説明

大孔径ゼオライトを実質的に含まない塩基性分解用組成物

【課題】原油留分の分解のための新規の触媒組成物が開示される。触媒組成物は、塩基性物質および少なくとも1つの中間体および/または小孔径ゼオライトを含み、そして大孔径ゼオライトをほとんどまたは全く含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
原油は、炭化水素の複合混合物である。精油所において、原油は蒸留工程に付されて、沸点による一次分離を成す。この工程で得られる主要留分の1つが真空軽油(VGO)であり、これは、一般に、分解(クラッキング)工程で、特に流動接触分解(FCC)工程でさらに処理される。分解工程のための他の供給原料としては、とりわけ、水素化処理VGOおよび常圧残油が挙げられる。
【0002】
分解は、それによりVGOのような供給原料中の相対的に大型の分子がより軽い留分に転化される工程である。これは、非酸化条件下でVGOを加熱することにより、いわゆる温度トラッキングにより、実行され得る。触媒の存在下で実行される場合、分解工程はより低い温度で実行され得る。
【0003】
接触分解の主要部分は、今のところ、流動接触分解法、つまりFCC法で実行される。この方法では、触媒物質の小粒子は、リフトガス中に懸濁される。供給原料は、ノズルを通して触媒粒子上に噴霧される。供給原料分子は、触媒粒子上で分解される。リフトガスは、反応器を通して生成物および触媒粒子を運ぶ。反応後、触媒粒子は反応生成物から分離され、ストリッピング区画に送られて、ここで触媒は、できるだけ多くの炭化水素分子を除去するために十分に水蒸気処理に付される。ストリッピング装置の後で、触媒粒子は再生器に移されて、そこで、反応中に形成されたコークスは焼き払われ、そして触媒はさらなる使用のために再生される。
【0004】
標準FCC法における触媒は、酸性ゼオライト、例えばY型ゼオライトまたはY型ゼオライトの安定化形態を含む。一般的には、Y型ゼオライトは、アルミナまたはシリカ−アルミナであり得るマトリックス物質と組合される。触媒は、供給原料の金属汚染物、特にニッケルおよびバナジウムによる中毒に対するその抵抗性を改良するための構成成分をさらに含み得る。実際の分解工程は、ゼオライトの酸性部位で起こる。
【0005】
FCC工程の生成物は、その後、いくつかの留分に分割される。乾性ガスは、周囲温度で圧縮される場合に液化しない低分子量留分である(それゆえに乾性という用語が用いられる)。乾性ガスは、水素、メタン、エタンおよびエテンを含む。液化石油ガス(LPG)留分は、室温ではガス形態であるが、しかし圧縮されると液化する化合物からなる。この留分は、主にプロパン、プロペン、ブタン、ならびにそのモノ−およびジ−オレフィンを含む。
【0006】
ガソリン留分は、nCのおおよその沸点(36℃)から約220℃までの沸点範囲を有し得る。終点は、精製工程の特定の目的を達成するために変更され得る。ガソリン留分は、オットー・エンジンを装備した乗り物のための燃料としての市販ガソリンの基礎を構成する。ガソリン留分のための主要件の1つは、それができるだけ高いオクタン価を有することである。直鎖炭化水素は低オクタン価を有する;分枝鎖炭化水素は、より高いオクタン価を有し、そのオクタン価はアルキル基の数に伴ってさらに増大する。オレフィンは高オクタン価を有し、そして芳香族化合物はさらに高いオクタン価を有する。
【0007】
軽質循環油留分、つまりLCO留分は、燃料油のための基礎を構成する。それは、ガソリン留分の沸点より高く、約340℃より低い沸点を有する留分である。水素化処理は、LCOをディーゼル燃料に転化するために必要とされる。
【0008】
LCOの品質は、その窒素含量、そのイオウ含量およびその芳香族化合物含量に換算し
て、LCO留分が供給原料中に配合されて、これが水素化処理工程でディーゼル燃料に転化され得る比率を決定する。ディーゼル燃料ができるだけ高いセタン価を有することは重要である。直鎖炭化水素は高セタン価を有する;分枝鎖炭化水素であるオレフィンおよび芳香族化合物は低セタン価を有する。
【0009】
約340℃より高い沸点を有する生成物留分は、「残油」またはスラリーと呼ばれる。考え得る最高転化率で操作することが望ましいが、しかし生成物ミックスの組成は、高転化率での操作により悪影響を及ぼされる。例えば、コークス収率は、転化が増大すると増大する。コークスは、触媒上のカーボンおよびプレカーボン沈着物の形成を記述する用語である。吸熱性分解反応にエネルギーを提供するので、ある点までは、コークスの形成は分解工程には不可欠である。しかしながら、コークスの燃焼がその工程が必要とするより多くの熱を生じる場合、炭化水素物質の損失ならびに熱平衡の崩壊を生じるため、高いコークス収率は望ましくない。これらの条件下では、例えば、再生器中に触媒冷却装置を提供することにより、発生される熱の一部を放出すること、あるいは部分燃焼方式で当該工程を操作することが必要であり得る。
