説明

太陽電池セルおよび太陽電池モジュール

【課題】宇宙環境における、耐熱性および耐冷性、その熱衝撃に対する耐性などの、耐環境性能に優れた太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の太陽電池セルは、太陽電池セルの受光面側の表面にシリコーン樹脂層、またはシリコーン樹脂および金属合金薄膜が設けられ、太陽電池セルの受光面と反対側の面に芯材からなる支持体層が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セルに関し、特に、フレキシブル性のある太陽電池セルを用いた太陽電池モジュールに関連する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル性を有する従来の技術に基づいた太陽電池セルの一例を図7および図8に示す。半導体基板上にエピタキシャル成長させた後、半導体基板とエピタキシャル成長された素子層を分離することにより作成した少なくとも1つの層がエピタキシャル成長された層厚が50μm以下で、少なくとも1つ以上のpn接合を持つ単結晶薄膜層76の面上にn電極パッド77が形成され、その反対の面上には電極または半導体層を支持するための保持材料として、100μm以下の金属薄膜73が形成されている。また、n電極パッド77が形成されている面側には、金属薄膜73より半導体層のpn接合を介さずに電気的に接続しているp電極パッド74が形成されている。この光電変換素子を他の回路もしくは別の光電変換素子へ電気的に接続するためにそれぞれの電極パッド74,77に対してインターコネクタ75,79がパラレルギャップ溶接等により電気的に接続されている。
【0003】
図7および図8に示す光電変換素子である太陽電池セルは、半導体層が極薄膜であるため軽量の上にフレキシブル性に富むという特徴を有している。また、場合によってはこの光電変換素子はセル裏面に保護用のポリイミド等の樹脂フィルムが接着されている。太陽電池モジュールを作製する際には複数の太陽電池セルを直列または並列に接続し、保護素子としてのバイパスダイオードを太陽電池セルに並列に接続して透明フィルム80およびシリコーン樹脂78等の接着剤により封止を行なう。
【0004】
従来の既に汎用されているフレキシブル性のない太陽電池モジュールは、フレキシブル性のない太陽電池セルを用いるとともに、硬いガラス板でその強度を維持し、そのガラスと太陽電池セルの熱膨張係数の違いなどの歪は、その間に設けられたEVAなどの弾力性をもつ固形樹脂材で吸収させていた。しかしながら大きな歪については十分に緩和されることは無く、大きな歪を加えると、場合によっては太陽電池セルが割れてしまう場合がある。また別の問題として、経時変化による劣化が挙げられる。通常、使用年数が多くなるに従い、ガラスとセルの間の樹脂は紫外線などの環境によって劣化し、色素沈着を起こすことによって、全体の効率を落としていく。一方、フレキシブル性のある太陽電池セルやそれを用いたモジュールの場合には、太陽電池セルとそれを覆って保護するフィルム自体が、本質的にフレキシブルであるため、元々歪がたまりにくい構造ではあるが、曲げた時に生じるその部材の変形に伴う位置のずれが、フレキシブルセルに歪として加えられる。また、これらの熱膨張係数の違いによる歪も小さくは無く、これらも歪として太陽電池セルに加えられる。
【0005】
この他に、太陽電池セルの表面を透明フィルムで覆う方法も幾つか提案されており、例えば特開2000−174296号公報(特許文献1)のような、透明フィルムとEVAフィルムとを組み合わせて用いた形も報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−174296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなフレキシブル性を有する太陽電池セルまたは太陽電池モジュールは、運搬容易性などの点から宇宙環境での使用が検討されている。しかしながら、フレキシブル性を維持しながら耐宇宙環境性能を満たすようなフレキシブル太陽電池セル用カバーフィルムは現在見つかっておらず、フレキシブル性を有する太陽電池セルを宇宙用として実現するために、大きな障害となっている。特に、太陽電池セルの受光面を保護する透過性のフィルムは、発電のために避けることが出来ない紫外線の照射と、実質的に避けることが出来ない放射線の照射の両方に対して耐性を持っていなければならないが、有機フィルムの分子構造の特徴上、それらに対して完全に耐性のある有機フィルムは存在していない。例えば、紫外線を全く吸収しないような紫外線に強い有機フィルムは、放射線によって分子間の結合が切られやすく、放射線によって膜形状を維持できなくなったりする。逆に、複数の結合を持つことによって分子間の結合が切れにくくなっている有機フィルムは、紫外線を吸収しやすく、紫外線によって膜の色が黄変しやすくなる。
