレス成形による2つのドア側L字ブラケットから構成され、車両の閉鎖パネルへと取り付けられるようになっているドア側構成要素、(b)プレス成形による2つの車体側L字ブラケットから構成され、ただ1つの枢支ブシュを受け入れるように構成され、車両の車体構造体へと取り付けられるようになっているドア側構成要素、および(c)上記プレス成形によるドア側および車体側L字ブラケットを構造的に接続しつつ、上記ドア側構成要素および車体側構成要素を構造的なアセンブリとして保持し、かつ上記ドア側構成要素と車体側構成要素との間の回転運動を容易にするように構成されている枢支ピン、を有しており、(d)上記枢支ピンが、上記枢支ブシュが周囲で回転できるようになっている中央部直径を有する中央の円柱形の枢動面と、ローレットが施された2つの円柱形の両端部とを備えて構成されており、上記2つの円柱形の両端部のそれぞれが、上記中央部直径よりも小さな直径であって、上記ドア側構成要素のL字ブラケットが素材の据え込みによって構造的に接続されるようになっている直径を有している。
【0013】
本発明のさらなる態様によれば、上述のような自動車用ヒンジ・アセンブリにおいて、上記プレス成形による車体側L字ブラケットが、半割りの特徴部および適合する整列穴によって、溶接、接着、リベット、杭、または同様の素材据え込み手段を使用して、構造的に接合される。
【0014】
本発明のさらなる態様によれば、上述のような自動車用ヒンジ・アセンブリにおいて、上記車体側L字ブラケットに、上記ドア側L字ブラケットに設けられる1対のヒンジストッパ面と相互作用するようになっている1対のヒンジストッパ構造体が設けられ、完全に開いた位置にある当該ヒンジ・アセンブリを、回転しないように構造的に制止する。
【0015】
本発明のさらなる態様によれば、上述のような自動車用ヒンジ・アセンブリにおいて、上記枢支ピンが、組み立てプロセスの際に上記車体側構成要素のL字ブラケットの厚さの公差を補償するために、上記中央の円柱形の枢動面とローレットが施された2つの円柱形の両端部との間の段付きの境界にテーパが付けられている特徴部を取り入れている。
【0016】
本発明のさらなる態様によれば、上述のような自動車用ヒンジ・アセンブリにおいて、上記枢支ピンが、枢支ブシュ、ワッシャ、および素材の据え込みによって上記プレス成形によるドア側L字ブラケットが構造的に接続されるように構成される一方で、テーパが付けられているナットおよびテーパが付けられている枢支穴の構成を使用して上記ドア側および車体側構成要素の容易な分離および再組み立てを促進するための片持ち梁の特徴部をもたらしている。
【0017】
本発明のさらなる態様によれば、直前の項に述べられたような自動車用ヒンジ・アセンブリにおいて、リベットが、上記車体側構成要素の上記ヒンジストッパをもたらすようになっている一方で、さらに上記プレス成形による車体側L字ブラケットを構造的に接合している。
【発明の詳細な説明】
【0018】
図3〜図6を参照すると、自動車用ヒンジ・アセンブリ(30)が、実質的にドア側構成要素(40)および車体側構成要素(60)から構成されている。ドア側構成要素は、取り付け面(41)および2つの枢支アーム(42)を備えて構成されている。それぞれの枢支アーム(42)が、枢支穴(43)を収容している。ドア側構成要素(40)は、自身の取り付け面(41)を介して、ボルト締め、溶接、接着、リベット、または同様の固定手段を使用して、車両の閉鎖パネル(27)に構造的に取り付けられる。車体側構成要素(60)は、取り付け面(61)および枢支アーム(62)を備えて構成されている。枢支アーム(62)が、枢支穴(63)を収容している。車体側構成要素は、自身の取り付け面(61)を介して、ボルト、溶接、接着、リベット、または同様の固定手段を使用して、車両の車体構造体(28)に構造的に取り付けられる。車体側構成要素(60)の枢支穴(63)に、内側の円柱形のベアリング面(81)と2つの対向するスラスト・フランジ(82)とを収容する枢支ブシュ(80)が取り付けられる。図7を参照すると、枢支ピン(90)が、中央の円柱形の枢動面(91)と、ローレットが施された2つの円柱形の両端部(92)とを備えて構成され、両端部(92)はそれぞれ、中央の円柱形の枢動面の直径よりも小さい直径を有している。中央の円柱形の枢動面(91)は、枢支ブシュの内側の円柱形のベアリング面(81)において自由に回転するようになっており、ローレットが施された2つの円柱形の両端部(92)は、ドア側構成要素(40)の枢支穴(43)へと挿入されて、リベット、杭、または同様の素材据え込み手段によって構造的に接続されるようになっている。このように、ドア側構成要素(40)および車体側構成要素(60)が、構造アセンブリとして保持されるが、お互いに対して自由に回転できる。
