説明

多重露光ホログラムとそのホログラム作製方法およびホログラム作製装置

【課題】複数の2次元画像を多重露光して作製するホログラムをカラー化することができるホログラム作製方法およびホログラム作製装置を提供する。
【解決手段】少なくとも50nm以上波長が離れたレーザ光源を物体光Baと参照光Bbとに分割し、物体光Baには2次元の断面画像を空間光変調素子SLMにより乗せてホログラム用記録媒体11に照射するとともに、分割された参照光Bbをホログラム用記録媒体11に照射して、干渉状態を記録してマスタホログラムMHを作製する。マスタホログラムMHは、各波長のレーザ光Lごとに、各2次元断面画像ごとに作製する。このようにして作製された複数のマスタホログラムMH全てについて、各波長のレーザ光を照射して再生光Bb4を1枚のホログラム媒体11に照射すると共に、複製用記録媒体21の反対側面から参照光Ba3を照射し、カラー化された多重断層ホログラム(リップマンホログラム)を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホログラム作製方法およびホログラム作製装置に係り、例えば、複数の2次元画像を多重露光して作製するホログラムをカラー化することができるホログラム作製方法およびホログラム作製装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療の分野における正確な診断のために、患者の体の断面を一定間隔で撮影したCTなどの断層画像が用いられている。しかし、これは2次元画像であり、医師がそれらから立体像を把握するには熟練を要し、客観的な判断が難しいという問題がある。また、患者などへの説明においても、分かりやすく説明するのが困難であった。そこで、この断層画像をもとにホログラムを作製することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
このような多重断層ホログラムは、2次元画像をその配列にしたがって一枚のホログラムに順次多重記録して合成するものであり、これによって画像を3次元的に観察できるようにしている。この際に、2次元画像を前処理して、所望されない部分を除去し、その画像において部分間のコントラストを制御している。
【特許文献1】特表平8−506909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前述したように、例えば医療の分野においては、人体の一部を写した複数の断面画像を得るために、例えば、コンピュータ制御によるX線体軸断層写真(CT,CAT)、磁気共鳴(MR)、その他の走査物理療法が用いられている。これらの2次元画像を観察して、このデータによって示される3次元の器官および組織について、診断を行う。
しかしながら、前述した特許文献1で3次元的に形成された多重断層ホログラムは単一色(例えば、緑)の参照光および物体光で2次元的なスライスデータを多重露光するものであり、患者のような専門的知識の無い者や教育期間中の医者などの医療関係者が見た時に、部位の特定すらままならず、理解が困難であった。このため、例えば、頭のCTスキャンを行った際に、患者にもわかりやすく説明できたり、手術前のイメージシミュレーションなどを解りやすくすることが望まれている。
【0004】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の2次元画像を多重露光して作製するホログラムをカラー化することができるホログラム作製方法およびホログラム作製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した目的は以下のホログラム作製方法によって達成される。
(1)レーザ光源を物体光と参照光とに分割し、物体光には3次元物体での観測軸Zに垂直でZ軸上位置zn(nは整数)の断面画像を空間光変調素子により乗せて干渉状態記録を実施するホログラム作製方法であって、少なくとも50nm以上波長が離れた複数レーザ光源を使用した物体光をビーム径拡大手段で拡大して前記空間光変調素子に照射し、前記各レーザー光源波長用の加工を施されたそれぞれの前記断面画像情報を空間光変調素子により前記物体光に乗せてホログラム用記録媒体に照射し、前記参照光をホログラム用記録媒体に照射して前記物体光との干渉を記録して前記各光源波長及び前記各断面画像ごとにマスタホログラムを作製し、全ての前記マスタホログラムをホログラム複製光学系により1枚のホログラムに転写するホログラム作製方法。