【0008】
また宇宙環境においては強烈な紫外線や電子線以外にも陽子線などの宇宙線と呼ばれる放射線や、耐熱性および耐冷性と、その熱衝撃に対する耐性、宇宙環境に存在する化学反応性の高い原子状酸素等、克服しなければならない耐環境性能が多くある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の太陽電池セルは、太陽電池セルの受光面側の表面にシリコーン樹脂層が設けられ、太陽電池セルの受光面と反対側の面に芯材からなる支持体層が設けられていることを特徴とする。また、本発明の太陽電池モジュールは、フレキシブル性を有する複数の太陽電池セルがインターコネクタにより接続された太陽電池モジュールであって、太陽電池モジュールの受光面側の表面にシリコーン樹脂層、またはシリコーン樹脂層と金属合金薄膜とが設けられており、太陽電池モジュールの受光面と反対側の面に芯材からなる支持体層が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の太陽電池セルおよび太陽電池モジュールは、その受光面に従来の太陽電池セルおよび従来の太陽電池モジュールで用いられていたような透明フィルムを有しておらず、シリコーン樹脂層を用いているので、紫外線や放射線に強く、且つフレキシブル性を持った太陽電池モジュールの作製が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態1に係る太陽電池セルを示す概略断面図である。
【図2】本実施の形態2に係る太陽電池セルを示す概略断面図である。
【図3】本実施の形態3に係る太陽電池セルを示す概略断面図である。
【図4】本実施の形態4に係る太陽電池モジュールにおける単位太陽電池セルを示す概略断面図である。
【図5】本実施の形態4に係る太陽電池モジュールの概略断面図である。
【図6】本実施の形態5に係る太陽電池モジュールの製造方法の概略を示す断面図である。
【図7】従来の太陽電池セルを示す概略断面図である。
【図8】従来の太陽電池セルにおける配線形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0013】
(実施の形態1)
本発明の太陽電池セルは、フレキシブル性を有する太陽電池セルであって、太陽電池セルの受光面側の表面にシリコーン樹脂層が設けられ、太陽電池セルの受光面と反対側の面に芯材からなる支持体層が設けられていることを特徴とする。
【0014】
図1に、本発明の太陽電池セルの典型的な断面模式図を示す。図1に示す太陽電池セルにはインターコネクタが接続されており(以下において、インターコネクタ付き太陽電池セルということがある)、単結晶薄膜層6の受光面側に、n電極パッド7と、p電極パッド4と、n電極パッド7上に設けられたインターコネクタ9と、p電極パッド4上に設けられたインターコネクタ5を備え、単結晶薄膜層6の受光面と反対側に金属箔膜3を備えている。また、場合によってはその金属薄膜3上に更に保護用のポリイミド等の樹脂フィルムが接着されている。そして、この太陽電池セルの受光面側の表面に、シリコーン樹脂層8が設けられており、受光面の反対側には芯材からなる支持体層1が設けられている(以下、太陽電池セルの受光面側の表面に設けられるシリコーン樹脂層8を受光面シリコーン樹脂層ということがある)。
【0015】
本発明の太陽電池セルは、図1に示すように、その受光面側の表面がシリコーン樹脂層8により構成されており、従来のフレキシブル性を有する太陽電池セルに用いられている透明フィルムやEVAフィルムが形成されていないので、紫外線および放射線への耐性の両立が可能となる。
【0016】
太陽電池の受光面側の表面に設けられる上記シリコーン樹脂層8は、透過性の樹脂であるシリコーン樹脂により形成される。このようなシリコーン樹脂としては、特に限定されず、太陽電池セルの受光面側に設けられる従来公知のシリコーン樹脂をいずれも採用することができるが、特に宇宙用として用いるのであれば、宇宙用途として製造されているシリコーン樹脂を用いることが望ましい。上記シリコーン樹脂層8は、このようなシリコーン樹脂から作られたフィルムを用いることもできる。なお、本発明において、太陽電池セルの受光面側の最表面に存在するシリコーン樹脂層は、耐環境性などの点から、例えば市販されているものであれば、宇宙用途の封止・接着材として実績のあるダウ・コーニング社製のDOW CORNING(登録商標)93−500(商品名)などのシリコーン樹脂により上記受光面シリコーン樹脂層を形成することが好ましい。
