説明

天然甘味料で甘味を付けた減カロリー飲料

HFCS−90と少なくとも1種の低カロリー天然甘味料の組合せを使用して、味を保ちながら、完全カロリー飲料のカロリー量を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、天然甘味料で甘味を付けた減カロリー飲料に関する。より詳細には、本発明は、HFCS−90(高果糖コーンシロップ−90)と少なくとも1種の低カロリー天然甘味料との組合せで甘味を付けた飲料、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連背景技術
ゼロまたは低カロリー飲料は非常に普及している。このようなダイエット製品は、通常はアスパルテーム、アセスルファム−K、サッカリン、スクラロース、およびチクロなどの非栄養性甘味料を単独でまたはブレンドで含有する。消費者は、このようなダイエット製品の場合カロリーについて心配する必要はないが、一部の消費者は、強力な人工甘味料を消費しないことを好むだろう。しかし、米国で使用が認可された強い天然甘味料は存在しないので、天然甘味料で甘味を付けた良好な味の減カロリー飲料を配合することは困難である。
【0003】
これまで、栄養性甘味料を低カロリー天然甘味料で部分的に置換したものから、減カロリー製品が生成されたが、自然に甘味を付けた完全カロリーの対照物に比べて、いくつかの点で欠点がある。このような製品は、甘味が十分でないことがあり、異味があることがあり、またはある種の味と相性が悪いことがある。従って、天然甘味料で甘味を付けた良質の減カロリー飲料が必要とされている。
【0004】
高果糖コーンシロップ(HFCS)は、ブドウ糖をコーンシロップ中で果糖に異性化することによって製造される。カーギル(Cargill)、ADM、およびステーリー(Staley)などのコーン精製業者は、HFCS−42(最低グレード;Brix(ブリックス)71、すなわち固形分71%および水29%;固形部分中、果糖42%、およびブドウ糖とブドウ糖の高次ポリマー58%)、ならびにHFCS−90(最高グレード;Brix(ブリックス)77;固形部分中、果糖90%、およびブドウ糖とブドウ糖の高次ポリマー10%)を通常製造している。HFCS−42は、最も安価なグレードのHFCSであり、したがって幅広く使用されている。これは、砂糖とほぼ同じ甘味を有している。飲料大企業は、HFCS−42とHFCS−90をブレンドすることによって製造されるHFCS−55(中間グレード;Brix(ブリックス)77;固形部分中、果糖55%、およびブドウ糖とブドウ糖の高次ポリマー45%)を使用する傾向にある。HFCS−55はHFCS−42よりわずかに高価であるが、甘味も強い。
【0005】
第一にコストを考慮するため、HFCS−90は、通常は飲料の甘味剤として使用されない。むしろ、HFCS−90は、主にHFCS−42とブレンドして、HFCS−55を製造するために製造されている。天然甘味料で甘味を付けた減カロリー飲料を実現する際のHFCS−90の使用は、これまで記述されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の概要
本発明は、HFCS−90および少なくとも1種の低カロリー天然甘味料で甘味を付けた減カロリー飲料に関する。いくつかの好ましい実施形態では、少なくとも1種の低カロリー天然甘味料は、D−タガトース、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、マルチトール、およびキシリトールから選択される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好ましい実施形態では、約25%〜約60%、より好ましくは約30%〜約40%のカロリー低減を実現する。このような低減は、完全カロリー対照飲料のカロリー量に比べたものである。本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種の低カロリー天然甘味料を、最終飲料重量を基準にして約0.2%〜約3.5%の量で使用する。
【0008】
本発明の減カロリー飲料は、清涼飲料、湧き水飲料(fountain beverage)、冷凍レディ・トゥ・ドリンク飲料、コーヒー飲料、茶飲料、乳飲料、粉末清涼飲料、液体濃縮物、フレーバー水、強化水、果汁および果汁で着香した飲料、スポーツ飲料、ならびにアルコール飲料から選択することができる。