【0010】
約340〜約496℃の沸点を有する残油の留分は、重質循環油またはHCOと呼ばれる。
【0011】
概して、FCC生成物流の最も望ましい留分は、軽質オレフィン、ガソリン留分およびLCO留分である。最後の2つの間の所望の分割は、ディーゼルおよびガソリンに対する要求により、ならびに暖房用燃料に対する季節的要求により決定される。
【0012】
高セタン価の必要性のため、軽質循環油留分中の芳香族化合物の量をできるだけ低く保持することが望ましい。それらの沸点に換算して、FCCで形成される任意の芳香族化合物の大部分は、軽質循環油留分になる。したがって、分解工程で形成される芳香族化合物の量を最小限にすることが望ましい。
【0013】
より軽質の芳香族化合物、例えば、ベンゼンおよびトルエンは、生成物流のガソリン留分の一部になる。それらの高オクタン価のため、ガソリンの芳香族成分は望ましいと考えられ得た。しかしながら、芳香族化合物の毒性に対する懸念の漸増のため、芳香族化合物含量が低いガソリン留分を形成することが望ましくなってきた。精油所のガソリン・プールのオクタン価は、FCCからのブチレンおよびイソブタン流のアルキル化により増大され得る。付加的ブタンは、他の精油所工程から必要とされ得る。高品質アルキレートも、望ましい極低い芳香族化合物含量を有し、それにより全体的ガソリン・プールの芳香族化合物含量を低減する。
【0014】
US 2005/0121363(Vierheiligら)は、ヒドロタルサイト様化合物がガソリン中のイオウを低減するための添加剤として用いられるFCC法を開示する。少量のヒドロタルサイト様化合物が、E−catのような大孔径酸性ゼオライトを含む触媒と組合せて用いられる。
【0015】
US 3,904,550(Pine)は、アルミナおよびリン酸アルミニウムで構成される触媒担体を開示する。担体は、水素化脱硫法および水素化脱窒素法に有用な触媒のために用いられる。担体物質は、水素化分解または接触分解に用いるための酸性ゼオライト物質とも組合され得る。
【0016】
FCCガソリン留分のオレフィン系特徴に有害作用を及ぼすことなく、慣用的FCC方法と比較して、軽質循環油留分中の芳香族化合物の形成が低減されるFCC供給原料の分解のために分解工程に用いるための触媒を開発することが望ましい。
【0017】
提唱された如何なる理論とも結びつけずに考えると、本発明は、塩基性部位を有する触媒がラジカルまたは1電子機構により分解反応を触媒する、という発見に基づいている。これは、熱分解で生じるものと同じ機構である。熱分解との差は、触媒の存在が反応速度を増大し、それが、熱分解と比較した場合により低い反応温度で操作することを可能にするという点である。これに対比して、従来のFCC方法は、分解触媒として、酸性物質、一般に酸性ゼオライトを用いる。触媒の酸性部位は、2電子機構により分解反応を触媒する。この機構は、容易に環化されてシクロアルカンを形成する高分子量オレフィンの形成に好都合である。シクロアルカンは次に、大孔径ゼオライトにより触媒される水素移動を介して芳香族化合物と容易に反応する。大孔径ゼオライト、例えば、USY、REYおよび当該技術分野で知られている他のものの量および特性は、この反応の程度を決定する。大孔径ゼオライトは少量でも、有意に、しかしながらLCO品質を犠牲にして、触媒系の活性を増大する。したがって、触媒配合物中の大孔径ゼオライトの量は、好ましくは15%未満、さらに好ましくは10%未満であり、さらに好ましくは5%未満のゼオライトである。最も好ましい触媒組成物は、大孔径ゼオライトを実質的に含まないものである。
【0018】
上述のように、標準FCC法における触媒は、酸性大孔径ゼオライト、例えば、Y型ゼオライトまたはY型ゼオライトの安定化形態を含む。一般的には、Y型ゼオライトは、アルミナまたはシリカ−アルミナであり得るマトリックス物質と組合される。大孔径ゼオライトの存在は、芳香族性を増大することによりFCCガソリン・オクタンを改良する。中間孔径および/または小孔径ゼオライトは、LPG、特にプロピレンの生成を増大するために慣用的FCC触媒に付加されてきた。しかしながら中間孔径および/または小孔径ゼオライトの作用は、大孔径ゼオライトの高芳香族化傾向のため、制限される。
【0019】
FCC触媒配合物の性質が塩基性である場合、反応器からのFCCガソリン留分の品質はオレフィン性で且つ非常に不安定になる。これらのオレフィンは、中間および/または小孔径ゼオライトを用いることにより、LPGに転化され得る。したがって芳香族度を低減された塩基性FCC触媒配合物の一利益は、中間および/または小孔径ゼオライトの一利益と組合されて、許容可能なオレフィン度を有するFCCガソリン留分、許容可能な芳香族度を有するLCO留分、および/またはプロピレン生成増大を生じ得る。
【0020】
