大分子その他の分析物の検出用生物センサー
【課題】任意のポリペプチドあるいは大分子複合体の同定と定量に有用な、コアプタマー構築物セットを利用した組成物と方法を提供する。
【解決手段】大分子構築物のポリペプチドの固有のエピトープに結合するアプタマー構築物。これらアプタマー構築物は、エピトープ結合部位、コアプタマー結合部位、および検出可能な標識を含む。同族ポリペプチド、アナライト−ポリペプチド複合体、あるいはその他の大分子複合体の存在下で、コアプタマーは互いに結合して検出可能なシグナルを生み出す。コアプタマー構築物はリンカーで連結されて二価アプタマー構築物を産生してもよい。
【解決手段】大分子構築物のポリペプチドの固有のエピトープに結合するアプタマー構築物。これらアプタマー構築物は、エピトープ結合部位、コアプタマー結合部位、および検出可能な標識を含む。同族ポリペプチド、アナライト−ポリペプチド複合体、あるいはその他の大分子複合体の存在下で、コアプタマーは互いに結合して検出可能なシグナルを生み出す。コアプタマー構築物はリンカーで連結されて二価アプタマー構築物を産生してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
親出願に関する記載
この特許出願は2003年12月12日に出願された米国仮出願番号60/529、076からの優先権を主張する。
【0002】
政府援助
この研究業務は保健福祉省/国立衛生研究所に支援されており(補助番号CA94356)、アメリカ政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【0003】
配列リスト
紙にコピーした配列リストと、同じ配列のコンピューターで読み取り可能な形式とは下に添付され、本明細書に参照により取り込まれる。37 C.F.R.1.821(f)に従い、コンピューターで読み取り可能な形式で記録された情報は記載された配列リストと同一のものである。
【0004】
発明の分野
本発明は、キット(kit)、分子ビーコン(molecular beacon)、および任意のポリペプチド、アナライト(analyte)、大分子複合体(macromolecular complex)あるいはその組み合わせ方法を検出する方法に関係するものである。本発明はバイオメディカル研究ツールと診断キットに関係している。
【背景技術】
【0005】
バックグラウンド技術
我々の環境、食物、水、生物サンプル(血液、脳脊髄液、尿など)の中の特定分子の検出、同定、および定量は、非常に複雑、高価、かつ時間もかかるものでありえる。これらの方法にはガスクロマトグラフィー、質量分析、DNA配列決定、免疫分析、細胞を基礎とする分析、生物分子ブロットおよびゲル、および無数の多段化学および物理分析法が含まれる。
【0006】
生物あるいは環境サンプル中の特定タンパク質のレベルを検出および測定する簡便な方法が強く求められ続けている。タンパク質を検出しそのレベルを測定することは生物医学研究における最も基礎的でかつよく行われる方法の一つである。抗体ベースのタンパク質検出方法は研究および医学的診断において非常に有用であるが、迅速かつハイ・スループットな並列タンパク質検出(parallel protein detection)によく適合するものではない。
【0007】
以前に、本発明者は、タンパク質の特定のサブクラス(つまり配列特異的DNA結合タンパク質)を検出するための蛍光センサー法を開発した(Heyduk、T.; Heyduk、E.Nature Biotechnology 2002、20、171-176; Heyduk、E.;Knoll、E.;Heyduk、T.Analyt.Biochem.2003、316、1-10; 米国特許番号6、544、746および係属中の特許出願番号10/062、064、PCT/US02/24822とPCT/US03/02157、これらは参照により本明細書に取り込まれる)。
【0008】
この方法はタンパク質のDNA結合部位を2つのDNA半部位(half-sites)に分けることに基づいている。生じる半部位の各々は、2つのDNA半部位が完全に機能的なタンパク結合部位を再構成するように結合するいくらかの傾向を導入するように設計された長さの、短い相補的一本鎖部位を含んでいる。この傾向は、タンパク質が存在しない時はDNA半部位のほんの一部のみが結合するように、低く設計されている。タンパク質が反応混合液の中に存在する時、それは完全に機能的な結合部位にのみ結合する。この選択的結合は、DNA半部位の結合を促進し、このタンパク質依存的な結合は、目標タンパク質の存在を知らせる分光的シグナルを生み出すのに用いられる。
【0009】
単語「分子ビーコン」当業界で前記検出を述べるのに用いられ、選択的認識と、認識を知らせるシグナルの発生が検出の際に同時に起こることを強調している。いくつかのタンパク質について、DNA結合タンパク質用分子ビーコンが開発されており、その一般的適用可能性について示している(Heyduk、T.; Heyduk、E. Nature Biotechnology 2002、20、171-176、参照により本明細書に取り込まれる)。その物理的作用機構は確立されており、DNA結合タンパク質に結合するリガンドの存在を検出するアッセイ用のプラットホームとしても用いられている(Heyduk、E.; Knoll、E.; Heyduk、T、; Analyt.Biochem.2003、316、1-10; Knoll、E.; Hetduk、T.Analyt.Chem.2004、76、1156-1164; Heyduk、E.; Fei、Y.; Heyduk、T.Combinatorial Chemistry and High-throughput Screening 2003、6、183-194、参照により本明細書に取り込まれる)。このアッセイはすでにかなり有用だが、このアッセイは天然のDNA結合活性を示すタンパク質に限定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許番号6、544、746
【特許文献2】PCT/US02/24822
【特許文献3】PCT/US03/02157
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Heyduk、T.; Heyduk、E.Nature Biotechnology 2002、20、171-176
【非特許文献1】Heyduk、E.;Knoll、E.;Heyduk、T. Analyt.Biochem.2003、316、1-10
【非特許文献1】Knoll、E.; Hetduk、T. Analyt.Chem.2004、76、1156-1164
【非特許文献1】Heyduk、E.; Fei、Y.; Heyduk、T.Combinatorial Chemistry and High-throughput Screening 2003、6、183-194
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
分子ビーコンとしてのアプタマー
タンパク質検出のための簡便で、特異的で高感度のハイ・スループットアッセイの開発は、依然として非常に重要な目標である。このようなアッセイは研究、創薬および医学診断に応用できる。これまでのところ、目標のタンパク質を認識する抗体が、大部分のタンパク質検出アッセイの最重要物である。インビトロ(in vitro)で、一群のランダムな配列の核酸の中から目標タンパク質を認識するアプタマーを選択する方法は、最初の本当の抗体の替代物を提供した。アプタマーの潜在的な利点の一つは、オリゴヌクレオチドを増やし合成するのが容易であるということである。さらに、例えば蛍光プローブなどのレポーター基を含むアプタマーを設計するのに標準的な核酸化学操作を用いうる。このため、様々なフォーマットのタンパク質の検出アッセイにおいてアプタマーを使用することについてかなりの関心があることには疑いがない。最も有望な路線は、目標タンパクの認識と該タンパクの存在を知らせる光学的シグナルの産生を組み合わせるアプタマーを基礎としたセンサーの開発である。
【0013】
いくつかの発行された報告では、特定のタンパク質と結合した際に蛍光シグナルを発するアプタマーを基礎とした「分子ビーコン」の巧妙な設計について述べられている。これらの設計は全て、蛍光シグナルの変化を生み出す、目標タンパク質によって誘導されるアプタマー中の構造遷移に依存している。YamomotoとKumer(Genes to Cells 2000、5、389-396)は、HIVのTatタンパク質認識の際に蛍光シグナルが増強した分子ビーコンアプタマーを記載している。蛍光シグナルは、Tatタンパク質に誘導されるアプタマーのヘアピン構造と二重らせん構造の間の遷移に起因する、蛍光団−消光剤間の近さの変化によって生み出される。Hamaguchiらは(Analyt.Biochem.2001、294、126-131)トロンビン認識の際に蛍光を増強させた分子ビーコンアプタマーを記載している。目標タンパク質が存在しない時、このビーコンは蛍光団と消光団を近接させるようにステム−ループ構造を形成するように設計されている。該タンパク質が存在する時、ビーコンはリガンド結合構造をとらされ、その結果蛍光団と消光剤の間の距離が開き、蛍光シグナルは増強される。Li.らは(Biochem.Biophysics.Res.Commun.2002、292、31-40)は、目標タンパク質の存在時に緩いらせんから稠密な単分子四重らせんへの遷移を行う分子ビーコンアプタマーを記載している。このタンパク質に誘導されるアプタマー構造の変化は、アプタマーの末端に結合した蛍光プローブの間の近さの変化を生じ、蛍光シグナルの変化を生み出す。類似の手法がPDGFを認識する分子ビーコンアプタマーを設計するためにFangら(ChemBioChem.2003、4、829-834)に用いられた。これらの例は、タンパク質の存在を光学的シグナルに変換できるセンサーを設計するためのアプタマーの大きな可能性を示している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明者は、先のセンサーの設計を成功裏に押し広め、これらセンサーをタンパク質および天然の核酸結合活性を持たないその他のアナライトへの配列特異的ヌクレオチド結合の検出に先に適用されたセンサーの設計を一般化することに成功し、これらセンサーの応用範囲を拡大した。簡単に言えば、配列特異的なDNA結合タンパク質を認識する天然のDNA配列を、ランダム配列のプールからインビトロ選択によって得られた、特定の目標タンパク質に結合する核酸によって置き換えた。インビトロSELEX(指数的濃縮によるリガンドの体系的進化)の手法を使用して天然のDNA結合活性を欠くタンパク質に特異的に結合できる核酸(DNAまたはRNA)アプタマーを生み出せることが良く確立された(Tuerk、C.;Gold、L.Science 1990、249、505-510;Gold、L.;Polisky、B.;Uhlenbeck、O.;Yarus、M.Ann.Rev.Biochem.1995、64、763-797;Wilson、D.S.;Szostak、J.W.Ann.Rev.Biochem.1999、68、611-647)。SELEXは、結合、非結合配列の洗い落とし、および目標結合配列のPCR増幅のサイクルによってランダムDNA(またはRNA)配列プールから特定の目標に結合する核酸配列を選択することを伴う。様々なタンパク質およびその他の目標分子に特異的に結合するアプタマーを成功裏に選択した多数の例(Turek 1990、Polisky 1995およびWilson 1999)は、数多くの天然タンパク質に対するアプタマーを作り出すことが可能であることを強く示している。
【0015】
発明者は係属中の特許出願10/062、064(参照により本明細書に取り込まれる)に記載された近接性を基礎としたアッセイの応用を、核酸結合因子、そのリガンドおよび共調節因子を超えて、任意のポリペプチド(プリオンその他の誤って折り畳まれたタンパク質を含む)アナライト、小分子リガンドあるいは大分子複合体をも含むようにすることをさらに可能とする組成物と方法を開発した。
【0016】
本発明は、各アプタマーの末端に短い(好ましくは約5〜7ヌクレオチドの)相補的一本鎖ポリヌクレオチド配列(シグナリングオリゴと呼ばれる)を含む一群の標識アプタマーの使用に関する。アプタマー群中の各アプタマーは、ポリペプチドあるいは大分子複合体の特異的かつ異なるエピトープに結合する;つまりアプタマー群のうち第1のアプタマーはポリペプチドあるいは大分子複合体の第1のエピトープに結合し、アプタマー群のうち第2のアプタマーはこのポリペプチドあるいは大分子複合体の第2のエピトープと結合する。ポリペプチドあるいは大分子複合体が存在する時、各アプタマーの末端の短い相補的な一本鎖ポリヌクレオチド配列が互いに安定に結合するように、第1のアプタマーは第1のエピトープと結合し、第2のアプタマーは第2のエピトープと結合する、第1のアプタマー末端の短い一本鎖ポリヌクレオチド配列が、第2のアプタマー末端の短い一本鎖ポリヌクレオチド配列に安定に結合する時、第1のアプタマー上の標識は第2のアプタマー上の標識に接近し、測定可能なシグナルを生み出す。言い換えれば、任意のポリペプチドあるいは大分子複合体に結合する2つ以上の新規な核酸半部位を作製し、任意のポリペプチドあるいは大分子複合体を検出するための近接性を基礎とするアッセイに用いることができる。アプタマー群は柔軟なリンカーによって結合されて二価アプタマー構築物を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】タンパク質検出用の分子ビーコンの全体設計。(A)天然のDNA結合活性を有さないタンパク質用の設計のバリエーション。この場合のビーコンはタンパク質の2つの異なるエピトープを認識するように開発された2つのアプタマーからなるであろう。(B)天然のDNA結合活性を有するタンパク質用の設計バリエーション。この場合のビーコンはタンパク質結合部位に対応するDNA配列を含む短いDNA二本鎖と、タンパク質の異なるエピトープを認識するように開発されたDNA(RNA)アプタマーとからなるであろう。
【図2】第1のアプタマー(A)の結合部位とは異なるエピトープ、あるいはタンパク質(B)の天然の結合部位を含む核酸の結合部位とは異なるエピトープ、についてのコアプタマーを作製する方法。
【図3】DNA結合タンパク質(A)用分子ビーコンの設計と、タンパク質(B)の2つの異なるエピトープに対するアプタマーに基づいてタンパク質を検出する分子ビーコンの比較。
【図4】トロンビンにフィブリノゲンエクソサイト(60−18[29])およびヘパリン エクソサイト(G15D)で結合するアプタマーを含むアプタマー構築物。
【図5】フルオレセイン標識アプタマーのトロンビンへの結合。(A)蛍光偏光で検出された60−18[29]アプタマー(THR1)(50nM)の結合;(B)蛍光強度の変化により検出されたG15Dアプタマー(THR2)(50nM)の結合;(C)フルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)(20nM)のトロンビンによる定量的平衡滴定。実線はアプタマーとトロンビンの間の1:1複合体形成を記述した方程式への実験データの非線形適合;(D)十倍過剰量の非標識60−18[29]のアプタマー(THR3)の存在かにおける、フルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)(20nM)のトロンビンによる定量的平衡滴定。実線はアプタマーとトロンビンの間の1:1複合体形成を記述した方程式への実験データの非線形適合。
【図6】トロンビンへの結合についての、トロンビンアプタマー構築物とフルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)の間の競合。競合物がない時(A)、150nMのTHR3の存在下(B)、150nMのTHR4の存在下(C)、および150nMのTHR7の存在下(D)におけるトロンビンあり、および無しでの、50nMのフルオレセイン標識G15D(THR2)の蛍光スペクトル。
【図7】トロンビンへの結合に関する、トロンビンアプタマー構築物とフルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)の間の競合を検出する実験の概要。競合物(250nM)の非存在下および存在下におけるフルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)(50nM)の蛍光強度を、競合物の存在下における結合THR2の%を決定するのに用いた。トロンビンの濃度は75nMであった。図中に示された解離定数の値は、200nMのフルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)、200nMの競合物および150nMのトロンビンを用いた別個の実験から計算された。
【図8】60−18[29]アプタマー(THR3)が、フルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)とTHR5構築物の間のトロンビンへの結合についての競合について与える影響。トロンビン(150nM)の存在下および非存在下における、(A)競合物の非存在下、(B)1000nMのTHR3と200nMのTHR5の存在下、(C)1000nMのTHR3の存在下、および(D)200nMのTHR5の存在下での200nMのフルオレセイン標識G15D(THR2)の蛍光スペクトル。
【図9】ゲル電気泳動移動率シフトアッセイにより検出されたTHR7アプタマー構築物のトロンビンへの結合。417nMのTHR7のサンプルを様々な量の(0〜833nM)のトロンビンと共にインキュベートし、15分のインキュベーション後に10%の天然プロピレンゲル上にロードした。(A)Sybr Greenで染色されたゲルのイメージ。(B)トロンビン濃度の関数としての、THR7−トロンビン複合体に相当するバンドの強度。
【図10】二価トロンビンアプタマー構築物のファミリーで、G15Dと60−18[29]アプタマーが、9−27個のヌクレオチド長のpolyTリンカーによって20bp二本鎖DNAに連結されたもの。
【図11】ゲルシフト法(EMSA)によって検出された、トロンビンの図8中に示された二価アプタマー構築物(各33nM)への結合。星印は、トロンビンが9ヌクレオチド長のポリTリンカーを有する構築物と比較して27ヌクレオチド長および17ヌクレオチド長のpolyTリンカーに選択的に結合することを最もよく示しているレーンを示す。トロンビンの濃度は0から400nMの間で変化された。
【図12】17ヌクレオチド長のpolyTリンカーで9bpの蛍光団(あるいは消光剤)標識“シグナル”二本鎖に連結されたG15Dと60−18[29]アプタマーを用いたトロンビンビーコンの設計。(A)フルオレセイン標識G15D構築物(THR9)とダブシル標識60−18[29]構築物(THR8)のヌクレオチド配列。(B)トロンビンビーコンによるシグナル機構。(C)トロンビンをトロンビンビーコンに加えた際に検出される蛍光シグナル変化。比較のため、ダブシル標識60−18[29]構築物(THR8)の非存在下でのフルオレセイン標識G15D構築物(THR9)トロンビンによる滴定も示される(ドナーのみの曲線)。
【図13】5個のスペーサー18単位を含むリンカーを介して9bpの蛍光団(あるいは消光剤)標識“シグナル”二本鎖に連結されたG15Dと60−18[29]のアプタマーを用いたトロンビンビーコンの設計。(A)フルオレセイン標識G15D構築物(THR21)とダブシル標識60−18[29]構築物(THR20)のヌクレオチドの配列。(B)トロンビンビーコンによるシグナル機構。(C)トロンビンをトロンビンビーコンに加えた際に検出される蛍光シグナルの変化。比較のため、ダブシル標識60−18[29]構築物(THR20)が存在しない場合のフルオレセイン標識G15D構築物(THR21)のトロンビンによる滴定も示す(ドナーのみの曲線)。挿入図は、主グラフの各データ点に対応する様々なトロンビン濃度において記録される蛍光発光スペクトルを示す。
【図14】ゲルシフト法によって検出された、トロンビンの図13中に示されたビーコン(THR20/THR21)への結合。ゲルはフルオレセイン発光で画像化された(つまり、ビーコンのTHR21成分のみが見える)。
【図15】(A)2つの異なるビーコン濃度でのトロンビン検出の感度。赤丸:50nMのTHR21と95nMのTHR20。青丸:5nMのTHR21と9.5nMのTHR20。(B)ビーコンのトロンビンに対する特異性。50nMのTHR21と95nMのTHR20がトロンビン(赤丸)およびトリプシン(青丸)で滴定された。
【図16】競合的アプタマー構築物によるトロンビンビーコンシグナルの反転。競合物DNAの濃度を増加させながら、50nMのTHR21、95nMのTHR20および100nMのトロンビンの蛍光強度を測定した。実験数値は、初期のビーコンとトロンビンの混合物のシグナル(Fo)に対する相対的蛍光増加量としてプロットされている。塗りつぶされていない青の四角:THR7;塗りつぶされた黒丸:THR14/THR15;塗りつぶされた赤の四角:THR16/THR17;塗りつぶされた青の三角:THR18/THR19;塗りつぶされていない赤の三角:THR3;塗りつぶされた緑の逆三角:THR4;塗りつぶされていない黒の三角:非特異的一本鎖DNA。
【図17】タンパク質検出用分子ビーコンを示す。DNA結合タンパク質用分子ビーコン(A)と、タンパク質の2つの異なるエピトープに対するアプタマーを基礎としたタンパク質検出用分子ビーコン(B)の設計の比較。
【図18】アプタマー構築物のトロンビンへの結合を示す。(A)5’フルオレセイン部位の蛍光強度の変化によって検出されたG15Dアプタマー(THR2)(50nM)の結合;実線は実験データの単純な1:1結合等温線への最適適合を示す。(B)10倍過剰量の未修飾60−18[29]アプタマーの存在下でのG15Dアプタマー(THR2)の結合;実線は実験データの単純な1:1結合等温線への最適適合を示す。(C)トロンビンアプタマー構築物とフルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)の間の競合を検出する実験の概要。THR2(200nM)の蛍光の強度が、競合物(200nM)の存在下における結合THR2の%を決定するために用いられた。トロンビンは150nMであった。各棒の上の表示は、THR2アプタマーの親和性と比較した場合の競合物の相対的親和性(親和性定数の増加倍率で表示)を示す。(D)ゲルシフトアッセイによって検出されたTHR7アプタマー構築物のトロンビンへの結合。THR7−アプタマー複合体に対応するバンドの強度をトロンビン濃度の関数としてプロットした。挿入図:sybr Greenによって染色されたゲルの画像。蛍光の変化(%)は100×(I−I0)/I0として計算された。ここでIおよびI0はそれぞれ所定濃度のトロンビンの存在および非存在下で観察される、希釈補正蛍光発光強度に対応する。
【図19】トロンビンビーコンの設計を示す。G15Dと60−18[29]のアプタマーが5個のスペーサー18単位を含むリンカーにより7bpの蛍光団(あるいは消光剤)標識シグナル二本鎖に連結された。(A)フルオレセイン標識G15D構築物(THR21)とダブシル標識60−18[29]構築物(THR20)のヌクレオチド配列。Xはスペーサー18部位に対応する。(B)トロンビンビーコンによるシグナル機構。(C)トロンビンビーコンにトロンビンを加えた際に検出される蛍光シグナル変化。比較のため、ダブシル標識60−18[29]構築物(THR20)の非存在下での、フルオレセイン標識G15D構築物(THR21)のトロンビンによる滴定も示す(ドナーのみの曲線)。シグナル変化(%)は100×(I−Io)/I0として計算される。ここでIおよびIoはそれぞれ所定濃度のトロンビンの存在および非存在下で観察される、希釈補正蛍光発光強度に対応する。挿入図は主グラフの各データ点に対応する種々のトロンビン濃度において記録された蛍光発光スペクトルを示す。
【図20】種々の組み合わせのドナー−アクセプター蛍光団を備えたトロンビンビーコンのバリエーションを示す。(A)フルオレセイン−ダブシル;(B)フルオレセイン−テキサスレッド;(C)フルオレセイン−Cy5;(D)Cy3−Cy5。トロンビンの非存在下(黒線)および存在下(赤線)でのビーコンの発光スペクトルが示される。挿入図は対応するビーコンと表示された濃度のトロンビンを含むマイクロプレートのウェルの偽カラー画像を示す。画像はBio−Rad Molecular Imager FXで得られたもので、以下の励起−発光設定を用いた:(A)488nmレーザー−530nmバンドパスフィルター;(B)488nmレーザー−640nmバンドパスフィルター;(C)488nmレーザー−695nmバンドパスフィルター;(D)532nmレーザー−695nmバンドパスフィルター。蛍光値は任意単位(測定機器反応について補正)で表され、線形スケールにプロットされている。
【図21】様々な組み合わせのドナー−アクセプターペアを有するビーコンの反応曲線。(A)フルオレセイン−ダブシル;(B)フルオレセイン−テキサスレッド;(C)Cy3−Cy5;(D)フルオレセイン−Cy5;(E)ユーロピウムキレート−Cy5;(F)飽和トロンビン濃度において法事されたドナー−アクセプターペアについて観察されるシグナル変化の倍率。挿入図は低トロンビン濃度におけるデータ点の拡大図を示す。全ての実験において5nMのドナーで標識され、5.5nMのアクセプターで標識されたアプタマー構築物が用いられた。シグナル変化(倍率)は100×(I−Io)/I0として計算される。ここでIおよびIoはそれぞれ所定濃度のトロンビンの存在および非存在下で観察される、希釈補正蛍光発光強度に対応する。シグナル変化を計算する前に、IおよびIoから緩衝液のバックグラウンドを差し引いた。
【図22】トロンビンビーコンの感度のドナー−アクセプターペアへの依存を示す。低トロンビン濃度で、フルオレセイン−ダブシルペア(三角形)、フルオレセイン−テキサスレッドペア(逆三角形)、およびフルオレセイン−Cy5ペア(丸)で標識されたビーコンを使用して、10nMのドナーで標識され11nMのアクセプターで標識されたビーコンの反応が決定された。四つの独立した実験の平均と標準偏差が示されている。シグナル変化(倍率)図5と同様に計算された。
【図23】トロンビンビーコンの再現性と安定性を示す。(A)四つの異なるトロンビン濃度における、5つの独立したビーコンシグナルの決定が行われた。示されたデータは平均値+/−標準偏差を示す。(B)四つのトロンビン濃度におけるトロンビンビーコンシグナルを最大24時間にわたり測定した。示された数値は5回の独立した測定の平均値+/−標準偏差を示す。本実験中では、5nMのフルオレセイン標識アプタマー(THR21)と5.5nMのテキサスレッド標識アプタマー(THR27)を含むビーコンを用いた。シグナル変化(倍率)の計算は、緩衝液バックグラウンドを差し引かなかった点を除けば図5と同様に行った。
【図24】トロンビンビーコンのZ’因子(Z’-factor)の決定を示す。プロットの中央のパネルは、グラフに示された実験(上半部のウェルは+トロンビン、下半部のウェルは−トロンビン)に対応するマイクロプレートウェルの偽カラー画像を示す。実験では、5nMのフルオレセイン標識アプタマー(THR21)と5.5nMのテキサスレッド標識アプタマー(THR27)を用いた。シグナルは、ドナー励起によって測定されたアクセプターの対ドナー発光強度比(任意単位で表示)に対応する。
【図25】複合体混合液中でのトロンビンの検出を表す。(A)過剰量の無関係なタンパク質の存在下における1nMのトロンビン濃度での、トロンビンビーコンの反応。示されたデータは4つの独立な実験の平均値と標準偏差である。(B)種々の量のトロンビンでスパイクされたHeLa細胞抽出物中でのトロンビンの検出。示されたデータは三つの独立な実験の平均値と標準偏差である。細胞抽出物中のトロンビン濃度は:1.88nM(淡灰色の棒);3.75nM(濃灰色の棒);7.5nM(黒棒)。ビーコン混合液単体のシグナルは、細胞抽出物(トロンビン未添加)がある時(図には示されていない)より約25%低く、細胞抽出物および特異的競合物の存在下で観察されたシグナルとほぼ同じであった。(C)トロンビンビーコンで観察された、Xa因子によって触媒されるプロトロンビンからトロンビンへの変換の時間的経過。(D)血漿中でのトロンビンの検出。示されたデータは四つの独立な実験の平均値と標準偏差である。用いられた血漿の体積(アッセイ混合液20μlあたり)は:0.005μl(淡灰色棒);0.015μl(濃灰色棒);0.045μl(黒棒)。「特異的」は未標識トロンビンアプタマー競合物を指し(THR7)、「非特異的」は30ヌクレオチド長のランダム配列のDNAを指す。パネルA、B、およびD中のシグナルは、ドナー励起によって測定されたアクセプターの対ドナー発光強度比(任意単位で表示)を示す。ビーコン混合液単体(AとD)および細胞抽出物が存在する時のビーコン混合液(B)、の値が1となるようにシグナルを規格化した。パネルCは生のアクセプター蛍光強度(アクセプター励起下)を示す。
【図26】センサーのバリエーションを示す。
【図27】図26のFに示されたセンサー設計の実験的証明を示す。(A)センサー機能の原理。(B)DNA結合タンパク質の濃度を増加させた場合の、ドナーとアクセプターの標識センサー成分の混合物に対する滴定の際の、感作アクセプターの蛍光の増加。
【図28】図26のGに示されたセンサー設計の機能の実験的証明を示す。(A)センサー機能の原理。(B)2つのドナーおよびアクセプター標識センサー成分の混合物(−で示されるスペクトル)にセンサー要素に相補的な2つの異なる配列エレメントを含む一本鎖DNAを加えた場合の感作アクセプター蛍光の増加(+で表される発光スペクトル)。
【図29】目標大分子を認識する単一の要素に基づいたアッセイと比べた場合の、我々のセンサー設計の有する増加した特異的の実験的証明を示す。
【図30】図26に示されたセンサー用アプタマーを作る方法を示す。
【図31】G15Dアプタマーの結合部位とは異なるエピトープにおいてトロンビンに結合するアプタマーの選択の概要を示す。
【図32】図31パネルCのクローン20−26中の配列に対応する配列を含む、テキサスレッド標識THR27およびフルオレセイン標識THR35あるいはTHR36を含む機能的トロンビンセンサーの証明を示す。
【図33】2つの異なるエピトープにおいてトロンビンと結合する2つのアプタマーの同時選択の概要を示す。
【図34】CRPタンパク質と、該タンパク質のDNA結合部位でない部位で結合するアプタマーの選択の概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一つの実施形態は、ポリペプチドあるいは生体大分子複合体の第1のエピトープと第2のエピトープにそれぞれ結合する第1のアプタマーと第2のアプタマーを製造することを含む方法である。アプタマーは、指数的濃縮によるリガンドの体系的進化(a.k.a.SELEX;Klug、S.;Famulok、M.、All you wanted to know about SELEX.Mol.Biol.Reports 1994、20、97-107、参照により本明細書に取り込まれる)などのインビトロ選択を使ってアプタマーを作ることができる。あるいは、一つ以上の既存のアプタマーあるいは天然の同族核酸を、末端に標識と短い一本鎖ポリヌクレオチド配列を含むように変化して、ポリペプチド、アナライト、あるいは大分子複合体を検出するのに用いることができる。
【0019】
本発明の別の実施形態では本願は、ポリペプチドあるいは大分子複合体の第1のエピトープを認識し第1のシグナリングオリゴを含む第1のアプタマー構築物と、ポリペプチドあるいは大分子複合体の第1のエピトープを認識し第1のシグナリングオリゴを含む第2のアプタマー構築物とを含む二価アプタマーに関係し、ここで第1のアプタマー構築物と第2のアプタマー構築物は柔軟なリンカーによって互いに結合されている。好ましい実施形態では、第1のアプタマー構築物は第1の標識を含み、第2のアプタマー構築物は検出のための第2の標識を含む。
【0020】
この二価アプタマー構築物は、分子と大分子複合体の検出にとどまらず非常に多くの応用範囲で有用であると想定される。この二価アプタマーは抗体と同様にして用いることができる。例えば、分子と複合体の検出、分子と複合体の精製、エピトープと抗原のブロッキング、生物内の免疫反応(先天性および特異的の両者)の促進、疾病の治療および対象への受動免疫の付与である。好ましい対象はヒト、家畜、あるいはペットである。
【0021】
二価アプタマーは細胞あるいは組織中の分子の相互作用の阻害、あるいは細胞や組織中分子の相互作用を促進することで患者に所望の治療結果をもたらす治療組成物として用いることができることがさらに想定される。好ましい対象はヒト、家畜、あるいはペットである。
【0022】
アプタマー構築物あるいは二価アプタマー構築物は、医学あるいは獣医学の診断、あるいは安全で有效な有力な薬物製品を同定するのを助ける薬学的スクリーニングにも使用できることが想定される。
【0023】
別途定義されない限り、本明細書中の技術的および科学的用語は全て、本発明の属する分野の当業者が共通して理解するのと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるのと同様あるいは等価な任意の方法あるいは材料が本発明の実施あるいは試験において用いられうるが、好ましい方法と材料を記載する。本発明のために、以下の用語を下記のように定義する。
【0024】
「アプタマー」の語は生化学的活性、分子認識または結合属性に関して有用な生物学的活性を有する任意のポリヌクレオチド、一般にRNAまたはDNAを指している。通常、アプタマーはポリペプチドの特定のエピトープ(領域)においてポリペプチドに結合する、あるいは酵素活性を有するなどの分子活性を有する。任意のポリペプチドに結合する際に特異的であるアプタマーがインビトロ進化で合成および/または同定できることが一般に受け入れられている。
【0025】
「天然の同族結合エレメント配列」の語は核酸結合因子の結合部位として働くヌクレオチドの配列を指している。好ましくは天然の同族結合エレメント配列は天然のヌクレオチド結合因子によって認識される天然の配列である。
【0026】
「分子認識構築物」の語は「エピトープ結合剤」を含み、また「分子ビーコン」として働くことができる構築物を指す。好ましくは、分子認識構築物は「シグナリングオリゴ」と「標識」をも含む。第一の分子認識構築物と第二の分子認識構築物は「リンカー」で連結されて「二価分子認識構築物」を形成してもよい。「分子ビーコン」は検出方法として測定可能な読み出しシステムを用いる、アナライト、ポリペプチドその他の生体分子、生体分子を含む大分子複合体、あるいは生物学的共調節因子(biological coregulator)を検出し定量化するための任意の化学を基礎としたシステムを指す。分子認識構築物あるいは二価分子認識構築物は、よりよい特異性および感度を有する特定のタイプの分子ビーコンである。
【0027】
「アプタマー構築物」の語は、アプタマーあるいは天然の同族結合エレメント配列を含み、「分子ビーコン」として働くことができる構築物を指す。好ましくは、アプタマー構築物は「シグナリングオリゴ」と「標識」も含む。第1のアプタマー構築物と第2のアプタマー構築物は「リンカー」で連結され、「二価アプタマー構築物」を形成してもよい。アプタマー構築物は、分子認識構築物の部分集合である。アプタマー構築物あるいは二価アプタマー構築物もよりよい特異性および感度を有する特定の形式の分子ビーコンである。
「抗体」の語は一般に、抗原のエピトープを認識し、結合できるポリペプチドあるいはタンパク質を意味する。ここで抗体は当業界で理解されるような完全な抗体(つまり2つの重鎖と2つの軽鎖からなる)でもよいし、あるいは抗体は、Fab断片や超可変領域を含むペプチドのような完全抗体の断片でもよい。
【0028】
