説明

太陽熱利用冷暖房システム

【課題】エネルギーの無駄を無くし、太陽熱集熱器によって加熱した熱媒の熱を有効に活用できるようにする。
【解決手段】太陽熱によって熱媒を加熱する太陽熱集熱器2と、この太陽熱集熱器2によって加熱された熱媒の熱を受け取る熱交換器を一部に備えたヒートポンプ3と、このヒートポンプ3を通る熱媒の熱を再生用熱源として利用し冷温水を生成する吸収式冷温水機4と、前記ヒートポンプ3を通る熱媒と熱交換して温水を生成する暖房用熱交換器5とから構成され、冷房運転時には前記吸収式冷温水機4によって生成された冷水を冷房負荷に使用し、暖房運転時には前記吸収式冷温水機4によって生成された温水及び/又は前記暖房用熱交換器5によって生成された温水を暖房負荷に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能エネルギーである太陽熱を利用した冷暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示されるように、従来より、太陽熱を利用した冷暖房システム50として、太陽熱によって熱媒を加熱する太陽熱集熱器51と、この太陽熱集熱器51によって加熱された熱媒の熱を再生用熱源として利用し冷温水を生成する吸収式冷温水機52と、前記太陽熱集熱器51によって加熱された熱媒と熱交換して温水を生成する暖房用熱交換器53とから構成され、冷房運転時には前記吸収式冷温水機52によって生成された冷水を冷房負荷に使用し、暖房運転時には前記吸収式冷温水機52によって生成された温水及び/又は前記暖房用熱交換器53によって生成された温水を暖房負荷に使用したものが知られている(例えば、下記特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−257777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、太陽熱のような自然エネルギーは、天候や気候に大きく影響を受けやすく、天気が悪いときには太陽熱集熱器によって生成される温水の温度が十分に上昇しないことがある。このような低い温度の温水では吸収式冷温水機の再生が十分に行われず効率が低下するため、この温水を再生用熱源として利用することを停止し、別途吸収式冷温水機に設備したガスボイラなどによって吸収液を直接加熱するバックアップ運転が行われていた。
【0005】
しかしながら、このような天候や気候が悪い条件でも、太陽熱集熱器ではある程度の加熱能力を有しており、所定の温度に達しないというだけで太陽熱集熱器で加熱した温水の利用を停止するのはエネルギーの無駄であった。
【0006】
そこで本発明の主たる課題は、エネルギーの無駄を無くし、太陽熱集熱器によって加熱した熱媒の熱を有効に活用できる冷暖房システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、太陽熱によって熱媒を加熱する太陽熱集熱器と、この太陽熱集熱器によって加熱された熱媒の熱を受け取る熱交換器を一部に備えたヒートポンプと、このヒートポンプを通る熱媒の熱を再生用熱源として利用し冷温水を生成する吸収式冷温水機と、前記ヒートポンプを通る熱媒と熱交換して温水を生成する暖房用熱交換器とから構成され、冷房運転時には前記吸収式冷温水機によって生成された冷水を冷房負荷に使用し、暖房運転時には前記吸収式冷温水機によって生成された温水及び/又は前記暖房用熱交換器によって生成された温水を暖房負荷に使用することを特徴とする太陽熱利用冷暖房システムが提供される。
【0008】
上記請求項1記載の発明では、太陽熱集熱器と吸収式冷温水機との間に、太陽熱集熱器によって加熱された熱媒の熱を受け取る熱交換器を一部に備えたヒートポンプが設けられているため、天候が悪く太陽熱集熱器によって加熱した温水の温度が吸収式冷温水機の再生用熱源として十分な温度に達していない場合でも、前記ヒートポンプによって補助的に加熱してから吸収式冷温水機側に供給しているため、太陽熱集熱器によって加熱した熱媒のエネルギーを無駄にすることなく、この熱を有効に活用できるようになる。
【0009】
請求項2に係る本発明として、前記太陽熱集熱器を通る熱媒及び前記ヒートポンプを通る熱媒としてそれぞれ水が用いられ、前記ヒートポンプは熱媒を蒸発させる蒸発器とこの蒸発した水蒸気を圧縮する圧縮機とこの圧縮した熱媒を凝縮させる凝縮器とから構成され、前記太陽熱集熱器で加熱された熱媒が前記凝縮器に供給され、この凝縮器が前記熱交換器として作用する流路が形成されるとともに、前記吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒が前記蒸発器に供給される流路が形成され、
