多重反射式飛行時間型質量分析器
本発明は、多重反射式飛行時間型質量分析器でイオンを反射させる方法を提供し、この方法は、複数の電極を有するイオンミラーを設けるステップであって、イオンミラーが、ミラー内のイオンの飛行時間分離方向に一般的に位置するイオンミラーの長手軸(Z)に各々が直交する第1の副軸(Y)及び第2の主軸(X)を有する断面を有するステップと、イオンをイオンミラーに向かって導くステップと、電界を生成するように電圧を電極に印加するステップであって、これが、(a)イオンの平均軌道を、ミラーの長手(z)軸及び主軸(X)を含むイオンミラーの対称平面に交差させ、(b)イオンをイオンミラーで反射させ、(c)イオンを、イオンミラーを通過するイオンの平均軌道が、対称平面に直交して且つそこから発散する方向(Y)における運動成分を有するような方向で、イオンミラーから脱出させる、ステップと、を包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重反射式飛行時間型(TOF)質量分析器に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析器は、元素、化合物などの同定及び定量分析のために良く知られた分析ツールである。質量分析器のキーとなる特性は、その分解能、質量の正確さ、及び感度である。質量分析器の一つの特定の形態である飛行時間型質量分析法(TOF−MS)は、電界中でイオンを加速し、その後にそれらを既知の距離における検出器にドリフトさせる。異なる質量対電荷比(m/z)を有するが同じ運動エネルギーを有するイオンは、検出器に向かって異なる速度で動き、それらのm/zに従って分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,226,543A1号明細書
【特許文献2】米国特許第6,013,913A1号明細書
【特許文献3】米国特許第6,107,625A1号明細書
【特許文献4】国際特許出願公開第2002/103747A1号明細書
【特許文献5】英国特許第2,080,021A1号明細書
【特許文献6】ソ連特許第1,725,289A1号明細書
【特許文献7】国際特許出願公開第2005/001878A3号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2006/0214100A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
TOF−MSの分解能は、典型的には飛行距離に関連し、イオンパケット形成位置と検出器との間の距離が長いほど、分解能は大きい。したがって、ある程度までは、TOF−MSの分解能は、電界と検出器との間の直線距離を最大化することによって、改良されることができる。しかし、ある直線距離を越えると、機器サイズの増加につれて実用的な問題が生じ、コストの増加、付加的なポンプ要件などを生じさせる。
【0005】
これを解決するために、いわゆる多重反射式飛行時間型質量分析法(MR TOF−MS)が開発されてきている。MR TOF−MSの最も単純な実施形態では、2つの同軸ミラーが設けられる(例えば、US−A−3,226−543、US−A−6,013,913、US−A−6,107,625、あるいはWO−A−2002/103747にみられる)。そのような配置に関わる問題は、分析されることができる質量範囲を厳しく制限することである。これは、異なるm/zのイオンが分離するときに、イオンの初期の単一パルスがパルス列となり、その継続時間が、それらが移動した飛行距離ならびにその列内のm/zイオンの範囲に依存するからである。距離を増すと、このパルス列は、列の正面のイオンが列の後方に回り込んで到達するほどに分離し、イオンの混合が始まって、それらのイオンのm/z分析を複雑化する。その結果として、そのような同軸多重反射式分析器では、飛行経路長又はm/zの範囲のいずれかが、有意な分析が可能になるように制限されなければならないか、あるいは、処理手段によって重複する情報が除去(deconvoluted)されなければならない。高分解能を達成するためには、長い飛行経路長が要求され、したがって、分析器内のイオンの質量範囲が制限されなければならない。
【0006】
この制限された質量範囲を解決するためTOF−MSのための多重反射式イオンミラーが、ヴォルニク(Wollnik)に対するGB−A−2,080,021に記述されている。ここでは、各ミラーは単一反射を提供し、他のミラーからは機能的に独立している。ヴォルニクの配置は、他の従来技術の装置における質量範囲の制限は解決するが、大きなイオン入射角が高分解能をもたらす多数のイオンミラーを具現化できる実用的な解決策は提供しない。
【0007】
SU−A−1,725,289は、2つの対向する平面イオンミラーを有し、それらがドリフト方向(Y)を一般的に横切る方向での反復反射を可能にするTOF−MSを記述している。そのドリフト(Y)方向における無制限のビームの発散は、現代のイオン源(電子噴霧、MALDI、など)を有するこの設計の有用性を制限する。
【0008】
ドリフト方向での焦点ずれの問題は、ヴェレンチコフら(Verentchikov et al.)によってWO−A−2005/001878で述べられている。ここでは、他の従来技術のように、反射器はシフト方向に延在している。この平面内の焦点形成の制限のために、複数の平面レンズがドリフト方向(Y)に直交して挿入され、イオンビームを、それがそのY方向に広がるにつれて繰り返して再び焦点を結ばせる。それにもかかわらず、そのドリフト方向における再焦点形成の度合いは、(他の方向における焦点形成に比較して)比較的弱いままである。さらに、ミラーアセンブリの中央における平面ミラーの存在は、この装置の実用的な実現を複雑化する。なぜなら、例えば、イオン検出器及びイオン源を同じ平面内(普通これはミラーの飛行時間焦点平面に一致している)に配置することが困難だからである。これが今度は、例えばUS−A−2006/0214100に示されるような付加的な等速イオン転送を必要とする。これもまた、複数の付加的な構成要素の追加のために高価である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この背景に対して、多重反射式飛行時間型質量分析器でイオンを反射させる方法が提供される。この方法は、複数の電極を有するイオンミラーを設けるステップであって、イオンミラーが、ミラー内のイオンの飛行時間分離方向に一般的に位置するイオンミラーの長手軸(Z)に各々が直交する第1の副軸(Y)及び第2の主軸(X)を有する断面を有するステップと、イオンをイオンミラーに向かって導くステップと、電界を生成するように電圧を電極に印加するステップであって、これが、(a)イオンの平均軌道を、ミラーの長手(z)軸及び主軸(X)を含むイオンミラーの対称平面に交差させ、(b)イオンをイオンミラーで反射させ、(c)イオンを、イオンミラーを通過するイオンの平均軌道が、対称平面に直交する方向(Y)における運動成分を有するように、前記イオンミラーから脱出させる、ステップと、を包含する。
【0010】
これより、本発明の実施形態は、その第1の局面において、イオンが、イオンミラー内部で反射される際に、そのイオンミラーの副軸(Y)(例えば短辺のような)を横切って動くMR TOF MSを提供する。これは、例えば、上記で参照したヴェレンチコフの文献のイオンミラーの配置のような、イオンがイオンミラーの主軸を横切る「シフト方向」を有する従来技術の配置とは、対照的である。
【0011】
ドリフト方向をイオンミラーの短軸又は副軸を横切って生成することによって、複数のイオンミラーをお互いに隣接して、各ミラー内で比較的制限された(浅い)反射角で重ねることが可能になる。これより、ミラー電極自身の存在によって隣接するミラーがお互いからシールドされながら、MR TOF MSを通る大きな経路長を生成することができる。さらに、空間電荷効果が低減される。
【0012】
明細書を通して、デカルト座標軸X,Y,及びZが使用されるが、これが単に説明の容易さのためであり、MR TOF MSの絶対的な方向が重要ではない点が理解されるべきである。さらに、長手軸が一般的にTOF分離の方向にあると規定するにあたって、イオンは実際にはイオンミラーを通る平均経路を有するが、それは常にその電極に平行ではないことが認識されるべきである。これより、長手方向は、単純に、断面軸に直交して位置するデカルト方向を特定することが意図されている。
【0013】
本発明のこの局面の特定の好適な実施形態では、イオンに対称平面を少なくとも3回横切らせる電界を生成するように、電圧が電極に印加され得る。言い換えると、イオンは、イオンミラーの長手軸及び副軸を含む平面で見ると、「ガンマ」形を描く。
【0014】
イオンミラーの電界は、イオンミラーの通過中にイオンに少なくとも1回(且つ好ましくは2回)の空間的な圧縮を経験させることによって空間的な焦点形成を向上するように配置され得る。
【0015】
ある特に好適な実施形態では、イオンミラーは、一緒に第1のイオンミラー配列を構成するイオンミラーのスタックの一部を形成する。第2のイオンミラー配列もまた設けられて、これは第1のイオンミラー配列に向かい合っている。イオンは、第1のイオンミラー配列の第1のイオンミラーに向かい、そこで第2のイオンミラー配列に向かって反射され、それから第1のイオンミラー配列の第2のイオンミラーに反射され、第2のイオンミラー配列に戻る、という動きを繰り返す。これにより、イオンは、第1のイオンミラー配列の間で一連の「ガンマ」形のループを描き、それぞれ第2のイオンミラー配列によって反射される。このようにして、第1のイオンミラー配列の各イオンミラーの副軸の方向における「シフト」方向が確立される。第1のイオンミラー配列の各イオンミラーの内の空間的な焦点形成は、上述したヴェレンチコフ配置の顕著な欠点である空間的焦点形成手段の必要性を無くす。
【0016】
ある代替例では、第2のイオンミラー配列が同様に複数の(例えば4個の)イオンミラーを備えており、その各々が第1のイオンミラー配列の対応するイオンミラーに向き合っている。しかし、代替的な実施形態では、第2のイオンミラー配列は、第2のイオンミラー配列の反射平面に一般的に垂直な長手軸と第2のイオンミラー配列の断面の副軸とを含む対称平面を有し、イオンは、内部で反射するときに、第2のイオンミラー配列のその対称平面と交差する。第2のイオンミラー配列のこの対称平面は、好ましくは、第1のイオンミラー配列における各イオンミラーの長手軸及び副軸によって規定される対称平面に直交する。
【0017】
最適には、4個のイオンミラーが第1のイオンミラー配列の内部にあることが好ましいことが見出されている。4個のイオンミラーは、TOFの焦点形成の度合いを最適化するように見える。
【0018】
第1及び第2のイオンミラー配列をジグザグ様式に通過してきたイオンをその脱出時に検出させるように配置することが可能である。あるいは、イオンは、断片化チャンバなどのようなさらなるイオン処理装置まで通過させられ得る。さらに、イオンは、MR TOF MSを通って反射され得て、且つより好ましくは、MR TOF MSを合計3回通過するように再び前進方向に反射され得る。異なる質量対電荷比を有するイオンの飛行時間の相違のために、装置の通過回数が3回を超えると、従来技術の同軸ミラー配置に関連して記述したものと同様の方法で、望ましくない小さな質量分析範囲がもたらされる。
【0019】
本発明の第2の局面によれば、多重反射式飛行時間型質量分析器でイオンを反射させる方法が提供され、この方法は、
複数の電極を有する第1のイオンミラーであって、且つ第1のイオンミラーの内部でイオンの反射平面に一般的に直交する長手軸を規定する第1のイオンミラーを設けるステップと、
第1のイオンミラーに一般的に向かい合っている第2のイオンミラーであって、複数の電極を有し、且つ第2のイオンミラーの内部でイオンの反射平面に一般的に直交する長手軸を規定する、第2のイオンミラーを設けるステップと、
イオンを第1のイオンミラーに向かって導くステップと、
第1のイオンミラーに入射したイオンをそこから反射させる電界を生成するように、第1のイオンミラーの電極に電圧を印加するステップと、
第1のイオンミラーから反射したイオンを第2のイオンミラーに導くステップと、
第2のイオンミラーに入射したイオンをそこから反射させる電界を生成するように、第2のイオンミラーの電極に電圧を印加するステップと、
を含み、
イオンを第1のイオンミラーに導くステップ、第1のイオンミラーに電界を生成するステップ、及び/又は第1のイオンミラーから反射したイオンを第2のイオンミラーに導くステップが、イオンが、第1のイオンミラーの長手軸が位置するその対称平面と、第2のイオンミラーによって反射される前に少なくとも3回交差するように、平均イオン軌道を制御するステップを含む。
【0020】
本発明の他の局面によれば、多重反射式飛行時間型質量分析器でイオンを反射させる方法が、第1のイオンミラー配列を設けるステップであって、第1のイオンミラー配列が少なくとも一つのイオンミラーを有しており、そのイオンミラーが、その少なくとも一つのイオンミラーの内部のイオンの反射平面に一般的に垂直な長手軸を有しており、且つ、その又は各イオンミラーが、その又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極をさらに有している、ステップと、第2のイオンミラー配列を設けるステップであって、第2のイオンミラー配列が少なくとも一つのイオンミラーを有しており、そのイオンミラーが、その少なくとも一つのイオンミラーの内部のイオンの反射平面に一般的に垂直な長手軸を有しており、且つ、その又は各イオンミラーが、その又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極をさらに有している、ステップと、を含んでおり、第1のイオンミラー配列のその又は各イオンミラーがその長手軸及び主軸を含む対称平面を有しており、第2のイオンミラー配列のその又は各イオンミラーが同様にその長手軸及び主軸を含む対称平面を有しており、第1及び第2のイオンミラー配列が、イオンがそれらの間を通過し得るようにお互いに向かい合わせに位置しており、第1のイオンミラー配列のその又は各イオンミラーの対称平面が第2のイオンミラー配列のその又は各イオンミラーの対称平面と交差しており、この方法が、
イオンを第1のイオンミラー配列の第1のイオンミラーに向かって導くステップと、
イオンを第1のイオンミラー配列のその第1のイオンミラーで反射させるステップと、
イオンを第2のイオンミラー配列に導くステップと、
イオンを第1のイオンミラー配列に向かって第2のイオンミラー配列で反射させるステップと、
を含む。
【0021】
本発明はまた、多重反射式飛行時間型質量分析器(MR TOF MS)に拡張され、これは、
少なくとも一つのイオンミラーを含み、そのイオンミラーが、その少なくとも一つのイオンミラー内部のイオンの反射平面に一般的に垂直な長手軸を有しており、その又は各イオンミラーがさらに、その又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極を有している、第1のイオンミラー配列と、
少なくとも一つのイオンミラーを含み、そのイオンミラーが、その少なくとも一つのイオンミラー内部のイオンの反射平面に一般的に垂直な長手軸を有しており、その又は各イオンミラーがさらに、その又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極を有している、第2のイオンミラー配列と、
そこに電界を確立するように、第1及び第2のイオンミラー配列の電極に電圧を印加する手段と、
イオンが、引き続く処理又は検出のために第1及び第2のイオンミラー配列を出る前に少なくとも1回、第1及び第2のイオンミラー配列の間で反射するように導入させるように、イオンをイオン加速領域からMR TOF MSに導入するイオンガイド手段と、
を備えている。
【0022】
本発明の他の局面によれば、飛行時間方向に一般的に位置する第1のZ軸を有する多重反射式飛行時間型質量分析器が提供され、これは、
Y方向の焦点形成を提供する少なくとも一つのミラーの第1のセットと、
X方向の焦点形成を提供する少なくとも一つのミラーの第2のセットと、
少なくとも一つの時間焦点と、
を備えており、Z,Y,及びXが3次元空間に広がっている。
【0023】
本発明のさらに他の局面によれば、多重反射式飛行時間型質量分析器が提供され、これは、
長手方向を規定する多重に折り畳まれた飛行経路と、
第1の横断軸に沿って配置された細長い電極の第1のセットであって、その細長い電極の第1のセットが、第2の横断軸の方向における飛行経路の折り畳み及び焦点形成を提供するように配置された、細長い電極の第1のセットと、
第3の横断軸に沿って配置された細長い電極の第2のセットであって、その細長い電極の第2のセットが、第4の横断軸の方向における飛行経路の折り畳み及び焦点形成を提供するように配置された、細長い電極の第2のセットと、
を備えており、第1及び第3の軸がお互いに向かって傾斜していて、第2及び第4の軸がお互いに向かって傾斜している、多重反射式飛行時間型質量分析器。
【発明の効果】
【0024】
さらに好適な実施形態及び効果は、以下の記述、ならびに請求項から、明らかになるであろう。
【0025】
