説明

太陽電池セル検査装置

【課題】 外部に電流を取出すための取出電極の間を複数の発電セルを直列接続した構造の太陽電池セルの取出電極の接続不良及び発電面の欠陥を精度よく検出する。
【解決手段】 発光素子52は、多数の太陽電池セルを含む太陽電池パネルSPに光を照射することにより、各太陽電池セルを発電動作させる。この発電動作により、太陽電池セルの各部に電流が流れ、太陽電池セルの対向する各部に磁界が発生する。磁気センサ10は、センサ信号取出回路67及びロックインアンプ68を介して、各部の磁界を検出して磁界信号をコントローラ70に供給する。コントローラ70は、プログラム処理により、前記磁界信号に基づいて、一対の取出電極が対向する方向である第1方向に所定距離隔てた2位置における第1方向の電流の大きさの差を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に流れる電流によって発生する磁界を複数の箇所で検出して、太陽電池セルの取出電極の接続不良又は太陽電池セルの発電面の欠陥を検出する太陽電池セル検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池セルには、アモルファス太陽電池の場合によくあるように、図10A及び図10Bに示すように複数の発電セルを直列接続にした構造にして太陽電池セルのみで高電圧を取出すことができるようにしたものがある。このような太陽電池セルは両端にある外部に電流を取出すための取出電極と内部電極とを導電性ペースト又は半田により接続させているが、複数の太陽電池セルを接続して製造される太陽電池パネルは、高温、低温、雨、雪等に晒される環境下で使用されるため、長期間が経過すると、この接続箇所が劣化する可能性がある。そのため、長期間使用した太陽電池パネルは、太陽電池セルごとにこの接続箇所に接続不良が発生していないことを検査する必要がある。また、太陽電池セルを製造した直後又は太陽電池セルから太陽電池パネルを製造した直後も、この接続箇所に接続不良がないことを検査する必要がある。また、前記接続不良よりも発生頻度は低いが、製造直後の太陽電池セルには発電面に欠陥が存在する場合があり、検査によりこのような太陽電池セルを取り除く必要がある。
【0003】
太陽電池セルや、太陽電池セルから製造される太陽電池パネルを検査する方法にはいくつかの方法があるが、例えば下記特許文献1に紹介されているように、発電によって発生する電流によって各点で発生する磁界を磁気センサにより検出し、磁界の分布状態又は磁界から計算され得る電流の分布状態を、正常なものと比較することで異常の有無を判断する方法がある。この方法であれば、太陽電池セルであっても、太陽電池パネル(下記特許文献1では太陽電池モジュールと記載されている)であっても、検査対象を発電により電流が流れる状態にすれば、接続不良の不具合箇所や発電面の欠陥を非接触で精度よく検出することができる。
【0004】
また、特許文献1では磁気センサを太陽電池に対して発電のための光を照射する側に配置しているが、反対側に配置しても磁界測定は可能である。ただし、例えば太陽電池が柔軟性に富んだシート状の部材で構成されていて太陽電池をステージに吸引するような複雑な機構を有する必要がある場合などは、特許文献1のように太陽電池に対して光を照射する側に磁気センサを配置する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−171065号公報
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、発明者が実験した結果、両端にある外部に電流を取出すための取出電極の間を複数の発電セルを直列接続した構造の太陽電池セルの場合は、前記取出電極に流れる電流が大きいため、前記取出電極と内部電極との間の接続不良があっても、取出電極位置及びその近傍位置の磁界の分布状態又は磁界から計算される電流の分布状態が正常な場合と比べて大きな違いがないことがわかった。このため、両端にある外部に電流を取出すための取出電極の間を複数の発電セルを直列接続した構造の太陽電池セルは、特許文献1に記載されているように、磁界の分布状態又は磁界から計算される電流の分布状態を正常なものと比較する方法では、前記取出電極と内部電極との間の接続不良を検出するのは困難であるという問題がある。また、前記発電面の欠陥の検出に関しても、欠陥が小さい場合は、磁界の分布状態又は磁界から計算される電流の分布状態が正常なものと比較して大きな変化がなく、欠陥の検出精度がよくないという問題がある。
【0007】
また、特許文献1のように磁気センサを太陽電池に対して発電のための光を照射する側に配置した場合、磁気センサ及び磁気センサを支持する機構が光を照射するための光源と太陽電池との間に位置することになるので、前記磁気センサ及びその支持機構による影が太陽電池上に形成される。なお、光源を太陽電池の表面に、平行に広く配置した場合には、鮮明な影が形成されないにしても、太陽電池の表面に、明度に差がある明るい部分と暗い部分とが生じる。そして、太陽電池の表面に影が形成されたり暗い部分が形成されたりする場合は、この箇所の発電量が減少したり、抵抗値が大きくなったりして、太陽電池セルに流れる電流に影響する。この場合、磁気センサの直下で最も濃い影ができるが、この影の濃淡は、光の照射位置、磁気センサの移動機構の構造などに起因して磁気センサの移動位置によって異なるために、太陽電池セルに流れる電流への影響が磁気センサの移動位置によって異なる。その結果、太陽電池に対して光を照射する側に磁気センサを設けると、磁界の分布状態及び電流の分布状態を精度よく検出できず、発電面の欠陥の検出精度が悪くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、これらの問題を解消するためになされたもので、両端にある外部に電流を取出すための取出電極の間を複数の発電セルを直列接続した構造の太陽電池セルの磁気センサを用いた検査において、太陽電池の取出電極と内部電極との間の接続不良を精度よく検出することができるとともに、太陽電池の発電面の欠陥を精度よく検出することができる太陽電池セル検査装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、第1方向に沿って配置されるとともに直列接続されてなり、光の照射により発電する複数の発電セル(83)と、第1方向とは直交する第2方向に延設されるとともに、複数の発電セルのうちの両端の一対の発電セルにそれぞれ内部電極(86,88)を介して接続されて、複数の発電セルによって発電された電力を取出すための一対の長尺状の取出電極(81,82)とを備えた太陽電池セル(SC)における内部電極に対する一対の取出電極の接続不良を検査する太陽電池セル検査装置において、太陽電池セルに対向するように配置されて、太陽電池セルの各部に流れる電流によって発生される磁界を検出する磁気センサ(10)と、太陽電池セルに光を照射することにより太陽電池セルを発電動作させて太陽電池セルの各部に電流を流し、又は一対の取出電極に電圧を印加することにより太陽電池セルの各部に電流を流し、太陽電池セルの各部に流れる電流により発生されて磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号を取出す磁界信号取出手段(52,71〜74,71a,72a)と、一対の取出電極位置又はそれらの内側近傍位置を第1検出位置とするとともに、第1検出位置からその内側方向に所定距離だけ隔てた位置を第2検出位置とし、磁界信号取出手段によって取出された太陽電池セルの各部の磁界信号に基づき、第1検出位置における第2方向の磁界の強さ又は第1方向の電流の大きさを第1検出値とするとともに、第2検出位置における第2方向の磁界の強さ又は第1方向の電流の大きさを第2検出値とし、第1検出値と第2検出値との差を一対の取出電極に沿って検出する差検出手段(70,S26,S104〜S114,S220,S222,S226〜S230,S252〜S258)とを設けたことにある。
【0010】
前記のように構成した本発明によれば、磁界信号取出手段が、太陽電池セルの各部に電流を流し、太陽電池セルの各部に流れる電流により発生されて磁気センサによって検出される太陽電池セルの各部の磁界を表す磁界信号を取出す。そして、差検出手段が、磁界信号取出手段によって取出された太陽電池セルの各部の磁界信号に基づき、第1検出値としての第1検出位置における第2方向の磁界の強さ又は第1方向の電流の大きさと、第2検出値としての第2検出位置における第2方向の磁界の強さ又は第1方向の電流の大きさとの差を一対の取出電極に沿って検出する。この場合、第1検出位置は一対の取出電極位置又はそれらの内側近傍位置であり、第2検出位置は第1検出位置からその内側方向に所定距離だけ隔てた位置である。
【0011】
前述のように、両端にある外部に電流を取出すための取出電極の間を複数の発電セルを直列接続した構造の太陽電池セルの場合は、取出電極に流れる電流が大きいため、取出電極と内部電極との間の接続不良があっても、取出電極位置及びその近傍位置の磁界の分布状態又は磁界から計算される電流の分布状態が正常な場合と比べて大きな違いがない。しかし、本願発明者は、この種の太陽電池セルにおいて、取出電極と内部電極との間の接続不良がある場合には、一対の取出電極位置及びその近傍位置における取出電極間方向の電流の大きさを取出電極の延設方向に沿って見ると、前記接続不良位置及びその近傍位置にて電流の大きさが大きく変動することを発見した。また、電流と磁界との関係により、この取出電極間方向の電流の大きさが大きく変動する部分では、取出電極の延設方向の磁界の強さも大きく変動することになる。また、本願発明者は、前記変動に関して、第1検出位置における第2方向の磁界の強さ又は第1方向の電流の大きさと、第2検出位置における第2方向の磁界の強さ又は第1方向の電流の大きさとの差を一対の取出電極に沿って見ると、取出電極の正常部分では前記差はほぼ一定値となり、取出電極の接続異常部分ではこの一定値から大きく変動し、前記接続不良位置にて顕著に表れることを発見した。したがって、本発明によれば、両端にある外部に電流を取出すための取出電極の間を複数の発電セルを直列接続した構造の太陽電池セルにおいて、取出電極と内部電極との間の接続不良を高精度で簡単に検出することができる。また、太陽電池セルに対して光を照射する場合、光を照射する側に磁気センサを配置し、磁気センサ及びその支持機構による影ができても、所定距離(この距離は比較的短い)だけ隔てた第1検出位置及び第2検出位置における第1検出値と第2検出値との差を検出しており、第1検出位置及び第2検出位置の影の濃淡はほぼ同じであるので、影の影響を除外することができ、取出電極の接続不良を精度よく検出することができる。
【0012】
なお、本明細書においては、単に「電流の大きさ」なる表現は、方向を問題とすることなく電流の絶対的な大きさを示す。そして、特定方向の電流の大きさに関しては、方向を特定したうえで電流の大きさ、例えば「X方向の電流の大きさ」、「Y方向の電流の大きさ」などと表現する。また、この点は、磁界の強さに関しても同じである。さらに、太陽電池セルにおける「内側」なる表現は、一対の取出電極の対向方向であって一対の取出電極間の中央位置に向かう方向を示す。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、さらに、差検出手段によって検出された第1検出値と第2検出値との差の変動を表す特性値を計算する変動特性値計算手段(S260)を設けたことにある。これによれば、計算された特性値から取出電極の接続異常を簡単に検出できる。この場合、さらに、変動特性値計算手段によって計算された特性値が差検出手段によって計算された第1検出値と第2検出値との差の変動が大きいことを表すことを条件に、取出電極の接続不良を判定する判定手段(S262,S264)を設けるとよい。これによれば、取出電極の接続異常が自動的に検出される。また、差検出手段によって検出された第1検出値と第2検出値との差の分布を視覚的に示す画像を表示する表示手段を設けてもよい。これによれば、作業者は、視覚を通じて取出電極の接続異常を認識可能となる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、第1方向に沿って配置されるとともに直列接続されてなり、光の照射により発電する複数の発電セル(83)と、第1方向とは直交する第2方向に延設されるとともに、複数の発電セルのうちの両端の一対の発電セルにそれぞれ内部電極(86,88)を介して接続されて、複数の発電セルによって発電された電力を取出すための一対の長尺状の取出電極(81,82)とを備えた太陽電池セル(SC)における太陽電池セルの発電面の欠陥を検査する太陽電池セル検査装置において、太陽電池セルに対向するように配置されて、太陽電池セルの各部に流れる電流によって発生される磁界を検出する磁気センサ(10)と、太陽電池セルに光を照射することにより太陽電池セルを発電動作させて太陽電池セルの各部に電流を流し、又は一対の取出電極に電圧を印加することにより太陽電池セルの各部に電流を流し、太陽電池セルの各部に流れる電流により発生されて磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号を取出す磁界信号取出手段(52,71〜74)と、一対の取出電極間に位置して第1方向に所定距離だけ隔てた第1検出位置及び第2検出位置における第2方向の磁界の強さ又は第1方向の電流の大きさをそれぞれ第1検出値及び第2検出値とし、磁界信号取出手段によって取出された太陽電池セルの各部の磁界信号に基づき、第1検出値と第2検出値との差を検出する差検出手段(70,S26,S104〜S114,S220,S222,S226〜S230,S278)とを設けたことにある。
【0015】
前記のように構成した本発明によれば、磁界信号取出手段が、太陽電池セルの各部に電流を流し、太陽電池セルの各部に流れる電流により発生されて磁気センサによって検出される太陽電池セルの各部の磁界を表す磁界信号を取出す。そして、差検出手段が、磁界信号取出手段によって取出された太陽電池セルの各部の磁界信号に基づき、一対の取出電極間にて第1方向に所定距離だけ隔てた第1検出位置及び第2検出位置における第2方向の磁界の強さ又は第1方向の電流の大きさをそれぞれ第1検出値及び第2検出値とし、第1検出値と第2検出値との差を検出する。
【0016】
本願発明者は、この種の太陽電池セルにおいて、発電面に欠陥が存在すると、欠陥位置において第1方向(複数の発電セルの接続方向)の電流の大きさ及び第2方向(取出電極の延設方向)の磁界の強さが小さくなることを発見した。そして、太陽電池セルの発電面に欠陥がない場合には、第1方向に所定距離(この距離は比較的短い)だけ隔てた第1検出位置及び第2検出位置における第2方向の磁界の強さ又は第1方向の電流の大きさの差はほぼ「0」となり、発電面に欠陥が存在すると、前記第1検出位置及び第2検出位置における第2方向の磁界の強さ又は第1方向の電流の大きさの差が大きくなることも発見した。したがって、前記本発明の他の特徴によれば、差検出手段によって検出される第1検出値と第2検出値との差により、発電面の欠陥を高精度で簡単に検出することができる。また、太陽電池セルに対して光を照射する場合、光を照射する側に磁気センサを配置し、磁気センサ及びその支持機構による影ができても、所定距離(この距離は比較的短い)だけ隔てた第1検出位置及び第2検出位置における第1検出値と第2検出値との差を検出しており、第1検出位置及び第2検出位置との影の濃淡はほぼ同じであるので、影の影響を除外することができ、発電面の欠陥を精度よく検出することができる。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、さらに、差検出手段によって検出された第1検出値と第2検出値との差が所定値よりも大きいとき、発電面の欠陥を判定する判定手段(S280)を設けたことにある。これによれば、太陽電池セルSCの発電面の欠陥が自動的に検出される。また、差検出手段によって検出された第1検出値と第2検出値との差の分布を視覚的に示す画像を表示する表示手段を設けてもよい。これによれば、作業者は、視覚を通じて取出電極の接続異常を認識可能となる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記磁界信号取出手段は、太陽電池セルを載置するステージ(10)と、ステージ上に載置された太陽電池セルに対して発電のために光を照射する第1光照射手段(52)と、ステージと第1光照射手段との間にて磁気センサをステージに対向させて支持する支持部材とを有し、さらに、支持部材に取付けられて、ステージ上に載置された太陽電池セルの支持部材と対向する領域に光を照射する第2光照射手段(51)を設けたことにある。これによれば、影によって太陽電池セルに抵抗値が高くなる箇所がなくなるので、影の影響をさらに的確に除外することができる。
【0019】
