説明

天井改修方法および膜天井構造

【課題】 天井に膜天井シートを敷設する際の作業性を向上させるとともに、アスベストの飛散を確実に防止して、天井の封じ込めとしての信頼性を向上させ、さらには、既設の電気器具の交換も容易にする。
【解決手段】 既設電気器具45を覆うフィルムシート5の上から袋状フィルム41を被せ、袋状フィルム内でフィルムシートの一部を切り抜き既設電気器具を取り外した後、天井裏配線の引き出し端部を囲むように枠部材43を天井2に固定し、取り外した後の既設電気器具を収容した状態として袋状フィルムを切り離し、その後、フィルムシートの固着部よりも下方位置の壁面に固定した膜天井廻り縁に係止させながら膜天井シートを天井に沿って敷設し、膜天井シートを介して枠部材に引掛けローゼットを固定し、膜天井シートを貫通させた天井裏配線の引き出し端部を引掛けローゼットに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜天井シートを用いて建築物における天井を改修する方法および膜天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅などの天井や壁の建築資材には、保温性、耐火性の効果が高いといった理由からアスベスト(石綿)が多く使用されていた。しかしながら、周知のとおり、アスベストは、非常に微細な繊維形状をなしており、とくにアスベストが室内空間に露出している部分が剥がれ落ちると空気中にアスベストが飛散し、それを人が吸引したときに人体に与える影響が大きく社会的問題となっている。このような背景から、近年では、アスベストが使用されている建築物の改装(リフォーム)が行われている。
【0003】
その改装方法として、アスベスト部分を除去する方法が一般的に多く実施されている。
この方法の場合、解体作業が発生するため、住人の引越しが必要になるうえ、解体範囲をフィルム材等で密封状態に取り囲み、さらにその中で解体作業を行う作業員は防塵マスク等を使用した大掛かりな装備が必要であった。
これに対し、アスベストを除去せずに残置した状態で改装する方法として、アスベストを囲い込む方法や封じ込める方法がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1は、吹き付けによってアスベスト層に飛散防止処理剤をコーティング処理し、アスベスト層の所定箇所にボルトを貫通させて基盤に固定させたアスベスト層の封じ込め方法である。
特許文献2は、既存の天井面に沿って新たに膜天井シートを敷設する方法である。膜天井シートは、天井面の周囲に沿って配置されている既設の木廻り縁に垂直材および水平材からなる断面略L字形の膜天井廻り縁をステープルで固定し、膜天井シートの周縁に設けられた断面U字形の係止部材を膜天井廻り縁の水平材の先端に形成された断面鉤形の係止部に引っ掛けることで既存の天井面に沿って敷設される。
【特許文献1】特許第2612908号公報
【特許文献2】特開2004−197448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、コーティング処理した吹き付け面が室内空間に面しており、この吹き付け面が劣化により亀裂が入ったり剥がれ落ちるなどすると、コーティング処理した裏面のアスベスト層が露出してアスベスト片が室内空間に飛散するという問題があった。
特許文献2は、天井を膜天井シートで覆ってしまうので、膜天井シートを敷設した後は、アスベスト層が露出せず封じ込むことができるが、この膜天井シートを敷設する際には、アスベストが露出している状態であるから、不用意にアスベスト面に触れてしまうおそれがあり、作業環境の改善が求められていた。
また、天井に設置されている照明器具等の電気器具を同時に交換する場合、膜天井シートの敷設前に交換作業をするのではアスベスト片の飛散の問題があり、一方、膜天井シートを敷設した後であると電気器具が膜天井シートに覆われてしまい、その作業が難しくなる。