「エピトープ結合剤」の語は、抗原、ポリペプチド、タンパク質、あるいは大分子複合体の特定のエピトープに結合できる任意の物質を指す。エピトープ結合剤の非限定的な例はリガンドとリガンドの断片、レセプターとレセプターの断片、抗体と抗体の断片、アプタマーその他のポリヌクレオチド、補酵素その他の共調節因子、およびアロステリック分子とイオンを含む。好ましいエピトープ結合剤は、アプタマー、天然同族結合エレメント配列、抗体およびその断片が含まれる。
【0029】
「エピトープ」の語は一般に、抗原、ハプテン、分子、ポリマー、プリオン、ビリオン、細胞、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、あるいは大分子複合体の特定の領域を指す。エピトープはより大きなポリペプチドに由来する小ペプチドからなっていてもよい。エピトープは、ポリペプチド、タンパク質、あるいはいくつかの不連続なペプチド領域あるいはアミノ酸基を含む大分子複合体の二次元あるいは三次元表面、あるいは表面特徴でありうる。
【0030】
「シグナリングオリゴ」の語は、短い(一般に2から15ヌクレオチド長、好ましくは5から7ヌクレオチド長)一本鎖ポリヌクレオチドを指す。好ましくは第1のシグナリングオリゴは第2のシグナリングオリゴに相補的である。好ましくは、第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴは、第3の薬剤の媒介によって第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴが接近しない限りは水素結合による安定な結合を形成できない。
【0031】
本明細書において「リンカー」あるいは「リンカー分子」の語はアプタマーあるいはアプタマー構築物に結合された任意のポリマーを指す。結合は共有結合であるかあるいは非共有結合である。リンカーはアミノ酸あるいはヌクレオチドのポリマーでもよいことが想定される。好ましいリンカー分子は柔軟で、核酸結合因子が核酸成分セットに結合することを妨害しない。好ましいリンカーは、12個の(スペーサー18−フォスフォルアミデート)(Glen Research、Sterling、VA)部分からなる。別の好ましいリンカーは、ポリ−dTである。
【0032】
「インビトロ進化」の語は一般に、生体分子、特にペプチドあるいはポリペプチド、に結合するアプタマーを選択する任意の方法を意味する。インビトロ進化はまた「インビトロ選択」、“SELEX”あるいは“指数的濃縮によるリガンドの体系的進化”としても知られている。簡単に言えば、インビトロ進化は一群のランダムポリペプチドを、生体分子と結合する、あるいは選択可能な特定の活性を有する特定のポリペプチドについてスクリーニングすることを伴う。一般的に、前記特定のポリペプチド(つまりアプタマー)はランダムポリヌクレオチドのプールのごくわずかな割合でしかなく、そのためアプタマー増幅過程(通常はポリメラーゼ連鎖反応)が潜在的に有用なアプタマーの割合を増やすために用いられる。選択と増幅を連続して繰り返すことにより、特定の有用なアプタマーの量が指数的に増加する。インビトロ進化は、Famulok、M.;Szostak、J.W.、In Vitro Selection of Specific Ligand Binding Nucleic Acids、Angew.Chem.1992、104、1001.(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1992、31、979-988.);Famulok、M.;Szostak、J.W.、Selection of Functional RNA and DNA Molecules from Randomized Sequences、Nucleic Acids and Molecular Biology、Vol 7、F.Eckstein、D.M.J.Lilley、Eds.、14 Springer Verlag、Berlin、1993、pp.271;Klug、S.;Famulok、M.、All you wanted to know about SELEX;Mol.Biol.Reports 1994、20、97-107;and Burgstaller、P.;Famulok、M.、Synthetic ribozymes and the first deoxyribozyme;Angew.Chem.1995、107、1303-1306(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1995、34、1189-1192)、(これらは参照により本明細書に取り込まれる)に記載されている。
【0033】
本発明を実施する際に、インビトロ進化は任意の与えられたポリペプチドあるいは大分子複合体上の異なるエピトープと結合する複数のアプタマーを作製するために用いられる。アプタマーは興味のあるエピトープを含む「基質」に対して選択される。ここで「基質」は、アプタマーが結合できるエピトープを含みアプタマーの選択の上で有用な任意の分子的実体である。
【0034】
本明細書中で「標識」の語は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、アプタマー、核酸成分、その他の基質材料に結合でき、検出法によって検出できる物質を指す。本発明に適用可能な標識の非限定的な例は、これに限定されないが、発光分子、化学発光分子、蛍光色素、蛍光消光剤、有色分子、放射性同位元素、シンチラント、質量標識(質量変化から検出)、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、Aタンパク、Gタンパク、抗体あるいは抗体断片、Grb2、ポリヒスチジン、Ni2+、フラッグタグ、mycタグ、重金属、酵素、アルカリンホスファターゼ、ペロキシダーゼ、ルシフェラーゼ、電子ドナー/アクセプター、アクリジニウム・エステル類、および発色基質を含む。当業者は上には挙げられていないが、本発明の操作で用いることの出来る他の有用な標識を容易に認識するであろう。
【0035】
本明細書中で「検出方法」は、分子相互作用を検出する、当業界で知られている任意の方法を意味する。本明細書中で「検出可能なシグナル」は本質的には「検出方法」と同様である。検出方法は、質量変化の検出(例:プラスミン共振)、蛍光変化(例:FRET、FCCS、蛍光の消滅あるいは増強、蛍光偏光)、酵素活性(例:基質の枯渇あるいは生成物の形成(例えば検出可能な色素(アルカリ性ポスファターゼのNBT−BCIPシステムは一例である))、化学発光あるいはシンチレーションの変化(例:シンチレーション近接アッセイ、発光共鳴エネルギー移動、生物発光共鳴エネルギー移動など)を含む。
【0036】
本明細書中で「アナライト」は一般に、リガンド、化学構造部分、化合物、イオン、塩類、金属、酵素、細胞内シグナル伝達経路のセカンド・メッセンジャー、薬物、ナノ粒子、環境的汚染物質、毒素、脂肪酸、ステロイド、ホルモン、炭水化物、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質その他アミノ酸ポリマー、微生物、ウイルス、あるいはアプタマーへの結合のためにエピトープを形成するかエピトープの利用可能性を変化させるようにポリペプチド、タンパク質、あるいは大分子複合体に結合できる任意の他の薬剤、を指す。
【0037】
本明細書中で「大分子複合体」の語は、大分子を含む任意の組成物を指す。好ましくは、これらは互いに会合した一つ以上の大分子(ポリペプチド、脂質、炭水化物、核酸、天然あるいは人工ポリマーなど)の複合体である。会合は大分子複合体の成分間での共有的あるいは非共有的な相互作用を伴っていても良い。大分子複合体は比較的単純(ポリペプチドに結合したリガンドなど)であってもよいし、比較的複雑(脂質ラフト)でもよく、非常に複雑(細胞表面、ウイルス、細菌、胞子など)でもよい。大分子複合体は本質的に生物性でも非生物性でもよい。
【0038】
一つの実施形態では、本発明は、サンプルを第1の分子認識構築物と第2の分子認識構築物とに接触させるステップと、検出方法によって第1と第2の分子認識構築物の間の安定な相互作用を検出するステップとを含む、サンプル中のポリペプチドを検出する方法に関する。いくつかの有用な分子認識構築物の組み合わせ(センサー)のバリエーションが本発明者によって想定され、図26中に図示されている。パネルAは、タンパク質の2つの異なるエピトープを認識する2つのアプタマーを含むセンサーのバリエーションを示している。パネルBは、DNA結合タンパクへの結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドとタンパクの異なるエピトープを認識するアプタマーを含むセンサーのバリエーションを示す。パネルCは、タンパク質の異なるエピトープを認識する抗体およびアプタマーを含むセンサーのバリエーションを示している。パネルDは、DNA結合タンパクへの結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドとタンパク質の異なるエピトープを認識する抗体とを含むセンサーのバリエーションを示している。パネルEは、タンパク質の異なる2つのエピトープを認識する2つの抗体を含むセンサーのバリエーションを示している。パネルFは、タンパク質の異なる2つのエピトープを認識する2つの二本鎖ポリヌクレオチド断片を含むセンサーのバリエーションを示している。パネルGは、別の一本鎖ポリヌクレオチドの2つの異なる配列エレメントを認識する2つの一本鎖ポリヌクレオチドエレメントを含むセンサーのバリエーションを示している。パネルHは、第1のシグナリングオリゴヌクレオチドで標識された二本鎖ポリヌクレオチド断片(タンパク質の結合部位を含む)と第2のシグナリングオリゴヌクレオチドで標識されたタンパク質を用いる、タンパク質−ポリヌクレオチド複合体の形成の直接検出を可能にするセンサーのバリエーションを示している。パネルIは、それぞれシグナリングオリゴヌクレオチドで標識された2つの対応するタンパク質を用いる、タンパク質−タンパク質複合体の形成の直接検出を可能にするセンサーのバリエーションを示している。
【0039】
好ましい実施形態では、第1と第2の分子認識構築物はアプタマー構築物であり、第1アプタマー構築物はポリペプチド上のエピトープ(つまり第1のエピトープ)を認識するアプタマーあるいは天然の核酸配列を含み、第2のアプタマー構築物は同じポリペプチド上の別のエピトープ(つまり第2のエピトープ)を認識するアプタマーあるいは天然の核酸配列を含む(図26、AとBの部分)。好ましくは第1と第2のアプタマー構築物はそれぞれ短い一本鎖オリゴヌクレオチド配列(シグナリングオリゴ)を含んでおり、第1のアプタマー構築物の短い一本鎖オリゴヌクレオチド(つまり第一シグナリングオリゴ)は第2のアプタマー構築物の短い一本鎖オリゴヌクレオチド(つまり第二シグナリングオリゴ)に相補的である。理論に拘束されることを意図するものではないが、2つのアプタマー構築物を一緒にすることができるポリペプチドが存在しない時に互いに安定な相互作用を形成出来ないように、2つのシグナリングオリゴの長さは短くすべきである。好ましくは、シグナリングオリゴは、少なくとも5ヌクレオチド長であり、7ヌクレオチド長を超えない。
【0040】
好ましくは、第1のアプタマー構築物は第1の標識を含み、第2のアプタマー構築物は第2の標識を含み、第1と第2のエピトープを含むポリペプチドの存在下で、第1と第2の標識は相互作用してサンプル中のポリペプチドの存在や量のシグナルとなる検出可能なシグナルを生み出す。好ましくは第1の標識は蛍光ドナーで、第2の標識は蛍光受容体で、検出方法は蛍光シグナル出力の変化を検出である。
【0041】
所望により、第1のアプタマー構築物を表面に固定してもよく、第2のアプタマー構築物を表面に固定してもよく、あるいは両者を表面に固定してもよい〔表面はマイクロタイタープレート、試験管、ビーズ、樹脂、その他のポリマーなどでもよい〕。好ましい実施形態では、第1のアプタマー構築物と第2のアプタマー構築物を柔軟なリンカーで連結して二価アプタマーを形成してもよい。好ましい柔軟なリンカーには、スペーサー18ポリマーおよびデオキシチミジン(dT)ポリマーが含まれる。
【0042】
別の実施形態では、第1と第2のアプタマーはサンプル中の大分子複合体の検出に使用されうる。この実施形態では、前記のように、第1のエピトープは1つのポリペプチド上にあり、第2のエピトープは別のポリペプチド上にあり、大分子複合体が形成される時、前記2つのポリペプチドは接近し、その結果第1のアプタマー構築物と第2のアプタマー構築物が安定した相互作用を形成して検出可能なシグナルを生み出す。また、前記のように、第1と第2のアプタマー構築物は表面に固定されてもよく、互いに柔軟なリンカーで固定されていてもよい。
【0043】
別の実施形態では、第1と第2のアプタマーはサンプル中のアナライトの検出に使用されうる。この実施形態では、分析物がポリペプチドあるいは大分子複合体に結合する時、第1あるいは第2のエピトープが作られあるいは利用可能になり、第1あるいは第2アプタマー構築物と結合する。このため、アナライトが、その同族ポリペプチドあるいは大分子複合体結合パートナーを含むサンプル中にある時、第1のアプタマー構築物と第2のアプタマー構築物は安定な接近状態となり、前記のように検出可能なシグナルを生み出す。また、前記のように第1と第2のアプタマーは表面上に固定されていてもよく、柔軟なリンカーによって互いに固定されていてもよい。
【0044】
本発明の別の実施形態では、本発明は第1と第2のアプタマー構築物を含む1セットのアプタマー構築物を作製する方法に関し、この方法は(a)(第1のエピトープを含む)第1の基質に対して(第1のエピトープに結合できる)第1のアプタマーを選択し、(第2のエピトープを含む)第2の基質に対して(第2のエピトープに結合できる)第2のアプタマーを選択するステップと、(b)第1の標識を第1のアプタマーに付し、第2の標識を第2のアプタマーに付すステップと、(c)第1のシグナリングオリゴを第1のアプタマーに付し、第1のシグナリングオリゴに相補的な第2のシグナリングオリゴを第2のアプタマーに付すステップと、(d)その結果(i)第1のアプタマー構築物は第1のアプタマー、第1の標識、および第1のシグナリングオリゴを含み、および(ii)第2のアプタマー構築物は第2のアプタマー、第2の標識、および第2のシグナリングオリゴを含むステップ、を含む。好ましくは、アプタマーはインビトロ進化法(上掲)を用いて選択される。しかし本願の実施においては天然のDNA結合エレメントも使用できる。
【0045】
好ましい実施形態では、第1の基質はポリペプチドで、第2の基質は第1のアプタマーに結合した前記ポリペプチドである。ここで、第2のアプタマーが第1のエピトープに結合できないように第1のアプタマーは第1のエピトープをマスクする。あるいは、(i)第1のアプタマーおよび第1のシグナリングオリゴを含む、あるいは(ii)第1のアプタマー、シグナリングオリゴおよび標識を含む、第1のアプタマー構築物で第1のアプタマーを置き換えてもよく、それによりシグナル検出のために最適な第2のアプタマーあるいはアプタマー構築物を選択することを可能にする第2の基質を生み出す。さらなるステップとして、前述の通り、それから第1と第2のアプタマー構築物を柔軟なリンカーで互いに連結してもよい。
【0046】
別の実施形態では、第1の基質は本質的に第1のエピトープからなるペプチドであり、第2の基質は本質的に第2のエピトープからなるペプチドである。よって、別の実施形態では、アプタマーの製造あるいは選択において、エピトープをマスクする必要はない。同様に、前述の通り、この方法を用いて製作される第1と第2のアプタマー構築物は柔軟なリンカーで互いに連結されてもよい。
【0047】
別の実施形態では、本発明は(第1のエピトープに結合できる)第1のアプタマー、第1の標識、第1のシグナリングオリゴ、(第2のエピトープに結合できる)第2のアプタマー、第2の標識、第2のシグナリングオリゴ、およびリンカーを含む二価のアプタマー構築物に関するものである。第1と第2のエピトープは同じポリペプチド上にあってもよく、大分子複合体の異なるポリペプチド上にあってもよく、アナライトに結合したポリペプチド上にあってもよい。柔軟なリンカーは好ましくはアプタマーの働きを妨害しないポリマーである。好ましい柔軟なリンカーには、デオキシチミジンポリマー(ポリ−dT)およびスペーサー18ポリマーが含まれる。しかし、本願を実施する際に当業者は任意の数のリンカーを置換できるであろう。
【0048】
あるいは、二価アプタマー構築物は検出用の標識を有していなくてもよい。これら別の二価アプタマー構築物は抗体と同じようにして分子を検出する、分子を結合する、(カラムあるいはプルダウン形式の操作のように)分子を精製する、分子の相互作用を阻害する、分子の相互作用を促進あるいは安定させる、あるいは生物に受動免疫を付与することに用いうることが想定される。二価アプタマー構築物が治療の目的にも使用できることがさらに想定される。本発明は、本発明により当業者が任意の数の分子から2つ以上の異なるエピトープを認識するアプタマーの任意の組み合わせを、二価、三価、あるいはその他の多価アプタマー構築物に構築し、それら異なる複数の分子を引っ張り合わせて効果をテストしたり、所望の治療結果を生み出すことができるという点で本当に強力である。例えば、リガンドのレセプターに対する天然の結合速度論が好ましくない場合(例えば糖尿病患者中でのインスリンのインスリンレセプターへの結合)、リガンドのレセプターへの結合を促進するため二価アプタマー構築物を作ることができる。
【0049】
別の実施形態では、本発明は第1の標識が付与された第1のエピトープ結合剤、および第2の標識が付与された第2のエピトープ結合剤を含むキットに関するものである。ここで(a)第1のエピトープ結合剤と第2のエピトープの結合剤標識がそれぞれポリペプチドの第1のエピトープとポリペプチドの第2のエピトープに結合する時、(b)第1の標識と第2の標識が相互作用して、検出可能なシグナルを生み出す。好ましい実施形態では、エピトープ結合剤はアプタマー、標識、およびシグナリングオリゴを含むアプタマー構築物である。しかし、エピトープ結合剤は抗体あるいは抗体断片でもよい。このキットはポリペプチド、アナライト、あるいは大分子複合体の検出に有用であり、そのため研究あるいは医学的/獣医学的診断の用途で使用可能であろう。
【0050】
さらに別の実施形態では本発明は、(a)患者からサンプルを取得するステップ、(b)サンプルを第1のエピトープ結合剤および第2のエピトープ結合剤と接触させるステップ、および(c)検出方法を用いてサンプル中のポリペプチド、アナライトあるいは大分子複合体の存在を検出するステップを含む疾病を診断する方法に関する。ここでサンプル中のポリペプチド、アナライトあるいは大分子複合体の存在は患者に疾病が存在するかどうかを示す。好ましい実施形態では、(a)第1のエピトープ結合剤は、第1の標識と第1のシグナリングオリゴが付着した第1のアプタマーであり、(b)第2のエピトープ結合剤は、第2の標識と第1のシグナリングオリゴに相補的な第2シグナリングオリゴが付着した第2のアプタマーであり、(c)検出方法は蛍光検出方法で、(d)第1のアプタマーがポリペプチドに結合し第2のアプタマーがポリペプチドに結合すると、(e)第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴが互いに結合し、(f)第1の標識が第2の標識に接近して蛍光の変化が起こる。好ましいサンプルには血液、尿、腹水、細胞と組織サンプル/生検が含まれる。好ましい患者にはヒト、家畜、およびペットが含まれる。
【0051】
さらに別の実施形態では、本発明はサンプルから有用な試薬をスクリーニングする方法に関し、該方法は(a)サンプルを第1のエピトープ結合剤と第2のエピトープ結合剤に接触させるステップと、(b)検出方法を用いて該サンプル中の有用な試薬の存在を検出するステップとを含む。好ましい試薬には、第1のエピトープと第2のエピトープを含むポリペプチド、ポリペプチドに結合するアナライト(この場合は、前記方法はさらにポリペプチドをスクリーニング混合液に加えるステップを含む)、および潜在的な治療組成物が含まれる。好ましい実施形態では、(a)第1のエピトープ結合剤は第1の標識と第1のシグナリングオリゴが付与された第1のアプタマーであり、(b)第2のエピトープ結合剤は、第2の標識と第1のシグナリングオリゴに相補的な第2のシグナリングオリゴが付与された第2アプタマーであり、(c)検出方法は蛍光検出法であり、(d)第1のアプタマーがポリペプチドに結合し第2のアプタマーがポリペプチドに結合する時、(e)第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴが互いに結合し、(f)第1の標識が第2の標識に接近して、蛍光の変化が生じる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態が以下の実施例で記載される。請求の範囲の範囲内にある他の実施形態は、本明細書の考察および本明細書に開示された発明の実施から当業者には明らかになるであろう。本明細書および実施例は単に例示であると考えられることが意図されており、本発明の範囲と精神は実施例の後にある請求の範囲に示されている。
【実施例1】
【0053】
特定のアプタマー構築物を製造する一般的方法
序説
開示されるのはサンプル中のタンパク質、タンパク質複合体、あるいはタンパク質と結合するアナライトを速やかにかつ高感度で検出する方法である。この方法の基礎はタンパク質によって誘発される、タンパク質の2つの異なるエピトープを認識する2つの核酸構築物の結合に基づいている(通称“アプタマー構築物”)(図1A)。この2つのアプタマー構築物は、柔軟なリンカーによってアプタマーに結合された短く相補的なシグナリングオリゴを含んでいる。2つのアプタマーが同時に目標タンパク質に結合した時、前記相補的なヌクレオチド(通称「シグナリングオリゴ」)の相対的位置は近接し、シグナリングオリゴ間の結合が促進されて安定した二本鎖を形成する。蛍光プローブをシグナリングオリゴの末端に付与することで、タンパク質が誘発する2つのアプタマー構築物の間の結合を検出する手段が与えられる(図1A)。天然の核酸結合活性を有するタンパク質の場合、アプタマーの一方は天然のタンパク質結合部位を含む核酸配列で置き換えてもよい(図1B)。
【0054】
所与のタンパク質の2つの異なるエピトープについてのアプタマーの開発あるいは選択は、図1に示されたアプタマー構築物の開発の必須のステップである。アプタマーに関する利用可能な文献を検討すると、この目標を達成する少なくとも2つの可能な手法が明らかとなる。第1の手法は、タンパク質と結合した核酸アプタマーとタンパク質と結合していない核酸アプタマーの分離に異なる方法を用いる、核酸アプタマーのインビトロ選択(通称インビトロ進化)を行うことである。その原理は、これら異なる区分法では、タンパク質の異なる領域が選択的に示され、その結果タンパク質表面の異なる領域に対するアプタマーが得られる。トロンビンについて選択されたアプタマー(後述)は、そのような手法の一例である。
【0055】
アガロースビーズ上に固定されたトロンビンを基質として用いた、第1のアプタマーのインビトロ選択の結果、ヘパリンエクソサイト(exocite)上でトロンビンに結合するアプタマーが得られた。区分法としてのニトロセルロースに結合されたトロンビン−第1のアプタマー複合体を基質として用いたさらなるインビトロ選択の結果、フィブリノゲンエクソサイトでトロンビンに結合する第2のアプタマーが得られた。
【0056】
有用ではあるものの、この区分手法は理知的な設計というよりは、異なるエピトープの偶然による選択に依存するものである。第2の手法は目標タンパク質分子の選択された領域に対応するペプチドを基質として用いて、アプタマーを育てあるいは選択するものである。このような戦略がアプタマー開発のために基質として用いられるペプチドが由来する完全なタンパク質を認識できるアプタマーを開発するのに使用可能であることを示す証拠が当業界には存在する。さらに、この手法はすでに完全なタンパク質を認識する抗体を作製するのに広く用いられている。
【0057】
第1のアプタマーの結合部位とは異なるタンパク質のエピトープについてのアプタマーセットを作製する前記の一般的手法は、天然のDNA結合活性を有するタンパク質にも用いることができる。つまり、天然DNA結合部位とは異なる部位で基質に結合するコアプタマー(co-aptamers)を作製できる。この方法で作製されたコアプタマーは、図1に示された分子検出法で働くのに最適化されている。
【0058】
結果と考察
図2は上記方法の全体的設計を表す。コアプタマーの選択は、第1のアプタマーにあらかじめ結合された基質タンパク質を用いて行われる(図2A)。あるいは、コアプタマーの選択は、その天然の核酸結合部位にあらかじめ結合したタンパク質を用いて行われる(図2B)。短い(5−7ヌクレオチド長)一本鎖オリゴヌクレオチド、つまりシグナリングオリゴ(図2)、を柔軟なリンカーによって第1のアプタマーに連結させる。コアプタマーの選択に用いられるランダムDNA(あるいはRNA)の両端に、PCR増幅のため均一な配列を配置する。これらの均一な隣接配列のうちの1つは末端に第1のアプタマーのシグナリングオリゴに相補的な配列、つまりもう一つのシグナリングオリゴ(図2)を含む。このため、このようなランダムDNA(あるいはRNA)構築物を利用したコアプタマーの作製あるいは選択は、第1のアプタマーのエピトープとは異なる部位で基質タンパク質に結合できるアプタマーへとバイアスがかかり、第1のアプタマーのシグナリングオリゴとの間で二重鎖を形成できる。選択におけるバイアスの程度は、第1のアプタマーのシグナリングオリゴおよび第2のアプタマーの相補的シグナリングオリゴの長さを変えることで調節できる。
【実施例2】
【0059】
トロンビンを検出する方法とアプタマー
序説
本発明の発明者は、以下の文献に記載されているようにDNA結合タンパク質の検出方法を開発した:Heyduk、T.and Heyduk、E.Molecular beacons for detecting DNA binding proteins.Nature Biotechnology、20、171-176、2002、Heyduk、E.、Knoll、E.、and Heyduk、T.Molecular beacons for detecting DNA binding proteins: mechanism of action、Analyt.Biochem.316、1-10、2003、および同時係属した特許出願番号09/928、385(米国特許番号6、544、746)、10/062、064、PCT/US02/24822およびPCT/US03/02157(これらは参照により本明細書に取り込まれる)。
【0060】
この方法の基礎は、DNAのタンパク質結合部位を2つの「半部位」に分けることにある。生じた「半部位」は、2つの「半部位」同士が結合して完全に機能的な同族タンパク質結合部位を含む二本鎖を再構成する蛍光を与えるように設計された長さの短い相補的な一本鎖領域を含んでいる。この傾向は、タンパク質の非存在下ではDNA半部位のほんの一部しか結合しないように、低く設計されている。タンパク質が反応混合液の中に存在する時、タンパク質は完全で機能的な結合部位を含む二本鎖にのみ結合する。この選択的な結合は、DNA半部位同士の結合を促し、またこのタンパク質依存的な相互結合は、目標タンパク質の存在を示す分光学的その他のシグナルを生み出すのに用いることができる。
【0061】
科学文献中では、「分子ビーコン」の語は、選択的な認識と報告シグナルの発生が同時に起こることを強調するために、このアッセイを記述するために用いられる。いくつかのタンパク質について、DNA結合タンパク質の分子ビーコンが開発されており、その一般的適用可能性を示している(Heyduk and Heyduk、2002)。その物理的な作用原理は確立されており(Heyduk、Knoll、Heyduk、2003)、DNA結合タンパク質に結合するリガンドの存在を検出するアッセイのプラットホームとしても用いられている(Heyduk、E.;Fei、Y.;Heyduk、T.Combinatorial Chemistry and High-throughput Screening 2003、6、183-194)。すでに非常に有用ではあるものの、このアッセイは天然のDNA結合活性を示すタンパク質に限定されている。
【0062】
インビトロ選択法によって、天然のDNA結合活性を持たないタンパク質に特異的に結合できる核酸(DNAあるいはRNA)アプタマーを作製できることは十分に確立されている(Ellington、A.D.、and Szostak、J.W.In vitro selection of RNA molecules that bind specific ligands.Nature 346、818-822、1990;Tuerk、C.、and Gold、L.Systematic evolution of ligands by exponential enrichment: RNA ligands to bacteriophage T4 DNA polymerase.Science 249、505-510、1990;Gold、L.、Polisky、B.、Uhlenbeck、O.& Yarus、M.Diversity of Oligonucleotide Function.Ann.Rev.Biochem.64、763-797、1995;およびWilson、D.S.& Szostak、J.W.In vitro selection of functional nucleic acids.Ann.Rev.Biochem.68、611-647、1999;これらの文献は全て参照により本明細書に取り込まれる)。インビトロ選択は、結合、非結合配列の洗い出し、目標に結合した配列のPCR増幅のサイクルによって、ランダムDNA配列のプールから特定の基質目標に結合する核酸配列を選択することを伴う。種々のタンパク質その他の目標分子に特異的に結合するアプタマーを成功裏に選択できた数多くの例(Ellington and Szostak、1990;Tuerk and Gold、1990;Gold et alia、1995;Wilson and Szostak、1999)は任意のおよび全てのタンパク質に対するアプタマーを作製することが可能であることを強く示唆している。
【0063】
本実施例に記載されるのは、天然のDNA結合活性を有するタンパク質に限定されない、タンパク質検出用の核酸を基礎とする分子ビーコンの新規な概念である。トロンビンの例(上掲)は本発明の実験的妥当性を示す。
【0064】
結果と考察
図3Bは任意の目標タンパク質を認識する分子ビーコンの総体的概念を示す。この設計は、先述のおよび上掲のDNA結合タンパク質用分子ビーコン(図3A)との一般的類似性を有する。タンパク質への天然の結合部位を含むDNA二本鎖を2つの「半部位」に分割する代わりに、半部位の機能上の等価物としてタンパク質の2つの異なるエピトープを認識する2つのアプタマーを用いる。蛍光団(第1の標識)を含んだ短いオリゴヌクレオチド(シグナリングオリゴ)と消光剤(第2の標識)を含んだ短い前記オリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチド(シグナリングオリゴ)は、柔軟なリンカーで2つのアプタマーに連結される(図3B)。目標タンパク質が存在しない時、相補的なシグナルオリゴが結合を促進するには短すぎるため、2つのアプタマー構築物は結合しない。目標タンパク質が存在する時、2つのアプタマーへのタンパク質の結合は2つのアプタマー構築物の間の結合を促し、第1と第2の標識が接近するために蛍光シグナルの変化が起こる。
【0065】
図3Bの概念の実験的検証を与えるため、トロンビンをモデル的非DNA結合タンパク質システムとして選択する。先に2つの実験室のが、このタンパク質の2つの異なるエピトープを選択的に認識するDNAアプタマーを同定している(Bock、L.C.、Griffin、L.C.、Latham、J.A.、Vermass、E.H.、and Toole、J.J.Selection of single-stranded DNA molecules that bind and inhibit humanthrombin、Nature 355、564-566、 1992;およびTasset、D.M.、Kubik、M.F.、and Steiner、W.Oligonucleotide inhibitors of humanthrombinthat bind distinct epitopes、J.Mol.Biol.272、688-98、1997、参照により本明細書に取り込まれる)。そのうちの一つのアプタマー(G15D;図4中のTHR4)はヘパリンエクソサイト(heparin exosite)で結合することが示され、もう一つのアプタマー(60−18[29];図4中のTHR3)はフィブリノゲンエクソサイトで結合することが示された。トロンビンを認識するのに有用なアプタマー構築物セットを開発するための最初のステップとして、前記アプタマーが柔軟なリンカーにより共有結合した種々のアプタマー構築物を作製した(図4)。これら実験の主要な目的は、柔軟なリンカーで2つのアプタマー構築物を連結すると、本当に個々のアプタマー構築物のセットに比べてより高い親和性でトロンビンに結合することが出来る二価アプタマー構築物を作製できるかどうかを決定することである。これら実験の第2の目的は、リンカーの適切な長さの確立し、2つのアプタマーのリンカーに対する5’端と3’端の適切な向きを確立することである。
【0066】
個々のアプタマーをフルオレセインで標識し(図4中のTHR1とTHR2)、トロンビン用の様々な構築物の親和性の決定を容易にした。トロンビンとフルオレセイン標識60−18[29]アプタマー(THR1)との間の複合体の形成は、蛍光偏光により簡便に追跡でき(図5A)、フルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)の結合は蛍光強度の変化により追跡することが出来た(図5B)。どちらのアプタマーもナノモル濃度範囲でトロンビンに結合した(図5Aと図5B)。THR2の場合の結合の定量分析(図5C)の結果、Kd値として6.3nMの値が得られた。この値は以前に示唆された値(Bock 1992、Tasset 1997)よりも幾分高い親和性であるが、それは我々が真平衡結合アッセイを用いたのに対し、以前の報告では非平衡法が用いられたことで説明ができる。THR2の結合が十倍過剰量の未標識60−18[29]アプタマー(THR3)の存在下で行われた場合(図5D)、僅かな、有意義ではない親和性の低下が見られたのみであった。このことからG15Dアプタマーと60−18[29]アプタマーが実際にトロンビンの2つの異なるエピトープに独立に結合することが示された。
【0067】
つぎのステップにおいて、図4に示された各種のアプタマー構築物がトロンビンへの結合についてTHR2と競合する能力が評価された。図6はこれらの実験を行うやり方を説明したものである。トロンビンがある時とない時のTHR2の蛍光スペクトルを記録した(図6A)。トロンビンはTHR2の蛍光を約50%増強した。続いて、未標識競合アプタマー構築物が加えられた(図6B−D)。競合物の存在下でトロンビンがTHR2の蛍光に与える影響が小さければ、有効な競合物の証明となるであろう。THR3は競合物ではなく(図6B)、これは図5Cと5Dの結果と調和する。THR4(未標識のTHR2のバリエーション)は予測されたとおり競合できる(図6C)。しかし、THR7(二価アプタマー構築物の一つ)はTHR4よりもずっと優れた競合物であった(図6D)。溶液中にTHR7が存在するときは、トロンビンの存在するときでもTHR2の蛍光変化を検出できなかった。図7は、図4に示された構築物の全てを用いた競合実験のまとめである。
【0068】
