説明

天井吊り下げ灯

【課題】ワイヤとハーネスとを見栄え良く結束し、且つ揺動などの摩擦に対する耐久性を向上させる吊り下げ構造を備えた天井吊り下げ灯を提供すること。
【解決手段】天井吊り下げ灯のワイヤ31とハーネス32を結束しつつ、互いが干渉しないよう、ハーネス32を側面に設けられた側面開口部41から引出すための保持部4を用い、照明器具1を吊り下げた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天井から吊り下げられる照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭用などの一般照明用途として、例えば天井に取付けられる照明器具として、天井直付け灯(シーリングライト)、天井吊り下げ灯(ペンダントライト)、天井埋め込み灯(ダウンライト)など様々な照明器具がある。
近年、その発光効率の向上によりLEDを用いた照明器具が開発、製品化されている。LEDは点光源であるため、アレイ状に複数のLEDを配列したり、導光体などと組み合わせることによりその発光態様を大きく変化させ、意匠性にバリエーションを持たせることができる。
【0003】
天井吊り下げ灯における吊り下げ構造として、吊り下げ用のワイヤとハーネス(電源ケーブル)とを別々に設けたものや、ハーネス自身を補強しワイヤを不要としたものとが知られている(特許文献1、2)。
ワイヤとハーネスが別々の場合、使用者からは線が複数見えるため美感が優れない。これはワイヤとハーネスの天井取付部からの引出し部分が別々に形成されているためであり、光源の数や照明器具の重量に応じ、線の数が増減する。特にシャンデリアのよう光源部が複数配置され、高級感、透明感を演出すべく、透明な装飾部材が複数設けられた照明器具においては、ワイヤ、ハーネスは増加せざるを得ず、増加した分だけ美感を損ねてしまう。
【0004】
これを改善するための手法として、ハーネスを強化することでワイヤを不用とし、見かけの線の数を減らすことが考えられる。
しかし照明器具の荷重が直接ハーネス部分にかかってしまうため、断線を防止すべく照明器具の重量制限が設けられるが、それでも断線による故障が問題となっている。このため上記のシャンデリアのような重量のある照明器具には適用できない。
【0005】
【特許文献1】特開2000−11743号公報
【特許文献2】特開平8−203315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人は、ワイヤとハーネスとを同じ部位から引出すことにより、見た目の線の数を減少させる検討を行った。これによればワイヤ、ハーネスの導出部において、これらケーブルを束ねて保持(結束)できるため、美感が非常に優れたものとなった。
しかしこの場合、導電性の高いCuなど比較的やわらかいハーネスと、ハーネスより高強度の線材で形成されたワイヤとが、メンテナンス時などの揺動時に互いが擦れあうなどして、ハーネスが断線してしまうなどの不具合が生じることを発見した。
さらに検討の結果、この現象は天井取付部からのケーブルの引出し部、及び照明器具を吊り下げ固定する部位における、その結束部分において顕著に発生することを突き止めた。
【0007】
そこで本発明は、ワイヤとハーネスとを見栄え良く結束し、且つ揺動などの摩擦に対する耐久性を向上させる吊り下げ構造を備えた天井吊り下げ灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を達成すべく本発明の天井吊り下げ灯は次の構成からなる。即ち、
照明器具と、
天井に取付けられた天井取付部から前記照明器具を吊り下げるワイヤと、
前記ワイヤに沿って前記天井取付部より引出され、前記照明器具に電力供給するハーネスと、
を備え、更に、
前記照明器具及び/または前記天井取付部に取付けられ、前記ワイヤと前記ハーネスとをその端部において結束する保持部とを備え、
前記保持部は前記ワイヤが挿通される中空の筒形状を有し、その側面に側面開口部が設けられており、
前記ハーネスは、前記保持部のいずれか一方の開口部と前記側面開口部とから引出されるよう挿通されることで前記ワイヤと結束される