本発明は数多くのやり方で実用化され得て、いくつかの実施形態が、例示のみのために且つ添付の図面を参照して、ここで記述される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】多重反射式飛行時間型質量分析器の好適な実施形態の第3の角度の斜視図を示し、タイプ1及びタイプ2の向かい合ったイオンミラー配列を有している。
【図1B】図1に示されたタイプ1のイオンミラー配列のイオンミラーの一つの第3の角度の斜視図である。
【図2】図1の配列の一部をYZ平面において示す図である。
【図3】図1のMR TOF MSのYZ平面における断面を示す図であって、その平面における例示的なイオン軌道とともに示す。
【図4】図1のタイプ2のイオンミラー内部の電極の一つの可能な配列をXY平面における断面で示す図であって、いくつかの適切な電圧とともに示す。
【図5】図1のタイプ1のイオンミラー内部の電極の一つの可能な配列をYZ平面における断面で示す図であって、いくつかの適切な電圧とともに示す。
【図6】本発明を具現化するイオンミラーの代替的な配列を再びYZ平面における断面で示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態を再びYZ平面における断面で示す図である。
【図8】イオン源、リニアトラップ、及び図3のMR TOF MSを備える質量分析器システムを示す図である。
【図9】時間焦点上に焦点形成されたイオン軌道をXZ平面における断面で示す図である。
【図10】本発明のさらなる実施形態をXY平面における断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1Aは、多重反射式飛行時間型質量分析計(MR TOF MS)の第3の角度での投影(斜視)図を示す。このMR TOF MSは、2つの別個のイオンミラー配列を含む。第1のイオンミラー配列10は、1対の平面ミラーシステムの一方を形成し、以下の記述では「タイプ1」と示される。図1のMR TOF MSはまた第2のイオンミラー配列20も含み、これは、第1のイオンミラー配列10に一般的に直交して、以下の記述では「タイプ2」と示される。
【0028】
第1のイオンミラー配列10が、図1Aの好適な実施形態では、図1Aに示されるY軸300に平行な方向にお互いの上に積み重ねられた4個のイオンミラーを備えることに留意されたい。図1Bは、第1のイオンミラー配列の単一のミラーを示す。各イオンミラーは1セットの電極(その好適な実施形態は以下に図5に示される)を備えており、これは、電圧を印加されると、各イオンミラー内に電界を生成する。電極が各イオンミラーの長手軸(図1のZ方向200)に沿って途中までのみ延在して、第2のイオンミラー配列20と第1のイオンミラー配列10のイオンミラーの電極との間に無電界領域が存在していることに留意されたい。
【0029】
図1から、ミラーは端が閉じているように見えるが、これは、本発明の実施形態の要求事項ではない。
【0030】
さらに、図は、タイプ2のミラーをタイプ1のミラーに対して90°回転して示しているが、これもまた本発明の要求事項ではない。他の回転の度合いが、本発明では企図される。
【0031】
意図は、傾斜して且つ好ましくは直交したミラー配列を提供し、これらが、分離された時間的及び空間的な焦点の生成において協働することである。本発明の装置の最も単純な実施形態は、直交したミラー配列である。
【0032】
第1のイオンミラー配列の各イオンミラーは2つの対称平面を有しており、第1のものはX及びZ軸400、200を含み、第2のものはY及びZ軸を含む。第1のイオンミラー配列10におけるイオンミラーのために最も関連するものは、特に図2及び図3に関連して以下に詳細に説明されるように、XZ平面における第1の対称平面である。
【0033】
最後に図1に関して、第2のイオンミラー配列20が単一のイオンミラーを備えており、これが同様に(XZ及びYZ平面に)2つの対称平面を有するが、ここでは、最も興味のあるのはYZ平面における対称平面であることに、留意されたい。
【0034】
ここで図2及び図3を参照すると、MR TOF MSを通るイオンの平均軌道がここでは記述される。イオンは、MR TOF MSの外部にあるイオン源30で生成される。質量分析法における一つ又はそれ以上のステージにおけるオプションの前処理、及び/または、例えばイオン冷却、ならびに例えばリニアトラップにおける貯蔵に引き続いて、イオンは、MR TOF MSに向かって射出される。既知の方法で、イオンは、既知の強度の電界を通って加速され、それから、さらなる加速無しにMR TOF MSに向かってドリフトすることが許容される。これらのイオンはそれからイオンミラー配列10、20に向けられて、第2のイオンミラー配列20における最初の反射の後に、図2にて最も良く見えるミラー10aのスロット35aに到着する。これは、イオンミラー配列10の第1の(Y方向で)上方のイオンミラーの正面に形成される。イオンが、上記で特定されたように対称平面(すなわちXZ平面における対称平面)に対して角度αでアパーチャ35aに到着することが見られる。これより、イオン軌道は、第1のイオンミラー10aの入口スロット35aにて又はその周辺で、その対称平面を初めて通過する。
【0035】
長手方向におけるイオンミラー10aの第1の部分が電極47の無い無電界領域であるので、イオンは、第1のイオンミラー10aに入る方向に一般的に移動を続ける。イオンミラーの約1/3(すなわち、入口スロット35aと長手軸に沿って反射がさらに起こる平面との間の距離の約1/3)で、イオンは、複数の電極37によって確立された電界に入る。
【0036】
電界は、鞍点38で最初に空間的な焦点形成効果を有する。イオンはそれから、反射平面を規定する転回点45で反射される前に、イオンミラー10aの長手軸に一般的に平行な方向に、移動を続ける。イオンがXZ平面における対称平面と2度目に交差するのは、イオンが方向を変えるこの転回点45においてである。
【0037】
イオンはそれから、第2の鞍点39において2度目に空間的に焦点形成され、それから再び、イオンミラー10aの電界を出て無電界領域47に入る前に、イオンミラー10aの長手軸に一般的に平行な方向に、移動を続ける。イオンはそれから、イオンミラー10aの電界を出る前に偏向されて、Y方向の運動成分を再び有するようになる。これより、それらは、イオンミラー10aを通過して外に戻るときに、再び細長いスロット35aの領域で、イオンミラー10aのXZ平面における対称平面と3度目且つ最後に交差する。
【0038】
これより、イオンによって描かれる形状は、一般的にギリシャ文字の「ガンマ」に類似し得て、イオンは対称平面と3回交差する。
【0039】
長所及び重要な効果として、飛行経路は、長手方向(Z)及び副(Y)方向を含む平面上への飛行経路の投影が、第1のミラー10の一つへの入射ごとに1回、それ自身を横切る。
【0040】
細長いアパーチャ35aを通過して戻ると、イオンは図3の右から左に移動し続けて、直交する第2のイオンミラー配列(タイプ2)に入る。イオンは一般的に、第2のイオンミラー配列20の対称平面(YZ)に留まるが、その長手(Z)軸と鋭角に交差し、その角度は、第1のイオンミラー配列10に入るイオンがそのミラーの対称平面に交差する角度αであってもよく、そうでなくてもよい。
【0041】
第2のイオンミラー配列20における第2の反射に引き続いて、イオンは第1のイオンミラー配列10に向かって一般的に直線上を移動して戻り、そこで、第1のイオンミラー配列10の第2のイオンミラー10bの細長いスロット35bに入る。第2のイオンミラーは、第1のイオンミラー10aに隣接しているが、その長手軸はY方向に変位している。第2のイオンミラー10bは、好ましくは第1のイオンミラー10aと同一の構成を有し、これより、長手軸に沿って途中まで延在している電極のセットを有し、第2のイオンミラー10bに入るイオンの反射のための電界を提供する。
【0042】
イオンは再び、第2のイオンミラー10bを通って「ガンマ」形を描き、第2のイオンミラー10bの対称平面と3回交差し、第2のイオンミラー10bを出て行くイオンは、再びY方向での成分を有する方向でそうする。
【0043】
イオンはそれから第2のイオンミラー配列20に戻り、そこで長手軸に対してある角度で反射され、これより(図1,2,及び3の向きに見たときに)Y方向下向きの成分を有して移動し続ける。イオンはそれから、第1のイオンミラー配列10の第3のイオンミラー10cに入り、そこで「ガンマ」軌道のループを描いて、更なる時間のために第2のイオンミラー配列20に戻るように向けられる。ここで、それらは再び反射され、依然としてY方向下向きのドリフト成分を有して、第1のイオンミラー配列10の第4の且つ最後のイオンミラー10dに向かう。第4のイオンミラー10dを通る最後の横断を完了すると、イオンは第4のイオンミラー10dの細長いスロット35dを出て、その後に、検出のために検出器52に到着する。第1のイオンミラー配列10の第4のイオンミラー10dの後でのみ、1次、2次、及び3次の収差が最小になって、これより、飛行時間型焦点形成の最適な性質が提供される。
【0044】
第2のイオンミラー配列20は、ミラー配列10の焦点形成方向に直交するか又は少なくともある角度を有する第2の方向において、イオンの空間的分散を低減する。好ましくは、第2のイオンミラー配列20は、その第2の方向における焦点形成を提供する。
【0045】
図9は、第2のミラーアセンブリの焦点距離がイオン飛行経路のZ延長に等しい好適な構成を示す。すなわち、入射する平行ビームが転回点で焦点形成され、またその逆が生じる。この構成は、平行ビームから平行ビームまで、あるいは焦点形成された状態から焦点形成された状態まで、偶数回の反射を経ることが必要で、多重反射式構成に最も良く適している。その代わりに、最大焦点距離という利点を有し、エラーを低減する。
【0046】
好適な構成では、それぞれの他のミラーアセンブリがその主な焦点形成方向で、前者の振る舞いに影響しないという意味で、第1のミラーアセンブリが第2のものに直交していることが理解されるべきである。
【0047】
タイプ1及びタイプ2のミラーが直交している必要は無い。
【0048】
これより、図1、図2、及び図3の配置は、MR TOF MSの上流の加速領域と検出器との間の全経路長を顕著に増加させる。しかし、飛行経路は、図3において第1のイオンミラー配列10の第4のイオンミラー10dに向かい合う下側の破線によって示されるように、イオンミラー配列10,20でイオンの移動方向を逆転することによって、さらに(効果的には2倍に)増加され得る。検出器52に進む代わりに、第2の偏向器40が、第1のイオンミラー配列10の第4のイオンミラー10dを出るときに第2のイオンミラー配列20への入口での軌道を直線状にし、それからイオンを入射軌道に正確に戻すために使用され得る。戻りでは、イオンは第3の偏向器41によってX方向に偏向され得て、X方向に図面の平面の上方に位置する第2の検出器50によって捕捉され得る。第3の偏向器41は、全ての対象イオンが前進経路でMR TOF MSを通過した後にのみ動作されることができて、これはもちろん、比較的軽いイオンが既に戻ってきているときに重いイオンがちょうど第3の偏向器41を通過するので、質量範囲を制限する。しかし、これは、飛行時間の比率が約8対1、すなわち、M/Z:(M/Z)MAX/(M/Z)MIN>60という比率のイオンに対してのみ、問題になる。この制限は、イオン源30で普通に使用されるRF伝送装置が質量範囲にはるかに厳しい制限を課すので、限定的な実用上の懸念である。
【0049】
飛行経路は、第3の偏向器41の代わり第4の偏向器42を使用することによって、さらにもっと増加され得る。第4の偏向器42は、イオンの経路を直線化するが、(イオンを第2の検出器50での検出のためにYZ平面から上方に偏向させる第3の偏向器41とは対照的に)それらを一般的にYZ平面に維持する。図3の上部を参照のこと。その軌道が第2のイオンミラー配列20の長手軸に対して直線化されたイオンは、第2のイオンミラー配列20の電界に入る方向に一般的に平行な経路に沿って戻るように、内部で反射され、それに引き続いて、第1のパスの間に横断した経路と同様に2つのイオンミラー配列10、20を通る経路を横断するように、第1のイオンミラー10aの長手軸に対してある角度で、第1のイオンミラー配列10に偏向されて戻る。この実施形態では、イオンはMR TOF MSを、前進方向で2回及び「逆」方向で1回の3回通過してから、第1のイオンミラー配列10の第4のイオンミラー10dの細長いスロット35dに到着し、第1の偏向器43がそれから駆動されて、図3の紙面から上方に(X方向に)、第1の検出器51に向かってイオンを偏向させる。好ましくは、第1の偏向器43は、重いm/zイオンが第2の偏向器40による偏向から戻るときに通過すると、スイッチオンされる。それからイオンは、第1の偏向器51への第2の前進経路を通り、軽いm/zイオンの後を重いm/zイオンが続く。この場合、飛行時間の比率は約2.4:1である。これは、より中庸な(M/Z)MAX/(M/Z)MIN≒6をもたらす。飛行経路のさらなる増加(例えば、イオンに2つのイオンミラー配列10、20を4回通過させることによる)は、質量分析範囲をさらに低減するが、分解能を改善する。例えば、偏向器を検出器の前に配置することによる、あるいは実際に偏向器を検出器と一体化することによるイオン経路からのより急峻な偏向は、この比率を約10〜20%改善することができる。
【0050】
この場合のような第1及び/又は第2の検出器50,51の代わりに、イオンは代わりに、X方向でMR TOF MSを通る通過平面から、質量分析の他のステージ(図面には示されていない)に除去され得る。例えば、断片化装置が図3の平面の外(X方向)に配置され得て、断片化に引き続いて、イオンは同じMR TOF MS又は他の質量分析器に再注入されることができる。
【0051】
本発明を組み込んだ質量分析器は、多極であることができる第1の質量選択器、イオントラップ、又は本発明の実施形態を含む飛行時間計器、あるいはイオンモビリティ装置及び任意の既知の衝突、断片化、又は反応装置、及び好ましくは本発明の実施形態であることができるか、あるいは、特に第1の質量分析器が本発明の実施形態であるときには、反射式TOF又はイオントラップ質量分析器、例えばRFイオントラップ、又は静電トラップ、又は任意のタイプのFT/MSのような他の質量分析器を備えることができる。両質量分析器は、別個の検出手段を有することができる。あるいは、低コスト版では、第2の質量分析器の後にのみ検出手段を有してもよい。
【0052】
分析器が上述のように再入射を使用しないときには、本発明の2つの実施形態の組み合わせが効果的であることができる。動作モードは、既知の様式でフルMS1、ならびにMS2又はMSn、及び本明細書で開示される広域又は狭域質量範囲検出モードを含む。効果的には、本発明の装置は、クロマトグラフ、及び大気圧イオン源又はレーザー吸着イオン源を備える。
【0053】
図1、図2、及び図3に示される第1のイオンミラー配列10におけるイオンミラー10a〜10dは平面型であるが、それらがそのように形成されるべきであるという要求事項は無い。特に、楕円又は円形の断面のイオンミラーも、等しく使用されることができる。本質的ではないが、各イオンミラーの断面が主軸及び副軸を有すること(すなわち、断面が例えば長方形又は長円形であること)が好ましい。各イオンミラーにおける「ガンマ」形状のイオン軌道が、イオンのドリフト方向を、主軸ではなく副軸の方向であるY方向に確立させる。
【0054】
好ましくは、第1のセットのミラー(タイプ1)の主軸及び第2のセットのミラー(タイプ2)の主軸は、お互いに異なる。
【0055】
図面に示されているように、ミラーは好ましくは、ロッド又はプレート形状の細長い電極又は電極要素を備えており、これらはミラーのそれぞれの主軸に沿って配置される。ミラーは、端効果を無くすために、副端において同様の電極配置で閉じられることができる。これらの閉じる要素はまた、配置の中心で見出されるような理想的な電界を模擬するPCBであることもできる。しかし、ミラーは、それらの端がイオンビームの経路から十分に離れていれば、副端が開いていることができる。
【0056】
非平面ミラーに対しては、電極は、打ち抜き又は電気化学エッチングによって形成され得る。好適な具現例は、平面ミラーを構成するように、その端で平坦なプレートを使用して端効果を最小化する。平らなプレートは、好みによって、イオン軌道から離れた高さで、好ましくはミラー高さの1.5倍から2倍以上で、少なくとも一つのミラーに置かれる。
【0057】
第2のイオンミラー配列20は、同様に単一の平面ミラーであってもよく(図1に示されるように)、あるいは、単一の楕円ミラーであってもよい。飛行長をさらに増すために、タイプ2のミラーの付加的なレイヤーが、図1の単一の第2のイオンミラー配列20の上方又は下方(すなわち+Y及び/又は−Y方向)にて使用され得る。イオンは、イオンが各タイプ2のミラー配列に常に対称平面に沿って入ることを可能にする一対の対向している偏向器プレートを使用して、レイヤーからレイヤーに転送され得る。さらに、各タイプ2のミラー配列における単一のイオンミラーの代わりに、複数のミラーが代わりに使用されることができて、これらは平面又は非平面(例えば断面が楕円又は円形)であってもよい。そのような配置は図6に示されており、ここでは、第1及び第2のイオンミラー配列の全てのミラーがタイプ1であり、それらの間に単一の平面レンズ60が形成されている。平面レンズ60は、イオンを「X」方向に、すなわち図6の紙面の面内で焦点形成するように作用する。なぜなら、先の実施形態(例えば図1)の交差した対称平面無しには、その方向でイオンを焦点形成する他の源が存在しないからである。
