説明

大表面積温度感知装置

被術者の体内の組織又は器官の表面の温度を監視するための温度プローブは、略二次元配列を有する区間と、略二次元配列により画定される面積に亘って配置されている複数の温度センサーを含んでいる。その様な器械は、温熱技法を用いて病態を診断したり病変組織を治療する処置と関連して使用することができる。具体的には、温度プローブを使用して、治療対象組織に近接して位置する組織又は器官の表面の或る面積に亘って温度を監視し、監視対象の組織又は器官が、損傷を受ける可能性のある温度に曝されるのを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的には、被術者の体内の中空器官の内面の温度を監視するための器械に、より厳密には、中空器官の内面の或る面積に亘って点在する異なる場所で温度を監視するように構成されている温度監視器械に関する。本発明は、隣接する組織又は器官を加熱又は冷却する技法を含め、中空器官の内面の各面積に亘って温度を監視する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2008年3月18日出願の米国仮特許出願第61/037,624号に対し、35U.S.C.第119条(e)の下に優先権の恩典を主張する。
患者の体内の組織又は器官を加熱又は冷却する技法として様々な技法が開発されている。組織は、高周波数超音波、ラジオ波治療、レーザー治療、赤外線放射の使用を含む各種技法や熱エネルギーの直接印加により加熱することができる。冷却は、低温学的に行われることが多い。組織を加熱する技法と冷却する技法を総称して「温熱技法」と呼ぶこともある。
【0003】
温熱技法は、様々な病態の診断や様々な病態の治療を行うのに有用である。より具体的には、温熱技法は、癌組織の診断及び/又は治療、病変組織の破壊、血液の凝固を行ったり、様々な他の診断的及び外科的処置を行うのに使用することができる。温熱技法を施すことができる器官の例として、心臓、肺、消化器、肝臓、膵臓、泌尿器、前立腺、生殖器、及び皮膚が挙げられる。
【0004】
一部の温熱技法ではその効率を最適化するのに必要な加熱又は冷却の度合いが、治療対象の組織又は器官に隣接している組織又は器官に悪影響を及ぼすことがある。例えば、ヒトの被術者の心房細動を治療するのに左心房アブレーション技法が用いられた場合、大量の熱が発生する。図1に示されている心臓Hの病変組織が加熱及び治療されることに加え、心臓Hの左心房LAに隣接している食道Eも加熱される可能性がある。図1に例示されている様に、典型的なヒトの食道Eは、一般的にはホットケーキに似た細長い楕円形状を有しており、食道の寸法、形状、及び/又は位置に差はあるかもしれないが、食道Eの外表面の大半が左心房LAの隣に又はこれに接して位置している。平均的な成人では、食道Eは、直径14mmの食道Eの長さ約58mmの前方側の大部分が左心房LAに近接又は接触して位置している。食道Eと左心房LAがこの様に密接な配列にあることで、左心房アブレーション中に発生した熱が食道を傷つけ、場合によっては食道瘻を生じさせる可能性がある。不運にも、食道瘻によって引き起こされる合併症は往々にして処置後数週間を経るまで露呈せず、多くの場合、露呈した時には、生じてしまった、時には命にかかわることもある損傷を処置及び/又は治療するには手遅れである。
【0005】
左心房アブレーション時の食道の過熱による悲惨な結末を認識して、被術者の食道内の温度を監視する単一の温度センサーを備えたカテーテルを使い始めた医師もいる。典型的には、9フレンチ(約3mmの直径)から約18フレンチ(約64mmの直径)の寸法のカテーテルが、従来型の温度センサー(例えば、英国ケント州ハイズのSmiths Medical社から入手可能な食道聴診器)と関連して使用されている。感知温度が所定レベルに達すると、医師は、左心房アブレーションを一時中断して食道を冷ます。しかしながら、単一の温度センサーでは、左心房に隣接して位置する食道壁の比較的広い面積内の1つの場所の熱を監視することしかできないことから、これらの技法の有効性には限界がある。
【0006】
左心房アブレーション処置中に食道瘻が生じる可能性を減らすための努力の表れとして、多種多様な型式の膨張式装置が開発されている。膨張式装置には、左心房アブレーション中に食道を冷却するように構成されているものがある。膨張式装置には、他にも、1つ又はそれ以上の温度センサーと食道壁の前方部の内面の間の接触を確保するように構成されているものもある。異を唱えられるかもしれないが、食道Eは、比較的硬い心臓Hの左心房LAとなおいっそう硬い脊柱VCの間に閉じ込められている(図1参照)ので、食道Eの中へ導入された装置を膨らませることによって食道Eの形状に何らかの変化があっただけで、食道Eは押されて又は拡延して左心房LAに更に近づくか又はより密接に接触してしまう。その様な動き又は拡延があれば、その結果、明らかに、左心房アブレーション処置が食道瘻を引き起こす可能性は高くなる。更に、膨張式装置の使用は、望ましくないことに、典型的に長時間(2乃至4時間)の処置中、被術者の嚥下を阻害してしまい、被術者は処置中全身麻酔下に置かれることを余儀なくされることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/037,624号
【発明の概要】
【0008】
本発明は、内部器官表面に当てがって配置されるように構成されている温度プローブの様々な実施形態を含んでいる。本発明の教示を組み入れた温度プローブは、細長い部材と、当該細長い部材の長さに沿った別々の場所に担持されている複数の温度センサーを含んでいる。細長い部材の一区間は、中空器官の内部に配置されているときは、温度センサーがエリアアレイ状に配列される略二次元配列を有するように構成されている。細長い部材の当該成形区間の配列は、細長い要素とそれが担持している温度センサーの厚さ、並びに細長い要素の二次元配列にとって望ましい平面からの僅かなずれを勘案して、「略二次元配列」と呼ばれている。
