説明

天井埋込形空気調和装置の室内機

【課題】 天井埋込形空気調和装置の室内機において、室内機本体から容易に取り出すことができる加湿アセンブリの取付構造を実現する。
【解決手段】室内機本体10の吹出口11に、前面と後面に送風用の開口31、32を有し、かつ側面または下面の少なくとも一方に点検用の開口33、34が設けられた、箱型のメンテナンスボックス30を取り付ける。また室内機本体10の熱交換器4と吹出口11との間に加湿アセンブリ50を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、天井裏に据え付けられる天井埋込形空気調和装置の室内機に関し、更に詳しくは、室内機への加湿アセンブリの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10に従来の天井埋込形空気調和装置の室内機を示す。室内機1は、外箱10内にファン2、モータ3および熱交換器4が収容されており、モータ3を駆動することによってファン2を回転させ、図示しない吸込口から吸い込んだ空気を熱交換器4で熱交換することによって、冷房や暖房を行うものである。
【0003】
上述の室内機1において、暖房時の室内空気の湿度低下を防ぐために、オプションとして、特許文献1に記載されたような加湿アセンブリ11を取り付ける場合がある。この加湿アセンブリ11は、加湿エレメントの交換等のメンテナンスが必要である。
【0004】
図10に示すように、室内機1は天井裏天井6および天井7で挟まれた狭い空間に設置されている。加湿アセンブリ11のメンテナンス(点検)を行う際には、作業員が天井7に設けられた室内機1近くの任意の位置にある点検口8を開け、室内機1の外箱10の側面にあるメンテナンス口9にねじ等で固定されているメンテナンスカバー5を外す。その後、矢印で示すように、メンテナンス口9より加湿アセンブリ11を側面方向に引き出して、室内機1から取り出さなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−140540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在ではメンテナンス口9から加湿アセンブリ11が取り出すことができる室内機においても、市場の要求や設置場所の制限により室内機本体の薄型化が進行しており、図12の側面図に示すように、メンテナンス口9のとりうる大きさが制限され、メンテナンス口9から加湿アセンブリ11を取り出すことが困難になりつつある。
【0007】
また薄型化が進行すると、冷媒配管の取り回しスペースも制限されるため、メンテナンス口9からの加湿アセンブリ11の取り出しはさらに困難になる。更に、室内機1の側面にしかメンテナンス口9がないため、室内機1の側面方向に十分なスペースを確保できない場合にも、加湿アセンブリ11の取り出しが困難となる。
【0008】
この発明は、薄型化により広いメンテナンス口の確保が困難になった室内機において、容易に取り出すことができる加湿アセンブリの取付構造を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明にかかる天井埋込形空気調和装置の室内機は、箱型の筐体内に送風用ファン、ファン駆動用モータおよび熱交換器が収容され、吸込口から吸い込んだ空気を前記熱交換器で加熱もしくは冷却した後、吹出口から吹き出す室内機本体を備えた天井埋込形空気調和装置の室内機において、
前記室内機本体の吹出口に、前面と後面に送風用の開口を有し、かつ側面または下面の少なくとも一方に点検用の開口が設けられた、箱型のメンテナンスボックスを取り付け、
かつ前記室内機本体の熱交換器と吹出口との間に加湿アセンブリを設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明にかかる天井埋込形空気調和装置の室内機は、室内機本体の吹出口にメンテナンス用のボックスを取り付けたものであり、広いメンテナンス口を設けることができるため、加湿アセンブリの取出しが容易になる。さらに、加湿アセンブリの取り出しを室内機の側面から行う必要がないため、冷媒配管の取り回しの制限が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1にかかる天井埋込形空気調和装置の室内機の構成を示す斜視図である。
【図2】図1のメンテナンスボックスを展開して示した斜視図である。
【図3】図2の一部を拡大して示した斜視図である。
【図4】図1の加湿アセンブリを展開して示した斜視図である。
【図5】図4の一部を拡大して示した斜視図である。
【図6】室内機本体とメンテナンスボックスを側面から見た断面図である。
【図7】加湿アセンブリの変形例を示す断面図である。
【図8】加湿アセンブリを室内機から取り出す際の過程を説明する図である。