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、天井に膜天井シートを敷設する際の作業性を向上させるとともに、アスベスト等の飛散を確実に防止して、天井の封じ込めとしての信頼性を向上させ、さらには、既設の電気器具の交換も容易にした天井改修方法および膜天井構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る膜天井シートを用いた天井改修方法は、天井周囲の壁面にフィルムシートを固着しながら該フィルムシートによって天井表面を既設電気器具も含めて覆った状態とし、該フィルムシートにより覆われた状態の既設電気器具に対して前記フィルムシートの上から袋状フィルムを被せるようにしてフィルムシートに袋状フィルムの開口部を固着するとともに、その袋状フィルムの中に枠部材及び工具を入れておき、袋状フィルムの一部を介して外部から工具を操作しながら袋状フィルム内でフィルムシートの一部を切り抜き既設電気器具を取り外して天井裏配線を引き出した後、該天井裏配線の引き出し端部を囲むように前記枠部材を天井に固定し、取り外した後の前記既設電気器具を袋状フィルムの下部に収容した状態として上部を窄めて結束し、その結束部分から袋状フィルムを切り離し、その後、フィルムシートの固着部よりも下方位置の壁面に膜天井廻り縁を固定し、この膜天井廻り縁に周縁を係止させながら膜天井シートを天井に沿って敷設し、該膜天井シートを介して前記枠部材に引掛けローゼットを固定し、前記膜天井シートを貫通させた前記天井裏配線の引き出し端部を前記引掛けローゼットに接続することを特徴とする。
【0008】
本発明では、膜天井シートを敷設する前に、フィルムシートによって天井を覆った状態にしておくことにより、膜天井シートの敷設作業時にはアスベスト等を含んだ天井に触れることなく作業することができ、一方、フィルムシートは薄膜で取扱い容易なものを使用することができるから、その敷設作業を容易にして、一連の作業性が向上する。
【0009】
この場合、天井に設置されている既設電気器具に対して、その撤去作業並びに枠部材による下地作業を袋状フィルムによって囲った状態で行うことができるとともに、取り外した既設電気器具を袋状フィルム内に収納したまま撤去することができる。
そして、枠部材を介することによって新規の引掛けローゼットを膜天井シートの下面に設置することができ、既設電気器具に対する一連の交換作業を容易にすることができる。
【0010】
本発明の膜天井構造は、天井表面を覆うフィルムシートの周縁部が天井周囲の壁面に固着されるとともに、その固着部よりも下方位置の壁面に膜天井廻り縁が固定され、この膜天井廻り縁に周縁を係止させて膜天井シートが前記天井に沿って敷設され、膜天井シートと天井との間に枠部材が固定され、該枠部材に膜天井シートを介して引掛けローゼットが固定され、枠部材の内側で切り取られた前記膜天井シート及び前記フィルムシートの穴を介して引掛けローゼットと天井裏配線とが接続されていることを特徴とする。
この膜天井構造によれば、天井がフィルムシートで覆われた上に膜天井シートによって二重に覆われるから、例えばアスベストが天井に使用される場合においてアスベスト片が飛散することを防止できる。また、膜天井シートの下面に引掛けローゼットが固定されているから、天井面を覆った状態で照明器具等を取り付けることが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造によれば、天井表面をフィルムシートにより覆った状態であるので、例えばアスベストが天井に使用される場合においてアスベスト片が飛散することを防止できる。このため、アスベストの封じ込め(囲い込み)における信頼性を向上させることができる。
また、フィルムシートによって予め天井表面を覆った状態として膜天井シートを敷設するから、膜天井シートの施工中にアスベストを含んだ天井に触れることなく施工でき、安全性を向上させることができる。このため、施工中における住人の引越しも不要となる。この場合、フィルムシートはさらに膜天井シートによって覆われるから、フィルムシート自体は薄膜によって構成することができ、その取扱いを容易にして、全体の施工性を向上させることができる。
そして、天井の既設電気器具の交換も袋状フィルムによって容易にかつアスベスト片の飛散を防止した状態で行うことができ、膜天井シートの下面に設けた新規の引掛けローゼットにより照明器具等を取り付け得て、天井としての機能を損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は本実施の形態による膜天井の設置状態を示す図であり、この図1に示すように、この膜天井1は、住宅などの建築物の室内においてアスベストが使用された天井2を改装(リフォーム)する際に、天井2に沿うようにして敷設したものである。室内の四方の各壁面3の上端部には、天井2の周縁部全周にわたって既設の木廻り縁4が取り付けられており、膜天井1は、この木廻り縁4を利用して固定されている。
ここで、アスベストが使用された天井2は、例えば従来多く使用されていたアスベストを含んだ天井材料や吹付け材仕上げの材料による天井を対象とする。