【0009】
本発明の温度プローブの一部分の略二次元配列は、幾つかの実施形態では、温度プローブ又はそれと共に使用されることになる器械(例えば、カテーテル、ガイドワイヤ、成形用ワイヤなど)の製造中に画定することができる。他の実施形態では、温度プローブ又はそれと共に使用されるように構成されている器械は、医師が略二次元配列を画定できるように構成することができる。
【0010】
幾つかの実施形態では、細長い部材は、弛緩状態では所望の略二次元配列へ予成形されている区間を有する可撓性要素を備えている。その様な特性を有する細長い部材は、応力下に直線状のカテーテルの中へ導入されると、略直線状又は略一次元形態を呈するが、予成形されている区間がカテーテルから離れると、当該区間はその弛緩状態に戻り、略二次元配列を有することができる。
【0011】
他の実施形態では、細長い部材は、略直線状又は略一次元形態を有してはいるが、所望の形態の略二次元配列に付形することのできる区間を含んでいる要素である。通常は略直線状の細長い部材の一区間は、略二次元配列を有する区間を含んでいるワイヤが当該細長い部材のルーメンの中へ導入されると略二次元配列を呈することができる。その様なワイヤは、それ自体が多少の可撓性を有しているか又は選択的に(例えば、その温度などに依って)可撓性を有するものであってもよく、被術者の身体の中空器官の内部へのワイヤ導入は、細長い要素の近位及び/又は中間部分の剛性、ワイヤを形成している材料の特性(例えば、形状記憶など)、又は何れかの他の適した手段により行うことができる。ワイヤの成形部分が、細長い部材の対応する可撓性区間の中へ導入されると、細長い部材の当該区間は略二次元配列を取ることができる。
【0012】
本発明の温度プローブの他の実施形態は、細長い部材の略直線状の区間を二次元配列に変換するための機構を含んでいる。1つのその様な実施形態では、細長い要素は、制御ワイヤを、当該制御ワイヤの長さの一部分に沿った多要素部分と共に備えている。多要素部分は、温度センサーを担持する少なくとも2つの平行な腕部を含んでいる。多要素部分は、カテーテル内に入れられている間は略直線状形態を有することができる。一旦カテーテルが中空器官の内部へ導入されてしまうと、制御ワイヤを遠位方向に動かして多要素部分をカテーテルの遠位端から押し出すことができる。次いで、制御ワイヤをカテーテルの遠位端に向けて引き戻すと、遠位端が少なくとも2つの平行な腕部と関係付けられている作動部に係合し、腕部を外向きに撓ませ、強制的に多要素部分をループの様な略二次元配列にする。
【0013】
温度プローブの一区間に略二次元形態を取らせるための他の技法(例えば、温度プローブの一区間を貫いて延びているルーメンから空気を吸引すること、温度プローブの一区間を貫いて延びているルーメンの中へ圧力を導入すること、被術者の体内への温度プローブの導入に続けて温度プローブの一区間を操作することなど)も、本発明の範囲に含まれる。
【0014】
本発明は、温度プローブを、略直線状又は一次元形態で被術者の体内へ導入し、次いで、温度プローブの細長い部材の一区間が被術者の体内の所望の場所に置かれたら、当該区間に略二次元配列を取れるようにする又は取らせるための技法を含んでいる。
【0015】
本発明は、温度プローブの様々な実施形態を含んでいること加え、更に、体組織の或る面積に亘って様々な場所で温度を監視する方法又は処置の実施形態を含んでいる。その様な処置が行われる場合、被術者の身体の第1の組織又は器官には温熱技法が施され、その間、被術者の身体の隣接する第2の組織又は器官の或る面積に亘って温度が監視される。幾つかの実施形態では、第2の組織又は器官の温度は、第2の組織又は器官を実質的に変形させること無く、第2の組織又は器官を実質的に変位させること無く、及び/又は第2の組織又は器官が機能するのを阻害すること無く監視することができる。更に、監視対象面積の何れかの部分が損傷を受ける可能性のある温度(低温又は高温)に近づけば、予防措置が講じられる。様々な実施形態のその様な予防措置には、限定するわけではないが、温熱技法を一時的に中断すること、第2の組織又は器官の影響を被る部分を第1の組織又は器官から遠ざけること、及び/又は、第2の組織又は器官の影響を被る部分の温度を変化させること、が含まれる。
【0016】
或る特定の実施形態では、本発明の方法は、心房細動を治療するのに用いられる外科的処置である左心房アブレーション中に行うことができる。左心房アブレーション処置中は、被術者の心臓の左心房に隣接して位置する被術者の食道壁の前方部分の内面の或る面積に亘って離間している複数の場所で温度を監視することができる。その様な温度監視は、食道の形状を何ら実質的に変化させること無く、食道の監視対象部分を何ら実質的に変位させること無く、且つ食道を遮断したり、またそうでなければ被術者の嚥下を阻害したりすること無く行うことができる。感知対象面積の何れかの部分が、損傷を受ける可能性のある温度に近づけば、警戒措置が講じられる。様々な実施形態では、左心房アブレーション処置が一時的に中断され、食道の熱せられた部分が左心房から遠ざけられ、及び/又は、食道の熱せられた部分が冷却されることになる。
【0017】