すべての二価アプタマー構築物は、個々のアプタマーに比べてより緊密にトロンビンに結合することが示され(KdはpM範囲)、タンパク質上の2つの異なるエピトープを認識する2つのアプタマーを柔軟なリンカーで連結すれば高い親和性を有するトロンビンリガンドを作製できるという予想を実証した。さらに、これらのデータは、2つのアプタマーを10個のスペーサー18単位を含むより長いリンカーで連結した場合に、トロンビンに対する親和性が若干向上したことも示した。これらデータは、アプタマーのリンカーに対する向きがTHR7のようであると親和性が向上することも示した(THR6とTHR7の親和性の比較)。このため、以降の全ての実験において、THR7同様の向きのアプタマーを有する構築物が用いられた。
【0069】
図8の実験の目的は、トロンビンの2つのエピトープはどちらも、二価アプタマーが高い親和性で結合するのに重要であることを証明することである。THR2と二価アプタマー構築物の間の結合の直接競合から、THR2により認識されるエピトープ(ヘパリンエクソサイト)は二価アプタマー結合のために必要であることが示された。第2のエピトープも重要であることを証明するため、我々は過剰量の未標識THR3の非存在下および存在下でのトロンビンに対する結合について、二価アプタマー構築物(THR5)がTHR2と競合する能力を比較した。我々は、もしTHR5が高い親和性の結合のために両方のトロンビンエピトープを必要とするのであれば、TRH3の存在下ではTHR5がTHR2と競合する能力が低下するであろうと予測した。この予測は図8に示された実験でまさに観察されたものであった。THR5は単独でTHR2に対する非常に強力な競合物であった(図8Dと8Aを比較)。THR3は単独ではTHR2の競合物ではなかった(図8Aと8Cを比較)。THR5単独の場合に比べ、THR3が存在する時にはTHR5はより劣った競合物となった(図8Bと8Cを比較)。我々はそれゆえ、二価のアプタマー構築物のトロンビンへの高い親和性での結合には第1と第2のアプタマーのエピトープが関与すると結論付けた。
【0070】
二価アプタマー構築物−トロンビン複合体は未変性ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動に耐えるのに十分なほど安定している(図9A)。我々はこの属性を利用して、ゲルシフト法(EMSA)を用いてTHR7−トロンビン複合体の形成を追跡し、複合体の化学量論を決定した。我々はトロンビンによるTHR7の滴定を行った(どちらの分子も高濃度であった)。この条件の下で、結合は化学量論的であるはずである。実際には、形成された複合体を、トロンビンのTHR7に対する比に対してプロットすると、複合体の1:1の化学量論は示さなかった(図9B)。
【0071】
図10と図11に示された実験は、二価アプタマー構築物の別の設計がこれらの構築物を作製するのに用いることが出来るかどうかをテストするために行われた。我々は図10に示された二価アプタマー構築物を設計し、それが完全にDNAからなり、非DNAリンカーの使用は避けた(この場合はポリdTをリンカーとして用いた)(図10)。これによりこのような構築物の設計に更なる柔軟性が潜在的にもたらされ、アプタマー構築物を作製するコストも低減できるであろう。2つのアプタマーはDNA二本鎖により柔軟なリンカーの末端で互いに連結されている(図10)。本発明のこの側面はシグナル「ビーコン」(図3B)の設計を模倣することを意図しており、シグナル機能はアプタマーと二本鎖を連結するリンカーの末端での二本鎖DNAの形成を伴う。3種の異なる長さのポリdTリンカー(7、17、および27ヌクレオチド長)をテストして高親和性結合のための最小必要リンカー長を決定した。図11は、図10に示された構築物をトロンビンで動じて規定した結果を示す。アプタマー構築物−トロンビン複合体の生成をEMSAで追跡した。構築物はそれぞれトロンビンに高い親和性で結合した。しかし7ヌクレオチド長のポリdTリンカーを有する構築物は、17ヌクレオチド長あるいは27ヌクレオチド長のポリdTリンカーを有する構築物よりもトロンビンに対する親和性が有意に低かったことが明らかである。これは星印でマークされたレーンを調べると最もよく分かり、この特定のトロンビン濃度では、17および27ヌクレオチド長のポリdTリンカー構築物のほとんど全てがトロンビンに結合したのに対し、7ヌクレオチド長のポリdT構築物のかなりの割合(約50%)は結合してないままだった。要約すると、図10と図11に述べられた結果は、図10に示された別の二価アプタマー構築物設計も実行可能であり、またアプタマーとDNA二本鎖を連結する少なくとも17ヌクレオチド長のポリdTリンカーは、構築物をトロンビンに結合するのにより適していることを示している。
【0072】
図3から図11に提示された実験データは、トロンビンおよびそれぞれトロンビンの2つの異なる領域に結合する2つのアプタマーの場合は、図3Bに示されたシグナリングビーコンに必要な条件は全て満たされていることの証明を与えた。図3から図11に示された実験により与えられた情報に基づいて、我々はトロンビンシグナリングビーコンを設計し、テストした。図12Aと図12Bに示されたビーコンはTHR16/THR17二価アプタマー構築物の誘導体である。複数のアプタマーは17ヌクレオチド長のポリdTリンカーで、5’端をフルオレセインで標識された7ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド(シグナリングオリゴ)と3’端をダブシルで標識された7ヌクレオチド長の前記オリゴヌクレオチドに相補的なヌクレオチド(シグナリングオリゴ)にそれぞれ連結された。トロンビンをTHR8とTHR9の混合液中に加えると、タンパク質依存的な蛍光強度の消光が見られた。ダブシル標識されたパートナー(THR8)が存在しないと、トロンビンをTHR9に加えても蛍光の変化は観察されない。明らかに、これらのデータは予測されたトロンビンに誘発されるTHR8とTHR9の間の結合(図12Bに示されるとおり)が実際に観察され、機能的なトロンビンシグナリングビーコンを得ることができたことを示している。
【0073】
トロンビンに誘導される蛍光変化の程度は非常に再現性がよく特異的ではあるが、最初はそれほど大きくはなかった(約20%)。このため、我々はトロンビンのシグナリングビーコンのこの性質を、より柔軟なスペーサー18リンカーでポリdTリンカーを置き換えることにより改善することを試みた(図13AおよびB)。我々は、ポリdTリンカーは柔軟ではあるものの、若干の残留合成を示し(Mills、J.B.、Vacano、E.、and Hagerman、P.J.Flexibility of single-stranded DNA: use of gapped duplex helices to determine the persistence lengths of poly(dT)and poly(dA)、J.Mol.Biol.285、245-57、1999、本明細書に参照により取り込まれる)2つのアプタマーがトロンビンに結合する時にシグナリング二本鎖の結合を阻害すると考えた。図13に示されたビーコンは図12に示されたビーコンとリンカーの性質のみが異なる。それ以外の点では、残りの配列は同一である。図13Cは、トロンビンをTHR20とTHR21の混合液に加えた時、タンパク質濃度依存的な蛍光消光が観察され、トロンビンがTHR21単独に加えられた場合は蛍光の変化は検出されないことを示す。この特定のビーコンの場合、ビーコンのトロンビンに対する反応はずっと大きかった(蛍光における約二倍の減少)。この場合の蛍光シグナル変化の度合いは、DNA結合タンパク質検出用分子ビーコン(前掲)について我々が先に観察したものと同程度であった。よって、我々は機能的なトロンビンビーコンが得られ、より柔軟なスペーサー18リンカーを用いた設計によりポリdTリンカーを用いた場合に比べてトロンビン結合の際により良いシグナル変化が得られたと結論づけた。続いて、我々はこのトロンビンビーコンの挙動をさらに特徴づけるための一連の実験を行った。
【0074】
図14に示された実験は、THR20とトロンビンの存在下でフルオレセイン標識アプタマー構築物(THR21)が実際に安定な複合体の中に組み込まれることを確認するために行われた。図15に結果は示され、トロンビン検出の感度(図15A)と特異性(図15B)を示している。トロンビンの二価のアプタマー構築物への結合性は非常に緊密であり(pM Kd’s)、アッセイはフルオレセインシグナルの検出感度のみに制限されているようであるため、アプタマー構築物の濃度を変化させることでトロンビン検出感度を調整できる。このことは図15Aに示され、50nMのTHR21と75nMのTHR20を使用した時、おおよそ10nMのトロンビンを検出でき、10倍低い濃度のアプタマー構築物を使った時(5nMのTHR21と7.5nMのTHR20)、10倍低い濃度(およそ1nM)のトロンビンが検出できたことを描いている。さらに低い濃度のアプタマー構築物を使用すると(500pMのTHR21と750pMのTHR22)、おおよそ100pM程度のトロンビンを検出できた(図示なし)が、フルオレセイン標識アプタマー構築物のこの低い濃度は我々の機器の測定機器の感度の限界に近く、データの質もこれに伴って落ちてゆく。トロンビン検出の特異性を証明するために、我々はこのアプタマー構築物のトロンビンに対する反応とトリプシン(トロンビンと同じファミリーに属しトロンビンと構造上の相同性を有するプロテアーゼ)に対する反応を比較した。トリプシン添加の場合、シグナル(図15B)は検出されず、アプタマー構築物のトロンビンに対する高い特異性を示している。
【0075】
図16は比較実験の結果を示し、様々なアプタマー構築物の有する、あらかじめ形成されたトロンビンアプタマー構築物の複合体を分離させる能力が試験された。得られたデータは、全ての二価のアプタマー構築物は個々のエピトープ特異的のアプタマーのどれよりもはるかに効果的な競合物であることを示したが、これはフルオレセイン標識された個々のアプタマーを用いて行った同様の実験と一致する(上掲、THR2;図6)。これら二価のアプタマー構築物の中で、THR18/THR19(27ヌクレオチド長のポリdTリンカーを有する構築物)およびTHR16/THR17(17ヌクレオチド長のポリdTリンカーを有する構築物)は最も効果的な競合物で、その次はTHR14/THR15(7ヌクレオチド長のポリdTリンカーを有する構築物)とTHR7(スペーサー18リンカーを有する)。よって、スペーサー18リンカーの有するさらなる柔軟性はアプタマー構築物シグナル変化による蛍光シグナル変化の強度の面では有益だが、より硬いポリdTリンカーを含む構築物と比較した場合トロンビンに結合する親和性の若干の低下にもつながっているようである。
【0076】
結論
我々は、トロンビンの二つの異なるエピトープを認識する2つのアプタマーを含む二価のアプタマー構築物の基本的な物理化学的の特徴を明らかにするデータを得た。この二価のアプタマー構築物のトロンビンに対する親和性は、二価構築物中の個々のアプタマー成分に比べて高い。これは、トロンビンをアプタマー「半部位」の混合液に加えることで2つの半部位の結合を誘導し、蛍光団と消光剤は接近させることで蛍光シグナルを生み出すことを示唆する。ビーコン構築物を用いた実験はこの仮説を完全に証明した。我々は多くの目標タンパクに対して同様のビーコンを開発することが可能であると予想する。我々はまた、ここに記載されたビーコンの設計は天然のDNA結合活性を有するタンパク質を検出するためのビーコン(図1A)を改善するためにも採用できることを注記する。この場合、アプタマー「半部位」のうち一つは柔軟なリンカーで相補的なシグナリングオリゴに連結された(タンパク質結合部位の配列を含む)二本鎖DNAで置き換えることができる。
【実施例3】
【0077】
サンプル中のアナライトの検出
材料
精製トロンビンはRay Rezaie博士(St.Louis大学)から贈られたものであった。Xa因子、プロトロンビン、オボアルブミン、牛血清アルブミン、SSB、トリプシン、および血漿はシグマ(St.Louis、MO)から購入した。HeLa細胞抽出物はプロテイン・ワン(College Park、MD)から購入した。Texas Red−NHSとSybr GreenはMolecular Probes(Eugene、OR)から購入し、Cy5−NHSとCy3−NHSはAmersham Biosciences(Piscataway、NJ)から購入、AMCA−sulfoNHSはPierce(Rockford、IL)から購入した。そのほかのすべての試薬は、商業的に入手可能な分析グレードのものであった。
【0078】
この研究を通じて用いられたオリゴヌクレオチドは表1に列記されている。オリゴヌクレオチドはエール大学のKeck Oligonucleotide Synthesis Facilityから購入、あるいはIDT(Coralville、IA)から購入したものである。5端’のフルオレセインと3’端のダブシルは適当なホスホラミデートを使用して、オリゴヌクレオチド合成の間に取り込まれた。他のすべての蛍光団は、5’アミノあるいはC6アミノ−dTを適切な位置に有するオリゴヌクレオチドを色素のNHSエステルを用いて合成後修飾することで、オリゴヌクレオチド中に取り入れられた。蛍光プローブで標識されたオリゴヌクレオチドは、先に述べたとおり逆相HPLCにより精製された(Heyduk、E.;Heyduk、T.Anal.Biochem.1997、248、16-227)。Heyduk、E.;Heyduk、T.;Claus、P.;Wisniewski、J.R.J.Biol.Chem.1997、272、19763−19770に記載された2段階法により、ユーロピウムキレート((Eu3+)DTPA−AMCA)によるオリゴヌクレオチドの修飾が行われた。すべてのオリゴヌクレオチドの濃度は、260nmにおける蛍光団吸光の寄与についての補正後の260nmのUV吸光値から計算された。
【0079】
【表1−1】
【0080】
【表1−2】
【0081】
【表1−3】
【0082】
蛍光の測定
すべての蛍光測定は50mMのTris(pH7.5)、100mM NaCl、5mM KCl、1mM MgCl2中で行った。蛍光スペクトルはAminco Bowman Series 2分光光度計(Spectronic Instruments、 Rochester、NY)に記録した。バッファーおよび測定機器の反応についてスペクトルを校正した。マイクロプレート中の蛍光はTecan Spectra FluorPlusマイクロプレートリーダー(Research Triangle Park、NC)で読んだ。あるいは、マイクロプレートをMolecular Imager FX(BioRad、Hercules、CA)で画像化し、QuantityOne(BioRad)を用いて個々のウェルに対応する画像面積について積分して蛍光強度を決定した。96−ウェルプレートと384−ウェルプレート中での実験は、それぞれ100μlと20μlの体積で行われた。測定機器に依存して、僅かに異なるビーコンシグナル変化が記録されたが、これは異なる測定機器を用いた場合のことなるバッファーバックグラウンドの読み取り値(測定機器の感度による)、および各測定機器で利用可能な励起波長と発光波長についての差異に起因する。
【0083】
ユーロピウムキレートCy5標識ビーコンの場合の時間分解蛍光は、励起源としてパルス窒素レーザーを用いた、実験室で製作された機器(Heyduk、T.;Heyduk、E.Analytical Biochemistry 2001、289、60-67)で記録された。レーザーパルス後30マイクロ秒後に、100マイクロ秒分発光を積分した。
【0084】
トロンビンアプタマー解離定数を決定するための競合アッセイ
競合物の存在下および非存在下でのTHR2の蛍光強度を決定した。トロンビン、THR2、および(もし存在すれば)競合物の濃度はそれぞれ150nM、200nM、および200nMであった。これらの条件の下、アプタマーのトロンビンへの結合は本質的に化学量論的であった。先に記載した方法(Matlock、D.L.;Heyduk、 T.Biochemistry 2000、39、12274-12283)を用いて、これらの条件下で、THR2の競合物に対する解離定数の比を計算した。
【0085】
ゲルシフト分析(EMSA)によるトロンビンアプタマー結合
417nMのTHR2のサンプル5マイクロリットルを、種々の量のトロンビン(0〜833nM)と共にインキュベートした。15分間インキュベートした後、1(lの30%Ficollを加え、サンプルはTBEバッファー中10%のポリアクリルアミドゲルで泳動された。泳動後、ゲルはSybr Greenで30分間染色され、ゲル上のイメージがMolecular Imager FX(BioRad)を用いて得られた。ゲル中のバンド強度はQuantityOneソフトウェア(BioRad)を用いて個々のバンドに対応するイメージの面積について積分することで求められた。
【0086】
アプタマーを基礎とする分子ビーコンの設計
図17Bは天然の配列特異的DNA結合活性を有さないタンパク質用の分子ビーコンの全体的概念を示す。この設計は発明者が先に記載したDNA結合タンパク質用分子ビーコンにある程度の一般的類似性を有する(Heyduk、T.;Heyduk、E. Nature Biotechnology 2002、20、171-176;Heyduk、E.;Knoll、E.;Heyduk、T.Analyt.Biochem.2003、316、1-10;Knoll、E.;Heyduk、T.Analyt.Chem.2004、76、1156-1164;Heyduk、E.;Fei、Y.;Heyduk、T.Combinatorial Chemistry and High-throughput Screening 2003、6、183-194)(図17A)。タンパク質への天然の結合部位を含むDNA二本鎖を2つの半部位に分割する代わりに、「半部位の」機能的等価物として、タンパク質の2つの重複しないエピトープを認識する2つのアプタマーが用いられる。蛍光団と消光剤を含む複数の短く相補的な“シグナリング”オリゴヌクレオチドは柔軟なリンカーによって2つのアプタマーに連結されている(図17B)。目標タンパク質が存在しない時、相補的なオリゴヌクレオチドは効率的なアニーリングを促進するには短すぎるからである。アプタマー「半部位」が目標タンパク質に結合すると、2つの「シグナリング」オリゴヌクレオチドが相対的に接近して、それらの局所的濃度を高める。これによって「シグナリング」オリゴヌクレオチドはアニーリングし、蛍光団と消光剤は接近し、蛍光シグナルが変化する。
【0087】
二価トロンビンアプタマーの特性
我々は図17Bの概念の「理論の証明」を示すためのモデル系としてトロンビンを用いた。トロンビンは凝血カスケードに関与し天然にはDNAやRNAに結合しないタンパク質分解酵素である。タンパク質の2つの異なるエピトープを選択的に認識するDNAアプタマーが、すでに2つの実験室によって開発された(Bock、L.C.;Griffin、L.C.;Latham、J.A.;Vermass、E.H.;Toole、J.J.Nature 1992、355、564-566、Tasset、D.M.;Kubik、M.F.;Steiner、W.J.Mol.Biol.1997、272、688-698)。一つのアプタマー(G15D;THR4、表1)はヘパリン結合エクソサイト(exosite)(Bock、1992)に結合することが示され、またもう一つのアプタマー(60−18[29];THR3、表1)はフィブリノゲン結合エクソサイト(Tasset 1997)に結合することが示されている。トロンビンを認識するビーコンを開発する最初のステップとして、我々は前記アプタマーが柔軟なリンカーで共有結合された種々のアプタマー構築物を作製した。これらの実験の主要な目的は、柔軟なリンカーでタンパク質表面上の2つの異なるエピトープを認識する2つのアプタマーを連結すれば、個々のアプタマーよりも高い親和性でタンパク質に結合できる二価アプタマーが得られるかどうかを決定することであった。そのような二価のアプタマー構築物のこの性質は、図17Bのアッセイが機能するために必要不可欠な条件である。これらの二価構築物の親和性に対する長い柔軟なリンカーが与える影響を予測することは不可能なため、この問題に実験的に対処することが必要であった。これらの実験の第二の目的はリンカーの適切な長さ、および2つのアプタマーの5’端と3’端のリンカーに対する適切な向きを確立することであった。
【0088】
様々な構築物の有するトロンビンへの親和性の決定を容易にするため、個々のアプタマーはフルオレセインで標識された〔THR1(表1)はフィブリノゲンのエクソサイトに特異的であり、THR2(表1)はヘパリンのエクソサイトに特異的である〕。トロンビンとフルオレセイン標識60−18[29]アプタマー(THR1)との間の複合体の形成は蛍光偏光によって簡便に追跡でき(図示はしない)、フルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)の結合は蛍光強度によって追跡できた(図18A)。どちらのアプタマーもナノモル程度の濃度範囲でトロンビンに結合した(THR1および図18Aにはデータを示していない)。THR2の場合の結合の定量的分析(図18A)はKd値として6.3nMの値を返した。これは以前に示唆されていたもの(Bock 1992、Tasset 1997)より若干高い親和性であり、これはおそらく我々が真平衡結合アッセイを用いたのに対して以前は非平衡結合法が用いられたためである。THR2の結合が十倍過剰量の未標識60−18[29]アプタマー(THR3)中で行われた場合(図18B)、僅かな有意義ではない親和性の減少が観察されただけであった(Kdは17.7nM)。これにより、以前報告されたとおり、G15Dアプタマーと60−18[29]アプタマーは独立にトロンビンの2つの異なるエピトープに結合したことが証明された。
【0089】
次のステップでは、各種アプタマー構築物の有する、トロンビンへの結合についてTHR2と競合する能力が評価された。トロンビンを加えた場合のTHR2の蛍光強度の変化を競合物の存在下および非存在下で測定し、競合物の存在下でのトロンビンに結合したTHR2の量を材料と方法(Materials and Methods)に記載したとおりに計算した。これら実験で用いたアプタマーの濃度では、アプタマー−アプタマー相互作用は蛍光偏光アッセイで検出できず(未陳列)、競合データはTHR2およびトロンビンへの結合についての競合物の相対的親和性について正しく報告したことを示している。THR3は競合物ではなく(図18C)、これは図18AおよびBに示されたデータと一致する。THR4(THR2の未標識変種)は予測どおり競合能力を備えていた(図18C)。この場合の競合の定量的分析により、THR4はTHR2より1.7倍よくトロンビンに結合したことが示され、このアプタマーのフルオレセインによる標識が、トロンビンへのアプタマー結合に対して僅かな(有意義ではない)負の作用しか与えなかったことを示した。明らかに、すべての二価アプタマー構築物はTHR4よりもはるかに優れた競合物であった(図18C)。THR7が最高の競合物のようで、1:1の比においてTHR2の結合を本質的に完全に阻害した。この場合の競合の定量分析によって、THR7はTHR2より少なくとも65倍(THR7の推定Kd(97pM)強くトロンビンに結合したことが明らかになった。図18Cに示されたデータは、タンパク質の2つの異なるエピトープを認識する2つのアプタマーを柔軟なリンカーで連結すると、高親和性トロンビンリガンドが作り出されるという予想を確認した。さらに、これら2つのアプタマーをより長いリンカー(10個スペーサー18単位を含む(5個のスペーサー18単位との比較))で連結した場合、トロンビンに対してやや良好な親和性(THR5とTHR6の結合の比較)が得られることをこれらのデータは示した。これらのデータはまた、アプタマーのリンカーに対する向きがTHR7のような場合は、親和性がより良い(THR6とTHR7の親和性の比較)ことを示した。このため、以下のすべて構築物中、THR7のようなアプタマーの向きが用いられた。
【0090】
二価のアプタマー構築物(THR7)とトロンビンの間の複合体は、非変性ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動に耐えるのに十分なほど安定している(図18D)。我々はこの観察を利用して、ゲルシフト分析法(EMSA)(Fried、M.G.;Crothers、D.M.Nucleic Acid Res.1981、9、 6505-6525)を用いて複合体の化学量論を決定し、THR7−トロンビン複合体形成を追跡した。我々はトロンビンでTHR7滴定した(どちらの分子も高濃度であった)。これらの条件の下では、結合は化学量論的であるはずである。形成された複合体対トロンビンのTHR7に対する比のプロットは、複合体の1:1の化学量論を示し(図18D)、これは両アプタマー(THR7の成分)がTHR7−トロンビンの複合体中でその各々のエピトープに結合するという観念と整合している。
【0091】
トロンビンを検出するアプタマーを基礎とした分子ビーコン
以上に記載の実験データは、図17Bに示されたシグナリングビーコン設計を成功裏に実施するために必要な全ての条件が満たされたことの証明を与えた。これらのデータに基づき、我々は図19Aに示されたトロンビンビーコンを設計した。5個のスペーサー18リンカーを用いてトロンビンアプタマー(複数)を、それぞれ5’端と3’端がフルオレセインおよびダブシルで標識された7ヌクレオチド長の相補的なオリゴヌクレオチドに連結された。これら2つの構築物の混合物は個々のアプタマーに比べ、より緊密に(約36倍)トロンビンに結合した(図18C)が、これは2つのアプタマーを柔軟なリンカーで永続的に連接した二価アプタマー構築物について観察された高いトロンビン親和性と整合する。トロンビンをそれぞれ蛍光団および消光剤で標識されたTHR20とTHR21の混合液に加えると、タンパク質濃度に依存した蛍光強度の消光が起こった(図19C)。観測された最大の消光は約40%であった。ダブシル標識されたパートナー(THR20)の非存在下ではトロンビンをTHR21に加えても蛍光変化は観察されず(図19C)、蛍光の消光は、図19Bに示されるようにアニーリングにつながるタンパク質に誘導されるシグナリングオリゴヌクレオチドのさらなる接近に起因することを示している。ビーコン成分とトロンビンがナノモル濃度であるとき、約15分間のインキュベーションはビーコンの最大の反応を生み出すのに十分である。我々は類似した図19に示されたビーコンと同様であるが、17ヌクレオチド長のポリdTリンカーがスペーサー18リンカーの代わりに用いられている種々のトロンビンビーコンについてもテストした。トロンビン依存的な蛍光消光は観察されたが、消光はスペーサー18リンカーを含む構築物を用いた場合よりも約2倍小さかった。ポリdTリンカーは柔軟ではあるもののいくらかの残留硬さを示した可能性が強い(Mills、J.B.;Vacano、E.;Hagerman、P.J.J.Mol.Biol.1999、285、245-257)、そのためおそらく2つのアプタマーがトロンビンに結合した際のシグナリング二本鎖の結合を阻害したのであろう。トロンビンと構造的に類似するタンパク質分解酵素であるトリプシンで図19に示されたビーコンを滴定すると、蛍光強度の変化は観測されなかった。我々は、図17Bに示された設計による機能的なトロンビンビーコンが得られたと結論付けた。
【0092】
ビーコン性能の改善
次の一群の実験において、我々は別のドナー−アクセプター標識ペアを利用してビーコンの性能を改善することを追求した。前述の通り、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を読取に用いたアッセイでは、アクセプター発光を増強すると潜在的によりよいシグナル対バックグラウンド比、より高いダイナミックレンジ、およびよりよい感度が得られることが先に示されている(Heyduk、E.;Knoll、E.;Heyduk、T.Analyt.Biochem.2003、316、1-10)。我々は図17Bに示されたものと同様だが、フルオレセイン−ダブシルのペアに代えて蛍光ドナーと蛍光アクセプターの様々な組み合わせがシグナリンゴオリゴヌクレオチドに導入された一連のトロンビンビーコン構築物を作製した。適切な染料のNHSエステルで標識されたTHR21(あるいは適当な染料のNHSエステルで標識されたTHR28)とTHR27をこれらのビーコンの作製に用いた。図20は、フルオレセイン−テキサスレッド(図20B)、フルオレセイン−Cy5(図20C)、およびCy3−Cy5(図20D)で標識されたビーコンの蛍光スペクトル(トロンビン添加有りおよび無し)を示す。全てのケースで機能性ビーコンが得られた。蛍光ドナーと蛍光アクセプターを有するビーコンの各ケースにおいて、トロンビン濃度依存的な感作アクセプター発光の大きな増加が観察された(図20の挿入図、および図21A−D)。比較のため、図20Aは蛍光団−消光剤(フルオレセイン−ダブシル)のペアの場合にトロンビン存在下で観察された蛍光消光を示している。図21Eは時間分解FRET(TR−FRET)を検出方法として用いることを可能にするユーロピウムキレート−Cy5ドナー−アクセプターペアを用いて得られる結果を示している(Selvin、P.R.;Rana、T.M.;Hearst、J.E.J.Am.Chem.Soc.1994、116、6029-6030;Selvin、P.R.;Hearst、J.E.Proc.Natl.Acad.Sci USA 1994、91、10024-10028;Matthis、G.Clinic.Chem.1995、41、1391-1397)。TR−FRETを用いることで、光散乱および直接励起されたアクセプターからの即時蛍光を除き、ビーコンのシグナル対バックグラウンド比をさらに改善することが可能になる。図21Fはドナーおよびアクセプタープローブの様々な組合せを用いたビーコンバリエーションの性能をまとめている。数値は、トロンビン非存在下で観測されるビーコンのバックグラウンドシグナルと比較した、飽和濃度のトロンビンの存在下におけるシグナル変化の倍率を示している。その比は、フルオレセイン−ダブシルペアの場合の約2倍から、ユーロピウムキレート−Cy5ペアの場合の約22倍にまでばらついている。このため、最良のドナー−アクセプターペアを選択し、シグナル検出のやり方として感作アクセプター発光を用いることによりビーコン性能の実質的改善をなしうる。蛍光ドナーと蛍光アクセプターのビーコンバリエーションのさらなる利点は、その反応をアクセプター対ドナーのシグナル比の二色決定により測定できることである。このようなレシオメトリック(ratiometric)な測定により、より安定したシグナルが得られ、これはサンプル中に存在する添加剤による光吸收、光散乱、蛍光消光などの非特異的影響により抵抗性である。最良のドナー−アクセプターペアを用いて得られる上昇したシグナル対バックグラウンド比により、ビーコン感度も上昇する。このことは図22に示され、低濃度のトロンビンに対する三つの選ばれたビーコンバリエーションの反応を示している。フルオレセイン−ダブシル標識ビーコン(飽和濃度のトロンビンの存在下で最低(約2倍)のシグナル変化を示す)の場合、統計的に有意なシグナル変化は最高のトロンビン濃度(1nM)においてのみ検出された。フルオレセイン−テキサスレッド標識ビーコン(飽和トロンビン濃度で約5倍のシグナル変化を示す)の場合、統計的に有意なシグナル変化はより低いトロンビン濃度(200pM)において検出された。フルオレセイン−Cy5標識ビーコン(飽和トロンビン濃度で約15倍のシグナル変化を示す)の場合、統計的に有意なシグナル変化は最低のトロンビン濃度(50pM)で既に検出できた。
【0093】
図23はトロンビンビーコンシグナルの優れた再現性と安定性を示す。ビーコンシグナルは5回の独立したテストにおいて4つのトロンビン濃度で測定された。テストされた各タンパク質濃度において変動係数は小さかった(図23A)。ビーコンシグナルは少なくとも24時間にわたり安定であった(図23B)。
【0094】
図17Bに示されたビーコンを用いてシグナルを発生するためには、三つの分子接触が同時に起こることが必要である:アプタマーの各々とタンパク質との間の2つの接触と、2つの相補的なシグナリングオリゴヌクレオチド間の接触である。3つの接触は各々、ビーコン−タンパク質複合体の全体的安定性に対して自由エネルギー上の寄与を与える。複合体の自由エネルギーと平衡解離定数との間の指数的関係のため、上述の三個の分子接触のいずれがかけても複合体の全体的安定性が大きく減少する。よって、単一分子接触に基づいたアッセイ(例えば、単一アプタマーを基礎としたアッセイ)に比べて、ここに記載された分子ビーコンはタンパク質検出におけるより高い特異性を示すことが予想される。
この観点を説明するため、我々は単一のトロンビンアプタマーとトロンビンビーコンのSSB(大腸菌の一本鎖DNA結合タンパク質、一本鎖DNAへの結合について非特異的な高い親和性を示すタンパク質である)に対する反応を比較した(データは示さない)。SSBはナノモル濃度で単一のフルオレセイン標識アプタマー(THR1、表1)と共に大きなシグナル(蛍光偏光アッセイで測定)を生み出した。SSBは、トロンビンがこのアプタマーに結合するのに必要な濃度と同様の濃度範囲で反応を示した。よって、単一のトロンビンアプタマーはSSBとトロンビンを非常に弱くしか区別しないことが分かった。対照的に、トロンビンビーコンをナノモルのSSB濃度にさらした場合、有意なビーコン反応は生まれず、トロンビンは同じ濃度範囲で大きなビーコン反応を生み出した。このため、トロンビンビーコンはSSBとトロンビンを非常によく区別し、ビーコンの向上した特異性が示された。
【0095】
ここに記載したアッセイ設計の主な応用は、均一で高スループットのタンパク検出であろう。Zhangらは(Biomol.Screening 1999、4、67-73)高スループットでの使用用のアッセイを評価するのに用いられる簡単な統計的パラメーターを開発した。Z’−因子はタンパク質の存在下および非存在下における、多回数の測定の繰り返しから計算される。Z’値が1であることは理想的なアッセイであることを示しており、Z’値が0.5から1であると優れたアッセイであることを示している。Z’値が0.5より小さいことは高スループットへの応用にはあまり適していないことを示している。トロンビンビーコンのZ’値は0.94(図24)であり、これが非常に優れた高スループットアッセイであることを示している。
【0096】
複合体混合液中のトロンビンの検出
次の一連の実験は、トロンビンビーコンの特異性、およびそれが細胞抽出液と血漿中のトロンビンを検出する能力についてのものである。1nMのトロンビンに対するビーコンの反応は、100および1000倍過剰量の関係ないタンパク質(オブアルブミン、図25A)では影響されなかった。また、100倍過剰量のXa因子(トロンビンに類似する別の凝血プロテアーゼ)は1nMのトロンビンに対するビーコンの反応に影響を与えなかった(図25A)。1000倍過剰量のXa因子はビーコンの反応を僅かに弱めたが、これらの条件の下でも1nMのトロンビンは依然として容易に検出可能であった(図25A)。トロンビンが存在しない場合は、1μMまでの濃度のオボアルブミンとXa因子はビーコンシグナルに影響しなかった(図25A)。我々は、ビーコンはトロンビンに対して高度に選択的であると結論した。
【0097】
ビーコンが複合体混合液中でトロンビンを検出できるかをテストするため、我々はHeLa細胞抽出液を様々な量のトロンビンでスパイクし、該混合液に対するビーコン反応を決定した(図25B)。低ナノモル濃度のトロンビンは容易に検出された。20μlの分析液の中に総量8μgのタンパク質を加えるが、この量は細胞抽出液を使用した実験において使用される典型的な範囲に属するものである。細胞抽出液を加えた時に観察されたシグナルは、特定の競合物(未標識トロンビンアプタマー)を加えることで完全に消去された、細胞抽出液中で観察されたシグナルはトロンビンによるものであることが確認された。細胞抽出液を使用した実験において遭遇した一つの問題はアッセイの成分であるオリゴヌクレオチドの、細胞抽出物中のヌクレアーゼによる分解であった。我々は様々なバッファー添加剤を試して、細胞抽出液の存在下でトロンビンビーコンが十分に長い時間安定性でいられる条件を見出した。我々は高濃度のランダムな配列の30bpの二本鎖DNA(10μM)、高濃度の20ヌクレオチド長のランダム配列一本鎖DNA(0.1μM)、および2.5mMのEDTAの添加により、細胞抽出液の存在下においてビーコンのトロンビンに対する反応に有意な影響を与えることなくトロンビンビーコンは分解から保護されることを見出した。図25Bに示されたデータは、上述の添加物の存在下で得られた。
