説明

大判用紙印刷機の排紙装置

【課題】 大判用紙であっても大判用紙トレイ上の定位置に奇麗に揃えて収容(スタック)できるようにして、確実性,安定性及び信頼性の高い排紙処理を実現するとともに、大判用紙印刷機全体の小型コンパクト化及び設置時の省スペース性を高める。
【解決手段】 排紙部12から排出される大判用紙Pmをガイドし、かつ角度を変更して大判用紙Pmの排出方向Foを変更可能な排紙ガイド2と、排紙ガイド2を通過した大判用紙Pmが大判用紙トレイ13上に沿って載置されるように、大判用紙Pmの上面に対して押し作用し、又は大判用紙Pmの下面に対して引き作用するとともに、大判用紙トレイ13の上面に対して平行に移動可能な用紙アシスト3と、排紙ガイド2の角度を変更するとともに、用紙アシスト3を移動させる駆動機構部4と、この駆動機構部4を制御する制御部5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷部により印刷された大判用紙を搬送して排紙部から大判用紙トレイに排出する大判用紙印刷機の排紙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、A0及びA1サイズのような大判用紙(大型サイズ)の印刷を行う印刷機の排紙装置としては、特許文献1で開示される排紙受けユニット及び特許文献2で開示される排紙スタッカが知られている。
【0003】
特許文献1で開示される排紙受けユニットは、小判の記録媒体から大判の記録媒体までを折れたり曲がったりしないように受け止めることを目的としたものであり、具体的には、排出された大判の記録媒体を受ける受け部を備え、印刷に使用する用紙の情報に基づいて、電源供給部から電力を供給された駆動モータが必要な量だけ回転し、プーリがワイヤを巻取ることによって、中央部支持棒を上昇させ、受け部を変形させることにより、受け部の前側に、小判の記録媒体を受けるのに適した形状の変形受け部を形成可能にしたものである。また、特許文献2で開示される排紙スタッカは、大判プリンタで印刷されたメディアが、排紙スタッカの外に飛び出し、床面に接触して汚れる課題を解決することを目的としたものであり、具体的には、排紙スタッカの手前側に折り返し部を設け、排紙スタッカ表面に沿うように収容されつつあるメディアをその折り返し部で排紙スタッカ表面から離間させ、S字形状を形成させることで、メディアを排紙スタッカの中へ折り畳む形で収容可能にしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−36368号公報
【特許文献2】特開2008−30880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の排紙装置(排紙受けユニット,排紙スタッカ)は、次のような問題点があった。
【0006】
第一に、排紙部より排出される大判の紙を下方に配した受け部(スタッカ)にそのまま垂らして収容する方式のため、定位置に奇麗に揃えて収容することは容易でなく、紙質や紙厚等によってはスタック位置が乱れたり座屈等のアクシデントが生じやすい。特に、ロール紙を使用した場合には、排紙部から排出される紙にカールが残留しやすく、確実性,安定性及び信頼性の高い排紙処理を行う観点からは必ずしも十分とはいえない。
【0007】
第二に、大判の紙を受け取る湾曲した特殊形状の受け部(スタッカ)を必要とするため、受け部のサイズ、特に、前後方向のサイズが大きくなる。この結果、当該受け部を含めた印刷機全体の大型化を招くとともに、広い設置スペースも確保する必要があるなど、印刷機全体の小型コンパクト化、更には設置時の省スペース性を高める観点からも更なる改善の余地があった。