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ワイヤとハーネスとが保持部の同じ開口部から引出されるため見栄えが良い。またハーネスを保持部に設けられた側面開口部を介して挿通させているため、筒状の保持部の中空内において、ワイヤから離間するよう配置することができるため、断線などの不具合を飛躍的に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、実施例により、本発明を実施するための最良の形態を開示する。
【実施例1】
【0011】
図1に本発明の天井吊り下げ灯の斜視図を示す。5つの照明器具1がそれぞれ天井取付部2から引出されたケーブル3により吊り下げられている。また各照明器具1は、(天井側から見た)上面視において右回りの順で照明器具1が低く配置されるよう、そのケーブル3の長さが異なるものとされている。
【0012】
円盤状の照明器具1は、ケーブル3による固定部分を除き透明な導光体で形成されており、内部に設けられた光源により、全体が発光する。本発明における実施例の照明器具1を図2、図3を用い説明する。
【0013】
図2は照明器具1の平面図と側面図であり、図3が断面図の模式図である。照明器具1は、LED13がその内部に埋め込まれるよう配置された円盤状で透明樹脂からなる導光体と、LED13の回路を構成する基板14と、導光体中央に設けられ照明器具1の吊り下げ構造となる保持部4と、搭載した基板14と保持部4とを覆うよう設けられるカバー15と、により構成されている。
【0014】
(導光体)
導光体は、LED13が配置されるよう窪みを有し、LEDから放出される光を導光することで発光する第1導光部11と、LED13とその配線を覆うよう設けられる第2導光部12とにより構成される。第1導光部11、及び第2導光部12はいずれも透明なアクリル樹脂で形成されており、その表面には、LED13から放射された光を散乱、反射する溝が複数設けられている。
【0015】
全体が均一に発光するよう演出するには光散乱するよう、例えば溝形状を細かく形成しシボ状とすればよく、また幾何学模様など意匠性を演出する場合は、導光された光をその内部で全反射させ発光面側に放射するよう、溝形状を比較的深く形成すれば良い。このような溝形状については、導光体関連分野における公知の技術を用いることができる。
【0016】
また非発光時においても照明器具1の吊り下げ部分を除くほとんど全体の部位が透明樹脂からなる導光体で構成されており、外光を溝で散乱ないし反射するため、インテリアとしても好適に用いることができる。またこのとき、導光体を介してその背後にワイヤ31やハーネス32が視認出来ないよう、反射溝を複数配置することが好ましい。
【0017】
(光源)
光源としてはLED13を好適に用いることができる。蛍光灯など公知の発光体と比較し、発光面積が非常に小さい点光源であり、様々なデザインに適用できるためである。LED13としてはGaAs系、GaP系、GaN系などの3−5族系化合物半導体やSiC系など、その所望の発光色を放出するものを適宜、蛍光体や波長フィルタなどの波長変換部材とともに好適に用いることができる。
本実施例においては、青色発光のGaN系LEDチップを用い、YAG蛍光体を含有した封止材によりLEDチップを砲弾型に封止したものを用いて白色発光させている。
【0018】
LED13には基板14から導出された配線(図示なし)が接続されている。基板14は第2導光部12に設けられた凹に収容されており、保持部4が貫通するようリング状に形成されている。基板14にはLED13を保護するためのツェナーダイオードやコンデンサ、交流を直流に変換しLED13に電力供給するブリッジ回路やコイル、または点灯制御回路など、その用途や使用形態に併せ様々な回路素子を実装することができる。
【0019】
(吊り下げ構造)
次にワイヤ31とハーネス32とを束ねて保持(結束)する保持部4を用いた吊り下げ構造について図3、図4を用い説明する。保持部4は内部が中空の円筒形状を有し、その側面に側面開口部41を有する。またその外周面にはネジ溝が設けられている。
【0020】
照明器具1を吊り下げその重量を支えるワイヤ31は開口部42を介し保持部4に挿通され、その先端に保持部4の内径より大きい径の球状の係止部を有すことで照明器具1を吊り下げている。また照明器具1に電力供給するハーネス32は使用者にケーブルがたくさんあるような印象を与えないよう、ワイヤ31に沿って配置され、保持部4の開口部42と側面開口部41とを通るよう挿通されている。
【0021】