【0019】
図8を参照すると、ドア側構成要素(40)は、取り付け面(41)および枢支アーム(42)を備えて構成されている2つのプレス成形ドア側L字ブラケット(46)(47)から構成されている。枢支アーム(42)はそれぞれ、枢支穴(43)を収容している。枢支ピン(90)のローレットが施された2つの円柱形の両端部(92)が、枢支穴(43)に押し込まれ、リベット、杭、または同様の素材据え込み手段によって構造的に取り付けられると、単一の一体のドア側構成要素(40)が作り出される。したがって、枢支ピン(40)が、通常であれば単一の一体のドア側構成要素を作り出すために必要である構造ブリッジの代わりをしており、必要とされる材料の量および関連のコストを大幅に低減している。
【0020】
図9を参照すると、車体側構成要素(60)は、取り付け面(61)および枢支アーム(62)を備えて構成されている2つのプレス成形車体側L字ブラケット(66)(67)から構成されている。枢支アーム(62)はそれぞれ、枢支穴(63)を収容している。2つの車体側L字ブラケット(66)(67)は、2つの枢支アーム(62)が表面同士を合わせて配置され、半割りの特徴部(68)を整合する整列穴(69)に嵌め合わせることによって整列させられるように構成されている。半割りの特徴部(68)が、圧入、溶接、接着、リベット、杭、または同様の素材据え込み手段によって整列穴(69)に構造的に接続されたとき、単一の一体の車体側構成要素(60)が作り出される。半割り(68)および整列穴(69)は、枢支穴(63)が整列するように配置されている。枢支穴(63)には、内側の円柱形のベアリング面(81)と2つの対向するスラスト・フランジ(82)とを収容する枢支ブシュ(80)が取り付けられる。このようにして、2つのプレス成形車体側L字ブラケット(66)(67)が、単一の一体のドア側構成要素を作り出しており、必要とされる材料の量および関連のコストを、ただ1つの部品からなる構成に比べて大幅に低減している。
【0021】
図10が、本発明のプレス成形車体側L字ブラケット(66a)(67a)およびプレス成形ドア側L字ブラケット(46a)(47a)の両者の平坦な未加工品の配置、ならびに打ち抜きプロセスに関係するスクラップ材料(58)を示している。図2に示した従来技術のヒンジ・アセンブリの平坦な未加工品の配置と比べると、本発明が、従来技術の構成にくらべ、より優れた全体としての材料の効率を提供し、スクラップの量がより少ないことが明らかである。
【0022】
本発明の好ましい実施形態においては、1対のヒンジストッパ構造(70)が、車体側L字ブラケット(66)(67)の枢支アーム(62)に設けられ、枢支アーム(42)またはドア側L字ブラケット(46)(47)に設けられた1対のヒンジストッパ面(50)と相互に作用するようになっている。ドアヒンジ・アセンブリ(30)が完全に開いた位置まで回転させられるとき、ヒンジストッパ面(50)がヒンジストッパ構造(70)に接し、さらなる回転を防止する。
【0023】
図11が、ローレットを施さずに構成された2つの円柱形の両端部(102)を取り入れている本発明の枢支ピン(100)の別の実施形態を示している。枢支ピン(100)は、直径がより大きい中央の円柱形の枢動面(101)と直径がより小さい2つの円柱形の両端部(102)との間のテーパが付けられている段差(105)を備えて構成されており、このテーパが付けられている段差(105)が、車体側L字ブラケットの材料の厚さの範囲の補償を可能にしている。本発明の第1の実施形態においては、段差が、直角であってテーパを持たないように構成されており、したがってドア側L字ブラケット(46)(47)が、ローレットが施された2つの円柱形の両端部(92)へと、段差によって画成される所定の距離まで押し付けられる。2つの車体側L字ブラケット(66)(67)の厚さに関する材料の公差ゆえ、枢支ブシュ(80)の2つの対向するスラスト・フランジ(82)が圧縮不足または圧縮過多になり、結果として構造的な組み立てが不適切になり、あるいは相対の回転運動が損なわれる可能性がある。代替の実施形態のテーパが付けられている段差(105)によれば、ドア側L字ブラケット(46)(47)を或る範囲の距離までテーパへと押し付けつつ、抵抗するベースに対してリベット、杭、または同様の素材据え込み手段を施すことができる。2つのドア側L字ブラケット(46)(47)とテーパが付けられている段差(105)との間の材料の界面によって、これらの構成要素の間に構造的な接続が作り出される。押し付けの荷重を大きくすることで、2つのドア側L字ブラケット(46)(47)を、枢支ブシュ(80)の2つの対向するスラスト・フランジ(82)を適切に圧縮する距離に設定することができ、適切な構造的組み立ておよび正確な回転運動を達成することができる。