また、本発明の他の特徴は、前記磁界信号取出手段は、太陽電池セルに所定周期で変化する光を照射することにより太陽電池セルを発電動作させて太陽電池セルの各部に電流を流し、又は前記一対の取出電極に所定周期で変化する電圧を印加することにより太陽電池セルの各部に電流を流し、太陽電池セルの各部に流れる電流により発生されて前記磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号であって、前記所定周期で変化する磁界信号を取出すことにある。これによれば、外乱光や、外部磁界が存在しても、これらの影響を受けずに、太陽電池セルに対向する各部の箇所で磁界を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池セル検査装置の全体構成図である。
【図2】図1のステージ及び磁気センサの移動機構の具体例を示す概略斜視図である。
【図3】移動部材の位置する部分のX方向移動機構のY−Z平面に平行な断面図である。
【図4】(A)は太陽電池パネルの面積がステージの上面の面積よりも小さい場合における太陽電池パネルのステージ上への載置例を示す図であり、(B)は太陽電池パネルの面積がステージの上面の面積よりも大きい場合における太陽電池パネルのステージ上への載置例を示す図である。
【図5】図1の磁気センサ及びセンサ信号取出回路の詳細回路ブロック図である。
【図6】図1のロックインアンプの詳細回路ブロック図である。
【図7A】図1のコントローラによって実行されるデータ取得プログラムの前半部分を示すフローチャートである。
【図7B】前記データ取得プログラムの後半部分を示すフローチャートである。
【図8A】図1のコントローラによって実行される評価プログラムの先頭部分を示すフローチャートである。
【図8B】図1のコントローラによって実行される評価プログラムの図8Aに続く部分を示すフローチャートである。
【図8C】図1のコントローラによって実行される評価プログラムの図8Bに続く部分を示すフローチャートである。
【図8D】図1のコントローラによって実行される評価プログラムの図8Cに続く部分を示すフローチャートである。
【図8E】図1のコントローラによって実行される評価プログラムの図8Dに続く部分を示すフローチャートである。
【図8F】図1のコントローラによって実行される評価プログラムの図8Eに続く部分を示すフローチャートである。
【図8G】図1のコントローラによって実行される評価プログラムの図8Fに続く部分を示すフローチャートである。
【図9】太陽電池パネルの一例を示す概略平面図である。
【図10A】図9の太陽電池セルの概略平面図である。
【図10B】図10AのB−B線に沿って見た太陽電池セルの拡大断面図である。
【図11】磁気センサによる太陽電池パネルの走査態様を説明するための説明図である。
【図12】太陽電池セルの取出電極に接続異常がある場合における電流の変化を説明するための説明図である。
【図13】太陽電池セルの発電面に欠陥がある場合における電流の変化を説明するための説明図である。
【図14】太陽電池パネルに流れる電流の大きさの分布図である。
【図15】変形例に係る太陽電池セル検査装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
a.構成例
以下、本発明の一実施形態に係る太陽電池セル検査装置の構成例について図面を用いて説明する。図1は、この太陽電池セル検査装置の全体概略図である。図2は、測定対象である太陽電池パネルSPの各部に流れる電流によって発生する磁界を検出するための磁界検出機構の概略斜視図である。この太陽電池セル検査装置は、詳しくは後述する磁気センサ10に対向して配置されて太陽電池パネルSPを載置するためのステージ20と、磁気センサ10をX軸方向に移動させるためのX方向移動機構30と、磁気センサ10を含むX方向移動機構30をY軸方向に移動させるためのY方向移動機構40とを備えている。
【0022】
ステージ20は、方形状に形成されている。ステージ20の表面には多数の微小孔が形成されており、これらの多数の微小孔は共通にバキュームポンプ21に連通している。そして、バキュームポンプ21を作動させると、ステージ20の上面に載置された太陽電池パネルSPが微小孔を介して吸引されるようになっている。これは、後述するように、太陽電池パネルSPの中には柔軟性に富んだシート状に形成されているものもあり、このようなシート状の太陽電池パネルSPを単にステージ20上に載置しただけでは、シート状の太陽電池パネルSPの表面に凹凸が生じて後述する磁界測定が精度よく行われないことがあるためである。このような場合は、本実施形態のように、バキュームポンプ21でシート状の太陽電池パネルSPを吸引すれば、太陽電池パネルSPがステージ20上に吸着され、太陽電池パネルSPの表面の高さが均一になるために、後述する磁界測定の精度が良好になる。
【0023】
なお、この種のシート状の太陽電池パネルSPには様々な大きさのものが存在する。そして、シート状の太陽電池パネルSPをステージ20上にセットして、バキュームポンプ21を作動させる場合、太陽電池パネルSPがステージ20の上面の面積より小さければ、図4(A)に示すように、ステージ20上の太陽電池パネルSPが存在しない部分には、別の平板Hを置くようにするとよい。また、シート状の太陽電池パネルSPがステージ20の上面の面積より大きい場合には、図4(B)に示すように、太陽電池パネルSPの検査を行う部分をステージ20上に置き、それ以外の部分を巻いたりしてステージ20の下方に置けばよい。なお、ステージ20はシート状の太陽電池パネルSPをセットするための構造であるが、この太陽電池セル検査装置は、他の種類の太陽電池パネルSP(例えば、硬質の太陽電池パネルSP)をステージ20にセットして検査することも可能である。
【0024】
X方向移動機構30は、図3に示すX軸方向に垂直な断面図でも示すように、X軸方向に延設された長尺状の支持部材31を有する。支持部材31の両端近傍には、下方に突出した方形状の凸部31A,31Bが設けられている。支持部材31の凸部31A,31Bは、Y方向移動機構40を構成するY軸方向に延設された一対の支持部材41,42の上面に設けた溝41a,42a内にY軸方向に摺動可能に侵入している。支持部材41,42の溝41a,42aは、支持部材41,42に延設方向(Y軸方向)に沿って断面方形状に形成されている。支持部材41,42の下部には幅広の底部41b,42bがそれぞれ設けられ、支持部材41,42は底部41b,42bによりステージ20のX軸方向両側に安定して設置されるようになっている。
【0025】
支持部材41の溝41a内には、Y軸方向に延設されて支持部材31の凸部31Aを貫通する雄ねじ43が収容されている。支持部材31の凸部31A内には、雄ねじ43に螺合した図示しないナットが組み込まれており、雄ねじ43の回転により、支持部材31がY軸方向に移動するようになっている。すなわち、雄ねじ43と支持部材31の凸部31A内に組み込まれたナットにより、ボールねじ機構が構成されている。雄ねじ43の一端は、支持部材41の一端に組み付けたY方向モータ44の回転軸に連結され、雄ねじ43の他端は支持部材41の他端に回転可能に支持されている。これにより、Y方向モータ44の回転により雄ねじ43が軸線周りに回転して、支持部材31がY軸方向に移動する。
【0026】
X方向移動機構30の支持部材31には、X軸方向の両端部分を除いて、断面方形状に形成されて下方に開口されるとともにX軸方向に延設された凹部31aが設けられている。この支持部材31の凹部31aの前後方向内側面(Y軸方向内側面)には、同一高さ位置にて断面方形状の溝31b,31cがX軸方向に延設されて形成されている。これらの溝31b,31cには、方形状に形成した移動部材32の両側部に設けた方形状の凸部32a,32bが摺動可能に係合している。移動部材32の下面には、磁気センサ10がステージ20に対向するように固定されている。
【0027】
支持部材31の凹部31a内には、X軸方向に延設されて移動部材32を貫通する雄ねじ33が収容されている。移動部材32内には、X軸方向に延設された雄ねじ33に螺合した図示しないナットが組み込まれており、雄ねじ33の回転により、移動部材32がX軸方向に移動するようになっている。すなわち、雄ねじ33と移動部材32内に組み込まれたナットにより、ボールねじ機構が構成されている。雄ねじ33の一端は、支持部材31の一端に組み付けたX方向モータ34の回転軸に連結され、雄ねじ33の他端は支持部材31の他端にて回転可能に支持されている。これにより、X方向モータ34の回転により雄ねじ33が軸線周りに回転して、移動部材32が磁気センサ10と共にX軸方向に移動する。
【0028】
支持部材31の両側底面には、所定の間隔をおいて複数の発光素子(LED)51が固定されている。この発光素子51は、太陽電池パネルSPに対する光の照射量が減少した箇所における抵抗値が他に比べて高くならないようにするもので、X方向移動機構30による影に起因して抵抗値が増大しないようにするためのものである。言い換えれば、この発光素子51による太陽電池パネルSPへの照射は、太陽電池パネルSPに発電させる目的ではなく、太陽電池パネルSPの照射量の減少した箇所の抵抗値が他に比べて高くならないようにするためのものであるので、発光素子51による光の照射強度は後述する発電のための発光素子52に比べれば微弱であってもよい。
【0029】
ふたたび図1の説明に戻ると、ステージ20の上面に対向する位置であって、X方向移動機構30よりもさらに上方の位置には、複数の発光素子(LED)52が配置されている。複数の発光素子52はマトリクス状に配置されて、太陽電池パネルSPをステージ20上に載置した状態で、太陽電池全体に均一な光量(すなわち強度)の光が照射されるようになっている。
【0030】
バキュームポンプ21には、ポンプ駆動回路61が接続されている。ポンプ駆動回路61は、後述するコントローラ70による指示により、バキュームポンプ21の作動開始及び作動停止を制御する。
【0031】
X方向モータ34内には、X方向モータ34の回転を検出して、その回転を表す回転信号を出力するエンコーダ34aが組み込まれている。この回転信号は、X方向モータ34が所定の微少角度だけ回転するたびにハイレベルとローレベルとを交互に切替えるパルス列信号であって、回転方向を識別するために互いにπ/2だけ位相のずれたA相信号とB相信号とで構成される。回転信号は、X方向位置検出回路62及びX方向フィードモータ制御回路63に出力される。X方向位置検出回路62は、前記回転信号のパルス数をX方向モータ34の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値からX方向モータ34による移動部材32のX軸方向位置(すなわち磁気センサ10のX軸方向位置)を検出し、検出したX軸方向位置をX方向フィードモータ制御回路63及び後述するコントローラ70に出力する。X方向フィードモータ制御回路63は、コントローラ70の指示により、X方向モータ34の駆動及び停止を制御する。このX方向モータ34の駆動時においては、X方向フィードモータ制御回路63は、エンコーダ34aからの回転信号を用いてX方向モータ34を所定の回転速度で回転させる。
【0032】
X方向位置検出回路62におけるカウント値の初期設定は、電源投入時にコントローラ70の指示によって行われる。すなわち、コントローラ70は、電源投入時に、X方向フィードモータ制御回路63に移動部材32の初期位置に対応したX軸方向限界位置への移動、及びX方向位置検出回路62に初期設定を指示する。この指示により、X方向フィードモータ制御回路63は、X方向モータ34を駆動して移動部材32を初期位置に対応したX軸方向限界位置まで移動させる。X方向位置検出回路62は、移動部材32のX軸方向への移動中、X方向モータ34内のエンコーダ34aからの回転信号を入力し続けている。そして、移動部材32が初期位置に対応したX軸方向限界位置まで達してX方向モータ34の回転が停止すると、X方向位置検出回路62はエンコーダ34aからの回転信号の入力停止を検出して、カウント値を「0」にリセットする。このとき、X方向位置検出回路62は、X方向フィードモータ制御回路63に出力停止のための信号を出力し、これにより、X方向フィードモータ制御回路63はX方向モータ34への駆動信号の出力を停止する。その後に、X方向モータ34が駆動された際には、X方向位置検出回路62は、回転信号のパルス数をX方向モータ34の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値に基づいて移動部材32のX軸方向位置を計算し、計算したX軸方向位置をX方向フィードモータ制御回路63及びコントローラ70に出力し続ける。
【0033】
Y方向モータ44内には、Y方向モータ44の回転を検出して、前記X方向モータ34と同様に、その回転を表す回転信号を出力するエンコーダ44aが組み込まれている。この回転信号は、Y方向位置検出回路64及びY方向フィードモータ制御回路65に出力される。Y方向位置検出回路64は、前記回転信号のパルス数をY方向モータ44の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値からY方向モータ44による移動部材32のY軸方向位置(すなわち磁気センサ10のY軸方向位置)を検出し、検出したY軸方向位置をY方向フィードモータ制御回路65及びコントローラ70に出力する。Y方向フィードモータ制御回路65は、コントローラ70の指示により、前記X方向フィードモータ制御回路63の場合と同様に、Y方向モータ44の駆動及び停止を制御する。
【0034】
Y方向位置検出回路64におけるカウント値の初期設定も、電源投入時にコントローラ70の指示によって行われる。すなわち、コントローラ70は、電源投入時に、Y方向フィードモータ制御回路65に移動部材32の初期位置に対応したY軸方向限界位置への移動、及びY方向位置検出回路64に初期設定を指示する。この指示により、Y方向フィードモータ制御回路65は、Y方向モータ44を駆動して移動部材32を初期位置に対応したY軸方向限界位置まで移動させる。Y方向位置検出回路64は、移動部材32のY軸方向への移動中、Y方向モータ44内のエンコーダ44aからの回転信号を入力し続けている。そして、移動部材32が初期位置に対応したY軸方向限界位置まで達してY方向モータ44の回転が停止すると、Y方向位置検出回路64はエンコーダ44aからの回転信号の入力停止を検出して、カウント値を「0」にリセットする。このとき、Y方向位置検出回路64は、Y方向フィードモータ制御回路65に出力停止のための信号を出力し、これにより、Y方向フィードモータ制御回路65はY方向モータ44への駆動信号の出力を停止する。その後に、Y方向モータ44が駆動された際には、Y方向位置検出回路64は、回転信号のパルス数をY方向モータ44の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値に基づいて移動部材32のY軸方向位置を計算し、計算したY軸方向位置をY方向フィードモータ制御回路65及びコントローラ70に出力し続ける。
【0035】
この太陽電池セル検査装置は、さらに、発光信号供給回路71、第1光源駆動回路72、センサ信号取出回路73、ロックインアンプ74、第2光源駆動回路75及びコントローラ70を備えている。発光信号供給回路71は、正弦波発振器及び矩形波変換回路を含み、コントローラ70によって作動制御されて、正弦波発振器によって発振される正弦波信号を発光制御信号として第1光源駆動回路72に供給する。なお、発光制御信号は、「0」を基準に正負に変化する信号であり、その周波数は、例えば数10ヘルツから数100ヘルツ程度である。また、発光信号供給回路71は、前記正弦波信号からなる発光制御信号を矩形波変換回路による変換により、前記発光制御信号と同期して「0」を中心として正負に変化する矩形波信号を生成して、参照信号としてロックインアンプ74に出力する。第1光源駆動回路72も、コントローラ70によって作動制御されて、前記供給された発光制御信号によって複数の発光素子52を同時に発光制御する。発光素子52は、前記発光制御信号に同期して正弦波状に変化する発光強度で太陽電池パネルSPの表面を照射する。
【0036】
次に、磁気センサ10について説明しておく。磁気センサ10は、図5に示すように、X軸方向の磁界を検出するX方向磁気センサ10Aと、Y軸方向の磁界の変化を検出するY方向磁気センサ10Bとを備えている。X方向磁気センサ10Aは、抵抗r11,r12,r13及び磁気抵抗素子MR1からなるブリッジ回路で構成されており、抵抗r11,r13の接続点と、抵抗r12及び磁気抵抗素子MR1の接続点との間に、センサ信号取出回路73の後述する定電圧供給回路73aから電圧+V,−Vが印加されるようになっている。また、X方向磁気センサ10Aにおいては、抵抗r13及び磁気抵抗素子MR1の接続点と、抵抗r11,r12間の接続点との間の電圧をX方向磁気検出信号として出力する。抵抗r11,r12,r13の値は同じであり、磁界の強さが「0」であるときの磁気抵抗素子MR1の抵抗値に等しい。これにより、ほぼ「0」を基準としたX軸方向の磁界の正負の変化により、X方向磁気検出信号はほぼ「0」を基準にX軸方向の磁界の大きさに比例して正負に変化する電圧信号となる。
