大型ペリクル用枠体及び大型ペリクル
【課題】マスクからの剥離を抑制しつつ、剥離する際は、マスクから容易に剥離することを可能とする。
【解決手段】大型ペリクル用枠体は、平面視において矩形状を有する開口部を覆うように大型ペリクル膜を展張支持する枠体であって、開口部の周縁は枠部材によって形成されている。そして、この大型ペリクル用枠体が、枠体の厚みに対して特定範囲の割合の段部を有することで、マスクとの密着性が高く、かつ、マスクから容易に剥離させることができる大型ペリクル用枠体及び大型ペリクルを提供することができる。
【解決手段】大型ペリクル用枠体は、平面視において矩形状を有する開口部を覆うように大型ペリクル膜を展張支持する枠体であって、開口部の周縁は枠部材によって形成されている。そして、この大型ペリクル用枠体が、枠体の厚みに対して特定範囲の割合の段部を有することで、マスクとの密着性が高く、かつ、マスクから容易に剥離させることができる大型ペリクル用枠体及び大型ペリクルを提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばIC(Integrated Circuit:集積回路)、LSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)、TFT型LCD(ThinFilm Transistor,Liquid Crystal Display:薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ)等の半導体装置を製造する際のリソグラフィー工程で使用されるフォトマクスやレティクルに異物が付着することを防止するために用いる大型ペリクル用枠体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体回路パターン等の製造においては、フォトマスクやレティクルの両面側にペリクルと称する防塵手段を配置して、フォトマスクやレティクルへの異物の付着を防止することが行われている。なお、以下の説明では、フォトマスクやレティクルを総称して「マスク」という。
【0003】
ペリクルの一般的な構造としては、金属、セラミックス、又はポリマー製の枠体の一方の縁面に、ポリマー又はガラス等の透明な薄膜を貼り付け、他方の縁面に、マスクに貼り付けるための貼着剤層(粘着材又は貼着剤と表記することもある)を設けたものが挙げられる。例えば、ペリクルは、マスクの形状に合わせた形状を有する厚さ数ミリ程度の枠体の一方の縁面に、厚さ10μm以下のニトロセルロース又はセルロース誘導体等の透明な高分子膜から成るペリクル膜を展張して接着し、且つ枠体の他方の縁面に粘着材を介してマスクの表面に貼着している。
【0004】
マスクの表面に異物が付着した場合、その異物が半導体ウエハ上に形成されたフォトレジスト上に結像して回路パターン欠陥の原因となるが、マスクの少なくともパターン面にペリクルを配置した場合、ペリクルの表面に付着した異物はフォーカス位置がずれるため、半導体ウエハ上に形成されたフォトレジスト上に結像することがなく、回路パターンに欠陥を生じさせることがない。
【0005】
このようなペリクルは、マスクから剥れることを防ぐために、マスクに均一に貼り付けることが必要である。例えば、マスクに対するペリクルの貼り付けが不均一になると、部分的にマスク粘着材の接着幅が狭く又は広くなる恐れがある。特に、接着幅が狭い箇所は、部分的にマスクから粘着剤が剥れることでエアパスが発生し、そのエアパスを通じてマスク上に異物が付着することで回路パターンの欠陥が発生する恐れがある。また接着幅が広い箇所は、部分的に粘着剤がペリクル枠体からはみ出すことで、露光工程においてパターンの欠陥を引き起こす恐れや、粘着剤が直接的に露光に晒されて分解し、マスク上にヘイズが発生する恐れがある。上記理由から、これまではペリクルをマスクに均一に貼り付けするために、ペリクルの設計において枠体の高精度の平坦性が要求されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4004188号公報
【特許文献2】特許第4043232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところでペリクルに用いる枠体は、従来1枚のシート状母材を打ち抜くことにより作製されていた。これは、ペリクルの平坦性を確保するためであり、平坦性が悪いとマスクにペリクルを精度良く貼り付けることができないためである。しかし母材の平坦性によってはペリクル枠体の作製に使用できない母材もあり、ペリクル枠体が大型化するほど製造工程にも手間がかかり、ペリクル枠体作製の生産性の低下やコスト向上の原因となっている。
【0008】
上述の理由から、大型ペリクルに用いる大型ペリクル用枠体は、分割された枠体(以下、分割枠体という)が望まれている。大型ペリクル用枠体を分割枠体とすることで、歩留まり向上やコスト低減といった利点がある。しかし、実際には、分割枠体に用いる各部材の寸法精度が悪く、平坦性が高い枠体を収率良く得ることは困難であった。
【0009】
また一辺ごとに精度良く作製されたとしても枠体として組み上げることで、特に全体として枠体の厚み方向の微妙なバラツキなどが発生し、枠体の平坦性が悪くなることが懸念される。そのような問題点から、分割枠体から作製された大型ペリクル用枠体全体の平坦性を確保するのは極めて困難であった。
【0010】
また、分割枠体の接合部に急激な厚みのバラツキがあると、枠体にペリクル膜を接着する膜接着剤やマスク粘着剤がうまく枠体にのらない可能性もある。また、上記課題に対しては、接合部を部分的に切削して平坦性を確保する方法がとられるが、それらの方法は作業が困難かつ煩雑であるために、枠体作製の歩留まり低下や生産性低下の恐れがある。また、接合部の段差を研磨して平坦にしたとしても枠体全体としての平坦性が確保されているとは限らないため、そのような枠体を用いたペリクルをマスクに貼り付けた場合、ペリクルがマスクに貼り付かず剥がれてしまう可能性があった。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、マスクからの剥離を抑制しつつ、剥離する際は、マスクから容易に剥離することが可能な大型ペリクル用枠体及び大型ペリクルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一般的なペリクルの製法としては、ディスペンサー等を用いて枠体に粘着剤を塗布した後に、粘着剤を均一な形状に成型するが、当然その場合、マスクに接着する粘着剤の幅が均一になるように、ディスペンサー等からの粘着材の塗布量を調整する。ペリクル用枠体に段部を有する場合にも、粘着剤の幅が均一になるように、ディスペンサー等からの粘着材の塗布量を調整することが望まれるが、部分的に塗布量を調節することは非常に困難である。
【0013】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、枠体のより厚い箇所においてはマスク粘着剤が枠体からはみ出さず、枠体のより薄い箇所においてはマスク粘着剤の接着幅を維持できるとの知見に至り、この知見から、特定範囲内の段差を有する枠体を用いれば、上記の課題を解決できることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明に係る大型ペリクル用枠体は、開口部を有する矩形状の大型ペリクル用枠体であって、当該大型ペリクル用枠体に厚みの変化する1以上の段部を有し、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合が7%以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る大型ペリクル用枠体によれば、このように大型ペリクル用枠体に段部を有し、更に、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合を7%以下にすることで、マスクとの密着性が向上するため、マスクから剥離するのを抑制することができる。しかも、このような段部を有することで、マスクとの接着幅を不均一にすることができるため、この接着幅が狭くなる箇所から大型ペリクルを剥離させることで、マスクから容易に剥離することが可能となる。
【0016】
そして、大型ペリクル用枠体は、1以上の接合部を有することが好ましい。このように、1以上の接合部を有することで、大型ペリクル用枠体の製造により生じる残留応力が接合部において開放されるため、当該残留応力の影響が大型ペリクル用枠体全体に波及して大型ペリクル用枠体が大きく撓むのを防止することができる。しかも、通常、大型ペリクル用枠体はシート状の母材から切り出すことにより製造されるが、その際に発生した残留応力も、接合部において開放させることができる。このように、大型ペリクル用枠体の寸法安定性が向上することから、通常は、大型ペリクルの製造工程において残留応力を開放するための加熱工程を行うが、このような加熱工程を行う必要が低下するため、例えば、このような加熱工程を削減することで、大型ペリクルの製造工程数を削減することもできる。
【0017】
この場合、接合部は、少なくとも大型ペリクル用枠体の頂部に有することが好ましい。このように、頂部に段部を設けることで、頂部の剛性が向上して大型ペリクル用枠体の変形や歪みを防止することができる。
【0018】
また、大型ペリクル用枠体の平面度が300μm以下であることが好ましい。このように、大型ペリクル用枠体の平面度を300μm以下にすることで、大型ペリクル用枠体とマスクとの密着性を十分に保つことができる。
【0019】
また、大型ペリクル用枠体の全体の厚みの標準偏差が50μm以下であることが好ましい。このように、標準偏差を50μm以下にすることで、段部を有する大型ペリクル用枠体の平坦性が高くなるため、大型ペリクル用枠体の幅方向に粘着材がはみ出すのを抑制することができる。これにより、はみ出した粘着材が露光を遮ることにより発生するパターンの欠陥を抑制することができ、更に、はみ出した粘着材から発生するアウトガスによりマスク上にヘイズが発生するのを抑制することができる。
【0020】
本発明に係る大型ペリクルは、上記の何れかの大型ペリクル用枠体と、開口部を覆うように大型ペリクル用枠体の上縁面に展張支持されたペリクル膜、とを備えることを特徴とする。本発明に係る大型ペリクルによれば、上記の大型ペリクル用枠体を用いるため、マスクからの剥離を抑制しつつ、剥離する際は、マスクから容易に剥離することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、マスクからの剥離を抑制しつつ、剥離する際は、マスクから容易に剥離することが可能な大型ペリクル用枠体及び大型ペリクルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る大型ペリクルの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る大型ペリクル用枠体の平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る大型ペリクル用枠体の平面図である。
【図4】接合部(単純形状)の拡大斜視図である。
