説明

天然ガス発生・タービン発電システム

【課題】 空気冷却熱交換器を不要とし、コスト低減と制御基数の削減による制御系の簡略化を図り、ランニングコストを削減する。
【解決手段】 液化天然ガスを空温式気化器2と天然ガス加温器3で順に加温することにより発生した天然ガスの少なくとも一部をマイクロガスタービン1の燃料として使用する天然ガス発生・タービン発電システムにおいて、前記空温式気化器2で冷却された空気をマイクロガスタービン1の吸気空気に利用する一方、マイクロガスタービン1の温熱を天然ガス加温器3の加温熱源に利用することにより、熱効率が高められたマイクロガスタービン1の出力をサテライト基地の消費電力に利用する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、サテライト(小規模衛星都市圏)基地での液化天然ガスからの天然ガス発生と、発生した天然ガスを利用したマイクロガスタービン発電設備による高効率発電とを行わせるための天然ガス発生・タービン発電システムに関する。
【0002】
【従来の技術】液化天然ガス(LNG)の冷熱を特定の手段に基づいてガスタービンの空気圧縮機の吸込空気を冷却するのに利用する発電システムについての典型的な先行技術が特開昭56− 47625号公報に挙示される。
【0003】上記先行技術は、その装置回路が図6に示されるが、LNGを気化ラインのLNG気化器23で冷却水または海水により気化させて天然ガス(NG)として送出する設備において、LNG気化器23で冷却された冷却水または海水を吸気冷却器24に送ってガスタービン25の空気圧縮機27用吸込空気を冷却し、一方、吸気冷却器24で加温された冷却水または海水はLNG気化器23に再び戻すように構成されていて、ガスタービン26は高い熱効率の発電が可能となったものである。
【0004】また、このような先行技術を用いて小規模のNGを製造しているサテライト基地では、LNG気化器として空温式気化器を使用し空気を熱源として気化させるようにしているものがあり、この場合、冬場は空気だけで気化できないため、温水ボイラーにて加温させているものが一般的である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような先行技術は、LNG気化器23の他に空気冷却熱交換器である吸気冷却器24が必要となり、装置コスト高になっており、さらに、運転制御の対象となる制御基数が多くなることから制御が複雑化する問題がある。また、空温式気化器を使用した場合、特に自然通風式のものでは冷却された空気が白煙となり、これが環境面上の問題となっており、ファンで強制的に拡散させるなどの対策を講じなければならなく、設備を一層複雑化するとともに、装置コスト増をもたらしている。また、冬場では温水ボイラーによる加温が必要なために運転コストの増加を来すのも問題となっている。
【0006】本発明は、このような問題点の解消を図るために成されたものであり、本発明の目的は、空気冷却熱交換器を不要とし、コスト低減と制御基数の削減による制御系の簡略化を図り、空温式気化器での白煙対策の合理的運用と冬場の温水ボイラーの省略によるランニングコストの節減を果たすことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を達成するため以下に述べる構成としたものである。即ち、本発明に係る請求項1の発明は、液化天然ガスを気化ラインの空温式気化器と天然ガス加温器で順に加温することにより発生した天然ガスの少なくとも一部をマイクロガスタービン発電設備の燃料として使用する天然ガス発生・タービン発電システムであり、前記空温式気化器で冷却された空気を前記マイクロガスタービンの吸気空気に利用する一方、前記マイクロガスタービンの温熱を前記天然ガス加温器の加温熱源に利用することにより、熱効率が高められた前記マイクロガスタービンの出力をサテライト基地の消費電力に利用することを特徴とする天然ガス発生・タービン発電システムである。
【0008】また、本発明に係る請求項2の発明は、前記請求項1に記載の天然ガス発生・タービン発電システムに関して、前記天然ガス加温器が気体対液体型の熱交換器であり、前記マイクロガスタービンの排ガスにより加温して得た温水が加温熱源として供給される構成としたことを特徴とする。
【0009】また、本発明に係る請求項3の発明は、前記請求項1または2のうちの何れか一つの項に記載の天然ガス発生・タービン発電システムに関して、前記空温式気化器で冷却された空気を前記マイクロガスタービンの吸気口に供給する空気通路中に、前記空温式気化器の液化天然ガス管からの天然ガス漏れを検知するガス漏れ検知手段と前記空気通路を連通・遮断する第1開閉手段とが設けられ、前記第1開閉手段に対し上手側の空気通路中に第2開閉手段を備える排気ラインが分岐接続され、他方、前記第1開閉手段に対し下手側の空気通路中に第3開閉手段を備える吸気ラインが分岐接続されてなり、前記ガス漏れ検知手段がガス漏れを検知しなければ第1開閉手段を開放、第2,第3開閉手段を閉鎖させ、ガス漏れを検知すれば第1開閉手段を閉鎖、第2,第3開閉手段を開放させてなる構成としたことを特徴とする。
