説明

天井走行車

【課題】カセット等を搬送する天井走行車の昇降ユニットから、簡単な構成で、搬送物が4周いづれの方向へも落下しないようにする。
【解決手段】半導体等のカセット20の蓋22の背後のカセット上面38に、落下防止ピン34を接触させる。ピン34を取付板36の透孔37に上下動自在に取り付け、取付板36は昇降駆動部14に取り付ける。カセットのフランジ23が損傷すると、上部フレーム29あるいはピン34で蓋22を支持して、カセットの落下を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は天井走行車に関し、特に搬送物品の落下防止に関する。
【背景技術】
【0002】
天井走行車は、クリーンルーム等において半導体やレチクル等のカセット等を搬送する。天井走行車の本体走行方向前後には一対の落下防止カバーを設けて、カセット等の搬送物品の落下を防止する。また天井走行車には昇降駆動部を横送りする機構を設けて、走行方向と水平面内で直角な方向に物品を移載できるようにする(特許文献1)。ここで落下防止カバーが必要なのは、搬送中にカセットのフランジが損傷し、天井走行車の昇降ユニットのチャックから外れたような場合に対応するためである。さらにカセットの蓋と対向するように、天井走行車の側部に落下防止フレームを設けて、蓋の落下や、走行方向に直角な方向へのカセットの落下を防止することが行われている。ここで走行方向に直角な方向で、カセットの両側に落下防止用のフレームを設けることができると良いが、このようにすると、落下防止用のフレームとカセットが干渉しやすい。
【特許文献1】特開2005−206371
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、簡単な構成で、搬送物品が4周何れの方向へも落下しないようにすることにある。
請求項2,3の発明での追加の課題は、落下防止用の部材が搬送物品の昇降を妨げないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、走行レールに沿って走行し、側方に蓋が付き、蓋の上部が搬送物品の本体部の上部よりも高く、さらに本体部の上部から上方へ突き出すフランジを備えた搬送物品を搬送するために、前記フランジをチャックするチャックと、走行方向の前後と左右一方と下方への搬送物品の落下を防止するための手段、とを備えた天井走行車であって、 前記蓋の背面側とフランジとの間の位置、もしくは蓋を正面とする際の前記搬送物品の背面両側部に、前記搬送物品がチャックから外れて落下するのを防止するための落下防止部材を設けたことを特徴とする。
【0005】
好ましくは、落下防止部材を、蓋の背面とフランジとの間に、搬送物品が蓋が上となる向きに回動した際に蓋を支持するように、下向きに突き出して配置する。
【0006】
また好ましくは、落下防止部材を、搬送物品の背面両側部に、下向きに突き出すように配置する。
【発明の効果】
【0007】
この発明では、搬送中に蓋が上でフランジが下となる向きに搬送物品が落下しようとすると、蓋の背面とフランジの間、あるいは搬送物品の背面両側部に設けた落下防止部材が蓋や搬送物品の背面等を支持して落下を防止する。このため走行方向の前後左右何れの方向への搬送物品の落下も防止でき、また蓋の背面とフランジの間や搬送物品の背面両側部に設ける落下防止部材はピンやアーム等の簡単な部材で良い。
【0008】
落下防止部材を蓋の背面とフランジとの間に搬送物品が蓋が上となる向きに回動した際に蓋を支持するように下向きに突き出して配置すると、落下防止部材は昇降ユニットや昇降駆動部に設けたピン等の簡易な部材で良く、かつ落下防止部材が搬送物品の昇降と干渉しない。
落下防止部材を搬送物品の背面両側部に下向きに突き出すように配置しても、搬送物品の昇降を妨げない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0010】
図1〜図5に、実施例の天井走行車2を示す。各図において、4は走行レールで、クリーンルームの天井付近などに配置され、5は支柱である。天井走行車2では、走行レール4内に図示しない走行駆動部があり、天井走行車本体6を支持して走行させる。8は天井走行車本体6の基部、10は横送り部、12はθドライブ、14は昇降駆動部、16は昇降ユニットで、例えば一対のチャック18を備えている。なお横送り部10は、θドライブ12〜チャック18を、天井走行車2の走行方向と水平面内で直角な方向に横移動させ、この明細書ではこの方向を左右方向という。昇降駆動部14は昇降ユニット16を昇降させ、θドライブ12は昇降駆動部14を水平面内で回動させるが設けなくても良い。
【0011】
20はカセットで、半導体やレチクルなどを収容したもので、チャック18によりフランジ23の底面を支持され、22は着脱自在な蓋で、天井走行車2を基準とする向きでその左右一方に位置する。カセット20の落下を防止するため、天井走行車2での基部8の走行方向前後に、一対の落下防止カバー24,24が設けてあり、その底部に出没自在な落下防止爪26を設けて、カセット20の鉛直下方への落下を防止する。
