天端出し治具
【課題】 コンクリート打設後の短期間内に、最終的な天端レベルの精密な調節を簡易に行うことが可能な天端出し治具を提供する。
【解決手段】 天端出し治具10は、軸孔13を有する小径の筒状保持部12と、筒状保持部12の外壁にその軸方向に対して平行に一体で設けられた略C字状の鉄筋取付部15とからなる樹脂製の取付本体部11を設けている。軸孔13には長尺の調整棒24が挿通されて鉛直方向に向けて配置され、筒状保持部12に緊密に締め付けられて取り付けられると共に、外力を加えることにより軸孔13に対して摺動可能にされている。調整棒24の上端にはキャップ部26が被せられている。
【解決手段】 天端出し治具10は、軸孔13を有する小径の筒状保持部12と、筒状保持部12の外壁にその軸方向に対して平行に一体で設けられた略C字状の鉄筋取付部15とからなる樹脂製の取付本体部11を設けている。軸孔13には長尺の調整棒24が挿通されて鉛直方向に向けて配置され、筒状保持部12に緊密に締め付けられて取り付けられると共に、外力を加えることにより軸孔13に対して摺動可能にされている。調整棒24の上端にはキャップ部26が被せられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物のコンクリート基礎の打設の際に、コンクリート基礎の上端である天端レベルの設定に用いられる天端出し治具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅用等のコンクリート基礎の形成においては、所定の高さまで通常の流動性に乏しいコンクリートを打設し、その後、天端レベルまでセメント比率が高く流動性の高いレベラーを流し込むことにより、コンクリート表面の凹凸が是正された平坦な面に形成される。その場合、コンクリート高さとレベラーの高さが、天端出し治具とレーザ発光器等を用いて決められている。従来、この種の天端出し治具としては、例えば特許文献1に示すように、長手棒状の補助具本体の上端部に開口するねじ穴に進退可能に調整ねじ体が螺合され、補助具本体の上部に、補助具本体に対して直角方向且つ水平に延びるコンクリートレベル出しのための上羽根部が固着され、補助具本体の下部に、補助具本体に対して直角方向且つ垂直に延びる回り止め防止のための下羽根部が固着されてなる天端出し補助装置が知られている。この天端出し補助装置は、コンクリート打設の後にコンクリート内に鉛直方向に差し込まれて補助具本体が上羽根部位置まで垂直に埋め込まれる。そして、コンクリートが硬化した後、さらに調整ねじ体を回して最終高さである天端レベルが調整され、レベラーを天端レベルまで流し込むことによりコンクリート基礎が形成される。
【特許文献1】特許第2649483号公報
【0003】
ところで、上記天端出し補助装置の場合、コンクリート内に差し込んだ後、調整ねじ体を回して天端レベルを調整する際に、補助装置に回転力が加わるため、コンクリートが十分に硬化していないと補助装置が動いて、その位置が不安定になる。そのため、調整ねじ体による天端レベル調整の際に、コンクリートが硬化している必要があるが、コンクリート硬化までに時間がかかり、特に気温の低い冬季等においては、硬化までの時間が非常に長くなる。その結果、天端レベル調整のための作業の効率が悪くなり、コンクリート基礎形成の作業性が悪くなるという問題がある。
【0004】
これに対して、例えば特許文献2に示すように、1本の鋼線を屈曲形成してなり、直線部の上端は下に折り返して天端表示部とし、下端部を縦鉄筋への挿着部とするもので、挿着部が、直線部の下端を上向きに折り返した後、下に折り返し、再び上向きに折り返して端部を上向きとした形状であり、夫々折り返し部が半円状のため、上のループ体の両側に下のループ体が連続形成された天端表示材が示されている。この天端表示材は、下のループ体が対向配置されて底端に開口部を形成しており、この開口部から縦鉄筋に差し込むことによりワンタッチで簡単に縦筋に取り付けられ、また上下の位置合わせも容易であるという利点がある。また、この天端表示材は、直線部に止リングが嵌められており、直線部と縦筋を止リングで囲むことにより、直線部が力を受けることによる下端側の縦鉄筋からの外れを防止している。
【特許文献2】特開2005−48510
【0005】
しかし、上記天端表示材においては、止リングを用いてもなお縦筋への取付強度が十分ではなく、取付強度を確保するためには針金で縦筋に縛り付ける必要があり、そのための手間が煩雑であった。また、この天端表示材は、下端部の折り曲げ加工が複雑であるために加工コストが高価になり、その結果、部材の価格が高価になるという問題がある。さらに、型枠に挟まれた間にコンクリートを打設する場合に、狭い型枠間は外から見て暗いため、金属製の天端表示部では先端が見難く、コンクリートとの位置合わせの確認が困難になるという不具合がある。また、天端表示部がコンクリート上面に露出するため、錆びが生じて、コンクリートの強度に悪影響を与えるという問題がある。さらに、天端表示材の材質が縦筋とは異種の金属であるため、両者の接触により縦筋を腐食させやすくなるという問題もある。また、レベラーは乾燥による収縮が大きいので、レベラー乾燥後に、レベラー表面が凹んで天端表示材の頭部がわずかに突出するため、これを抑えて平坦面にする必要があるが、この天端表示材ではコンクリート硬化後には天端レベルを再調整できなく、レベラー表面からの突出を是正できないという問題がある。
【0006】
また、例えば特許文献3に示すように、天端レベルの目印となるレベル設定用棒材と、鉄筋を両側から挟みこんで固定する対となる挟持部及びレベル設定用棒材の上下位置を調整して保持可能な保持部を有する固定部材とを備え、挟持部は、それぞれの掛け止め位置を調整可能な調整部とを備えた天端レベル管理具が知られている。この天端レベル管理具は、挟持部によって鉄筋の所望位置に調節して固定される。その後、レーザ発光器を用いて天端レベル管理具の上部の天端レベルを狙い、レベル設定用棒材の拡径部を回転させてレベル調整が行われる。コンクリートは、拡径部まで打設され、さらにコンクリートの凹凸を是正するためにその上に天端レベル管理具の上端までレベラーが流し込まれる。
【特許文献3】特開2005−48510
【0007】
ところで、上記天端レベル管理具の場合、レベル調整をレベル設定用棒材の拡径部を回転させて行うものであり、調整の手間が煩雑である。また、地上に配置された鉄筋が完全に固定されたものでないため、コンクリート打設時に上下左右に動く可能性があり、また、コンクリートの凹凸が大きくなったり、コンクリートに傾斜を生じたりすることもある。この場合は、天端レベル管理具により設定された天端レベルも変動するため、コンクリート打設後に最終的な天端レベルを再調整する必要がある。しかし、この天端レベル管理具は、レベル設定用棒材の溝部が保持部の突起部に食い込んでおり、天端レベルを再調整できないので、このような問題には対応することができない。また、天端レベル管理具は、挟持部の構造が複雑なため、狭い基礎型枠間において鉄筋への取り付けが容易でないと共に価格が高価になるという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した問題を解決しようとするもので、コンクリート打設後の短期間内に、最終的な天端レベルの精密な調節を簡易に行うことが可能な天端出し治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の構成上の特徴は、軸孔を有する樹脂製の筒状保持部と、筒状保持部の外壁にその軸方向に対して平行に又は直交して一体で設けられ、地面上に配設された鉄筋に着脱可能に取り付けられる樹脂製の鉄筋取付部と、筒状保持部の軸孔に挿通されて鉛直方向に向けて配置され、筒状保持部に緊密に締め付けられて取り付けられると共に、外力が加えられることによって軸孔に対して摺動可能にされた長尺の調整棒とを設けたことにある。
【0010】
上記のように構成した発明においては、天端出し治具が鉄筋取付部にて鉄筋に取り付けられ、筒状保持部が鉛直状態になるように配置され、筒状保持部の軸孔に緊密に締め付けられて取り付けられた調整棒を手等によって鉛直方向に力を加えて摺動させながらコンクリート打設の上端位置に位置合わせさせる。その後、コンクリートが調整棒の所定の位置まで打設される。コンクリート打設後に、さらに調整棒によりコンクリート基礎の最終的な天端レベルを精密に調整でき、その天端レベルに合わせてレベラーを流し込むことができる。その際、天端出し治具は鉄筋取付部によって鉄筋に強固に固定されて動かないため、コンクリートが硬化する前でも、調整棒による天端高さ調整を行うことができる。その結果、本発明においては、コンクリート打設後の鉄筋の上下左右への位置ズレや、コンクリート面の凹凸や傾斜による変動に対して、コンクリート打設後の短期間内に、調整棒の操作により最終的な天端レベルを迅速且つ適正に決めることができるため、コンクリート打設作業の作業性が著しく高められる。
【0011】
また、本発明によれば、高さ調整については、単に調整棒を手等によって上下させるのみで行うことができるので、調整の手間が簡単で調整時間も短縮できる。さらに、本発明においては、コンクリート基礎の硬化前に天端高さの調整を行うことができるため、硬化前にレベラーを流し込むことができるため、コンクリートとレベラーの接着強度が高められる。その結果、コンクリート基礎に接着剤を塗布する必要がないので、コンクリート基礎の打設作業がさらに簡易にされる。また、本発明においては、調整棒が樹脂製の筒状保持部と鉄筋取付部とによって鉄筋から隔離されているため、異種の金属製の鉄筋を腐食させるおそれはない。
【0012】
また、本発明において、調整棒の上端に、上面が平坦な樹脂製のキャップ部が嵌着されることが好ましい。これにより、キャップ部の下端をコンクリートの打設位置とし、上端を最終的な天端高さとして認識することができるので、コンクリートの打設高さを正確に認識することができる。また、キャップ部の上面が平坦なので、高さ調整のための木の棒を安定して載置させることができ、高さ調整作業が容易にかつ正確に行われる。さらに、キャップ部によって調整棒の上端がコンクリート上面に露出することを防止できるため、調整棒の錆びによるコンクリートの強度への悪影響を防止できる。
【0013】
また、本発明において、調整棒の上端側の表面が、凹凸状にされることが好ましい。これにより、調整棒にキャップ部を嵌め合わせたときに凹凸面に食い込むため、キャップ部が強固に調整棒に取り付けられ、調整棒からの脱落が防止される。また、レベラー乾燥後の収縮により、レベラー表面が凹んでキャップ部の上部がわずかに突出しても、キャップ部上面側に打撃を与えることによりわずかに凹ませて再調整ができるため、キャップ部上面をレベラー表面に簡単に合わせることができる。
【0014】