限定するわけではないが、肺静脈のアブレーション中に気管の温度を監視すること、前立腺の温熱治療中に尿管及び/又は結腸の温度を監視すること、肝臓の温熱治療(例えば、肝癌などの治療)中に小腸の十二指腸の一部分の温度を監視し、及び随意的に平定化すること、肝臓の温熱治療中に胆嚢管、胆嚢、及び/又は胃の温度を監視すること、鼻腔の内側を覆っている組織を通じて脳の温度を監視すること、咽頭部温熱処置中に鼻腔の組織の温度を監視すること、及び腎臓結石を破砕している間、腎臓の組織又は腎臓に隣接する組織を監視することを含め、温熱技法を採用する処置の他の実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0018】
当業者には、次の詳細な説明、添付図面、及び付随の特許請求の範囲を考察することにより、本発明の他の態様、並びに様々な特徴及び利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】食道と心臓の間の関係を例示している、ヒトの身体の一部分の断面図である。
【図2】略二次元配列を有する一区間と、当該区間が略二次元配列にあるときはエリアアレイ状に配列されるようなやり方で当該区間に沿って配列されている温度センサーと、を含んでいる細長い部材を備えている温度プローブの或る実施形態を描いている。
【図2A】本発明の温度プローブの細長い部材の異なる実施形態を例示している。
【図2B】本発明の温度プローブの細長い部材の異なる実施形態を例示している。
【図3】図2に示されている温度プローブの実施形態であって、略直線状又は一次元形態を有するカテーテルのルーメン内に配置されているときの略直線状又は一次元形態にある実施形態を例示している。
【図4】図2に示されている温度プローブの実施形態の一区分が、図3のカテーテルの遠位端を出てその略二次元配列に弛緩した状態を描いている。
【図5】弛緩状態で略直線状又は一次元状にすることのできる可撓性区間を含み、且つ複数の温度センサーを担持する可撓性区間を含んでいる、細長い部材を備えた温度プローブの或る実施形態を示している。
【図6】弛緩状態で略二次元配列を有する区間を備えた成形ワイヤの或る実施形態を例示している。
【図7】図5に示されている温度プローブの実施形態の、被術者の中空器官の内部への導入を描いている。
【図8】図6の成形ワイヤの、図5の温度プローブの中への導入を描いており、略二次元配列を有する区間は略直線状又は一次元形態に変形した状態である。
【図9】図6のワイヤの成形部分が可撓性区間内でその略二次元配列を取っているときの、略二次元配列にある図5の温度プローブの可撓性区間を示している。
【図10】本発明の温度プローブの一区間を配列させることができる二次元形態の異なる実施形態を描いている。
【図11】本発明の温度プローブの一区間を配列させることができる二次元形態の異なる実施形態を描いている。
【図12】本発明の温度プローブの一区間を配列させることができる二次元形態の異なる実施形態を描いている。
【図13】本発明の温度プローブの一区間を配列させることができる二次元形態の異なる実施形態を描いている。
【図14】本発明の温度プローブの一区間を配列させることができる二次元形態の異なる実施形態を描いている。
【図15】本発明の温度プローブの一区間を配列させることができる二次元形態の異なる実施形態を描いている。
【図16】本発明の温度プローブの一区間を配列させることができる二次元形態の異なる実施形態を描いている。
【図17】本発明の温度プローブの一区間を配列させることができる二次元形態の異なる実施形態を描いている。
【図18】所望の場所又はその付近に配置されると、機械的に略二次元配列に整えられるように構成されている温度プローブの或る実施形態を例示している。
【図19】所望の場所又はその付近に配置されると、機械的に略二次元配列に整えられるように構成されている温度プローブの或る実施形態を例示している。
【図20】所望の場所又はその付近に配置されると、機械的に略二次元配列に整えられるように構成されている温度プローブの或る実施形態を例示している。
【図22】図18から図20で示されている実施形態と同様の要素を含んでいる温度プローブの実施形態を描いている。
【図23】図18から図20で示されている実施形態と同様の要素を含んでいる温度プローブの実施形態を描いている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
器官の内面に当てがって導入するように構成されている温度プローブにおいて、
細長い部材であって、
被術者の中空器官の内部へ挿入される遠位部分であって前記中空器官の内部に在るときは略二次元配列を有するように構成されている遠位部分において、前記略二次元配列は、前記細長い部材の長さの残り部分と同一の長さと、前記細長い部材の幅を上回る幅と、前記細長い部材及び前記細長い部材の前記遠位部分により担持されている任意の追加の要素とほぼ同厚さの厚さとを有している、遠位部分と、
前記細長い部材の、前記遠位部分と反対側の端に隣接する近位部分であって、前記被術者の身体の外部の器械と連絡するように構成されている近位部分と、を含んでいる細長い部材と、
前記遠位部分が前記略二次元配列にあるときは、エリアアレイに亘って配列されるように前記遠位部分により担持されている複数の温度センサーであって、前記エリアアレイが、横方向(X軸)に互いから前記細長い部材の幅を上回る第1距離だけ離間されている少なくとも2つのセンサーと、縦方向(y軸)に互いから少なくとも前記第1距離ほどの長さの第2距離だけ離間されている少なくとも2つのセンサーを含んでいる、複数の温度センサーと、を備えている温度プローブ。
【請求項2】
前記細長い部材の前記遠位部分の少なくとも当該部分の前記略二次元区間と前記遠位部分により担持されている前記複数の温度センサーとの組合せ幅は、前記中空器官の内部の断面形状を実質的に変形させること無く、前記中空器官の内部に納まるように構成されている、請求項1に記載の温度プローブ。