【図5】接合部(複雑形状)の拡大平面図である。
【図6】接合部(複雑形状)の拡大平面図である。
【図7】接合部(複雑形状)の拡大側面図である。
【図8】接合部(複雑形状)の拡大側面図である。
【図9】接合部(複雑形状)の拡大平面図である。
【図10】接合部(複雑形状)の拡大平面図である。
【図11】接合部(複雑形状)の拡大斜視図である。
【図12】接合部(複雑形状)の拡大斜視図である。
【図13】実施例3における大型ペリクル用枠体の平面図である。
【図14】大型ペリクル用枠体の測定箇所を示した平面図である。
【図15】大型ペリクル用枠体の測定箇所を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、下記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0024】
最初に、本発明の実施形態に係るペリクルについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る大型ペリクル1を示す斜視図である(図1においては、接合部の記載を省略している)。大型ペリクル1は、大型ペリクル用枠体2と、大型ペリクル用枠体2の上縁面2eに接着された大型ペリクル膜3と、を備えている。なお、図示しないが、大型ペリクル1は、大型ペリクル用枠体2の下縁面に塗布されてマスクに貼着するための貼着剤層(粘着材又は貼着剤と表記することもある)と、貼着剤層に粘着されこの貼着剤層を保護する保護フィルムと、をさらに備えている。
【0025】
大型ペリクル用枠体2は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金(5000系、6000系、7000系等)、鉄及び鉄系合金、セラミックス(SiC、AlN、Al2O3等)、セラミックスと金属との複合材料(Al−SiC、Al−AlN、Al−Al2O3等)、炭素鋼、工具鋼、ステンレスシリーズ等からなり、平面視略矩形状を呈している。枠体の表面処理としては、アルマイト処理、塗装、塗料コーティング、めっき処理、低融点ガラスフリット処理、CVD処理、スパッタ法などによるPVD処理などを採用することができる。
【0026】
大型ペリクル用枠体2は、一対の長辺2a,2bと、この長辺2a,2bよりも短い一対の短辺2c,2dと、から構成されており、矩形状の開口部4を有している。開口部4の開口面積は、1000cm2以上とされるのが好ましく、3000cm2以上とされるのがより好ましく、5000cm2以上とされるのがさらに好ましい。なお、開口部4の開口面積は、35000cm2以下とされるのが好ましい。
【0027】
一対の長辺2a,2bは、例えば幅が9.0mmの柱状部材からなり、その長さは、例えば800mmである。一対の短辺2c,2dは、幅が例えば7.0mmの柱状部材からなり、その長さは、例えば480mmである。つまり、短辺2c,2dの平面視(上面視)における幅は、長辺2a,2bの幅よりも狭い。大型ペリクル用枠体2の頂部5の曲率は、例えば、R=2mmである。なお、頂部5とは、大型ペリクル用枠体2の四隅の屈曲された部分であって、各頂点から各辺部の長さの30%の領域であり、更に好ましくは各頂点から各辺部の長さの20%の領域である。また、大型ペリクル用枠体2の短辺2c、2dの側面6には、溝部7が長手方向(辺方向)に沿って設けられている。
【0028】
大型ペリクル膜3は、例えばニトロセルロースやセルロース誘導体、フッ素系ポリマー、又はシクロオレフィン系ポリマー等の透明な高分子膜からなり、その厚さは、例えば10μm以下0.1μm以上が好ましい。この大型ペリクル膜3は、大型ペリクル用枠体2の開口部4を覆うように上縁面2eに展張され、大型ペリクル用枠体2に貼着支持されている。
【0029】
大型ペリクル膜3を大型ペリクル用枠体2の上縁面2eに接着する接着剤としては、例えば、アクリル樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、シリコーン樹脂接着剤、又は含フッ素シリコーン接着剤等のフッ素系ポリマーを用いることができる。
【0030】
また、大型ペリクル膜3を貼着支持する粘着材としては、スチレンエチレンブチレンスチレン、スチレンエチレンプロピレンスチレン、もしくはオレフィン系等のホットメルト粘着材、シリコーン系粘着材、アクリル系粘着材、又は発泡体を基材とした粘着テープ又は発泡ホットメルト等を用いることができる。その中でも、特に好ましくは、スチレンエチレンブチレンスチレン、スチレンエチレンプロピレンスチレン、もしくはオレフィン系等のホットメルト粘着材、シリコーン系粘着材である。粘着材層の厚さは、大型ペリクル用枠体2の厚さと粘着材厚さの合計が、規定された大型ペリクル膜3とマスクの距離を越えない範囲で設定されるのが好ましく、例えば、0.01mm以上10mm以下とされるのが好ましい。
【0031】
また、大型ペリクル膜3をマスクに貼り付けた際に貼着剤層の内側に空間が存在すると、該空間に異物が滞留する可能性がある。そのため、大型ペリクル用枠体2の下縁面に粘着剤を塗布する際には、大型ペリクル1をマスクに貼り付ける際の加圧で粘着剤層が潰れて広がることを考慮した上で、加圧時に開口部4に粘着剤がはみ出さない程度に大型ペリクル用枠体2の開口部4内側寄りに粘着材を塗布することが好ましい。具体的には、貼着剤層内側の空間の幅が粘着剤層の塗布幅の0.35倍以内となるように塗布することが好ましい。粘着剤層の塗布幅は大型ペリクル用枠体2の各辺2a〜2dの幅に対し0.3倍以上0.6倍以下であることが好ましく、大型ペリクル用枠体2の各辺2a〜2dに沿って塗布することが好ましい。粘着材を保護する保護フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、又はポリエチレン樹脂からなるフィルムを用いることができる。また、粘着材の粘着力に応じて、離型剤、例えばシリコーン系離型剤、又はフッ素系離型剤を、保護フィルムの表面に塗布しても良い。保護フィルムの厚さは、例えば、0.01mm以上1mm以下が好ましい。
【0032】
ところで、マスクに対するペリクルの装着時や装着後に、ペリクルの高分子膜であるペリクル膜の損傷や破損があって、その原因がブロ−(ガスの吹き付け)等では除去されない異物の付着によるものであった際、あるいはペリクルに損傷や破損が見られなくてもマスク面に異物の付着がみつかった際には、新しいペリクルと交換する必要がある。その際、当然マスクからペリクルを剥離する必要がある。しかしながら、均一に貼り付けられたペリクルは剥離する際に多大な労力を有し、また、剥離する際に高価なマスクに傷をつけてしまう恐れもあるために、効率的な剥離方法も求められる。
【0033】
本発明のペリクルにおいて、大型ペリクル用枠体2を分割枠体で構成する場合、マスク粘着剤とマスクとの接着幅がより狭くなる部分が存在する。つまりその箇所からペリクルを容易に剥離することが可能となる。これまで多くの方法を使ってペリクルをマスクから剥離する試みがなされてきたが、どれも煩雑な作業が必要であった。本発明では段差を有する枠体と特定の粘着剤を利用することという単純な方法によって、ペリクルに対して剥離性という二次的効果をも付与することができた。
【0034】
次に、本発明の一実施形態に係る大型ペリクル用枠体2について、図2を参照しながら説明する。図2(8分割構造)は、図1に示すような大型ペリクルに用いられる大型ペリクル用枠体2を上から見た図(平面図)である。
【0035】
大型ペリクル用枠体2において、開口部4の周縁部を構成する枠部は、一対の長辺2a、2bを各々構成する部材である分割枠体21a、21bと、分割枠体21a、21bの長手方向両端部に接合部Jを介して連接され、大型ペリクル用枠体2の有する4箇所の頂部5(図1参照)を各々形成する部材である分割枠体21e、21h、21f、21gと、分割枠体21e、21h、21f、21gの開放端同士を、接合部Jを介して架橋して一対の短辺2c、2dを各々構成する部材である分割枠体21c、21dと、から形成されている。すなわち、大型ペリクル用枠体2は、開口部4の周縁部を構成する枠部の軸方向に沿って、8箇所の接合部Jを有している。
【0036】
また、図2において大型ペリクル用枠体2は分割枠体21aを基点とし、開口部4の開口軸を基準とした時計回り方向に、分割枠体21e、分割枠体21d、分割枠体21f、分割枠体21b、分割枠体21g、分割枠体21c、分割枠体21h、分割枠体21aの順に接続されて形成されている。なお、図2に示す大型ペリクル用枠体2は、接合箇所が8箇所であるが、本発明は、大型ペリクル用枠体2における接合箇所の数は問わず、1箇所以上あればよく、好ましくは、1〜30箇所、より好ましくは、1〜20箇所、さらに好ましくは、1〜15箇所である。
【0037】
大型ペリクル用枠体2において、長辺2aと長辺2bの長さは等しく形成されており、短辺2cと短辺2dの長さは等しく形成されている。また、分割枠体21aと分割枠体21bの形状は実質的に同一であり、分割枠体21cと分割枠体21dの形状は実質的に同一であり、さらに、頂部5を各々形成する分割枠体21e、21h、21f、21gの形状も実質的に同一である。具体的には、図2において、分割枠体21a,21bの長さは、例えば700mmであり、分割枠体21c、21dの長さは、例えば380mmである。
【0038】
大型ペリクル用枠体2の各辺2a〜2dの幅は、露光面積を確保する観点からは狭ければ狭いほど好ましいが、狭すぎると大型ペリクル膜3の展張時に大型ペリクル膜3の張力で大型ペリクル用枠体2が撓んでしまうという問題が生じるおそれがある。各辺の長さに対して剛性を考慮すると、幅は好ましくは3mm以上25mm以下程度とすることができる。また、大型ペリクル用枠体2の厚さに関しても薄ければ薄いほど軽くて扱いやすい大型ペリクル1となるが、薄すぎると大型ペリクル膜3の展張時に大型ペリクル膜3の張力で大型ペリクル用枠体2が撓んでしまうという問題が生じるおそれがある。各辺2a〜2dの長さに応じて両者のバランスから、大型ペリクル用枠体2の厚さは好ましくは4.5mm以上12mm以下程度とすることができる。
【0039】
また、図3(4分割)は、図2と異なる分割枠体を使用して構成した大型ペリクル用枠体の一例(他の実施形態)である。図3に示す大型ペリクル用枠体8は、4つの部材が接合された4分割枠体の例である。この大型ペリクル用枠体8において、開口部9の周縁部を構成する枠部は、一対の長辺8a、8bを各々構成する分割枠体81a、81bと、一対の短辺8c、8dを各々構成する分割枠体81c、81dとから形成されている。すなわち、大型ペリクル用枠体8は、開口部9の周縁部を構成する枠部の軸方向に沿って、4箇所の接合部Jを有している。大型ペリクル用枠体8において、長辺8aと長辺8bの長さは等しく形成されており、短辺8cと短辺8dの長さは等しく形成されている。
【0040】
図2及び図3ともに、接合部Jは頂部付近に設けた構成を例として示したが、各辺の各々必要箇所に設けてもよい。接合部を頂部付近に設ける場合は、一本の辺を切り出すため、生産性が高くなると共に、剛性の高い頂部付近を接合することで一枚の母材からの切り出し物と同等の剛性を保つことができ、さらには、頂部の直角性を出しやすくなるため寸法安定性がよくなり露光中の有効露光面積を保つことができる。一方、接合部を各辺の各々必要箇所に設ける場合は、ペリクル作製工程内の加熱等による熱膨張を接合部で緩和でき、また各パーツ事の平坦性を得ることが容易になり寸法精度が高まるため好ましいが、剛性や直角性、寸法安定性等を考慮すると少なくとも頂部付近に接合部を設ける方がより好ましい。