【0017】
上記受光面シリコーン樹脂層は、その厚みが20μm以上であることが好ましく、70μm以上であることが好ましい。上記受光面シリコーン樹脂層がこのような厚みを満たす場合は、紫外線および放射線に対する耐性の両立が良好である。一方、太陽電池セルのフレキシブル性の点からは、上記受光面シリコーン樹脂層の厚みは、150μm以下であることが望ましい。本発明において、このようなシリコーン樹脂層の厚みとは、太陽電池セル表面からの厚みをいうものとする。
【0018】
受光面側に設けられる上記受光面シリコーン樹脂層だけでは物理的強度が弱いために、フレキシブル性のある太陽電池セルを保持できないので、本発明においては、受光面と反対側に芯材からなる支持体層1を設けることで、太陽電池セルおよび太陽電池モジュールとして必要な物理的強度を確保することが可能となる。
【0019】
上記支持体層1は、接着層2を接着剤としてセル裏面側に保持される。この接着層2は、シリコーン樹脂により構成され、該シリコーン樹脂としては、上記受光面シリコーン樹脂層を構成するシリコーン樹脂と同様に透過性の樹脂であってもよいし、受光面と反対側にあるので、着色している透過性の低いまたは非透過性の樹脂でも構わない。このような透過性または着色したシリコーン樹脂としては、従来公知のものを用いることができる。接着層2の厚みは、特に限定されないが、通常支持体層1との接着を良好なものとする点から、1μm〜100μmとする。
【0020】
上記支持体層1を構成する芯材は、受光面と反対側に設置するので紫外線または放射線の暴露により着色されるものであっても問題はないが、紫外線または放射線に対する脆化等により物理的強度が損なわれず、そのような物理的強度を維持することができる素材であることが重要となる。例えば支持体層を構成する芯材としてフッ素系有機材料を用いると放射線により脆化及び分解が発生し、支持体としての機能が無くなるという問題がある。
【0021】
本発明における上記支持体層1を構成する芯材としては、宇宙環境においての耐熱性(+150℃程度)と耐冷性(−180℃程度)を兼ね備えた材料であることが望ましい。また、紫外線または放射線の照射によって分解を起こさないことが望ましい。このように紫外線または放射線の照射によって分解を起こさず、上記耐熱性および耐冷性のある材料の一例としては、ポリイミドフィルム、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の樹脂フィルムや、ケブラー等の有機樹脂繊維や、ガラス、カーボン等の無機繊維を用いても良い。これらは単独で用いてもよく、複数を混合して用いてもよい。
【0022】
また、上記芯材からなる支持体層1の形状としては、柔軟性を有するフィルム状であっても、無機繊維または有機樹脂繊維などの繊維を重ねた網状の不織布状または織布状であっても構わない。なかでも、支持体層1を構成する芯材として、無機繊維または有機樹脂繊維からなる不織布または織布を用いる場合は、紫外線や放射線などの照射に対する耐性が高く、機械的強度を十分に維持することができるので好ましい。
【0023】
上記支持体層1の厚みは、上記受光面シリコーン樹脂層の厚みや、支持体層1を構成するフィルムや繊維などの強度により適宜変更すればよいが、たとえば、50μm〜2000μmとすることが好ましく、100μm〜500μmとすることが好ましい。支持体層1の厚みを上記のような範囲とすることによって、太陽電池セルまたはモジュールのフレキシブル性と機械的強度の両方を良好に保つことができる。
【0024】
上記受光面シリコーン樹脂層を構成するシリコーン樹脂と、上記支持体層を構成する芯材とは、その熱膨張係数の差が小さいことが好ましく、また、シリコーン樹脂および芯材と太陽電池セルとの熱膨張係数の差が小さいことが望ましい。一般的に半導体や金属類を主材料とする太陽電池セルの熱膨張係数の絶対値は樹脂類と比べて小さく、10の−5乗台から10の−6乗台(単位:K-1)であるが、受光面シリコーン樹脂層を構成するシリコーン樹脂は10の−4乗台以下が望ましく、支持体層を構成する芯材は10の−5乗台以下が望ましい。熱膨張係数がこのような範囲を満たす場合は、温度変化に対する耐性が良好となり、太陽電池セルまたはモジュールの湾曲に対しても抑制することができる。