開口部42は照明器具1が揺動しても、ワイヤ31及びハーネス32とが擦れ合うなどの干渉をせず、かつ保持部4の内周面角部とも干渉しないよう、その径が大きく形成され、エッジ部分はR状に面取りされている。
【0022】
照明器具1の組立時において、予めワイヤ31が挿通された保持部4を導光体に挿入した後、ワイヤ31の先端の係止部を覆う、ネジ溝を有するカバーで保持部4と螺合させることで照明器具1を吊り下げ保持する。このためワイヤ31先端に予め係止部が備えられる場合、係止部の大きさは、円筒状の保持部4の内径より大きく外径より小さくすることが望ましい。また係止部の接続前にワイヤ31を保持部4に挿通させる場合は、係止部をかしめることでワイヤ31と係止部とを固定接続する。
【0023】
側面開口部41は図4左図に示すよう、側面をくりぬいた開口でも良いし、図4右図に示すよう、開口部42から側面を切り欠いた、開口部42と連続した開口により形成されていても良い。このような構成によればハーネス32を保持具4に挿通する際、ワイヤ31に比べ強度の劣るハーネス32に荷重がかかってしまうことを防止でき、側面開口部41および開口部42と干渉、擦れ合うなどの現象を抑制することができる。
この開口部42と連続した側面開口部41を用いる場合、ハーネス32を保持しワイヤ31と結束するため、ナット5を設けることが好ましい。
【0024】
さらに本実施例においては側面開口部41及び基板14を覆うよう、カバー15を設けている。しばしば天井吊り下げ灯はその上面に埃がたまることが問題となる。側面開口部41や基板が表出していると、積層した埃により火災などの問題が起こりうるほか、電気的にも不安定となる。また本実施例のような透明感を演出する照明器具1において、側面開口部41から埃が侵入し内部にたまってしまうことは、見栄えを損なう要因となりうる。カバー15は保持部4に設けられたネジ溝を用い螺号しても良いし、単に基板14と側面開口部41とを覆いふさぐよう配置しても良い。後者の場合はネジ溝を用い、ナット状の係止部材で固定することが好ましい。さらにカバー15を上述のナット5として構成、適用しても良い。
【0025】
このように形成された保持部4をもちいることで、ハーネス32の断線などの不具合を防止し、耐久性の高い、より安全な照明器具を提供することができる。
【0026】
(天井部)
ここまで照明器具1側の構成について説明してきたが、上述の保持部4は天井取付部2にも使用できる。天井取付部2における断面拡大図を図5に示す。
天井取付部2は、保持部4を介し照明器具1を吊り下げ、天井に取付施工される固定用の板金21と、板金21を覆うカバー22とから構成される。
【0027】
図において、ワイヤ31はその端部付近において、係止部材が接続されており、該係止部材が保持部4に支持されることで照明器具1全体の荷重を支えている。このため固定用の板金21は、L字状に折り曲げられたその保持部4を支持する部位において、力が常に加わっている状態となる。このため図4に示した保持部4のネジ溝を用い、保持部4を強固に固定することが好ましい。
【0028】
ハーネス32は、上述のよう保持部4の側面開口部41から引出され、天井内に配設される電気ケーブルなどに接続される。この際AC−DCコンバータなど、その使用形態に応じて各種回路を接続できることはもちろんである。
【0029】
本実施例においては保持部4により吊り下げワイヤ31を固定する構造を示したが、天井吊り下げ灯に良く用いられるよう、ワイヤ31をリールなどで巻き上げ可能とし、照明器具1高さを可変とできるよう構成しても良い。但しこの場合、ワイヤ31とハーネス32とが干渉し摩擦などによる断線を生じないよう構成することが必要である。
【実施例2】
【0030】
前述の保持部4を用い、異なる形状の導光体からなる照明器具を吊り下げる事も可能である。図6に、第2の実施例における照明器具100の断面図を示す。なお、前述の実施例と同様の部材には同じ符号を付してある。
【0031】
本実施例では、光源として側面放射型LED130(側面実装型LED、サイドビュー)を用い、導光体中ではなく、保持部4の周囲を取り囲む基板14に実装されており、紙面において左右方向となる円盤状の導光部110の半径方向に、放射状に光を放出するよう構成されている。側面放射型LEDは前述の砲弾型LED13に比べ非常にコンパクトであり、導光体を薄く構成することができる。
【0032】
