多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム
【課題】海水から淡水を造水するための多重効用造水装置において、バンドルで発生した蒸気流を制御して、伝熱管表面のドライスポットの発生を抑制することができ、熱伝達を低下させることなく、発生蒸気流によるバンドルの圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を低減させて造水効率を高めることができる蒸気流制御システムを提供する。
【解決手段】多段多列の水平状伝熱管3よりなる伝熱管束2と、伝熱管束2の左右両外側に垂直状に配設された蒸気制御用板4とを具備するバンドル1が、設けられている。バンドル1の高さの中間部に少なくとも1つの中間蒸気逃がし用空間部5が設けられ、中間蒸気逃がし用空間部5の左右両側の垂直状蒸気制御用板4に、中間蒸気逃がし用開口部6がそれぞれ設けられて、バンドル1が上下に分割されており、左右両中間蒸気逃がし用開口部6の上端に、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板7がそれぞれ設けられている。
【解決手段】多段多列の水平状伝熱管3よりなる伝熱管束2と、伝熱管束2の左右両外側に垂直状に配設された蒸気制御用板4とを具備するバンドル1が、設けられている。バンドル1の高さの中間部に少なくとも1つの中間蒸気逃がし用空間部5が設けられ、中間蒸気逃がし用空間部5の左右両側の垂直状蒸気制御用板4に、中間蒸気逃がし用開口部6がそれぞれ設けられて、バンドル1が上下に分割されており、左右両中間蒸気逃がし用開口部6の上端に、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板7がそれぞれ設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水から淡水を造水するための多重効用造水装置(MED)における分割バンドルによる蒸気流制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の多重効用造水装置は、多段多列の水平状伝熱管よりなる伝熱管束を具備するバンドルが各効用に設けられており、各効用においてバンドルの伝熱管束に対し、その上方から海水が散布される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1に、従来の多重効用造水装置のフロー図を示す。一般に、多重効用造水装置において、補給海水は、第一効用のバンドルの伝熱管束に対し、上から散布され、散布されたブライン(海水)は重力により各伝熱管の外側を流下する。
【0004】
一方、第一効用に供給された過熱蒸気は伝熱管束の各伝熱管内に流れこみ、管外を流下する海水を加熱、蒸発させ、自身は凝縮して生産水となる。伝熱管外で発生した蒸気はデミスタを通過して次効用に送り込まれ、次効用の熱源として使われる。この操作は、第一効用から最終効用まで繰り返し起こる。
【0005】
多重効用造水装置の各効用は、補給海水が沸騰するように減圧されており、第一効用から最終効用まで順次圧力が低くなっている。
【0006】
ここで、各効用の伝熱管束の各伝熱管の外面には、ブラインの液膜流れが形成される。そして、バンドルの下部ほどブラインの蒸発のため液膜流量が小さくなるため、水平状伝熱管の左右両端部に表面乾き部分(ドライスポット)が発生することが懸念される。このようなドライスポットが発生すると、相変化が起こらず、熱伝達効率が低下するだけでなく、伝熱管表面へのスケールの付着も懸念される。そのため、極力、ドライスポットの発生を抑制することが重要である。
【0007】
一般に、多重効用造水装置の各効用のバンドルにおいて発生した蒸気は、バンドルから水平方向に流出するため、蒸気の流出に伴って、バンドルから水平方向への飛散ブラインが生じる。また発生した蒸気流の影響により、流下するブラインの液膜に偏流が生じるため、バンドル下部において伝熱管表面に液膜が供給されにくくなり、そのために、ドライスポットが発生しやすくなるという問題があった。
【0008】
そこで、下記の特許文献2では、各効用のバンドルの伝熱管束の左右両外側に蒸気制御用板が垂直状に配設されて、ブラインの液膜流れと同方向(重力方向)に蒸気を流出させることで、ドライスポットの発生を抑制することが提案されている。
【0009】
このように、各効用のバンドルの伝熱管束の左右両外側に蒸気制御用板を配設することにより、蒸気はバンドル下端部から流出するため、伝熱管表面における液膜の偏流は解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−198701号公報
【特許文献2】特開2010−162434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献2に記載の従来の多重効用造水装置によれば、各効用のバンドルの上方からスプレイで海水を伝熱管束上に降らしているため、バンドル内で発生した蒸気は、ブラインの重力による流れに同伴されかつ伝熱管束の左右両外側の蒸気制御用板に規制されて、下方に向かって流れ、すべての蒸気がバンドルの下端部から流出する。従って、バンドル下部では、発生蒸気流の流速が大きくなるため、バンドルの圧力損失の増大が懸念される。
【0012】
そこで、特許文献2では、このような圧力損失増大を抑制するために、バンドル下部の伝熱管の径を小さくしたり、バンドル下部の伝熱管の列数を少なくすることにより、圧力損失を低下させることが提案されている。
【0013】
しかし、特許文献2に記載のいずれの方法も、圧力損失増大を抑制することは可能であるが、伝熱面積が減少するために、造水効率が低下するという問題があった。
【0014】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、多重効用造水装置において、バンドルで発生した蒸気流を制御して、伝熱管表面のドライスポットの発生を抑制することができ、これによって熱伝達を低下させることなく、また発生蒸気流によるバンドルの圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を低減させることができ、さらに、伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができる、多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、請求項1の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムの発明は、多段多列の水平状伝熱管よりなる伝熱管束と、伝熱管束の左右両外側に垂直状に配設された蒸気制御用板とを具備するバンドルが、各効用に設けられている多重効用造水装置において、各効用のバンドルの高さの中間部に少なくとも1つの中間蒸気逃がし用空間部が設けられるとともに、中間蒸気逃がし用空間部の左右両側の垂直状蒸気制御用板に、中間蒸気逃がし用開口部がそれぞれ設けられて、バンドルが上下に分割されており、左右両中間蒸気逃がし用開口部の上端に、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部の幅手方向中間部に、少なくとも一対のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板が設けられていることを特徴としている。
【0017】
請求項3の発明は、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板の下側に、流下ブライン拡散用空間部が設けられていることを特徴としている。
【0018】
請求項4の発明は、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板の真上の伝熱管段において、該伝熱管段を構成する伝熱管のうち左右両外側に位置する伝熱管がそれぞれ除かれて、蒸気流通用空隙部が形成されていることを特徴としている。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部の左右両側の中間蒸気逃がし用開口部の下端に、流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0020】
請求項6の発明は、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドル中最も下側に位置する中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板より下側において、伝熱管束の左右両外側の垂直状蒸気制御用板が除かれて、上記中間蒸気逃がし用空間部より下側の伝熱管束部分の左右両側が外方に向かって開放されていることを特徴としている。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、各効用のバンドルの高さの中間部に設けられた中間蒸気逃がし用空間部が、水平状であることを特徴としている。
【0022】
請求項8の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、各効用のバンドルの高さの中間部に設けられた中間蒸気逃がし用空間部が、横断面V字状であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムの発明は、多段多列の水平状伝熱管よりなる伝熱管束と、伝熱管束の左右両外側に垂直状に配設された蒸気制御用板とを具備するバンドルが、各効用に設けられている多重効用造水装置において、各効用のバンドルの高さの中間部に少なくとも1つの中間蒸気逃がし用空間部が設けられるとともに、中間蒸気逃がし用空間部の左右両側の垂直状蒸気制御用板に、中間蒸気逃がし用開口部がそれぞれ設けられて、バンドルが上下に分割されており、左右両中間蒸気逃がし用開口部の上端に、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板がそれぞれ設けられていることを特徴とするもので、請求項1の発明によれば、多重効用造水装置において、バンドルで発生した蒸気流を制御して、伝熱管表面のドライスポットの発生を抑制することができ、これによって熱伝達を低下させることなく、また発生蒸気流によるバンドルの圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を低減させることができ、さらに、伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるという効果を奏する。
【0024】
請求項2の発明は、請求項1に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部の幅手方向中間部に、少なくとも一対のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板が設けられていることを特徴とするもので、請求項2の発明によれば、多重効用造水装置において、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた流下ブライン流路規制用傾斜案内板によって流下ブラインの流路を規制して蒸気流への同伴を抑制することができて、伝熱管表面のドライスポットの発生をさらに抑制することができ、これによって熱伝達を低下させることなく、また伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるという効果を奏する。
【0025】
請求項3の発明は、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板の下側に、流下ブライン拡散用空間部が設けられていることを特徴とするもので、請求項3の発明によれば、多重効用造水装置において、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた流下ブライン流路規制用傾斜案内板の下側の流下ブライン拡散用空間部の存在によって、流下ブラインをバンドル内で拡散して通過させることができ、これによって伝熱管表面のドライスポットの発生をさらに抑制することができて、熱伝達を低下させることなく、また伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるという効果を奏する。
【0026】
請求項4の発明は、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板の真上の伝熱管段において、該伝熱管段を構成する伝熱管のうち左右両外側に位置する伝熱管がそれぞれ除かれて、蒸気流通用空隙部が形成されていることを特徴とするもので、請求項4の発明によれば、多重効用造水装置において、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた流下ブライン流路規制用傾斜案内板の真上の伝熱管段の左右両外側に形成された蒸気流通用空隙部の存在によって蒸気流が通過しやすくなり、これによってバンドルの圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を低減させることができ、造水効率を高めることができるという効果を奏する。
【0027】
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部の左右両側の中間蒸気逃がし用開口部の下端に、流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板がそれぞれ設けられていることを特徴とするもので、請求項5の発明によれば、多重効用造水装置において、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部の左右両側の中間蒸気逃がし用開口部上端に設けられた流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板と、同開口部下端に設けられた流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板とで、流下ブラインの飛散流出を確実に抑制することができ、これによって流下ブラインを流出させることなく、また伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるという効果を奏する。
