説明

大型容器の支持装置および炉容器

【課題】減衰装置の個数を増加させず、かつ大型化させることなく、減衰装置の大容量化を図ることのできる大型容器の支持装置を提供する。
【解決手段】大型容器1の近傍に設置された固定用構造物2と、この固定用構造物2と大型容器との間に設けられたリンク機構5と、このリンク機構5に取り付けられ大型容器1の揺動を、リンク機構5を介して減衰させる減衰装置9a,9bとを備える。リンク機構5は、大型容器1の揺動にともなって、大型容器1の変位を拡大して減衰装置9a,9bに伝達して減衰装置9a,9bを作動させるように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば加圧水型原子炉の蒸気発生器のように円筒状に形成された大型容器の支持装置および炉容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、加圧水型原子炉の蒸気発生器のような円筒状の大型容器の支持装置は、概略的に大型容器を横方向から固定するための固定用構造物と、その固定用構造物に対して大型容器を下方から支持するための支持構造物と、複数の減衰装置とから構成されている。
【0003】
すなわち、このような大型容器の支持装置としては、大型容器を下方から支持する支持脚、大型容器の下部を横方向から支持する下部支持構造物、その中間胴を横方向から支持する中間胴支持構造物、その上部を横方向から支持する上部支持構造物を有し、減衰装置としてオイルダンパーを使用したものがある。
【0004】
具体的には、例えば特許文献1に記載された技術は、大型容器であるたて置蒸気発生器の中間部を基礎構造物の内壁に取り付けられた支持部材で支持するとともに、たて置蒸気発生器の上端の鏡部をラグなどを介し、基礎構造物の内壁に取り付けられた支持部材で支持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平4−49444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した大型容器の支持装置においては、大地震に対して安全性を向上させる必要が生じた場合、あるいは蒸気発生器の大型化への対応のために減衰装置の容量を大きくする必要が生じた場合には、その減衰装置を大きなものに変更するか、または、その個数を増加させる必要がある。
【0007】
しかしながら、減衰装置を大型化したり、あるいはその個数を増加させると、固定用構造物と蒸気発生器との間隔を広く設定する必要があり、プラント全体が大型化してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、減衰装置の個数を増加させず、かつ大型化させることなく、減衰装置の大容量化を図ることのできる大型容器の支持装置および炉容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る大型容器の支持装置は、大型容器の近傍に設置された固定用構造物と、この固定用構造物と前記大型容器との間に設けられたリンク機構と、このリンク機構に取り付けられ前記大型容器の揺動を、前記リンク機構を介して減衰させる減衰装置と、を備える大型容器の支持装置であって、前記リンク機構は、前記大型容器の揺動にともなって、前記大型容器の変位を拡大して前記減衰装置に伝達して減衰装置を作動させるように構成されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る大型容器の支持装置は、大型容器の近傍に設置された固定用構造物と、この固定用構造物と前記大型容器との間で前記大型容器を支持する支持構造物と、この支持構造物と前記固定用構造物との間に設けられたリンク機構と、このリンク機構に取り付けられ前記大型容器の揺動を、前記リンク機構を介して減衰させる減衰装置と、を備える大型容器の支持装置であって、前記リンク機構は、前記大型容器の揺動にともなって、前記大型容器の変位を拡大して前記減衰装置に伝達して減衰装置を作動させるように構成されたことを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る炉容器は、蒸気発生器の近傍に設置された固定用構造物と、この固定用構造物と前記蒸気発生器との間に設けられたリンク機構と、このリンク機構に取り付けられ前記蒸気発生器の揺動を、前記リンク機構を介して減衰させる減衰装置と、を備える炉容器であって、前記リンク機構は、前記蒸気発生器の揺動にともなって、前記大型容器の変位を拡大して前記減衰装置に伝達して減衰装置を作動させるように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、減衰装置の個数を増加させることなく、かつ比較的小型の減衰装置を使用することが可能となり、その結果、プラント全体の小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る大型容器の支持装置の第1実施形態を示す立断面図である。