【0006】
このように構成されたホログラム作製方法においては、まず、少なくとも50nm以上波長が離れたレーザ光を物体光と参照光とに分割し、物体光には2次元の断面画像を空間光変調素子により乗せてホログラム用記録媒体に照射するとともに、分割された参照光をホログラム用記録媒体に照射して、干渉状態を記録してマスタホログラムを作製する。このマスタホログラムは、各波長のレーザ光ごとに、且つ、各2次元断面画像ごとに、つまり、(各波長数)×(断面画像数)だけ作製される。このようにして作製された複数のマスタホログラム全てについて、各波長のレーザ光を照射して再生光を1枚のホログラム媒体に照射すると共に、複製用記録媒体の反対側面から参照光を照射し、カラー化された多重断層ホログラム(リップマンホログラム)を作製する。従って、この多重断層ホログラムに白色光を照射して再生することにより、複数の2次元画像を立体的且つカラーで表示することができる。特に、特定の部位を色により特定した疑似立体像を提供することができ、例えば、3次元画像をカラー化して、血管は赤色、脳は青色、患部を緑色等で表示することにより、いろいろな角度からわかりやすく見れるように表示することができる。
【0007】
(2)前記複数レーザ光源が、前記ホログラム用記録媒体のカラー感度分布に対応する少なくともRGB用波長により物体光を照射し、前記断面画像情報が各RGB波長用に加工される上記(1)に記載のホログラム作製方法。
【0008】
このように構成されたホログラム作製方法においては、複数のレーザ光源として少なくともRレーザ光源、Gレーザ光源、Bレーザ光源を用いることにより、ホログラムのカラー化を行うことができ、例えば医療の分野などにおいて、患者への説明時に部位の特定をし易くなり、説明をより分かりやすくし、十分な説明の基礎とできる。
【0009】
(3)レーザ光源を物体光と参照光に分割し、物体光には3次元物体での観測軸Zに垂直で、Z軸上位置zn(nは整数)の断面画像を空間光変調素子により乗せて干渉状態記録を実施するホログラム作製装置であって、少なくとも50nm以上波長が離れた複数レーザ光源と、前記レーザ光源からの物体光のビーム径を拡大するビーム径拡大手段と、径を拡大された前記物体光ビームにホログラム記録用情報を与える空間光変調素子と、前記各光源波長用の加工を施される断面画像情報それぞれに基づいて前記空間光変調素子を駆動する空間光変調素子制御手段と、前記空間光変調素子からの物体光をホログラム用記録媒体に照射する物体光光学系と、前記参照光をホログラム用記録媒体に照射して前記物体光と干渉させる参照光光学系と、前記各光源波長と前記各断面画像とを掛け合わせた枚数だけ作製されるマスタホログラムからの再生光を物体光として複製用記録媒体に照射し、前記複製用記録媒体の反対側から参照光を照射して全てのマスタホログラムを1枚のホログラムに転写するホログラム複製光学系とを備えるホログラム作製装置。
【0010】
このように構成されたホログラム作製装置においては、レーザ光を物体光と参照光とに分割し、3次元物体での観測軸Zに垂直でZ軸上位置zn(nは整数)の断面画像を空間光変調素子により物体光に乗せて干渉状態記録を行う際に、少なくとも50nm以上波長が離れた複数のレーザ光源を用いて、各色(各波長)についてマスタホログラムを作製する。このとき、物体光光学系において、ビーム径拡大手段によりレーザ光源から分割された物体光のビーム形を拡大し、空間光変調素子制御手段により各色用に加工が施された断面画像情報を空間光変調素子を介して物体光に乗せて、所定位置に位置決めされたホログラム用記録媒体に照射する。同時に、参照光光学系においては、分割された参照光をホログラム用記録媒体に照射して、物体光との干渉を記録してマスタホログラムを作製する。
【0011】