【0009】
本発明は、さらに、飲料用HFCS−90および少なくとも1種の低カロリー天然甘味料を含有するステップを含む減カロリー飲料の製造方法に関する。
【0010】
本発明は、HFCS−90および少なくとも1種の低カロリー天然甘味料から実質的になる甘味料組成物にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
詳細な説明
HFCS−90(高果糖コーンシロップ−90)と少なくとも1種の低カロリー天然甘味料の組合せを使用して、飲料配合物に甘味を付けて、完全カロリー対照飲料と比べて、実質的に同じ甘味および味を有する減カロリー飲料を実現する。本発明の好ましい実施形態では、約25%〜約60%、より好ましくは約30%〜約40%のカロリー低減を実現する。
【0012】
本明細書では、「味」は、甘味覚、甘味覚の時間的効果、すなわち発現および期間、異味、例えば苦味および金属味、残留覚(後味)、ならびに触覚、例えばボディおよび濃さ、の組合せを指す。本明細書では、「減カロリー」は、完全カロリー対照物に比べて、カロリー価の低減を意味する。より具体的には、「減カロリー」は、通常は、一食当たり、例えば飲料の場合8オンス当たり、少なくとも25%のカロリー低減を意味する。本明細書では、「低カロリー天然甘味料」は、甘味を飲料に与えるが、カロリー量が4cal/g未満しかない天然の材料を指す。本明細書では、「完全カロリー」は、HFCS−55、HFCS−42、ショ糖などの栄養性甘味料で甘味を付けた組成物を指す。
【0013】
飲料としては、炭酸清涼飲料、湧き水飲料、冷凍レディ・トゥ・ドリンク飲料、コーヒー飲料、茶飲料、乳飲料、粉末清涼飲料、ならびに液体濃縮物、フレーバー水、強化水、果汁および果汁で着香した飲料、スポーツ飲料およびアルコール製品が挙げられるがこれらに限定されない。飲料は、炭酸飲料でも、非炭酸飲料でもよい。本発明の好ましい一実施形態では、飲料は、フレーバー水、強化水、またはコーラで着香した炭酸清涼飲料である。
【0014】
本発明の第1の実施形態によれば、減カロリー飲料は、(a)HFCS−90、および(b)少なくとも1種の低カロリー天然甘味料を含む。言い換えれば、本発明の減カロリー飲料は、HFCS−90および少なくとも1種の低カロリー天然甘味料で甘味を付けることができ、好ましくはそれだけで甘味を付ける。
【0015】
本発明での使用に適したHFCS−90は、周知であり、様々なコーン精製業者(例えば、カーギル(Cargill)、米国ミネソタ州ワイザタ(Wayzata, MN);ADM、米国イリノイ州ジケーター(Decatur, IL))によって市販されている。上記に指摘したように、HFCS−90は、Brix(ブリックス)約77、すなわち固形分77%を有し、固形部分中、果糖対ブドウ糖など他の単糖類の比が約90対10である高果糖コーンシロップである。
【0016】
出発材料HFCS−90のBrix(ブリックス)を確認する必要があることに留意することは重要である;Brix(ブリックス)が77でない場合、HFCS−90の重量を、実固形分パーセントで調整しなければならない。当業者なら容易に理解するように、Brix(ブリックス)は、時期または多くの他の理由のため、製造業者によって異なることがある。したがって、本発明では使用する前に、出発材料HFCS−90のBrix(ブリックス)を測定することが推奨される;このような測定は、知られている任意の手順に従って、屈折計または密度計の使用などによって行うことができる。
【0017】
本発明での使用に適した低カロリー天然甘味料としては、D−タガトース、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、マルチトール、およびキシリトールが挙げられるがこれらに限定されない。D−タガトースは、アーラフーズ(Arla Foods)(米国ニュージャージー州ユニオン(Union, New Jersey))から得ることができ、約1.5カロリー/gを与えると報告されている。エリスリトール、すなわちメソ−エリスリトールは、カーギル(Cargill)(米国ミネソタ州ワイザタ(Wayzata, MN))から得ることができ、ほぼカロリーを発生しない(0.2カロリー/g)と報告されている。通常は、少なくとも1種の低カロリー天然甘味料は、D−タガトースの場合、最終飲料の約0.2重量%〜3.5重量%、好ましくは約0.2重量%〜約1.0重量%、エリスリトールの場合、最終飲料の約0.2重量%〜約3.5重量%の量で含まれている。