【0010】また、本発明に係る請求項4の発明は、前記請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の天然ガス発生・タービン発電システムに関して、前記マイクロガスタービンの排ガスの少なくとも一部を、必要に応じて前記空温式気化器の吸込ファンを介して、前記マイクロガスタービンの吸気口に空気を供給する空気通路に送気する排ガス送気ラインを設けると共に、前記空温式気化器に排ガスを送気する除霜用ガス送気ラインを前記空気通路から分岐させてなる構成としたことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る天然ガス発生・タービン発電システムの好ましい実施形態を、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
【0012】図1に、本発明の第1の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムの装置回路図を示す。この図1に図示の天然ガス発生・タービン発電システムは、液化天然ガス気化ラインとマイクロガスタービン発電設備とを備えている。液化天然ガス気化ラインは、LNGタンク5からのLNGが供給される流入口と発生したNGをNGタンク(図示しない)に送出する流出口との間に亘るライン中に上手側から空温式気化器2と天然ガス加温器3が順に直列関係に介設されている。他方、マイクロガスタービン発電設備は、ガスタービン6および空気圧縮機7を軸連結して備えるマイクロガスタービン1と、このガスタービン1に軸連結した発電機4とにより構成される。そして、この天然ガス発生・タービン発電システムは、小規模のNGを製造するサテライト基地に設置してここで発生したNGの一部が供給されるマイクロガスタービンの出力をサテライト基地の消費電力に利用させるようになっている。
【0013】液化天然ガス気化ラインに設けられた空温式気化器2は、図2に構造が概念図で示されるが,対空気フィンチューブ型熱交換器により構成されていて、竪形で側壁下部に通風口(吸気口)16が開口し、頂部に排気筒17が連設しているケーシング15内にフィンチューブ群が収容され、排気筒17内に吸込ファン18が配設されている。上記フィンチューブ群は、LNGが供給される前半部19が蒸発部Aに、NGを送出させる後半部20が加温部Bにそれぞれ形成されて、例えば、蒸発部Aは2つの上・下ヘッダー間に直立する複数本のフィンチューブを並列接続してなる熱交換器に形成し、加温部Bは昇流と降流を交互に行わせる蛇行状のフィンチューブを立設してなる熱交換器に形成している。なお、21は、フィンチューブ群の上方に横設した散水ノズルで、冬期等にフィンチューブ群のフィン表面に結氷した際、デフロストのためにノズル孔から下方のフィンチューブ群に向けて温水を散布するように形成される。
【0014】このような空温式気化器2は、蒸発部Aに送り込まれたLNG(例、−145℃)をフィンチューブ内に昇流させてその間に、吸込ファン18の回転で通風口16から排気筒17に向け昇流する空気と熱交換させ蒸発・気化させてNGとなし、さらに、加温部Bにおいて同じく昇流する空気と熱交換させて加温されたNG(例、−20℃)となす熱交換運転が可能であって、このNGを連続して送出させるようになっており、他方、LNGと熱交換し冷却された空気は、排気筒17から上方に排出される。なお、図2に示される例は、強制通風式のものであるが、本発明では、自然通風式の空温式気化器に適用して上記例に類似する構造のものとすることもできる。
【0015】第1の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムでは、前述の通り、前記空温式気化器2の下手側に、気体対液体型の熱交換器からなる天然ガス加温器3が設けられていて、空温式気化器2から送出された加温NGが天然ガス加温器3において温水によりさらに10℃程度迄加温されるようになっている。そして、この加温NGの一部量をマイクロガスタービン1に送給して空気圧縮機7からの圧縮空気に混合することにより、燃料として利用させるように形成している。この場合、天然ガス加温器3での温水としては、マイクロガスタービン1からの排ガスによって加温された温水が用いられるものであり、所謂、排熱回収を行わせることによって、マイクロガスタービン発電設備に対して高効率の運転を実現させることが可能である。
【0016】また、上記天然ガス発生・タービン発電システムでは、空温式気化器2において排気筒17から上方に排出される冷却空気を空気ダクトで導いてマイクロガスタービン1の空気圧縮機7の吸気口に供給するようにしていて、これにより空気圧縮機7の圧縮用空気を冷却するように構成している。