【0028】
請求項6の発明は、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドル中最も下側に位置する中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板より下側において、伝熱管束の左右両外側の垂直状蒸気制御用板が除かれて、上記中間蒸気逃がし用空間部より下側の伝熱管束部分の左右両側が外方に向かって開放されていることを特徴とするもので、請求項6の発明によれば、多重効用造水装置において、発生蒸気流によるバンドルの圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を低減させることができ、さらに伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるという効果を奏する。
【0029】
請求項7の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、各効用のバンドルの高さの中間部に設けられた中間蒸気逃がし用空間部が、水平状であることを特徴とするもので、請求項7の発明によれば、水平に伝熱管を間引くため、伝熱面積の減少を最小にできるという効果を奏する。
【0030】
請求項8の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、各効用のバンドルの高さの中間部に設けられた中間蒸気逃がし用空間部が、横断面V字状であることを特徴とするもので、請求項8の発明によれば、V字状に伝熱管を間引くため、水平上に間引くよりもブラインが重力の効果により流下しやすくなり、ブラインの飛散を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】多重効用造水装置の一例を示すフロー図である。
【図2】本発明の多重効用造水装置の第1実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。
【図3】図2のバンドルの中間蒸気逃がし用空間部(分割部)の要部拡大断面図である。
【図4】図2のバンドルの伝熱管の配置状態を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の多重効用造水装置の第2実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。
【図6】本発明の多重効用造水装置の第3実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。
【図7】本発明の多重効用造水装置の第4実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。
【図8】本発明の多重効用造水装置の第5実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。
【図9】本発明の多重効用造水装置の第6実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。
【図10】本発明の多重効用造水装置の第7実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。
【図11】本発明の第1実施形態の多重効用造水装置におけるバンドル上端からの積算圧力損失を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
図2と図3は、本発明の多重効用造水装置の第1実施形態を示すものである。
【0034】
同図を参照すると、多重効用造水装置は、多段多列の水平状伝熱管(3)よりなる伝熱管束(2)と、伝熱管束(2)の左右両外側に垂直状に配設された蒸気制御用板(4)とを具備するバンドル(1)が、各効用に設けられている。
【0035】
補給海水は、第一効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)に対し、バンドル(1)頂部に設けられたスプレイノズル(10)から散布され、散布されたブライン(海水)は重力により各伝熱管(3)の外側を流下する。
【0036】
一方、第一効用に供給された過熱蒸気は伝熱管束(2)の各伝熱管(3)内に流れこみ、管外を流下する海水を加熱、蒸発させ、自身は凝縮して生産水となる。伝熱管(3)外で発生した蒸気はデミスタを通過して次効用に送り込まれ、次効用の熱源として使われる。この操作は、第一効用から最終効用まで繰り返し起こる。多重効用造水装置の各効用は、補給海水が沸騰するように減圧されており、第一効用から最終効用まで順次圧力が低くなっている。
【0037】
多重効用造水装置においては、各効用のバンドル(1)の上方からスプレイノズル(10)で海水を伝熱管束(2)上に降らしているため、バンドル(1)内で発生した蒸気は、ブラインの重力による流れに同伴されかつ伝熱管束(2)の左右両外側の蒸気制御用板(4)に規制されて、下方に向かって流れ、すべての蒸気がバンドル(1)の下端部から流出する。従って、バンドル(1)下部では、発生蒸気流の流速が大きくなるため、バンドル(1)の圧力損失の増大が懸念される。
【0038】
本発明による多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムにおいては、各効用のバンドル(1)の高さの中間部に少なくとも1つの中間蒸気逃がし用空間部(分割部)(5)が設けられるとともに、中間蒸気逃がし用空間部(分割部)(5)の左右両側の垂直状蒸気制御用板(4)に、中間蒸気逃がし用開口部(6)がそれぞれ設けられて、バンドル(1)が上下に分割されている。なお、この第1実施形態では、各効用のバンドル(1)の高さの中間部に設けられた中間蒸気逃がし用空間部(5)が水平状となされている。
【0039】
このように、本発明によれば、バンドル(1)上部で発生した蒸気の一部は、バンドル(1)下部に流れずに、中間蒸気逃がし用開口部(6)からバンドル(1)外に流れて、次効用に流入する。そのため、バンドル(1)下部では蒸気流量が小さくなり、バンドル(1)の圧力損失を低下させることが可能となる。
【0040】
ここで、多重効用造水装置の効用の数は、例えば通常、3〜10、好ましくは4〜8であり、また各効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)における伝熱管(3)の設置段数は、例えば通常、50〜200段、好ましくは70〜160段であり、また各段の伝熱管(3)の設置列数は、例えば通常、30〜200列、好ましくは50〜200列である。
【0041】
各効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)における伝熱管(3)の設置段数が50段未満であれば、図11に示すように圧力損失は500[Pa]以下になる。この値を温度換算すると0.3[℃]程度になる。段間温度差は3[℃]程度であり、圧力損失はその10%程度になるため、発生蒸気流による圧力損失は問題にならないほど小さいので、中間蒸気逃がし用開口部(6)は必ずしも必要ではない。
【0042】
また、中間蒸気逃がし用開口部を設けた場合、段数の限界は海水液膜流れの液切れによって支配されるようになる。基本的に海水液膜流量を増やせばいくらでも段数を増やすことができるが、海水液膜流量を増やし液膜が厚くなりすぎると伝熱性能が低下する問題もあり、最高でも200段程度である。
【0043】
設置列数に関して、各効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)における伝熱管(3)の設置列数が少ない場合でも、発生蒸気流による圧力損失が大きい場合には中間蒸気逃がし用開口部は設置したほうがよい。
【0044】
また、設置列数が200列を超えると、中間蒸気逃がし用開口部(6)を設けても圧力損失が増大して段間の温度ロスが大きくなるため、好ましくない。
【0045】
バンドル(1)における蒸気の蒸発(凝縮)量は、下記式で表される。
【0046】
M=〔K(Tc−Ts)A〕/L
式中、M:蒸発(凝縮)量[kg/s]、K:熱通過率[W/m2K]、Tc:凝縮温度[K]、Ts:蒸発温度[K]、A:伝熱面積[m2]、L:凝縮潜熱[J/kg]である。
【0047】
Ts,Tcは効用によって異なり、数値を限定するのは適当ではないと考えられる。しかし、蒸発に寄与する温度差ΔT=Tc−TsはおよそΔT=3[K]程度なので、1つの例として、
M=〔K(Tc−Ts)A〕/L
ここで、例えばΔT=Tc−Ts=3[K]とする。
【0048】
この式より明らかなように、蒸発(凝縮)量Mは、伝熱面積Aに比例する。そのため、伝熱面積Aの減少は蒸発(凝縮)量の低下を招き、造水性能が低下することになる。造水性能を低下させないためには、伝熱面積Aを減少させることなく圧力損失を抑制することが重要である。
【0049】
ところで、多重効用造水装置においては、一般に、ブラインの蒸発に寄与する正味の温度差は、各効用(ステージ)間の温度差から伝熱管内側の温度損失・伝熱管外側の温度損失・沸点上昇・その他の損失を差し引いた値に相当する。そのため、伝熱管外側の圧力損失を低減させることは、正味の伝熱温度差を大きくできることを意味し、凝縮量が増加する利点がある。
【0050】
なお、各効用の伝熱管束(2)の各伝熱管(3)の外面には、ブラインの液膜流れが形成される。そして、バンドル(1)の下部ほどブラインの蒸発のため液膜流量が小さくなるため、水平状伝熱管(3)の左右両端部に表面乾き部分(ドライスポット)が発生することが懸念される。このようなドライスポットが発生すると、相変化が起こらず、熱伝達効率が低下するだけでなく、伝熱管(3)表面へのスケールの付着も懸念される。そのため、極力、ドライスポットの発生を抑制することが重要である。
【0051】
上記において、バンドル(1)に供給したブラインが、中間蒸気逃がし用開口部(6)からバンドル(1)外に流出する蒸気流に同伴してバンドル(1)外に流出すると、液切れを起こし、ドライスポットの発生が懸念される。そのため、ブラインはバンドル(1)外に流出させずにバンドル(1)下部に供給する必要がある。
【0052】
そこで、本発明では、左右両中間蒸気逃がし用開口部(6)の上端に、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)がそれぞれ設けられており、これによって、ブラインは開口部(6)からバンドル(1)外に流出することなく、バンドル(1)下部に供給することができる。
【0053】
以上のように、本発明による多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムにおいては、バンドル(1)内で発生した蒸気の一部を中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)の左右両側の中間蒸気逃がし用開口部(6)からバンドル(1)外に流出させ、ブラインは流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)により適切にバンドル(1)下部に供給することによって、圧力損失増大を抑制し且つ液膜偏流を解消することができる。
【0054】
また、本発明においては、多重効用造水装置の各効用のバンドル(1)の高さの中間部に少なくとも1つの中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられ、この中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の幅手方向中間部に、少なくとも一対のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8)が設けられているのが好ましい。
【0055】
このような流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8)を、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)に設けることによって、流下ブラインの流路を規制して蒸気流への同伴を抑制することができて、伝熱管(3)表面のドライスポットの発生をさらに抑制することができ、これによって熱伝達を低下させることなく、また発生蒸気流によるバンドル(1)の圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を低減させることができ、さらに、伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるものである。
【0056】
ここで、図3と図4に詳しく示すように、多重効用造水装置の効用のバンドル(1)の高さの中間部において、伝熱管束(2)の例えばn段目に相当する部分に、中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられ、該水平状空間部(5)の左右両側の垂直状蒸気制御用板(4)に中間蒸気逃がし用開口部(6)がそれぞれ設けられた場合、開口部(6)の幅Lは次式によって決定することができる。なお、図4において、Dは伝熱管(3)の管径、Pは伝熱管(3)の水平方向のピッチ(横ピッチ)、Yは伝熱管(3)の垂直方向のピッチ(縦ピッチ)である。
【0057】
nY+2(Y−D)−D≦L≦nY+2(Y−D)
ここで、中間蒸気逃がし用開口部(6)の幅Lの上限値は、抜管段数nに管の縦ピッチYを掛け、さらに管の縦隙間幅2(Y−D)を足すと管n段分の長さと上下の管隙間を足して上下幅に余裕を見ることになると考え、決定した。
【0058】
さらに、最小隙間幅は上限値式に管の直径Dを引いた値である。