【図2】図1においてII−II線による平断面図である。
【図3】第1実施形態のトグルリンクを示す拡大図である。
【図4】図3のトグルリンクが作動した状態を示す拡大図である。
【図5】本発明に係る大型容器の支持装置の第2実施形態を示す平断面図である。
【図6】本発明に係る大型容器の支持装置の第3実施形態を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る大型容器の支持装置の第4実施形態を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る大型容器の支持装置の各実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
(第1実施形態)
(構 成)
図1は本発明に係る大型容器の支持装置の第1実施形態を示す立断面図である。図2は図1においてII−II線による平断面図である。図3は第1実施形態のトグルリンクを示す拡大図である。図4は図3のトグルリンクが作動した状態を示す拡大図である。
【0016】
なお、図2では、大型容器に内部構造物が多数設置されていることから、大型容器を中実状に図示しているが、実際には中空の円筒状に形成されている。その他、図5および図7も同様とする。
【0017】
図1および図2に示すように、例えば加圧水型原子力発電プラントの炉容器における蒸気発生器である大型容器1は、コンクリートなどを角筒状に形成した固定用構造物2内に設置されている。また、大型容器1は、中空の円筒状に形成され、固定用構造物2内において支持装置3により支持されている。この支持装置3は、概略的に上部支持構造物3a、中間支持構造物3b、下部支持構造物3c、支持脚4およびトグルリンク5を備えている。
【0018】
上部支持構造物3a、中間支持構造物3b、および下部支持構造物3cは、それぞれ固定用構造物2の内壁面との間に取り付けられ、大型容器1の上部、中間、および下部をそれぞれ横方向から支持している。支持脚4は、固定用構造物2内に設置され、大型容器1の底部を下方から支持している。
【0019】
中間支持構造物3bは、図2に示すように円環状に形成されて大型容器1の中間胴を包囲する包囲部3b1と、この包囲部3b1の外周にそれぞれの一端が固定され、それぞれの他端が固定用構造物2の内壁面まで延びてその内壁面に突き当てられる4本の支持部3b2と、を備えている。
【0020】
トグルリンク5は、図1および図3に示すように固定用構造物2と中間支持構造物3bとの間に設置されている。トグルリンク5は、中間支持構造物3bの支持部3b2に固定されたリンク支点取付部5aと、このリンク支点取付部5aに取り付けられる自由端としてのリンク支点6aと、固定用構造物2に固定される固定端としてのリンク支点6bと、これらのリンク支点6a,6bにそれぞれ取り付けられるリンク7a,7b,7c,7dと、これらの各リンク7a,7b,7c,7dを接続するとともに、後述する減衰装置との接続部となるリンク中間支点8a,8bと、を有している。
【0021】
トグルリンク5のリンク中間支点8a,8bには、それぞれ減衰装置9a,9bの伸縮部が取り付けられている。これらの減衰装置9a,9bを上下に取り付けるため、固定用構造物2の内壁面には、それぞれ上下に減衰装置取付部10a,10bが突出して形成されている。これら減衰装置取付部10a,10bには、減衰装置9a,9bを取り付けるための減衰装置支点11a,11bが設けられている。
【0022】
ここで、各リンク7a,7b,7c,7dは、リンク支点6aとリンク支点6bとの間の変位よりも、リンク中間支点8aとリンク中間支点8bとの間の変位の方が大きくなるように予め設計されている。すなわち、各リンク7a,7b,7c,7dは、大型容器1の揺動によるリンク支点6aとリンク支点6bとの間の変位よりも、リンク中間支点8aとリンク中間支点8bとの間の変位を大きくすることで、大型容器1の揺動に伴うリンク中間支点8aおよびリンク中間支点8bの変位を拡大するようにしている。
【0023】
