説明

大型車用ハブユニットの異常検出装置

【課題】 軸受の異常を早期に検出して運転手等に知らせることを可能とする大型車用ハブユニットの異常検出装置を提供する。また、故障原因の事後判別が可能な大型車用ハブユニットの異常検出装置を提供する。
【解決手段】 軸受の固定輪における転動体軌道近傍の表面にストレインゲージ1を貼着し、転動体通過による出力振動の平均振動量から積載重量を検出し、出力振動の平均値のドリフトから軸受温度及び浸水を検出する。これらの検出結果を運転席に設けたモニタ5に表示して運転手に知らせる。また、検出結果をメモリ6に記憶させ、必要に応じて取り出せる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、大型車(トラック、ダンプカー等)の車輪を支持するためのハブユニットにおける異常を検出する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、大型車の車輪を回転自在に支持する軸受に関しては、定期的に検査が行われていた。これにより、シール不具合やシール劣化による軸受内への水侵入、及び、グリース劣化等の異常が早期に発見され、適切な補修をすることができた。一方、メンテナンスフリーの要請から、軸受とハブとを1つのユニットとして組み立てるとともに、水が侵入しにくい構造を採用したハブユニットが近年採用されつつある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のようなメンテナンスフリーのハブユニットは保守面で有利ではあるものの、万一シール不良等が生じると、その発見が遅れがちになるという問題点があった。また、大型車においては、許容積載重量を超えた過積載での使用が少なくないのが実状であるが、従来、過積載を検出する実用的な手段が提案されていなかった。しかも、過積載が原因で軸受の故障が発生した場合に、過積載の事実を確認することは困難であり、故障原因が特定しにくいという問題点があった。
【0004】上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、軸受の異常を早期に検出して運転手等に知らせることを可能とする大型車用ハブユニットの異常検出装置を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、故障原因の事後判別が可能な大型車用ハブユニットの異常検出装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の大型車用ハブユニットの異常検出装置は、大型車用ハブユニットの軸受固定輪の軌道近傍表面に取り付けられたストレインゲージと、前記ストレインゲージの出力に基づく出力振動の平均振動量を所定値と比較することにより過積載の有無を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段による検出結果を表示する表示手段とを備えたことを特徴とするものである(請求項1)。上記のように構成された異常検出装置において、ストレインゲージが取り付けられた軌道近傍表面は、軸受の転動体が直近を通過するとき大ききな歪みを生じ、転動体が遠ざかると歪みは小さくなる。そして歪み量は軸受にかかる荷重に応じて大きくなる。こうして、ストレインゲージは、複数の転動体が次々と通過することにより繰り返し振動する出力を生じ、その振動量は荷重に応じて増減する。従って、ストレインゲージを軸受の軸重センサとして用いることができる。異常検出手段は、出力振動の平均振動量を、所定値(例えば積載限度重量に対応した振動量の値)と比較することにより、過積載の有無を検出する。検出結果は、表示手段によって表示される。
【0006】また、本発明の大型車用ハブユニットの異常検出装置は、大型車用ハブユニットの軸受固定輪の軌道近傍表面に取り付けられたストレインゲージと、前記ストレインゲージの出力に基づく出力振動の平均値における基準値からの変化量を所定値と比較することにより異常昇温の有無を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段による検出結果を表示する表示手段とを備えたものであってもよい(請求項2)。上記のように構成された異常検出装置(請求項2)において、ストレインゲージが取り付けられた軌道近傍表面は、軸受への過負荷や軸受の劣化によって、車両の走行開始後に温度が上昇する。これによってストレインゲージの温度が上昇し、出力振動の平均値が変化(ドリフト)する。従って、ストレインゲージを軸受の温度センサとして用いることができる。異常検出手段は、出力振動の平均値における基準値(例えば走行開始直後の値)からの変化量を所定値(例えば通常の軸受温度上昇幅と認められる上限値)と比較することにより、異常昇温の有無を検出する。検出結果は、表示手段によって表示される。