【0059】
具体的には、多重効用造水装置の効用のバンドル(1)の高さの中間部において、伝熱管束(2)の例えば1段分を抜管する場合、中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられ、伝熱管(3)の管径Dが25.4mmとした場合に、伝熱管(3)の垂直方向のピッチ(縦ピッチ)Yとすると、該水平状空間部(5)の左右両側の垂直状蒸気制御用板(4)に設けられた中間蒸気逃がし用開口部(6)の幅Lは、つぎのようになる。
【0060】
Y+2(Y−25.4)−25.4≦L≦Y+2(Y−25.4)
(3Y−76.2)mm≦L≦(3Y−50.8)mm
となる。
【0061】
また、図3に示すように、本発明による多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムにおいては、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)の左右両中間蒸気逃がし用開口部(6)の上端に設けられた流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)の幅l1および角度θ1、並びに中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の幅手方向中間部に設けられた左右一対ずつ2組のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)(8b)の幅l2、l3および角度θ2、θ3は、多重効用造水装置の運転状態により、それぞれ可変とする。
【0062】
ここで、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)の幅l1は、例えば5〜40.4mm、好ましくは14.3〜40.4mmである。同傾斜案内板(7)の角度θ1は、例えば10〜75°、好ましくは15〜60°である。
【0063】
また、中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の幅手方向中間部に設けられた左右一対ずつ2組のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)(8b)のうち、内側の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)の幅l3は、例えば5〜180mm、好ましくは10〜150mmである。同傾斜案内板(8a)の角度θ3は、例えば10〜90°、好ましくは15〜75°である。これに対し、外側傾斜案内板(8b)の幅l2は、例えば5〜180mm、好ましくは10〜150mmである。同傾斜案内板(8b)の角度θ2は、例えば10〜90°、好ましくは15〜75°である。
【0064】
なお、流下ブラインや蒸気の通過抵抗を考慮すると、傾斜案内板(7)(8a)(8b)のうち、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)の角度θ1が最も小さく、ついで、バンドル中央寄りの内側の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)の角度θ3が小さく、これより外側の傾斜案内板(8b)の角度θ3が順に大きくなるように、設定するのが好ましい。また図2と図3に示すように、内外の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)(8b)は、バンドル(1)中央を中心軸として、いわゆる線対称のかたちに配置されているのが好ましい。
【0065】
また、図示の実施形態では、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の幅手方向中間部に、バンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8)が左右一対ずつ2組設けられているが、これらの傾斜案内板(8)の取付数は、特に限定されず、各効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)における各段の伝熱管(3)の設置列数によって増減されるものである。
【0066】
図5は、本発明の多重効用造水装置の第2実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。この第2実施形態において、上記第1実施形態の場合と異なる点は、各効用のバンドル(1)の高さの中間部に、所定間隔をおいて2つの中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)(5)が設けられている点にある。
【0067】
この場合、例えば多重効用造水装置の効用の各効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)における伝熱管(3)の設置段数が150段であるとき、上から1番目の中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)は80段目に設けられ、2番目の中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)は120段目に設けられるものである。
【0068】
なお、本発明の第2実施形態において、その他の点は、上記本発明の第1実施形態の場合と同様であるので、図面において同一のものには、同一の符号を付した。
【0069】
また図示は省略したが、多重効用造水装置の各効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)における伝熱管(3)の設置段数によっては、各効用のバンドル(1)の高さの中間部に、3〜5つの中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられる場合もある。
【0070】
上記のように、多重効用造水装置の各効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)における伝熱管(3)の設置段数が高い場合には、圧力損失と液膜偏流のバランスが最適になるように蒸気を流出させるため、各効用のバンドル(1)の高さの中間部に、2〜5つの中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられる構成も可能とする。
【0071】
図6は、本発明の多重効用造水装置の第3実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。この第3実施形態において、上記第1実施形態の場合と異なる点は、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8)の下側に、流下ブライン拡散用水平状空間部(5a)が設けられている点にある。このように、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)を広くした実施形態で、設計条件によりバンドル(1)の適切な分割高さを決定できるものとする。
【0072】
本発明の第3実施形態によれば、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)に設けられた流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8)の下側の流下ブライン拡散用水平状空間部(5a)の存在によって、流下ブラインをバンドル(1)内で拡散して通過させることができ、これによって伝熱管(3)表面のドライスポットの発生をさらに抑制することができて、熱伝達を低下させることなく、また発生蒸気流によるバンドルの圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を低減させることができ、さらに、伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるという利点がある。
【0073】
図7は、本発明の多重効用造水装置の第4実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。この第4実施形態において、上記第1実施形態の場合と異なる点は、多重効用造水装置における各効用のバンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8)の真上の伝熱管段において、該伝熱管段を構成する伝熱管(3)のうち左右両外側に位置する伝熱管(3)がそれぞれ除かれて、蒸気流通用空隙部が形成されている点にある。
【0074】
本発明の第4実施形態によれば、各効用のバンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の左右両中間蒸気逃がし用開口部(6)から蒸気がより外部に流出しやすく、またブライン(海水)流れをより均一にするため、条件によってはこのような構成とするのが好ましい。
【0075】
図8は、本発明の多重効用造水装置の第5実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。この第5実施形態において、上記第1実施形態の場合と異なる点は、多重効用造水装置における各効用のバンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の左右両側の中間蒸気逃がし用開口部(6)の下端に、流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板(9)がそれぞれ設けられている点にある。
【0076】
ここで、流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板(9)の幅は、中間蒸気逃がし用開口部(6)の幅をLとした場合、0.5L以下であることが好ましい。また、流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板(9)の角度θは0〜90°、好ましくは15〜75°である。
【0077】
本発明の第5実施形態によれば、多重効用造水装置において、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の左右両側の中間蒸気逃がし用開口部(6)上端に設けられた流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)と、同開口部(6)下端に設けられた流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板カ国とで、流下ブラインの飛散流出を確実に防止することができ、これによって流下ブラインを流出させることなく、また発生蒸気流によるバンドルの圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を低減させることができ、さらに伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるという利点がある。
【0078】
図9は、本発明の多重効用造水装置の第6実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。この第6実施形態において、上記第1実施形態の場合と異なる点は、多重効用造水装置における各効用のバンドル(1)中、最も下側に位置する中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8)より下側において、伝熱管束(2)の左右両外側の垂直状蒸気制御用板(4)が除かれて、上記中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)より下側の伝熱管束(2)部分の左右両側が外方に向かって開放されている点にある。
【0079】
多重効用造水装置における各効用のバンドル(1)中、最も下側に位置する中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)では、発生蒸気の大半が流出し、ブライン(海水)流れは、傾斜状案内板(7)(8)により分布が平滑化されるため、バンドル下部では、バンドル上部に比べてブライン(海水)の偏流が少なくなり、従って、バンドル(1)下部において伝熱管束(2)の左右両外側の垂直状蒸気制御用板(4)を設置しなくてもよい場合には、このような構造とする。これにより、多重効用造水装置において、発生蒸気流によるバンドルの圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を大幅に低減させることができ、さらに伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるという利点がある。
【0080】
図10は、本発明の多重効用造水装置の第7実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。この第7実施形態において、上記第1実施形態の場合と異なる点は、多重効用造水装置における各効用のバンドル(1)の高さの中間部に設けられた中間蒸気逃がし用空間部(5)が、横断面V字状となされている点にある。
【0081】
本発明の第7実施形態によれば、中間蒸気逃がし用空間部(5)を横断面V字状とすることにより、ブライン(海水)は蒸気流に同伴されにくく、重力により下部に流れやすくなり、蒸気の上気流に同伴される海水が少なくなり、バンドル(1)下部に効率的にブライン(海水)を供給することができる。一方、蒸気流は上方に流れやすくなって、中間蒸気逃がし用空間部(5)の左右両側の中間蒸気逃がし用開口部(6)から外部に流出しやすく、また同伴される海水が少なくなって、外部に飛散しにくくなるという利点がある。
【0082】
なお、本発明の第7実施形態において、その他の点は、上記本発明の第1実施形態の場合と同様であるので、図面において同一のものには、同一の符号を付した。
【0083】
