説明

大環状キナーゼ阻害剤

式I:


(I)
[式中、R、R、R、R、およびRは本明細書で定義されたものである]
に従った構造を有する化合物は、キナーゼ阻害剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キナーゼ阻害剤として有用な化合物、並びにその製造方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質キナーゼ(「キナーゼ」)は、リン酸供給源としてのアデノシン三リン酸(「ATP」)を用いて他のタンパク質をリン酸化する酵素の大きなファミリーを構成する。これらは、その標的タンパク質において、それぞれセリンおよびチロシン残基におけるヒドロキシル基をリン酸化する、セリンキナーゼおよびチロシンキナーゼを含む。キナーゼはまた、二重機能を発揮することもでき、それはセリンおよびチロシン残基をリン酸化することを意味する。標的タンパク質は、酵素、膜チャネル、または他のタンパク質でありうる。
【0003】
細胞の活動は、しばしば外部のシグナル分子(例えば、ホルモンまたは分裂促進因子)によって制御され、細胞表面での同族受容体への結合によって、様々な細胞内事象が刺激または阻害される。最初のシグナル分子−受容体相互作用は、細胞内の別のタンパク質相互作用のシグナルカスケード、または細胞−シグナル経路を引き起こし、それはタンパク質のキナーゼ媒介リン酸化(シグナル伝達)に関与することが多い。したがって、分子レベルで、細胞の活動は、関連するキナーゼおよび他のタンパク質(例えば転写因子)のリン酸化(および脱リン酸化)によって制御される。そのように制御される細胞の活動には、細胞増殖、細胞分裂、およびアポトーシスが含まれる。
【0004】
好ましくない細胞増殖の多くの疾患(例えば、癌、乾癬、再狭窄)は、シグナルカスケードにおける破壊の特徴を有しており、それによって細胞増殖が抑制されなくなる。多くの場合、該破壊は、シグナルカスケードにおいて上流に位置しているタンパク質における単一変異から生じ、それは下流の多数のキナーゼの制御に作用する。したがって、その作用されるキナーゼの阻害は、癌の治療のための基礎として発展してきた。Sausville et al., Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 2003, 43, 199-231, 「Signal Transduction-Directed Cancer Treatments」.
【0005】
レゾルシン酸ラクトン(「RAL」)は、レゾルシン酸残基を組み入れた14員ラクトン環を有する天然物のファミリーであり、その例は、ハイポセマイシン(hypothemycin):
【化1】

である。
【0006】
RAL(およびその半合成もしくは合成類縁体もしくは誘導体)がキナーゼ阻害剤であり、それゆえ、異常なキナーゼ活性の特徴を有する疾患の治療に有用であるという開示がいくつか存在する。例えば、Giese et al., US 5,795,910 (1998); Chiba et al., US 2004/0224493 A1 (2004); およびSanti et al., US 2006/0079494 A1 (2006)を参照せよ。
【0007】
本発明は、有効なキナーゼ阻害剤であって、キナーゼの阻害による治療の影響を受けやすい疾患または症状を治療するのに有用である、RAL類縁体とみなされうる新規化合物を提供する。
【0008】
発明の概要
一つの態様において、本発明は、式I:
【化2】

(I)
[式中、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、またはC−Cアルキニルであり;
は、H、ハロゲン、ヒドロキシル、保護ヒドロキシル、OR12、SR12、NR1213、−X(CH−R14であるか、またはヒドロキシル、保護ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、保護アミノ、もしくは−X(CH−R14で適宜置換されたアルキルであり;その中で
12およびR13の各々は独立して、Hまたは適宜置換された脂肪族基、適宜置換された脂環式基、適宜置換されたヘテロ脂環式基、適宜置換されたアリール、または適宜置換されたヘテロアリール部分またはNもしくはS保護基であるか、あるいはR12およびR13は一緒になって、1〜4個の炭素原子および1〜3個の窒素もしくは酸素原子を含む飽和もしくは不飽和環を形成し;R12およびR13の各々は、ヒドロキシル、保護ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、保護アミノ、−NH(アルキル)、アミノアルキル、またはハロゲンの一つ以上で適宜置換されており;
およびXは各々独立して、不存在、酸素、NH、または−N(アルキル)であるか、あるいは、X−R14は一緒になって、Nとなるか、またはヘテロ脂環式部分となり;
pは、1〜10(両端を含む)の整数であるが、但し、XおよびXの少なくとも一つが不存在である場合のみ、pは1であってもよく;並びに
14は、Hもしくはアリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、もしくはアルキルヘテロアリール部分であるか、または−(C=O)NHR15、−(C=O)OR15、もしくは−(C=O)R15であり、R15の各々は独立して、Hまたは脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール、またはヘテロアリール部分であるか;あるいはR14は、−SO(R16)であり、R16は脂肪族部分であり;R14、R15、およびR16のうち一つ以上は、一つ以上のヒドロキシル、保護ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、保護アミノ、−NH(アルキル)、アミノアルキル、またはハロゲンで適宜置換されており;
は、H、ヒドロキシル保護基、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、CO(C−Cアルキル)、CO(C−Cアルケニル)、またはCO(C−Cアルキニル)であり;
は、Hまたはハロゲンであり;並びに
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、もしくはC−Cアルキニルであるか、あるいはRおよびRは一緒になって、(CHを形成し、nは、1、2、3、または4である]
によって表される構造を有する化合物、並びにその医薬的に許容されるエステル、塩、溶媒和物、および水和物を提供する。
【0009】
別の態様において、本発明は、本発明の化合物の治療上の有効量を患者に投与することを特徴とする、少なくとも一つのキナーゼの活性が異常に上昇した細胞の増殖の特徴を有する疾患の患者の治療方法を提供する。好ましくは、そのように治療される疾患は、メラノーマ、大腸癌、または乳癌、特にメラノーマまたは大腸癌である。
【0010】
別の態様において、本発明は、該細胞を本発明の化合物に接触させることを特徴とする、少なくとも一つのキナーゼの活性が異常に上昇した細胞の増殖の阻害方法を提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、該キナーゼを本発明の化合物に接触させることを特徴とする、活性部位システイン残基を有するキナーゼの阻害方法を提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、少なくとも一つのキナーゼの活性が異常に上昇した細胞の増殖の特徴を有する疾患治療剤の製造のための、本発明の化合物の使用を提供する。
【0013】
発明の詳細な説明
定義
「脂肪族基」とは、特定の数の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和、非芳香族炭化水素部分(例えば、「C脂肪族基」、「C−C脂肪族基」、または「C〜C脂肪族基」であり、後の2つの用語は、1〜5個の炭素原子を有する脂肪族部分について同義である)を意味するか、または炭素原子の数が特定されていない場合、1〜4個の炭素原子(不飽和脂肪族部分の例では2〜4個の炭素)を意味する。
【0014】
「アルキル」とは飽和脂肪族部分を意味し、炭素原子の数を示すために同様の慣行(convention)が適用されうる。例として、C−Cアルキル部分には、これらに限らないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、t−ブチル、1−ブチル、2−ブチルなどが含まれる。
【0015】
「アルケニル」とは、少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を有する脂肪族部分を意味し、炭素原子の数を示すために同様の慣行が適用されうる。例として、C−Cアルケニル部分には、これらに限らないが、エテニル(ビニル)、2−プロペニル(アリルまたはプロパ−2−エニル)、cis−1−プロペニル、trans−1−プロペニル、E−(またはZ−)−2−ブテニル、3−ブテニル、1,3−ブタジエニル(ブタ−1,3−ジエニル)などが含まれる。
【0016】