このようにして、各断面画像に対して、各波長でマスタホログラムを作製し、全てのマスタホログラムについて、マスタホログラムからの再生光を物体光として複製用記録媒体に照射するとともに、複製用記録媒体の反対側から参照光を照射して全てのマスタホログラムを1枚のホログラムに転写して、多重断層ホログラム(リップマンホログラム)を作製する。このため、多重断層ホログラムを再生することにより、断面画像情報で示される対象物体を立体的にカラーで表示することができる。特に、特定の部位を色により特定した疑似立体像を提供することができ、例えば、3次元画像をカラー化して、血管は赤色、脳は青色、患部を緑色等で表示することにより、いろいろな角度からわかりやすく見れるように表示することができる。
【0012】
(4)前記記録媒体が主粒径18〜28nmの銀塩乳剤を含む感光層を備え、前記記録媒体の白色バランスにつきR,G,B間の露光量比率がほぼ同じで達成される上記(3)に記載のホログラム作製装置。
【0013】
このように構成されたホログラム作製装置においては、粒子が小さい銀塩乳剤を含む記録媒体を用いるので干渉縞のピッチあたりの粒子数が増加し、全体の回折効率が向上するだけでなく、粒子個々の反応が小さくても粒子数が増加するということにより、分解能が向上し、多重記録されても明るいホログラムとすることができる。
そして、主粒径18〜28nmの銀塩乳剤を含む感光層ではB(青)波長の回折効率低下はなく、白色バランスに関して、R(赤)G(緑)B(青)間の露光量比率をほぼ同じとすることができ、レーザー光源の能力を十分に利用し、また、記録媒体の回折効率を十分に利用することができ、ホログラムを明るく、または、短い時間で露光することができる。
【0014】
(5)レーザ光源を物体光と参照光に分割し、物体光には3次元物体での観測軸Zに垂直で、Z軸上位置zn(nは整数)の断面画像を空間光変調素子により乗せて干渉状態記録された多重露光ホログラムであって、少なくとも50nm以上波長の離れた複数レーザ光源を使用した物体光それぞれに対応する断面画像情報が空間光変調素子により、各光源波長と各断面画像とを掛け合わせた枚数だけ作製されるマスタホログラムを重ねて1枚に露光した多重露光ホログラム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の2次元画像1枚ずつに対して、複数の波長ごとにマスタホログラムを作製し、全てのマスタホログラムを1枚のホログラム媒体に多重露光して、多重断層ホログラムを作製するので、対象物体を立体的にカラーで再生でき、特定の部位などを色により識別表示することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明のホログラム作製方法を実施するホログラム作製装置に係る実施形態を示すマスタホログラムを作製する光学系の構成図、図2はマスタホログラムを多重露光して複製を作製する複製光学系を示す構成図、図3は多重断層ホログラムを作製する手順を示すフローチャートである。
【0017】
本発明にかかるホログラム作製方法では、まず、レーザ光源を物体光と参照光とに分割し、物体光には2次元の断面画像を空間光変調素子により乗せてホログラム用記録媒体に照射するとともに、分割された参照光をホログラム用記録媒体に照射して、干渉状態を記録する。これを各2次元断面画像について行ってマスタホログラムを作製する。このようにして第1の波長に対するマスタホログラムが作成されたら、波長を変えて、同様にして次々にマスタホログラムを作製する。そして、全てのマスタホログラムについて、対応する波長の光で再生し、再生光を1枚の複製用記録媒体に照射するとともに、参照光を複製用記録媒体の反対側から照射して1枚のカラー化された多重断層ホログラム(リップマンホログラム)を作製する。この多重断層ホログラムを白色光で再生すると、2次元の断面画像によって表される物体が、3次元でカラー表示される。
【0018】
図1には、マスタホログラムを作製するための光学系10が示されている。この光学系10においては、少なくとも50nm以上波長が離れた複数レーザ光源Lとして、例えばRレーザ光源L1、Gレーザ光源L2、Bレーザ光源L3を有しており、各レーザ光源Lの前方には、各々シャッタS1、S2、S3が設けられている。コヒーレンスが高いレーザ光を必要とするため、通常、レーザ光源Lは使用開始前から予め電源を投入してレーザ発振状態を保ち、レーザ内の温度や発振状態を安定させる。この間、レーザ光が光学系に入ったのでは都合が悪いので、シャッタS1、S2、S3を設ける。また、ホログラフィ用記録媒体11への露光時、所定時間露光することによって、記録媒体11へ、所望のエネルギを与えるように制御することができる。
