説明

太陽光集光装置

【課題】集熱管と集光板の間にスペースを設けても集光精度(集光板から反射された太陽光線の集熱管への到達度)の向上を図れるようにし、かつ、組立を容易に行えるようにした太陽光集光装置を提供すること。
【解決手段】集熱管7付近に入光する太陽光線を集熱管に集中させて集熱管内を流通する熱媒体を温める太陽光集光装置において、集熱管に沿って設けられ、中央部に凹状嵌合部11を有し、両側部が左右対称かつW字形状の複合放物面に形成された取付面12を有する集光枠部材10と、複合放物曲線状の2つの集光板30と、凹状嵌合部に嵌合され、その際、両集光板の内側端部を集光枠部材との間で挟持するくさび状接続部材20と、を具備する。くさび状接続部材の受光表面に、該受光表面に入光される光線の入射角に対する反射角を小さくする凹凸形状部25を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽光集光装置に関するもので、更に詳細には、太陽光集熱装置であるCPC(Compound Parabolic Concentrator=複合放物面鏡集熱装置)の集光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光を利用する装置は数多く開発されている。例えば、CPC(Compound Parabolic Concentrator)は、その一つであるが、これは選択吸収膜等を有する集熱管直下に、放物線形状部位とインボリュート曲線形状部位とで構成された集光板(反射板)を配置することによって、太陽を追尾せずとも、開口幅に依存した角度θの範囲内の光線を効率的に集光する構造であることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、上記集光板(反射板)を、その側面部で複合放物面(放物線形状部位およびインボリュート曲線形状部位)をなし、その底面部が平坦または平面の組合せ、あるいは、複合放物面の一対の最底部同士間を外複合放物面に近似する平面の組合せの形状にしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、複合放物面を有する2つの集光板(反射板)を設置する構造として、略W字形状に形成され、それぞれが複合放物面に形成された2つの取付受け面と、該両取付受け面が幅方向にて交差しかつ低位置に形成された交差突条とからなるベースを用いるものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
上記特許文献3に記載のものによれば、上記ベースの幅方向両端部に形成された外側係止部と、上記交差突条の幅方向両端部に形成された内側係止部に、それぞれ集光板(反射板)の幅方向両端部を挿入して固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−138899号公報
【特許文献2】特開2001−221514号公報
【特許文献3】特開2002−106975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2,3に記載の複合放物面を有する集光構造では、集光板(反射板)の開口幅に依存した受光角度θの範囲内の太陽光線においては、集光板(反射板)から集熱管へ集光することが可能である。
【0008】
しかし、集熱管と集光板が接していると、集熱管から集光板への熱伝導による放熱ロスが発生し、集熱管内の熱媒への伝熱量が減少するという問題があった。
【0009】
また、集熱管に蓄えられた熱は、空気の対流によって大気中へ放熱するため、特に集熱管の周囲を真空構造とすることで、この集熱管から周囲への対流熱損失を小さくする工夫が試みられてきた。具体的には、集熱管の周囲を真空ガラス管などで覆い、真空構造を設ける手段が一般的であるが、真空ガラス管と集光板は伝導熱損失の理由から、真空ガラス管と集光板の間にスペースを設ける必要が生じ、集熱管と集光板の距離はより大きくなる傾向にある。
【0010】
しかしながら、集熱管と集光板の間に設けたスペースにより、集光板から集熱管への集光精度を低下させてしまう問題が生じてしまう。つまり、上記スペースにより、集光板から反射された太陽光線のうちいくらかは集熱管へ到達せず、集光段階における光エネルギーの減衰という問題が生じていた。
【0011】
また、集光板自体の集光精度を上げるためには、集光板の受光面(反射面)の形状を理想的な複合放物面(放物線形状部位およびインボリュート曲線形状部位)をW字形状に形成する必要があり、このように形成された集光板の形状を維持した状態で装置の枠部材に組み込むには、細心の注意が要求され、組立に多くの労力及びコストが嵩む等の問題もあった。