さらに、残油留分も、慣用的FCC触媒産出物と比較して低芳香族性である。したがって、残油留分は、反応器に、またはより厳しいFCC操作に、容易に再生利用され得る。残油留分はさらにまた、接触分解前に水素化処理され得るし、あるいは水素化分解装置中で加工処理され得る。
【0021】
したがって、本発明は、一実施形態では、塩基性物質ならびに中間体および/または小孔径ゼオライトを含む触媒組成物であって、大孔径ゼオライトを実質的に含まない触媒組成物である。「触媒組成物」という用語は、本明細書中で用いる場合、FCC工程において接触される触媒とFCC供給原料との組合せを指す。触媒組成物は、1つの型の触媒粒子で構成され得るし、あるいは異なる型の粒子の組合せでもあり得る。例えば、触媒組成物は、主要触媒物質の粒子および触媒添加物の粒子を含み得る。組合せ組成物は、極少量の大孔径ゼオライトを含有すべきであり、好ましくは大孔径ゼオライトを実質的に含まない。
【0022】
本発明の触媒組成物は、触媒対油(CTO)比 10で、700℃より低いライザー出口温度で、少なくとも10%のFCC供給原料の転化率を提供する。転化率は、(乾性ガス)+(LPG)+(ガソリン)+(コークス)=100−(残油)−(LCO)と定義される。好ましくは、転化率は、少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%である。
【0023】
本発明における触媒組成物として用いるのに適した物質としては、塩基性物質(ルイス塩基およびブロンステッド塩基の両方)、空孔を有する固体物質、遷移金属およびリン酸塩が挙げられる。当該物質は低脱水素化活性を有し、水素移動を触媒しない、というのが望ましい。好ましくは、本発明の触媒組成物は、脱水素化活性を有する構成成分を実質的に含まない。例えば、いくつかの遷移金属の化合物は有する脱水素化活性が強すぎる傾向があり、この状況では有用でない、ということが発見されている。それらは必要とされる塩基性特徴を保有し得るが、しかしこれらの物質の脱水素化活性は、望ましくないほど高いコークス収率および多すぎる芳香族化合物の形成を生じる。一般原則として、FCC条件下でそれらの金属状態で存在するかまたは金属状態に転化する傾向がある遷移金属は、有する脱水素化活性が高すぎて、本発明の目的のために有用でない。
【0024】
塩基性物質は、適切な担体上に支持され得る。この目的のために、塩基性物質は、当該技術分野で知られた任意の適切な方法により担体上に沈着され得る。
【0025】
担体物質は、事実上酸性でもあり得る。多くの場合、塩基性物質は担体の酸性部位を被覆して、必要とされる塩基性特徴を有する触媒を生じる。適切な担体物質としては、耐熱性酸化物、特にアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニアおよびその混合物が挙げられる。
【0026】
本発明の触媒組成物中に用いるのに適した塩基性物質としては、アルカリ金属の化合物、アルカリ土類金属の化合物、三価金属の化合物、遷移金属の化合物、ランタニド類の化合物およびその混合物が挙げられる。
【0027】
適切な化合物としては、これらの元素の酸化物、水酸化物およびリン酸塩が挙げられる。
【0028】
本発明の触媒組成物中の塩基性物質として選択される物質の一クラスは、混合金属酸化物、混合金属水酸化物および混合金属リン酸塩である。陽イオン性および陰イオン性層状物質は、混合金属酸化物に対する前駆体として適している。
【0029】
本発明のための好ましい塩基性物質の別の群は、遷移金属の化合物、特に酸化物、水酸化物およびリン酸塩である。強い脱水素化活性を有さない遷移金属の化合物が好ましい。適切な物質の例としては、ZrO、YおよびNbが挙げられる。
【0030】
本発明における塩基性触媒組成物として用いるための物質の好ましいクラスは、陰イオン性粘土、特にハイドロタルサイト様物質である。
【0031】
ハイドロタルサイト様陰イオン性粘土では、ブルーサイト様主層が八面体を有して構築されて、水分子および陰イオン、さらに特定的には炭酸塩イオンが分布される中間層と交互に並んでいる。
【0032】
中間層は、陰イオン、例えば、NO、OH、Cl、Br、I、SO2−、SiO2−、CrO2−、BO2−、MnO、HGaO2−、HVO2−、ClO、BO2−、支柱陰イオン、例えば、V10286−、モノカルボキシレート、例えば、アセテート、ジカルボキシレート、例えば、オキサレート、アルキルスルホネート、例えば、ラウリルスルホネートを含有し得る。
【0033】
「真の」ハイドロタルサイト、すなわち、二価金属としてマグネシウムおよび三価金属としてアルミナを有するハイドロタルサイトが、本発明に用いるために選択される。
【0034】