また、本発明において、キャップ部が、薄い灰色に着色されることが好ましい。これにより、天端出し治具が、狭い型枠間の暗い空間内に配置されても、キャップ部が薄い灰色のために外から容易に認識することができ、レベラー打設をキャップ部上面に合わせて正確に行うことができる。また、キャップ部の色がレベラーの色と近似しているため、レベラー打設後の表面においてキャップ部が目立つことがないので、コンクリート基礎を見る者に対して違和感を与えることもない。
【0015】
また、本発明において、キャップ部の下端側に鍔部を設けたものであってもよい。これにより、キャップ部の下端側の鍔部をコンクリート打設位置の目印として明確に認識することができ、天端出し治具が狭い型枠間の暗い空間内に配置されても、コンクリート打設の高さを鍔部に合わせて正確に行うことができる。
【0016】
また、本発明において、鉄筋取付部が、筒状で周方向の一か所で分離されて略C字状になっており、分離された両側部分に互いに解除可能に係止し合う係止手段を設けてもよい。これにより、鉄筋取付部は、係止手段により強固に鉄筋に固定されるので、その結果、天端出し治具に高さ調整時やコンクリート打設時に力が加えられても、鉄筋からの天端出し治具の脱落が確実の防止される。
【0017】
また、本発明において、係止手段が、筒状保持部から一方側に延びた半円筒状部分の先端側の内周面にて突出した第1突起部と、他方側に延びた半円筒状部分の外周面の周方向の少なくとも一か所にて突出した第1突起部と互いに解除可能に係止し合う第2突起部とを設けたものであってもよい。これにより、一方側に延びた半円筒部分と他方側に延びた半円筒部分の先端側が重ね合わされて第1突起部と第2突起部が係止し合うことにより、鉄筋取付部は強固に鉄筋に固定され、その結果、鉄筋からの天端出し治具の脱落が確実の防止される。
【0018】
また、本発明において、鉄筋取付部が、筒状保持部から両側に延びた略半円筒形状であって、一方側に延びた部分の先端側の外周面にて外方に突出した第1係合突起を設けると共に周方向に離間して外周面から外方に突出した第2係合突起を設けた第1取付片と、該第1取付片における他方側に延びた部分の先端にて曲げ変形可能に取り付けられた略半円筒形状であって、先端側の内周面に第1係合突起及び第2係合突起と個別に互いに解除可能に係止し合う該第1係合突起及び第2係合突起と共に係止手段を構成する係止突起を設けた第2取付片とを備えてもよい。
【0019】
これにより、筒状保持部に取り付けられた調整棒を用いてコンクリート打設の上端位置に位置合わせしながら、鉄筋取付部を径の小さい鉄筋に取り付ける場合は、第1取付片をこの鉄筋の外周に嵌め合わせて、第2取付片の係止突起を第1取付片の第2係合突起に係止させることにより、鉄筋取付部は第1及び第2取付片によって締め付けることにより鉄筋に強固に固定される。また、鉄筋取付部を径の大きい鉄筋に取り付ける場合は、第1取付片を広げて第2取付片と共にこの鉄筋の外周に嵌め合わせて、第2取付片の係止突起を第1取付片の第1係合突起に係止させることにより、鉄筋取付部は第1及び第2取付片によって締め付けることにより鉄筋に強固に固定される。その結果、本発明においては、単一の鉄筋取付部により太さの異なる2種類の鉄筋に対応することができるので、部材の価格が安価にされると共に、部材管理の手間も軽減される。
【0020】
また、本発明によれば、鉄筋取付部が第2取付片で締め付けて鉄筋に強固に固定されるようになっているため、コンクリートが十分に硬化する前でも、調整棒を手等によって上下に動かすことによりコンクリート基礎の最終的に高さである天端レベルを精密に調整でき、その高さに合わせてレベラーを流し込むことができる。その結果、本発明においては、コンクリート打設後の鉄筋の上下左右への位置ズレや、コンクリート面の凹凸や傾斜による変動に対して、コンクリート打設後の短期間内に、調整棒により最終的な天端レベルを迅速且つ適正に決めることができるため、コンクリート打設作業の作業性が高められる。また、本発明においては、第2取付片の係止突起を第1取付片の第1係合突起あるいは第2係合突起に係止させることにより、鉄筋取付部を鉄筋に簡単に取り付けることができるため、狭い基礎型枠間での天端出し治具の鉄筋への取り付けが簡易に行われる。
【0021】
また、本発明において、鉄筋取付部が棒状であり、一端側にて内壁が軸方向内方に向けて縮径するように傾斜した鉄筋挿嵌孔を設けており、鉄筋挿嵌孔にて鉄筋の先端側に挿嵌可能なようにされてもよい。これにより、鉄筋取付部が、他端側の鉄筋挿嵌孔にて鉛直方向に延びた鉄筋の上端から差し込まれ、鉄筋挿嵌孔の傾斜面によって鉄筋上端側に嵌め合わされて固定され、その状態で、調整棒を用いてコンクリート打設の上端位置に位置合わせされる。その後、コンクリートが調整軸部材の鉛直位置決め部位置まで打設されるが、天端出し治具は鉄筋に固定されて動かないため、コンクリートが十分に硬化する前でも、調整棒を手等によって上下に動かすことによりコンクリート基礎の最終的に高さである天端レベルを精密に調整でき、その高さに合わせてレベラーを流し込むことができる。その結果、本発明においては、コンクリート打設後の鉄筋の上下左右への位置ズレや、コンクリート面の凹凸や傾斜による変動に対して、コンクリート打設後の短期間内に、調整棒により最終的な天端レベルを迅速且つ適正に決めることができるため、コンクリート打設作業の作業性が高められる。
【0022】
さらに、鉄筋取付部は、他端側に筒状であって内壁が軸方向内方に向けて縮径するように傾斜した鉄筋挿嵌孔を設けているため、鉄筋の径の違いに対して鉄筋挿嵌孔の適した内径位置まで挿入して嵌め合わせることにより、径の異なる鉄筋に対して強固に取り付けることができる。その結果、本発明においては、一種類の天端出し治具を用意するのみで、径の異なる鉄筋に対して鉄筋挿嵌孔により強固に取り付けることができるので、治具取り付け作業が簡易にされると共に天端出し治具管理の手間が省かれ、価格も相対的に安価にされる。また、本発明においては、鉄筋挿嵌孔にて鉄筋に差し込むことにより、鉄筋取付部を鉄筋に簡単に取り付けることができるため、狭い基礎型枠間での天端出し治具の鉄筋への取り付けが簡易に行われる。また、本発明においても、コンクリート基礎の硬化前に天端高さの調整を行うことができるため、硬化前にレベラーを流し込むことができ、そのため、コンクリートとレベラーの接着強度が高められるため、コンクリート基礎に接着剤を塗布する必要がないので、コンクリート基礎の打設作業がさらに簡易にされる。さらに、本発明においても、レベラー乾燥後にレベラー表面に調整棒の頭部が突出しても、調整棒の調節により頭部を容易に下げることができるため、簡易にレベラー表面を平坦面にすることができる。
【0023】
また、本発明において、鉄筋取付部の鉄筋挿嵌孔を設けた一端側が、周方向複数個所にて軸方向に伸びたスリットにより分離された複数の係合片にされてもよい。これにより、鉄筋の上端側に挿嵌された鉄筋取付部は、鉄筋への挿入時にはスリットで分離された係合片の弾性変形により径方向外方にスムーズに押し広げられた状態になり、挿嵌後は係合片の弾性反力によって鉄筋に対して径方向内方に向けた強固な締付け力として作用する。そのため、鉄筋取付部は、コンクリート打設や調整棒による天端高さの調整の際にも、動かないように鉄筋に一層強固に固定される。
【発明の効果】
【0024】
本発明においては、天端出し治具が、筒状保持部と一体で設けた鉄筋取付部あるいは鉄筋取付部の鉄筋挿嵌孔にて鉄筋に強固に固定されるため、コンクリートが筒状保持部の軸孔に挿通された調整棒の規定位置まで打設された後、コンクリートが十分に硬化する前でも、調整棒を上下方向に調整することによりコンクリート基礎の最終的に天端レベルを簡易かつ精密に調整することができる。その結果、本発明においては、コンクリート打設後の短期間内に最終的な天端レベルの精密な調節を容易に行うことができるため、コンクリート打設作業の作業性が高められ、作業コストを大幅に低減できる。また、本発明においては、天端出し治具を鉄筋取付部にて鉄筋に簡単に取り付けることができるため、狭い基礎型枠間での天端出し治具の鉄筋への取り付けが簡易に行われる。さらに、本発明においては、コンクリート基礎の硬化前にレベラーを流し込むことができ、コンクリートとレベラーの接着強度が高められるため、コンクリート基礎に接着剤を塗布する必要がないので、コンクリート基礎の打設作業がさらに簡易にされる。また、本発明においては、レベラー乾燥後にレベラー表面に天端レベル管理具の頭部がわずかに突出しても、キャップ部の頭部を下げることができるため、簡易にレベラー表面を平坦面にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態について図面を用いて説明する。図1は、実施例1である住宅用の基礎コンクリートの布基礎部分の上端の位置決めに用いる天端出し治具を一部破断正面図により示したものである。図2は調整棒を正面図により示し、図3及び図4は取付本体部を正面図及び平面図により示し、図5A,B,Cはキャップ部を軸線位置での断面図、平面図及び底面図により示し、図6,図7,図8は、天端出し治具の使用状態を正面図、平面図及び説明図により示したものである。天端出し治具10は、軸孔13を有する小径の筒状保持部12と、筒状保持部12の外壁にその軸方向に対して平行に一体で設けられた略C字状の鉄筋取付部15とからなる樹脂製の取付本体部11と、軸孔13に挿通されて鉛直方向に向けて配置され、筒状保持部12に緊密に締め付けられて取り付けられると共に、軸孔13に対して摺動可能にされた長尺の調整棒24と、調整棒24の上端に被せられたキャップ部26とを備えている。
【0026】
筒状保持部12は、小径の円筒形状で、軸方向長さが鉄筋取付部15より短く、軸心位置にて両端面間を貫通した軸直角断面が略十字状になった軸孔13を有しており、鉄筋取付部15の軸方向中間位置に互いに平行に一体で取り付けられている。鉄筋取付部15は、薄肉で筒状保持部12から両側に延びて同軸状に形成された半円筒形状の第1取付片16と、第1取付片16における他方側(図1の後側)に延びた部分16bの先端にて薄肉連結部19を介して曲げ変形可能に一体で取り付けられた半円筒形の第2取付片21とにより構成されている。
【0027】
第1取付片16は、円筒形の略1/4周部分が除かれた半円筒形になっており、内径が径の細い鉄筋5(例えば10mmφ)の外径よりわずかに小さくなるように形成されており、筒状保持部12に対して一方側(図1の前側)に延びた部分16aの外周面には、先端側にて外方に突出して軸方向両端間に延びた第1係合突起17を設けると共に筒状保持部12の近傍位置にて外方に突出して軸方向両端間に延びた第2係合突起18を設けている。第1及び第2係合突起17,18は、それぞれ周方向に連続する軸方向に延びた2つの突起を有しており、各突起はそれぞれ平面から見て筒状保持部12に向けて傾斜した突出端が鋭角に尖った鋸歯状になっている。第1及び第2係合突起17,18がそれぞれ2つの突起を有していることにより、後述する係止突起22を第1及び第2係合突起17,18に係止させる際に、嵌め合わせる鉄筋の径に多少のばらつきがあっても、ばらつきに応じていずれかの突起を選択して係止させることにより鉄筋に緊密に締め付けた状態で取り付けられる。なお、これらの突起の数については、2つに限らず必要に応じて1つあるいは3つ以上とすることも可能である。
