説明

多重遺伝子発現のためのベクター

本発明は、40以上の連続するヌクレオチドの部分にわたっておよそ80%または80%を超える相同性パーセンテージを示す少なくとも第一の核酸分子と第二の核酸分子を発現させるために、該第一の核酸分子および/または第二の核酸分子が該相同性パーセンテージを75%未満に低下させるように改変されているベクターを提供する。本発明はまた、配列番号9〜15および66〜69のいずれかで定義されるヌクレオチド配列を含む、実質的に単離された核酸分子に関する。本発明はまた、このような核酸分子またはベクターを含む宿主細胞および医薬組成物ならびに治療目的または予防目的でのそれらの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、同じ生物または近縁の生物から得られる目的の複数のヌクレオチド配列を独立に発現するように操作された組換えベクターに関する。本発明は、種々の原核生物ならびに真核生物in vitro系または治療もしくは予防目的の動物もしくはヒト被験体で、互いに相同性を示す複数のヌクレオチド配列を発現させるための組換え核酸技術の分野に関する。本発明は、特に、免疫療法の分野で、特に、乳頭腫(パピローマ)ウイルスおよび肝炎ウイルスなどの感染性生物によって引き起こされる病状を治療または予防するために有用である。
【0002】
組換えDNA技術は、培養宿主細胞または生体生物でヌクレオチド配列を発現することを可能とした。いくつかのプラスミドDNAおよびウイルスベクターが作製され、ワクチン接種、遺伝子療法、免疫療法および培養細胞での発現を含む種々の目的のために用いられてきた。アデノウイルスおよびポックスウイルスベクターなどのベクターは、広範囲の宿主細胞で複数のヌクレオチド配列を発現する能力を持った大きなクローニング能を提供するという利点を持つ。複数のヌクレオチド配列の発現はコードされるポリペプチドによって提供される治療効力を改良するために有利である(例えば、体液性免疫と細胞性免疫の組合せ)。所望のヌクレオチド配列の各々を発現するように個々に操作された複数の組換えベクターを作製するよりもむしろ、少なくとも生産工程および規制認可を容易にするためには単一の組換えベクターを作製するほうが有利であろう。
【0003】
例えば、乳頭腫ウイルス感染に関しては、特に重複感染(例えば、HPV−16とHPV−18)のリスクのある被験体において宿主の免疫応答を拡大または増強するために、いくつかの乳頭腫ウイルス遺伝子型に由来する免疫原性ポリペプチドを発現させることに注目される。しかしながら、このような免疫原性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は関連のあるHPV遺伝子型間では相同性が高い。例えば、ヌクレオチドレベルで63%の全体的相同性を示すHPV−16 E6配列とHPV−18 E6配列は、やはり、75%を超える極めて相同性の高い特定の領域を含み、単一のベクターからのHPV−16遺伝子およびHPV−18遺伝子の発現を危うくする。
【0004】
さらに、ウイルス起源のポリペプチドを発現させる場合、ウイルスゲノムの全体構成からも相同なヌクレオチド配列が生じ得る。むしろ、ウイルスは、内部翻訳開始またはリーディングフレームシフティング(すなわち、同じ配列のDNAが2つ以上のリーディングフレームで翻訳される)などの生体機構を通じ、同じヌクレオチド配列を用いて2つの異なるタンパク質をコードすることがしばしばある。例えば、HPV−16ゲノムでは、隣接するE1遺伝子とE2遺伝子は、異なるリーディングフレームで翻訳される59のヌクレオチドで重なっている。言い換えれば、E1遺伝子の少なくとも59のヌクレオチドがE2遺伝子の最初の59のヌクレオチドと重なっている。
【0005】
しかしながら、ベクターに相同な配列が存在すると、特にベクターの作製中のその安定性に負の影響を及ぼし、相同な配列間で起こる組換え事象によって遺伝子配列の欠損をもたらすと考えられる。従って、単一のベクターにおけるHPV−16 E1およびE2遺伝子の発現は、潜在的に相同組換え事象を、ついにはE1とE2相同配列の間に含まれる配列の欠損をもたらし得る59のヌクレオチドの共通部分の存在を含む。このような望まれない相同組換え事象は、同じベクターでHPV−16遺伝子配列とHPV−18遺伝子配列を発現させる場合にも起こり得る。この不安定性の問題は、ベクター原株を特にヒト臨床試験に使用不能とし得る。
【0006】
これに関し、WO92/16636は、組換えベクターにおいて相同なヌクレオチド配列を組換え事象の可能性を下げるように、互いに対して逆向きに挿入することを提案している。しかしながら、この戦略はワクシニアウイルスベクターに関して記載されており、アデノウイルスなどの他の組換えベクターに関しては記載されていない。さらに、この逆向きの配向は潜在的なプロモーター干渉および構築の制約ために常に可能とは限らない。
【0007】
当技術分野では、宿主細胞または被験体において、本来的に、相同性の高い部分を含む、同じ生物または近縁の生物から得られるヌクレオチド配列を発現し得る組換えベクターを作製する必要がある。本発明は、遺伝コードの縮重を用いて相同なヌクレオチド配列の一方または両方を変化させて、コードされているアミノ酸配列を変化させることなく、または有意に変化させることなく、それらを改変前よりも低い相同性にすることにより、組換え事象の可能性を最小限とするように設計された新規な戦略を提供することでこの必要に取り組んだ。本発明は、特にベクター作製工程中に、相同な配列間で起こり、その間に含まれるヌクレオチド配列の欠損をもたらし得る相同組換えの悪影響を回避することを可能とする。本発明のベクターは、本来の文脈において59ヌクレオチドの100%相同部分を共有するE1およびE2乳頭腫ウイルス遺伝子を発現させるのに驚くほど有効であり、ベクター作製工程中に驚くべき安定性であることが見出された。また、本発明のベクターは、近縁のHPV−16およびHPV−18遺伝子型から得られるE6およびE7遺伝子を発現させるのに驚くほど有効であることも見出された。
【0008】
この技術的問題は特許請求の範囲で定義された具体例の提案により解決される。
【0009】
本発明のその他の、またさらなる態様、特徴および利点は、以下の本発明の、現在のところ好ましい実施形態の記載から明らかになろう。これらの実施形態は開示を目的に示されるものである。
【0010】
よって、第一の態様において、本発明は少なくとも、第一のポリペプチドをコードする第一の核酸分子と第二のポリペプチドをコードする第二の核酸分子とを含んでなり、
該第一および第二の核酸分子がそれぞれ、40以上の連続するヌクレオチドの部分にわたっておよそ80%または80%を超える相同性パーセンテージを示す第一および第二の天然核酸配列から得られ、かつ、
ベクターに含まれる該第一の核酸分子および/または該第二の核酸分子が該相同性パーセンテージを75%未満に低下させるように改変されている、
ベクターを提供する。
【0011】
本明細書において全出願を通じ「a」および「an」は、特に断りのない限り、示されている化合物または工程の「少なくとも1つ」、「少なくとも第一」、「1以上」または「複数」を意味するという意味において用いられる。例えば、「a cell」は、その混合物を含め、複数の細胞を含む。
【0012】
本明細書において「および/または」とは、「および」、「または」および「この用語によって接続された要素の全て、または他のいずれかの組合せ」の意味を含む。例えば、「第一の核酸分子および/または第二の核酸分子」とは、第一の核酸分子、または第二の核酸分子、または第一および第二の核酸分子の双方を意味する。
【0013】
本明細書において「約」または「およそ」とは、示された値または範囲の5%以内、好ましくは4%以内、より好ましくは2%以内を意味する。
【0014】
本明細書において、定義された生成物、組成物および方法に対して用いる場合、「含んでなる」とは、それらの生成物、組成物および方法は示されている成分または工程を含むが、他を排除しないことを意味するものとする。「〜から本質的になる」とは、本質的意味の他の成分または工程を排除することを意味する。従って、示された成分から本質的になる組成物は微量の夾雑物および薬学上許容される担体を排除しない。「〜からなる」とは、微量要素を超える他の成分または工程を排除することを意味する。例えば、ポリペプチドが示されたアミノ酸配列以外のアミノ酸を含まない場合、そのポリペプチドはそのアミノ酸配列「からなる」。アミノ酸配列がわずかな付加的アミノ酸残基、一般には約1から約50などの付加的残基のみを伴って存在する場合、そのポリペプチドはそのアミノ酸配列から「本質的になる」。アミノ酸配列がポリペプチドの最後のアミノ酸配列の少なくとも一部である場合、そのポリペプチドはそのアミノ酸を「含んでなる」。このようなポリペプチドは数個から数百までの付加的アミノ酸残基を持ち得る。このような付加的アミノ酸残基はとりわけ、ポリペプチド輸送に役割を果たしたり、ポリペプチド生産を助けたり、あるいは半減期を延長したりすることができる。同じことがヌクレオチド配列についても当てはまる。
【0015】
本明細書において「ベクター」とは、宿主細胞または被験体において少なくとも第一および第二の核酸分子を送達および発現し得る因子である。ベクターは染色体外型(例えば、エピソーム)であっても組込み型(宿主染色体に組み込むためのもの)であっても、自律複製型であってもなくても、多重コピーであっても低コピーであっても、二本鎖であっても一本鎖であっても、裸(naked)であっても他の分子との複合体(例えば、脂質またはポリマーと複合化して、リポソーム、リポプレックスまたはナノ粒子などの粒状構造を形成したベクター、ウイルスキャプシッドにパッケージングされたベクター、および固相粒子上に固定されたベクターなど)であってもよい。「ベクター」の定義には、特定の宿主細胞を優先的に標的とすることができるように改変されたベクターも包含する。標的化ベクターの特徴は、それらの表面に、細胞特異的マーカー(例えば、HPV感染細胞)、組織特異的マーカーまたは腫瘍特異的マーカーなどの細胞および表面露出成分を認識し、それと結合し得るリガンドが存在することである。このリガンドは一般に、ベクターの表面に存在するポリペプチド(例えば、アデノウイルス繊維、ペントン、WO94/10323およびWO02/96939に記載のpIXまたはEP1146125に記載のワクシニアp14遺伝子産物)に挿入することができる。
【0016】
本発明に関する範囲内で、「核酸」、「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」および「ヌクレオチド配列」は互換的に用いられ、長さによらず、ポリデオキシリボヌクレオチド(DNA)またはポリリボヌクレオチド(RNA)分子のいずれかの、またはそれらの組合せのポリマーを定義する。この定義には、一本鎖または二本鎖、直鎖または環状、天然または合成ポリヌクレオチドを包含する。さらに、このようなポリヌクレオチドは非天然ヌクレオチド(例えば、米国特許第5,525,711号、同第4,711,955号またはEPA302175に記載されているものなどのメチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体)ならびに核酸のin vivo安定性を高めるため、その送達を高めるため、または宿主対象からのクリアランス速度を低減するための化学修飾(例えば、WO92/03568、米国特許第5,118,672号参照)を含み得る。存在する場合、修飾は重合前に行っても重合後に行ってもよい。
【0017】
本明細書において「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、ペプチド結合を介して結合した9以上のアミノ酸を含むアミノ酸残基のポリマーを指して互換的に用いられる。ポリマーは直鎖であっても分枝型であっても環状であってもよい。本発明に関して、「ポリペプチド」とは、L立体異性体(天然型)またはD立体異性体のアミノ酸を含んでよく、β−アラニン、オルニチンもしくはメチオニンスルホキシド、または、1以上のα−アミノ、α−カルボキシルもしくは側鎖(例えばメチル、ホルミル、アセチル、グリコシル、ホスホリルなどの付加による)で修飾されたアミノ酸など、20種の一般天然アミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよい。一般的な指標として、アミノ酸ポリマーが長い場合(例えば、50を超えるアミノ酸残基)、好ましくはポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれる。結局、「ペプチド」とは、アミノ酸約9〜約50個の長さのフラグメントを指す。本発明の文脈において、ペプチドは好ましくは、天然タンパク質の選択された領域、例えば、エピトープを含むその免疫原性フラグメントを含む。
【0018】
本明細書で定義される「ポリペプチド」とは、天然ならびに改変ポリペプチドを包含する。本明細書において「天然」とは、天然源から採取された材料を指し、実験室でヒトによって人工的に改変または変更された材料とは異なる。例えば、天然ポリペプチドは、野生型生物または細胞のゲノムに存在している遺伝子によりコードされている。これに対し、改変ポリペプチドは、例えば、1以上のアミノ酸の挿入、欠失もしくは置換、またはこれらの可能性の任意の組合せによって天然ポリペプチドとは異なるように実験室で改変された核酸分子によりコードされている。いくつかの改変が意図される場合、それらは連続残基に関するものであっても、かつ/または非連続残基に関するものであってもよい。本発明が意図する改変の例は、天然ポリペプチドが示す生物活性の変更をもたらすものであり得る。ある生物活性に重要なアミノ酸は、構造および機能分析によるなど、常法によって同定することができ、当業者ならば、そのような生物活性を低減または排除し得る突然変異のタイプを容易に決定することができる。このような改変は、部位特異的突然変異誘発などの常法によって行うことができる。あるいは、自動化法で化学合成により改変ポリペプチドをコードする合成核酸分子を作出することもできる(例えば、付属の実施例の節に記載されているようなオーバーラッピング合成オリゴヌクレオチドから組み立て)。
【0019】
本明細書において「得られる」とは、天然源に見られる、天然源から単離される、天然源から精製される、または天然源から誘導される材料を指す。「単離される」とは、その天然環境から取り出されることを意味する。「精製される」とは、それが自然状態で会合している少なくとも1つの他の成分を実質的に含まないことを表す。「誘導される」とは、天然材料に対しての1以上の改変(特に、置換、欠失および/または挿入などの突然変異)を表す。単離、精製および改変の技術は当技術分野の慣例であり、得られる材料によって異なる(例えば、核酸分子のクローニングは天然源から、制限酵素の使用、PCRまたは化学合成によって行うことができる)。
【0020】
本明細書において「相同性」とは、一般にパーセンテージとして表し、少なくとも40の連続するヌクレオチド(例えば、およそ40、45、50、55、57、58、59、60、70、さらにはそれを超える連続するヌクレオチド)の部分にわたって、所定の同一性の程度を互いに保持するヌクレオチド配列を表す。「少なくとも80%」とは、およそ80%または80%を超える(例えば、80%を超える任意の値、有利には少なくとも85%、望ましくは少なくとも87%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、いっそうより好ましくは少なくとも97%、100%までの配列相同性)を指す。「75%未満」とは、75より小さい任意の値、例えば、およそ74、72、70、68、65、62、60%、さらにはそれより小さいことを表す。2つのヌクレオチド配列間の相同性%は、それらの配列に共通する同一の位置の数の関数であり、最適なアライメントのために導入する必要のあるギャップの数と各ギャップの長さが考慮されている。当技術分野では、ヌクレオチド配列間の同一性パーセンテージを決定するために、GCGウィスコンシンパッケージおよびNational Center for Biotechnology Information (NCBI)で公的に利用可能であり、印刷刊行物(例えば、Altschul et al, 1990, J. Mol. Biol. 215, 403-410)に記載されているthe Basic Local aliment Search Tool (BLAST)プログラムなどの種々のコンピュータープログラムおよび数学的アルゴリズムが利用可能である。
【0021】
最初の時点で、80%または80%を超える相同性パーセンテージを共有する40以上の連続するヌクレオチドの1以上の部分(すなわち、「相同」部分)を明らかにするために、改変前の第一の核酸分子と第二の核酸分子の間の配列アライメントを用いることができる。特定の実施形態においては、相同性パーセンテージを75%未満(例えば、およそ74、72、70、68、65、62、60%またはさらにはそれより低い)に低下させるために、第一の核酸分子または第二の核酸分子または第一および第二の核酸分子の双方のコドン使用パターン(codon usage pattern)が、40以上の(例えば、およそ40、45、50、55、57、58、59、60、70、またはさらにそれを超える)連続するヌクレオチドの該相同部分で少なくとも改変される(例えば、コドン使用パターンの縮重による)。
【0022】
メチオニン残基およびトリプトファン残基はそれぞれ独自の核酸トリプレット(すなわち、コドン)によりコードされているが、他の18のアミノ酸をコードするには種々のコドンが使用可能である(遺伝コードの縮重)。例えば、アミノ酸は次のようなコドンによってコードされる:アラニン(AlaまたはA)はコドンGCA、GCC、GCGおよびGCUにより;システイン(CまたはCys)はコドンUGCおよびUGUにより;アスパラギン酸(DまたはAsp)はコドンGACおよびGAUにより;グルタミン酸(EまたはGlu)はコドンGAAおよびGAGにより;フェニルアラニン(FまたはPhe)はコドンUUCおよびUUUにより;グリシン(GまたはGIy)はコドンGGA、GGC、GGGおよびGGUにより;ヒスチジン(HまたはHis)はコドンCACおよびCAUにより;イソロイシン(IまたはIle)はコドンAUA、AUCおよびAUUにより;リシン(KまたはLys)はコドンAAAおよびAAGにより;ロイシン(LまたはLeu)はコドンUUA、UUG、CUA、CUC、CUGおよびCUUにより;メチオニン(MまたはMet)はコドンAUGにより;アスパラギン(NまたはAsn)はコドンAACおよびAAUにより;プロリン(PまたはPro)はコドンCCA、CCC、CCGおよびCCUにより;グルタミン(QまたはGln)はコドンCAAおよびCAGにより;アルギニン(RまたはArg)はコドンAGA、AGG、CGA、CGC、CGGおよびCGUにより;セリン(SまたはSer)はコドンAGC、AGU、UCA、UCC、UCGおよびUCUにより;トレオニン(TまたはThr)はコドンACA、ACC、ACGおよびACUにより;バリン(VまたはVal)はコドンGUA、GUC、GUGおよびGUUにより;トリプトファン(WまたはTrp)はコドンUGGによりおよびチロシン(YまたはTyr)はコドンUACおよびUAUによりコードされる。