「アルキニル」とは、少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を有する脂肪族部分を意味し、炭素原子の数を示すために同様の慣行が適用されうる。例として、C−Cアルキニル基には、エチニル(アセチレニル)、プロパルギル(プロパ−2−イニル)、1−プロピニル、ブタ−2−イニルなどが含まれる。
【0017】
「脂環式基」とは、各環が3〜8個(好ましくは、3〜6個)の炭素原子を有する1〜3個の環を有する飽和もしくは不飽和、非芳香族炭化水素部分を意味する。「シクロアルキル」とは、各環が飽和した脂環式部分を意味する。「シクロアルケニル」とは、少なくとも一つの環が少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を有する脂環式部分を意味する。「シクロアルキニル」とは、少なくとも一つの環が少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を有する脂環式部分を意味する。例として、脂環式部分には、これらに限らないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、およびアダマンチルが含まれる。好ましい脂環式部分は、シクロアルキル類、特にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルである。
【0018】
「ヘテロ脂環式基」とは、その少なくとも一つの環において、3つまで(好ましくは1〜2個)の炭素が、N、O、またはSから独立して選択されるヘテロ原子で置換されている脂環式部分を意味し、この場合、NおよびSは適宜酸化されていてもよく、Nは適宜四級化されていてもよい。同様に、「ヘテロシクロアルキル」、「ヘテロシクロアルケニル」、および「ヘテロシクロアルキニル」とは、それぞれ、その少なくとも一つの環がそのように改変されているシクロアルキル、シクロアルケニル、またはシクロアルキニル部分を意味する。ヘテロ脂環式部分の例には、アジリジニル、アゼチジニル、1,3−ジオキサニル、オキセタニル、テトラヒドロフリル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロチオピラニルスルホン、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニルスルホキシド、チオモルホリニルスルホン、1,3−ジオキソラニル、テトラヒドロ−1,1−ジオキソチエニル、1,4−ジオキサニル、チエタニルなどが含まれる。
【0019】
「アルコキシ」、「アリールオキシ」、「アルキルチオ」、および「アリールチオ」とは、それぞれ、−O(アルキル)、−O(アリール)、−S(アルキル)、および−S(アリール)を意味する。例は、それぞれ、メトキシ、フェノキシ、メチルチオ、およびフェニルチオである。
【0020】
「ハロゲン」または「ハロ」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0021】
「アリール」とは、各環が3〜7個の炭素原子を有しており、少なくとも一つの環が芳香族である、単環式、二環式、または三環式環構造を有する炭化水素部分を意味する。環構造中の環は、互いに縮合(例えばナフチル)するか、または互いに結合(例えばビフェニル)していてもよく、非芳香族環(例えばインダニルまたはシクロヘキシルフェニル)に縮合または結合していてもよい。さらなる例として、アリール部分には、これらに限らないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナントリル、アントラセニル、およびアセナフチルが含まれる。
【0022】
「ヘテロアリール」とは、各環が3〜7個の炭素原子を有しており、少なくとも一つの環が、N、O、またはSから独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を含む芳香族環である、単環式、二環式、または三環式環構造を有する部分を意味し、この場合、NおよびSは適宜酸化されていてもよく、Nは適宜四級化されていてもよい。このような少なくとも一つのヘテロ原子を含む芳香族環は、他の型の環と縮合(例えばベンゾフラニルまたはテトラヒドロイソキノリル)するか、または他の型の環と直接結合(例えばフェニルピリジルまたは2−シクロペンチルピリジル)していてもよい。さらなる例として、ヘテロアリール部分には、ピロリル、フラニル、チオフェニル(チエニル)、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、N−オキソピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル(isoquinolynyl)、キナゾリニル、シンノリニル、キノザリニル(quinozalinyl)、ナフチリジニル、ベンゾフラニル、インドリル、ベンゾチオフェニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フェノチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ジベンゾフラニル、カルバゾリル、ジベンゾチオフェニル、アクリジニルなどが含まれる。
【0023】
例えば「置換もしくは無置換」または「適宜置換された」を使用して、「置換もしくは無置換C−Cアルキル」または「適宜置換されたヘテロアリール」のように表現することによって、部分が置換されうることを示す場合、このような部分は、一つ以上、好ましくは1〜5個、より好ましくは1または2個の独立して選択された置換基を有していてもよい。置換基および置換パターンは、置換基が結合する部分を考慮しながら当業者によって選択されて、化学的に安定で、かつ当該技術分野における公知技術によって合成されうる化合物、並びに本明細書で示される方法を提供しうる。
【0024】
「アリールアルキル」、「(ヘテロ脂環式基)アルキル」、「アリールアルケニル」、「アリールアルキニル」、「ビアリールアルキル」などは、場合によっては、アリール、ヘテロ脂環式基、ビアリールなどで置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニル部分、場合によっては、アルキル、アルケニル、またはアルキニル部分で開いた(満たされていない)原子価を有する部分、例えばベンジル、フェネチル、N−イミダゾイルエチル、N−モルホリノエチルなどを意味する。逆に、「アルキルアリール」、「アルケニルシクロアルキル」などは、場合によっては、アルキル、アルケニルなどで置換されたアリール、シクロアルキルなどの部分、場合によっては、例えばメチルフェニル(トリル)またはアリルシクロヘキシルのような部分を意味する。「ヒドロキシアルキル」、「ハロアルキル」、「アルキルアリール」、「シアノアリール」などは、場合によっては、一つ以上の特定された置換基(場合によっては、ヒドロキシル、ハロなど)で置換されたアルキル、アリールなどの部分を意味する。
【0025】
例として、許容される置換基には、これらに限らないが、アルキル(特にメチルまたはエチル)、アルケニル(特にアリル)、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、脂環式基、ヘテロ脂環式基、ハロ(特にフルオロ)、ハロアルキル(特にトリフルオロメチル)、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル(特にヒドロキシエチル)、シアノ、ニトロ、アルコキシ、−O(ヒドロキシアルキル)、−O(ハロアルキル)(特に−OCF)、−O(シクロアルキル)、−O(ヘテロシクロアルキル)、−O(アリール)、アルキルチオ、アリールチオ、=O、=NH、=N(アルキル)、=NOH、=NO(アルキル)、−C(=O)(アルキル)、−C(=O)H、−COH、−C(=O)NHOH、−C(=O)O(アルキル)、−C(=O)O(ヒドロキシアルキル)、−C(=O)NH、−C(=O)NH(アルキル)、−C(=O)N(アルキル)、−OC(=O)(アルキル)、−OC(=O)(ヒドロキシアルキル)、−OC(=O)O(アルキル)、−OC(=O)O(ヒドロキシアルキル)、−OC(=O)NH、−OC(=O)NH(アルキル)、−OC(=O)N(アルキル)、アジド、−NH、−NH(アルキル)、−N(アルキル)、−NH(アリール)、−NH(ヒドロキシアルキル)、−NHC(=O)(アルキル)、−NHC(=O)H、−NHC(=O)NH、−NHC(=O)NH(アルキル)、−NHC(=O)N(アルキル)、−NHC(=NH)NH、−OSO(アルキル)、−SH、−S(アルキル)、−S(アリール)、−S(シクロアルキル)、−S(=O)アルキル、−SO(アルキル)、−SONH、−SONH(アルキル)、−SON(アルキル)などが含まれる。
【0026】
