説明

太陽電池セルの製造方法、及び太陽電池モジュール

【課題】 太陽電池素子の切断端面において電気的な短絡が生じにくい太陽電池セルを効率的に製造できる方法を提供する。
【解決手段】 本発明の太陽電池セルの製造方法は、長尺状の可撓性基材41と第1電極層211と光吸収層31と第2電極層221とをこの順で有する長尺状の太陽電池素子11から太陽電池セルを得る方法であって、前記第2電極層221から光吸収層31まで、又は、前記第2電極層221から第1電極層211までを部分的に除去することによって、前記太陽電池素子11の面内の複数箇所に、それぞれ帯状に延びる1本以上の部分除去箇所61を形成する部分除去工程、前記部分除去箇所61において太陽電池素子11を切断する切断工程、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状の太陽電池素子を切断して個々の太陽電池セルを製造する方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルを電気的に接合することにより構成されている。
前記複数の太陽電池セルは、例えば、基材と第1電極層と光吸収層と第2電極層とをこの順で有する長尺状の太陽電池素子を切断することにより得ることができる。
【0003】
従来、太陽電池素子を切断する際、一般には、ガラス切りや超音波カッターのような工具、又は、押切刃を備えた切断機を用いて、太陽電池素子全体を厚み方向に切断している。しかしながら、太陽電池素子を切断すると、その切断面において、第1電極層と第2電極層、又は、第2電極層と導電性基材が接触してしまい、素子の短絡が生じる。素子が短絡すると、電流損失が大きくなり、太陽電池のデバイス特性や信頼性が低下する。
【0004】
例えば、特許文献1には、絶縁性基材の裏面から、ガラス切りや超音波カッターのような工具を用いて力を加えることにより、基材の切断加工を行うことが開示されている。この切断方法は、基材上に積層された太陽電池素子の各層を両側に押し分けるような力によって、電極同士が接触しないように切断し、電極の短絡を防止している。しかしながら、この方法では、素子が導電性を有する金属基材を有する場合、切断時にその切断面においてバリ(切断した端面に生じる捲れ片)が生じるため、金属基材と電極間の短絡を防ぐことが困難である。
【0005】
また、特許文献2には、太陽電池素子の電極の短絡を防ぐため、レーザー光線での切断加工時に複数種のガスを導入することによって、切断面に絶縁性薄膜を形成している。しかしながら、この方法では、基材が金属である場合、レーザー光線の反射係数が高いため、高精度に加工することが困難となる。
【0006】
また、特許文献3には、太陽電池素子の電極の短絡を防ぐため、太陽電池素子の切断面にマイクロプラズマを照射することによって、切断面をエッチングして細線を形成している。しかしながら、この方法では、マイクロプラズマを光吸収層にも照射する必要があるため、光吸収層にプラズマダメージを与えるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−116078号公報
【特許文献2】特開平8−139351号公報
【特許文献3】特許第4109585号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、切断端面において電気的な短絡が生じにくい太陽電池セルを効率的に製造できる製造方法及びそのセルを用いた太陽電池モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの太陽電池セルの製造方法は、長尺状の可撓性基材と第1電極層と光吸収層と第2電極層とをこの順で有する長尺状の太陽電池素子から太陽電池セルを得る方法であって、前記第2電極層から光吸収層まで、又は、前記第2電極層から第1電極層までを部分的に除去することによって、前記太陽電池素子に、帯状に延びる少なくとも1本の部分除去箇所を形成する部分除去工程、前記部分除去箇所において太陽電池素子を切断する切断工程、を有する。
好ましくは、前記部分除去工程において、前記部分除去箇所の幅が、切断具の幅と同じ又はそれよりも長く形成される。
【0010】
本発明の他の太陽電池セルの製造方法は、長尺状の可撓性基材と第1電極層と光吸収層と第2電極層とをこの順で有する長尺状の太陽電池素子から太陽電池セルを得る方法であって、前記第2電極層から光吸収層まで、又は、前記第2電極層から第1電極層までを部分的に除去することによって、前記太陽電池素子に、帯状に延びる少なくとも2本の部分除去箇所を形成する部分除去工程、前記2つの部分除去箇所の間において太陽電池素子を切断する切断工程、を有する。
【0011】
本発明の好ましい太陽電池セルの製造方法は、前記部分除去工程の除去が、ナイフエッジ形状の刃物、回転刃による切削加工、又はレーザー光線の照射によって行われ、前記切断工程の切断が、押切刃による押圧によって行われる。
本発明の好ましい太陽電池セルの製造方法は、前記部分除去工程において、前記帯状の部分除去箇所が前記長尺状の太陽電池素子の長手方向と略直交する方向に形成される。
【0012】
本発明の別の局面によれば、太陽電池モジュールを提供する。
この太陽電池モジュールは、前記いずれかの方法により得られた太陽電池セルの複数を有し、前記複数の太陽電池セルが互いに電気的に接合されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、太陽電池素子の切断端面において短絡を防止できる。さらに、本発明によれば、長尺状の太陽電池素子から効率的に個々の太陽電池セルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の1つの実施形態に係る太陽電池セルの断面図。
