説明

太陽光発電装置の設置構造及び設置方法

【課題】太陽光発電装置を構成する太陽電池パネルを地上の所定高さ位置に安定して設置することのできる構造及び方法を提供する。
【解決手段】支柱12を介して地上の所定高さ位置に太陽電池パネル11が支持される太陽光発電装置10の設置構造であり、地面に穴hが形成され、当該穴h内に埋設構造体13が埋設される。この埋設構造体13と支柱12は、締結具を介して相互に連結される。締結具20は埋設構造体13の上面から突出するボルト26と、このボルト26に締め付けられるナット28とからなり、ボルト26は、支柱12の下部に設けられたフランジ25のボルト挿入孔23に挿通される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置の設置構造及び設置方法に係り、更に詳しくは、支柱を介して太陽電池パネルを地上に設置する場合の構造及び方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、太陽光発電装置が環境破壊のない代替エネルギー源として注目され、例えば、建物の屋根に設置される光景が多く見受けられるようになっている。
この太陽光発電装置を遊休地等の屋外に設置する態様としては、太陽電池パネルを地上に直接設置する態様が存在するが、この場合には、太陽電池パネルの設置領域が土地の有効利用を狭めてしまう、という不都合をもたらす。
このような不都合は、例えば、特許文献1に開示されるように、地上に支柱を立設し、当該支柱の上部に太陽電池パネルを支持させることで解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−88389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された太陽光発電装置は、太陽電池パネルを支持する支柱の下端部にブロックを設け、当該ブロックを地中に埋設して設置する構造となっている。
しかしながら、特許文献1記載の設置構造は、ブロックを地中に埋設するだけの構造であって、ブロックの埋設強度自体を堅牢にする構成とはなっていない。
また、特許文献1記載の太陽電池パネルは、その受光面に強風が吹き当てられたときの受光面の角度調整機能は存在せず、風圧に起因した曲げ応力等のエネルギーが支柱及びブロックに大きく作用する構造となっている。従って、発電量を多く確保するために平面積の大きい太陽電池パネルの設置には適していない、という不都合もある。
【0005】
[発明の目的]
本発明の目的は、太陽光発電装置を構成する太陽電池パネルを地上の所定高さ位置に設置するにあたり、強風下においても十分な耐久性を発揮することのできる太陽光発電装置の設置構造及び設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、地上に立設される支柱の上部に、受光面が太陽に向けられるとともに所定の風速値を上回ったときに略水平姿勢に角度変位可能に設けられた太陽電池パネルを含む太陽光発電装置の設置構造であって、
前記支柱の下部に位置する埋設構造体と、この埋設構造体の上部と支柱の下部とを連結する締結具とを備え、
前記埋設構造体は、少なくとも外周側がコンクリートを介して地中に埋設される、という構成を採っている。
【0007】
本発明において、前記埋設構造体は、上下が開通する支持筒により構成され、当該支持筒の内部にもコンクリートが打設される、という構成を採ることができる。
【0008】
また、前記締結具は、複数のボルト及びナットからなり、各ボルトの頭部回りをコンクリートによって埋設してねじ軸部を地上に突出させ、当該ねじ軸部を前記支柱の下部に設けられた挿入孔内に挿通した状態でナットを締め込むことで埋設構造体と支柱とを連結する、という構成を採ってもよい。
【0009】
更に、前記埋設構造体は、外周部分に内外に連通する連通穴を備えた紙管と、当該紙管内に配置されるとともに所定形状に組み立てられた鉄筋骨材とを含み、当該鉄筋骨材を紙管内に配置した状態で紙管内空間にコンクリートが打設される、という構成を採ることができる。
【0010】
また、前記埋設構造体は、プレキャストコンクリートによって構成してもよい。
【0011】
更に、本発明は、地上に立設される支柱の上部に、受光面が太陽に向けられるとともに所定の風速値を上回ったときに略水平姿勢に角度変位可能に設けられた太陽電池パネルを含む太陽光発電装置の設置方法であって、