【0007】また、本発明の大型車用ハブユニットの異常検出装置は、大型車用ハブユニットの軸受固定輪の軌道近傍表面に取り付けられたストレインゲージと、前記ストレインゲージの出力に基づく出力振動の平均値における基準値からの変化量を所定値と比較することにより浸水の有無を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段による検出結果を表示する表示手段とを備えたものであってもよい(請求項3)。上記のように構成された異常検出装置(請求項3)において、ストレインゲージが取り付けられた軌道近傍表面に水が浸入すると、ストレインゲージの出力に基づく出力振動の平均値は、温度上昇による変化の場合と比較して過大な変化を生じる。従って、ストレインゲージを軸受の浸水センサとして用いることができる。異常検出手段は、出力振動の平均値における基準値(例えば走行開始直後の値)からの変化量を所定値(過大と認められる基準値)と比較することにより、浸水の有無を検出する。検出結果は、表示手段によって表示される。
【0008】また、本発明の大型車用ハブユニットの異常検出装置は、大型車用ハブユニットの軸受固定輪の軌道近傍表面に取り付けられたストレインゲージと、前記ストレインゲージの出力を受けて、その出力振動の平均振動量を所定値と比較することにより過積載の有無を検出し、前記出力振動の平均値における基準値からの変化量を第1の所定値及びこの第1の所定値より大きい第2の所定値と比較することによりそれぞれ異常昇温及び浸水の有無を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段による検出結果を表示する表示手段とを備えたものであってもよい(請求項4)。
【0009】上記のように構成された異常検出装置(請求項4)において、ストレインゲージが取り付けられた軌道近傍表面は、軸受の転動体が直近を通過するとき大ききな歪みを生じ、転動体が遠ざかると歪みは小さくなる。そして歪み量は軸受にかかる荷重に応じて大きくなる。こうして、ストレインゲージは、複数の転動体が次々と通過することにより繰り返し振動する出力を生じ、その振動量は荷重に応じて増減する。従って、ストレインゲージを軸受の軸重センサとして用いることができる。また、ストレインゲージが取り付けられた軌道近傍表面は、軸受への過負荷や軸受の劣化によって温度が上昇する。これによってストレインゲージの温度が上昇し、出力振動の平均値が変化(ドリフト)する。従って、ストレインゲージを軸受の温度センサとしても用いることができる。さらに、ストレインゲージが取り付けられた軌道近傍表面に水が浸入すると、出力振動の平均値は温度上昇による変化の場合と比較して過大な変化を生じる。従って、ストレインゲージを軸受の浸水センサとしても用いることができる。異常検出手段は、出力振動の平均振動量を、所定値(例えば積載限度重量に対応した振動量の値)と比較することにより、過積載の有無を検出する。また、異常検出手段は、出力振動の平均値における基準値(例えば走行開始直後の値)からの変化量を第1の所定値(例えば通常の軸受温度上昇幅と認められる上限値)と比較することにより、異常昇温の有無を検出する。さらに、異常検出手段は上記変化量を第2の所定値(過大と認められる基準値)と比較することにより、浸水の有無を検出する。これらの検出結果は、表示手段によって表示される。
【0010】また、上記大型車用ハブユニットの異常検出装置(請求項1〜4のいずれか)において、異常検出手段による検出結果を記憶する手段を設けてもよい(請求項5)。この場合、異常検出手段の検出結果が記憶手段に残るので、軸受の故障が発生した場合にその検出結果を参照することにより、故障原因を確認することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施形態による大型車用ハブユニットの異常検出装置を示すブロック図である。当該異常検出装置は、歪みを電気抵抗の変化として捉えるセンサであるストレインゲージ1と、このストレインゲージ1に接続され抵抗ブリッジ回路及び増幅回路を有する増幅器2と、増幅器2の出力をディジタル信号に変換するA/Dコンバータ3と、A/Dコンバータ3からの入力を受けるCPU4と、CPU4と入出力接続され、CPU4の出力に基づいて表示を行うモニタ5と、CPU4と接続されたメモリ6と、CPU4と接続された設定スイッチ7とによって構成されている。上記増幅器2、A/Dコンバータ3、CPU4、メモリ6及び設定スイッチ7により異常検出手段が構成されている。また、CPU4及びモニタ5により表示手段が構成されている。
【0012】上記ストレインゲージ1は箔状に形成された抵抗線であって(図2参照)、歪み量に応じて電気抵抗が変化する。ストレインゲージ1の電気抵抗変化は増幅器2内のブリッジ回路によって電圧変化に変換され、この電圧変化が増幅回路によって増幅されたものが増幅器2の出力となる。