【0037】
Y方向磁気センサ10Bは、抵抗r21,r22,r23及び磁気抵抗素子MR2からなるブリッジ回路で構成されており、抵抗r21,r22の接続点と、抵抗r23及び磁気抵抗素子MR2の接続点との間に、センサ信号取出回路73の後述する定電圧供給回路73bから電圧+V,−Vが印加されるようになっている。また、Y方向磁気センサ10Bにおいては、抵抗r22及び磁気抵抗素子MR2の接続点と、抵抗r21,r23間の接続点との間の電圧をY方向磁気検出信号として出力する。抵抗r21,r22,r23の値は同じであり、磁界の強さが「0」であるときの磁気抵抗素子MR2の抵抗値に等しい。これにより、ほぼ「0」を基準としたY軸方向の磁界の正負の変化により、Y方向磁気検出信号はほぼ「0」を基準にY軸方向の磁界の大きさに比例して正負に変化する電圧信号となる。
【0038】
センサ信号取出回路73は、定電圧供給回路73a,73b及び増幅器73c,73dを備えている。定電圧供給回路73a,73bは、コントローラ70からの指示により、X方向磁気センサ10A及びY方向磁気センサ10Bに対して、定電圧+V,−Vを供給する。増幅器73c、73dは、X方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号をそれぞれ増幅してロックインアンプ74に出力する。
【0039】
ロックインアンプ74は、図6に詳細に示すように、X方向磁気センサ10Aから増幅器73cを介して供給されるX方向磁気検出信号を入力するハイパスフィルタ74aと、Y方向磁気センサ10Bから増幅器73dを介して供給されるY方向磁気検出信号を入力するハイパスフィルタ74bとを備えている。ハイパスフィルタ74a,74bは、X方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号に含まれる、磁界の強さに比例した信号成分以外の不要な成分を取り除くとともに、信号をグランドレベルを中心に変化するようにする。
【0040】
ハイパスフィルタ74aの出力は、増幅器74cを介して位相検波回路74d,74eに供給される。位相検波回路74d,74eは、それぞれ乗算器によって構成されている。位相検波回路74dは、ハイパスフィルタ74a及び増幅器74cを介して供給されるX方向磁気検出信号に、発光信号供給回路71からの参照信号を乗算してローパスフィルタ74fに出力する。位相検波回路74eは、ハイパスフィルタ74a及び増幅器74cを介して供給されるX方向磁気検出信号に、発光信号供給回路71からの参照信号を位相シフト回路74gで90度位相を遅らせた遅延参照信号を乗算してローパスフィルタ74hに出力する。これにより、ローパスフィルタ74fにはX方向磁気検出信号の発光制御信号(参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ74fは供給された成分信号をローパスフィルタ処理してX方向磁気検出信号の発光制御信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。ローパスフィルタ74hにはX方向磁気検出信号の発光制御信号よりも90度位相を遅らせた信号(遅延参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ74hは供給された成分信号をローパスフィルタ処理してX方向磁気検出信号の発光制御信号よりも90度位相を遅らせた信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。
【0041】
ハイパスフィルタ74bの出力は、増幅器74iを介して位相検波回路74j,74kに供給される。位相検波回路74j,74kには、ローパスフィルタ74m,74nが接続されている。位相検波回路74j,74k及びローパスフィルタ74m,74nは、前述した位相検波回路74d,74e及びローパスフィルタ74f,74hと同様に構成されている。これにより、ローパスフィルタ74mにはY方向磁気検出信号の発光制御信号(参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ74mは供給された成分信号をローパスフィルタ処理してY方向磁気検出信号の発光制御信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。ローパスフィルタ74nにはY方向磁気検出信号の発光制御信号よりも90度位相を遅らせた信号(遅延参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ74nは供給された成分信号をローパス処理してY方向磁気検出信号の発光制御信号よりも90度位相を遅らせた信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。ローパスフィルタ74f,74h,74m,74nは、A/D変換器74o,74p,74q,74rにそれぞれ接続されている。A/D変換器74o,74p,74q,74rは、所定の時間間隔ごとに、ローパスフィルタ74f,74h,74m,74nからの信号をそれぞれA/D変換してコントローラ70に供給する。
【0042】
ふたたび図1の説明に戻り、第2光源駆動回路75は、コントローラ70により指示されて、複数の発光素子51を同時に点灯させる。この場合、複数の発光素子51を点灯制御する駆動信号は、直流信号でもよいし、発光信号供給回路71が出力する信号の周期とは異なった周期の信号でもよい。また、上述のように、発光素子51による太陽電池パネルSPへの照射は、太陽電池パネルSPに発電させる目的ではなく、太陽電池パネルSPの発光素子52の光の照射量が減少した箇所の抵抗値が他に比べて高くならないようにするためのものであるので、駆動信号の大きさは第1光源駆動回路72に比べて微弱であってもよい。
【0043】
コントローラ70は、CPU、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータと、ハードディスクや不揮発性メモリなどの記憶装置と、入出力インタフェース等から構成される電子制御装置である。コントローラ70は、記憶装置に記憶された図7A及び図7Bのデータ取得プログラム及び図8A乃至図8Gの評価プログラムを実行してこの太陽電池セル検査装置の動作を制御する。コントローラ70には、作業者が各種パラメータや処理等を指示するための入力装置77と、作業者に対して作動状況等を視覚的に知らせるための表示装置78とが接続されている。
【0044】
b.太陽電池パネル例
次に、太陽電池パネルSPについて説明しておく。太陽電池パネルSPは、図9に示すように、マトリクス状に配置された多数の太陽電池セルSCが、基板80上に固定されている。本実施形態では、X方向にtmax個、Y方向にsmax個の太陽電池セルSCが配置されているものとする。
【0045】
各太陽電池セルSCは、図10A及び図10Bに示すように、方形状に形成され、外部に電力を取出すための長尺状の一対の取出電極(正電極及び負電極)81,82を上面にて平行に延設させており、一対の取出電極81,82の間を前記取出電極81,82と同一方向に延設させた複数の発電セル83を直列接続した構造を有している。各発電セル83は、表面電極83a、半導体層83b及び裏面電極83cからなる。半導体層83bは、上側をN層とするとともに下側をP層としており、発生電流は裏面電極83cから表面電極83aの方向に流れる。隣り合う発電セル83,83間は、一方の表面電極83aと他方の裏面電極83cが導電層84によって電気的に接続され、かつ絶縁層85によって絶縁されている。一端(図示右側端)の発電セル83の表面電極83aは、導電層からなる内部電極86を介して取出電極81に接続され、この発電セル83の外側には絶縁層87aが設けられている。他端(図示左側端)の発電セル83の裏面電極83cは、導電層からなる内部電極88を介して取出電極82に接続されており、この発電セル83の外側には絶縁層87bが設けられている。この太陽電池セルSCの上面はガラス層89で覆われており、取出電極81,82は、内部電極86,88に導電性ペースト又は半田により接続されている。
【0046】
そして、図9に示すように、Y方向に配置されたsmax個の太陽電池セルSCの各電極81,82は接続線91でそれぞれ直列に接続され、この直列に接続されたsmax個の電極81,82は接続線92,93によりそれぞれ並列に接続されている。そして、接続線92,93から電力が出力されるようになっている。なお、この太陽電池セルSCの検査の場合には、接続線92,93間に後述する抵抗Rcsが導線L1,L2を介して接続される。そして、電流は図示矢印の方向に流れる。
【0047】
c.作動説明
次に、上記のように構成した太陽電池セル検査装置の動作について説明する。作業者は、図9に示すように、検査対象となる太陽電池パネルSPに導線L1,L2を介して小さな抵抗Rcs(例えば、5オーム程度の抵抗)を接続して、ステージ20上に載置する。この場合、太陽電池パネルSPのX−Y平面の原点となる位置(後述するプログラムで変数n,mが共に「1」となる位置)の近傍のコーナーを、ステージ20の所定位置(本実施形態では図2の左下に位置するコーナー付近)に合わせる。なお、抵抗Rcsを接続する理由は、発光素子51,52を用いた光の照射により、太陽電池セルSCの発電による電流が太陽電池セルSCを流れるようにするためである。この状態で、太陽電池セル検査装置の電源が投入されると、上述したように、コントローラ70の指示により、X方向フィードモータ制御回路63及びY方向フィードモータ制御回路65は磁気センサ10をX方向及びY方向の限界位置に移動させるとともに、X方向位置検出回路62及びY方向位置検出回路64は検出されるX方向位置及びY方向位置を初期値に設定する。
【0048】
その後、作業者は、入力装置77を操作することにより、太陽電池パネルSPの計測に必要なパラメータを入力する。この場合、必要なパラメータとしては、太陽電池パネルSPのX,Y方向の長さ、X,Y方向への磁気センサ10の移動ピッチ(太陽電池パネルSPのX,Y方向の走査間隔)ΔX,ΔY、太陽電池セルSCのX方向及びY方向の数tmax,smax、各太陽電池セルSCのX方向及びY方向の長さなどである。この入力されたパラメータは、コントローラ70に記憶される。また、後述するデータ処理プログラムや評価プログラムにて使用されるX方向終了位置Xmax、Y方向終了位置Ymax、値Nn、値Nm等のパラメータが、この入力されたパラメータから計算されて記憶される。なお、移動ピッチΔX,ΔYは微小値(例えば、1mm)であり、作業者が入力するのではなく、予め用意された値でもよい。
【0049】
この状態で、作業者は、入力装置77を操作することにより、バキュームポンプ21の作動開始をコントローラ70に入力指示する。これにより、コントローラ70はポンプ駆動回路61を制御して、バキュームポンプ21を作動させる。このバキュームポンプ21の作動により、ステージ20の上面に載置された太陽電池パネルSPが微小孔を介して吸引されて、太陽電池パネルSPがステージ20上に固定される。したがって、太陽電池パネルSPが柔軟性に富んだシート状のものであっても、太陽電池パネルSPがステージ20状に吸着され、太陽電池パネルSPの表面の高さが均一になるために、後述する磁界測定の精度が良好になる。なお、バキュームポンプ21による太陽電池パネルSPの吸引が不必要ない場合には、特に、バキュームポンプ21を作動させる必要はない。
【0050】
次に、作業者は、入力装置77の操作により、コントローラ70に図7A及び図7Bのデータ取得プログラムの実行を開始させる。すなわち、太陽電池パネルSPの計測の開始をコントローラ70に指示する。この指示に応答して、コントローラ70は、図7AのステップS10にてデータ取得プログラムの実行を開始し、ステップS12にて変数nを「0」に初期設定するとともに、変数m,aをそれぞれ「1」に初期設定する。変数n,mは、太陽電池パネルSPに対する磁気センサ10の走査位置を示す変数である。なお、磁気センサ10は、図11に示すように、まず、X方向に初期値Xsによって表される開始位置から終了値Xmaxによって表される終了位置を越えるまで所定の移動ピッチΔXずつ移動制御される。そして、X方向の終了位置に達すると、磁気センサ10はY方向に所定の移動ピッチΔYだけ移動制御され、その後に、X方向の終了位置からX方向の開始位置まで移動ピッチΔXずつ移動制御される。そして、ふたたび、磁気センサ10はY方向に移動ピッチΔYだけ移動制御されて、X方向の開始位置から終了位置まで移動ピッチΔXずつ移動制御される。このように、磁気センサ10は、X方向に往復運動しながらY方向に移動して、太陽電池パネルSPを走査する。なお、移動ピッチΔX,ΔYは、太陽電池セルSCの縦横の長さに比べて極めて小さい。変数aは、「1」により磁気センサ10の中心位置がX軸方向正側に移動している状態を表し、「−1」により磁気センサ10の中心位置がX軸方向負側に移動している状態を表している。以降、この磁気センサ10の中心位置を検査位置という。
【0051】
前記ステップS12の処理後、コントローラ70は、ステップS14にて、X方向フィードモータ制御回路63に対して磁気センサ10をX軸方向に移動して検査位置がX軸方向の初期値Xsによって表される初期位置になるように指示するとともに、Y方向フィードモータ制御回路65に対して磁気センサ10をY軸方向に移動して検査位置がY軸方向の初期値Ysによって表される初期位置になるように指示する。この指示に応答して、X方向フィードモータ制御回路63は、X方向位置検出回路62からX方向検出位置(X軸方向の検査位置すなわち測定位置)を入力しながら、X方向検出位置が初期値Xsに一致するまでX方向モータ34を駆動制御する。Y方向フィードモータ制御回路65は、Y方向位置検出回路64からY方向検出位置(Y軸方向の検査位置すなわち測定位置)を入力しながら、Y方向検出位置が初期値Ysに一致するまでY方向モータ34を駆動制御する。
【0052】
ステップS14の処理後、コントローラ70は、ステップS16にて発光信号供給回路71の作動開始を指示する。この指示に応答して、発光信号供給回路71は、正弦波状の発光制御信号を光源駆動回路72に供給するとともに、前記発光制御信号と同期した矩形波状の参照信号をロックインアンプ74に供給し始める。次に、コントローラ70は、ステップS18にて第1光源駆動回路72の作動開始を指示する。この指示に応答して、第1光源駆動回路72は、前記供給された発光制御信号に応じて正弦波状に変化する駆動制御信号を発光素子52に供給して、発光素子52を発光制御し始める。次に、コントローラ70は、ステップS20にて第2光源駆動回路75の作動開始を指示する。この指示に応答して、第2光源駆動回路75は、発光素子51を発光制御し始める。次に、コントローラ70は、ステップS22にてセンサ信号取出回路73の作動開始を指示する。この指示に応答して、センサ信号取出回路73内の定電圧供給回路73a,73bは、X方向磁気センサ10A及びY方向磁気センサ10Bに定電圧信号+V,−Vを供給し始める。これにより、X方向磁気センサ10A及びY方向磁気センサ10BによるX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号が、増幅器73c,73dを介してロックインアンプ74にそれぞれ供給され始める。
【0053】
このX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号について説明する。前記発光素子52の発光制御により、発光素子52は、その発光強度を前記発光制御信号に同期して正弦波状に変化させながら、太陽電池パネルSPの表面全体に均等に光を照射する。この光の照射により、太陽電池パネルSPの各太陽電池セルSCは前記発光強度に応じて電力を発電し始める。この電力の発電により、各太陽電池セルSCには電流が流れ始めるとともに、導線L1,L2を介して抵抗Rcsにも電流が流れ始める(図9の矢印参照)。各太陽電池セルSCの表裏面近傍には、前記電流による磁界が発生する。そして、X方向磁気センサ10Aは、X方向の磁界Hの大きさに比例した電圧をX方向磁気検出信号として出力し始める。また、Y方向磁気センサ10Bは、Y方向の磁界Hの大きさに比例した電圧をY方向磁気検出信号として出力し始める。これらのX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号は、前記発光素子52の発光強度が正弦波状に変化するので、正弦波状に変化する信号である。ただし、X方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号の位相は、発光素子52を駆動制御するための正弦波状の発光制御信号とは若干異なる。