【0058】
この平面レンズ60の焦点形成は、図1〜図3の配置におけるように強力ではないが、図6の構成は、空間電荷に対してより高い耐性を有している。なぜなら、イオンパケットが、空間電荷の影響が最も顕著に期待されるその転回点において、近傍のミラーを移動している他のm/zのイオンからシールドされるからである。このシールドは、イオンがタイプ1のミラーの内部にあるときに生じ、そのために図6の実施形態では、イオンは、それらの転回点の全てにおいてシールドされる。図6の配置はまた、製造が最も簡単である。なぜなら、図1の単一の「タイプ2」の電極は、より長い経路長に対しては、適切な公差内に維持することが困難になるからである。
【0059】
図3の配列に関して、図6のMR TOF MSを通る前進経路は、偏向器40及び41を使用して破線によって示されるように飛行長を2倍にすることによって、逆転されることができる。検出器50は、ここでも再び、図6の図面の平面の上方又は下方に位置される。飛行長のもっとさらなる増加は、図3に関連して以前に記述されたように、(再び「前進」方向に)イオンに図6の配置を3回通過させることによって、達成され得る。さらに、レンズ60の複数レイヤーが使用されることができる。
【0060】
図7はさらに、図6の原理をさらに展開する更なる実施形態を示す。図3及び図6に示されるように第1及び第2のイオンミラー配列をそれらが直線状に向かい合うように配置する代わりに、イオンミラーは代わりに、円形ミラー70を中央に、共通の中心に向かって向けられ得て、イオンは、イオンミラーの一般的な円形配置の周りを動く。
【0061】
図6及び図7の配置は、以前のように平面ミラーを示しているが、ミラーは代わりに、断面は楕円、または他の幾何学的形状であってもよい。これは、楕円断面ミラーが、例えば軌道平面に垂直な空間的焦点形成も提供し得るので、効果的であり得る。もちろん、収差が顕著に増加しないように、直交する焦点形成を組織することが必要である。楕円断面ミラーを使用することによって、図6及び図7のミラー60/70が必要とされ得ないこともあり得る。
【0062】
あるいは、図3の実施形態におけるように、図6及び特に図7の横断平面における空間的焦点形成は、2つのタイプ又は向きのミラーを使用することによって構成されることができ、その各々は、異なる横断方向における焦点形成を提供し、所望の長手(時間)焦点の生成においては両方が協働する。
【0063】
図8は質量分析器システム100を示し、これは上述のMR TOF MSを含む。図8に示されるMR TOF MSの特定の実施形態は図3の実施形態のものであるが、図6又は図7の実施形態がもちろん、等しく使用されることができる。
【0064】
システム100のうちで本発明の理解に関連する部分のみが、図8に示されている。システムは、電子噴霧又はMALDI源のようなイオン源110を含む。これは、イオンの準連続流を生成し、これがレンズ120を介して衝突セル130に導かれる。ここで、イオンは(オプションとして)断片化され、それから第2のレンズ140を介してリニアトラップ150に導かれる。リニアトラップ150は、直線状の細長いロッドを有する直線四重極、六重極、又は八重極トラップのような様々な形態を取り得て、あるいは、湾曲し得る(すなわち、延長方向に沿って一定部分及び一定のロッド距離を有する湾曲した細長いロッドを有する)。最も好ましくは、我々の同時継続出願第GB0626025.1号に記述されているように、リニアトラップ150は湾曲されるが、延長軸に沿って非直線の断面を有する。この出願の内容は、ここに全体的に援用される。
【0065】
使用時には、イオン源110で生成されたイオンはレンズ120を通過し、断片化セル130に入る。ここで、それらは、分析されているイオン又はユーザの選択に依存して、断片化されてもよく、あるいは、されなくてもよい。それらはそれから、第2のレンズ140を介してリニアトラップ150に進み、そこでそれらは捕捉されて冷却される。いくらかの未完成の質量選択もまた、リニアトラップ150内部で起こり得る。イオンパケットはそれから、上記で参照されたGB0626025.1に記述されているように、一般的にリニアトラップの湾曲した延長軸の方向に射出されて、トラップ150の下流で焦点形成される。それらはそれから、第2のイオンミラー配列20を通過し、図3に関連して上記で説明したように、上方に続く。
【0066】
MR TOF MSを1回、2回、又は3回通過した後に、イオンは図面の平面外に、例えばイオンを紙面の面外の検出器50に偏向する偏向器41によって偏向され得る。
【0067】
タイプ2のミラーの一つの特定の実施形態が図4のXZ断面に示されており、タイプ1のミラーの一つの特定の実施形態が図5のYZ断面に示されている。図4及び図5は、イオンミラーの幾何学的且つ電気的パラメータを詳細に示す。一連の電圧が電源(図示せず)から各々の電極に供給され、電位が精密接地金属ロッドのセットに印加される。例えば、ロッドは、例えばステンレススチール、インバー、又は金属コートされたガラスで形成され得る。あるいは、薄い又は厚い金属プレートのセット、又は印刷回路基板が、同じ効果を提供するために使用されることができる。2kVで加速されたイオンに対して、第2及び第1のイオンミラー配列20、10のための好適な実施形態で使用されている特定の電圧が、図4及び図5の表にそれぞれ示されている。
【0068】
図10は他の好適な実施形態を示し、これは、1パス,3パス,及び5パスから(2*n−1)パスモードにおける多重反射アセンブリの使用を許容する。
【0069】
典型的には、1パスモードは迅速な低分解能質量分析を許容し、3パスモードは、固定周波数で動作するRFイオントラップの質量範囲にほぼ合致する質量範囲に渡った高分解能質量分析を許容し、より高いパスモードは、より小さい質量範囲の高分解能「ズーム」動作モードを提供する。
【0070】
射出器トラップ210は、好ましくは(必須ではない)横断方向の一つに平行に、且つミラーセットの少なくとも一つの延長方向に平行に、方向付けられている。有用なことには、イオン運動の平面の外側に位置されることができ、その特性を長手運動から切り離す。
【0071】
射出器トラップ210は、WO2008/081334として発行された出願人の同時係属出願に開示されているように、湾曲した非直線RFイオントラップであり得て、その出願の内容は参照によってここに援用される。
【0072】
イオンは、イオン源から直接に、あるいは第1の質量分析器及び第1の質量分析器の一部であることもできるオプションの第1の反応装置を通って、注入器トラップに入ることができる。
【0073】
この構成では、単一の検出器290が、全ての単一又は複数パス分析モードに対して使用されることができる。
【0074】
Y偏向器221,222,及び223が、図面に示されているように、この装置におけるイオンの入射、偏向、及び脱出を組織化する。
【0075】
好ましくは、この構成では、偏向器要素290は、再び注入器トラップ210及び横断主方向230に平行である。偏向器要素290は、イオン運動の平面内又は平面外にあることができる。
【0076】
図面に描かれているタイプ1及びタイプ2のミラーは、それらが3辺で閉じられていることを示唆しているが、これは必須ではない。
【0077】
このシステム内で、好ましくは分割流ターボ分子ポンプを使用して、圧力を約10-9〜10-8mbarよりも低く保持することが好ましい。好適な実施形態に従ったMR TOF MSにおける好適な全体的な飛行長は、10〜200mの範囲にあり、システムの全体長は約0.5〜1mの間である。平均的なイオン加速は、好ましくは1〜20kVの範囲内であり、図4及び図5の配置では2kVが使用されている。
【0078】
このように記述された配置は、単一反射式飛行時間型質量分析器に対して、経路長における大きな増加を提供するが、同時に、空間的な焦点形成を改善し、イオンパケットのお互いからのシールドを改善して空間電荷効果を最小化し、イオン源とイオンミラーの端電界との間の空間的な衝突の除去によって、単純化された射出スキームを提供する。
【0079】
図9は、これを明確には示していないが、焦点が他のミラーにおけるイオンの転回点に存在する(他のミラーは描かれていない)場合である。描かれているミラーの動作は、ミラー20であり、Xにて焦点形成する。
【0080】
完全な通過ごとに2つのX焦点が存在する。これは、ミラー20への入射ビームが平行であれば、X方向のビームは次のミラー10(すなわち10a)の転回点で焦点を結ぶことを意味する。ビームはX方向で、ミラー10aのZにおける転回点でクロスし、再び収束し、ミラー10はX焦点形成機能を有さない。それはミラー20に入り、そのミラーによって平行にされる。ミラー10bに平行に入り、10bから平行に出てきて、それから再び20に入る。ミラー20は、ミラー10cの転回点でそれに焦点を結ばせる。それはクロスし、発散してミラー20に戻り、ミラー20によって再び平行にされる。
【0081】
図3に示されているように、完全な通過ごとに10個のY焦点がある。2個はセット10の各ミラーにあり、加えてさらに2個がミラー20の転回点にある。
【0082】
図10に模式的に描かれているミラーシステムは、検出器にて、及びビームが逆転されると注入器の出口を通過する平面で、2次の飛行時間焦点形成を有する。すなわち、全てのエネルギー及び空間収差係数は2次まで零である。それは、2次の時間焦点に一致する3次の時間焦点を最小化する(零ではない)。
【0083】
ミラーシステムはX及びYで焦点を生成し、それらは時間焦点には一致しない。これは、検出器にとっては、それがイオンビームをより大きな表面上で広げるときに利点を有し、計測器を通る延長された通過の間には、X及びYに含まれていて、大きすぎて検出できないように発散することは許されない。
【0084】
また、イオンは、特にXにおける焦点がYにおけるものとは同じにならず、点状の焦点ではなく線状の焦点を提供するので、それらの経路の大部分では焦点形成されず、空間電荷効果を低減する。
【0085】
ミラーシステムを奇数回通過することは、図10の実施形態におけるY偏向器221、222、223の動作のために、有益である。ビームの偏向は収差をもたらすが、好適な実施形態は、ミラーシステムを通る奇数個の経路が存在するときに、その収差がほとんどキャンセルされる偏向器システムを利用する。
【0086】
1パスモードで動作するときには、Y偏向器223の動作は、Y偏向器221の動作を打ち消す。
【0087】
3,5,7,……パスモードで動作するとき、Y偏向器222の動作は、それ自身をキャンセルする。
【0088】
3,5,7,……パスモードで動作するとき、Y偏向器221の動作は、第1の動作を除いてそれ自身をキャンセルし、これは、Y偏向器223の検出の前に最終動作によってキャンセルされる。
【0089】
ミラーシステムの単一の飛行経路が4mの飛行を与える特定の例では、達成される典型的な解像度は1回の通過で約20k、3回の通過で60k、及び5回の通過で100kである。
【0090】
この実施形態は、図10に描かれているように、注入器の出口におけるZ−X平面及び検出器平面に、時間焦点を有する。これは、前進方向に移動するときに、第1のイオンミラー配列の第4のイオンミラー10dを通る経路の後でのみ、1次、2次、及び3次の収差が最小を達成するからである。同様に、ビームが逆転されると、ミラー10aを通る経路の後でのみ、収差が最小化される。
【0091】
注入器210は、ミラーシステムの1回の通過よりも多く実行されるときにイオンビーム経路と干渉しないように、X内で変位され、注入器から発せられたイオンはX偏向器によってZ−Y平面に偏向される。検出器は、変位しているようには示されていないが、この実施形態では、その中心平面がZ−Y平面にある。あるいは、X内で注入器210及びコリメータ220の変位と同じ又は反対の方向に変位して、Z−Y平面の外にあってもよい。
【0092】
この実施形態では、追加のX偏向器が必要とされる(図10には示されていない)。検出器290がこのように平面外に変位されると、X偏向器240の動作による収差は、適切に設計されれば、追加のX偏向器の動作によって実質的にキャンセルされ得る。
【0093】
Y偏向器221、222、223のキャンセル効果は、検出器290が、最良の時間焦点でイオンビームに垂直に位置していて、傾斜していないことを意味する。奇数回の通過が実行されるときには、単一の検出器が使用されることができる。これらの理由から、この配置が、図3のものよりも好ましい。
【0094】
コリメータ220は、シールド囲いの中に含まれた入口レンズ及び2つの「ボタン」レンズ(簡潔化のために図示されていない)を備えている。コリメータはイオン注入器に結合されて、やはりZ−Y平面の外にある。注入器及びコリメータは、ミラーシステムへの注入に適したイオンビームを生成し、ビームは、Z−Y平面に対して傾斜されていて、X偏向器240の近傍でそれと交差する。X偏向器は、イオンビームをミラーシステムの平面内に偏向する。
【0095】
1パスモードから複数パスモードに切り換えるために、イオンビームを軌道250に沿って偏向するように、Y偏向器222が駆動される。ミラー20は、ビームをY偏向器222を通って送り返し、ミラーシステムに戻す。Y偏向器221は、イオンビームを軌道260に沿って偏向するように駆動される。ビームはそれから、第1の前進経路においてと実質的に同じ軌道に沿って、ミラーシステム内を通過して戻る。この偏向配置は、ミラーシステム内の飛行経路を増すために、1回又はそれ以上使用されることができて、ビームは最終的に検出器290に到達する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重反射式飛行時間型(TOF)質量分析器に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析器は、元素、化合物などの同定及び定量分析のために良く知られた分析ツールである。質量分析器のキーとなる特性は、その分解能、質量の正確さ、及び感度である。質量分析器の一つの特定の形態である飛行時間型質量分析法(TOF−MS)は、電界中でイオンを加速し、その後にそれらを既知の距離における検出器にドリフトさせる。異なる質量対電荷比(m/z)を有するが同じ運動エネルギーを有するイオンは、検出器に向かって異なる速度で動き、それらのm/zに従って分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,226,543A1号明細書
【特許文献2】米国特許第6,013,913A1号明細書
【特許文献3】米国特許第6,107,625A1号明細書
【特許文献4】国際特許出願公開第2002/103747A1号明細書
【特許文献5】英国特許第2,080,021A1号明細書
【特許文献6】ソ連特許第1,725,289A1号明細書
【特許文献7】国際特許出願公開第2005/001878A3号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2006/0214100A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
TOF−MSの分解能は、典型的には飛行距離に関連し、イオンパケット形成位置と検出器との間の距離が長いほど、分解能は大きい。したがって、ある程度までは、TOF−MSの分解能は、電界と検出器との間の直線距離を最大化することによって、改良されることができる。しかし、ある直線距離を越えると、機器サイズの増加につれて実用的な問題が生じ、コストの増加、付加的なポンプ要件などを生じさせる。
【0005】
これを解決するために、いわゆる多重反射式飛行時間型質量分析法(MR TOF−MS)が開発されてきている。MR TOF−MSの最も単純な実施形態では、2つの同軸ミラーが設けられる(例えば、US−A−3,226−543、US−A−6,013,913、US−A−6,107,625、あるいはWO−A−2002/103747にみられる)。そのような配置に関わる問題は、分析されることができる質量範囲を厳しく制限することである。これは、異なるm/zのイオンが分離するときに、イオンの初期の単一パルスがパルス列となり、その継続時間が、それらが移動した飛行距離ならびにその列内のm/zイオンの範囲に依存するからである。距離を増すと、このパルス列は、列の正面のイオンが列の後方に回り込んで到達するほどに分離し、イオンの混合が始まって、それらのイオンのm/z分析を複雑化する。その結果として、そのような同軸多重反射式分析器では、飛行経路長又はm/zの範囲のいずれかが、有意な分析が可能になるように制限されなければならないか、あるいは、処理手段によって重複する情報が除去(deconvoluted)されなければならない。高分解能を達成するためには、長い飛行経路長が要求され、したがって、分析器内のイオンの質量範囲が制限されなければならない。
【0006】
この制限された質量範囲を解決するためTOF−MSのための多重反射式イオンミラーが、ヴォルニク(Wollnik)に対するGB−A−2,080,021に記述されている。ここでは、各ミラーは単一反射を提供し、他のミラーからは機能的に独立している。ヴォルニクの配置は、他の従来技術の装置における質量範囲の制限は解決するが、大きなイオン入射角が高分解能をもたらす多数のイオンミラーを具現化できる実用的な解決策は提供しない。