また、本発明の第7実施形態の横断面V字状の中間蒸気逃がし用空間部(5)を有するバンドル(1)に対しても、上記第2〜第6実施形態の構成を、同様に付加することができるものである。
【実施例】
【0084】
つぎに、本発明の実施例を比較例と共に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
実施例1
図2〜図4に示す本発明による多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムの第1実施形態に基づいて、本発明を実施した。
【0086】
この実施例においては、多重効用造水装置の効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)の管段数を100段とした。そして、バンドル(1)の上端から70段目に相当するバンドル高さの中間部に、1つの中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられるとともに、中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)の左右両側の垂直状蒸気制御用板(4)に、中間蒸気逃がし用開口部(6)がそれぞれ設けられて、バンドル(1)が上下に分割されている。
【0087】
また、本実施例では、左右両中間蒸気逃がし用開口部(6)の上端に、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)がそれぞれ設けられている。
【0088】
さらに、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の幅手方向中間部に、左右一対ずつ2組のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)(8b)が設けられている。
【0089】
本実施例における多重効用造水装置の効用のバンドル(1)の実験条件は、下記の通とした。
【0090】
伝熱管束の各段の管列数:20
伝熱管長:5[m]
伝熱管径D:0.025[m]
伝熱管水平方向ピッチP:1.3D
メイクアップブライン流量:100[kg/s]
蒸発温度:70[℃]
凝縮温度:73[℃]
バンドル熱通過率:5000[W/m2K]
ここで、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)における左右両中間蒸気逃がし用開口部(6)の幅Lは、下記式より計算すると、つぎのようになる。
【0091】
nY+2(Y−D)−D≦L≦nY+2(Y−D)
すなわち、多重効用造水装置の効用のバンドル(1)の高さの中間部において、伝熱管束(2)の例えば70段目に相当する部分に1段分の抜管をする場合、中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられ、伝熱管(3)の管径Dが25.4mm、伝熱管(3)の垂直方向のピッチ(縦ピッチ)Yが28.6mmとすると、該水平状空間部(5)の左右両側の垂直状蒸気制御用板(4)に設けられた中間蒸気逃がし用開口部(6)の幅Lは、つぎのようになる。
【0092】
28.6+2(28.6−25.4)−25.4≦L≦28.6+2(28.6−25.4)
9.6mm≦L≦35mm
従って、この実施例においては、左右両中間蒸気逃がし用開口部(6)の幅Lを、28.6mmに設定した。
【0093】
また、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)の幅l1および角度θ1、並びに中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の幅手方向中間部に設けられた左右一対ずつ2組のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)(8b)の幅l3、l3および角度θ2、θ3は、多重効用造水装置の運転状態により、それぞれ可変とされるが、この実施例においては、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)の幅l1を、20.2mm、同傾斜案内板(7)の角度θ1を、45°とした。
【0094】
さらに、中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の幅手方向中間部に設けられた左右一対ずつ2組のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)(8b)のうち、内側の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)の幅l3を、30mm、同傾斜案内板(8a)の角度θ3を、50°とし、外側傾斜案内板(8b)の幅l2を、30mm、同傾斜案内板(8b)の角度θ2を、60°とした。ここで、流下ブラインや蒸気の通過抵抗を考慮して、傾斜案内板(7)(8a)(8b)のうち、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)の角度θ1が最も小さく、ついで、バンドル中央寄りの内側の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)の角度θ3が小さく、これより外側の傾斜案内板(8b)の角度θ2が順に大きくなるように設定した。また図2と図3に示すように、内外の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)(8b)は、バンドル(1)中央を中心軸として、いわゆる線対称のかたちに配置した。
【0095】
本実施例の多重効用造水装置においては、各効用のバンドル(1)の上方から
スプレイノズル(10)でブライン(海水)を伝熱管束(2)上に降らしているため、バンドル(1)内で発生した蒸気は、ブラインの重力による流れに同伴されかつ伝熱管束(2)の左右両外側の蒸気制御用板(4)に規制されて、下方に向かって流れる。本発明による多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムにおいては、各効用のバンドル(1)の上端から70段目に相当するバンドル高さの中間部に、1つの中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられるとともに、中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)の左右両側の垂直状蒸気制御用板(4)に、中間蒸気逃がし用開口部(6)がそれぞれ設けられて、バンドル(1)が上下に分割されており、従って、バンドル(1)上部で発生した蒸気の一部は、バンドル(1)下部に流れずに、中間蒸気逃がし用開口部(6)からバンドル(1)外に流れて、次効用に流入する。そのため、バンドル(1)下部では蒸気流量が減少して、バンドル(1)の圧力損失を低下させることが可能となる。
【0096】
また、左右両中間蒸気逃がし用開口部(6)の上端に設けられた流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)によって、ブライン(海水)は開口部(6)からバンドル(1)外に流出することなく、バンドル(1)下部に供給することができる。
【0097】
さらに、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)に設けられた左右一対ずつ2組の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)(8b)によって流下ブラインの流路を規制して蒸気流への同伴を抑制することができて、伝熱管(3)表面のドライスポットの発生をさらに抑制することができ、これによって熱伝達を低下させることなく、また伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができる。
【0098】
図11に、本実施例におけるバンドル(1)上端からの積算圧力損失を示す。計算条件は実機を想定し、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)における左右両中間蒸気逃がし用開口部(6)から発生蒸気の70%が流出するものと仮定して、管群の圧力損失を与えるクヌーセン(Knudsen)の式を用いて計算を行った。図11に示すように、発生蒸気流によりバンドル(1)の下部に至るほど、圧力損失が増大するが、本システムによれば、各効用のバンドル(1)の上端から70段目に相当するバンドル高さの中間部に、1つの中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられるとともに、中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)の左右両側の垂直状蒸気制御用板(4)に、中間蒸気逃がし用開口部(6)がそれぞれ設けられて、バンドル(1)が上下に分割されており、従って、バンドル(1)上部で発生した蒸気の70%が、バンドル(1)下部に流れずに中間蒸気逃がし用開口部(6)からバンドル(1)外に流れて、次効用に流入する。そのため、図11に示すように、バンドル(1)下部では蒸気流量が減少して、バンドル(1)の圧力損失を低下させることができるものである。
【0099】
なお、上記実施例1において例示したものは、あくまでも一例であり、多重効用造水装置の効用のバンドル(1)の高さの中間部に中間蒸気逃がし用空間部(分割部)(5)を適切に設定することにより、多重効用造水装置の各効用の条件ごとに最適な圧力損失になるようにすることが可能である。
【0100】
比較例1
比較のために、本発明の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムを用いることなく、多重効用造水装置の効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)の管段数を100段として、従来法により、造水実験を行なった。実験条件は、上記実施例1の場合と同様とした。
【0101】
この比較例1の多重効用造水装置においては、各効用のバンドル(1)の上方からスプレイノズル(10)でブライン(海水)を伝熱管束(2)上に降らしているため、バンドル(1)内で発生した蒸気は、ブラインの重力による流れに同伴されかつ伝熱管束(2)の左右両外側の蒸気制御用板(4)に規制されて、下方に向かって流れる。そのため、発生蒸気は全てバンドル(1)の下端部から流出した。
【0102】
ここで、比較例1におけるバンドル(1)上端からの積算圧力損失を、上記実施例1の場合と同様に、管群の圧力損失を与えるクヌーセン(Knudsen)の式を用いて計算を行い、得られた結果を、図11にあわせて示した。
【0103】
図11の結果から明らかなように、バンドル(1)の伝熱管束(2)による発生蒸気流により、バンドル(1)の下部に至るほど圧力損失が増大し、発生蒸気の全てが流出するバンドル(1)の下端部では、圧力損失が最大となった。
【符号の説明】
【0104】
1:バンドル
2:伝熱管束
3:伝熱管
4:垂直状蒸気制御用板
5:中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)
6:中間蒸気逃がし用開口部
7:流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板
8:流下ブライン流路規制用傾斜案内板
8a:流下ブライン流路規制用傾斜案内板
8b:流下ブライン流路規制用傾斜案内板
9:流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板
10:スプレイノズル
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水から淡水を造水するための多重効用造水装置(MED)における分割バンドルによる蒸気流制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の多重効用造水装置は、多段多列の水平状伝熱管よりなる伝熱管束を具備するバンドルが各効用に設けられており、各効用においてバンドルの伝熱管束に対し、その上方から海水が散布される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1に、従来の多重効用造水装置のフロー図を示す。一般に、多重効用造水装置において、補給海水は、第一効用のバンドルの伝熱管束に対し、上から散布され、散布されたブライン(海水)は重力により各伝熱管の外側を流下する。
【0004】
一方、第一効用に供給された過熱蒸気は伝熱管束の各伝熱管内に流れこみ、管外を流下する海水を加熱、蒸発させ、自身は凝縮して生産水となる。伝熱管外で発生した蒸気はデミスタを通過して次効用に送り込まれ、次効用の熱源として使われる。この操作は、第一効用から最終効用まで繰り返し起こる。
【0005】
多重効用造水装置の各効用は、補給海水が沸騰するように減圧されており、第一効用から最終効用まで順次圧力が低くなっている。
【0006】
ここで、各効用の伝熱管束の各伝熱管の外面には、ブラインの液膜流れが形成される。そして、バンドルの下部ほどブラインの蒸発のため液膜流量が小さくなるため、水平状伝熱管の左右両端部に表面乾き部分(ドライスポット)が発生することが懸念される。このようなドライスポットが発生すると、相変化が起こらず、熱伝達効率が低下するだけでなく、伝熱管表面へのスケールの付着も懸念される。そのため、極力、ドライスポットの発生を抑制することが重要である。
【0007】
一般に、多重効用造水装置の各効用のバンドルにおいて発生した蒸気は、バンドルから水平方向に流出するため、蒸気の流出に伴って、バンドルから水平方向への飛散ブラインが生じる。また発生した蒸気流の影響により、流下するブラインの液膜に偏流が生じるため、バンドル下部において伝熱管表面に液膜が供給されにくくなり、そのために、ドライスポットが発生しやすくなるという問題があった。
【0008】