【0028】
第1取付片16の他方側に延びた部分16bの先端には、薄肉連結部19を介して半円筒形の第2取付片21が曲げ変形可能に取り付けられている。第2取付片21は、円筒形の略1/2周部分が除かれた半円筒形になっており、内径が径の太い鉄筋F2(例えば13mmφ)の外径よりわずかに小さくなるように形成されており、先端の内周部分にて内方にわずかに突出して軸方向に延びた係止突起22を設けている。係止突起22は、1つの突起になっており、突起の形状については第1及び第2係合突起17,18と同様に、平面から見て筒状保持部12に向けて傾斜した突出端が鋭角に尖った鋸歯状になっている。係止突起22は、第1及び第2係合突起17,18と互いに係止可能になっている。なお、突起の数については、1つに限らない。筒状保持部12と鉄筋取付部15とが一体になった取付本体部11は、樹脂射出成形により一体で形成される。
【0029】
調整棒24は、金属製の長尺の細い丸棒であり、その先端側にねじ溝24aが形成されて表面が凹凸状にされている。調整棒24は、径が上記筒状保持部12の軸孔13の内径よりわずかに大きくなっており、軸孔13内に圧入状態で挿通され、軸孔13内に緊密な状態で保持されると共に、軸方向に力を加えることにより軸孔13に対して摺動可能になっている。調整棒24のねじ溝24a部分には、樹脂製で薄い灰色に着色されたキャップ部26が嵌着されている。キャップ部26は、図5に示すように、上端側が封止された円筒状であって、上端面26aの中央には十字状の取付溝27が設けられており、外周面が軸方向略中間から下端にかけて縮径しながら傾斜した円錐面26bになっており、また下端にて同軸状に開口して上端近傍まで延びた取付孔28を設けている。取付孔28は、内径が調整棒24の外径より小さくなっている。これにより、調整棒24は、先端のねじ溝24a部分にてキャップ部26の取付孔28に挿嵌される。これにより、キャップ部26は調整棒24のねじ溝24aと噛み合って上端に強固に固定される。キャップ部26は、上端面26aが平面になっており、この上に天端レベル出し用の棒材を立設して、レーザ発光器により高さを調節してコンクリート打設位置や天端レベルを決めるものである。
【0030】
実施例1においては、天端出し治具10の鉄筋取付部15を外径の細い縦鉄筋F1に取り付ける場合は、図6,7に示すように、第1取付片16を縦鉄筋F1の外周に嵌め合わせて、第2取付片21の係止突起22を第1取付片16の第2係合突起18に係止させることにより、鉄筋取付部15は第1及び第2取付片16,21で締め付けた状態で鉄筋F1に強固に固定される(使用状態I)。また、第2取付片21の係止突起22を第1取付片16の第2係合突起18に係止させることにより、鉄筋取付部15を縦鉄筋F1に簡単に取り付けることができるため、狭い基礎型枠間での天端出し治具10の縦鉄筋F1への取り付けが簡易に行われる。天端出し治具10が鉄筋取付部15にて縦鉄筋F1に取り付けられることにより、筒状保持部12が鉛直状態になるように配置される。
【0031】
つぎに、図8に示すように、筒状保持部12の軸孔13に緊密に締め付けられて取り付けられた調整棒24の上端に木製の棒材を載置し、調整棒24を手等によって摺動させながらレーザ発光器等を用いてコンクリート打設の上端位置に位置合わせさせる。その後、コンクリートが調整棒24のキャップ部26下端位置まで打設される。コンクリートK1打設後に、さらに調整棒24によりコンクリート基礎の最終的な天端レベルを精密に調整し、その天端レベルに合わせてレベラーK2を流し込むことができる。ここで、天端出し治具10が鉄筋取付部15にて縦鉄筋F1に強固に固定されて動かないため、コンクリートが十分に硬化する前でも、調整棒24による天端高さ調整を行うことができる。その結果、実施例1においては、コンクリート打設後の鉄筋の上下左右への位置ズレや、コンクリート面の凹凸や傾斜による変動に対して、コンクリート打設後の短期間内に、調整棒24により最終的な天端レベルを迅速且つ適正に決めることができるため、コンクリート打設作業の作業性が高められる。
【0032】
また、実施例1によれば、高さ調整については、ドライバー等の治具を用いることなく単に調整棒24を手で持ってあるいはハンマー等で叩くことにより上下させるのみで行うことができるので、調整の手間が簡単で調整時間も短縮できる。さらに、実施例1においては、コンクリートの硬化前に天端高さの調整を行うことができるため、硬化前にレベラーを流し込むことができ、そのため、コンクリートとレベラーの接着強度が高められる。その結果、コンクリート基礎に接着剤を塗布する必要がないので、コンクリート基礎の打設作業がさらに簡易にされる。また、実施例1においては、金属製の調整棒24が樹脂製の取付本体部11によって縦鉄筋F1から隔離されているため、異種の金属間の接触による縦鉄筋F1を腐食させるおそれはない。
【0033】
また、実施例1においては、調整棒24の上端にキャップ部26が嵌着されていることにより、キャップ部26の下端をコンクリートの打設の目安位置とし、上端をコンクリートの最終的な天端レベルとして容易に認識することができる。また、キャップ部26の上面26aが平坦なので、高さ調整のためのレーザ測定具や木の棒を安定して載置させることができ、高さ調整作業が容易に行われる。さらに、キャップ部26によって調整棒24の上端がコンクリート上面に露出することを防止できるため、調整棒24の錆びによるコンクリートK1、K2の強度への悪影響を防止できる。また、調整棒24の上端側の表面が、ねじ溝24aで凹凸状にされているため、調整棒24にキャップ部26を嵌め合わせたときにねじ溝24aに食い込むため、キャップ部26が強固に調整棒24に取り付けられ、調整棒24からの脱落が防止される。
【0034】
また、レベラー乾燥後の収縮により、レベラー表面が凹んでキャップ部26の上部がわずかに突出しても、キャップ部26上面側にわずかに打撃を与えることにより凹ませて再調整ができるため、キャップ部26上面をレベラー表面に簡単に合わせることができる。また、実施例1においては、キャップ部26が薄い灰色に着色されていることにより、天端出し治具10が、狭い型枠間の暗い空間内に配置されても、キャップ部26が薄い灰色のために外から容易に認識することができ、レベラー打設をキャップ部26上面に合わせて正確に行うことができる。
【0035】
また、鉄筋取付部15を径の太い鉄筋F2(例えば、外径が13mmφ)に取り付ける場合は、図9,10に示すように、第1取付片16を広げて第2取付片21と共に鉄筋6の外周に嵌め合わせて、第2取付片21の係止突起22を第1取付片16の第1係合突起17に係止させることにより、鉄筋取付部15は第1及び第2取付片16,21で締め付けた状態で外径の太い鉄筋F2に強固に固定される(使用状態II)。その結果、実施例1においては、単一の鉄筋取付部15を有する天端出し治具10により太さの異なる2種類の鉄筋F1,F2に固定することができるので、鉄筋取付部15を含む取付本体部11の価格が安価にされると共に、部材管理の手間も軽減される。
【0036】
つぎに、上記実施例1に係る天端出し治具10の他の使用例について説明する。他の使用例としては、住宅用コンクリート基礎の地面に直接敷設されるベース部分の高さを決めるために天端出し治具10が使用されるものである。図11に示すように、天端出し治具10は、地面近傍に水平状態で配置された横鉄筋F3に鉛直方向に向けて取り付けられた縦鉄筋F1の下端近傍位置にて鉄筋取付部15により固定され、調整棒24を筒状保持部12の下端より下方に伸ばすことにより、調整棒24の下端がベースコンクリートK3の打設位置に合わせられる。これにより、ベースコンクリートK3の高さが正確に位置合せされる。さらに、このような高さ調節に使用後は、天端出し治具10を縦鉄筋F1から取り外すことにより、天端出し治具10を上述したコンクリート布基礎の天端を調節するために使用することができる。その結果、天端出し治具10を2つの用途に使用することができるので、天端出し治具10の価値がさらに高められる。
【0037】
つぎに、上記実施例1の変形例1について説明する。
変形例1においては、実施例1の天端出し治具10においては筒状保持部12と鉄筋取付部材15が互いに軸方向を揃えて一体にされているのに対して、図12,13に示すように、筒状保持部12と鉄筋取付部15とが互いに軸方向が直交するように取り付けられたものである。これにより、天端出し治具10Aは、筒状保持部12を鉛直方向に向けた状態で鉄筋取付部15にて、水平に配置された横鉄筋(図示しない)に対して取り付けられるものである。その結果、変形例においても、横鉄筋に対して実施例1と同様の効果が得られる。
【0038】
つぎに、上記実施例1の変形例2について説明する。
変形例2においては、実施例1の天端出し治具10の鉄筋取付部15のように2種類の径の鉄筋に固定できるものに代えて、1種類の径の鉄筋にのみ適用される鉄筋取付部31を有するようになっている。鉄筋取付部31は、図13,図14に示すように、薄肉で略円筒形状の取付片32を設けており、取付片32の周方向中央にて、軸方向に配置された筒状保持部12と一体にされている。取付片32は周方向の一か所で分離されており、所定の径の鉄筋に嵌め合されるような内径にされている。取付片32は、筒状保持部12を挟んだ一方側に延びた部分32aの外周面には、一端縁にて突出して軸方向両端間に延びた第1係合突起33が設けられており、他方向に延びた部分32bの内周面には、他端縁にて突出して軸方向両端間に延びた第2係合突起34が設けられており、第1係合突起33と互いに解除可能に係止し合うようになっている。
【0039】
変形例2においては、所定の径の1種類の縦鉄筋に対して、鉄筋取付部31を、両側に延びた取付片32を広げて鉄筋に嵌め合わせ、第2係合突起34を第1係合突起33に係止させることにより、鉄筋取付部31が縦鉄筋に強固に締め付けた状態で取り付けられる。これにより、変形例2においても、実施例1と同様に、鉄筋取付部31の縦鉄筋への取り付けが簡易にかつ短時間に行われると共に、天端出し治具10が鉄筋取付部15にて縦鉄筋F1に強固に固定されて動かないため、コンクリートが十分に硬化する前でも、調整棒24による天端高さ調整を行うことができる等の効果が得られる。
【0040】
次に、実施例2について図面を用いて説明する。