【図2】1つの実施形態に係る長尺状の太陽電池素子の断面図。ただし、その素子の両側を省略して図示している。
【図3】部分除去工程及び切断工程の概念を示す参考図。
【図4】部分除去工程を行うことによって切断箇所に1本の部分除去箇所が形成された、1つの実施形態に係る太陽電池素子の平面図。
【図5】図4のV−V’線断面図。
【図6】部分除去工程を行うことによって切断箇所に1本の部分除去箇所が形成された、他の実施形態に係る太陽電池素子の平面図。
【図7】部分除去工程を行うことによって切断箇所に2本の部分除去箇所が形成された、1つの実施形態に係る太陽電池素子の断面図。
【図8】図7のVIII−VIII’線断面図。
【図9】1つの実施形態に係る太陽電池モジュールの概略側面図。ただし、封止樹脂が充填された箇所を薄墨塗りで示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、図面を参照しつつ説明する。ただし、各図における層厚及び長さなどの寸法は、実際のものとは異なっていることに留意されたい。
なお、本明細書において、「AAA〜BBB」という記載は、「AAA以上BBB以下」を意味する。
【0016】
[太陽電池セルの構造]
図1は、本発明の製造方法により得られる太陽電池セルの構成例を示す概略断面図である。
本発明の製造方法により作製される、薄膜の太陽電池セル1は、第1電極層21と、第1電極層21の一方面21aに設けられた光吸収層3と、光吸収層3の一方面3aに設けられた第2電極層22と、を有する。前記第1電極層21は、基材4の一方面4aに設けられている。前記光吸収層3と第2電極層22の層間には、必要に応じて、バッファ層5が設けられていてもよい。また、必要に応じて、前記第1電極層21と光吸収層3の間又は第1電極層21と基材4の間の少なくとも何れか一方の間に、前記基材由来の不純物の拡散を抑制するためのバリア層(図示せず)が設けられていてもよいし、第2電極層22の上に反射防止膜(図示せず)が設けられていてもよい。
なお、各層の一方面21a,3a,4aは、図1において、各層の上向きの面を指しているが、各層の下向きの面であってもよい(これは、図面の表示向きの違いに過ぎない)。
【0017】
本発明の製造方法で作製される太陽電池セル1は、第1電極層21と第2電極層22の間に光吸収層3を有している限り、図示した構造に限定されない。例えば、本発明の製造方法で作製される太陽電池セル1は、前記バッファ層5を有さないものでもよい。或いは、前記太陽電池1は、前記各層4,21,3,5,22の層間から選ばれる1つの層間又は2つ以上の層間に、任意の他の層が設けられていてもよい。
【0018】
前記基材4としては、特に限定されず、例えば、金属系基材、樹脂系基材などが挙げられる。
前記金属系基材としては、ステンレス基材、アルミニウム基材などが挙げられる。金属系基材は、導電性を有することが好ましい。前記樹脂系基材としては、ポリイミドシートなどの耐熱性に優れた樹脂シートが挙げられ、さらに、耐熱性に優れ且つ導電性を有する樹脂シートが好ましい。なお、基材から不純物が熱拡散することにより、太陽電池セルに悪影響を及ぼす場合は、上述のバリア層を形成してもよい。
前記基材4の厚みは特に限定されないが、金属系基材を用いる場合には、その厚みは、10μm〜100μmであり、樹脂系基材を用いる場合には、その厚みは、20μm〜500μmである。
【0019】
前記第1電極層21は、基材4の一方面4aに形成される。第1電極層21の形成材料は特に限定されないが、例えば、モリブデン、チタン、クロムなどの高耐腐性を有する高融点金属が好ましい。
第1電極層21の厚みは特に限定されないが、通常、0.01μm〜1.0μmである。
【0020】
前記基材由来の不純物を抑制するため、基材4と第1電極層21の間などにバリア層を形成する場合、そのバリア層の形成材料は特に限定されないが、例えば、SiO,Al,TiO、Crなどを用いることができる。前記バリア層の厚みは特に限定されないが、通常、0.05μm〜5.0μmである。
【0021】
光吸収層3の形成材料は特に限定されないが、例えば、シリコン系としてはアモルファスシリコン、化合物系としてはCdTe、カルコパイライト系などが挙げられる。
光電変換効率が高く、経年劣化が低いことから、化合物系の光吸収層が好ましく、さらに、カルコパイライト系の光吸収層がより好ましい。
例えば、上記第1電極層21の一方面21a側に形成される光吸収層3は、カルコパイライト系のp型光吸収層である。
【0022】
前記カルコパイライト系の化合物は、元素周期律表のIb族金属、IIIb族金属及びVIb族元素からなる、カルコパイライト型構造を成す化合物の総称である。カルコパイライト化合物としては、CuInSe、CuGaSe、CuAlSe、Cu(In,Ga)Se、Cu(In,Ga)(S,Se)、Cu(In,Al)Se、Cu(In,Al)(S,Se)、CuInS、CuGaS、CuAlS、AgInS、CuGaSe、AgInSe、AgGaSe、CuInTe、CuGaTe、AgInTe、AgGaTeなどが挙げられる。本発明の光吸収層は、カルコパイライト化合物として少なくともCu、In、及びSeを含んでいることが好ましい。
前記光吸収層3の厚みは特に限定されないが、通常、0.5μm〜3μmである。
【0023】