【0023】
該第一および第二の核酸分子に存在する1以上の相同部分における相同性パーセンテージの低下は、遺伝コードの縮重(degeneracy)を利用し、第一の核酸分子および/または第二の核酸分子のコドン使用パターンを改変することによって達成することができる。コドン使用パターンの改変は、一般に、1以上の「天然」コドンを別のコドンに置き換えることで行われる。例えば、ArgをコードするAGAコドンをArgをコードするCGCコドンで置き換えると、コドンの3つの位置のうち2つの相同性が無くなる。相同性は部分的置換で十分低下し得るので、全ての天然コドンを変更する(degenerate)必要はない。さらに、コドン使用パターンの改変は核酸分子全体にわたって行うこともできるし、あるいは改変前に存在する相同部分に限定することもできる。望ましくは、本明細書において、変更(degenerescence)は第一の核酸分子で行い、相同部分に限定される。好ましくは、コドン使用パターンはヌクレオチドレベルで改変され、これらの改変はアミノ酸レベルではサイレントであり、すなわち、可能であれば、各「天然」コドンは、同じアミノ酸をコードするコドンで置き換えられ、その結果、このような改変はコードされるポリペプチドに翻訳されない。より好ましくは、可能であれば、第一の核酸分子と第二の核酸分子の間の相同部分が9または8未満の連続するヌクレオチド、有利には7未満の連続するヌクレオチド、好ましくは6未満の連続するヌクレオチド、より好ましくは5未満の連続するヌクレオチドに限定されるように、コドン使用パターンが改変される。コドン使用パターンの改変は、部位特異的突然変異誘発(例えば、Amersham, Les Ullis, FranceのSculptor(商標)in vitro突然変異誘発系を使用)、PCR突然変異誘発、DNAシャッフリングおよび化学合成技術(例えば、合成核酸分子を生じる)など、当業者に公知のいくつかの方法によって作製することができる。
【0024】
本発明のベクターが2つを超える核酸分子を含む場合、ベクターに含まれ、別の核酸分子が得られる少なくとも1つの他の天然核酸配列と、40以上の連続するヌクレオチドの部分にわたっておよそ80%または80%を超える相同性パーセンテージを示す天然核酸配列から得られる核酸分子はいずれも、相同性パーセンテージを75%未満に低下させるように、すなわち、ベクターに含まれる核酸分子対には、75%を超える同一性パーセンテージを示す40以上の連続するヌクレオチドの部分を含むものが無いように改変することができる。
【0025】
80%または80%を超える相同性パーセンテージを示す1以上の部分を明らかにするためには、それらの核酸分子が得られる各天然配列間(対)の配列アラインメントを用いればよい。次に、少なくとも相同部分の相同性パーセンテージを75%未満に低下させるように、特にコドン使用の縮重によって、1以上の天然配列の配列が改変される。最後に、ベクターに含まれる核酸分子には、該ベクターに含まれる他の核酸分子と75%を超える同一性パーセンテージを示す40以上の(例えば、45、50、55、57、58、59、60、70またはさらにはそれを超える)連続するヌクレオチドの部分を含むものが無くなる。
【0026】
上述のように、ベクターの含まれる核酸分子によりコードされるポリペプチドは、天然ポリペプチドと同じアミノ酸配列を有してもよいし、有さなくてもよい。特に、ベクターに含まれる核酸分子の少なくとも相同部分における相同性を低減させるためのコドン使用の縮重に関する突然変異の他、ベクターに含まれる該核酸分子はまた、コードされているポリペプチドのアミノ酸配列の改変をもたらす付加的突然変異を含んでもよいし、改変をもたらさない付加的突然変異を含んでもよい。
【0027】
本発明のベクターはウイルスならびに非ウイルス(例えば、プラスミドDNA)ベクターを包含する。好適な非ウイルスベクターとしては、pREP4、pCEP4(Invitrogene)、pCI(Promega)、pCDM8(Seed, 1987, Nature 329, 840)、pVAXおよびpgWiz(Gene Therapy System Inc; Himoudi et al, 2002, J. Virol. 76, 12735-12746)などのプラスミドが含まれる。本明細書において「ウイルスベクター」は、その分野で認識されている意味に従って用いられる。ウイルスベクターは、完全なウイルスゲノム、その一部、または下記のような改変ウイルスゲノムならびに生産されたそのウイルス粒子(例えば、感染性ウイルス粒子を生産するためにウイルスキャプシッドにパッケージングされたウイルスベクター)を含む、ウイルス起源の少なくとも1つの要素を含むいずれのベクターも指す。本発明のウイルスベクターは複製能があってもよく、あるいは遺伝的に不能にし、複製欠陥型または複製障害型とすることもできる。本明細書において「複製能」とは、特定の宿主細胞(例えば、腫瘍細胞)において良好または選択的に複製するように操作された複製選択および条件的複製ウイルスベクターを包含する。ウイルスベクターは種々の異なるウイルスから、特には、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルスおよび泡沫状ウイルスからなる群から選択されるウイルスから得ることができる。
【0028】
一実施形態では、本発明のベクターはアデノウイルスベクターである(総説としては、"Adenoviral vectors for gene therapy", 2002, Ed D. Curiel and J. Douglas,Academic Press参照)。それはヒトまたは動物アデノウイルスのいずれから誘導することもできる。本発明において、いずれの血清型およびサブグループも使用可能である。より詳しくは、サブグループA(例えば、血清型12、18および31)、サブグループB(例えば、血清型3、7、11、14、16、21、34および35)、サブグループC(例えば、血清型1、2、5および6)、サブグループD(例えば、血清型8、9、10、13、15、17、19、20、22〜30、32、33、36〜39および42〜47)、サブグループE(血清型4)およびサブグループF(血清型40および41)が挙げられる。特に好ましいのはヒトアデノウイルス2(Ad2)、5(Ad5)、6(Ad6)、11(Ad11)、24(Ad24)および35(Ad35)である。このようなアデノウイルスは、the American Type Culture Collection (ATCC, Rockville, Md.)から入手可能であり、それらの配列、構成および生産方法を記載した多くの刊行物の対象となっており、当業者ならばそれらを適用することができる(例えば、米国特許第6,133,028号、同第6,110,735号、WO02/40665、WO00/50573、EP1016711、Vogels et al, 2003, J. Virol. 77, 8263-8271参照)。
【0029】
本発明のアデノウイルスベクターは複製能を持ち得る。当業者ならば、複製能があるアデノウイルスベクターの多くの例を容易に入手することができる(例えば、Hernandez- Alcoceba et al., 2000, Human Gene Ther. 11, 2009-2024; Nemunaitis et al., 2001, Gene Ther. 8, 746-759; Alemany et al., 2000, Nature Biotechnology 18, 723-727;WO00/24408;米国特許第5,998,205号、WO99/25860、米国特許第5,698,443号、WO00/46355、WO00/15820およびWO01/36650参照)。
【0030】
あるいは、本発明のアデノウイルスベクターは、複製欠陥型であってもよい(例えば、WO94/28152参照)。好ましい複製欠陥型アデノウイルスベクターはE1欠陥型(例えば、米国特許第6,136,594号および同第6,013,638号)であり、E1の欠失はおよそ459番〜3328番またはおよそ459番〜3510番に及ぶ(受託番号M73260としてGeneBankに、また、Chroboczek et al, 1992, Virol. 186, 280-285に開示されているヒト5型アデノウイルスの配列を参照)。クローニング能および安全性は、(例えば、Lusky et al., 1998, J. Virol 72, 2022-2032に記載されているような非必須E3領域または他の必須E2、E4領域において)アデノウイルスゲノムのさらなる部分を欠失させることにより、さらに改良することができる。
【0031】
第一および第二の核酸分子は、Chartier et al. (1996, J. Virol. 70, 4805-4810)に記載されているように、本発明のアデノウイルスベクターのいずれの位置にでも独立に挿入することができ、挿入領域の本来の転写方向に対してセンス配向および/またはアンチセンス配向に独立に配置することができる。例えば、それらは双方ともE1領域の代わりに挿入することもできるし、あるいは一方がE1領域の代わりに、もう一方がE3領域の代わりに挿入される。
【0032】
別の実施形態では、本発明のベクターはポックスウイルスベクターである(例えば、Cox et al. in "Viruses in Human Gene Therapy" Ed J. M. Hos, Carolina Academic Press参照)。それはポックスウイルス科のいずれのメンバーから得られるものでもよく、特に、カナリヤ痘ウイルス(例えば、WO95/27780に記載されているようなALVAC)、鶏痘ウイルス(例えば、Paoletti et al., 1995, Dev. Biol. Stand. 84, 159-163に記載されているようなTROVAC)またはワクシニアウイルスから得られるものであり、ワクシニアウイルスが好ましい。好適なワクシニアウイルスは、コペンハーゲン株(Goebel et al., 1990, Virol. 179, 247-266および517-563; Johnson et al., 1993, Virol. 196, 381-401)、ワイス株、NYVAC(WO92/15672およびTartaglia et al., 1992, Virology 188, 217-232参照)および高弱毒改変アンカラ(MVA)株(Mayr et al., 1975, Infection 3, 6-16)からなる群から選択することができる。このようなベクターおよび作製方法は当業者に入手可能な多くの文献に記載されている(例えば、Paul et al., 2002, Cancer gene Ther. 9, 470-477; Piccini et al., 1987, Methods of Enzymology 153, 545-563;米国特許第4,769,330号;同第4,772,848号;同第4,603,112号;同第5,100,587号および同第5,179,993号)。本発明で用いられる第一および第二の核酸分子は好ましくは、その組換えポックスウイルスが活性および感染性を維持するように、ポックスウイルスゲノムの非必須遺伝子座に挿入される。非必須領域は非コード遺伝子間領域またはその不活性化または欠失がウイルスの増殖、複製または感染を有意に損なわないいずれかの遺伝子である。また、例えば、そのポックスウイルスゲノムで欠失しているものに相当する相補配列を有するヘルパー細胞株を用いることにより、ウイルス粒子の生産の際に欠損している機能がトランスで供給される限り、必須ウイルス遺伝子座における挿入も考えられる。
【0033】
コペンハーゲンワクシニアウイルスを用いる場合、少なくとも第一および第二の核酸分子は好ましくはチミジンキナーゼ遺伝子(tk)に挿入される(Hruby et al, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci USA 80, 3411-3415; Weir et al., 1983, J. Virol. 46, 530-537)。しかしながら、例えば、血球凝集素遺伝子(Guo et al., 1989, J. Virol. 63, 4189-4198)、K1L遺伝子座、u遺伝子(Zhou et al., 1990, J. Gen. Virol. 71, 2185-2190)または種々の自然欠失または操作欠失が文献(Altenburger et al., 1989, Archives Virol. 105, 15-27; Moss et al. 1981, J. Virol. 40, 387-395; Panicali et al., 1981, J. Virol. 37, 1000-1010; Perkus et al, 1989, J. Virol. 63, 3829-3836; Perkus et al, 1990, Virol. 179, 276-286; Perkus et al, 1991, Virol. 180, 406-410)に報告されているワクシニアウイルスゲノムの左末端などの他の挿入部位も適当である。
【0034】
MVAを用いる場合、少なくとも第一および第二の核酸分子は、MVAゲノム(Antoine et al., 1998, Virology 244, 365-396)ならびにD4R遺伝子座に存在する、同定された欠失I〜VIIのいずれに独立に挿入してもよいが、欠失IIおよび/またはIIIにおける挿入が好ましい(Meyer et al., 1991, J. Gen. Virol. 72, 1031-1038; Sutter et al., 1994, Vaccine 12, 1032-1040)。
【0035】
鶏痘ウイルスを用いる場合、チミジンキナーゼ遺伝子内への挿入が考えられるが、少なくとも第一および第二の核酸分子は好ましくはORF7と9の間に位置する遺伝子間領域、に導入される(例えば、EP314569および米国特許第5,180,675号参照)。
【0036】
本発明の別の実施形態では、少なくとも第一および第二の核酸分子は、病状を示す、または示すおそれのある被験体において治療または予防活性を提供し得るポリペプチドを独立にコードする。本明細書において「被験体」とは、脊椎動物、特に哺乳類種のメンバー、特には家庭動物、農場動物、競技動物、およびヒトを含む霊長類を指す。このようなポリペプチドは好ましくは免疫原性ポリペプチドおよび抗腫瘍ポリペプチドからなる群から選択される。
【0037】
「免疫原性」ポリペプチドとは、それが発現される被験体において免疫系を誘導、刺激、発達または追加免疫(boost)し得るポリペプチドを指す。このような免疫応答は体液性または細胞性または体液性と細胞性の双方であり得る。体液性応答は対象ポリペプチドに対する抗体生産を惹起し、細胞性応答はTヘルパー細胞および/またはCTL応答および/またはサイトカイン生産の刺激を惹起する。一般に、ポリペプチドの免疫原性は、当技術分野で標準的な種々のアッセイによって、in vitroまたはin vivoのいずれかで評価することができる(免疫応答の誘発および活性化を評価するために利用可能な技術の概説としては、例えば、Coligan et al, Current Protocols in Immunology; ed J Wiley & Sons Inc, National Institute of Healthの最新版を参照)。例えば、検出は比色定量、蛍光測定または放射性であってよく、好適な技術としては、ELISA、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイおよび免疫沈降アッセイが挙げられる。細胞性免疫の測定は、CD4+およびCD8+T細胞から誘導されたものを含む、活性化されたエフェクター細胞によって分泌されたサイトカインプロフィールの測定(例えば、ELIspotによるIFNg産生細胞の定量)により、免疫エフェクター細胞の活性化状態の判定(例えば、従来の[H]チミジン取り込みによるT細胞増殖アッセイ)により、増感被験体における抗原特異的Tリンパ球のアッセイ(例えば、細胞傷害性アッセイにおけるペプチド特異的溶解)により、行うことができる。ポリペプチドの免疫原性はまた、ELIspot、四量体に基づく分析技術またはT細胞性免疫の分析のための他の標準的な技術により、好適な動物モデルにおいて評価することもできる。好適な免疫原性ポリペプチドはB型肝炎ウイルス(HBV)から得られるもの(例えば、EP414374;EP304578またはEP198474に記載されているようなS、preS2またはpreS1−ポリペプチド);C型肝炎ウイルス(HCV)から得られるもの(例えば、Core(C)、エンベロープ糖タンパク質E1、E2、非構造ポリペプチドNS2、NS3、NS4もしくはNS5またはその任意の組合せ);ヒト免疫
不全ウイルス(HIV)から得られるもの(例えば、gp120またはgp160)および乳頭腫ウイルス(以下に記載される)から得られるものであり得る。
【0038】