【請求項3】
前記細長い部材の前記遠位部分は単一要素を含んでいる、請求項1に記載の温度プローブ。
【請求項4】
前記細長い部材の前記遠位部分の少なくとも当該部分は、蛇行状形態、ループ状形態、及び螺旋状形態のうちの少なくとも1つを備えた略二次元配列を有するように構成されている、請求項3に記載の温度プローブ。
【請求項5】
前記略二次元配列の幅は、前記二次元配列の2つの横方向に分岐した部分の間の横方向(x軸)の距離に対応している、請求項4に記載の温度プローブ。
【請求項6】
前記略二次元配列の幅は、前記遠位部分の少なくとも2つの隣接して配置されている離間した部分の間の距離に対応している、請求項4に記載の温度プローブ。
【請求項7】
前記細長い部材の前記遠位部分は、少なくとも2つの実質的に平行な細長い要素であって、各々が少なくとも1つの温度センサーを担持しており、少なくとも1つは複数の温度センサーを担持している、少なくとも2つの細長い要素を含んでいる、請求項1に記載の温度プローブ。
【請求項8】
前記複数の実質的に細長い要素はループを形成している、請求項7に記載の温度プローブ。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載の温度プローブを被術者の体内へ導入するための方法において、
前記温度プローブに略直線状形態を提供する段階と、
前記温度プローブの遠位部分を前記被術者の体内へ導入する段階と、
前記温度プローブが前記被術者の体内に設置された状態で、前記温度プローブの一区間に、複数の温度センサーが或る面積に亘って点在する略二次元配列を付与する段階と、を備えている方法。
【請求項10】
前記温度プローブの前記区間に前記略二次元配列を付与する段階は、前記温度プローブの前記区間を弛緩状態に戻らせる段階を備えている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記温度プローブに前記略直線状形態を提供する段階は、前記温度プローブの前記遠位部分を前記被術者の体内へ導入する間、前記温度プローブの前記区間を略直線状形態に拘束する段階を備えている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記温度プローブの前記区間に前記略二次元配列を付与する段階は、前記区間が前記被術者の体内に置かれた後、前記温度プローブの前記区間を前記略二次元配列に成形する段階を備えている、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記温度プローブの前記区間を前記略二次元形態に成形する段階は、機械的に行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
被術者を治療するための方法において、
前記被術者の第1の器官を温熱又は冷熱で治療する段階と、
隣接する第2の器官の内部の或る面積に亘って温度を監視する段階であって、前記第2の器官の形状を改変すること無く、又は前記第2の器官と前記第1の器官の間の接触を増やしたり間隔を狭めたりすること無く監視する段階と、を備えている方法。
【請求項15】
前記温度を監視する段階は、前記第2の器官を損傷を受ける温度にまで加熱又は冷却するのを防止する段階を含んでいる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の器官を治療する段階は、心房細動を備えており、
前記第2の器官の内面の前記面積に亘って温度を監視する段階は、食道の内面の或る面積に亘って温度を監視して、食道瘻の形成を防ぐ段階を備えている、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
請求項1から8の何れか1項に記載の温度プローブにより、被術者の身体の組織の表面に亘って複数の場所で感知された温度を表示するためのモニターにおいて、複数の表示温度を、前記温度プローブの前記略二次元配列に散らばる温度センサーの配列に対応する配列に配する表示要素を備えているモニター。
【請求項18】
前記表示要素は、高感知温度と低感知温度のうちの少なくとも一方の表示値とは別の視覚信号を提供する、請求項17に記載のモニター。
【請求項19】
前記表示要素は、監視対象組織の温度が変化する速度を表す、請求項17に記載のモニター。

【図23】温熱技法が採用される処置と関連した本発明の温度プローブの或る実施形態の使用を概略的に描いている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図2に示されている様に、本発明の或る実施形態による温度プローブ10は、近位部分22、中間部分24、及び遠位部分26を有する細長い部材20を含んでいる。更に、温度プローブ10は、中間部分24と遠位部分26の一方又は両方に沿って設置されている複数の温度センサー30を含んでいる。より具体的には、温度センサー30は、被術者の体内の組織又は器官の表面の或る面積に隣接して又は当てがって置かれているとき、略二次元配列40を有するように構成されている細長い部材20の一区間28に沿って配置されている。区間28は、同様に、放射線不透過性マーカー、エコー発生マーカー、他のセンサーなどの様な他の要素を担持していてもよい。略二次元配列40の形状は、細長い部材20が単独で網羅できる非常に小さい面積と比べ、相対的に広い面積(例えば、描かれている実施形態のエリアアレイ)に亘って3つ又はそれ以上の温度センサー30を分散させる。温度センサー30は、少なくとも2つのセンサー30が、横方向(x軸)に互いから細長い部材20の幅を上回る第1距離だけ離間され、少なくとも2つのセンサー30が、縦方向(y軸)に互いから少なくとも第1距離ほどの長さの第2距離だけ離間されたエリアアレイに亘って配列させることができる。