【0013】
この膜天井1は、天井2の表面を覆うフィルムシート5と、このフィルムシート5よりも下方位置に敷設された膜天井シート6との二重構造とされている。
フィルムシート5は、例えばポリエチレン等の透明な軟質樹脂を薄膜に形成してなるものであり、天井2の表面に密接させられ、その全面を覆った状態として、その四辺が木廻り縁4の高さ方向の上部位置に天井3の周縁に沿って接着材としての両面テープ7によって固定されている。この両面テープ7は、例えば弾性樹脂(ブチルゴムを含む)の両面に接着剤(粘着剤)を塗付加工してなるものであり、接着面は剥離紙によって覆われている。
【0014】
膜天井シート6は、木廻り縁4の高さ方向の下部に重ねるように固定された膜天井廻り縁11によって固定されている。この膜天井廻り縁11は、垂直材11Aおよび水平材11Bを一体に成形してなる断面略L字形をなしており、その垂直材11Aの背面が木廻り縁4にシーリング材12を介して固定されている。
このシーリング材12としては、例えば弾性樹脂(ブチルゴムを含む)の両面に接着剤(粘着剤)を塗付加工してなる両面テープなどを使用することが好ましい。そして、この膜天井廻り縁11の垂直材11Aは、この垂直材11Aからシーリング材12、木廻り縁4を貫通させてビス13及びステープル14が壁面3に打ち込まれて固定されている。
また、膜天井廻り縁11の水平材11Bの先端部には、上方に延びさらに垂直材11Aに向けて折り返すように屈曲した断面略鉤形の係止部15が長さ方向に沿って形成されており、この係止部15によって長さ方向に沿う溝部16が形成される。
【0015】
膜天井シート6は、例えば塩化ビニル樹脂製の材質(例えば、リフォジュールシート(登録商標)、フクビ化学工業株式会社製)で弾力性を有するシート材17が使用され、その周縁に断面略U字形の係止部材18が全周に連続して設けられている。この係止部材18は、図2に示すように、そのU字形の両側壁部18A・18Bの間に溝部19が形成され、一方の側壁部18Aにシート材17が固着された構成とされている。そして、他方の側壁部18Bを膜天井廻り縁11の溝部16に入れるようにして、この係止部材18の溝部19を膜天井廻り縁11の係止部15に引っ掛けることによって、膜天井シート6は天井2に沿って敷設されている。
なお、膜天井シート6の表面は、室内天井として好みのデザインのシートを使用することができる。
【0016】
また、天井2の四隅には、図3及び図4に示すように、互いに略直角に接合される二辺をなす膜天井廻り縁11、11に、一端21aを一方の膜天井廻り縁11にビス22で固定させ、他端21bを他方の膜天井廻り縁11にビス22で固定させた補強斜材21が斜めに設けられており、膜天井シート6は、この補強部材21の下方に敷設されている。この補強斜材21は、敷設時に張力が付与されることにより常に収縮しようとする膜天井シート6によって、木廻り縁4および膜天井廻り縁5が引っ張られて木廻り縁4が壁面3から外れたり、膜天井廻り縁5を固定するビス13やステープル14が木廻り縁4から抜けたりすることを防ぐものである。
【0017】
ところで、天井2に照明器具等の電気器具が設置されている場合、これを新規のものに交換して膜天井シート6の下面に付け替える必要がある。
以下では、上記のような構成をなす膜天井1の施工方法について、既設の電気器具を交換しながら実施する場合も含めて説明する。
先ず、両面テープ7をその一方の接着面に剥離紙を付着したまま既存の木廻り縁4の上部に貼り付けておく。
【0018】
一方、フィルムシート5はロール状にしておき、図5に示すように、そのロール31を回転自在に支持するロール台32A・32Bを用意する。このロール台32A・32Bは、ロール31の両端部を支持するもので、ロール31を床面33から少し浮かせた状態に支持する。また、フィルムシート5は、例えば0.03mm厚さで幅が3600mmのものを二つ折り(1800mm幅)にして長さ100m分、ロール31に巻き取られている。
このロール台32A・32Bを床面33上に置いておき、ロール31からフィルムシート5を引き出しながら使用する。改修しようとする天井2の寸法よりも5000mm程度長めに引き出す。これは、天井高さは概ね2500mmであることから、天井2から壁面3にフィルムシート5を垂らして養生として利用するためである。他の辺についてはフィルムシート5に養生シート(図示略)を継ぎ足せばよい。
【0019】