【0025】
本実施の形態1によれば、紫外線や放射線に強く、且つフレキシブル性を持った高効率太陽電池セルが得られる。
【0026】
(実施の形態2)
上記実施の形態1における太陽電池セルの受光面の反対側の面に、支持体層に加えて、シリコーン樹脂層が設けられる態様も本発明の太陽電池セルに含まれる。
【0027】
図2に、本実施の形態2における太陽電池セルの概略断面図を示す。図2においては、受光面の反対側の面に、支持体層1に加えて、シリコーン樹脂層10が設けられている(以下において、受光面の反対側の面であって、支持体層の表面に設けられるシリコーン樹脂層10を裏面シリコーン樹脂層ということがある)。他の太陽電池セルの構成は、図1に示すものと同様であるため、その説明は省略する。
【0028】
実施の形態1に示す構造の太陽電池セルにおいて、受光面側のシリコーン樹脂層8を構成するとシリコーン樹脂と受光面と反対側の支持体層1を構成する芯材との熱膨張係数の差によっては、宇宙環境における高温時と低温時に、太陽電池セルの表裏において大きな応力が発生し、フレキシブルである太陽電池モジュールは大きく湾曲してしまう場合もあり得る。この湾曲により太陽電池セルのクラックやインターコネクタの断線等が発生するため、太陽電池モジュールの信頼性が低下してしまう場合がある。このような湾曲の発生は、図2に示すように芯材からなる支持体層1表面上にシリコーン樹脂層10を設置することにより防ぐことができる。
【0029】
シリコーン樹脂層10は、上記太陽電池セルの受光面側の表面に設けられる受光面シリコーン樹脂層を構成するシリコーン樹脂と同様のシリコーン樹脂からなる層とすることができる。また、受光面とは反対側の面であることから、実施の形態1における上記接着層2のように、着色したシリコーン樹脂であっても、上記湾曲防止の効果は奏される。
【0030】
上記シリコーン樹脂層10(裏面シリコーン樹脂層)を設ける場合、太陽電池セルの受光面と反対側に設けられる接着層2とシリコーン樹脂層10との合計層厚が、上記受光面側に設けられたシリコーン樹脂層8の層厚と近くなればなるほど、太陽電池セルに対する熱応力が小さくなり、その結果、太陽電池モジュールの熱変化による湾曲が解消される。太陽電池セルの受光面側に設けられたシリコーン樹脂層8の層厚と、上記合計層厚とは、各層を構成するシリコーン樹脂にもよるが、その厚みの差がその層厚の20%程度以下であることが好ましい。また、受光面と反対側に設けられるシリコーン樹脂層10は、上記受光面側に設けられるシリコーン樹脂層8の層厚よりも小さいことが好ましい。受光面と反対側に設けられるシリコーン樹脂層10が、受光面側のシリコーン樹脂層8の層厚よりも大きくなった場合は、熱変動による支持体層1の湾曲が大きくなるからである。
【0031】
本実施の形態2によれば、紫外線や放射線に強く、且つフレキシブル性を持った高効率太陽電池セルが得られる。
【0032】
(実施の形態3)
本発明の太陽電池セルは、太陽電池セルの受光面側の表面に金属合金薄膜を設ける態様を含む。金属合金薄膜は、シリコーン樹脂層の環境耐性を補う目的で設けられる。このような目的から、金属合金薄膜は、太陽電池セルの受光面側の表面に限らず、実施の形態2のように裏面シリコーン樹脂層を有する場合はその表面にも設けることができる。本実施の形態3においては、このように太陽電池セルの表裏にシリコーン樹脂層が存在し、その表面に金属合金薄膜を設けた形態の太陽電池セルについて説明する。
【0033】
図3に本実施の形態3における太陽電池セルの概略断面図を示す。図3においては、受光面側に、シリコーン樹脂層8が設けられており、その表面に金属合金薄膜11が設けられている。また、受光面と反対側の面に支持体層1に加えてシリコーン樹脂層10が設けられており、その表面にさらに金属合金薄膜11が設けられている。他の太陽電池セルの構成は、図1や図2に示すものと同様であるため、その説明は省略する。
【0034】
金属合金薄膜11は、酸素を含む金属合金からなり、このような材料の好ましい一例としては、SiO2、AlO3、TiO2、ZnO、ITO等がある。シリコーン樹脂が太陽電池セルまたはモジュールの最表面に存在する場合には、宇宙空間に存在する原子状酸素によりシリコーン樹脂表面が侵食され、透明なシリコーン樹脂が白色化する場合がありうるが、酸素を含む金属合金で金属合金薄膜11を設けることによりこれを防ぐことが可能となる。また、シリコーン樹脂単体ではそのタック性によりシリコーン表面上に太陽電池モジュールを衛星筐体に設置する際に埃等がつき易くなるため取扱が難しくなることもあるが、上記のように金属合金薄膜11を設置することによりシリコーン樹脂のタック性を消失させることができ、取扱が極めて容易になる。