「抗腫瘍」ポリペプチドとは、腫瘍細胞の拡大に抑制または正味の減少を与え得るポリペプチドを指す。ポリペプチドの抗腫瘍特性は、適当な動物モデルで、または処置された被験体において、一定期間にわたる実際の腫瘍サイズの低下によって測定することができる。腫瘍サイズを評価するには、放射線学的方法(例えば、単光子および陽電子放射型コンピューター断層撮影法;一般に、"Nuclear Medicine in Clinical Oncology," Winkler, C. (ed.) Springer-Verlag, New York, 1986参照)、従来の画像試薬(例えば、クエン酸ガリウム−67)を用いる方法、免疫学的方法(例えば、特異的腫瘍マーカーに向けられた放射性標識モノクローナル抗体)ならびに超音波法("Ultrasonic Differential Diagnosis of Tumors", Kossoff and Fukuda, (eds.), Igaku-Shoin, New York, 1984参照)を含む種々の方法が使用可能である。あるいは、ポリペプチドの抗腫瘍特性は、腫瘍マーカーの存在の低下に基づいて測定することができる。例としては、前立腺癌の検出のためのPSA、ならびに結腸直腸癌およびある種の乳癌の検出のためのCEAが挙げられる。さらに、ポリペプチドの抗腫瘍特性は、例えば代表的なヒト癌細胞系統を注射したマウスを使用するなど、好適な動物モデルで測定することもできる。触知可能な腫瘍が発達した後、マウスに本発明のベクターを注射し、その後、腫瘍増殖速度の低下および生存率の増加をモニタリングする。さらに、種々のin vitro法を用いて、in vivoにおける腫瘍阻害を推定することができる。好適な抗腫瘍ポリペプチドとしては、MUC−I(WO92/07000;Acres et al, 2005, Exp. Rev. Vaccines 4(4))、BRCA−I、BRCA−2(Palma et al., 2006, Critical Reviews in Oncology/haematology 27, 1-23)、癌胎児性抗原CEA(Conroy et al., 1995, Gene Ther; 2, 59-65)、MAGE(WO99/40188;De Plaen et al., 1994, Immunogenetics 40, 360-369)、MART−1、gp 100(Bakker et al., 1994, J. Exp. Med. 179, 1005-9)、PRAME、BAGE、Lage(NY Eos 1としても知られる)SAGE、HAGE(WO99/53061)、GAGE(Robbins and Kawakami, 1996. Current Opinions in Immunol. 8, 628-36)および前立腺特異的抗原(PSA)(Ferguson, et al., 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 96, 3114-9;WO98/12302、WO98/20117およびWO00/04149)ならびに腫瘍誘発能を有するウイルス(例えば、乳頭腫ウイルス)由来のウイルスポリペプチドなどの腫瘍関連抗原(TAA)が挙げられる。
【0039】
本発明の別の実施形態では、少なくとも第一および第二の核酸分子は同じ生物または近縁の生物から得られる。
【0040】
本明細書において「生物」とは、微生物、好ましくは、病原性を有する微生物、ならびに高等真核生物を包含する。「微生物」とは、真菌、細菌、原虫およびウイルスを表す。ウイルスの代表例としては、限定されるものではないが、HIV(HIV−IまたはHIV−2)、ヒトヘルペスウイルス(例えば、HSV1またはHSV2)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、肝炎ウイルス(例えば、A型肝炎ウイルス(HAV)、HBV、HCVおよびE型肝炎ウイルス)、フラビウイルス(例えば、黄熱ウイルス)、水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、パラミクソウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、インフルエンザウイルスおよび乳頭腫ウイルス(上記で定義された通り)が挙げられる。好適な細菌の代表例としては、限定されるものではないが、ナイセリア属(Neisseria)(例えば、淋菌)(N. gonorrhea)および髄膜炎菌(N. meningitidis));ボルデテラ属(Bordetella)(例えば、百日咳菌(B. pertussis)、パラ百日咳菌(B. paraperussis)および気管支敗血症菌(B. bronchiseptica)、マイコバクテリア属(Mycobacteria)(例えば、結核菌(M. tuberculosis)、ウシ結核菌(M. bovis)、らい菌(M. leprae)、鳥結核菌(M. avium)、パラ結核菌(M. paratuberculosis)、スメグマ菌(M. smegmatis));レジオネラ属(Legionella)(例えば、L.ニューモフィラ(L. pneumophila));エシェリキア属(Escherichia)(例えば、内毒素大腸菌(E. coli)、腸管出血性(enterohemorragic)大腸菌、腸病原性大腸菌);赤痢菌属(Shigella)(例えば、ソンネ赤痢菌(S. sonnei)、志賀赤痢菌(S. dysenteriae)、フレクスナー赤痢菌(S. flexnerii));サルモネラ菌属(Salmonella)(例えば、チフス菌(S. typhi)、パラチフス菌(S. paratyphi)、豚コレラ菌(S. choleraesuis)、腸炎菌(S. enteritidis));リステリア属(Listeria)(例えば、リステリア菌(L. monocytogenes));ヘリコバクター(Helicobacter)(例えば、ピロリ菌(H. pylori));シュードモナス属(Pseudomonas)(例えば、緑膿菌(P. aeruginosa));ブドウ球菌属(Staphylococcus)(例えば、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis));腸球菌属(Enterococcus)(例えば、フェカリス菌(E. faecalis)、フェシウム菌(E. faecium));バチルス属(例えば、炭疽菌(B. anthracis));コリネバクテリア属(Corynebacterium)(例えば、ジフテリア菌(C. diphtheriae))およびクラミジア属(Chlamydia)(例えば、トラコーマクラミジア(C. trachomatis)、肺炎クラミジア(C. pneumoniae)、オウム病クラミジア(C. psittaci))が挙げられる。寄生虫の代表例としては、限定されるものではないが、プラスモジウム属(Plasmodium)(例えば、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum));トキソプラズマ属(Toxoplasma(例えば、トキソプラズマ(T. gondii));リーシュマニア(Leshmania)(例えば、森林型熱帯リーシュマニア(L. major));ニューモシスティス(Pneumocystis)(例えば、P.カリニ(P. carinii));およびシソストーマ属(Schisostoma)(例えば、マンソン住血吸虫(S. mansoni))が挙げられる。真菌の代表例としては、限定されるものではないが、カンジダ(Candida)(例えば、C.アルビカンス(C. albicans))およびアスペルギルスが挙げられる。高等真核生物は好ましくは、ヒトを含む哺乳類である。
【0041】
「同じ生物(same organism)」とは、共通の祖先に起源し、同じ進化経路をたどった生物を定義する。代表例としては、同じ血清型または遺伝子型を有するウイルスの種々の単離物が挙げられる。例えば、HPV−16の2つの単離物はこのカテゴリーに分類される。「近縁の生物(closely related organism)」とは、共通の祖先に起源し、進化中に分岐した生物を定義する。代表例としては、異なる血清型または遺伝子型を有するウイルスが挙げられる。例えば、HPV−16およびHPV−18はこのカテゴリーに分類される。
【0042】
好ましい実施形態では、少なくとも第一および第二の核酸分子を得るための生物は乳頭腫ウイルスであり、それぞれ乳頭腫ウイルスポリペプチドをコードしている。「乳頭腫ウイルス」とは、乳頭腫ウイルス亜科に属すウイルスとして定義することができ、この用語には、限定されるものではないが、ウシ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、イヌ、非ヒト霊長類および齧歯類を含む非ヒト種起源の動物乳頭腫ウイルスならびにヒト乳頭腫ウイルス(HPV)が包含される。現在のところ100を超えるHPV遺伝子型が同定されており(Van Ranst et al., 1992, J. Gen. Virol. 73, 2653; De Villiers et al., 2004, Virology 324, 17-27)、それらの発癌性によって「低リスク」(LR)および「高リスク」(HR)血清型に分類されている。LR HPVは感染体に良性腫瘍を引き起こし、HRは悪性進行に関して高いリスクを有する。
【0043】
一般的な指針としては、乳頭腫ウイルスは、タンパク質キャプシッドに取り囲まれた約7900塩基対の二本鎖環状DNAを有する(例えば、Pfister, 1987, in The papovaviridae: The Papillomaviruses, Salzman and Howley edition, Plenum Press, New York, p 1-38参照)。それらのゲノムは3つの機能的領域、すなわち、初期(E)、後期(L)および長い制御(LCR)領域からなる。LCRは、エンハンサーおよびプロモーターなどの転写調節配列を含む。後期領域は、それぞれ主要およびマイナーキャプシッドタンパク質であるL1およびL2構造タンパク質をコードし、初期領域は、ウイルスの複製、転写および細胞形質転換を制御する核内に主要に見られる調節タンパク質(E1〜E7)をコードしている。より具体的には、E1タンパク質は、ATP依存性ヘリカーゼ活性を有するDNA結合リンタンパク質である(Desaintes and Demeret, 1996, Semin. Cancer Biol. 7, 339-347; Wilson et al, 2002, Virus Gene 24, 275-290)。E2タンパク質は、ウイルス遺伝子の転写を調節し、DNA複製を制御する多機能型DNA結合リンタンパク質である(Bechtold et al., 2003, J. Virol. 77, 2021-8)。E4によりコードされるタンパク質は細胞質のケラチンネットワークと結合してこれを分断し、ウイルス成熟に役割を果たす。E5タンパク質の機能はなお議論の余地があり、その発現は宿主染色体にウイルスが組み込まれる際にはしばしば消失する。HR HPV遺伝子型の、E6およびE7によりコードされる遺伝子産物は、感染細胞の発癌性転換に関与しており(Kanda et al., 1988, J. Virol. 62, 610-3; Vousden et al., 1988, Oncogene Res. 3, 1-9; Bedell et al., 1987, J. Virol. 61, 3635-40)、それはおそらくそれぞれ細胞腫瘍抑制遺伝子産物p53および網膜芽細胞腫(Rb)へのこれらのウイルスタンパク質の結合を介したものである(Howley, 1996, Papillomaviruses and their replication, p 2045-2076. In B.N. Fields, D. M. Knipe and P.M. Howley (ed), Virology, 3rd ed. Lippincott-Raven Press, New York, N.Y.に総説)。p53に対する天然HPV−16 E6ポリペプチドの結合に関与するアミノ酸残基は残基118〜122(+1は最初のMet残基、または好ましく用いられる2番目のMet残基から始まって残基111〜115)で明らかに定義されており(Crook et al., 1991, Cell 67, 547-556)、天然HPV−16 E7ポリペプチドとRbの結合に関与するものは残基21〜26に位置している(Munger et al., 1989, EMBO J. 8, 4099-4105; Heck et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 4442-4446)。
【0044】
好ましくは、少なくとも第一および第二の核酸分子は、HPV−16、HPV−18、HPV−30、HPV−31、HPV−33、HPV−35、HPV−39、HPV−45、HPV−51、HPV−52、HPV−56、HPV−58、HPV−59、HPV−66、HPV−68、HPV−70およびHPV−85からなる群から選択される高リスク乳頭腫ウイルスから独立に得られる。
【0045】
本明細書において「乳頭腫ウイルスポリペプチド」とは、乳頭腫ウイルスゲノム/供給源から得られる核酸分子によりコードされている、当技術分野で認識されているポリペプチドを指す。「ポリペプチド」という用語に関して上記で定義されているように、「乳頭腫ウイルスポリペプチド」とは、天然型、改変型乳頭腫ウイルスポリペプチドおよびそのペプチドを包含する。乳頭腫ウイルスの供給源としては、限定されるものではないが、生体サンプル(例えば、乳頭腫ウイルスに曝された被験体から採取した生体サンプル、組織切片、生検および組織培養)、培養細胞(例えば、ATCCから入手可能なCaSki細胞)、ならびに寄託機関、商用カタログで入手可能な、または文献に記載されている組換え材料が含まれる。いくつかの乳頭腫ウイルスゲノムのヌクレオチド配列およびコードされているポリペプチドのアミノ酸配列は専門のデータバンク、例えば、Genbankで入手可能である。概略の情報としては、HPV−16ゲノムは受託番号NC_01526およびK02718として;HPV−18はNC_001357およびX05015;HPV−31はJ04353として;HPV−33はM12732として;HPV−35はNC_001529として;HPV−39はNC_001535として;HPV−45はX74479として;HPV−51はNC_001533として;HPV−52はNC_001592として;HPV−56はX74483として;HPV−58はD90400として;HPV−59はNC_001635として;HPV−68はX67160およびM73258として;HPV−70はU21941として;また、HPV−85はAF131950としてGenbankに記載されている。
【0046】
第一および/または第二の核酸分子によりコードされている乳頭腫ウイルスポリペプチドは、初期、後期またはそのいずれかの組合せである。初期乳頭腫ウイルスポリペプチドとしては、E1、E2、E4、E5、E6およびE7が含まれ、後期ポリペプチドはL1またはL2であり得る。膨大な数の乳頭腫ウイルス血清型の初期および後期ポリペプチドヌクレオチド配列およびアミノ酸配列が当業者に入手可能な文献に記載されている。
【0047】
望ましくは、少なくとも第一および第二の核酸分子は、E1、E2、E6およびE7からなる群から選択される初期ポリペプチドを独立にコードしている。例示として、天然HPV−16 E1、E2、E6およびE7ポリペプチドのアミノ酸配列がそれぞれ配列番号1〜4で示されている。しかしながら、本発明はこれらの例示的配列に限定されない。実際に、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は異なる乳頭腫ウイルス単離物では異なる場合があり、この自然の遺伝子変動、ならびに以下に記載されるものなどの非自然的改変も本発明の範囲内に含まれる。好適な改変された乳頭腫ウイルスポリペプチドの例は以下に示されるが(例えば、配列番号5〜8および64〜65)、(例えば、配列比較により、他の乳頭腫ウイルス遺伝子型から起源するポリペプチドに対して)本明細書に記載される改変を適合させることは、当業者の裁量の範囲内である。
【0048】
本発明で用いるのに好適な乳頭腫ウイルスE1ポリペプチドは、ウイルス複製刺激に欠陥がある、すなわち、それらのウイルス複製刺激能が、相当する天然E1ポリペプチドよりも統計学的に有意に低い(例えば、75%未満、有利には50%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満)突然変異体を包含する。一般的な指針としては、ウイルス複製刺激を担うドメインはE1の中央部に位置する(例えば、Hugues and Romanos, 1993, Nucleic Acids Res.21, 5817-23)。複製欠陥E1ポリペプチドの代表例は、例えばYasugi et al. (1997, J. Virol 71, 5942-51)など、当業者に入手可能な文献に記載されている。本発明に関して好ましい改変としては、HPV−16 E1ポリペプチドの482番のGly残基の、別の残基(好ましくは、Asp残基)での置換(例えば、配列番号5参照)またはHPV−18 E1ポリペプチドの489番のGly残基の、別の残基(好ましくはAsp残基)での置換(例えば、配列番号6参照)が含まれる。
【0049】
本発明で用いるのに好適なE2ポリペプチドは、天然E2ポリペプチドに比べて転写活性化および/または複製活性に欠陥がある(例えば、75%未満、有利には50%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満)突然変異体を包含する。一般的な指針としては、転写の活性化および複製の刺激を担うドメインは、E2のN末端部分に位置し(Seedorf et al., 1985, Virology, 145,181-185; Kennedy et al., 1991, J. Virol. 65, 2093-2097; Cole et al., 1987, J. Mol.Biol. 193, 599-608; McBride et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86, 510-514)、複製および転写E2活性の低下または欠如は、標準的な方法を用いて容易に判定することができる(例えば、Sakai et al., 1996, J. Virol. 70, 1602-1611参照)。本発明で用いるのに好適な欠陥型E2突然変異体は、例えば、Demeret et al. (1995, Nucleic Acids Res. 23, 4777-4784)、Sakai et al. (1996, J. Virol. 70, 1602-1611)、Brokaw et al. (1996, J. Virology 70, 23-29)およびFerguson et al. (1996, J. Virology 70, 4193-4199)など、当業者が入手可能な文献に記載されている。本発明に関して好ましい改変としては、HPV−16 E2の39番のGlu残基の、好ましくはAla残基での置換(E39A)および/または73番のIle残基の、好ましくはAla残基での置換(I73A)が含まれる(例えば、配列番号7参照)。例示として、HPV−16 E2の39番および73番のGluおよびIle残基はそれぞれ、HPV−18 E2の43番および77番のGluおよびIle残基に相当する(例えば、配列番号8参照)。