そこで、下記の特許文献2では、各効用のバンドルの伝熱管束の左右両外側に蒸気制御用板が垂直状に配設されて、ブラインの液膜流れと同方向(重力方向)に蒸気を流出させることで、ドライスポットの発生を抑制することが提案されている。
【0009】
このように、各効用のバンドルの伝熱管束の左右両外側に蒸気制御用板を配設することにより、蒸気はバンドル下端部から流出するため、伝熱管表面における液膜の偏流は解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−198701号公報
【特許文献2】特開2010−162434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献2に記載の従来の多重効用造水装置によれば、各効用のバンドルの上方からスプレイで海水を伝熱管束上に降らしているため、バンドル内で発生した蒸気は、ブラインの重力による流れに同伴されかつ伝熱管束の左右両外側の蒸気制御用板に規制されて、下方に向かって流れ、すべての蒸気がバンドルの下端部から流出する。従って、バンドル下部では、発生蒸気流の流速が大きくなるため、バンドルの圧力損失の増大が懸念される。
【0012】
そこで、特許文献2では、このような圧力損失増大を抑制するために、バンドル下部の伝熱管の径を小さくしたり、バンドル下部の伝熱管の列数を少なくすることにより、圧力損失を低下させることが提案されている。
【0013】
しかし、特許文献2に記載のいずれの方法も、圧力損失増大を抑制することは可能であるが、伝熱面積が減少するために、造水効率が低下するという問題があった。
【0014】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、多重効用造水装置において、バンドルで発生した蒸気流を制御して、伝熱管表面のドライスポットの発生を抑制することができ、これによって熱伝達を低下させることなく、また発生蒸気流によるバンドルの圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を低減させることができ、さらに、伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができる、多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、請求項1の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムの発明は、多段多列の水平状伝熱管よりなる伝熱管束と、伝熱管束の左右両外側に垂直状に配設された蒸気制御用板とを具備するバンドルが、各効用に設けられている多重効用造水装置において、各効用のバンドルの高さの中間部に少なくとも1つの中間蒸気逃がし用空間部が設けられるとともに、中間蒸気逃がし用空間部の左右両側の垂直状蒸気制御用板に、中間蒸気逃がし用開口部がそれぞれ設けられて、バンドルが上下に分割されており、左右両中間蒸気逃がし用開口部の上端に、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部の幅手方向中間部に、少なくとも一対のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板が設けられていることを特徴としている。
【0017】
請求項3の発明は、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板の下側に、流下ブライン拡散用空間部が設けられていることを特徴としている。
【0018】
請求項4の発明は、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板の真上の伝熱管段において、該伝熱管段を構成する伝熱管のうち左右両外側に位置する伝熱管がそれぞれ除かれて、蒸気流通用空隙部が形成されていることを特徴としている。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部の左右両側の中間蒸気逃がし用開口部の下端に、流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0020】
請求項6の発明は、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドル中最も下側に位置する中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板より下側において、伝熱管束の左右両外側の垂直状蒸気制御用板が除かれて、上記中間蒸気逃がし用空間部より下側の伝熱管束部分の左右両側が外方に向かって開放されていることを特徴としている。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、各効用のバンドルの高さの中間部に設けられた中間蒸気逃がし用空間部が、水平状であることを特徴としている。
【0022】
請求項8の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、各効用のバンドルの高さの中間部に設けられた中間蒸気逃がし用空間部が、横断面V字状であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムの発明は、多段多列の水平状伝熱管よりなる伝熱管束と、伝熱管束の左右両外側に垂直状に配設された蒸気制御用板とを具備するバンドルが、各効用に設けられている多重効用造水装置において、各効用のバンドルの高さの中間部に少なくとも1つの中間蒸気逃がし用空間部が設けられるとともに、中間蒸気逃がし用空間部の左右両側の垂直状蒸気制御用板に、中間蒸気逃がし用開口部がそれぞれ設けられて、バンドルが上下に分割されており、左右両中間蒸気逃がし用開口部の上端に、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板がそれぞれ設けられていることを特徴とするもので、請求項1の発明によれば、多重効用造水装置において、バンドルで発生した蒸気流を制御して、伝熱管表面のドライスポットの発生を抑制することができ、これによって熱伝達を低下させることなく、また発生蒸気流によるバンドルの圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を低減させることができ、さらに、伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるという効果を奏する。
【0024】
請求項2の発明は、請求項1に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部の幅手方向中間部に、少なくとも一対のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板が設けられていることを特徴とするもので、請求項2の発明によれば、多重効用造水装置において、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた流下ブライン流路規制用傾斜案内板によって流下ブラインの流路を規制して蒸気流への同伴を抑制することができて、伝熱管表面のドライスポットの発生をさらに抑制することができ、これによって熱伝達を低下させることなく、また伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるという効果を奏する。
【0025】
請求項3の発明は、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板の下側に、流下ブライン拡散用空間部が設けられていることを特徴とするもので、請求項3の発明によれば、多重効用造水装置において、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた流下ブライン流路規制用傾斜案内板の下側の流下ブライン拡散用空間部の存在によって、流下ブラインをバンドル内で拡散して通過させることができ、これによって伝熱管表面のドライスポットの発生をさらに抑制することができて、熱伝達を低下させることなく、また伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるという効果を奏する。
【0026】
請求項4の発明は、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板の真上の伝熱管段において、該伝熱管段を構成する伝熱管のうち左右両外側に位置する伝熱管がそれぞれ除かれて、蒸気流通用空隙部が形成されていることを特徴とするもので、請求項4の発明によれば、多重効用造水装置において、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた流下ブライン流路規制用傾斜案内板の真上の伝熱管段の左右両外側に形成された蒸気流通用空隙部の存在によって蒸気流が通過しやすくなり、これによってバンドルの圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を低減させることができ、造水効率を高めることができるという効果を奏する。
【0027】
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部の左右両側の中間蒸気逃がし用開口部の下端に、流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板がそれぞれ設けられていることを特徴とするもので、請求項5の発明によれば、多重効用造水装置において、バンドルの中間蒸気逃がし用空間部の左右両側の中間蒸気逃がし用開口部上端に設けられた流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板と、同開口部下端に設けられた流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板とで、流下ブラインの飛散流出を確実に抑制することができ、これによって流下ブラインを流出させることなく、また伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるという効果を奏する。
【0028】
請求項6の発明は、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、バンドル中最も下側に位置する中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板より下側において、伝熱管束の左右両外側の垂直状蒸気制御用板が除かれて、上記中間蒸気逃がし用空間部より下側の伝熱管束部分の左右両側が外方に向かって開放されていることを特徴とするもので、請求項6の発明によれば、多重効用造水装置において、発生蒸気流によるバンドルの圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を低減させることができ、さらに伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるという効果を奏する。
【0029】
請求項7の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、各効用のバンドルの高さの中間部に設けられた中間蒸気逃がし用空間部が、水平状であることを特徴とするもので、請求項7の発明によれば、水平に伝熱管を間引くため、伝熱面積の減少を最小にできるという効果を奏する。
【0030】
請求項8の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムであって、各効用のバンドルの高さの中間部に設けられた中間蒸気逃がし用空間部が、横断面V字状であることを特徴とするもので、請求項8の発明によれば、V字状に伝熱管を間引くため、水平上に間引くよりもブラインが重力の効果により流下しやすくなり、ブラインの飛散を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】多重効用造水装置の一例を示すフロー図である。
【図2】本発明の多重効用造水装置の第1実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。
【図3】図2のバンドルの中間蒸気逃がし用空間部(分割部)の要部拡大断面図である。
【図4】図2のバンドルの伝熱管の配置状態を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の多重効用造水装置の第2実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。
【図6】本発明の多重効用造水装置の第3実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。
【図7】本発明の多重効用造水装置の第4実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。
【図8】本発明の多重効用造水装置の第5実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。
【図9】本発明の多重効用造水装置の第6実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。
【図10】本発明の多重効用造水装置の第7実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。
【図11】本発明の第1実施形態の多重効用造水装置におけるバンドル上端からの積算圧力損失を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
図2と図3は、本発明の多重効用造水装置の第1実施形態を示すものである。
【0034】
同図を参照すると、多重効用造水装置は、多段多列の水平状伝熱管(3)よりなる伝熱管束(2)と、伝熱管束(2)の左右両外側に垂直状に配設された蒸気制御用板(4)とを具備するバンドル(1)が、各効用に設けられている。