【0012】
この発明は、発明者等が上記事情を鑑みて鋭意研究してなされたもので、集熱管と集光板の間にスペースを設けても集光精度(集光板から反射された太陽光線の集熱管への到達度)の向上を図れるようにし、かつ、組立を容易に行えるようにした太陽光集光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、この発明は、集熱管付近に入光する太陽光線を上記集熱管に集中させて集熱管内を流通する熱媒体を温める太陽光集光装置であって、 上記集熱管に沿って設けられ、中央部に凹状嵌合部を有し、両側部が左右対称かつW字形状の複合放物面に形成された取付面を有する集光枠部材と、 複合放物曲線状の2つの集光板と、 上記凹状嵌合部に嵌合され、その際、上記両集光板の内側端部を上記集光枠部材との間で挟持するくさび状接続部材と、を具備し、 上記くさび状接続部材の受光表面に、該受光表面に入光される光線の入射角に対する反射角を小さくする凹凸形状部が形成されている、ことを特徴とする。この場合、上記くさび状接続部材の受光表面に形成される凹凸形状部は、受光表面に入光される光線の入射角に対する反射角を小さくする形状であれば、受光表面を粗面状に形成したものであってもよいが、上記凹凸形状部を断面三角波形状とし、上記集熱管の長手方向へ形成する方がよい。この場合、くさび状接続部材の受光表面は平坦状であってもよく、あるいは、緩やかな凹状であってもよい。
【0014】
このように構成することにより、集光枠部材の凹状嵌合部にくさび状接続部材を嵌合して集光板を挟持するので、集光枠部材の取付面に複合放物曲線状の集光板を取り付けることができる。また、くさび状接続部材の受光表面への太陽光線の入射角に対する反射角が小さくなるので、受光面から反射した太陽光線のうち集熱管に到達する割合を大きくすることができる。
【0015】
また、この発明において、上記くさび状接続部材の受光表面には光輝処理もしくは白色塗装(例えば、電着塗装)が施されている方が好ましい。この場合、例えば化学研磨や電解研磨等によって光輝処理を行うことができる。
【0016】
このように構成することにより、くさび状接続部材の受光面の反射率を大きくすることができる。
【0017】
また、この発明において、上記集光枠部材の幅方向の両端部に、上記集光板の外側端部を挿入する外側係止溝部を形成する方がよい。
【0018】
このように構成することにより、集光枠部材とくさび状接続部材とで内側端部が挟持された集光板の外側端部を集光枠部材に形成された外側係止溝によって保持することができる。
【0019】
また、この発明において、上記集光枠部材に設けられる凹状嵌合部の底部両側に凹状係止受け部を形成し、上記くさび状接続部材を、受光側片の両側に一対の側片を有する断面コ字状に形成すると共に、上記受光側片の両側部に上記集光板の内側端部を押さえる押圧翼片を形成し、上記両側片の先端部に、上記凹状係止受け部に係合可能な係止爪部を突設する構造とする方が好ましい。
【0020】
このように構成することにより、凹状嵌合部に設けられた凹状係止受け部と、くさび状接続部材の側片に設けられた係止爪部とを係合させた状態で、くさび状接続部材を凹状嵌合部に嵌合して、集光板を挟持保持することができる。
【0021】
また、この発明において、上記集光枠部材及びくさび状接続部材を、アルミニウム製押出形材にて形成する方が好ましい。
【0022】
このように構成することにより、集光枠部材及びくさび状接続部材の寸法精度を高めることができるので、長手方向に長い場合においても1種類の集光枠部材とくさび状接続部材によって集光板のスプリングバックや撓み変形を防止することができる。また、集光枠部材への集光板の組付け及び分解を容易にすることができると共に、リサイクル性の利点が得られる。
【0023】
加えて、この発明において、上記集光枠部材及びくさび状接続部材の端部に配設される側枠部材を更に具備し、上記側枠部材の上記集光枠部材及びくさび状接続部材と対向する面に、上記集光枠部材、くさび状接続部材及び集光板の端部に係合する係止保持部を形成してもよい。この場合、上記係止保持部としては、例えば、集光枠部材、くさび状接続部材及び集光板の端部に係合する複数の突起や、集光枠部材、くさび状接続部材及び集光板の端部の形状に縁取った溝部にて形成することができる。
【0024】