地面に穴を形成する工程と、
前記穴内にコンクリートを介して埋設構造体を埋設する工程と、
前記埋設構造体の上部と前記支柱の下部とを締結具で相互に連結する工程とを含む、という手法を採っている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、埋設構造体がコンクリートを介して地中に埋設される構造であるから、埋設構造体自体の設置強度を高めることができるとともに、支柱の支持を安定した状態に保つことができる。また、支柱と埋設構造体とが別体であり、両者が締結具を介して連結される構造であるため、それぞれの大きさを一体型よりも小さくでき、搬送時や設置時の取り扱いに伴う作業負担を軽減することができる。
しかも、太陽電池パネルは所定の風速値を上回ったときに角度変位して水平姿勢に保たれる構成であるから、風圧が太陽電池パネルに大きく作用した場合に加えられる支柱、埋設構造体への負荷も大幅に緩和され、設置構造の耐久性を十分に維持することができる。
更に、紙管内に鉄筋骨材を配置して紙管内空間にコンクリートを打設する(流し込む)構造では、設置現場に形成される穴内に紙管を配置した状態で鉄筋骨材を配置し、紙管内にコンクリートを打設するだけで埋設構造体が形成可能となる。しかも、紙管の内外を通じる穴を通じてコンクリートが紙管の外周側にも流れ込む構造となるため、コンクリート打設作業の工程を最小化することができる。
また、埋設構造体が中実型のプレキャストコンクリートであれば、設置現場でプレキャストコンクリートの外周側にコンクリートを打設するだけの作業となって作業負担の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る太陽光発電装置の設置構造を示す一部断面正面図。
【図2】第1実施形態に係る設置方法を示す工程図。
【図3】第2実施形態に係る設置方法を示す工程図。
【図4】第3実施形態に係る設置方法を示す工程図。
【図5】第4実施形態に係る設置方法を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1において、太陽光発電装置10は、略方形の外形を有するフレームFに多数の太陽電池モジュールを縦横に配置して構成された太陽電池パネル11と、支柱12を介して太陽電池パネル11を支持する埋設構造体13と、風速センサ14とを含む。なお、ここでは図示省略しているが、太陽光発電装置10は、太陽電池パネル11の出力、出力積算値を検出するインバータ表示器からなる積算電力計、感雨センサ、太陽電池パネル11の方位、仰角を変位させる駆動装置、所定の制御を行うコントローラ、出力積算値等を含む各種表示や、外部機器への送受信機能等を備えた入出力装置、蓄電池等を含む。
【0016】
前記太陽電池パネル11は、縦横4900mm×5800mmの大きさを備えて構成されている。この太陽電池パネル11は、その原点位置が仰角を0度とする略水平に設定されているとともに、日の出から日没までの間は、太陽の位置に応じて仰角、方位を変位するように構成されている。また、太陽電池パネル11は、風速センサ14が予め設定された風速値を上回ったことを検知したときに、原点位置に復帰するようにコントローラを介して制御される。
【0017】
前記支柱12は、その直径が400mm、長さが4500mmとなる金属製の筒状体からなり、その下部が締結具20を介して埋設構造体13の上部に連結されている。これを更に詳述すると、支柱12の下部にはボルト挿入孔23を周方向複数箇所に備えたフランジ25が設けられており、ボルト挿入孔23内に挿通されるボルト26のねじ軸部26Aにナット28を締め付けることで支柱12が埋設構造体13の上部に連結されて当該埋設構造体13上に支持されるように構成されている。ここにおいて、前記ボルト26及びナット28により締結具20が構成されている。なお、本実施形態における支柱12は、一本の筒状体であるが、長さ方向に沿って複数に分割し、これを設置現場で相互に連結することでもよい。
【0018】