【0019】
各シャッタS1、S2、S3の前方には、光量を調整するために各々光減衰フィルタND1,ND2,ND3が設けられている。光減衰フィルタとしては、吸収タイプや反射タイプの固定減衰フィルタや回転式の可変減衰フィルタを用いることができる。従って、記録媒体11への露光エネルギ調整時に、シャッタS1、S2、S3による時間調整のみならず、光減衰フィルタND1,ND2,ND3による露光調整も可能である。
【0020】
各光減衰フィルタND1,ND2,ND3の前方には、各波長に合ったλ/2波長板W1,W2,W3が設けられており、入射光の偏光角度を回転させることができるようになっている。すなわち、各光減衰フィルタND1,ND2,ND3の前方に設けられている偏光ビームスプリッタPBSが、入射する光の偏光角度の状態により直進光と反射光に分けられる際の比が異なるため、λ/2波長板W1,W2,W3を光軸方向と垂直な方向へ回転することで、λ/2波長板W1,W2,W3からの透過光の偏光角度を変え、後の偏光ビームスプリッタPBSからの透過光と反射光の比を変えることができる。
【0021】
λ/2波長板W1,W2,W3の前方には、各々偏光ビームスプリッタPBS1、PBS2、PBS3が設けられており、レーザ光源Lからの光を物体光Baと、参照光Bbとに分割している。偏光ビームスプリッタPBS1、PBS2、PBS3は、各波長に合ったものが用いられるのが望ましく、キューブタイプや平板タイプを適宜用いることができるが、平板タイプは、光軸差が生じてしまうため、キューブタイプを用いるのが望ましい。
【0022】
偏光ビームスプリッタPBS1の物体光Ba側の下流には、1段目のダイクロイックミラーDM1が設けられており、その下流側には2段目のダイクロイックミラーDM2が設けられている。また、偏光ビームスプリッタPBS1の参照光Bb側の下流には、1段目のダイクロイックミラーDM3が設けられており、その下流側には2段目のダイクロイックミラーDM4が設けられている。
【0023】
また、偏光ビームスプリッタPBS2の物体光Ba側の下流には、ミラーM1が設けられており、透過光が1段目のダイクロイックミラーDM1に入射するようになっている。同様に、偏光ビームスプリッタPBS3の物体光Ba側の下流には、ミラーM2が設けられており、透過光が2段目のダイクロイックミラーDM2に入射するようになっている。一方、偏光ビームスプリッタPBS2の参照光Bb側の下流には、ミラーM3が設けられており、反射光が1段目のダイクロイックミラーDM3に入射するようになっている。同様に、偏光ビームスプリッタPBS3の参照光Bb側の下流には、ミラーM4が設けられており、反射光が2段目のダイクロイックミラーDM4に入射するようになっている。
【0024】
1段目のダイクロイックミラーDM1,DM3は、赤を透過し、緑を下流側へ反射して、赤と緑を合波するものである。また、2段目のダイクロイックミラーDM2,DM4は、赤・緑を透過し、青を反射し、赤・緑と青を合波するものである。なお、ダイクロイックミラーとしては、キューブタイプや平板タイプが適宜用いることができるが、平板タイプは光軸差が生じてしまうため、キューブタイプを用いるのが望ましい。
【0025】
なお、赤・緑・青のマスタホログラムをそれぞれ1枚ずつ記録媒体11に記録する際には、前述したレーザ光源Lを、順次赤レーザL1、緑レーザL2、青レーザL3に切り替えたり、シャッタS1〜S3を制御するとともに記録媒体11を順次新しいものと交換することにより、各色のマスタホログラムを作製することができる。あるいは、レーザ光源Lとして一つのレーザ光源を設け、前述した偏光ビームスプリッタPBS2、PBS3およびダイクロイックミラーDM1〜DM4およびミラーM1〜M4を設けない単一色用の光学系を用いることもできる。この場合には、レーザ光源Lを順次、赤→緑→青に交換するとともに、記録媒体11を新しいものに交換するようにして、各色のマスタホログラムを作製することができる。
【0026】