このように構成することにより、集光枠部材、くさび状接続部材及び集光板の全体の保持を確実にすることができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような顕著な効果が得られる。
【0026】
集光枠部材の中央部に形成された凹状嵌合部にくさび状接続部材を嵌合して2つの複合放物曲線状の集光板を挟持することにより、集光枠部材に形成された複合放物曲線状の取付面に複合放物曲線状の集光板を容易に取り付けることができる。
【0027】
また、くさび状接続部材の受光表面に形成される凹凸形状部により、受光表面における太陽光線の入射角に対する反射角が小さくなるので、受光面から反射した太陽光線のうち集熱管に到達する割合を大きくすることができる。したがって、集熱管と集光板の間にスペースを設けても集光精度(集光板から反射された太陽光線の集熱管への到達度)の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明に係る太陽光集光装置を示す概略斜視図である。
【図2】上記太陽光集光装置の要部を示す斜視図である。
【図3】上記太陽光集光装置の要部を示す断面図(a)、(a)のI部拡大図(b)及び(a)のII部拡大図(c)である。
【図4A】この発明における遮光板とくさび状接続部材における太陽光線が入射角0°の場合の反射角を示す概略側面図である。
【図4B】この発明における遮光板とくさび状接続部材における太陽光線が入射角10°の場合の反射角を示す概略側面図である。
【図4C】この発明における遮光板とくさび状接続部材における太陽光線が入射角20°の場合の反射角を示す概略側面図である。
【図4D】この発明における遮光板とくさび状接続部材における太陽光線が入射角30°の場合の反射角を示す概略側面図である。
【図5】この発明におけるくさび状接続部材を示す斜視図(a)及び端面を示す正面図(b)である。
【図6】この発明における側枠部材に設けられた係止保持部の異なる形態を示す概略斜視図である。
【図7】比較例1の集光板における太陽光線の異なる入射角の状態を示す説明図である。
【図8】比較例2の集光板における太陽光線の異なる入射角の状態を示す説明図である。
【図9】比較例3の集光板における太陽光線の異なる入射角の状態を示す説明図である。
【図10】本願発明の実施例の集光板における太陽光線の異なる入射角の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、この発明に係る太陽光集光装置の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
この発明に係る太陽光集光装置は、図1ないし図3に示すように、給水管4と給湯管5を挿入する矩形筒状の主枠2と、この主枠2の一方の側壁の下部から外方に延在する矩形状のベース板3とからなる本体1と、主枠2の側壁部に沿設される側枠部材6を介してベース板3の上方に並設される複数の集熱管7と、各集熱管7の下方に配設された集光枠部材10にくさび状接続部材20によって取り付けられ、集熱管付近に入光する太陽光線を反射して集熱管7に集中させる2つの集光板30とを具備している。
【0031】
上記集光枠部材10は、アルミニウム製(アルミニウム合金を含む)の押出形材にて形成されており、中央部に断面コ字状の凹状嵌合部11を有し、両側部が左右対称かつW字形状の複合放物面に形成された取付面12を有している。なお、取付面12を形成する複合放物面は、受光角度θの範囲内の光を集光するインボリュート曲線と放物曲線(CPC曲線)とを組み合わせてなる形状であり、受光した太陽光線を集熱管7に向けて最も効率的に反射させる形状である。
【0032】
上記凹状嵌合部11の底部両側には、上端に係止平坦面13aを有する凹状係止受け部13が形成されている。なお、凹状嵌合部11の裏面の中央部には、狭隘開口状のビスポケット14が形成されている。また、集光枠部材10の幅方向の両端部には、集光板30の外側端部を挿入する外側係止溝部15が形成されている。この場合、外側係止溝部15は、取付面12の上端から外方に屈曲する凹溝15aと凹溝15aの上端から取付面12側に屈曲する集光板押え片15bとで構成されている。
【0033】
上記くさび状接続部材20は、図5に示すように、アルミニウム製(アルミニウム合金を含む)の押出形材にて形成されており、受光側片21の両側に一対の側片22を有する断面コ字状に形成されると共に、受光側片21の両側部に集光板30の内側端部を押さえる押圧翼片23が形成され、両側片22の先端部に、凹状係止受け部13に係合可能な係止爪部24が突設されている。
【0034】