【0054】
ロックインアンプ74においては、入力されたX方向磁気検出信号がハイパスフィルタ74a及び増幅器74cを介して位相検波回路(乗算器)74d,74eにそれぞれ供給されるとともに、入力されたY方向磁気検出信号がハイパスフィルタ74b及び増幅器74iを介して位相検波回路(乗算器)74j,74kにそれぞれ供給される。位相検波回路74d,74jには、発光信号供給回路71からの矩形波状の参照信号が供給されている。また、位相検波回路74e,74kには、前記参照信号の位相を位相シフト回路74gで90度遅らせた遅延参照信号が供給されている。そして、位相検波回路74d,74eは、増幅器74cを介して供給されたX方向磁気検出信号に参照信号及び遅延参照信号をそれぞれ乗算して、乗算した信号をローパスフィルタ74f,74hを介してA/D変換器74o,74pにそれぞれ供給する。位相検波回路74j,74kは、増幅器74cを介して供給されたY方向磁気検出信号に参照信号及び遅延参照信号をそれぞれ乗算して、乗算した信号をローパスフィルタ74m,74nを介してA/D変換器74q,74rにそれぞれ供給する。
【0055】
ここで、ローパスフィルタ74f,74h,74m,74nは供給された信号の成分の大きさを表す信号すなわち正弦波状の信号の振幅に比例した大きさを表す信号を出力するように機能する。したがって、A/D変換器74oには、X方向磁気検出信号の参照信号(すなわち発光制御信号)に同期した信号成分の大きさを表す信号が供給される。A/D変換器74pには、X方向磁気検出信号の参照信号から90度だけ位相の遅れた信号成分の大きさを表す信号が供給される。A/D変換器74qには、Y方向磁気検出信号の参照信号に同期した信号成分の大きさを表す信号が供給される。A/D変換器74rには、Y方向磁気検出信号の参照信号から90度だけ位相の遅れた信号成分の大きさを表す信号が供給される。そして、A/D変換器74o,74p,74q,74rは、それぞれ供給された信号を所定時間ごとにサンプリングしてA/D変換し、A/D変換したサンプリングデータをコントローラ70に供給する。したがって、コントローラ70には前記各信号成分の所定時間ごとの大きさを表すサンプリングデータが所定時間ごとに供給されるようになる。
【0056】
前記ステップS22の処理後、コントローラ70は、ステップS24にて変数nに変数aを加算する。この場合、ステップS24の処理前の変数nは「0」であり、変数aは「1」であるので、変数nは「1」に変更される。前記ステップS24の処理後、コントローラ70は、ステップS26にて、ロックインアンプ74のA/D変換器74o,74p,74q,74rから供給されるサンプリングデータを取込み、ステップS28にて取込んだ各サンプリングデータの数が所定数Kに達したか否かを判定する。この所定数Kは、例えば数個から数十個の各サンプリングデータの数を表す値に設定されている。各サンプリングデータの数が所定数Kに達していなければ、コントローラ70は、ステップS28にて「No」と判定して、ステップS26にてA/D変換器74o,74p,74q,74rから次に出力されるサンプリングデータを取込む。そして、A/D変換器74o,74p,74q,74rから取込んだ各サンプリングデータの数が所定数Kに達すると、コントローラ70は、ステップS28にて「Yes」と判定して、ステップS30以降の処理を実行する。ステップS26にて取込まれたサンプリングデータは、変数n,mによって指定されるサンプリングデータ群として、RAMに記憶される。
【0057】
具体的には、A/D変換器74oから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちX方向磁気検出信号の参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sx1(n,m)としてRAMに記憶される。A/D変換器74pから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちX方向磁気検出信号の遅延参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sx2(n,m)としてRAMに記憶される。A/D変換器74pから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちY方向磁気検出信号の参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sy1(n,m)としてRAMに記憶される。A/D変換器74rから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちY方向磁気検出信号の遅延参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sy2(n,m)としてRAMに記憶される。なお、この場合の変数n,mは、共に「1」である。
【0058】
前記ステップS26,S28の処理後、コントローラ70は、ステップS30にて変数aが「1」であるか否かを判定する。変数aは「1」に初期設定されているので、この場合、コントローラ70は、ステップS30にて「Yes」と判定して、ステップS32にて、値Xs+n・ΔXがX軸方向の終了値Xmaxよりも大きいか否かを判定する。値Xs+n・ΔXは、X軸方向の走査間隔を表す所定値ΔXに変数nを乗算して初期値Xsを加算した値であり、次のX軸方向の検出位置(X軸方向の走査位置すなわち測定位置)を表す値(図11参照)である。値Xs+n・ΔXが終了値Xmax以下であれば、コントローラ70は、ステップS32にて「No」と判定して、ステップS34にて、X方向フィードモータ制御回路63に、磁気センサ10の中心位置をX軸方向正側に移動させるように指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路63は、X方向モータ34を作動させて磁気センサ10の中心位置をX軸方向正側に移動させ始める。
【0059】
次に、コントローラ70は、ステップS36にてX方向位置検出回路62からX方向位置を入力し、ステップS38にて入力したX方向位置が次のX軸方向の検出位置に達したか否か、すなわちX方向位置を示す値が値Xs+n・ΔX以上になったか否かを判定する。そして、X方向位置検出回路62から入力したX方向位置が次のX軸方向の検出位置に達するまで、コントローラ70は、ステップS38にて「No」と判定し続けて、ステップS36,S38の処理を繰り返し実行する。X方向位置検出回路62から入力したX方向位置が次のX軸方向の検出位置に達すると、コントローラ70は、ステップS38にて「Yes」と判定し、ステップS40にてX方向フィードモータ制御回路63に、磁気センサ10のX軸方向正側への移動を停止させることを指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路63は、X方向モータ34の作動を停止させて、磁気センサ10のX軸方向正側への移動を停止させる。その結果、磁気センサ10は、値Xs+n・ΔXで表されたX軸方向位置、かつY軸方向初期値Ysを磁気センサ10の検出位置として、太陽電池パネルSPの磁界を検出し始める。
【0060】
前記ステップS40の処理後、コントローラ70は、ステップS24に戻って、ステップS24の処理によって変数nに変数a(この場合、a=1)を加算して、前述のステップS26,S28のサンプリングデータの取込み処理を実行する。これらのステップS26,S28の処理により、値Xs+(n−1)・ΔXで表されたX軸方向位置、かつY軸方向初期値Ysを検出位置とする磁気センサ10の磁界検出によるサンプリングデータがRAMに新たに記憶される。具体的には、X方向磁気検出信号の参照信号及び遅延参照とそれぞれ同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのサンプリングデータが、サンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m)としてRAMに記憶される。また、Y方向磁気検出信号の参照信号及び遅延参照信号とそれぞれ同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのサンプリングデータが、サンプリングデータ群Sy1(n,m),Sy2(n,m)としてRAMに記憶される。なお、この場合の変数nは「2」であり、変数mは「1」である。
【0061】
そして、コントローラ70は、次のX軸方向の検出位置(X軸方向の走査位置)を表す値Xs+n・ΔXが終了値Xmaxよりも大きくなるまで、ステップS24〜S40の処理により、磁気センサ10による検出位置をX軸方向正側に所定値ΔXずつ移動させるとともに、変数nを「1」ずつ増加させながら、サンプリングデータを取込む。そして、次のX軸方向の検出位置を表す値Xs+n・ΔXが終了値Xmaxよりも大きくなると、コントローラ70は、ステップS32にて「Yes」と判定して、プログラムを図7BのステップS52に進める。この状態では、サンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1,2,3・・・nmax,m=1)がRAMに記憶される。なお、値nmaxは、終了値Xmax直前の検出位置によるサンプリングデータ群に関する変数nの値であって、X軸方向における検出位置の数を表している。
【0062】
コントローラ70は、ステップS52において、Y方向フィードモータ制御回路65に、磁気センサ10による検出位置をY軸方向正側に移動させるように指示する。これにより、Y方向フィードモータ制御回路65は、Y方向モータ34を作動させて磁気センサ10による検出位置をY軸方向正側に移動させ始める。次に、コントローラ70は、ステップS54にてY方向位置検出回路64からY方向位置を入力し、ステップS56にて入力したY方向位置が次のY軸方向の検出位置Ys+m・ΔYに達したか否かを判定する。この次のY軸方向の検出位置Ys+m・ΔYは、X軸方向の次の検出位置Xs+n・ΔXと同様に、Y軸方向の走査間隔を表す所定値ΔYに変数mを乗算して初期値Ysを加算した値である(図11参照)。そして、Y方向位置検出回路64から入力したY方向位置が次のY軸方向の検出位置に達するまで、コントローラ70は、ステップS56にて「No」と判定し続けて、ステップS54,S56の処理を繰り返し実行する。Y方向位置検出回路64から入力したY方向位置が次のY軸方向の検出位置に達すると、コントローラ70は、ステップS56にて「Yes」と判定し、ステップS58にてY方向フィードモータ制御回路65に、磁気センサ10のY軸方向正側への移動を停止させることを指示する。これにより、Y方向フィードモータ制御回路65は、Y方向モータ34の作動を停止させて、磁気センサ10検出位置のY軸方向正側への移動を停止させる。その結果、磁気センサ10は、値Xs+(n-1)・ΔX(=Xs+(nmax-1)・ΔX)で表されたX軸方向位置、かつ値Ys+m・ΔY(=Ys+ΔY)で表されたY軸方向位置を検出位置として、太陽電池パネルSPの表面近傍の磁界を検出し始める。
【0063】
前記ステップS58の処理後、コントローラ70は、ステップS60にて、Y方向位置検出回路64からY方向位置を入力して、入力したY方向位置が終了値Ymaxによって表されたY軸方向の走査終了位置を越えたか否かを判定する。Y方向位置が走査終了位置を越えていなければ、コントローラ70は、ステップS60にて「No」と判定して、ステップS62にて変数mに「1」を加算し、ステップS64にて変数aに「−1」を乗算する。この場合、ステップS62の処理によって変数mは「2」になり、ステップS64の処理によって変数aは「−1」になる。また、変数nは値nmaxに保たれている。前記ステップS64の処理後、コントローラ70は、ステップS26に戻って、ステップS26,S28の処理より、K個ずつの各サンプリングデータ群Sx1(nmax,2),Sx2(nmax,2),Sy1(nmax,2),Sy2(nmax,2)をロックインアンプ74からそれぞれ取込み記憶する。
【0064】
前記ステップS26,S28の処理後、コントローラ70は、ステップS30にて変数aは「1」であるか否かを判定する。この場合、前記ステップS64の処理によって変数aは「−1」に設定されているので、コントローラ70は、ステップS30にて「No」と判定して、ステップS42にて、値Xs+(n−2)・ΔXがX軸方向の初期値Xsよりも小さいか否かを判定する。この場合、変数nはnmaxであり、値Xs+(n−2)・ΔXは、太陽電池パネルSPの図11における右端から2番目の検出位置を左側へ移動させた際における次のX軸方向の検出位置(X軸方向の走査位置)を表す値である。値Xs+(n−2)・ΔXが初期値Xsよりも小さくなければ、コントローラ70は、ステップS42にて「No」と判定して、ステップS44にて、X方向フィードモータ制御回路63に、磁気センサ10による検出位置をX軸方向負側に移動させるように指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路63は、X方向モータ34を作動させて磁気センサ10による検出位置をX軸方向負側に移動させ始める。
【0065】
次に、コントローラ70は、ステップS46にてX方向位置検出回路62からX方向位置を入力し、ステップS48にて入力したX方向位置が次のX軸方向の検出位置に達したか否か、すなわちX方向位置を示す値が値Xs+(n−2)・ΔX以下になったか否かを判定する。そして、X方向位置検出回路62から入力したX方向位置が次のX軸方向の検出位置に達するまで、コントローラ70は、ステップS48にて「No」と判定し続けて、ステップS46,S48の処理を繰り返し実行する。X方向位置検出回路62から入力したX方向位置が次のX軸方向の検出位置に達すると、コントローラ70は、ステップS48にて「Yes」と判定し、ステップS50にてX方向フィードモータ制御回路63に、検出位置のX軸方向負側への移動を停止させることを指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路63は、X方向モータ34の作動を停止させて、磁気センサ10による検出位置のX軸方向負側への移動を停止させる。その結果、磁気センサ10は、値Xs+(n−2)・ΔX(=Xs+(nmax−2)・ΔX)で表されたX軸方向位置、かつ値Ys+(m−1)・ΔYs(=Ys+ΔYs)で表されたY軸方向位置を検出位置として、太陽電池パネルSPの表面近傍の磁界を検出し始める。
【0066】
前記ステップS50の処理後、コントローラ70は、ステップS24に戻って、ステップS24の処理によって変数nに変数a(この場合、a=−1)を加算して、前述のステップS26,S28のサンプリングデータの取込み処理を実行する。これらのステップS26,S28の処理により、前記ステップS24の処理前の値Xs+(n−2)・ΔX(=Xs+(nmax−2)・ΔX)で表されたX軸方向位置、かつ値Ys+(m−1)・ΔYs(=Ys+ΔYs)で表されたY軸方向位置を検出位置とするK個ずつの各サンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)が取込み記憶される。なお、この取込み記憶されるサンプリングデータ群に関する変数nは値nmax−1であり、変数mは「2」である。
【0067】
そして、コントローラ70は、次のX軸方向の検出位置(X軸方向の走査位置)を表す値Xs+(n−2)・ΔXが初期値Xsよりも小さくなるまで、ステップS24〜S30,S42〜S50の処理により、検出位置をX軸方向負側に所定値ΔXずつ移動させるとともに、変数nを「1」ずつ減少させながら、サンプリングデータを取込む。そして、次のX軸方向の検出位置を表す値Xs+(n−2)・ΔXが初期値Xsよりも小さくなると、コントローラ70は、ステップS42にて「Yes」と判定して、図7BのステップS52に進む。なお、このときの変数nは「1」である。この状態では、前述したサンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1,2,3・・・nmax,m=1)に加えて、サンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1,2,3・・・nmax,m=2)がRAMに記憶される。
【0068】