置換される部分が脂肪族部分である場合、好ましい置換基は、アリール、ヘテロアリール、脂環式基、ヘテロ脂環式基、ハロ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、−O(ヒドロキシアルキル)、−O(ハロアルキル)、−O(シクロアルキル)、−O(ヘテロシクロアルキル)、−O(アリール)、アルキルチオ、アリールチオ、=O、=NH、=N(アルキル)、=NOH、=NO(アルキル)、−COH、−C(=O)NHOH、−C(=O)O(アルキル)、−C(=O)O(ヒドロキシアルキル)、−C(=O)NH、−C(=O)NH(アルキル)、−C(=O)N(アルキル)、−OC(=O)(アルキル)、−OC(=O)(ヒドロキシアルキル)、−OC(=O)O(アルキル)、−OC(=O)O(ヒドロキシアルキル)、−OC(=O)NH、−OC(=O)NH(アルキル)、−OC(=O)N(アルキル)、アジド、−NH、−NH(アルキル)、−N(アルキル)、−NH(アリール)、−NH(ヒドロキシアルキル)、−NHC(=O)(アルキル)、−NHC(=O)H、−NHC(=O)NH、−NHC(=O)NH(アルキル)、−NHC(=O)N(アルキル)、−NHC(=NH)NH、−OSO(アルキル)、−SH、−S(アルキル)、−S(アリール)、−S(シクロアルキル)、−S(=O)アルキル、−SO(アルキル)、−SONH、−SONH(アルキル)、および−SON(アルキル)である。より好ましい置換基は、ハロ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、−O(アリール)、=O、=NOH、=NO(アルキル)、−OC(=O)(アルキル)、−OC(=O)O(アルキル)、−OC(=O)NH、−OC(=O)NH(アルキル)、−OC(=O)N(アルキル)、アジド、−NH、−NH(アルキル)、−N(アルキル)、−NH(アリール)、−NHC(=O)(アルキル)、−NHC(=O)H、−NHC(=O)NH、−NHC(=O)NH(アルキル)、−NHC(=O)N(アルキル)、および−NHC(=NH)NHである。
【0027】
置換される部分が、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール、またはヘテロアリール部分である場合、好ましい置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、−O(ヒドロキシアルキル)、−O(ハロアルキル)、−O(シクロアルキル)、−O(ヘテロシクロアルキル)、−O(アリール)、アルキルチオ、アリールチオ、−C(=O)(アルキル)、−C(=O)H、−COH、−C(=O)NHOH、−C(=O)O(アルキル)、−C(=O)O(ヒドロキシアルキル)、−C(=O)NH、−C(=O)NH(アルキル)、−C(=O)N(アルキル)、−OC(=O)(アルキル)、−OC(=O)(ヒドロキシアルキル)、−OC(=O)O(アルキル)、−OC(=O)O(ヒドロキシアルキル)、−OC(=O)NH、−OC(=O)NH(アルキル)、−OC(=O)N(アルキル)、アジド、−NH、−NH(アルキル)、−N(アルキル)、−NH(アリール)、−NH(ヒドロキシアルキル)、−NHC(=O)(アルキル)、−NHC(=O)H、−NHC(=O)NH、−NHC(=O)NH(アルキル)、−NHC(=O)N(アルキル)、−NHC(=NH)NH、−OSO(アルキル)、−SH、−S(アルキル)、−S(アリール)、−S(シクロアルキル)、−S(=O)アルキル、−SO(アルキル)、−SONH、−SONH(アルキル)、および−SON(アルキル)である。より好ましい置換基は、アルキル、アルケニル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、−O(ヒドロキシアルキル)、−C(=O)(アルキル)、−C(=O)H、−COH、−C(=O)NHOH、−C(=O)O(アルキル)、−C(=O)O(ヒドロキシアルキル)、−C(=O)NH、−C(=O)NH(アルキル)、−C(=O)N(アルキル)、−OC(=O)(アルキル)、−OC(=O)(ヒドロキシアルキル)、−OC(=O)O(アルキル)、−OC(=O)O(ヒドロキシアルキル)、−OC(=O)NH、−OC(=O)NH(アルキル)、−OC(=O)N(アルキル)、−NH、−NH(アルキル)、−N(アルキル)、−NH(アリール)、−NHC(=O)(アルキル)、−NHC(=O)H、−NHC(=O)NH、−NHC(=O)NH(アルキル)、−NHC(=O)N(アルキル)、および−NHC(=NH)NHである。
【0028】
「保護ヒドロキシル」または「ヒドロキシル保護基」のような保護基は、化合物上のヒドロキシル基に選択的に結合して、化合物が曝される特定の化学反応条件に対してヒドロキシル基を不活性にし、そのように曝された後、選択的に除去されうる基である。ヒドロキシル保護基の多くの例が知られている。例えば、Greene and Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、3rd edition、pp.17-245 (John Wiley & Sons, New York, 1999)(その開示は本明細書に引用される)を参照せよ。本発明の化合物とともに使用するための適当なヒドロキシル保護基の例には、t−ブチルジメチルシリル(「TBDMS」または「TBS」)、トリエチルシリル(「TES」)およびトリフェニルシリル(「TPS」)が含まれる。
【0029】
「C〜Cアルキル」または「5〜10%」のように範囲が記載される場合、このような範囲には、範囲の終点または境界が含まれる。
【0030】
特定の立体異性体が具体的に(例えば、構造式における適切な立体中心での太線もしくは破線の結合により、構造式におけるEもしくはZ配置を有する二重結合の描写により、または立体化学を指定する命名法を用いることにより)示されなければ、すべての立体異性体は、純粋な化合物、並びにその混合物として本発明の範囲に含まれる。特に断りがなければ、個々のエナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体、並びにその組合せおよび混合物は、すべて本発明に含まれる。
【0031】
「医薬的に許容される塩」とは、医薬製剤に適した化合物の塩を意味する。化合物が一つ以上の塩基性の官能性を有する場合、その塩は、酸付加塩、例えば、硫酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、パモ酸塩(エンボン酸(embonate))、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、塩酸塩、乳酸塩、メチル硫酸塩、フマル酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、メシル酸塩、ラクトビオン酸塩、スベリン酸塩、トシル酸塩(tosylate)などでありうる。化合物が一つ以上の酸性部分を有する場合、その塩は、塩、例えば、カルシウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、アンモニウム塩、亜鉛塩、ピペラジン塩、トロメタミン塩、リチウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、4−フェニルシクロヘキシルアミン塩、ベンザチン塩、ナトリウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などでありうる。多形の結晶形および溶媒和物もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0032】
「治療上の有効量」とは、研究者、獣医、医師または他の臨床医が求めている、組織系、動物またはヒトにおける生物学的応答または医薬的応答を引き出す活性化合物または医薬品の量を意味し、その応答には、治療される疾患または障害の症状の軽減が含まれる。生物学的応答または医薬的応答を引き出すのに必要な活性化合物または医薬品の特定の量は、多数の要因、例えば、これらに限らないが、治療される疾患または障害、投与される活性化合物または医薬品、投与方法、並びに患者の症状に依存する。
【0033】
化合物および方法
式Iによって表される構造を有する化合物の好ましい態様において、Rは、HまたはC−Cアルキル(最も好ましくはHまたはMe)であり;Rは、OH、保護ヒドロキシル、O(C−Cアルキル)、O(C−Cアルケニル)、O(C−Cアルキニル)、OC(=O)(C−Cアルキル)、OC(=O)(C−Cアルケニル)、またはOC(=O)(C−Cアルキニル)であり;Rは、H、ヒドロキシル保護基、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、CO(C−Cアルキル)、CO(C−Cアルケニル)、またはCO(C−Cアルキニル)であり;RはHであり;並びにRはMeである。
【0034】
別の好ましい態様において、RおよびRは、両方ともHであり、RはMeであり、式(II):
【化3】

(II)
[式中、RおよびRは、上記の発明の概要の節で指定された意味を有する]
によって表される構造を有する化合物に対応する。より好ましくは、Rは、HまたはC−Cアルキルであり、Rは、OH、保護ヒドロキシル、O(C−Cアルキル)、O(C−Cアルケニル)、O(C−Cアルキニル)、OC(=O)(C−Cアルキル)、OC(=O)(C−Cアルケニル)、またはOC(=O)(C−Cアルキニル)である。さらにより好ましくは、Rは、HまたはMeであり、Rは、OH、O(C−Cアルキル)、またはOC(=O)(C−Cアルキル)である。