【図9】この発明の実施の形態2にかかる天井埋込形空気調和装置の室内機のメンテナンスボックスの斜視図である。
【図10】従来の天井埋込形空気調和装置の室内機の斜視図である。
【図11】図10の室内機の側面図である。
【図12】図11を薄型化した場合の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1に、この発明の実施の形態1にかかる天井埋込形空気調和装置の室内機の構成を示す。室内機1は、室内機本体10、メンテナンスボックス30および加湿アセンブリ50で構成されている。なお図中、図10に示す従来の室内機と同一の機能を有する部材には同一の符号を付している。
【0013】
図1において、太い矢印は風の流れを示しており、ファン2によって図示しない吸込口から吸い込まれた空気は、熱交換器4を通り熱交換されて暖められる。その暖められた空気が、加湿アセンブリ50の湿った加湿エレメント51(図4参照)の間を通過することにより、加湿エレメント51内の水分が気化され、加湿される。加湿された空気はメンテナンスボックス30を通過し、図示しないダクトを通って吹出口から吹き出される。
【0014】
この発明にかかる天井埋込形空気調和装置の室内機は、設置箇所である天井裏において、上下方向の制約に比べて水平方向の制約に余裕がある点を利用し、室内機本体10の吹出口にメンテナンスボックス30を取り付け、点検の際の加湿アセンブリ50の取り外しおよび取り付けを、このメンテナンスボックス30を介して行うようにしたものである。メンテナンスボックス30には十分な大きさのメンテナンス口、すなわち点検用の開口を設けることができるため、作業が容易になる。
【0015】
以下、メンテナンスボックス30および加湿アセンブリ50の構成と機能について、具体的に説明する。最初に、メンテナンスボックス30について説明する。
【0016】
図2にメンテナンスボックス30を展開した状態を示す。メンテナンスボックス30は、長方形状の板金を箱型に加工したものであり、前面および後面には、室内機から吹き出す空気を通過させる開口31および32が設けられている。またメンテナンスボックス30の側面には点検用の開口であるメンテナンス口33が設けられている。同様に、メンテナンスボックス30の下面にもメンテナンス口34が設けられている。
【0017】
室内機本体10の吹出口12にはダクト接続用の複数のねじ穴13が設けられている。メンテナンスボックス30の後端部を、室内機本体10の吹出口12が被さるように差し込み、ねじ71をねじ穴13および37に螺合させることにより、メンテナンスボックス30を室内機本体10に固定する。図示しないが、メンテナンスボックス30の前面の開口31はダクトの接続されたカバーで覆われている。
【0018】
メンテナンスボックス30の左右の側面に設けられたメンテナンス口33は、メンテナンスを行わないときはメンテナンスカバー35で閉じられている。図3に示すように、ボックス本体の側面に設けられたメンテナンス口33の下方の左右に板金製のポケット38が設けられている。このポケット38に板金製のメンテナンスカバー35の下端部を挿入し、上端部に設けられたネジ穴37にねじ72を螺合することにより、メンテナンス口33は閉じられる。同様に、下面のメンテナンスカバー36の四隅にもネジ穴37が設けられており、この穴37にねじ72を螺合することによってメンテナンス口34は閉じられる。
【0019】
次に、加湿アセンブリ50について説明する。図4に、加湿アセンブリ50を展開した状態を示す。加湿アセンブリ50は、加湿エレメント51、板金製の下部フレーム52および上部フレーム53、タンク54、電磁弁55ならびにフロート56を備えている。なお、表現を簡素化するため、加湿エレメント51は一枚だけ示しているが、実際には、図1に示すように、必要加湿量により定まる枚数および形状の加湿エレメントを設置する。
【0020】
タンク54、電磁弁55およびフロート56は下部フレーム52に固定されている。加湿エレメント51は給水部511をタンクに差し込み、上部フレーム53により、上部から固定する。給水管58は、メンテナンスボックス30の側面に設けた穴39より挿入されている(図1参照)。給水管59から供給された水は、電磁弁55を通ってタンク54に溜められる。
【0021】
タンク54内に目標水位まで水が溜まると、フロート56のスイッチにより電磁弁56が作動して、水の供給が止まる。タンク54に貯められた水は、高親水性素材を用いた加湿エレメント51によって吸い上げられ、一部は気化して空気中に、その他は室内機1のドレンパン14に排水される(図6参照)。
【0022】