【0007】
SU−A−1,725,289は、2つの対向する平面イオンミラーを有し、それらがドリフト方向(Y)を一般的に横切る方向での反復反射を可能にするTOF−MSを記述している。そのドリフト(Y)方向における無制限のビームの発散は、現代のイオン源(電子噴霧、MALDI、など)を有するこの設計の有用性を制限する。
【0008】
ドリフト方向での焦点ずれの問題は、ヴェレンチコフら(Verentchikov et al.)によってWO−A−2005/001878で述べられている。ここでは、他の従来技術のように、反射器はシフト方向に延在している。この平面内の焦点形成の制限のために、複数の平面レンズがドリフト方向(Y)に直交して挿入され、イオンビームを、それがそのY方向に広がるにつれて繰り返して再び焦点を結ばせる。それにもかかわらず、そのドリフト方向における再焦点形成の度合いは、(他の方向における焦点形成に比較して)比較的弱いままである。さらに、ミラーアセンブリの中央における平面ミラーの存在は、この装置の実用的な実現を複雑化する。なぜなら、例えば、イオン検出器及びイオン源を同じ平面内(普通これはミラーの飛行時間焦点平面に一致している)に配置することが困難だからである。これが今度は、例えばUS−A−2006/0214100に示されるような付加的な等速イオン転送を必要とする。これもまた、複数の付加的な構成要素の追加のために高価である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この背景に対して、多重反射式飛行時間型質量分析器でイオンを反射させる方法が提供される。この方法は、複数の電極を有するイオンミラーを設けるステップであって、イオンミラーが、ミラー内のイオンの飛行時間分離方向に一般的に位置するイオンミラーの長手軸(Z)に各々が直交する第1の副軸(Y)及び第2の主軸(X)を有する断面を有するステップと、イオンをイオンミラーに向かって導くステップと、電界を生成するように電圧を電極に印加するステップであって、これが、(a)イオンの平均軌道を、ミラーの長手(z)軸及び主軸(X)を含むイオンミラーの対称平面に交差させ、(b)イオンをイオンミラーで反射させ、(c)イオンを、イオンミラーを通過するイオンの平均軌道が、対称平面に直交する方向(Y)における運動成分を有するように、前記イオンミラーから脱出させる、ステップと、を包含する。
【0010】
これより、本発明の実施形態は、その第1の局面において、イオンが、イオンミラー内部で反射される際に、そのイオンミラーの副軸(Y)(例えば短辺のような)を横切って動くMR TOF MSを提供する。これは、例えば、上記で参照したヴェレンチコフの文献のイオンミラーの配置のような、イオンがイオンミラーの主軸を横切る「シフト方向」を有する従来技術の配置とは、対照的である。
【0011】
ドリフト方向をイオンミラーの短軸又は副軸を横切って生成することによって、複数のイオンミラーをお互いに隣接して、各ミラー内で比較的制限された(浅い)反射角で重ねることが可能になる。これより、ミラー電極自身の存在によって隣接するミラーがお互いからシールドされながら、MR TOF MSを通る大きな経路長を生成することができる。さらに、空間電荷効果が低減される。
【0012】
明細書を通して、デカルト座標軸X,Y,及びZが使用されるが、これが単に説明の容易さのためであり、MR TOF MSの絶対的な方向が重要ではない点が理解されるべきである。さらに、長手軸が一般的にTOF分離の方向にあると規定するにあたって、イオンは実際にはイオンミラーを通る平均経路を有するが、それは常にその電極に平行ではないことが認識されるべきである。これより、長手方向は、単純に、断面軸に直交して位置するデカルト方向を特定することが意図されている。
【0013】
本発明のこの局面の特定の好適な実施形態では、イオンに対称平面を少なくとも3回横切らせる電界を生成するように、電圧が電極に印加され得る。言い換えると、イオンは、イオンミラーの長手軸及び副軸を含む平面で見ると、「ガンマ」形を描く。
【0014】
イオンミラーの電界は、イオンミラーの通過中にイオンに少なくとも1回(且つ好ましくは2回)の空間的な圧縮を経験させることによって空間的な焦点形成を向上するように配置され得る。
【0015】
ある特に好適な実施形態では、イオンミラーは、一緒に第1のイオンミラー配列を構成するイオンミラーのスタックの一部を形成する。第2のイオンミラー配列もまた設けられて、これは第1のイオンミラー配列に向かい合っている。イオンは、第1のイオンミラー配列の第1のイオンミラーに向かい、そこで第2のイオンミラー配列に向かって反射され、それから第1のイオンミラー配列の第2のイオンミラーに反射され、第2のイオンミラー配列に戻る、という動きを繰り返す。これにより、イオンは、第1のイオンミラー配列の間で一連の「ガンマ」形のループを描き、それぞれ第2のイオンミラー配列によって反射される。このようにして、第1のイオンミラー配列の各イオンミラーの副軸の方向における「シフト」方向が確立される。第1のイオンミラー配列の各イオンミラーの内の空間的な焦点形成は、上述したヴェレンチコフ配置の顕著な欠点である空間的焦点形成手段の必要性を無くす。
【0016】
ある代替例では、第2のイオンミラー配列が同様に複数の(例えば4個の)イオンミラーを備えており、その各々が第1のイオンミラー配列の対応するイオンミラーに向き合っている。しかし、代替的な実施形態では、第2のイオンミラー配列は、第2のイオンミラー配列の反射平面に一般的に垂直な長手軸と第2のイオンミラー配列の断面の副軸とを含む対称平面を有し、イオンは、内部で反射するときに、第2のイオンミラー配列のその対称平面と交差する。第2のイオンミラー配列のこの対称平面は、好ましくは、第1のイオンミラー配列における各イオンミラーの長手軸及び副軸によって規定される対称平面に直交する。
【0017】
最適には、4個のイオンミラーが第1のイオンミラー配列の内部にあることが好ましいことが見出されている。4個のイオンミラーは、TOFの焦点形成の度合いを最適化するように見える。
【0018】
第1及び第2のイオンミラー配列をジグザグ様式に通過してきたイオンをその脱出時に検出させるように配置することが可能である。あるいは、イオンは、断片化チャンバなどのようなさらなるイオン処理装置まで通過させられ得る。さらに、イオンは、MR TOF MSを通って反射され得て、且つより好ましくは、MR TOF MSを合計3回通過するように再び前進方向に反射され得る。異なる質量対電荷比を有するイオンの飛行時間の相違のために、装置の通過回数が3回を超えると、従来技術の同軸ミラー配置に関連して記述したものと同様の方法で、望ましくない小さな質量分析範囲がもたらされる。
【0019】
本発明の第2の局面によれば、多重反射式飛行時間型質量分析器でイオンを反射させる方法が提供され、この方法は、
複数の電極を有する第1のイオンミラーであって、且つ第1のイオンミラーの内部でイオンの反射平面に一般的に直交する長手軸を規定する第1のイオンミラーを設けるステップと、
第1のイオンミラーに一般的に向かい合っている第2のイオンミラーであって、複数の電極を有し、且つ第2のイオンミラーの内部でイオンの反射平面に一般的に直交する長手軸を規定する、第2のイオンミラーを設けるステップと、
イオンを第1のイオンミラーに向かって導くステップと、
第1のイオンミラーに入射したイオンをそこから反射させる電界を生成するように、第1のイオンミラーの電極に電圧を印加するステップと、
第1のイオンミラーから反射したイオンを第2のイオンミラーに導くステップと、
第2のイオンミラーに入射したイオンをそこから反射させる電界を生成するように、第2のイオンミラーの電極に電圧を印加するステップと、
を含み、
イオンを第1のイオンミラーに導くステップ、第1のイオンミラーに電界を生成するステップ、及び/又は第1のイオンミラーから反射したイオンを第2のイオンミラーに導くステップが、イオンが、第1のイオンミラーの長手軸が位置するその対称平面と、第2のイオンミラーによって反射される前に少なくとも3回交差するように、平均イオン軌道を制御するステップを含む。
【0020】
本発明の他の局面によれば、多重反射式飛行時間型質量分析器でイオンを反射させる方法が、第1のイオンミラー配列を設けるステップであって、第1のイオンミラー配列が少なくとも一つのイオンミラーを有しており、そのイオンミラーが、その少なくとも一つのイオンミラーの内部のイオンの反射平面に一般的に垂直な長手軸を有しており、且つ、その又は各イオンミラーが、その又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極をさらに有している、ステップと、第2のイオンミラー配列を設けるステップであって、第2のイオンミラー配列が少なくとも一つのイオンミラーを有しており、そのイオンミラーが、その少なくとも一つのイオンミラーの内部のイオンの反射平面に一般的に垂直な長手軸を有しており、且つ、その又は各イオンミラーが、その又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極をさらに有している、ステップと、を含んでおり、第1のイオンミラー配列のその又は各イオンミラーがその長手軸及び主軸を含む対称平面を有しており、第2のイオンミラー配列のその又は各イオンミラーが同様にその長手軸及び主軸を含む対称平面を有しており、第1及び第2のイオンミラー配列が、イオンがそれらの間を通過し得るようにお互いに向かい合わせに位置しており、第1のイオンミラー配列のその又は各イオンミラーの対称平面が第2のイオンミラー配列のその又は各イオンミラーの対称平面と交差しており、この方法が、
イオンを第1のイオンミラー配列の第1のイオンミラーに向かって導くステップと、
イオンを第1のイオンミラー配列のその第1のイオンミラーで反射させるステップと、
イオンを第2のイオンミラー配列に導くステップと、
イオンを第1のイオンミラー配列に向かって第2のイオンミラー配列で反射させるステップと、
を含む。
【0021】
本発明はまた、多重反射式飛行時間型質量分析器(MR TOF MS)に拡張され、これは、
少なくとも一つのイオンミラーを含み、そのイオンミラーが、その少なくとも一つのイオンミラー内部のイオンの反射平面に一般的に垂直な長手軸を有しており、その又は各イオンミラーがさらに、その又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極を有している、第1のイオンミラー配列と、
少なくとも一つのイオンミラーを含み、そのイオンミラーが、その少なくとも一つのイオンミラー内部のイオンの反射平面に一般的に垂直な長手軸を有しており、その又は各イオンミラーがさらに、その又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極を有している、第2のイオンミラー配列と、
そこに電界を確立するように、第1及び第2のイオンミラー配列の電極に電圧を印加する手段と、
イオンが、引き続く処理又は検出のために第1及び第2のイオンミラー配列を出る前に少なくとも1回、第1及び第2のイオンミラー配列の間で反射するように導入させるように、イオンをイオン加速領域からMR TOF MSに導入するイオンガイド手段と、
を備えている。
【0022】
本発明の他の局面によれば、飛行時間方向に一般的に位置する第1のZ軸を有する多重反射式飛行時間型質量分析器が提供され、これは、
Y方向の焦点形成を提供する少なくとも一つのミラーの第1のセットと、
X方向の焦点形成を提供する少なくとも一つのミラーの第2のセットと、
少なくとも一つの時間焦点と、
を備えており、Z,Y,及びXが3次元空間に広がっている。
【0023】
本発明のさらに他の局面によれば、多重反射式飛行時間型質量分析器が提供され、これは、
長手方向を規定する多重に折り畳まれた飛行経路と、
第1の横断軸に沿って配置された細長い電極の第1のセットであって、その細長い電極の第1のセットが、第2の横断軸の方向における飛行経路の折り畳み及び焦点形成を提供するように配置された、細長い電極の第1のセットと、
第3の横断軸に沿って配置された細長い電極の第2のセットであって、その細長い電極の第2のセットが、第4の横断軸の方向における飛行経路の折り畳み及び焦点形成を提供するように配置された、細長い電極の第2のセットと、
を備えており、第1及び第3の軸がお互いに向かって傾斜していて、第2及び第4の軸がお互いに向かって傾斜している、多重反射式飛行時間型質量分析器。
【発明の効果】
【0024】
さらに好適な実施形態及び効果は、以下の記述、ならびに請求項から、明らかになるであろう。
【0025】
本発明は数多くのやり方で実用化され得て、いくつかの実施形態が、例示のみのために且つ添付の図面を参照して、ここで記述される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】多重反射式飛行時間型質量分析器の好適な実施形態の第3の角度の斜視図を示し、タイプ1及びタイプ2の向かい合ったイオンミラー配列を有している。
【図1B】図1に示されたタイプ1のイオンミラー配列のイオンミラーの一つの第3の角度の斜視図である。
【図2】図1の配列の一部をYZ平面において示す図である。
【図3】図1のMR TOF MSのYZ平面における断面を示す図であって、その平面における例示的なイオン軌道とともに示す。
【図4】図1のタイプ2のイオンミラー内部の電極の一つの可能な配列をXY平面における断面で示す図であって、いくつかの適切な電圧とともに示す。
【図5】図1のタイプ1のイオンミラー内部の電極の一つの可能な配列をYZ平面における断面で示す図であって、いくつかの適切な電圧とともに示す。
【図6】本発明を具現化するイオンミラーの代替的な配列を再びYZ平面における断面で示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態を再びYZ平面における断面で示す図である。
【図8】イオン源、リニアトラップ、及び図3のMR TOF MSを備える質量分析器システムを示す図である。
【図9】時間焦点上に焦点形成されたイオン軌道をXZ平面における断面で示す図である。
【図10】本発明のさらなる実施形態をXY平面における断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1Aは、多重反射式飛行時間型質量分析計(MR TOF MS)の第3の角度での投影(斜視)図を示す。このMR TOF MSは、2つの別個のイオンミラー配列を含む。第1のイオンミラー配列10は、1対の平面ミラーシステムの一方を形成し、以下の記述では「タイプ1」と示される。図1のMR TOF MSはまた第2のイオンミラー配列20も含み、これは、第1のイオンミラー配列10に一般的に直交して、以下の記述では「タイプ2」と示される。
【0028】
第1のイオンミラー配列10が、図1Aの好適な実施形態では、図1Aに示されるY軸300に平行な方向にお互いの上に積み重ねられた4個のイオンミラーを備えることに留意されたい。図1Bは、第1のイオンミラー配列の単一のミラーを示す。各イオンミラーは1セットの電極(その好適な実施形態は以下に図5に示される)を備えており、これは、電圧を印加されると、各イオンミラー内に電界を生成する。電極が各イオンミラーの長手軸(図1のZ方向200)に沿って途中までのみ延在して、第2のイオンミラー配列20と第1のイオンミラー配列10のイオンミラーの電極との間に無電界領域が存在していることに留意されたい。
【0029】
図1から、ミラーは端が閉じているように見えるが、これは、本発明の実施形態の要求事項ではない。
【0030】
さらに、図は、タイプ2のミラーをタイプ1のミラーに対して90°回転して示しているが、これもまた本発明の要求事項ではない。他の回転の度合いが、本発明では企図される。
【0031】
意図は、傾斜して且つ好ましくは直交したミラー配列を提供し、これらが、分離された時間的及び空間的な焦点の生成において協働することである。本発明の装置の最も単純な実施形態は、直交したミラー配列である。
【0032】
第1のイオンミラー配列の各イオンミラーは2つの対称平面を有しており、第1のものはX及びZ軸400、200を含み、第2のものはY及びZ軸を含む。第1のイオンミラー配列10におけるイオンミラーのために最も関連するものは、特に図2及び図3に関連して以下に詳細に説明されるように、XZ平面における第1の対称平面である。
【0033】
最後に図1に関して、第2のイオンミラー配列20が単一のイオンミラーを備えており、これが同様に(XZ及びYZ平面に)2つの対称平面を有するが、ここでは、最も興味のあるのはYZ平面における対称平面であることに、留意されたい。
【0034】