減衰装置9a,9bとしては、例えばオイルダンパー、皿ばね摩擦ダンパー、鉛ダンパー、メカニカルスナバなど、またはこれらのうちの任意の組合せから適宜選択して用いる。
【0024】
(作 用)
このように構成された本実施形態において、例えば加圧水型原子力発電プラントにおける蒸気発生器である大型容器1が地震により水平方向に慣性力を受けて振動すると、各支持構造物3a,3b,3cを介して固定用構造物2によりその力を支持する。さらに、中間支持構造物3bに取り付けられたリンク支点取付部5aを介してリンク支点6aが水平に移動して固定用構造物2に固定されるリンク支点6bとの間の距離が変化する。すると、各リンク7a,7b,7c,7dを介してリンク中間支点8a,8bが上下方向に変位する。
【0025】
具体的には、リンク中間支点8aは、図4において固定用構造物2側の斜め上方に変位する一方、リンク中間支点8bが固定用構造物2側の斜め下方に変位する。つまり、リンク中間支点8aの変位は、図4において左方向の水平成分と上方の鉛直成分を有する一方、リンク中間支点8bの変位は、左方向の水平成分と下方の鉛直成分を有する。
【0026】
次いで、各リンク中間支点8a,8bの斜め上方および斜め下方の移動に応じて、減衰装置取付部10a,10bに取り付けられた減衰装置支点11a,11bを中心として減衰装置9a,9bがそれぞれ時計方向、反時計方向に揺動する。この時、各リンク7a,7b,7c,7dは、上述したようにリンク支点6aとリンク支点6bとの間の変位よりも、リンク中間支点8aとリンク中間支点8bとの間の変位の方が大きくなるように予め設計されている。これにより、大型容器1の水平変位が拡大されてリンク支点6aとリンク支点6bに取り付けられた減衰装置9a,9bを作動させるため、比較的小型の減衰装置9a,9bでも、大きな減衰力を得ることができる。
【0027】
また、本実施形態では、減衰装置9a,9bに用いるオイルダンパーは、流体の粘性により減衰力を得ることができる。また、皿ばね摩擦ダンパーは、皿ばねの押付力による材料の摩擦により減衰力を得ることができる。さらに、鉛ダンパーは、鉛の弾性変形と塑性流動により減衰力を得ることができる。また、メカニカルスナバは、内部の回転体の慣性力と摩擦により減衰力を得ることができる。
【0028】
さらに、各減衰装置9a,9bをオイルダンパー、皿ばね摩擦ダンパー、鉛ダンパー、メカニカルスナバの任意の組み合わせとした場合、各減衰装置9a,9bの減衰力が複合的に作用して大型容器1の振動を減衰させることができる。
【0029】
(効 果)
このように本実施形態によれば、トグルリンク5は、大型容器1の揺動に伴う減衰装置9a,9bとのリンク中間支点8a,8bの変位を拡大することから、地震時の大型容器1の水平変位を拡大して減衰装置9a,9bを作動させることができるため、比較的小型の減衰装置を使用することが可能となり、設置が容易であり、またプラント全体の小型化を図ることが可能となる。
【0030】
また、本実施形態によれば、減衰装置9a,9bにオイルダンパーのような流体粘性ダンパーを使用することにより、比較的小さい振動から大きな振動まで対応することが可能となる。さらに、皿ばね摩擦ダンパーのような摩擦ダンパーを使用することにより、高温や高放射線のような環境条件の厳しい場所でも安定した減衰性能を確保することができる。そして、鉛ダンパーのような弾塑性ダンパーを使用することにより、比較的小型でも大きな減衰力を得ることが可能となる。また、メカニカルスナバを使用することにより、比較的長い可動範囲の減衰装置とすることができる。さらに、これらの各種の減衰装置を適宜組み合わせて使用することにより、それぞれの減衰装置の利点を有効利用することが可能となる。
【0031】
なお、本実施形態では、上下双方にそれぞれ減衰装置9a,9bを取り付けた例について説明したが、上下いずれか一方に減衰装置を取り付けるようにしてもよい。この場合には、取り付けられた減衰装置9aまたは減衰装置9bに対応してリンク7a,7cおよびリンク中間支点8aと、リンク7b,7dおよびリンク中間支点8bのうち、いずれか一方を取り付ければよい。
【0032】
(第2実施形態)
図5は本発明に係る大型容器の支持装置の第2実施形態を示す平断面図である。なお、本実施形態では、前記第1実施形態と同一または対応する部分に同一の符号を付して、重複する説明は省略する。その他の実施形態も同様とする。
【0033】
本実施形態は、図5に示すように前記第1実施形態と同様の構成のトグルリンクを減衰装置9a,9bが水平方向に作動するように取り付けたものである。
【0034】