【0041】
接合部の形状は、接合する接着剤厚さが、1.0mm以下であれば如何なる形状でも良い。接合部の平面形状(接合部を上方又は側方から見たときの形状)は、単純形状よりも複雑形状の方が好ましい。ここで、単純形状とは、図4に示すように、接合部Jの平面形状が、部材の長さ方向に対して略直角な方向に延在する直線となることを意味する。また、複雑形状とは、単純形状と比較して相対的に接着面積が大きくなる形状(例えば、複数の直線又は曲線が組み合わせられてなる形状)を意味する。複雑形状としては、例えば図5のような形状を採用することができ、図6のように接着剤使用部がペリクル枠の接合面の側面に剥き出しになることを極力抑えた形状がさらに好ましい。また、図7のように枠体の厚さ方向からみると階段形状を呈するもの、図8のような斜め形状、図9のような接合部Jを構成する一方の部材の端部が凸形状とされているもの、図10(a)〜(c)のようなくびれ形状、図11のように枠体の端部中央が四角柱状の凸形状になっているもの、図12(a)〜(c)のように台形形状の凸部Pが設けられている形状など種々の形状を採用することができる。くびれ形状の場合は、丸形のピアス形状、楔形状、角形状、三角形状、その他種々の形状(例えばジグゾーパズルで用いられるような形状)を採用することができる。
【0042】
また接合部は精度よく嵌め合いを行ったとしても端面にガタや隙間が空く可能性もある。そのため、カシメや接着剤等で補助的に接合部端面を別な接合方法で接合しても良い。これらの接合方法を用いることにより、接合部の接合強度を十分に確保することができる。
前記接着剤としては例えばアクリル系接着剤及びエポキシ系接着剤からなる群から選択されるものであって、かつUV硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気性硬化型接着剤、シアノアクリレート型瞬間接着剤からなる群から選択される接着剤などが適切である。
【0043】
また、接着剤の塗布量にもよるが、接合する場合に接着剤の枠体表面へのはみ出し量を少なくするために接着剤溜り等を接合部の内部に設計し、そこに余分な接着剤を吸収できる形状を作製してもよい。
【0044】
ペリクル工程内で、枠体はペリクル膜を展張した後に、不要膜をカッティングする工程があるがその際に膜の張力により枠体が内側に撓む傾向がある。そのため、単純形状より接着面積が大きくなる複雑形状の方が、内側への撓み時の応力を緩和でき、接合部でのガタや隙間等ができない形状になるために好ましい。
【0045】
接合部の形状にもよるが、1箇所の接合部における接合箇所(凸部や凹部の箇所)の個数は、1個から複数個存在してもよい。幅や接合部の形状で適宜設定可能であるが、より好ましくは、1個〜6個が好ましく、さらに好ましくは、1個〜3個が好ましい。
【0046】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、各分割枠体の形状をある程度揃えているが、各分割枠体の形状が夫々相違していても差し支えない。
【0047】
このように構成される大型ペリクル用枠体には、接合部などにおいて、一箇所以上の厚みが異なる部分(以下「段部」と表記する)が設けられている。ここで段部とは、大型ペリクル用枠体の厚みが変化している部分を指し、連続的であるか断続的であるかを問わない。そして、本実施形態では、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合を、7.0%以下の範囲とする。より定量的には、連続的な一定長さ(例えば、120mm)の範囲で大型ペリクル用枠体の厚みを測定した際に、最小の厚みに対して7.0%以下の範囲となるように、段部を設ける。なお、厚みの測定範囲は、連続的であれば如何なる範囲であってもよく、大型ペリクル用枠体の長手方向や短手方向だけでなく頂点を含んでも構わない。ここで、段部があまりに大きいと、部分的に接着力が強力になり過ぎる箇所や弱くなり過ぎる箇所が発生する。そこで、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合を、好ましくは5.0%以下とし、更に好ましくは2.5%以下の範囲とする。一方で、段差の割合は、より小さい方が好ましいが、製法精度上の限界から、0.3%以上であることが好ましい。
【0048】
大型ペリクル用枠体の段部の測定には、例えば、マイクロメータ(Mitutoyo MDQ−30M)を用いる。そして、図14に示すように、ある一つの頂点を開始点aとし、この開始点aから120mmの範囲において、開始点aから辺の長手方向に30mm毎の箇所を測定点bとする。そして、これらの測定点bにおける大型ペリクル用枠体の厚みを測定する。この場合、一度測定した範囲内であっても、開始点の位置が異なれば、異なる測定範囲として見なす。更に、より正確に段部の位置を特定するため、開始点aから辺の長手方向に5.0mm毎の箇所を測定点cとし、これらの測定点bにおける大型ペリクル用枠体の厚みを測定する。
【0049】
ところで、枠体全体の平坦性が低いと、部分的にマスク粘着材が大型ペリクル用枠体の幅方向にはみ出して露光の際の光が直接マスク粘着材に晒されることでパターンの欠陥を招く恐れや、マスク粘着材からアウトガスが発生することでマスク上にヘイズが発生する恐れがある。このため、枠体全体は、平坦性が高いことが好ましい。定量的には、大型ペリクル用枠体全体の厚みの標準偏差が50μm以下であることが好ましい。なお大型ペリクル用枠体全体の厚みの測定法としては、上述した大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合の測定法と同様である。
【0050】
また、大型ペリクル用枠体は、頂部に負荷がかかることで大型ペリクル用枠体の変形や歪みが問題となる場合がある。このため、段部は、大型ペリクル用枠体の少なくとも一つの頂部に設けることが好ましい。このように、頂部に段部を設けることで、頂部の剛性が向上して大型ペリクル用枠体の変形や歪みを防止する効果が期待できる。
【0051】
また、大型ペリクル用枠体は、平面度が高い方が好ましい。ここで、平面度とは、以下のように定義される。すなわち、図14に示すように、ある一つの頂点を開始点aとし、この開始点aから10mm毎の箇所を、三次元測定器(Mitutoyo FALCIO Apex 9366)を用いて測定し、最大の測定値と最小の測定値との差を平面度として定義した。このため、この平面度の測定値が大きいほど平面度が低く、この平面度の測定値が小さいほど平面度が高い。そして、大型ペリクル(大型ペリクル用枠体)とマスクとの密着性を保つためには、平面度が、300μm以下であることが好ましく、更に好ましくは200μm以下であり、特に好ましくは150μm以下である。
【0052】
また、上記の大型ペリクル用枠体を用いて大型ペリクルを作成する場合、用いるマスク粘着剤の硬さは、大型ペリクル用枠体とマスクとの密着性を保つために0.1kgf/cm2以上2.0kgf/cm2以下である必要があり、好ましくは0.3kgf/cm2以上1.8kgf/cm2以下である。ここで、硬さとは、以下のように定義される。まず、大型ペリクルから大型ペリクル用枠体の長手方向に3cm程度粘着剤が付いた大型ペリクル用枠体をサンプルとして切り出し、このサンプルに対して引張り試験機(SIMAZU オートグラフ AGS−50G)を用いて圧縮する。そして、この操作を3回行い、初期状態の粘着剤の高さを100とした場合に8%だけ圧縮するのに要した力の平均値を硬さとして定義した。
【0053】
そして、このような特定の硬さを有する粘着剤を分割枠体である大型ペリクル用枠体に粘着することで、大型ペリクルはマスクに対して密着性を維持することができる。ここで、密着性の評価は、以下のように定義される。すなわち、FPDペリクルマウンターM515L−IIIを用い、6.0N/cm2(FPDペリクルマウンターによる貼付荷重/マスク粘着材の接着面積)の力により、青板ガラスに大型ペリクルを20分以内の時間で貼り付ける。ただし、粘着剤がマスクに貼り付いた幅はフレームの幅に対して60%以上70%以下の幅とする。そして、この貼り付けたペリクルを4ヶ月間クリーンルーム(CR)内にて保管した後に、青板ガラス面から見たマスク粘着材の接着幅xの平均が、フレームの幅に対して60%以上である場合を密着性◎、60%未満40%以上である場合を密着性○、40%未満である場合を密着性△と定義した。なお、マスク粘着材の接着幅の測定点としては、図15に示すように、各辺に対して頂点から20mmの点を測定点αとし、各辺の中央の点を測定点βとする。そして、これらの測定点α及び測定点βにおけるマスク粘着材の接着幅を測定する。
また、段部を有する大型ペリクル用枠体を用いることで、従来の大型ペリクルよりも容易にマスクから剥離することができる。ここで、剥離性の評価は、以下のように定義される。まず、大型ペリクル用枠体から、段部を有さない長さ10cmの部分をサンプルとして切り出す。そして、FPDペリクルマウンターM515L−IIIを用い、6.0N/cm2(FPDペリクルマウンターによる貼付荷重/マスク粘着材の接着面積)の力により、エキシマー照射した石英ガラスに切り出したサンプルの端から5cmの長さの範囲を10分間貼り付ける。その後、引張り試験機(SIMAZU オートグラフ AGS−50G)を用いて、初期状態において粘着剤と剥離台との角度が90°になるようにサンプルをセットし、50mm/分の速度にて剥離試験を行うことで剥離する力を測定する。この測定を3回行い、最大の剥離力(最大剥離力/マスク接着幅)の平均が80kgf/mm2以上180kgf/mm2以下の値をとるものを剥離性○と定義した。また、剥離力が80kgf/mm2よりも小さい場合は、マスクとの密着性が悪く、マスクから大型ペリクルが剥がれてしまう可能性がある。一方、剥離力が180kgf/mm2よりも大きい場合は、大型ペリクルをマスクから剥離することが困難であり、高価なマスクを傷つける恐れがある。以上の観点から、剥離力が80kgf/mm2よりも小さく180kgf/mm2よりも大きい場合を、製品として扱えないという観点から剥離性×と定義した。
【実施例】
【0054】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
【0055】
大型ペリクル用枠体の材質(全ての分割枠体の材質)はアルミニウム合金、厚さを4.0mmとし、長辺は、幅が9.0mm、長さが800mmとし、短辺は、幅が7.0mm、長さが480mmとした。また、短辺側全長に渡って溝を設け、溝の深さを2mm、溝の高さを1.5mmとした。また、頂部の曲率をR=0mmとした。
【0056】
実施例1では、大型ペリクル用枠体を、図3のような分割枠体にし、分割部材81a,81bの長さを740mm、分割部材81c,81dの長さを420mmとした。接合部Jの平面形状は、図10(b)のようなくびれ形状とし、一方の部材の端部に丸形の凸部が2個設けられている形状とした。凸部の根元側の最大横寸法は1.5mmの長さに設定し、凸部の先端側の最大横寸法は2.0mmに設定した。また接着剤は使用せずに上下方向から嵌め合いを行った。