【0050】
本発明で用いるのに好適なE6ポリペプチドは、細胞腫瘍抑制遺伝子産物p53との結合に欠陥がある非発癌性突然変異体を包含する。非発癌性E6ポリペプチドの代表例は、例えば、Pim et al. (1994, Oncogene 9, 1869-1876)およびCrook et al. (1991, Cell 67, 547-556)に記載されている。この場合に好ましい改変としては、HPV−16 E6における残基118〜122(CPEEK)の欠失(例えば、配列番号64参照)またはHPV−18 E6における残基113〜117(NPAEK)の欠失が含まれる。
【0051】
本発明で用いるのに好適なE7ポリペプチドは、細胞腫瘍抑制遺伝子産物Rbとの結合に欠陥がある非発癌性突然変異体を包含する。非発癌性E7ポリペプチドの代表例は、例えば、Munger et al. (1989, EMBO J. 8, 4099-4105)、Heck et al. (1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 4442-4446)およびPhelps et al. (1992, J. Virol. 66, 2148-2427)などの記載されている。この場合に好ましい改変としては、HPV−16 E7における残基21〜26(DLYCYE)の欠失(例えば、配列番号65参照)またはHPV−18 E7における残基24〜28(DLLCH)の欠失が含まれる。
【0052】
さらに、少なくとも第一および/または第二の核酸分子によりコードされているポリペプチド(例えば、乳頭腫ウイルスポリペプチド)は、例えば、潜在的切断部位の抑制、潜在的グリコシル化部位の抑制および/または発現細胞の表面における提示など、コードされているポリペプチドのプロセシング、安定性および/または溶解度に有益な付加的開眼をさらに含んでもよい。例えば、コードされているポリペプチドは、発現細胞の原形質膜内に固定されるの好適なシグナルを含み得る。実際、これまでに、膜提示がMHCクラスIおよび/またはMHCクラスIIの提示を向上させ、宿主の免疫系による認識の増強をもたらし得る(例えば、WO99/0388参照)。天然初期乳頭腫ウイルスポリペプチド(E1、E2、E6およびE7)は核タンパク質であるので(典型的な核局在シグナルは明らかに同定することはできなかったが)、宿主対象においてそれらの免疫原性、従ってそれらの治療効力を高めるために、それらを原形質膜で取り扱うことが有益であり得る。
【0053】
発現宿主細胞の表面でのポリペプチドの効率的な膜提示は、このポリペプチドをシグナルペプチドおよび膜固定ペプチドと融合させることより、達成することができる。このようなペプチドは当技術分野で公知である。要するに、シグナルペプチドは一般に、膜に提示された、または分泌されたポリペプチドのN末端に存在し、それらの小胞体(ER)への経路を誘発する。それらは15〜35の本質的に疎水性のアミノ酸を含み、その後、これが特異的ER局在エンドペプチダーゼによって除去されて成熟ポリペプチドとなる。膜固定ペプチドは通常、本来疎水性が高く、これらのポリペプチドを細胞膜に固定するのに役立つ(例えば、Branden and Tooze, 1991, in Introduction to Protein Structure p. 202- 214, NY Garland参照)。本発明に関して使用可能なシグナルペプチドおよび膜固定ペプチドの選択肢は膨大である。それらは狂犬病糖タンパク質、HIVウイルスエンベロープ糖タンパク質または麻疹ウイルスFタンパク質などの分泌型または膜固定ポリペプチド(例えば、細胞ポリペプチドまたはウイルスポリペプチド)から独立に得ることができるか、あるいは合成することができる。シグナルペプチドの好ましい挿入部位は、転写開始コドンのN末端下流であり、膜固定ペプチドの好ましい挿入部位は、例えば、停止コドンのすぐ上流のC末端である。必要に応じて、シグナルペプチドおよび/または膜固定ペプチドとコードされているポリペプチドを接続するためにリンカーペプチドを使用することができる。
【0054】
本発明で用いるのに好適な膜固定型かつ欠陥型のE1ポリペプチドの代表例は配列番号5(実施例の節に示されているHPV−16 SS−E1−TMRポリペプチドを定義する)および配列番号6(実施例の節に示されているHPV−18 SS−E1−TMFポリペプチドを定義する)で示される。本発明で用いるのに好適な膜固定型かつ欠陥型E2ポリペプチドの代表例は、配列番号7(実施例の節に示されているHPV−16 SS−E2−TMRポリペプチドを定義する)および配列番号8(実施例の節に示されているHPV−18 SS−E2−TMRポリペプチドを定義する)で示される。本発明で用いるのに好適な膜固定型かつ非発癌性E6およびE7ポリペプチドの代表例は、それぞれ配列番号64(実施例の節に示されているHPV−16 SS−E6−TMFポリペプチドを定義する)および配列番号65(実施例の節に示されているHPV−16 SS−E7−TMRポリペプチドを定義する)で示される。
【0055】
特に好ましい実施形態では、少なくとも第一の核酸分子および第二の核酸分子は、同じHPV血清型から得られる2つの異なる乳頭腫ウイルスポリペプチドをコードしている。
【0056】
本実施形態の好ましい一態様では、第一の核酸分子はE1ポリペプチドをコードし、第二の核酸分子はE2ポリペプチドをコードするか、またはその逆である。望ましくは、これらのE1およびE2をコードする核酸分子はHPV−16またはHPV−18から得られる。好ましくは、第一の核酸分子は配列番号5で示されるアミノ酸配列を含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなるポリペプチドをコードし、第二の核酸分子は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなるポリペプチドをコードする。あるいは、第一の核酸分子は配列番号6で示されるアミノ酸配列を含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなるポリペプチドをコードし、第二の核酸分子は配列番号8で示されるアミノ酸配列を含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなるポリペプチドをコードする。
【0057】
本来の文脈において(例えば、HPV−16またはHPV−18ゲノム)、E1をコードする配列の3’部分はE2をコードする配列の5’部分と59のヌクレオチドにわたって重複する。これらの100%相同な59のヌクレオチドの存在は、E1をコードする核酸分子とE2をコードする核酸分子の双方を発現するベクターの安定性に悪影響を及ぼすと予想される。これらの共通部分間で相同組換えが起こり、それらの間に含まれるヌクレオチド配列の欠失がもたらされることがある。
【0058】
本発明によれば、E1をコードする核酸分子およびE2をコードする核酸分子の改変前に存在する59ヌクレオチドの重複部分間のこの100%の相同性は、これらの核酸分子の一方のコドン使用パターンを変更することにより、75%未満に低下させることができる。変更された配列の代表例は配列番号9で示され、この場合、E1/E2で重複する59のヌクレオチドの相同性は69%に低下し(図1に示されている)、HPV−16 E1およびE2ポリペプチドをコードする本発明の好ましいベクターは配列番号9で示されるヌクレオチド配列を含む。同じ戦略がHPV−18のE1とE2をコードする配列に存在する重複部分にも適用可能である。このように変更された配列を、E1をコードする第一の核酸分子に、天然の重複する59のヌクレオチドの代わりに導入することができる(例えば、それぞれ配列番号10および11)。
【0059】
よって、本発明の好ましいベクターは、配列番号10で示されるヌクレオチド配列(配列番号5のHPV−16 E1ポリペプチドをコードする)を含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなる第一の核酸分子と、配列番号12で示されるヌクレオチド配列(配列番号7のHPV−16 E2ポリペプチドをコードする)を含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなる第二の核酸分子とを含んでなる。本発明の別の好ましいベクターは、配列番号11で示されるヌクレオチド配列(配列番号6のHPV−18 E1ポリペプチドをコードする)を含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなる第一の核酸分子と、配列番号13で示されるヌクレオチド配列(配列番号8のHPV−18 E2ポリペプチをコードする)を含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなる第二の核酸分子とを含んでなる。より好ましくは、本発明のベクターはMVAベクターであり、第一の(E1をコードする)核酸分子はワクシニア7.5Kプロモーターの制御下に置かれ、第二の(E2をコードする)核酸分子はワクシニアH5Rプロモーターの制御下に置かれ、第一および第二の核酸分子は双方とも前記MVAベクターの欠失IIIに挿入される。
【0060】
本発明はまた、HPV−16 E1ポリペプチドをコードする第一の核酸分子、HPV−16 E2ポリペプチドをコードする第二の核酸分子、HPV−18 E1ポリペプチドをコードする第三の核酸分子、およびHPV−18 E2ポリペプチドをコードする第四の核酸分子を含み、該第一、第二、第三および第四の核酸分子は、75%または75%を超える相同性パーセンテージを示す40以上の連続するヌクレオチドの部分を含まないベクターに関する。好ましくは、該HPV−16 E1ポリペプチドは配列番号5で示されるアミノ酸配列を含んでなり、該HPV−16 E2ポリペプチドは配列番号7で示されるアミノ酸配列を含んでなり、該HPV−18 E1ポリペプチドは配列番号6で示されるアミノ酸配列を含んでなり、かつ/または該HPV−18 E2ポリペプチドは配列番号8で示されるアミノ酸配列を含んでなる。
【0061】
本来的に、HPV−16およびHPV−18 E1をコードする配列は、80%または80%を超える相同性パーセンテージを示す40以上の連続するヌクレオチドの部分をいくつか含む。同じことがHPV−16およびHPV−18 E2をコードする配列についても言える。さらに、HPV−16およびHPV−18ゲノムにおいて、隣接するE1をコードする配列とE2をコードする配列は、およそ59のヌクレオチドの部分にわたって重複する。これに関しては、特に両血清型に共通している相同部分において、それらのHPV−16対応物との相同性を75%未満に低下させるようにHPV−18 E1をコードする核酸分子配列とE2をコードする核酸分子配列を改変することが提案される。この目的で、HPV−16およびHPV−18 E1およびE2遺伝子のヌクレオチド配列をアラインし、相同性を8、7、6または好ましくは5未満の連続するヌクレオチドに低下させるようにヌクレオチドレベルで改変を設計することができる。さらに、HPV−18 E1配列を、HPV−18 E2配列の5’末端で重複する59のヌクレオチドの部分との相同性が75%未満に低下させるようにさらに改変することができる。コドン使用が改変されることが好ましいが、例えば酵素機能の欠損をもたらす、本明細書で定義された改変を作出する場合以外は、改変はアミノ酸レベルで翻訳しない。第三および第四の核酸分子として好適に使用可能な、「変更された(degenerated)」HPV−18 E1−およびHPV−18 E2をコードするヌクレオチド配列の代表例は、それぞれ配列番号11および配列番号13で示される。本発明の好ましいベクターは、配列番号10で示されるヌクレオチド配列(配列番号5で示されるHPV−16 E1ポリペプチドをコードする)を含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなる第一の核酸分子、配列番号12で示されるヌクレオチド配列(配列番号7で示されるHPV−16 E2ポリペプチドをコードする)を含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなる第二の核酸分子、配列番号11で示されるヌクレオチド配列(配列番号6で示されるHPV−18 E1ポリペプチドをコードする)を含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなる第三の核酸分子、および配列番号13で示されるヌクレオチド配列(配列番号8で示されるHPV−18 E2ポリペプチドをコードする)を含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなる第四の核酸分子を含んでなる。好ましくは、このベクターはMVAベクターであり、該第一、第二、第三および第四の核酸分子はMVAベクターの欠失IIIに導入され、該第一および第三の(E1をコードする)核酸分子は、それぞれワクシニアp7.5Kプロモーターの制御下に逆向きに配置され、第二および第四の(E2をコードする)核酸分子は、それぞれワクシニアpH5Rプロモーターの制御下に逆向きに配置される。
【0062】
別の特に好ましい実施形態では、少なくとも第一の核酸分子および第二の核酸分子は、近縁の生物、例えば、HPV−16、HPV−18、HPV−33および/またはHPV−52などの近縁のHPV血清型から得られる同じポリペプチドをコードしている。
【0063】
本実施形態の第一の態様において、近縁の生物から得られる同じポリペプチドは好ましくはE2ポリペプチドである。コードされているE2ポリペプチドは好ましくは、本明細書で定義されているように、膜固定型かつウイルス複製欠陥型となるように改変される。本来的に、種々の遺伝子型のE2をコードする配列は、特に最も保存性の高い部分において、ヌクレオチドレベルで高い程度の相同性を示す。これらの相同な配列の存在は、2以上(例えば、3、4またはさらにはそれを超える)E2遺伝子、例えば、HPV−16、HPV−18、HPV−33およびHPV−52などのHR HPVに由来するE2遺伝子を同時発現するベクターの安定性に悪影響を及ぼすと予想される。これらの相同な遺伝子配列間で相同組換えが起こり、それらの間に含まれるヌクレオチド配列の欠失がもたらされ、遺伝子サイレンシングが起こることがある。
【0064】
本発明によれば、本発明のベクターに含まれるE2ポリペプチドをコードする核酸分子は、特に相同性の高い部分において相同性を75%未満に低下させるようにコドン使用パターンを変更することによって改変することができる。変更されたE2ポリペプチドをコードする核酸分子の代表例は、配列番号13、66、67、68および69で示される。より具体的には、配列番号13は、ヌクレオチド配列が、そのE2をコードする対応物との相同性を8または7未満の連続ヌクレオチドにまで低下させるように設計されている、膜提示型かつ複製欠陥型HPV−18 E2ポリペプチドをコードする。配列番号66および67は双方とも、ヌクレオチド配列が、E2をコードする他の対応物との相同性が8または7未満の連続ヌクレオチドにまで低下させるように設計された、複製欠陥HPV−33 E2ポリペプチド(配列番号67ではそれはさらに膜提示型である)をコードする。配列番号68および69は双方とも、ヌクレオチド配列が、E2をコードする他の対応物との相同性が8または7未満の連続ヌクレオチドにまで低下させるように設計された、複製欠陥HPV−52 E2ポリペプチド(配列番号69ではそれはさらに膜提示型である)をコードする。しかしながら、本発明はこれらの例示的配列に限定されず、上記で定義されたような変更されたE2乳頭腫ウイルスポリペプチドをコードする核酸分子の別の変型もこの原理で設計することができる。
【0065】
本発明の好ましいベクターは、本明細書に定義されているようなHPV−16 E2ポリペプチド(例えば、配列番号7で示されるアミノ酸配列を含んでなる膜提示型かつ複製欠陥E2ポリペプチド)をコードする第一の核酸分子、本明細書で定義されているようなHPV−18 E2ポリペプチド(例えば、配列番号8で示されるアミノ酸配列を含んでなる膜提示型かつ複製欠陥E2ポリペプチド)をコードする第二の核酸分子、本明細書で定義されているようなHPV−33 E2ポリペプチド(例えば、配列番号70で示されるアミノ酸配列を含んでなる膜提示型かつおよび複製欠陥型E2ポリペプチド)をコードする第三の核酸分子、および本明細書で定義されているようなHPV−52 E2ポリペプチド(例えば、配列番号71で示されるアミノ酸配列を含んでなる膜提示型かつ複製欠陥型E2ポリペプチド)をコードする第四の核酸分子を含んでなる。より好ましくは、第一の核酸分子は配列番号12で示されるヌクレオチド配列含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなり;第二の核酸分子は配列番号13で示されるヌクレオチド配列含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなり;第三の核酸分子は配列番号67で示されるヌクレオチド配列含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなり;かつ/または第四の核酸分子は配列番号69で示されるヌクレオチド配列含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなる。より好ましくは、本発明のベクターはMVAベクターであり、E2をコードする4つの核酸分子は欠失IIIに挿入される。いっそうより好ましくは、第一および第二の核酸分子はワクシニアH5Rプロモーターの制御下にあり、互いに逆向きに配置され、第三および第四の核酸分子はワクシニアp7.5Kプロモーターの制御下にあり、互いに逆向きに配置される。
【0066】
本実施形態の別の態様において、近縁の生物から得られる同じポリペプチドは好ましくはE6ポリペプチド、E7ポリペプチドまたはE6およびE7ポリペプチドの双方である。E6およびE7は独立に発現させることもできるし、あるいは融合ポリペプチドとして発現させることもできる。コードされているE6および/またはE7ポリペプチドは好ましくは、本明細書で定義されているように膜固定型かつ非発癌性となるように改変されている。
【0067】