具体的に、本実施形態のトグルリンク15は、大型容器1の中心軸と固定用構造物2との間を結ぶ線上であって、大型容器1の外周面に対して図5における左右に摺動可能に当接するリニアガイドなどから構成されるスライドガイド12と、このスライドガイド12の変位に伴って移動可能に取り付けられるリンク支点6aと、固定用構造物2に固定されるリンク支点6bと、これらのリンク支点6a,6bにそれぞれ取り付けられるリンク7a,7b,7c,7dと、これらの各リンク7a,7b,7c,7dを接続するリンク中間支点8a,8bと、を有している。
【0035】
また、トグルリンク15のリンク中間支点8a,8bには、それぞれ減衰装置9a,9bの伸縮部分が取り付けられている。これらの減衰装置9a,9bを図5において左右に取り付けるため、固定用構造物2の内壁面には、それぞれ左右に減衰装置取付部10a,10bが突出して形成されている。これら減衰装置取付部10a,10bには、互いに対向する面に減衰装置9a,9bを取り付けるための減衰装置支点11a,11bが設けられている。
【0036】
さらに、リンク支点6a、リンク中間支点8a,8bは、図示しない自在継手により構成されている。
【0037】
(作 用)
このように構成された本実施形態において、大型容器1が地震により水平方向に慣性力を受けて振動すると、スライドガイド12を介してリンク支点6aが図5において下方に移動して固定用構造物2に固定されるリンク支点6bとの間の距離が変化する。すると、各リンク7a,7b,7c,7dを介してリンク中間支点8a,8bが左右方向に変位する。
【0038】
具体的には、リンク中間支点8aは、図5において固定用構造物2側の斜め左下方に変位する一方、リンク中間支点8bが固定用構造物2側の斜め右下方に変位する。つまり、リンク中間支点8aの変位は、図5において左方向の水平成分と下方の垂直成分を有する一方、リンク中間支点8bの変位は、右方向の水平成分と下方の垂直成分を有する。
【0039】
次いで、各リンク中間支点8a,8bの斜め左下方および斜め右下方の移動に応じて、減衰装置取付部10a,10bに取り付けられた減衰装置支点11a,11bを中心として減衰装置9a,9bがそれぞれ時計方向、反時計方向に揺動する。この時、各リンク7a,7b,7c,7dは、上述したようにリンク支点6aとリンク支点6bとの間の変位よりも、リンク中間支点8aとリンク中間支点8bとの間の変位の方が大きくなるように予め設計されている。これにより、大型容器1の水平変位が拡大されてリンク支点6aとリンク支点6bに取り付けられた減衰装置9a,9bを作動させるため、前記第1実施形態と同様に比較的小型の減衰装置9a,9bでも、大きな減衰力を得ることができる。
【0040】
また、本実施形態では、大型容器1に対して支持構造物を介在させることなくリンク支点6aを直接取り付けていることから、前記第1実施形態のような支持構造物が不要となる。
【0041】
さらに、本実施形態では、リンク支点6aをスライドガイド12を介して大型容器1に当接させていることから、大型容器1における横方向の変位の影響を受けることがなくなる。
【0042】
そして、本実施形態では、リンク支点6a、リンク中間支点8a,8bが自在継手に構成されていることから、熱変形によるリンク支点6aの上下移動にも追従することが可能となっている。
【0043】
なお、本実施形態では、他の支点についてもスライドガイドあるいは自在継手を取り付けることにより、さらに自由度を増やすような構成としてもよい。
【0044】
(効 果)
このように本実施形態によれば、前記第1実施形態の効果に加えて、支持構造物が不要となることから、装置全体を比較的小型化することが可能となる。また、スライドガイド12、自在継手により装置の自由度を高めることにより、大型容器1の3次元の振動にも追従可能となり、各リンク7a,7b,7c,7dの負荷が軽減されるため、装置の信頼性および耐久性を向上させることができる。
【0045】
(第3実施形態)
(構 成)
図6は本発明に係る大型容器の支持装置の第3実施形態を示す縦断面図である。
【0046】
本実施形態は、図6に示すトグルリンク25のリンク支点取付部5aが図示しない大型容器を支持する中間支持構造物に取り付けられている。
【0047】