【0017】このように構成してなる上記天然ガス発生・タービン発電システムは、空温式気化器2で冷却された空気をマイクロガスタービン1の吸気空気に利用し、また、マイクロガスタービン1の温熱を天然ガス加温器3の加温熱源に利用してなることにより、熱効率が高められたマイクロガスタービン1の出力をサテライト基地の消費電力に利用することができる。
【0018】さらに、この天然ガス発生・タービン発電システムは、従来のガスタービン発電システムと比較して、吸気冷却器およびこの吸気冷却器に関連する冷媒供給ラインが省略されるし、空気冷却用送風機として白煙排除用の吸込ファン18が利用できる利点がある。
【0019】図3には、本発明の第2の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムの装置回路図を示す。この第2の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムにおいて、前記第1の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムのものに類似しているので、対応する各部材には同一の参照符号を付して個々の説明は省略するものとする。
【0020】上記第2の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムに関して特徴とされる構成は、マイクロガスタービン1の温熱を天然ガス加温器3の加温熱源に利用するための前記手段として、マイクロガスタービン1から排出される廃棄ガスの排熱回収利用によって実現させるようにしたものであり、図示するように、マイクロガスタービン1の排ガスライン中に気体対液体型の熱交換器からなる排熱回収器8を介設して、この排熱回収器8の液管路と天然ガス加温器3の液管路とを液ポンプが設けられた管路によって循環的に接続し、これによってマイクロガスタービン1では排ガスを冷却し、他方、天然ガス加温器3ではNGを排熱回収器8からの温水により約10℃まで加温することが可能で、NGの加温とマイクロガスタービン1の熱回収とが効率的に行なわれるのである。
【0021】なお、上記第2の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムでは、空温式気化器2が、図2に示す構造の気化器単体の複数基を、例えば3基2-1〜2-3を併設して、各排気筒の吸込ファン18からの冷却空気を纏めて空気ダクトで導きマイクロガスタービン1の空気圧縮機7の吸気口に供給するようにしたものである。
【0022】上記第2の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムに関して、例えばこの発電システムが設置されるサテライト基地の気化能力仕様がLNG処理量で5000t/年、消費電力量が30KWH とし、28KW出力、48000Kcal/hの温水供給可能なマイクロガスタービン1を導入したとすると、電力量の約90%が賄え、冬場には排熱回収器8により従来の温水ボイラ設備22(2点鎖線枠で示す)の代替が可能であり、これにより電力費の削減、ボイラ省略が可能となる。また、夏場に外気温度が30℃となった場合、0℃程度の冷却空気が吸気できるのでマイクロガスタービン1の出力は約20%回復することになる。なお、天然ガス発生・タービン発電系統の各部における温度、熱量、流量(重量換算値)などの具体的な諸条件は図3中に掲示する通りである。
【0023】図4には、本発明の第3の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムの装置回路図を示す。この第3の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムにおいて、前記第1および第2の各実施形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムのものに類似しているので、対応する各部材には同一の参照符号を付している。
【0024】上記第3の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムに関して特徴とされる構成は、空温式気化器2に天然ガス漏れが万一発生した場合であっても安全、かつ安定したガス発生・タービン発電運転を保証できるように構成した点にある。
【0025】この特徴付けられる構成に関して以下に説明すると、空温式気化器2は第2の実施形態のものと同じく、複数基例えば3基2-1〜2-3を併設して、各排気筒の吸込ファン18からの冷却空気を纏めて空気ダクトで導きマイクロガスタービン1の空気圧縮機7の吸気口に供給するようにしている。これは、空温式気化器2が、4時間運転し、続いて2時間デフロストする運転モードが標準であるから、3基の内2基2-2、2-3から冷却空気を引き、残りの1基2-1をデフロストすることで常時2基による連続した冷却空気供給運転を可能としたものである。