【0057】
このようにして作成した大型ペリクル用枠体には、一箇所以上の段部が確認され、更に、この段部は頂部にも存在することが確認された。
【0058】
その後、上記の大型ペリクル用枠体に対し、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合と、平面度と、全体の厚みの標準偏差とについて測定した。なお、これらの測定方法は上記の通りである。その結果を表1に記載する。
【0059】
次に、大型ペリクルを作製するために、大型ペリクル用枠体に対し、粘着剤としてスチレンエチレンブチレンスチレン系のホットメルト粘着剤を、厚さ1.8mmをペリクル枠体の各辺に沿って塗布した。別途基板上にセルロースエステルのペリクル膜をスピンコート法により成膜し、その膜を仮枠に接着させ、その後基板から剥離させた。この仮枠は、アルミニウム製のものを使用した。その後、前記ホットメルト粘着材を塗布した大型ペリクル用枠体に、ホットメルト粘着剤が塗布されていない反対側の面に、アクリル系の膜接着剤を塗布し、仮枠のペリクル膜を接着させ硬化し、余剰膜を切断した。このようにして作製された大型ペリクルを目視検査した結果、外観上は問題がなかった。その後、上記のように定義される密着性及び剥離性を評価して粘着剤の硬さを測定した。なお、これらの評価及び測定方法は上記の通りである。その結果を表1に記載する。
[実施例2]
【0060】
長辺は、幅が12mm、長さが1500mmとし、短辺は、幅が12mm、長さが1300mmとし、頂部の曲率をR=2mmとした。それ以外の材質、厚さ、溝の長さ、溝の深さ、溝の高さ、枠体の厚さは実施例1と同様にして2本作製した。
【0061】
実施例2では、大型ペリクル用枠体を図2のような分割枠体にし、分割枠体21c、21dの長さを1240mm、分割枠体21a、21bの長さを1440mmとした。接合部Jの平面形状は、図10(a)のようなくびれ形状とし、一方の部材の端部に丸形の凸部が1個設けられている形状とした。凸部の根元側の最大横寸法は3.2mmの長さに設定し、凸部の先端側の最大横寸法は6.0mmに設定した。また、嫌気性硬化型のアクリル系接着剤(商品名 ヘンケルロックタイト638(ヘンケル社製))を使用して接合部Jを接着して大型ペリクル用枠体を作製した。
【0062】
このようにして作成した大型ペリクル用枠体には、一箇所以上の段部が確認され、更に、この段部は頂部にも存在することが確認された。
【0063】
その後、実施例1と同様に、上記の大型ペリクル用枠体に対し、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合と、平面度と、全体の厚みの標準偏差とについて測定した。その結果を表1に記載する。
【0064】
次に、大型ペリクル用枠体のホットメルト粘着剤を厚さ2.0mmにした以外は実施例1と同様にして大型ペリクルを作製した。このようにして作製された大型ペリクルを目視検査した結果、外観上は問題がなかった。その後、実施例1と同様に、密着性及び剥離性を評価して粘着剤の硬さを測定した。その結果を表1に記載する。
[実施例3]
【0065】
長辺は、幅が21.0mm、長さが2000mmとし、短辺は、幅が19.5mm、長さが1800mmとし、頂部の曲率をR=0mmとし、枠体の厚さを6.0mmとした。それ以外の材質、厚さ、溝の長さ、溝の深さ、溝の高さは実施例1と同様にした。
【0066】
実施例3では、大型ペリクル用枠体を図13のような分割枠体にした。この大型ペリクル用枠体は、8つの部材が接合された8分割枠体であり、一対の長辺5a、5bを各々構成する分割枠体51a、51a’、51b、51b’と、一対の短辺5c、5dを各々構成する部材である分割枠体51c、51c’、51d、51d’と、から形成されている。そして、この大型ペリクル用枠体は、開口部の周辺部を構成する枠部の軸方向に沿って、8箇所の接合部を有している。そして、分割枠体51c、51c’、51d、51d’の長さを各々900mmとし、分割枠体51a、51a’、51b、51b’の長さを各々982mmとした。接合部Jの平面形状は、図12(a)のようなくびれ形状とし、このようなくびれ形状の凸部を接合端面に対して3個設けることとした。凸部の根元側の最大横寸法を2.1mmに設定し、凸部の先端側の最大横寸法を4.5mmに設定し、それ以外は、実施例1と同様にして大型ペリクル用枠体を作製した。
【0067】
このようにして作成した大型ペリクル用枠体には、一箇所以上の段部が確認され、更に、この段部は頂部にも存在することが確認された。
【0068】
その後、実施例1と同様に、上記の大型ペリクル用枠体に対し、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合と、平面度と、全体の厚みの標準偏差とについて測定した。その結果を表1に記載する。
【0069】
次に、大型ペリクル用枠体のホットメルト粘着剤を厚さ2.0mmにした以外は実施例1と同様にして大型ペリクルを作製した。このようにして作製された大型ペリクルを目視検査した結果、外観上は問題がなかった。その後、実施例1と同様に、密着性及び剥離性を評価して粘着剤の硬さを測定した。その結果を表1に記載する。
[比較例1]
【0070】
大型ペリクル用枠体の材質(全ての分割枠体の材質)はアルミニウム合金、厚さを4.0mmとし、長辺は、幅が9.0mm、長さが800mmとし、短辺は、幅が7.0mm、長さが480mmとした。また、短辺側全長に渡って溝を設け、溝の深さを2mm、溝の高さを1.5mmとした。また、頂部の曲率をR=0mmとした。
【0071】
比較例1では、大型ペリクル用枠体を、実施例1と同様の分割枠体にした。接合部Jの平面形状は、図10(b)のようなくびれ形状とし、一方の部材の端部に丸形の凸部が2個設けられている形状とした。凸部の根元側の最大横寸法は1.5mmの長さに設定し、凸部の先端側の最大横寸法は2.0mmに設定した。また接着剤は使用せずに上下方向から嵌め合いを行った。
【0072】
このようにして作成した大型ペリクル用枠体には、一箇所以上の段部が確認され、更に、この段部は頂部にも存在することが確認された。
【0073】
その後、実施例1と同様に、上記の大型ペリクル用枠体に対し、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合と、平面度と、全体の厚みの標準偏差とについて測定した。その結果を表1に記載する。
【0074】
次に、実施例1と同様にして大型ペリクルを作製し、目視検査した結果、外観上は問題がなかった。その後、実施例1と同様に、密着性及び剥離性を評価して粘着剤の硬さを測定した。その結果を表1に記載する。
[比較例2]
【0075】
大型ペリクル用枠体の材質(全ての分割枠体の材質)はアルミニウム合金、厚さを4.0mmとし、長辺は、幅が9.0mm、長さが800mmとし、短辺は、幅が7.0mm、長さが480mmとした。また、短辺側全長に渡って溝を設け、溝の深さを2mm、溝の高さを1.5mmとした。また、頂部の曲率をR=0mmとした。
【0076】
比較例1では、大型ペリクル用枠体を、実施例1と同様の分割枠体にした。接合部Jの平面形状は、図10(b)のようなくびれ形状とし、一方の部材の端部に丸形の凸部が2個設けられている形状とした。凸部の根元側の最大横寸法は1.5mmの長さに設定し、凸部の先端側の最大横寸法は2.0mmに設定した。また接着剤は使用せずに上下方向から嵌め合いを行った。
【0077】
このようにして作成した大型ペリクル用枠体には、一箇所以上の段部が確認され、更に、この段部は頂部にも存在することが確認された。
【0078】
その後、実施例1と同様に、上記の大型ペリクル用枠体に対し、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合と、平面度と、全体の厚みの標準偏差とについて測定した。その結果を表1に記載する。
【0079】
次に、実施例1と同様にして大型ペリクルを作製し、目視検査した結果、外観上は問題がなかった。その後、実施例1と同様に、密着性及び剥離性を評価して粘着剤の硬さを測定した。その結果を表1に記載する。
【表1】
【0080】
表1に示すように、実施例1〜3は、段部の割合が0%よりも大きく7.0%以下になっており、比較例1,2は、段部の割合が7.0%よりも大きくなっている。そして、全体の厚みの標準偏差に関する測定結果を見ると、比較例2が60μmであるのに対し、実施例1〜3が20μm、13μm、35μmと標準偏差が小さくなっていることが分かる。また、平面度に関する測定結果を見ると、比較例1,2が200μm、330μmであるのに対し、実施例1〜3が110μm、50μm、150μmと平面度が高くなっていることが分かる。また、密着性に関する評価結果を見ると、比較例1,2が△であるのに対し、実施例1〜3が何れも◎と密着性がよくなっていることが分かる。また、剥離性に関する評価結果を見ると、比較例1,2が×であるのに対し、実施例1〜3が何れも○と剥離性がよくなっていることが分かる。
【0081】
なお、本発明の実施例を3例挙げて説明したが、大型ペリクル用枠体や大型ペリクルの形状などは、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で適宜変更してもよい。また、大型ペリクル用枠体の接合部は少なくとも1つ有すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、分割枠体を用いたペリクル枠体であって、大型ペリクルの分野で利用できる。
【符号の説明】
【0083】
1…大型ペリクル、2…大型ペリクル用枠体、2a,2b…長辺、2c,2d…短辺、2e…上縁面、21a〜21h…分割枠体、3…大型ペリクル膜、4…開口部、5…頂部、5a,5b…長辺、5c,5d…短辺、51a〜51d…分割枠体、6…側面、7…溝部、8…大型ペリクル用枠体、8a,8b…長辺、8c,8d…短辺、81a〜81d…分割部材、9…開口部、J…接合部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばIC(Integrated Circuit:集積回路)、LSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)、TFT型LCD(ThinFilm Transistor,Liquid Crystal Display:薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ)等の半導体装置を製造する際のリソグラフィー工程で使用されるフォトマクスやレティクルに異物が付着することを防止するために用いる大型ペリクル用枠体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体回路パターン等の製造においては、フォトマスクやレティクルの両面側にペリクルと称する防塵手段を配置して、フォトマスクやレティクルへの異物の付着を防止することが行われている。なお、以下の説明では、フォトマスクやレティクルを総称して「マスク」という。