トグルリンク25は、固定用構造物2に固定されレール状に形成されたスライド支点ガイド13a,13bと、これらのスライド支点ガイド13a,13bに対して上下移動可能に取り付けられるスライダーとしての機能を有するスライド支点14a,14bと、リンク支点6aとスライド支点14a,14bに取り付けられるリンク7a,7bと、これらのリンク7a,7bに取り付けられる中間支点8c,8dと、を有している。リンク7a,7bは、前記第1実施形態のリンク7a,7bよりも延長して形成され、その延長部分にリンク中間支点8c,8dが取り付けられている。ここで、スライド支点ガイド13a,13bおよびスライド支点14a,14bは、スライド機構を構成する。
【0048】
また、トグルリンク25は、固定用構造物2に固定されるリンク支点6bと、リンク7a,7bの略中間位置に取り付けられる中間支点8a,8bと、これら中間支点8a,8bとリンク支点6bに取り付けられるリンク7c,7dと、を有している。
【0049】
トグルリンク25のリンク中間支点8c,8dには、それぞれ減衰装置9c,9dの伸縮部分が取り付けられている。これらの減衰装置9c,9dを上下に取り付けるため、固定用構造物2の内壁面には、それぞれ上下に減衰装置取付部10a,10bが突出して形成されている。これら減衰装置取付部10a,10bには、減衰装置9c,9dを取り付けるための減衰装置支点11c,11dが設けられている。
【0050】
また、トグルリンク25のリンク中間支点8a,8bには、前記第1実施形態と同様にそれぞれ減衰装置9a,9bの伸縮部分が取り付けられている。減衰装置取付部10a,10bには、減衰装置9a,9bを取り付けるための減衰装置支点11a,11bが設けられている。
【0051】
(作 用)
このように構成された本実施形態において、大型容器1が地震により水平方向に慣性力を受けて振動すると、中間支持構造物に取り付けられたリンク支点取付部5aを介してリンク支点6aが水平に移動して固定用構造物2に固定されるリンク支点6bとの間の距離が変化する。すると、各リンク7a,7bを介してスライド支点ガイド13a,13bに対してスライド支点14a,14bがそれぞれ上方および下方に移動する。これにより、リンク中間支点8a,8b,8c,8dが上下方向に変位する。
【0052】
次いで、各リンク中間支点8c,8dの上下方向の移動に応じて減衰装置9c,9dを作動させるとともに、各リンク中間支点8a,8bが前記第1実施形態と同様に移動する。この時、各リンク7a,7b,7c,7dは、上述したようにリンク支点6aとリンク支点6bとの間の変位よりも、リンク中間支点8aとリンク中間支点8bとの間、およびリンク中間支点8cとリンク中間支点8dとの間の変位の方が大きくなるように予め設計されている。これにより、大型容器1の水平変位が拡大されてリンク支点6aとリンク支点6bに取り付けられた減衰装置9a,9b,9c,9dを作動させるため、比較的小型の減衰装置9a,9b,9c,9dでも、大きな減衰力を得ることができる。
【0053】
また、本実施形態では、スライド支点ガイド13a,13bおよびスライド支点14a,14bを設けていることにより、リンク支点取付部5aから伝達される振動力を、リンク支点6bとともに分散して受けることが可能となる。
【0054】
さらに、本実施形態では、リンク7a,7bを延長し、その延長部分にリンク中間支点8c,8dを取り付けていることにより、図示しない大型容器の水平振動変位をリンク中間支点8a,8bよりもさらに拡大することが可能となる。そして、複数の減衰装置9a,9b,9c,9dを取り付けているため、一つ当たりの減衰力を小さくすることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、さらに複数個のリンク中間支点および減衰装置を取り付けることにより、さらに減衰力を増加あるいは減衰装置の小型化を図る構成としてもよい。
【0056】
(効 果)
このように本実施形態によれば、前記第1実施形態の効果に加えて、スライド支点ガイド13a,13bにスライド支点14a,14bを移動可能に取り付たことで、固定用構造物2側の支点の負荷が軽減されるため、より大きな地震力に対応可能となる。また、振動変位をさらに拡大可能な位置に減衰装置9c,9dを追加して取り付けることが可能となり、一段と大きな減衰力を得ることが可能になるとともに、個々の減衰装置9a,9b,9c,9dの小型化を図ることができる。
【0057】
(第4実施形態)
図7は本発明に係る大型容器の支持装置の第4実施形態を示す平断面図である。
【0058】
(構 成)
本実施形態は、図5に示すように大型容器1の横方向に対して互いに直交する2方向に前記第1実施形態と同様の構成のトグルリンク5がそれぞれ設置されている。トグルリンク5の構造は、前記第1実施形態と同様である。
【0059】