【0012】
カセット20の蓋22と対向するように僅かな隙間を置いて落下防止フレーム28を設け、例えば昇降駆動部14に取り付ける。落下防止フレーム28は、上部フレーム29と、上部フレーム29に対して回動もしくは上昇自在な下部フレーム30とから成る。31は発光端、32は受光端で、これらにより光電センサを構成する。発光端31と受光端32の一方を下部フレーム30に、他方を上部フレーム29に設けて、光軸が上方を向くようにし、蓋22が光軸を遮ると検出する。34は落下防止ピンで、35はその頭部のヘッドで下部に比べて径が大きく、落下防止ピン34は上部フレーム29に設けた取付板36の透孔37を貫通している。このため落下防止ピン34は上下方向に移動自在で、先端がカセット20のカセット上面38に接触する。落下防止ピン34の設置位置は、蓋22の背面とフランジ23の間で、特に蓋22の背面の近傍で、落下防止ピン34は天井走行車2の走行方向に沿って例えば前後一対設ける。
【0013】
なお落下防止ピン34の代わりに、あるいはピン34と共に、カセット背面側部41に、走行方向前後一対の落下防止部材40,40を設けても良い。落下防止部材40は例えば棒状もしくはアーム状の部材で、例えばフランジ23が損傷してチャック18から外れ、カセット20が落下防止フレーム28とは反対向きに回動しようとした時に、カセット背面側部41に接触して支持する。
【0014】
下部フレーム30は、例えばピン42により、上部フレーム29に対して回動自在に取り付けられ、天井走行車2の走行方向に沿ってピン42とは反対側の位置で、上部フレーム29に設けたクランプ44により仮止めされている。下部フレーム30では、クランプ44の上部に対応する位置に突起45を設けて、クランプ44よりも下向きに回動しないようにする。下部フレーム30は例えば逆台形状の形状で、特にクランプ44から下方へと続くクランプ側端部46を、鉛直よりも下部フレーム30の中央向きに傾斜させて、下部フレーム30の幅が下側で減少するようにする。さらに下部フレーム30のフレーム底部48は、ピン42よりもクランプ44側で下側に突き出した形状とする。
【0015】
カセット20に対する蓋22の取付構造は様々なものがあるが、ここでは蓋22がカセット20の内側へ入り込んでいるものとする。図4に蓋22の厚さをwで示し、カセット20と上部フレーム29もしくは下部フレーム30との隙間の内で小さな側の隙間をdで表す。ここで隙間dを厚さwよりも小さくすると、蓋22はフレーム28とカセット20との隙間を通り抜けることができず、蓋22がカセット20から外れても落下しない。
【0016】
実施例の動作を説明する。天井走行車2は走行レール4に沿って走行し、横送り部10により昇降駆動部14等を走行レール4の左右方向に移動させ、昇降駆動部14で昇降ユニット16を昇降させ、チャック18でフランジ23を把持してチャックする。昇降ユニット16を下降させ、ロードポートなどに載置されたカセット20のフランジ23をチャックし、昇降ユニット16を巻き上げる。ここでロードポート上で蓋22がカセット20から外れていることがある、このような場合、カセット20を上昇させると、蓋22が下部フレーム30のフレーム底部48に接触して押し上げ、これによって下部フレーム30はクランプ44から外れてピン42を中心に上向きに回動する。
【0017】
なお下部フレーム30が逆向きに回動することは、突起45により防止されている。さらにクランプ側端部46は、フレーム30の幅が下側で小さくなるようにカットされているので、フレーム30がクランプ44を通過して上向きに回動することを妨げない。フレーム30が蓋22により上向きに回動すると、発光端31からの光軸が受光端32から外れ、蓋22が外れていることが判明する。なお蓋22の上部がカセット20から外れている場合も、蓋22の下部が外れている場合も、いずれも下部フレーム30と接触して押し上げる。蓋22が外れていることを検出すると、天井走行車2は走行せずに、図示しないコントロールユニットに異常を報告して、復旧を待つ。このため蓋22が外れたカセット20内の物品が、搬送中に移動して損傷するなどのことを防止できる。荷積みした際に蓋22に異常がなくても、搬送中に蓋22が外れることがある。このような場合、外れた蓋22が発光端31から受光端32への光軸を遮り、異常を検出できる。
【0018】
搬送中にカセット20のフランジ23が損傷してチャック18から外れる等のことがある。カセット20が天井走行車に対して鉛直方向に落下することは、落下防止爪26で防止できる。また走行方向前後に落下することは、落下防止カバー24で防止できる。カセット20が蓋22側から落下することは、落下防止フレーム28で防止できる。そしてカセット20が走行方向の左右で蓋22とは反対向きに落下することは、落下防止ピン34で防止できる。