【0035】
本発明の特定の化合物は、式IIIおよびIV(図4において、それぞれ化合物29および30としても描かれる)によって表される構造を有する。
【化4】

【0036】
本発明には、本発明の化合物のプロドラッグがその範囲内に含まれる。このようなプロドラッグは、一般に、インビボで必要な化合物に容易に変換されうる化合物の機能性誘導体である。したがって、本発明の治療方法において、用語「投与」には、式Iのパラメータの範囲内の化合物を用いるか、またはこのようなパラメータの範囲内でない化合物を用いた、本明細書に記載される様々な障害の治療が含まれるが、それは、治療が必要な患者に投与された後にインビボで特定の化合物に変換される。適当なプロドラッグ誘導体の選択および製造のための通常の手順は、例えば、Wermuth, 「Designing Prodrugs and Bioprecursors」, in Wermuth, ed., The Practice of Medicinal Chemistry, 2nd Ed., pp. 561-586 (Academic Press 2003)に記載されており、その開示は本明細書に引用される。プロドラッグには、インビボで(例えば人体において)加水分解して本発明の化合物またはその塩を生じるエステルが含まれる。適当なエステル基には、これらに限らないが、医薬的に許容される脂肪族カルボン酸、特にアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸およびアルカン二酸から誘導されるものが含まれ、その中で、各アルキルまたはアルケニル部分は、好ましくは、6個以下の炭素原子を有する。エステルの例には、これらに限らないが、一つ以上のフェノールの酸素または一つ以上の脂肪族のOH基に結合した、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステル、クエン酸エステル、コハク酸エステル、およびエチルコハク酸エステルが含まれる。
【0037】
本発明の化合物によって標的とされうる異常に上昇したキナーゼ活性は、多数の方法で発生しうる。キナーゼは正常量で存在しうるが、シグナル経路における上流の破壊によって、その活性が制御されなくなる。あるいは、キナーゼは異常に増加した量で存在しうる。あるいは、キナーゼは、活性であるが、制御シグナルに応答しないように変異されうる。
【0038】
cis−エノン部分を有するハイポセマイシンおよび他のRAL類縁体が、キナーゼの共有結合性の阻害剤であることが、サンティ(Santi)ら、米国2006/0079494 A1 (2006)によって提案されており、その活性部位には、キナーゼのATP結合部位における2つのアスパラギン酸残基の間に位置し、かつそのうちの一つに直接隣接しているシステイン残基が含まれる。(アスパラギン酸残基はリン酸基と相互作用し、ATPのリン酸基と複合体を形成している(complexed)Mg+2イオンとも相互作用し、キナーゼにおける高度に保存されたモチーフを表している。)彼らは、システインスルフヒドリル基がマイケル反応でエノン二重結合に付加して、不可逆性であるかまたは非常にゆっくりとした可逆性にすぎない(RALの代表としてハイポセマイシンを用いて下記で説明される)共有結合付加体(covalent adduct):
【化5】

を形成すると仮定している。彼らは、124個のキナーゼのパネル(panel)に対してハイポセマイシンをスクリーニングし、そのうち19個はこのような活性部位のシステインを有しており、残りは有していなかった。ハイポセマイシンは、20個のキナーゼを阻害し、そのうちの18個は活性部位のシステインを有していた。すなわち、ハイポセマイシンは、19個の活性部位のシステインを有するキナーゼのうち18個を阻害するが、このような活性部位のシステインを有していない105個のキナーゼのうち2個だけを阻害し、これによりマイケル反応の仮説についての実験的なサポートが与えられる。
【0039】
理論には結びついていないが、本発明の化合物は、類似のメカニズムによってキナーゼに作用しうると考えられる。したがって、一つの好ましい態様において、本発明の化合物によって阻害されるキナーゼは、キナーゼのATP結合部位における2つのアスパラギン酸残基の間に位置し、かつそのうちの一つに直接隣接しているシステイン残基を有している。
【0040】
別の好ましい態様において、本発明の化合物によって阻害される活性部位システインキナーゼは、AAK1、キナーゼドメイン(SPEG)を有するAPEG1スプライスバリアント、BMP2K(BIKE)、CDKL1、CDKL2、CDKL3、CDKL4、CDKL5(STK9)、ERK1(MAPK3)、ERK2(MAPK1)、FLT3、GAK、GSK3A、GSK3B、KIT(cKIT)、MAP3K14(NIK)、MAP3K7(TAK1)、MAPK15(ERK8)、MAPKAPK5(PRAK)、MEK1(MKK1、MAP2K1)、MEK2(MKK2、MAP2K2)、MEK3(MKK3、MAP2K3)、MEK4(MKK4、MAP2K4)、MEK5(MKK5、MAP2K5)、MEK6(MKK6、MAP2K6)、MEK7(MKK7、MAP2K7)、MKNK1(MNK1)、MKNK2(MNK2、GPRK7)、NLK、PDGFRα、PDGFRβ、PRKD1(PRKCM)、PRKD2、PRKD3(PRKCN)、PRPF4B(PRP4K)、RPS6KA1(RSK1、MAPKAPK1A)、RPS6KA2(RSK3、MAPKAP1B)、RPS6KA3(RSK2、MAPKAP1C)、RPS6KA6(RSK4)、STK36(FUSED_STK)、STYK1、TGFBR2、TOPK、VEGFR1(FLT1)、VEGFR2(KDR)、VEGFR3(FLT4)およびZAKからなる群から選択される。これらのキナーゼは、上記で論じた2つのアスパラギン酸/システイン活性モチーフを有していると考えられる。
【0041】
B−Rafは、Ras−Raf−MEK1/2−ERK1/2−MAP細胞シグナル経路におけるキナーゼである。変異B−Rafは、悪性メラノーマの約70%および大腸癌の20%に見られ、乳癌においても見られている。一般に、B−Raf変異は、V600E(古い文献ではV599E)として表される単一の置換であり、この場合、バリンは、アミノ酸位置600(古い文献では599)でグルタミン酸に置き換えられる。Davies et al., Nature 2002, 417, 949-954, 「Mutations of the BRAF Gene in Human Cancer」。この単一変異は発癌性であり:それは下流のキナーゼMEK1/2およびERK1/2の活性(および細胞増殖)が抑制されないように、シグナル経路を構成的に活性化する。しかしながら、ERK1、ERK2、MEK1、およびMEK2は、必要な活性部位システインを有するキナーゼとして、本発明の化合物によって阻害されやすい。したがって、一つの好ましい態様において、本発明の化合物は、B−Raf V600E変異の特徴を有する細胞の増殖を阻害するのに用いられる。この方法において、単一の化合物は、疾患症状に関連する複数の標的分子を阻害しうる。
【0042】
別の態様において、本発明の化合物は、変異B−Rafを有する細胞の増殖の特徴を有する疾患の治療に有用である。好ましくは、治療前に、患者は、増殖細胞でのB−Raf変異(特にV600E変異)の存在についてスクリーニングされ、それゆえ、患者が治療に対してポジティブに応答する可能性についてスクリーニングされる。
【0043】
典型的には、本発明の化合物は、いずれの適当な形態、例えば固形物、半固形物、または液体形態でもありうる医薬組成物または医薬製剤の一部である。一般に、医薬製剤には、活性成分としての一つ以上の本発明の化合物および医薬的に許容される担体もしくは賦形剤が含まれる。典型的には、活性成分は、外用、腸内、または非経口の使用に適した有機または無機の担体または賦形剤との混合物中にある。活性成分は、例えば、通常の無毒の医薬的に許容される担体、例えば、錠剤、ペレット、カプセル剤、坐薬、ペッサリー、溶液、乳濁液、懸濁液、および使用に適したいずれの他の形態と混ぜ合わせてもよい。
【0044】
用いられうる賦形剤には、担体、界面活性剤、増粘剤もしくは乳化剤、固形結合剤、分散助剤もしくは懸濁助剤、溶解剤、着色料、香料、被覆剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味料、防腐剤、等張剤、およびそれらの組合せが含まれる。適当な賦形剤の選択および使用は、Gennaro, ed., Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 2003)に記載されており、その開示は本明細書に引用される。
【0045】
担体物質と混合されて単一製剤を生じうる活性成分の量は、治療される宿主および特定の投与方法に依存して変化する。例えば、ヒトへの経口投与用の製剤には、全組成物の約5パーセントから約95パーセントまで変化しうる担体物質が含まれうる。一般に、単位製剤には、約5mg〜約500mgの活性成分が含まれる。