【0018】
最終飲料中のHFCS−90と低カロリー天然甘味料の全量は、所与の用途での所望の全甘味など様々な要因に応じて異なることを、当業者は容易に理解するであろう。適切な量は、当業者によって容易に決定することができる。減カロリー飲料が、完全カロリー対照飲料と同じ甘味および味プロフィルを有することを実現することが本発明にとってより重要である。本発明の好ましい実施形態では、完全カロリー対照飲料はHFCS−55またはHFCS−42で甘味を付けられている。
【0019】
したがって、完全カロリー対照飲料の適切なレベルの甘味を決定すると、そのカロリー量を計算することが可能である。それから、本発明では、完全カロリー対照飲料のカロリー量の約25%〜約60%、より好ましくは約30%〜約40%である「目標カロリー」を設定することによって、HFCS−90および少なくとも1種の低カロリー天然甘味料の量を容易に決定することができる。当業者なら容易に理解するように、上記に記載するように少なくとも1種の低カロリー天然甘味料の量を算入する際、エリスリトールのカロリー寄与は無視できるものであり、D−タガトースのカロリー寄与は無視できるものではないが小さい。本発明での使用に適したHFCS−90の量は、上記の指針を使用して容易に決定することができる。
【0020】
飲料に通常は使用される他の任意の成分を適切な量で本発明の減カロリー飲料に含むことが可能である。当業者なら、適切な使用レベルを決定することができよう。このような成分としては、矯味剤、着色料、防腐剤、酸味料、緩衝用塩、カフェイン、消泡剤、および起泡剤が挙げられるがこれらに限定されない。さらに、より高い程度の甘味が望まれる場合、本発明の精神から逸脱することなく、ステビア、羅漢果、モナチン、タウマチン、グリチルリチン酸アンモニウム(ammonium glycyrrhyzin)、およびその組合せなど効力の高い天然甘味料を含むことが可能である。
【0021】
本発明の第2の実施形態は、飲料に(a)HFCS−90と(b)少なくとも1種の低カロリー天然甘味料の組合せで甘味を付けるステップを含む減カロリー飲料の製造方法に関する。本発明の追加の実施形態は、この方法に従って製造された減カロリー飲料に関する。HFCS−90および低カロリー天然甘味料の量に関する詳細は、本発明の第1の実施形態に関して上記に詳述するとおりである。
【0022】
本発明の最後の実施形態は、上記に記載する(a)HFCS−90および(b)少なくとも1種の低カロリー天然甘味料から実質的になる甘味料組成物に関する。もちろん、この甘味料を使用して、完全カロリー対照飲料と同じ甘味および味プロフィルを有する減カロリー飲料を製造することができる。
【0023】
以下の実施例は、本発明のいくつかの好ましい実施形態を例示するためのものであって、本発明を限定することは含意されていない。
【実施例】
【0024】
実施例1
減カロリーコーラ炭酸清涼飲料の製造に使用するためのシロップ2リットルを調製した。より具体的には、HFCS−90の量は、HFCS−55で甘味を付けた完全カロリー飲料に比べて約25%のカロリー低減を実現するのに必要な量を計算することによって決定した。表1に挙げる成分を以下のとおり組み合わせた。
【0025】
【表1】

【0026】
HFCS−90およびタガトースを激しく撹拌しながら水約0.5Lに溶解した。この甘味料溶液に、クエン酸塩および安息香酸塩の水溶液を添加した。これに、酸味料および矯味剤を続け、水を加えて、シロップの体積を2Lに調整した。このように製造されたシロップを、シロップ1部および炭酸水5部の割合で炭酸水と混合して、最終減カロリーコーラ飲料とした。天然甘味料で甘味を付けた最終減カロリーコーラ飲料は、訓練された試験員によって、完全カロリー対照物と同じ甘味および味を有していると判断された。
【0027】
比較例1
減カロリーコーラ炭酸清涼飲料の製造に使用するためのシロップ2リットルを調製する。より具体的には、HFCS−55の量は、HFCS−55で甘味を付けた完全カロリー飲料に比べて約25%のカロリー低減を実現するのに必要な量を計算することによって決定した。表2に挙げる成分を以下のとおり組み合わせる。