引き出したフィルムシート5は二つ折になっており、これを広げた状態として、天井2の一辺の片側から木廻り縁4に貼り付けておいた両面テープ7の剥離紙を剥がしながらフィルムシート5に若干の張力をかけて貼り付けていく。この貼り付け作業において、作業員は図6に示すように垂れ下がるフィルムシート5の下に矢印で示すように潜り込むようにして作業することになる。
【0020】
一辺の貼り付けが終わったら、天井2の反対側の辺について、その中央部から左右に向けてフィルムシート5を貼り付けていく。このときフィルムシート5を天井2に密接させるように張力をかける。残りの二辺は片側から貼り付ける。このようにして天井2の周囲の両面テープ7にフィルムシート5を貼り付けると、図7に示すように、天井2の表面がフィルムシート5により覆われ、余ったフィルムシート5が壁面3に垂れ下がった状態となっている。
【0021】
天井2に設置されている照明器具等の電気器具を交換して膜天井シート6の下面に付け替える場合については、図7に示すようにフィルムシート5で天井2を覆った後、次のような手順で行われる。
まず、図8に示すようにフィルムシート5の材料から作った袋状フィルム41をフィルムシート5の下面に貼り付ける。この袋状フィルム41は、内部にグローブ41aが一体に形成され、外側からグローブ41aに手を差し込んで袋状フィルム41内の作業を行うことができるようになっている。この袋状フィルム41の中にドライバーやカッター等の必要な工具42及び枠部材43、固定用のビス44を入れた状態として、既設電気器具(図8の場合引掛けローゼット)45を囲む大きさのリング枠46に通すとともに、このリング枠46上に配置される袋状フィルム41の開口部付近に両面テープ47を固着しておく。そして、図8の矢印で示すように、リング枠46毎、袋状フィルム41を既設電気器具45に被せて天井2に敷設されているフィルムシート5に固着する。
【0022】
この貼り付け状態でリング枠46を下方に抜き取ると、図9に示すように天井2のフィルムシート5に袋状フィルム41がぶら下がった状態となる。この状態でグローブ41aに手を差し込んで、既設電気器具45回りにフィルムシート5を切り取ることにより、フィルムシート5に穴を開けて既設電気器具45を袋状フィルム41内で露出させ、工具42を操作して既設電気器具45を天井2から外すとともに、外した後の天井2に枠部材43を固定する。
この枠部材43は、筒状枠48の内周部にビス固定用の複数の突出片49、50が一体に設けられた構成とされている。これら突出片49、50は、筒状枠48の両端部付近に分かれて配設されており、その一端部付近の突出片49が天井2への固定用であり、他端部付近の突出片50は後述の新規電気器具を固定するためのものである。なお、既設電気器具45が取り付けられていた天井2には埋め込みボックス51が設けられており、該埋め込みボックス51にビス固定部52が形成されている。
そして、図10に示すように、枠部材43の突出片49にビス44を挿通して埋め込みボックス51のビス固定部52に固定することにより、枠部材43を天井2に固定する。この状態では、既設電気器具45に接続されていた天井裏配線(図示略)が枠部材43内に臨ませられた状態となる。
【0023】
次いで、天井2近くの部分で袋状フィルム41を窄めてテープ等で結んだ後、その結束部分53を図11の矢印で示すように切断すると、天井2に固定状態の枠部材43が図12に示すように袋状フィルム41の上半分41bによって塞がれた状態となり、袋状フィルム41の下半分41cには天井2から撤去した電気器具45と工具42が収納された状態となり、これらを袋状フィルム41に収納したまま廃棄することが可能になる。
【0024】
このようにしてフィルムシート5によって天井2表面を覆った状態とした後、図7に鎖線で示すように、木廻り縁4の上に垂れ下がっているフィルムシート5の上からシーリング材12を介して膜天井廻り縁11を重ね合わせ、水平方向に所定間隔(例えば120mmピッチ)ごとにビス13やステープル14を膜天井廻り縁11の上から打ち込ませて木廻り縁4に膜天井廻り縁11を固定する。
また、天井2の四隅では、膜天井廻り縁11の上から図3及び図4に示す補強部材21を接合する。
【0025】
次いで、図2に示すように、膜天井シート5の周縁に設けた係止部材18を膜天井廻り縁11の係止部15に係止させる。このとき、例えばコテ状の治具(図示省略)を使用して膜天井シート5の係止部材18の溝部19に膜天井廻り縁11の係止部15を挿し込むようにはめ込むながら係止させる。これにより、膜天井廻り縁11の内側に膜天井シート6が敷設される。
【0026】