更に、くさび状接続部材20の受光側片21の表面すなわち受光表面には、受光表面に入光される光の入射角に対する反射角を小さくする凹凸形状部25が形成されている。この場合、凹凸形状部25は断面三角波形状とし、集熱管7の長手方向へ形成されている(図2,図3及び図5参照)。
【0035】
また、受光表面には光輝処理もしくは白色塗装が施されている。この場合、くさび状接続部材20が6000系などをはじめとするアルミニウム合金からなる場合、白色電着塗装が可能になる。処理方法は既存の技術であり、脱脂、エッチング処理等の前処理を施し、陽極酸化皮膜を形成した後、この皮膜の上に白色の着色顔料を含有したアクリル/メラミン樹脂のエマルジョンを電気泳導によって塗装し、焼付け硬化処理を行う。膜厚は10〜100μmが好ましい。その理由は、膜厚が100μmより大きくなると、くさび状接続部材20の受光表面の凹凸形状部25の凹凸面が平坦化してしまい、また、膜厚が10μmより薄すぎると、くさび状接続部材20の基材の状態が受光表面に反映するため、反射率が低下してしまうからである。6000系アルミニウム合金を使用すれば、強度・コストともに優れた部材となる。
【0036】
また、くさび状接続部材20が1000系をはじめとする高純系アルミニウムを使用する場合には、化学研磨や電解研磨による光輝処理を通じて、くさび状接続部材20の受光表面の反射率を大きくすることが可能になる。
【0037】
上記集光板30は、例えば厚さが0.3mmの光輝反射アルミニウム板にて形成されており、それぞれが集光枠部材10の取付面12と同様に複合放物面に形成されている。
【0038】
上記のように形成される2つの集光板30を集光枠部材10に取り付けるのは次のような手順で行う。まず、各集光板30の外側端部を集光枠部材10の外側係止溝部15に挿入した状態で、取付面12上に載置する。次に、くさび状接続部材20を集光枠部材10の凹状嵌合部11内に嵌合して、くさび状接続部材20の押圧翼片23と集光枠部材10の凹状嵌合部11の近傍の取付面12との間に集光板30の内側端部を挟持する。この状態で、くさび状接続部材20の側片22の先端に設けられた係止爪部24が凹状嵌合部11の凹状係止受け部13に係合(嵌合)して、集光板30がスプリングバックによって撓み変形するのを防止する。
【0039】
なお、集光枠部材10に取り付けられた集光板30のスプリングバックによる撓み変形を更に抑制するために、側枠部材6の集光枠部材10及びくさび状接続部材20と対向する面に、集光枠部材10、くさび状接続部材20及び集光板30の端部に係合する係止保持部40を形成してもよい。この場合、係止保持部40を、集光枠部材10、くさび状接続部材20及び集光板30の端部に係合する複数の突起41にて形成することができる(図6(a)参照)。また、複数の突起41に代えて、集光枠部材10、くさび状接続部材20及び集光板30の端部の形状に縁取った溝部42にて係止保持部40を形成してもよい(図6(b)参照)。
【0040】
ただし、この場合は、主枠2内の断熱性を低下させないように、溝部42などの隙間を埋める処理を施すことが好ましい。
【0041】
一方、集熱管7には、主枠2内に挿入された給水管4と給湯管5に接続する熱媒管(図示せず)が挿入されている。また、集熱管7は真空層を介してガラス製の真空外管8内に挿入されている。真空外管8内に挿入された集熱管7の基端部は、真空外管8と共に、側枠部材6に形成された取付孔6aを介して主枠2の側壁に設けられた取付孔(図示せず)に挿入された状態で取り付けられる(図6参照)。また、集熱管7及び真空外管8の先端部は、ベース板3に取り付けられた保持キャップ9によって保持されている。
【0042】
上記のように構成される実施形態の集光装置によれば、集光枠部材10の凹状嵌合部11にくさび状接続部材20を嵌合して集光板30を挟持することができるので、集光枠部材10の取付面12に複合放物曲線状の集光板30を簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0043】
また、くさび状接続部材20の受光表面に、太陽光線の入射角に対する反射角を小さくする凹凸形状部25(例えば、三角波形状)を形成するので、集光板30の受光面31から反射した太陽光線のうち集熱管7に到達する割合を大きくすることができる。すなわち、図4Aに示すように、受光角度θ=0°の時を例にとると、集光板30の受光面31の外側領域T30に入光される太陽光線Rが受光面31に反射してくさび状接続部材20の受光表面に照射される光線の反射角を凹凸形状部25(三角波形状)によって小さくして、集熱管7に到達させることができる。これにより、集光板30の受光面31から反射した太陽光線のうち集熱管7に到達する割合を大きくすることができる。