【0013】上記モニタ5は、浸水を表示する表示灯5a、異常昇温を表示する表示灯5b、過積載を表示する表示灯5c及びリセットスイッチ5dを備えている。表示灯5a、5b及び5cは、CPU4の出力ポートに接続されており、正常時に消灯(若しくは緑色に点灯)され、異常表示を行う場合に赤色に点灯される。リセットスイッチ5dは、表示灯5a、5b及び5cの赤色点灯状態をリセットするために設けられている。また、モニタ5は、例えば液晶からなる表示部5e及び表示スイッチ5fを有しており、表示スイッチ5fはCPU4の入力ポートに接続され、表示部5eはCPU4の出力ポートに接続されている。表示スイッチ5fを操作することにより、表示部5eに文字データを表示することができる。モニタ5は、例えば運転席のダッシュボードに設置される。なお、メモリ6は図示しないバッテリによって記憶を常に保持することができる。
【0014】図3はストレインゲージ1の取付場所を示す、ハブユニット10の部分断面図である。図において、車軸11の端部外周に装着され、固定輪としての内輪12、転動体(円錐ころ)13及び可動輪としての外輪14を有する軸受15と、内輪12に取り付けられ外輪14と摺接するシール16と、外輪14に取り付けられたハブ17と、軸受15の抜け止め18とによってハブユニット10が構成されている。
【0015】ストレインゲージ1は、内輪12の外周に形成されている転動体13のための軌道12a近傍の内輪表面に貼着されている(なお、リード線の図示は省略している。)。市販されているストレインゲージには表面に耐水コーティングが施されているが、本実施形態で使用するストレインゲージ1は、その耐水コーティングを一部除去したものである。耐水コーティングが一部除去されたストレインゲージ1は、水に濡れると抵抗が大幅に増加する。従って、増幅器2の出力電圧が大幅に増加する特性を示す。この増加の程度は、後述の温度上昇による増加に比べて非常に大きいため、温度上昇による増加との識別が容易である。そこで、増幅器2の出力電圧が基準値から大幅な変化を生じた場合は、ストレインゲージ1が水に濡れたものと考えることができる。
【0016】一方、軌道12a近傍の表面に貼着されたストレインゲージ1には、転動体13がその直近を転動通過するとき大きな歪みが付与され、遠ざかると歪みは小さくなる。これを全ての転動体について繰り返すことで、図4に示すような出力の振動を生じる。振動の最高値及び最低値がそろわないのは、車両走行時の車軸振動の影響等による。ここで、歪み量は転動体13への荷重、すなわち車軸11にかかる重量(軸重)に応じて変化する。従って、出力の平均振動量ΔVは、車体と積荷との総重量に応じて変化し、総重量が重いほど出力の平均振動量ΔVが大きくなる。また、振動する出力の平均値Vmはストレインゲージ1の温度に応じて温度ドリフトを生じ、温度が高いほど平均値が高くなる。例えば、図4の左側の出力波形の平均値はVm1であるが、温度上昇によって全体的に出力が増加方向にドリフトし(右側の出力波形参照)、平均値はVm2となる。
【0017】ストレインゲージ1の出力の上記のような特性から、平均振動量ΔVによって総重量を、出力振動の平均値Vmの変化によって温度変化を、また、出力振動の平均値Vmの大幅な変化によって浸水を、それぞれ検出することができる。すなわち、1個のストレインゲージ1を、軸受の軸重センサ、温度センサ及び浸水センサとして用いることができる。そこで、予め、積載限度重量の荷物を車両に積載した状態で増幅器2の出力の平均振動量ΔVを実測し、その所定値ΔVLを設定スイッチ7により設定する。また、内輪12を通常の軸受温度上昇幅と認められる上限値分昇温させ、昇温の前後での増幅器2の出力を実測して出力変化量を求め、その所定値ΔVTを設定スイッチ7により設定する。さらに、ストレインゲージ1が乾燥している状態と浸水した状態とで増幅器2の出力がどの程度変化するかを複数回実測し、その変化の最小値以下の所定値ΔVW(ΔVW>>ΔVT)を、浸水と認められる値として設定スイッチ7により設定する。
【0018】次に、上記のように構成された大型車用ハブユニットの異常検出装置を搭載した大型車が積み荷を乗せて走行している場合における当該異常検出装置の動作について説明する。図5〜8は、図1のCPU4によって実行される異常検出動作のフローチャートである。図1及び図5において、ストレインゲージ1の出力(抵抗変化)は増幅器2において電圧変化に変換・増幅された後、A/Dコンバータ3によりディジタル値に変換され、CPU4に入力される。CPU4は、ディジタル値に変換されたストレインゲージ1の出力に基づく電圧を所定時間かけて計測して、その平均値Vm、平均振動量ΔV、及び、平均値Vmの基準値からの変化量を求める(ステップ100)。なお、基準値としてスタート直後の平均値Vmが用いられる。従って初回は平均値Vmの前回値がないため、変化量は0とされ、2回目から変化量が求められる。
【0019】続いて、浸水検出表示処理(ステップ200)、異常昇温検出表示処理(ステップ300)及び過積載検出表示処理(ステップ400)が行われ、ステップ100に戻るルーチンが繰り返される。図6、図7及び図8はそれぞれ、浸水検出表示処理の詳細、異常昇温検出表示処理の詳細及び過積載検出表示処理の詳細を示すフローチャートである。