なお、通常の膜天井シート6は、天井2への敷設面積に対して略8割の面積比率に加工されたものを、設置する際に引き伸ばすようにテンションをかけながら膜天井廻り縁11に固定されるのであるが、この膜天井シート6を敷設する際には、床面に温風器(図示略)を設置して天井2に向けて温風を吹き付けておき、その温風によって膜天井シート6を加温して、伸び易いようにすることが行われる。
また、膜天井回り縁11から垂れ下がっている部分のフィルムシート5は、最後に膜天井シート5を敷設した後、膜天井回り縁11の下縁に沿って切断する。
このようにして膜天井シート6を敷設すると、膜天井シート6と天井2との間には、室内空間Rと遮断された密封空間Tが形成されて天井2が囲い込まれた状態となる。しかも、天井2の表面はフィルムシート5が密接に覆った状態とされている。
【0027】
次いで、前記枠部材43を設置した箇所においては、枠部材43の内側で膜天井シート6及び残っている袋状フィルムの上半分41bを切り取って穴61を開け、その穴61の内周縁に沿わせて膜天井シート6と枠部材43の筒状枠48との間に補強リング62を介在させ、膜天井シート6の裏面に接着する。
そして、新規の引掛けローゼット63の取付金具64をビス65によって枠部材43の突出片50に固定するとともに、天井裏配線(図示略)を引掛けローゼット63に接続すると、図13に示す状態となる。
【0028】
一方、図14及び図15は、既設電気器具が照明器具である例を示している。この場合も、天井2にフィルムシート5を敷設した後、図8に示した場合と同様に袋状シート41によって覆って図14に示す状態とし、この状態で既設電気器具71を外して枠部材43を天井2に取り付け、図15に示す状態とする。そして、図11から図13で示した例と同様にして、袋状シート41に入れたまま既設電気器具71を撤去し、膜天井シート6を敷設した後、枠部材43に新規の引掛けローゼット63が取り付けられる。
【0029】
上述した本実施の形態による膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造は、フィルムシート5を天井2に(隙間無く)密着させることで、天井2の全面を封じ込めることができる。そして、膜天井シート6を施工する際に天井2に直接触れることなく施工できることから、安全性を向上させることができ、アスベストの封じ込め(囲い込み)における信頼性を向上させることができる。
この場合、天井2に設置されている既設電気器具45、71に対して、その撤去作業並びに枠部材43による下地作業を袋状フィルム41によって囲った状態で行っているとともに、取り外した既設電気器具45、71を袋状フィルム41内に収納したまま撤去することができ、アスベスト片の飛散を確実に防止することができる。
そして、枠部材43を介することによって新規の引掛けローゼット63を膜天井シート6の下面に設置することができ、天井としての機能を損なうことがない。
【0030】
以上、本発明による膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
また、本実施の形態ではアスベストが使用された天井2を対象としているが、アスベストを含まない吹き付け天井やコンクリートが露出した天井などで剥がれ落ちを防止するための改装に適用してもかまわない。
【0031】
また、フィルムシート5を敷設する前に、天井2の表面に接着剤を吹き付けて、フィルムシート5を天井2に密着させるようにしてもよい。逆にフィルムシート5に接着剤を塗布しておいてもよい。
また、フィルムシート5は透明なもので目視点検を可能としたものであるが、とくに点検などの必要がない場合などでは透明性を有するシートであることに限定はされない。
【0032】
さらに、本実施の形態では膜天井廻り縁11をビス13やステープル14によって木廻り縁4に取り付けたものであるが、膜天井廻り縁11の固定方法はこれに限定されることはなく、テンションをかけて敷設した膜天井シートの引張力によって木廻り縁4や膜天井廻り縁11が外れないようにしておけばよいのであって、例えば各壁面3同士の膜天井廻り縁11に突っ張り用の補強材を設けておくようにしてもよい。
木廻り縁4が設けられていない場合に適用することもでき、その場合は膜天井廻り縁11を壁面3に直接固定すればよい。
さらにまた、膜天井廻り縁11の係止部15と膜天井シート6の係止部材18との係止構造も、両者が係止状態となる他の構造を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態による膜天井の設置状態を示す縦断面図である。