本来の文脈において、HPV−16およびHPV−18天然E6配列はヌクレオチドレベルで63%の相同性を有し、HPV−16およびHPV−18天然E7配列は互いに57%相同である。しかしながら、両場合とも、HPV−16およびHPV−18天然配列は、80%または80%を超える相同性を示す40ヌクレオチド以上の部分をいくつか共有する(図2参照)。これらの相同部分の存在は、HPV−16およびHPV−18 E6および/またはE7遺伝子を同時発現するベクターの安定性に悪影響を及ぼすと予想される。これらの相同部分間で相同組換えが起こり、それらの間に含まれるヌクレオチド配列の欠失がもたらされ、遺伝子サイレンシングが起こることがある。
【0068】
本発明によれば、HPV−16および/またはHPV−18 E6およびE7ポリペプチドをコードする核酸分子は、特に相同部分において、相同性が75%未満に低下させるようにコドン使用パターンを変更することにより改変することができる。変更されたHPV−18 E6ポリペプチドをコードする核酸分子の代表例は配列番号14で示され、変更されたHPV−18 E7ポリペプチドをコードする改変核酸分子の代表例は配列番号15で示される。より具体的には、、配列番号14および配列番号15は、HPV−18膜固定型かつ非発癌性E6およびE7ポリペプチドをコードしつつ、HPV−16対応物との相同性を8、7、6または好ましくは5未満の連続ヌクレオチドにまで低下させるように設計されている。しかしながら、上記で定義されたような変更されたE6および/またはE7乳頭腫ウイルスポリペプチドをコードする核酸分子の別の変型もこの原理で設計することができる。
【0069】
本発明の好ましいベクターは、本明細書で定義されているようなHPV−16 E6ポリペプチド(例えば、膜固定型かつ非発癌性)をコードする第一の核酸分子と、本明細書で定義されているようなHPV−18 E6ポリペプチド(例えば、膜固定型かつ非発癌性)をコードする第二の核酸分子を含んでなり、該第二の核酸分子は、配列番号14で示されるヌクレオチド配列を含んでなり、またはそれから本質的になる。本発明の別の好ましいベクターは、本明細書で定義されているようなHPV−16 E7ポリペプチド(例えば、膜固定型かつ非発癌性)をコードする第一の核酸分子と、本明細書で定義されているようなHPV−18 E7ポリペプチド(例えば、膜固定型および非発癌性)をコードする第二の核酸分子を含んでなり、該第二の核酸分子は配列番号15で示されるヌクレオチド配列を含んでなり、またはそれから本質的になる。より好ましくは、本発明のベクターはMVAベクターであり、第一の核酸分子はワクシニア7.5Kプロモーターの制御下に置かれ、第二の核酸分子はワクシニアH5Rプロモーターの制御下に置かれ、第一および第二の核酸分子は双方ともMVAベクターの欠失IIIに挿入される。
【0070】
本発明はまた、HPV−16 E6ポリペプチドとHPV−16 E7ポリペプチドの融合物をコードする第一の核酸分子と、HPV−18 E6ポリペプチドとHPV−18 E7ポリペプチドの融合物をコードする第二の核酸分子を含んでなり、該第一および第二の核酸分子が、およそ75%または75%を超える相同性パーセンテージを示す40以上の連続するヌクレオチドの部分を含まない、ベクターに関する。
【0071】
本発明はまた、HPV−16 E6ポリペプチドをコードする第一の核酸分子、HPV−18 E6ポリペプチドをコードする第二の核酸分子、HPV−16 E7ポリペプチドをコードする第三の核酸分子、およびHPV−18 E7ポリペプチドをコードする第四の核酸分子を含んでなり、該第一、第二、第三および第四の核酸分子が、75%または75%を超える相同性パーセンテージを示す40以上の連続するヌクレオチドの部分を含まない、ベクターに関する。好ましくは、第二の核酸分子は配列番号14を含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなり、かつ/または第四の核酸分子は配列番号15を含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなる。より好ましくは、本発明のベクターはMVAベクターであり、第一および第二の核酸分子はそれぞれワクシニア7.5Kプロモーターの制御下に逆向きに配置され、第三および第四の核酸分子はそれぞれワクシニアH5Rプロモーターの制御下に逆向きに配置され、第一、第二、第三および第四の核酸分子はMVAベクターの欠失IIIに挿入される。
【0072】
別の態様において、本発明はまた、配列番号9、10、11、12、13、14、15、66、67、68または69で示されるヌクレオチド配列を含んでなる、またはそれから本質的になる、またはそれからなる実質的に単離された核酸分子を提供する。
【0073】
本発明の別の実施形態では、本発明のベクターに含まれる第一および第二、および存在する場合には第三および第四の核酸分子は、宿主細胞または被験体における、コードされているポリペプチドの発現に好適な形態であり、これはそれらが発現に必要な調節配列の制御下に置かれていることを意味する。
【0074】
本明細書において「調節配列」とは、複製、倍加、転写、スプライシング、翻訳、安定性および/または宿主細胞への核酸またはその誘導体の1つ(すなわち、mRNA)の輸送を含む、所定の宿主細胞における核酸分子の発現を可能とする、またはそれに寄与する、またはそれを調節するいずれの配列も指す。本発明の文脈で、調節配列は発現される核酸分子に「作動可能なように連結」され、すなわち、それらは宿主細胞または被験体における発現を可能とする機能的関係に置かれる。このような調節配列は当技術分野でよく知られている(例えば、Goeddel, 1990, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego参照)。当業者ならば、ベクターのタイプ、宿主細胞、所望の発現レベルなどの要因に基づいて調節配列を選択できることが分かるであろう。
【0075】
プロモーターは特に重要であり、本発明は、多くのタイプの宿主細胞において核酸分子の発現を命令する構成的プロモーター、およびある種の宿主細胞でのみ(例えば、組織特異的調節配列)または特定の事象もしくは外因性の因子に応答して(例えば、温度、栄養添加物、ホルモンまたは他のリガンドによる)発現を命令するものの使用を包含する。真核生物系での構成的発現に好適なプロモーターとしては、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーターまたはエンハンサー(Boshart et al, 1985, Cell 41, 521-530)、アデノウイルス初期および後期プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)−1のチミジンキナーゼ(TK)プロモーターおよびレトロウイルスの長い末端反復配列(例えば、MoMuLVおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR)などのウイルスプロモーター、ならびにホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーター(Hitzeman et al., 1983, Science 219, 620-625 ; Adra et al., 1987, Gene 60, 65-74)などの細胞プロモーターが挙げられる。ポックスウイルスベクターにおいて核酸分子の発現を駆動するのに有用な好適なプロモーターとしては、ワクシニアウイルスの7.5K、H5R、TK、p28、p11またはK1Lプロモーターが挙げられる。あるいは、Chakrabarti et al. (1997, Biotechniques 23, 1094-1097)、Hammond et al. (1997, J. Virological Methods 66, 135-138)およびKumar and Boyle (1990, Virology 179, 151-158)に記載されているものなどの合成プロモーター、ならびに初期および後期ポックスウイルスプロモーターの間のキメラプロモーターが挙げられる。
【0076】
誘導プロモーターは外因的に供給される化合物によって調節され、限定されるものではないが、亜鉛誘導メタロチオネイン(MT)プロモーター(Mc Ivor et al., 1987, Mol. Cell Biol. 7, 838-848)、デキサメタゾン(Dex)誘導マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系(WO98/10088)、エクジソン昆虫プロモーター(No et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 3346-3351)、テトラサイクリン抑制プロモーター(Gossen et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 5547-5551)、テトラサイクリン誘導プロモーター(Kim et al., 1995, J. Virol. 69, 2565-2573)、RU486誘導プロモーター(Wang et al., 1997, Nat. Biotech. 15, 239-243およびWang et al., 1997, Gene Ther. 4, 432-441)、ラパマイシン誘導プロモーター(Magari et al., 1997, J. Clin. Invest. 100, 2865-2872)ならびに大腸菌のlac、TRPおよびTACプロモーターが含まれる。
【0077】
本発明に関する使用において調節配列は、治療利益が望まれる特定の組織において核酸分子の発現を駆動するように組織特異的とすることもできる。好適なプロモーターは腫瘍細胞で優先的に発現される遺伝子から取得することができる。このような遺伝子は、例えばディスプレーおよび比較ゲノムハイブリダイゼーション(例えば、米国特許第5,759,776号および同第5,776,683号参照)によって同定することができる。
【0078】
当業者ならば、本発明のベクターに含まれる核酸分子の発現を制御する調節エレメントはさらに、転写の誘導、調節および終結(例えば、ポリA転写終結配列)、mRNA輸送(例えば、核局在シグナル配列)、プロセシング(例えば、スプライシングシグナル)、安定性(例えば、イントロンおよび非コード5’および3’配列)および翻訳(例えば、三分割リーダー配列、リボソーム結合部位、Shine-Dalgamo配列など)に好適な付加的エレメントを宿主細胞または被験体に含んでもよいことが分かるであろう。
【0079】
別の態様において、本発明は、上記のベクターを含む感染性ウイルス粒子を提供する。ここでは、感染性ウイルス粒子の生産に関して知られている種々の方法を詳しくは記載することはしない。一般に、このようなウイルス粒子は、(a)適当な細胞系統にウイルスベクターを導入すること、(b)該細胞系統を該感染性ウイルス粒子の生産を可能とするのに好適な条件下で培養し、生産された感染性ウイルス粒子を該細胞系統の培養物から回収し、所望により、回収された感染性ウイルス粒子を精製するステップを含む方法によって生産される。
【0080】
ウイルスベクターが欠陥型である場合、感染性粒子は通常、補足的細胞系統で、または非機能的ウイルス遺伝子をトランスで供給するヘルパーウイルスの使用を介して生産される。例えば、E1欠損アデノウイルスベクターを補足するのに好適な細胞系統としては、293細胞(Graham et al, 1997, J. Gen. Virol. 36, 59-72)、PER−C6細胞(Fallaux et al., 1998, Human Gene Ther. 9, 1909-1917)およびHER96細胞が挙げられる。ポックスウイルスベクターを増幅させるのに適当な細胞は鳥類細胞であり、最も好ましくは、受精卵から得られたニワトリ胚から調製された一次ニワトリ胚繊維芽細胞(CEF)である。これらの生産細胞は、適当な温度、pHおよび酸素含量条件下で従来の発酵反応槽、フラスコおよびペトリプレートで培養することができる。
【0081】
感染性ウイルス粒子は培養上清または溶解後の細胞から回収することができる。それらは、標準的な技術(例えば、WO96/27677、WO98/00524、WO98/22588、WO98/26048、WO00/40702、EP1016700およびWO00/50573に記載されているようなクロマトグラフィー、超遠心分離)に従ってさらに精製することができる。
【0082】
別の態様において、本発明は、上記の核酸分子、ベクターまたは感染性ウイルス粒子を含む宿主細胞を提供する。本明細書において「宿主細胞」とは、本発明のベクターまたは感染性ウイルス粒子のレシピエントとなり得る、またはレシピエントとなった任意の細胞およびそのような細胞の後代を定義する。この用語は広く、単離された細胞、細胞群、ならびに細胞の特定の構成物、例えば組織または器官を包含するものと理解すべきである。このような細胞は一次型、形質転換型または培養細胞であり得る。
【0083】
本発明に関して宿主細胞としては、原核細胞(例えば、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス属、リステリア属)、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris))などの下等真核細胞、ならびに昆虫細胞、植物細胞および高等真核細胞などの他の真核細胞が挙げられ、哺乳類細胞(例えば、ヒトまたは非ヒト細胞)が特に好ましい。好適な宿主細胞の代表例としては、限定されるものではないが、BHK(ベビーハムスター腎臓)細胞、MDCK細胞(Madin-Darbyイヌ腎臓細胞系統)、CRFK細胞(Crandellネコ腎臓細胞系統)、CV−I細胞(アフリカサル腎臓細胞系統)、COS(例えば、COS−7)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、マウスNIH/3T3細胞、HeLa細胞およびVero細胞が挙げられる。「宿主細胞」という用語はまた、上記に引用されているものなどの本発明の複製欠陥ベクター(例えば、アデノウイルスベクター)の少なくとも1つの欠損機能を補足することができる補足細胞も包含する。
【0084】
宿主細胞は、本発明のベクターまたは感染性粒子に含まれる核酸分子によりコードされているポリペプチドを組換え的手段によって生産するために使用可能である。このような技術は当技術分野でよく知られている(例えば、Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley, 1987-2002;およびSambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressの最新刊を参照)。
【0085】
別の態様において、本発明は、上記の核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子または宿主細胞(ここでは、有効剤ということもある)またはそのいずれかの組合せを含んでなる組成物を提供する。有利には、該組成物は、治療上有効な量の有効剤と薬学上許容されるビヒクルとを含んでなる医薬組成物である。
【0086】
本明細書において「薬学上許容されるビヒクル」とは、医薬投与に適合した担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤および吸収遅延剤などのいずれか、また総てを含むものとする。本明細書において「治療上有効な量」とは、被験体において治療または予防されることが望まれる病状と通常関連する1以上の症状の緩和に十分な用量である。予防的使用に関しては、この用語は被験体における病状の確立を回避する、または遅延させるのに十分な用量を意味する。例えば、治療上有効な量は、処置された対象において免疫応答を誘導または増強するのに十分な量、または病状を軽減、改善、安定化、逆転、進行を緩慢化または遅延する(例えば、対象における病巣または腫瘍の大きさの減少または退縮、感染対象におけるウイルス感染の復帰)のに十分な量であり得る。
【0087】
望ましくは、本発明の組成物は、用いる用量および濃度では無毒な1以上の担体および/または希釈剤を含む。このような担体および/または希釈剤は好ましくは、全身投与または粘膜投与用の単位投与形または多用量形のいずれかに組成物を処方するために通常用いられるものから選択される。好適な担体は、溶媒、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)を含有する分散媒、植物油またはそれらの好適な混合物であり得る。希釈剤は好ましくは、等張性、低張性または弱高張性であり、比較的低いイオン強度を有する。好適な希釈剤の代表例としては、無菌水、生理食塩水(例えば、塩化ナトリウム)、リンゲル溶液、グルコース、トレハロースまたはサッカロース溶液、ハンクス溶液および他の生理学的平衡塩溶液(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, A. Gennaro, Lippincott, Williams&Wilkinsの最新刊を参照)が挙げられる。本発明の組成物のpHは適宜調整し、ヒトまたは動物での使用に適切となるように、好ましくは、生理学的pHまたはやや塩基性のpH(およそpH7.5〜およそpH9、pHおよそ8または8.5が特に好ましい)に緩衝させる。好適なバッファーとしては、リン酸バッファー(例えば、PBS)、重炭酸バッファーおよび/またはTrisバッファーが挙げられる。
【0088】
本発明の組成物は、例えば、凍結、固体(例えば、乾燥粉末形態または凍結乾燥形態)、または液体(例えば、水溶液)など、種々の形態であり得る。有効剤と任意の付加的な所望の成分の固体組成物は、予め濾過除菌したその溶液から、真空乾燥および凍結乾燥させて得ることができる。それを所望により、使用前に好適なビヒクルを加えることで再構成するだけの無菌アンプルで保存することができる。
【0089】
特に好ましい組成物(特に、有効剤がアデノウイルスベクターである場合)は、1Mサッカロース、150mM NaCl、1mM MgCl、54mg/l Tween 80、10mM Tris pH8.5中に処方される。別の好ましい組成物は、10mg/mlマンニトール、1mg/ml HSA、20mM Tris、pH7.2および150mM NaCl中に処方される。このような処方物は、冷凍温度(例えば、−70℃、−40℃、−20℃)または冷蔵温度(例えば、4℃)のいずれかで少なくとも2か月間、本発明の組成物の安定性を保つのに特に好適である。
【0090】