ハイドロタルサイト様物質(ハイドロタルサイトそれ自体を含めて)の触媒選択性は、ハイドロタルサイトを熱不活化に付すことにより改良され得る。ハイドロタルサイト物質を熱不活性化するための適切な方法は、空気または水蒸気中で、数時間、例えば、5〜20時間、300〜900℃の温度で、物質を処理することを包含する。加熱は、層状構造を崩壊させ、非晶質物質を形成させる。加熱を継続すると、Mg2+部位のいくつかがAl3+で充填されるドープ化ペリクレース構造が形成される。言い換えれば、触媒物質の選択性を改良することが見出されている空孔が形成される。
【0035】
極端な熱処理は、この物質をペリクレースおよびスピネル構造に分離させる。スピネル構造は、触媒として不活性である。有意のスピネル形成は、900℃で4時間ハイドロタルサイト物質を加熱後に観察されている。
【0036】
別の好ましいクラスの塩基性物質は、リン酸アルミニウムである。
【0037】
上記物質の活性および選択性は、これらの物質に別の金属をドープすることにより調整され得る。概して、ほとんどの遷移金属はこの状況で用いるのに適したドーパントである。注目に値する例外としては、脱水素化活性を有する遷移金属、例えば、ニッケル、ならびにプラチナ群金属が挙げられる。FeおよびMoも適していないことが判明している。
【0038】
好ましいドーパントとしては、元素の周期表のIIb族、IIIb族、IVb族からの金属陽イオン、および希土類金属が挙げられる。特に好ましいドーパントとしては、La、W、Zn、Zrおよびその混合物が挙げられる。
【0039】
本発明の触媒組成物は酸性物質をさらに含み得るが、但し、触媒の全体的特徴は依然として主に塩基性である。「主に塩基性」という用語は、物質の部位の約40%未満が酸性である、ということを意味するために本明細書中で用いられる。これは、当該物質の全体的特徴がこの条件下で酸性になる傾向があるためである。酸性部位を有する物質の存在は、触媒の全体的活性を改良するという点から見て望ましい。
【0040】
シリカ−マグネシアは、塩基性および酸性部位の両方を有する物質の一例である。
【0041】
酸性部位を有する適切な主要塩基性物質としては、シリカゾル、金属ドープシリカゾル、ならびにシリカと他の耐熱性酸化物のナノスケール複合体が挙げられる。
【0042】
ゼオライトは、多数のさらに小さい長方形の溝により相互連結され得る多数の規則性小キャビティにより特性化される均一結晶構造を有する結晶アルミノシリケートである。相互連結された均一サイズのキャビティおよび溝のネットワークからなるこの構造に基づいて、結晶ゼオライトは、より大きなサイズの分子を拒絶しながら、一定の明確に定義された値より低いサイズを有する吸収分子を受容し得る、ということが発見された。そしてこの理由のために、それらは「分子篩」として知られるようになってきた。この特徴的構造はさらにまた、特にある型の炭化水素転化に関して触媒的特性をそれらに与える。
【0043】
中間および小型孔径ゼオライトは、0.7nm以下の有効孔開口直径、10以下の成員の環、ならびに31未満で且つ2より大きい制約指数を有することにより特性化される。本発明において有用な中間および/または小孔径ゼオライトとしては、ZSMファミリーのゼオライトを包含し、例としては、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−38、ZSM−48およびその他の同様の物質が挙げられるが、これらに限定されない。その他の適切な中程度またはより小さな孔径のゼオライトとしては、フェリエライト、エリオナイトおよびST−5、ITQならびに類似の物質
が挙げられる。ZSM−5として知られている結晶アルミノシリケート・ゼオライトは、特に、米国特許第3,702,886号(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されている。ZSM−5結晶アルミノシリケートは、5より大きいシリカ対アルミナモル比により特性化され、そしてより精確には、以下の一般式による無水状態である:
[0.9±0.2MO2/n:Al:>5SiO
【0044】
(式中、原子価nを有するMは、アルカリ金属陽イオンおよび有機アンモニウム陽イオンの混合物、特にナトリウムおよびテトラアルキルアンモニウム陽イオンの混合物からなる群から選択され、このアルキル基は、好ましくは2〜5個の炭素原子を含有する)。上記の状況で用いられるような「無水」という用語は、分子水が式中に含まれない、ということを意味する。概して、ZSM−5ゼオライトに関するSiO対Alのモル比は広範に変わり得る。例えば、ZSM−5ゼオライトはアルミニウム無含有であり得るが、この場合、ZSM−5はアルミニウムの不純物のみを含有するシリカのアルカリ混合物から形成される。しかしながらZSM−5として特性化されるゼオライトは全て、ゼオライトのアルミニウム含量に関係なく、米国特許第3,702,886号に記述された特徴的X線回析パターンを有する。
【0045】