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した大判用紙印刷機の排紙装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、印刷部11により印刷された大判用紙Pmを搬送して排紙部12から大判用紙トレイ13に排出する大判用紙印刷機Mの排紙装置1を構成するに際して、排紙部12から排出される大判用紙Pmをガイドし、かつ角度を変更して大判用紙Pmの排出方向Foを変更可能な排紙ガイド2と、排紙ガイド2を通過した大判用紙Pmが大判用紙トレイ13上に沿って載置されるように、大判用紙Pmの上面に対して押し作用し、又は大判用紙Pmの下面に対して引き作用するとともに、大判用紙トレイ13の上面に対して平行に移動可能な用紙アシスト3と、排紙ガイド2の角度を変更するとともに、用紙アシスト3を移動させる駆動機構部4と、この駆動機構部4を制御する制御部5と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、大判用紙トレイ13は、先端上がりに傾斜させて配設し、かつ当該大判用紙トレイ13の中央部位近傍に排紙部12を位置させることができる。一方、排紙ガイド2は、大判用紙Pmが挿通可能なスリットRsを内側に設けた枠形の用紙ガイド部2gを備え、この用紙ガイド部2gを左右方向の支軸部2s,2sにより回動可能に支持して構成できる。また、用紙アシスト3は、大判用紙トレイ13の上面に対して平行に移動させることにより、大判用紙Pmの上面に対して当接可能な係合体部3c,3cを用いた構成,大判用紙トレイPmの上面に対して平行に移動させることにより、大判用紙Pmの上面に対して送風可能又は大判用紙Pmの下面に対して吸引可能な送風部3wを用いた構成,大判用紙トレイ13の上面に沿って配設した複数の送風部3wa,3wb…を備え、各送風部3wa,3wb…の作動を順次切換えることにより、送風位置を移動させて大判用紙Pmの上面に対して送風可能又は大判用紙Pmの下面に対して吸引可能な構成,などの各種構成により実施することができる。なお、大判用紙Pmは、ロール紙Prから繰り出される連続用紙Prcをカッタ部14によりカッティングして得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係る大判用紙印刷機Mの排紙装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 排紙部12から排出される大判用紙Pmをガイドし、かつ角度を変更して大判用紙Pmの排出方向Foを変更可能な排紙ガイド2と、排紙ガイド2を通過した大判用紙Pmが大判用紙トレイ13上に沿って載置されるように、大判用紙Pmの上面に対して押し作用し、又は大判用紙Pmの下面に対して引き作用するとともに、大判用紙トレイ13の上面に対して平行に移動可能な用紙アシスト3を備えるため、紙質や紙厚等が異なってもスタック位置の乱れや座屈等のアクシデントが生じにくく、A0及びA1サイズのような大判用紙Pmであっても大判用紙トレイ13上の定位置に奇麗に揃えて収容(スタック)できるなど、確実性,安定性及び信頼性の高い排紙処理を行うことができる。したがって、ロール紙Prから繰り出される連続用紙Prcをカッタ部14によりカッティングして得るカールが残留しやすい大判用紙Pmを用いた場合に最適となる。
【0013】
(2) 従来のように、大判用紙トレイ13を湾曲させるなどの特殊形状に構成する必要がなく、大判用紙トレイ13を平坦に構成できる。したがって、大判用紙トレイ13を先端上がりに傾斜させて配設し、かつ当該大判用紙トレイ13の中央部位近傍に排紙部12を位置させるなどによって、大判用紙トレイ13のサイズ、特に、前後方向のサイズをより小さくすることができ、大判用紙トレイ13を含む大判用紙印刷機M全体の小型コンパクト化を図れるとともに、設置時の省スペース性を高めることができる。
【0014】