【0028】
【表2】

【0029】
HFCS−55およびタガトースを激しく撹拌しながら水約0.5Lに溶解する。この甘味料溶液に、クエン酸塩および安息香酸塩の水溶液を添加する。これに、酸味料および矯味剤を続け、水を加えて、シロップの体積を2Lに調整する。このように製造されたシロップを、シロップ1部および炭酸水5部の割合で炭酸水と混合して、最終減カロリーコーラ飲料とする。天然甘味料で甘味を付けた最終減カロリーコーラ飲料は、訓練された試験員によって、完全カロリー対照物に比べて許容できないレベルの甘味を有していると判断された。
【0030】
本発明の他の変形および変更は当業者に明らかである。本発明は、特許請求の範囲に記載されている場合を除いて限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)HFCS−90および(b)少なくとも1種の低カロリー天然甘味料を含む減カロリー飲料。
【請求項2】
前記少なくとも1種の低カロリー天然甘味料が、D−タガトース、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、マルチトール、およびキシリトールからなる群から選択される請求項1に記載の減カロリー飲料。
【請求項3】
前記少なくとも1種の低カロリー天然甘味料が、最終減カロリー飲料重量を基準にして約0.2%〜約3.5%の量で存在する請求項1に記載の減カロリー飲料。
【請求項4】
前記飲料が、清涼飲料、湧き水飲料、冷凍レディ・トゥ・ドリンク飲料、コーヒー飲料、茶飲料、乳飲料、粉末清涼飲料、液体濃縮物、フレーバー水、強化水、果汁および果汁で着香した飲料、スポーツ飲料、ならびにアルコール飲料からなる群から選択される請求項1に記載の減カロリー飲料。
【請求項5】
完全カロリー対照飲料に比べて約25%〜約60%のカロリー低減を実現する請求項1に記載の減カロリー飲料。
【請求項6】
前記減カロリー飲料に、(a)HFCS−90および(b)少なくとも1種の低カロリー天然甘味料で甘味を付けるステップを含む減カロリー飲料の製造方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の低カロリー天然甘味料が、D−タガトース、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、マルチトール、およびキシリトールからなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の低カロリー天然甘味料が、最終減カロリー飲料重量を基準にして約0.2%〜約3.5%の量で存在する請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記飲料が、清涼飲料、湧き水飲料、冷凍レディ・トゥ・ドリンク飲料、コーヒー飲料、茶飲料、乳飲料、粉末清涼飲料、液体濃縮物、フレーバー水、強化水、果汁および果汁で着香した飲料、スポーツ飲料、ならびにアルコール飲料からなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項10】
完全カロリー対照飲料に比べて約25%〜約60%のカロリー低減を実現する請求項6に記載の方法。
【請求項11】
請求項6に記載の方法に従って製造された減カロリー飲料。
【請求項12】
(a)HFCS−90および(b)少なくとも1種の低カロリー天然甘味料から実質的になる甘味料組成物。

【公表番号】特表2006−528488(P2006−528488A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521271(P2006−521271)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/023741
【国際公開番号】WO2005/009148
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(593203701)ペプシコ,インコーポレイテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】PepsiCo Inc.
【Fターム(参考)】