【0035】
補給海水は、第一効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)に対し、バンドル(1)頂部に設けられたスプレイノズル(10)から散布され、散布されたブライン(海水)は重力により各伝熱管(3)の外側を流下する。
【0036】
一方、第一効用に供給された過熱蒸気は伝熱管束(2)の各伝熱管(3)内に流れこみ、管外を流下する海水を加熱、蒸発させ、自身は凝縮して生産水となる。伝熱管(3)外で発生した蒸気はデミスタを通過して次効用に送り込まれ、次効用の熱源として使われる。この操作は、第一効用から最終効用まで繰り返し起こる。多重効用造水装置の各効用は、補給海水が沸騰するように減圧されており、第一効用から最終効用まで順次圧力が低くなっている。
【0037】
多重効用造水装置においては、各効用のバンドル(1)の上方からスプレイノズル(10)で海水を伝熱管束(2)上に降らしているため、バンドル(1)内で発生した蒸気は、ブラインの重力による流れに同伴されかつ伝熱管束(2)の左右両外側の蒸気制御用板(4)に規制されて、下方に向かって流れ、すべての蒸気がバンドル(1)の下端部から流出する。従って、バンドル(1)下部では、発生蒸気流の流速が大きくなるため、バンドル(1)の圧力損失の増大が懸念される。
【0038】
本発明による多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムにおいては、各効用のバンドル(1)の高さの中間部に少なくとも1つの中間蒸気逃がし用空間部(分割部)(5)が設けられるとともに、中間蒸気逃がし用空間部(分割部)(5)の左右両側の垂直状蒸気制御用板(4)に、中間蒸気逃がし用開口部(6)がそれぞれ設けられて、バンドル(1)が上下に分割されている。なお、この第1実施形態では、各効用のバンドル(1)の高さの中間部に設けられた中間蒸気逃がし用空間部(5)が水平状となされている。
【0039】
このように、本発明によれば、バンドル(1)上部で発生した蒸気の一部は、バンドル(1)下部に流れずに、中間蒸気逃がし用開口部(6)からバンドル(1)外に流れて、次効用に流入する。そのため、バンドル(1)下部では蒸気流量が小さくなり、バンドル(1)の圧力損失を低下させることが可能となる。
【0040】
ここで、多重効用造水装置の効用の数は、例えば通常、3〜10、好ましくは4〜8であり、また各効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)における伝熱管(3)の設置段数は、例えば通常、50〜200段、好ましくは70〜160段であり、また各段の伝熱管(3)の設置列数は、例えば通常、30〜200列、好ましくは50〜200列である。
【0041】
各効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)における伝熱管(3)の設置段数が50段未満であれば、図11に示すように圧力損失は500[Pa]以下になる。この値を温度換算すると0.3[℃]程度になる。段間温度差は3[℃]程度であり、圧力損失はその10%程度になるため、発生蒸気流による圧力損失は問題にならないほど小さいので、中間蒸気逃がし用開口部(6)は必ずしも必要ではない。
【0042】
また、中間蒸気逃がし用開口部を設けた場合、段数の限界は海水液膜流れの液切れによって支配されるようになる。基本的に海水液膜流量を増やせばいくらでも段数を増やすことができるが、海水液膜流量を増やし液膜が厚くなりすぎると伝熱性能が低下する問題もあり、最高でも200段程度である。
【0043】
設置列数に関して、各効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)における伝熱管(3)の設置列数が少ない場合でも、発生蒸気流による圧力損失が大きい場合には中間蒸気逃がし用開口部は設置したほうがよい。
【0044】
また、設置列数が200列を超えると、中間蒸気逃がし用開口部(6)を設けても圧力損失が増大して段間の温度ロスが大きくなるため、好ましくない。
【0045】
バンドル(1)における蒸気の蒸発(凝縮)量は、下記式で表される。
【0046】
M=〔K(Tc−Ts)A〕/L
式中、M:蒸発(凝縮)量[kg/s]、K:熱通過率[W/m2K]、Tc:凝縮温度[K]、Ts:蒸発温度[K]、A:伝熱面積[m2]、L:凝縮潜熱[J/kg]である。
【0047】
Ts,Tcは効用によって異なり、数値を限定するのは適当ではないと考えられる。しかし、蒸発に寄与する温度差ΔT=Tc−TsはおよそΔT=3[K]程度なので、1つの例として、
M=〔K(Tc−Ts)A〕/L
ここで、例えばΔT=Tc−Ts=3[K]とする。
【0048】
この式より明らかなように、蒸発(凝縮)量Mは、伝熱面積Aに比例する。そのため、伝熱面積Aの減少は蒸発(凝縮)量の低下を招き、造水性能が低下することになる。造水性能を低下させないためには、伝熱面積Aを減少させることなく圧力損失を抑制することが重要である。
【0049】
ところで、多重効用造水装置においては、一般に、ブラインの蒸発に寄与する正味の温度差は、各効用(ステージ)間の温度差から伝熱管内側の温度損失・伝熱管外側の温度損失・沸点上昇・その他の損失を差し引いた値に相当する。そのため、伝熱管外側の圧力損失を低減させることは、正味の伝熱温度差を大きくできることを意味し、凝縮量が増加する利点がある。
【0050】
なお、各効用の伝熱管束(2)の各伝熱管(3)の外面には、ブラインの液膜流れが形成される。そして、バンドル(1)の下部ほどブラインの蒸発のため液膜流量が小さくなるため、水平状伝熱管(3)の左右両端部に表面乾き部分(ドライスポット)が発生することが懸念される。このようなドライスポットが発生すると、相変化が起こらず、熱伝達効率が低下するだけでなく、伝熱管(3)表面へのスケールの付着も懸念される。そのため、極力、ドライスポットの発生を抑制することが重要である。
【0051】
上記において、バンドル(1)に供給したブラインが、中間蒸気逃がし用開口部(6)からバンドル(1)外に流出する蒸気流に同伴してバンドル(1)外に流出すると、液切れを起こし、ドライスポットの発生が懸念される。そのため、ブラインはバンドル(1)外に流出させずにバンドル(1)下部に供給する必要がある。
【0052】
そこで、本発明では、左右両中間蒸気逃がし用開口部(6)の上端に、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)がそれぞれ設けられており、これによって、ブラインは開口部(6)からバンドル(1)外に流出することなく、バンドル(1)下部に供給することができる。
【0053】
以上のように、本発明による多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムにおいては、バンドル(1)内で発生した蒸気の一部を中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)の左右両側の中間蒸気逃がし用開口部(6)からバンドル(1)外に流出させ、ブラインは流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)により適切にバンドル(1)下部に供給することによって、圧力損失増大を抑制し且つ液膜偏流を解消することができる。
【0054】
また、本発明においては、多重効用造水装置の各効用のバンドル(1)の高さの中間部に少なくとも1つの中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられ、この中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の幅手方向中間部に、少なくとも一対のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8)が設けられているのが好ましい。
【0055】
このような流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8)を、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)に設けることによって、流下ブラインの流路を規制して蒸気流への同伴を抑制することができて、伝熱管(3)表面のドライスポットの発生をさらに抑制することができ、これによって熱伝達を低下させることなく、また発生蒸気流によるバンドル(1)の圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を低減させることができ、さらに、伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるものである。
【0056】
ここで、図3と図4に詳しく示すように、多重効用造水装置の効用のバンドル(1)の高さの中間部において、伝熱管束(2)の例えばn段目に相当する部分に、中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられ、該水平状空間部(5)の左右両側の垂直状蒸気制御用板(4)に中間蒸気逃がし用開口部(6)がそれぞれ設けられた場合、開口部(6)の幅Lは次式によって決定することができる。なお、図4において、Dは伝熱管(3)の管径、Pは伝熱管(3)の水平方向のピッチ(横ピッチ)、Yは伝熱管(3)の垂直方向のピッチ(縦ピッチ)である。
【0057】
nY+2(Y−D)−D≦L≦nY+2(Y−D)
ここで、中間蒸気逃がし用開口部(6)の幅Lの上限値は、抜管段数nに管の縦ピッチYを掛け、さらに管の縦隙間幅2(Y−D)を足すと管n段分の長さと上下の管隙間を足して上下幅に余裕を見ることになると考え、決定した。
【0058】
さらに、最小隙間幅は上限値式に管の直径Dを引いた値である。
【0059】
具体的には、多重効用造水装置の効用のバンドル(1)の高さの中間部において、伝熱管束(2)の例えば1段分を抜管する場合、中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられ、伝熱管(3)の管径Dが25.4mmとした場合に、伝熱管(3)の垂直方向のピッチ(縦ピッチ)Yとすると、該水平状空間部(5)の左右両側の垂直状蒸気制御用板(4)に設けられた中間蒸気逃がし用開口部(6)の幅Lは、つぎのようになる。
【0060】
Y+2(Y−25.4)−25.4≦L≦Y+2(Y−25.4)
(3Y−76.2)mm≦L≦(3Y−50.8)mm
となる。
【0061】
また、図3に示すように、本発明による多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムにおいては、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)の左右両中間蒸気逃がし用開口部(6)の上端に設けられた流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)の幅l1および角度θ1、並びに中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の幅手方向中間部に設けられた左右一対ずつ2組のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)(8b)の幅l2、l3および角度θ2、θ3は、多重効用造水装置の運転状態により、それぞれ可変とする。
【0062】
ここで、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)の幅l1は、例えば5〜40.4mm、好ましくは14.3〜40.4mmである。同傾斜案内板(7)の角度θ1は、例えば10〜75°、好ましくは15〜60°である。
【0063】
また、中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の幅手方向中間部に設けられた左右一対ずつ2組のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)(8b)のうち、内側の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)の幅l3は、例えば5〜180mm、好ましくは10〜150mmである。同傾斜案内板(8a)の角度θ3は、例えば10〜90°、好ましくは15〜75°である。これに対し、外側傾斜案内板(8b)の幅l2は、例えば5〜180mm、好ましくは10〜150mmである。同傾斜案内板(8b)の角度θ2は、例えば10〜90°、好ましくは15〜75°である。
【0064】
なお、流下ブラインや蒸気の通過抵抗を考慮すると、傾斜案内板(7)(8a)(8b)のうち、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)の角度θ1が最も小さく、ついで、バンドル中央寄りの内側の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)の角度θ3が小さく、これより外側の傾斜案内板(8b)の角度θ3が順に大きくなるように、設定するのが好ましい。また図2と図3に示すように、内外の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)(8b)は、バンドル(1)中央を中心軸として、いわゆる線対称のかたちに配置されているのが好ましい。
【0065】
また、図示の実施形態では、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の幅手方向中間部に、バンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8)が左右一対ずつ2組設けられているが、これらの傾斜案内板(8)の取付数は、特に限定されず、各効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)における各段の伝熱管(3)の設置列数によって増減されるものである。