前記圧縮機を停止することにより、前記凝縮器において前記太陽熱集熱器で加熱された熱媒をそのまま通過させ吸収式冷温水機側に供給するとともに、前記蒸発器において前記吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒をそのまま通過させ前記太陽熱集熱器に供給する流路と、前記圧縮機を運転することにより、前記凝縮器において前記太陽熱集熱器で加熱された熱媒をさらに加熱して前記吸収式冷温水機側に供給するとともに、前記蒸発器において前記吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒を冷却して前記太陽熱集熱器に供給する流路とに切換可能とされている請求項1記載の太陽熱利用型冷暖房システムが提供される。
【0010】
上記請求項2記載の発明では、前記太陽熱集熱器を通る熱媒及び前記ヒートポンプを通る熱媒としてそれぞれ水を用いるとともに、ヒートポンプとして蒸発器、圧縮機、凝縮器で構成したものを用い、太陽熱集熱器で加熱された熱媒が凝縮器に供給され、吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒が蒸発器に供給される流路構成としている。なお、本冷暖房システムでは、ヒートポンプの凝縮器が太陽熱集熱器によって加熱された熱媒の熱を受け取る前記熱交換器として作用している。
【0011】
かかる冷暖房システムでは、天候条件が良く、太陽熱集熱器によって加熱された熱媒の温度が吸収式冷温水機の再生用熱源として十分な温度に達している場合、前記圧縮機を停止することにより、前記凝縮器において前記太陽熱集熱器で加熱された熱媒をそのまま通過させ吸収式冷温水機側に供給するとともに、前記蒸発器において前記吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒をそのまま通過させ前記太陽熱集熱器に供給する。一方、天候条件が悪く、太陽熱集熱器によって加熱された熱媒の温度が吸収式冷温水機の再生用熱源として十分な温度でない場合、前記圧縮機を運転することにより、前記凝縮器において前記太陽熱集熱器で加熱された熱媒をさらに加熱して前記吸収式冷温水機側に供給するとともに、前記蒸発器において前記吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒を冷却して前記太陽熱集熱器に供給する。このように、熱媒の温度によって圧縮機の運転・停止を切り換えることで、天候条件にかかわらず、吸収式冷温水機の再生用熱源として利用可能となるため、エネルギーの無駄がなくなり、太陽熱集熱器によって加熱した熱媒の熱を有効に活用できるようになる。
【0012】
請求項3に係る本発明として、前記太陽熱集熱器を通る熱媒及び前記ヒートポンプを通る熱媒としてそれぞれ水が用いられ、前記ヒートポンプは熱媒を蒸発させる蒸発器とこの蒸発した水蒸気を圧縮する圧縮機とこの圧縮した熱媒を凝縮させる凝縮器とから構成され、
前記太陽熱集熱器で加熱された熱媒が前記凝縮器に供給される流路が形成されるとともに、この流路の途中から分岐して前記蒸発器に向かう分岐路が形成され、且つ前記吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒が前記蒸発器に供給される流路が形成されるとともに、この流路の途中から分岐して前記凝縮器に向かう分岐路が形成され、これらの分岐点と蒸発器又は凝縮器との間にはそれぞれバルブが設けられ、
前記バルブの開閉操作により、前記太陽熱集熱器で加熱された熱媒が前記凝縮器に供給され、この凝縮器が前記熱交換器として作用するとともに、前記吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒が前記蒸発器に供給される流路と、前記太陽熱集熱器で加熱された熱媒が前記蒸発器に供給され、この蒸発器が前記熱交換器として作用するとともに、前記吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒が前記凝縮器に供給される流路とに切換可能とされている請求項1記載の太陽熱利用型冷暖房システムが提供される。
【0013】