コントローラ70は、前述したステップS52〜S58の処理により、Y方向モータ34を作動させて磁気センサ10による検出位置を次のY軸方向検出位置Ys+m・ΔYに移動させる。その結果、磁気センサ10は、初期値Xsで表されたX軸方向の初期位置、かつ値Ys+m・ΔY(=Ys+2・ΔY)で表されたY軸方向位置を検出位置として、太陽電池パネルSPの表面近傍の磁界を検出し始める。次に、コントローラ70は、Y方向位置検出回路64によって検出されたY方向位置が終了位置を越えていないことを条件に、コントローラ70は、ステップS60にて「No」と判定して、ステップS62にて変数mに「1」を加算し、ステップS64にて変数aに「−1」を乗算する。この場合、ステップS62の処理によって変数mは「3」になり、ステップS64の処理によって変数aは「1」になる。また、変数nは「1」に保たれている。前記ステップS64の処理後、コントローラ70は、ステップS26に戻って、ステップS26,S28の処理より、K個ずつの各サンプリングデータ群Sx1(1,3),Sx2(1,3),Sy1(1,3),Sy2(1,3)をロックインアンプ74からそれぞれ取込み記憶する。
【0069】
前記ステップS26,S28の処理後、コントローラ70は、ステップS30にて変数aは「1」であるか否かを判定する。この場合、前記ステップS64の処理によって変数aは「1」に設定されているので、コントローラ70は、ステップS30にて「Yes」と判定して、前述したステップS32〜S40,S24〜S30の処理を、値Xs+n・ΔXが終了値Xmaxよりも大きくなるまで繰り返し実行する。これにより、磁気センサ10による検出位置がX軸方向正側に走査されて、サンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1,2,3・・・nmax,m=3)がRAMに新たに記憶される。
【0070】
そして、変数mを「3」に設定した状態で、磁気センサ10の検出位置のX軸方向正側への走査が終了すると、ステップS32の判定処理により、ステップS52〜S64の処理が実行されて、磁気センサ10による検出位置が次のY軸方向位置に変更されるとともに、変数m,aが変更される。そして、前述したステップS24〜S30,S42〜S50の処理により、磁気センサ10による検出位置がX軸方向負側へ走査され、サンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1,2,3・・・nmax,m=4)がRAMに新たに記憶される。
【0071】
このようなステップS24〜S64の処理により、磁気センサによる検出位置がX軸方向を往復するように走査されるとともにY軸方向正側に走査されて、Y方向位置検出回路64によって検出されるY方向位置が終了値Ymaxよりも大きくなると、コントローラ70は、ステップS60にて「Yes」と判定して、ステップS66以降の処理を実行する。この状態では、RAM内に、K個ずつの各サンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1〜nmax,m=1〜mmax)が記憶されている。なお、値mmaxは、終了値Ymax直前の検出位置によるサンプリングデータ群に関する変数mの値であって、Y軸方向における検出位置の数を表している。
【0072】
コントローラ70は、ステップS66にてセンサ信号取出回路73の作動停止を指示し、ステップS68にて第1光源駆動回路72の作動停止を指示し、ステップS70にて第2光源駆動回路75の作動停止を指示し、ステップS72にて発光信号供給回路71の作動停止を指示する。これらの作動停止の指示により、センサ信号取出回路73、第1光源駆動回路72、発光素子52、第2光源駆動回路75、発光素子52、発光信号供給回路71、ロックインアンプ74及び磁気センサ10の作動が停止する。前記ステップS72の処理後、コントローラ70は、ステップS74にて、移動部材32(磁気センサ10)をX方向駆動限界位置まで移動させることをX方向位置検出回路62及びX方向フィードモータ制御回路63に指示するとともに、移動部材32をY方向駆動限界位置まで移動させることをY方向位置検出回路64及びY方向フィードモータ制御回路65に指示して、ステップS76にてデータ取得プログラムの実行を終了する。X方向フィードモータ制御回路63は、前述の初期設定のように、X方向位置検出回路62と協働して、磁気センサ10をX方向駆動限界位置まで移動させる。Y方向フィードモータ制御回路65は、前述のように、Y方向位置検出回路64と協働して、磁気センサ10をY方向駆動限界位置まで移動させる。
【0073】
次に、前記データ取得プログラムで取得した所定数Kずつのサンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1〜nmax,m=1〜mmax)を用いて、太陽電池パネルSPを評価する方法について説明する。この場合、作業者は、入力装置77を操作して、コントローラ70に図8A乃至図8Gの評価プログラムを実行させる。この評価プログラムにおいては、太陽電池パネルSPの合否判定が行われ、また作業者が太陽電池パネルSP(太陽電池セルSC)の合否を判定するために、太陽電池パネルSPのX−Y座標の各点における電流の大きさと向きである電流分布の画像が表示装置に表示される。そこで、評価プログラムを説明する前に、太陽電池セルSCの取出電極81,82に異常が発生した場合と、太陽電池セルSCの発電面に欠陥が存在する場合について説明しておく。取出電極81,82の異常に関しては、取出電極81,82が内部電極86,88に導電性ペースト又は半田により接続されているので、取出電極81,82と内部電極86,88との間の接続不良が異常の原因となる。また、発電面の異常に関しては、原因はピンホール、クラック、異物混入など様々であるが、太陽電池セルSCの各層からなる構造に正規の構造とは異なる構造が生じていることが原因である。
【0074】
1つの太陽電池セルSCにおいて、取出電極81,82が正常な場合と接続不良による異常な場合との電流の分布について、図12を用いて説明する。(A)は、×印位置にて、取出電極81と内部電極86との間に接続不良の異常が発生している状態を示している。(B)は、実線により、太陽電池セルSCが正常な状態において、取出電極81の位置における電流の大きさを、取出電極81のY方向位置に対応させて示している。また、(B)は、破線により、太陽電池セルSCに前記異常が発生した状態において、取出電極81の位置における電流の大きさを、取出電極81のY方向位置に対応させて示している。この場合、Y方向位置に応じて電流の大きさが変化するのは、(A)の矢印のように電流が流れるため、すなわち上側位置に流れる電流は下側位置にも重なって流れるためである。なお、この場合の電流の大きさとは、電流の向きとは無関係な電流の大きさの絶対値(後述するIxy)である。したがって、(B)のグラフからは、太陽電池セルSCの取出電極81,82が正常な場合と異常な場合とでは、電流の大きさの変化において差があまり大きくなく、電流の大きさは共に滑らかに変化していることが分かる。これは、接続不良の異常箇所においても、取出電極81及び内部電極86自体には、異常が発生しているわけではなく、取出電極81及び内部電極86が延設されているY方向には前記接続不良の異常とは無関係に充分な電流が流れ得るからであると推定される。
【0075】
一方、(C)は、実線により、太陽電池セルSCの取出電極81,82が正常な状態において、取出電極81の延設方向における各検出位置(Y方向の各検出位置)のX方向(取出電極81に直交する方向)の電流の大きさIxから、取出電極81から太陽電池セルSCの内側X方向に所定距離だけ隔てた位置すなわち取出電極81と対となる取出電極82側のX方向内側位置における同じY方向の各検出位置のX方向(取出電極81に直交する方向)の電流の大きさIxを減算した電流差Deを、取出電極81のY方向位置に対応させて示している。なお、前記所定距離とは例えば5mm程度の距離であり、前記X方向内側位置とは、例えば取出電極81の位置から5mm程度内側の位置である。前記のように移動ピッチΔXが1mm程度であると、前記X方向内側位置は取出電極81からa・ΔX(a=5)だけ内側に入った位置となる。また、(C)は、破線により、太陽電池セルSCに前記接続不良による異常が発生した状態において、前記電流差Deを、取出電極81のY方向位置に対応させて示している。そして、(C)のグラフからは、太陽電池セルSCの取出電極81が正常な場合と異常な場合とでは、電流差Deの変化において差が大きく、正常な場合にはほぼ一定の値であるが、異常な場合には電流差Deは異常箇所近傍で大きく変動していることが分かる。これは、接続不良の異常箇所において、異常箇所を避けて電流がY方向に傾いて流れ、X方向の電流の大きさが減少するためであると推定される。
【0076】
一方、(D)は、実線により、太陽電池セルSCが正常な状態において、取出電極81のX方向近傍位置(具体的には、例えば取出電極81から内側へ1〜2mm程度の位置、すなわち移動ピッチΔXが1mmとするとΔX又は2ΔX程度内側の位置)のY方向における各検出位置のX方向の電流の大きさIxから、前記X方向近傍位置から所定距離(例えば、5mm程度の短い距離)だけ内側の位置(前記のように移動ピッチΔXが1mm程度であると、前記X方向近傍位置からa・ΔX(a=5)だけ内側に入った位置)における同じY方向位置の各検出位置におけるX方向の電流の大きさIxを減算した電流差Deを、取出電極81のY方向位置に対応させて示している。また、(D)は、破線により、太陽電池セルSCに前記接続不良による異常が発生した状態において、前記電流差Deを、取出電極81のY方向位置に対応させて示している。そして、(D)のグラフからは、太陽電池セルSCが正常な場合にはほぼ一定の値であるが、異常な場合には電流差Deは異常箇所近傍で大きく変動していることが分かる。なお、(D)の場合には、(C)の場合よりも、電流差Deが大きい。これも、接続不良の異常箇所において、異常箇所を避けて電流がY方向に傾いて流れ、X方向の電流が減少するためであると推定される。
【0077】
本発明は、これらの取出電極81の位置又は近傍位置における前記電流差Deの変化に着目して、取出電極81,82の接続異常を検出するものである。また、取出電極82と内部電極88との間の接続不良による異常の発生時においても同じ結果を得ている。すなわち、本発明は、取出電極81,82の位置又はその近傍位置における前記電流差DeのY方向に沿った変化において、前記電流差Deの変動が接続不良部分の近傍にて大きくなることに着目して、取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良を検出するようにしている。
【0078】
1つの太陽電池セルSCにおいて、正常な場合と発電面に欠陥がある場合との電流の分布について、図13を用いて説明する。(A)は、図示AのX方向位置の×印位置にて、発電面に欠陥がある状態を示している。(B)は、実線により、図示AのX方向位置に発電面の欠陥がない状態すなわち太陽電池セルSCが正常な状態において、図示AのX方向位置におけるY方向の各検出位置のX方向の電流の大きさIxから、前記各検出位置から太陽電池セルSCの内側X方向に所定距離だけ隔てた位置における同じY方向の各検出位置のX方向(取出電極81に直交する方向)の電流の大きさIxを減算した電流差Deを、前記各検出位置のY方向位置に対応させて示している。すなわち、取出電極81、82のX方向中央位置を挟んで、各検出位置が取出電極81に近い場合には、各検出位置のX方向の電流の大きさIxから、各検出位置から取出電極82側のX方向に所定距離だけ離れた位置のX方向の電流の大きさIxを減算した電流差Deを、前記各検出位置のY方向位置に対応させて示している。また、取出電極81、82のX方向中央位置を挟んで、各検出位置が取出電極82に近い場合には、各検出位置のX方向の電流の大きさIxから、各検出位置から取出電極81側のX方向に所定距離だけ離れた位置のX方向の電流の大きさIxを減算した電流差Deを、前記各検出位置のY方向位置に対応させて示している。なお、この場合も、前記所定距離は、例えば5mm程度の短い距離であり、前記のように移動ピッチΔXが1mm程度であると、a・ΔX(a=5)程度の距離である。また、(B)は、破線により、前記図示AのX方向位置の一部に発電面の欠陥がある状態において、前記電流差DeをY方向位置に対応させて示している。そして、(B)のグラフからは、太陽電池セルSCの発電面が正常な場合と発電面に欠陥がある場合とでは、電流差Deの変化において差が大きく、正常な場合にはほぼ「0」であるが、異常な場合には電流差Deは欠陥位置で大きく負の値に変動していることが分かる。これは、発電面の欠陥箇所において、欠陥箇所を避けて電流がY方向に傾いて流れ、X方向の電流の大きさが減少するためであると推定される。
【0079】
本発明は、前記各検出位置のX方向の電流の大きさIxの低下に着目して、太陽電池セルSCの発電面の欠陥を検出するものである。すなわち、本発明は、取出電極81,82に挟まれた太陽電池セルSCの発電面において、発電面の欠陥部分のX方向の電流の大きさIxがその近傍位置に比べて小さくなることに着目して、太陽電池セルSCの発電面の欠陥を検出するようにしている。
【0080】
次に、評価プログラムの実行について説明する。この評価プログラムの実行は図8AのステップS100にて開始され、コントローラ70は、ステップS102にて変数n,mをそれぞれ「1」に初期設定するとともに、変数CHを「0」に初期設定する。変数n,mは、それぞれX,Y軸方向における検出位置を指定するための変数である。そして、値nmax,mmaxは、前述のように、それぞれX,Y軸方向における検出位置の数を表している。変数CHは、詳しくは後述するが、「0」により取出電極81,82がY軸方向に延設されていることを表し、「1」により取出電極81,82がX軸方向に延設されていることを表す。前記ステップS102の処理後、コントローラ70は、ステップS104にて、変数n,mによって指定される所定数Kずつのサンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)の磁界の大きさの各平均値Sx1,Sx2,Sy1,Sy2を計算する。具体的には、各サンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)ごとに、K個のサンプリングデータを加算して値Kで除算する。
【0081】
次に、コントローラ70は、ステップS106にて、前記計算した平均値Sx1,Sx2を用いた下記式1,2の演算の実行により、X方向磁気検出信号の極大値Hxと、X方向磁気検出信号の参照信号に対する位相シフト量θxとを計算する。
Hx=(Sx12+Sx22)1/2 …式1
θx=tan-1(Sx2/Sx1) …式2
これにより、X方向磁気検出信号としてHx・sin(2πft+θx)が検出されたことになる。なお、fは、発光信号供給回路71から出力される発光信号及び参照信号の周波数に等しい。
【0082】
次に、コントローラ70は、ステップS108にて、前記計算した平均値Sy1,Sy2を用いた下記式3,4の演算の実行により、Y方向磁気検出信号の極大値Hyと、Y方向磁気検出信号の参照信号に対する位相シフト量θyとを計算する。
Hy=(Sy12+Sy22)1/2 …式3
θy=tan-1(Sy2/Sy1) …式4
これにより、Y方向磁気検出信号としてHy・sin(2πft+θy)が検出されたことになる。
【0083】
次に、コントローラ70は、ステップS110にて、前記計算したHx,θx,Hy,θyを用いた下記式5,6の演算の実行により、発光素子52の発光量すなわち通電電流が最大となるタイミング(前記X方向磁気検出信号Hx・sin(2πft+θx)及び前記Y方向磁気検出信号Hy・sin(2πft+θy)における2πftがπ/2のタイミング)における、検査位置の磁界の強さHxy及び磁界の向きθxyを計算する。この場合、通電電流が最大となるタイミングを採用した理由は、位相シフト量θx,θyは小さく、通電電流が最大となるタイミング近傍で検査位置の磁界の強さHxyが最大値近傍の値になるためである。なお、位相シフト量θx,θyが小さくなく、通電電流が最大となるタイミング近傍で検査位置の磁界の強さHxyが最大値近傍にならない場合には、磁界の強さHxyが最大値近傍になるようなタイミングの角度をπ/2に代えて用いればよい。
Hxy=[{Hx・sin(π/2+θx)}2+{Hy・sin(π/2+θy)}2]1/2 …式5
θxy=tan-1{Hy・sin(π/2+θy)}/{Hx・sin(π/2+θx)} …式6
【0084】
次に、コントローラ70は、ステップS112にて、太陽電池パネルSPに流れる電流は前記磁界の強さHxyに比例し、かつ方向が磁界の方向θxyと−π/2異なることから、前記計算したHxy,θxyを用いた下記式7,8の演算の実行により、通電電流が最大となるタイミングにおける、太陽電池パネルSPの検査位置に流れる電流の大きさIxy及び方向θixyを計算する。ただし、値Kは、比例定数である。
Ixy=K・Hxy …式7
θixy=θxy+π/2 …式8
そして、このステップS112にて、前記計算された電流の大きさIxy及び方向θixyは、太陽電池パネルSPの検査位置を表す変数n,mを用いて電流の大きさデータIxy(n,m)及び方向データθixy(n,m)としてRAM又は記憶装置に記憶される。
【0085】