【0046】
治療上の有効量の本発明の化合物は、単一用量または分割用量で患者に投与されうる。投与の頻度は、毎日、または他の何らかの規則的なスケジュールに従って(例えば、3日ごとに)、または不規則なスケジュールに従ってでもよい。投与量は、例えば、約0.01〜約10mg/kg(体重)、またはより一般には、約0.1〜約2mg/kg(体重)の量であってもよい。
【0047】
しかしながら、いずれの特定の患者についての特定の用量レベルも、様々な要因に依存しうることが理解される。これらの要因には、用いられる特定の化合物の活性;患者の、年齢、体重、全般的健康状態、性別、および食事;投与の時間および経路、並びに薬物の排出の速度;治療に合剤が用いられているかどうか;並びに治療が求められる特定の疾患または症状の重症度が含まれる。
【0048】
本発明の方法は、獣医学の目的のために実施されうるが、典型的には対象はヒトであり、別の興味深い哺乳類(例えば、猫、牛、犬、馬など)については単位用量を適当に調節する。
【0049】
本発明の実施は、限定ではなく例示のために与えられる以下の実施例を引用してさらに理解されうる。
【0050】
実施例1−臭化ベンジル5
本実施例によって臭化ベンジル5の合成が記載され、それは化合物29および30のような本発明の化合物の合成における中間体である。合成反応式を、図1にまとめる。得られた生成物のH NMRスペクトルは、各々の例において、帰属された構造と一致していた。
【0051】
MOM保護エステル2
2,4−ジヒドロキシ−6−メチル安息香酸エチル1(15g、76.45mmol)の乾燥ジクロロメタン溶液(「DCM」、75mL)に、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(「DBU」、45.7mL、305.8mmol)を0℃で加えた。溶液は茶色に変わった。クロロメチルメチルエーテル(「MOMCl」、14.5mL、191.1mmol)を0℃で滴下して加えた。反応液を室温(「RT」)で12時間攪拌した。DBU(22.3mL、153mmol)およびMOMCl(7.25mL、95.6mmol)を加え、反応液を35℃で2時間攪拌した。ジエチルエーテル(200mL)および水(100mL)を加え、層を分液した。水層をジエチルエーテル(3×100mL)で抽出した。有機層を合わせて、水(100mL)、5% NaHSO(50mL)、水(50mL)、飽和NaHCO(50mL)、および食塩水(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、シリカゲルパッドおよびMgSOを通して濾過し、乾燥するまで蒸発させた。高真空下で乾燥した後、MOM保護エステル2を得た(19.5g)。
【0052】
MOM保護した酸3
MOM保護エステル2(5.12g、18mmol)の水(20mL)およびMeOH(20mL)溶液に、NaOH(2.88g)を加えた。反応混合物を18時間、83℃で加熱した。MeOHを除去し、酢酸エチル(「EtOAc」、50mL)を加えた。水相のpHをNaHSO(〜9gの20mL水溶液)でpH 2〜3に調整した。水層をEtOAc(3×50mL)で抽出し、有機層を合わせて、食塩水(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、シリカゲルパッドおよびMgSOを通して濾過し、乾燥するまで蒸発させた。クルードのMOM保護した酸3をトルエン(2×)と共沸させて、精製することなく次の段階に用いた。
【0053】
TMSEエステル4
MOM保護した酸3(〜18mmol)、トリフェニルホスフィン(「PhP」、6.14g、23.4mmol)、およびトリメチルシリルエタノール(「TMSE−OH」、3.08mL、21.6mmol)のエーテル(40mL)およびトルエン(12mL)溶液に、アゾジカルボン酸ジエチル(azadicarboxylate)(「DEAD」、10.2g、40% トルエン溶液)を0℃で滴下して加えた。反応混合物を室温で12時間攪拌した。ヘキサンを加え、固形物を濾去した。母液を濃縮し、再び濾過し、さらにヘキサンで洗浄した。溶媒を除去し、TMSEエステル4(5.06g)をシリカゲルカラム(10〜20% EtOAcのヘキサン溶液)で精製した。
【0054】
臭化ベンジル5
TMSEエステル4(10.16g、28.03mmol)のCCl溶液(300mL)に、アゾイソブチロニトリル(azaisobutyronitirle)(「AIBN」、0.46g、2.8mmol)およびN−ブロモコハク酸イミド(「NBS」、5.49g、30.83mmol)を加えた。生じた懸濁液を4回脱気し(窒素を流し(flushing)ながら)、強い光(3 太陽灯、合計1000w)で照射した。攪拌した懸濁液を還流するまで急激に加熱し、1時間攪拌して、淡黄色溶液を得た(反応の進行はNMRでモニターした)。室温に冷却した後、反応混合物を飽和NaHCO(3×30mL)、HO(30mL)および食塩水(30mL)で洗浄した。有機溶液を無水NaSOで乾燥し、シリカゲルパッドを通して濾過し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(EtOAcのヘキサン溶液、0%〜24% グラジエント)で精製して、無色油として臭化ベンジル5を得た(8.5g、純度65〜70%;〜20% 出発物質および〜10% フェニル臭素化生成物が混入)。
【0055】
実施例2−テトラヒドロフラン−2−オール8
本実施例によって、テトラヒドロフラン−2−オール8の合成が記載され、それはまた、化合物29および30のような本発明の化合物の合成における中間体でもある。合成反応式を図2にまとめる。得られた生成物のH NMRスペクトルは、各々の例において、帰属された構造と一致していた。
【0056】
ケタールラクトン7
2,2−ジメトキシプロパン(126mL)およびp−トルエンスルホン酸(「TSA」、633mg)を、L−エリトロノ−1,4−ラクトン6(15g)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(「DMF」、158mL)に加えた。混合物をN下で2時間還流し、次いで室温で終夜保持した。DCM(500mL)を加え、有機相を飽和NaHCO(5×300mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%〜50% 酢酸エチルのヘキサン溶液)の後、ケタールラクトン7を得た(9.8g)。
【0057】
テトラヒドロフラン−2−オール8
水素化ジイソブチルアルミニウム(「DIBAL−H」、1当量、無溶媒)を、ケタールラクトン7(9.8g)のDCM溶液(100mL)に−78℃で滴下して加えた。反応液を−78℃で1時間攪拌し、飽和NHClでクエンチした。EtOAc(500mL)を加え、有機相を飽和NHCl(2×300mL)で洗浄し、食塩水(2×300mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM〜5% MeOHのDCM溶液)の後、テトラヒドロフラン−2−オール8を得た(7.5g)。
【0058】
実施例3−アセチレンTBSエーテル13および14
本実施例によってアセチレンTBSエーテル13および14の合成が記載され、それはそれぞれ化合物29および30のような本発明の化合物の合成における中間体である。得られた生成物のH NMRスペクトルは、各々の例において、帰属された構造と一致していた。
【0059】
TBSエーテル13についての合成反応式を図3aにまとめる。
【0060】
アセチレンアルコール11
リチウムアセチレン−エチレンジアミン複合体(24.92g、0.271mol)のジメチルスルホキシド溶液(DMSO、250mL)を、(S)−酸化プロピレン9(17.3mL、0.246mol)に4℃で滴下して加えた。反応混合物を室温で24時間攪拌し、氷水に注ぎ、エーテル(4×360mL)で抽出した。有機層を合わせて、飽和NHClで洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。クルードのアセチレンアルコール11(39g)を得て、精製することなく次の段階に用いた。
【0061】
アセチレンTBSエーテル13
イミダゾール(16.7g、0.246mol)および塩化トリブチルシリル(「TBSCl」、25g、0.166mol)の10滴を、クルードのアセチレンアルコール11(39g、0.123mol)のDCM溶液(250mL)に室温で加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌した。ヘキサン(600mL)および飽和NaHCO水溶液(300mL)を加え、層を分液した。有機層を水(3×400mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(100% ヘキサン)の後、クルードのアセチレンTBSエーテル13を得た(19g)。
【0062】
TBSエーテル14についての合成反応式を図3bにまとめる。全体に、チバ(Chiba)ら,米国2004/0224936 A1(2004)の手順に従った。2つのエナンチオマーを得て、次の段階に用いた。