(3) 好適な態様により、排紙ガイド2を、大判用紙Pmが挿通可能なスリットRsを内側に設けた枠形の用紙ガイド部2gを左右方向の支軸部2s,2sにより回動可能に支持して構成すれば、排紙部12から排出される大判用紙Pmを確実にガイドできるとともに、大判用紙Pmの排出方向Foを容易かつ確実に変更することができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、用紙アシスト3に、大判用紙トレイ13の上面に対して平行に移動させることにより、大判用紙Pmの上面に対して当接可能な係合体部3c,3cを用いれば、係合体部3c,3cにより大判用紙Pmの上面を直接押し作用可能となるため、大判用紙Pmを大判用紙トレイ13上に沿って確実に載置することができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、用紙アシスト3に、大判用紙トレイPmの上面に対して平行に移動させることにより、大判用紙Pmの上面に対して送風可能又は大判用紙Pmの下面に対して吸引可能な送風部3wを用いれば、送風部3wによる送風又は吸引により、大判用紙Pmにおける上面又は下面のより広い面積に対する安定した押し作用又は引き作用を発揮できるとともに、送風量の制御(設定)により押し作用又は引き作用を容易に最適化することができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、用紙アシスト3を、大判用紙トレイ13の上面に沿って配設した複数の送風部3wa,3wb…を備え、各送風部3wa,3wb…の作動を順次切換えることにより、送風位置を移動させて大判用紙Pmの上面に対して送風可能又は大判用紙Pmの下面に対して吸引可能に構成すれば、送風部を移動させる機構が不要になるため、機械構造の単純化(小型化)、更には省エネルギ性の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好適実施形態に係る排紙装置の要部を示す全体構成図、
【図2】同排紙装置を備える大判用紙印刷機の模式的全体構成図、
【図3】同排紙装置に用いる排紙ガイドの斜視図、
【図4】同排紙装置に用いる用紙アシストの正面図、
【図5】同排紙装置の動作を順を追って説明するためのフローチャート、
【図6】同排紙装置の動作を説明するための模式的構成図、
【図7】本発明の変更実施形態に係る排紙装置の要部を示す全体構成図、
【図8】本発明の他の変更実施形態に係る排紙装置の要部を示す全体構成図、
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
まず、本実施形態に係る排紙装置1の理解を容易にするため、排紙装置1を用いる大判用紙印刷機Mの概略構成について、図2を参照して説明する。
【0021】
例示の大判用紙印刷機Mは、大別して、前段の印刷ユニットUpと後段の後処理ユニットUrからなる。印刷ユニットUpは、用紙を搬送するための複数の搬送ローラ及びガイドプレート等により構成される搬送路41を備え、この搬送路41の上流端には、ロール紙Prを装填するロール紙装填部42を設けるとともに、搬送路41の下流端には、用紙搬出部43を設ける。また、搬送路41の途中には、上流側から、ロール紙装填部42に装填したロール紙Prから繰り出される連続用紙PrcをカッティングしてA0及びA1サイズ等の大判用紙Pmを得るカッタ部14,この大判用紙Pmに残留するカールを矯正する第一ディカーラ部44,搬送される用紙に印刷(プリント)を行うインクジェット方式を用いた印刷部11を、順次配設する。これにより、印刷部11で印刷された大判用紙Pmは用紙搬出部43から排出される。なお、図示を省略したが、A3及びA4サイズ等の中小サイズの印刷用紙を供給可能な用紙カセット等を備え、搬送路を切換えることにより印刷部11に供給することができる。その他、図中、45は用紙残量センサを示す。
【0022】