【0098】
トロンビンは血漿タンパク質であるので、我々はビーコンが血漿中のタンパク質を検出するのに使用できるかを確かめた。血漿中にあるトロンビンは全てその前駆体であるプロトロンビンの形で存在しており、プロトロンビンはXa因子によるタンパク質分解的な処理によってトロンビンに変換される。プロトロンビンはトロンビンビーコンに認識されるものの、トロンビンに比べはるかに低い感度である(約20倍低い、データは示さない)。このことは図25Cの実験によってよく表され、そこではプロトロンビンの存在下でのビーコンの感作アクセプター発光が時間の関数として観察された。矢印でマークされた点において、Xa因子が混合液に加えられ、プロトロンビンのトロンビンへの変換を開始した。この変換により、ビーコンシグナルは時間とともに増加したが、これはビーコンのトロンビンに対するはるかに高い感度と整合する。このため、血漿中のトロンビンを検出するためには、Xa因子はアッセイ混合液中に含まれる(図25D)。血漿の添加量を増加させるとビーコンシグナルはそれに比例して増加した(図25D)。Xa因子がアッセイ中に存在する場合のみ血漿の添加によりビーコンの反応が生み出された。血漿を加えた時に生まれたシグナルは、特定の競合物(未標識トロンビンアプタマー)の添加により完全に消去され、細胞抽出液中の観察されたシグナルがトロンビンによるものであることが確認された。20μlの反応容量中、5nLの血漿サンプルはビーコンの測定可能な反応を生み出した。まとめると、図25に示された実験は、複雑な生物的混合液中のタンパク質を検出するトロンビンビーコンの機能性を証明した。
【0099】
考察
ここで説明したアプタマーを基礎とした分子ビーコンの設計は、我々によって先に開発された配列特異的なDNA結合タンパク質を検出する分子ビーコンを一般化したものである(図17)。トロンビンをモデルタンパク質として用いたここに記載された実験によりこの設計の実施可能性についての原理の証明が得られた。我々はこの設計がいくつかの重要な利点を有するであろうと信じる。ここに記載された分子ビーコンの設計はいかなる特定のタンパク質に限定されるものではないため、多くのタンパク質に一般的に適用可能である。目標タンパク質の存在下での我々のビーコンによるシグナリングには、2つの異なるアプタマーによるタンパク質の2つの別々のエピトープの協働的認識が必要である。これによってビーコンの特異性が向上し、親和性(つまり検出感度)も向上する。この2つのアプタマーによる協働的作用により、ほどほどの親和性を有するアプタマーを用いて高親和性と高特異性で目標タンパク質に結合する分子ビーコンを作製できる。ビーコンのアプタマー成分は、タンパク質の存在下で異なる状態間のスイッチングを可能にするために構造の分布を調製するためのいかなる構造の加工も必要としない。この種の加工はアプタマーの特定の配列(構造)に依存的でありえ、核酸の代替的構造のエネルギー論のそのようなバランスは些少なものであるとは限らない。本ビーコン設計中のシグナリング要素(“シグナリング”オリゴヌクレオチド)はそのアプタマー成分と分離しているため、任意のアプタマー配列(および構造)が我々のビーコンの設計に適用可能である。“シグナリング”オリゴヌクレオチドの添加が、ビーコンの成分であるアプタマーの親和性や特異性に有害な影響を及ぼすことはありそうにない。このため、タンパク質の2つの異なるエピトープを認識する2つのアプタマーを得ることのできる任意のタンパク質は、図17の設計による分子ビーコンの開発の良いターゲットとなるはずである。
【0100】
タンパク質の異なるエピトープを認識する抗体(複数)を得ることは比較的容易である。同樣に、多くの目標タンパク質について異なるエピトープを認識するアプタマー(複数)を開発できない理由は無く、すでにいくつかの例が得られている(Jayasena、S.D.Clinical Chem.1999、45、1628-1650)。この目標を達成するためにはいくつかのやり方が可能である。第一のやり方はタンパク質に結合したオリゴヌクレオチドとタンパク質に結合していないオリゴヌクレオチドを分離するために異なる方法を用いながらインビトロ選択(SELEX)を行うことであろう。その原理はこれらの異なる区分法において、タンパク質の異なる領域を選択的に提示でき、タンパク質表面上の異なる領域に対するアプタマーが得られる。トロンビンについて選択されたアプタマーはそのようなやり方の一例でなる(Bock、1992;Tasset、1997)。第2のやり方は、目標タンパク質分子の異なる領域に相当するペプチドに対するアプタマーを生成させることであろう。アプタマー開発の目標として用いられたペプチドが由来する完全タンパク質を認識できるアプタマーを開発するためにそのような戦略を用いることが出来ることについては、実験的証拠が存在する。(Wei、X.;Ellington、A.D.Proc.Natl.Acad.Sci. USA 1996、93、7475-7480)。このやり方はタンパク質を認識する抗体を作製するために広く用いられている。タンパク質の異なるエピトープを認識する2つのアプタマーは、第1の段階で選択されたアプタマーが飽和濃度存在する中でアプタマーを選択することを第2の段階が伴う2段階連続SELEXによっても作製可能である。我々のトロンビンをモデルシステムとして用いてこの手順を検証した(Heyduk、E.およびHeyduk、K.未発表)。最後に我々は、我々の分子ビーコン設計中で機能するように特に設計された一対のアプタマーを作製するための新規なインビトロ選択戦略を開発した(Heyduk、E.、Kalucka、J.、Kinnear、B.、Knoll、E.およびHeyduk、T.、未発表)。このため、タンパク質の重複しないエピトープ(複数)を認識するアプタマー対を得る多くの手法が利用可能である。
【実施例4】
【0101】
センサー設計のバリエーション
本発明を実施する際には、本分子ビーコンのいくつかのバリエーションが利用可能である。分子ビーコンのそれらバリエーションは図26に示され、本明細書中でまとめられている(前記)。図26Fに示されたセンサー設計は、DNA結合タンパク質を効果的に検出できることが示されている。DNA結合タンパク質の一例であるcAMP反応エレメント結合タンパク質(“CRP”)をドナーおよびアクセプター標識センサー成分(複数)の混合液に滴定した場合、感作アクセプター蛍光強度もそれに合わせて増加する(図27)。
【0102】
図26Gに示されたセンサーの設計は図28で証明されている。パネルAはセンサー機能の原理を示している。センサーの要素(複数)に相補的な2つの異なる配列エレメントを含む一本鎖DNAを、それぞれドナーおよびアクセプター標識された2つのセンサー成分の混合液に加えた場合、感作アクセプター蛍光強度もそれに合わせて上昇する(図28B、”+”記号がある線)。この特定の場合におけるセンサーはテキサスレッド標識されたTHR29およびTHR32を含んでいた。
【0103】
本分子ビーコンセンサーの設計を、単一の目標大分子認識要素に基づいたアッセイと比べた場合の増加した特異性は実験的に証明されている(図29)。センサーによる目標分子の認識は、それぞれ複合体全体の安定性に寄与する自由エネルギー(ΔG)を与える3つの分子接触が同時に起こることを伴う。自由エネルギーと複合体の平衡解離定数の間の指数的関係のため、複合体全体の安定性は上述の三つの分子接触のいずれが欠けても大きく減少するため、目標分子認識の特異性が高くなる。ナノモル濃度の非特異的一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)は単一のフルオレセイン標識アプタマー(THR1、表1)と共に大きなシグナルを生み出した(蛍光偏光アッセイによって測定した)。トロンビンがこのアプタマーを結合するのに必要な濃度に非常に近い濃度範囲で、SSBは反応を生み出した。このため、単一トロンビンアプタマーはSSBとトロンビンを非常に弱くしか区別しないことが分かった(パネルB)。ナノモル濃度のSSBにトロンビンセンサー〔THR21(フルオレセイン標識標識)とTHR27(テキサスレッド標識)の混合液〕をさらした場合、有意なビーコン反応は起こらなかった(破線)のに対し、同濃度範囲でトロンビンは大きなビーコン反応を生み出す(パネルC)。このため、トロンビンビーコンはSSBとトロンビンを非常によく区別することが分かり、ビーコンの向上した特異性を示している。
【0104】
各種センサー用アプタマーを作製する方法
図30は本発明の実施に有用なアプタマーを選択する方法をまとめている。パネルAは第1のアプタマーに結合したタンパク質の存在下での第2のアプタマーの選択を示す。シグナリングオリゴはランダム配列含有構築物の5’端に位置しており、相補的なシグナリングオリゴは長く柔軟なリンカーで第1のアプタマーに連結されている。この種のランダムDNA(あるいはRNA)構築物を用いたコアプタマーの選択は、第1のアプタマーのエピトープと箱となる部位でタンパク質に結合でき、図26Aに示されたセンサー内で機能するアプタマーへとバイアスがかかる。
【0105】
パネルBには別のシナリオが示されており、そこではタンパク質の2つの異なるエピトープに結合する2つのアプタマーの同時選択が記載されている。(プライマー1およびプライマー4の末端の)棒は、アプタマー構築物を含むランダム配列の5’端と3’端にある短い相補的配列を示している。この種のランダムDNA(あるいはRNA)構築物を用いたアプタマー選択は、同時にタンパク質の2つの異なるエピトープに結合でき、図26Aが示すセンサーで機能するアプタマー(複数)へとバイアスがかかる。
【0106】
さらに別の実施形態では、二本鎖DNAが結合したタンパク質の存在下で第2のアプタマーが選択される(図30、パネルC)。棒は(ランダム配列含有構築物の5’端の)短い配列を示し、二本鎖DNAに長い柔軟なリンカーで連結されたシグナリングオリゴヌクレオチドに相補的である。このようなランダムDNA(あるいはRNA)構築物を用いたコアプタマー選択は、タンパク質の二本鎖DNA結合部位とは異なる部位でタンパク質に結合でき、図17Bに示されたセンサーで機能するアプタマーへとバイアスがかかるであろう。
【0107】
さらに別の実施形態では、タンパク質の別のエピトープに抗体が結合した該タンパク質の存在下で、第2のアプタマーが選択される(図30、パネルD)。棒は(ランダム配列含有構築物の5’端の)短い配列を表し、長い柔軟なリンカーで抗体に連結されたシグナリングオリゴヌクレオチドに相補的である。このようなランダムDNA(あるいはRNA)構築物を用いたコアプタマーの選択は、タンパク質に抗体のエピトープとは異なる部位で結合でき、図17Cに示されたセンサーで機能するアプタマーへとバイアスがかかるであろう。
【0108】
G15Dアプタマーの結合部位と異なるエピトープでトロンビンに結合するアプタマーの選択を、過剰量のG15Dアプタマー含有構築物(THR22)の存在下で33ヌクレオチド長のランダム配列を含む構築物(THR11)から始まるSELEX手順を用いて行った(図31、パネルA)。パネルBは、表示された各選択回数後に得られた一本鎖DNAのトロンビン結合活性を示す。測定可能なトロンビン結合活性は4回目の選択後に現れ、12回目の選択後に最大値に達した。過剰量のTHR22の存在下で結合を測定した。12回目の選択後に得られたDNAをクローニングし、各クローンから得られたDNAを配列決定した。パネルCは、それぞれのクローンの配列アラインメント(ClustalXを使用)を示す。4回の独立した選択実験により得られたクローンが示されている。これらの選択は、以下にあげたアプタマー構築物とランダム配列含有構築物のペアを用いて行った:THR22とTHR11;THR25とTHR11;THR42とTHR11;THR43とTHR11。いくつかの、高度に保存された配列のファミリーがパネルC中で容易に見られる。
【0109】
テキサスレッド標識されたTHR27と、図31Cのクローン20〜26に対応する配列を含むフルオレセイン標識されたTHR35あるいはTHR36とを含む機能的なトロンビンセンサーが図32に示されている。THR35とTHR36は、クローン20〜26の配列に隣接するDNA配列の長さの点で異なる。20nM(パネルA)あるいは100nM(パネルB)の標示されたトロンビンセンサーと表示された濃度のトロンビンとを含むマイクロプレートのウェルの蛍光像(感作アクセプター発光)が示される。比較のため、THR21とTHR27を含むセンサーも示される。
【0110】
図33は、2つの異なるエピトープでトロンビンに結合する2つのアプタマーの同時選択をまとめている。アプタマーの選択は、30ヌクレオチド長のランダム配列を含む2つの構築物(THR49とTHR50)から始まるSELEX手順を用いて行った(パネルA)。表示された各回の選択後に得られる一本鎖DNAの混合物のトロンビン結合活性がパネルBに示されている。測定可能なトロンビン結合活性は、6回目の選択後に現れ、14回目の選択の後に最大値に達した。14回目の選択後に得られたDNAをクローニングし、個々のクローンから得られたDNAを配列決定した。パネルCはクローンの配列アラインメント(ClustalXを使用)を示す。いくつかの高度に保存された配列のファミリーが容易に見い出せる。
【0111】
アプタマーを基礎とした分子ビーコンをcAMP反応エレメント結合タンパク質(“CRP”)について開発した。タンパク質のDNA結合部位とは異なる部位に結合するアプタマーを選択した。CRP結合部位を含む構築物〔MIS11とハイブリダイズしたMIS10X3〕の過剰量の存在下で、33ヌクレオチド長のランダム配列を含む構築物(MIS12)から始めてSELEX手順を用いてアプタマーが選択された(図34、パネルA)。各会の選択後に得られた一本鎖DNAのCRP結合活性が図34、パネルBに示されている。測定可能なCRP結合活性は6回目の選択後に現れ、12回目の選択後に最大値に達した。MIS11とハイブリダイズしたMIS10X3の過剰量の存在下で結合を測定した。12回目の選択後に得られたDNAをクローニングし、各クローンから得られたDNAを配列決定した。クローンの配列アラインメント(ClustalXを使用)はパネルCに示されている。約16ヌクレオチド長の保存されたコア配列が同定できた。
【技術分野】
【0001】
親出願に関する記載
この特許出願は2003年12月12日に出願された米国仮出願番号60/529、076からの優先権を主張する。
【0002】
政府援助
この研究業務は保健福祉省/国立衛生研究所に支援されており(補助番号CA94356)、アメリカ政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【0003】
配列リスト
紙にコピーした配列リストと、同じ配列のコンピューターで読み取り可能な形式とは下に添付され、本明細書に参照により取り込まれる。37 C.F.R.1.821(f)に従い、コンピューターで読み取り可能な形式で記録された情報は記載された配列リストと同一のものである。
【0004】
発明の分野
本発明は、キット(kit)、分子ビーコン(molecular beacon)、および任意のポリペプチド、アナライト(analyte)、大分子複合体(macromolecular complex)あるいはその組み合わせ方法を検出する方法に関係するものである。本発明はバイオメディカル研究ツールと診断キットに関係している。
【背景技術】
【0005】
バックグラウンド技術
我々の環境、食物、水、生物サンプル(血液、脳脊髄液、尿など)の中の特定分子の検出、同定、および定量は、非常に複雑、高価、かつ時間もかかるものでありえる。これらの方法にはガスクロマトグラフィー、質量分析、DNA配列決定、免疫分析、細胞を基礎とする分析、生物分子ブロットおよびゲル、および無数の多段化学および物理分析法が含まれる。
【0006】
生物あるいは環境サンプル中の特定タンパク質のレベルを検出および測定する簡便な方法が強く求められ続けている。タンパク質を検出しそのレベルを測定することは生物医学研究における最も基礎的でかつよく行われる方法の一つである。抗体ベースのタンパク質検出方法は研究および医学的診断において非常に有用であるが、迅速かつハイ・スループットな並列タンパク質検出(parallel protein detection)によく適合するものではない。
【0007】
以前に、本発明者は、タンパク質の特定のサブクラス(つまり配列特異的DNA結合タンパク質)を検出するための蛍光センサー法を開発した(Heyduk、T.; Heyduk、E.Nature Biotechnology 2002、20、171-176; Heyduk、E.;Knoll、E.;Heyduk、T.Analyt.Biochem.2003、316、1-10; 米国特許番号6、544、746および係属中の特許出願番号10/062、064、PCT/US02/24822とPCT/US03/02157、これらは参照により本明細書に取り込まれる)。
【0008】
この方法はタンパク質のDNA結合部位を2つのDNA半部位(half-sites)に分けることに基づいている。生じる半部位の各々は、2つのDNA半部位が完全に機能的なタンパク結合部位を再構成するように結合するいくらかの傾向を導入するように設計された長さの、短い相補的一本鎖部位を含んでいる。この傾向は、タンパク質が存在しない時はDNA半部位のほんの一部のみが結合するように、低く設計されている。タンパク質が反応混合液の中に存在する時、それは完全に機能的な結合部位にのみ結合する。この選択的結合は、DNA半部位の結合を促進し、このタンパク質依存的な結合は、目標タンパク質の存在を知らせる分光的シグナルを生み出すのに用いられる。
【0009】
単語「分子ビーコン」当業界で前記検出を述べるのに用いられ、選択的認識と、認識を知らせるシグナルの発生が検出の際に同時に起こることを強調している。いくつかのタンパク質について、DNA結合タンパク質用分子ビーコンが開発されており、その一般的適用可能性について示している(Heyduk、T.; Heyduk、E. Nature Biotechnology 2002、20、171-176、参照により本明細書に取り込まれる)。その物理的作用機構は確立されており、DNA結合タンパク質に結合するリガンドの存在を検出するアッセイ用のプラットホームとしても用いられている(Heyduk、E.; Knoll、E.; Heyduk、T、; Analyt.Biochem.2003、316、1-10; Knoll、E.; Hetduk、T.Analyt.Chem.2004、76、1156-1164; Heyduk、E.; Fei、Y.; Heyduk、T.Combinatorial Chemistry and High-throughput Screening 2003、6、183-194、参照により本明細書に取り込まれる)。このアッセイはすでにかなり有用だが、このアッセイは天然のDNA結合活性を示すタンパク質に限定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許番号6、544、746
【特許文献2】PCT/US02/24822
【特許文献3】PCT/US03/02157
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Heyduk、T.; Heyduk、E.Nature Biotechnology 2002、20、171-176
【非特許文献1】Heyduk、E.;Knoll、E.;Heyduk、T. Analyt.Biochem.2003、316、1-10
【非特許文献1】Knoll、E.; Hetduk、T. Analyt.Chem.2004、76、1156-1164
【非特許文献1】Heyduk、E.; Fei、Y.; Heyduk、T.Combinatorial Chemistry and High-throughput Screening 2003、6、183-194
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
分子ビーコンとしてのアプタマー
タンパク質検出のための簡便で、特異的で高感度のハイ・スループットアッセイの開発は、依然として非常に重要な目標である。このようなアッセイは研究、創薬および医学診断に応用できる。これまでのところ、目標のタンパク質を認識する抗体が、大部分のタンパク質検出アッセイの最重要物である。インビトロ(in vitro)で、一群のランダムな配列の核酸の中から目標タンパク質を認識するアプタマーを選択する方法は、最初の本当の抗体の替代物を提供した。アプタマーの潜在的な利点の一つは、オリゴヌクレオチドを増やし合成するのが容易であるということである。さらに、例えば蛍光プローブなどのレポーター基を含むアプタマーを設計するのに標準的な核酸化学操作を用いうる。このため、様々なフォーマットのタンパク質の検出アッセイにおいてアプタマーを使用することについてかなりの関心があることには疑いがない。最も有望な路線は、目標タンパクの認識と該タンパクの存在を知らせる光学的シグナルの産生を組み合わせるアプタマーを基礎としたセンサーの開発である。
【0013】
いくつかの発行された報告では、特定のタンパク質と結合した際に蛍光シグナルを発するアプタマーを基礎とした「分子ビーコン」の巧妙な設計について述べられている。これらの設計は全て、蛍光シグナルの変化を生み出す、目標タンパク質によって誘導されるアプタマー中の構造遷移に依存している。YamomotoとKumer(Genes to Cells 2000、5、389-396)は、HIVのTatタンパク質認識の際に蛍光シグナルが増強した分子ビーコンアプタマーを記載している。蛍光シグナルは、Tatタンパク質に誘導されるアプタマーのヘアピン構造と二重らせん構造の間の遷移に起因する、蛍光団−消光剤間の近さの変化によって生み出される。Hamaguchiらは(Analyt.Biochem.2001、294、126-131)トロンビン認識の際に蛍光を増強させた分子ビーコンアプタマーを記載している。目標タンパク質が存在しない時、このビーコンは蛍光団と消光団を近接させるようにステム−ループ構造を形成するように設計されている。該タンパク質が存在する時、ビーコンはリガンド結合構造をとらされ、その結果蛍光団と消光剤の間の距離が開き、蛍光シグナルは増強される。Li.らは(Biochem.Biophysics.Res.Commun.2002、292、31-40)は、目標タンパク質の存在時に緩いらせんから稠密な単分子四重らせんへの遷移を行う分子ビーコンアプタマーを記載している。このタンパク質に誘導されるアプタマー構造の変化は、アプタマーの末端に結合した蛍光プローブの間の近さの変化を生じ、蛍光シグナルの変化を生み出す。類似の手法がPDGFを認識する分子ビーコンアプタマーを設計するためにFangら(ChemBioChem.2003、4、829-834)に用いられた。これらの例は、タンパク質の存在を光学的シグナルに変換できるセンサーを設計するためのアプタマーの大きな可能性を示している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明者は、先のセンサーの設計を成功裏に押し広め、これらセンサーをタンパク質および天然の核酸結合活性を持たないその他のアナライトへの配列特異的ヌクレオチド結合の検出に先に適用されたセンサーの設計を一般化することに成功し、これらセンサーの応用範囲を拡大した。簡単に言えば、配列特異的なDNA結合タンパク質を認識する天然のDNA配列を、ランダム配列のプールからインビトロ選択によって得られた、特定の目標タンパク質に結合する核酸によって置き換えた。インビトロSELEX(指数的濃縮によるリガンドの体系的進化)の手法を使用して天然のDNA結合活性を欠くタンパク質に特異的に結合できる核酸(DNAまたはRNA)アプタマーを生み出せることが良く確立された(Tuerk、C.;Gold、L.Science 1990、249、505-510;Gold、L.;Polisky、B.;Uhlenbeck、O.;Yarus、M.Ann.Rev.Biochem.1995、64、763-797;Wilson、D.S.;Szostak、J.W.Ann.Rev.Biochem.1999、68、611-647)。SELEXは、結合、非結合配列の洗い落とし、および目標結合配列のPCR増幅のサイクルによってランダムDNA(またはRNA)配列プールから特定の目標に結合する核酸配列を選択することを伴う。様々なタンパク質およびその他の目標分子に特異的に結合するアプタマーを成功裏に選択した多数の例(Turek 1990、Polisky 1995およびWilson 1999)は、数多くの天然タンパク質に対するアプタマーを作り出すことが可能であることを強く示している。
【0015】
発明者は係属中の特許出願10/062、064(参照により本明細書に取り込まれる)に記載された近接性を基礎としたアッセイの応用を、核酸結合因子、そのリガンドおよび共調節因子を超えて、任意のポリペプチド(プリオンその他の誤って折り畳まれたタンパク質を含む)アナライト、小分子リガンドあるいは大分子複合体をも含むようにすることをさらに可能とする組成物と方法を開発した。
【0016】
本発明は、各アプタマーの末端に短い(好ましくは約5〜7ヌクレオチドの)相補的一本鎖ポリヌクレオチド配列(シグナリングオリゴと呼ばれる)を含む一群の標識アプタマーの使用に関する。アプタマー群中の各アプタマーは、ポリペプチドあるいは大分子複合体の特異的かつ異なるエピトープに結合する;つまりアプタマー群のうち第1のアプタマーはポリペプチドあるいは大分子複合体の第1のエピトープに結合し、アプタマー群のうち第2のアプタマーはこのポリペプチドあるいは大分子複合体の第2のエピトープと結合する。ポリペプチドあるいは大分子複合体が存在する時、各アプタマーの末端の短い相補的な一本鎖ポリヌクレオチド配列が互いに安定に結合するように、第1のアプタマーは第1のエピトープと結合し、第2のアプタマーは第2のエピトープと結合する、第1のアプタマー末端の短い一本鎖ポリヌクレオチド配列が、第2のアプタマー末端の短い一本鎖ポリヌクレオチド配列に安定に結合する時、第1のアプタマー上の標識は第2のアプタマー上の標識に接近し、測定可能なシグナルを生み出す。言い換えれば、任意のポリペプチドあるいは大分子複合体に結合する2つ以上の新規な核酸半部位を作製し、任意のポリペプチドあるいは大分子複合体を検出するための近接性を基礎とするアッセイに用いることができる。アプタマー群は柔軟なリンカーによって結合されて二価アプタマー構築物を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】タンパク質検出用の分子ビーコンの全体設計。(A)天然のDNA結合活性を有さないタンパク質用の設計のバリエーション。この場合のビーコンはタンパク質の2つの異なるエピトープを認識するように開発された2つのアプタマーからなるであろう。(B)天然のDNA結合活性を有するタンパク質用の設計バリエーション。この場合のビーコンはタンパク質結合部位に対応するDNA配列を含む短いDNA二本鎖と、タンパク質の異なるエピトープを認識するように開発されたDNA(RNA)アプタマーとからなるであろう。
【図2】第1のアプタマー(A)の結合部位とは異なるエピトープ、あるいはタンパク質(B)の天然の結合部位を含む核酸の結合部位とは異なるエピトープ、についてのコアプタマーを作製する方法。
【図3】DNA結合タンパク質(A)用分子ビーコンの設計と、タンパク質(B)の2つの異なるエピトープに対するアプタマーに基づいてタンパク質を検出する分子ビーコンの比較。
【図4】トロンビンにフィブリノゲンエクソサイト(60−18[29])およびヘパリン エクソサイト(G15D)で結合するアプタマーを含むアプタマー構築物。
【図5】フルオレセイン標識アプタマーのトロンビンへの結合。(A)蛍光偏光で検出された60−18[29]アプタマー(THR1)(50nM)の結合;(B)蛍光強度の変化により検出されたG15Dアプタマー(THR2)(50nM)の結合;(C)フルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)(20nM)のトロンビンによる定量的平衡滴定。実線はアプタマーとトロンビンの間の1:1複合体形成を記述した方程式への実験データの非線形適合;(D)十倍過剰量の非標識60−18[29]のアプタマー(THR3)の存在かにおける、フルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)(20nM)のトロンビンによる定量的平衡滴定。実線はアプタマーとトロンビンの間の1:1複合体形成を記述した方程式への実験データの非線形適合。
【図6】トロンビンへの結合についての、トロンビンアプタマー構築物とフルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)の間の競合。競合物がない時(A)、150nMのTHR3の存在下(B)、150nMのTHR4の存在下(C)、および150nMのTHR7の存在下(D)におけるトロンビンあり、および無しでの、50nMのフルオレセイン標識G15D(THR2)の蛍光スペクトル。
【図7】トロンビンへの結合に関する、トロンビンアプタマー構築物とフルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)の間の競合を検出する実験の概要。競合物(250nM)の非存在下および存在下におけるフルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)(50nM)の蛍光強度を、競合物の存在下における結合THR2の%を決定するのに用いた。トロンビンの濃度は75nMであった。図中に示された解離定数の値は、200nMのフルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)、200nMの競合物および150nMのトロンビンを用いた別個の実験から計算された。
【図8】60−18[29]アプタマー(THR3)が、フルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)とTHR5構築物の間のトロンビンへの結合についての競合について与える影響。トロンビン(150nM)の存在下および非存在下における、(A)競合物の非存在下、(B)1000nMのTHR3と200nMのTHR5の存在下、(C)1000nMのTHR3の存在下、および(D)200nMのTHR5の存在下での200nMのフルオレセイン標識G15D(THR2)の蛍光スペクトル。
【図9】ゲル電気泳動移動率シフトアッセイにより検出されたTHR7アプタマー構築物のトロンビンへの結合。417nMのTHR7のサンプルを様々な量の(0〜833nM)のトロンビンと共にインキュベートし、15分のインキュベーション後に10%の天然プロピレンゲル上にロードした。(A)Sybr Greenで染色されたゲルのイメージ。(B)トロンビン濃度の関数としての、THR7−トロンビン複合体に相当するバンドの強度。
【図10】二価トロンビンアプタマー構築物のファミリーで、G15Dと60−18[29]アプタマーが、9−27個のヌクレオチド長のpolyTリンカーによって20bp二本鎖DNAに連結されたもの。
【図11】ゲルシフト法(EMSA)によって検出された、トロンビンの図8中に示された二価アプタマー構築物(各33nM)への結合。星印は、トロンビンが9ヌクレオチド長のポリTリンカーを有する構築物と比較して27ヌクレオチド長および17ヌクレオチド長のpolyTリンカーに選択的に結合することを最もよく示しているレーンを示す。トロンビンの濃度は0から400nMの間で変化された。
【図12】17ヌクレオチド長のpolyTリンカーで9bpの蛍光団(あるいは消光剤)標識“シグナル”二本鎖に連結されたG15Dと60−18[29]アプタマーを用いたトロンビンビーコンの設計。(A)フルオレセイン標識G15D構築物(THR9)とダブシル標識60−18[29]構築物(THR8)のヌクレオチド配列。(B)トロンビンビーコンによるシグナル機構。(C)トロンビンをトロンビンビーコンに加えた際に検出される蛍光シグナル変化。比較のため、ダブシル標識60−18[29]構築物(THR8)の非存在下でのフルオレセイン標識G15D構築物(THR9)トロンビンによる滴定も示される(ドナーのみの曲線)。
【図13】5個のスペーサー18単位を含むリンカーを介して9bpの蛍光団(あるいは消光剤)標識“シグナル”二本鎖に連結されたG15Dと60−18[29]のアプタマーを用いたトロンビンビーコンの設計。(A)フルオレセイン標識G15D構築物(THR21)とダブシル標識60−18[29]構築物(THR20)のヌクレオチドの配列。(B)トロンビンビーコンによるシグナル機構。(C)トロンビンをトロンビンビーコンに加えた際に検出される蛍光シグナルの変化。比較のため、ダブシル標識60−18[29]構築物(THR20)が存在しない場合のフルオレセイン標識G15D構築物(THR21)のトロンビンによる滴定も示す(ドナーのみの曲線)。挿入図は、主グラフの各データ点に対応する様々なトロンビン濃度において記録される蛍光発光スペクトルを示す。
【図14】ゲルシフト法によって検出された、トロンビンの図13中に示されたビーコン(THR20/THR21)への結合。ゲルはフルオレセイン発光で画像化された(つまり、ビーコンのTHR21成分のみが見える)。
【図15】(A)2つの異なるビーコン濃度でのトロンビン検出の感度。赤丸:50nMのTHR21と95nMのTHR20。青丸:5nMのTHR21と9.5nMのTHR20。(B)ビーコンのトロンビンに対する特異性。50nMのTHR21と95nMのTHR20がトロンビン(赤丸)およびトリプシン(青丸)で滴定された。
【図16】競合的アプタマー構築物によるトロンビンビーコンシグナルの反転。競合物DNAの濃度を増加させながら、50nMのTHR21、95nMのTHR20および100nMのトロンビンの蛍光強度を測定した。実験数値は、初期のビーコンとトロンビンの混合物のシグナル(Fo)に対する相対的蛍光増加量としてプロットされている。塗りつぶされていない青の四角:THR7;塗りつぶされた黒丸:THR14/THR15;塗りつぶされた赤の四角:THR16/THR17;塗りつぶされた青の三角:THR18/THR19;塗りつぶされていない赤の三角:THR3;塗りつぶされた緑の逆三角:THR4;塗りつぶされていない黒の三角:非特異的一本鎖DNA。
【図17】タンパク質検出用分子ビーコンを示す。DNA結合タンパク質用分子ビーコン(A)と、タンパク質の2つの異なるエピトープに対するアプタマーを基礎としたタンパク質検出用分子ビーコン(B)の設計の比較。
【図18】アプタマー構築物のトロンビンへの結合を示す。(A)5’フルオレセイン部位の蛍光強度の変化によって検出されたG15Dアプタマー(THR2)(50nM)の結合;実線は実験データの単純な1:1結合等温線への最適適合を示す。(B)10倍過剰量の未修飾60−18[29]アプタマーの存在下でのG15Dアプタマー(THR2)の結合;実線は実験データの単純な1:1結合等温線への最適適合を示す。(C)トロンビンアプタマー構築物とフルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)の間の競合を検出する実験の概要。THR2(200nM)の蛍光の強度が、競合物(200nM)の存在下における結合THR2の%を決定するために用いられた。トロンビンは150nMであった。各棒の上の表示は、THR2アプタマーの親和性と比較した場合の競合物の相対的親和性(親和性定数の増加倍率で表示)を示す。(D)ゲルシフトアッセイによって検出されたTHR7アプタマー構築物のトロンビンへの結合。THR7−アプタマー複合体に対応するバンドの強度をトロンビン濃度の関数としてプロットした。挿入図:sybr Greenによって染色されたゲルの画像。蛍光の変化(%)は100×(I−I0)/I0として計算された。ここでIおよびI0はそれぞれ所定濃度のトロンビンの存在および非存在下で観察される、希釈補正蛍光発光強度に対応する。