ダイクロイックミラーDM1,DM2からの光Ba1は、レーザ光源Lからの物体光Ba1のビーム径を拡大するビーム径拡大手段としてのレンズL11によって、入射される平行光を発散光Ba2へ変換する。なお、必要に応じてピンホールP11を焦点位置に設置し、レンズL11と共にスペイシャルフィルタSF1を構成することにより、光Ba2の波面ノイズや歪を取り除いて、クリアな波面(球面波)を作ることができる。また、ここからの発散光Ba2は、レンズL12によって平行光Ba3に変換されて、画像処理ユニット12に照射される。
【0027】
画像処理ユニット12は、ミラーM11,空間光変調素子SLM、偏光ビームスプリッタPBS、レンズL13、拡散板15を有している。なお、空間光変調素子SLMには各光源波長用の加工を施される断面画像情報それぞれに基づいて空間光変調素子SLMを駆動する空間光変調素子制御手段13が接続されている。従って、平行化された物体光Ba3はミラーM11によって方向を変えて偏光ビームスプリッタPBSにP偏光状態で入射され、ホログラム記録用情報を与える空間光変調素子SLMによって画像情報を付加されてS偏光状態でレンズL13に入射して、拡散板15上に所望の光学倍率に拡大して結像する。
【0028】
画像処理ユニット12の拡散板15からの物体光Ba4は、物体光光学系14によってホログラム用記録媒体11に照射される。このとき、空間光変調素子制御手段13は、作製するマスタホログラムの波長に対応して空間光変調素子SLMを加工する。例えば、赤のマスタホログラムを作製する際には、断面画像において赤を含む部分に必要な割合の赤の物体光Ba3が乗るように制御する。同時に、この断面画像が表示している断面位置に対応するように、画像処理ユニット移動手段(図示省略)を制御して画像処理ユニット12を観測軸Z方向(図1において左右方向)へ移動させて、Z軸上の所定位置zn(nは整数)においてZ軸に対して垂直に位置決めする。これにより、拡散板15とホログラムの距離に合った画像を表示して、記録媒体11を露光する。
【0029】
一方、ダイクロイックミラーDM3,DM4からの光Bb1は、ミラーM12,M13、M14によって方向を変換されて、参照光光学系16に入射される。参照光光学系15では、入射された参照光Bb1をレンズL14によって凹面鏡M15への発散光Bb2に変換される。レンズL14としては、前述したレンズL11と同様のものを用いることができる。また、物体光Baの場合と同様に、必要に応じてピンホールP14を焦点位置に設置し、レンズL14と共にスペイシャルフィルタSF2を構成するのが望ましい。
【0030】
凹面鏡M15はレンズL14からの発散光Bb2を幅広の平行光Bb3に変換して、例えばホログラム法線に対し45度でホログラム用記録媒体11に照射し、前述した画像処理ユニット12からの物体光と干渉させて記録媒体11に干渉縞を記録する。これにより、アナログマスタAMは、透過型ホログラムとなり、後述する複製ホログラム作製時、歪がなく、飛び出したホログラムを作製可能となる。凹面鏡M15による反射光である参照光Bb3をできる限り平行光にすべく、光路を妨げぬ程度に、凹面鏡M15に対して鋭角に発散光Bb2を入射するのが望ましい。
【0031】
以上のようにして、各断面情報に対応して記録媒体11を所定のZ軸位置に位置決めして、用いた波長に対するマスタホログラムMHを作成する。これを各色(各波長)について実施し、各波長ごとにマスタホログラムMHを複数枚作製する。つまり、(色数)×(断面数)だけのマスタホログラムMHが作成される。なお、マスタホログラムMHは露光後、記録媒体11の材質に応じて、現像処理、漂白処理、熱現像処理等を行う。
【0032】
図2には、各光源波長ごとに作製された複数枚のマスタホログラムMH全てを、1枚のホログラムに転写するホログラム複製光学系が示されている。なお、図1において前述したマスタホログラム作製用光学系の大部分を用いて複製を行うため、共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を流用する。
【0033】
図2に示すように、ホログラム複製光学系20では、マスタホログラム作製用光学系10におけるレンズL11,ピンホールP11,レンズL12,ミラーM11を光軸線から外し、レンズL15およびピンホールP15に入射するようにする。これにより、マスタホログラム作製用光学系10における物体光Ba1は画像処理ユニット12には入射されず、レンズL15によって拡散(Ba2)されて凹面鏡M16に入射し、複製ホログラムFH用記録媒体の裏面に参照光Ba3として照射される。