一方、後処理ユニットUrは、複数の搬送ローラ及びガイドプレート等により構成される搬送路51を備え、この搬送路51の上流端には、用紙搬入部52を設けるとともに、搬送路51の下流端には、大判用紙Pm以外の中小サイズの印刷用紙Psを排紙する補助排紙部53を設けるとともに、大判用紙Pmを排紙する排紙部12を設ける。したがって、補助排紙部53からの排出と排紙部12からの排出を切換える搬送方向切換部56を備えるいる。また、搬送路51の途中には、上流側から、大判用紙Pm及び印刷用紙PsをU状に弛ませることにより搬送負荷変動の伝達を防止するインシュレータ部54,特に大判用紙Pmに残留するカールを矯正する第二ディカーラ部55,上述した搬送方向切換部56を、順次配設する。これにより、中小サイズの印刷用紙Psは、第二ディカーラ部55を通過後、搬送方向切換部56を介して補助排紙部53から排出され、補助トレイ57上に載置(スタック)されるとともに、大判用紙Pmは、第二ディカーラ部55を通過後、搬送方向切換部56を介して排紙部12から排出される。そして、排紙部12から排出された大判用紙Pmは、本実施形態に係る排紙装置1を介して大判用紙トレイ13上に載置(スタック)される。その他、図中、58はインシュレータ部54を通過する際におけ大判用紙Pmの上限高さを検出する上限高さセンサ,59は同大判用紙Pmの下限高さを検出する下限高さセンサ,60は大判用紙Pm及び印刷用紙Psの前端辺又は後端辺の通過タイミングを検出する用紙センサをそれぞれ示す。
【0023】
次に、本実施形態に係る排紙装置1の構成について、図1〜図4を参照して具体的に説明する。
【0024】
排紙装置1は、排紙部12から排出される大判用紙Pmをガイドし、かつ角度を変更して大判用紙Pmの排出方向Foを変更可能な排紙ガイド2と、排紙ガイド2を通過した大判用紙Pmが大判用紙トレイ13上に沿って載置されるように、大判用紙Pmの上面に対して押し作用するとともに、大判用紙トレイ13の上面に対して平行に移動可能な用紙アシスト3と、排紙ガイド2の角度を変更するとともに、用紙アシスト3を移動させる駆動機構部4と、この駆動機構部4を制御する制御部5と、を備える。この場合、大判用紙トレイ13は、大判用紙Pmが載置される上面を平坦に構成するとともに、長さは大判用紙Pmの搬送方向サイズよりも長くする。そして、先端上がりに傾斜させて配設するとともに、排紙部12は、図2に示すように、大判用紙トレイ13の中央部位近傍であって、大判用紙トレイ13の上面よりも上方に位置するように配設する。
【0025】
また、排紙ガイド2は、図3に示すように、大判用紙Pmが挿通可能なスリットRsを内側に設けた枠形の用紙ガイド部2gを備え、この用紙ガイド部2gは左右方向の支軸部2s,2sにより回動可能に支持される。即ち、用紙ガイド部2gは、図1に示すように、排紙部12に備える排紙ローラ機構12rの下流側の位置に、左右方向の支軸部2s,2sにより回動可能に支持される。用紙ガイド部2gにおけるスリットRsは、大判用紙Pmの入口側を幅広形成するとともに、出口側を幅狭に形成する。このような排紙ガイド2を設ければ、排紙部12から排出される大判用紙Pmを確実にガイドできるとともに、大判用紙Pmの排出方向Foを容易かつ確実に変更できる利点がある。
【0026】
一方、用紙アシスト3は、図4に示すように、大判用紙トレイ13の上面に対して平行に移動させることにより、大判用紙Pmの上面に対して当接可能な係合体部3c,3cを用いて構成する。この場合、用紙アシスト3は、水平部とこの水平部の両側に折曲形成した縦部によりコの字形に形成した支持シャフト21に、複数(例示は二つ)の係合体部3c,3cを回動自在に取付けて構成できる。なお、例示の係合体部3c…はローラである。用紙アシスト3をこのように構成すれば、各係合体部3c,3cにより大判用紙Pmの上面を直接押し作用可能となるため、大判用紙Pmを大判用紙トレイ13上に沿って確実に載置できる利点がある。
【0027】
さらに、駆動機構部4は、排紙ガイド2の角度を変更する排紙ガイド駆動機構22と、用紙アシスト3を移動させる用紙アシスト駆動機構23を備える。排紙ガイド駆動機構22は、サーボモータ等の電動モータを用いた回転駆動部24、及びこの回転駆動部24の回転を支軸部2sに伝達して用紙ガイド部2gを当該支軸部2s…を支点に回動変位させる回転伝達部25により構成する。また、用紙アシスト駆動機構23は、図1及び図4に示すように、大判用紙トレイ13の上面に対する上方位置に、当該上面に対して平行となる左右一対の移動機構26p,26qを配設する。