説明

大径管の連続補修方法

【課題】 特定巾寸法で大径になされた管が連接されて形成される管路に於いて、その使用中経時的に生ずる特定範囲に於ける部分的な補修作業を効率良く解決するための提案。
【解決手段】 特定巾寸法で大径となされたユニット管の多数が連接して形成される管路を、複数のユニット管を跨いで連続補修するさい、補修を行わんとする一定距離隔てたユニット管の外周個所に対し、一対のシールリングを取り付けると共に、これら一対のシールリング間に於けるユニット管外周囲空間を、適当長さのステー部材と適当外径の支骨部材とを交互に連結しながら複数の補修セクションを形成し、当初両端部に於ける一対のシールリングをユニット管外周へ溶接固定させ、このあと順次、各補修セクション毎に半裁した円弧状の重ね板を上記ステー部材と支骨部材を介し、ユニット管外周へ一定間隙下に密閉被覆させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性ガスや油などの流動を案内してこれらを離れた場所へ移送するものとなされた大径管の連続補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
管路は部分的に消耗して減肉が生じたり孔が明いたりすることがある。このような場合は、減肉個所や孔の明いた個所に当て板を溶接して補強し若しくは孔を封鎖するような補修が行われる(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−80392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
可燃性ガスや油などの物質の流動を案内する管路において、当て板を溶接する個所の管壁の肉が過度に薄いとかその管壁に孔が明いているような場合には、当て板の溶接熱が管路内の物質又は管路内から漏れ出た物質に引火して、爆発の発生することがある。これに対処するため、当て板を溶接するときには、管路内の可燃性ガスや油などを排出した後、その管路の使用を停止する。
【0004】
管路の初期の消耗では当て板を施すべき範囲は一般に狭いものであるため補修に要する管路の使用停止期間は短くて済むのであるが、管路の消耗が広い範囲で進行したときは、管路自体を部分的に新しいものに取換えることが必要となるのであり、このようになると管路が大径管であるような場合は特にその補修に要する管路の使用停止期間が長くなる。例えば、管路の補修個所の直径が2m〜3mで長さが10m程度になると、補修に要する管の使用停止期間は凡そ15日〜20日にも及ぶことがある。
【0005】
一方、補修すべき管路が例えば発電用燃料として使用される可燃性ガスなどを送給するものである場合には、管路の長い使用停止は許されないのであり、出来るだけその使用停止期間を短くなすことが要求される。
【0006】
本発明は斯かる要求に鑑みてなされたものであって、即ち、特定巾寸法で大径となされたユニット管の多数が連接して形成された管路を補修するさいに必要とされる管路の使用停止期間を大幅に短縮させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る管の連続補修方法は、請求項1に記載したように、特定巾寸法で大径となされたユニット管の多数が連接して形成される管路を、複数のユニット管を跨いで連続補修するにさいし、補修を行わんとする一定距離隔てたユニット管の外周個所に対し、一対のシールリングを取り付けると共に、これら一対のシールリング間に於けるユニット管外周囲空間を、適当長さのステー部材と適当外径の支骨部材とを交互に連結しながら複数の補修セクションを形成し、当初両端部に於ける一対のシールリングをユニット管外周へ溶接固定させ、このあと順次、各補修セクション毎に半裁した円弧状の重ね板を上記ステー部材と支骨部材を介し、ユニット管外周へ一定間隙下に密閉被覆させるようになす。
【0008】
さらに具体的には次のようになすのであって、即ち、請求項2に記載したように、上記した一対のシールリングを当初の溶接時に限り管路内の流体流れを停止させて行ったあとは、他の補修セクションの補修作業時には管路内の流体流れを停止させないで実施するのである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば次のような効果が得られる。
即ち、請求項1記載のものによれば、可燃性ガスなどの流動される大径管の補修個所である一定長さ個所の直径及び長さが数メートル或いはそれ以上に及ぶ場合であっても、その補修においては、シールリングの取付け時に限り管路の使用を停止するだけで良く、あとは管路内の可燃性ガスなどの流れを阻止したりすることなく効率的な補修を可能にすることができるのであり、したがって補修すべき管径が大きいほど、またその長さ範囲が長くなればなるほど従来方法に較べて、短期間でしかも安全且つ安価な補修作業を遂行することができるものとなる。
【0010】
実例で示すと、補修すべき管路の管径が凡そ2mで且つその長さが凡そ10m程度である場合において、従来作業では管路の使用停止期間としては凡そ15日〜20日ほど要していたものが、本発明によれば僅か1日程度で済むものとなるのであり、経済コスト効果が抜群となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明に係る大径管の連続補修方法を示す概略説明図、図2は前記補修方法で使用されるシールリングを示す斜視図、図3は前記補修方法の進行状態を示す概略説明図である。
【0012】
図1において、1は直径が凡そ2m程度或いはそれ以上になされた大径管からなる管路であり、元来一定巾寸法のものを多数連設溶接して形成されている。この管路1は任意な流体物質を案内するものであるが、ここでは、製鉄用高炉から排出される可燃性ガスを発電用燃料として発電所まで送給するものとなされている。図示例で2は管路1の途中に形成される曲がり部を示すもので、これは水封弁として機能する。
ここで、1aは直管を形成するユニット管、1bは上記曲がり部を形成する曲管ユニットである。
【0013】
製鉄用高炉から排出される可燃性ガスが上記管路内を流動すると、とりわけ曲がり部2の管路壁面は経時的に比較的早く消耗するのであり、この消耗が進行すると、曲がり部2のほぼ全体の管路壁面が減肉状態となって局所的に或いは連続的に孔が明いたりする状態となる。