【図19】トロンビンビーコンの設計を示す。G15Dと60−18[29]のアプタマーが5個のスペーサー18単位を含むリンカーにより7bpの蛍光団(あるいは消光剤)標識シグナル二本鎖に連結された。(A)フルオレセイン標識G15D構築物(THR21)とダブシル標識60−18[29]構築物(THR20)のヌクレオチド配列。Xはスペーサー18部位に対応する。(B)トロンビンビーコンによるシグナル機構。(C)トロンビンビーコンにトロンビンを加えた際に検出される蛍光シグナル変化。比較のため、ダブシル標識60−18[29]構築物(THR20)の非存在下での、フルオレセイン標識G15D構築物(THR21)のトロンビンによる滴定も示す(ドナーのみの曲線)。シグナル変化(%)は100×(I−Io)/I0として計算される。ここでIおよびIoはそれぞれ所定濃度のトロンビンの存在および非存在下で観察される、希釈補正蛍光発光強度に対応する。挿入図は主グラフの各データ点に対応する種々のトロンビン濃度において記録された蛍光発光スペクトルを示す。
【図20】種々の組み合わせのドナー−アクセプター蛍光団を備えたトロンビンビーコンのバリエーションを示す。(A)フルオレセイン−ダブシル;(B)フルオレセイン−テキサスレッド;(C)フルオレセイン−Cy5;(D)Cy3−Cy5。トロンビンの非存在下(黒線)および存在下(赤線)でのビーコンの発光スペクトルが示される。挿入図は対応するビーコンと表示された濃度のトロンビンを含むマイクロプレートのウェルの偽カラー画像を示す。画像はBio−Rad Molecular Imager FXで得られたもので、以下の励起−発光設定を用いた:(A)488nmレーザー−530nmバンドパスフィルター;(B)488nmレーザー−640nmバンドパスフィルター;(C)488nmレーザー−695nmバンドパスフィルター;(D)532nmレーザー−695nmバンドパスフィルター。蛍光値は任意単位(測定機器反応について補正)で表され、線形スケールにプロットされている。
【図21】様々な組み合わせのドナー−アクセプターペアを有するビーコンの反応曲線。(A)フルオレセイン−ダブシル;(B)フルオレセイン−テキサスレッド;(C)Cy3−Cy5;(D)フルオレセイン−Cy5;(E)ユーロピウムキレート−Cy5;(F)飽和トロンビン濃度において法事されたドナー−アクセプターペアについて観察されるシグナル変化の倍率。挿入図は低トロンビン濃度におけるデータ点の拡大図を示す。全ての実験において5nMのドナーで標識され、5.5nMのアクセプターで標識されたアプタマー構築物が用いられた。シグナル変化(倍率)は100×(I−Io)/I0として計算される。ここでIおよびIoはそれぞれ所定濃度のトロンビンの存在および非存在下で観察される、希釈補正蛍光発光強度に対応する。シグナル変化を計算する前に、IおよびIoから緩衝液のバックグラウンドを差し引いた。
【図22】トロンビンビーコンの感度のドナー−アクセプターペアへの依存を示す。低トロンビン濃度で、フルオレセイン−ダブシルペア(三角形)、フルオレセイン−テキサスレッドペア(逆三角形)、およびフルオレセイン−Cy5ペア(丸)で標識されたビーコンを使用して、10nMのドナーで標識され11nMのアクセプターで標識されたビーコンの反応が決定された。四つの独立した実験の平均と標準偏差が示されている。シグナル変化(倍率)図5と同様に計算された。
【図23】トロンビンビーコンの再現性と安定性を示す。(A)四つの異なるトロンビン濃度における、5つの独立したビーコンシグナルの決定が行われた。示されたデータは平均値+/−標準偏差を示す。(B)四つのトロンビン濃度におけるトロンビンビーコンシグナルを最大24時間にわたり測定した。示された数値は5回の独立した測定の平均値+/−標準偏差を示す。本実験中では、5nMのフルオレセイン標識アプタマー(THR21)と5.5nMのテキサスレッド標識アプタマー(THR27)を含むビーコンを用いた。シグナル変化(倍率)の計算は、緩衝液バックグラウンドを差し引かなかった点を除けば図5と同様に行った。
【図24】トロンビンビーコンのZ’因子(Z’-factor)の決定を示す。プロットの中央のパネルは、グラフに示された実験(上半部のウェルは+トロンビン、下半部のウェルは−トロンビン)に対応するマイクロプレートウェルの偽カラー画像を示す。実験では、5nMのフルオレセイン標識アプタマー(THR21)と5.5nMのテキサスレッド標識アプタマー(THR27)を用いた。シグナルは、ドナー励起によって測定されたアクセプターの対ドナー発光強度比(任意単位で表示)に対応する。
【図25】複合体混合液中でのトロンビンの検出を表す。(A)過剰量の無関係なタンパク質の存在下における1nMのトロンビン濃度での、トロンビンビーコンの反応。示されたデータは4つの独立な実験の平均値と標準偏差である。(B)種々の量のトロンビンでスパイクされたHeLa細胞抽出物中でのトロンビンの検出。示されたデータは三つの独立な実験の平均値と標準偏差である。細胞抽出物中のトロンビン濃度は:1.88nM(淡灰色の棒);3.75nM(濃灰色の棒);7.5nM(黒棒)。ビーコン混合液単体のシグナルは、細胞抽出物(トロンビン未添加)がある時(図には示されていない)より約25%低く、細胞抽出物および特異的競合物の存在下で観察されたシグナルとほぼ同じであった。(C)トロンビンビーコンで観察された、Xa因子によって触媒されるプロトロンビンからトロンビンへの変換の時間的経過。(D)血漿中でのトロンビンの検出。示されたデータは四つの独立な実験の平均値と標準偏差である。用いられた血漿の体積(アッセイ混合液20μlあたり)は:0.005μl(淡灰色棒);0.015μl(濃灰色棒);0.045μl(黒棒)。「特異的」は未標識トロンビンアプタマー競合物を指し(THR7)、「非特異的」は30ヌクレオチド長のランダム配列のDNAを指す。パネルA、B、およびD中のシグナルは、ドナー励起によって測定されたアクセプターの対ドナー発光強度比(任意単位で表示)を示す。ビーコン混合液単体(AとD)および細胞抽出物が存在する時のビーコン混合液(B)、の値が1となるようにシグナルを規格化した。パネルCは生のアクセプター蛍光強度(アクセプター励起下)を示す。
【図26】センサーのバリエーションを示す。
【図27】図26のFに示されたセンサー設計の実験的証明を示す。(A)センサー機能の原理。(B)DNA結合タンパク質の濃度を増加させた場合の、ドナーとアクセプターの標識センサー成分の混合物に対する滴定の際の、感作アクセプターの蛍光の増加。
【図28】図26のGに示されたセンサー設計の機能の実験的証明を示す。(A)センサー機能の原理。(B)2つのドナーおよびアクセプター標識センサー成分の混合物(−で示されるスペクトル)にセンサー要素に相補的な2つの異なる配列エレメントを含む一本鎖DNAを加えた場合の感作アクセプター蛍光の増加(+で表される発光スペクトル)。
【図29】目標大分子を認識する単一の要素に基づいたアッセイと比べた場合の、我々のセンサー設計の有する増加した特異的の実験的証明を示す。
【図30】図26に示されたセンサー用アプタマーを作る方法を示す。
【図31】G15Dアプタマーの結合部位とは異なるエピトープにおいてトロンビンに結合するアプタマーの選択の概要を示す。
【図32】図31パネルCのクローン20−26中の配列に対応する配列を含む、テキサスレッド標識THR27およびフルオレセイン標識THR35あるいはTHR36を含む機能的トロンビンセンサーの証明を示す。
【図33】2つの異なるエピトープにおいてトロンビンと結合する2つのアプタマーの同時選択の概要を示す。
【図34】CRPタンパク質と、該タンパク質のDNA結合部位でない部位で結合するアプタマーの選択の概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一つの実施形態は、ポリペプチドあるいは生体大分子複合体の第1のエピトープと第2のエピトープにそれぞれ結合する第1のアプタマーと第2のアプタマーを製造することを含む方法である。アプタマーは、指数的濃縮によるリガンドの体系的進化(a.k.a.SELEX;Klug、S.;Famulok、M.、All you wanted to know about SELEX.Mol.Biol.Reports 1994、20、97-107、参照により本明細書に取り込まれる)などのインビトロ選択を使ってアプタマーを作ることができる。あるいは、一つ以上の既存のアプタマーあるいは天然の同族核酸を、末端に標識と短い一本鎖ポリヌクレオチド配列を含むように変化して、ポリペプチド、アナライト、あるいは大分子複合体を検出するのに用いることができる。
【0019】
本発明の別の実施形態では本願は、ポリペプチドあるいは大分子複合体の第1のエピトープを認識し第1のシグナリングオリゴを含む第1のアプタマー構築物と、ポリペプチドあるいは大分子複合体の第1のエピトープを認識し第1のシグナリングオリゴを含む第2のアプタマー構築物とを含む二価アプタマーに関係し、ここで第1のアプタマー構築物と第2のアプタマー構築物は柔軟なリンカーによって互いに結合されている。好ましい実施形態では、第1のアプタマー構築物は第1の標識を含み、第2のアプタマー構築物は検出のための第2の標識を含む。
【0020】
この二価アプタマー構築物は、分子と大分子複合体の検出にとどまらず非常に多くの応用範囲で有用であると想定される。この二価アプタマーは抗体と同様にして用いることができる。例えば、分子と複合体の検出、分子と複合体の精製、エピトープと抗原のブロッキング、生物内の免疫反応(先天性および特異的の両者)の促進、疾病の治療および対象への受動免疫の付与である。好ましい対象はヒト、家畜、あるいはペットである。
【0021】
二価アプタマーは細胞あるいは組織中の分子の相互作用の阻害、あるいは細胞や組織中分子の相互作用を促進することで患者に所望の治療結果をもたらす治療組成物として用いることができることがさらに想定される。好ましい対象はヒト、家畜、あるいはペットである。
【0022】
アプタマー構築物あるいは二価アプタマー構築物は、医学あるいは獣医学の診断、あるいは安全で有效な有力な薬物製品を同定するのを助ける薬学的スクリーニングにも使用できることが想定される。
【0023】
別途定義されない限り、本明細書中の技術的および科学的用語は全て、本発明の属する分野の当業者が共通して理解するのと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるのと同様あるいは等価な任意の方法あるいは材料が本発明の実施あるいは試験において用いられうるが、好ましい方法と材料を記載する。本発明のために、以下の用語を下記のように定義する。
【0024】
「アプタマー」の語は生化学的活性、分子認識または結合属性に関して有用な生物学的活性を有する任意のポリヌクレオチド、一般にRNAまたはDNAを指している。通常、アプタマーはポリペプチドの特定のエピトープ(領域)においてポリペプチドに結合する、あるいは酵素活性を有するなどの分子活性を有する。任意のポリペプチドに結合する際に特異的であるアプタマーがインビトロ進化で合成および/または同定できることが一般に受け入れられている。
【0025】
「天然の同族結合エレメント配列」の語は核酸結合因子の結合部位として働くヌクレオチドの配列を指している。好ましくは天然の同族結合エレメント配列は天然のヌクレオチド結合因子によって認識される天然の配列である。
【0026】
「分子認識構築物」の語は「エピトープ結合剤」を含み、また「分子ビーコン」として働くことができる構築物を指す。好ましくは、分子認識構築物は「シグナリングオリゴ」と「標識」をも含む。第一の分子認識構築物と第二の分子認識構築物は「リンカー」で連結されて「二価分子認識構築物」を形成してもよい。「分子ビーコン」は検出方法として測定可能な読み出しシステムを用いる、アナライト、ポリペプチドその他の生体分子、生体分子を含む大分子複合体、あるいは生物学的共調節因子(biological coregulator)を検出し定量化するための任意の化学を基礎としたシステムを指す。分子認識構築物あるいは二価分子認識構築物は、よりよい特異性および感度を有する特定のタイプの分子ビーコンである。
【0027】
「アプタマー構築物」の語は、アプタマーあるいは天然の同族結合エレメント配列を含み、「分子ビーコン」として働くことができる構築物を指す。好ましくは、アプタマー構築物は「シグナリングオリゴ」と「標識」も含む。第1のアプタマー構築物と第2のアプタマー構築物は「リンカー」で連結され、「二価アプタマー構築物」を形成してもよい。アプタマー構築物は、分子認識構築物の部分集合である。アプタマー構築物あるいは二価アプタマー構築物もよりよい特異性および感度を有する特定の形式の分子ビーコンである。
「抗体」の語は一般に、抗原のエピトープを認識し、結合できるポリペプチドあるいはタンパク質を意味する。ここで抗体は当業界で理解されるような完全な抗体(つまり2つの重鎖と2つの軽鎖からなる)でもよいし、あるいは抗体は、Fab断片や超可変領域を含むペプチドのような完全抗体の断片でもよい。
【0028】
「エピトープ結合剤」の語は、抗原、ポリペプチド、タンパク質、あるいは大分子複合体の特定のエピトープに結合できる任意の物質を指す。エピトープ結合剤の非限定的な例はリガンドとリガンドの断片、レセプターとレセプターの断片、抗体と抗体の断片、アプタマーその他のポリヌクレオチド、補酵素その他の共調節因子、およびアロステリック分子とイオンを含む。好ましいエピトープ結合剤は、アプタマー、天然同族結合エレメント配列、抗体およびその断片が含まれる。
【0029】
「エピトープ」の語は一般に、抗原、ハプテン、分子、ポリマー、プリオン、ビリオン、細胞、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、あるいは大分子複合体の特定の領域を指す。エピトープはより大きなポリペプチドに由来する小ペプチドからなっていてもよい。エピトープは、ポリペプチド、タンパク質、あるいはいくつかの不連続なペプチド領域あるいはアミノ酸基を含む大分子複合体の二次元あるいは三次元表面、あるいは表面特徴でありうる。
【0030】
「シグナリングオリゴ」の語は、短い(一般に2から15ヌクレオチド長、好ましくは5から7ヌクレオチド長)一本鎖ポリヌクレオチドを指す。好ましくは第1のシグナリングオリゴは第2のシグナリングオリゴに相補的である。好ましくは、第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴは、第3の薬剤の媒介によって第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴが接近しない限りは水素結合による安定な結合を形成できない。
【0031】
本明細書において「リンカー」あるいは「リンカー分子」の語はアプタマーあるいはアプタマー構築物に結合された任意のポリマーを指す。結合は共有結合であるかあるいは非共有結合である。リンカーはアミノ酸あるいはヌクレオチドのポリマーでもよいことが想定される。好ましいリンカー分子は柔軟で、核酸結合因子が核酸成分セットに結合することを妨害しない。好ましいリンカーは、12個の(スペーサー18−フォスフォルアミデート)(Glen Research、Sterling、VA)部分からなる。別の好ましいリンカーは、ポリ−dTである。
【0032】
「インビトロ進化」の語は一般に、生体分子、特にペプチドあるいはポリペプチド、に結合するアプタマーを選択する任意の方法を意味する。インビトロ進化はまた「インビトロ選択」、“SELEX”あるいは“指数的濃縮によるリガンドの体系的進化”としても知られている。簡単に言えば、インビトロ進化は一群のランダムポリペプチドを、生体分子と結合する、あるいは選択可能な特定の活性を有する特定のポリペプチドについてスクリーニングすることを伴う。一般的に、前記特定のポリペプチド(つまりアプタマー)はランダムポリヌクレオチドのプールのごくわずかな割合でしかなく、そのためアプタマー増幅過程(通常はポリメラーゼ連鎖反応)が潜在的に有用なアプタマーの割合を増やすために用いられる。選択と増幅を連続して繰り返すことにより、特定の有用なアプタマーの量が指数的に増加する。インビトロ進化は、Famulok、M.;Szostak、J.W.、In Vitro Selection of Specific Ligand Binding Nucleic Acids、Angew.Chem.1992、104、1001.(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1992、31、979-988.);Famulok、M.;Szostak、J.W.、Selection of Functional RNA and DNA Molecules from Randomized Sequences、Nucleic Acids and Molecular Biology、Vol 7、F.Eckstein、D.M.J.Lilley、Eds.、14 Springer Verlag、Berlin、1993、pp.271;Klug、S.;Famulok、M.、All you wanted to know about SELEX;Mol.Biol.Reports 1994、20、97-107;and Burgstaller、P.;Famulok、M.、Synthetic ribozymes and the first deoxyribozyme;Angew.Chem.1995、107、1303-1306(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1995、34、1189-1192)、(これらは参照により本明細書に取り込まれる)に記載されている。
【0033】
本発明を実施する際に、インビトロ進化は任意の与えられたポリペプチドあるいは大分子複合体上の異なるエピトープと結合する複数のアプタマーを作製するために用いられる。アプタマーは興味のあるエピトープを含む「基質」に対して選択される。ここで「基質」は、アプタマーが結合できるエピトープを含みアプタマーの選択の上で有用な任意の分子的実体である。
【0034】
本明細書中で「標識」の語は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、アプタマー、核酸成分、その他の基質材料に結合でき、検出法によって検出できる物質を指す。本発明に適用可能な標識の非限定的な例は、これに限定されないが、発光分子、化学発光分子、蛍光色素、蛍光消光剤、有色分子、放射性同位元素、シンチラント、質量標識(質量変化から検出)、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、Aタンパク、Gタンパク、抗体あるいは抗体断片、Grb2、ポリヒスチジン、Ni2+、フラッグタグ、mycタグ、重金属、酵素、アルカリンホスファターゼ、ペロキシダーゼ、ルシフェラーゼ、電子ドナー/アクセプター、アクリジニウム・エステル類、および発色基質を含む。当業者は上には挙げられていないが、本発明の操作で用いることの出来る他の有用な標識を容易に認識するであろう。
【0035】
本明細書中で「検出方法」は、分子相互作用を検出する、当業界で知られている任意の方法を意味する。本明細書中で「検出可能なシグナル」は本質的には「検出方法」と同様である。検出方法は、質量変化の検出(例:プラスミン共振)、蛍光変化(例:FRET、FCCS、蛍光の消滅あるいは増強、蛍光偏光)、酵素活性(例:基質の枯渇あるいは生成物の形成(例えば検出可能な色素(アルカリ性ポスファターゼのNBT−BCIPシステムは一例である))、化学発光あるいはシンチレーションの変化(例:シンチレーション近接アッセイ、発光共鳴エネルギー移動、生物発光共鳴エネルギー移動など)を含む。
【0036】
本明細書中で「アナライト」は一般に、リガンド、化学構造部分、化合物、イオン、塩類、金属、酵素、細胞内シグナル伝達経路のセカンド・メッセンジャー、薬物、ナノ粒子、環境的汚染物質、毒素、脂肪酸、ステロイド、ホルモン、炭水化物、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質その他アミノ酸ポリマー、微生物、ウイルス、あるいはアプタマーへの結合のためにエピトープを形成するかエピトープの利用可能性を変化させるようにポリペプチド、タンパク質、あるいは大分子複合体に結合できる任意の他の薬剤、を指す。
【0037】
本明細書中で「大分子複合体」の語は、大分子を含む任意の組成物を指す。好ましくは、これらは互いに会合した一つ以上の大分子(ポリペプチド、脂質、炭水化物、核酸、天然あるいは人工ポリマーなど)の複合体である。会合は大分子複合体の成分間での共有的あるいは非共有的な相互作用を伴っていても良い。大分子複合体は比較的単純(ポリペプチドに結合したリガンドなど)であってもよいし、比較的複雑(脂質ラフト)でもよく、非常に複雑(細胞表面、ウイルス、細菌、胞子など)でもよい。大分子複合体は本質的に生物性でも非生物性でもよい。
【0038】
一つの実施形態では、本発明は、サンプルを第1の分子認識構築物と第2の分子認識構築物とに接触させるステップと、検出方法によって第1と第2の分子認識構築物の間の安定な相互作用を検出するステップとを含む、サンプル中のポリペプチドを検出する方法に関する。いくつかの有用な分子認識構築物の組み合わせ(センサー)のバリエーションが本発明者によって想定され、図26中に図示されている。パネルAは、タンパク質の2つの異なるエピトープを認識する2つのアプタマーを含むセンサーのバリエーションを示している。パネルBは、DNA結合タンパクへの結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドとタンパクの異なるエピトープを認識するアプタマーを含むセンサーのバリエーションを示す。パネルCは、タンパク質の異なるエピトープを認識する抗体およびアプタマーを含むセンサーのバリエーションを示している。パネルDは、DNA結合タンパクへの結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドとタンパク質の異なるエピトープを認識する抗体とを含むセンサーのバリエーションを示している。パネルEは、タンパク質の異なる2つのエピトープを認識する2つの抗体を含むセンサーのバリエーションを示している。パネルFは、タンパク質の異なる2つのエピトープを認識する2つの二本鎖ポリヌクレオチド断片を含むセンサーのバリエーションを示している。パネルGは、別の一本鎖ポリヌクレオチドの2つの異なる配列エレメントを認識する2つの一本鎖ポリヌクレオチドエレメントを含むセンサーのバリエーションを示している。パネルHは、第1のシグナリングオリゴヌクレオチドで標識された二本鎖ポリヌクレオチド断片(タンパク質の結合部位を含む)と第2のシグナリングオリゴヌクレオチドで標識されたタンパク質を用いる、タンパク質−ポリヌクレオチド複合体の形成の直接検出を可能にするセンサーのバリエーションを示している。パネルIは、それぞれシグナリングオリゴヌクレオチドで標識された2つの対応するタンパク質を用いる、タンパク質−タンパク質複合体の形成の直接検出を可能にするセンサーのバリエーションを示している。
【0039】
好ましい実施形態では、第1と第2の分子認識構築物はアプタマー構築物であり、第1アプタマー構築物はポリペプチド上のエピトープ(つまり第1のエピトープ)を認識するアプタマーあるいは天然の核酸配列を含み、第2のアプタマー構築物は同じポリペプチド上の別のエピトープ(つまり第2のエピトープ)を認識するアプタマーあるいは天然の核酸配列を含む(図26、AとBの部分)。好ましくは第1と第2のアプタマー構築物はそれぞれ短い一本鎖オリゴヌクレオチド配列(シグナリングオリゴ)を含んでおり、第1のアプタマー構築物の短い一本鎖オリゴヌクレオチド(つまり第一シグナリングオリゴ)は第2のアプタマー構築物の短い一本鎖オリゴヌクレオチド(つまり第二シグナリングオリゴ)に相補的である。理論に拘束されることを意図するものではないが、2つのアプタマー構築物を一緒にすることができるポリペプチドが存在しない時に互いに安定な相互作用を形成出来ないように、2つのシグナリングオリゴの長さは短くすべきである。好ましくは、シグナリングオリゴは、少なくとも5ヌクレオチド長であり、7ヌクレオチド長を超えない。
【0040】
好ましくは、第1のアプタマー構築物は第1の標識を含み、第2のアプタマー構築物は第2の標識を含み、第1と第2のエピトープを含むポリペプチドの存在下で、第1と第2の標識は相互作用してサンプル中のポリペプチドの存在や量のシグナルとなる検出可能なシグナルを生み出す。好ましくは第1の標識は蛍光ドナーで、第2の標識は蛍光受容体で、検出方法は蛍光シグナル出力の変化を検出である。
【0041】
所望により、第1のアプタマー構築物を表面に固定してもよく、第2のアプタマー構築物を表面に固定してもよく、あるいは両者を表面に固定してもよい〔表面はマイクロタイタープレート、試験管、ビーズ、樹脂、その他のポリマーなどでもよい〕。好ましい実施形態では、第1のアプタマー構築物と第2のアプタマー構築物を柔軟なリンカーで連結して二価アプタマーを形成してもよい。好ましい柔軟なリンカーには、スペーサー18ポリマーおよびデオキシチミジン(dT)ポリマーが含まれる。
【0042】
別の実施形態では、第1と第2のアプタマーはサンプル中の大分子複合体の検出に使用されうる。この実施形態では、前記のように、第1のエピトープは1つのポリペプチド上にあり、第2のエピトープは別のポリペプチド上にあり、大分子複合体が形成される時、前記2つのポリペプチドは接近し、その結果第1のアプタマー構築物と第2のアプタマー構築物が安定した相互作用を形成して検出可能なシグナルを生み出す。また、前記のように、第1と第2のアプタマー構築物は表面に固定されてもよく、互いに柔軟なリンカーで固定されていてもよい。
【0043】
別の実施形態では、第1と第2のアプタマーはサンプル中のアナライトの検出に使用されうる。この実施形態では、分析物がポリペプチドあるいは大分子複合体に結合する時、第1あるいは第2のエピトープが作られあるいは利用可能になり、第1あるいは第2アプタマー構築物と結合する。このため、アナライトが、その同族ポリペプチドあるいは大分子複合体結合パートナーを含むサンプル中にある時、第1のアプタマー構築物と第2のアプタマー構築物は安定な接近状態となり、前記のように検出可能なシグナルを生み出す。また、前記のように第1と第2のアプタマーは表面上に固定されていてもよく、柔軟なリンカーによって互いに固定されていてもよい。
【0044】
本発明の別の実施形態では、本発明は第1と第2のアプタマー構築物を含む1セットのアプタマー構築物を作製する方法に関し、この方法は(a)(第1のエピトープを含む)第1の基質に対して(第1のエピトープに結合できる)第1のアプタマーを選択し、(第2のエピトープを含む)第2の基質に対して(第2のエピトープに結合できる)第2のアプタマーを選択するステップと、(b)第1の標識を第1のアプタマーに付し、第2の標識を第2のアプタマーに付すステップと、(c)第1のシグナリングオリゴを第1のアプタマーに付し、第1のシグナリングオリゴに相補的な第2のシグナリングオリゴを第2のアプタマーに付すステップと、(d)その結果(i)第1のアプタマー構築物は第1のアプタマー、第1の標識、および第1のシグナリングオリゴを含み、および(ii)第2のアプタマー構築物は第2のアプタマー、第2の標識、および第2のシグナリングオリゴを含むステップ、を含む。好ましくは、アプタマーはインビトロ進化法(上掲)を用いて選択される。しかし本願の実施においては天然のDNA結合エレメントも使用できる。
【0045】
好ましい実施形態では、第1の基質はポリペプチドで、第2の基質は第1のアプタマーに結合した前記ポリペプチドである。ここで、第2のアプタマーが第1のエピトープに結合できないように第1のアプタマーは第1のエピトープをマスクする。あるいは、(i)第1のアプタマーおよび第1のシグナリングオリゴを含む、あるいは(ii)第1のアプタマー、シグナリングオリゴおよび標識を含む、第1のアプタマー構築物で第1のアプタマーを置き換えてもよく、それによりシグナル検出のために最適な第2のアプタマーあるいはアプタマー構築物を選択することを可能にする第2の基質を生み出す。さらなるステップとして、前述の通り、それから第1と第2のアプタマー構築物を柔軟なリンカーで互いに連結してもよい。
【0046】
別の実施形態では、第1の基質は本質的に第1のエピトープからなるペプチドであり、第2の基質は本質的に第2のエピトープからなるペプチドである。よって、別の実施形態では、アプタマーの製造あるいは選択において、エピトープをマスクする必要はない。同様に、前述の通り、この方法を用いて製作される第1と第2のアプタマー構築物は柔軟なリンカーで互いに連結されてもよい。
【0047】
別の実施形態では、本発明は(第1のエピトープに結合できる)第1のアプタマー、第1の標識、第1のシグナリングオリゴ、(第2のエピトープに結合できる)第2のアプタマー、第2の標識、第2のシグナリングオリゴ、およびリンカーを含む二価のアプタマー構築物に関するものである。第1と第2のエピトープは同じポリペプチド上にあってもよく、大分子複合体の異なるポリペプチド上にあってもよく、アナライトに結合したポリペプチド上にあってもよい。柔軟なリンカーは好ましくはアプタマーの働きを妨害しないポリマーである。好ましい柔軟なリンカーには、デオキシチミジンポリマー(ポリ−dT)およびスペーサー18ポリマーが含まれる。しかし、本願を実施する際に当業者は任意の数のリンカーを置換できるであろう。
【0048】
あるいは、二価アプタマー構築物は検出用の標識を有していなくてもよい。これら別の二価アプタマー構築物は抗体と同じようにして分子を検出する、分子を結合する、(カラムあるいはプルダウン形式の操作のように)分子を精製する、分子の相互作用を阻害する、分子の相互作用を促進あるいは安定させる、あるいは生物に受動免疫を付与することに用いうることが想定される。二価アプタマー構築物が治療の目的にも使用できることがさらに想定される。本発明は、本発明により当業者が任意の数の分子から2つ以上の異なるエピトープを認識するアプタマーの任意の組み合わせを、二価、三価、あるいはその他の多価アプタマー構築物に構築し、それら異なる複数の分子を引っ張り合わせて効果をテストしたり、所望の治療結果を生み出すことができるという点で本当に強力である。例えば、リガンドのレセプターに対する天然の結合速度論が好ましくない場合(例えば糖尿病患者中でのインスリンのインスリンレセプターへの結合)、リガンドのレセプターへの結合を促進するため二価アプタマー構築物を作ることができる。
【0049】
別の実施形態では、本発明は第1の標識が付与された第1のエピトープ結合剤、および第2の標識が付与された第2のエピトープ結合剤を含むキットに関するものである。ここで(a)第1のエピトープ結合剤と第2のエピトープの結合剤標識がそれぞれポリペプチドの第1のエピトープとポリペプチドの第2のエピトープに結合する時、(b)第1の標識と第2の標識が相互作用して、検出可能なシグナルを生み出す。好ましい実施形態では、エピトープ結合剤はアプタマー、標識、およびシグナリングオリゴを含むアプタマー構築物である。しかし、エピトープ結合剤は抗体あるいは抗体断片でもよい。このキットはポリペプチド、アナライト、あるいは大分子複合体の検出に有用であり、そのため研究あるいは医学的/獣医学的診断の用途で使用可能であろう。
【0050】
さらに別の実施形態では本発明は、(a)患者からサンプルを取得するステップ、(b)サンプルを第1のエピトープ結合剤および第2のエピトープ結合剤と接触させるステップ、および(c)検出方法を用いてサンプル中のポリペプチド、アナライトあるいは大分子複合体の存在を検出するステップを含む疾病を診断する方法に関する。ここでサンプル中のポリペプチド、アナライトあるいは大分子複合体の存在は患者に疾病が存在するかどうかを示す。好ましい実施形態では、(a)第1のエピトープ結合剤は、第1の標識と第1のシグナリングオリゴが付着した第1のアプタマーであり、(b)第2のエピトープ結合剤は、第2の標識と第1のシグナリングオリゴに相補的な第2シグナリングオリゴが付着した第2のアプタマーであり、(c)検出方法は蛍光検出方法で、(d)第1のアプタマーがポリペプチドに結合し第2のアプタマーがポリペプチドに結合すると、(e)第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴが互いに結合し、(f)第1の標識が第2の標識に接近して蛍光の変化が起こる。好ましいサンプルには血液、尿、腹水、細胞と組織サンプル/生検が含まれる。好ましい患者にはヒト、家畜、およびペットが含まれる。
【0051】
さらに別の実施形態では、本発明はサンプルから有用な試薬をスクリーニングする方法に関し、該方法は(a)サンプルを第1のエピトープ結合剤と第2のエピトープ結合剤に接触させるステップと、(b)検出方法を用いて該サンプル中の有用な試薬の存在を検出するステップとを含む。好ましい試薬には、第1のエピトープと第2のエピトープを含むポリペプチド、ポリペプチドに結合するアナライト(この場合は、前記方法はさらにポリペプチドをスクリーニング混合液に加えるステップを含む)、および潜在的な治療組成物が含まれる。好ましい実施形態では、(a)第1のエピトープ結合剤は第1の標識と第1のシグナリングオリゴが付与された第1のアプタマーであり、(b)第2のエピトープ結合剤は、第2の標識と第1のシグナリングオリゴに相補的な第2のシグナリングオリゴが付与された第2アプタマーであり、(c)検出方法は蛍光検出法であり、(d)第1のアプタマーがポリペプチドに結合し第2のアプタマーがポリペプチドに結合する時、(e)第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴが互いに結合し、(f)第1の標識が第2の標識に接近して、蛍光の変化が生じる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態が以下の実施例で記載される。請求の範囲の範囲内にある他の実施形態は、本明細書の考察および本明細書に開示された発明の実施から当業者には明らかになるであろう。本明細書および実施例は単に例示であると考えられることが意図されており、本発明の範囲と精神は実施例の後にある請求の範囲に示されている。
【実施例1】
【0053】
特定のアプタマー構築物を製造する一般的方法
序説
開示されるのはサンプル中のタンパク質、タンパク質複合体、あるいはタンパク質と結合するアナライトを速やかにかつ高感度で検出する方法である。この方法の基礎はタンパク質によって誘発される、タンパク質の2つの異なるエピトープを認識する2つの核酸構築物の結合に基づいている(通称“アプタマー構築物”)(図1A)。この2つのアプタマー構築物は、柔軟なリンカーによってアプタマーに結合された短く相補的なシグナリングオリゴを含んでいる。2つのアプタマーが同時に目標タンパク質に結合した時、前記相補的なヌクレオチド(通称「シグナリングオリゴ」)の相対的位置は近接し、シグナリングオリゴ間の結合が促進されて安定した二本鎖を形成する。蛍光プローブをシグナリングオリゴの末端に付与することで、タンパク質が誘発する2つのアプタマー構築物の間の結合を検出する手段が与えられる(図1A)。天然の核酸結合活性を有するタンパク質の場合、アプタマーの一方は天然のタンパク質結合部位を含む核酸配列で置き換えてもよい(図1B)。
【0054】
所与のタンパク質の2つの異なるエピトープについてのアプタマーの開発あるいは選択は、図1に示されたアプタマー構築物の開発の必須のステップである。アプタマーに関する利用可能な文献を検討すると、この目標を達成する少なくとも2つの可能な手法が明らかとなる。第1の手法は、タンパク質と結合した核酸アプタマーとタンパク質と結合していない核酸アプタマーの分離に異なる方法を用いる、核酸アプタマーのインビトロ選択(通称インビトロ進化)を行うことである。その原理は、これら異なる区分法では、タンパク質の異なる領域が選択的に示され、その結果タンパク質表面の異なる領域に対するアプタマーが得られる。トロンビンについて選択されたアプタマー(後述)は、そのような手法の一例である。