【0026】さらに、この3基からなる空温式気化器2により冷却された空気をマイクロガスタービン1の空気圧縮機7の吸気口に供給する空気通路中には、ガス漏れ検知手段9-1〜9-3、第1開閉手段10-1〜10-3、排気ライン13-1〜13-3および吸気ライン14がそれぞれ設けられている。ガス漏れ検知手段9-1〜9-3は、各空温式気化器2-1〜2-3に接続される液化天然ガス管からの天然ガス漏れを検知するために、各空気通路中に設けられた3個のガス漏れ検出器9-1〜9-3からなっている。
【0027】第1開閉手段10-1〜10-3は、同じく前記各空気通路をそれぞれ連通・遮断するために、これら空気通路中にそれぞれ設けられてなる3個の弁10-1〜10-3から成る。また、排気ライン13-1〜13-3は、第1開閉手段10-1〜10-3に対し上手側の前記各空気通路中にそれぞれ分岐接続された分岐管13-1〜13-3から成り、この各分岐管13-1〜13-3には連通・遮断するための3個の弁11-1〜11-3から成る第2開閉手段11-1〜11-3が介設されている。吸気ライン14は、第1開閉手段10-1〜10-3に対し下手側の空気通路中に分岐接続された分岐管14から成り、この分岐管14には連通・遮断するための弁12から成る第3開閉手段12が介設されている。
【0028】このような構成になる第3の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムにおいて、天然ガス漏れに対処した運転制御は次のように行なわれる。正常な運転状態であって、空温式気化器2で天然ガス漏れが生じていないときには、ガス漏れ検知手段9-1〜9-3が非ガス漏れ信号を出力していることにより、運転中の空温式気化器2-2、2-3に対応する第1開閉手段10-2、10-3は連通側に操作され、一方、第2開閉手段11-2、11-3および第3開閉手段12は遮断側に操作される。
【0029】これにより、空温式気化器2-2、2-3から空気圧縮機7の吸気口に至る空気通路が連通して冷却空気の全量を前記吸気口に供給することができる。この場合、排気ライン13-1〜13-3と吸気ライン14は閉じられているため、冷却空気が放出されたり、また、外気が吸気口に吸入されたりすることはない。
【0030】運転中に空温式気化器2の一部または全部で天然ガス漏れが生じ、例えば、空温式気化器2-3で天然ガス漏れが生じたとすると、ガス漏れ検知手段9-3がガス漏れ信号を出力することにより、連通側に作動中の第1開閉手段10-3は遮断側に切り替えられ、遮断側に作動中の第2開閉手段11-3および第3開閉手段12は連通側に切り替えられる。
【0031】これにより、空温式気化器2からの冷却空気供給運転を続行しながら天然ガス漏れが生じている空温式気化器2-3の運転を停止してメンテナンスが行なえ、空温式気化器2の漏れの対処が可能となる。なお、空温式気化器2-2で天然ガス漏れが生じた場合は、上述したと同じ要領で行なえば良く、また、両空温式気化器2-2、2-3で同時に天然ガス漏れが生じた場合は、第1開閉手段10-2、10-3は遮断側に操作し、第2開閉手段11-2、11-3および第3開閉手段12は連通側に操作すれば良い。
【0032】図5には、本発明の第4の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムの装置回路図を示す。この第4の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムにおいて、前記第1、第2および第3の各実施形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムのものに類似しているので、対応する各部材には同一の参照符号を付している。
【0033】上記第4の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムに関して特徴とされる構成は、マイクロガスタービンの排ガスの少なくとも一部を空温式気化器2に送気して、この空温式気化器2のフィン付伝熱管や吸込ファンの表面に形成される霜の層を除去することにより、排ガスの熱回収効率をさらに向上させるように構成した点にある。
【0034】即ち、前記マイクロガスタービン6の排ガスを排出する排ガスラインから、後述する構成になる排ガス送気ライン23が分岐している。この排ガス送気ライン23は、前記排ガスラインから分岐し、弁からなる第4開閉手段24を備えた排ガス送気基ライン23-1と、排ガス送気基ライン23-1から3分岐して、弁からなる第5開閉手段25-1、25-2、および25-3を備えた排ガス送気分岐ライン23-2,2,2と、これら3本の排ガス送気分岐ライン23-2,2,2のそれぞれが連通し、弁からなる第6開閉手段26-1、26-2、および26-3を備え、一端側に3つの空温式気化器2-1、2-2、および2-3のそれぞれに排ガスを噴射し、かつ冷気を吸引する、笠状のガス噴射・吸引部27-1、27-2、および27-3を備えると共に、一端側に3つの吸込ファン18のそれぞれに排ガスを放出する排ガス放出口を備えた排ガス送気先ライン23-3,3,3とから構成されている。