ここで図2及び図3を参照すると、MR TOF MSを通るイオンの平均軌道がここでは記述される。イオンは、MR TOF MSの外部にあるイオン源30で生成される。質量分析法における一つ又はそれ以上のステージにおけるオプションの前処理、及び/または、例えばイオン冷却、ならびに例えばリニアトラップにおける貯蔵に引き続いて、イオンは、MR TOF MSに向かって射出される。既知の方法で、イオンは、既知の強度の電界を通って加速され、それから、さらなる加速無しにMR TOF MSに向かってドリフトすることが許容される。これらのイオンはそれからイオンミラー配列10、20に向けられて、第2のイオンミラー配列20における最初の反射の後に、図2にて最も良く見えるミラー10aのスロット35aに到着する。これは、イオンミラー配列10の第1の(Y方向で)上方のイオンミラーの正面に形成される。イオンが、上記で特定されたように対称平面(すなわちXZ平面における対称平面)に対して角度αでアパーチャ35aに到着することが見られる。これより、イオン軌道は、第1のイオンミラー10aの入口スロット35aにて又はその周辺で、その対称平面を初めて通過する。
【0035】
長手方向におけるイオンミラー10aの第1の部分が電極47の無い無電界領域であるので、イオンは、第1のイオンミラー10aに入る方向に一般的に移動を続ける。イオンミラーの約1/3(すなわち、入口スロット35aと長手軸に沿って反射がさらに起こる平面との間の距離の約1/3)で、イオンは、複数の電極37によって確立された電界に入る。
【0036】
電界は、鞍点38で最初に空間的な焦点形成効果を有する。イオンはそれから、反射平面を規定する転回点45で反射される前に、イオンミラー10aの長手軸に一般的に平行な方向に、移動を続ける。イオンがXZ平面における対称平面と2度目に交差するのは、イオンが方向を変えるこの転回点45においてである。
【0037】
イオンはそれから、第2の鞍点39において2度目に空間的に焦点形成され、それから再び、イオンミラー10aの電界を出て無電界領域47に入る前に、イオンミラー10aの長手軸に一般的に平行な方向に、移動を続ける。イオンはそれから、イオンミラー10aの電界を出る前に偏向されて、Y方向の運動成分を再び有するようになる。これより、それらは、イオンミラー10aを通過して外に戻るときに、再び細長いスロット35aの領域で、イオンミラー10aのXZ平面における対称平面と3度目且つ最後に交差する。
【0038】
これより、イオンによって描かれる形状は、一般的にギリシャ文字の「ガンマ」に類似し得て、イオンは対称平面と3回交差する。
【0039】
長所及び重要な効果として、飛行経路は、長手方向(Z)及び副(Y)方向を含む平面上への飛行経路の投影が、第1のミラー10の一つへの入射ごとに1回、それ自身を横切る。
【0040】
細長いアパーチャ35aを通過して戻ると、イオンは図3の右から左に移動し続けて、直交する第2のイオンミラー配列(タイプ2)に入る。イオンは一般的に、第2のイオンミラー配列20の対称平面(YZ)に留まるが、その長手(Z)軸と鋭角に交差し、その角度は、第1のイオンミラー配列10に入るイオンがそのミラーの対称平面に交差する角度αであってもよく、そうでなくてもよい。
【0041】
第2のイオンミラー配列20における第2の反射に引き続いて、イオンは第1のイオンミラー配列10に向かって一般的に直線上を移動して戻り、そこで、第1のイオンミラー配列10の第2のイオンミラー10bの細長いスロット35bに入る。第2のイオンミラーは、第1のイオンミラー10aに隣接しているが、その長手軸はY方向に変位している。第2のイオンミラー10bは、好ましくは第1のイオンミラー10aと同一の構成を有し、これより、長手軸に沿って途中まで延在している電極のセットを有し、第2のイオンミラー10bに入るイオンの反射のための電界を提供する。
【0042】
イオンは再び、第2のイオンミラー10bを通って「ガンマ」形を描き、第2のイオンミラー10bの対称平面と3回交差し、第2のイオンミラー10bを出て行くイオンは、再びY方向での成分を有する方向でそうする。
【0043】
イオンはそれから第2のイオンミラー配列20に戻り、そこで長手軸に対してある角度で反射され、これより(図1,2,及び3の向きに見たときに)Y方向下向きの成分を有して移動し続ける。イオンはそれから、第1のイオンミラー配列10の第3のイオンミラー10cに入り、そこで「ガンマ」軌道のループを描いて、更なる時間のために第2のイオンミラー配列20に戻るように向けられる。ここで、それらは再び反射され、依然としてY方向下向きのドリフト成分を有して、第1のイオンミラー配列10の第4の且つ最後のイオンミラー10dに向かう。第4のイオンミラー10dを通る最後の横断を完了すると、イオンは第4のイオンミラー10dの細長いスロット35dを出て、その後に、検出のために検出器52に到着する。第1のイオンミラー配列10の第4のイオンミラー10dの後でのみ、1次、2次、及び3次の収差が最小になって、これより、飛行時間型焦点形成の最適な性質が提供される。
【0044】
第2のイオンミラー配列20は、ミラー配列10の焦点形成方向に直交するか又は少なくともある角度を有する第2の方向において、イオンの空間的分散を低減する。好ましくは、第2のイオンミラー配列20は、その第2の方向における焦点形成を提供する。
【0045】
図9は、第2のミラーアセンブリの焦点距離がイオン飛行経路のZ延長に等しい好適な構成を示す。すなわち、入射する平行ビームが転回点で焦点形成され、またその逆が生じる。この構成は、平行ビームから平行ビームまで、あるいは焦点形成された状態から焦点形成された状態まで、偶数回の反射を経ることが必要で、多重反射式構成に最も良く適している。その代わりに、最大焦点距離という利点を有し、エラーを低減する。
【0046】
好適な構成では、それぞれの他のミラーアセンブリがその主な焦点形成方向で、前者の振る舞いに影響しないという意味で、第1のミラーアセンブリが第2のものに直交していることが理解されるべきである。
【0047】
タイプ1及びタイプ2のミラーが直交している必要は無い。
【0048】
これより、図1、図2、及び図3の配置は、MR TOF MSの上流の加速領域と検出器との間の全経路長を顕著に増加させる。しかし、飛行経路は、図3において第1のイオンミラー配列10の第4のイオンミラー10dに向かい合う下側の破線によって示されるように、イオンミラー配列10,20でイオンの移動方向を逆転することによって、さらに(効果的には2倍に)増加され得る。検出器52に進む代わりに、第2の偏向器40が、第1のイオンミラー配列10の第4のイオンミラー10dを出るときに第2のイオンミラー配列20への入口での軌道を直線状にし、それからイオンを入射軌道に正確に戻すために使用され得る。戻りでは、イオンは第3の偏向器41によってX方向に偏向され得て、X方向に図面の平面の上方に位置する第2の検出器50によって捕捉され得る。第3の偏向器41は、全ての対象イオンが前進経路でMR TOF MSを通過した後にのみ動作されることができて、これはもちろん、比較的軽いイオンが既に戻ってきているときに重いイオンがちょうど第3の偏向器41を通過するので、質量範囲を制限する。しかし、これは、飛行時間の比率が約8対1、すなわち、M/Z:(M/Z)MAX/(M/Z)MIN>60という比率のイオンに対してのみ、問題になる。この制限は、イオン源30で普通に使用されるRF伝送装置が質量範囲にはるかに厳しい制限を課すので、限定的な実用上の懸念である。
【0049】
飛行経路は、第3の偏向器41の代わり第4の偏向器42を使用することによって、さらにもっと増加され得る。第4の偏向器42は、イオンの経路を直線化するが、(イオンを第2の検出器50での検出のためにYZ平面から上方に偏向させる第3の偏向器41とは対照的に)それらを一般的にYZ平面に維持する。図3の上部を参照のこと。その軌道が第2のイオンミラー配列20の長手軸に対して直線化されたイオンは、第2のイオンミラー配列20の電界に入る方向に一般的に平行な経路に沿って戻るように、内部で反射され、それに引き続いて、第1のパスの間に横断した経路と同様に2つのイオンミラー配列10、20を通る経路を横断するように、第1のイオンミラー10aの長手軸に対してある角度で、第1のイオンミラー配列10に偏向されて戻る。この実施形態では、イオンはMR TOF MSを、前進方向で2回及び「逆」方向で1回の3回通過してから、第1のイオンミラー配列10の第4のイオンミラー10dの細長いスロット35dに到着し、第1の偏向器43がそれから駆動されて、図3の紙面から上方に(X方向に)、第1の検出器51に向かってイオンを偏向させる。好ましくは、第1の偏向器43は、重いm/zイオンが第2の偏向器40による偏向から戻るときに通過すると、スイッチオンされる。それからイオンは、第1の偏向器51への第2の前進経路を通り、軽いm/zイオンの後を重いm/zイオンが続く。この場合、飛行時間の比率は約2.4:1である。これは、より中庸な(M/Z)MAX/(M/Z)MIN≒6をもたらす。飛行経路のさらなる増加(例えば、イオンに2つのイオンミラー配列10、20を4回通過させることによる)は、質量分析範囲をさらに低減するが、分解能を改善する。例えば、偏向器を検出器の前に配置することによる、あるいは実際に偏向器を検出器と一体化することによるイオン経路からのより急峻な偏向は、この比率を約10〜20%改善することができる。
【0050】
この場合のような第1及び/又は第2の検出器50,51の代わりに、イオンは代わりに、X方向でMR TOF MSを通る通過平面から、質量分析の他のステージ(図面には示されていない)に除去され得る。例えば、断片化装置が図3の平面の外(X方向)に配置され得て、断片化に引き続いて、イオンは同じMR TOF MS又は他の質量分析器に再注入されることができる。
【0051】
本発明を組み込んだ質量分析器は、多極であることができる第1の質量選択器、イオントラップ、又は本発明の実施形態を含む飛行時間計器、あるいはイオンモビリティ装置及び任意の既知の衝突、断片化、又は反応装置、及び好ましくは本発明の実施形態であることができるか、あるいは、特に第1の質量分析器が本発明の実施形態であるときには、反射式TOF又はイオントラップ質量分析器、例えばRFイオントラップ、又は静電トラップ、又は任意のタイプのFT/MSのような他の質量分析器を備えることができる。両質量分析器は、別個の検出手段を有することができる。あるいは、低コスト版では、第2の質量分析器の後にのみ検出手段を有してもよい。
【0052】
分析器が上述のように再入射を使用しないときには、本発明の2つの実施形態の組み合わせが効果的であることができる。動作モードは、既知の様式でフルMS1、ならびにMS2又はMSn、及び本明細書で開示される広域又は狭域質量範囲検出モードを含む。効果的には、本発明の装置は、クロマトグラフ、及び大気圧イオン源又はレーザー吸着イオン源を備える。
【0053】
図1、図2、及び図3に示される第1のイオンミラー配列10におけるイオンミラー10a〜10dは平面型であるが、それらがそのように形成されるべきであるという要求事項は無い。特に、楕円又は円形の断面のイオンミラーも、等しく使用されることができる。本質的ではないが、各イオンミラーの断面が主軸及び副軸を有すること(すなわち、断面が例えば長方形又は長円形であること)が好ましい。各イオンミラーにおける「ガンマ」形状のイオン軌道が、イオンのドリフト方向を、主軸ではなく副軸の方向であるY方向に確立させる。
【0054】
好ましくは、第1のセットのミラー(タイプ1)の主軸及び第2のセットのミラー(タイプ2)の主軸は、お互いに異なる。
【0055】
図面に示されているように、ミラーは好ましくは、ロッド又はプレート形状の細長い電極又は電極要素を備えており、これらはミラーのそれぞれの主軸に沿って配置される。ミラーは、端効果を無くすために、副端において同様の電極配置で閉じられることができる。これらの閉じる要素はまた、配置の中心で見出されるような理想的な電界を模擬するPCBであることもできる。しかし、ミラーは、それらの端がイオンビームの経路から十分に離れていれば、副端が開いていることができる。
【0056】
非平面ミラーに対しては、電極は、打ち抜き又は電気化学エッチングによって形成され得る。好適な具現例は、平面ミラーを構成するように、その端で平坦なプレートを使用して端効果を最小化する。平らなプレートは、好みによって、イオン軌道から離れた高さで、好ましくはミラー高さの1.5倍から2倍以上で、少なくとも一つのミラーに置かれる。
【0057】
第2のイオンミラー配列20は、同様に単一の平面ミラーであってもよく(図1に示されるように)、あるいは、単一の楕円ミラーであってもよい。飛行長をさらに増すために、タイプ2のミラーの付加的なレイヤーが、図1の単一の第2のイオンミラー配列20の上方又は下方(すなわち+Y及び/又は−Y方向)にて使用され得る。イオンは、イオンが各タイプ2のミラー配列に常に対称平面に沿って入ることを可能にする一対の対向している偏向器プレートを使用して、レイヤーからレイヤーに転送され得る。さらに、各タイプ2のミラー配列における単一のイオンミラーの代わりに、複数のミラーが代わりに使用されることができて、これらは平面又は非平面(例えば断面が楕円又は円形)であってもよい。そのような配置は図6に示されており、ここでは、第1及び第2のイオンミラー配列の全てのミラーがタイプ1であり、それらの間に単一の平面レンズ60が形成されている。平面レンズ60は、イオンを「X」方向に、すなわち図6の紙面の面内で焦点形成するように作用する。なぜなら、先の実施形態(例えば図1)の交差した対称平面無しには、その方向でイオンを焦点形成する他の源が存在しないからである。
【0058】
この平面レンズ60の焦点形成は、図1〜図3の配置におけるように強力ではないが、図6の構成は、空間電荷に対してより高い耐性を有している。なぜなら、イオンパケットが、空間電荷の影響が最も顕著に期待されるその転回点において、近傍のミラーを移動している他のm/zのイオンからシールドされるからである。このシールドは、イオンがタイプ1のミラーの内部にあるときに生じ、そのために図6の実施形態では、イオンは、それらの転回点の全てにおいてシールドされる。図6の配置はまた、製造が最も簡単である。なぜなら、図1の単一の「タイプ2」の電極は、より長い経路長に対しては、適切な公差内に維持することが困難になるからである。
【0059】
図3の配列に関して、図6のMR TOF MSを通る前進経路は、偏向器40及び41を使用して破線によって示されるように飛行長を2倍にすることによって、逆転されることができる。検出器50は、ここでも再び、図6の図面の平面の上方又は下方に位置される。飛行長のもっとさらなる増加は、図3に関連して以前に記述されたように、(再び「前進」方向に)イオンに図6の配置を3回通過させることによって、達成され得る。さらに、レンズ60の複数レイヤーが使用されることができる。
【0060】
図7はさらに、図6の原理をさらに展開する更なる実施形態を示す。図3及び図6に示されるように第1及び第2のイオンミラー配列をそれらが直線状に向かい合うように配置する代わりに、イオンミラーは代わりに、円形ミラー70を中央に、共通の中心に向かって向けられ得て、イオンは、イオンミラーの一般的な円形配置の周りを動く。
【0061】
図6及び図7の配置は、以前のように平面ミラーを示しているが、ミラーは代わりに、断面は楕円、または他の幾何学的形状であってもよい。これは、楕円断面ミラーが、例えば軌道平面に垂直な空間的焦点形成も提供し得るので、効果的であり得る。もちろん、収差が顕著に増加しないように、直交する焦点形成を組織することが必要である。楕円断面ミラーを使用することによって、図6及び図7のミラー60/70が必要とされ得ないこともあり得る。
【0062】
あるいは、図3の実施形態におけるように、図6及び特に図7の横断平面における空間的焦点形成は、2つのタイプ又は向きのミラーを使用することによって構成されることができ、その各々は、異なる横断方向における焦点形成を提供し、所望の長手(時間)焦点の生成においては両方が協働する。
【0063】
図8は質量分析器システム100を示し、これは上述のMR TOF MSを含む。図8に示されるMR TOF MSの特定の実施形態は図3の実施形態のものであるが、図6又は図7の実施形態がもちろん、等しく使用されることができる。
【0064】
システム100のうちで本発明の理解に関連する部分のみが、図8に示されている。システムは、電子噴霧又はMALDI源のようなイオン源110を含む。これは、イオンの準連続流を生成し、これがレンズ120を介して衝突セル130に導かれる。ここで、イオンは(オプションとして)断片化され、それから第2のレンズ140を介してリニアトラップ150に導かれる。リニアトラップ150は、直線状の細長いロッドを有する直線四重極、六重極、又は八重極トラップのような様々な形態を取り得て、あるいは、湾曲し得る(すなわち、延長方向に沿って一定部分及び一定のロッド距離を有する湾曲した細長いロッドを有する)。最も好ましくは、我々の同時継続出願第GB0626025.1号に記述されているように、リニアトラップ150は湾曲されるが、延長軸に沿って非直線の断面を有する。この出願の内容は、ここに全体的に援用される。
【0065】
使用時には、イオン源110で生成されたイオンはレンズ120を通過し、断片化セル130に入る。ここで、それらは、分析されているイオン又はユーザの選択に依存して、断片化されてもよく、あるいは、されなくてもよい。それらはそれから、第2のレンズ140を介してリニアトラップ150に進み、そこでそれらは捕捉されて冷却される。いくらかの未完成の質量選択もまた、リニアトラップ150内部で起こり得る。イオンパケットはそれから、上記で参照されたGB0626025.1に記述されているように、一般的にリニアトラップの湾曲した延長軸の方向に射出されて、トラップ150の下流で焦点形成される。それらはそれから、第2のイオンミラー配列20を通過し、図3に関連して上記で説明したように、上方に続く。