加湿エレメント51の固定方法について説明する。加湿エレメント51の給水部511をタンク54に差し込み、上部の切込部512に上部フレーム53の折曲部57を挿入する。このようにして複数枚の加湿エレメント51は、上部フレーム53により並列に並べられた状態で保持される。図4の点線の○で囲んだ部分を図5に拡大して示す。上部フレーム53は、U字状に加工された下部フレーム52の左右両端部のねじ穴59にねじ73を螺合することにより、下部フレーム52に固定される。
【0023】
下部フレーム52は、加湿アセンブリ50をメンテナンスボックス30に固定し、加湿アセンブリ50を室内機本体10内の任意の位置に設置する役割を果たす。板金製の一対の支持部材40は、加湿アセンブリ50を取り外し可能な状態でメンテナンスボックス30に取り付けるものであり、図1に示すように、スポット溶接等により、それぞれメンテナンスボックス30の側面の後部内面に固定されている。支持部材40の内側には、図5に示すように、上から板金を差し込めるポケット41が形成され、そこに下部フレーム52のL字状に加工された両端部60を、一点鎖線の矢印で示すように上から差し込むことにより、加湿アセンブリ50を室内機本体10の所定の位置に設置することができる。
【0024】
図6に、室内機本体10とメンテナンスボックス30を側面から見た断面図を示す。室内機本体10の中央部には熱交換器4が斜めに設置され、その下方にドレンパン14が設置されている。室内機本体10の吹出口13にメンテナンスボックス30が取り付けられ、支持部材40により、加湿アセンブリ50が室内機1のドレンパン14の上に設置されている。図中、一点鎖線の矢印はタンク54からの水の流れを示している。
【0025】
室内機本体10のドレンパン14上に加湿アセンブリ50を設置することにより、メンテナンスボックス30内に別途ドレンパンを設置する必要がなくなるため、メンテナンスボックス30の下面にメンテナンス口34を設けることができる。これにより、メンテナンスボックス30の側面に加湿アセンブリ50を引き抜くスペースのない場合でも、加湿アセンブリ50を取り出し、点検することができる。側面のメンテナンス口33についても、メンテナンスボックス30内にドレンパンがないことから、底面に近いところまで広げることができる。
【0026】
図7に、加湿アセンブリ50の変形例を示す。加湿エレメント51を通過した水が室内機1のドレンパン14上に導水される条件を満たせば、加湿エレメント51は、図7の斜線部513のように室内機1の外側に突き出ていてもよい。
【0027】
次に、図8を参照して、点検のため、加湿アセンブリ50を側面に設けたメンテナンス口33から取り外す際の過程を説明する。最初に、図8(a)に示すように、図1に示す状態で室内機本体10に設置された加湿アセンブリ50の下部フレーム52を作業者の手70で上に持ち上げ、両端部に形成された折曲部60を支持部材40のポケット41から外す(図5参照)。次に、図8(b)に示すように、加湿アセンブリ50をそのまま、メンテナンス口33の横まで移動させる。そこから、図8(c)に示すように、メンテナンス口33から引き抜くことにより、加湿アセンブリ50を取り出すことができる。
【0028】
図8では、加湿アセンブリ50をメンテナンスボックス30の紙面に向かって左側の側面に設けたメンテナンス口33から取り出す場合について説明したが、右側の側面に設けたメンテナンス口33から取り出してもよい。同様に、下面のメンテナンスカバー36を外して、下面のメンテナンス口34から取り出してもよい。
【0029】
加湿アセンブリ50を左右のメンテナンス口33から取り出すためには、メンテナンス口の大きさを加湿アセンブリ50の前後方向の断面積より大きくし、形状も加湿アセンブリがスムーズに取り出せるものである必要がある。同様に、加湿アセンブリ50を下面のメンテナンス口34から取り出すためには、メンテナンス口の大きさを加湿アセンブリ50の水平方向の断面積より大きくし、形状も加湿アセンブリがスムーズに取り出せるものである必要がある。
【0030】
また、加湿アセンブリ50は、取り出し作業を容易にするために、作業者の手が側面のメンテナンス口33または下面のメンテナンス口34より届く範囲に設置する必要がある。さらに、加湿アセンブリ50を左右対称の構造とすれば、左右どちらのメンテナンス口33からでも、下部フレーム52を上に持ち上げてずらすだけで、加湿アセンブリ50を支持部材40から取り外すことができる。
【0031】
加湿アセンブリ50は室内機本体10には固定されておらず、メンテナンスボックス30に支持された状態で室内機本体10内に設置されている。そのため、室内機本体10の構造を変更する必要がないので、既に据え付けが完了している室内機にも取り付けることができる。また天井埋込形以外のユニットにも、室内機の吹出側にスペースがあり、吹出口にダクトを取り付けることができるユニットなら設置可能である。また、加湿アセンブリ50の構造を変更した場合にも、室内機本体10の構造を変更することなく、変更後の加湿アセンブリ50を設置することができる。
【0032】
実施の形態2.