【0024】
図12は、片側だけのリベット止めを容易にするため、固定の頭部(116)を備えて構成された本発明の枢支ピン(110)の別の実施形態を示している。枢支ピン(110)が、中央の円柱形の枢動面(111)と、ローレットが施された2つの円柱形の両端部(112)(113)とを備えて構成されている。固定の頭部(116)に隣接のローレットが施された円柱形の端部(112)は、直径が中央の円柱形の枢動面(111)よりも大きく、枢支ピン(110)の他端に位置するローレットが施された円柱形の端部(113)は、直径が中央の円柱形の枢動面の直径よりも小さい。固定の頭部(116)の直径は、ローレットが施された円柱形の両端部(112)(113)および中央の円柱形の枢動面(111)よりも大きい。このように、自動車用ヒンジ・アセンブリ(30)の組み立てのプロセスが、ただ1つの枢支ピン(110)の挿入ならびに一端のリベット、杭、または同様の素材据え込み手段へと簡略化される。この構成を使用した場合、2つのドア側L字ブラケット(46)(47)の構造的な取り付けが、わずかに悪化する可能性がある。
【0025】
図13および図14が、枢支ピン(190)がドア側構成要素(140)と車体側構成要素(160)との分離を容易にするように構成されている本発明の別の実施形態を示している。この種の分離および再組み立ては、いくつかの車両組み立て工場において必要とされ、一般にリフトオフ・プロセスと称される。ドア側構成要素(140)と車体側構成要素(160)の両者が、プレス成形による2つのドア側L字ブラケット(146)(147)およびプレス成形による2つの車体側L字ブラケット(166)(167)を使用して、本発明の主たる実施形態と同じように構成される。しかしながら、枢支ピン(190)は、枢支ブシュ(180)およびワッシャ(184)を介して、リベット、杭、または同様の素材据え込み手段によって、2つのドア側L字ブラケット(146)(147)へと構造的に接続されるように構成されている。枢支ピン(190)において、ワッシャおよび素材の据え込みとは反対側の端部は、車体側L字ブラケット(166)の整合する円柱形の枢支穴(163)と取り合うように構成されたテーパが付けられている特徴部(195)およびねじ山付きの端部(196)を備えて構成されている。ドア側構成要素(140)が車体側構成要素(160)へと重ねられたときに、ねじ山付きの端部(196)に螺合して、車体側L字ブラケット(167)の整合する円柱形の枢支穴(163)と取り合うテーパが付けられているナット(187)が設けられ、ドア側構成要素(140)と車体側構成要素(160)との間の正確な構造的組み立てを達成する一方で、ブシュの配置によって、適切な回転運動が保証される。ストッパ・リベット(170)が、2つの車体側L字ブラケット(166)(167)を構造的に接続するようになっている一方で、ドア側L字ブラケット(146)(147)に設けられたヒンジストッパ面(150)と相互に作用し、したがってドアヒンジ・アセンブリ(130)が完全に開いた位置まで回転させられるとき、ヒンジストッパ面(150)がヒンジストッパ構造(70)に接して、さらなる回転が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来技術のプレス成形自動車用ドアヒンジ・アセンブリの分解斜視図である。
【図2】図1の従来技術の自動車用ドアヒンジ・アセンブリの構成要素のプレス打ち抜きに関し、展開された平坦な未加工品の配置の平面図である。
【図3】自動車へと典型的に取り付けられた1対の本発明のヒンジ・アセンブリの斜視図である。
【図4】本発明のヒンジ・アセンブリの斜視図である。
【図5】本発明のヒンジ・アセンブリの分解斜視図である。
【図6】本発明のヒンジ・アセンブリについて、枢支ピンの中心線を通る部分断面図である。
【図7】本発明のヒンジ・アセンブリの枢支ピンの側面図である。
【図8】本発明のヒンジ・アセンブリのドア側構成要素の分解斜視図である。
【図9】本発明のヒンジ・アセンブリの車体側構成要素の分解斜視図である。