一方の移動機構26pは、離間した位置に配した駆動プーリ27p及び従動プーリ28pと、この駆動プーリ27pと従動プーリ28p間に架け渡した無端タイミングベルト29pにより構成する。なお、他方の移動機構26qも移動機構26pと同様に構成する。なお、29qは移動機構26q側の無端タイミングベルトを示す。そして、前述した用紙アシスト3を構成する支持シャフト21の両端を無端タイミングベルト29p,29qの下ベルト部に固定する。さらに、用紙アシスト駆動機構23は、サーボモータ等の電動モータを用いた回転駆動部30、及びこの回転駆動部30の回転を駆動プーリ27pに伝達し、駆動プーリ27pを回転させることにより係合体部3c,3cを移動させる回転伝達部31を備える。
【0028】
他方、5は制御部を示す。なお、例示の制御部5は本発明(本実施形態)に関連する制御系のみを示している。制御部5は、図1に示すように、CPUや各種ドライブユニット等のハードウェアを含むコントローラ本体5mを備え、このコントローラ本体5mにはハードディスク等の記憶部32を含むとともに、操作部33及び表示部34が付属する。記憶部32には、本実施形態に係る排紙装置1の動作に対する一連の制御を実行するためのシーケンスプログラム32pを格納するとともに、各種データ(データベースを含む)を書込むデータエリア32dを有する。したがって、コントローラ本体5mと記憶部32によりコンピュータ機能が実現される。そして、コントローラ本体5mの出力ポートには、前述した回転駆動部24及び30をそれぞれ接続するとともに、コントローラ本体5mのセンサポートには、前述した用紙センサ60を接続する。なお、35は、搬送方向切換部56のディバータ56cを切換えるためのソレノイド等の切換駆動部を示し、この切換駆動部35もコントローラ本体5mの出力ポートに接続する。
【0029】
次に、本実施形態に係る排紙装置1の動作(作用)について、図6を参照しつつ図5に示すフローチャートに従って説明する。
【0030】
最初にモード選択を行う(ステップS1)。このモード選択により、大判用紙Pmに印刷を行う「大判印刷モード」又は中小サイズの印刷用紙Psに印刷を行う「普通印刷モード」を選択できる。この際、普通印刷モードを選択すれば、普通印刷モードに対応した切換えが行われる。即ち、印刷ユニットUpでは不図示の用紙カセットに対する切換が行われるとともに、後処理ユニットUrでは切換駆動部35が制御されることにより、ディバータ56cに対する切換が行われる(ステップS2,S3)。これにより、印刷ユニットUpでは、中小サイズの印刷用紙Psが供給され、印字部11により印刷が行われる。また、印刷された印刷用紙Psは、搬送方向切換部56を経由して補助排紙部53から排出される普通印刷モードによる一連の印刷工程が実行される(ステップS4,S5)。なお、補助排紙部53から排出された印刷用紙Psは、補助トレイ57上に載置される。
【0031】
他方、モード選択により、大判印刷モードを選択すれば、大判印刷モードに対応した切換えが行われる。即ち、印刷ユニットUpでは、使用する用紙として、ロール紙Prに対する切換が行われるとともに、後処理ユニットUrでは切換駆動部35が制御され、ディバータ56cの切換が行われる(ステップS2,S6)。これにより、大判印刷モードでは、本実施形態に係る排紙装置1を用いた排紙処理が行われる。以下、大判印刷モードによる一連の印刷工程について説明する。
【0032】
まず、印刷ユニットUpによる大判用紙Pmに対する印刷処理が行われる(ステップS7)。この場合、ロール紙装填部42に装填されたロール紙Prから連続用紙Prcが繰り出され、カッタ部14によりカッティングされることによりA0及びA1サイズ等の大判用紙Pmが得られる。また、大判用紙Pmは第一ディカーラ部44により大判用紙Pmに残留するカールが矯正された後、印刷部11に搬送され、大判用紙Pmに対してインクジェット方式により印刷(プリント)されるとともに、印刷された大判用紙Pmは用紙搬出部43から排出される。そして、用紙搬出部43から排出された大判用紙Pmは、後処理ユニットUrの用紙搬入部52から後処理ユニットUrの内部に搬入され、インシュレータ部54により、搬送負荷変動が伝達されないようにU状に弛ませられるとともに、第二ディカーラ部55により大判用紙Pmに残留するカールが矯正される。この後、大判用紙Pmは、搬送方向切換部56を通過し、排紙部12に備える排紙ローラ機構12rを介して排出される(ステップS8)。