該組成物はまた、例えば、pH、浸透圧、粘度、明澄度、色、無菌性、安定性、ヒトまたは動物被験体中への放出または吸収の改変または維持を含む、所望の薬学的または薬物動態的特性を提供するために1以上の薬学上許容される賦形剤を含み得る。安定化成分の代表例としては、溶解度、安定性および半減期の所望の特性を得るために用い得るポリソルベート80、L−アルギニン、ポリビニルピロリドン、トレハロース、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられる(Davis et al, 1978, Enzyme Eng. 4, 169-173; Burnham et al., 1994, Am. J. Hosp. Pharm. 51, 210-218)。増粘剤としては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよびデキストランが挙げられる。該組成物はまた、粘膜関門を通過する、または特定の臓器における浸透または輸送を促進することが当技術分野で知られている物質を含み得る。例えば、膣投与に好適な組成物は結局、粘膜の孔径を増すのに有用な1以上の吸収促進剤を含み得る。
【0091】
さらに、本発明の組成物は、ヒトにおける全身投与または粘膜投与に好適な1以上のアジュバントを含み得る。「アジュバント」とは、特定の抗原に対する免疫応答を増強する能力を有する化合物を表す。アジュバントは、抗原部位付近に送達することができる。体液性免疫の増強は一般に、その抗原に対して生成した抗体の力価の有意な増加(通常は10倍を超える)によって現れる。細胞性免疫の増強は、例えば、陽性皮膚試験、細胞傷害性T細胞アッセイ、IFNgまたはIL−2に関するELIspotアッセイによって測定することができる。好ましくは、本発明での使用におけるアジュバントは、TLR−7、TLR−8およびTLR−9などの、特にトル様受容体(TLR)を介して有効剤に対する免疫を刺激することができる。有用なアジュバントの代表例としては、限定されるものではないが、ミョウバン、フロイントの完全および不完全アジュバント(IFA)などの鉱油エマルション、リポ多糖類またはその誘導体(Ribi et al., 1986, Immunology and Immunopharmacology of Bacterial Endotoxins, Plenum Publ. Corp., NY, p407-19);QS21(Sumino et al., 1998, J.Virol. 72, 4931-9;WO98/56415)などのサポニン;イミキモド(Suader, 2000, J. Am Acad Dermatol. 43, S6-S11)、1H−イミダゾ(4,5−c)キノロン−4−アミン誘導体(Aldara(商標))および関連化合物(Smorlesi, 2005, Gene Ther. 12, 1324-32)などのイミダゾキノリン化合物;CpG(Chu et al., 1997, J. Exp. Med. 186: 1623; Tritel et al., 2003, J. Immunol. 171: 2358-2547)などのシトシンリン酸グアノシンオリゴデオキシヌクレオチド;およびIC−31(Kritsch et al., 2005, J. Chromatogr Anal. Technol Biomed Life Sci 822, 263-70)などの陽イオンペプチドが挙げられる。
【0092】
本発明の核酸分子、ベクター、感染性粒子または組成物は、全身投与、局所投与および粘膜投与を含む種々の投与様式によって投与することができる。全身投与は、例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、腹腔内、血管内、動脈内注射など、いずれの手段によって行ってもよい。注射は通常のシリンジと針、または当技術分野で利用可能な他のいずれかの適当なデバイスで行うことができる。粘膜投与は、経口、鼻腔、気管内、肺内、腟内または直腸内経路によって行うことができる。局所投与は、経皮的手段(例えば、パッチなど)を用いて行うことができる。筋肉内または皮下投与は、有効剤としてウイルスベクターおよび感染性粒子を用いる場合に特に好ましい。
【0093】
適当な用量は、特定の有効剤の薬物動態特性、被験体の齢、健康錠剤および体重、処置する病状、症状の性質および程度、同時処置の種類、処置の頻度、予防または治療の必要性および/または望まれる効果などの既知の因子によって異なる。用量はまた、選択された特定の経路に応じて算出することができる。処置に適当な用量を決定するために必要な計算のさらなる精密化は、通常、医師が関連の状況に照らして行う。一般的な指針としては、アデノウイルス粒子の好適な用量は、約10〜約1013iu(感染単位)、望ましくは約10〜約1012iu、好ましくは約10〜約1011iuと様々である。ワクシニアウイルス粒子の好適な用量は、約10〜約1010pfu(プラーク形成粒子)、望ましくは約10〜約10pfu、好ましくは約10〜約5×10pfuと様々である。ベクタープラスミドは、10μg〜20mgの間、好ましくは100μg〜2mgの間の用量で投与することができる。
【0094】
さらに、投与は、単回投与、あるいはまた標準的プロトコール、投与法および数時間、数日および/または数週間にわたる投与計画に従って複数用量で行うことができる。また、投与は、ボーラス注射または連続注入によって行うこともできる。例えば、上記の核酸分子、ベクター、感染性粒子または組成物の少なくとも2回(例えば、2〜10回)の投与で被験体を処置することができる。好ましくは、数日から4週間まで様々な期間内で第一投与シリーズを順次行い、その後、第一シリーズの最後の投与の後、1〜6か月以内に第二投与シリーズ(例えば、1回または2回の投与)を行う。第二シリーズの各投与間の期間は数日から4週間であり得る。好ましい実施形態では、第一投与シリーズは、1週間おきの3回の連続投与を含み、第二シリーズは第一シリーズの後4〜6か月以内に1回の投与を含む。一般的な指針としては、MVAベクターを用いる場合、好ましい投与経路は、10〜5×10pfuの間で含まれる1用量のMVA粒子による皮下投与である。
【0095】
本発明の核酸分子、ベクター、感染性粒子、宿主細胞または組成物は、遺伝病、先天性疾患および獲得疾患を含む種々の病状の治療または予防のために被験体に導入することができる。本発明はまた、このような病状を治療または予防することを意図した薬剤の製造のための本発明の核酸分子、ベクター、感染性粒子、宿主細胞または組成物の使用に関する。それは感染性疾患(例えば、ウイルスおよび/または細菌感染)、癌および免疫不全疾患を治療または予防するのに特に適切である。本明細書において「癌」とは、び慢性または局在性腫瘍、転移、癌性ポリープおよび前腫瘍性病変(例えば、新生物)を含む、望まれない細胞増殖によって起こるいずれの癌症状も包含する。
【0096】
本発明に関して意図される感染性疾患は、上記のような病原微生物による感染に関連したいずれの症状も包含する。本発明に関して意図される癌としては、限定されるものではないが、膠芽腫、肉腫、黒色腫、肥満細胞腫、癌腫ならびに乳癌、前立腺癌、精巣癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌(特に、乳頭腫ウイルス感染に関するもの)、肺癌(例えば、大細胞癌、小細胞癌、扁平上皮癌および腺癌)、腎臓癌、膀胱癌、肝臓癌、結腸癌、肛門癌、膵臓癌、胃癌、胃腸癌、口腔癌、喉頭癌、脳およびCNS癌、皮膚癌(例えば、黒色腫および非黒色腫)、血液癌(特にそれらが充実塊で発達した場合は、リンパ腫、白血病)、骨癌、網膜芽細胞腫および甲状腺癌が挙げられる。
【0097】
好ましい実施形態では、本発明は、持続的感染、前悪性および悪性病変などの、乳頭腫ウイルス(特に、HR HPV)による感染に関連した症状の予防的または治療的処置に用いられる。「持続的感染」とは、ウイルスの根絶が果たせなかった感染対象における無症候相の乳頭腫ウイルス感染を指す。一般に、臨床的徴候は見られない。前悪性病変の例としては、限定されるものではないが、CIN(子宮頸上皮内新生物)、陰門上皮内新生物(VIN)、肛門上皮内新生物(AIN)、陰茎上皮内新生物(PIN)および膣上皮内新生物(VaIN)などの種々の組織に検出可能な低悪性度、中悪性度または高悪性度の上皮内新生物が挙げられる。悪性病変の例としては、限定されるものではないが、子宮頸癌、肛門癌、膣癌、陰茎癌および口腔癌が挙げられる。乳頭腫ウイルスポリペプチドをコードする本発明の核酸分子、ベクター、感染性粒子、宿主細胞または組成物は、前悪性病変、特にCIN2/3病変または悪性病変、特に子宮頸癌の処置に特に向けられる。別の実施形態では、本発明はまた、持続的感染、慢性または劇症肝炎(fulgurant hepatitis)および肝臓癌など、肝炎ウイルス(例えば、HBVまたはHCV)による感染に関連した症状の予防的または治癒的処置にも使用可能である。
【0098】
有効剤は単独で使用することもできるし、あるいは所望により慣例の療法(例えば、放射線療法、化学療法および/または外科手術)と併用することもできる。慣例の療法は、標準的な薬剤、投与法および投与計画を用いた標準的なプロトコールに従って動物またはヒト被験体に送達され、このような療法は、本発明の有効剤の投与前、投与中および/または投与後に行うことができる。例えば、HCV感染に関連した症状を処置するためには、本発明の方法または使用は、好ましくは、例えば、プロテアーゼ阻害剤(例えば、VertexのVX950などのセリンプロテアーゼ阻害剤)、ポリメラーゼ阻害剤、ヘリカーゼ阻害剤、抗繊維症薬、ヌクレオシド類似体、TLRアゴニスト、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗HCV抗体、免疫調節薬、治療用ワクチンおよびHCV関連肝臓癌の処置に慣例的に用いられる抗腫瘍薬(例えば、アドリアマイシン、またはアドリアマイシリピオドールと、肝動脈における薬物塞栓療法(chimioembolisation)により通常投与されるスポンゲルの混合物)を伴う。特に好適な組合せとしては、好ましくは本発明の有効剤の投与前24〜48週間の間、ペグ化IFN−α(IFN−α2aまたはIFN−α2b)および/またはリバビリンで処置することを含む。乳頭腫ウイルス感染に関連する症状を処置するためには、本発明の方法または使用は、ループ電気外科切除術などの切除法を伴い得る。本発明に従う方法または使用はまた、サイトカイン(例えば、IL−2、IL−7、IL−15、IL−18、IL−21、IFNg)などの免疫刺激剤または自殺遺伝子産物(例えば、Caruso et al, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 7024-28に記載されているHSV−Iのチミジンキナーゼ;WO99/54481に記載されているFCU−I)またはこのようなポリペプチドを発現するベクターを併用して行うことができる。
【0099】
別の実施形態では、本発明の方法または使用は、初回免疫組成物と追加免疫組成物の逐次投与を含むプライムブースト療法に従って行われる。一般に、初回免疫組成物と追加免疫組成物は、少なくとも1つの共通の抗原ドメインを含む、またはコードする、異なるビヒクルを用いる。本発明の方法または使用は、初回免疫組成物を1〜10回投与した後に、追加免疫組成物を1〜10回投与することを含むことができる。望ましくは、注射間隔はおよそ1日〜12か月である。好ましい療法は、3〜10日(例えば、1週間)まで様々な期間をそれぞれあけて初回免疫の投与を3回または4回連続的に行い、その後、最後の初回免疫の1〜数週間後に追加免疫の投与を1回または2回行う。さらに、この初回免疫組成物と追加免疫組成物は同じ部位に投与することもできるし、あるいは同じ投与経路または異なる投与経路で違う部位に投与することもできる。例えば、ポリペプチドに基づく組成物は粘膜経路によって投与することができるが、ベクターに基づく組成物は注射するのが好ましく、例えば、MVAベクターでは皮下注射し、DNAプラスミドおよびアデノウイルスベクターでは筋肉内注射する。本発明のベクター、感染性粒子または組成物は、処置対象において免疫応答を誘発もしくは追加刺激するため、または初回刺激と追加刺激の双方を行うために使用可能である。一実施形態では、初回免疫は本発明のプラスミドベクターで行い、追加免疫は本発明のワクシニアウイルス感染性粒子で行う。別の実施形態では、初回免疫は本発明のアデノウイルス感染性粒子で行い、追加免疫は本発明のワクシニアウイルス感染性粒子で行う。さらに別の実施形態では、初回免疫は本発明のワクシニアウイルス感染性粒子で行い、追加免疫は本発明のアデノウイルス感染性粒子で行う。
【0100】
本発明を例示として記載してきたが、用いられている用語は限定ではなく、本質的に記載の言葉の範疇に入るということを意図するものであると理解される。上記の教示に照らして本発明の多くの改変および変形が可能であることは明らかである。従って、添付の特許請求の範囲内で、本発明を本明細書に明示されているものとは異なる方法で実施可能であると理解される。
【0101】
上記に引用されている特許、刊行物およびデータベース登録の開示は総て、このような個々の特許、刊行物および登録がそれぞれ引用することにより本明細書の一部とされることが具体的かつ個々に示されている場合と同程度に、その全開示内容が具体的に引用することにより本明細書の一部とされる。
【0102】
以下の実施例は本発明を例示するものである。
【実施例】
【0103】
下記の構築を、Maniatis et al. (1989, Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor NY)に詳しく述べられている一般的な遺伝子操作技術および分子クローニング技術に従い、または市販のキットを用いる場合には、製造者の推奨に従って行う。PCR増幅技術は当業者に公知である(例えば、Innis, Gelfand, Sninsky and White, Academic Pressにより発行されているPCR protocols -A guide to methods and applications, 1990参照)。アンピシリン耐性遺伝子を有する組換えプラスミドを、100μg/mlの抗生物質を添加した寒天または液体培地で、大腸菌C600(Stratagene)、BJ5183(Hanahan, 1983, J. Mol. Biol. 166, 557-580)およびNM522内で複製させる。組換えワクシニアウイルスの構築は、上に引用した文献、また、Mackett et al. (1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79, 7415-7419)およびMackett et al. (1984, J. Virol. 49, 857-864)中の当技術分野における常法に従って行う。この組換えワクシニアウイルスの選択を容易にするため、大腸菌の選択遺伝子gpt(キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)(Falkner and Moss, 1988, J. Virol. 62, 1849-1854)を用いる。
【0104】
実施例1:HPV−16 E1およびE2遺伝子を発現するMVAベクター(MVATG17410)の構築
a)HPV−16 E2遺伝子をコードする組換えMVAベクター(MVATG17408)の構築
HPV16 E2遺伝子のクローニング
HPV−16 E2をコードするヌクレオチド配列を、CaSki細胞(ATCC CRL−1550)から単離されたゲノムからクローニングした。プライマーOTG16809(配列番号16)とOTG16810(配列番号17)を用いてE2遺伝子を増幅した。得られたフラグメントをBamHIおよびEcoR1で消化し、同じ酵素で制限処理したpGEX2T(Amersham Biosciences)に挿入し、pTG17239を得た。クローニングされたE2遺伝子を配列決定したところ、HPV16 E2始原配列(Genbank NC−01526に記載)と比べた場合に5つの突然変異が示された。2つの突然変異がサイレントであり、3つの非サイレント突然変異(T210I、S219P、K310T)を、QuickChange部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)を用いて修正し、pTG17268を得た。
【0105】
HPV−16 E2ポリペプチドの改変
E2と呼ばれるHPV−16 E2変異体(E39AおよびI73A)を作出するため、pTG17268に組み込まれたE2ヌクレオチド配列を部位特異的突然変異誘発により改変した。より具体的には、39番のGlu残基をAlaで置換することによりE2複製機能を、また、73番のIle残基をAlaで置換することによりトランス活性化機能を無効にした。得られたプラスミドpTG17318は、HPV−16 E2をコードする改変配列を含む。
【0106】
HPV−16 E2を、そのN末端においてペプチドシグナルと、また、そのC末端において狂犬病ウイルス(PG株;Genbank ay009097)の糖タンパク質に由来する膜固定配列と融合させることにより、原形質膜表面で発現宿主細胞中のHPV−16 E2の提示を命令するように改変した。SS−E2−TMRと呼ばれる膜提示型E2欠陥変異体をコードするヌクレオチド配列(配列番号12)を、次のプライマー:OTG17500(配列番号18)、OTG17501(配列番号19)、OTG17502(配列番号20)、OTG17503(配列番号21)、OTG17504(配列番号22)およびOTG17505(配列番号23)を用いた3回のPCRにより再組み立てした。この再組み立てした配列をpBS由来ベクター(Stratagene)に挿入してpTG17360を得、次に、ワクシニアトランスファープラスミドの、pH5Rプロモーターの下流にクローニングし(Rosel et al, 1986, J Virol. 60, 436-449)、pTG17408を得た。
【0107】