【0063】
アセチレンアルコール12
n−BuLi(110mL、2.5M)をTMS−アセチレン(38.8mL)のTHF溶液(1L)に−60℃で加えた。反応液を一時的に0℃に加温し、次いで冷却して−60℃に戻した。次いでBF・EtO(33.8mL)をゆっくりと加え、続いてエポキシド10(15mL)を注射器ポンプで2時間かけて加えた。−60℃で1.5時間攪拌した後、反応混合物を室温に加温し、飽和NHCl(500mL)でクエンチし、酢酸エチル(2×2L)で抽出した。有機層を合わせて、乾燥し、濃縮した。粗生成物を、4:1 ヘキサン/EtOAcを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、油状物として目的のアセチレンアルコール12を得た(13.9g)。
【0064】
アセチレンTBSエーテル14
室温でのアルコール12のジクロロメタン溶液(280mL)に、イミダゾール(19.2g)を加えた。TBSCl(32g)を5滴で加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌した。ヘキサン(700mL)を加え、有機層を食塩水(350mL)で洗浄し、次いで水(3×450mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製して、中間体のTBS保護TMSアセチレンを得た(8.7g)。
【0065】
TBS保護TMSアセチレン(8.7g)およびKCO(8g)のメタノール混合溶液(120mL)を室温で5時間攪拌した。混合物を酢酸エチル(2×200mL)で抽出した。有機層を合わせて、乾燥し、濃縮した。粗生成物を、ヘキサン溶離液を用いたシリカゲルカラムで精製して、無色油としてエーテル14を得た(6.17g)。2つのエナンチオマーを得て、次の段階に用いた。
【0066】
実施例4−化合物29
本実施例によって、本発明の化合物の一つ、すなわち化合物29の合成が記載される。合成反応式は図4に示される。得られた生成物のH NMRスペクトルは、各々の例において、帰属された構造と一致していた。さらに、追加の分析データを化合物29について得た。
【0067】
イン−ジオール15
塩化イソプロピルマグネシウム(3.13mL、6.25mmol、2.0M テトラヒドロフラン(「THF」)溶液)を、アセチレンTBSエーテル13(1.24g、6.25mmol)のTHF溶液(3.1mL)に0℃で加えた。反応混合物を50℃に加熱し、その温度で1時間攪拌し、0℃に冷却した。テトラヒドロフラン−2−オール8のTHF溶液(5mL)を加えた。反応混合物を室温で4時間攪拌し、飽和NaHPO(20mL)を加えてクエンチした。水層をEtOAc(4×30mL)で抽出した。有機層を合わせて、NaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%〜40% EtOAcのヘキサン溶液)の後、単一のジアステレオマーとしてイン−ジオール15を得た(2.33g)。
【0068】
エン−ジオール17
リンドラー触媒(210mg)およびキノリン(10μL)をイン−ジオール15(789mg)のヘキサン溶液(40mL)に加えた。反応混合物を脱気し、Hで3回満たし、H下で1時間攪拌した。反応混合物をシリカゲルパッドを通して濾過し、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%〜40% EtOAcのヘキサン溶液)の後、エン−ジオール17を得た(701mg)。
【0069】
アルコール19
エン−ジオール17(2.47g、6.85mmol)の乾燥THF溶液(10mL)を、NaH(343mg、8.56mmol、鉱油中の60%、ヘキサンで洗浄)のTHF懸濁液(15mL)に−30℃でゆっくりと加えた。反応混合物を室温で2時間攪拌した。−30℃に冷却した後、臭化ベンジル5のTHF溶液(6mL)を滴下して加え、生じた反応混合物を室温で2時間攪拌した。反応をリン酸緩衝液(pH7、1.0M、30mL)の添加によって止めた。エチルエーテル(100mL)を加え、層を分液した。水層をエーテル(2×30mL)で抽出した。有機層を合わせて、NaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(5%〜20% EtOAcのヘキサン溶液)の後、アルコール19を得た(824mg、純度80%)。
【0070】
安息香酸21
アルコール19(460mg、0.636mmol)の乾燥DCM溶液(5mL)に、ジイソプロピルエチルアミン(0.544mL、3.18mmol)、安息香酸無水物(288mg、1.27mmol)、および4−ジメチルアミノピリジン(「DMAP」、71.3mg、0.636mmol)を加えた。反応混合物を室温で6時間攪拌した。反応を飽和NaHCO(30mL)およびエチルエーテル(50mL)の添加によって止めた。相を分離し、水層をエチルエーテル(2×20mL)で抽出した。有機層を合わせて、NaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン〜15% EtOAcのヘキサン溶液)の後、安息香酸21を得た(520mg)。
【0071】
ビス−MOM環状生成物23
フッ化テトラブチルアンモニウム(「TBAF」、5mL、1.0M THF溶液)を安息香酸21(520mg、0.628mmol)に室温で加えた。反応混合物を室温で2時間攪拌し、次いで40℃で15時間攪拌した。反応をNaHSO(300mgの30mL水溶液)およびエチルエーテル(50mL)の添加によって止めた。相を分離し、水層をエチルエーテル(2×20mL)で抽出した。有機層を合わせて、NaSOで乾燥し、シリカゲルパッドを通して濾過し、濃縮し、トルエン(2×20mL)と共沸させ、DCM(20mL)に溶解し、4A モレキュラーシーブで2時間乾燥した。粗生成物を精製することなく次の段階に用いた。
【0072】
上記の粗生成物のDCM溶液を、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム(460mg、1.8mmol)およびジイソプロピルエチルアミンの還流する乾燥DCM溶液(60mL)に8時間かけて加えた。反応混合物を18時間還流した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーの後、2−MOM基を失っている環状生成物(36mg、「2−脱MOM生成物」)、および2−脱MOM生成物とビス−MOM環状生成物23の混合物(114mg)を得た。2−脱MOM生成物をDCM中に溶解することによって生成物23に変換し、DBU(20当量)およびMOMCl(10当量)を加え、35℃で5時間攪拌した。反応を、エチルエーテル(10mL)および飽和NHCl(10mL)を加えることによってクエンチした。相を分離し、水層をエチルエーテル(2×20mL)で抽出した。有機層を合わせて、NaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。生成物をシリカゲルパッドを通して濾過し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。混合物(114mg)を同様に生成物23に変換した。粗生成物をさらに精製することなく次の段階に用いた。
【0073】
脱ベンゾイル化生成物25
生成物23(33mg)のEtOH(1mL)およびTHF(1mL)溶液に、NaOH溶液(1mL、1N)を加えた。反応混合物を37℃で16時間攪拌し、エーテル(20mL)および水(10mL)で希釈した。相を分離し、水層をエチルエーテル(3×10mL)で抽出した。有機層を合わせて、食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(10〜65% EtOAcのヘキサン溶液)の後、脱ベンゾイル化生成物23を得た(18.2mg)。
【0074】
ケトラクトン27
脱ベンゾイル化生成物25の乾燥DCM溶液(1mL)に、4A モレキュラーシーブおよびクロロクロム酸ピリジニウム(「PCC」)を加えた。反応混合物を室温で1時間攪拌し、ヘキサン(1mL)で希釈し、シリカゲルパッドおよびセライトを通して濾過し、エーテルで洗浄した。溶媒を除去し、生成物ケトラクトン27をさらに精製することなく次の段階に用いた。
【0075】
化合物29
ケトラクトン27のアセトニトリル溶液(1mL)に、フッ化水素酸(0.33mL)を加えた。反応混合物を室温で1時間攪拌し、NaHCO(0.9g)のTHF懸濁液(10mL)に加えることによってクエンチした。混合物を室温で10分間攪拌し、シリカゲルパッドを通して濾過し、THFで洗浄した。溶媒を除去し、生成物(3〜4mg)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%〜70% THFのヘキサン溶液)で精製した。C18プラグ(MeOHで洗浄)を通して濾過することによって、非常に極性の低い不純物をいくらか除去した。RAL類縁体29のH NMRおよび13C NMRスペクトルを、それぞれ図5および6に示す。質量スペクトル:(M+Na)=375.1054;(M−H)=351.1438.