本発明に有用な中間および/または小孔径ゼオライトを製造するために、任意の既知の方法が用いられ得る。結晶アルミノシリケートは、概して、酸化ナトリウム、アルミナ、シリカおよび水を含む酸化物の混合物から調製されてきた。さらに近年、粘土および共沈アルミノシリケートゲル(脱水形態で)が、反応系におけるアルミナおよびシリカの供給源として用いられてきた。
【0046】
高い耐磨耗性を有する触媒の調製のための適切な方法は、米国特許第6,589,902号(Stamiresら)(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されている。
【0047】
本発明の触媒組成物は、約1〜約75重量%の少なくとも1つの中間および/または小孔径ゼオライトを含有すべきであり、約5重量%より多いのが好ましく、約10重量%より多いのがさらに好ましい。触媒組成物は、好ましくは、2つの異なる粒子を含む:すなわち、1つは塩基性物質を含み、そして他方は中間および/または小孔径ゼオライトを含む。
【0048】
本発明の触媒組成物は、好ましくは、相対的に高い比表面積を有して、慣用的FCC触媒のものより低いそれらの活性を補償する。好ましくは、触媒組成物は、600℃で2時間蒸気不活性化後にBETにより測定した場合、少なくとも60m/g、好ましくは少なくとも90m/gの比表面積を有する。
【0049】
本発明の別の態様は、FCC反応条件下でFCC供給原料を本発明の触媒組成物と接触するステップを包含するFCC工程である。FCC供給原料は、VGO、水素化処理VGO、常圧残油、およびその混合物であり得る。「FCC工程」という用語は、本明細書中で用いる場合、慣用的FCC工程に関して典型的である工程状態を指す。特定的には、ライザー出口の温度は約600℃未満、好ましくは550℃未満である;全圧は2bar未満であり、水素分圧は全圧よりさらに低い。転化率は、概して70%未満である。
【0050】
FCC工程という用語は、100bar以上のオーダーの水素圧上昇を必要とする水素化処理工程を包含しない、と理解される。FCC工程という用語は、約600℃より高い温度で実行されて、90%より多い、概して100%(に近い)の転化率を生じる水蒸気熱分解も包含しない。
【実施例】
【0051】
米国特許第6,589,902号に記載された手順に従って、ハイドロタルサイトを調製した。Mg対Al比は、4:1であった。600℃で1時間、ハイドロタルサイトを焼成した。
【0052】
ハイドロタルサイト、ならびに60重量%ハイドロタルサイトおよび40重量%ZSM−5の配合物の触媒活性および選択性を、マイクロ活性反応器で評価した。VGOを供給原料として用いた。試験反応はすべて、550℃の接触温度で実施した。
【0053】
VGOの特徴
a)Simdist℃
5重量% 345
10重量% 365
20重量% 391
30重量% 409
40重量% 425
50重量% 445
60重量% 462
70重量% 488
80重量% 515
90重量% 548
95重量% 570
b)飽和化合物、重量% 63.7
c)モノ−芳香族化合物、重量% 16.3
d)ジ−芳香族化合物、重量% 10.5
e)ジ+芳香族化合物/極性化合物、重量% 9.5
f)イオウ、ppm重量 6400
g)窒素、ppm重量 1170
h)CCR、重量% 0.4
【0054】
反応生成物を蒸留に付した。軽質循環油留分(LCO留分)を分離し、較正ガスクロマトグラフィーを用いて、総芳香族化合物含量に関して分析した。酸化条件下で再生器の流出物のCOおよびCO含量を分析することにより、コークス収率を確定した。
【0055】
以下の表は、ZSM−5の付加が、残油収率を犠牲にして、コークス、ガソリンおよびLCO収率を低減する、ということを示す。LPG収率の増大は、乾性ガス組成物中の変化と同様に、有意である(136%)。収率は、供給原料の重量%として表す。さらに、ZSM−5の存在は、慣用的触媒組成物におけるように大孔径ゼオライトを配合することに対比して、LCOの芳香族度に小さな影響を及ぼすだけである。LCO留分の重量%として、LCO組成物を表す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕著な主要塩基性物質および少なくとも1つの中間体または小孔径ゼオライトを含むFCC触媒組成物であって、15重量%未満の大孔径ゼオライトを含む触媒組成物。
【請求項2】
10重量%未満の大孔径ゼオライトを含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
5重量%未満の大孔径ゼオライトを含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