前記バッファ層5は、光吸収層3の一方面3aに形成される。バッファ層5の形成材料は特に限定されないが、例えば、CdS、ZnMgO、ZnO、ZnS、Zn(OH)、In、In、及び、これらの混晶であるZn(O,S,OH)などが挙げられる。バッファ層5は、1層でもよいし、2層以上でもよい。
バッファ層5の厚みは特に限定されないが、通常、10nm〜400nmである。
【0024】
第2電極層22は、バッファ層5の一方面5aに形成される。バッファ層5が形成されない場合には、第2電極層22は、光吸収層3の一方面3aに形成される。第2電極層22の形成材料は特に限定されないが、例えば、ZnOなどの酸化亜鉛系、ITOなどが挙げられる。前記形成材料として酸化亜鉛系材料を用いる場合には、これにIIIb族元素(Al、Ga、Bなど)をドーパントとして添加することによって、低抵抗な第2電極層22を形成できる。
第2電極層22の厚みは特に限定されないが、通常、0.05μm〜2.5μmである。
【0025】
[太陽電池セルの製造方法]
本発明においては、長尺状の太陽電子素子を形成し、それを切断予定線において順次切断することによって、個々の太陽電子セルを製造する。
本発明において、長尺状とは、一方向(長手方向)の長さが一方向と直交する方向の長さに比して十分に長い帯形状を意味し、その一方向の長さは前記一方向と直交する方向の長さの5倍以上、好ましくは、10倍以上である。
【0026】
(太陽電池素子の形成工程)
ロールツーロール方式で太陽電池セルを連続的に且つ高速で製造できるようになることから、本発明では、可撓性を有する長尺状の基材が用いられる。なお、可撓性を有する基材(可撓性基材)は、フレキシブル基材とも呼ばれ、ロールに巻き取り可能な基材である。前記金属系基材や樹脂系基材は、その厚みにも依るが、一般に、可撓性を有する。
基材の長手方向の長さ及び長手方向と直交する方向の長さは、特に限定されず、適宜設計できる。以下、長手方向と直交する方向を「短手方向」と記す場合がある。
例えば、製造予定の太陽電池セルの幅と同じ長さの短手方向の長さを有する基材を用いれば、長尺状の太陽電池素子を短手方向にのみ切断することによって、個々の太陽電池セルを得ることができる。
このような基材として、長手方向長さが10m〜1000m、短手方向の長さが10mm〜100mm、厚みが10μm〜50μmの基材(例えば、ステンレス製の基材など)が用いられる。
【0027】
太陽電池素子は、前記長尺状の可撓性基材の上に、第1電極層、光吸収層、第2電極層の少なくとも3層を順に形成することによって得られる。
ロールに巻かれた長尺状の基材を引き出し、その一方面に第1電極層を形成する。第1電極層の形成材料は、上述の通りである。
第1電極層は、従来公知の方法で形成できる。第1電極層の形成方法としては、例えば、スパッタ法、蒸着法、印刷法などが挙げられる。
【0028】
前記基材の第1電極層の一方面に、上述のカルコパイライト系などの光吸収層を形成する。光吸収層は、従来公知の方法で形成できる。光吸収層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、セレン化/硫化法、スパッタ法などが挙げられる。
特に、カルコパイライト系の光吸収層は、モリブデンなどから形成される第1電極層に対する密着性が低いが、本発明の製造方法によれば、光吸収層と第2電極層との剥離を防止しつつ、太陽電池素子を切断できる。
【0029】
前記光吸収層を形成した後、必要に応じて、その光吸収層の一方面に、バッファ層を形成してもよい。バッファ層は、従来公知の方法で形成できる。バッファ層の形成方法としては、例えば、溶液成長法(CBD法)、スパッタ法、有機金属気相成長法(MOCVD法)などが挙げられる。
例えば、バッファ層の形成材料の前駆物質を含む溶液に、前記光吸収層を有する基材を浸漬し、溶液を加熱して前記溶液と光吸収層の一方面の間で化学反応を進行させることにより、バッファ層を形成できる(CBD法)。
【0030】
前記基材の光吸収層の一方面(前記バッファ層が形成されている場合には、その一方面)に、第2電極層を形成する。第2電極層の形成材料は、上述の通りである。
第2電極層は、従来公知の方法で形成できる。第2電極層の形成方法としては、例えば、スパッタ法、蒸着法、有機金属気相成長法(MOCVD法)などが挙げられる。
なお、上記バリア層を有する太陽電池セルを得る場合には、必要に応じて、基材と第1電極層の間にバリア層を形成する。前記バリア層は、従来公知の方法で形成できる。このバリア層の形成方法としては、例えば、スパッタ法、蒸着法、CVD法、ゾル・ゲル法、液相析出法などが挙げられる。
このようにして、図2に示すように、長尺状の可撓性基材41、第1電極層211と、光吸収層31、バッファ層51、第2電極層221が、この順で積層された、長尺状の太陽電池素子11が得られる。
【0031】
(太陽電池素子の部分除去工程)
部分除去工程は、前記太陽電池素子の第2電極層から光吸収層まで、又は、前記第2電極層から第1電極層までを部分的に除去する工程である。
この工程を行うことによって、前記太陽電池素子の短手方向に帯状に延びる、部分除去箇所が形成される。
本発明においては、切断予定線又はその近傍に沿って第2電極層から光吸収層まで、又は、前記第2電極層から第1電極層までを部分的に除去することによって部分除去箇所を形成した後、その部分除去箇所の形成領域において太陽電池素子を厚み方向に切断することによって、個々の太陽電池セルを得ることができる。
【0032】
図3は、太陽電池素子に部分除去箇所を形成し且つこれを切断する、素子から太陽電池セルを切り出す一連の工程を示す概念図である。