【図10】本発明のヒンジ・アセンブリの構成要素のプレス打ち抜きに関し、展開された平坦な未加工品の配置の平面図である。
【図11】本発明のヒンジ・アセンブリの枢支ピンについて、代替となるテーパが付けられている段差の実施形態の側面図である。
【図12】本発明のヒンジ・アセンブリの枢支ピンについて、代替となる固定の頭部の実施形態の側面図である。
【図13】本発明のヒンジ・アセンブリについて、代替となるリフトオフの実施形態の斜視図である。
【図14】本発明のヒンジ・アセンブリについて、代替となるリフトオフの実施形態の枢支ピンの中心線を通る部分断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)プレス成形による2つのドア側L字ブラケットから構成され、車両の閉鎖パネルに取り付けられるようになっているドア側構成要素と、
b)プレス成形による2つの車体側L字ブラケットから構成され、1つの枢支ブシュを受け入れるように構成され、車両の車体構造体に取り付けられるようになっている車体側構成要素と、
c)プレス成形による前記ドア側L字ブラケットおよび前記車体側L字ブラケットを構造的に連結するとともに、前記ドア側構成要素および前記車体側構成要素を構造的アセンブリとして保持し、かつ、前記ドア側構成要素と前記車体側構成要素との間の回転運動を容易にするように構成されている枢支ピンと、
を備えており、
d)前記枢支ピンが、
中央部直径を有する中央の円柱形の枢動面であり、該枢動面を中心として前記枢支ブシュが回転できるようになっている、枢動面と、
ローレットが施された2つの円柱形の両端部と
を備えて構成されており、前記2つの円柱形の両端部のそれぞれが、前記中央部直径よりも小さな直径であって、前記ドア側構成要素の前記L字ブラケットが素材の据え込みによって構造的に接続されるようになっている直径を有している、自動車用のヒンジ・アセンブリ。
【請求項2】
前記プレス成形による車体側L字ブラケットが、半割りの特徴部および整合する整列穴によって、圧入、溶接、接着、リベット、杭、または同様の素材据え込み手段を使用して、構造的に接合されている、請求項1に記載の自動車用のヒンジ・アセンブリ。
【請求項3】
前記車体側L字ブラケットに、前記ドア側L字ブラケットに設けられる1対のヒンジストッパ面と相互作用するようになっている1対のヒンジストッパ構造体が設けられ、完全に開いた位置にある当該ヒンジ・アセンブリを、回転しないように構造的に制止する、請求項1または2に記載の自動車用のヒンジ・アセンブリ。
【請求項4】
前記枢支ピンが、組み立てプロセスの際に前記車体側構成要素のL字ブラケットの厚さの公差を補償するために、前記中央の円柱形の枢動面と前記2つの円柱形の両端部との間の段付きの境界にテーパが付けられている特徴部を有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車用のヒンジ・アセンブリ。
【請求項5】
前記枢支ピンが、枢支ブシュ、ワッシャ、および素材の据え込みによって、プレス成形による前記ドア側L字ブラケットが構造的に接続されるように構成されるとともに、テーパが付けられているナットおよびテーパが付けられている枢支穴の構成を使用して前記ドア側および車体側構成要素の容易な分離および再組み立てを促進するための片持ち梁の特徴部をもたらしている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車用のヒンジ・アセンブリ。
【請求項6】
リベットが、前記車体側構成要素の前記ヒンジストッパをもたらすとともに、プレス成形による前記車体側L字ブラケットを構造的に接合している、請求項5に記載の自動車用のヒンジ・アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−542942(P2009−542942A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518690(P2009−518690)
【出願日】平成19年2月12日(2007.2.12)
【国際出願番号】PCT/CA2007/000199
【国際公開番号】WO2008/006191
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(504359617)マルチメイティック インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】