【0014】
このような状態の減肉管路が複数のユニット管1bを跨いだ広い範囲で発生すると、本願発明では以下の手順でその補修作業を実施するのである。
【0015】
実施例の図面では上記管路の肉厚測定で3mm以下のものが曲がり部2で多数発生していることが解り、この曲がり部2の全域範囲Hを全面補修する例である。
まず、全面補修範囲個所Hの始端と終端をなす特定位置p1、p2の管路外周面に対し、夫々れ一対のシールリング3a、3bを締結手段を介して装着する。
各シールリング3a、3bは図2に示すように2つの略半円環状部材4、4からなるもので全体として円環状となされており、略半円環状部材4のそれぞれは例えば巾100mmで厚さ6mm程度の帯板をユニット管1bの外周に一定の間隙を以って適合する寸法で屈曲したものとなされている。
【0016】
上記各シールリング3a、3bを装着するさいは、例えば、2つの略半円環状部材4、4のそれぞれの端部にL型金具5、5を固着し、これら2つの略半円環状部材4、4をクレーン車などで所要位置に吊り込んで管路外周面に外嵌状に配置し、次に対向した2つのL型金具5、5にネジ棒部材6及びナットを係着することにより管路外周面に外嵌状に締結固定させる。このさい、2つの略半円環状部材4、4の突き合わせ部は管路1の水平直径位置に位置させるのが、後の溶接作業を容易化させる上で好ましい。
【0017】
次に管路2を不使用状態となすのであり、即ち管路2内の可燃性ガスを排除するには、例えば管路2内に窒素ガスを供給するのであり、これにより可燃性ガスは窒素ガスで置換される。而して、この状態の下で上記特定位置p1、p2の各シールリング3a、3bの全周囲を管路外周面に溶接するのであり、この溶接に欠陥がないことは適当な検査手段(浸透探傷試験など)で確認する。
【0018】
本発明では上記のシールリング3a,3bの溶接固定が終了すると、管路2内に於ける可燃性ガスの流入を復帰させて、全体的な管路を元の使用状態に戻すのであり、あとは上記管路の復帰状態下で次の如き作業に入る。
一対のシールリング3a、3b間を複数の補修セクション(図示例では20箇所)に区分けし各セクションを、適当長さ寸法のステー部材7を使用して支骨部材8をユニット管1bの外周面に取付けるのである。ここで、ステー部材7及び支骨部材8はシールリング3a、3bの何れか片側からユニット管1bの外周面へ一定の間隙下に相互に溶接しながら取付けるのである。
【0019】
上記に於ける各支骨部材8はシールリング3a(3b)と同様に略半円環状部材のものを対合させる構成であり、隣接間距離sが例えば凡そ0.5m〜2.0m程度となるように決定する。このさい、装着位置にずれなどを生じさせないようにするためには適宜木製楔9を下部ユニット管との間に挟み込んでおくようにする。
【0020】
而して、各補修セクションに於ける支骨部材8の配置が終了すると、各支骨部材8間を適宜必要長さ寸法になされたステー部材7を介して相互に溶接して安定した固定状態に結合するのであり、そのさい楔9は取除いて行われる。
【0021】
これにより、補修区間の始端と終端のシールリング3a、3b間に於けるユニット管1bの外周面の空間は、ステー部材7と支骨部材8とで交互に連結された複数の補修セクションm1,m2,m3,・・・に分割形成されるものとなるのである。
【0022】
次に図3に示すように、上記各補修セクションm1,m2,m3,・・・に対し半裁した円弧状の重ね板10を、ユニット管1bの両サイドから被覆するように当接させ、夫々れを溶接固定するのである。
【0023】
上記に於ける溶接作業で各補修セクションsに配置される重ね板10は、隣接する重ね板の対向個所が突き合わせた状態に近接されて溶接されることが溶接終了後のシール性や外観を良好となす上で好ましい。
【0024】
而して、上記による重ね板10の被覆作業が終了すると、必要なシール性の検査を行うのであり、これにはユニット管1bの外周と被覆された重ね板10との間隙に窒素ガスを封入して行い、機密性が確保されることにより補修作業を終了させる。
【0025】
上記した補修によれば、初めシールリング3a、3bを既存の配管上へ溶接を行う時間中、管路1内の流体流れを停止するだけで良いのであり、従って管路1の使用停止期間が大幅に短縮され、しかも全体的に大掛かりの補修を短期間に効率良く行うことができるものとなる。なお、上記実施例では曲管路の補修について説明したが、直管路の補修についても同様に実施可能であって、本発明の実施の範囲内とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る補修セクションの構成を示す概略説明図である。
【図2】前記補修方法で使用されるシールリングを示す斜視図である。
【図3】前記補修セクションに於ける補修作業を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 管路
1a ユニット管
3a シールリング
3b シールリング
8 支骨部材
9 ステー部材
10 重ね板
m1,m2,m3,・・・ 補修セクション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定巾寸法で大径となされたユニット管の多数が連接して形成される管路を、複数のユニット管を跨いで連続補修するさい、補修を行わんとする一定距離隔てたユニット管の外周個所に対し、一対のシールリングを取り付けると共に、これら一対のシールリング間に於けるユニット管外周囲空間を、適当長さのステー部材と適当外径の支骨部材とを交互に連結しながら複数の補修セクションを形成し、当初両端部に於ける一対のシールリングをユニット管外周へ溶接固定させ、このあと順次、各補修セクション毎に半裁した円弧状の重ね板を上記ステー部材と支骨部材を介し、ユニット管外周へ一定間隙下に密閉被覆させるようになすことを特徴とする大径管の連続補修方法。
【請求項2】
上記した当初一対のシールリングの溶接時に限り管路内の流体流れを停止させ、他の補修セクションの補修作業時は管路内の流体流れを停止させないで実施することを特徴とする請求項1記載の大径管の連続補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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