【0076】
実施例5−化合物30
本実施例によって、本発明の別の化合物、すなわち化合物30の合成が記載される。合成反応式は、図4にも示される。得られた生成物のH NMRスペクトルは、各々の例において、帰属された構造と一致していた。さらに、追加の分析データを化合物30について得た。
【0077】
イン−ジオール16
塩化イソプロピルマグネシウム(4.48mL、8.96mmol、2.0M テトラヒドロフラン(「THF」)溶液)を、アセチレンTBSエーテル14(1.9g、8.96mmol)のTHF溶液(5mL)に0℃で加えた。反応混合物を50℃に加熱し、その温度で1時間攪拌し、0℃に冷却した。テトラヒドロフラン−2−オール8(730mg、4.56mmol)のTHF溶液(6mL)を加えた。反応混合物を室温で2時間攪拌し、飽和NaHPO(35mL)を加えてクエンチした。水層をEtOAc(4×50mL)で抽出した。有機層を合わせて、NaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。2つのジアステレオマーを得て、次の段階に直接用いた。
【0078】
エン−ジオール18
リンドラー触媒(292mg)およびキノリン(15μL)を、イン−ジオール16(1.138g)のヘキサン溶液(56mL)に加えた。反応混合物を脱気し、Hで3回満たし、H下で2.5時間攪拌した。反応混合物をシリカゲルパッドを通して濾過し、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(5% EtOAc/ヘキサン〜35% EtOAc/ヘキサン グラジエント)による2つのジアステレオマーの分離後、エン−ジオール18を得た(686mg)。
【0079】
アルコール20
カリウムt−ブトキシド(1.0M THF溶液、0.251mL)を、エン−ジオール18(90mg、0.251mmol、1当量)のジメトキシエタン溶液(0.5mL)に室温で滴下して加えた。混合物を室温で10分間攪拌した。臭化ベンジル5のTHF溶液(0.6mL)を滴下して加えた。室温で30分間攪拌した後、EtOAc(40mL)を加えた。有機相を水(2×20mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン〜20% EtOAc/ヘキサン)の後、アルコール20を得た(100mg)。
【0080】
安息香酸22
アルコール20(700mg、0.963mmol)の乾燥DCM溶液(10mL)に、ジイソプロピルエチルアミン(0.84mL、4.815mmol)、安息香酸無水物(435mg、1.926mmol)、および4−ジメチルアミノピリジン(「DMAP」、118mg、0.963mmol)を加えた。反応混合物を室温で6時間攪拌した。反応を、飽和NaHCO(30mL)およびエチルエーテル(50mL)の添加によって止めた。相を分離し、水層をエチルエーテル(2×20mL)で抽出した。有機層を合わせて、NaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン〜15% EtOAcのヘキサン溶液)の後、安息香酸22を得た(705mg)。
【0081】
ビス−MOM環状生成物24
安息香酸22(〜0.360mmol)をTHF(5mL)に溶解した。TBAF(1M THF溶液、3mL)を加えた。反応混合物を50℃で5時間攪拌した。EtOAc(180mL)を加えた。有機相を飽和NHCl(90mL)で洗浄した。水層をEtOAc(2×90mL)で抽出した。有機相を合わせたものにトリエチルアミン(1.5mL)を加え、次いでそれをNaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。粗生成物をトリエチルアミンの存在下で3回トルエンと共沸させ、精製することなく次の段階に用いた。粗生成物のDCM溶液(60mL)を、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム(275mg)およびトリエチルアミン(250μL)の還流するDCM溶液(60mL)に2時間かけて加えた。反応混合物を42時間還流した。溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(5〜45% EtOAc/ヘキサン グラジエント)の後、生成物を得た(60mg)。
【0082】
脱ベンゾイル化生成物26
生成物24(60mg)のEtOH(3mL)およびTHF(3mL)溶液に、NaOH溶液(3mL、1N)を加えた。反応混合物を37℃で16時間攪拌し、エーテル(20mL)および水(10mL)で希釈した。相を分離し、水層をエチルエーテル(3×10mL)で抽出した。有機層を合わせて、食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(10〜65% EtOAcのヘキサン溶液)の後、脱ベンゾイル化生成物24を得た(37mg)。
【0083】
ケトラクトン28
脱ベンゾイル化生成物26の乾燥DCM溶液(1mL)に、4A モレキュラーシーブおよびクロロクロム酸ピリジニウム(「PCC」)を加えた。反応混合物を室温で4時間攪拌し、DCM(100mL)で希釈した。有機層を飽和NaHCO(3×100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(5〜45% EtOAcのヘキサン溶液)の後、生成物ケトラクトン28を得た(25mg)。
【0084】
化合物30
ケトラクトン28のアセトニトリル溶液(17mL)に、フッ化水素酸(4mL、48%)を加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌した。フッ化水素酸(1mL、48%)を加え、反応液を室温で1時間攪拌した。反応液をDCM(300mL)および飽和NaHCO(100mL)に注ぎ、気泡が観察されなくなるまで混合物を攪拌した。相を分離し、水層をDCM(3×200mL)で抽出した。有機層を合わせて、NaSOで乾燥し、濾過し、乾燥するまで蒸発させた。次いで残渣を高真空下で終夜乾燥した。最終生成物の化合物30を得た(19mg)。そのH NMRおよび13C NMRスペクトルを、それぞれ図7および8に示す。質量スペクトル:(M+H)=367.0.