次に、コントローラ70は、ステップS114にて、前記計算したIxy,θixyを用いた下記式9,10の演算の実行により、太陽電池パネルSPの検査位置においてX方向及びY方向に流れる電流の大きさIx,Iyを計算する。
Ix=Ixy・cosθixy …式9
Iy=Ixy・sinθixy …式10
そして、このステップS114にて、前記計算された電流の大きさIx,Iyも、太陽電池パネルSPの検査位置を表す変数n,mを用いて電流の大きさデータIx(n,m),Iy(n,m)としてRAM又は記憶装置に記憶される。
【0086】
次に、コントローラ70は、ステップS116にて変数nがX軸方向の検出位置数を表す値nmaxに達したか否かを判定する。変数nが値nmaxに達していなければ、コントローラ70は、ステップS116にて「No」と判定し、ステップS118にて変数nに「1」を加算してステップS104に戻る。そして、前述したステップS104〜S114の処理を実行した後、コントローラ70は、ステップS116にてふたたび変数nが値nmaxに達したか否かを判定する。変数nが値nmaxに達しない限り、ステップS104〜118の処理が繰り返し実行される。
【0087】
このようなステップS104〜S118の繰り返し処理中、変数nが値nmaxに達すると、コントローラ70は、ステップS116にて「Yes」と判定して、ステップS120にて変数mがY軸方向の検出位置数を表す値mmaxに達したか否かを判定する。変数mが値mmaxに達しなければ、コントローラ70は、ステップS120にて「No」と判定し、ステップS112にて変数mに「1」を加算し、ステップS124にて変数nを「1」に初期設定して、ステップS104に戻る。そして、変数nが所定値nmaxに達するまで前述したステップS104〜S118の処理を繰り返し実行した後、コントローラ70は、ステップS120にてふたたび変数mが値mmaxに達したか否かを判定する。変数mが値mmaxに達しない限り、ステップS104〜124の処理が繰り返し実行される。そして、変数mが値mmaxに達すると、コントローラ70は、ステップS120にて「Yes」と判定して、図8BのステップS130に進む。
【0088】
この時点では、太陽電池パネルSPの検査位置ごとに、電流の大きさデータIxy(n,m)、電流の方向データθixy(n,m)、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)及びY方向の電流の大きさデータIy(n,m)(n=1〜nmax,m=1〜mmax)が、RAM又は記憶装置に記憶されている。
【0089】
次に、コントローラ70は、ステップS130にて、前記計算した全ての電流の大きさデータIxy(n,m)の中から、取出電極81,82位置及びその近傍位置の電流の大きさデータIxy(n,m)を取出す。この場合、電流の大きさデータIxy(n)の分布は、図14に示すように、取出電極81,82位置及びその近傍位置における大きな電流の分布と、それ以外の部分における小さな電流の分布とに大別される。したがって、このステップS130においては、前記全ての電流の大きさデータIxy(n)の中から、予め決められた所定値以上の値を有する電流の大きさデータIxy(n)を抽出すればよい。
【0090】
次に、太陽電池パネルSPのステージ20上への置き方により、取出電極81,82がY軸方向に延設されているか、X軸方向に延設されているかを検出するステップS140〜S162の処理を実行する。コントローラ70は、まず、ステップS140にて変数nを「1」に初期設定し、ステップS142にて、前記ステップS130の処理によって抽出した電流の大きさデータIxy(n,m)において、変数nによって指定され、かつ変数mが連続している大きさデータIxy(n,m)の数を計算して値Nnとして設定する。そして、コントローラ70は、ステップS144にて、値Nnが所定数以上であるかを判定する。この判定処理は、取出電極81,82が変数nによって指定されるX軸方向位置にあり、かつY軸方向に延設されていれば、前記値Nnは1つの太陽電池セルSCのY軸方向の長さをY軸方向の移動ピッチΔY(図11参照)で除した値程度の大きさであることに基づくものである。したがって、前記所定数は、上述したように、作業者が入力した1つの太陽電池セルSCのY軸方向の長さを移動ピッチΔYで除した値よりも若干小さな値である。この場合、値Nnが所定数以上でなければ、コントローラ70は、ステップS144にて「No」と判定して、ステップS146に進む。
【0091】
ステップS146においては、コントローラ70は、変数nをX軸方向の移動ピッチΔX(図11参照)に乗算した値n・ΔXが所定距離以上であるかを判定する。この処理は、後述する変数nの増加による検出位置のX軸方向への変化により、1つ分の太陽電池セルSCのX軸方向の幅に対応した長さ分だけ、前記ステップS142,S144の処理を実行し終えたかを判定するものである。したがって、前記所定距離は、作業者が入力した1つの太陽電池セルSCのX軸方向の長さにほぼ等しい。値n・ΔXが所定距離以上でなければ、コントローラ70は、ステップS146にて「No」と判定して、ステップS148にて変数nに「1」を加算して、ステップS142に戻る。そして、これらのステップS142〜S146からなる循環処理中に、ステップS142の処理によって計算された値Nnが所定数以上になると、コントローラ70は、ステップS144にて「Yes」すなわち取出電極81,82はY軸方向に延設されていると判定して、図8CのステップS170に進む。一方、値Nnが所定数以上になったことが検出されずに、値n・ΔXが所定距離以上になると、コントローラ70は、ステップS146にて「Yes」すなわち取出電極81,82はY軸方向に延設されていないと判定して、ステップS150〜S156の処理を実行する。
【0092】
ステップS150〜S156の処理は、取出電極81,82がX軸方向に延設されているかを検出する処理である。コントローラ70は、まず、ステップS150にて変数mを「1」に初期設定し、ステップS152にて、前記ステップS130の処理によって抽出した電流の大きさデータIxy(n,m)において、変数mによって指定され、かつ変数nが連続している大きさデータIxy(n,m)の数を計算して値Nmとして設定する。そして、コントローラ70は、ステップS154にて、値Nmが所定数以上であるかを判定する。この判定処理は、取出電極81,82が変数mによって指定されるY軸方向位置にあり、かつX軸方向に延設されていれば、前記値Nmは1つの太陽電池セルSCのX軸方向の長さをX軸方向の移動ピッチΔX(図11参照)で除した値程度の大きさであることに基づくものである。したがって、前記所定数は、作業者が入力した1つの太陽電池セルSCのX軸方向の長さを移動ピッチΔXで除した値よりも若干小さな値である。この場合、値Nmが所定数以上でなければ、コントローラ70は、ステップS154にて「No」と判定して、ステップS156に進む。
【0093】
ステップS156においては、コントローラ70は、変数mをY軸方向の移動ピッチΔY(図11参照)に乗算した値m・ΔYが所定距離以上であるかを判定する。この処理は、後述する変数mの増加による検出位置のY軸方向への変化により、1つ分の太陽電池セルSCのY軸方向の幅に対応した長さ分だけ、前記ステップS152,S154の処理を実行し終えたかを判定するものである。したがって、前記所定距離は、作業者が入力した1つの太陽電池セルSCのY軸方向の長さにほぼ等しい。値m・ΔYが所定距離以上でなければ、コントローラ70は、ステップS156にて「No」と判定して、ステップS158にて変数mに「1」を加算して、ステップS152に戻る。そして、これらのステップS152〜S156からなる循環処理中に、ステップS152の処理によって計算された値Nmが所定数以上になると、コントローラ70は、ステップS154にて「Yes」すなわち取出電極81,82はX軸方向に延設されていると判定して、ステップS160,S162の処理後、図8CのステップS170に進む。
【0094】
ステップS160においては、コントローラ70は、前記ステップS130の処理によって抽出した電流の大きさデータIxy(n,m)のX座標値とY座標値とを入替えて前記抽出した各データIxy(n,m)を並び換えるとともに、前記ステップS112,S114の処理によって計算した全ての電流の大きさデータIxy(n,m)、全ての電流の方向データθxy(n,m)、全てのX方向の電流の大きさデータIx(n,m)、及び全てのY方向の電流の大きさデータIy(n,m)のX座標値とY座標値とを入れ替えて、全ての各データIxy(n,m),θxy(n,m),Ix(n,m),Iy(n,m)を並び換える。これは、後述する処理において、取出電極81,82がX軸方向に延設されている場合と、取出電極81,82がY軸方向に延設されている場合との処理を共通にするもので、具体的には、各m,nの値に対して、前記抽出した各データIxy(m,n)を各データIxy(n,m)に変更するとともに、前記全ての各データIxy(m,n),θxy(m,n),Ix(m,n),Iy(m,n)を各データIxy(n,m),θxy(n,m),Ix(n,m),Iy(n,m)に変更することになる。そして、ステップS162においては、コントローラ70は、変数CHを、前記抽出した電流の大きさデータIxy(n,m)の並び換えを表すとともに、前記全ての電流の大きさデータIxy(n,m),θxy(n,m),Ix(n,m),Iy(n,m)の並び換えを表し、かつ取出電極81,82がX軸方向に延設されていることを表す「1」に変更する。
【0095】
一方、値Nmが所定数以上になったことが検出されず、値m・ΔYが所定距離以上になると、コントローラ70は、ステップS156にて「Yes」すなわち取出電極81,82はY軸方向に延設されていないと判定して、図8GのステップS314に進む。なお、このステップS156における「Yes」との判定は、取出電極81,82のX軸方向の延設も、Y軸方向の延設も検出されないことを意味する。
【0096】
次に、取出電極81,82の位置を示す電極位置座標Bxy(n,m)(すなわち磁気センサ10による検出位置群)を検出して、マトリクス状に配置した取出電極81,82のX方向及びY方向の順番を特定するX方向電極番号gx及びY方向電極番号gy(図9参照)を、前記検出した電極位置座標Bxy(n,m)に割当てる図8C及び図8DのステップS170〜S210の処理について説明する。なお、値n,mは、X軸方向及びY軸方向の磁気センサ10による検出位置をそれぞれ示す変数である。まず、コントローラ70は、図8CのステップS170にて、変数nを「1」に初期設定するとともに、X方向電極番号gx及びY方向電極番号gyをそれぞれ「1」に初期設定する。
【0097】
次に、コントローラ70は、ステップS172にて、前記ステップS130にて抽出した全ての電流の大きさデータIxy(n,m)(ただし、前記ステップS160の処理によって並び換えられている場合には、前記ステップS130にて抽出されて前記ステップS160にてX座標値及びY座標値が変更された全ての電流の大きさデータIxy(n,m))に含まれて変数nによって指定される電流の大きさデータIxy(n,m)の数を値Nnmとして計算する。そして、コントローラ70は、ステップS174にて、この値Nnmが所定数以上であるかを判定する。これらのステップS172,S174の処理は、変数nによって指定されるX方向位置が取出電極81,82の位置に対応していれば、取出電極81,82の位置では電流の大きさデータIxy(n,m)はかなり大きいはずであるので、値Nnmもかなり大きいはずである。なお、前記所定数は、取出電極81,82のY方向の合計長さとY方向の移動距離単位ΔYによって決まる値であり、例えば、前記合計長さを移動距離単位ΔYで除した値よりも若干小さな値である。変数nによって指定されるX方向位置が取出電極81,82の位置に対応していなければ、値Nnmは小さいので、コントローラ70は、ステップS174にて「No」と判定して、ステップS176にて変数nがX軸方向の検出位置数を表す値nmaxに達したか判定する。変数nが値nmaxに達していなければ、コントローラ70は、ステップS176にて「No」と判定して、ステップS178にて変数nに「1」を加算して、前記ステップS172,S174の処理を実行する。
【0098】
変数nによって指定されるX方向位置が取出電極81,82の位置に対応して値Nnmが所定数よりも大きくなると、コントローラ70は、ステップS174にて「Yes」と判定して、ステップS180にて、Y軸方向の磁気センサ10の検出位置を示す変数mを「1」に初期設定するとともに、取出電極81,82のY軸方向の検出位置の数(取出電極81,82の長さをY軸方向の移動距離単位ΔYで除した数)をカウントするための変数pを「0」に初期設定して、ステップS182の判定処理を実行する。
【0099】
ステップS182においては、変数n,mによって指定されるX方向の電流の大きさデータIx(n,m)が所定の小さな値ΔIx以下であるかを判定することにより、変数n,mによって示される検出位置が取出電極81,82の位置にあるか、取出電極81,82の間の接続線91にあるかを判定する。これは、変数mによって指定されるY軸方向位置が取出電極81,82に対応した位置にあるときには、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)はある程度の値を示すが、変数mによって指定されるY軸方向位置が取出電極81,82の間の接続線91に対応した位置にあるときには、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)はほぼ「0」である。
【0100】
したがって、変数mによって指定されるY方向位置が取出電極81,82に対応する位置であれば、コントローラ70は、ステップS182にて「No」と判定して、ステップS184にて変数pに「1」を加算し、ステップS186にて変数mに「1」を加算して、ステップS182に戻る。変数mの増加によって検出位置がY方向に移動されても、検出位置が取出電極81,82に対応する位置である限り、前記ステップS182〜S186の循環処理が繰り返し実行されて、変数pが変数mの増加に従って増加する。このステップS182〜S186の循環処理中、検出位置が取出電極81,82を超えて接続線91の領域に入ると、コントローラ70は、ステップS182にて「Yes」と判定して、図8DのステップS188に進む。
【0101】
ステップS188においては、前記変数pが所定数以上であるかを判定する。この場合、所定数は、取出電極81,82の長さを移動距離単位ΔYで除した値よりも若干小さな値であり、前記入力した太陽電池セルSCのY方向の長さと移動距離単位ΔYとにより予め決められた値である。取出電極81,82の位置に対応したX方向の電流の大きさIx(n,m)が正確に検出されていれば、変数pは所定数以上であるので、コントローラ70はステップS188にて「Yes」と判定して、ステップS190にて取出電極81,82のX−Y座標位置を表す電極位置座標Bxy(n−1,m−p)〜Bxy(n−1,m−1)内のいずれかにX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが割当てられているか否かを判定する。この判定処理は、今回検出した取出電極81,82の位置を表す電極位置座標Bxy(n,m)を定義して同電極位置座標Bxy(n,m)にX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyを割当てる前に、X方向位置が変数n−1で指定される前回検出の取出電極81,82の位置に対応した電極位置座標Bxy(n−1,m)にX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが既に割当てられているかを判定するものである。もし、前回検出の取出電極81,82の位置を表す電極位置座標Bxy(n−1,m−p)〜Bxy(n−1,m−1)に未だX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが割当てられていなければ(すなわち電極位置座標Bxy(n−1,m−p)〜Bxy(n−1,m−1)が未だ定義されていなければ)、コントローラ70は、ステップS190にて「No」と判定して、ステップS192にて電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)を定義してX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyを割当て、ステップS202に進む。この場合、変数pの使用により、取出電極81,82の長さに対応した位置分の電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)が定義されて、この定義された電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)にX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが割当てられたことになる。