【0034】
一方、マスタホログラム作製用光学系10における参照光Bb1は、マスタホログラムMHの作製の場合と同様に移動して、位置決めされているマスタホログラムMHに物体光Bb3として照射される。ここで、マスタホログラムMHの作製時に記録媒体11が置かれていた位置には、物体光Bb3の波長に対応したマスタホログラムMHが図1に示した作成時に対して表裏反転し、位置決めされる。また、このマスタホログラムMHから所定距離の位置には、1枚の複製用の記録媒体21が位置決めされている。
【0035】
従って、多数のマスタホログラムMHから1枚の複製ホログラムFHを作製する際には、図3に示すように、まず第1の波長(例えば、Rレーザ)に対するマスタホログラムMHを作成する(ステップSA)。すなわち、第1の断面画像を空間光変調素子SLMによって第1の波長用に加工する(ステップS1)とともに、画像処理ユニット12を第1の断面画像に対応する位置に移動する(ステップS2)。これを各断面画像について行い(ステップS3)、全断面画像について完了したら(ステップS4)、第1の波長に対するマスタホログラムMHが完了する(ステップS5)。これを繰り返して、全波長についてマスタホログラムMHを作成する(ステップS6)。
【0036】
次いで、第1の波長用のマスタホログラムMHを第1波長の光で再生して(ステップS7)、再生光Bb4で単一の複製用記録媒体21を露光すると同時に、参照光Ba3を複製用記録媒体21の反対側から照射して干渉縞を記録する(ステップS8)。次に、第2波長用のマスタホログラムMHに交換し(ステップS10)、繰り返す。これを全波長の光について実施して(ステップS9)、多重断層ホログラムを作成する。この多重断層ホログラムはリップマンホログラムであるので、白色光により再生すると、カラー化された3次元の物体が表示されることになる。
【0037】
これにより、例えば、頭のCTスキャンを行った際に、患者にもわかりやすく説明することができるように、血管は赤色、脳は青色、患部を緑色等で表示することにより、3次元画像をカラー化して、いろんな角度からわかりやすく見ることができる。
【0038】
なお、本発明のホログラム作製方法およびホログラム作製装置は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
例えば、前述した実施形態においては、波長が異なるレーザ光源Lとして、Rレーザ光源L1、Bレーザ光源L2,Gレーザ光源L3の3光源を用いたが、4種以上の光源を用いることもできる。この場合、色差を小さくしてカラー化することができる。
【0039】
また、記録媒体11、21としては、銀塩感光材料が一般に利用されており、本実施形態では以下のような感光層を備える記録媒体を使用する。
【0040】
(乳剤の調製)
KBr0.70g、平均分子量100000の脱イオン骨ゼラチン9.0gを含むイオン交換水2000mLを15℃に保ち、強く撹拌した。二酸化チオ尿素0.17gを添加した後、水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.0に合わせた。AgNO3(32.0g)水溶液500mlと、平均分子量20000の脱イオン骨ゼラチン2.0gおよびKIを1モル%含むKBr水溶液をダブルジェット法で5分間かけて添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して−20mVに保った。粒子形成時のAgNO3水溶液の添加開始から3分後にK2[IrCl6]水溶液をハロゲン化銀1モルに対して1×10-3モル添加した。粒子形成時のAgNO3水溶液の添加開始から4分後にK4[Fe(CN)6]水溶液をハロゲン化銀1モルに対して1×10-3モル添加した。AgNO3水溶液の添加終了時に、強色増感剤SS−1をハロゲン化銀1モルに対して1.0×10-3モル添加した後、増感色素S−1、S−2を45:55のモル比率で、ハロゲン化銀1モルに対して3.0×10-3モル添加した。増感色素は、特開平11−52507号に記載の方法で作成した固体分散物として使用した。硝酸ナトリウム7gおよび硫酸ナトリウム3gをイオン交換水80gに溶解した後増感色素10gを添加して、60℃の条件下、ディゾルバー翼を用い2000rpmで50分間分散することにより、増感色素の固体分散物を得た。