上記請求項3記載の発明では、太陽熱集熱器と凝縮器とを接続する流路の間に蒸発器に向かう分岐路を形成するとともに、吸収式冷温水機側と蒸発器とを接続する流路の間に凝縮器に向かう分岐路を形成し、これらの分岐点と蒸発器又は凝縮器との間にそれぞれバルブを設けている。そして、本冷暖房システムでは、天候条件によって、太陽熱集熱器によって加熱された熱媒が吸収式冷温水機の再生用熱源として十分な温度に達している場合、又は必ずしも十分ではないが比較的高いある一定の温度範囲に達している場合、バルブの開閉操作により、太陽熱集熱器で加熱された熱媒が凝縮器に供給されるとともに、吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒が蒸発器に供給される流路に切り換える。一方、天候条件がかなり悪く熱媒の温度が前記一定範囲の温度にも達しない場合、バルブの開閉操作により、太陽熱集熱器で加熱された熱媒が蒸発器に供給されるとともに、吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒が蒸発器に供給される流路に切り換える。これによって、天候条件による太陽熱集熱器での加熱不足をヒートポンプで十分に補うことができるようになる。
【0014】
請求項4に係る本発明として、前記太陽熱集熱器の出口側であって前記ヒートポンプの熱交換器の入口側に、前記太陽熱集熱器を通過した熱媒と外気との熱交換を行い該熱媒を加熱する第2熱交換器が備えられ、前記太陽熱集熱器を通過した熱媒の温度が外気温度より低い場合、前記第2熱交換器により前記太陽熱集熱器を通過した熱媒と外気との熱交換が行われるようにしている請求項1〜3いずれかに記載の太陽熱利用型冷暖房システムが提供される。
【0015】
上記請求項4記載の発明は、天候条件が悪く太陽熱集熱器で熱媒が十分に加熱されず、太陽熱集熱器を通過した熱媒の温度が外気温度より低い場合、太陽熱集熱器を通過した熱媒と外気との熱交換を行う第2熱交換器により熱媒を加熱するようにしたものである。
【0016】
請求項5に係る本発明として、前記吸収式冷温水機には、再生用熱源として別途加熱手段が設けられている請求項1〜4いずれかに記載の太陽熱利用冷暖房システムが提供される。
【0017】
上記請求項5記載の発明では、吸収式冷温水機の再生用熱源として別途加熱手段を設けることにより、天候条件が悪く太陽熱集熱器及びヒートポンプでほとんど加熱されない場合、加熱手段によって吸収式冷温水機の吸収液を直接加熱した方が効率がよい場合があるので、このような場合に前記加熱手段にによる加熱に切換可能としている。また、前記加熱手段を併用することもできる。
【0018】
請求項6に係る本発明として、前記ヒートポンプは、自然冷媒を用いた自然冷媒ヒートポンプである請求項1〜5いずれかに記載の太陽熱利用冷暖房システムが提供される。
【0019】
上記請求項6記載の発明では、ヒートポンプとして、自然冷媒を用いることにより、ノンフロンの冷暖房システムとすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上詳説のとおり本発明によれば、エネルギーの無駄を無くし、太陽熱集熱器によって加熱した熱媒の熱を有効に活用できる冷暖房システムが提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る冷暖房システム1のシステム構成図である。
【図2】他の形態に係る冷暖房システム1のシステム構成図である。
【図3】他の形態に係る冷暖房システム1の一部を示すシステム構成図(その1)である。
【図4】他の形態に係る冷暖房システム1の一部を示すシステム構成図(その2)である。
【図5】他の形態に係る冷暖房システム1の一部を示すシステム構成図(その3)である。
【図6】他の形態に係る冷暖房システム1の一部を示すシステム構成図(その4)である。
【図7】従来の冷暖房システム50を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0023】
図1に示されるように、本発明に係る太陽熱利用型冷暖房システム1(以下、「冷暖房システム1」という。)は、太陽熱によって熱媒を加熱する太陽熱集熱器2と、この太陽熱集熱器2によって加熱された熱媒の熱を受け取る熱交換器を一部に備えたヒートポンプ3と、このヒートポンプ3を通る熱媒の熱を再生用熱源として利用し冷温水を生成する吸収式冷温水機4と、ヒートポンプ3を通る熱媒と熱交換して温水を生成する暖房用熱交換器5とから構成されている。
【0024】