図16及び図17は、実施例2である天端出し治具40を一部破断正面図及び底面図により示したものである。天端出し治具40は、軸孔13を有する小径の筒状保持部12と、筒状保持部12の外壁にその軸方向に対して平行に一体で設けられた丸棒状の鉄筋取付部42とからなる樹脂製の取付本体部41と、軸孔13に挿通されて鉛直方向に向けて配置された長尺の調整棒24と、調整棒24の上端に被せられたキャップ部26とを備えている。なお、筒状保持部12と、調整棒24とキャップ部26については、上記実施例1と同様であり、同一符号を用いる。
【0041】
鉄筋取付部42は、軸方向中間位置から下端42aにかけて同軸状に延びて下端にて開口した鉄筋挿嵌孔43を設けている。鉄筋挿嵌孔43は、下端42aから軸方向中間位置に向けて縮径するように傾斜した円錘面状になっており、下端位置42aでの外径が孔内端位置43aでの内径より大きくなっている。例えば外径が10mmφ、13mmφの縦鉄筋F1,F2を対象とする場合、下端位置42aでの外径は14mmφ、内端位置43aでの外径は9mmφになっている。
【0042】
次に、実施例2の動作について説明する。図18に示すように、天端出し治具40が鉄筋取付部42の一端を上に向けて鉛直状態にして配置され、鉄筋取付部42他端側の鉄筋挿嵌孔43にて型枠間に配設された鉛直方向に延びた外径の細い縦鉄筋F1の上端から差し込まれ、鉄筋挿嵌孔43の傾斜面によって鉄筋F1の上端近傍側に嵌め合わされて固定される(使用状態1)。この状態で、調整棒24を上下に動かして高さ調整することにより、キャップ部26の下端がコンクリート打設の上端位置に位置合わせされる。その後、コンクリートが筒状保持部12の下端位置まで打設されるが、天端出し治具40は縦鉄筋F1に強固に固定されて動かないため、コンクリートが十分に硬化する前でも、筒状保持部12の軸孔13に挿通された調整棒24によりコンクリート基礎の最終的に高さである天端レベルを精密に調整でき、その高さに合わせてレベラーを流し込むことができる。その結果、実施例2においても、コンクリート打設後の鉄筋の上下左右への位置ズレや、コンクリート面の凹凸や傾斜による変動に対して、コンクリート打設後の短期間内に、調整棒24により最終的な天端レベルを迅速且つ適正に決めることができるため、コンクリート打設作業の作業性が高められる等、上記実施例1と同様の効果が得られる。
【0043】
また、鉄筋取付部42は、軸方向中間位置から下端に向けて拡径するように傾斜した鉄筋挿嵌孔43を設けているため、鉄筋の径の違いに対して鉄筋挿嵌孔43の適した内径位置まで挿入して嵌め合わせることにより、径の異なる鉄筋に対して強固に取り付けることができる。例えば、外径の太い縦鉄筋F2を対象とする場合は、図19に示すように、鉄筋F2の上端が、鉄筋取付部42の鉄筋挿嵌孔43内の軸方向略中間位置で係止され強固に取り付けられる(使用状態2)。その結果、実施例2においては、一種類の天端出し治具40を用意するのみで、径の異なる鉄筋に対して鉄筋挿嵌孔43により強固に取り付けることができるので、取り付け作業が簡易にされると共に天端出し治具管理の手間が省かれ、価格も相対的に安価にされる。
【0044】
つぎに、上記実施例2の変形例について説明する。
変形例においては、天端出し治具の取付本体部41Aは、図20及び図21に示すように、実施例2の取付本体部41において鉄筋取付部42の下端側の鉄筋挿嵌孔43を設けた下側部について、周方向の等間隔な4箇所にて軸方向に延びたスリット45を設けて、下側部を4つの係合片46に分離して配設したものである。これにより、変形例においては、取付本体部41Aを下端側にて鉄筋F1,F2の上端側から挿嵌する際に、スリット45で分離された係合片46の弾性変形により径方向外方に押し広げられた状態になるため、天端出し治具40の鉄筋F1,F2への挿嵌がスムーズに行われる。また、天端出し治具40の鉄筋F1,F2への挿嵌後は、係合片46の弾性反力によって鉄筋F1,F2に対して径方向内方に向けた強固な締付け力として作用する。そのため、鉄筋取付部42は、調整棒24による高さ調節の際やコンクリート打設の際にも、動かないように鉄筋F1,F2に強固に固定される。
【0045】
なお、上記実施例2においても、実施例1の変形例1と同様に、横鉄筋に取り付けるために、鉄筋取付部42を筒状保持部12に対して軸方向に直交するように取り付けることができる。また、上記実施例1,2において、キャップ部26Aについては、図22に示すように、取付孔28が開口する円筒形の下端にて軸直角方向に延びた円環状の鍔部29を設けたものとすることができる。これにより、下端の鍔部29をコンクリート打設位置の目印として明確に認識することができる。その結果、天端出し治具が、狭い型枠間の暗い空間内に配置されても、コンクリート打設の高さを鍔部29に合わせて正確に行うことができる。その他、上記各実施例、変形例において、筒状保持部、鉄筋取付部の形状については円柱、角柱形状に限らず種々の形状とすることが可能である。その他、上記各実施例に示した天端出し治具については、一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の天端出し治具は、筒状保持部と一体で設けた鉄筋取付部あるいは鉄筋取付部の鉄筋挿嵌孔にて鉄筋に強固に固定されるため、コンクリートが規定位置まで打設された後、コンクリートが十分に硬化する前でも、調整棒を上下方向に調整することによりコンクリート基礎の最終的に天端レベルを簡易かつ精密に調整することができるため、コンクリート打設作業の作業性が高められ、作業コストを大幅に低減できるので、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施例1である天端出し治具を示す軸線位置での一部破断正面図である。
【図2】同天端出し治具の調整棒を示す正面図である。
【図3】天端出し治具の取付本体部を示す正面図である。
【図4】天端出し治具の取付本体部を示す平面図である。
【図5A】キャップ部を示す軸線位置での断面図である。
【図5B】キャップ部を示す平面図である。
【図5C】キャップ部を示す底面図である。
【図6】天端出し治具の使用状態Iを示す正面図である。
【図7】天端出し治具の使用状態Iを示す図6のVII−VII線方向の一部破断平面図である。
【図8】天端出し治具を用いたコンクリートの高さ調整を説明する説明図である。
【図9】天端出し治具の使用状態IIを示す正面図である。
【図10】天端出し治具の使用状態IIを示す図9のIX−IX線方向の一部破断平面図である。
【図11】天端出し治具を用いたコンクリートの天端位置調整の他の例を説明する説明図である。
【図12】実施例1の変形例1である天端出し治具の取付本体部を示す正面図である。
【図13】変形例1である天端出し治具の取付本体部を示す平面図である。
【図14】変形例2である天端出し治具の取付本体部を示す正面図である。
【図15】変形例2である天端出し治具の取付本体部を示す平面図である。
【図16】実施例2である天端出し治具を示す一部破断正面図である。
【図17】実施例2である天端出し治具を示す底面図である。
【図18】同天端出し治具の使用状態1を示す一部破断正面図である。
【図19】同天端出し治具の使用状態2を示す一部破断正面図である。
【図20】実施例2の変形例である天端出し治具の取付本体部を示す一部破断正面図である。
【図21】同変形例である天端出し治具の取付本体部を示す平面図である。
【図22】キャップ部の変形例を示す一部破断正面図である。
【符号の説明】
【0048】
10,10A…天端出し治具、11…取付本体部、12…筒状保持部、13…軸孔、15…鉄筋取付部、16…第1取付片、17…第1係合突起、18…第2係合突起、19…薄肉連結部、21…第2取付片、22…係止突起、24…調整棒、26…キャップ部、28…取付孔、31…鉄筋取付部、40…天端出し治具、41,41A…取付本体部、42…鉄筋取付部、43…鉄筋挿嵌孔、45…スリット、46…係合片、F1,F2…縦鉄筋。
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物のコンクリート基礎の打設の際に、コンクリート基礎の上端である天端レベルの設定に用いられる天端出し治具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅用等のコンクリート基礎の形成においては、所定の高さまで通常の流動性に乏しいコンクリートを打設し、その後、天端レベルまでセメント比率が高く流動性の高いレベラーを流し込むことにより、コンクリート表面の凹凸が是正された平坦な面に形成される。その場合、コンクリート高さとレベラーの高さが、天端出し治具とレーザ発光器等を用いて決められている。従来、この種の天端出し治具としては、例えば特許文献1に示すように、長手棒状の補助具本体の上端部に開口するねじ穴に進退可能に調整ねじ体が螺合され、補助具本体の上部に、補助具本体に対して直角方向且つ水平に延びるコンクリートレベル出しのための上羽根部が固着され、補助具本体の下部に、補助具本体に対して直角方向且つ垂直に延びる回り止め防止のための下羽根部が固着されてなる天端出し補助装置が知られている。この天端出し補助装置は、コンクリート打設の後にコンクリート内に鉛直方向に差し込まれて補助具本体が上羽根部位置まで垂直に埋め込まれる。そして、コンクリートが硬化した後、さらに調整ねじ体を回して最終高さである天端レベルが調整され、レベラーを天端レベルまで流し込むことによりコンクリート基礎が形成される。
【特許文献1】特許第2649483号公報
【0003】
ところで、上記天端出し補助装置の場合、コンクリート内に差し込んだ後、調整ねじ体を回して天端レベルを調整する際に、補助装置に回転力が加わるため、コンクリートが十分に硬化していないと補助装置が動いて、その位置が不安定になる。そのため、調整ねじ体による天端レベル調整の際に、コンクリートが硬化している必要があるが、コンクリート硬化までに時間がかかり、特に気温の低い冬季等においては、硬化までの時間が非常に長くなる。その結果、天端レベル調整のための作業の効率が悪くなり、コンクリート基礎形成の作業性が悪くなるという問題がある。
【0004】
これに対して、例えば特許文献2に示すように、1本の鋼線を屈曲形成してなり、直線部の上端は下に折り返して天端表示部とし、下端部を縦鉄筋への挿着部とするもので、挿着部が、直線部の下端を上向きに折り返した後、下に折り返し、再び上向きに折り返して端部を上向きとした形状であり、夫々折り返し部が半円状のため、上のループ体の両側に下のループ体が連続形成された天端表示材が示されている。この天端表示材は、下のループ体が対向配置されて底端に開口部を形成しており、この開口部から縦鉄筋に差し込むことによりワンタッチで簡単に縦筋に取り付けられ、また上下の位置合わせも容易であるという利点がある。また、この天端表示材は、直線部に止リングが嵌められており、直線部と縦筋を止リングで囲むことにより、直線部が力を受けることによる下端側の縦鉄筋からの外れを防止している。