【0033】
一方、排紙ローラ機構12rにより排出された大判用紙Pmは、当該大判用紙Pmの排出方向Foを変更する排紙ガイド2によりガイドされる(ステップS9)。この場合、用紙ガイド部2gの初期の方向は、図6(a)に示すように、用紙ガイド部2gが最も時計方向に回動した位置(角度)、即ち、用紙ガイド部2gの先端が鉛直方向下方を向いた位置(角度)にセットされる。これにより、排紙ローラ機構12rを通過した大判用紙Pmは、用紙ガイド部2gのスリットRsを挿通して下方に送られる。この際、大判用紙Pmは、用紙ガイド部2gの先端の方向にガイドされ、大判用紙Pmの前端辺は大判用紙トレイ13の下端に至る。図6(a)中、Foは大判用紙Pmの排出方向を示す。
【0034】
また、大判用紙Pmの排紙が進行するに従って、大判用紙Pmの後側が徐々に大判用紙トレイ13の上側に載置されるため、大判用紙Pmの排出挙動に従って、用紙ガイド部2gの先端の方向が変更するように制御される。図6(b)は、大判用紙Pmの中央付近が排出される状態を示し、用紙ガイド部2gの先端の方向は、大判用紙トレイ13の上面に対してほぼ直角となる角度まで回動変位した状態を示している。さらに、用紙ガイド部2gによりガイドされた大判用紙Pmは、用紙アシスト3によってアシストされる(ステップS10)。この場合、用紙アシスト3は、下端位置から移動機構26p…に沿って徐々に上側へ移動し、図6(b)の位置では、大判用紙Pmにおける上面の中央付近に係合体部3c,3cが当接する。図6(b)中、Foは大判用紙Pmの排出方向を示す。
【0035】
他方、大判用紙Pmの排紙が進行すれば、大判用紙Pmの後側が大判用紙トレイ13における、より上側の位置に載置されるため、大判用紙Pmの排出挙動に従って、用紙ガイド部2gの先端の方向が上向きに変更するように制御される。また、係合体部3c,3cも移動機構26p,26qに沿って上側へ移動する。図6(c)は、大判用紙Pmの後端辺が用紙ガイド部2gを通過し終え、大判用紙Pmの後側に係合体部3c,3cが当接し、係合体部3c,3cにより大判用紙Pmの後側が押されている状態を示している。これにより、最終的には、係合体部3c,3cが最前進位置(上端位置)に移動するため、大判用紙Pmは、大判用紙トレイ13の定位置に確実に載置される。
【0036】
このような用紙ガイド部2gの回動及び係合体部3c,3cの移動は、大判用紙Pmの排紙タイミングに合わせた最適な制御パターンとして制御部5に予め設定されている。そして、排紙が終了すれば、排紙ガイド2は初期の位置(角度)に戻されるとともに、係合体部3c,3cも初期の位置(下端位置)に戻される(ステップS11,S12,S13)。これ以降は、大判用紙Pmの印刷が設定枚数に達するまで、同様の印刷工程が繰り返して行われる(ステップS14,S7…)。
【0037】
よって、このような本実施形態に係る排紙装置1によれば、排紙部12から排出される大判用紙Pmをガイドし、かつ角度を変更して大判用紙Pmの排出方向Foを変更可能な排紙ガイド2と、排紙ガイド2を通過した大判用紙Pmが大判用紙トレイ13上に沿って載置されるように、大判用紙Pmの上面に対して押し作用し、又は大判用紙Pmの下面に対して引き作用するとともに、大判用紙トレイ13の上面に対して平行に移動可能な用紙アシスト3を備えるため、紙質や紙厚等が異なってもスタック位置の乱れや座屈等のアクシデントが生じにくく、A0及びA1サイズのような大判用紙Pmであっても大判用紙トレイ13上の定位置に奇麗に揃えて収容(スタック)できるなど、確実性,安定性及び信頼性の高い排紙処理を行うことができる。したがって、ロール紙Prから繰り出される連続用紙Prcをカッタ部14によりカッティングして得るカールが残留しやすい大判用紙Pmを用いた場合に最適となる。また、従来のように、大判用紙トレイ13を湾曲させるなどの特殊形状に構成する必要がなく、大判用紙トレイ13を平坦に構成できる。したがって、大判用紙トレイ13を先端上がりに傾斜させて配設し、かつ当該大判用紙トレイ13の中央部位近傍に排紙部12を位置させるなどによって、大判用紙トレイ13のサイズ、特に、前後方向のサイズをより小さくすることができ、大判用紙トレイ13を含む大判用紙印刷機M全体の小型コンパクト化を図れるとともに、設置時の省スペース性を高めることができる。