【図2】図1における膜天井回り縁部分の膜天井シートの取付け構造を示す拡大拡大図である。
【図3】膜天井回り縁の四隅に設けられる補強部材の取り付け構造を示す平面図である。
【図4】図3のX−X線に沿う矢視図である。
【図5】フィルムシートのロールを支持している状態を示す正面図である。
【図6】天井にフィルムシートを敷設し始めた状態を示す縦断面図である。
【図7】天井にフィルムシートを敷設した状態を示す縦断面図である。
【図8】天井の既設電気器具を交換するために袋状フィルムを取り付ける状態を示している縦断面図である。
【図9】図8に示す状態から袋状フィルムを天井のフィルムシートに取り付けた状態を示す縦断面図である。
【図10】図9に示す状態から既設電気器具を取り外し、代わりに枠部材を天井に取り付けた状態を示す縦断面図である。
【図11】図10に示す状態から袋状フィルムの途中位置を絞って既設電気器具を袋状フィルムの下半分に閉じ込めた状態を示す縦断面図である。
【図12】図11に示す状態から袋状フィルムの下半分を切り取った状態を示す縦断面図である。
【図13】図12に示す状態から膜天井シートを敷設して枠部材に引掛けローゼットを固定した状態を示す縦断面図である。
【図14】既設電気器具が照明器具である場合の図9同様の縦断面図である。
【図15】図14に示す状態から既設電気器具を取り外し、代わりに枠部材を天井に取り付けた状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1…膜天井 2…天井 3…壁面 4…木廻り縁 5…フィルムシート 6…膜天井シート 7…両面テープ(接着材) 11…膜天井廻り縁 12…シーリング材 13…ビス 14…ステープル 15…係止部 16…溝部 17…シート材 18…係止部材 19…溝部 21…補強部材 41…袋状フィルム 41a…グローブ 42…工具 43…枠部材 45…既設電気器具 46…リング枠 47…両面テープ 48…筒状枠 49,50…突出片 51…埋め込みボックス 52…ビス固定部 61…穴 62…補強リング 63…引掛けローゼット 71…既設電気器具 R…室内空間 T…密封空間



【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井周囲の壁面にフィルムシートを固着しながら該フィルムシートによって天井表面を既設電気器具も含めて覆った状態とし、該フィルムシートにより覆われた状態の既設電気器具に対して前記フィルムシートの上から袋状フィルムを被せるようにしてフィルムシートに袋状フィルムの開口部を固着するとともに、その袋状フィルムの中に枠部材及び工具を入れておき、袋状フィルムの一部を介して外部から工具を操作しながら袋状フィルム内でフィルムシートの一部を切り抜き既設電気器具を取り外して天井裏配線を引き出した後、該天井裏配線の引き出し端部を囲むように前記枠部材を天井に固定し、取り外した後の前記既設電気器具を袋状フィルムの下部に収容した状態として上部を窄めて結束し、その結束部分から袋状フィルムを切り離し、その後、フィルムシートの固着部よりも下方位置の壁面に膜天井廻り縁を固定し、この膜天井廻り縁に周縁を係止させながら膜天井シートを天井に沿って敷設し、該膜天井シートを介して前記枠部材に引掛けローゼットを固定し、前記膜天井シートを貫通させた前記天井裏配線の引き出し端部を前記引掛けローゼットに接続することを特徴とする天井改修方法。
【請求項2】
天井表面を覆うフィルムシートの周縁部が天井周囲の壁面に固着されるとともに、その固着部よりも下方位置の壁面に膜天井廻り縁が固定され、この膜天井廻り縁に周縁を係止させて膜天井シートが前記天井に沿って敷設され、膜天井シートと天井との間に枠部材が固定され、該枠部材に膜天井シートを介して引掛けローゼットが固定され、枠部材の内側で切り取られた前記膜天井シート及び前記フィルムシートの穴を介して引掛けローゼットと天井裏配線とが接続されていることを特徴とする膜天井構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−13965(P2008−13965A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184419(P2006−184419)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(597053522)リフォジュール株式会社 (8)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】