【0035】
上記金属合金薄膜11を構成する材料のうち、ZnO、ITO等の導電性のある酸素を含む金属合金を用いる場合は、宇宙空間で発生する静電気により太陽電池モジュールが帯電することを防ぐことが可能となる。なお、シリコーン樹脂層を太陽電池セルの表裏に有する場合は、上述のように、金属合金薄膜は太陽電池受光面およびその反対側の芯材表面の両シリコーン樹脂層の表面に対して実施した方が効果的である。
【0036】
上記金属合金薄膜11の厚みは、上記各シリコーン樹脂層の表面全体を被覆すればその厚みは特に限定されないが、耐環境性や取扱の容易性の点からは、10nm〜1μmとすることが好ましい。このような金属合金薄膜11は、蒸着など一般的な薄膜形成方法によってシリコーン樹脂層表面に形成することができる。
【0037】
本実施の形態3によれば、紫外線や放射線に強く、且つフレキシブル性を持った高効率太陽電池セルが得られる。
【0038】
(実施の形態4)
本発明は、フレキシブル性を有する複数の太陽電池セルがインターコネクタにより接続された太陽電池モジュールであって、太陽電池モジュールの受光面側の表面にシリコーン樹脂層や金属合金薄膜が設けられており、太陽電池モジュールの受光面と反対側の面に芯材からなる支持体層が設けられていることを特徴とする太陽電池モジュールに関する。
【0039】
上記太陽電池モジュールを構成する複数の太陽電池セルは、上記本発明の太陽電池セルの各構成を採用することができる。
【0040】
図4、5に本実施の形態4における太陽電池モジュールであって、受光面側の表面にシリコーン樹脂層とその表面に金属合金薄膜を有する太陽電池モジュールにおいてシリコーン樹脂層をシリコーンフィルムにより形成する一例を示す。図4は太陽電池モジュールにおける単位太陽電池セルの概略図を示し、図5は複数の太陽電池セルが接続された太陽電池モジュール構造である。
【0041】
図4および図5に示す太陽電池モジュールにおいては、各単位太陽電池セルのインターコネクタを接続して(図5中の接続部13)、太陽電池セルストリングを形成する。この太陽電池セルストリングに、シリコーン樹脂により構成する接着層2を形成することにより、接着剤としての機能を付与して、その表面に太陽電池受光面側にシリコーン樹脂層12を形成する。この方法により容易に一定の厚み精度を持ったシリコーン樹脂層12の形成が可能となる。また、シリコーン樹脂層12の表面に、予め酸素を含む金属合金からなる金属合金薄膜11を形成しておくことが可能となり、製造プロセスの簡易化が可能となる。
【0042】
シリコーン樹脂層12および金属合金薄膜11の構成材料や、層厚などは、上記太陽電池セルにおけるシリコーン樹脂層および金属合金薄膜と同様の構成とすることができる。また、図4および図5における接着層2としては、太陽電池セルまたは太陽電池モジュールの受光面と反対側に設けられる接着層2については、上記実施の形態1から3に示す太陽電池セルにおける構成と同様にすればよい。一方、受光面側に設けられる接着層2については、フレキシブル性などの観点から数十μm程度の厚みとすることが好ましい。
【0043】
本実施の形態4によれば、紫外線や放射線などへの耐性に優れ、かつフレキシブル性を有する高効率太陽電池モジュールが得られる。
【0044】
(実施の形態5)
図4および図5に示す太陽電池モジュールのシリコーン樹脂層12は、図6に示すように、金型14を用いて複数の太陽電池セルをモールドして形成することができる。図6は、本実施の形態5に係る太陽電池モジュールの製造方法の概略を示す断面図である。予め芯材からなる支持体層1に太陽電池セルまたモジュールをシリコーン樹脂からなる接着層12により接着して設置し、その後シリコーン樹脂によりモールドすることで、図4に示すように太陽電池受光面側と受光面の反対側にシリコーン樹脂層12を1回のプロセスにより形成して、太陽電池モジュールを製造することが可能となる。
【0045】
本実施の形態5によれば、紫外線や放射線などへの耐性に優れ、かつフレキシブル性を有する高効率太陽電池モジュールが得られる。