かかる冷暖房システム1では、冷房運転時には吸収式冷温水機4によって生成された冷水を冷房負荷に使用し、暖房運転時には吸収式冷温水機4によって生成された温水及び/又は暖房用熱交換器5によって生成された温水を暖房負荷に使用している。
【0025】
太陽熱集熱器2としては、平板形、真空ガラス管形、ヒートパイプ形など種々の形式の集熱器によって構成されたものを使用することができ、集熱器と貯湯槽が一体となった太陽熱温水器であってもよい。
【0026】
ヒートポンプ3は、低温側から高温側へ熱を移動させる装置である。具体的には、少なくとも蒸発器、圧縮機、凝縮器を備え、熱媒がこれらを順に巡ることにより、蒸発器及び凝縮器で外部と熱交換を行うものとすることができる。このヒートポンプ3の熱媒としては、フロンなどの人工的な冷媒を用いてもよいが、水、二酸化炭素、アンモニア、イソブタン、プロパンの単体又はこれら複数の混合物からなる自然冷媒を用いてノンフロンシステムとすることが地球環境破壊防止の観点から好ましい。
【0027】
このヒートポンプ3を通る熱媒の回路と、前記太陽熱集熱器2を通る熱媒の回路とは、それぞれ独立して設けられ、それぞれ種類の異なる熱媒を用いたものとすることもできるが、後段で詳述するように、両回路の熱媒に水を用い、両方の回路を共通して循環する回路とすることが好ましい。
【0028】
吸収式冷温水機4は、少なくとも蒸発器、吸収器、再生器、凝縮器を備え、これらを吸収液が循環して、前記吸収器で吸収液に水蒸気を吸収し、前記再生器で吸収液が加熱され吸収液に吸収された水分を蒸発させ吸収液を再生し、前記蒸発器で冷水を生成し、前記凝縮器で温水を生成するものである。この吸収式冷温水機4の再生器には、吸収液を加熱して吸収液に吸収された水分を蒸発させる加熱手段を設けることができ、ヒートポンプ3を通過した熱媒の温度が再生用熱源として十分な温度に達していない場合に、該加熱手段による加熱を併用するか、又は該加熱手段による加熱に切り換えるようにすることができる。
【0029】
暖房用熱交換器5は、ヒートポンプ3を通る熱媒と熱交換をして温水を生成するものであり、温水を直接加熱するための熱源機器などを備えていてもよい。
【0030】
次に、本冷暖房システム1の性能について具体的に説明する。先ずはじめにヒートポンプ3の成績係数(COP)について説明すると、例えば、ヒートポンプ3として自然冷媒(CO)ヒートポンプを使用した場合、太陽熱集熱器2を通過した熱媒の温度(熱源水温度)が50℃、ヒートポンプ3を通過した熱媒の温度(温水出口温度)を80℃とすると(一般に吸収式冷温水機の熱源水温度は80℃以上である。)、ヒートポンプ3のCOPは10を超え、熱効率が良好な冷暖房システムが得られるようになる。
【0031】
一方、一般的な吸収式冷温水機では、再生器でガス焚きによって吸収液を加熱して再生する場合のCOP=1.5、再生器に温水を通水して吸収液を加熱して再生する場合のCOP=0.8程度となることが知られている。従って、本冷暖房システム1のように前述のCOPが10を超えるヒートポンプを使用した場合、1次エネルギー基準COPは、10(ヒートポンプ3のCOP)×0.8(吸収式冷温水機4のCOP)×0.38(電力の発電効率を38%とした場合)=3.04となり、一般的なガス焚きの場合のCOP=1.5を大きく上回ることができる。また、一般的なガス焚きの場合のCOP=1.5を上回るヒートポンプのCOPを逆算すると、COP=1.5/0.8/0.38=4.93以上となる。従って、ヒートポンプ3がCOP=4.93以上の性能を備えていれば、吸収式冷温水機4の再生用熱源をガス焚きとするより効率が良くなる。
【0032】
ヒートポンプ3としては、例えば、温排水から熱エネルギーを回収して加熱する水熱源COヒートポンプや、冷媒にHFC−134aを使用した排熱回収型の温水ヒートポンプなど、市販されているヒートポンプを使用することができ、これにより本冷暖房システム1を高効率化させることができる。これらのヒートポンプは、例えば、温水出口温度を80℃とした場合、熱源水温度が50℃、60℃、70℃のときのCOPはそれぞれ5、6、7程度と非常に高い値となる。
【0033】
ところで、図2に示されるように、太陽熱集熱器2の出口側であってヒートポンプ3の入口側に、太陽熱集熱器2を通過した熱媒と外気との熱交換を行い、該熱媒を加熱する第2熱交換器6を配設しておき、天候により太陽熱集熱器2を通過した熱媒の温度が外気温度より低い場合には、太陽熱集熱器2を通過した熱媒が第2熱交換器6を通る流路に切り換え、第2熱交換器6において太陽熱集熱器2を通過した熱媒と外気との熱交換を行い、熱媒の加熱を行うことが好ましい。この第2熱交換器6は、熱媒の沸騰防止のために設置する放熱器を利用することができる。