【0102】
一方、前回検出の電極位置座標Bxy(n−1,m−p)〜Bxy(n−1,m−1)にX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが既に割当てられていれば、コントローラ70は、ステップS190にて「Yes」と判定して、ステップS194,S196に進む。ステップS194においては、前回検出の電極位置座標Bxy(n−1,m−p)〜Bxy(n−1,m−1)に対応した位置の電流の大きさデータIxy(n−1,m−p)〜Ixy(n−1,m−1)の平均値Iavebが計算される。また、ステップS196においては、今回検出の電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)に対応した位置の電流の大きさデータIxy(n,m−p)〜Ixy(n,m−1)の平均値Iaveaが計算される。そして、コントローラ70は、ステップS198にて、今回の平均値Iaveaが前回の平均値Iaveb以上であるか否かを判定する。今回の平均値Iaveaが前回の平均値Iaveb以上であれば、コントローラ70は、ステップS198にて「Yes」と判定して、前回検出の電極位置座標Bxy(n−1,m−p)〜Bxy(n−1,m−1)に割当てられているX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyを、今回検出の電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)に割当て、ステップS202に進む。一方、今回の平均値Iaveaが前回の平均値Iaveb以上でなければ、コントローラ70は、ステップS198にて「No」と判定して、前記割当ての変更を行うことなく、ステップS202に進む。これらのステップS190〜S200の処理により、1つの取出電極81又は82に対しては、最も平均電流の大きな1組の電流の大きさデータIxy(n,m−p)〜Ixy(n,m−1)に対応した電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)にのみ、X方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが割当てられる。ステップS202においては、コントローラ70は、Y方向電極番号gyに「1」を加算して、ステップS204に進む。これは、図9のY方向に沿って次の取出電極81,82の検出を意味する。
【0103】
また、前記ステップS188の判定処理において、「No」すなわち変数pが所定数未満である場合には、コントローラ70は、ステップS188にて「No」と判定して、ステップS190〜S202の処理を実行しないで、ステップS204に進む。この場合、電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)に対する、X方向電極番号gx及びY方向電極番号gyの割当ては行われない。
【0104】
ステップS204においては、変数mが値mmax(すなわち終了値Ymax直前の検出位置によるサンプリングデータ群に関する変数mの値)に達したかが判定される。変数mが値mmaxに達していなければ、コントローラ70は、ステップS204にて「No」と判定して、ステップS206にて変数pを「0」に初期設定して、図8CのステップS186に進む。コントローラ70は、ステップS186にて変数mに「1」を加算し、ステップS182の判定処理をふたたび実行する。ステップS182の処理は、前述のように、Y方向の検出位置が取出電極81,82に対応しているか、取出電極81,82間の接続線91に対応しているかを判定する処理である。そして、検出位置が接続線91に対応した位置にある状態では、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)は所定値ΔIx以下であり、コントローラ70は、ステップS182にて「Yes」と判定して、図8DのステップS188に進む。この場合、変数pは前記ステップS206の処理により「0」に保たれるので、コントローラ70はステップS188にて「No」と判定し続けて、図8DのステップS188,S204,S206及び図8CのステップS186,S182の循環処理を繰り返し実行する。
【0105】
この循環処理中、ステップS186による変数mの増加により、検出位置が取出電極81,82に対応した位置まで来ると、前述の場合と同様に、コントローラ70は、ステップS182にて「No」と判定して、ステップS182〜S186の循環処理を繰り返し実行する。そして、検出位置が接続線91の領域に入ると、前述のように、コントローラ70は、ステップS182にて「Yes」と判定して、図8DのステップS188〜S202の処理を実行する。これらのステップS188〜S202の処理により、Y方向の次の取出電極81,82に対応した電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)が定義されて次のX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが割当てられる。また、変数pが所定数未満のときには、ステップS188における「No」との判定のもとに、X方向電極番号gx及びY方向電極番号gyの割当ては行われない。
【0106】
これらのステップS188〜S202の処理後、コントローラ70は、前記ステップS204,S206の処理を実行して、ふたたび図8CのステップS186に進む。これにより、変数mの増加により、図9に示すY方向の取出電極81,82の位置を表す電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)が次々に定義されてX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが割当てられていく。そして、変数mが値mmaxに達すると、コントローラ70は、ステップS204にて「Yes」と判定し、ステップS208にてX方向電極番号gxに「1」を加算し、ステップS210にてY方向電極番号gyを「1」に戻して、図8CのステップS178に進む。コントローラ70は、ステップS178にて変数nに「1」を加算した後、ステップS172に進み、前述したステップS172〜S178の循環処理により、図7に示すX方向の次の取出電極81,82の列を検出する。そして、前記ステップS182〜S206の処理により、次のX方向の列におけるY方向の複数の取出電極81,82を検出し、前記ステップS208,S210の処理後の図8CのステップS172〜S186及び図8DのステップS188〜S206の処理により、X方向に移動しながら次々に取出電極81,82を検出して、取出電極81,82の位置を表す電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)が次々に定義されてX方向電極番号gx及びY方向電極番号gyが割当てられていく。そして、変数nが値nmax(終了値Xmax直前の検出位置によるサンプリングデータ群に関する変数nの値)に達すると、コントローラ70は、ステップS176にて「Yes」と判定して、図8EのステップS220に進む。
【0107】
次に、太陽電池パネルSPの合否の判定に利用する変数n,mによって指定される位置のX方向の電流の大きさデータIx(n,m)から、前記位置から太陽電池セルSCの取出電極81,82の内側のX方向に所定距離だけ離れた位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m)(又はIx(n−a,m))を減算した差データDe(n,m)を計算する図8EのステップS220〜S242の処理について説明する。この場合、前記所定距離は例えば5mm程度であり、移動ピッチΔX,ΔYが前述のように例えば1mm程度であれば、前記値aは例えば「5」程度の値である。これらの変数n,mも、検査位置のX座標値(n=1〜nmax)及びY座標値(y=1〜mmax)を示す値である(図9参照)。
【0108】
ステップS220においては、コントローラ70は、全てのX方向の電流の大きさデータIx(n,m)に対して、Ix(n,m)−Ix(n+a,m)なる演算を実行して演算結果を差データDe(n,m,1)として記憶する。この差データDe(n,m,1)は、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)からX方向右側にa・ΔXだけ離れた位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m)を減算した値である。なお、この演算において、値n+aが値nmaxよりも大きい場合には、前記Ix(n,m)−Ix(n+a,m)なる演算を行わない。次に、ステップS220において、コントローラ70は、全てのX方向の電流の大きさデータIx(n,m)に対して、Ix(n,m)−Ix(n−a,m)なる演算を実行して演算結果を差データDe(n,m,2)として記憶する。この差データDe(n,m,2)は、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)からX方向左側にa・ΔXだけ離れた位置のX方向の電流の大きさデータIx(n−a,m)を減算した値である。なお、この演算において、値n−aの値が値「1」よりも小さい場合には、前記Ix(n,m)−Ix(n−a,m)なる演算を行わない。
【0109】
前記ステップS220,S222の処理後、コントローラ70は、まず、ステップS224にて、変数k,s,tを「1」にそれぞれ初期設定する。図9に示すように、変数kは、X方向電極番号gxを指定するための1〜kmaxで変化する変数である。変数sは、Y方向電極番号gyを指定するための1〜smaxで変化する変数である。変数tは、X方向の太陽電池セルSCを指定するための1〜tmaxで変化する変数である。次に、コントローラ70は、ステップS226にて、前記ステップS220の処理によって記憶した差データ群De(n,m,1)及び前記ステップS222の処理によって記憶した差データ群De(n,m,2)の中から、変数kに等しいX方向電極番号gx(=k)及び変数sに等しいY方向電極番号gy(=s)が割当てられた電極位置座標群Bxy(n,m)と、変数k+1に等しいX方向電極番号gx(=k+1)及び変数sに等しいY方向電極番号gy(=s)が割当てられた電極位置座標群Bxy(n,m)とを含む、それらの電極位置座標群Bxy(n,m)の間に位置する座標群(n,m)に対応した差データ群De(n,m,1),De(n,m,2)を抽出する。言い換えれば、Y方向電極番号gy(=s)及び変数tにより指定される太陽電池セルSCに関する差データ群De(n,m,1),De(n,m,2)を抽出する。この場合、変数k,s,tは共に「1」であるので、図9の最上段の最も左の太陽電池セルSCに関する差データ群De(n,m,1),De(n,m,2)を抽出する。
【0110】
次に、コントローラ70は、ステップS228にて、前記座標位置(n,m)中の変数nの最大値と最小値とを抽出して、変数nの最大値から最小値を減算し、減算結果を「2」で除して、除した結果を変数nの最小値に加算して、加算結果を中央値Cenとする。この中央値Cenは、前記座標位置(n,m)すなわちY方向電極番号gy(=s)及び変数tにより指定される太陽電池セルSCのX方向の中央位置を示す。そして、コントローラ70は、ステップS230にて、前記計算した中央値Cen、前記抽出した差データ群De(n,m,1),De(n,m,2)を用いて、差データ群De(n,m)を生成する。具体的には、変数nが中央値Cen未満である差データ群De(n,m,1)を差データ群De(n,m)とし、変数nが中央値Cen以上である差データ群De(n,m,2)を差データ群De(n,m)とする。これにより、前記太陽電池セルSCのX方向中央よりも左側の差データ群De(n,m)は、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)からX方向右側にa・ΔXだけ離れた位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m)を減算した値となる。また、前記太陽電池セルSCのX方向中央よりも右側の差データ群De(n,m)は、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)からX方向左側にa・ΔXだけ離れた位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m)を減算した値となる。これにより、図9の最上段の最も左の太陽電池セルSCに関する差データ群De(n,m)が計算される。
【0111】
前記ステップS230の処理後、コントローラ70は、ステップS232にて、変数tがX方向の太陽電池セルSCの数tmaxに達したか否かを判定する。変数tが数tmaxに達していなければ、コントローラ70は、ステップS232にて「No」と判定して、図9の最上段の左から2番目の太陽電池セルSCを指定するために、ステップS234にて変数kに「2」を加算し、ステップS236にて変数tに「1」を加算する。そして、コントローラ70は、前述したステップS226〜S230の処理を実行する。これにより、図9の最上段の左から2番目の太陽電池セルSCに関する前述の差データ群De(n,m)が計算される。
【0112】
そして、コントローラ70は、ステップS232にて、ふたたび、変数tがX方向の太陽電池セルSCの数tmaxに達したか否かを判定する。そして、変数tが数tmaxに達するまで、コントローラ70は、ステップS232にて「No」と判定し続けて、ステップS234,S236,228〜S232からなる循環処理を実行し続ける。そして、図9の最上段の全ての太陽電池セルSCに関する前述の差データ群De(n,m)が計算されて、変数tがX方向の太陽電池セルSCの数tmaxに達すると、コントローラ70は、ステップS232にて「Yes」と判定して、ステップS238に進む。
【0113】
ステップS238においては、コントローラ70は、変数sがY方向の太陽電池セルSCの数smaxに達したか否かを判定する。変数sが数smaxに達していなければ、コントローラ70は、ステップS238にて「No」と判定して、図9の上から2段目の最も左の太陽電池セルSCを指定するために、ステップS240にて変数sに「1」を加算し、ステップS242にて変数k、tを「1」に初期設定する。そして、コントローラ70は、前述したステップS226〜S236の処理を実行する。これにより、図9の上から2段目の変数t(=1〜tmax)によって指定される全ての太陽電池セルSCに関する前述の差データ群De(n,m)が計算される。その後、変数sがY方向の太陽電池セルSCの数smaxに達するまで、コントローラ70は、ステップS238にて「No」と判定して、前述したステップS240,S242の処理によってY方向の次の全ての太陽電池セルSCを指定して、前記次の全ての太陽電池セルSCに関する前述の差データ群De(n,m)を計算する。その後、変数sがY方向の太陽電池セルSCの数smaxに達すると、コントローラ70は、ステップS238にて「Yes」と判定して、図8FのステップS250に進む。
【0114】
次に、太陽電池パネルSPの合否の判定を行う図8FのステップS250〜S296の処理について説明する。まず、コントローラ70は、ステップS250にて、変数k,s,t,epを「1」にそれぞれ初期設定する。この場合も、図9に示すように、変数kは、X方向電極番号gxを指定するための1〜kmaxで変化する変数である。変数sは、Y方向電極番号gyを指定するための1〜smaxで変化する変数である。変数tは、X方向の太陽電池セルSCを指定するための1〜tmaxで変化する変数である。変数epは、1つの太陽電池セルSC内の取出電極81,82を指定するための変数であり、「1」により図9の左側の取出電極82を示し、「2」により図9の右側の取出電極81を示す。なお、前記変数k,s,t,epの「1」への初期設定により、図9の最上段の最も左側の取出電極82が指定されることになる。
【0115】
