説明

天然ムートン

【課題】裏皮層の側に配置された健康補助器材からのオゾン、熱、マイナスイオンあるいは水分等の健康補助成分を含んだ有益な流体が皮部を通過することによって、高機能化が図られる天然ムートンを提供する。
【解決手段】羊毛が密集した羊毛部8と、表皮層と銀面層と裏皮層とからなる皮部7と、が積層された天然ムートンにおいて、鋭利な先端を持った切除工具30を裏皮層6の側から押し当てて、皮部7を切り取ることによって、皮部7を貫通した貫通穴22を複数個備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた肌触りや保温性を有する天然ムートンに関し、詳細には、温熱発生機能やマイナスイオン発生機能や消臭・吸着・吸湿機能等の様々な機能が付与された天然ムートンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、優れた肌触りや保温性を有する羊毛の天然ムートンがよく使用されている。天然ムートンは、銀面と呼ばれる皮部の上を、密集した羊毛が覆っている構造をしていて、らせん状の縮れ毛が高い保温・断熱効果を発揮するとともに、羊毛自身の優れた吸湿性及び放湿性によって、さらっとした肌触りを保つことができる。したがって、天然ムートンは、寝具に好適な素材と言われている。
【0003】
ところで、天然ムートンからなる寝具を使って就寝するときに、安眠・リラックス効果を得るために、温熱板やマイナスイオン発生シートや備長炭シートやゲルマニウムシート等の健康補助器材を天然ムートンの下に配置して天然ムートンと併用したいという要望がある。
【0004】
そこで、皮部の裏側にマイナスイオン発生機能を持った粉体を塗布することによって、毛皮にマイナスイオン発生機能を付与することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
しかしながら、天然ムートンを構成する銀面と呼ばれる皮部は、ウロコ状の繊維組織からできているために、熱やマイナスイオン等の健康補助成分を含んだ流体が皮内部を通過して羊毛側(おもて側)に流出することが遮断されてしまう。したがって、特許文献1に開示されている天然ムートンでは、銀面と呼ばれる皮部の遮蔽効果によって、皮部の裏側で発生したマイナスイオンを皮のおもて側に運ぶことができないために、所望の健康補助効果を得ることができないという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2000−17300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、裏皮層の側に配置された健康補助器材からのオゾン、熱、マイナスイオンあるいは水分等の健康補助成分を含んだ有益な流体が皮部を通過することによって、高機能化が図られる天然ムートンを提供することである。
【課題を解決するための手段及びその作用と効果】
【0008】
上述の技術的課題を解決するために、本発明に係る天然ムートンは、以下の特徴を有する。
【0009】
すなわち、本発明に係る天然ムートンは、
羊毛が密集した羊毛部と、表皮層と銀面層と裏皮層とからなる皮部と、が積層された天然ムートンにおいて、
鋭利な先端を持った切除工具を裏皮層の側から押し当てて、皮部を切り取ることによって、皮部を貫通した貫通穴を複数個備えていることを特徴とする。
【0010】
上記構成の天然ムートンによれば、皮部を貫通する貫通穴が複数個設けられているので、表皮層の側と裏皮層の側が連通している。したがって、貫通穴を介して、裏皮層の側に配置された健康補助器材からのオゾン、熱、マイナスイオンあるいは水分等の健康補助成分を含んだ有益な流体が流通することができるので、高機能化を図ることができる。
【0011】
貫通穴は、断面視、長方形や逆台形形状とすることもできるが、好ましくは、裏皮層の側が広い開口であり表皮層の側が狭い開口である、断面視、台形形状である。
【0012】
上記構成によれば、裏皮層の側の入口が広い開口となっているので、裏皮層の側に配置された健康補助器材からのオゾンや水分やマイナスイオンや熱等の健康補助成分を含んだ有益な流体を確保することが容易になる。
【0013】
カッターナイフ等の刃物で切除することもできるが、切除工具は、先三角ショートビットであることが好ましい。先三角ショートビットというのは、主として木工用ドリルとして用いられているものであり、ギネムや木工用ドリルビットとも呼ばれている。先端が先三角になっているので、押し込んだときにグイグイと引っ張られることが無く、作業者が押した分だけ中に入っていくというものである。
【0014】
また、本発明に係る寝具は、上述した天然ムートンの裏皮層の側に、健康補助成分を含んだ流体を発する健康補助器材を配置し、貫通穴を介して、健康補助器材と羊毛部との間が流体的に連通していることを特徴とする。
【0015】
健康補助器材が、温熱板、マイナスイオン発生器、備長炭シート又はゲルマニウムシート等であるならば、流体には、オゾン、熱、マイナスイオンあるいは水分の中から選ばれたものを少なくとも一つ含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態に係る天然ムートン1及び寝具50を、図1及び2を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
天然ムートン1は、図1に模式的に示すように、羊毛8が密集した羊毛部と、羊毛8の生えている表皮層4、柱状の繊維組織を有する銀面層2、及び不図示の体内組織とつながっていたが体内組織から剥ぎ取られた裏皮層4とからなる皮部7と、がそれぞれ積層した構造をしている。天然ムートン1は、例えば、100cm×200cmのサイズである。羊毛8の長さは、15乃至35mmである。皮部7の厚みは、2乃至3mmである。
【0018】
後述するように、皮部7に対して鋭利な先端を持った切除工具30を裏皮層6の側から押し当てて、皮部7を切り取ることによって、皮部7を貫通した貫通穴10が複数個(例えば、穴径が3乃至15mmであるものが、200乃至300個)形成されている。貫通穴10は、裏皮層6の側の下口14が広い開口であり表皮層4の側の上口12が狭い開口である、断面視、台形形状をしている。貫通穴10によって、表皮層4の側と裏皮層6の側とが連通している。