【0044】
なお、図4Aにおいて、中心領域T10に入光される太陽光線Rは、直接集熱管7に入光(照射)し、中心領域T10と外側領域T3との間の中間領域T20に入光される太陽光線Rは、集光板30の受光面31に入光して反射され、集熱管7に入光(照射)される。
【0045】
また、受光角度θ=10°の時は、図4Bに示すように、集光板30の受光面31の傾斜側(図の右側)の外側領域T31に入光される太陽光線Rが受光面31に反射してくさび状接続部材20の受光表面に照射される光線の反射角を凹凸形状部25(三角波形状)によって小さくして、集熱管7に到達させることができる。
【0046】
なお、中心領域T11に入光される太陽光線Rは、受光角度θ=0°の時に比べて傾斜側(図の右側)に移動して直接集熱管7に入光(照射)し、中心領域T11と外側領域T31との間の中間領域T21aと、集熱管7に対して中間領域T21aと反対側の領域T21bに入光される太陽光線Rは、集光板30の受光面31に入光して反射され、集熱管7に入光(照射)される。
【0047】
また、受光角度θ=20°、受光角度θ=30°の時は、それぞれ図4C、図4Dに示すように、集光板30の受光面31の傾斜側(図の右側)の外側領域T32,T33に入光される太陽光線Rが受光面31に反射してくさび状接続部材20の受光表面に照射される光線の反射角を凹凸形状部25(三角波形状)によって小さくして、集熱管7に到達させることができる。
【0048】
なお、中心領域T12,T13に入光される太陽光線Rは、受光角度θ=0°、受光角度θ=10°の時に比べて更に傾斜側(図の右側)に移動して直接集熱管7に入光(照射)し、中心領域T12, T13と外側領域T32,T33との間の中間領域T22a,T23aと、集熱管7に対して中間領域T22a,T23aと反対側の領域T22b,T23bに入光される太陽光線Rは、集光板30の受光面31に入光して反射され、集熱管7に入光(照射)される。
【実施例】
【0049】
次に、この発明に係る集光装置の集光精度を調べるために、集光板30における集熱管7の直下部の形状の異なる比較例1,2,3とこの発明に係る集光装置の実施例とを比較した実験について説明する。
【0050】
A.集光板の設計
<インボリュート曲線及びCPC曲線の軌跡について>
集熱管7の中心部を原点とし、
集熱管半径:Ra
最大許容半角:θmax
真空外管半径:R0
とすると、
集光板形状は、中心角θの領域によって、次の2つの部位で構成される。
【0051】
(i)インボリュート曲線部位 (θ≦π/2+θmax)
(ii)CPC曲線部位 (π/2+θmax<θ≦3π/2−θmax)
この時の集光板形状を形成する(X,Y)座標は、共に、式(1)、(2)により決定されることが周知である。
【0052】
X=Ra(sinθ−ρcosθ) (1)
Y=−Ra(cosθ−ρsinθ) (2)
ただし、(i)のρ=θ、
(ii)のρ={π/2+θmax +θ−cos(θ−θmax)} / {1+sin(θ−θmax)}
なお、本実施においては、
Ra=18mm、許容半角θmax=34°、R0=23.5mm、
真空外管8とくさび状接続部材20との距離は2.0mmとし、
許容半角θmaxは、集光構造に入射した太陽光線をカウントする範囲を示す指標である。すなわち、集光板30の開口幅で決まる最大受入半角である許容半角θmaxは、各季節の9時〜15時30分までの太陽光線を受光できるように設計する。
【0053】
<前提条件>
設置場所:静岡県静岡市蒲原町(緯度35度、東経138.6度)
集光装置の対地角度:45度
の地域において、9時〜15時半頃に入射する太陽光線を、春分、夏至、秋分、冬至でカウントしたところ表1に示す値が得られた。
【表1】

【0054】
上記表1より、当該地域の年間の最高南中高度と最低入射角の差を求めると、
78.8°−10.8°=68.0°となり、
入射全角の範囲(2θmax)は68.0°となる。
【0055】
B.集光精度について
次に、上記条件のもとで比較例1,2,3と本発明の実施例の集光精度の比較について説明する。
【0056】
<比較例1>
集光板30Aの集熱管7の直下部を集熱管7に近づける(図7参照)
<比較例2>
集光板30Bの集熱管7の直下部を平坦状にする(図8参照)
<比較例3>
2つの集光板30Cを接続する接続部材20Cの集熱管7の直下の受光表面を粗面化しない状態にする(図9参照)