【0055】
アガロースビーズ上に固定されたトロンビンを基質として用いた、第1のアプタマーのインビトロ選択の結果、ヘパリンエクソサイト(exocite)上でトロンビンに結合するアプタマーが得られた。区分法としてのニトロセルロースに結合されたトロンビン−第1のアプタマー複合体を基質として用いたさらなるインビトロ選択の結果、フィブリノゲンエクソサイトでトロンビンに結合する第2のアプタマーが得られた。
【0056】
有用ではあるものの、この区分手法は理知的な設計というよりは、異なるエピトープの偶然による選択に依存するものである。第2の手法は目標タンパク質分子の選択された領域に対応するペプチドを基質として用いて、アプタマーを育てあるいは選択するものである。このような戦略がアプタマー開発のために基質として用いられるペプチドが由来する完全なタンパク質を認識できるアプタマーを開発するのに使用可能であることを示す証拠が当業界には存在する。さらに、この手法はすでに完全なタンパク質を認識する抗体を作製するのに広く用いられている。
【0057】
第1のアプタマーの結合部位とは異なるタンパク質のエピトープについてのアプタマーセットを作製する前記の一般的手法は、天然のDNA結合活性を有するタンパク質にも用いることができる。つまり、天然DNA結合部位とは異なる部位で基質に結合するコアプタマー(co-aptamers)を作製できる。この方法で作製されたコアプタマーは、図1に示された分子検出法で働くのに最適化されている。
【0058】
結果と考察
図2は上記方法の全体的設計を表す。コアプタマーの選択は、第1のアプタマーにあらかじめ結合された基質タンパク質を用いて行われる(図2A)。あるいは、コアプタマーの選択は、その天然の核酸結合部位にあらかじめ結合したタンパク質を用いて行われる(図2B)。短い(5−7ヌクレオチド長)一本鎖オリゴヌクレオチド、つまりシグナリングオリゴ(図2)、を柔軟なリンカーによって第1のアプタマーに連結させる。コアプタマーの選択に用いられるランダムDNA(あるいはRNA)の両端に、PCR増幅のため均一な配列を配置する。これらの均一な隣接配列のうちの1つは末端に第1のアプタマーのシグナリングオリゴに相補的な配列、つまりもう一つのシグナリングオリゴ(図2)を含む。このため、このようなランダムDNA(あるいはRNA)構築物を利用したコアプタマーの作製あるいは選択は、第1のアプタマーのエピトープとは異なる部位で基質タンパク質に結合できるアプタマーへとバイアスがかかり、第1のアプタマーのシグナリングオリゴとの間で二重鎖を形成できる。選択におけるバイアスの程度は、第1のアプタマーのシグナリングオリゴおよび第2のアプタマーの相補的シグナリングオリゴの長さを変えることで調節できる。
【実施例2】
【0059】
トロンビンを検出する方法とアプタマー
序説
本発明の発明者は、以下の文献に記載されているようにDNA結合タンパク質の検出方法を開発した:Heyduk、T.and Heyduk、E.Molecular beacons for detecting DNA binding proteins.Nature Biotechnology、20、171-176、2002、Heyduk、E.、Knoll、E.、and Heyduk、T.Molecular beacons for detecting DNA binding proteins: mechanism of action、Analyt.Biochem.316、1-10、2003、および同時係属した特許出願番号09/928、385(米国特許番号6、544、746)、10/062、064、PCT/US02/24822およびPCT/US03/02157(これらは参照により本明細書に取り込まれる)。
【0060】
この方法の基礎は、DNAのタンパク質結合部位を2つの「半部位」に分けることにある。生じた「半部位」は、2つの「半部位」同士が結合して完全に機能的な同族タンパク質結合部位を含む二本鎖を再構成する蛍光を与えるように設計された長さの短い相補的な一本鎖領域を含んでいる。この傾向は、タンパク質の非存在下ではDNA半部位のほんの一部しか結合しないように、低く設計されている。タンパク質が反応混合液の中に存在する時、タンパク質は完全で機能的な結合部位を含む二本鎖にのみ結合する。この選択的な結合は、DNA半部位同士の結合を促し、またこのタンパク質依存的な相互結合は、目標タンパク質の存在を示す分光学的その他のシグナルを生み出すのに用いることができる。
【0061】
科学文献中では、「分子ビーコン」の語は、選択的な認識と報告シグナルの発生が同時に起こることを強調するために、このアッセイを記述するために用いられる。いくつかのタンパク質について、DNA結合タンパク質の分子ビーコンが開発されており、その一般的適用可能性を示している(Heyduk and Heyduk、2002)。その物理的な作用原理は確立されており(Heyduk、Knoll、Heyduk、2003)、DNA結合タンパク質に結合するリガンドの存在を検出するアッセイのプラットホームとしても用いられている(Heyduk、E.;Fei、Y.;Heyduk、T.Combinatorial Chemistry and High-throughput Screening 2003、6、183-194)。すでに非常に有用ではあるものの、このアッセイは天然のDNA結合活性を示すタンパク質に限定されている。
【0062】
インビトロ選択法によって、天然のDNA結合活性を持たないタンパク質に特異的に結合できる核酸(DNAあるいはRNA)アプタマーを作製できることは十分に確立されている(Ellington、A.D.、and Szostak、J.W.In vitro selection of RNA molecules that bind specific ligands.Nature 346、818-822、1990;Tuerk、C.、and Gold、L.Systematic evolution of ligands by exponential enrichment: RNA ligands to bacteriophage T4 DNA polymerase.Science 249、505-510、1990;Gold、L.、Polisky、B.、Uhlenbeck、O.& Yarus、M.Diversity of Oligonucleotide Function.Ann.Rev.Biochem.64、763-797、1995;およびWilson、D.S.& Szostak、J.W.In vitro selection of functional nucleic acids.Ann.Rev.Biochem.68、611-647、1999;これらの文献は全て参照により本明細書に取り込まれる)。インビトロ選択は、結合、非結合配列の洗い出し、目標に結合した配列のPCR増幅のサイクルによって、ランダムDNA配列のプールから特定の基質目標に結合する核酸配列を選択することを伴う。種々のタンパク質その他の目標分子に特異的に結合するアプタマーを成功裏に選択できた数多くの例(Ellington and Szostak、1990;Tuerk and Gold、1990;Gold et alia、1995;Wilson and Szostak、1999)は任意のおよび全てのタンパク質に対するアプタマーを作製することが可能であることを強く示唆している。
【0063】
本実施例に記載されるのは、天然のDNA結合活性を有するタンパク質に限定されない、タンパク質検出用の核酸を基礎とする分子ビーコンの新規な概念である。トロンビンの例(上掲)は本発明の実験的妥当性を示す。
【0064】
結果と考察
図3Bは任意の目標タンパク質を認識する分子ビーコンの総体的概念を示す。この設計は、先述のおよび上掲のDNA結合タンパク質用分子ビーコン(図3A)との一般的類似性を有する。タンパク質への天然の結合部位を含むDNA二本鎖を2つの「半部位」に分割する代わりに、半部位の機能上の等価物としてタンパク質の2つの異なるエピトープを認識する2つのアプタマーを用いる。蛍光団(第1の標識)を含んだ短いオリゴヌクレオチド(シグナリングオリゴ)と消光剤(第2の標識)を含んだ短い前記オリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチド(シグナリングオリゴ)は、柔軟なリンカーで2つのアプタマーに連結される(図3B)。目標タンパク質が存在しない時、相補的なシグナルオリゴが結合を促進するには短すぎるため、2つのアプタマー構築物は結合しない。目標タンパク質が存在する時、2つのアプタマーへのタンパク質の結合は2つのアプタマー構築物の間の結合を促し、第1と第2の標識が接近するために蛍光シグナルの変化が起こる。
【0065】
図3Bの概念の実験的検証を与えるため、トロンビンをモデル的非DNA結合タンパク質システムとして選択する。先に2つの実験室のが、このタンパク質の2つの異なるエピトープを選択的に認識するDNAアプタマーを同定している(Bock、L.C.、Griffin、L.C.、Latham、J.A.、Vermass、E.H.、and Toole、J.J.Selection of single-stranded DNA molecules that bind and inhibit humanthrombin、Nature 355、564-566、 1992;およびTasset、D.M.、Kubik、M.F.、and Steiner、W.Oligonucleotide inhibitors of humanthrombinthat bind distinct epitopes、J.Mol.Biol.272、688-98、1997、参照により本明細書に取り込まれる)。そのうちの一つのアプタマー(G15D;図4中のTHR4)はヘパリンエクソサイト(heparin exosite)で結合することが示され、もう一つのアプタマー(60−18[29];図4中のTHR3)はフィブリノゲンエクソサイトで結合することが示された。トロンビンを認識するのに有用なアプタマー構築物セットを開発するための最初のステップとして、前記アプタマーが柔軟なリンカーにより共有結合した種々のアプタマー構築物を作製した(図4)。これら実験の主要な目的は、柔軟なリンカーで2つのアプタマー構築物を連結すると、本当に個々のアプタマー構築物のセットに比べてより高い親和性でトロンビンに結合することが出来る二価アプタマー構築物を作製できるかどうかを決定することである。これら実験の第2の目的は、リンカーの適切な長さの確立し、2つのアプタマーのリンカーに対する5’端と3’端の適切な向きを確立することである。
【0066】
個々のアプタマーをフルオレセインで標識し(図4中のTHR1とTHR2)、トロンビン用の様々な構築物の親和性の決定を容易にした。トロンビンとフルオレセイン標識60−18[29]アプタマー(THR1)との間の複合体の形成は、蛍光偏光により簡便に追跡でき(図5A)、フルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)の結合は蛍光強度の変化により追跡することが出来た(図5B)。どちらのアプタマーもナノモル濃度範囲でトロンビンに結合した(図5Aと図5B)。THR2の場合の結合の定量分析(図5C)の結果、Kd値として6.3nMの値が得られた。この値は以前に示唆された値(Bock 1992、Tasset 1997)よりも幾分高い親和性であるが、それは我々が真平衡結合アッセイを用いたのに対し、以前の報告では非平衡法が用いられたことで説明ができる。THR2の結合が十倍過剰量の未標識60−18[29]アプタマー(THR3)の存在下で行われた場合(図5D)、僅かな、有意義ではない親和性の低下が見られたのみであった。このことからG15Dアプタマーと60−18[29]アプタマーが実際にトロンビンの2つの異なるエピトープに独立に結合することが示された。
【0067】
つぎのステップにおいて、図4に示された各種のアプタマー構築物がトロンビンへの結合についてTHR2と競合する能力が評価された。図6はこれらの実験を行うやり方を説明したものである。トロンビンがある時とない時のTHR2の蛍光スペクトルを記録した(図6A)。トロンビンはTHR2の蛍光を約50%増強した。続いて、未標識競合アプタマー構築物が加えられた(図6B−D)。競合物の存在下でトロンビンがTHR2の蛍光に与える影響が小さければ、有効な競合物の証明となるであろう。THR3は競合物ではなく(図6B)、これは図5Cと5Dの結果と調和する。THR4(未標識のTHR2のバリエーション)は予測されたとおり競合できる(図6C)。しかし、THR7(二価アプタマー構築物の一つ)はTHR4よりもずっと優れた競合物であった(図6D)。溶液中にTHR7が存在するときは、トロンビンの存在するときでもTHR2の蛍光変化を検出できなかった。図7は、図4に示された構築物の全てを用いた競合実験のまとめである。
【0068】
すべての二価アプタマー構築物は、個々のアプタマーに比べてより緊密にトロンビンに結合することが示され(KdはpM範囲)、タンパク質上の2つの異なるエピトープを認識する2つのアプタマーを柔軟なリンカーで連結すれば高い親和性を有するトロンビンリガンドを作製できるという予想を実証した。さらに、これらのデータは、2つのアプタマーを10個のスペーサー18単位を含むより長いリンカーで連結した場合に、トロンビンに対する親和性が若干向上したことも示した。これらデータは、アプタマーのリンカーに対する向きがTHR7のようであると親和性が向上することも示した(THR6とTHR7の親和性の比較)。このため、以降の全ての実験において、THR7同様の向きのアプタマーを有する構築物が用いられた。
【0069】
図8の実験の目的は、トロンビンの2つのエピトープはどちらも、二価アプタマーが高い親和性で結合するのに重要であることを証明することである。THR2と二価アプタマー構築物の間の結合の直接競合から、THR2により認識されるエピトープ(ヘパリンエクソサイト)は二価アプタマー結合のために必要であることが示された。第2のエピトープも重要であることを証明するため、我々は過剰量の未標識THR3の非存在下および存在下でのトロンビンに対する結合について、二価アプタマー構築物(THR5)がTHR2と競合する能力を比較した。我々は、もしTHR5が高い親和性の結合のために両方のトロンビンエピトープを必要とするのであれば、TRH3の存在下ではTHR5がTHR2と競合する能力が低下するであろうと予測した。この予測は図8に示された実験でまさに観察されたものであった。THR5は単独でTHR2に対する非常に強力な競合物であった(図8Dと8Aを比較)。THR3は単独ではTHR2の競合物ではなかった(図8Aと8Cを比較)。THR5単独の場合に比べ、THR3が存在する時にはTHR5はより劣った競合物となった(図8Bと8Cを比較)。我々はそれゆえ、二価のアプタマー構築物のトロンビンへの高い親和性での結合には第1と第2のアプタマーのエピトープが関与すると結論付けた。
【0070】
二価アプタマー構築物−トロンビン複合体は未変性ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動に耐えるのに十分なほど安定している(図9A)。我々はこの属性を利用して、ゲルシフト法(EMSA)を用いてTHR7−トロンビン複合体の形成を追跡し、複合体の化学量論を決定した。我々はトロンビンによるTHR7の滴定を行った(どちらの分子も高濃度であった)。この条件の下で、結合は化学量論的であるはずである。実際には、形成された複合体を、トロンビンのTHR7に対する比に対してプロットすると、複合体の1:1の化学量論は示さなかった(図9B)。
【0071】
図10と図11に示された実験は、二価アプタマー構築物の別の設計がこれらの構築物を作製するのに用いることが出来るかどうかをテストするために行われた。我々は図10に示された二価アプタマー構築物を設計し、それが完全にDNAからなり、非DNAリンカーの使用は避けた(この場合はポリdTをリンカーとして用いた)(図10)。これによりこのような構築物の設計に更なる柔軟性が潜在的にもたらされ、アプタマー構築物を作製するコストも低減できるであろう。2つのアプタマーはDNA二本鎖により柔軟なリンカーの末端で互いに連結されている(図10)。本発明のこの側面はシグナル「ビーコン」(図3B)の設計を模倣することを意図しており、シグナル機能はアプタマーと二本鎖を連結するリンカーの末端での二本鎖DNAの形成を伴う。3種の異なる長さのポリdTリンカー(7、17、および27ヌクレオチド長)をテストして高親和性結合のための最小必要リンカー長を決定した。図11は、図10に示された構築物をトロンビンで動じて規定した結果を示す。アプタマー構築物−トロンビン複合体の生成をEMSAで追跡した。構築物はそれぞれトロンビンに高い親和性で結合した。しかし7ヌクレオチド長のポリdTリンカーを有する構築物は、17ヌクレオチド長あるいは27ヌクレオチド長のポリdTリンカーを有する構築物よりもトロンビンに対する親和性が有意に低かったことが明らかである。これは星印でマークされたレーンを調べると最もよく分かり、この特定のトロンビン濃度では、17および27ヌクレオチド長のポリdTリンカー構築物のほとんど全てがトロンビンに結合したのに対し、7ヌクレオチド長のポリdT構築物のかなりの割合(約50%)は結合してないままだった。要約すると、図10と図11に述べられた結果は、図10に示された別の二価アプタマー構築物設計も実行可能であり、またアプタマーとDNA二本鎖を連結する少なくとも17ヌクレオチド長のポリdTリンカーは、構築物をトロンビンに結合するのにより適していることを示している。
【0072】
図3から図11に提示された実験データは、トロンビンおよびそれぞれトロンビンの2つの異なる領域に結合する2つのアプタマーの場合は、図3Bに示されたシグナリングビーコンに必要な条件は全て満たされていることの証明を与えた。図3から図11に示された実験により与えられた情報に基づいて、我々はトロンビンシグナリングビーコンを設計し、テストした。図12Aと図12Bに示されたビーコンはTHR16/THR17二価アプタマー構築物の誘導体である。複数のアプタマーは17ヌクレオチド長のポリdTリンカーで、5’端をフルオレセインで標識された7ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド(シグナリングオリゴ)と3’端をダブシルで標識された7ヌクレオチド長の前記オリゴヌクレオチドに相補的なヌクレオチド(シグナリングオリゴ)にそれぞれ連結された。トロンビンをTHR8とTHR9の混合液中に加えると、タンパク質依存的な蛍光強度の消光が見られた。ダブシル標識されたパートナー(THR8)が存在しないと、トロンビンをTHR9に加えても蛍光の変化は観察されない。明らかに、これらのデータは予測されたトロンビンに誘発されるTHR8とTHR9の間の結合(図12Bに示されるとおり)が実際に観察され、機能的なトロンビンシグナリングビーコンを得ることができたことを示している。
【0073】
トロンビンに誘導される蛍光変化の程度は非常に再現性がよく特異的ではあるが、最初はそれほど大きくはなかった(約20%)。このため、我々はトロンビンのシグナリングビーコンのこの性質を、より柔軟なスペーサー18リンカーでポリdTリンカーを置き換えることにより改善することを試みた(図13AおよびB)。我々は、ポリdTリンカーは柔軟ではあるものの、若干の残留合成を示し(Mills、J.B.、Vacano、E.、and Hagerman、P.J.Flexibility of single-stranded DNA: use of gapped duplex helices to determine the persistence lengths of poly(dT)and poly(dA)、J.Mol.Biol.285、245-57、1999、本明細書に参照により取り込まれる)2つのアプタマーがトロンビンに結合する時にシグナリング二本鎖の結合を阻害すると考えた。図13に示されたビーコンは図12に示されたビーコンとリンカーの性質のみが異なる。それ以外の点では、残りの配列は同一である。図13Cは、トロンビンをTHR20とTHR21の混合液に加えた時、タンパク質濃度依存的な蛍光消光が観察され、トロンビンがTHR21単独に加えられた場合は蛍光の変化は検出されないことを示す。この特定のビーコンの場合、ビーコンのトロンビンに対する反応はずっと大きかった(蛍光における約二倍の減少)。この場合の蛍光シグナル変化の度合いは、DNA結合タンパク質検出用分子ビーコン(前掲)について我々が先に観察したものと同程度であった。よって、我々は機能的なトロンビンビーコンが得られ、より柔軟なスペーサー18リンカーを用いた設計によりポリdTリンカーを用いた場合に比べてトロンビン結合の際により良いシグナル変化が得られたと結論づけた。続いて、我々はこのトロンビンビーコンの挙動をさらに特徴づけるための一連の実験を行った。
【0074】
図14に示された実験は、THR20とトロンビンの存在下でフルオレセイン標識アプタマー構築物(THR21)が実際に安定な複合体の中に組み込まれることを確認するために行われた。図15に結果は示され、トロンビン検出の感度(図15A)と特異性(図15B)を示している。トロンビンの二価のアプタマー構築物への結合性は非常に緊密であり(pM Kd’s)、アッセイはフルオレセインシグナルの検出感度のみに制限されているようであるため、アプタマー構築物の濃度を変化させることでトロンビン検出感度を調整できる。このことは図15Aに示され、50nMのTHR21と75nMのTHR20を使用した時、おおよそ10nMのトロンビンを検出でき、10倍低い濃度のアプタマー構築物を使った時(5nMのTHR21と7.5nMのTHR20)、10倍低い濃度(およそ1nM)のトロンビンが検出できたことを描いている。さらに低い濃度のアプタマー構築物を使用すると(500pMのTHR21と750pMのTHR22)、おおよそ100pM程度のトロンビンを検出できた(図示なし)が、フルオレセイン標識アプタマー構築物のこの低い濃度は我々の機器の測定機器の感度の限界に近く、データの質もこれに伴って落ちてゆく。トロンビン検出の特異性を証明するために、我々はこのアプタマー構築物のトロンビンに対する反応とトリプシン(トロンビンと同じファミリーに属しトロンビンと構造上の相同性を有するプロテアーゼ)に対する反応を比較した。トリプシン添加の場合、シグナル(図15B)は検出されず、アプタマー構築物のトロンビンに対する高い特異性を示している。
【0075】
図16は比較実験の結果を示し、様々なアプタマー構築物の有する、あらかじめ形成されたトロンビンアプタマー構築物の複合体を分離させる能力が試験された。得られたデータは、全ての二価のアプタマー構築物は個々のエピトープ特異的のアプタマーのどれよりもはるかに効果的な競合物であることを示したが、これはフルオレセイン標識された個々のアプタマーを用いて行った同様の実験と一致する(上掲、THR2;図6)。これら二価のアプタマー構築物の中で、THR18/THR19(27ヌクレオチド長のポリdTリンカーを有する構築物)およびTHR16/THR17(17ヌクレオチド長のポリdTリンカーを有する構築物)は最も効果的な競合物で、その次はTHR14/THR15(7ヌクレオチド長のポリdTリンカーを有する構築物)とTHR7(スペーサー18リンカーを有する)。よって、スペーサー18リンカーの有するさらなる柔軟性はアプタマー構築物シグナル変化による蛍光シグナル変化の強度の面では有益だが、より硬いポリdTリンカーを含む構築物と比較した場合トロンビンに結合する親和性の若干の低下にもつながっているようである。
【0076】
結論
我々は、トロンビンの二つの異なるエピトープを認識する2つのアプタマーを含む二価のアプタマー構築物の基本的な物理化学的の特徴を明らかにするデータを得た。この二価のアプタマー構築物のトロンビンに対する親和性は、二価構築物中の個々のアプタマー成分に比べて高い。これは、トロンビンをアプタマー「半部位」の混合液に加えることで2つの半部位の結合を誘導し、蛍光団と消光剤は接近させることで蛍光シグナルを生み出すことを示唆する。ビーコン構築物を用いた実験はこの仮説を完全に証明した。我々は多くの目標タンパクに対して同様のビーコンを開発することが可能であると予想する。我々はまた、ここに記載されたビーコンの設計は天然のDNA結合活性を有するタンパク質を検出するためのビーコン(図1A)を改善するためにも採用できることを注記する。この場合、アプタマー「半部位」のうち一つは柔軟なリンカーで相補的なシグナリングオリゴに連結された(タンパク質結合部位の配列を含む)二本鎖DNAで置き換えることができる。
【実施例3】
【0077】
サンプル中のアナライトの検出
材料
精製トロンビンはRay Rezaie博士(St.Louis大学)から贈られたものであった。Xa因子、プロトロンビン、オボアルブミン、牛血清アルブミン、SSB、トリプシン、および血漿はシグマ(St.Louis、MO)から購入した。HeLa細胞抽出物はプロテイン・ワン(College Park、MD)から購入した。Texas Red−NHSとSybr GreenはMolecular Probes(Eugene、OR)から購入し、Cy5−NHSとCy3−NHSはAmersham Biosciences(Piscataway、NJ)から購入、AMCA−sulfoNHSはPierce(Rockford、IL)から購入した。そのほかのすべての試薬は、商業的に入手可能な分析グレードのものであった。
【0078】
この研究を通じて用いられたオリゴヌクレオチドは表1に列記されている。オリゴヌクレオチドはエール大学のKeck Oligonucleotide Synthesis Facilityから購入、あるいはIDT(Coralville、IA)から購入したものである。5端’のフルオレセインと3’端のダブシルは適当なホスホラミデートを使用して、オリゴヌクレオチド合成の間に取り込まれた。他のすべての蛍光団は、5’アミノあるいはC6アミノ−dTを適切な位置に有するオリゴヌクレオチドを色素のNHSエステルを用いて合成後修飾することで、オリゴヌクレオチド中に取り入れられた。蛍光プローブで標識されたオリゴヌクレオチドは、先に述べたとおり逆相HPLCにより精製された(Heyduk、E.;Heyduk、T.Anal.Biochem.1997、248、16-227)。Heyduk、E.;Heyduk、T.;Claus、P.;Wisniewski、J.R.J.Biol.Chem.1997、272、19763−19770に記載された2段階法により、ユーロピウムキレート((Eu3+)DTPA−AMCA)によるオリゴヌクレオチドの修飾が行われた。すべてのオリゴヌクレオチドの濃度は、260nmにおける蛍光団吸光の寄与についての補正後の260nmのUV吸光値から計算された。
【0079】
【表1−1】
【0080】
【表1−2】
【0081】
【表1−3】
【0082】
蛍光の測定
すべての蛍光測定は50mMのTris(pH7.5)、100mM NaCl、5mM KCl、1mM MgCl2中で行った。蛍光スペクトルはAminco Bowman Series 2分光光度計(Spectronic Instruments、 Rochester、NY)に記録した。バッファーおよび測定機器の反応についてスペクトルを校正した。マイクロプレート中の蛍光はTecan Spectra FluorPlusマイクロプレートリーダー(Research Triangle Park、NC)で読んだ。あるいは、マイクロプレートをMolecular Imager FX(BioRad、Hercules、CA)で画像化し、QuantityOne(BioRad)を用いて個々のウェルに対応する画像面積について積分して蛍光強度を決定した。96−ウェルプレートと384−ウェルプレート中での実験は、それぞれ100μlと20μlの体積で行われた。測定機器に依存して、僅かに異なるビーコンシグナル変化が記録されたが、これは異なる測定機器を用いた場合のことなるバッファーバックグラウンドの読み取り値(測定機器の感度による)、および各測定機器で利用可能な励起波長と発光波長についての差異に起因する。
【0083】
ユーロピウムキレートCy5標識ビーコンの場合の時間分解蛍光は、励起源としてパルス窒素レーザーを用いた、実験室で製作された機器(Heyduk、T.;Heyduk、E.Analytical Biochemistry 2001、289、60-67)で記録された。レーザーパルス後30マイクロ秒後に、100マイクロ秒分発光を積分した。
【0084】
トロンビンアプタマー解離定数を決定するための競合アッセイ
競合物の存在下および非存在下でのTHR2の蛍光強度を決定した。トロンビン、THR2、および(もし存在すれば)競合物の濃度はそれぞれ150nM、200nM、および200nMであった。これらの条件の下、アプタマーのトロンビンへの結合は本質的に化学量論的であった。先に記載した方法(Matlock、D.L.;Heyduk、 T.Biochemistry 2000、39、12274-12283)を用いて、これらの条件下で、THR2の競合物に対する解離定数の比を計算した。
【0085】
ゲルシフト分析(EMSA)によるトロンビンアプタマー結合
417nMのTHR2のサンプル5マイクロリットルを、種々の量のトロンビン(0〜833nM)と共にインキュベートした。15分間インキュベートした後、1(lの30%Ficollを加え、サンプルはTBEバッファー中10%のポリアクリルアミドゲルで泳動された。泳動後、ゲルはSybr Greenで30分間染色され、ゲル上のイメージがMolecular Imager FX(BioRad)を用いて得られた。ゲル中のバンド強度はQuantityOneソフトウェア(BioRad)を用いて個々のバンドに対応するイメージの面積について積分することで求められた。
【0086】
アプタマーを基礎とする分子ビーコンの設計
図17Bは天然の配列特異的DNA結合活性を有さないタンパク質用の分子ビーコンの全体的概念を示す。この設計は発明者が先に記載したDNA結合タンパク質用分子ビーコンにある程度の一般的類似性を有する(Heyduk、T.;Heyduk、E. Nature Biotechnology 2002、20、171-176;Heyduk、E.;Knoll、E.;Heyduk、T.Analyt.Biochem.2003、316、1-10;Knoll、E.;Heyduk、T.Analyt.Chem.2004、76、1156-1164;Heyduk、E.;Fei、Y.;Heyduk、T.Combinatorial Chemistry and High-throughput Screening 2003、6、183-194)(図17A)。タンパク質への天然の結合部位を含むDNA二本鎖を2つの半部位に分割する代わりに、「半部位の」機能的等価物として、タンパク質の2つの重複しないエピトープを認識する2つのアプタマーが用いられる。蛍光団と消光剤を含む複数の短く相補的な“シグナリング”オリゴヌクレオチドは柔軟なリンカーによって2つのアプタマーに連結されている(図17B)。目標タンパク質が存在しない時、相補的なオリゴヌクレオチドは効率的なアニーリングを促進するには短すぎるからである。アプタマー「半部位」が目標タンパク質に結合すると、2つの「シグナリング」オリゴヌクレオチドが相対的に接近して、それらの局所的濃度を高める。これによって「シグナリング」オリゴヌクレオチドはアニーリングし、蛍光団と消光剤は接近し、蛍光シグナルが変化する。
【0087】
二価トロンビンアプタマーの特性
我々は図17Bの概念の「理論の証明」を示すためのモデル系としてトロンビンを用いた。トロンビンは凝血カスケードに関与し天然にはDNAやRNAに結合しないタンパク質分解酵素である。タンパク質の2つの異なるエピトープを選択的に認識するDNAアプタマーが、すでに2つの実験室によって開発された(Bock、L.C.;Griffin、L.C.;Latham、J.A.;Vermass、E.H.;Toole、J.J.Nature 1992、355、564-566、Tasset、D.M.;Kubik、M.F.;Steiner、W.J.Mol.Biol.1997、272、688-698)。一つのアプタマー(G15D;THR4、表1)はヘパリン結合エクソサイト(exosite)(Bock、1992)に結合することが示され、またもう一つのアプタマー(60−18[29];THR3、表1)はフィブリノゲン結合エクソサイト(Tasset 1997)に結合することが示されている。トロンビンを認識するビーコンを開発する最初のステップとして、我々は前記アプタマーが柔軟なリンカーで共有結合された種々のアプタマー構築物を作製した。これらの実験の主要な目的は、柔軟なリンカーでタンパク質表面上の2つの異なるエピトープを認識する2つのアプタマーを連結すれば、個々のアプタマーよりも高い親和性でタンパク質に結合できる二価アプタマーが得られるかどうかを決定することであった。そのような二価のアプタマー構築物のこの性質は、図17Bのアッセイが機能するために必要不可欠な条件である。これらの二価構築物の親和性に対する長い柔軟なリンカーが与える影響を予測することは不可能なため、この問題に実験的に対処することが必要であった。これらの実験の第二の目的はリンカーの適切な長さ、および2つのアプタマーの5’端と3’端のリンカーに対する適切な向きを確立することであった。
【0088】
様々な構築物の有するトロンビンへの親和性の決定を容易にするため、個々のアプタマーはフルオレセインで標識された〔THR1(表1)はフィブリノゲンのエクソサイトに特異的であり、THR2(表1)はヘパリンのエクソサイトに特異的である〕。トロンビンとフルオレセイン標識60−18[29]アプタマー(THR1)との間の複合体の形成は蛍光偏光によって簡便に追跡でき(図示はしない)、フルオレセイン標識G15Dアプタマー(THR2)の結合は蛍光強度によって追跡できた(図18A)。どちらのアプタマーもナノモル程度の濃度範囲でトロンビンに結合した(THR1および図18Aにはデータを示していない)。THR2の場合の結合の定量的分析(図18A)はKd値として6.3nMの値を返した。これは以前に示唆されていたもの(Bock 1992、Tasset 1997)より若干高い親和性であり、これはおそらく我々が真平衡結合アッセイを用いたのに対して以前は非平衡結合法が用いられたためである。THR2の結合が十倍過剰量の未標識60−18[29]アプタマー(THR3)中で行われた場合(図18B)、僅かな有意義ではない親和性の減少が観察されただけであった(Kdは17.7nM)。これにより、以前報告されたとおり、G15Dアプタマーと60−18[29]アプタマーは独立にトロンビンの2つの異なるエピトープに結合したことが証明された。
【0089】
次のステップでは、各種アプタマー構築物の有する、トロンビンへの結合についてTHR2と競合する能力が評価された。トロンビンを加えた場合のTHR2の蛍光強度の変化を競合物の存在下および非存在下で測定し、競合物の存在下でのトロンビンに結合したTHR2の量を材料と方法(Materials and Methods)に記載したとおりに計算した。これら実験で用いたアプタマーの濃度では、アプタマー−アプタマー相互作用は蛍光偏光アッセイで検出できず(未陳列)、競合データはTHR2およびトロンビンへの結合についての競合物の相対的親和性について正しく報告したことを示している。THR3は競合物ではなく(図18C)、これは図18AおよびBに示されたデータと一致する。THR4(THR2の未標識変種)は予測どおり競合能力を備えていた(図18C)。この場合の競合の定量的分析により、THR4はTHR2より1.7倍よくトロンビンに結合したことが示され、このアプタマーのフルオレセインによる標識が、トロンビンへのアプタマー結合に対して僅かな(有意義ではない)負の作用しか与えなかったことを示した。明らかに、すべての二価アプタマー構築物はTHR4よりもはるかに優れた競合物であった(図18C)。THR7が最高の競合物のようで、1:1の比においてTHR2の結合を本質的に完全に阻害した。この場合の競合の定量分析によって、THR7はTHR2より少なくとも65倍(THR7の推定Kd(97pM)強くトロンビンに結合したことが明らかになった。図18Cに示されたデータは、タンパク質の2つの異なるエピトープを認識する2つのアプタマーを柔軟なリンカーで連結すると、高親和性トロンビンリガンドが作り出されるという予想を確認した。さらに、これら2つのアプタマーをより長いリンカー(10個スペーサー18単位を含む(5個のスペーサー18単位との比較))で連結した場合、トロンビンに対してやや良好な親和性(THR5とTHR6の結合の比較)が得られることをこれらのデータは示した。これらのデータはまた、アプタマーのリンカーに対する向きがTHR7のような場合は、親和性がより良い(THR6とTHR7の親和性の比較)ことを示した。このため、以下のすべて構築物中、THR7のようなアプタマーの向きが用いられた。