【特許文献2】特開2005−48510
【0005】
しかし、上記天端表示材においては、止リングを用いてもなお縦筋への取付強度が十分ではなく、取付強度を確保するためには針金で縦筋に縛り付ける必要があり、そのための手間が煩雑であった。また、この天端表示材は、下端部の折り曲げ加工が複雑であるために加工コストが高価になり、その結果、部材の価格が高価になるという問題がある。さらに、型枠に挟まれた間にコンクリートを打設する場合に、狭い型枠間は外から見て暗いため、金属製の天端表示部では先端が見難く、コンクリートとの位置合わせの確認が困難になるという不具合がある。また、天端表示部がコンクリート上面に露出するため、錆びが生じて、コンクリートの強度に悪影響を与えるという問題がある。さらに、天端表示材の材質が縦筋とは異種の金属であるため、両者の接触により縦筋を腐食させやすくなるという問題もある。また、レベラーは乾燥による収縮が大きいので、レベラー乾燥後に、レベラー表面が凹んで天端表示材の頭部がわずかに突出するため、これを抑えて平坦面にする必要があるが、この天端表示材ではコンクリート硬化後には天端レベルを再調整できなく、レベラー表面からの突出を是正できないという問題がある。
【0006】
また、例えば特許文献3に示すように、天端レベルの目印となるレベル設定用棒材と、鉄筋を両側から挟みこんで固定する対となる挟持部及びレベル設定用棒材の上下位置を調整して保持可能な保持部を有する固定部材とを備え、挟持部は、それぞれの掛け止め位置を調整可能な調整部とを備えた天端レベル管理具が知られている。この天端レベル管理具は、挟持部によって鉄筋の所望位置に調節して固定される。その後、レーザ発光器を用いて天端レベル管理具の上部の天端レベルを狙い、レベル設定用棒材の拡径部を回転させてレベル調整が行われる。コンクリートは、拡径部まで打設され、さらにコンクリートの凹凸を是正するためにその上に天端レベル管理具の上端までレベラーが流し込まれる。
【特許文献3】特開2005−48510
【0007】
ところで、上記天端レベル管理具の場合、レベル調整をレベル設定用棒材の拡径部を回転させて行うものであり、調整の手間が煩雑である。また、地上に配置された鉄筋が完全に固定されたものでないため、コンクリート打設時に上下左右に動く可能性があり、また、コンクリートの凹凸が大きくなったり、コンクリートに傾斜を生じたりすることもある。この場合は、天端レベル管理具により設定された天端レベルも変動するため、コンクリート打設後に最終的な天端レベルを再調整する必要がある。しかし、この天端レベル管理具は、レベル設定用棒材の溝部が保持部の突起部に食い込んでおり、天端レベルを再調整できないので、このような問題には対応することができない。また、天端レベル管理具は、挟持部の構造が複雑なため、狭い基礎型枠間において鉄筋への取り付けが容易でないと共に価格が高価になるという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した問題を解決しようとするもので、コンクリート打設後の短期間内に、最終的な天端レベルの精密な調節を簡易に行うことが可能な天端出し治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の構成上の特徴は、軸孔を有する樹脂製の筒状保持部と、筒状保持部の外壁にその軸方向に対して平行に又は直交して一体で設けられ、地面上に配設された鉄筋に着脱可能に取り付けられる樹脂製の鉄筋取付部と、筒状保持部の軸孔に挿通されて鉛直方向に向けて配置され、筒状保持部に緊密に締め付けられて取り付けられると共に、外力が加えられることによって軸孔に対して摺動可能にされた長尺の調整棒とを設けたことにある。
【0010】
上記のように構成した発明においては、天端出し治具が鉄筋取付部にて鉄筋に取り付けられ、筒状保持部が鉛直状態になるように配置され、筒状保持部の軸孔に緊密に締め付けられて取り付けられた調整棒を手等によって鉛直方向に力を加えて摺動させながらコンクリート打設の上端位置に位置合わせさせる。その後、コンクリートが調整棒の所定の位置まで打設される。コンクリート打設後に、さらに調整棒によりコンクリート基礎の最終的な天端レベルを精密に調整でき、その天端レベルに合わせてレベラーを流し込むことができる。その際、天端出し治具は鉄筋取付部によって鉄筋に強固に固定されて動かないため、コンクリートが硬化する前でも、調整棒による天端高さ調整を行うことができる。その結果、本発明においては、コンクリート打設後の鉄筋の上下左右への位置ズレや、コンクリート面の凹凸や傾斜による変動に対して、コンクリート打設後の短期間内に、調整棒の操作により最終的な天端レベルを迅速且つ適正に決めることができるため、コンクリート打設作業の作業性が著しく高められる。
【0011】
また、本発明によれば、高さ調整については、単に調整棒を手等によって上下させるのみで行うことができるので、調整の手間が簡単で調整時間も短縮できる。さらに、本発明においては、コンクリート基礎の硬化前に天端高さの調整を行うことができるため、硬化前にレベラーを流し込むことができるため、コンクリートとレベラーの接着強度が高められる。その結果、コンクリート基礎に接着剤を塗布する必要がないので、コンクリート基礎の打設作業がさらに簡易にされる。また、本発明においては、調整棒が樹脂製の筒状保持部と鉄筋取付部とによって鉄筋から隔離されているため、異種の金属製の鉄筋を腐食させるおそれはない。
【0012】
また、本発明において、調整棒の上端に、上面が平坦な樹脂製のキャップ部が嵌着されることが好ましい。これにより、キャップ部の下端をコンクリートの打設位置とし、上端を最終的な天端高さとして認識することができるので、コンクリートの打設高さを正確に認識することができる。また、キャップ部の上面が平坦なので、高さ調整のための木の棒を安定して載置させることができ、高さ調整作業が容易にかつ正確に行われる。さらに、キャップ部によって調整棒の上端がコンクリート上面に露出することを防止できるため、調整棒の錆びによるコンクリートの強度への悪影響を防止できる。
【0013】
また、本発明において、調整棒の上端側の表面が、凹凸状にされることが好ましい。これにより、調整棒にキャップ部を嵌め合わせたときに凹凸面に食い込むため、キャップ部が強固に調整棒に取り付けられ、調整棒からの脱落が防止される。また、レベラー乾燥後の収縮により、レベラー表面が凹んでキャップ部の上部がわずかに突出しても、キャップ部上面側に打撃を与えることによりわずかに凹ませて再調整ができるため、キャップ部上面をレベラー表面に簡単に合わせることができる。
【0014】
また、本発明において、キャップ部が、薄い灰色に着色されることが好ましい。これにより、天端出し治具が、狭い型枠間の暗い空間内に配置されても、キャップ部が薄い灰色のために外から容易に認識することができ、レベラー打設をキャップ部上面に合わせて正確に行うことができる。また、キャップ部の色がレベラーの色と近似しているため、レベラー打設後の表面においてキャップ部が目立つことがないので、コンクリート基礎を見る者に対して違和感を与えることもない。
【0015】
また、本発明において、キャップ部の下端側に鍔部を設けたものであってもよい。これにより、キャップ部の下端側の鍔部をコンクリート打設位置の目印として明確に認識することができ、天端出し治具が狭い型枠間の暗い空間内に配置されても、コンクリート打設の高さを鍔部に合わせて正確に行うことができる。
【0016】
また、本発明において、鉄筋取付部が、筒状で周方向の一か所で分離されて略C字状になっており、分離された両側部分に互いに解除可能に係止し合う係止手段を設けてもよい。これにより、鉄筋取付部は、係止手段により強固に鉄筋に固定されるので、その結果、天端出し治具に高さ調整時やコンクリート打設時に力が加えられても、鉄筋からの天端出し治具の脱落が確実の防止される。
【0017】
また、本発明において、係止手段が、筒状保持部から一方側に延びた半円筒状部分の先端側の内周面にて突出した第1突起部と、他方側に延びた半円筒状部分の外周面の周方向の少なくとも一か所にて突出した第1突起部と互いに解除可能に係止し合う第2突起部とを設けたものであってもよい。これにより、一方側に延びた半円筒部分と他方側に延びた半円筒部分の先端側が重ね合わされて第1突起部と第2突起部が係止し合うことにより、鉄筋取付部は強固に鉄筋に固定され、その結果、鉄筋からの天端出し治具の脱落が確実の防止される。
【0018】
また、本発明において、鉄筋取付部が、筒状保持部から両側に延びた略半円筒形状であって、一方側に延びた部分の先端側の外周面にて外方に突出した第1係合突起を設けると共に周方向に離間して外周面から外方に突出した第2係合突起を設けた第1取付片と、該第1取付片における他方側に延びた部分の先端にて曲げ変形可能に取り付けられた略半円筒形状であって、先端側の内周面に第1係合突起及び第2係合突起と個別に互いに解除可能に係止し合う該第1係合突起及び第2係合突起と共に係止手段を構成する係止突起を設けた第2取付片とを備えてもよい。
【0019】
これにより、筒状保持部に取り付けられた調整棒を用いてコンクリート打設の上端位置に位置合わせしながら、鉄筋取付部を径の小さい鉄筋に取り付ける場合は、第1取付片をこの鉄筋の外周に嵌め合わせて、第2取付片の係止突起を第1取付片の第2係合突起に係止させることにより、鉄筋取付部は第1及び第2取付片によって締め付けることにより鉄筋に強固に固定される。また、鉄筋取付部を径の大きい鉄筋に取り付ける場合は、第1取付片を広げて第2取付片と共にこの鉄筋の外周に嵌め合わせて、第2取付片の係止突起を第1取付片の第1係合突起に係止させることにより、鉄筋取付部は第1及び第2取付片によって締め付けることにより鉄筋に強固に固定される。その結果、本発明においては、単一の鉄筋取付部により太さの異なる2種類の鉄筋に対応することができるので、部材の価格が安価にされると共に、部材管理の手間も軽減される。
【0020】
また、本発明によれば、鉄筋取付部が第2取付片で締め付けて鉄筋に強固に固定されるようになっているため、コンクリートが十分に硬化する前でも、調整棒を手等によって上下に動かすことによりコンクリート基礎の最終的に高さである天端レベルを精密に調整でき、その高さに合わせてレベラーを流し込むことができる。その結果、本発明においては、コンクリート打設後の鉄筋の上下左右への位置ズレや、コンクリート面の凹凸や傾斜による変動に対して、コンクリート打設後の短期間内に、調整棒により最終的な天端レベルを迅速且つ適正に決めることができるため、コンクリート打設作業の作業性が高められる。また、本発明においては、第2取付片の係止突起を第1取付片の第1係合突起あるいは第2係合突起に係止させることにより、鉄筋取付部を鉄筋に簡単に取り付けることができるため、狭い基礎型枠間での天端出し治具の鉄筋への取り付けが簡易に行われる。