【0021】
細長い要素20は、様々な実施形態では、約20cmから約200cmの長さを有していてもよい。略二次元配列40は、細長い要素20の直径を少なくとも10パーセント上回る幅を有していてもよい。或る特定の実施形態では、略二次元配列40は、約10mmから約30mmの幅と約40mmから約80mmの長さを有する面積を網羅するが、より幅の狭い面積、より幅の広い面積、より短い面積、及びより長い面積を網羅する略二次元配列も本発明の範囲に含まれる。
【0022】
図2で描かれている様な幾つかの実施形態では、細長い部材20の区間28は、弛緩状態にある間、略二次元配列40の形態になることができる。その様な実施形態では、細長い部材20を形成している材料は、少なくとも或る特定の条件下で(例えば、他の条件の有無は別として或る荷重下に置かれているとき)、区間28の略二次元配列40からより直線的な略一次元形態への引き伸ばしが可能になるように、多少の可撓性と伸縮性を有するものとすることができる。例えば、区間28は、図3に示されている様に、カテーテル50のルーメン52内で荷重下に置かれると引き伸ばされることになる。
【0023】
予成形されてはいるが可撓性を有する細長い部材20(又は少なくともその区間28)を形成するのに適した材料は、プラスチック及び合金を含め様々な材料がある。細長い部材20の区間28がプラスチックから形成されている実施形態では、プラスチックは、ポリエステル、ポリウレタン、ラテックス、ポリ塩化ビニル、及びペバックス(PEBAX(登録商標))として市販されているポリエーテルブロックアミドを備えていてもよい。細長い部材20を形成するのに使用することのできる金属及び/又は合金には、限定するわけではないが、ニチノール(NITINOL)(nickel titanium naval ordinance laboratory:海軍兵器研究所のニッケルチタンの略)と呼ばれるニッケルチタン合金、スチール、ニッケル−チタン、コバルト−クロム、及び商標名ELIGLOY(登録商標)で入手可能なコバルトを主材料とする合金、の様な形状記憶合金が含まれる。金属又は合金から形成されている細長い部材20は、幾つかの実施形態では、温度プローブ10が導入される被術者の身体の組織及び器官への損傷を防ぐために、より軟質のポリマーで被覆されていてもよい。幾つかの実施形態では、細長い部材20全体が同じ材料から形成されていてもよく、一方で、細長い部材20の他の実施形態は、金属製の近位部分22をプラスチック製又は形状記憶合金製の遠位部分26に接合した様な混成構造を有している。
【0024】
図2Aで描かれている様に、細長い部材20がプラスチックから形成されている実施形態を含め、幾つかの実施形態では、細長い部材20は、1つ又はそれ以上のルーメン21a、21b、21c(3つが図示されている)が中を貫いて延びている管状部材を備えていてもよい。その様な細長い部材20のルーメン21aは、ワイヤ(例えば、温度センサー30や他のセンサーなどに通じている熱伝導性要素又は電気伝導性ワイヤ32)又は温度プローブ10の他の要素を収容するように構成されていてもよい。ルーメン21bは、流体(例えば、熱シンクを提供する流体、感知対象組織の温度を下げるための冷却された流体、感知対象組織の温度を上げるための加熱された流体など)を被術者の体内に対し搬入及び搬出するように、又は他の医療装置を被術者の体内へ導入することができる経路を提供するように構成されていてもよい。細長い部材20のルーメン21cは、ガイドワイヤを受け入れるように構成されていてもよい。
【0025】
細長い部材20の内部(例えば、ルーメン21a)を貫いて延びるワイヤ32に代えて、ワイヤ32は、図2Bで例示されている様に、細長い部材20(細長い部材20が1つ又はそれ以上のルーメン21a、21b、21cを含んでいる実施形態はもとより細長い部材20がルーメンを欠いているか又は中実の断面を有している実施形態も含む)の外側に担持されていてもよい。外側に担持されるワイヤ32の様々な実施形態には、細長い部材20の外面に形成された金属膜をエッチングすることによって画定されているワイヤ、細長い部材20の外面に型押し又は印刷されているワイヤ、及び細長い部材20の外面から分離されてはいるが当該外面に担持(例えば、巻き付けなど)されているワイヤが含まれる。無論、細長い部材20が金属又は合金から形成されている実施形態では、電気絶縁性要素(例えば、誘電体コーティングなど)(図示せず)が、細長い部材20の外側面により担持されているワイヤ32を細長い部材20の材料から電気的に隔離していてもよい。
【0026】
図2Bで描かれている様に、幾つかの実施形態では、細長い部材20は、中実の断面を有していてもよい。
温度プローブ10の各温度センサー30は、当技術で既知の何れの適した型式の温度センサーを備えていてもよい。様々な実施形態では、熱電対又はサーミスタを金属又は熱伝導性(例えば、プラチナ、プラチナ−イリジウム、金など)のセンサーにスエージ加工したものが、温度センサー30として使用されていてもよい。各温度センサー30は、特定の場所の一つの温度を感知するように構成された単一要素を備えていてもよい。代わりに、本発明の温度プローブ10の1つ又はそれ以上の温度センサー30は、複数の集団化された温度感知要素であって、それぞれが異なる温度を感知及び/又は報告して、或る特定の場所の更に正確な温度読み取りを提供することができる感知要素を含んでいてもよい。
【0027】