【0066】
MR TOF MSを1回、2回、又は3回通過した後に、イオンは図面の平面外に、例えばイオンを紙面の面外の検出器50に偏向する偏向器41によって偏向され得る。
【0067】
タイプ2のミラーの一つの特定の実施形態が図4のXZ断面に示されており、タイプ1のミラーの一つの特定の実施形態が図5のYZ断面に示されている。図4及び図5は、イオンミラーの幾何学的且つ電気的パラメータを詳細に示す。一連の電圧が電源(図示せず)から各々の電極に供給され、電位が精密接地金属ロッドのセットに印加される。例えば、ロッドは、例えばステンレススチール、インバー、又は金属コートされたガラスで形成され得る。あるいは、薄い又は厚い金属プレートのセット、又は印刷回路基板が、同じ効果を提供するために使用されることができる。2kVで加速されたイオンに対して、第2及び第1のイオンミラー配列20、10のための好適な実施形態で使用されている特定の電圧が、図4及び図5の表にそれぞれ示されている。
【0068】
図10は他の好適な実施形態を示し、これは、1パス,3パス,及び5パスから(2*n−1)パスモードにおける多重反射アセンブリの使用を許容する。
【0069】
典型的には、1パスモードは迅速な低分解能質量分析を許容し、3パスモードは、固定周波数で動作するRFイオントラップの質量範囲にほぼ合致する質量範囲に渡った高分解能質量分析を許容し、より高いパスモードは、より小さい質量範囲の高分解能「ズーム」動作モードを提供する。
【0070】
射出器トラップ210は、好ましくは(必須ではない)横断方向の一つに平行に、且つミラーセットの少なくとも一つの延長方向に平行に、方向付けられている。有用なことには、イオン運動の平面の外側に位置されることができ、その特性を長手運動から切り離す。
【0071】
射出器トラップ210は、WO2008/081334として発行された出願人の同時係属出願に開示されているように、湾曲した非直線RFイオントラップであり得て、その出願の内容は参照によってここに援用される。
【0072】
イオンは、イオン源から直接に、あるいは第1の質量分析器及び第1の質量分析器の一部であることもできるオプションの第1の反応装置を通って、注入器トラップに入ることができる。
【0073】
この構成では、単一の検出器290が、全ての単一又は複数パス分析モードに対して使用されることができる。
【0074】
Y偏向器221,222,及び223が、図面に示されているように、この装置におけるイオンの入射、偏向、及び脱出を組織化する。
【0075】
好ましくは、この構成では、偏向器要素290は、再び注入器トラップ210及び横断主方向230に平行である。偏向器要素290は、イオン運動の平面内又は平面外にあることができる。
【0076】
図面に描かれているタイプ1及びタイプ2のミラーは、それらが3辺で閉じられていることを示唆しているが、これは必須ではない。
【0077】
このシステム内で、好ましくは分割流ターボ分子ポンプを使用して、圧力を約10-9〜10-8mbarよりも低く保持することが好ましい。好適な実施形態に従ったMR TOF MSにおける好適な全体的な飛行長は、10〜200mの範囲にあり、システムの全体長は約0.5〜1mの間である。平均的なイオン加速は、好ましくは1〜20kVの範囲内であり、図4及び図5の配置では2kVが使用されている。
【0078】
このように記述された配置は、単一反射式飛行時間型質量分析器に対して、経路長における大きな増加を提供するが、同時に、空間的な焦点形成を改善し、イオンパケットのお互いからのシールドを改善して空間電荷効果を最小化し、イオン源とイオンミラーの端電界との間の空間的な衝突の除去によって、単純化された射出スキームを提供する。
【0079】
図9は、これを明確には示していないが、焦点が他のミラーにおけるイオンの転回点に存在する(他のミラーは描かれていない)場合である。描かれているミラーの動作は、ミラー20であり、Xにて焦点形成する。
【0080】
完全な通過ごとに2つのX焦点が存在する。これは、ミラー20への入射ビームが平行であれば、X方向のビームは次のミラー10(すなわち10a)の転回点で焦点を結ぶことを意味する。ビームはX方向で、ミラー10aのZにおける転回点でクロスし、再び収束し、ミラー10はX焦点形成機能を有さない。それはミラー20に入り、そのミラーによって平行にされる。ミラー10bに平行に入り、10bから平行に出てきて、それから再び20に入る。ミラー20は、ミラー10cの転回点でそれに焦点を結ばせる。それはクロスし、発散してミラー20に戻り、ミラー20によって再び平行にされる。
【0081】
図3に示されているように、完全な通過ごとに10個のY焦点がある。2個はセット10の各ミラーにあり、加えてさらに2個がミラー20の転回点にある。
【0082】
図10に模式的に描かれているミラーシステムは、検出器にて、及びビームが逆転されると注入器の出口を通過する平面で、2次の飛行時間焦点形成を有する。すなわち、全てのエネルギー及び空間収差係数は2次まで零である。それは、2次の時間焦点に一致する3次の時間焦点を最小化する(零ではない)。
【0083】
ミラーシステムはX及びYで焦点を生成し、それらは時間焦点には一致しない。これは、検出器にとっては、それがイオンビームをより大きな表面上で広げるときに利点を有し、計測器を通る延長された通過の間には、X及びYに含まれていて、大きすぎて検出できないように発散することは許されない。
【0084】
また、イオンは、特にXにおける焦点がYにおけるものとは同じにならず、点状の焦点ではなく線状の焦点を提供するので、それらの経路の大部分では焦点形成されず、空間電荷効果を低減する。
【0085】
ミラーシステムを奇数回通過することは、図10の実施形態におけるY偏向器221、222、223の動作のために、有益である。ビームの偏向は収差をもたらすが、好適な実施形態は、ミラーシステムを通る奇数個の経路が存在するときに、その収差がほとんどキャンセルされる偏向器システムを利用する。
【0086】
1パスモードで動作するときには、Y偏向器223の動作は、Y偏向器221の動作を打ち消す。
【0087】
3,5,7,……パスモードで動作するとき、Y偏向器222の動作は、それ自身をキャンセルする。
【0088】
3,5,7,……パスモードで動作するとき、Y偏向器221の動作は、第1の動作を除いてそれ自身をキャンセルし、これは、Y偏向器223の検出の前に最終動作によってキャンセルされる。
【0089】
ミラーシステムの単一の飛行経路が4mの飛行を与える特定の例では、達成される典型的な解像度は1回の通過で約20k、3回の通過で60k、及び5回の通過で100kである。
【0090】
この実施形態は、図10に描かれているように、注入器の出口におけるZ−X平面及び検出器平面に、時間焦点を有する。これは、前進方向に移動するときに、第1のイオンミラー配列の第4のイオンミラー10dを通る経路の後でのみ、1次、2次、及び3次の収差が最小を達成するからである。同様に、ビームが逆転されると、ミラー10aを通る経路の後でのみ、収差が最小化される。
【0091】
注入器210は、ミラーシステムの1回の通過よりも多く実行されるときにイオンビーム経路と干渉しないように、X内で変位され、注入器から発せられたイオンはX偏向器によってZ−Y平面に偏向される。検出器は、変位しているようには示されていないが、この実施形態では、その中心平面がZ−Y平面にある。あるいは、X内で注入器210及びコリメータ220の変位と同じ又は反対の方向に変位して、Z−Y平面の外にあってもよい。
【0092】
この実施形態では、追加のX偏向器が必要とされる(図10には示されていない)。検出器290がこのように平面外に変位されると、X偏向器240の動作による収差は、適切に設計されれば、追加のX偏向器の動作によって実質的にキャンセルされ得る。
【0093】
Y偏向器221、222、223のキャンセル効果は、検出器290が、最良の時間焦点でイオンビームに垂直に位置していて、傾斜していないことを意味する。奇数回の通過が実行されるときには、単一の検出器が使用されることができる。これらの理由から、この配置が、図3のものよりも好ましい。
【0094】
コリメータ220は、シールド囲いの中に含まれた入口レンズ及び2つの「ボタン」レンズ(簡潔化のために図示されていない)を備えている。コリメータはイオン注入器に結合されて、やはりZ−Y平面の外にある。注入器及びコリメータは、ミラーシステムへの注入に適したイオンビームを生成し、ビームは、Z−Y平面に対して傾斜されていて、X偏向器240の近傍でそれと交差する。X偏向器は、イオンビームをミラーシステムの平面内に偏向する。
【0095】
1パスモードから複数パスモードに切り換えるために、イオンビームを軌道250に沿って偏向するように、Y偏向器222が駆動される。ミラー20は、ビームをY偏向器222を通って送り返し、ミラーシステムに戻す。Y偏向器221は、イオンビームを軌道260に沿って偏向するように駆動される。ビームはそれから、第1の前進経路においてと実質的に同じ軌道に沿って、ミラーシステム内を通過して戻る。この偏向配置は、ミラーシステム内の飛行経路を増すために、1回又はそれ以上使用されることができて、ビームは最終的に検出器290に到達する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重反射式飛行時間型質量分析器でイオンを反射させる方法であって、
複数の電極を有するイオンミラーを設けるステップにおいて、前記イオンミラーが、ミラー内のイオンの飛行時間分離方向に一般的に位置する前記イオンミラーの長手軸(Z)に各々が直交する第1の副軸(Y)及び第2の主軸(X)を有する断面を有するステップと、
イオンを前記イオンミラーに向かって導くステップと、
電界を生成するように電圧を前記電極に印加するステップであって、これが、
(a)イオンの平均軌道を、前記ミラーの長手(z)軸及び主軸(X)を含む前記イオンミラーの対称平面に交差させ、
(b)前記イオンを前記イオンミラーで反射させ、
(c)前記イオンを、前記イオンミラーを通過するイオンの平均軌道が、前記対称平面に直交して且つそこから発散する方向(Y)における運動成分を有するような方向で、前記イオンミラーから脱出させる、ステップと、
を包含する、方法。
【請求項2】
電圧を印加するステップが、
イオンに、前記イオンミラー内での反射毎に、前記対称平面を少なくとも3回横切らせる電界を生成するように、電圧を印加するステップを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イオンをイオンミラーに導くステップが、
前記イオンを前記イオンミラーに、前記対称平面に対する非零角度で導き、前記イオン平均軌道の反射平面の上流で最初に前記イオンを前記対称平面と交差させるステップを含み、
印加される電圧が、前記イオンを、前記イオンミラー内の前記反射平面で又はその近傍で、前記対称平面と2度目に交差させ、且つ前記イオンを前記イオンミラーから、前記反射平面の下流で前記対称平面と3度目に交差させるように再び脱出させるように調整されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電界が、前記イオンミラー内でイオンに、前記イオンミラーの通過の間に少なくとも1回空間的焦点形成を経験させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
イオンを焦点形成させるステップが、前記イオンミラーの前記対称平面に垂直な方向(Y)でイオンを焦点形成させるステップを含む、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項6】
イオンを焦点形成させるステップが、前記イオンミラーの内部でイオンを焦点形成させるステップを含む、請求項4または請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記イオンミラーが、第1のイオンミラー配列における複数の(n+1)個のイオンミラーの一つを形成し、前記第1のイオンミラー配列におけるさらなるn個のイオンミラーが各々複数の電極を有し、各々のさらなるイオンミラーが第1の副軸(Y)及び第2の主軸(X)を有する断面を有し、それらの各々が、各々のさらなるn個のイオンミラーにおけるイオンの飛行時間分離方向に一般的に位置する前記イオンミラーの長手軸(z)に垂直であり、前記第1のイオンミラー配列におけるさらなるn個のイオンミラーの各々における前記長手軸が、お互いに及び前記第1のイオンミラーの前記長手軸(z)と一般的に平行に位置しており、
前記方法がさらに、
(d)前記第1のイオンミラー配列の第1のイオンミラーを出たイオンを、前記第1のイオンミラー配列の第2のイオンミラーに、前記イオンが前記第1のイオンミラーに入ったときと一般的に同じ方向で戻させるステップと、
(e)この方法のステップ(a)〜(d)を、その第2のミラーに対して繰り返すステップと、
をさらに含む、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項8】
さらに、
(f)前記第1のイオンミラー配列の前記第2のイオンミラーを出たイオンを、今度は前記第1のイオンミラー配列のさらに(n−1)個のイオンミラーに戻させるステップであって、前記イオンは各々のさらなる(n−1)個のイオンミラーに、前記イオンが前記第1のイオンミラーに入ったときと一般的に同じ方向で入る、ステップと、
(g)この方法のステップ(a)〜(c)を、各々の前記さらなる(n−1)個のイオンミラーに対して繰り返すステップと、
をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のイオンミラー配列が、4個のイオンミラー、又は4個の整数倍のイオンミラーを備えている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のイオンミラー配列を通過したイオンを反射して、前記第1のイオンミラー配列を逆向きに通過させるステップをさらに含む、請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
一度逆向きに通過したら、イオンを反射して前進方向で2度目に前記イオンミラーを通過させるステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
イオンを前記第1のイオンミラー配列に向けて戻させるステップ(d)及び/又はステップ(f)が、第2のイオンミラー配列にイオンを反射させるステップを含み、第2のイオンミラー配列は、その第2のイオンミラー配列におけるイオンの飛行時間分離方向に一般的に延在する前記第2のイオンミラー配列の長手軸に各々一般的に直交する第1の副軸及び第2の主軸を有する断面を有しており、前記長手軸及び前記主軸を含む前記第2のイオンミラー配列の対称平面が、前記第1のイオンミラー配列の前記対称平面と非零角度で交差する、請求項5〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のイオンミラー配列の対称平面が、前記第1のイオンミラー配列の前記対称平面と、実質的に直角に交差する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
イオンを前記第1のイオンミラー配列に向けて戻させるステップ(d)及び/又はステップ(f)が、複数のm個のイオンミラーを備える第2のイオンミラー配列にイオンを反射させるステップを含み、前記第2のイオンミラー配列の前記m個のイオンミラーの各々は複数の電極を有しており、各々のさらなるイオンミラーが、前記m個のイオンミラーの各々におけるイオンの飛行時間分離方向に一般的に延在する前記イオンミラーの長手軸に各々一般的に直交する第1の副軸及び第2の主軸を有する断面を有しており、前記第2のイオンミラー配列における前記m個のイオンミラーの各々の長手軸が、お互いに及び前記第1のイオンミラー配列の前記イオンミラーの長手軸に、一般的に平行に位置しており、前記第1及び第2のイオンミラー配列が、イオンが前記第1及び第2のイオンミラー配列の間で反射しながら行き来するようにお互いに向かい合っている、請求項5〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のイオンミラー配列における前記イオンミラーの各々が、各々の前記イオンミラーの長手軸及び主軸を含む対称平面を備えており、前記第2のイオンミラー配列における各々の前記イオンミラーの前記対称平面が、前記第1のイオンミラー配列における各々の前記イオンミラーの前記対称平面と一般的に平行である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
各々のイオンミラーの前記主軸に一般的に平行な方向にイオンを焦点形成させるステップをさらに備えている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1及び第2のイオンミラー配列の間に位置するイオン光学装置を使用して、イオンを前記第2の方向に焦点形成させるステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記又は各々のイオンミラーを通過した後にイオンを検出するステップをさらに含む、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項19】