【0021】
また、本発明において、鉄筋取付部が棒状であり、一端側にて内壁が軸方向内方に向けて縮径するように傾斜した鉄筋挿嵌孔を設けており、鉄筋挿嵌孔にて鉄筋の先端側に挿嵌可能なようにされてもよい。これにより、鉄筋取付部が、他端側の鉄筋挿嵌孔にて鉛直方向に延びた鉄筋の上端から差し込まれ、鉄筋挿嵌孔の傾斜面によって鉄筋上端側に嵌め合わされて固定され、その状態で、調整棒を用いてコンクリート打設の上端位置に位置合わせされる。その後、コンクリートが調整軸部材の鉛直位置決め部位置まで打設されるが、天端出し治具は鉄筋に固定されて動かないため、コンクリートが十分に硬化する前でも、調整棒を手等によって上下に動かすことによりコンクリート基礎の最終的に高さである天端レベルを精密に調整でき、その高さに合わせてレベラーを流し込むことができる。その結果、本発明においては、コンクリート打設後の鉄筋の上下左右への位置ズレや、コンクリート面の凹凸や傾斜による変動に対して、コンクリート打設後の短期間内に、調整棒により最終的な天端レベルを迅速且つ適正に決めることができるため、コンクリート打設作業の作業性が高められる。
【0022】
さらに、鉄筋取付部は、他端側に筒状であって内壁が軸方向内方に向けて縮径するように傾斜した鉄筋挿嵌孔を設けているため、鉄筋の径の違いに対して鉄筋挿嵌孔の適した内径位置まで挿入して嵌め合わせることにより、径の異なる鉄筋に対して強固に取り付けることができる。その結果、本発明においては、一種類の天端出し治具を用意するのみで、径の異なる鉄筋に対して鉄筋挿嵌孔により強固に取り付けることができるので、治具取り付け作業が簡易にされると共に天端出し治具管理の手間が省かれ、価格も相対的に安価にされる。また、本発明においては、鉄筋挿嵌孔にて鉄筋に差し込むことにより、鉄筋取付部を鉄筋に簡単に取り付けることができるため、狭い基礎型枠間での天端出し治具の鉄筋への取り付けが簡易に行われる。また、本発明においても、コンクリート基礎の硬化前に天端高さの調整を行うことができるため、硬化前にレベラーを流し込むことができ、そのため、コンクリートとレベラーの接着強度が高められるため、コンクリート基礎に接着剤を塗布する必要がないので、コンクリート基礎の打設作業がさらに簡易にされる。さらに、本発明においても、レベラー乾燥後にレベラー表面に調整棒の頭部が突出しても、調整棒の調節により頭部を容易に下げることができるため、簡易にレベラー表面を平坦面にすることができる。
【0023】
また、本発明において、鉄筋取付部の鉄筋挿嵌孔を設けた一端側が、周方向複数個所にて軸方向に伸びたスリットにより分離された複数の係合片にされてもよい。これにより、鉄筋の上端側に挿嵌された鉄筋取付部は、鉄筋への挿入時にはスリットで分離された係合片の弾性変形により径方向外方にスムーズに押し広げられた状態になり、挿嵌後は係合片の弾性反力によって鉄筋に対して径方向内方に向けた強固な締付け力として作用する。そのため、鉄筋取付部は、コンクリート打設や調整棒による天端高さの調整の際にも、動かないように鉄筋に一層強固に固定される。
【発明の効果】
【0024】
本発明においては、天端出し治具が、筒状保持部と一体で設けた鉄筋取付部あるいは鉄筋取付部の鉄筋挿嵌孔にて鉄筋に強固に固定されるため、コンクリートが筒状保持部の軸孔に挿通された調整棒の規定位置まで打設された後、コンクリートが十分に硬化する前でも、調整棒を上下方向に調整することによりコンクリート基礎の最終的に天端レベルを簡易かつ精密に調整することができる。その結果、本発明においては、コンクリート打設後の短期間内に最終的な天端レベルの精密な調節を容易に行うことができるため、コンクリート打設作業の作業性が高められ、作業コストを大幅に低減できる。また、本発明においては、天端出し治具を鉄筋取付部にて鉄筋に簡単に取り付けることができるため、狭い基礎型枠間での天端出し治具の鉄筋への取り付けが簡易に行われる。さらに、本発明においては、コンクリート基礎の硬化前にレベラーを流し込むことができ、コンクリートとレベラーの接着強度が高められるため、コンクリート基礎に接着剤を塗布する必要がないので、コンクリート基礎の打設作業がさらに簡易にされる。また、本発明においては、レベラー乾燥後にレベラー表面に天端レベル管理具の頭部がわずかに突出しても、キャップ部の頭部を下げることができるため、簡易にレベラー表面を平坦面にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態について図面を用いて説明する。図1は、実施例1である住宅用の基礎コンクリートの布基礎部分の上端の位置決めに用いる天端出し治具を一部破断正面図により示したものである。図2は調整棒を正面図により示し、図3及び図4は取付本体部を正面図及び平面図により示し、図5A,B,Cはキャップ部を軸線位置での断面図、平面図及び底面図により示し、図6,図7,図8は、天端出し治具の使用状態を正面図、平面図及び説明図により示したものである。天端出し治具10は、軸孔13を有する小径の筒状保持部12と、筒状保持部12の外壁にその軸方向に対して平行に一体で設けられた略C字状の鉄筋取付部15とからなる樹脂製の取付本体部11と、軸孔13に挿通されて鉛直方向に向けて配置され、筒状保持部12に緊密に締め付けられて取り付けられると共に、軸孔13に対して摺動可能にされた長尺の調整棒24と、調整棒24の上端に被せられたキャップ部26とを備えている。
【0026】
筒状保持部12は、小径の円筒形状で、軸方向長さが鉄筋取付部15より短く、軸心位置にて両端面間を貫通した軸直角断面が略十字状になった軸孔13を有しており、鉄筋取付部15の軸方向中間位置に互いに平行に一体で取り付けられている。鉄筋取付部15は、薄肉で筒状保持部12から両側に延びて同軸状に形成された半円筒形状の第1取付片16と、第1取付片16における他方側(図1の後側)に延びた部分16bの先端にて薄肉連結部19を介して曲げ変形可能に一体で取り付けられた半円筒形の第2取付片21とにより構成されている。
【0027】
第1取付片16は、円筒形の略1/4周部分が除かれた半円筒形になっており、内径が径の細い鉄筋5(例えば10mmφ)の外径よりわずかに小さくなるように形成されており、筒状保持部12に対して一方側(図1の前側)に延びた部分16aの外周面には、先端側にて外方に突出して軸方向両端間に延びた第1係合突起17を設けると共に筒状保持部12の近傍位置にて外方に突出して軸方向両端間に延びた第2係合突起18を設けている。第1及び第2係合突起17,18は、それぞれ周方向に連続する軸方向に延びた2つの突起を有しており、各突起はそれぞれ平面から見て筒状保持部12に向けて傾斜した突出端が鋭角に尖った鋸歯状になっている。第1及び第2係合突起17,18がそれぞれ2つの突起を有していることにより、後述する係止突起22を第1及び第2係合突起17,18に係止させる際に、嵌め合わせる鉄筋の径に多少のばらつきがあっても、ばらつきに応じていずれかの突起を選択して係止させることにより鉄筋に緊密に締め付けた状態で取り付けられる。なお、これらの突起の数については、2つに限らず必要に応じて1つあるいは3つ以上とすることも可能である。
【0028】
第1取付片16の他方側に延びた部分16bの先端には、薄肉連結部19を介して半円筒形の第2取付片21が曲げ変形可能に取り付けられている。第2取付片21は、円筒形の略1/2周部分が除かれた半円筒形になっており、内径が径の太い鉄筋F2(例えば13mmφ)の外径よりわずかに小さくなるように形成されており、先端の内周部分にて内方にわずかに突出して軸方向に延びた係止突起22を設けている。係止突起22は、1つの突起になっており、突起の形状については第1及び第2係合突起17,18と同様に、平面から見て筒状保持部12に向けて傾斜した突出端が鋭角に尖った鋸歯状になっている。係止突起22は、第1及び第2係合突起17,18と互いに係止可能になっている。なお、突起の数については、1つに限らない。筒状保持部12と鉄筋取付部15とが一体になった取付本体部11は、樹脂射出成形により一体で形成される。
【0029】
調整棒24は、金属製の長尺の細い丸棒であり、その先端側にねじ溝24aが形成されて表面が凹凸状にされている。調整棒24は、径が上記筒状保持部12の軸孔13の内径よりわずかに大きくなっており、軸孔13内に圧入状態で挿通され、軸孔13内に緊密な状態で保持されると共に、軸方向に力を加えることにより軸孔13に対して摺動可能になっている。調整棒24のねじ溝24a部分には、樹脂製で薄い灰色に着色されたキャップ部26が嵌着されている。キャップ部26は、図5に示すように、上端側が封止された円筒状であって、上端面26aの中央には十字状の取付溝27が設けられており、外周面が軸方向略中間から下端にかけて縮径しながら傾斜した円錐面26bになっており、また下端にて同軸状に開口して上端近傍まで延びた取付孔28を設けている。取付孔28は、内径が調整棒24の外径より小さくなっている。これにより、調整棒24は、先端のねじ溝24a部分にてキャップ部26の取付孔28に挿嵌される。これにより、キャップ部26は調整棒24のねじ溝24aと噛み合って上端に強固に固定される。キャップ部26は、上端面26aが平面になっており、この上に天端レベル出し用の棒材を立設して、レーザ発光器により高さを調節してコンクリート打設位置や天端レベルを決めるものである。
【0030】
実施例1においては、天端出し治具10の鉄筋取付部15を外径の細い縦鉄筋F1に取り付ける場合は、図6,7に示すように、第1取付片16を縦鉄筋F1の外周に嵌め合わせて、第2取付片21の係止突起22を第1取付片16の第2係合突起18に係止させることにより、鉄筋取付部15は第1及び第2取付片16,21で締め付けた状態で鉄筋F1に強固に固定される(使用状態I)。また、第2取付片21の係止突起22を第1取付片16の第2係合突起18に係止させることにより、鉄筋取付部15を縦鉄筋F1に簡単に取り付けることができるため、狭い基礎型枠間での天端出し治具10の縦鉄筋F1への取り付けが簡易に行われる。天端出し治具10が鉄筋取付部15にて縦鉄筋F1に取り付けられることにより、筒状保持部12が鉛直状態になるように配置される。
【0031】