温度センサー30(又はセンサー30の個々の温度感知要素)と連絡しているワイヤ32は、細長い部材20に沿って近位方向に、細長い部材20の近位部分22と関係付けられている適したコネクタ34まで延びている。幾つかの実施形態では、コネクタ34は、既知の400シリーズコネクタ又は既知の700シリーズコネクタ、例えばDatex Ohmeda、GE Medical、日本光電、又はVital Signs, inc.社により製造されているコネクタなど又はそれらに類似したコネクタを備えていてもよい。
【0028】
コネクタ34は、ワイヤ32及び従って熱センサー30の、適した温度モニター(図示せず)への接続を可能にしており、同モニター自体は温度表示システム36と関係付けられている処理要素(図示せず)と連絡している。描かれている実施形態では、表示システム36は、細長い部材20の区間28の略二次元配列40の温度センサー30の場所に対応している様々な場所で監視された温度38a、38b他を示す表示要素37を含んでいる。温度38a、38b他は、視覚的に、略二次元形態40に散らばる温度センサー30の物理的配置に対応するやり方で配列されていてもよい。更に、表示システム36は、最暖感知温度と最冷感知温度38a、38b他を(例えば、それぞれに赤色と青色の様な色、それぞれに高速点滅と低速点滅、などによって)明瞭に識別していてもよい。表示システム36は、同様に、感知温度が変化する速度39を提示していてもよい。温度変化の速度は、数値で表示されていてもよいし、描かれている様にグラフで表示されていてもよい。
【0029】
図3を参照すると、温度プローブ10を被術者の体内へ導入するための方法の或る実施形態が描かれている。具体的には、温度プローブ10は、略直線状又は一次元状カテーテル50のルーメン52の中へ導入されている。カテーテル50は、カテーテル50がその略直線性を維持している間は、温度プローブ10の細長い部材20の区間28を撓らせ、かくして真っ直ぐにすることができるほどの剛性を有している。幾つかの実施形態では、カテーテル50は、更に、湾曲した管腔又は脈管を通過することができるほどの可撓性を有していてもよい。温度プローブ10は、温度プローブ10の細長い要素20の非直線状の略二次元配列40(図2)が略直線形態のカテーテル50のルーメン52内に閉じ込められた状態で、被術者の体内の中空領域Hの中へ簡単に導入することができる。
【0030】
一旦、温度プローブ10の細長い要素20の遠位部分26が中空領域H内に配置されてしまうと、遠位部分26と区間28をルーメン52の遠位端54から押し出して、中空領域Hに送り込むことができ、そこで、区間28は、図4で示されている様に、その弛緩した略二次元配列40を取ることができる。
【0031】
温度プローブ10を真っ直ぐにして同プローブの遠位部分26を中空領域Hの中へ導入するのにカテーテルを使用する代わりに、遠位端が既に中空領域Hの中まで導入されているガイドワイヤの近位端を、細長い部材30のルーメン21c(図2A)の中へ導入してもよい。ガイドワイヤの剛性は、細長い部材30の区間28を真っ直ぐにして、中空領域Hの中への導入をやり易くするのに十分なものとすることができる。一旦、区間28が所望の場所に導入されてしまうと、ガイドワイヤをルーメン21cから取り出し、区間28に略二次元配列40を取らせることができる。
【0032】
本発明の温度プローブ10’のもう1つの実施形態が、図5から図9で描かれている。図5で示されている様に、温度プローブ10’は、細長い要素20(図2)と同じ特性を有する略一次元状の細長い要素20’を備えているが、細長い要素20’の当該区間28’が略二次元形態40(図2)を有するように成形されていない点が基本的に異なる。その代わりに、温度プローブ10’の細長い要素20’の区間28’は、可撓性を有しており、略二次元形態40(図2)を呈するように変形させることができる。
【0033】
図6と図7で描かれている様に、細長い要素20’の長さを貫いて延びるルーメン21’は、成形ワイヤ60を受け入れるように構成されている。図6に示されている様に、成形ワイヤ60は、ルーメン21’の中へ導入される前は、弛緩状態で略二次元配列64を有する区間62を含んでいる。成形ワイヤ60は、実質的に真っ直ぐにすることのできる可撓性要素である。様々な実施形態では、成形ワイヤ60は、室温では可撓性を有するが(例えば、被術者の体温などまで)熱せられると剛質になる形状記憶合金の様な、多少剛性を有しながらなお且つ可撓性のプラスチック又は金属又は合金から形成することができる。
【0034】
図7は、温度プローブ10の細長い要素20’の遠位部分26’と中間部分24’の、被術者の身体の中空領域Hの中への導入を例示している。細長い要素20’が中空領域Hの中へ導入されると、区間28’により担持されている温度センサー30も同様に導入される。細長い要素20’が略直線状又は一次元形態であるために、中空領域Hの中へ導入するには既知の技法を使用することができる。
【0035】
その後、成形ワイヤ60を図8で例示されている様に温度プローブ10’の細長い要素20’のルーメン21’の中へ導入することができる。成形ワイヤ60がルーメン21’の中へ導入されると、成形ワイヤ60の区間62が、(例えば、細長い要素21’の近位部分22’及び/又は中間部分24’(図5)の剛性、温度に依存した可撓性などにより)変形して、区間62は略直線状になるか又は一次元形態を有することができる。区間62がその様に変形することで、成形ワイヤ60を、既に中空領域Hに挿入されている温度プローブ10’の中へ簡単に導入できるようになる。
【0036】