【0020】まず、浸水検出表示処理の詳細について図6を参照して説明する。ステップ201においてCPU4は、増幅器2からA/Dコンバータ3を介して入力される出力振動の平均値の、基準値からの変化量が所定値に達しているか否かの判断を行う。ここでいう所定値とは前述のΔVWである。前述のように、初回は変化量が0であるので、所定値に達していない。従って、CPU4はステップ202へ進み、浸水フラグがセットされているか否かを判断する。浸水フラグとは浸水が検出されたときセットされるフラグである。ここではまだ浸水フラグはセットされていないので、CPU4は次のステップ300(図5)へ進む。
【0021】2回目以降におけるステップ201において、変化量が所定値に達していることが初めて検出された場合は、CPU4はステップ203へ進む。ステップ203においてCPU4は、浸水フラグがセットされているか否かを判断し、この場合はまだ浸水フラグがセットされていないため、ステップ204へ進む。ステップ204において、CPU4は浸水フラグをセットする。続いて、CPU4は、ステップ205において浸水表示を行うと共に、浸水表示をしたことの記憶を行う。具体的には、CPU4は表示灯5aを赤色に点灯させ、かつ、浸水表示をした事実とその日付及び時刻をメモり6に記憶する。その後、CPU4はステップ300へ進む。
【0022】一旦浸水表示が出力された後の3回目以降におけるステップ201において、引き続き変化量が所定値に達している場合は、CPU4はステップ203へ進むが、浸水フラグが既にセットされているため、ステップ300へ進む。従って、ステップ205の処理が重複して実行されることはない。また、一旦浸水表示が出力された後の3回目以降におけるステップ201において、変化量が所定値に達しなくなった場合は、CPU4はステップ202へ進み、浸水フラグがセットされているか否かを判断する。ここでは浸水フラグがセットされているため、CPU4はステップ206へ進み、浸水フラグをリセットする。その後、CPU4はステップ300へ進む。
【0023】次に、異常昇温検出表示処理の詳細について図7を参照して説明する。ステップ301においてCPU4は、増幅器2からA/Dコンバータ3を介して入力される出力振動の平均値の、基準値からの変化量が所定値を超えているか否かの判断を行う。ここでいう所定値とは前述のΔVTである。変化量が所定値を超えていない場合は、CPU4はステップ302へ進み、異常昇温フラグがセットされているか否かを判断する。異常昇温フラグとは異常昇温が検出されたときセットされるフラグである。ここではまだ異常昇温フラグはセットされていないので、CPU4は次のステップ400(図5)へ進む。
【0024】ステップ301において、変化量が所定値を超えている場合は、CPU4はステップ303へ進む。ステップ303においてCPU4は、浸水フラグがセットされているかどうかを判断し、セットされている場合はステップ400へ進む。これは、ステップ301において変化量が所定値を超えていたのは、異常昇温によるものではなく浸水によるものと考えられるからである。浸水フラグがセットされていない場合、CPU4はステップ304へ進む。ここで、CPU4は、異常昇温フラグがセットされているか否かを判断し、この場合はまだ異常昇温フラグがセットされていないため、ステップ305へ進む。ステップ305において、CPU4は異常昇温フラグをセットする。続いて、CPU4は、ステップ306において異常昇温表示を行うと共に、異常昇温表示をしたことの記憶を行う。具体的には、CPU4は表示灯5bを赤色に点灯させ、かつ、異常昇温表示をした事実とその日付及び時刻をメモり6に記憶する。その後、CPU4はステップ400へ進む。
【0025】一旦異常昇温表示が出力された後のステップ301において、引き続き変化量が所定値を超えている場合は、CPU4はステップ303を介してステップ304へ進むが、異常昇温フラグが既にセットされているため、ステップ400へ進む。従って、ステップ306の処理が重複して実行されることはない。また、一旦異常昇温表示が出力された後におけるステップ301において、変化量が所定値を超えなくなった場合は、CPU4はステップ302へ進み、異常昇温フラグがセットされているか否かを判断する。ここでは異常昇温フラグがセットされているため、CPU4はステップ307へ進み、異常昇温フラグをリセットする。その後、CPU4はステップ400へ進む。
【0026】次に、過積載検出表示処理の詳細について図8を参照して説明する。ステップ401においてCPU4は、増幅器2からA/Dコンバータ3を介して入力される出力振動の平均振動量が所定値を超えているか否かの判断を行う。ここでいう所定値とは前述のΔVLである。平均振動量が所定値を超えていない場合は、CPU4はステップ402へ進み、過積載フラグがセットされているか否かを判断する。過積載フラグとは過積載が検出されたときセットされるフラグである。ここではまだ過積載フラグはセットされていないので、CPU4はステップ100(図5)へ進む。