つぎに、図8に示すように、筒状保持部12の軸孔13に緊密に締め付けられて取り付けられた調整棒24の上端に木製の棒材を載置し、調整棒24を手等によって摺動させながらレーザ発光器等を用いてコンクリート打設の上端位置に位置合わせさせる。その後、コンクリートが調整棒24のキャップ部26下端位置まで打設される。コンクリートK1打設後に、さらに調整棒24によりコンクリート基礎の最終的な天端レベルを精密に調整し、その天端レベルに合わせてレベラーK2を流し込むことができる。ここで、天端出し治具10が鉄筋取付部15にて縦鉄筋F1に強固に固定されて動かないため、コンクリートが十分に硬化する前でも、調整棒24による天端高さ調整を行うことができる。その結果、実施例1においては、コンクリート打設後の鉄筋の上下左右への位置ズレや、コンクリート面の凹凸や傾斜による変動に対して、コンクリート打設後の短期間内に、調整棒24により最終的な天端レベルを迅速且つ適正に決めることができるため、コンクリート打設作業の作業性が高められる。
【0032】
また、実施例1によれば、高さ調整については、ドライバー等の治具を用いることなく単に調整棒24を手で持ってあるいはハンマー等で叩くことにより上下させるのみで行うことができるので、調整の手間が簡単で調整時間も短縮できる。さらに、実施例1においては、コンクリートの硬化前に天端高さの調整を行うことができるため、硬化前にレベラーを流し込むことができ、そのため、コンクリートとレベラーの接着強度が高められる。その結果、コンクリート基礎に接着剤を塗布する必要がないので、コンクリート基礎の打設作業がさらに簡易にされる。また、実施例1においては、金属製の調整棒24が樹脂製の取付本体部11によって縦鉄筋F1から隔離されているため、異種の金属間の接触による縦鉄筋F1を腐食させるおそれはない。
【0033】
また、実施例1においては、調整棒24の上端にキャップ部26が嵌着されていることにより、キャップ部26の下端をコンクリートの打設の目安位置とし、上端をコンクリートの最終的な天端レベルとして容易に認識することができる。また、キャップ部26の上面26aが平坦なので、高さ調整のためのレーザ測定具や木の棒を安定して載置させることができ、高さ調整作業が容易に行われる。さらに、キャップ部26によって調整棒24の上端がコンクリート上面に露出することを防止できるため、調整棒24の錆びによるコンクリートK1、K2の強度への悪影響を防止できる。また、調整棒24の上端側の表面が、ねじ溝24aで凹凸状にされているため、調整棒24にキャップ部26を嵌め合わせたときにねじ溝24aに食い込むため、キャップ部26が強固に調整棒24に取り付けられ、調整棒24からの脱落が防止される。
【0034】
また、レベラー乾燥後の収縮により、レベラー表面が凹んでキャップ部26の上部がわずかに突出しても、キャップ部26上面側にわずかに打撃を与えることにより凹ませて再調整ができるため、キャップ部26上面をレベラー表面に簡単に合わせることができる。また、実施例1においては、キャップ部26が薄い灰色に着色されていることにより、天端出し治具10が、狭い型枠間の暗い空間内に配置されても、キャップ部26が薄い灰色のために外から容易に認識することができ、レベラー打設をキャップ部26上面に合わせて正確に行うことができる。
【0035】
また、鉄筋取付部15を径の太い鉄筋F2(例えば、外径が13mmφ)に取り付ける場合は、図9,10に示すように、第1取付片16を広げて第2取付片21と共に鉄筋6の外周に嵌め合わせて、第2取付片21の係止突起22を第1取付片16の第1係合突起17に係止させることにより、鉄筋取付部15は第1及び第2取付片16,21で締め付けた状態で外径の太い鉄筋F2に強固に固定される(使用状態II)。その結果、実施例1においては、単一の鉄筋取付部15を有する天端出し治具10により太さの異なる2種類の鉄筋F1,F2に固定することができるので、鉄筋取付部15を含む取付本体部11の価格が安価にされると共に、部材管理の手間も軽減される。
【0036】
つぎに、上記実施例1に係る天端出し治具10の他の使用例について説明する。他の使用例としては、住宅用コンクリート基礎の地面に直接敷設されるベース部分の高さを決めるために天端出し治具10が使用されるものである。図11に示すように、天端出し治具10は、地面近傍に水平状態で配置された横鉄筋F3に鉛直方向に向けて取り付けられた縦鉄筋F1の下端近傍位置にて鉄筋取付部15により固定され、調整棒24を筒状保持部12の下端より下方に伸ばすことにより、調整棒24の下端がベースコンクリートK3の打設位置に合わせられる。これにより、ベースコンクリートK3の高さが正確に位置合せされる。さらに、このような高さ調節に使用後は、天端出し治具10を縦鉄筋F1から取り外すことにより、天端出し治具10を上述したコンクリート布基礎の天端を調節するために使用することができる。その結果、天端出し治具10を2つの用途に使用することができるので、天端出し治具10の価値がさらに高められる。
【0037】
つぎに、上記実施例1の変形例1について説明する。
変形例1においては、実施例1の天端出し治具10においては筒状保持部12と鉄筋取付部材15が互いに軸方向を揃えて一体にされているのに対して、図12,13に示すように、筒状保持部12と鉄筋取付部15とが互いに軸方向が直交するように取り付けられたものである。これにより、天端出し治具10Aは、筒状保持部12を鉛直方向に向けた状態で鉄筋取付部15にて、水平に配置された横鉄筋(図示しない)に対して取り付けられるものである。その結果、変形例においても、横鉄筋に対して実施例1と同様の効果が得られる。
【0038】
つぎに、上記実施例1の変形例2について説明する。
変形例2においては、実施例1の天端出し治具10の鉄筋取付部15のように2種類の径の鉄筋に固定できるものに代えて、1種類の径の鉄筋にのみ適用される鉄筋取付部31を有するようになっている。鉄筋取付部31は、図13,図14に示すように、薄肉で略円筒形状の取付片32を設けており、取付片32の周方向中央にて、軸方向に配置された筒状保持部12と一体にされている。取付片32は周方向の一か所で分離されており、所定の径の鉄筋に嵌め合されるような内径にされている。取付片32は、筒状保持部12を挟んだ一方側に延びた部分32aの外周面には、一端縁にて突出して軸方向両端間に延びた第1係合突起33が設けられており、他方向に延びた部分32bの内周面には、他端縁にて突出して軸方向両端間に延びた第2係合突起34が設けられており、第1係合突起33と互いに解除可能に係止し合うようになっている。
【0039】
変形例2においては、所定の径の1種類の縦鉄筋に対して、鉄筋取付部31を、両側に延びた取付片32を広げて鉄筋に嵌め合わせ、第2係合突起34を第1係合突起33に係止させることにより、鉄筋取付部31が縦鉄筋に強固に締め付けた状態で取り付けられる。これにより、変形例2においても、実施例1と同様に、鉄筋取付部31の縦鉄筋への取り付けが簡易にかつ短時間に行われると共に、天端出し治具10が鉄筋取付部15にて縦鉄筋F1に強固に固定されて動かないため、コンクリートが十分に硬化する前でも、調整棒24による天端高さ調整を行うことができる等の効果が得られる。
【0040】
次に、実施例2について図面を用いて説明する。
図16及び図17は、実施例2である天端出し治具40を一部破断正面図及び底面図により示したものである。天端出し治具40は、軸孔13を有する小径の筒状保持部12と、筒状保持部12の外壁にその軸方向に対して平行に一体で設けられた丸棒状の鉄筋取付部42とからなる樹脂製の取付本体部41と、軸孔13に挿通されて鉛直方向に向けて配置された長尺の調整棒24と、調整棒24の上端に被せられたキャップ部26とを備えている。なお、筒状保持部12と、調整棒24とキャップ部26については、上記実施例1と同様であり、同一符号を用いる。
【0041】
鉄筋取付部42は、軸方向中間位置から下端42aにかけて同軸状に延びて下端にて開口した鉄筋挿嵌孔43を設けている。鉄筋挿嵌孔43は、下端42aから軸方向中間位置に向けて縮径するように傾斜した円錘面状になっており、下端位置42aでの外径が孔内端位置43aでの内径より大きくなっている。例えば外径が10mmφ、13mmφの縦鉄筋F1,F2を対象とする場合、下端位置42aでの外径は14mmφ、内端位置43aでの外径は9mmφになっている。
【0042】
次に、実施例2の動作について説明する。図18に示すように、天端出し治具40が鉄筋取付部42の一端を上に向けて鉛直状態にして配置され、鉄筋取付部42他端側の鉄筋挿嵌孔43にて型枠間に配設された鉛直方向に延びた外径の細い縦鉄筋F1の上端から差し込まれ、鉄筋挿嵌孔43の傾斜面によって鉄筋F1の上端近傍側に嵌め合わされて固定される(使用状態1)。この状態で、調整棒24を上下に動かして高さ調整することにより、キャップ部26の下端がコンクリート打設の上端位置に位置合わせされる。その後、コンクリートが筒状保持部12の下端位置まで打設されるが、天端出し治具40は縦鉄筋F1に強固に固定されて動かないため、コンクリートが十分に硬化する前でも、筒状保持部12の軸孔13に挿通された調整棒24によりコンクリート基礎の最終的に高さである天端レベルを精密に調整でき、その高さに合わせてレベラーを流し込むことができる。その結果、実施例2においても、コンクリート打設後の鉄筋の上下左右への位置ズレや、コンクリート面の凹凸や傾斜による変動に対して、コンクリート打設後の短期間内に、調整棒24により最終的な天端レベルを迅速且つ適正に決めることができるため、コンクリート打設作業の作業性が高められる等、上記実施例1と同様の効果が得られる。
【0043】
また、鉄筋取付部42は、軸方向中間位置から下端に向けて拡径するように傾斜した鉄筋挿嵌孔43を設けているため、鉄筋の径の違いに対して鉄筋挿嵌孔43の適した内径位置まで挿入して嵌め合わせることにより、径の異なる鉄筋に対して強固に取り付けることができる。例えば、外径の太い縦鉄筋F2を対象とする場合は、図19に示すように、鉄筋F2の上端が、鉄筋取付部42の鉄筋挿嵌孔43内の軸方向略中間位置で係止され強固に取り付けられる(使用状態2)。その結果、実施例2においては、一種類の天端出し治具40を用意するのみで、径の異なる鉄筋に対して鉄筋挿嵌孔43により強固に取り付けることができるので、取り付け作業が簡易にされると共に天端出し治具管理の手間が省かれ、価格も相対的に安価にされる。
【0044】
つぎに、上記実施例2の変形例について説明する。
変形例においては、天端出し治具の取付本体部41Aは、図20及び図21に示すように、実施例2の取付本体部41において鉄筋取付部42の下端側の鉄筋挿嵌孔43を設けた下側部について、周方向の等間隔な4箇所にて軸方向に延びたスリット45を設けて、下側部を4つの係合片46に分離して配設したものである。これにより、変形例においては、取付本体部41Aを下端側にて鉄筋F1,F2の上端側から挿嵌する際に、スリット45で分離された係合片46の弾性変形により径方向外方に押し広げられた状態になるため、天端出し治具40の鉄筋F1,F2への挿嵌がスムーズに行われる。また、天端出し治具40の鉄筋F1,F2への挿嵌後は、係合片46の弾性反力によって鉄筋F1,F2に対して径方向内方に向けた強固な締付け力として作用する。そのため、鉄筋取付部42は、調整棒24による高さ調節の際やコンクリート打設の際にも、動かないように鉄筋F1,F2に強固に固定される。