【0035】なお、前記第6開閉手段26-1、26-2、および26-3は、前記排ガス送気先ライン23-3,3,3の前記排ガス送気分岐ライン23-2,2,2の連通部と、前記ガス噴射・吸引部27-1、27-2、および27-3との間に介設されている。
【0036】さらに、前記マイクロガスタービン6の吸気口に燃焼用の空気を供給する空気通路の、前記ガス漏れ検出器9-1、9-2、および9-3の上流側からそれぞれ分岐して、弁からなる第7開閉手段29-1、29-2、および29-3を備え、除霜用ガスとして排ガスを送気する除霜用ガス送気ライン28-1、28-2、および28-3が、前記排ガス送気先ライン23-3,3,3の前記第6開閉手段26-1、26-2、および26-3よりも前記ガス噴射・吸引部27-1、27-2、および27-3側にそれぞれ連通してなる構成になっている。
【0037】この第4の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムの通常運転は次のように行われる。即ち、第4開閉手段24、第5開閉手段25、および第7開閉手段29が閉鎖され、第6開閉手段26が開放される。そして、前記ガス噴射・吸引部27-1、27-2、および27-3と、排ガス送気先ライン23-3,3,3とを介して吸込ファン18により冷却された空気が吸引されると共に、前記マイクロガスタービン6の吸気口に空気を供給する空気通路中に送気され、空温式気化器2-1,2,3で冷却された空気が前記マイクロガスタービン6の吸気空気として利用される。
【0038】ところで、前記空温式気化器2-1,2,3のそれぞれは、交互に2つが組み合わされて運転されると共に、他の1つの運転が停止されるものである。例えば、空温式気化器2-1、2-3の運転の継続により、この空温式気化器2-3のフィン付伝熱管や吸込ファン18の表面に霜の層が形成されると共に次第に成長して、霜の層厚が所定以上の厚さになると伝熱効率の低下により液化天然ガスの気化量が減少し、マイクロガスタービン6に対して必要量の燃料を供給することが不可能になる。そこで、空温式気化器2-3の運転が停止されると共に、霜の層厚が薄い方の空温式気化器2-1と他の空温式気化器2-2との運転に切り替えられて天然ガス発生・タービン発電システムの運転が継続されるものである。
【0039】一方、運転が停止された空温式気化器2-3のフィン付伝熱管や吸込ファン18の表面に形成された霜の層は、次のようにして除去される。先ず、運転が停止された空温式気化器2-3に対応する第1開閉手段10-3、第2開閉手段11-3、第6開閉手段26-3のそれぞれが閉鎖されると共に、第4開閉手段24、第5開閉手段25-3、第7開閉手段29-3のそれぞれが開放されるとともに、第5開閉手段25-1、および25-2はそれぞれ閉鎖されている。従って、前記排ガスラインから排出された高温の排ガスの一部は、排ガス送気基ライン23-1、排ガス送気分岐ライン23-2を経て排ガス送気先ライン23-3に流入し、吸込ファン18により吸引されて排ガス送気先ライン23-3の排ガス放出口から放出されると共に、空気通路内に送気される。このとき、前記吸込ファン18は排ガスに晒されるために、その表面に形成された霜の層が除去される。
【0040】そして、空気通路内に送気された排ガスは、除霜用ガス送気ライン28-3をとおってガス噴射・吸引部27-3から運転停止中の空温式気化器2-3に噴射されるから、この空温式気化器2-3のフィン付伝熱管の表面に形成された霜の層が効果的に溶かされて除去される。勿論、他の空温式気化器2-1、および2-2の場合にあっても、フィン付伝熱管の表面に霜の層が形成された場合には、霜の層は上記と同様の手順によって除去されるものである。
【0041】従って、この第4の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムによれば、上記のとおり、排ガスの熱が空温式気化器2のフィン付伝熱管の表面やファンの表面に形成された霜の層の除去に有効に活用されるから、排ガスの熱回収率が向上する。また、散水ノズルからの散水量の減少により、送水ポンプの小型化が可能になるから、天然ガス発生・タービン発電システムの設備費の削減と消費電力の削減によるランニングコストの低減が可能になるという優れた経済効果が生じる。
【0042】
【発明の効果】本発明の請求項1および請求項2の発明によれば、従来必要とされていた空気冷却熱交換器が不要となるため、装置コストの低減と、制御基数の削減による制御系の簡略化が図れる。また、空温式気化器での白煙対策に用いるファンをマイクロガスタービンにおける吸気用空気の圧送としても利用可能であるから、装置が簡易になるとともに、ランニングコストが節減できる。更に、NG加温用の温水ボイラーが不要となり、装置コストの削減が図れる。