【0038】
次に、本発明の変更実施形態に係る排紙装置1について、図7及び図8を参照して説明する。
【0039】
変更実施形態に係る排紙装置1は、いずれも用紙アシスト3の変更に関するものである。図7に示す用紙アシスト3は、大判用紙トレイPmの上面に対して平行に移動させることにより、大判用紙Pmの下面に対して吸引可能な送風部3wを用いたものである。この場合、送風部3wには小型の送風ファンを使用し、安定性及び均一性を確保するため、左右方向に二個以上並べて配することが望ましい。なお、図7中、Frは送風方向を示す。また、送風部3wは、前述した移動機構26p,26qにより移動可能に構成するとともに、特に、この場合の移動範囲は、排紙ガイド2よりも上方に設定することができる。他方、図7は、大判用紙Pmの下面に対して吸引可能な送風部3wを用いた場合を示したが、移動機構26p,26qにより送風部3wの移動範囲を排紙ガイド2の下方も含めて設定、即ち、図1及び図4に示した実施形態と同様の移動範囲に設定すれば、用紙アシスト3を、大判用紙トレイPmの上面に対して平行に移動させることにより、大判用紙Pmの上面に対して送風可能な送風部3wとして用いることもできる。この場合、送風部3wは、前述した係合体部3c,3cと同様の機能を発揮する。よって、このような変更実施形態に係る用紙アシスト3を用いれば、送風部3wによる送風又は吸引により、大判用紙Pmにおける上面又は下面のより広い面積に対する安定した押し作用又は引き作用を発揮できるとともに、送風量の制御(設定)により押し作用又は引き作用を容易に最適化することができる。
【0040】
一方、図8は、用紙アシスト3を、大判用紙トレイ13の上面に沿って配設した複数の送風部3wa,3wb,3wc,3wd,3we…を備え、各送風部3wa,3wb…の作動を順次切換えることにより、送風位置を移動させて大判用紙Pmの上面に対して送風可能に構成したものである。即ち、図7に示した変更実施形態は1個の送風部3wを、移動機構26p,26qを含む用紙アシスト駆動機構23により移動させて送風位置又は吸引位置を変更させたものであるが、図8に示す変更実施形態は、複数の送風位置を切換えて実質的に送風位置を移動させるようにしたものである。図8中、Ffは送風方向を示す。なお、図8の場合も、図7の場合と同様に、大判用紙Pmの下面側に対する引き作用を行うこともできる。よって、このような変更実施形態によれば、送風部を移動させる用紙アシスト駆動機構23が不要になるため、機械構造の単純化(小型化)、更には省エネルギ性の向上に寄与できる。
【0041】
以上、好適実施形態(変更実施形態)について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0042】
例えば、排紙ガイド2は、大判用紙Pmが挿通可能なスリットRsを内側に設けた枠形の用紙ガイド部2gを用いた場合を示したが、同様の機能を発揮するものであれば、他の排紙ガイド2により置換できる。なお、明細書中の「平行」,「直角」の表現は、正確な状態を示すものではなく、概ね平行,概ね直角の意味である。また、例示した変更実施形態を含む各実施形態は、それぞれ単独で用いてもよいし、必要により複数の実施形態を組み合わせて用いてもよい。一方、大判用紙Pmは、ロール紙Prから繰り出される連続用紙Prcをカッタ部14によりカッティングして得る場合を示したが、予めカッティングしたカット紙を用いる場合を排除するものではない。