【0019】
裏生地28と天然ムートン1との間に、健康補助器材20を離間して又は密接して配置することによって、寝具50が作製される。健康補助器材20としては、セラミックヒータが埋め込まれた温熱板、トルマリンを含んだマイナスイオン発生器、備長炭の微粉を不織布等に添着させた備長炭シート又はゲルマニウムシート等が用いられる。温熱板からは、熱が放出されて、熱を含んだ空気(流体)が漂う。マイナスイオン発生器からは、オゾンやマイナスイオンが放出されて、オゾンやマイナスイオンを含んだ空気(流体)22が漂う。備長炭シートからは、マイナスイオンが放出されて、マイナスイオンを含んだ空気(流体)22が漂うとともに、不快なニオイを含んだ空気(流体)22が吸収される(消臭・脱臭効果)。ゲルマニウムシートからは、マイナスイオンが放出されて、マイナスイオンを含んだ空気(流体)22が漂う。
【0020】
オゾン、熱、マイナスイオンあるいは水分等の健康補助成分を含んだ空気(流体)22は、貫通穴10の下口14から導入され、貫通穴10の中を通って、貫通穴10の上口12から放出される。逆に、不快なニオイを含んだ空気(流体)22は、貫通穴10の上口12から導入され、貫通穴10の中を通って、貫通穴10の下口14から放出される。したがって、貫通穴10を介して、裏皮層6の側に配置された健康補助器材20からのオゾン、熱、マイナスイオンあるいは水分等の健康補助成分を含んだ有益な流体22が流通して、安眠効果やリラックス効果の元を表皮層4の側に提供することができるので、寝具50の使用者は、安眠効果やリラックス効果を得ることができる。
【0021】
次に、皮部7における貫通穴10の形成方法について、図3を参照しながら説明する。
【0022】
皮部7は繊維組織からできているとともに、羊毛部8は密集した多くの羊毛からできている。レーザ光で穴を開ける場合、皮部7がこげてしまうので、適切ではない。また、普通のドリルを使う場合、穴開け直後に羊毛8を巻き込んでしまうので、適切ではない。また、ポンチで打ち抜いた場合、羊毛8も一緒に打ち抜かれてしまうので、天然ムートン1の美観が損なわれる。そこで、穴開けに必要な部位以外の他部位を傷付けることなくきれいな形態で穴開け加工する方法を鋭意検討した結果、先三角ショートビット30という切除工具を用いることが好適であることを見出した。
【0023】
先三角ショートビット30というのは、(株)スターエムから市販されていて、主として木工用ドリルとして用いられているものである。先三角ショートビット30と同様のものは、他のメーカーでも製造されていて、ギネムや木工用ドリルビットとも呼ばれている。先三角ショートビット30では、芯部32の先端が先三角になっているので、押し込んだときにグイグイと引っ張られることが無く、作業者が押した分だけ中に入っていくことが可能である。
【0024】
皮部7は繊維組織からできているために弾性を有している。先三角ショートビット30の先三角部34を裏皮層の側から皮部7に押し当てると、先三角部34で押圧された部分が引っ込んで凹部が形成される。この状態で、さらに押し込んでドリル部36の刃物で皮部7を切除すると、裏皮層6の側が広い開口であり表皮層4の側が狭い開口である、断面視、台形形状をした貫通穴10が得られる。貫通穴10がこのようなテーパー形状をしているので、健康補助器材20から放出されたオゾン、熱、マイナスイオンあるいは水分等の健康補助成分を含んだ有益な空気22を捕集することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る天然ムートンを含む寝具の断面図である。
【図2】図1に示した天然ムートンを含む寝具の上面図である。
【図3】図1に示した天然ムートンの穴開け方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0026】
1 天然ムートン
2 銀面層
4 表皮層
6 裏皮層
7 皮部
8 羊毛(羊毛部)
10 貫通穴
12 上口
14 下口
20 健康補助器材
22 健康補助成分を含んだ流体
28 裏生地
30 先三角ショートビット(切除工具)
32 芯部
34 先三角部
36 ドリル部
50 寝具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羊毛が密集した羊毛部と、表皮層と銀面層と裏皮層とからなる皮部と、が積層された天然ムートンにおいて、
鋭利な先端を持った切除工具を裏皮層の側から押し当てて、皮部を切り取ることによって、皮部を貫通した貫通穴を複数個備えていることを特徴とする天然ムートン。
【請求項2】
前記貫通穴は、裏皮層の側が広い開口であり表皮層の側が狭い開口である、断面視、台形形状をしていることを特徴とする、請求項1記載の天然ムートン。
【請求項3】
前記切除工具は、先三角ショートビットであることを特徴とする、請求項1記載の天然ムートン。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の天然ムートンの裏皮層の側に、健康補助成分を含んだ流体を発する健康補助器材を配置し、貫通穴を介して、健康補助器材と羊毛部との間が流体的に連通していることを特徴とする寝具。
【請求項5】
前記流体には、オゾン、熱、マイナスイオンあるいは水分の中から選ばれたものを少なくとも一つ含んでいることを特徴とする、請求項4記載の寝具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−24784(P2008−24784A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196990(P2006−196990)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(599058475)株式会社ケイ・エム・ジー (1)
【Fターム(参考)】