大孔径ゼオライトを実質的に含まない、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記塩基性物質が脱水素活性または水素移動活性を有する構成成分を実質的に含まない、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項6】
10のCTO比および600℃より低い接触温度で少なくとも30%のFCC供給原料の転化を提供するのに十分な触媒活性を有する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記塩基性物質がアルカリ金属の化合物、アルカリ土類金属の化合物、三価金属の化合物、遷移金属の化合物およびその混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記塩基性物質が担体物質上に支持される、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記塩基性物質が遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属またはその混合物の酸化物、水酸化物またはリン酸塩である、請求項7に記載の触媒組成物。
【請求項10】
前記塩基性物質がアルカリ金属化合物を含む、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項11】
前記塩基性物質がアルカリ土類金属化合物を含む請求項9記載の触媒組成物。
【請求項12】
前記塩基性物質が遷移金属の化合物を含む、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項13】
前記遷移金属化合物がZrO、Y、Nbおよびその混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の触媒組成物。
【請求項14】
前記塩基性物質が混合金属酸化物である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項15】
前記塩基性物質がハイドロタルサイトである、請求項14に記載の触媒組成物。
【請求項16】
前記塩基性物質がリン酸アルミニウムである、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項17】
前記塩基性物質が金属陽イオンをドープされる、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項18】
前記ドーパント金属陽イオンがIIb族、IIIb族、IVb族の金属、希土類金属およびその混合物から選択される、請求項17に記載の触媒組成物。
【請求項19】
前記ドーパント金属がLa、Zn、Zrおよびその混合物からなる群から選択される、請求項18に記載の触媒組成物。
【請求項20】
前記担体が耐熱性酸化物である、請求項8に記載の触媒組成物。
【請求項21】
前記担体がアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニアおよびその混合物から選択される、請求項20に記載の触媒組成物。
【請求項22】
酸性部位を有する物質をさらに含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項23】
酸性部位を有する前記物質がシリカゾル、金属ドープシリカゾル、ならびに他の耐熱性酸化物を伴うシリカのナノスケール複合体からなる群から選択される、請求項22に記載の触媒組成物。
【請求項24】
前記少なくとも1つの中間体または小孔径ゼオライトがZSMファミリーのゼオライトから選択される、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項25】
前記ZSMファミリー・ゼオライトがZSM−5である、請求項24に記載の触媒組成物。
【請求項26】
FCC供給原料をFCC反応条件下で請求項1記載の触媒組成物と接触するステップを包含する、FCC方法。
【請求項27】
前記FCC供給原料が真空軽油、水素化処理真空軽油、常圧残油およびその混合物からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
約400〜約600℃の範囲の接触温度で実行される請求項27記載の方法。

【公表番号】特表2011−520586(P2011−520586A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510744(P2010−510744)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056564
【国際公開番号】WO2008/148684
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(509129255)
【Fターム(参考)】