図9に、この発明の実施の形態2におけるメンテナンスボックス30aを示す。図示した部分以外は実施の形態1の天井埋込形空気調和装置の室内機と同様であり、本実施の形態では、メンテナンスボックス30aが吹出分岐チャンバーを兼ねた形状をしている。メンテナンスボックス30aの吹出口を覆うカバー61と側面のメンテナンスカバー35に開口部62が設けられ、その開口部62に分岐ダクト63が取り付けられている。
【0033】
メンテナンスボックス30aの吹出口のカバー61とメンテナンスカバー35に分岐ダクト63を取り付けることができる構造にすることで、メンテナンスボックス30aは吹出分岐チャンバーの役割も果たすことができる。また、側面のメンテナンス口33についても、ダクト63はフレキシブルであるため、メンテナンスカバー35にダクト63を付けたまま取り外すことができる。つまり、メンテナンスボックスとしての機能を維持したまま、分岐チャンバーとしての機能を付加することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 室内機
2 ファン
3 モータ
4 熱交換器
10 室内機本体
12 吹出口
14 ドレンパン
30 メンテナンスボックス
31、32 開口部
33、34 メンテナンス口
35、36 メンテナンスカバー
38 固定用ポケット
40 支持部材
41 ポケット
50 加湿アセンブリ
51 加湿エレメント
52 下部フレーム
53 上部フレーム
54 タンク
55 電磁弁
56 フロート
57、60 折曲部
58 給水管
61 カバー
63 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱型の筐体内に送風用ファン、ファン駆動用モータおよび熱交換器が収容され、吸込口から吸い込んだ空気を前記熱交換器で加熱もしくは冷却した後、吹出口から吹き出す室内機本体を備えた天井埋込形空気調和装置の室内機において、
前記室内機本体の吹出口に、前面と後面に送風用の開口を有し、かつ側面または下面の少なくとも一方に点検用の開口が設けられた、箱型のメンテナンスボックスを取り付け、
かつ前記室内機本体の熱交換器と吹出口との間に加湿アセンブリを設置することを特徴とする天井埋込形空気調和装置の室内機。
【請求項2】
前記加湿アセンブリは、前記室内機本体の下部に設けられたドレンパンの上方に設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の天井埋込形空気調和装置の室内機。
【請求項3】
前記加湿アセンブリの左右両端部は、前記メンテナンスボックスの左右の側面に固定された支持部材によって、着脱可能な状態で支持されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の天井埋込形空気調和装置の室内機。
【請求項4】
前記メンテナンスボックスの点検用の開口は、前記加湿アセンブリを取り出すことができる大きさと形状に加工されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の天井埋込形空気調和装置の室内機。
【請求項5】
前記加湿アセンブリは、
給水管から供給される水を溜めるタンクと、
高親水性素材で作製され、下端部が前記タンク内の水に接触した複数枚の加湿アセンブリと、
前記タンクを支持する下部フレームと、
前記下部フレームに固定され、前記複数枚の加湿エレメントを並列に並べた状態で保持する上部フレームと、を備えたことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の天井埋込形空気調和装置の室内機。
【請求項6】
前記メンテナンスボックスの前面の開口または前記側面のメンテナンス口が、ダクトが接続されたカバーで覆われていることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の天井埋込形空気調和装置の室内機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−29224(P2013−29224A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164075(P2011−164075)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】