イオンを検出するステップが、前記又は各々のイオンミラーの前記対称平面から外れて変位した検出器で、イオンを検出するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記又は各々のイオンミラーを通過したイオンを、断片化装置のような質量分析法のさらなるステージに向かわせるステップをさらに含む、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項21】
イオン源でイオンを生成するステップと、
生成されたイオン、又はその派生物/断片をリニアトラップで貯蔵するステップと、
イオンを前記リニアトラップからMR TOF MSに向かって射出するステップと、
をさらに含む、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項22】
前記イオンを前記リニアトラップから前記MR TOF MSに向かって、直交して射出するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記リニアトラップにおける貯蔵に先立ってイオンを断片化するステップをさらに含む、請求項21又は請求項22に記載の方法。
【請求項24】
多重反射式飛行時間型質量分析器でイオンを反射させる方法であって、
複数の電極を有する第1のイオンミラーであって、且つ前記第1のイオンミラーの内部でイオンの飛行時間の広がりに一般的に平行な長手軸とを有する第1のイオンミラーを設けるステップと、
前記第1のイオンミラーに一般的に向かい合っている第2のイオンミラーであって、複数の電極を有し、且つ前記第2のイオンミラーの内部でイオンの飛行時間の広がりに一般的に平行な長手軸を規定する、第2のイオンミラーを設けるステップと、
イオンを前記第1のイオンミラーに向かって導くステップと、
前記第1のイオンミラーに入射したイオンをそこから反射させる電界を生成するように、前記第1のイオンミラーの電極に電圧を印加するステップと、
前記第1のイオンミラーから反射したイオンを前記第2のイオンミラーに導くステップと、
前記第2のイオンミラーに入射したイオンをそこから反射させる電界を生成するように、前記第2のイオンミラーの電極に電圧を印加するステップと、
を含み、
前記イオンを前記第1のイオンミラーに導くステップ、前記第1のイオンミラーに電界を生成するステップ、及び/又は前記第1のイオンミラーから反射したイオンを前記第2のイオンミラーに導くステップが、イオンが、前記第1のイオンミラーの長手軸が位置するその対称平面と、前記第2のイオンミラーによって反射される前に少なくとも3回交差するように、平均イオン軌道を制御するステップを含む、方法。
【請求項25】
前記イオンを前記第1のイオンミラーに導くステップ、前記第1のイオンミラーに電界を生成するステップ、及び/又は前記第1のイオンミラーから反射したイオンを前記第2のイオンミラーに導くステップが、イオンが、前記第1のイオンミラーの対称平面と、前記第1のイオンミラーの電極によって生成された電界の内部で1回及びその電界の外で2回の3回交差するように、平均イオン軌道を制御するステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第2のイオンミラーから出てきたイオンを前記第2のイオンミラーに一般的に向かい合っている第3のイオンミラーに向かわせるステップをさらに含み、前記第3のイオンミラーが、前記第1のイオンミラーの長手軸に一般的に平行であるがそこからオフセットしている長手軸と、電圧印加されるとイオンを前記第3のイオンミラーから反射させる電界を生成する複数の電極とを有する、請求項24又は請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第2のイオンミラーから前記第3のイオンミラーへのイオンの入射方向を制御するステップ、及び/又は、前記第2から第3のイオンミラーへの及びそこから戻る平均イオン軌道が、その長手軸が位置する前記第3のイオンミラーの対称平面と少なくとも3回交差するように前記第3のイオンミラーの電界を制御するステップ、をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第3のイオンミラーから前記第2のイオンミラーへイオンを再び向かわせるステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第3のイオンミラーからのイオンを、前記第2のイオンミラーに隣接する第4のイオンミラーに向かわせるステップをさらに含み、前記第4のイオンミラーが前記第1及び第3のイオンミラーと一般的に向かい合っており、且つ前記第2のイオンミラーの長手軸に一般的に平行であるがそこからオフセットしている長手軸を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記第2のイオンミラーからのイオンを前記第2のイオンミラーに一般的に向かい合っている第4のイオンミラーに向かわせるステップであって、前記第4のイオンミラーが、前記第1及び第3のイオンミラーの長手軸に一般的に平行であるがそこから変位された長手軸と、電圧印加されると前記第4のイオンミラーから出たイオンを再び前記第2のイオンミラーに向かって反射させる電界を生成する複数の電極とを有する、ステップと、
イオンを前記第2のイオンミラーで反射させるステップと、
前記第2のイオンミラーからのイオンを前記第2のイオンミラーに一般的に向かい合っている第5のイオンミラーに向かわせるステップであって、前記第5のイオンミラーが、前記第1、第3、及び第4のイオンミラーの長手軸に一般的に平行であるがそこから変位された長手軸と、電圧印加されると前記第5のイオンミラーから出たイオンを再び前記第2のイオンミラーに向かって反射させる電界を生成する複数の電極とを有する、ステップと、
をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第5のイオンミラーから反射したイオンを前記第2のイオンミラーに向かわせるステップの後に、
イオンを、先に出てきた方向に一般的に対向する方向に移動して前記第5のイオンミラーに入射するように、前記第5のイオンミラーに向かって反射するステップと、
引き続いて前記イオンを、前記第2、第4、第2、第3、第2、及び第1のイオンミラーに逆方向に向けさせるステップと、
をさらに含む、請求項30に記載のステップ。
【請求項32】
前記イオンミラーの各々の長手軸を、一般的にお互いに平行であるがお互いに同軸ではないように配置するステップをさらに含む、請求項24〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記イオンミラーの各々の長手軸を、お互いの長手軸の長手軸から前記MR TOF MSを通るイオンのドリフト方向に変位させるステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
多重反射式飛行時間型質量分析器でイオンを反射させる方法であって、
第1のイオンミラー配列を設けるステップであって、前記第1のイオンミラー配列が少なくとも一つのイオンミラーを有しており、そのイオンミラーが、その又はそれらのイオンミラーにおけるイオンのTOF分離方向に一般的に規定された前記又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極を有している、ステップと、
第2のイオンミラー配列を設けるステップであって、前記第2のイオンミラー配列が少なくとも一つのイオンミラーを有しており、そのイオンミラーが、前記第1のイオンミラー配列が、その又はそれらのイオンミラーにおけるイオンのTOF分離方向に一般的に規定された前記又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極を有している、ステップと、
を含んでおり、
前記第1のイオンミラー配列の前記又は各々のイオンミラーがその長手軸及び主軸を含む対称平面を有しており、前記第2のイオンミラー配列の前記又は各々のイオンミラーが同様にその長手軸及び主軸を含む対称平面を有しており、前記第1及び第2のイオンミラー配列が、イオンがそれらの間を通過し得るようにお互いに向かい合わせに位置しており、前記第1のイオンミラー配列の前記又は各々のイオンミラーの対称平面が前記第2のイオンミラー配列の前記又は各々のイオンミラーの対称平面と交差しており、
この方法が、
イオンを前記第1のイオンミラー配列の第1のイオンミラーに向かって導くステップと、
イオンを前記第1のイオンミラー配列のその第1のイオンミラーで反射させるステップと、
イオンを前記第2のイオンミラー配列に導くステップと、
イオンを前記第1のイオンミラー配列に向かって前記第2のイオンミラー配列で反射させるステップと、
を含む、方法。
【請求項35】
前記イオンを前記第1のイオンミラー配列の第2、第3、及び第4のイオンミラー、及び前記第2のイオンミラー配列の間で、一般的に「ジグザグ」パターンで反射させるステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
一つ又はそれ以上のイオンミラーを備えており、前述のいずれかの請求項の方法ステップを実行するように構成された、多重反射式飛行時間型質量分析器。
【請求項37】
多重反射式飛行時間型質量分析器(MR TOF MS)であって、
少なくとも一つのイオンミラーを有しており、そのイオンミラーが、前記イオンミラーにおけるイオンのTOF分離方向に一般的に規定された前記又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極を有している、第1のイオンミラー配列と、
少なくとも一つのイオンミラーを有しており、そのイオンミラーが、前記イオンミラーにおけるイオンのTOF分離方向に再び一般的に規定された前記又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極を有している、第2のイオンミラー配列と、
そこに電界を確立するように、前記第1及び第2のイオンミラー配列の電極に電圧を印加する手段と、
前記イオンを、引き続く処理又は検出のために前記第1及び第2のイオンミラー配列を出る前に少なくとも1回、前記第1及び第2のイオンミラー配列の間で反射するように導入させるように、イオンをイオン加速領域から前記MR TOF MSに導入するイオンガイド手段と、
を備えており、
前記第1のイオンミラー配列が、その長手軸及び主軸を含む第1の対称平面を有しており、
前記第2のイオンミラー配列が、その長手軸及び主軸を含む第2の対称平面を有しており、前記第1及び第2の対称平面が非零角度でお互いに交差する、多重反射式飛行時間型質量分析器。
【請求項38】
多重反射式飛行時間型質量分析器(MR TOF MS)であって、
少なくとも一つのイオンミラーを有しており、そのイオンミラーが、前記イオンミラーにおけるイオンのTOF分離方向に一般的に規定された前記又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極を有している、第1のイオンミラー配列と、
前記第1のイオンミラー配列に一般的に向かい合っており且つ少なくとも一つのイオンミラーを有しており、そのイオンミラーが、前記イオンミラーにおけるイオンのTOF分離方向に再び一般的に規定された前記又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極を有している、第2のイオンミラー配列と、
そこに電界を確立するように、前記第1及び第2のイオンミラー配列の電極に電圧を印加する手段と、
前記イオンを、引き続く処理又は検出のために前記第1及び第2のイオンミラー配列を出る前に少なくとも1回、前記第1及び第2のイオンミラー配列の間で反射するように導入させるように、イオンをイオン加速領域から前記MR TOF MSに導入するイオンガイド手段と、
を備えており、
前記第1のイオンミラー配列の前記又は各々のイオンミラーが、その長手軸及び主軸を含む第1の対称平面を有しており、前記第1のイオンミラー配列の前記又は各々のイオンミラーが、その長手軸及び主軸を含む第1の対称平面を有しており、前記第1のイオンミラーの前記対称平面の各々が、前記主軸の方向で、前記第2のイオンミラー配列の前記対称平面の対応する一つ又は複数と平行であるがオフセットされており、使用時には、イオンが、前記MR TOF MSを通過するときに前記イオンミラー配列の前記主軸に沿って全体的な運動を有する、多重反射式飛行時間型質量分析器。
【請求項1】
多重反射式飛行時間型質量分析器でイオンを反射させる方法であって、
複数の電極を有するイオンミラーを設けるステップにおいて、前記イオンミラーが、ミラー内のイオンの飛行時間分離方向に一般的に位置する前記イオンミラーの長手軸(Z)に各々が直交する第1の副軸(Y)及び第2の主軸(X)を有する断面を有するステップと、
イオンを前記イオンミラーに向かって導くステップと、
電界を生成するように電圧を前記電極に印加するステップであって、これが、
(a)イオンの平均軌道を、前記ミラーの長手(z)軸及び主軸(X)を含む前記イオンミラーの対称平面に交差させ、
(b)前記イオンを前記イオンミラーで反射させ、
(c)前記イオンを、前記イオンミラーを通過するイオンの平均軌道が、前記対称平面に直交して且つそこから発散する方向(Y)における運動成分を有するような方向で、前記イオンミラーから脱出させる、ステップと、
を包含する、方法。
【請求項2】
電圧を印加するステップが、
イオンに、前記イオンミラー内での反射毎に、前記対称平面を少なくとも3回横切らせる電界を生成するように、電圧を印加するステップを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イオンをイオンミラーに導くステップが、
前記イオンを前記イオンミラーに、前記対称平面に対する非零角度で導き、前記イオン平均軌道の反射平面の上流で最初に前記イオンを前記対称平面と交差させるステップを含み、
印加される電圧が、前記イオンを、前記イオンミラー内の前記反射平面で又はその近傍で、前記対称平面と2度目に交差させ、且つ前記イオンを前記イオンミラーから、前記反射平面の下流で前記対称平面と3度目に交差させるように再び脱出させるように調整されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電界が、前記イオンミラー内でイオンに、前記イオンミラーの通過の間に少なくとも1回空間的焦点形成を経験させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
イオンを焦点形成させるステップが、前記イオンミラーの前記対称平面に垂直な方向(Y)でイオンを焦点形成させるステップを含む、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項6】
イオンを焦点形成させるステップが、前記イオンミラーの内部でイオンを焦点形成させるステップを含む、請求項4または請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記イオンミラーが、第1のイオンミラー配列における複数の(n+1)個のイオンミラーの一つを形成し、前記第1のイオンミラー配列におけるさらなるn個のイオンミラーが各々複数の電極を有し、各々のさらなるイオンミラーが第1の副軸(Y)及び第2の主軸(X)を有する断面を有し、それらの各々が、各々のさらなるn個のイオンミラーにおけるイオンの飛行時間分離方向に一般的に位置する前記イオンミラーの長手軸(z)に垂直であり、前記第1のイオンミラー配列におけるさらなるn個のイオンミラーの各々における前記長手軸が、お互いに及び前記第1のイオンミラーの前記長手軸(z)と一般的に平行に位置しており、
前記方法がさらに、
(d)前記第1のイオンミラー配列の第1のイオンミラーを出たイオンを、前記第1のイオンミラー配列の第2のイオンミラーに、前記イオンが前記第1のイオンミラーに入ったときと一般的に同じ方向で戻させるステップと、
(e)この方法のステップ(a)〜(d)を、その第2のミラーに対して繰り返すステップと、
をさらに含む、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項8】
さらに、
(f)前記第1のイオンミラー配列の前記第2のイオンミラーを出たイオンを、今度は前記第1のイオンミラー配列のさらに(n−1)個のイオンミラーに戻させるステップであって、前記イオンは各々のさらなる(n−1)個のイオンミラーに、前記イオンが前記第1のイオンミラーに入ったときと一般的に同じ方向で入る、ステップと、
(g)この方法のステップ(a)〜(c)を、各々の前記さらなる(n−1)個のイオンミラーに対して繰り返すステップと、
をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のイオンミラー配列が、4個のイオンミラー、又は4個の整数倍のイオンミラーを備えている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のイオンミラー配列を通過したイオンを反射して、前記第1のイオンミラー配列を逆向きに通過させるステップをさらに含む、請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