成形ワイヤ60の区間62(図6)が温度プローブ10’の細長い要素20’の区間28’の中へ導入されてしまうと、区間62は、図9で描かれている様に、(例えば、遷移温度又はそれを上回る温度まで加熱された際の区間28’の可撓性などにより)略二次元配列64を取ることができる。成形ワイヤ60の区間62が略二次元配列64を取ると、区間28’もその可撓性によって対応する略二次元配列40’へ引きずり込まれる。細長い要素20’の区間28’が略二次元配列40’になることで、区間28’により担持されている温度センサー30(図5)は、略二次元配列40により画定される面積に亘って点在する。
【0037】
次に図10から図16を参照すると、略二次元配列40の様々な実施形態が、温度センサー30の考えられる配列と共に描かれている。具体的には、図10から図12は、蛇行状又はS状配列の異なる実施形態を示しており、一方、図13と図14は、渦巻き状又はピグテール状配列の実施例を描いており、図15と図16は、異なるループ状の配列を例示している。勿論、他の形状及び形態の略二次元配列40も、本発明の範囲に含まれる。
【0038】
図17は、2つ又はそれ以上の実質的に平行な腕部22a”、22b”他を含んでいる「拡大遠位部分22”」を有する温度プローブ10”のフォーク状の実施形態を示している(描かれている実施形態は、3つの腕部22a”、22b”、及び22c”を有する遠位部分22”を含んでいる)。例示されている様に、各腕部22a”、22b”、及び22c”は、少なくとも1つの温度センサー30を担持している。幾つかの実施形態では、1つ又はそれ以上の腕部22a”、22b”、22c”他は、2つ以上の温度センサー30を担持していてもよい。
【0039】
図18から図20は、所望の場所又はその付近に配置されると、機械的に略二次元配列に整えられるように構成されている温度プローブ100のもう1つの実施形態を例示している。
【0040】
図18に示されている様に、温度プローブ100は、導入カテーテル150と、少なくとも部分的に導入カテーテル150により担持されている細長い要素120と、細長い要素120の遠位部分126により担持されている複数の温度センサー30と、を含んでいる。
【0041】
細長い要素120は、近位方向に設置されている牽引ワイヤ121を含んでいる。細長い要素120を導入カテーテル150のルーメン152を通して動かし易くするために、牽引ワイヤ121の近位端122には使用者係合要素110が関係付けられている。牽引ワイヤ121は、実質的に、細長い要素120の全長に沿って延びていてもよい。描かれている実施形態では、牽引ワイヤ121の中間部分124がスリップリング125を貫いて延びており、そこへ2つ又はそれ以上のループワイヤ127の近位端128が取り付けられている。各ループワイヤ127は、少なくとも1つの温度センサー30を担持しており、描かれている様に、少なくとも1つのループワイヤ127は複数の温度センサー30を担持していてもよい。ループワイヤ127の遠位端129は、牽引ワイヤ121にその遠位端126又は付近で取り付けられている。幾つかの実施形態では、ループワイヤ127の遠位端129は牽引ワイヤ121に固定的に取り付けられていてもよい。
【0042】
牽引ワイヤ121の遠位端126は、牽引ワイヤ121が遠位方向に進められ、遠位部分126が導入カテーテル150を出たときの、被術者の組織への外傷を防ぐ要素を備えて構成されているか又はその様な要素で被覆されていてもよい。
【0043】
図18で示されている配列では、ループワイヤ127は、導入カテーテル150に対しルーメン152内に入れられている。この配列は、温度プローブ100の遠位部分の、被術者の身体の中空領域Hへの導入をやり易くする。一旦、温度プローブ100の遠位部分が所望の場所に配置されてしまうと、細長い要素120はルーメン152の中を遠位方向に、図19に描かれている様にループワイヤ127の近位端128とスリップリング125がルーメン152の遠位端154を出るまで、押し出される。
【0044】
その後、図20に示されている様に、牽引ワイヤ121は近位方向に引き込まれる。牽引ワイヤ121が近位方向に引き込まれると、スリップリング125、ループワイヤ127の近位端128、及び/又はスリップリング125又は近位端128と関係付けられている係合要素(図示せず)は、導入カテーテル150の遠位端154に係合する。牽引ワイヤ121が更に引き込まれ、近位端128が遠位端154に対して所定場所に保持されると、ループワイヤ127は外向きに撓んで温度プローブ100の遠位部分に略二次元配列140を提供する。温度プローブ100の遠位部分が略二次元配列140にある間は、ループワイヤ127により担持されている温度センサー30は、略二次元配列140により画定される面積に亘って点在する。ループワイヤ127が拡張する面積は、無論のこと、牽引ワイヤ121がどの程度引き込まれるかによって決まる。
【0045】
再度図18を参照するが、使用者係合要素110と牽引ワイヤ121は、使用者に略二次元配列140の向きに対する制御を付与するようなやり方で互いに関係付けられていてもよい。幾つかの実施形態では、使用者係合要素110と牽引ワイヤ121を操作して、略二次元配列140を、細長い要素120の軸に対して任意の方向に偏向(例えば、約5°まで、など)させるようにしていてもよい。
【0046】
導入カテーテル150に対する牽引ワイヤ121の位置、ひいては、温度プローブ100の近位部分の略二次元配列は、導入カテーテルの近位端158と関係付けられている固定要素159を牽引ワイヤ121の近位部分122に係合させることにより(例えば、固定要素159を下げてゆき近位部分122に締め付けることなどにより)、維持されていてもよい。
【0047】