前記埋設構造体13は、第1実施形態では、プレキャストコンクリート又はヒューム管からなる中空の支持筒により構成されている。この埋設構造体13は、地面に形成された穴hの内側にコンクリートCの流し込み空間Sを形成する状態で埋設されるものであり、その直径、長さは、1000mm、2000mmのものが用いられている。また、埋設構造体13は、内部にコンクリートを流し込むことで中実化され、その際に、上端部に前記ボルト26の頭部を下側にして埋め込み固定することにより、ボルト26のねじ軸部26Aを上方に突出させた状態で当該ボルト26を固定するようになっている。
【0019】
なお、図1中符号31は、太陽電池パネル11の側端に設けられたフランジ32を介して太陽電池パネル11の仰角を変位させるための回転軸であり、同図中符号34は、太陽電池パネル11を水平面内で回転させるための回転部材を示す。太陽電池パネル11の変位若しくは回転は、図示しないコントローラを介して制御される。
【0020】
次に、第1実施形態における太陽光発電装置10の設置方法について、図2を参照しながら説明する。
【0021】
図2(A)に示されるように、穴あけ装置40を用いて地面に穴hをあける。この穴hの内径及び深さは、埋設構造体13の直径よりも大きく、且つ、長さよりも長い深さとされ、これにより埋設構造体13の外周側と穴hとの間にコンクリートCを流し込む空間Sが形成される。穴hをあけた後、埋設構造体13を穴h内に配置し(図2(B)参照)、穴hと埋設構造体13との間に形成されたコンクリートCの流し込み空間Sと、埋設構造体13の内側空間内にコンクリートCを流し込む(打設する)。埋設構造体13の内側へのコンクリート流し込みを終了する前の段階でボルト26を埋設構造体13の内側所定箇所に配置し、当該ボルト26の頭部回りを固定する(図2(C)参照)。なお、図示例では、2個のボルト26を示しているが、実際には、それよりも多い数のボルトが固定される。
【0022】
コンクリートCを硬化させた後において、ボルト26のねじ軸部26Aを支柱12のフランジ25に形成されたボルト挿入孔25Aに挿通する。そして、ねじ軸部26Aにナット28を締め付けることで、支柱12と埋設構造体13とが相互に連結され、これにより、太陽電池パネル11が地上の所定高さ位置に支持されることとなる(図2(D)参照)。
なお、太陽電池パネル11は、日の出以後、日没までの間にわたり、予め設定された太陽の位置データを制御基準として仰角及び方位を変化させて太陽を追尾するが、風速センサ14によって検出される風速値が所定値を上回ったときに原点位置に戻るように制御される。
【0023】
従って、このような第1実施形態によれば、埋設構造体13全体がコンクリートCを介して地面の穴h内に埋設され、当該埋設構造体13の上部と支柱12の下部とを締結具20で連結する構成としたるから、埋設構造体13を堅牢な状態で埋設でき、これに支持される支柱12の支持強度を強固に確保することができる。
また、太陽電池パネル11は、風速が所定の値を上回ったときに略水平姿勢に角度変位される構成としているため、風圧の影響を受け難くでき、この点からも、支柱12及び埋設構造体13に対する過大な負荷軽減を図ることができる。
【0024】
次に、本発明の前記以外の実施形態について図3以下を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、前記第1実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符合を用いるものとし、説明を省略若しくは簡略にする。
【0025】
図3(A)〜(D)には、第2実施形態に係る設置工程が示されている。この第2実施形態は、紙管50に鉄筋骨材51を配置してコンクリートCを打設することで埋設構造体13が形成されるところに特徴を有する。紙管50は、その外周部分に複数の連通穴53が形成されており、当該連通穴53を介して紙管50の内外にコンクリートCが流通するように設けられている。
コンクリートCを打設してボルト26を固定する際の要領は、第1実施形態と同じであり、また埋設構造体13に支柱12の下部を連結する構成も第1実施形態と同じである。
【0026】
このような第2実施形態によれば、紙管50を用いているため、廉価に埋設構造体13を形成することができる他、紙管50に連通穴53を設けていることで、紙管50内にコンクリートCを流し込むだけで、紙管50と穴hとの間の空間SにもコンクリートCを流し込むことができ、コンクリートCの打設工程が簡略化できる。
【0027】