【0027】一方、ステップ401において、平均振動量が所定値を超えている場合は、CPU4はステップ403へ進む。ステップ403においてCPU4は、過積載フラグがセットされているか否かを判断し、この場合はまだ過積載フラグがセットされていないため、ステップ404へ進む。ステップ404において、CPU4は過積載フラグをセットする。続いて、CPU4は、ステップ405において過積載表示を行うと共に、過積載表示をしたことの記憶を行う。具体的には、CPU4は表示灯5cを赤色に点灯させ、かつ、過積載表示をした事実とその日付及び時刻をメモり6に記憶する。その後、CPU4はステップ100へ進む。
【0028】一旦過積載表示が出力された後のステップ401において、引き続き平均振動量が所定値を超えているは、CPU4はステップ403へ進むが、過積載フラグが既にセットされているため、ステップ100へ進む。従って、ステップ405の処理が重複して実行されることはない。また、一旦過積載表示が出力されたステップ401において、平均振動量が所定値を超えなくなった場合は、CPU4はステップ402へ進み、過積載フラグがセットされているか否かを判断する。ここでは過積載フラグがセットされているため、CPU4はステップ406へ進み、過積載フラグをリセットする。その後、CPU4はステップ100へ進む。
【0029】以上のようにして、浸水、異常昇温及び過積載の3情報が、運転席のダッシュボードに設けられたモニタ5に表示される。従って、軸受の異常を早期に察知して、適切な処置をとることにより故障や事故を未然に防止することができる。なお、異常原因を取り除いた後、運転手等がモニタ5のリセットスイッチ5dを操作することにより、赤色に点灯された表示灯5a、5b又は5cを消灯(若しくは緑色に点灯)することができる。
【0030】一方、上記のようにして異常の早期表示を行ったにもかかわらず、軸受の故障が発生した場合には、メモリ6に記憶された異常発生の履歴から故障原因を確認することができる。メモリ6に記憶された異常発生の履歴を見るには、モニタ5の表示スイッチ5fを操作してCPU4に割り込みをかける。CPU4は、これによってメモリ6に記憶されている異常検出の履歴データをモニタ5に出力する。この履歴データは、モニタ5の表示部5eに表示される。従って、例えば過積載が原因となって故障や事故が発生した場合には、過積載の事実とその発生時点を確認することができる。これによって、故障原因を特定することができる。
【0031】なお、上記実施形態においては、浸水の検出を、異常昇温の検出と同様に出力振動の平均値における基準値からの変化量に基づいて行い、変化量の過大さにより異常昇温との識別を行っているが、異常昇温の検出とは異なる処理過程により浸水を検出することもできる。例えば、短時間に所定値以上の大幅な平均値の変化があった場合は、浸水であると判断する処理を行ってもよい。なお、図1に示した異常検出装置の構成においては設定スイッチ7を設けているが、設定する数値を予めメモリ6に記憶させておくことにより、設定スイッチ7を省略することもできる。また、モニタ5の表示・操作に関する構成は種々の態様が可能であることはいうまでもない。例えば、異常表示に関して、表示灯に加えて、音による表示(警報)を行ってもよい。
【0032】
【発明の効果】以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。請求項1の大型車用ハブユニットの異常検出装置によれば、複数の転動体が次々と通過することによりストレインゲージは繰り返し振動する出力を生じ、その振動量は荷重に応じて増減するので、ストレインゲージを軸受の軸重センサとして用いることができる。従って、出力振動の平均振動量を、所定値(例えば積載限度重量に対応した振動量の値)と比較して過積載の有無を検出し、その検出結果を表示することにより、運転手に異常を早期に知らせることができる。
【0033】請求項2の大型車用ハブユニットの異常検出装置によれば、ストレインゲージが取り付けられた軌道近傍表面は、軸受への過負荷や軸受の劣化によって温度が上昇し、これによりストレインゲージの温度が上昇して出力振動の平均値が変化(ドリフト)するので、ストレインゲージを軸受の温度センサとして用いることができる。従って、ストレインゲージの出力に基づく出力振動の平均値における基準値からの変化量を所定値(例えば通常の軸受温度上昇幅と認められる上限値)と比較して異常昇温の有無を検出し、その検出結果を表示することにより、運転手に異常を早期に知らせることができる。