【0034】
次に、他の形態に係る冷暖房システム1について、図3〜図5に基づいて説明する。図3〜図5に示される冷暖房システム1は、太陽熱集熱器2を通る熱媒及びヒートポンプ3を通る熱媒としてそれぞれ水を用い、太陽熱集熱器2を通る回路とヒートポンプ3を通る回路とを接続して、熱媒が太陽熱集熱器2及びヒートポンプ3を共通して通るようにしたものである。ここで、ヒートポンプ3は、熱媒を蒸発させる蒸発器10と、この蒸発した水蒸気を圧縮する圧縮機11と、この圧縮した熱媒を凝縮させる凝縮器12とから構成され、各機器を接続する流路及び凝縮器12に溜まった熱媒の一部を蒸発器10に戻す流路が形成されている。また、太陽熱集熱器2で加熱された熱媒が凝縮器12に供給される流路と、凝縮器12に溜まった熱媒が吸収式冷温水機4側に供給される流路と、吸収式冷温水機4側から戻ってきた熱媒が蒸発器10に供給される流路と、蒸発器10に溜まった熱媒が太陽熱集熱器2に供給される流路とが形成されている。更に、凝縮器12から吸収式冷温水機4側に向かう流路の途中に熱媒ポンプ13が設けられるとともに、蒸発器10から太陽熱集熱器2に向かう流路の途中に熱媒ポンプ14が設けられている。
【0035】
かかる冷暖房システム1では、図3に示されるように、天候条件が良く、太陽熱集熱器2によって加熱された熱媒の温度が吸収式冷温水機4の再生用熱源として十分な温度(例えば80℃以上)に達している場合、圧縮機11を停止した状態で、凝縮器12において太陽熱集熱器2で加熱された熱媒をそのまま通過させ、吸収式冷温水機4側に供給するとともに、蒸発器10において吸収式冷温水機4側から戻ってきた熱媒をそのまま通過させ、太陽熱集熱器2に供給するようにする。一方、図4に示されるように、天候条件が悪く、太陽熱集熱器2によって加熱された熱媒の温度が吸収式冷温水機4の再生用熱源として必ずしも十分な温度ではないが比較的高いある一定範囲の温度(例えば60℃以上80℃未満)に達している場合、圧縮機11を運転した状態で、凝縮器12において太陽熱集熱器2で加熱された熱媒をさらに加熱してから吸収式冷温水機4側に供給するとともに、蒸発器10において吸収式冷温水機4側から戻ってきた熱媒を冷却して太陽熱集熱器2に供給するようにする。
【0036】
このように、熱媒の温度によって圧縮機11の運転・停止を切り換えることで、天候条件にかかわらず、吸収式冷温水機4の再生用熱源として利用できるようになり、エネルギーの無駄がなくなり、太陽熱集熱器2によって加熱した熱媒の熱を有効に活用できるようになる。
【0037】
さらに天候条件が悪く、太陽熱集熱器2を通過した熱媒が前述の一定範囲の温度(例えば60℃以上80℃未満)にも達しない場合、図5及び図6に示されるように、配管系を切り換えるシステムとすることが有効である。図5及び図6に示されるシステムでは、太陽熱集熱器2で加熱された熱媒が凝縮器12に供給される流路の途中から分岐して蒸発器10に向かう分岐路が形成されるとともに、吸収式冷温水機4側から戻ってきた熱媒が蒸発器10に供給される流路の途中から分岐して凝縮器12に向かう分岐路が形成され、且つこれらの分岐点と蒸発器10又は凝縮器12との間にそれぞれバルブ15〜18が設けられている。
【0038】
従って、太陽熱集熱器2を通過した熱媒の温度が吸収式冷温水機4の再生用熱源として十分な場合、又は必ずしも十分な温度ではないが比較的高いある一定範囲の温度に達している場合、図5に示されるように、バルブ15を開、バルブ16を閉、バルブ17を開、バルブ18を開とすることにより、太陽熱集熱器2で加熱された熱媒が凝縮器12に供給されるとともに、吸収式冷温水機4側から戻ってきた熱媒が蒸発器10に供給される流路に切り換えることができる。一方、太陽熱集熱器2を通過した熱媒が前述の一定範囲の温度にも満たない場合、図6に示されるように、バルブ15を閉、バルブ16を開、バルブ17を閉、バルブ18を閉とすることにより、太陽熱集熱器2で加熱された熱媒が蒸発器10に供給されるとともに、吸収式冷温水機4側から戻ってきた熱媒が凝縮器12に供給される流路に切り換えることができる。
【0039】
〔他の形態例〕
上記形態例では、冷温水の生成用として吸収式冷温水機4を使用していたが、これに代えてシリカゲル等のデシカント剤を内蔵した吸着式冷温水機を用いても良い。
【符号の説明】
【0040】