温度を20℃に昇温した後、通常の水洗を行なった。平均分子量20000の脱イオン骨ゼラチン14gを含む25℃のイオン交換水を添加した後、30℃でPHを6.0に調整した。35℃に昇温して、ハロゲン化銀1モルに対して、二酸化チオ尿素(6.0×10-5モル)、塩化金酸(9.0×10-4モル)、チオ硫酸ナトリウム(1.0×10-3モル)およびN,N−ジメチルセレノ尿素(9.0×10-4モル)を添加して最適に化学増感を施した。かぶり防止剤として、ハロゲン化銀1モルに対してCpd−1(1.0×10-3モル)およびCpd−2(5.0×10-3モル)を添加して化学増感を終了した。
本乳剤の乳剤粒子は粒径が18nm〜28nmの範囲にほぼ含まれ、数平均円相当径が15nmであり、円相当径の変動係数が15%の立方体粒子であった。本乳剤の乳剤粒子は3モル%の沃化銀を含有する臭化銀粒子であった。
【0041】
【化1】


【0042】
【化2】


【0043】
下塗り層を設けた厚み200μmの三酢酸セルロースフィルム支持体に、前記の乳剤を塗布した。以下に塗布条件を示す。数字は塗布量(g/m2)を表し、ハロゲン化銀乳剤は銀換算塗布量を表す。
【0044】
(乳剤層)
乳剤に下記化合物を添加し、銀塗布量が6.75g/m2となるように塗布した。
乳剤 6.75
ゼラチン 10.25
Cpd−4 0.10
Cpd−5 0.50
Cpd−6 0.07
【0045】
【化3】


【0046】
これらの他に、以下に示す化合物Cpd−7〜Cpd−11およびCpd−13を添加して乳剤層の塗布を行なった。
【0047】
【化4】


【0048】
乳剤層を塗布した面とは反対側の面にバック層を塗布した。以下に塗布条件を示す。数字は塗布量(g/m2)を表す。
【0049】
(バック層)
<バック層塗布液の調製と塗布>
ゼラチン水溶液に下記化合物を添加し、ゼラチン塗布量が10.50g/m2となるように塗布した。
ゼラチン(Ca2+含有量30ppm) 10.50
ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径4.3μm) 0.015
p−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.025
ジヘキシル−α−スルホサクシナートナトリウム 0.11
N−パーフルオロオクタンスルホニル
−N−プロピルグリシンポタジウム 0.025
硫酸ナトリウム 0.04
酢酸ナトリウム 0.04
硝酸カリウム 0.12
Cpd−5 0.50
Cpd−6 0.05
Cpd−12 0.02
【0050】
【化5】


【0051】
このようにして作成した塗布試料の乳剤層側の乾燥膜厚は12.0μm、バック層側の乾燥膜厚は9.0μmであった。
【0052】
これにより、粒子が小さい銀塩乳剤を含む記録媒体11を用いるので干渉縞のピッチあたりの粒子数が増加し、全体の回折効率が向上するだけでなく、粒子個々の反応が小さくても粒子数の増加により、分解能が向上し、多重露光によっても明るいホログラムとすることができる。
【0053】
そして、前述のように、主粒径18〜28nmの銀塩乳剤を含む感光層では、R(赤)G(緑)の波長と比べてもB(青)波長の回折効率低下はない。従って、白色バランスに関して、R(赤)G(緑)B(青)間の露光量比率をほぼ同じとして、レーザー光源の能力を十分に利用し、且つ記録媒体の回折効率を十分に利用することができ、ホログラムを明るくすることができる。
【0054】
以上のように、本発明に係るホログラム作製方法およびホログラム作製装置は、複数の2次元画像に対して、複数の波長ごとにマスタホログラムを作製し、全てのマスタホログラムを1枚のホログラム媒体に多重露光して、多重断層ホログラムを作製するので、対象物体を立体的にカラーで再生することができるという効果を有し、複数の2次元画像を多重露光して作製するホログラムをカラー化することができるホログラム作製方法およびホログラム作製装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のホログラム作製方法を実施するホログラム作製装置に係る実施形態においてマスタホログラムを作製する光学系の構成図である。