【0066】
図5は、本発明の多重効用造水装置の第2実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。この第2実施形態において、上記第1実施形態の場合と異なる点は、各効用のバンドル(1)の高さの中間部に、所定間隔をおいて2つの中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)(5)が設けられている点にある。
【0067】
この場合、例えば多重効用造水装置の効用の各効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)における伝熱管(3)の設置段数が150段であるとき、上から1番目の中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)は80段目に設けられ、2番目の中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)は120段目に設けられるものである。
【0068】
なお、本発明の第2実施形態において、その他の点は、上記本発明の第1実施形態の場合と同様であるので、図面において同一のものには、同一の符号を付した。
【0069】
また図示は省略したが、多重効用造水装置の各効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)における伝熱管(3)の設置段数によっては、各効用のバンドル(1)の高さの中間部に、3〜5つの中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられる場合もある。
【0070】
上記のように、多重効用造水装置の各効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)における伝熱管(3)の設置段数が高い場合には、圧力損失と液膜偏流のバランスが最適になるように蒸気を流出させるため、各効用のバンドル(1)の高さの中間部に、2〜5つの中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられる構成も可能とする。
【0071】
図6は、本発明の多重効用造水装置の第3実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。この第3実施形態において、上記第1実施形態の場合と異なる点は、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8)の下側に、流下ブライン拡散用水平状空間部(5a)が設けられている点にある。このように、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)を広くした実施形態で、設計条件によりバンドル(1)の適切な分割高さを決定できるものとする。
【0072】
本発明の第3実施形態によれば、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)に設けられた流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8)の下側の流下ブライン拡散用水平状空間部(5a)の存在によって、流下ブラインをバンドル(1)内で拡散して通過させることができ、これによって伝熱管(3)表面のドライスポットの発生をさらに抑制することができて、熱伝達を低下させることなく、また発生蒸気流によるバンドルの圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を低減させることができ、さらに、伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるという利点がある。
【0073】
図7は、本発明の多重効用造水装置の第4実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。この第4実施形態において、上記第1実施形態の場合と異なる点は、多重効用造水装置における各効用のバンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8)の真上の伝熱管段において、該伝熱管段を構成する伝熱管(3)のうち左右両外側に位置する伝熱管(3)がそれぞれ除かれて、蒸気流通用空隙部が形成されている点にある。
【0074】
本発明の第4実施形態によれば、各効用のバンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の左右両中間蒸気逃がし用開口部(6)から蒸気がより外部に流出しやすく、またブライン(海水)流れをより均一にするため、条件によってはこのような構成とするのが好ましい。
【0075】
図8は、本発明の多重効用造水装置の第5実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。この第5実施形態において、上記第1実施形態の場合と異なる点は、多重効用造水装置における各効用のバンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の左右両側の中間蒸気逃がし用開口部(6)の下端に、流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板(9)がそれぞれ設けられている点にある。
【0076】
ここで、流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板(9)の幅は、中間蒸気逃がし用開口部(6)の幅をLとした場合、0.5L以下であることが好ましい。また、流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板(9)の角度θは0〜90°、好ましくは15〜75°である。
【0077】
本発明の第5実施形態によれば、多重効用造水装置において、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の左右両側の中間蒸気逃がし用開口部(6)上端に設けられた流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)と、同開口部(6)下端に設けられた流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板カ国とで、流下ブラインの飛散流出を確実に防止することができ、これによって流下ブラインを流出させることなく、また発生蒸気流によるバンドルの圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を低減させることができ、さらに伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるという利点がある。
【0078】
図9は、本発明の多重効用造水装置の第6実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。この第6実施形態において、上記第1実施形態の場合と異なる点は、多重効用造水装置における各効用のバンドル(1)中、最も下側に位置する中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8)より下側において、伝熱管束(2)の左右両外側の垂直状蒸気制御用板(4)が除かれて、上記中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)より下側の伝熱管束(2)部分の左右両側が外方に向かって開放されている点にある。
【0079】
多重効用造水装置における各効用のバンドル(1)中、最も下側に位置する中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)では、発生蒸気の大半が流出し、ブライン(海水)流れは、傾斜状案内板(7)(8)により分布が平滑化されるため、バンドル下部では、バンドル上部に比べてブライン(海水)の偏流が少なくなり、従って、バンドル(1)下部において伝熱管束(2)の左右両外側の垂直状蒸気制御用板(4)を設置しなくてもよい場合には、このような構造とする。これにより、多重効用造水装置において、発生蒸気流によるバンドルの圧力損失増大の懸念がなく、圧力損失を大幅に低減させることができ、さらに伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができるという利点がある。
【0080】
図10は、本発明の多重効用造水装置の第7実施形態を示すバンドル部分の拡大断面図である。この第7実施形態において、上記第1実施形態の場合と異なる点は、多重効用造水装置における各効用のバンドル(1)の高さの中間部に設けられた中間蒸気逃がし用空間部(5)が、横断面V字状となされている点にある。
【0081】
本発明の第7実施形態によれば、中間蒸気逃がし用空間部(5)を横断面V字状とすることにより、ブライン(海水)は蒸気流に同伴されにくく、重力により下部に流れやすくなり、蒸気の上気流に同伴される海水が少なくなり、バンドル(1)下部に効率的にブライン(海水)を供給することができる。一方、蒸気流は上方に流れやすくなって、中間蒸気逃がし用空間部(5)の左右両側の中間蒸気逃がし用開口部(6)から外部に流出しやすく、また同伴される海水が少なくなって、外部に飛散しにくくなるという利点がある。
【0082】
なお、本発明の第7実施形態において、その他の点は、上記本発明の第1実施形態の場合と同様であるので、図面において同一のものには、同一の符号を付した。
【0083】
また、本発明の第7実施形態の横断面V字状の中間蒸気逃がし用空間部(5)を有するバンドル(1)に対しても、上記第2〜第6実施形態の構成を、同様に付加することができるものである。
【実施例】
【0084】
つぎに、本発明の実施例を比較例と共に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
実施例1
図2〜図4に示す本発明による多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムの第1実施形態に基づいて、本発明を実施した。
【0086】
この実施例においては、多重効用造水装置の効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)の管段数を100段とした。そして、バンドル(1)の上端から70段目に相当するバンドル高さの中間部に、1つの中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられるとともに、中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)の左右両側の垂直状蒸気制御用板(4)に、中間蒸気逃がし用開口部(6)がそれぞれ設けられて、バンドル(1)が上下に分割されている。
【0087】
また、本実施例では、左右両中間蒸気逃がし用開口部(6)の上端に、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)がそれぞれ設けられている。
【0088】
さらに、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の幅手方向中間部に、左右一対ずつ2組のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)(8b)が設けられている。
【0089】
本実施例における多重効用造水装置の効用のバンドル(1)の実験条件は、下記の通とした。
【0090】
伝熱管束の各段の管列数:20
伝熱管長:5[m]
伝熱管径D:0.025[m]
伝熱管水平方向ピッチP:1.3D
メイクアップブライン流量:100[kg/s]
蒸発温度:70[℃]
凝縮温度:73[℃]
バンドル熱通過率:5000[W/m2K]
ここで、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)における左右両中間蒸気逃がし用開口部(6)の幅Lは、下記式より計算すると、つぎのようになる。
【0091】
nY+2(Y−D)−D≦L≦nY+2(Y−D)
すなわち、多重効用造水装置の効用のバンドル(1)の高さの中間部において、伝熱管束(2)の例えば70段目に相当する部分に1段分の抜管をする場合、中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられ、伝熱管(3)の管径Dが25.4mm、伝熱管(3)の垂直方向のピッチ(縦ピッチ)Yが28.6mmとすると、該水平状空間部(5)の左右両側の垂直状蒸気制御用板(4)に設けられた中間蒸気逃がし用開口部(6)の幅Lは、つぎのようになる。
【0092】
28.6+2(28.6−25.4)−25.4≦L≦28.6+2(28.6−25.4)
9.6mm≦L≦35mm
従って、この実施例においては、左右両中間蒸気逃がし用開口部(6)の幅Lを、28.6mmに設定した。
【0093】
また、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)の幅l1および角度θ1、並びに中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の幅手方向中間部に設けられた左右一対ずつ2組のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)(8b)の幅l3、l3および角度θ2、θ3は、多重効用造水装置の運転状態により、それぞれ可変とされるが、この実施例においては、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)の幅l1を、20.2mm、同傾斜案内板(7)の角度θ1を、45°とした。
【0094】