1…太陽熱利用型冷暖房システム、2…太陽熱集熱器、3…ヒートポンプ、4…吸収式冷温水機、5…暖房用熱交換器、6…第2熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽熱によって熱媒を加熱する太陽熱集熱器と、この太陽熱集熱器によって加熱された熱媒の熱を受け取る熱交換器を一部に備えたヒートポンプと、このヒートポンプを通る熱媒の熱を再生用熱源として利用し冷温水を生成する吸収式冷温水機と、前記ヒートポンプを通る熱媒と熱交換して温水を生成する暖房用熱交換器とから構成され、冷房運転時には前記吸収式冷温水機によって生成された冷水を冷房負荷に使用し、暖房運転時には前記吸収式冷温水機によって生成された温水及び/又は前記暖房用熱交換器によって生成された温水を暖房負荷に使用することを特徴とする太陽熱利用冷暖房システム。
【請求項2】
前記太陽熱集熱器を通る熱媒及び前記ヒートポンプを通る熱媒としてそれぞれ水が用いられ、前記ヒートポンプは熱媒を蒸発させる蒸発器とこの蒸発した水蒸気を圧縮する圧縮機とこの圧縮した熱媒を凝縮させる凝縮器とから構成され、前記太陽熱集熱器で加熱された熱媒が前記凝縮器に供給され、この凝縮器が前記熱交換器として作用する流路が形成されるとともに、前記吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒が前記蒸発器に供給される流路が形成され、
前記圧縮機を停止することにより、前記凝縮器において前記太陽熱集熱器で加熱された熱媒をそのまま通過させ吸収式冷温水機側に供給するとともに、前記蒸発器において前記吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒をそのまま通過させ前記太陽熱集熱器に供給する流路と、前記圧縮機を運転することにより、前記凝縮器において前記太陽熱集熱器で加熱された熱媒をさらに加熱して前記吸収式冷温水機側に供給するとともに、前記蒸発器において前記吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒を冷却して前記太陽熱集熱器に供給する流路とに切換可能とされている請求項1記載の太陽熱利用型冷暖房システム。
【請求項3】
前記太陽熱集熱器を通る熱媒及び前記ヒートポンプを通る熱媒としてそれぞれ水が用いられ、前記ヒートポンプは熱媒を蒸発させる蒸発器とこの蒸発した水蒸気を圧縮する圧縮機とこの圧縮した熱媒を凝縮させる凝縮器とから構成され、
前記太陽熱集熱器で加熱された熱媒が前記凝縮器に供給される流路が形成されるとともに、この流路の途中から分岐して前記蒸発器に向かう分岐路が形成され、且つ前記吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒が前記蒸発器に供給される流路が形成されるとともに、この流路の途中から分岐して前記凝縮器に向かう分岐路が形成され、これらの分岐点と蒸発器又は凝縮器との間にはそれぞれバルブが設けられ、
前記バルブの開閉操作により、前記太陽熱集熱器で加熱された熱媒が前記凝縮器に供給され、この凝縮器が前記熱交換器として作用するとともに、前記吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒が前記蒸発器に供給される流路と、前記太陽熱集熱器で加熱された熱媒が前記蒸発器に供給され、この蒸発器が前記熱交換器として作用するとともに、前記吸収式冷温水機側から戻ってきた熱媒が前記凝縮器に供給される流路とに切換可能とされている請求項1記載の太陽熱利用型冷暖房システム。
【請求項4】
前記太陽熱集熱器の出口側であって前記ヒートポンプの熱交換器の入口側に、前記太陽熱集熱器を通過した熱媒と外気との熱交換を行い該熱媒を加熱する第2熱交換器が備えられ、前記太陽熱集熱器を通過した熱媒の温度が外気温度より低い場合、前記第2熱交換器により前記太陽熱集熱器を通過した熱媒と外気との熱交換が行われるようにしている請求項1〜3いずれかに記載の太陽熱利用型冷暖房システム。
【請求項5】
前記吸収式冷温水機には、再生用熱源として別途加熱手段が設けられている請求項1〜4いずれかに記載の太陽熱利用冷暖房システム。
【請求項6】
前記ヒートポンプは、自然冷媒を用いた自然冷媒ヒートポンプである請求項1〜5いずれかに記載の太陽熱利用冷暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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