他の実施形態では、ループワイヤ127を展開させるのに、牽引ワイヤ121の遠位部分126を部分的にカテーテル150のルーメン152の中へ引き入れることが要求されるのではなく代わりに、図21と図22にそれぞれに示されている様に、網状籠180内に封入されたバルーン170又は網状籠180単独の様な可撓性要素が、ループワイヤ127に取り付けられていてもよい。バルーン170は、既知の技法により膨らませることができる。網状籠180は、導入カテーテル150のルーメン152から取り出されると自動的に展開する圧縮要素を備えていてもよい。網状籠180は、これらの要素の何れかが内部に設置された中空器官の形状がいじられること、その変位、及び/又は閉塞が、最小に留められるか又は阻止されるように、略二次元形態(例えば、細楕円又はパンケーキ状の断面形状などを有する)を有することができる。バルーン170を含んでいる実施形態では、網状籠180はバルーンの形状を略二次元形態に拘束することができる。幾つかの実施形態では、バルーン170又は網状籠180は温度センサー30を担持していてもよい。
【0048】
図23を参照すると、被術者の身体の第1の組織又は器官Tに温熱技法が施される際に、本発明の温度プローブ10の或る実施形態を使用して、被術者の身体の第2の組織又は器官Tの表面Sの或る面積に亘って複数の場所で温度を監視する方法又は処置の或る実施形態が描かれている。細長い要素20の区間28の略二次元配列40により画定されている面積に亘って分散している複数の温度センサー30は、表面Sに当てがって設置されている。表面Sの温度が監視される際、区間28は、表面S又は表面Sを構成部分とする第2の組織又は器官Tの形状を実質的に変形させること無く、第2の組織又は器官Tの何れの部分も実質的に変位させること無く、及び/又は、第2の組織又は器官Tが正しく機能するのを阻害すること無く、表面Sに当てがって設置することができる。幾つかの実施形態では、区間28は、表面Sの形状に沿うよう僅かに変形することができる。
【0049】
表面Sの監視対象面積の何れかの部分が、損傷を受ける可能性のある温度(低温又は高温)に近づけば、予防措置が講じられる。様々な実施形態のその様な予防措置には、限定するわけではないが、温熱技法を一時的に中断すること、第2の組織又は器官Tの影響を被る部分の温度を変化させること、及び/又は第2の組織又は器官Tの影響を被る部分を第1の組織又は器官Tから遠ざけることが含まれる。第2の組織又は器官Tの影響を被る部分を動かすための様々な実施形態には、限定するわけではないが、(例えば、区間28の略二次元配列40が占める面積を修正することなどにより)第2の組織又は器官Tを扁平な(例えば、細楕円)形状に変形させること、被術者の体内の温度センサー10の位置を操作して第2の組織又は器官Tの一部分を動かすこと、又は組織を温度センサー10と共に動かすのに適した何らかの他の技法が含まれる。
【0050】
以上の説明には多くの特定事項が含まれているが、これらは、本発明の範囲を限定するものではなく、単に幾つかの実施形態の例示を提供しているものと捉えられたい。同様に、本発明の実施形態であって、本発明の範囲に含まれる他の実施形態も考えられるであろう。異なる実施形態による特徴は、組み合わせて採用することもできる。従って、本発明の範囲は、以上の説明によるのではなく、付随の特許請求項の範囲及びそれらの法的等価物によってのみ示され、限定される。ここに開示されてい本発明に対するあらゆる追加、削除、及び修正において、特許請求の範囲の意味及び範囲に含まれる全ての追加、削除、及び修正は、それにより包含されるものとする。
【符号の説明】
【0051】
10、10’、10” 温度プローブ
20、20’ 細長い部材、細長い要素
21a、21b、21c、21’ ルーメン
22 細長い部材の近位部分
22a”、22b”、及び22c” 腕部
24、24’ 細長い部材の中間部分
26、26’ 細長い部材の遠位部分
28、28’ 細長い部材の変形可能区間
30 温度センサー
32 ワイヤ
34 コネクタ
36 温度表示システム
38a、38b 監視温度
39 温度変化速度
40、40’ 略二次元配列、略二次元形態
50 カテーテル
52 ルーメン
54 ルーメンの遠位端
60 成形ワイヤの変形可能区間
62 区間
64 略二次元配列
100 温度プローブ
110 使用者係合要素
120 細長い要素
121 牽引ワイヤ
122 牽引ワイヤの近位部分
124 牽引ワイヤの中間部分
125 スリップリング
126 牽引ワイヤの遠位部分
127 ループワイヤ
128 ループワイヤの近位端
129 ループワイヤの遠位端
140 略二次元配列
150 導入カテーテル
152 ルーメン
154 ルーメンの遠位端
158 導入カテーテルの近位端
159 固定要素
170 バルーン
180 網状籠
E 食道
H 中空領域
LA 左心房
S 表面
第1の組織又は器官
第2の組織又は器官
VC 脊柱
【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公表番号】特表2011−517417(P2011−517417A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500936(P2011−500936)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/037571
【国際公開番号】WO2009/117523
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(510248590)サーカ・サイエンティフィック,エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】