<実施例>
集光枠部材10:6063合金
くさび状接続部材20:6063合金
くさび状接続部材20の受光表面(凹凸形状部25)の幅:12mm、凹凸角度:135°(図5(b)参照)
集光板30:0.3t-光輝反射板
上記のように構成された比較例1,2,3と本発明の実施例の集光構造において、受光角度が、0°,5°,10°,15°,20°,23°,30°及び33°ごとの集光精度を1.00としたときの、相対集光精度を比較したところ、表2に示すような結果が得られた。なお、真空外管8のガラスの屈折率は考慮しないものとする。
【表2】

【0057】
上記表2から判るように、比較例1は平均集光精度が0.90、比較例2は平均集光精度が0.89、比較例3は平均集光精度が0.92であったが、実施例の平均集光精度は0.94であった。
【符号の説明】
【0058】
6 側枠部材
7 集熱管
10 集光枠部材
11 凹状嵌合部
12 取付面
13 凹状係止受け部
15 外側係止溝部
20 くさび状接続部材
21 受光側片
22 側片
23 押圧翼片
24 係止爪部
25 凹凸形状部
30 集光板
31 受光面
40 係止保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集熱管付近に入光する太陽光線を上記集熱管に集中させて集熱管内を流通する熱媒体を温める太陽光集光装置であって、
上記集熱管に沿って設けられ、中央部に凹状嵌合部を有し、両側部が左右対称かつW字形状の複合放物面に形成された取付面を有する集光枠部材と、
複合放物曲線状の2つの集光板と、
上記凹状嵌合部に嵌合され、その際、上記両集光板の内側端部を上記集光枠部材との間で挟持するくさび状接続部材と、を具備し、
上記くさび状接続部材の受光表面に、該受光表面に入光される光線の入射角に対する反射角を小さくする凹凸形状部が形成されている、
ことを特徴とする太陽光集光装置。
【請求項2】
請求項1記載の太陽光集光装置において、
上記くさび状接続部材の受光表面に形成される上記凹凸形状部は、断面三角波形状とし、上記集熱管の長手方向へ形成されている、ことを特徴とする太陽光集光装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の太陽光集光装置において、
上記くさび状接続部材の受光表面には光輝処理もしくは白色塗装が施されている、ことを特徴とする太陽光集光装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の太陽光集光装置において、
上記集光枠部材の幅方向の両端部に、上記集光板の外側端部を挿入する外側係止溝部が形成されている、ことを特徴とする太陽光集光装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の太陽光集光装置において、
上記凹状嵌合部の底部両側に凹状係止受け部が形成され、
上記くさび状接続部材は、受光側片の両側に一対の側片を有する断面コ字状に形成されると共に、上記受光側片の両側部に上記集光板の内側端部を押さえる押圧翼片が形成され、上記両側片の先端部に、上記凹状係止受け部に係合可能な係止爪部が突設されている、
ことを特徴とする太陽光集光装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の太陽光集光装置において、
上記集光枠部材及びくさび状接続部材は、アルミニウム製押出形材にて形成されている、ことを特徴とする太陽光集光装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の太陽光集光装置において、
上記集光枠部材及びくさび状接続部材の端部に配設される側枠部材を更に具備し、上記側枠部材の上記集光枠部材及びくさび状接続部材と対向する面に、上記集光枠部材、くさび状接続部材及び集光板の端部に係合する係止保持部が形成されている、ことを特徴とする太陽光集光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−190984(P2011−190984A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57323(P2010−57323)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(502444733)日軽金アクト株式会社 (107)
【出願人】(000250432)理研軽金属工業株式会社 (89)