【0019】
即ち、カセット20が蓋22側が上、カセット背面側部41側が下になるように回動すると、蓋22が落下防止ピン34に接触して、それ以上回動することを防止し、落下を防止できる。ここでフランジ23の底面に対するカセット上面38の高さは、カセット20の規格により様々なものがある。しかしながら落下防止ピン34は透孔37内を上下動できるので、搬送時のカセット上面38の高さが変化しても対応できる。さらに落下防止ピン34を蓋22の背面寄りに走行方向に沿って前後例えば一対設けると、カセット20の落下を確実に防止できる。
【0020】
なお落下防止ピン34に代えて、落下防止部材40,40をカセット背面側部41の周囲に隙間を開けて配置しても良い。このようにすると、カセット20が背面側部41側が下側となるように回動した際に、落下防止部材40で背面側部41を支持して落下を防止できる。落下防止ピン34と落下防止部材40とを比較すると、落下防止ピン34はより小形で設置が容易である。落下防止ピン34はカセット20に接触すると上方へ逃げ、落下防止部材40はカセット20を避けるように下向きに突き出しているので、いずれもカセット20の昇降と干渉せず、またいずれも昇降駆動部14と共に横送り部10により横移動するので、横送りとも干渉しない。
【0021】
実施例では、外れた蓋22により下部フレーム30が上向きに回動するようにしたが、下部フレーム30が上部フレーム29に対して上向きに移動できるようにして、外れた蓋22により押し上げられるようにしてもよい。この場合も下部フレーム30が所定位置よりも下降しないようにストッパを設けておく。
【0022】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 蓋22が外れたカセットを上昇させると、下部フレーム30が回動して発光端31からの光軸が受光端32から外れるため、カセットを上昇させる際に蓋が外れていることを検出できる。このため、蓋が外れたカセット20を搬送することにより、内部の物品が損傷することを防止できる。
(2) 走行中に蓋22が外れると、発光端31と受光端32の間の光軸が遮られることにより検出できる。
(3) カセット20の落下を、前後左右並びに鉛直のいずれの方向に対しても防止できる。
(4) ピン34や落下防止部材40は、カセット20を昇降ないしは横送りすることを妨げない。
(5) 落下防止ピン34は簡単に設けることができ、またカセット上面38の高さが変化しても、透孔37内をピン34が上下することにより対応できる。

【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例の天井走行車と走行レールの正面図
【図2】実施例の天井走行車と走行レールの側面図
【図3】図1のIII−III方向水平断面図
【図4】実施例の天井走行車での落下防止ピン付近の部分拡大正面図
【図5】実施例の天井走行車での下部フレーム付近の部分拡大側面図
【符号の説明】
【0024】
2 天井走行車
4 走行レール
5 支柱
6 天井走行車本体
8 基部
10 横送り部
12 θドライブ
14 昇降駆動部
16 昇降ユニット
18 チャック
20 カセット
22 蓋
23 フランジ
24 落下防止カバー
26 落下防止爪
28 落下防止フレーム
29 上部フレーム
30 下部フレーム
31 発光端
32 受光端
34 落下防止ピン
35 ヘッド
36 取付板
37 透孔
38 カセット上面
40 落下防止部材
41 カセット背面側部
42 ピン
44 クランプ
45 突起
46 クランプ側端部
48 フレーム底部

d 隙間
w 厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レールに沿って走行し、
側方に蓋が付き、蓋の上部が搬送物品の本体部の上部よりも高く、さらに前記本体部の上部から上方へ突き出すフランジを備えた搬送物品を搬送するために、
前記フランジをチャックするチャックと、走行方向の前後と左右一方と下方への搬送物品の落下を防止するための手段、とを備えた天井走行車であって、
前記蓋の背面側とフランジとの間の位置、もしくは蓋を正面とする際の前記搬送物品の背面両側部に、前記搬送物品がチャックから外れて落下するのを防止するための落下防止部材を設けたことを特徴とする、天井走行車。
【請求項2】
前記落下防止部材を、蓋の背面とフランジとの間に、搬送物品が蓋が上となる向きに回動した際に蓋を支持するように、下向きに突き出して配置したことを特徴とする、請求項1の天井走行車。
【請求項3】
前記落下防止部材を、搬送物品の前記背面両側部に、下向きに突き出すように配置したことを特徴とする、請求項1の天井走行車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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