図3において、ロールから引き出された太陽電池素子11は、長手方向MDに搬送される。その搬送途中で、切削具Xを用いて、第2電極層から光吸収層まで、又は、前記第2電極層から第1電極層までを部分的に除去することによって、部分除去箇所6を形成する。
次に、切断具Yを用いて、前記部分除去箇所の形成領域において太陽電池素子11を切断することによって、太陽電池セル1が得られる。
これを順次繰り返すことにより、1つの太陽電池素子11から、複数の太陽電池セル1を連続的に且つ効率良く製造できる。
【0033】
部分除去工程においては、前記切断予定線を含んで部分除去箇所を1本形成してもよいし、或いは、切断予定線の近傍に少なくとも2本(複数本)形成してもよい。前記切断予定線は、太陽電池素子から個々の太陽電池セルを切り出すべく設計される、設計上の位置である。
本工程の説明において、1つの切断箇所に対応して部分除去箇所を1本形成する場合と、1つの切断箇所に対応して部分除去箇所を複数本形成する場合と、に分けて説明する。
【0034】
<部分除去箇所を1本形成する場合>
図4は、部分除去工程を行った後の太陽電池素子の平面図である。図5は、図4のV−V’線断面図であって、第2電極層から第1電極層までを部分的に除去したときの断面図である。本明細書において、太陽電池素子を単に「素子」と記す場合がある。
部分除去工程においては、第2電極層221から光吸収層31までを部分的に除去することによって、前記長尺状の太陽電池素子11の面内の一部に、少なくとも1本の部分除去箇所61が形成される(図4及び図5)。
前記部分除去箇所61は、図4のように素子11を平面で見て、帯状に延び、図5のように素子11を断面で見て、凹状である。すなわち、部分除去箇所61は、素子11に形成された凹みが素子11の短手方向に帯状且つ直線的に延びた部分である。
前記部分除去箇所61は、第2電極層221から光吸収層31の各端面の集合である第1端面611及び第2端面612と、第1端面611及び第2端面612の間に挟まれ且つ第1電極層211の一方面が露出した電極露出面613と、から構成されている。
【0035】
前記部分除去箇所61は、切断予定線Aを含んで形成される。
本実施形態においては、前記部分除去箇所61は、例えば、長尺状の太陽電池素子11の短手方向TDに延びて形成される。なお、前記部分除去箇所61は、短手方向TDと略平行に形成されていてもよく、或いは、最終的な太陽電池モジュールの形状に合わせて、短手方向に対して斜めに形成されていてもよい。
【0036】
製造予定の太陽電池セルの幅と同じ長さの短手方向の長さを有する太陽電池素子11を用いた場合には、前記部分除去箇所を短手方向のみに沿って形成すればよい。なお、短手方向において2列以上の太陽電池セルを切り出すことができる短手方向の長さを有する太陽電池素子を用いる場合には、列間を切断するために前記部分除去箇所が長手方向にも形成される(以下同じ)。
【0037】
前記部分除去箇所61の幅Wは、特に限定されない。もっとも、前記幅Wが余りに小さいと、後述する切断工程において、前記部分除去箇所61に切断具を当てた際に、その切断具が前記第1端面611又は第2端面612を削ることにより、前記第1端面611又は第2端面612を加工方向に垂れさせるおそれがある。かかる点から、前記部分除去箇所61の幅Wは、切断具の幅と同じ又はそれよりも長いことが好ましい。例えば、切削具としてレーザー光線を使用する場合、レーザー光線の線幅は小さいもので30μmである。もっとも、集光レンズの利用により又はZ軸方向の上下移動により、さらに、線幅の小さいレーザー光線の使用も可能である。このため、レーザー光線を使用する場合には、前記部分除去箇所61の幅Wは、30μm以上が好ましく、40μmを越えていることがより好ましく、50μm以上が特に好ましい。
【0038】
他方、前記幅Wが余りに広いと、太陽電池セルの歩留まりが低くなる上、切断後に、比較的長い基材の縁部が外方へ突出するおそれがある。長く突出した基材の縁部を有する太陽電池セルを図9のように重ねて並べると、1つの太陽電池セルの基材の縁部に、隣接する太陽電池セルの基材の下面が接触し、短絡するおそれがある。かかる点から、前記部分除去箇所61の幅Wは、20mm以下が好ましく、さらに、10mm以下がより好ましい。
【0039】
前記第2電極層221から光吸収層31までを部分的に除去する方法(前記部分除去箇所の形成方法)としては、例えば、ナイフエッジ形状の刃物による切削や回転刃による切削のような機械的な切削、或いは、レーザー光線の照射による切削などが挙げられる。これらの切削具を用いることにより、上述の部分除去箇所を形成できる。
【0040】
なお、第2電極層221から第1電極層211までを部分的に除去した場合には、図6に示すように、部分除去箇所62は、第2電極層221から第1電極層211の各端面の集合である第1端面621及び第2端面622と、第1端面621及び第2端面622の間に挟まれ且つ基材41の一方面が露出した基材露出面623と、から構成される。
第2電極層221から第1電極層211までを部分的に除去する場合は、第1電極層211も除去されること以外、上記第2電極層221から光吸収層31までを部分的に除去する場合と同様である。そのため、その詳細な説明は省略し、図6に同様の符号を援用表示する。
【0041】
<部分除去箇所を複数本形成する場合>
図7は、部分除去工程を行った後の太陽電池素子の平面図である。図8は、図7のVIII−VIII’線断面図であって、第2電極層から基材までを部分的に除去したときの断面図である。
第2電極層221から光吸収層31までを部分的に除去することによって、長尺状の太陽電池素子11の面内の一部に、少なくとも2本の部分除去箇所71,72が形成される(図7及び図8)。