【0003】
ペリクルの一般的な構造としては、金属、セラミックス、又はポリマー製の枠体の一方の縁面に、ポリマー又はガラス等の透明な薄膜を貼り付け、他方の縁面に、マスクに貼り付けるための貼着剤層(粘着材又は貼着剤と表記することもある)を設けたものが挙げられる。例えば、ペリクルは、マスクの形状に合わせた形状を有する厚さ数ミリ程度の枠体の一方の縁面に、厚さ10μm以下のニトロセルロース又はセルロース誘導体等の透明な高分子膜から成るペリクル膜を展張して接着し、且つ枠体の他方の縁面に粘着材を介してマスクの表面に貼着している。
【0004】
マスクの表面に異物が付着した場合、その異物が半導体ウエハ上に形成されたフォトレジスト上に結像して回路パターン欠陥の原因となるが、マスクの少なくともパターン面にペリクルを配置した場合、ペリクルの表面に付着した異物はフォーカス位置がずれるため、半導体ウエハ上に形成されたフォトレジスト上に結像することがなく、回路パターンに欠陥を生じさせることがない。
【0005】
このようなペリクルは、マスクから剥れることを防ぐために、マスクに均一に貼り付けることが必要である。例えば、マスクに対するペリクルの貼り付けが不均一になると、部分的にマスク粘着材の接着幅が狭く又は広くなる恐れがある。特に、接着幅が狭い箇所は、部分的にマスクから粘着剤が剥れることでエアパスが発生し、そのエアパスを通じてマスク上に異物が付着することで回路パターンの欠陥が発生する恐れがある。また接着幅が広い箇所は、部分的に粘着剤がペリクル枠体からはみ出すことで、露光工程においてパターンの欠陥を引き起こす恐れや、粘着剤が直接的に露光に晒されて分解し、マスク上にヘイズが発生する恐れがある。上記理由から、これまではペリクルをマスクに均一に貼り付けするために、ペリクルの設計において枠体の高精度の平坦性が要求されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4004188号公報
【特許文献2】特許第4043232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところでペリクルに用いる枠体は、従来1枚のシート状母材を打ち抜くことにより作製されていた。これは、ペリクルの平坦性を確保するためであり、平坦性が悪いとマスクにペリクルを精度良く貼り付けることができないためである。しかし母材の平坦性によってはペリクル枠体の作製に使用できない母材もあり、ペリクル枠体が大型化するほど製造工程にも手間がかかり、ペリクル枠体作製の生産性の低下やコスト向上の原因となっている。
【0008】
上述の理由から、大型ペリクルに用いる大型ペリクル用枠体は、分割された枠体(以下、分割枠体という)が望まれている。大型ペリクル用枠体を分割枠体とすることで、歩留まり向上やコスト低減といった利点がある。しかし、実際には、分割枠体に用いる各部材の寸法精度が悪く、平坦性が高い枠体を収率良く得ることは困難であった。
【0009】
また一辺ごとに精度良く作製されたとしても枠体として組み上げることで、特に全体として枠体の厚み方向の微妙なバラツキなどが発生し、枠体の平坦性が悪くなることが懸念される。そのような問題点から、分割枠体から作製された大型ペリクル用枠体全体の平坦性を確保するのは極めて困難であった。
【0010】
また、分割枠体の接合部に急激な厚みのバラツキがあると、枠体にペリクル膜を接着する膜接着剤やマスク粘着剤がうまく枠体にのらない可能性もある。また、上記課題に対しては、接合部を部分的に切削して平坦性を確保する方法がとられるが、それらの方法は作業が困難かつ煩雑であるために、枠体作製の歩留まり低下や生産性低下の恐れがある。また、接合部の段差を研磨して平坦にしたとしても枠体全体としての平坦性が確保されているとは限らないため、そのような枠体を用いたペリクルをマスクに貼り付けた場合、ペリクルがマスクに貼り付かず剥がれてしまう可能性があった。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、マスクからの剥離を抑制しつつ、剥離する際は、マスクから容易に剥離することが可能な大型ペリクル用枠体及び大型ペリクルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一般的なペリクルの製法としては、ディスペンサー等を用いて枠体に粘着剤を塗布した後に、粘着剤を均一な形状に成型するが、当然その場合、マスクに接着する粘着剤の幅が均一になるように、ディスペンサー等からの粘着材の塗布量を調整する。ペリクル用枠体に段部を有する場合にも、粘着剤の幅が均一になるように、ディスペンサー等からの粘着材の塗布量を調整することが望まれるが、部分的に塗布量を調節することは非常に困難である。
【0013】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、枠体のより厚い箇所においてはマスク粘着剤が枠体からはみ出さず、枠体のより薄い箇所においてはマスク粘着剤の接着幅を維持できるとの知見に至り、この知見から、特定範囲内の段差を有する枠体を用いれば、上記の課題を解決できることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明に係る大型ペリクル用枠体は、開口部を有する矩形状の大型ペリクル用枠体であって、当該大型ペリクル用枠体に厚みの変化する1以上の段部を有し、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合が7%以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る大型ペリクル用枠体によれば、このように大型ペリクル用枠体に段部を有し、更に、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合を7%以下にすることで、マスクとの密着性が向上するため、マスクから剥離するのを抑制することができる。しかも、このような段部を有することで、マスクとの接着幅を不均一にすることができるため、この接着幅が狭くなる箇所から大型ペリクルを剥離させることで、マスクから容易に剥離することが可能となる。
【0016】
そして、大型ペリクル用枠体は、1以上の接合部を有することが好ましい。このように、1以上の接合部を有することで、大型ペリクル用枠体の製造により生じる残留応力が接合部において開放されるため、当該残留応力の影響が大型ペリクル用枠体全体に波及して大型ペリクル用枠体が大きく撓むのを防止することができる。しかも、通常、大型ペリクル用枠体はシート状の母材から切り出すことにより製造されるが、その際に発生した残留応力も、接合部において開放させることができる。このように、大型ペリクル用枠体の寸法安定性が向上することから、通常は、大型ペリクルの製造工程において残留応力を開放するための加熱工程を行うが、このような加熱工程を行う必要が低下するため、例えば、このような加熱工程を削減することで、大型ペリクルの製造工程数を削減することもできる。
【0017】
この場合、接合部は、少なくとも大型ペリクル用枠体の頂部に有することが好ましい。このように、頂部に段部を設けることで、頂部の剛性が向上して大型ペリクル用枠体の変形や歪みを防止することができる。
【0018】
また、大型ペリクル用枠体の平面度が300μm以下であることが好ましい。このように、大型ペリクル用枠体の平面度を300μm以下にすることで、大型ペリクル用枠体とマスクとの密着性を十分に保つことができる。
【0019】
また、大型ペリクル用枠体の全体の厚みの標準偏差が50μm以下であることが好ましい。このように、標準偏差を50μm以下にすることで、段部を有する大型ペリクル用枠体の平坦性が高くなるため、大型ペリクル用枠体の幅方向に粘着材がはみ出すのを抑制することができる。これにより、はみ出した粘着材が露光を遮ることにより発生するパターンの欠陥を抑制することができ、更に、はみ出した粘着材から発生するアウトガスによりマスク上にヘイズが発生するのを抑制することができる。
【0020】
本発明に係る大型ペリクルは、上記の何れかの大型ペリクル用枠体と、開口部を覆うように大型ペリクル用枠体の上縁面に展張支持されたペリクル膜、とを備えることを特徴とする。本発明に係る大型ペリクルによれば、上記の大型ペリクル用枠体を用いるため、マスクからの剥離を抑制しつつ、剥離する際は、マスクから容易に剥離することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、マスクからの剥離を抑制しつつ、剥離する際は、マスクから容易に剥離することが可能な大型ペリクル用枠体及び大型ペリクルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る大型ペリクルの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る大型ペリクル用枠体の平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る大型ペリクル用枠体の平面図である。
【図4】接合部(単純形状)の拡大斜視図である。
【図5】接合部(複雑形状)の拡大平面図である。
【図6】接合部(複雑形状)の拡大平面図である。
【図7】接合部(複雑形状)の拡大側面図である。
【図8】接合部(複雑形状)の拡大側面図である。
【図9】接合部(複雑形状)の拡大平面図である。
【図10】接合部(複雑形状)の拡大平面図である。
【図11】接合部(複雑形状)の拡大斜視図である。
【図12】接合部(複雑形状)の拡大斜視図である。
【図13】実施例3における大型ペリクル用枠体の平面図である。
【図14】大型ペリクル用枠体の測定箇所を示した平面図である。
【図15】大型ペリクル用枠体の測定箇所を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、下記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0024】
最初に、本発明の実施形態に係るペリクルについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る大型ペリクル1を示す斜視図である(図1においては、接合部の記載を省略している)。大型ペリクル1は、大型ペリクル用枠体2と、大型ペリクル用枠体2の上縁面2eに接着された大型ペリクル膜3と、を備えている。なお、図示しないが、大型ペリクル1は、大型ペリクル用枠体2の下縁面に塗布されてマスクに貼着するための貼着剤層(粘着材又は貼着剤と表記することもある)と、貼着剤層に粘着されこの貼着剤層を保護する保護フィルムと、をさらに備えている。
【0025】
大型ペリクル用枠体2は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金(5000系、6000系、7000系等)、鉄及び鉄系合金、セラミックス(SiC、AlN、Al2O3等)、セラミックスと金属との複合材料(Al−SiC、Al−AlN、Al−Al2O3等)、炭素鋼、工具鋼、ステンレスシリーズ等からなり、平面視略矩形状を呈している。枠体の表面処理としては、アルマイト処理、塗装、塗料コーティング、めっき処理、低融点ガラスフリット処理、CVD処理、スパッタ法などによるPVD処理などを採用することができる。