側面放射型LED130の発光面と導光部110との間は、シリコーンなどの透明樹脂を介し密着、又は封止するなどすることが良い。導光部110に対する導光効率が向上するためである。シリコーン樹脂による封止を行った場合は上記の効果に加え、基板14に実装された回路部品をも一体に封止することで、回路を保護することも可能となる。封止樹脂としては、光・熱に対する特性からシリコーン樹脂が好ましく、TiO2などの光拡散剤や各種フィラーを添加しても良い。さらにYAG系やBOS系などの蛍光体を添加し、LED放出光の波長変換を行っても良い。
【0033】
透明体からなる導光部110は下方向に湾曲し突出する円盤形状を有し、平面視においてその外形状は前述の実施例のものと類似している。導光部110の表面には、導光された光を散乱、反射する環状溝111が設けられている。環状溝が天井側ではなく下面に設けられていることで、側面放射型LED130から放射され導光部110内部に導光された光は、天井方向に反射される。このような構成とすることで、照明器具100は室内の床面側ではなく天井側に光放射することとなり、床面を照明するのではなく、室内空間を照明、演出する効果を奏する。
また導光部110下面の中央が厚肉とされ、湾曲し突出することで、該湾曲部分がレンズ作用を有すこととなり、ワイヤ31及びハーネス32を直視し難くなる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の天井吊り下げ灯は、主に室内照明において、天井から吊り下げられるインテリアとして、シャンデリアなどに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の天井吊り下げ灯の斜視図
【図2】吊り下げられる照明器具1の平面図と側面図
【図3】照明器具1の断面図
【図4】保持部4の斜視図
【図5】天井取付部2の断面図
【図6】照明器具100の断面図
【符号の説明】
【0036】
1 照明器具
2 天井取付部
3 ケーブル
4 保持部
5 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明器具と、
天井に取付けられた天井取付部から前記照明器具を吊り下げるワイヤと、
前記ワイヤに沿って前記天井取付部より引出され、前記照明器具に電力供給するハーネスと、
を備え、更に、
前記照明器具、または前記天井取付部に取付けられ、前記ワイヤと前記ハーネスとをその端部において結束する保持部とを備え、
前記保持部は前記ワイヤが挿通される中空の筒形状を有し、その側面に側面開口部が設けられており、
前記ハーネスは、前記保持部のいずれか一方の開口部と前記側面開口部とから引出されるよう挿通されることで前記ワイヤと結束される
ことを特徴とする天井吊り下げ灯。
【請求項2】
前記保持部の外周面にネジ溝が形成され、前記ワイヤ及び前記ハーネスとが引出された前記開口部を覆うようカバーが取付けられることを特徴とする請求項1に記載の天井吊り下げ灯。
【請求項3】
前記側面開口部は、前記開口部から側面を切り欠き形成された切欠部と、前記カバーとにより形成されることを特徴とする請求項2に記載の天井吊り下げ灯。
【請求項4】
前記照明器具は、LEDと、前記LEDの放射光を導光し面状の発光面を有する透明樹脂からなる導光部と、からなることを特徴とする請求項2〜3いずれか1項に記載の天井吊り下げ灯。
【請求項5】
前記LEDと前記導光部の間がシリコーン樹脂で封止されていることを特徴とする請求項4に記載の天井吊り下げ灯。
【請求項6】
前記導光部は、前記ワイヤと前記ハーネスとを前記導光部を介して直視できないよう、複数の溝状の光反射部が形成されることを特徴とする請求項4〜5いずれか1項に記載の天井吊り下げ灯。
【請求項7】
前記溝状の光反射部は、前記導光部の天井吊り下げ灯における床面側に設けられ、内部を導光された光を天井方向に反射させる、ことを特徴とする請求項6に記載の天井吊り下げ灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−153215(P2010−153215A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330229(P2008−330229)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】