前記2本の部分除去箇所71,72は、図7のように素子11を平面で見て、それぞれ帯状に延び、図8のように素子11を断面で見て、それぞれ凹状である。すなわち、2本の部分除去箇所71,72は、それぞれ、素子11の面内の一部に形成された凹みが素子11の所定方向に帯状且つ直線的に延びた部分である。
【0042】
前記第1部分除去箇所71は、第2電極層221から光吸収層31の各端面の集合である第1端面711及び第2端面712と、第1端面711及び第2端面712の間に挟まれ且つ第1電極層211の一方面が露出した電極露出面713と、から構成されている。
前記第2部分除去箇所72は、第2電極層221から光吸収層31の各端面の集合である第1端面721及び第2端面722と、第1端面721及び第2端面722の間に挟まれ且つ第1電極層211の一方面が露出した電極露出面723と、から構成されている。
【0043】
前記第1部分除去箇所71及び第2部分除去箇所72は、切断予定線Aを挟んで形成される。
本実施形態においては、前記第1部分除去箇所71及び第2部分除去箇所72は、例えば、長尺状の太陽電池素子11の短手方向TDに延びて形成される。なお、前記第1部分除去箇所71及び第2部分除去箇所72は、短手方向TDと略平行に形成されていてもよく、或いは、短手方向に対して斜めに形成されていてもよい。
【0044】
前記第1部分除去箇所71及び第2部分除去箇所72の幅W1,W2は、特に限定されない。前記第1部分除去箇所71及び第2部分除去箇所72は、第2電極層221から光吸収層31を部分的に分断するために形成されるので、太陽電池セルの歩留まりを考慮すると、その幅W1,W2は出来るだけ小さいことが好ましい。前記幅W1,2が余りに広いと、太陽電池セルの歩留まりが低くなるため、第1部分除去箇所71及び第2部分除去箇所72の幅W1,W2は、3mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。
【0045】
また、前記第1部分除去箇所71と第2部分除去箇所72の形成間隔W3(第1部分除去箇所71の第1端面711と第2部分除去箇所72の第2端面722との間隔W3)も特に限定されない。もっとも、前記幅W3が余りに小さいと、後述する切断工程において、前記第1部分除去箇所71と第2部分除去箇所72の間に切断具を当てた際に、その切断具が前記第1端面711又は第2端面722を削ることにより、前記第1端面711又は第2端面722を加工方向に垂れさせるおそれがある。かかる点から、前記第1部分除去箇所71と第2部分除去箇所72の形成間隔W3は、切断具の幅と同じ又はそれよりも長いことが好ましい。例えば、切断具として押切刃を使用する場合、前記第1部分除去箇所71と第2部分除去箇所72の形成間隔W3は、1mm以上が好ましく、2mmを越えていることがより好ましく、3mm以上が特に好ましい。
【0046】
他方、前記幅W3が余りに広いと、太陽電池セルの歩留まりが低くなる上、得られた太陽電池セルを電気的に接合して太陽電池モジュールを構成した際に、隣接する太陽電池セルが短絡するおそれがある。かかる点から、前記第1部分除去箇所71と第2部分除去箇所72の形成間隔W3は、20mm以下が好ましく、さらに、10mm以下がより好ましい。
なお、切削箇所において、3本以上の部分除去箇所を形成してもよい(図示せず)。
【0047】
前記第2電極層221から光吸収層31までを部分的に除去する方法(前記部分除去箇所の形成方法)は、上記<部分除去箇所を1本形成する場合>の欄に記載された方法と同様である。
また、第2電極層221から第1電極層211までを部分的に除去する場合も、上記<部分除去箇所を1本形成する場合>の欄と同様である。
【0048】
部分除去工程を行うことにより、第1電極層又は基材よりも上の各層を部分的に除去して、各層を分断できる。
この除去は、ナイフエッジ形状の刃物による切削や回転刃による切削のような機械的切削、或いは、レーザー光線の照射による切削によって行われるので、各層の端面(第1端面及び第2端面)が加工方向に垂れにくい。このため、第1電極層と第2電極層の短絡が生じることを防止できる。
なお、前記機械的切削又はレーザー光線の照射による切削によれば、第2電極層から光吸収層までの間において、各層の剥離が生じることも防止できる。
【0049】
(太陽電池素子の切断工程)
切断工程は、上記部分切断工程後、部分除去箇所の形成領域における切断予定線又はその近傍に沿って太陽電池素子を切断する工程である。
この工程を行うことによって、素子から個々の太陽電池セルを切り出すことができる。
【0050】
<部分除去箇所が1本形成された場合の切断>
上記部分除去工程において、図4及び図5に示すように、部分除去箇所61を1本形成した場合、その部分除去箇所61において素子11を切断する。
具体的には、切断具を用いて、部分除去箇所61において素子11を切断する。
切断具を、部分除去箇所61の開口側(素子11の第2電極層側)から当ててもよいし、或いは、部分除去箇所61の開口側とは反対側(素子11の基材側)から当ててもよい。また、2つの切断具を用い、その一方の切断具を部分除去箇所61の開口側から当て且つ他方の切断具を部分除去箇所61の開口側とは反対側から当ててもよい。
【0051】
例えば、図5の二点鎖線で示すように、切断予定線Aを含んで形成された部分除去箇所61に嵌り込むように、切断具Yを当てる。この際、部分除去箇所61の第1端面611及び第2端面612に接触しないように、切断具Yを部分除去箇所61に当てることが好ましい。これは、切断具Yの接触によって、部分除去箇所61の第1端面611又は第2端面612が加工方向に垂れてしまうことを防止するためである。部分除去箇所61の幅Wや切断具Yの当て位置を適宜設定することにより、部分除去箇所61の第1端面611及び第2端面612に接触させないで、切断具Yにて素子11を切断できる。