【0043】本発明の請求項3の発明によれば、空温式気化器の液化天然ガス管から天然ガス漏れが発生するようなことがあっても、それに影響されることなくマイクロガスタービンでの安全かつ安定した連続吸気運転が可能となる。
【0044】本発明の請求項4の発明によれば、排ガスの熱が空温式気化器のフィン付伝熱管の表面やファンの表面に形成された霜の層の除去に有効に活用されるから排ガスの熱回収率が向上するのに加えて、散水ノズルからの散水量の減少により、送水ポンプの小型化が可能になるから、天然ガス発生・タービン発電システムの設備費の削減と消費電力の削減によるランニングコストの低減が可能になるという経済効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムの装置回路図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムにおける空温式気化器の構造を示す概念図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムの装置回路図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムの装置回路図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る天然ガス発生・タービン発電システムの装置回路図である。
【図6】従来のガスタービン発電システムの装置回路図である。
【符号の説明】
1…マイクロガスタービン,2…空温式気化器,3…天然ガス加温器,4…発電機,5…LNGタンク,6…ガスタービン,7…空気圧縮機,8…排熱回収器,9-1,2,3…ガス漏れ検出器,10-1,2,3…第1開閉手段,11-1,2,3…第2開閉手段,12…第3開閉手段,13-1,2,3…排気ライン,14…吸気ライン,15…ケーシング,16…通風口,17…排気筒,18…吸込ファン,19…前半部,20…後半部,21…散水ノズル,22…温水ボイラ設備,23…排ガス送気ライン,23-1…排ガス送気基ライン,23-2…排ガス送気分岐ライン,23-3…排ガス送気先ライン,24…第4開閉手段,25-1,2,3…第5開閉手段,26-1,2,3…第6開閉手段,27-1,2,3…ガス噴射・吸引部,28-1,2,3…除霜ガス送気ライン,29-1,2,3…第7開閉手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 液化天然ガスを気化ラインの空温式気化器と天然ガス加温器で順に加温することにより発生した天然ガスの少なくとも一部をマイクロガスタービン発電設備の燃料として使用する天然ガス発生・タービン発電システムであり、前記空温式気化器で冷却された空気を前記マイクロガスタービンの吸気空気に利用する一方、前記マイクロガスタービンの温熱を前記天然ガス加温器の加温熱源に利用することにより、熱効率が高められた前記マイクロガスタービンの出力をサテライト基地の消費電力に利用することを特徴とする天然ガス発生・タービン発電システム。
【請求項2】 前記天然ガス加温器が気体対液体型の熱交換器であり、前記マイクロガスタービンの排ガスにより加温して得た温水が加温熱源として供給される請求項1に記載の天然ガス発生・タービン発電システム。
【請求項3】 前記空温式気化器で冷却された空気を前記マイクロガスタービンの吸気口に供給する空気通路中に、前記空温式気化器の液化天然ガス管からの天然ガス漏れを検知するガス漏れ検知手段と前記空気通路を連通・遮断する第1開閉手段とが設けられ、前記第1開閉手段に対し上手側の空気通路中に第2開閉手段を備える排気ラインが分岐接続され、他方、前記第1開閉手段に対し下手側の空気通路中に第3開閉手段を備える吸気ラインが分岐接続されてなり、前記ガス漏れ検知手段がガス漏れを検知しなければ第1開閉手段を開放、第2,第3開閉手段を閉鎖させ、ガス漏れを検知すれば第1開閉手段を閉鎖、第2,第3開閉手段を開放させてなる請求項1または2のうちの何れか一つの項に記載の天然ガス発生・タービン発電システム。
【請求項4】 前記マイクロガスタービンの排ガスの少なくとも一部を、必要に応じて前記空温式気化器の吸込ファンを介して、前記マイクロガスタービンの吸気口に空気を供給する空気通路に送気する排ガス送気ラインを設けると共に、前記空温式気化器に排ガスを送気する除霜用ガス送気ラインを前記空気通路から分岐させてなる請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の天然ガス発生・タービン発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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