【0034】請求項3の大型車用ハブユニットの異常検出装置によれば、ストレインゲージが取り付けられた軌道近傍表面に水が浸入すると、ストレインゲージの出力に基づく出力振動の平均値は、温度上昇による変化の場合と比較して過大な変化を生じるので、ストレインゲージを軸受の浸水センサとして用いることができる。従って、ストレインゲージの出力に基づく出力振動の平均値における基準値からの変化量を所定値(過大と認められる基準値)と比較して浸水の有無を検出し、その検出結果を表示手段によって表示することにより、運転手に異常を早期に知らせることができる。
【0035】請求項4の大型車用ハブユニットの異常検出装置によれば、1個のストレインゲージを軸受の軸重センサ、温度センサ及び浸水センサとして用いることができるので、過積載の有無、異常昇温の有無、及び、浸水の有無の3異常要素を1個のストレインゲージの出力に基づいて検出し、表示することができる。従って、簡素な構造により各種異常を早期に運転手に知らせることができる。
【0036】請求項5の大型車用ハブユニットの異常検出装置によれば、異常検出手段による検出結果が記憶手段に残るので、故障が発生した場合にその検出結果を参照することにより、故障原因を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による大型車用ハブユニットの異常検出装置を示すブロック図である。
【図2】ストレインゲージの構造を示す平面図である。
【図3】上記ストレインゲージを取り付けた大型車用ハブユニットの部分断面図である。
【図4】上記ストレインゲージの出力変化特性を示すグラフである。
【図5】上記異常検出装置のCPUによって実行される処理のフローチャートである。
【図6】上記異常検出装置のCPUによって実行される処理のうち、浸水検出表示処理の詳細に関するフローチャートである。
【図7】上記異常検出装置のCPUによって実行される処理のうち、異常昇温検出表示処理の詳細に関するフローチャートである。
【図8】上記異常検出装置のCPUによって実行される処理のうち、過積載検出表示処理の詳細に関するフローチャートである。
【符号の説明】
1 ストレインゲージ
2 増幅器
3 A/Dコンバータ
4 CPU
5 モニタ
6 メモリ
7 設定スイッチ
10 ハブユニット
12 内輪(固定輪)
12a 軌道
15 軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】大型車用ハブユニットの軸受固定輪の軌道近傍表面に取り付けられたストレインゲージと、前記ストレインゲージの出力に基づく出力振動の平均振動量を所定値と比較することにより過積載の有無を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段による検出結果を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする大型車用ハブユニットの異常検出装置。
【請求項2】大型車用ハブユニットの軸受固定輪の軌道近傍表面に取り付けられたストレインゲージと、前記ストレインゲージの出力に基づく出力振動の平均値における基準値からの変化量を所定値と比較することにより異常昇温の有無を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段による検出結果を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする大型車用ハブユニットの異常検出装置。
【請求項3】大型車用ハブユニットの軸受固定輪の軌道近傍表面に取り付けられたストレインゲージと、前記ストレインゲージの出力に基づく出力振動の平均値における基準値からの変化量を所定値と比較することにより浸水の有無を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段による検出結果を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする大型車用ハブユニットの異常検出装置。
【請求項4】大型車用ハブユニットの軸受固定輪の軌道近傍表面に取り付けられたストレインゲージと、前記ストレインゲージの出力に基づく出力振動の平均振動量を所定値と比較することにより過積載の有無を検出し、前記出力振動の平均値における基準値からの変化量を第1の所定値及びこの第1の所定値より大きい第2の所定値と比較することによりそれぞれ異常昇温及び浸水の有無を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段による検出結果を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする大型車用ハブユニットの異常検出装置。
【請求項5】前記異常検出手段による検出結果を記憶する手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の大型車用ハブユニットの異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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