(作 用)
このように構成された本実施形態においても、前記第1実施形態と同様に動作し、比較的小型の減衰装置9a,9bでも、大きな減衰力を得ることができる。
【0060】
また、本実施形態では、横方向に互いに直交する2方向にトグルリンク5をそれぞれ設置したことにより、大型容器1の水平方向2自由度の振動を減衰させることができる。
【0061】
(効 果)
このように本実施形態によれば、前記第1実施形態の効果に加えて、横方向に互いに直交する2方向の振動に対応することが可能となる。
【0062】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。上記各実施形態では、大型容器1として加圧水型原子力発電プラントの炉容器における蒸気発生器を適用した例について説明したが、これに限らず他のプラントの大型容器にも適用することが可能である。
【0063】
また、上記各実施形態では、大型容器1を角筒状に形成した固定用構造物2内に設置した場合について説明したが、固定用構造物が他の形状であっても、大型容器を固定用構造物の近傍に設置すればよい。
【符号の説明】
【0064】
1…大型容器
2…固定用構造物
3…支持装置
4…支持脚
5…トグルリンク
5a…リンク支点取付部
6a,6b…リンク支点
7a,7b,7c,7d…リンク
8a,8b…リンク中間支点(接続部)
9a,9b…減衰装置
10a,10b…減衰装置取付部
11a,11b…減衰装置支点
12…スライドガイド
13a,13b…スライド支点ガイド
14a,14b…スライド支点
15…トグルリンク
25…トグルリンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型容器の近傍に設置された固定用構造物と、この固定用構造物と前記大型容器との間に設けられたリンク機構と、このリンク機構に取り付けられ前記大型容器の揺動を、前記リンク機構を介して減衰させる減衰装置と、を備える大型容器の支持装置であって、
前記リンク機構は、前記大型容器の揺動にともなって、前記大型容器の変位を拡大して前記減衰装置に伝達して減衰装置を作動させるように構成されたこと、
を特徴とする大型容器の支持装置。
【請求項2】
大型容器の近傍に設置された固定用構造物と、この固定用構造物と前記大型容器との間で前記大型容器を支持する支持構造物と、この支持構造物と前記固定用構造物との間に設けられたリンク機構と、このリンク機構に取り付けられ前記大型容器の揺動を、前記リンク機構を介して減衰させる減衰装置と、を備える大型容器の支持装置であって、
前記リンク機構は、前記大型容器の揺動にともなって、前記大型容器の変位を拡大して前記減衰装置に伝達して減衰装置を作動させるように構成されたこと、
を特徴とする大型容器の支持装置。
【請求項3】
前記リンク機構は、少なくとも2つのリンクが前記減衰装置との接続部を介して接続され、一方のリンクの端部を前記大型容器の揺動に伴って移動する自由端とし、他方のリンクの端部を前記固定用構造物に固定された固定端としたこと、
を特徴とする請求項1または2に記載の大型容器の支持装置。
【請求項4】
前記リンク機構は、自由端側のリンクを前記固定用構造物まで延長し、その先端と前記固定用構造物との間にスライド機構を設けたこと、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の大型容器の支持装置。
【請求項5】
前記延長したリンクの延長部分に接続部を介して前記減衰装置を追加して取り付けたこと、
を特徴とする請求項4に記載の大型容器の支持装置。
【請求項6】
前記リンク機構は、前記大型容器の横方向に対して互いに直交する2方向にそれぞれ設置したこと、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の大型容器の支持装置。
【請求項7】
蒸気発生器の近傍に設置された固定用構造物と、この固定用構造物と前記蒸気発生器との間に設けられたリンク機構と、このリンク機構に取り付けられ前記蒸気発生器の揺動を、前記リンク機構を介して減衰させる減衰装置と、を備える炉容器であって、
前記リンク機構は、前記蒸気発生器の揺動にともなって、前記大型容器の変位を拡大して前記減衰装置に伝達して減衰装置を作動させるように構成されたこと、
を特徴とする炉容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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