【0090】
二価のアプタマー構築物(THR7)とトロンビンの間の複合体は、非変性ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動に耐えるのに十分なほど安定している(図18D)。我々はこの観察を利用して、ゲルシフト分析法(EMSA)(Fried、M.G.;Crothers、D.M.Nucleic Acid Res.1981、9、 6505-6525)を用いて複合体の化学量論を決定し、THR7−トロンビン複合体形成を追跡した。我々はトロンビンでTHR7滴定した(どちらの分子も高濃度であった)。これらの条件の下では、結合は化学量論的であるはずである。形成された複合体対トロンビンのTHR7に対する比のプロットは、複合体の1:1の化学量論を示し(図18D)、これは両アプタマー(THR7の成分)がTHR7−トロンビンの複合体中でその各々のエピトープに結合するという観念と整合している。
【0091】
トロンビンを検出するアプタマーを基礎とした分子ビーコン
以上に記載の実験データは、図17Bに示されたシグナリングビーコン設計を成功裏に実施するために必要な全ての条件が満たされたことの証明を与えた。これらのデータに基づき、我々は図19Aに示されたトロンビンビーコンを設計した。5個のスペーサー18リンカーを用いてトロンビンアプタマー(複数)を、それぞれ5’端と3’端がフルオレセインおよびダブシルで標識された7ヌクレオチド長の相補的なオリゴヌクレオチドに連結された。これら2つの構築物の混合物は個々のアプタマーに比べ、より緊密に(約36倍)トロンビンに結合した(図18C)が、これは2つのアプタマーを柔軟なリンカーで永続的に連接した二価アプタマー構築物について観察された高いトロンビン親和性と整合する。トロンビンをそれぞれ蛍光団および消光剤で標識されたTHR20とTHR21の混合液に加えると、タンパク質濃度に依存した蛍光強度の消光が起こった(図19C)。観測された最大の消光は約40%であった。ダブシル標識されたパートナー(THR20)の非存在下ではトロンビンをTHR21に加えても蛍光変化は観察されず(図19C)、蛍光の消光は、図19Bに示されるようにアニーリングにつながるタンパク質に誘導されるシグナリングオリゴヌクレオチドのさらなる接近に起因することを示している。ビーコン成分とトロンビンがナノモル濃度であるとき、約15分間のインキュベーションはビーコンの最大の反応を生み出すのに十分である。我々は類似した図19に示されたビーコンと同様であるが、17ヌクレオチド長のポリdTリンカーがスペーサー18リンカーの代わりに用いられている種々のトロンビンビーコンについてもテストした。トロンビン依存的な蛍光消光は観察されたが、消光はスペーサー18リンカーを含む構築物を用いた場合よりも約2倍小さかった。ポリdTリンカーは柔軟ではあるもののいくらかの残留硬さを示した可能性が強い(Mills、J.B.;Vacano、E.;Hagerman、P.J.J.Mol.Biol.1999、285、245-257)、そのためおそらく2つのアプタマーがトロンビンに結合した際のシグナリング二本鎖の結合を阻害したのであろう。トロンビンと構造的に類似するタンパク質分解酵素であるトリプシンで図19に示されたビーコンを滴定すると、蛍光強度の変化は観測されなかった。我々は、図17Bに示された設計による機能的なトロンビンビーコンが得られたと結論付けた。
【0092】
ビーコン性能の改善
次の一群の実験において、我々は別のドナー−アクセプター標識ペアを利用してビーコンの性能を改善することを追求した。前述の通り、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を読取に用いたアッセイでは、アクセプター発光を増強すると潜在的によりよいシグナル対バックグラウンド比、より高いダイナミックレンジ、およびよりよい感度が得られることが先に示されている(Heyduk、E.;Knoll、E.;Heyduk、T.Analyt.Biochem.2003、316、1-10)。我々は図17Bに示されたものと同様だが、フルオレセイン−ダブシルのペアに代えて蛍光ドナーと蛍光アクセプターの様々な組み合わせがシグナリンゴオリゴヌクレオチドに導入された一連のトロンビンビーコン構築物を作製した。適切な染料のNHSエステルで標識されたTHR21(あるいは適当な染料のNHSエステルで標識されたTHR28)とTHR27をこれらのビーコンの作製に用いた。図20は、フルオレセイン−テキサスレッド(図20B)、フルオレセイン−Cy5(図20C)、およびCy3−Cy5(図20D)で標識されたビーコンの蛍光スペクトル(トロンビン添加有りおよび無し)を示す。全てのケースで機能性ビーコンが得られた。蛍光ドナーと蛍光アクセプターを有するビーコンの各ケースにおいて、トロンビン濃度依存的な感作アクセプター発光の大きな増加が観察された(図20の挿入図、および図21A−D)。比較のため、図20Aは蛍光団−消光剤(フルオレセイン−ダブシル)のペアの場合にトロンビン存在下で観察された蛍光消光を示している。図21Eは時間分解FRET(TR−FRET)を検出方法として用いることを可能にするユーロピウムキレート−Cy5ドナー−アクセプターペアを用いて得られる結果を示している(Selvin、P.R.;Rana、T.M.;Hearst、J.E.J.Am.Chem.Soc.1994、116、6029-6030;Selvin、P.R.;Hearst、J.E.Proc.Natl.Acad.Sci USA 1994、91、10024-10028;Matthis、G.Clinic.Chem.1995、41、1391-1397)。TR−FRETを用いることで、光散乱および直接励起されたアクセプターからの即時蛍光を除き、ビーコンのシグナル対バックグラウンド比をさらに改善することが可能になる。図21Fはドナーおよびアクセプタープローブの様々な組合せを用いたビーコンバリエーションの性能をまとめている。数値は、トロンビン非存在下で観測されるビーコンのバックグラウンドシグナルと比較した、飽和濃度のトロンビンの存在下におけるシグナル変化の倍率を示している。その比は、フルオレセイン−ダブシルペアの場合の約2倍から、ユーロピウムキレート−Cy5ペアの場合の約22倍にまでばらついている。このため、最良のドナー−アクセプターペアを選択し、シグナル検出のやり方として感作アクセプター発光を用いることによりビーコン性能の実質的改善をなしうる。蛍光ドナーと蛍光アクセプターのビーコンバリエーションのさらなる利点は、その反応をアクセプター対ドナーのシグナル比の二色決定により測定できることである。このようなレシオメトリック(ratiometric)な測定により、より安定したシグナルが得られ、これはサンプル中に存在する添加剤による光吸收、光散乱、蛍光消光などの非特異的影響により抵抗性である。最良のドナー−アクセプターペアを用いて得られる上昇したシグナル対バックグラウンド比により、ビーコン感度も上昇する。このことは図22に示され、低濃度のトロンビンに対する三つの選ばれたビーコンバリエーションの反応を示している。フルオレセイン−ダブシル標識ビーコン(飽和濃度のトロンビンの存在下で最低(約2倍)のシグナル変化を示す)の場合、統計的に有意なシグナル変化は最高のトロンビン濃度(1nM)においてのみ検出された。フルオレセイン−テキサスレッド標識ビーコン(飽和トロンビン濃度で約5倍のシグナル変化を示す)の場合、統計的に有意なシグナル変化はより低いトロンビン濃度(200pM)において検出された。フルオレセイン−Cy5標識ビーコン(飽和トロンビン濃度で約15倍のシグナル変化を示す)の場合、統計的に有意なシグナル変化は最低のトロンビン濃度(50pM)で既に検出できた。
【0093】
図23はトロンビンビーコンシグナルの優れた再現性と安定性を示す。ビーコンシグナルは5回の独立したテストにおいて4つのトロンビン濃度で測定された。テストされた各タンパク質濃度において変動係数は小さかった(図23A)。ビーコンシグナルは少なくとも24時間にわたり安定であった(図23B)。
【0094】
図17Bに示されたビーコンを用いてシグナルを発生するためには、三つの分子接触が同時に起こることが必要である:アプタマーの各々とタンパク質との間の2つの接触と、2つの相補的なシグナリングオリゴヌクレオチド間の接触である。3つの接触は各々、ビーコン−タンパク質複合体の全体的安定性に対して自由エネルギー上の寄与を与える。複合体の自由エネルギーと平衡解離定数との間の指数的関係のため、上述の三個の分子接触のいずれがかけても複合体の全体的安定性が大きく減少する。よって、単一分子接触に基づいたアッセイ(例えば、単一アプタマーを基礎としたアッセイ)に比べて、ここに記載された分子ビーコンはタンパク質検出におけるより高い特異性を示すことが予想される。
この観点を説明するため、我々は単一のトロンビンアプタマーとトロンビンビーコンのSSB(大腸菌の一本鎖DNA結合タンパク質、一本鎖DNAへの結合について非特異的な高い親和性を示すタンパク質である)に対する反応を比較した(データは示さない)。SSBはナノモル濃度で単一のフルオレセイン標識アプタマー(THR1、表1)と共に大きなシグナル(蛍光偏光アッセイで測定)を生み出した。SSBは、トロンビンがこのアプタマーに結合するのに必要な濃度と同様の濃度範囲で反応を示した。よって、単一のトロンビンアプタマーはSSBとトロンビンを非常に弱くしか区別しないことが分かった。対照的に、トロンビンビーコンをナノモルのSSB濃度にさらした場合、有意なビーコン反応は生まれず、トロンビンは同じ濃度範囲で大きなビーコン反応を生み出した。このため、トロンビンビーコンはSSBとトロンビンを非常によく区別し、ビーコンの向上した特異性が示された。
【0095】
ここに記載したアッセイ設計の主な応用は、均一で高スループットのタンパク検出であろう。Zhangらは(Biomol.Screening 1999、4、67-73)高スループットでの使用用のアッセイを評価するのに用いられる簡単な統計的パラメーターを開発した。Z’−因子はタンパク質の存在下および非存在下における、多回数の測定の繰り返しから計算される。Z’値が1であることは理想的なアッセイであることを示しており、Z’値が0.5から1であると優れたアッセイであることを示している。Z’値が0.5より小さいことは高スループットへの応用にはあまり適していないことを示している。トロンビンビーコンのZ’値は0.94(図24)であり、これが非常に優れた高スループットアッセイであることを示している。
【0096】
複合体混合液中のトロンビンの検出
次の一連の実験は、トロンビンビーコンの特異性、およびそれが細胞抽出液と血漿中のトロンビンを検出する能力についてのものである。1nMのトロンビンに対するビーコンの反応は、100および1000倍過剰量の関係ないタンパク質(オブアルブミン、図25A)では影響されなかった。また、100倍過剰量のXa因子(トロンビンに類似する別の凝血プロテアーゼ)は1nMのトロンビンに対するビーコンの反応に影響を与えなかった(図25A)。1000倍過剰量のXa因子はビーコンの反応を僅かに弱めたが、これらの条件の下でも1nMのトロンビンは依然として容易に検出可能であった(図25A)。トロンビンが存在しない場合は、1μMまでの濃度のオボアルブミンとXa因子はビーコンシグナルに影響しなかった(図25A)。我々は、ビーコンはトロンビンに対して高度に選択的であると結論した。
【0097】
ビーコンが複合体混合液中でトロンビンを検出できるかをテストするため、我々はHeLa細胞抽出液を様々な量のトロンビンでスパイクし、該混合液に対するビーコン反応を決定した(図25B)。低ナノモル濃度のトロンビンは容易に検出された。20μlの分析液の中に総量8μgのタンパク質を加えるが、この量は細胞抽出液を使用した実験において使用される典型的な範囲に属するものである。細胞抽出液を加えた時に観察されたシグナルは、特定の競合物(未標識トロンビンアプタマー)を加えることで完全に消去された、細胞抽出液中で観察されたシグナルはトロンビンによるものであることが確認された。細胞抽出液を使用した実験において遭遇した一つの問題はアッセイの成分であるオリゴヌクレオチドの、細胞抽出物中のヌクレアーゼによる分解であった。我々は様々なバッファー添加剤を試して、細胞抽出液の存在下でトロンビンビーコンが十分に長い時間安定性でいられる条件を見出した。我々は高濃度のランダムな配列の30bpの二本鎖DNA(10μM)、高濃度の20ヌクレオチド長のランダム配列一本鎖DNA(0.1μM)、および2.5mMのEDTAの添加により、細胞抽出液の存在下においてビーコンのトロンビンに対する反応に有意な影響を与えることなくトロンビンビーコンは分解から保護されることを見出した。図25Bに示されたデータは、上述の添加物の存在下で得られた。
【0098】
トロンビンは血漿タンパク質であるので、我々はビーコンが血漿中のタンパク質を検出するのに使用できるかを確かめた。血漿中にあるトロンビンは全てその前駆体であるプロトロンビンの形で存在しており、プロトロンビンはXa因子によるタンパク質分解的な処理によってトロンビンに変換される。プロトロンビンはトロンビンビーコンに認識されるものの、トロンビンに比べはるかに低い感度である(約20倍低い、データは示さない)。このことは図25Cの実験によってよく表され、そこではプロトロンビンの存在下でのビーコンの感作アクセプター発光が時間の関数として観察された。矢印でマークされた点において、Xa因子が混合液に加えられ、プロトロンビンのトロンビンへの変換を開始した。この変換により、ビーコンシグナルは時間とともに増加したが、これはビーコンのトロンビンに対するはるかに高い感度と整合する。このため、血漿中のトロンビンを検出するためには、Xa因子はアッセイ混合液中に含まれる(図25D)。血漿の添加量を増加させるとビーコンシグナルはそれに比例して増加した(図25D)。Xa因子がアッセイ中に存在する場合のみ血漿の添加によりビーコンの反応が生み出された。血漿を加えた時に生まれたシグナルは、特定の競合物(未標識トロンビンアプタマー)の添加により完全に消去され、細胞抽出液中の観察されたシグナルがトロンビンによるものであることが確認された。20μlの反応容量中、5nLの血漿サンプルはビーコンの測定可能な反応を生み出した。まとめると、図25に示された実験は、複雑な生物的混合液中のタンパク質を検出するトロンビンビーコンの機能性を証明した。
【0099】
考察
ここで説明したアプタマーを基礎とした分子ビーコンの設計は、我々によって先に開発された配列特異的なDNA結合タンパク質を検出する分子ビーコンを一般化したものである(図17)。トロンビンをモデルタンパク質として用いたここに記載された実験によりこの設計の実施可能性についての原理の証明が得られた。我々はこの設計がいくつかの重要な利点を有するであろうと信じる。ここに記載された分子ビーコンの設計はいかなる特定のタンパク質に限定されるものではないため、多くのタンパク質に一般的に適用可能である。目標タンパク質の存在下での我々のビーコンによるシグナリングには、2つの異なるアプタマーによるタンパク質の2つの別々のエピトープの協働的認識が必要である。これによってビーコンの特異性が向上し、親和性(つまり検出感度)も向上する。この2つのアプタマーによる協働的作用により、ほどほどの親和性を有するアプタマーを用いて高親和性と高特異性で目標タンパク質に結合する分子ビーコンを作製できる。ビーコンのアプタマー成分は、タンパク質の存在下で異なる状態間のスイッチングを可能にするために構造の分布を調製するためのいかなる構造の加工も必要としない。この種の加工はアプタマーの特定の配列(構造)に依存的でありえ、核酸の代替的構造のエネルギー論のそのようなバランスは些少なものであるとは限らない。本ビーコン設計中のシグナリング要素(“シグナリング”オリゴヌクレオチド)はそのアプタマー成分と分離しているため、任意のアプタマー配列(および構造)が我々のビーコンの設計に適用可能である。“シグナリング”オリゴヌクレオチドの添加が、ビーコンの成分であるアプタマーの親和性や特異性に有害な影響を及ぼすことはありそうにない。このため、タンパク質の2つの異なるエピトープを認識する2つのアプタマーを得ることのできる任意のタンパク質は、図17の設計による分子ビーコンの開発の良いターゲットとなるはずである。
【0100】
タンパク質の異なるエピトープを認識する抗体(複数)を得ることは比較的容易である。同樣に、多くの目標タンパク質について異なるエピトープを認識するアプタマー(複数)を開発できない理由は無く、すでにいくつかの例が得られている(Jayasena、S.D.Clinical Chem.1999、45、1628-1650)。この目標を達成するためにはいくつかのやり方が可能である。第一のやり方はタンパク質に結合したオリゴヌクレオチドとタンパク質に結合していないオリゴヌクレオチドを分離するために異なる方法を用いながらインビトロ選択(SELEX)を行うことであろう。その原理はこれらの異なる区分法において、タンパク質の異なる領域を選択的に提示でき、タンパク質表面上の異なる領域に対するアプタマーが得られる。トロンビンについて選択されたアプタマーはそのようなやり方の一例でなる(Bock、1992;Tasset、1997)。第2のやり方は、目標タンパク質分子の異なる領域に相当するペプチドに対するアプタマーを生成させることであろう。アプタマー開発の目標として用いられたペプチドが由来する完全タンパク質を認識できるアプタマーを開発するためにそのような戦略を用いることが出来ることについては、実験的証拠が存在する。(Wei、X.;Ellington、A.D.Proc.Natl.Acad.Sci. USA 1996、93、7475-7480)。このやり方はタンパク質を認識する抗体を作製するために広く用いられている。タンパク質の異なるエピトープを認識する2つのアプタマーは、第1の段階で選択されたアプタマーが飽和濃度存在する中でアプタマーを選択することを第2の段階が伴う2段階連続SELEXによっても作製可能である。我々のトロンビンをモデルシステムとして用いてこの手順を検証した(Heyduk、E.およびHeyduk、K.未発表)。最後に我々は、我々の分子ビーコン設計中で機能するように特に設計された一対のアプタマーを作製するための新規なインビトロ選択戦略を開発した(Heyduk、E.、Kalucka、J.、Kinnear、B.、Knoll、E.およびHeyduk、T.、未発表)。このため、タンパク質の重複しないエピトープ(複数)を認識するアプタマー対を得る多くの手法が利用可能である。
【実施例4】
【0101】
センサー設計のバリエーション
本発明を実施する際には、本分子ビーコンのいくつかのバリエーションが利用可能である。分子ビーコンのそれらバリエーションは図26に示され、本明細書中でまとめられている(前記)。図26Fに示されたセンサー設計は、DNA結合タンパク質を効果的に検出できることが示されている。DNA結合タンパク質の一例であるcAMP反応エレメント結合タンパク質(“CRP”)をドナーおよびアクセプター標識センサー成分(複数)の混合液に滴定した場合、感作アクセプター蛍光強度もそれに合わせて増加する(図27)。
【0102】
図26Gに示されたセンサーの設計は図28で証明されている。パネルAはセンサー機能の原理を示している。センサーの要素(複数)に相補的な2つの異なる配列エレメントを含む一本鎖DNAを、それぞれドナーおよびアクセプター標識された2つのセンサー成分の混合液に加えた場合、感作アクセプター蛍光強度もそれに合わせて上昇する(図28B、”+”記号がある線)。この特定の場合におけるセンサーはテキサスレッド標識されたTHR29およびTHR32を含んでいた。
【0103】
本分子ビーコンセンサーの設計を、単一の目標大分子認識要素に基づいたアッセイと比べた場合の増加した特異性は実験的に証明されている(図29)。センサーによる目標分子の認識は、それぞれ複合体全体の安定性に寄与する自由エネルギー(ΔG)を与える3つの分子接触が同時に起こることを伴う。自由エネルギーと複合体の平衡解離定数の間の指数的関係のため、複合体全体の安定性は上述の三つの分子接触のいずれが欠けても大きく減少するため、目標分子認識の特異性が高くなる。ナノモル濃度の非特異的一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)は単一のフルオレセイン標識アプタマー(THR1、表1)と共に大きなシグナルを生み出した(蛍光偏光アッセイによって測定した)。トロンビンがこのアプタマーを結合するのに必要な濃度に非常に近い濃度範囲で、SSBは反応を生み出した。このため、単一トロンビンアプタマーはSSBとトロンビンを非常に弱くしか区別しないことが分かった(パネルB)。ナノモル濃度のSSBにトロンビンセンサー〔THR21(フルオレセイン標識標識)とTHR27(テキサスレッド標識)の混合液〕をさらした場合、有意なビーコン反応は起こらなかった(破線)のに対し、同濃度範囲でトロンビンは大きなビーコン反応を生み出す(パネルC)。このため、トロンビンビーコンはSSBとトロンビンを非常によく区別することが分かり、ビーコンの向上した特異性を示している。
【0104】
各種センサー用アプタマーを作製する方法
図30は本発明の実施に有用なアプタマーを選択する方法をまとめている。パネルAは第1のアプタマーに結合したタンパク質の存在下での第2のアプタマーの選択を示す。シグナリングオリゴはランダム配列含有構築物の5’端に位置しており、相補的なシグナリングオリゴは長く柔軟なリンカーで第1のアプタマーに連結されている。この種のランダムDNA(あるいはRNA)構築物を用いたコアプタマーの選択は、第1のアプタマーのエピトープと箱となる部位でタンパク質に結合でき、図26Aに示されたセンサー内で機能するアプタマーへとバイアスがかかる。
【0105】
パネルBには別のシナリオが示されており、そこではタンパク質の2つの異なるエピトープに結合する2つのアプタマーの同時選択が記載されている。(プライマー1およびプライマー4の末端の)棒は、アプタマー構築物を含むランダム配列の5’端と3’端にある短い相補的配列を示している。この種のランダムDNA(あるいはRNA)構築物を用いたアプタマー選択は、同時にタンパク質の2つの異なるエピトープに結合でき、図26Aが示すセンサーで機能するアプタマー(複数)へとバイアスがかかる。
【0106】
さらに別の実施形態では、二本鎖DNAが結合したタンパク質の存在下で第2のアプタマーが選択される(図30、パネルC)。棒は(ランダム配列含有構築物の5’端の)短い配列を示し、二本鎖DNAに長い柔軟なリンカーで連結されたシグナリングオリゴヌクレオチドに相補的である。このようなランダムDNA(あるいはRNA)構築物を用いたコアプタマー選択は、タンパク質の二本鎖DNA結合部位とは異なる部位でタンパク質に結合でき、図17Bに示されたセンサーで機能するアプタマーへとバイアスがかかるであろう。
【0107】
さらに別の実施形態では、タンパク質の別のエピトープに抗体が結合した該タンパク質の存在下で、第2のアプタマーが選択される(図30、パネルD)。棒は(ランダム配列含有構築物の5’端の)短い配列を表し、長い柔軟なリンカーで抗体に連結されたシグナリングオリゴヌクレオチドに相補的である。このようなランダムDNA(あるいはRNA)構築物を用いたコアプタマーの選択は、タンパク質に抗体のエピトープとは異なる部位で結合でき、図17Cに示されたセンサーで機能するアプタマーへとバイアスがかかるであろう。
【0108】
G15Dアプタマーの結合部位と異なるエピトープでトロンビンに結合するアプタマーの選択を、過剰量のG15Dアプタマー含有構築物(THR22)の存在下で33ヌクレオチド長のランダム配列を含む構築物(THR11)から始まるSELEX手順を用いて行った(図31、パネルA)。パネルBは、表示された各選択回数後に得られた一本鎖DNAのトロンビン結合活性を示す。測定可能なトロンビン結合活性は4回目の選択後に現れ、12回目の選択後に最大値に達した。過剰量のTHR22の存在下で結合を測定した。12回目の選択後に得られたDNAをクローニングし、各クローンから得られたDNAを配列決定した。パネルCは、それぞれのクローンの配列アラインメント(ClustalXを使用)を示す。4回の独立した選択実験により得られたクローンが示されている。これらの選択は、以下にあげたアプタマー構築物とランダム配列含有構築物のペアを用いて行った:THR22とTHR11;THR25とTHR11;THR42とTHR11;THR43とTHR11。いくつかの、高度に保存された配列のファミリーがパネルC中で容易に見られる。
【0109】
テキサスレッド標識されたTHR27と、図31Cのクローン20〜26に対応する配列を含むフルオレセイン標識されたTHR35あるいはTHR36とを含む機能的なトロンビンセンサーが図32に示されている。THR35とTHR36は、クローン20〜26の配列に隣接するDNA配列の長さの点で異なる。20nM(パネルA)あるいは100nM(パネルB)の標示されたトロンビンセンサーと表示された濃度のトロンビンとを含むマイクロプレートのウェルの蛍光像(感作アクセプター発光)が示される。比較のため、THR21とTHR27を含むセンサーも示される。
【0110】
図33は、2つの異なるエピトープでトロンビンに結合する2つのアプタマーの同時選択をまとめている。アプタマーの選択は、30ヌクレオチド長のランダム配列を含む2つの構築物(THR49とTHR50)から始まるSELEX手順を用いて行った(パネルA)。表示された各回の選択後に得られる一本鎖DNAの混合物のトロンビン結合活性がパネルBに示されている。測定可能なトロンビン結合活性は、6回目の選択後に現れ、14回目の選択の後に最大値に達した。14回目の選択後に得られたDNAをクローニングし、個々のクローンから得られたDNAを配列決定した。パネルCはクローンの配列アラインメント(ClustalXを使用)を示す。いくつかの高度に保存された配列のファミリーが容易に見い出せる。
【0111】
アプタマーを基礎とした分子ビーコンをcAMP反応エレメント結合タンパク質(“CRP”)について開発した。タンパク質のDNA結合部位とは異なる部位に結合するアプタマーを選択した。CRP結合部位を含む構築物〔MIS11とハイブリダイズしたMIS10X3〕の過剰量の存在下で、33ヌクレオチド長のランダム配列を含む構築物(MIS12)から始めてSELEX手順を用いてアプタマーが選択された(図34、パネルA)。各会の選択後に得られた一本鎖DNAのCRP結合活性が図34、パネルBに示されている。測定可能なCRP結合活性は6回目の選択後に現れ、12回目の選択後に最大値に達した。MIS11とハイブリダイズしたMIS10X3の過剰量の存在下で結合を測定した。12回目の選択後に得られたDNAをクローニングし、各クローンから得られたDNAを配列決定した。クローンの配列アラインメント(ClustalXを使用)はパネルCに示されている。約16ヌクレオチド長の保存されたコア配列が同定できた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のポリペプチドを検出する方法であって、該方法は
(a)第1のアプタマー構築物と第2のアプタマー構築物にサンプルを接触させるステップと、
(b)第1のアプタマー構築物、第2のアプタマー構築物、およびポリペプチドの結合を検出方法により検出するステップと、
を含み、
(c)第1のアプタマー構築物は前記ポリペプチドの第の1エピトープに結合でき、第2のアプタマー構築物は前記ポリペプチドの第2のエピトープに結合でき、
(d)第1アプタマー構築物は
(i)第1のエピトープと結合できる第1のアプタマーと、
(ii)第1のシグナリングオリゴと、
(iii)第1の標識と
を含み、
(e)第2のアプタマー構築物は
(iv)第2のエピトープと結合できる第2のアプタマーと、
(v)第1のシグナリングオリゴに相補的な第2のシグナリングオリゴと、
(vi)第2の標識と
を含む、前記方法。
【請求項2】
第1と第2のシグナリングオリゴが、それぞれ5ヌクレオチド〜7ヌクレオチドからなる、請求項1の方法。
【請求項3】
第1のアプタマーは天然の同族結合エレメント配列を含み、第2のアプタマーはインビトロ進化を用いて選択される、請求項1の方法。
【請求項4】
第1の標識は蛍光ドナーであり、第2の標識は蛍光アクセプターである、請求項1の方法。
【請求項5】
第1の標識は蛍光アクセプターであり、第2の標識は蛍光ドナーである、請求項1の方法。
【請求項6】
検出方法が蛍光の変化を検出する請求項1の方法。
【請求項7】
検出方法がFRETである請求項6の方法。
【請求項8】
第1のアプタマーと第2のアプタマーがインビトロの進化によって選択される請求項1の方法。
【請求項9】
ポリペプチドは、元来は天然同族結合エレメント配列に結合しない請求項1の方法。
【請求項10】
ポリペプチドがトロンビンである請求項9の方法。
【請求項11】
第1のアプタマーがトロンビンフィブリノゲンエクソサイトに結合し、第2のアプタマーがトロンビンのフィブリノゲンエクソサイトに結合する請求項10の方法。
【請求項12】
第1の標識がフルオレセインである請求項11の方法。
【請求項13】
検出方法が蛍光偏光である請求項12の方法。
【請求項14】
第2の標識がダブシルで、検出方法がフルオレセインの蛍光強度の変化を検出することである請求項12の方法。
【請求項15】
第1のアプタマー構築物と第2のアプタマー構築物がリンカーで連結されている請求項1の方法。
【請求項16】
リンカーが柔軟なスペーサー18リンカーである、請求項1の方法。
【請求項17】
サンプル中のアナライトを検出する方法であって、該方法は
(a)第1のアプタマー構築物、第2のアプタマー構築物、およびポリペプチドにサンプルを接触させるステップと、
(b)第1のアプタマー構築物、第2のアプタマー構築物、ポリペプチド、およびアナライトの結合を検出方法により検出するステップと、
を含み、
(c)アナライトの存在下で、第1のアプタマー構築物はポリペプチドの第1のエピトープに結合でき、第2のアプタマー構築物はポリペプチドの第2のエピトープに結合でき、
(d)第1のアプタマー構築物は、第1のエピトープと結合できる第1のアプタマーと、第1のシグナリングオリゴと、第1の標識とを含み、
(e)第2のアプタマー構築物は、第2のエピトープと結合できる第2のアプタマーと、第1のシグナリングオリゴに相補的な第2のシグナリングオリゴと、第2の標識とを含む、
前記方法。
【請求項18】
第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴは、それぞれ5ヌクレオチド〜7ヌクレオチドからなる請求項17の方法。
【請求項19】
第1のアプタマーは天然同族結合エレメントの配列を含み、第2のアプタマーはインビトロ進化を用いて選択される請求項17の方法。
【請求項20】
第1の標識は蛍光ドナーであり、第2の標識は蛍光アクセプターである請求項17の方法。
【請求項21】
第1の標識は蛍光アクセプターであり、第2の標識は蛍光ドナーである、請求項17の方法。
【請求項22】
検出方法が蛍光の変化を検出する請求項17の方法。
【請求項23】
検出方法がFRETである請求項22の方法。
【請求項24】
第1のアプタマーと第2のアプタマーはインビトロ進化を用いて選択される請求項17の方法。
【請求項25】
前記ポリペプチドが元々は天然同族結合エレメント配列に結合しない請求項17の方法。
【請求項26】
前記ポリペプチドがアナライトとの結合の際に構造上の変化を起こす請求項17の方法。
【請求項27】
アナライトが薬物であり、前記ポリペプチドは該薬物に結合できる請求項26の方法。
【請求項28】
アナライトがスタチン薬物であり、前記ポリペプチドがHMG−CoAレダクターゼである請求項27の方法。
【請求項29】
アナライトが環境中に見出される毒素である請求項17の方法。
【請求項30】
第1のアプタマー構築物と第2のアプタマー構築物がリンカーで連結されている請求項17の方法。
【請求項31】
リンカーが柔軟なスペーサー18リンカーである請求項30の方法。
【請求項32】
第1と第2のアプタマー構築物を含むアプタマー構築物セットを作製する方法であって、 該方法は
(a)第1のエピトープを含む第1の基質に対する第1のアプタマーを選択し、第2のエピトープを含む第2の基質に対する第2のアプタマーを選択することを含むステップであって、第1のアプタマーは第1のエピトープに結合でき、第2のアプタマーは第2のエピトープに結合できるステップと、
(b)第1の標識を第1のアプタマーに結合させ、第2の標識を第2のアプタマーに結合させるステップと、
(c)第1のシグナリングオリゴを第1のアプタマーに結合させ、第2のシグナリングオリゴが第2のアプタマーに結合させるステップであって、第2のシグナリングオリゴが第1のシグナリングオリゴに相補的であるステップと、
(d)その結果(i)第1のアプタマー構築物が第1のアプタマー、第1の標識、および第1のシグナリングオリゴを含み、(ii)第2のアプタマー構築物が第2のアプタマー、第2の標識、および第2のシグナリングオリゴを含むステップと
を含む前記方法。
【請求項33】
第1の基質がポリペプチドであり、第2の基質が第1のアプタマーと結合したポリペプチドであり、第1のアプタマーが第1のエピトープをマスクする請求項32の方法。
【請求項34】
第1の基質がポリペプチドあるいは大分子複合体であり、第2の基質が第1のアプタマーと結合したポリペプチドあるいは大分子複合体であり、第1のアプタマーが(a)第1のシグナリングオリゴあるいは第1の標識上に結合され、(b)第1のエピトープをマスクしている、請求項32の方法。
【請求項35】
第1の基質が本質的に第1のエピトープからなるポリペプチドの断片であり、第2の基質が本質的に第2のエピトープからなるポリペプチドの断片である請求項32の方法。
【請求項36】
第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴが、各々5ヌクレオチド〜7ヌクレオチドからなる請求項32の方法。
【請求項37】
第1のアプタマーが天然同族結合エレメント配列を含み、第2のアプタマーはインビトロ進化を用いて選択される、請求項32の方法。
【請求項38】
第1の標識が蛍光ドナーであり、第2の標識が蛍光アクセプターである請求項32の方法。
【請求項39】
第1の標識が蛍光アクセプターであり、第2の標識が蛍光ドナーである請求項32の方法。
【請求項40】
第1のアプタマーと第2のアプタマーがインビトロ進化を用いて選択される請求項32の方法。
【請求項41】
柔軟なリンカーで第1のアプタマー構築物を第2のアプタマー構築物に連結するステップを含む請求項32の方法。
【請求項42】
第1のアプタマー、第1の標識、第1のシグナリングオリゴ、第2のアプタマー、第2の標識、第2のシグナリングオリゴおよびリンカーを含む二価アプタマー構築物であって、第1のアプタマーが第1のエピトープに結合でき、第2のアプタマーが第2のエピトープに結合できる二価アプタマー構築物。
【請求項43】
第1のエピトープと第2のエピトープが同一のポリペプチドの重複しない異なるエピトープである請求項42の二価アプタマー構築物。
【請求項44】
リンカーが柔軟なリンカーである請求項42の二価アプタマー構築物。
【請求項45】
リンカーがスペーサー18リンカーである請求項44の二価アプタマー構築物。