このトランスファープラスミドは、移入されるヌクレオチド配列が相同組換えによりMVAゲノムの欠失IIIに挿入されるように設計されている。これはプラスミドpTG1E(Braun et al., 2000, Gene Ther. 7, 1447-57に記載)に起源し、MVA欠失III周辺のフランキング配列(BRG3およびBRD3)(これらの配列は、MVATGN33.1 DNAからPCRにより得られた配列である(Sutter and Moss, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 10847-51))をクローニングしたものである。このトランスファープラスミドはまた、オワンクラゲ(Aequorea victoria)増強緑色蛍光タンパク質(eGFP遺伝子、pEGP−Clから単離、Clontech)と大腸菌キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gpt遺伝子)との融合物を初期後期ワクシニアウイルス合成プロモーターp11K7.5の制御下に含む(R. Wittek, University of Lausanneから厚意により提供)。キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼの合成により、GPT組換えMVAは、ミコフェノール酸、キサンチンおよびヒポキサンチンを含有する選択培地でプラークを形成することができ(Falkner et al, 1988, J. Virol. 62, 1849-54)、eGFPにより組換えMVAプラークの可視化が可能となる。選択マーカーeGPP−GPTは、2つの相同配列間に同じ向きに配置される。クローン選択が達成されると、選択マーカーは数回の無選択継代培養によって容易に排除され、eGPP−GPT組換えMVAの増殖が可能となる。
【0108】
HPV−16 SS−E2−TMR遺伝子を発現する組換えMVAの構築
MVATG 17408ウイルスの作出は、MVATGN33.1に感染させ(MOI 0.1pfu/細胞)、pTG17408でトランスフェクトした(標準的なリン酸カルシウムDNA沈殿法に従う)一次ニワトリ胚繊維芽細胞(CEF)において相同組換えによって行った。ウイルスの選択は、ミコフェノール酸、キサンチンおよびヒポキサンチンを含有する選択培地の存在下での3回のプラーク精製によって行った。上述のように、選択マーカーはその後、非選択培地での継代培養によって排除された。親MVAの混入が無いことをPCRにより確認した。
【0109】
E2発現の分析は、ウエスタンブロットによって行った。CEFにMVATG17408をMOI0.2で感染させ、24時間後、細胞を採取した。ウエスタンブロット分析は、市販のモノクローナル抗E2抗体TVG271(Abeam)を用いて行った。E2−TMRの理論分子量は48.9kDaであるが、見掛けの分子量が55kDAのタンパク質の発現が検出された。細胞抽出物をエンドグリコシダーゼFで処理した後に、この組換えタンパク質の大きさの減少が見られたが、このことは、MVATG17408から発現されたE2 TMRポリペプチドがN−グルコシル型であることを示唆する。
【0110】
b)HPV−16 E2遺伝子と重複する部分において変更されたHPV−16 E1遺伝子をコードする組換えMVA(MVATG17409)の構築
HPV−16 E1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をCaSki細胞DNA(ATCC CRL−1550)からクローニングした。より具体的には、E1遺伝子を2つの部分E1a(nt 1〜1102)およびE1b(nt 1001〜1950)として増幅した。プライマーOTG16811(配列番号24)とOTG16814(配列番号25)を用いてE1aフラグメントを増幅し、これをBamHIおよびEcoRIで消化し、同じ酵素で制限処理したpGEX2Tに挿入し、pTG17240を得た。E1bフラグメントはOTG16813(配列番号26)とOTG16812(配列番号27)を用いて作製し、BamHIおよびEcoRIで消化した後、pGEX2Tに挿入し、pTG17241を得た。配列決定を行ったところ、HPV−16 E1始原配列(Genbank NC−01526に記載)と比較した場合に4つの突然変異が示された。1つの突然変異がサイレントであり、E1aに存在する3つの非サイレント突然変異(K130Q、N185TおよびT220S)を特異的突然変異誘発により修正した。次に、修正されたE1aフラグメントを、BsrGIおよびEcoRIで消化したpTG17241にクローニングすることにより、完全なE1遺伝子を再組み立てした。得られたプラスミドをpTG17289と呼んだ。
【0111】
HPV−16ゲノムにおいて、E1遺伝子の最後の59のヌクレオチドは、E2遺伝子の最初の59のヌクレオチドと同一である。E1およびE2をコードするMVAベクターの生産工程中の不安定性の問題を避けるため、E1コード配列のこの部分を、E2コード配列との配列相同性を低下させるようにコドン使用の改変により改変した。変更されたプライマーOTG17408(配列番号28)とOTG17409(配列番号29)を用い、E1遺伝子の3’末端の増幅により、変更された配列(配列番号9)を得た。この増幅フラグメントをNsiIおよびBglIIで消化し、同じ酵素で制限処理したpTG17289に挿入し、pTG17340を得た。
【0112】
HPV−16変更型E1配列はまた、HPV−16 E1の482番のGly残基をAsp残基で置換(G482D;本明細書ではE1とも呼ぶ)することにより、コードされているE1ポリペプチドの複製機能を無効にするための部位特異的突然変異誘発によっても変異させ、pTG17373を得た。
【0113】
HPV−16 E1deg配列はまた、狂犬病ウイルス(ERA単離物;Genbank番号 M38452に記載)の糖タンパク質に由来するシグナルペプチドおよび膜固定ペプチドと融合させることにより、形質細胞表面での、コードされているポリペプチドの発現を命令するように改変した。SS−E1deg−TMR配列(配列番号10)は、次のプライマーOTG17560(配列番号30)、OTG17561(配列番号31)、OTG17562(配列番号32)、OTG17563(配列番号33)、OTG17564(配列番号34)およびOTG17565(配列番号35)を用いた3回のPCRにより再構築した。得られたフラグメントをpBS由来ベクター(Stratagene)に挿入し、pTG17404を得た。次に、SS−E1deg−TMR配列をワクシニアトランスファープラスミドの、p7.5Kプロモーターの下流にクローニングし(Cochran et al, 1985, J. Virol. 54, 30-7)、pTG17409を得た。
【0114】
MVATG17409ウイルスの生成は、上記のように相同組換えによりCEFで行った。
【0115】
c)HPV−16 E1およびE2遺伝子をコードする組換えMVA(MVATG17410)の構築
配列決定され、p7.5Kプロモーターにより制御されるSS−E1deg−TMRをpTG17409から単離し、pTG17408に挿入し、pTG17410を得た。
MVATG17410ウイルスの生成は、上記のように相同組換えによりCEFで行った。
【0116】
実施例2:HPV−18 E1およびE2遺伝子をコードするMVAベクター(MVATG17582)の構築
HPV−18 E1およびE2遺伝子を合成遺伝子として再構成し、(i)天然HPV−16配列とHPV−18配列が共有する相同部分の間の相同性パーセンテージを75%未満に低下させるように(HPV−16およびHPV−18 E1およびE2遺伝子の配列をアラインし、相同性を5未満の連続ヌクレオチドにまで低下させるようにオリゴヌクレオチドを設計した)、(ii)天然HPV−18 E1配列の3’末端と、HPV−18 E2配列の5’末端の双方に存在する59のヌクレオチドの部分間の相同性を75%未満に低下させるように、また、(ii)HPV−18 E1およびE2遺伝子産物の酵素機能を無効にする突然変異(E1:G489D、E2:E43AおよびI77A)を導入するように、オリゴヌクレオチドを設計した。
【0117】
50のオリゴヌクレオチドを組み立てることでHPV−18 degE1配列を再構築し、pBSベクターにクローニングし、pTG17473を得た。次に、プライマーOTG15315(配列番号36)、OTG17881(配列番号37)、OTG17882(配列番号38)、OTG17883(配列番号39)、OTG17884(配列番号40)およびOTG17885(配列番号41)を用いた3回のPCRにより、E1配列を、麻疹ウイルスFタンパク質に由来するシグナル伝達配列クローンと融合させた(SS−18E1deg−TMF)。得られたフラグメント(配列番号11)をMVAトランスファーベクターの、p7.5Kプロモーターの制御下にクローニングし、pTG17521を得た。
【0118】
26オリゴヌクレオチドを組み立てることでHPV−18 degE2配列を再構築し、pBSベクターにクローニングし、pTG17498を得た。プライマーOTG17875(配列番号42)、OTG17876(配列番号43)、OTG17877(配列番号44)、OTG17878(配列番号45)、OTG17879(配列番号46)およびOTG17880(配列番号47)を用いた3回のPCRにより、狂犬病ウイルス(ERA株;Genbank番号 M38452)の糖タンパク質のシグナルおよび膜固定ペプチドとの融合を行った。このSS−18E2−TMRカセットをMVAトランスファープラスミドの、pH5Rプロモーターの下流に挿入し、pTG17552を得た。最後に、このp7.5K−SS−E1deg−TMFカセットをpTG17521から単離し、pTG17552に挿入し、pTG17582を得た。
【0119】
上記のように組換えMVATG17521、MVATG17552およびMVATG17582の作製を行った。
【0120】
実施例3:HPV−16およびHPV−18 E1およびE2遺伝子を発現する多価MVAベクター(MVATG17583)の構築
p7.5K−SS−18E1deg−TMFカセットおよびpH5R−SS−18E2−TMRカセットをpTG17410(p7.5K−SS−16E1deg−TMRカセットおよびpH5R−SS−16E2−TMRを含む)に導入し、得られたトランスファープラスミドをpTG17583と呼んだ。MVATG17583の作製も上記のように行った。
【0121】
実施例4:HPV16およびHPV18 E6およびE7遺伝子を発現する多価組換えウイルスの構築
MVATG16327は、HPV−16およびHPV−18 E6およびE7ポリペプチドの膜固定型、非発癌性変異体を発現する組換えMVAウイルスである。それらの発癌特性を排除するために、E6およびE7ヌクレオチド配列を変異させ(E6およびE7)、適当な適当なシグナルおよび膜固定ペプチドをコードする配列と融合させた(E6tm、E7tm)。より具体的には、、HPV−18 E7をそれぞれそのN末端およびC末端において麻疹ウイルスのF糖タンパク質のシグナルペプチドおよび膜固定ペプチドと融合させ、HPV−16 E6、HPV−16 E7およびHPV−18 E6を、狂犬病ウイルス糖タンパク質のそれに由来するシグナルペプチドおよび膜固定ペプチドと融合させた。さらに、HPV−18 E6およびE7ヌクレオチド配列を、それらのHPV16対応物との相同性を低下させるように、コドン使用の改変により改変した。この目的で、天然HPV16およびHPV18遺伝子の配列をアラインし、相同性が5未満の連続ヌクレオチドにまで低下させるようコドンの変更を行った。このベクターでは、HPV−16およびHPV−18 E6配列は、双方ともp7.5Kプロモーターの制御下に、互いに逆向きに配置され、一方、HPV−16およびHPV−18 E7配列はH5Rプロモーターにより駆動し、総ての発現カセットをMVAゲノムの切除領域IIIに挿入した。
【0122】
a)HPV−16 E7tm発現カセットの構築
HPV−16 E7遺伝子をCaski細胞から単離し、WO99/03885に記載されているように、非発癌性および膜提示型E7ポリペプチド(16E7tmR)をコードするように改変した。非発癌性突然変異は、アミノ酸残基21〜26の欠失(ΔDLYCYE)によって行い、膜提示は、E7変異配列をその5’末端および3’末端においてそれぞれ、狂犬病ウイルス糖タンパク質(ERA株;Genbank受託番号M38452)からクローニングしたシグナルペプチドおよび膜固定ペプチドをコードする配列と融合させることによって行った。得られた配列を初期−後期pH5Rプロモーターの制御下にクローニングし(Rosel et al, 1986. J. Virol. 60, 436-9)、このカセットをpBS由来ベクターに導入し、pTG16161を得た。
【0123】
b)HPV−16 E6tmおよびHPV−18 E6tm発現カセットのクローニング
HPV−16 E6遺伝子を単離し、WO99/03885に記載されているように、非発癌性、膜提示型E6ポリペプチドをコードするように改変した。非発癌性突然変異は、アミノ酸残基118〜122の欠失(ΔCPEEK)によって行い、膜提示は、E6変異配列をその5’末端および3’末端においてそれぞれ、狂犬病ウイルス糖タンパク質(PG株;Genbank受託番号ay009097)に由来するシグナルペプチドおよび膜固定ペプチドをコードする配列と融合させることによって行った。これは、BamHI部位により分離されたシグナルペプチドおよび膜固定ペプチド配列を含むベクターにE6変異配列を挿入することによって行い、pTG16097を得た。
【0124】
オリゴヌクレオチドOTG15174(配列番号48)、OTG15175(配列番号49)、OTG15176(配列番号50)、OTG15177(配列番号51)、OTG15178(配列番号52)、OTG15179(配列番号53)、OTG15180(配列番号54)およびOTG15181(配列番号55)を組み立てることにより、合成HPV−18 E6配列を作製した。これらのオリゴヌクレオチドは、アミノ酸残基113〜117をコードするコドン欠失(非発癌性突然変異ΔNPAEK)を導入するよう、また、HPV−16 E6遺伝子との相同性を低減するためにコドン使用を変更(変更配列)するように設計された。次に、得られた合成配列をその5’末端および3’末端においてそれぞれ、狂犬病ウイルス糖タンパク質遺伝子に由来するシグナルペプチドおよび膜固定ペプチドをコードする配列と融合させて、配列番号14で示される配列を得、pTG16160とした。このHPV−16 E6tmRおよびHPV−18 degE6tmR配列をそれぞれp7.5Kプロモーターの制御下に逆向きに挿入した。その後、これらのカセットをpTG16161に導入し、pTG16215を得た。
【0125】
c)HPV−18 E7tmF発現カセットのクローニング
オリゴヌクレオチドOTG14773(配列番号56)、OTG14774(配列番号57)、OTG14775(配列番号58)、OTG14776(配列番号59)、OTG14777(配列番号60)およびOTG14778(配列番号61)を組み立てることにより、合成HPV−18 E7配列を作製した。アミノ酸残基24〜28をコードするコドンの欠失を導入するよう(非発癌性突然変異ΔDLLCH)、また、HPV−16 E7遺伝子との相同性を低減するためにコドン使用を変更するよう(変更された配列)、オリゴヌクレオチドを設計した。次に、得られた合成配列をその5’末端および3’末端において、それぞれ麻疹ウイルスFタンパク質遺伝子(EP0305229に記載)からクローニングしたシグナルおよび膜固定ペプチドのコード配列と融合させた。得られた配列(配列番号15)をpH5Rプロモーターの制御下にクローニングし、このカセットをpBS由来ベクターに導入し、pTG16015を作製した。
【0126】
d)トランスファープラスミドpTG16327の構築
トランスファープラスミドpTG6019(WO99/03885の実施例2に記載)は、MVA欠失IIIをフランキングする相同配列を含む。これを次のように改変した。プライマーOTG15040(配列番号62)およびOTG15041(配列番号63)のハイブリダイゼーションによって得られた合成ポリリンカーを、BamHIおよびSacIで消化したpTG6019に導入し、pTG16007を得た。初期−後期pH5Rプロモーターの制御下に置かれた大腸菌gptをコードする発現カセットを含むSacI−SacIフラグメントをpTG14033から単離し(EP1146125の実施例2に記載)、SacIで消化したpTG16007に導入し、pTG16093を得た。キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼの合成により、GPT組換えMVAは、ミコフェノール酸、キサンチンおよびヒポキサンチンを含有する選択培地でプラークを形成することができる(Falkner et al, 1988, J. Virol. 62, 1849-54)。選択マーカーGPTは、2つの相同配列間に同じ向きに配置される。クローン選択が達成されると、選択マーカーは数回の無選択継代培養によって容易に排除され、GPT組換えMVAの増殖が可能となる。
【0127】
HPV−18 degE7TMF発現カセットを含むHindIII−SmaIフラグメントをpTG16015から単離し、同じ酵素で消化したpTG16093に導入し、pTG16105を得た。他方、pTG16215をSalIおよびEcoRIで消化し、T4 DNaポリメラーゼで処理し、得られたHPV−16 E7tmR、HPV−16 E6tmRおよびHPV−18 degE6TMR発現カセットを含むフラグメントを、 SmaIで消化したpTG16105に導入し、pTG16327を得た(図2)。
【0128】
e)MVATG16327の作製
MVATG16327の作製は、一次ニワトリ胚繊維芽細胞(CEF)における相同組換えによって行った。この目的で、pTG16327を、標準的なリン酸カルシウムDNA沈殿法に従い、予めMVATGN33.1にMOI 0.1pfu/細胞で感染させたCEFにトランスフェクトした。ウイルスの選択は、ミコフェノール酸、キサンチンおよびヒポキサンチンを含有する選択培地の存在下、CEF上での3回のプラーク精製によって行った。次に、選択マーカーを非選択培地での形態培養により排除した。親MVAの混入が無いことをPCRにより確認した。
【0129】
遺伝子発現の分析は、ウエスタンブロットによって行った。CEFにMVATG1632をMOI0.2で感染させ、24時間後、細胞を採取した。ウエスタンブロット分析は、それぞれHPV−16およびHPV−18 E6およびE7タンパク質に対するウサギポリクローナル抗体を用いて行った。結果は、HPVポリペプチドがMVATG16327から適切に発現されたことを示す。
【0130】
f)MVATG16327の遺伝的安定性の検討