さらに、駆動機構部4は、排紙ガイド駆動機構22と用紙アシスト駆動機構23をそれぞれ独立した構成としたが、共通の駆動部により駆動する構成であってもよい。また、排紙方式は、フェイスアップ方式であってもよいしフェイスダウン方式であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る排紙装置は、印刷部により印刷された大判用紙を搬送して排紙部から排出する機能を備える各種の印刷機に利用できる。この場合、印刷機の印刷方式は問わないとともに、印刷機に内蔵させてもよいし独立して構成してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1:排紙装置,2:排紙ガイド,2g:用紙ガイド部,2s…:支軸部,3:用紙アシスト,3c…:係合体部,3w:送風部,3wa…送風部,4:駆動機構部,5:制御部,11:印刷部,12:排紙部,13:大判用紙トレイ,14:カッタ部,Pm:大判用紙,M:大判用紙印刷機,Fo:排出方向,Rs:スリット,Pr:ロール紙,Prc:連続用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷部により印刷された大判用紙を搬送して排紙部から大判用紙トレイに排出する大判用紙印刷機の排紙装置であって、前記排紙部から排出される大判用紙をガイドし、かつ角度を変更して大判用紙の排出方向を変更可能な排紙ガイドと、前記排紙ガイドを通過した大判用紙が前記大判用紙トレイ上に沿って載置されるように、当該大判用紙の上面に対して押し作用し、又は大判用紙の下面に対して引き作用するとともに、前記大判用紙トレイの上面に対して平行に移動可能な用紙アシストと、前記排紙ガイドの角度を変更するとともに、前記用紙アシストを移動させる駆動機構部と、この駆動機構部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする大判用紙印刷機の排紙装置。
【請求項2】
前記大判用紙トレイは、先端上がりに傾斜させて配設し、かつ当該大判用紙トレイの中央部位近傍に前記排紙部を位置させることを特徴とする請求項1記載の大判用紙印刷機の排紙装置。
【請求項3】
前記排紙ガイドは、大判用紙が挿通可能なスリットを内側に設けた枠形の用紙ガイド部を備え、この用紙ガイド部を左右方向の支軸部により回動可能に支持してなることを特徴とする請求項1又は2記載の大判用紙印刷機の排紙装置。
【請求項4】
前記用紙アシストは、前記大判用紙トレイの上面に対して平行に移動させることにより、大判用紙の上面に対して押し作用可能な係合体部を備えることを特徴とする請求項1,2又は3記載の大判用紙印刷機の排紙装置。
【請求項5】
前記用紙アシストは、前記大判用紙トレイの上面に対して平行に移動させることにより、大判用紙の上面に対して押し作用可能又は大判用紙の下面に対して引き作用可能な送風部を備えることを特徴とする請求項1,2又は3記載の大判用紙印刷機の排紙装置。
【請求項6】
前記用紙アシストは、前記大判用紙トレイの上面に沿って配設した複数の送風部を備え、各送風部の作動を順次切換えることにより、送風位置を移動させて大判用紙の上面に対して押し作用可能又は大判用紙の下面に対して引き作用可能に構成することを特徴とする請求項1,2又は3記載の大判用紙印刷機の排紙装置。
【請求項7】
前記大判用紙は、ロール紙から繰り出される連続用紙をカッタ部によりカッティングして得ることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の大判用紙印刷機の排紙装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−82535(P2013−82535A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223649(P2011−223649)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000214836)長野日本無線株式会社 (140)
【Fターム(参考)】