図4(A)〜(C)には、第3実施形態に係る設置工程が示されている。この第3実施形態は、ボルト26が予め固定されたプレキャストコンクリートからなる埋設構造体13を用い、当該埋設構造体13が中実構造となる角柱体、円柱体、円錐体等により構成されて任意に選択可能とした点に特徴を有する。このような第3実施形態では、埋設構造体13の外周側にのみコンクリートを打設するだけで当該埋設構造体13を地面内に固定できる。
【0028】
図5(A)〜(C)には、本発明の第4実施形態に係る設置工程が示されている。この第4実施形態は、プレキャストコンクリートからなる埋設構造体13を略方形のベース部13Aと、当該ベース部13Aの中央から立設された円柱状の起立部13Bとにより構成され、当該起立部13Bと支柱12とを連結するようにした構成に特徴を有する。この実施形態では、ベース部13Aの平面積が大きい構造となる結果、埋設構造体13の安定性を一層高めることができる、という効果を有する。
【0029】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、材料、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【0030】
例えば、前記実施形態における各部寸法は、例示的に示したものに過ぎず、必要に応じて、増加、減少させることができる。
【符号の説明】
【0031】
10 太陽光発電装置
11 支柱
12 太陽電池パネル
13 埋設構造体
20 締結具
23 挿入孔内
26 ボルト
26A ねじ軸部
28 ナット
50 紙管
51 鉄筋骨材
53 連通穴
C コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に立設される支柱の上部に、受光面が太陽に向けられるとともに所定の風速値を上回ったときに略水平姿勢に角度変位可能に設けられた太陽電池パネルを含む太陽光発電装置の設置構造であって、
前記支柱の下部に位置する埋設構造体と、この埋設構造体の上部と支柱の下部とを連結する締結具とを備え、
前記埋設構造体は、少なくとも外周側がコンクリートを介して地中に埋設されることを特徴とする太陽光発電装置の設置構造。
【請求項2】
前記埋設構造体は、上下が開通する支持筒により構成され、当該支持筒の内部にもコンクリートが打設されることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電装置の設置構造。
【請求項3】
前記締結具は、複数のボルト及びナットからなり、各ボルトの頭部回りをコンクリートによって埋設してねじ軸部を地上に突出させ、当該ねじ軸部を前記支柱の下部に設けられた挿入孔内に挿通した状態でナットを締め込むことで埋設構造体と支柱とを連結することを特徴とする請求項1記載の太陽光発電装置の設置構造。
【請求項4】
前記埋設構造体は、外周部分に内外に連通する連通穴を備えた紙管と、当該紙管内に配置されるとともに所定形状に組み立てられた鉄筋骨材とを含み、当該鉄筋骨材を紙管内に配置した状態の紙管内空間にコンクリートが打設されることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電装置の設置構造。
【請求項5】
前記埋設構造体は、プレキャストコンクリートであることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電装置の設置構造。
【請求項6】
地上に立設される支柱の上部に、受光面が太陽に向けられるとともに所定の風速値を上回ったときに略水平姿勢に角度変位可能に設けられた太陽電池パネルを含む太陽光発電装置の設置方法であって、
地面に穴を形成する工程と、
前記穴内にコンクリートを介して埋設構造体を埋設する工程と、
前記埋設構造体の上部と前記支柱の下部とを締結具で相互に連結する工程とを含むことを特徴とする太陽光発電装置の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−108854(P2011−108854A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262479(P2009−262479)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(594208075)フジプレアム株式会社 (15)
【Fターム(参考)】