【図2】マスタホログラムを多重露光して複製を作製する複製光学系を示す構成図である。
【図3】多重断層ホログラムを作製する手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
11 ホログラム用記録媒体
13 空間光変調素子制御手段
14 物体光光学系
16 参照光光学系
20 ホログラム複製光学系
21 複製用記録媒体
Ba 物体光
Bb 参照光
Bb4 再生光
L レーザ光源
L1,L2,L3 複数レーザ光源
L11 レンズ(ビーム径拡大手段)
MH マスタホログラム
SLM 空間光変調素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源を物体光と参照光とに分割し、物体光には3次元物体での観測軸Zに垂直でZ軸上位置zn(nは整数)の断面画像を空間光変調素子により乗せて干渉状態記録を実施するホログラム作製方法であって、
少なくとも50nm以上波長が離れた複数レーザ光源を使用した物体光をビーム径拡大手段で拡大して前記空間光変調素子に照射し、
前記各レーザー光源波長用の加工を施されたそれぞれの前記断面画像情報を空間光変調素子により前記物体光に乗せてホログラム用記録媒体に照射し、
前記参照光をホログラム用記録媒体に照射して前記物体光との干渉を記録して前記各光源波長及び前記各断面画像ごとにマスタホログラムを作製し、
全ての前記マスタホログラムをホログラム複製光学系により1枚のホログラムに転写するホログラム作製方法。
【請求項2】
前記複数レーザ光源が、前記ホログラム用記録媒体のカラー感度分布に対応する少なくともRGB用波長により物体光を照射し、前記断面画像情報が各RGB波長用に加工される請求項1に記載のホログラム作製方法。
【請求項3】
レーザ光源を物体光と参照光に分割し、物体光には3次元物体での観測軸Zに垂直で、Z軸上位置zn(nは整数)の断面画像を空間光変調素子により乗せて干渉状態記録を実施するホログラム作製装置であって、
少なくとも50nm以上波長が離れた複数レーザ光源と、
前記レーザ光源からの物体光のビーム径を拡大するビーム径拡大手段と、
径を拡大された前記物体光ビームにホログラム記録用情報を与える空間光変調素子と、
前記各光源波長用の加工を施される断面画像情報それぞれに基づいて前記空間光変調素子を駆動する空間光変調素子制御手段と、
前記空間光変調素子からの物体光をホログラム用記録媒体に照射する物体光光学系と、
前記参照光をホログラム用記録媒体に照射して前記物体光と干渉させる参照光光学系と、
前記各光源波長と前記各断面画像とを掛け合わせた枚数だけ作製されるマスタホログラムからの再生光を物体光として複製用記録媒体に照射し、前記複製用記録媒体の反対側から参照光を照射して全てのマスタホログラムを1枚のホログラムに転写するホログラム複製光学系とを備えるホログラム作製装置。
【請求項4】
前記記録媒体が主粒径18〜28nmの銀塩乳剤を含む感光層を備え、前記記録媒体の白色バランスにつきR,G,B間の露光量比率がほぼ同じで達成される請求項3に記載のホログラム作製装置。
【請求項5】
レーザ光源を物体光と参照光に分割し、物体光には3次元物体での観測軸Zに垂直で、Z軸上位置zn(nは整数)の断面画像を空間光変調素子により乗せて干渉状態記録された多重露光ホログラムであって、
少なくとも50nm以上波長の離れた複数レーザ光源を使用した物体光それぞれに対応する断面画像情報が空間光変調素子により、各光源波長と各断面画像とを掛け合わせた枚数だけ作製されるマスタホログラムを重ねて1枚に露光した多重露光ホログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−197240(P2008−197240A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30560(P2007−30560)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】