部分除去箇所61の中央位置が切断予定線Aに略一致するように部分除去箇所61を形成した場合には、切断具Yを切断予定線Aに沿わせればよい。
なお、図5の二点鎖線で示す符号Zは、切断具Yを受けるカッター台である(図8も同様)。図示上では、素子11とカッター台Zが離れて描かれているが、実際には、素子11は、カッター台Zの上に載せられている。
【0052】
切断具を用いて、部分除去箇所61に対応する第1電極層211及び基材41、又は、部分除去箇所61に対応する基材41を切断することにより、太陽電池セル1を素子11から切り出すことができる。
なお、切断具Yの幅に比して部分除去箇所61の幅が大きい場合には、得られた太陽電池セルの基材の縁部が少しだけ切断面から外方へ突出した状態で残存し得るが、それは太陽電池セルの特性に影響しない。
【0053】
切断具としては、押切刃、回転刃などが挙げられる。
比較的短時間で素子を切断できることから、押切刃を部分切除箇所に押圧することによって、素子を切断することが好ましい。
例えば、幅(刃厚)が比較的薄く、素子の短手方向の長さよりも長い押切刃が用いられる。このような押切刃を用いれば、一度の押圧によって、素子を厚み方向に切断できる。
【0054】
<部分除去箇所が複数本形成された場合の切断>
上記部分除去工程において、図7及び図8に示すように、部分除去箇所71,72を2本形成した場合、その第1部分除去箇所71と第2部分除去箇所72の間において素子11を切断する。
上述と同様に、切断具を、部分除去箇所71,72の開口側から当ててもよいし、或いは、その反対側から当ててもよいし、或いは、2つの切断具を用い、その一方の切断具を開口側から当て且つ他方の切断具を反対側から当ててもよい。
【0055】
具体的には、図7及び図8に示すように、第1部分除去箇所71と第2部分除去箇所72の間には、第2電極層221、光吸収層31、第1電極層211及び基材41の積層部11aが部分的に残っている。第1部分除去箇所71及び第2部分除去箇所72の開口側から、前記積層部11aに1つの切断具Yを当てる(図8に切断具を二点鎖線で示す)。
この際、第1部分除去箇所71の第1端面711及び第2部分除去箇所72の第2端面722に接触しないように、切断具Yを当てることが好ましい。これは、切断具Yの接触によって、第1部分除去箇所71の第1端面711及び第2部分除去箇所72の第2端面722が垂れてしまうことを防止するためである。第1部分除去箇所71と第2部分除去箇所72の形成間隔W3や切断具の当て位置を適宜設定することにより、第1部分除去箇所71の第1端面711及び第2部分除去箇所72の第2端面722に接触させないで、切断具Yにて素子11を切断できる。
積層部11aの中央位置が切断予定線Aに略一致するように第1部分除去箇所71及び第2部分除去箇所72を形成した場合には、切断具Yの幅方向中心部を切断予定線Aに沿わせればよい。
【0056】
切断具Yを用いて、第1部分除去箇所71及び第2部分除去箇所72の間を切断することにより、太陽電池セル1を素子11から切り出すことができる。
切断具及び切断方法としては、上記<部分除去箇所が1本形成された場合の切断>の欄に記載のものと同様である。
【0057】
以上の工程を経て、太陽電池素子から本発明の太陽電池セルが得られる。
ただし、本発明の太陽電池セルの製造方法は、上記各工程以外に、他の工程を有していてもよい。
【0058】
上記切断工程によって素子を切断した際、切断面にバリが生じる可能性があるが、上記部分除去工程において、第2電極層から光吸収層まで又は第2電極層から第1電極層までを部分的に除去しているので、第2電極層と第1電極層の短絡が生じない太陽電池セルを得ることができる。
また、切断は、上記部分除去工程の除去処理に比して、短時間で完了するので、素子から太陽電池セルを切り出すために要する時間は、上記部分除去工程の除去に要する時間に等しくなる。このため、本発明の製造方法によれば、比較的短時間で太陽電池素子から短絡を防止しつつ、個々の太陽電池セルを効率的に切り出すことが可能となる。
【0059】
[太陽電池セルの用途]
本発明の太陽電池セルは、太陽電池モジュールの構成部品として利用できる。
図9は、太陽電池セルの複数を有し、複数の太陽電池セルが互いに電気的に接合されてなる太陽電池モジュールの概略側面図である。
例えば、上記製法によって得られた太陽電池セル1の複数を、図9に示すように、保護フィルム91,92の間に、隣接する太陽電池セル1を電気的に接合しながら並べ、封止樹脂93を封入することによって、太陽電池モジュール100を構成できる。
【0060】
隣接する太陽電池セル1の接合方式は、特に限定されない。
例えば、図9に示すように、1つの太陽電池セル1の第2電極層21の一端部21cの上に、隣接する太陽電池セル1の基材4の他端部4cを順次重ね合わせていくことによって、複数の太陽電池セル1を電気的に直列に接合してもよい。各太陽電池セル1を斜めにして重ねた図9の太陽電池モジュール100においては、各太陽電池セル1の切断面1aを太陽電池セル1の並設方向Bと略直交する方向に向けて各太陽電池セル1が並べられている。もっとも、これに限定されず、各太陽電池セル1の切断面1aを太陽電池セル1の並設方向Bに向けて各太陽電池セル1が並べられていてもよい(図示せず)。