MOI 10−2pfu/細胞および10ー4pfu/細胞で感染させたCEFに対してMVATG16327の5回の継代培養を行った。継代培養5回の被験原株から単離した100のウイルスクローンに対して遺伝的安定性を評価した。発現カセットの構造を決定するためのPCR増幅と、ウエスタンブロットによる抗原検出の2つの方法を用いた。PCR分析の結果は、これらクローンの99%が目的の発現カセットを含んでいることを示した。免疫検出は、これらクローンの97%が、HPV−16およびHPV−18 E6tmおよびE7tmポリペプチドの4種類の抗原を発現することを示した。
【0131】
これらの分析は、5回の継代培養後にMVATG16327に由来するクローンの97%が確認されたことを示し、この構築物の良好な遺伝的安定性を示唆する。
【0132】
実施例5:HPV−16、HPV−18、HPV−33およびHPV−52 E2遺伝子を発現する多価MVAベクターの構築
HPV−33 E2ポリペプチドをコードする合成遺伝子はGeneart (Regensburg, Germany)によって合成されたものである。この合成配列は、(i)HPV−16、HPV−18およびHPV−52に由来するE2遺伝子との相同性パーセンテージを75%未満に低減するよう(可能であれば、相同部分が6未満の連続ヌクレオチドまで低減される)、また、(ii)HPV−33遺伝子産物の酵素機能を無効にする突然変異(E39AおよびI73A)を導入するように設計された。
【0133】
次に、HPV−33 degE2配列を狂犬病ウイルス(ERA株、Genbank番号 M38452)の糖タンパク質のシグナルペプチドおよび膜固定ペプチドをコードするヌクレオチド配列と融合させた。これは、プライマーOTG18962(配列番号72)、OTG18963(配列番号73)、OTG18964(配列番号74)、OTG18965(配列番号75)、OTG18966(配列番号76)およびOTG18967(配列番号77)を用いた3回のPCRによって行った。得られたSS−33degE2−TMRポリペプチドをコードするフラグメント(配列番号67)をMVAトランスファーベクターのp7.5Kプロモーターの制御下にクローニングし、上記のようにウイルス粒子を生成した。
【0134】
HPV−52 E2ポリペプチドをコードする合成遺伝子はGeneart (Regensburg, Germany)によって合成されたものである。この合成配列が、(i)HPV−16、HPV−18およびHPV−33に由来するE2遺伝子との相同性パーセンテージが75%未満に低減するよう(相同部分は好ましくは6未満の連続ヌクレオチドまで低減される)、また、(ii)HPV−52遺伝子産物の酵素機能を無効にする突然変異(E39AおよびI73A)を導入するように設計された。
【0135】
次に、プライマーOTG18968(配列番号78)、OTG18969(配列番号79)、OTG18970(配列番号80)、OTG18971(配列番号81)、OTG18972(配列番号82)およびOTG18973(配列番号83)を用いた3回のPCRにより、合成HPV−52 E2deg配列を麻疹ウイルスFタンパク質のシグナルペプチドおよび膜固定ペプチドをコードするヌクレオチド配列と融合させた(SS−52E2deg−TMFを得る)。
【0136】
得られたSS−52E2deg−TMFポリペプチドをコードするフラグメント(配列番号69)をMVAトランスファープラスミドの、p7.5Kプロモーターの下流に挿入し、上記のようにウイルス粒子を生成した。
【0137】
膜提示型、酵素欠損型HPV−18 E2ポリペプチドをコードするpH5R−SS−18E2−TMRカセット(pTG17552から単離)、膜提示型、酵素欠損型HPV−33 E2ポリペプチドをコードするp7.5K−SS−33degE2−TMRカセットおよび膜提示型、酵素欠損型HPV−52 E2ポリペプチドをコードするp7.5K−SS−52degE2−TMFカセットをpTG17408(pH5R−SS−16E2−TMRカセットを含む)に導入し、上記のようにウイルス粒子を生成した。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】(A)(a)天然HPV−16 E1配列の終了部と(b)天然HPV−16 E2配列の開始部とに存在する59のヌクレオチドの間、および(B)(a)天然HPV−16 E1配列の終了部または天然HPV−16 E2配列の開始部と(b)配列番号9とに存在する59のヌクレオチドの間の配列アラインメントを示す。
【図2】(A)HPV−16およびHPV−18 E6をコードする配列の間、および(B)HPV−16 E6をコードする配列と配列番号14の間の配列アラインメントを示す。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、第一のポリペプチドをコードする第一の核酸分子と第二のポリペプチドをコードする第二の核酸分子とを含んでなり、
該第一および第二の核酸分子がそれぞれ、40以上の連続するヌクレオチドの部分にわたっておよそ80%または80%を超える相同性パーセンテージを示す第一および第二の天然核酸配列から得られ、かつ、
ベクターに含まれる該第一の核酸分子および/または該第二の核酸分子が、該相同性パーセンテージを75%未満に低下させるように改変されている、ベクター。
【請求項2】
相同性パーセンテージを75%未満に低下させるために、第一の核酸分子または第二の核酸分子または第一および第二の核酸分子の双方のコドン使用パターンが、40以上の連続するヌクレオチドの該相同部分で少なくとも改変される、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
コドン使用パターンがヌクレオチドレベルで改変され、該改変がアミノ酸レベルではサイレントである、請求項2に記載のベクター。
【請求項4】
第一の核酸分子と第二の核酸分子との間の相同部分が、8未満の連続するヌクレオチドに限定されるように、コドン使用パターンが改変される、請求項2または3に記載のベクター。
【請求項5】
第一の核酸分子と第二の核酸分子との間の相同部分が、5未満の連続するヌクレオチドに限定されるように、コドン使用パターンが改変される、請求項4に記載のベクター。
【請求項6】
アデノウイルスベクターである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項7】
前記アデノウイルスベクターが複製欠陥型である、請求項6に記載のベクター。
【請求項8】
ポックスウイルスベクターである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項9】
前記ポックスウイルスベクターが、コペンハーゲン株、ワイス株、NYVACおよび高弱毒改変アンカラ(MVA)株からなる群から選択されるワクシニアウイルスから得られる、請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
前記の第一および第二の核酸分子が、免疫原性ポリペプチドおよび抗腫瘍ポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドを独立にコードする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項11】
前記の第一および第二の核酸分子が、同じ生物または近縁の生物から得られる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項12】
前記生物が乳頭腫ウイルスであり、第一および第二の各核酸分子が乳頭腫ウイルスポリペプチドをコードする、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
前記の第一および第二の核酸分子が、HPV−16、HPV−18、HPV−30、HPV−31、HPV−33、HPV−35、HPV−39、HPV−45、HPV−51、HPV−52、HPV−56、HPV−58、HPV−59、HPV−66、HPV−68、HPV−70およびHPV−85からなる群から選択される高リスク乳頭腫ウイルスから独立に得られる、請求項12に記載のベクター。
【請求項14】
前記の第一および第二の核酸分子が、E1、E2、E6およびE7からなる群から選択される初期乳頭腫ウイルスポリペプチドを独立にコードする、請求項12または13に記載のベクター。
【請求項15】
第一の核酸分子および第二の核酸分子が、同じHPV血清型から得られる少なくとも2つの異なる乳頭腫ウイルスポリペプチドをコードする、請求項12〜14のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項16】
第一の核酸分子がE1ポリペプチドをコードし、第二の核酸分子がE2ポリペプチドをコードする、請求項15に記載のベクター。
【請求項17】
第一の核酸分子が配列番号5で示されるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをコードし、第二の核酸分子が配列番号7で示されるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをコードする、請求項16に記載のベクター。
【請求項18】
第一の核酸分子が配列番号6で示されるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをコードし、第二の核酸分子が配列番号8で示されるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをコードする、請求項16に記載のベクター。
【請求項19】
配列番号9で示されるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項16〜18のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項20】
第一の核酸分子が配列番号10で示されるヌクレオチド配列を含んでなり、第二の核酸分子が配列番号12で示されるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項17または19に記載のベクター。
【請求項21】
第一の核酸分子が配列番号11で示されるヌクレオチド配列を含んでなり、第二の核酸分子が配列番号13で示されるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項18に記載のベクター。
【請求項22】
MVAベクターであり、第一の核酸分子がワクシニア7.5Kプロモーターの制御下に置かれ、第二の核酸分子がワクシニアH5Rプロモーターの制御下に置かれ、第一および第二の核酸分子が双方ともMVAベクターの欠失IIIに挿入される、請求項20または21に記載のベクター。
【請求項23】
HPV−16 E1ポリペプチドをコードする第一の核酸分子、HPV−16 E2ポリペプチドをコードする第二の核酸分子、HPV−18 E1ポリペプチドをコードする第三の核酸分子およびHPV−18 E2ポリペプチドをコードする第四の核酸分子を含んでなり、該第一、第二、第三および第四の核酸分子が75%または75%を超える相同性パーセンテージを示す40以上の連続するヌクレオチドの部分を含まない、請求項16に記載のベクター。
【請求項24】
該HPV−16 E1ポリペプチドが配列番号5で示されるアミノ酸配列を含んでなり、該HPV−16 E2ポリペプチドが配列番号7で示されるアミノ酸配列を含んでなり、該HPV−18 E1ポリペプチドが配列番号6で示されるアミノ酸配列を含んでなり、および/または該HPV−18 E2ポリペプチドが配列番号8で示されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項23に記載のベクター。
【請求項25】
配列番号10で示されるヌクレオチド配列を含んでなる第一の核酸分子、配列番号12で示されるヌクレオチド配列を含んでなる第二の核酸分子、配列番号11で示されるヌクレオチド配列を含んでなる第三の核酸分子、および配列番号13で示されるヌクレオチド配列を含んでなる第四の核酸分子を含んでなる、請求項24に記載のベクター。
【請求項26】
MVAベクターであり、該第一、第二、第三および第四の核酸分子がMVAベクターの欠失IIIに挿入され、該第一および第三の核酸分子が、それぞれワクシニアp7.5Kプロモーターの制御下に逆向きに配置され、該第二および第四の核酸分子が、それぞれワクシニアpH5Rプロモーターの制御下に逆向きに配置される、請求項23〜26のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項27】
前記第一の核酸分子と前記第二の核酸分子が少なくとも、近縁のHPV血清型から得られる同じポリペプチドをコードする、請求項12〜14のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項28】
近縁のHPV血清型が、HPV−16、HPV−18、HPV−33および/またはHPV−52である、請求項27に記載のベクター。
【請求項29】
近縁の生物から得られる前記同じポリペプチドが、E2ポリペプチドである、請求項28に記載のベクター。
【請求項30】
HPV−16 E2ポリペプチドをコードする第一の核酸分子、HPV−18 E2ポリペプチドをコードする第二の核酸分子、HPV−33 E2ポリペプチドをコードする第三の核酸分子およびHPV−52 E2ポリペプチドをコードする第四の核酸分子を含んでなる、請求項29に記載のベクター。
【請求項31】
該HPV−16 E2ポリペプチドが配列番号7で示されるアミノ酸配列を含んでなり、該HPV−18 E2ポリペプチドが配列番号8で示されるアミノ酸配列を含んでなり、該HPV−33 E2ポリペプチドが配列番号70で示されるアミノ酸配列を含んでなり、かつ該HPV−52 E2ポリペプチドが配列番号71で示されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項30に記載のベクター。
【請求項32】
前記第一の核酸分子が配列番号12で示されるヌクレオチド配列を含んでなり;前記第二の核酸分子が配列番号13で示されるヌクレオチド配列を含んでなり;前記第三の核酸分子が配列番号67で示されるヌクレオチド配列を含んでなり、かつ前記第四の核酸分子が配列番号69で示されるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項30または31に記載のベクター。
【請求項33】
近縁の生物から得られる前記同じポリペプチドが、E6ポリペプチド、E7ポリペプチドまたはE6およびE7ポリペプチドの双方である、請求項27または28に記載のベクター。
【請求項34】
第一の核酸分子がHPV−16 E6ポリペプチドをコードし、第二の核酸分子がHPV−18 E6ポリペプチドをコードし、第二の核酸分子が配列番号14で示されるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項33に記載のベクター。
【請求項35】
第一の核酸分子がHPV−16 E7ポリペプチドをコードし、第二の核酸分子がHPV−18 E7ポリペプチドをコードし、第二の核酸分子が配列番号15で示されるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項33に記載のベクター。
【請求項36】
MVAベクターであり、第一の核酸分子がワクシニア7.5Kプロモーターの制御下に置かれ、第二の核酸分子がワクシニアH5Rプロモーターの制御下に置かれ、第一および第二の核酸分子が双方ともMVAベクターの欠失IIIに挿入される、請求項34または35に記載のベクター。
【請求項37】
HPV−16 E6ポリペプチドをコードする第一の核酸分子、HPV−18 E6ポリペプチドをコードする第二の核酸分子、HPV−16 E7ポリペプチドをコードする第三の核酸分子およびHPV−18 E7ポリペプチドをコードする第四の核酸分子を含んでなり、該第一、第二、第三および第四の核酸分子が75%または75%を超える相同性パーセンテージを示す40以上の連続するヌクレオチドの部分を含まない、請求項33に記載のベクター。
【請求項38】
配列番号9、10、11、12、13、14、15、66、67、68または69で示されるヌクレオチド配列を含んでなる、実質的に単離された核酸分子。
【請求項39】
請求項38に記載の核酸分子または請求項1〜37のいずれか一項に記載のベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項40】
治療上有効な量の、請求項38に記載の核酸分子、請求項1〜37のいずれか一項に記載のベクターまたは請求項39に記載の宿主細胞と薬学上許容されるビヒクルとを含んでなる、医薬組成物。
【請求項41】
前記組成物が、ヒトにおける全身投与または粘膜投与に好適な1以上のアジュバントを含んでなる、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記アジュバントが、イミダゾキノリン化合物である、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
感染性疾患、癌または免疫不全疾患の治療または予防を意図した薬剤の製造のための、請求項38に記載の核酸分子、請求項1〜37のいずれか一項に記載のベクター、請求項39に記載の宿主細胞または請求項40〜42のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項44】
持続的感染、前悪性および悪性病変などの、乳頭腫ウイルスによる感染に関連した症状の予防的または治療的処置のための、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
前記の使用がプライムブースト療法に従って行われ、前記のベクターまたは組成物を用い、被験体において初回免疫または追加免疫のいずれかまたは初回免疫と追加免疫の両方が行われる、請求項43または44に記載の使用。

【公表番号】特表2010−526547(P2010−526547A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507858(P2010−507858)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051031
【国際公開番号】WO2008/138648
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(599082883)トランジェーヌ、ソシエテ、アノニム (32)
【氏名又は名称原語表記】TRANSGENE S.A.
【Fターム(参考)】