【0045】
なお、上記実施例2においても、実施例1の変形例1と同様に、横鉄筋に取り付けるために、鉄筋取付部42を筒状保持部12に対して軸方向に直交するように取り付けることができる。また、上記実施例1,2において、キャップ部26Aについては、図22に示すように、取付孔28が開口する円筒形の下端にて軸直角方向に延びた円環状の鍔部29を設けたものとすることができる。これにより、下端の鍔部29をコンクリート打設位置の目印として明確に認識することができる。その結果、天端出し治具が、狭い型枠間の暗い空間内に配置されても、コンクリート打設の高さを鍔部29に合わせて正確に行うことができる。その他、上記各実施例、変形例において、筒状保持部、鉄筋取付部の形状については円柱、角柱形状に限らず種々の形状とすることが可能である。その他、上記各実施例に示した天端出し治具については、一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の天端出し治具は、筒状保持部と一体で設けた鉄筋取付部あるいは鉄筋取付部の鉄筋挿嵌孔にて鉄筋に強固に固定されるため、コンクリートが規定位置まで打設された後、コンクリートが十分に硬化する前でも、調整棒を上下方向に調整することによりコンクリート基礎の最終的に天端レベルを簡易かつ精密に調整することができるため、コンクリート打設作業の作業性が高められ、作業コストを大幅に低減できるので、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施例1である天端出し治具を示す軸線位置での一部破断正面図である。
【図2】同天端出し治具の調整棒を示す正面図である。
【図3】天端出し治具の取付本体部を示す正面図である。
【図4】天端出し治具の取付本体部を示す平面図である。
【図5A】キャップ部を示す軸線位置での断面図である。
【図5B】キャップ部を示す平面図である。
【図5C】キャップ部を示す底面図である。
【図6】天端出し治具の使用状態Iを示す正面図である。
【図7】天端出し治具の使用状態Iを示す図6のVII−VII線方向の一部破断平面図である。
【図8】天端出し治具を用いたコンクリートの高さ調整を説明する説明図である。
【図9】天端出し治具の使用状態IIを示す正面図である。
【図10】天端出し治具の使用状態IIを示す図9のIX−IX線方向の一部破断平面図である。
【図11】天端出し治具を用いたコンクリートの天端位置調整の他の例を説明する説明図である。
【図12】実施例1の変形例1である天端出し治具の取付本体部を示す正面図である。
【図13】変形例1である天端出し治具の取付本体部を示す平面図である。
【図14】変形例2である天端出し治具の取付本体部を示す正面図である。
【図15】変形例2である天端出し治具の取付本体部を示す平面図である。
【図16】実施例2である天端出し治具を示す一部破断正面図である。
【図17】実施例2である天端出し治具を示す底面図である。
【図18】同天端出し治具の使用状態1を示す一部破断正面図である。
【図19】同天端出し治具の使用状態2を示す一部破断正面図である。
【図20】実施例2の変形例である天端出し治具の取付本体部を示す一部破断正面図である。
【図21】同変形例である天端出し治具の取付本体部を示す平面図である。
【図22】キャップ部の変形例を示す一部破断正面図である。
【符号の説明】
【0048】
10,10A…天端出し治具、11…取付本体部、12…筒状保持部、13…軸孔、15…鉄筋取付部、16…第1取付片、17…第1係合突起、18…第2係合突起、19…薄肉連結部、21…第2取付片、22…係止突起、24…調整棒、26…キャップ部、28…取付孔、31…鉄筋取付部、40…天端出し治具、41,41A…取付本体部、42…鉄筋取付部、43…鉄筋挿嵌孔、45…スリット、46…係合片、F1,F2…縦鉄筋。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸孔を有する樹脂製の筒状保持部と、
該筒状保持部の外壁にその軸方向に対して平行に又は直交して一体で設けられ、地面上に配設された鉄筋に着脱可能に取り付けられる樹脂製の鉄筋取付部と、
前記筒状保持部の軸孔に挿通されて鉛直方向に向けて配置され、該筒状保持部に緊密に締め付けられて取り付けられると共に、外力が加えられることによって前記軸孔に対して摺動可能にされた長尺の調整棒と
を設けたことを特徴とする天端出し治具。
【請求項2】
前記調整棒の上端に、上面が平坦な樹脂製のキャップ部が嵌着されたことを特徴とする請求項1に記載の天端出し治具。
【請求項3】
前記調整棒の上端側の表面が、凹凸状にされたことを特徴とする請求項2に記載の天端出し治具。
【請求項4】
前記キャップ部が、薄い灰色に着色されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の天端出し治具。
【請求項5】
前記キャップ部の下端側に鍔部を設けたことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の天端出し治具。
【請求項6】
前記鉄筋取付部が、筒状で周方向の一か所で分離されて略C字状になっており、分離された両側部分に互いに解除可能に係止し合う係止手段を設けたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の天端出し治具。
【請求項7】
前記係止手段が、前記筒状保持部から一方側に延びた半円筒状部分の先端側の内周面にて突出した第1突起部と、他方側に延びた半円筒状部分の外周面の周方向の少なくとも一か所にて突出した前記第1突起部と互いに解除可能に係止し合う第2突起部とを設けたことを特徴とする請求項6に記載の天端出し治具。
【請求項8】
前記鉄筋取付部が、前記筒状保持部から両側に延びた略半円筒形状であって、一方側に延びた部分の先端側の外周面にて外方に突出した第1係合突起を設けると共に周方向に離間して外周面から外方に突出した第2係合突起を設けた第1取付片と、該第1取付片における他方側に延びた部分の先端にて曲げ変形可能に取り付けられた略半円筒形状であって、先端側の内周面に前記第1係合突起及び第2係合突起と個別に互いに解除可能に係止し合う該第1係合突起及び第2係合突起と共に前記係止手段を構成する係止突起を設けた第2取付片とを備えたことを特徴とする請求項6に記載の天端出し治具。
【請求項9】
前記鉄筋取付部が棒状であり、一端側にて内壁が軸方向内方に向けて縮径するように傾斜した鉄筋挿嵌孔を設けており、該鉄筋挿嵌孔にて鉄筋の先端側に挿嵌可能なことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の天端出し治具。
【請求項10】
前記鉄筋取付部の鉄筋挿嵌孔を設けた一端側が、周方向複数個所にて軸方向に伸びたスリットにより分離された複数の係合片にされたことを特徴とする請求項9に記載の天端出し治具。
【請求項1】
軸孔を有する樹脂製の筒状保持部と、
該筒状保持部の外壁にその軸方向に対して平行に又は直交して一体で設けられ、地面上に配設された鉄筋に着脱可能に取り付けられる樹脂製の鉄筋取付部と、
前記筒状保持部の軸孔に挿通されて鉛直方向に向けて配置され、該筒状保持部に緊密に締め付けられて取り付けられると共に、外力が加えられることによって前記軸孔に対して摺動可能にされた長尺の調整棒と
を設けたことを特徴とする天端出し治具。
【請求項2】
前記調整棒の上端に、上面が平坦な樹脂製のキャップ部が嵌着されたことを特徴とする請求項1に記載の天端出し治具。
【請求項3】
前記調整棒の上端側の表面が、凹凸状にされたことを特徴とする請求項2に記載の天端出し治具。
【請求項4】
前記キャップ部が、薄い灰色に着色されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の天端出し治具。
【請求項5】
前記キャップ部の下端側に鍔部を設けたことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の天端出し治具。
【請求項6】
前記鉄筋取付部が、筒状で周方向の一か所で分離されて略C字状になっており、分離された両側部分に互いに解除可能に係止し合う係止手段を設けたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の天端出し治具。
【請求項7】
前記係止手段が、前記筒状保持部から一方側に延びた半円筒状部分の先端側の内周面にて突出した第1突起部と、他方側に延びた半円筒状部分の外周面の周方向の少なくとも一か所にて突出した前記第1突起部と互いに解除可能に係止し合う第2突起部とを設けたことを特徴とする請求項6に記載の天端出し治具。
【請求項8】
前記鉄筋取付部が、前記筒状保持部から両側に延びた略半円筒形状であって、一方側に延びた部分の先端側の外周面にて外方に突出した第1係合突起を設けると共に周方向に離間して外周面から外方に突出した第2係合突起を設けた第1取付片と、該第1取付片における他方側に延びた部分の先端にて曲げ変形可能に取り付けられた略半円筒形状であって、先端側の内周面に前記第1係合突起及び第2係合突起と個別に互いに解除可能に係止し合う該第1係合突起及び第2係合突起と共に前記係止手段を構成する係止突起を設けた第2取付片とを備えたことを特徴とする請求項6に記載の天端出し治具。
【請求項9】
前記鉄筋取付部が棒状であり、一端側にて内壁が軸方向内方に向けて縮径するように傾斜した鉄筋挿嵌孔を設けており、該鉄筋挿嵌孔にて鉄筋の先端側に挿嵌可能なことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の天端出し治具。
【請求項10】
前記鉄筋取付部の鉄筋挿嵌孔を設けた一端側が、周方向複数個所にて軸方向に伸びたスリットにより分離された複数の係合片にされたことを特徴とする請求項9に記載の天端出し治具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2009−215703(P2009−215703A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57018(P2008−57018)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(597095131)株式会社東海建商 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(597095131)株式会社東海建商 (8)
【Fターム(参考)】
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