その他、隣接する太陽電池セルの接合方式として、各太陽電池セルを間隔を開けて並べていき、隣接する太陽電池セルを導線により電気的に接合してもよい(図示せず)。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の実施例及び比較例を示し、本発明をさらに詳述する。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0062】
[実施例1]
(バリア層の形成)
幅20mm、長さ100m、厚み50μmのSUS(ステンレス板)を基材として用いた。その基材をスパッタ装置内に装着し、前記スパッタ装置内を真空排気した。このときの到達真空度は、2.0×10−4Paであった。次に、Arガスをマスフローコントローラー(MFC)にて、0.1Paの圧力になるように導入し、CrターゲットからDCマグネトロンスパッタ方式のスパッタ製膜法で、スパッタレート30nm・min/mの条件下で、基材の一方面に厚み0.3μmのCr層(バリア層)を形成した。なお、前記スパッタレートは、基材を搬送させながらスパッタしたときの、単位搬送速度当たりのスパッタレートである。
【0063】
(第1電極層の形成)
前記バリア層付き基材をスパッタ装置内に装着し、前記スパッタ装置内を真空排気した。このときの到達真空度は、2.0×10−4Paであった。次に、Arガスをマスフローコントローラー(MFC)にて、0.1Paの圧力になるように導入し、MoターゲットからDCマグネトロンスパッタ方式のスパッタ製膜法で、スパッタレート30nm・min/mの条件下で、前記バリア層の一方面に厚み0.3μmのMo層(第1電極層)を形成した。
【0064】
(光吸収層の形成)
真空蒸着装置のチャンバー内に、Gaを入れたセル、Inを入れたセル、Cuを入れたセル、Seを入れたセルをそれぞれ蒸着源として順に配置した。このチャンバー内に、前記基材を装着し、そのチャンバー内を真空度1.0×10−4Paとし、前記基材を550℃に加熱した。前記各蒸着源をCuが1150℃、Inが800℃、Gaが950℃、Seが150℃となるように加熱して各元素を同時に蒸発させることにより、前記第1電極層の一方面にカルコパイライト化合物からなるCIGS層(光吸収層)を形成した。基材の搬送速度は、0.1m/minとした。
形成した光吸収層を走査型電子顕微鏡により測定したところ、その膜厚は2μmであった。エネルギー分散型X線分析方法を用いて前記光吸収層のカルコパイライト化合物の組成を測定したところ、Cu:In:Ga:Se=23:20:7:50[原子数%]であった。
【0065】
(バッファ層の形成)
酢酸カドミウム(Cd(CHCOOH))0.001mol/l、チオ尿素(NHCSNH)0.005mol/l、酢酸アンモニウム0.01mol/l、及び、アンモニア0.4mol/lを室温にて混合した。前記混合した溶液に前記光吸収層を形成した長尺状基材を巻いたまま浸漬し、これを80℃に加熱したウォーターバスを用いて、室温から80℃まで15分間、加熱することにより、前記光吸収層の一方面に、CdS層(第1バッファ層)を形成した(CBD法)。形成されたCdS膜をエリプソメトリという方法で測定したところ、その膜厚は約70nmであった。
その第1バッファ層の一方面が製膜されるようにスパッタ装置内に装着し、前記スパッタ装置内を真空排気した。このときの到達真空度は、2.0×10−4Paであった。次にArガスをマスフローコントローラー(MFC)にて、0.2Paの圧力になるように導入し、ZnOターゲットからRFマグネトロンスパッタ方式のスパッタ製膜法で、スパッタレート10nm・min/mの条件下で、厚み100nmのZnO層(第2バッファ層)を形成した。
【0066】
(第2電極層の形成)
最後に、その第2バッファ層の1方面が製膜されるようにスパッタ装置((株)アルバック製)内に装着し、前記装置内を真空排気した。このときの到達真空度は、2.0×10−4Paであった。次にArガスをマスフローコントローラー(MFC)にて、0.3Paの圧力になるよう導入し、ITOターゲット(In:90[原子数%]、SnO:10[原子数%])からDCマグネトロンスパッタ方式のスパッタ製膜法で、スパッタレート50nm・min/mの条件下で、厚み0.5μmのITO層(第2電極層)を形成した。このようにして実施例1の太陽電池素子を作製した。
【0067】
(太陽電池セルの作製)
作製した長尺状の太陽電池素子の切断予定線に沿って、1つの部分除去箇所を形成した。
具体的には、切削具として、人造ダイヤモンド砥粒をコーティングした円盤状の回転刃(株式会社ディスコ製、商品名:Z05−SD5000−D1A−105 54×2A3×40×45N−L-S3)を用い、前記回転刃を回転させながら、太陽電池素子を切削し、短手方向に延びる帯状の部分除去箇所を、素子の長手方向に300mm間隔で形成した。各部分除去箇所の幅は1mmとし、ITO層(第2電極層)からCIGS層(光吸収層)までを切削した。
次に、切断具として、刃先角度30度、刃幅2mmの押切刃を用い、前記部分除去箇所の中央に前記押切刃を押圧し、太陽電池素子全体を厚み方向に切断することにより、幅20mm×長さ300mmの太陽電池セルを得た。
【0068】
[実施例2]
長尺状の太陽電池素子は実施例1と同様にして作製した。
部分除去箇所を形成する際に、ITO層(第2電極層)からMo層(第1電極層)までを切削したこと以外は、実施例1と同様にして、前記素子に前記部分除去箇所を形成し、前記押切刃によって切断することにより、太陽電池セルを得た。
【0069】
[実施例3]
長尺状の太陽電池素子は実施例1と同様にして作製した。