【請求項46】
リンカーがデオキシチミジンポリマーである請求項44の二価アプタマー構築物。
【請求項47】
第1の標識が蛍光ドナーである請求項42の二価アプタマー構築物。
【請求項48】
第2の標識が蛍光受容体である請求項47の二価アプタマー構築物。
【請求項49】
第1と第2のシグナリングオリゴは、5ヌクレオチド長〜7ヌクレオチド長である請求項42の二価アプタマー構築物。
【請求項50】
第1のアプタマーが天然同族結合エレメント配列を含む請求項42の二価アプタマー構築物。
【請求項51】
第2のアプタマーがインビトロ進化を用いて選択された、請求項50の二価アプタマー構築物。
【請求項52】
第1のアプタマーがインビトロ進化を用いて選択された請求項42の二価アプタマー構築物。
【請求項53】
ポリペプチドがトロンビンであり、第1の標識がフルオレセインであり、第2の標識がダブシルであり、第1のエピトープがヘパリンエクソサイトであり、第2のエピトープがフィブリノゲンエクソサイトであり、リンカーがスペーサー18である、請求項42の二価アプタマー構築物。
【請求項54】
ポリペプチドがトロンビンであり、第1の標識がフルオレセインであり、第2の標識がダブシルであり、第1のエピトープがヘパリンエクソサイトであり、第2のエピトープがフィブリノゲンエクソサイトであり、リンカー分子がスペーサー18である請求項43の二価アプタマー構築物。
【請求項55】
第1の標識が結合された第1のエピトープおよび第2の標識が結合された第2のエピトープを含むキットであって、
(a)第1のエピトープ結合剤と第2のエピトープ結合剤標識が、それぞれポリペプチドの第1のエピトープとポリペプチドの第2のエピトープに結合した時(b)第1の標識と第2の標識が相互作用して観測可能なシグナルを生み出す、キット。
【請求項56】
第1のエピトープ結合剤が抗体である請求項55のキット。
【請求項57】
第1のエピトープの結合剤は第1のアプタマー構築物であり、第1のアプタマー構築物は第1のアプタマー、第1の標識、および第1のシグナリングオリゴが含む請求項55のキット。
【請求項58】
第2のエピトープ結合剤が第2のアプタマー構築物であり、第2のアプタマー構築物は第2の標識と第1のシグナリングオリゴに相補的な第2のシグナリングオリゴを含む、請求項57のキット。
【請求項59】
第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴが5個ヌクレオチド〜7個ヌクレオチドの長さである請求項58のキット。
【請求項60】
第1のアプタマーが天然同族結合エレメント配列を含む、請求項58のキット。
【請求項61】
第2のアプタマーがインビトロ進化を用いて選択される、請求項58のキット。
【請求項62】
第1の標識は蛍光ドナーであり、第2の標識は蛍光受容体である請求項55のキット。
【請求項63】
第1の標識がフルオレセインで第2の標識がダブシルである請求項62のキット。
【請求項64】
アナライトと結合できるポリペプチドをさらに含む請求項55のキット。
【請求項65】
キットを使用するためのプリントされた指示のセットをさらに含む請求項55のキット。
【請求項66】
疾病を診断する方法であって、該方法は
(a)患者からサンプルを得るステップと、
(b)第1のエピトープ結合剤と第2のエピトープ結合剤に該サンプルを接触させるステップと、
(c)該サンプル中のポリヌクレオチドの存在を、検出方法を用いて検出するステップと、
を含み、該サンプル中の前記ポリペプチドの存在は患者に疾病があるかどうかを示す、疾病を診断する方法。
【請求項67】
(a)第1のエピトープ結合剤は第1の標識と第1のシグナリングオリゴが結合された第1のアプタマーであり、(b)第2のエピトープ結合剤は第2の標識と第1のシグナリングオリゴに相補的な第2のシグナリングオリゴが結合した第2のアプタマーであり、(c)検出方法は蛍光検出法であり、
(d)第1のアプタマーがポリペプチドに結合し第2のアプタマーもポリペプチドに結合した時、(e)第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴが互いに結合し、(f)第1の標識が第2の標識に接近して蛍光の変化が起こる、請求項66の方法。
【請求項68】
サンプルが、血液、尿、腹水、および組織サンプルからなる群から選択される請求項66の方法。
【請求項69】
患者がヒトである請求項66の方法。
【請求項70】
疾病を診断する方法であって、該方法は
(a)患者からサンプルを得るステップと、
(b)第1のエピトープ結合剤、第2のエピトープ結合剤、および第1のエピトープと第2のエピトープを含むポリペプチドにサンプルを接触させるステップと、
(c)サンプル中の、前記ポリペプチドに結合できるアナライトの存在を、検出方法を用いて検出するステップと、
を含み、前記分析物の存在は疾病が患者にあるかを示す、疾病を診断する方法。
【請求項71】
(a)第1のエピトープ結合剤は第1の標識と第1のシグナリングオリゴが結合した第1のアプタマーであり、(b)第2のエピトープ結合剤は第2の標識と、第1のシグナリングオリゴに相補的な第2シグナリングオリゴとが結合した第2のアプタマーであり、(c)検出方法は蛍光検出法であり、(d)アナライトがポリペプチドに結合した時、(e)第1のアプタマーがポリペプチドに結合し、第2のアプタマーもポリペプチドに結合し、(f)第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴが互いに結合し、(g)第1の標識が第2の標識に接近して蛍光の変化が起こる、請求項70の方法。
【請求項72】
サンプルが、血液、尿、腹水、および組織サンプルからなる群より選択される請求項70の方法。
【請求項73】
患者がヒトである請求項70の方法。
【請求項74】
有用な試薬についてサンプルをスクリーニングする方法であって、
(a)第1のエピトープ結合剤と第2のエピトープ結合剤にサンプルを接触させるステップと、
(b)検出方法を用いてサンプル中の有用な試薬の存在を検出するステップと、
を含む方法。
【請求項75】
有用な試薬が第1のエピトープと第2のエピトープを含むポリペプチドである請求項74の方法。
【請求項76】
アナライトと結合できるポリペプチドにサンプルを接触させるステップをさらに含み、前記有用な試薬がアナライトである、請求項74の方法。
【請求項77】
前記有用な試薬が潜在的な治療組成物である、請求項74の方法。
【請求項78】
(a)第1のエピトープ結合剤が、第1の標識と第1シグナリングオリゴが結合した第1のアプタマーであり、(b)第2のエピトープ結合剤が、第2の標識と第1のシグナリングオリゴに相補的な第2シグナリングオリゴが結合した第2のアプタマーであり、(c)検出方法が蛍光検出法であり、(d)第1のアプタマーがポリペプチドに結合するとき、また第2のアプタマーとポリペプチドが結合した時、(e)第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴが互いに結合し、(f)第1の標識が第2の標識に接近して蛍光の変化が起こる、請求項74の方法。
【請求項79】
有用な試薬が第1のエピトープと第2のエピトープとを含むポリペプチドである、請求項78の方法。
【請求項80】
アナライトに結合できるポリペプチドにサンプルを接触させるステップをさらに含み、有用な試薬がアナライトである、請求項78の方法。
【請求項81】
有用な試剤は潜在的な治療組成物である、請求項78の方法。
【請求項82】
請求項42〜54のいずれか一項の二価アプタマー構築物を含む薬理学的組成物。
【請求項83】
サンプル中の分子間相互作用を促進する方法であって、請求項42〜54のいずれか一項の二価アプタマーをサンプルに投与するステップを含み、第1のエピトープと第2のエピトープは異なる分子上にあり、第1のエピトープと第2のエピトープは接近して分子間相互作用を行う、サンプル中の分子間相互作用を促進する方法。
【請求項84】
サンプルが細胞、組織、脳脊髄液、血液、インビトロ反応混合液、および環境システムからなる群から選択される請求項83の方法。
【請求項85】
サンプル中のポリペプチドを検出する方法であって、該方法は
(a)第1の分子認識構築物と第2の分子認識構築物にサンプルを接触させるステップと、(b)検出方法を用いて第1の分子認識構築物、第2の分子認識構築物、およびポリペプチドの結合を検出するステップと
を含み、
(c)第1の分子認識構築物はポリペプチドの第1のエピトープと結合でき、第2の分子認識構築物はポリペプチドの第2のエピトープと結合でき、
(d)第1の分子認識構築物は(i)第1のエピトープに結合できる第1のエピトープ結合剤と、(ii)第1のシグナリングオリゴと、(iii)第1の標識とを含み、
(e)第2の分子認識構築物は(iv)第2のエピトープに結合できる第2のエピトープ結合剤と、(v)第1のシグナリングオリゴに相補的な第2のシグナリングオリゴと、(vi)第2の標識とを含む、
サンプル中のポリペプチドを検出する方法。
【請求項86】
第1のエピトープ結合剤がアプタマーである請求項85の方法。
【請求項87】
第2のエピトープ結合剤がアプタマーである請求項86の方法。
【請求項88】
第2のエピトープ結合剤が抗体である請求項86の方法。
【請求項89】
第2のエピトープ結合剤がポリペプチドへの結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドである請求項86の方法。
【請求項90】
第1のエピトープ結合剤が抗体である請求項85の方法。
【請求項91】
第2のエピトープ結合剤が第2の抗体である請求項90の方法。
【請求項92】
第2のエピトープ結合剤がポリペプチドへの結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドである、請求項90の方法。
【請求項93】
第1のエピトープ結合剤がポリペプチドへの第1の結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドである、請求項85の方法。
【請求項94】
第2のエピトープ結合剤がポリペプチドへの第2の結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドである、請求項93の方法。
【請求項95】
検出方法が、プラズモン共鳴、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、蛍光相互相関分光(FCCS)、蛍光消光、蛍光偏光、着色物産生、化学発光、シンチレーション、生物発光、および発光共鳴エネルギー移動からなる群から選択される、請求項85〜94のいずれか一項の方法。
【請求項96】
検出方法が発光共鳴エネルギー移動である請求項95の方法。
【請求項97】
ポリペプチドがトロンビンあるいはcAMP反応エレメント結合タンパク質(CPR)である、請求項85〜96のいずれか一項の方法。
【請求項98】
サンプルが、血液、尿、腹水、細胞サンプル、および組織サンプルからなる群より選択される、請求項85〜97のいずれか一項の方法。
【請求項99】
第1の分子認識構築物と第2の分子認識構築物とを含む分子ビーコンであって、
(a)第1の分子認識構築物はポリペプチドの第1のエピトープと結合でき、また第2の分子認識構築物はポリペプチドの第2のエピトープと結合することができ、
(b)第1の分子認識構築物は(i)第1のエピトープに結合できる第1のエピトープ結合剤と、(ii)第1のシグナリングオリゴと(iii)第1の標識とを含み、
(c)第2の分子認識構築物は(iv)第2のエピトープに結合できる第2のエピトープ結合剤と、(v)第1のシグナリングオリゴに相補的な第2のシグナリングオリゴと、(vi)第2の標識とを含む、
分子ビーコン。
【請求項100】
第1のエピトープ結合剤がアプタマーである、請求項99の分子ビーコン。
【請求項101】
第2のエピトープ結合剤がアプタマーである、請求項100の方法。
【請求項102】
第二のエピトープ結合剤が抗体である請求項100の方法。
【請求項103】
第2のエピトープ結合剤がポリペプチドへの結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドである、請求項100の方法。
【請求項104】
第1のエピトープ結合剤が抗体である、請求項99の方法。
【請求項105】
第2のエピトープ結合剤が第2の抗体である、請求項104の方法。
【請求項106】
第2のエピトープの結合剤がポリペプチドへの結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドである、請求項104の方法。
【請求項107】
第1のエピトープ結合剤がポリペプチドへの第1の結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドである、請求項99の方法。
【請求項108】
第2のエピトープ結合剤がポリペプチドへの第2の結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドである、請求項107の方法。
【請求項1】
サンプル中のポリペプチドを検出する方法であって、該方法は
(a)第1のアプタマー構築物と第2のアプタマー構築物にサンプルを接触させるステップと、
(b)第1のアプタマー構築物、第2のアプタマー構築物、およびポリペプチドの結合を検出方法により検出するステップと、
を含み、
(c)第1のアプタマー構築物は前記ポリペプチドの第の1エピトープに結合でき、第2のアプタマー構築物は前記ポリペプチドの第2のエピトープに結合でき、
(d)第1アプタマー構築物は
(i)第1のエピトープと結合できる第1のアプタマーと、
(ii)第1のシグナリングオリゴと、
(iii)第1の標識と
を含み、
(e)第2のアプタマー構築物は
(iv)第2のエピトープと結合できる第2のアプタマーと、
(v)第1のシグナリングオリゴに相補的な第2のシグナリングオリゴと、
(vi)第2の標識と
を含む、前記方法。
【請求項2】
第1と第2のシグナリングオリゴが、それぞれ5ヌクレオチド〜7ヌクレオチドからなる、請求項1の方法。
【請求項3】
第1のアプタマーは天然の同族結合エレメント配列を含み、第2のアプタマーはインビトロ進化を用いて選択される、請求項1の方法。
【請求項4】
第1の標識は蛍光ドナーであり、第2の標識は蛍光アクセプターである、請求項1の方法。
【請求項5】
第1の標識は蛍光アクセプターであり、第2の標識は蛍光ドナーである、請求項1の方法。
【請求項6】
検出方法が蛍光の変化を検出する請求項1の方法。
【請求項7】
検出方法がFRETである請求項6の方法。
【請求項8】
第1のアプタマーと第2のアプタマーがインビトロの進化によって選択される請求項1の方法。
【請求項9】
ポリペプチドは、元来は天然同族結合エレメント配列に結合しない請求項1の方法。
【請求項10】
ポリペプチドがトロンビンである請求項9の方法。
【請求項11】
第1のアプタマーがトロンビンフィブリノゲンエクソサイトに結合し、第2のアプタマーがトロンビンのフィブリノゲンエクソサイトに結合する請求項10の方法。
【請求項12】
第1の標識がフルオレセインである請求項11の方法。
【請求項13】
検出方法が蛍光偏光である請求項12の方法。
【請求項14】
第2の標識がダブシルで、検出方法がフルオレセインの蛍光強度の変化を検出することである請求項12の方法。
【請求項15】
第1のアプタマー構築物と第2のアプタマー構築物がリンカーで連結されている請求項1の方法。
【請求項16】
リンカーが柔軟なスペーサー18リンカーである、請求項1の方法。
【請求項17】
サンプル中のアナライトを検出する方法であって、該方法は
(a)第1のアプタマー構築物、第2のアプタマー構築物、およびポリペプチドにサンプルを接触させるステップと、
(b)第1のアプタマー構築物、第2のアプタマー構築物、ポリペプチド、およびアナライトの結合を検出方法により検出するステップと、
を含み、
(c)アナライトの存在下で、第1のアプタマー構築物はポリペプチドの第1のエピトープに結合でき、第2のアプタマー構築物はポリペプチドの第2のエピトープに結合でき、
(d)第1のアプタマー構築物は、第1のエピトープと結合できる第1のアプタマーと、第1のシグナリングオリゴと、第1の標識とを含み、
(e)第2のアプタマー構築物は、第2のエピトープと結合できる第2のアプタマーと、第1のシグナリングオリゴに相補的な第2のシグナリングオリゴと、第2の標識とを含む、
前記方法。
【請求項18】
第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴは、それぞれ5ヌクレオチド〜7ヌクレオチドからなる請求項17の方法。
【請求項19】
第1のアプタマーは天然同族結合エレメントの配列を含み、第2のアプタマーはインビトロ進化を用いて選択される請求項17の方法。
【請求項20】
第1の標識は蛍光ドナーであり、第2の標識は蛍光アクセプターである請求項17の方法。
【請求項21】
第1の標識は蛍光アクセプターであり、第2の標識は蛍光ドナーである、請求項17の方法。
【請求項22】
検出方法が蛍光の変化を検出する請求項17の方法。
【請求項23】
検出方法がFRETである請求項22の方法。
【請求項24】
第1のアプタマーと第2のアプタマーはインビトロ進化を用いて選択される請求項17の方法。
【請求項25】
前記ポリペプチドが元々は天然同族結合エレメント配列に結合しない請求項17の方法。
【請求項26】
前記ポリペプチドがアナライトとの結合の際に構造上の変化を起こす請求項17の方法。
【請求項27】
アナライトが薬物であり、前記ポリペプチドは該薬物に結合できる請求項26の方法。
【請求項28】
アナライトがスタチン薬物であり、前記ポリペプチドがHMG−CoAレダクターゼである請求項27の方法。
【請求項29】
アナライトが環境中に見出される毒素である請求項17の方法。
【請求項30】
第1のアプタマー構築物と第2のアプタマー構築物がリンカーで連結されている請求項17の方法。
【請求項31】
リンカーが柔軟なスペーサー18リンカーである請求項30の方法。
【請求項32】
第1と第2のアプタマー構築物を含むアプタマー構築物セットを作製する方法であって、 該方法は
(a)第1のエピトープを含む第1の基質に対する第1のアプタマーを選択し、第2のエピトープを含む第2の基質に対する第2のアプタマーを選択することを含むステップであって、第1のアプタマーは第1のエピトープに結合でき、第2のアプタマーは第2のエピトープに結合できるステップと、
(b)第1の標識を第1のアプタマーに結合させ、第2の標識を第2のアプタマーに結合させるステップと、
(c)第1のシグナリングオリゴを第1のアプタマーに結合させ、第2のシグナリングオリゴが第2のアプタマーに結合させるステップであって、第2のシグナリングオリゴが第1のシグナリングオリゴに相補的であるステップと、
(d)その結果(i)第1のアプタマー構築物が第1のアプタマー、第1の標識、および第1のシグナリングオリゴを含み、(ii)第2のアプタマー構築物が第2のアプタマー、第2の標識、および第2のシグナリングオリゴを含むステップと
を含む前記方法。
【請求項33】
第1の基質がポリペプチドであり、第2の基質が第1のアプタマーと結合したポリペプチドであり、第1のアプタマーが第1のエピトープをマスクする請求項32の方法。
【請求項34】
第1の基質がポリペプチドあるいは大分子複合体であり、第2の基質が第1のアプタマーと結合したポリペプチドあるいは大分子複合体であり、第1のアプタマーが(a)第1のシグナリングオリゴあるいは第1の標識上に結合され、(b)第1のエピトープをマスクしている、請求項32の方法。
【請求項35】
第1の基質が本質的に第1のエピトープからなるポリペプチドの断片であり、第2の基質が本質的に第2のエピトープからなるポリペプチドの断片である請求項32の方法。
【請求項36】
第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴが、各々5ヌクレオチド〜7ヌクレオチドからなる請求項32の方法。
【請求項37】
第1のアプタマーが天然同族結合エレメント配列を含み、第2のアプタマーはインビトロ進化を用いて選択される、請求項32の方法。
【請求項38】
第1の標識が蛍光ドナーであり、第2の標識が蛍光アクセプターである請求項32の方法。
【請求項39】
第1の標識が蛍光アクセプターであり、第2の標識が蛍光ドナーである請求項32の方法。
【請求項40】
第1のアプタマーと第2のアプタマーがインビトロ進化を用いて選択される請求項32の方法。
【請求項41】
柔軟なリンカーで第1のアプタマー構築物を第2のアプタマー構築物に連結するステップを含む請求項32の方法。
【請求項42】
第1のアプタマー、第1の標識、第1のシグナリングオリゴ、第2のアプタマー、第2の標識、第2のシグナリングオリゴおよびリンカーを含む二価アプタマー構築物であって、第1のアプタマーが第1のエピトープに結合でき、第2のアプタマーが第2のエピトープに結合できる二価アプタマー構築物。
【請求項43】
第1のエピトープと第2のエピトープが同一のポリペプチドの重複しない異なるエピトープである請求項42の二価アプタマー構築物。
【請求項44】
リンカーが柔軟なリンカーである請求項42の二価アプタマー構築物。
【請求項45】
リンカーがスペーサー18リンカーである請求項44の二価アプタマー構築物。
【請求項46】
リンカーがデオキシチミジンポリマーである請求項44の二価アプタマー構築物。
【請求項47】
第1の標識が蛍光ドナーである請求項42の二価アプタマー構築物。
【請求項48】
第2の標識が蛍光受容体である請求項47の二価アプタマー構築物。
【請求項49】
第1と第2のシグナリングオリゴは、5ヌクレオチド長〜7ヌクレオチド長である請求項42の二価アプタマー構築物。
【請求項50】
第1のアプタマーが天然同族結合エレメント配列を含む請求項42の二価アプタマー構築物。
【請求項51】
第2のアプタマーがインビトロ進化を用いて選択された、請求項50の二価アプタマー構築物。
【請求項52】
第1のアプタマーがインビトロ進化を用いて選択された請求項42の二価アプタマー構築物。
【請求項53】
ポリペプチドがトロンビンであり、第1の標識がフルオレセインであり、第2の標識がダブシルであり、第1のエピトープがヘパリンエクソサイトであり、第2のエピトープがフィブリノゲンエクソサイトであり、リンカーがスペーサー18である、請求項42の二価アプタマー構築物。
【請求項54】
ポリペプチドがトロンビンであり、第1の標識がフルオレセインであり、第2の標識がダブシルであり、第1のエピトープがヘパリンエクソサイトであり、第2のエピトープがフィブリノゲンエクソサイトであり、リンカー分子がスペーサー18である請求項43の二価アプタマー構築物。
【請求項55】
第1の標識が結合された第1のエピトープおよび第2の標識が結合された第2のエピトープを含むキットであって、
(a)第1のエピトープ結合剤と第2のエピトープ結合剤標識が、それぞれポリペプチドの第1のエピトープとポリペプチドの第2のエピトープに結合した時(b)第1の標識と第2の標識が相互作用して観測可能なシグナルを生み出す、キット。
【請求項56】
第1のエピトープ結合剤が抗体である請求項55のキット。
【請求項57】
第1のエピトープの結合剤は第1のアプタマー構築物であり、第1のアプタマー構築物は第1のアプタマー、第1の標識、および第1のシグナリングオリゴが含む請求項55のキット。
【請求項58】
第2のエピトープ結合剤が第2のアプタマー構築物であり、第2のアプタマー構築物は第2の標識と第1のシグナリングオリゴに相補的な第2のシグナリングオリゴを含む、請求項57のキット。
【請求項59】
第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴが5個ヌクレオチド〜7個ヌクレオチドの長さである請求項58のキット。
【請求項60】
第1のアプタマーが天然同族結合エレメント配列を含む、請求項58のキット。
【請求項61】
第2のアプタマーがインビトロ進化を用いて選択される、請求項58のキット。
【請求項62】
第1の標識は蛍光ドナーであり、第2の標識は蛍光受容体である請求項55のキット。
【請求項63】
第1の標識がフルオレセインで第2の標識がダブシルである請求項62のキット。
【請求項64】
アナライトと結合できるポリペプチドをさらに含む請求項55のキット。
【請求項65】
キットを使用するためのプリントされた指示のセットをさらに含む請求項55のキット。
【請求項66】
疾病を診断する方法であって、該方法は
(a)患者からサンプルを得るステップと、
(b)第1のエピトープ結合剤と第2のエピトープ結合剤に該サンプルを接触させるステップと、
(c)該サンプル中のポリヌクレオチドの存在を、検出方法を用いて検出するステップと、
を含み、該サンプル中の前記ポリペプチドの存在は患者に疾病があるかどうかを示す、疾病を診断する方法。
【請求項67】
(a)第1のエピトープ結合剤は第1の標識と第1のシグナリングオリゴが結合された第1のアプタマーであり、(b)第2のエピトープ結合剤は第2の標識と第1のシグナリングオリゴに相補的な第2のシグナリングオリゴが結合した第2のアプタマーであり、(c)検出方法は蛍光検出法であり、
(d)第1のアプタマーがポリペプチドに結合し第2のアプタマーもポリペプチドに結合した時、(e)第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴが互いに結合し、(f)第1の標識が第2の標識に接近して蛍光の変化が起こる、請求項66の方法。
【請求項68】
サンプルが、血液、尿、腹水、および組織サンプルからなる群から選択される請求項66の方法。
【請求項69】
患者がヒトである請求項66の方法。
【請求項70】
疾病を診断する方法であって、該方法は
(a)患者からサンプルを得るステップと、
(b)第1のエピトープ結合剤、第2のエピトープ結合剤、および第1のエピトープと第2のエピトープを含むポリペプチドにサンプルを接触させるステップと、
(c)サンプル中の、前記ポリペプチドに結合できるアナライトの存在を、検出方法を用いて検出するステップと、
を含み、前記分析物の存在は疾病が患者にあるかを示す、疾病を診断する方法。
【請求項71】
(a)第1のエピトープ結合剤は第1の標識と第1のシグナリングオリゴが結合した第1のアプタマーであり、(b)第2のエピトープ結合剤は第2の標識と、第1のシグナリングオリゴに相補的な第2シグナリングオリゴとが結合した第2のアプタマーであり、(c)検出方法は蛍光検出法であり、(d)アナライトがポリペプチドに結合した時、(e)第1のアプタマーがポリペプチドに結合し、第2のアプタマーもポリペプチドに結合し、(f)第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴが互いに結合し、(g)第1の標識が第2の標識に接近して蛍光の変化が起こる、請求項70の方法。
【請求項72】
サンプルが、血液、尿、腹水、および組織サンプルからなる群より選択される請求項70の方法。
【請求項73】
患者がヒトである請求項70の方法。
【請求項74】
有用な試薬についてサンプルをスクリーニングする方法であって、
(a)第1のエピトープ結合剤と第2のエピトープ結合剤にサンプルを接触させるステップと、
(b)検出方法を用いてサンプル中の有用な試薬の存在を検出するステップと、
を含む方法。
【請求項75】
有用な試薬が第1のエピトープと第2のエピトープを含むポリペプチドである請求項74の方法。
【請求項76】
アナライトと結合できるポリペプチドにサンプルを接触させるステップをさらに含み、前記有用な試薬がアナライトである、請求項74の方法。
【請求項77】
前記有用な試薬が潜在的な治療組成物である、請求項74の方法。
【請求項78】
(a)第1のエピトープ結合剤が、第1の標識と第1シグナリングオリゴが結合した第1のアプタマーであり、(b)第2のエピトープ結合剤が、第2の標識と第1のシグナリングオリゴに相補的な第2シグナリングオリゴが結合した第2のアプタマーであり、(c)検出方法が蛍光検出法であり、(d)第1のアプタマーがポリペプチドに結合するとき、また第2のアプタマーとポリペプチドが結合した時、(e)第1のシグナリングオリゴと第2のシグナリングオリゴが互いに結合し、(f)第1の標識が第2の標識に接近して蛍光の変化が起こる、請求項74の方法。
【請求項79】
有用な試薬が第1のエピトープと第2のエピトープとを含むポリペプチドである、請求項78の方法。
【請求項80】
アナライトに結合できるポリペプチドにサンプルを接触させるステップをさらに含み、有用な試薬がアナライトである、請求項78の方法。
【請求項81】
有用な試剤は潜在的な治療組成物である、請求項78の方法。
【請求項82】
請求項42〜54のいずれか一項の二価アプタマー構築物を含む薬理学的組成物。
【請求項83】
サンプル中の分子間相互作用を促進する方法であって、請求項42〜54のいずれか一項の二価アプタマーをサンプルに投与するステップを含み、第1のエピトープと第2のエピトープは異なる分子上にあり、第1のエピトープと第2のエピトープは接近して分子間相互作用を行う、サンプル中の分子間相互作用を促進する方法。
【請求項84】
サンプルが細胞、組織、脳脊髄液、血液、インビトロ反応混合液、および環境システムからなる群から選択される請求項83の方法。
【請求項85】
サンプル中のポリペプチドを検出する方法であって、該方法は
(a)第1の分子認識構築物と第2の分子認識構築物にサンプルを接触させるステップと、(b)検出方法を用いて第1の分子認識構築物、第2の分子認識構築物、およびポリペプチドの結合を検出するステップと
を含み、
(c)第1の分子認識構築物はポリペプチドの第1のエピトープと結合でき、第2の分子認識構築物はポリペプチドの第2のエピトープと結合でき、
(d)第1の分子認識構築物は(i)第1のエピトープに結合できる第1のエピトープ結合剤と、(ii)第1のシグナリングオリゴと、(iii)第1の標識とを含み、
(e)第2の分子認識構築物は(iv)第2のエピトープに結合できる第2のエピトープ結合剤と、(v)第1のシグナリングオリゴに相補的な第2のシグナリングオリゴと、(vi)第2の標識とを含む、
サンプル中のポリペプチドを検出する方法。
【請求項86】
第1のエピトープ結合剤がアプタマーである請求項85の方法。
【請求項87】
第2のエピトープ結合剤がアプタマーである請求項86の方法。
【請求項88】
第2のエピトープ結合剤が抗体である請求項86の方法。
【請求項89】
第2のエピトープ結合剤がポリペプチドへの結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドである請求項86の方法。
【請求項90】
第1のエピトープ結合剤が抗体である請求項85の方法。
【請求項91】
第2のエピトープ結合剤が第2の抗体である請求項90の方法。
【請求項92】
第2のエピトープ結合剤がポリペプチドへの結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドである、請求項90の方法。
【請求項93】
第1のエピトープ結合剤がポリペプチドへの第1の結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドである、請求項85の方法。
【請求項94】
第2のエピトープ結合剤がポリペプチドへの第2の結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドである、請求項93の方法。
【請求項95】
検出方法が、プラズモン共鳴、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、蛍光相互相関分光(FCCS)、蛍光消光、蛍光偏光、着色物産生、化学発光、シンチレーション、生物発光、および発光共鳴エネルギー移動からなる群から選択される、請求項85〜94のいずれか一項の方法。
【請求項96】
検出方法が発光共鳴エネルギー移動である請求項95の方法。
【請求項97】
ポリペプチドがトロンビンあるいはcAMP反応エレメント結合タンパク質(CPR)である、請求項85〜96のいずれか一項の方法。
【請求項98】
サンプルが、血液、尿、腹水、細胞サンプル、および組織サンプルからなる群より選択される、請求項85〜97のいずれか一項の方法。
【請求項99】
第1の分子認識構築物と第2の分子認識構築物とを含む分子ビーコンであって、
(a)第1の分子認識構築物はポリペプチドの第1のエピトープと結合でき、また第2の分子認識構築物はポリペプチドの第2のエピトープと結合することができ、
(b)第1の分子認識構築物は(i)第1のエピトープに結合できる第1のエピトープ結合剤と、(ii)第1のシグナリングオリゴと(iii)第1の標識とを含み、
(c)第2の分子認識構築物は(iv)第2のエピトープに結合できる第2のエピトープ結合剤と、(v)第1のシグナリングオリゴに相補的な第2のシグナリングオリゴと、(vi)第2の標識とを含む、
分子ビーコン。
【請求項100】
第1のエピトープ結合剤がアプタマーである、請求項99の分子ビーコン。
【請求項101】
第2のエピトープ結合剤がアプタマーである、請求項100の方法。
【請求項102】
第二のエピトープ結合剤が抗体である請求項100の方法。
【請求項103】
第2のエピトープ結合剤がポリペプチドへの結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドである、請求項100の方法。
【請求項104】
第1のエピトープ結合剤が抗体である、請求項99の方法。
【請求項105】
第2のエピトープ結合剤が第2の抗体である、請求項104の方法。
【請求項106】
第2のエピトープの結合剤がポリペプチドへの結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドである、請求項104の方法。
【請求項107】
第1のエピトープ結合剤がポリペプチドへの第1の結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドである、請求項99の方法。
【請求項108】
第2のエピトープ結合剤がポリペプチドへの第2の結合部位を含む二本鎖ポリヌクレオチドである、請求項107の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
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【図27】
【図28】
【図29】
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【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2012−115269(P2012−115269A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−284014(P2011−284014)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【分割の表示】特願2006−543991(P2006−543991)の分割
【原出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(506200555)セントルイス ユニバーシティー (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284014(P2011−284014)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【分割の表示】特願2006−543991(P2006−543991)の分割
【原出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(506200555)セントルイス ユニバーシティー (2)
【Fターム(参考)】
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