【0085】
上記で与えられる実施例は、必要な変更を加えて、本発明の他の化合物を製造するために適用されうることを当業者は認識している。例えば、フェノールのヒドロキシル基を官能基化するための周知の技術を適用することによって、RまたはRがHである式Iの化合物は、これらがH以外である式Iの化合物の合成のための前駆体として用いられうる。ギーゼ(Giese)ら,米国5,795,910(1998);チバら,米国2004/0224493 A1(2004);およびサンティ(Santi)ら,米国2006/0079494 A1(2006)に開示される技術が特に引用され、その開示は本明細書に引用され、それは本発明の化合物の製造に適用されうる。
【0086】
実施例6−生物活性
化合物IIIおよびIVの生物活性を、表Aにおいて天然物ハイポセマイシンの生物活性に対して比較する。3つの癌細胞株に対する阻害濃度が与えられる。COLO829Bは、B−Raf V600E変異を有するヒトメラノーマ癌細胞株である。HT29もまた、B−Raf V600E変異を有するヒト大腸癌細胞株である。SKOV3は、野生型B−Rafを有するヒト乳癌細胞株である。また、ERK2についてのKおよびKinactが与えられる。
【表1】

【0087】
IC50データによって、本発明の化合物IIIおよびIVが、BRaf V600E変異を有する癌細胞の阻害剤として特に有効であることが示される。
【0088】
前述の発明の詳細な説明には、本発明の特定の部分または態様に主にまたは排他的に関係している一節が含まれる。これが明確さおよび便宜のためのものであること、特定の特徴が、それが開示される一節のみではなくそれ以上に関連しうること、並びに本明細書の開示には、異なる一節に見られる情報の全ての適当な組合せが含まれることが理解されるべきである。同様に、本明細書の様々な数字および記載が本発明の特定の態様に関連しているが、特定の特徴が、特定の数字または態様との関連で開示される場合、このような特徴が、別の数字または態様との関連で、別の特徴と組み合わせて、または概して本発明の中で、適当な範囲で用いられうることもまた理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明の化合物の合成に利用される中間体を製造するための反応式を示す。
【図2】図2は、本発明の化合物の合成に利用される中間体を製造するための反応式を示す。
【図3a】図3aは、本発明の化合物の合成に利用される中間体を製造するための反応式を示す。
【図3b】図3bは、本発明の化合物の合成に利用される中間体を製造するための反応式を示す。
【0090】
【図4】図4は、図1〜3によって製造される中間体を利用して、本発明の化合物を製造するための反応式を示す。
【0091】
【図5】図5は、本発明の化合物のH NMRスペクトルを示す。
【図6】図6は、本発明の化合物の13C NMRスペクトルを示す。
【0092】
【図7】図7は、本発明の別の化合物のH NMRスペクトルを示す。
【図8】図8は、本発明の別の化合物の13C NMRスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(I)
[式中、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、またはC−Cアルキニルであり;
は、H、ハロゲン、ヒドロキシル、保護ヒドロキシル、OR12、SR12、NR1213、−X(CH−R14であるか、またはヒドロキシル、保護ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、保護アミノ、もしくは−X(CH−R14で適宜置換されたアルキルであり;その中で
12およびR13の各々は独立して、Hまたは適宜置換された脂肪族基、適宜置換された脂環式基、適宜置換されたヘテロ脂環式基、適宜置換されたアリール、または適宜置換されたヘテロアリール部分またはNもしくはS保護基であるか、あるいはR12およびR13は一緒になって、1〜4個の炭素原子および1〜3個の窒素もしくは酸素原子を含む飽和もしくは不飽和環を形成し;R12およびR13の各々は、ヒドロキシル、保護ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、保護アミノ、−NH(アルキル)、アミノアルキル、またはハロゲンの一つ以上で適宜置換されており;
およびXは各々独立して、不存在、酸素、NH、または−N(アルキル)であるか、あるいは、X−R14は一緒になって、Nとなるか、またはヘテロ脂環式部分となり;
pは、1〜10(両端を含む)の整数であるが、但し、XおよびXの少なくとも一つが不存在である場合のみ、pは1であってもよく;並びに
14は、Hもしくはアリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、もしくはアルキルヘテロアリール部分であるか、または−(C=O)NHR15、−(C=O)OR15、もしくは−(C=O)R15であり、R15の各々は独立して、Hまたは脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール、またはヘテロアリール部分であるか;あるいはR14は、−SO(R16)であり、R16は脂肪族部分であり;R14、R15、およびR16のうち一つ以上は、一つ以上のヒドロキシル、保護ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、保護アミノ、−NH(アルキル)、アミノアルキル、またはハロゲンで適宜置換されており;
は、H、ヒドロキシル保護基、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、CO(C−Cアルキル)、CO(C−Cアルケニル)、またはCO(C−Cアルキニル)であり;
は、Hまたはハロゲンであり;並びに
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、もしくはC−Cアルキニルであるか、あるいはRおよびRは一緒になって、(CHを形成し、nは、1、2、3、または4である]
によって表される構造を有する化合物、並びにその医薬的に許容されるエステル、塩、溶媒和物、および水和物。
【請求項2】
が、HまたはC−Cアルキルであり;
が、OH、保護ヒドロキシル、O(C−Cアルキル)、O(C−Cアルケニル)、O(C−Cアルキニル)、OC(=O)(C−Cアルキル)、OC(=O)(C−Cアルケニル)、またはOC(=O)(C−Cアルキニル)であり;
が、H、ヒドロキシル保護基、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、CO(C−Cアルキル)、CO(C−Cアルケニル)、またはCO(C−Cアルキニル)であり;
がHであり;並びに
がMeである、請求項1の化合物。
【請求項3】
式(II):
【化2】

(II)
によって表される構造を有する、請求項1の化合物。
【請求項4】
が、HまたはC−Cアルキルであり、Rが、OH、保護ヒドロキシル、O(C−Cアルキル)、O(C−Cアルケニル)、O(C−Cアルキニル)、OC(=O)(C−Cアルキル)、OC(=O)(C−Cアルケニル)、またはOC(=O)(C−Cアルキニル)である、請求項3の化合物。
【請求項5】
が、HまたはMeであり、Rが、H、O(C−Cアルキル)、またはOC(=O)(C−Cアルキル)である、請求項4の化合物。
【請求項6】
式III:
【化3】

によって表される構造を有する、請求項1の化合物。
【請求項7】
式IV:
【化4】

によって表される構造を有する、請求項1の化合物。
【請求項8】
請求項1の化合物の治療上の有効量を患者に投与することを特徴とする、少なくとも一つのキナーゼの活性が異常に上昇した細胞の増殖の特徴を有する疾患の患者の治療方法。
【請求項9】
該疾患が、メラノーマ、大腸癌、または乳癌である、請求項8の方法。
【請求項10】
該疾患がメラノーマまたは大腸癌である、請求項9の方法。
【請求項11】
該増殖細胞が変異B−Rafの特徴を有する、請求項8の方法。
【請求項12】
該変異B−RafがV600E変異を有する、請求項8の方法。
【請求項13】
該投与段階の前に該患者をスクリーニングして、該増殖細胞が変異B−Rafを有するかどうかを決定する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項8の方法。
【請求項14】
該細胞を請求項1の化合物に接触させることを特徴とする、少なくとも一つのキナーゼの活性が異常に上昇した細胞の増殖の阻害方法。
【請求項15】
該細胞が変異B−Rafを有する、請求項14の方法。
【請求項16】
該変異B−RafがV600E変異を有する、請求項15の方法。
【請求項17】
該キナーゼを請求項1の化合物に接触させることを特徴とする、活性部位システイン残基を有するキナーゼの阻害方法。
【請求項18】
該活性部位システイン残基が、該キナーゼのATP結合部位における2つのアスパラギン酸残基の間に位置し、かつそのうちの一つに直接隣接している、請求項17の方法。
【請求項19】
該キナーゼが、変異B−Rafによって活性化される細胞シグナル経路におけるキナーゼである、請求項17の方法。
【請求項20】
該キナーゼが、AAK1、キナーゼドメイン(SPEG)を有するAPEG1スプライスバリアント、BMP2K(BIKE)、CDKL1、CDKL2、CDKL3、CDKL4、CDKL5(STK9)、ERK1(MAPK3)、ERK2(MAPK1)、FLT3、GAK、GSK3A、GSK3B、KIT(cKIT)、MAP3K14(NIK)、MAP3K7(TAK1)、MAPK15(ERK8)、MAPKAPK5(PRAK)、MEK1(MKK1、MAP2K1)、MEK2(MKK2、MAP2K2)、MEK3(MKK3、MAP2K3)、MEK4(MKK4、MAP2K4)、MEK5(MKK5、MAP2K5)、MEK6(MKK6、MAP2K6)、MEK7(MKK7、MAP2K7)、MKNK1(MNK1)、MKNK2(MNK2、GPRK7)、NLK、PDGFRα、PDGFRβ、PRKD1(PRKCM)、PRKD2、PRKD3(PRKCN)、PRPF4B(PRP4K)、RPS6KA1(RSK1、MAPKAPK1A)、RPS6KA2(RSK3、MAPKAP1B)、RPS6KA3(RSK2、MAPKAP1C)、RPS6KA6(RSK4)、STK36(FUSED_STK)、STYK1、TGFBR2、TOPK、VEGFR1(FLT1)、VEGFR2(KDR)、VEGFR3(FLT4)およびZAKからなる群から選択される、請求項17の方法。
【請求項21】
該キナーゼが、ERK1、ERK2、MEK1、またはMEK2である、請求項17の方法。
【請求項22】
該キナーゼがERK2である、請求項17の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−536946(P2009−536946A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509575(P2009−509575)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/008591
【国際公開番号】WO2007/133352
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(500017830)コーサン バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】