作製した長尺状の太陽電池素子の切断予定線を挟んで、2つの部分除去箇所を形成した。
具体的には、切削具として、人造ダイヤモンド砥粒をコーティングした円盤状の回転刃を用い、前記回転刃を回転させながら、太陽電池素子を切削し、短手方向に延びる帯状の第1部分除去箇所を、素子の長手方向に300mm間隔で形成した。各第1部分除去箇所の幅は1mmとし、ITO層(第2電極層)からCIGS層(光吸収層)までを切削した。
同様に回転刃を用いて、前記第1部分除去から長手方向一方側に10mm離れた箇所に、前記各第1部分除去箇所と平行な第2部分除去箇所をそれぞれ形成した。各第2部分除去箇所の幅は1mmとし、ITO層(第2電極層)からCIGS層(光吸収層)までを切削した。
次に、切断具として、刃先角度30度、刃幅2mmの押切刃を用い、前記第1部分除去箇所と第2部分除去箇所に挟まれた幅10mmの中央に前記押切刃を押圧し、太陽電池素子全体を厚み方向に切断することにより、20mm×300mmの太陽電池セルを得た。
【0070】
[実施例4]
長尺状の太陽電池素子は、実施例1と同様に作製した。
第1及び第2部分除去箇所をそれぞれ形成する際に、ITO層(第2電極層)からMo層(第1電極層)までを切削したこと以外は、実施例3と同様にして、前記素子に前記第1及び第2部分除去箇所をそれぞれ形成し、前記押切刃によってそれらの間において切断することにより、太陽電池セルを得た。
【0071】
[比較例]
長尺状の太陽電池素子は、実施例1と同様にして作製した。
切断具として、刃先角度30度、刃幅2mmの押切刃を用い、太陽電池素子の長手方向に300mm間隔で、素子全体を厚み方向に切断することにより、幅20mm×長さ300mmの太陽電池セルを得た。
【0072】
[太陽電池の素子の短絡評価]
実施例1乃至4及び比較例の太陽電池セルについて、短絡の有無及び発電に関係する光吸収層の剥離の有無を評価した。その結果を表1に示す。
太陽電池セルの短絡は、太陽電池デバイス特性に基づいて評価した。
具体的には、各太陽電池セルに、Air Mass(AM)=1.5、100mW/cmの擬似太陽光を当て、IV計測システム(山下電装(株)製)を用いて評価した。
発電に関係する光吸収層の剥離の有無は、目視により評価した。
これらの評価は、実施例1乃至4及び比較例により作製した100個の太陽電池セルを対象とした。表1の評価結果の分母は、対象セル数(100個)を表し、その分子は、短絡していた太陽電池セル及び剥離していた太陽電池セルの個数を表している。
【0073】
【表1】

【0074】
[結果]
切削により部分除去した後、押切刃により切断して得られた実施例1乃至4の太陽電池セルは、電極層同士、又は第2電極層と導電性基材の短絡が抑制でき、光吸収層の剥離も生じていなかった。
一方、切削することなく、押切刃により切断して得られた比較例の太陽電池セルは、多数のサンプルで短絡及び光吸収層の剥離が生じた。
【符号の説明】
【0075】
1…太陽電池セル、11…太陽電池素子、100…太陽電子モジュール、21,211…第1電極層、22,221…第2電極層、3,31…光吸収層、4,41…基材、5,51…バッファ層、6,61,71,72…部分除去箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の可撓性基材と第1電極層と光吸収層と第2電極層とをこの順で有する長尺状の太陽電池素子から太陽電池セルを得る方法であって、
前記第2電極層から光吸収層まで、又は、前記第2電極層から第1電極層までを部分的に除去することによって、前記太陽電池素子に、帯状に延びる少なくとも1本の部分除去箇所を形成する部分除去工程、
前記部分除去箇所において太陽電池素子を切断する切断工程、
を有する太陽電池セルの製造方法。
【請求項2】
長尺状の可撓性基材と第1電極層と光吸収層と第2電極層とをこの順で有する長尺状の太陽電池素子から太陽電池セルを得る方法であって、
前記第2電極層から光吸収層まで、又は、前記第2電極層から第1電極層までを部分的に除去することによって、前記太陽電池素子に、帯状に延びる少なくとも2本の部分除去箇所を形成する部分除去工程、
前記2つの部分除去箇所の間において太陽電池素子を切断する切断工程、
を有する太陽電池セルの製造方法。
【請求項3】
前記部分除去箇所の幅が、切断具の幅と同じ又はそれよりも長い、請求項1に記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項4】
前記部分除去工程の除去が、ナイフエッジ形状の刃物、回転刃による切削加工、又はレーザー光線の照射によって行われ、
前記切断工程の切断が、押切刃による押圧によって行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項5】
前記部分除去工程において、前記帯状の部分除去箇所が前記長尺状の太陽電池素子の長手方向と略直交する方向に形成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項の方法により得られた太陽電池セルの複数を有し、前記複数の太陽電池セルが互いに電気的に接合された太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−89659(P2013−89659A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226514(P2011−226514)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】