【0026】
大型ペリクル用枠体2は、一対の長辺2a,2bと、この長辺2a,2bよりも短い一対の短辺2c,2dと、から構成されており、矩形状の開口部4を有している。開口部4の開口面積は、1000cm2以上とされるのが好ましく、3000cm2以上とされるのがより好ましく、5000cm2以上とされるのがさらに好ましい。なお、開口部4の開口面積は、35000cm2以下とされるのが好ましい。
【0027】
一対の長辺2a,2bは、例えば幅が9.0mmの柱状部材からなり、その長さは、例えば800mmである。一対の短辺2c,2dは、幅が例えば7.0mmの柱状部材からなり、その長さは、例えば480mmである。つまり、短辺2c,2dの平面視(上面視)における幅は、長辺2a,2bの幅よりも狭い。大型ペリクル用枠体2の頂部5の曲率は、例えば、R=2mmである。なお、頂部5とは、大型ペリクル用枠体2の四隅の屈曲された部分であって、各頂点から各辺部の長さの30%の領域であり、更に好ましくは各頂点から各辺部の長さの20%の領域である。また、大型ペリクル用枠体2の短辺2c、2dの側面6には、溝部7が長手方向(辺方向)に沿って設けられている。
【0028】
大型ペリクル膜3は、例えばニトロセルロースやセルロース誘導体、フッ素系ポリマー、又はシクロオレフィン系ポリマー等の透明な高分子膜からなり、その厚さは、例えば10μm以下0.1μm以上が好ましい。この大型ペリクル膜3は、大型ペリクル用枠体2の開口部4を覆うように上縁面2eに展張され、大型ペリクル用枠体2に貼着支持されている。
【0029】
大型ペリクル膜3を大型ペリクル用枠体2の上縁面2eに接着する接着剤としては、例えば、アクリル樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、シリコーン樹脂接着剤、又は含フッ素シリコーン接着剤等のフッ素系ポリマーを用いることができる。
【0030】
また、大型ペリクル膜3を貼着支持する粘着材としては、スチレンエチレンブチレンスチレン、スチレンエチレンプロピレンスチレン、もしくはオレフィン系等のホットメルト粘着材、シリコーン系粘着材、アクリル系粘着材、又は発泡体を基材とした粘着テープ又は発泡ホットメルト等を用いることができる。その中でも、特に好ましくは、スチレンエチレンブチレンスチレン、スチレンエチレンプロピレンスチレン、もしくはオレフィン系等のホットメルト粘着材、シリコーン系粘着材である。粘着材層の厚さは、大型ペリクル用枠体2の厚さと粘着材厚さの合計が、規定された大型ペリクル膜3とマスクの距離を越えない範囲で設定されるのが好ましく、例えば、0.01mm以上10mm以下とされるのが好ましい。
【0031】
また、大型ペリクル膜3をマスクに貼り付けた際に貼着剤層の内側に空間が存在すると、該空間に異物が滞留する可能性がある。そのため、大型ペリクル用枠体2の下縁面に粘着剤を塗布する際には、大型ペリクル1をマスクに貼り付ける際の加圧で粘着剤層が潰れて広がることを考慮した上で、加圧時に開口部4に粘着剤がはみ出さない程度に大型ペリクル用枠体2の開口部4内側寄りに粘着材を塗布することが好ましい。具体的には、貼着剤層内側の空間の幅が粘着剤層の塗布幅の0.35倍以内となるように塗布することが好ましい。粘着剤層の塗布幅は大型ペリクル用枠体2の各辺2a〜2dの幅に対し0.3倍以上0.6倍以下であることが好ましく、大型ペリクル用枠体2の各辺2a〜2dに沿って塗布することが好ましい。粘着材を保護する保護フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、又はポリエチレン樹脂からなるフィルムを用いることができる。また、粘着材の粘着力に応じて、離型剤、例えばシリコーン系離型剤、又はフッ素系離型剤を、保護フィルムの表面に塗布しても良い。保護フィルムの厚さは、例えば、0.01mm以上1mm以下が好ましい。
【0032】
ところで、マスクに対するペリクルの装着時や装着後に、ペリクルの高分子膜であるペリクル膜の損傷や破損があって、その原因がブロ−(ガスの吹き付け)等では除去されない異物の付着によるものであった際、あるいはペリクルに損傷や破損が見られなくてもマスク面に異物の付着がみつかった際には、新しいペリクルと交換する必要がある。その際、当然マスクからペリクルを剥離する必要がある。しかしながら、均一に貼り付けられたペリクルは剥離する際に多大な労力を有し、また、剥離する際に高価なマスクに傷をつけてしまう恐れもあるために、効率的な剥離方法も求められる。
【0033】
本発明のペリクルにおいて、大型ペリクル用枠体2を分割枠体で構成する場合、マスク粘着剤とマスクとの接着幅がより狭くなる部分が存在する。つまりその箇所からペリクルを容易に剥離することが可能となる。これまで多くの方法を使ってペリクルをマスクから剥離する試みがなされてきたが、どれも煩雑な作業が必要であった。本発明では段差を有する枠体と特定の粘着剤を利用することという単純な方法によって、ペリクルに対して剥離性という二次的効果をも付与することができた。
【0034】
次に、本発明の一実施形態に係る大型ペリクル用枠体2について、図2を参照しながら説明する。図2(8分割構造)は、図1に示すような大型ペリクルに用いられる大型ペリクル用枠体2を上から見た図(平面図)である。
【0035】
大型ペリクル用枠体2において、開口部4の周縁部を構成する枠部は、一対の長辺2a、2bを各々構成する部材である分割枠体21a、21bと、分割枠体21a、21bの長手方向両端部に接合部Jを介して連接され、大型ペリクル用枠体2の有する4箇所の頂部5(図1参照)を各々形成する部材である分割枠体21e、21h、21f、21gと、分割枠体21e、21h、21f、21gの開放端同士を、接合部Jを介して架橋して一対の短辺2c、2dを各々構成する部材である分割枠体21c、21dと、から形成されている。すなわち、大型ペリクル用枠体2は、開口部4の周縁部を構成する枠部の軸方向に沿って、8箇所の接合部Jを有している。
【0036】
また、図2において大型ペリクル用枠体2は分割枠体21aを基点とし、開口部4の開口軸を基準とした時計回り方向に、分割枠体21e、分割枠体21d、分割枠体21f、分割枠体21b、分割枠体21g、分割枠体21c、分割枠体21h、分割枠体21aの順に接続されて形成されている。なお、図2に示す大型ペリクル用枠体2は、接合箇所が8箇所であるが、本発明は、大型ペリクル用枠体2における接合箇所の数は問わず、1箇所以上あればよく、好ましくは、1〜30箇所、より好ましくは、1〜20箇所、さらに好ましくは、1〜15箇所である。
【0037】
大型ペリクル用枠体2において、長辺2aと長辺2bの長さは等しく形成されており、短辺2cと短辺2dの長さは等しく形成されている。また、分割枠体21aと分割枠体21bの形状は実質的に同一であり、分割枠体21cと分割枠体21dの形状は実質的に同一であり、さらに、頂部5を各々形成する分割枠体21e、21h、21f、21gの形状も実質的に同一である。具体的には、図2において、分割枠体21a,21bの長さは、例えば700mmであり、分割枠体21c、21dの長さは、例えば380mmである。
【0038】
大型ペリクル用枠体2の各辺2a〜2dの幅は、露光面積を確保する観点からは狭ければ狭いほど好ましいが、狭すぎると大型ペリクル膜3の展張時に大型ペリクル膜3の張力で大型ペリクル用枠体2が撓んでしまうという問題が生じるおそれがある。各辺の長さに対して剛性を考慮すると、幅は好ましくは3mm以上25mm以下程度とすることができる。また、大型ペリクル用枠体2の厚さに関しても薄ければ薄いほど軽くて扱いやすい大型ペリクル1となるが、薄すぎると大型ペリクル膜3の展張時に大型ペリクル膜3の張力で大型ペリクル用枠体2が撓んでしまうという問題が生じるおそれがある。各辺2a〜2dの長さに応じて両者のバランスから、大型ペリクル用枠体2の厚さは好ましくは4.5mm以上12mm以下程度とすることができる。
【0039】
また、図3(4分割)は、図2と異なる分割枠体を使用して構成した大型ペリクル用枠体の一例(他の実施形態)である。図3に示す大型ペリクル用枠体8は、4つの部材が接合された4分割枠体の例である。この大型ペリクル用枠体8において、開口部9の周縁部を構成する枠部は、一対の長辺8a、8bを各々構成する分割枠体81a、81bと、一対の短辺8c、8dを各々構成する分割枠体81c、81dとから形成されている。すなわち、大型ペリクル用枠体8は、開口部9の周縁部を構成する枠部の軸方向に沿って、4箇所の接合部Jを有している。大型ペリクル用枠体8において、長辺8aと長辺8bの長さは等しく形成されており、短辺8cと短辺8dの長さは等しく形成されている。
【0040】
図2及び図3ともに、接合部Jは頂部付近に設けた構成を例として示したが、各辺の各々必要箇所に設けてもよい。接合部を頂部付近に設ける場合は、一本の辺を切り出すため、生産性が高くなると共に、剛性の高い頂部付近を接合することで一枚の母材からの切り出し物と同等の剛性を保つことができ、さらには、頂部の直角性を出しやすくなるため寸法安定性がよくなり露光中の有効露光面積を保つことができる。一方、接合部を各辺の各々必要箇所に設ける場合は、ペリクル作製工程内の加熱等による熱膨張を接合部で緩和でき、また各パーツ事の平坦性を得ることが容易になり寸法精度が高まるため好ましいが、剛性や直角性、寸法安定性等を考慮すると少なくとも頂部付近に接合部を設ける方がより好ましい。
【0041】
接合部の形状は、接合する接着剤厚さが、1.0mm以下であれば如何なる形状でも良い。接合部の平面形状(接合部を上方又は側方から見たときの形状)は、単純形状よりも複雑形状の方が好ましい。ここで、単純形状とは、図4に示すように、接合部Jの平面形状が、部材の長さ方向に対して略直角な方向に延在する直線となることを意味する。また、複雑形状とは、単純形状と比較して相対的に接着面積が大きくなる形状(例えば、複数の直線又は曲線が組み合わせられてなる形状)を意味する。複雑形状としては、例えば図5のような形状を採用することができ、図6のように接着剤使用部がペリクル枠の接合面の側面に剥き出しになることを極力抑えた形状がさらに好ましい。また、図7のように枠体の厚さ方向からみると階段形状を呈するもの、図8のような斜め形状、図9のような接合部Jを構成する一方の部材の端部が凸形状とされているもの、図10(a)〜(c)のようなくびれ形状、図11のように枠体の端部中央が四角柱状の凸形状になっているもの、図12(a)〜(c)のように台形形状の凸部Pが設けられている形状など種々の形状を採用することができる。くびれ形状の場合は、丸形のピアス形状、楔形状、角形状、三角形状、その他種々の形状(例えばジグゾーパズルで用いられるような形状)を採用することができる。
【0042】
また接合部は精度よく嵌め合いを行ったとしても端面にガタや隙間が空く可能性もある。そのため、カシメや接着剤等で補助的に接合部端面を別な接合方法で接合しても良い。これらの接合方法を用いることにより、接合部の接合強度を十分に確保することができる。