一度逆向きに通過したら、イオンを反射して前進方向で2度目に前記イオンミラーを通過させるステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
イオンを前記第1のイオンミラー配列に向けて戻させるステップ(d)及び/又はステップ(f)が、第2のイオンミラー配列にイオンを反射させるステップを含み、第2のイオンミラー配列は、その第2のイオンミラー配列におけるイオンの飛行時間分離方向に一般的に延在する前記第2のイオンミラー配列の長手軸に各々一般的に直交する第1の副軸及び第2の主軸を有する断面を有しており、前記長手軸及び前記主軸を含む前記第2のイオンミラー配列の対称平面が、前記第1のイオンミラー配列の前記対称平面と非零角度で交差する、請求項5〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のイオンミラー配列の対称平面が、前記第1のイオンミラー配列の前記対称平面と、実質的に直角に交差する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
イオンを前記第1のイオンミラー配列に向けて戻させるステップ(d)及び/又はステップ(f)が、複数のm個のイオンミラーを備える第2のイオンミラー配列にイオンを反射させるステップを含み、前記第2のイオンミラー配列の前記m個のイオンミラーの各々は複数の電極を有しており、各々のさらなるイオンミラーが、前記m個のイオンミラーの各々におけるイオンの飛行時間分離方向に一般的に延在する前記イオンミラーの長手軸に各々一般的に直交する第1の副軸及び第2の主軸を有する断面を有しており、前記第2のイオンミラー配列における前記m個のイオンミラーの各々の長手軸が、お互いに及び前記第1のイオンミラー配列の前記イオンミラーの長手軸に、一般的に平行に位置しており、前記第1及び第2のイオンミラー配列が、イオンが前記第1及び第2のイオンミラー配列の間で反射しながら行き来するようにお互いに向かい合っている、請求項5〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のイオンミラー配列における前記イオンミラーの各々が、各々の前記イオンミラーの長手軸及び主軸を含む対称平面を備えており、前記第2のイオンミラー配列における各々の前記イオンミラーの前記対称平面が、前記第1のイオンミラー配列における各々の前記イオンミラーの前記対称平面と一般的に平行である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
各々のイオンミラーの前記主軸に一般的に平行な方向にイオンを焦点形成させるステップをさらに備えている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1及び第2のイオンミラー配列の間に位置するイオン光学装置を使用して、イオンを前記第2の方向に焦点形成させるステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記又は各々のイオンミラーを通過した後にイオンを検出するステップをさらに含む、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項19】
イオンを検出するステップが、前記又は各々のイオンミラーの前記対称平面から外れて変位した検出器で、イオンを検出するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記又は各々のイオンミラーを通過したイオンを、断片化装置のような質量分析法のさらなるステージに向かわせるステップをさらに含む、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項21】
イオン源でイオンを生成するステップと、
生成されたイオン、又はその派生物/断片をリニアトラップで貯蔵するステップと、
イオンを前記リニアトラップからMR TOF MSに向かって射出するステップと、
をさらに含む、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項22】
前記イオンを前記リニアトラップから前記MR TOF MSに向かって、直交して射出するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記リニアトラップにおける貯蔵に先立ってイオンを断片化するステップをさらに含む、請求項21又は請求項22に記載の方法。
【請求項24】
多重反射式飛行時間型質量分析器でイオンを反射させる方法であって、
複数の電極を有する第1のイオンミラーであって、且つ前記第1のイオンミラーの内部でイオンの飛行時間の広がりに一般的に平行な長手軸とを有する第1のイオンミラーを設けるステップと、
前記第1のイオンミラーに一般的に向かい合っている第2のイオンミラーであって、複数の電極を有し、且つ前記第2のイオンミラーの内部でイオンの飛行時間の広がりに一般的に平行な長手軸を規定する、第2のイオンミラーを設けるステップと、
イオンを前記第1のイオンミラーに向かって導くステップと、
前記第1のイオンミラーに入射したイオンをそこから反射させる電界を生成するように、前記第1のイオンミラーの電極に電圧を印加するステップと、
前記第1のイオンミラーから反射したイオンを前記第2のイオンミラーに導くステップと、
前記第2のイオンミラーに入射したイオンをそこから反射させる電界を生成するように、前記第2のイオンミラーの電極に電圧を印加するステップと、
を含み、
前記イオンを前記第1のイオンミラーに導くステップ、前記第1のイオンミラーに電界を生成するステップ、及び/又は前記第1のイオンミラーから反射したイオンを前記第2のイオンミラーに導くステップが、イオンが、前記第1のイオンミラーの長手軸が位置するその対称平面と、前記第2のイオンミラーによって反射される前に少なくとも3回交差するように、平均イオン軌道を制御するステップを含む、方法。
【請求項25】
前記イオンを前記第1のイオンミラーに導くステップ、前記第1のイオンミラーに電界を生成するステップ、及び/又は前記第1のイオンミラーから反射したイオンを前記第2のイオンミラーに導くステップが、イオンが、前記第1のイオンミラーの対称平面と、前記第1のイオンミラーの電極によって生成された電界の内部で1回及びその電界の外で2回の3回交差するように、平均イオン軌道を制御するステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第2のイオンミラーから出てきたイオンを前記第2のイオンミラーに一般的に向かい合っている第3のイオンミラーに向かわせるステップをさらに含み、前記第3のイオンミラーが、前記第1のイオンミラーの長手軸に一般的に平行であるがそこからオフセットしている長手軸と、電圧印加されるとイオンを前記第3のイオンミラーから反射させる電界を生成する複数の電極とを有する、請求項24又は請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第2のイオンミラーから前記第3のイオンミラーへのイオンの入射方向を制御するステップ、及び/又は、前記第2から第3のイオンミラーへの及びそこから戻る平均イオン軌道が、その長手軸が位置する前記第3のイオンミラーの対称平面と少なくとも3回交差するように前記第3のイオンミラーの電界を制御するステップ、をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第3のイオンミラーから前記第2のイオンミラーへイオンを再び向かわせるステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第3のイオンミラーからのイオンを、前記第2のイオンミラーに隣接する第4のイオンミラーに向かわせるステップをさらに含み、前記第4のイオンミラーが前記第1及び第3のイオンミラーと一般的に向かい合っており、且つ前記第2のイオンミラーの長手軸に一般的に平行であるがそこからオフセットしている長手軸を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記第2のイオンミラーからのイオンを前記第2のイオンミラーに一般的に向かい合っている第4のイオンミラーに向かわせるステップであって、前記第4のイオンミラーが、前記第1及び第3のイオンミラーの長手軸に一般的に平行であるがそこから変位された長手軸と、電圧印加されると前記第4のイオンミラーから出たイオンを再び前記第2のイオンミラーに向かって反射させる電界を生成する複数の電極とを有する、ステップと、
イオンを前記第2のイオンミラーで反射させるステップと、
前記第2のイオンミラーからのイオンを前記第2のイオンミラーに一般的に向かい合っている第5のイオンミラーに向かわせるステップであって、前記第5のイオンミラーが、前記第1、第3、及び第4のイオンミラーの長手軸に一般的に平行であるがそこから変位された長手軸と、電圧印加されると前記第5のイオンミラーから出たイオンを再び前記第2のイオンミラーに向かって反射させる電界を生成する複数の電極とを有する、ステップと、
をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第5のイオンミラーから反射したイオンを前記第2のイオンミラーに向かわせるステップの後に、
イオンを、先に出てきた方向に一般的に対向する方向に移動して前記第5のイオンミラーに入射するように、前記第5のイオンミラーに向かって反射するステップと、
引き続いて前記イオンを、前記第2、第4、第2、第3、第2、及び第1のイオンミラーに逆方向に向けさせるステップと、
をさらに含む、請求項30に記載のステップ。
【請求項32】
前記イオンミラーの各々の長手軸を、一般的にお互いに平行であるがお互いに同軸ではないように配置するステップをさらに含む、請求項24〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記イオンミラーの各々の長手軸を、お互いの長手軸の長手軸から前記MR TOF MSを通るイオンのドリフト方向に変位させるステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
多重反射式飛行時間型質量分析器でイオンを反射させる方法であって、
第1のイオンミラー配列を設けるステップであって、前記第1のイオンミラー配列が少なくとも一つのイオンミラーを有しており、そのイオンミラーが、その又はそれらのイオンミラーにおけるイオンのTOF分離方向に一般的に規定された前記又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極を有している、ステップと、
第2のイオンミラー配列を設けるステップであって、前記第2のイオンミラー配列が少なくとも一つのイオンミラーを有しており、そのイオンミラーが、前記第1のイオンミラー配列が、その又はそれらのイオンミラーにおけるイオンのTOF分離方向に一般的に規定された前記又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極を有している、ステップと、
を含んでおり、
前記第1のイオンミラー配列の前記又は各々のイオンミラーがその長手軸及び主軸を含む対称平面を有しており、前記第2のイオンミラー配列の前記又は各々のイオンミラーが同様にその長手軸及び主軸を含む対称平面を有しており、前記第1及び第2のイオンミラー配列が、イオンがそれらの間を通過し得るようにお互いに向かい合わせに位置しており、前記第1のイオンミラー配列の前記又は各々のイオンミラーの対称平面が前記第2のイオンミラー配列の前記又は各々のイオンミラーの対称平面と交差しており、
この方法が、
イオンを前記第1のイオンミラー配列の第1のイオンミラーに向かって導くステップと、
イオンを前記第1のイオンミラー配列のその第1のイオンミラーで反射させるステップと、
イオンを前記第2のイオンミラー配列に導くステップと、
イオンを前記第1のイオンミラー配列に向かって前記第2のイオンミラー配列で反射させるステップと、
を含む、方法。
【請求項35】
前記イオンを前記第1のイオンミラー配列の第2、第3、及び第4のイオンミラー、及び前記第2のイオンミラー配列の間で、一般的に「ジグザグ」パターンで反射させるステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
一つ又はそれ以上のイオンミラーを備えており、前述のいずれかの請求項の方法ステップを実行するように構成された、多重反射式飛行時間型質量分析器。
【請求項37】
多重反射式飛行時間型質量分析器(MR TOF MS)であって、
少なくとも一つのイオンミラーを有しており、そのイオンミラーが、前記イオンミラーにおけるイオンのTOF分離方向に一般的に規定された前記又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極を有している、第1のイオンミラー配列と、
少なくとも一つのイオンミラーを有しており、そのイオンミラーが、前記イオンミラーにおけるイオンのTOF分離方向に再び一般的に規定された前記又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極を有している、第2のイオンミラー配列と、
そこに電界を確立するように、前記第1及び第2のイオンミラー配列の電極に電圧を印加する手段と、
前記イオンを、引き続く処理又は検出のために前記第1及び第2のイオンミラー配列を出る前に少なくとも1回、前記第1及び第2のイオンミラー配列の間で反射するように導入させるように、イオンをイオン加速領域から前記MR TOF MSに導入するイオンガイド手段と、
を備えており、
前記第1のイオンミラー配列が、その長手軸及び主軸を含む第1の対称平面を有しており、
前記第2のイオンミラー配列が、その長手軸及び主軸を含む第2の対称平面を有しており、前記第1及び第2の対称平面が非零角度でお互いに交差する、多重反射式飛行時間型質量分析器。
【請求項38】
多重反射式飛行時間型質量分析器(MR TOF MS)であって、
少なくとも一つのイオンミラーを有しており、そのイオンミラーが、前記イオンミラーにおけるイオンのTOF分離方向に一般的に規定された前記又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極を有している、第1のイオンミラー配列と、
前記第1のイオンミラー配列に一般的に向かい合っており且つ少なくとも一つのイオンミラーを有しており、そのイオンミラーが、前記イオンミラーにおけるイオンのTOF分離方向に再び一般的に規定された前記又はそれぞれのイオンミラーの長手軸に各々直交する第1の副軸と第2の主軸とを有する断面を規定する電極を有している、第2のイオンミラー配列と、
そこに電界を確立するように、前記第1及び第2のイオンミラー配列の電極に電圧を印加する手段と、
前記イオンを、引き続く処理又は検出のために前記第1及び第2のイオンミラー配列を出る前に少なくとも1回、前記第1及び第2のイオンミラー配列の間で反射するように導入させるように、イオンをイオン加速領域から前記MR TOF MSに導入するイオンガイド手段と、
を備えており、
前記第1のイオンミラー配列の前記又は各々のイオンミラーが、その長手軸及び主軸を含む第1の対称平面を有しており、前記第1のイオンミラー配列の前記又は各々のイオンミラーが、その長手軸及び主軸を含む第1の対称平面を有しており、前記第1のイオンミラーの前記対称平面の各々が、前記主軸の方向で、前記第2のイオンミラー配列の前記対称平面の対応する一つ又は複数と平行であるがオフセットされており、使用時には、イオンが、前記MR TOF MSを通過するときに前記イオンミラー配列の前記主軸に沿って全体的な運動を有する、多重反射式飛行時間型質量分析器。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2011−507205(P2011−507205A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538905(P2010−538905)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2008/004231
【国際公開番号】WO2009/081143
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(508306565)サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー (20)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2008/004231
【国際公開番号】WO2009/081143
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(508306565)サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー (20)
【Fターム(参考)】
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