さらに、中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)の幅手方向中間部に設けられた左右一対ずつ2組のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)(8b)のうち、内側の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)の幅l3を、30mm、同傾斜案内板(8a)の角度θ3を、50°とし、外側傾斜案内板(8b)の幅l2を、30mm、同傾斜案内板(8b)の角度θ2を、60°とした。ここで、流下ブラインや蒸気の通過抵抗を考慮して、傾斜案内板(7)(8a)(8b)のうち、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)の角度θ1が最も小さく、ついで、バンドル中央寄りの内側の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)の角度θ3が小さく、これより外側の傾斜案内板(8b)の角度θ2が順に大きくなるように設定した。また図2と図3に示すように、内外の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)(8b)は、バンドル(1)中央を中心軸として、いわゆる線対称のかたちに配置した。
【0095】
本実施例の多重効用造水装置においては、各効用のバンドル(1)の上方から
スプレイノズル(10)でブライン(海水)を伝熱管束(2)上に降らしているため、バンドル(1)内で発生した蒸気は、ブラインの重力による流れに同伴されかつ伝熱管束(2)の左右両外側の蒸気制御用板(4)に規制されて、下方に向かって流れる。本発明による多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムにおいては、各効用のバンドル(1)の上端から70段目に相当するバンドル高さの中間部に、1つの中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられるとともに、中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)の左右両側の垂直状蒸気制御用板(4)に、中間蒸気逃がし用開口部(6)がそれぞれ設けられて、バンドル(1)が上下に分割されており、従って、バンドル(1)上部で発生した蒸気の一部は、バンドル(1)下部に流れずに、中間蒸気逃がし用開口部(6)からバンドル(1)外に流れて、次効用に流入する。そのため、バンドル(1)下部では蒸気流量が減少して、バンドル(1)の圧力損失を低下させることが可能となる。
【0096】
また、左右両中間蒸気逃がし用開口部(6)の上端に設けられた流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板(7)によって、ブライン(海水)は開口部(6)からバンドル(1)外に流出することなく、バンドル(1)下部に供給することができる。
【0097】
さらに、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(5)に設けられた左右一対ずつ2組の流下ブライン流路規制用傾斜案内板(8a)(8b)によって流下ブラインの流路を規制して蒸気流への同伴を抑制することができて、伝熱管(3)表面のドライスポットの発生をさらに抑制することができ、これによって熱伝達を低下させることなく、また伝熱面積の減少による凝縮量の低下がなく、造水効率を高めることができる。
【0098】
図11に、本実施例におけるバンドル(1)上端からの積算圧力損失を示す。計算条件は実機を想定し、バンドル(1)の中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)における左右両中間蒸気逃がし用開口部(6)から発生蒸気の70%が流出するものと仮定して、管群の圧力損失を与えるクヌーセン(Knudsen)の式を用いて計算を行った。図11に示すように、発生蒸気流によりバンドル(1)の下部に至るほど、圧力損失が増大するが、本システムによれば、各効用のバンドル(1)の上端から70段目に相当するバンドル高さの中間部に、1つの中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)が設けられるとともに、中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)(5)の左右両側の垂直状蒸気制御用板(4)に、中間蒸気逃がし用開口部(6)がそれぞれ設けられて、バンドル(1)が上下に分割されており、従って、バンドル(1)上部で発生した蒸気の70%が、バンドル(1)下部に流れずに中間蒸気逃がし用開口部(6)からバンドル(1)外に流れて、次効用に流入する。そのため、図11に示すように、バンドル(1)下部では蒸気流量が減少して、バンドル(1)の圧力損失を低下させることができるものである。
【0099】
なお、上記実施例1において例示したものは、あくまでも一例であり、多重効用造水装置の効用のバンドル(1)の高さの中間部に中間蒸気逃がし用空間部(分割部)(5)を適切に設定することにより、多重効用造水装置の各効用の条件ごとに最適な圧力損失になるようにすることが可能である。
【0100】
比較例1
比較のために、本発明の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システムを用いることなく、多重効用造水装置の効用のバンドル(1)の伝熱管束(2)の管段数を100段として、従来法により、造水実験を行なった。実験条件は、上記実施例1の場合と同様とした。
【0101】
この比較例1の多重効用造水装置においては、各効用のバンドル(1)の上方からスプレイノズル(10)でブライン(海水)を伝熱管束(2)上に降らしているため、バンドル(1)内で発生した蒸気は、ブラインの重力による流れに同伴されかつ伝熱管束(2)の左右両外側の蒸気制御用板(4)に規制されて、下方に向かって流れる。そのため、発生蒸気は全てバンドル(1)の下端部から流出した。
【0102】
ここで、比較例1におけるバンドル(1)上端からの積算圧力損失を、上記実施例1の場合と同様に、管群の圧力損失を与えるクヌーセン(Knudsen)の式を用いて計算を行い、得られた結果を、図11にあわせて示した。
【0103】
図11の結果から明らかなように、バンドル(1)の伝熱管束(2)による発生蒸気流により、バンドル(1)の下部に至るほど圧力損失が増大し、発生蒸気の全てが流出するバンドル(1)の下端部では、圧力損失が最大となった。
【符号の説明】
【0104】
1:バンドル
2:伝熱管束
3:伝熱管
4:垂直状蒸気制御用板
5:中間蒸気逃がし用水平状空間部(分割部)
6:中間蒸気逃がし用開口部
7:流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板
8:流下ブライン流路規制用傾斜案内板
8a:流下ブライン流路規制用傾斜案内板
8b:流下ブライン流路規制用傾斜案内板
9:流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板
10:スプレイノズル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段多列の水平状伝熱管よりなる伝熱管束と、伝熱管束の左右両外側に垂直状に配設された蒸気制御用板とを具備するバンドルが、各効用に設けられている多重効用造水装置において、各効用のバンドルの高さの中間部に少なくとも1つの中間蒸気逃がし用空間部が設けられるとともに、中間蒸気逃がし用空間部の左右両側の垂直状蒸気制御用板に、中間蒸気逃がし用開口部がそれぞれ設けられて、バンドルが上下に分割されており、左右両中間蒸気逃がし用開口部の上端に、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板がそれぞれ設けられていることを特徴とする、多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム。
【請求項2】
バンドルの中間蒸気逃がし用空間部の幅手方向中間部に、少なくとも一対のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム。
【請求項3】
バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板の下側に、流下ブライン拡散用空間部が設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム。
【請求項4】
バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板の真上の伝熱管段において、該伝熱管段を構成する伝熱管のうち左右両外側に位置する伝熱管がそれぞれ除かれて、蒸気流通用空隙部が形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム。
【請求項5】
バンドルの中間蒸気逃がし用空間部の左右両側の中間蒸気逃がし用開口部の下端に、流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板がそれぞれ設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム。
【請求項6】
バンドル中、最も下側に位置する中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板より下側において、伝熱管束の左右両外側の垂直状蒸気制御用板が除かれて、上記中間蒸気逃がし用空間部より下側の伝熱管束部分の左右両側が外方に向かって開放されていることを特徴とする、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム。
【請求項7】
各効用のバンドルの高さの中間部に設けられた中間蒸気逃がし用空間部が、水平状であることを特徴とする、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム。
【請求項8】
各効用のバンドルの高さの中間部に設けられた中間蒸気逃がし用空間部が、横断面V字状であることを特徴とする、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム。
【請求項1】
多段多列の水平状伝熱管よりなる伝熱管束と、伝熱管束の左右両外側に垂直状に配設された蒸気制御用板とを具備するバンドルが、各効用に設けられている多重効用造水装置において、各効用のバンドルの高さの中間部に少なくとも1つの中間蒸気逃がし用空間部が設けられるとともに、中間蒸気逃がし用空間部の左右両側の垂直状蒸気制御用板に、中間蒸気逃がし用開口部がそれぞれ設けられて、バンドルが上下に分割されており、左右両中間蒸気逃がし用開口部の上端に、流下ブライン飛散流出防止用内方下向き傾斜案内板がそれぞれ設けられていることを特徴とする、多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム。
【請求項2】
バンドルの中間蒸気逃がし用空間部の幅手方向中間部に、少なくとも一対のバンドル中央に向かって下向きの流下ブライン流路規制用傾斜案内板が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム。
【請求項3】
バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板の下側に、流下ブライン拡散用空間部が設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム。
【請求項4】
バンドルの中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板の真上の伝熱管段において、該伝熱管段を構成する伝熱管のうち左右両外側に位置する伝熱管がそれぞれ除かれて、蒸気流通用空隙部が形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム。
【請求項5】
バンドルの中間蒸気逃がし用空間部の左右両側の中間蒸気逃がし用開口部の下端に、流下ブライン飛散流出防止用内方上向き傾斜案内板がそれぞれ設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム。
【請求項6】
バンドル中、最も下側に位置する中間蒸気逃がし用空間部に設けられた少なくとも一対の流下ブライン流路規制用傾斜案内板より下側において、伝熱管束の左右両外側の垂直状蒸気制御用板が除かれて、上記中間蒸気逃がし用空間部より下側の伝熱管束部分の左右両側が外方に向かって開放されていることを特徴とする、請求項2に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム。
【請求項7】
各効用のバンドルの高さの中間部に設けられた中間蒸気逃がし用空間部が、水平状であることを特徴とする、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム。
【請求項8】
各効用のバンドルの高さの中間部に設けられた中間蒸気逃がし用空間部が、横断面V字状であることを特徴とする、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の多重効用造水装置における分割バンドルによる蒸気流制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−66841(P2013−66841A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207109(P2011−207109)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】
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