前記接着剤としては例えばアクリル系接着剤及びエポキシ系接着剤からなる群から選択されるものであって、かつUV硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気性硬化型接着剤、シアノアクリレート型瞬間接着剤からなる群から選択される接着剤などが適切である。
【0043】
また、接着剤の塗布量にもよるが、接合する場合に接着剤の枠体表面へのはみ出し量を少なくするために接着剤溜り等を接合部の内部に設計し、そこに余分な接着剤を吸収できる形状を作製してもよい。
【0044】
ペリクル工程内で、枠体はペリクル膜を展張した後に、不要膜をカッティングする工程があるがその際に膜の張力により枠体が内側に撓む傾向がある。そのため、単純形状より接着面積が大きくなる複雑形状の方が、内側への撓み時の応力を緩和でき、接合部でのガタや隙間等ができない形状になるために好ましい。
【0045】
接合部の形状にもよるが、1箇所の接合部における接合箇所(凸部や凹部の箇所)の個数は、1個から複数個存在してもよい。幅や接合部の形状で適宜設定可能であるが、より好ましくは、1個〜6個が好ましく、さらに好ましくは、1個〜3個が好ましい。
【0046】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、各分割枠体の形状をある程度揃えているが、各分割枠体の形状が夫々相違していても差し支えない。
【0047】
このように構成される大型ペリクル用枠体には、接合部などにおいて、一箇所以上の厚みが異なる部分(以下「段部」と表記する)が設けられている。ここで段部とは、大型ペリクル用枠体の厚みが変化している部分を指し、連続的であるか断続的であるかを問わない。そして、本実施形態では、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合を、7.0%以下の範囲とする。より定量的には、連続的な一定長さ(例えば、120mm)の範囲で大型ペリクル用枠体の厚みを測定した際に、最小の厚みに対して7.0%以下の範囲となるように、段部を設ける。なお、厚みの測定範囲は、連続的であれば如何なる範囲であってもよく、大型ペリクル用枠体の長手方向や短手方向だけでなく頂点を含んでも構わない。ここで、段部があまりに大きいと、部分的に接着力が強力になり過ぎる箇所や弱くなり過ぎる箇所が発生する。そこで、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合を、好ましくは5.0%以下とし、更に好ましくは2.5%以下の範囲とする。一方で、段差の割合は、より小さい方が好ましいが、製法精度上の限界から、0.3%以上であることが好ましい。
【0048】
大型ペリクル用枠体の段部の測定には、例えば、マイクロメータ(Mitutoyo MDQ−30M)を用いる。そして、図14に示すように、ある一つの頂点を開始点aとし、この開始点aから120mmの範囲において、開始点aから辺の長手方向に30mm毎の箇所を測定点bとする。そして、これらの測定点bにおける大型ペリクル用枠体の厚みを測定する。この場合、一度測定した範囲内であっても、開始点の位置が異なれば、異なる測定範囲として見なす。更に、より正確に段部の位置を特定するため、開始点aから辺の長手方向に5.0mm毎の箇所を測定点cとし、これらの測定点bにおける大型ペリクル用枠体の厚みを測定する。
【0049】
ところで、枠体全体の平坦性が低いと、部分的にマスク粘着材が大型ペリクル用枠体の幅方向にはみ出して露光の際の光が直接マスク粘着材に晒されることでパターンの欠陥を招く恐れや、マスク粘着材からアウトガスが発生することでマスク上にヘイズが発生する恐れがある。このため、枠体全体は、平坦性が高いことが好ましい。定量的には、大型ペリクル用枠体全体の厚みの標準偏差が50μm以下であることが好ましい。なお大型ペリクル用枠体全体の厚みの測定法としては、上述した大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合の測定法と同様である。
【0050】
また、大型ペリクル用枠体は、頂部に負荷がかかることで大型ペリクル用枠体の変形や歪みが問題となる場合がある。このため、段部は、大型ペリクル用枠体の少なくとも一つの頂部に設けることが好ましい。このように、頂部に段部を設けることで、頂部の剛性が向上して大型ペリクル用枠体の変形や歪みを防止する効果が期待できる。
【0051】
また、大型ペリクル用枠体は、平面度が高い方が好ましい。ここで、平面度とは、以下のように定義される。すなわち、図14に示すように、ある一つの頂点を開始点aとし、この開始点aから10mm毎の箇所を、三次元測定器(Mitutoyo FALCIO Apex 9366)を用いて測定し、最大の測定値と最小の測定値との差を平面度として定義した。このため、この平面度の測定値が大きいほど平面度が低く、この平面度の測定値が小さいほど平面度が高い。そして、大型ペリクル(大型ペリクル用枠体)とマスクとの密着性を保つためには、平面度が、300μm以下であることが好ましく、更に好ましくは200μm以下であり、特に好ましくは150μm以下である。
【0052】
また、上記の大型ペリクル用枠体を用いて大型ペリクルを作成する場合、用いるマスク粘着剤の硬さは、大型ペリクル用枠体とマスクとの密着性を保つために0.1kgf/cm2以上2.0kgf/cm2以下である必要があり、好ましくは0.3kgf/cm2以上1.8kgf/cm2以下である。ここで、硬さとは、以下のように定義される。まず、大型ペリクルから大型ペリクル用枠体の長手方向に3cm程度粘着剤が付いた大型ペリクル用枠体をサンプルとして切り出し、このサンプルに対して引張り試験機(SIMAZU オートグラフ AGS−50G)を用いて圧縮する。そして、この操作を3回行い、初期状態の粘着剤の高さを100とした場合に8%だけ圧縮するのに要した力の平均値を硬さとして定義した。
【0053】
そして、このような特定の硬さを有する粘着剤を分割枠体である大型ペリクル用枠体に粘着することで、大型ペリクルはマスクに対して密着性を維持することができる。ここで、密着性の評価は、以下のように定義される。すなわち、FPDペリクルマウンターM515L−IIIを用い、6.0N/cm2(FPDペリクルマウンターによる貼付荷重/マスク粘着材の接着面積)の力により、青板ガラスに大型ペリクルを20分以内の時間で貼り付ける。ただし、粘着剤がマスクに貼り付いた幅はフレームの幅に対して60%以上70%以下の幅とする。そして、この貼り付けたペリクルを4ヶ月間クリーンルーム(CR)内にて保管した後に、青板ガラス面から見たマスク粘着材の接着幅xの平均が、フレームの幅に対して60%以上である場合を密着性◎、60%未満40%以上である場合を密着性○、40%未満である場合を密着性△と定義した。なお、マスク粘着材の接着幅の測定点としては、図15に示すように、各辺に対して頂点から20mmの点を測定点αとし、各辺の中央の点を測定点βとする。そして、これらの測定点α及び測定点βにおけるマスク粘着材の接着幅を測定する。
また、段部を有する大型ペリクル用枠体を用いることで、従来の大型ペリクルよりも容易にマスクから剥離することができる。ここで、剥離性の評価は、以下のように定義される。まず、大型ペリクル用枠体から、段部を有さない長さ10cmの部分をサンプルとして切り出す。そして、FPDペリクルマウンターM515L−IIIを用い、6.0N/cm2(FPDペリクルマウンターによる貼付荷重/マスク粘着材の接着面積)の力により、エキシマー照射した石英ガラスに切り出したサンプルの端から5cmの長さの範囲を10分間貼り付ける。その後、引張り試験機(SIMAZU オートグラフ AGS−50G)を用いて、初期状態において粘着剤と剥離台との角度が90°になるようにサンプルをセットし、50mm/分の速度にて剥離試験を行うことで剥離する力を測定する。この測定を3回行い、最大の剥離力(最大剥離力/マスク接着幅)の平均が80kgf/mm2以上180kgf/mm2以下の値をとるものを剥離性○と定義した。また、剥離力が80kgf/mm2よりも小さい場合は、マスクとの密着性が悪く、マスクから大型ペリクルが剥がれてしまう可能性がある。一方、剥離力が180kgf/mm2よりも大きい場合は、大型ペリクルをマスクから剥離することが困難であり、高価なマスクを傷つける恐れがある。以上の観点から、剥離力が80kgf/mm2よりも小さく180kgf/mm2よりも大きい場合を、製品として扱えないという観点から剥離性×と定義した。
【実施例】
【0054】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
【0055】
大型ペリクル用枠体の材質(全ての分割枠体の材質)はアルミニウム合金、厚さを4.0mmとし、長辺は、幅が9.0mm、長さが800mmとし、短辺は、幅が7.0mm、長さが480mmとした。また、短辺側全長に渡って溝を設け、溝の深さを2mm、溝の高さを1.5mmとした。また、頂部の曲率をR=0mmとした。
【0056】
実施例1では、大型ペリクル用枠体を、図3のような分割枠体にし、分割部材81a,81bの長さを740mm、分割部材81c,81dの長さを420mmとした。接合部Jの平面形状は、図10(b)のようなくびれ形状とし、一方の部材の端部に丸形の凸部が2個設けられている形状とした。凸部の根元側の最大横寸法は1.5mmの長さに設定し、凸部の先端側の最大横寸法は2.0mmに設定した。また接着剤は使用せずに上下方向から嵌め合いを行った。
【0057】
このようにして作成した大型ペリクル用枠体には、一箇所以上の段部が確認され、更に、この段部は頂部にも存在することが確認された。
【0058】
その後、上記の大型ペリクル用枠体に対し、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合と、平面度と、全体の厚みの標準偏差とについて測定した。なお、これらの測定方法は上記の通りである。その結果を表1に記載する。
【0059】
次に、大型ペリクルを作製するために、大型ペリクル用枠体に対し、粘着剤としてスチレンエチレンブチレンスチレン系のホットメルト粘着剤を、厚さ1.8mmをペリクル枠体の各辺に沿って塗布した。別途基板上にセルロースエステルのペリクル膜をスピンコート法により成膜し、その膜を仮枠に接着させ、その後基板から剥離させた。この仮枠は、アルミニウム製のものを使用した。その後、前記ホットメルト粘着材を塗布した大型ペリクル用枠体に、ホットメルト粘着剤が塗布されていない反対側の面に、アクリル系の膜接着剤を塗布し、仮枠のペリクル膜を接着させ硬化し、余剰膜を切断した。このようにして作製された大型ペリクルを目視検査した結果、外観上は問題がなかった。その後、上記のように定義される密着性及び剥離性を評価して粘着剤の硬さを測定した。なお、これらの評価及び測定方法は上記の通りである。その結果を表1に記載する。
[実施例2]
【0060】
長辺は、幅が12mm、長さが1500mmとし、短辺は、幅が12mm、長さが1300mmとし、頂部の曲率をR=2mmとした。それ以外の材質、厚さ、溝の長さ、溝の深さ、溝の高さ、枠体の厚さは実施例1と同様にして2本作製した。
【0061】