【0046】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0047】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
1 支持体層、2 接着層、3 金属箔膜、4 p電極パッド、5,9 インターコネクタ、6 単結晶薄膜層、7 n電極パッド、8,10 シリコーン樹脂層、11 金属合金薄膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル性を有する太陽電池セルであって、
前記太陽電池セルの受光面側の表面にシリコーン樹脂層、またはシリコーン樹脂層および金属合金薄膜が設けられており、
前記太陽電池セルの受光面と反対側の面に芯材からなる支持体層が設けられていることを特徴とする太陽電池セル。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂層の厚さは、70μm以上である、請求項1に記載の太陽電池セル。
【請求項3】
前記太陽電池セルの受光面の反対側の面に、前記支持体層とシリコーン樹脂層とが設けられており、
前記太陽電池セルの受光面の反対側に設けられたシリコーン樹脂層の層厚は、前記太陽電池セルの受光面側に形成されたシリコーン樹脂層の層厚よりも小さい、請求項1または2に記載の太陽電池セル。
【請求項4】
前記金属合金薄膜は、酸素を含む金属合金からなり、前記太陽電池セルの受光面側に設けられた前記シリコーン樹脂層の表面に形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池セル。
【請求項5】
前記芯材は、柔軟性を有するフィルムである、請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池セル。
【請求項6】
前記芯材は、無機繊維または有機樹脂繊維からなる織布または不織布である、請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池セル。
【請求項7】
フレキシブル性を有する複数の太陽電池セルがインターコネクタにより接続された太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池モジュールの受光面側の表面にシリコーン樹脂層、またはシリコーン樹脂および金属合金薄膜が設けられており、
前記太陽電池モジュールの受光面と反対側の面に芯材からなる支持体層が設けられていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記太陽電池モジュールの受光面側に設けられた前記シリコーン樹脂層の厚さは、70μm以上である、請求項7に記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記太陽電池モジュールの受光面の反対側の面に、前記支持体層とシリコーン樹脂層が設けられており、
前記太陽電池モジュールの受光面の反対側に設けられた前記シリコーン樹脂層の層厚は、前記太陽電池モジュールの受光面側に設けられた前記シリコーン樹脂層の層厚よりも小さい、請求項7または8に記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】
前記金属合金薄膜は、酸素を含む金属合金からなり、前記太陽電池モジュールの受光面側に設けられた前記シリコーン樹脂層の表面に形成されている、請求項7〜9のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項11】
前記芯材は、柔軟性を有するフィルムである、請求項7〜10のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項12】
前記芯材は、無機繊維または有機樹脂繊維からなる織布または不織布である、請求項7〜10のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項13】
前記シリコーン樹脂層は、シリコーンフィルムからなる、請求項7〜12のいずれかに記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−245175(P2010−245175A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90194(P2009−90194)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】