実施例2では、大型ペリクル用枠体を図2のような分割枠体にし、分割枠体21c、21dの長さを1240mm、分割枠体21a、21bの長さを1440mmとした。接合部Jの平面形状は、図10(a)のようなくびれ形状とし、一方の部材の端部に丸形の凸部が1個設けられている形状とした。凸部の根元側の最大横寸法は3.2mmの長さに設定し、凸部の先端側の最大横寸法は6.0mmに設定した。また、嫌気性硬化型のアクリル系接着剤(商品名 ヘンケルロックタイト638(ヘンケル社製))を使用して接合部Jを接着して大型ペリクル用枠体を作製した。
【0062】
このようにして作成した大型ペリクル用枠体には、一箇所以上の段部が確認され、更に、この段部は頂部にも存在することが確認された。
【0063】
その後、実施例1と同様に、上記の大型ペリクル用枠体に対し、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合と、平面度と、全体の厚みの標準偏差とについて測定した。その結果を表1に記載する。
【0064】
次に、大型ペリクル用枠体のホットメルト粘着剤を厚さ2.0mmにした以外は実施例1と同様にして大型ペリクルを作製した。このようにして作製された大型ペリクルを目視検査した結果、外観上は問題がなかった。その後、実施例1と同様に、密着性及び剥離性を評価して粘着剤の硬さを測定した。その結果を表1に記載する。
[実施例3]
【0065】
長辺は、幅が21.0mm、長さが2000mmとし、短辺は、幅が19.5mm、長さが1800mmとし、頂部の曲率をR=0mmとし、枠体の厚さを6.0mmとした。それ以外の材質、厚さ、溝の長さ、溝の深さ、溝の高さは実施例1と同様にした。
【0066】
実施例3では、大型ペリクル用枠体を図13のような分割枠体にした。この大型ペリクル用枠体は、8つの部材が接合された8分割枠体であり、一対の長辺5a、5bを各々構成する分割枠体51a、51a’、51b、51b’と、一対の短辺5c、5dを各々構成する部材である分割枠体51c、51c’、51d、51d’と、から形成されている。そして、この大型ペリクル用枠体は、開口部の周辺部を構成する枠部の軸方向に沿って、8箇所の接合部を有している。そして、分割枠体51c、51c’、51d、51d’の長さを各々900mmとし、分割枠体51a、51a’、51b、51b’の長さを各々982mmとした。接合部Jの平面形状は、図12(a)のようなくびれ形状とし、このようなくびれ形状の凸部を接合端面に対して3個設けることとした。凸部の根元側の最大横寸法を2.1mmに設定し、凸部の先端側の最大横寸法を4.5mmに設定し、それ以外は、実施例1と同様にして大型ペリクル用枠体を作製した。
【0067】
このようにして作成した大型ペリクル用枠体には、一箇所以上の段部が確認され、更に、この段部は頂部にも存在することが確認された。
【0068】
その後、実施例1と同様に、上記の大型ペリクル用枠体に対し、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合と、平面度と、全体の厚みの標準偏差とについて測定した。その結果を表1に記載する。
【0069】
次に、大型ペリクル用枠体のホットメルト粘着剤を厚さ2.0mmにした以外は実施例1と同様にして大型ペリクルを作製した。このようにして作製された大型ペリクルを目視検査した結果、外観上は問題がなかった。その後、実施例1と同様に、密着性及び剥離性を評価して粘着剤の硬さを測定した。その結果を表1に記載する。
[比較例1]
【0070】
大型ペリクル用枠体の材質(全ての分割枠体の材質)はアルミニウム合金、厚さを4.0mmとし、長辺は、幅が9.0mm、長さが800mmとし、短辺は、幅が7.0mm、長さが480mmとした。また、短辺側全長に渡って溝を設け、溝の深さを2mm、溝の高さを1.5mmとした。また、頂部の曲率をR=0mmとした。
【0071】
比較例1では、大型ペリクル用枠体を、実施例1と同様の分割枠体にした。接合部Jの平面形状は、図10(b)のようなくびれ形状とし、一方の部材の端部に丸形の凸部が2個設けられている形状とした。凸部の根元側の最大横寸法は1.5mmの長さに設定し、凸部の先端側の最大横寸法は2.0mmに設定した。また接着剤は使用せずに上下方向から嵌め合いを行った。
【0072】
このようにして作成した大型ペリクル用枠体には、一箇所以上の段部が確認され、更に、この段部は頂部にも存在することが確認された。
【0073】
その後、実施例1と同様に、上記の大型ペリクル用枠体に対し、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合と、平面度と、全体の厚みの標準偏差とについて測定した。その結果を表1に記載する。
【0074】
次に、実施例1と同様にして大型ペリクルを作製し、目視検査した結果、外観上は問題がなかった。その後、実施例1と同様に、密着性及び剥離性を評価して粘着剤の硬さを測定した。その結果を表1に記載する。
[比較例2]
【0075】
大型ペリクル用枠体の材質(全ての分割枠体の材質)はアルミニウム合金、厚さを4.0mmとし、長辺は、幅が9.0mm、長さが800mmとし、短辺は、幅が7.0mm、長さが480mmとした。また、短辺側全長に渡って溝を設け、溝の深さを2mm、溝の高さを1.5mmとした。また、頂部の曲率をR=0mmとした。
【0076】
比較例1では、大型ペリクル用枠体を、実施例1と同様の分割枠体にした。接合部Jの平面形状は、図10(b)のようなくびれ形状とし、一方の部材の端部に丸形の凸部が2個設けられている形状とした。凸部の根元側の最大横寸法は1.5mmの長さに設定し、凸部の先端側の最大横寸法は2.0mmに設定した。また接着剤は使用せずに上下方向から嵌め合いを行った。
【0077】
このようにして作成した大型ペリクル用枠体には、一箇所以上の段部が確認され、更に、この段部は頂部にも存在することが確認された。
【0078】
その後、実施例1と同様に、上記の大型ペリクル用枠体に対し、大型ペリクル用枠体の厚みに対する段部の割合と、平面度と、全体の厚みの標準偏差とについて測定した。その結果を表1に記載する。
【0079】
次に、実施例1と同様にして大型ペリクルを作製し、目視検査した結果、外観上は問題がなかった。その後、実施例1と同様に、密着性及び剥離性を評価して粘着剤の硬さを測定した。その結果を表1に記載する。
【表1】
【0080】
表1に示すように、実施例1〜3は、段部の割合が0%よりも大きく7.0%以下になっており、比較例1,2は、段部の割合が7.0%よりも大きくなっている。そして、全体の厚みの標準偏差に関する測定結果を見ると、比較例2が60μmであるのに対し、実施例1〜3が20μm、13μm、35μmと標準偏差が小さくなっていることが分かる。また、平面度に関する測定結果を見ると、比較例1,2が200μm、330μmであるのに対し、実施例1〜3が110μm、50μm、150μmと平面度が高くなっていることが分かる。また、密着性に関する評価結果を見ると、比較例1,2が△であるのに対し、実施例1〜3が何れも◎と密着性がよくなっていることが分かる。また、剥離性に関する評価結果を見ると、比較例1,2が×であるのに対し、実施例1〜3が何れも○と剥離性がよくなっていることが分かる。
【0081】
なお、本発明の実施例を3例挙げて説明したが、大型ペリクル用枠体や大型ペリクルの形状などは、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で適宜変更してもよい。また、大型ペリクル用枠体の接合部は少なくとも1つ有すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、分割枠体を用いたペリクル枠体であって、大型ペリクルの分野で利用できる。
【符号の説明】
【0083】
1…大型ペリクル、2…大型ペリクル用枠体、2a,2b…長辺、2c,2d…短辺、2e…上縁面、21a〜21h…分割枠体、3…大型ペリクル膜、4…開口部、5…頂部、5a,5b…長辺、5c,5d…短辺、51a〜51d…分割枠体、6…側面、7…溝部、8…大型ペリクル用枠体、8a,8b…長辺、8c,8d…短辺、81a〜81d…分割部材、9…開口部、J…接合部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する矩形状の大型ペリクル用枠体であって、
当該大型ペリクル用枠体に厚みの変化する1以上の段部を有し、
前記大型ペリクル用枠体の厚みに対する前記段部の割合が7%以下であることを特徴とする大型ペリクル用枠体。
【請求項2】
前記大型ペリクル用枠体は、1以上の接合部を有することを特徴とする請求項1に記載の大型ペリクル用枠体。
【請求項3】
前記接合部は、少なくとも前記大型ペリクル用枠体の頂部に有することを特徴とする請求項2に記載の大型ペリクル用枠体。
【請求項4】
前記大型ペリクル用枠体の平面度が300μm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の大型ペリクル用枠体。
【請求項5】
前記大型ペリクル用枠体の全体の厚みの標準偏差が50μm以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の大型ペリクル用枠体。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の大型ペリクル用枠体と、前記開口部を覆うように前記大型ペリクル用枠体の上縁面に展張支持されたペリクル膜、とを備えることを特徴とする大型ペリクル。
【請求項1】
開口部を有する矩形状の大型ペリクル用枠体であって、
当該大型ペリクル用枠体に厚みの変化する1以上の段部を有し、
前記大型ペリクル用枠体の厚みに対する前記段部の割合が7%以下であることを特徴とする大型ペリクル用枠体。
【請求項2】
前記大型ペリクル用枠体は、1以上の接合部を有することを特徴とする請求項1に記載の大型ペリクル用枠体。
【請求項3】
前記接合部は、少なくとも前記大型ペリクル用枠体の頂部に有することを特徴とする請求項2に記載の大型ペリクル用枠体。
【請求項4】
前記大型ペリクル用枠体の平面度が300μm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の大型ペリクル用枠体。
【請求項5】
前記大型ペリクル用枠体の全体の厚みの標準偏差が50μm以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の大型ペリクル用枠体。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の大型ペリクル用枠体と、前記開口部を覆うように前記大型ペリクル用枠体の上縁面に展張支持されたペリクル膜、とを備えることを特徴とする大型ペリクル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−234008(P2012−234008A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101669(P2011−101669)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】
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