前記ステップS250の処理後、コントローラ70は、ステップS252にて、変数epが「1」であるか否かを判定する。この初期の状態では、変数epは「1」であるので、コントローラ70は、ステップS252にて「Yes」と判定して、ステップS254にて値neを予め決めた正の小さな整数値Aに設定する。一方、後述するように、変数epが「2」である場合は、コントローラ70は、ステップS252にて「No」と判定して、ステップS256にて値neを予め決めた絶対値の小さな負の整数値−Aに設定する。この値ne(値A,−A)は、図9の取出電極81,82の内側近傍の検出位置、すなわち前述したステップS170〜S210の処理によって変数gx,gyを割当てた電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)が示すX方向位置の内側近傍の検出位置(取出電極82にあっては右側近傍位置、取出電極81にあっては左側近傍位置)を指定するための値である。これは、図10(C)(D)で説明したように、太陽電池セルSCの異常時(取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良)においては、取出電極81,82の位置よりもそれらの内側近傍位置のX方向の電流の大きさのY方向における変化が大きいためである。したがって、値Aは、前記電極位置座標Bxy(n,m−p)〜Bxy(n,m−1)が示すX方向位置と、前記異常時の電流の大きさの変化が最大となるX方向位置との差に対応した値がX方向の移動ピッチΔX(例えば、1mm程度)を用いて計算して予め設定されている。例えば、値Aは、取出電極81,82の位置よりも1〜2mm程度内側を示す値「1」又は「2」に設定されている。
【0116】
前記ステップS254の処理後のステップS258においては、コントローラ70は、前記図8EのステップS230の処理によって生成した差データ群De(n,m)及び前記図8AのステップS114の処理によって記憶したX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)(前記図8BのステップS160の処理によって並び換えられた場合には、並び換えられたX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m))の中から、変数kに等しいX方向電極番号gx及び変数sに等しいY方向電極番号gyが割当てられた電極位置座標群Bxy(n,m)の内側近傍位置すなわち右側近傍位置の座標群(n+ne,m)に対応した差データ群De(n+ne,m)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m)を抽出する。すなわち、X方向電極番号gx(=k)及びY方向電極番号gy(=s)によって指定される取出電極82の右側の近傍位置であって、取出電極82と平行な位置の差データ群De(n+ne,m)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m)が抽出される。なお、これらの差データ群De(n+ne,m)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m)は、「1」ずつ順次増加する変数mによって指定される取出電極82のY方向の長さ分のデータ数を含む。
【0117】
前記ステップS258の処理後、コントローラ70は、ステップS260にて、前記抽出した差データ群De(n+ne,m)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m)を用いて次のような計算を実行する。まず、前記抽出した差データ群De(n+ne,m)を前記抽出したX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m)でそれぞれ除算することにより、比率データ群Der(n+ne,m)(=De(n+ne,m)/Ix(n+ne,m))をそれぞれ計算する。そして、この比率データDer(n+ne,m)の最大値と最小値との差を評価データB(t,s,ep)として記憶する。次に、前記比率データDer(n+ne,m)の標準偏差を計算して評価データC(t,s,ep)として記憶する。この状態では、変数t,s,epによって指定される取出電極(この場合、図9の最上段の最も左側の太陽電池セルSCの左側の取出電極82に関する比率データ群Der(n+ne,m)の評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)が計算されて記憶されることになる。そして、これらの評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)は、前記差データ群De(n+ne,m)及び比率データ群Der(n+ne,m)の変動を表している。
【0118】
前記ステップS260の処理後、コントローラ70は、ステップS262にて、評価データB(t,s,ep)が所定の許容値よりも大きいか否かを判定するとともに、ステップS264にて評価データC(t,s,ep)が所定の許容値よりも大きいか否かを判定する。評価データB(t,s,ep)が所定の許容値よりも大きければ、コントローラ70は、ステップS262にて「Yes」と判定して、ステップS268にて取出電極に関するエラーデータEr1(t,s,ep)を“1”に設定して、ステップS270に進む。また、評価データC(t,s,ep)が所定の許容値よりも大きければ、コントローラ70は、ステップS264にて「Yes」と判定して、ステップS268にて取出電極に関するエラーデータEr1(t,s,ep)を“1”に設定して、ステップS270に進む。また、評価データB(t,s,ep)が所定の許容値以下であり、かつ評価データC(t,s,ep)が所定の許容値以下であれば、コントローラ70は、ステップS262、S264にて共に「No」と判定して、ステップS270に進む。
【0119】
ステップS270においては、コントローラ70は、変数epが「2」であるかを判定する。この場合、変数epは「1」であるので、コントローラ70は、ステップS270にて「No」と判定し、ステップS272にて変数epに「1」を加算して「2」に設定し、ステップS274にて変数kに「1」を加算して「2」に設定して、ステップS252に戻る。この状態では、変数s,tは「1」に初期設定されたままであり、変数k,epは「2」に変更されているので、図9の最上段の左から2番目の取出電極81が指定されることになる。そして、コントローラ70は、ステップS252にて「No」すなわち変数epが「1」でないと判定して、ステップS256にて値neを負の値−Aに設定する。そして、コントローラ70は、前述したステップS258〜S268の処理を実行する。ステップS258においては、値neが負の値−Aに設定されているために、変数kに等しいX方向電極番号gx及び変数sに等しいY方向電極番号gyが割当てられた電極位置座標群Bxy(n,m)の左側近傍位置の座標群(n+ne,m)に対応した差データ群De(n+ne,m)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m)が抽出される。すなわち、X方向電極番号gx(=k)及びY方向電極番号gy(=s)によって指定される取出電極81の左側の近傍位置(例えば、取出電極81から左側へ1〜2mm程度離れた位置)であって、取出電極81と平行な位置の差データ群De(n+ne,m)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m)が抽出される。
【0120】
そして、ステップS260の処理により、前記取出電極81の左側の近傍位置に関する前述した評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)が計算される。次に、ステップS262〜S268の処理により、前記計算された評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)が評価されて、前記取出電極81に異常(取出電極81と内部電極86との接続不良)が発生していれば、変数t,s,epによって指定されるエラーデータEr(t,s,ep)が“1”に設定されてRAM又は記憶装置に記憶される。その結果、この状態では、図9の最上段の左から1番目の太陽電池セルSCの一対の取出電極81,82の異常が判定される。
【0121】
前記ステップS262〜S268の処理後、コントローラ70は、ステップS270にて変数epが「2」であるかをふたたび判定する。この場合、変数epが「2」であるので、コントローラ70は、ステップS270にて「Yes」と判定し、ステップS276に進む。ステップS276においては、コントローラ70は、前記図8EのステップS230の処理によって生成した差データ群De(n,m)及び前記図8AのステップS114の処理によって記憶したX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)(前記図8BのステップS160の処理によって並び換えられた場合には、並び換えられたX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m))の中から、変数k−1に等しいX方向電極番号gx(=k−1)及び変数sに等しいY方向電極番号gy(=s)が割当てられた電極位置座標群Bxy(n,m)の内側位置(図9の右側位置)の座標群
(n+d,m)と、変数kに等しいX方向電極番号gx(=k)及び変数sに等しいY方向電極番号gy(=s)が割当てられた電極位置座標群Bxy(n,m)の内側位置(図9の左側位置)の座標群(n−d,m)とを含む、それらの座標群
(n+d,m), (n−d,m)の間に位置する座標位置(n,m)に対応した差データ群De(n,m)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)を抽出する。
【0122】
この場合、値dは例えば「8」程度の値であり、移動ピッチΔX,ΔYが1mm程度であることを考慮すれば、図9の1つの太陽電池セルSCの取出電極82の右側に8mm程度の位置から、取出電極81の左側に8mm程度の位置までの間の位置における差データ群De(n,m)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)が抽出されることになる。これらの抽出したデータ群De(n,m),Ix(n,m)は、太陽電池セルSCの発電面の欠陥を検出するもので、取出電極82,81からそれらの内側に8mm程度の位置までのデータ群De(n,m),Ix(n,m)を削除した理由は、前述した取出電極82,81に異常があった場合には差データ群De(n,m)が異常な値を示すためである。
【0123】
前記ステップS276の処理後、コントローラ70は、ステップS278にて、前記抽出した差データ群De(n,m)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)を用いて次のような計算を実行する。前記抽出した差データ群De(n,m)を前記抽出したX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)でそれぞれ除算することにより、比率データ群Der(n,m)(=De(n,m)/Ix(n,m))をそれぞれ計算する。そして、コントローラ70は、ステップS280にて、前記計算した全ての比率データDer(n,m)の中に、許容値(所定の負の値)よりも小さな比率データDer(n,m)
が存在するかを判定する。存在すれば、コントローラ70は、ステップS280にて「Yes」と判定し、ステップS282にて該当する比率データDer(n,m)をエラー位置データErp(n,m)として記憶し、ステップS284にて変数t,sによって指定されるエラーデータEr2(t,s)を“1”に設定する。これらのエラー位置データErp(n,m)及びエラーデータEr2(t,s)は対応させて記憶される。また、前記計算した全ての比率データDer(n,m)の中に、許容値(所定の負の値)よりも小さな比率データDer(n,m)
が存在しなければ、コントローラ70は、ステップS280にて「No」と判定して、ステップS286に進む。なお、前記許容値を負の所定値に設定した理由は、異常が存在している位置のX方向の電流の大きさデータIx(n,m)は、他の位置の電流の大きさデータ、本実施形態では異常の存在位置から太陽電池セルSCの内側に5mm程度離れた位置の電流の大きさデータIx(n+a,m)又はIx(n−a,m)(値aは、図8EのステップS220,S222で用いた値)よりも小さいからである。
【0124】
この場合、変数k,epは「2」であり、変数s,tは「1」である。したがって、前述したステップS252〜S274の処理により、図9の最上段の最も左の太陽電池セルSCの1対の取出電極82,81の異常が検出される。すなわち、前記太陽電池セルSCの1対の取出電極82,81の異常が判定され、異常が判定された場合には、エラーデータEr1(t,s,ep)(t,s=1,ep=1又は2)が“1”に設定される。また、前述したステップS276〜S284の処理により、図9の最上段の最も左の太陽電池セルSCの発電面の異常が検出される。すなわち、前記太陽電池セルSCの発電面の異常が判定され、異常が判定された場合には、エラーデータEr2(t,s)(t,s=1)が“1”に設定される。また、この場合には、異常位置を表す異常位置データErp(n,m)も記憶される。
【0125】
前記ステップS280〜S284の処理後、コントローラ70は、ステップS286にて変数tが前記入力したX方向の太陽電池セルSCの数tmaxに達したか否かを判定する(図9参照)。変数tがX方向の太陽電池セルSCの数tmaxに達していなければ、コントローラ70は、ステップS286にて「No」と判定し、ステップS288にて変数tに「1」を加算し、ステップS290にて変数epを初期値「1」に戻し、ステップS274にて変数kに「1」を加算して、ステップS252に戻る。そして、コントローラ70は、前述したステップS252〜S274の処理により、図9の最上段の左から2番目の太陽電池セルSCの1対の取出電極82,81の異常を検出する。また、前述したステップS276〜S284の処理により、図9の最上段の左から2番目の太陽電池セルSCの発電面の異常を検出する。
【0126】
その後、変数tが前記入力したX方向の太陽電池セルSCの数tmaxに達するまで、ステップS286にて「No」と判定され続けて、ステップS288,S290,S274の処理より変数t,ep,kが変更されて、前述したステップS252〜S284の処理により、図9の最上段において順次右に向かって太陽電池セルSCの1対の取出電極82,81及び太陽電池セルSCの発電面の異常が検出される。そして、変数tが前記入力したX方向の太陽電池セルSCの数tmaxに達すると、コントローラ70は、ステップS286にて「Yes」と判定し、ステップS292にて変数sが前記入力したY方向の太陽電池セルSCの数smaxに達したか否かを判定する。変数sがY方向の太陽電池セルSCの数smaxに達していなければ、コントローラ70は、ステップS292にて「No」と判定し、ステップS294にて変数sに「1」を加算し、ステップS296にて変数k,t,epを初期値「1」に戻して、ステップS252に戻る。そして、コントローラ70は、前述したステップS252〜S296の処理を繰り返し実行して、図9の最上段から2段目以降の太陽電池セルSCであって変数t,s,epによって指定される取出電極82,81の異常及び同太陽電池セルSCの発電面の異常を検出する。
【0127】
そして、これらのステップS252〜S296の処理を全ての太陽電池セルSCに対して実行した後、コントローラ70は、ステップS292にて「Yes」すなわち変数sがY方向の太陽電池セルSCの数smaxに達していると判定して、図8GのステップS300に進む。
【0128】
ステップS300においては、コントローラ70は、前記RAM又は記憶装置に記憶した電流の大きさデータIxy(n,m)、電流の方向データθixy(n,m)、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)、Y方向の電流の大きさデータIy(n,m)及び差データDe(n,m)(n=1〜N,m=1〜M)から表示用画像データを生成して、表示装置78に画像データによって表された画像を表示する。この画像は、例えば、太陽電池セルSCの検査位置ごとに、電流の大きさデータIxy(n,m)に応じて明度、色彩などを異ならせて表示するとともに、電流の方向データθixy(n,m)によって示された方向を示す矢印を表示する。また、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)、Y方向の電流の大きさデータIy(n,m)及び差データDe(n,m)に応じて明度、色彩などを異ならせて表示するとよい。また、表示装置78の表示画面の大きさに応じて、画像を拡大して、各太陽電池セルSCごと、又は各太陽電池セルSCの一部のみを表示したりするようにするとよい。なお、取出電極81,82がX方向に延設されていて、図8BのステップS162の処理によって変数CHが“1”に設定されている場合には、前記ステップS160の処理によって並び換えられた全ての電流の大きさデータIxy(n,m)、全ての電流の方向データθxy(n,m)、全てのY方向の電流の大きさデータIy(n,m)、全てのX方向の電流の大きさデータIx(n,m)、及び前記並び換えられた全てのX方向の電流の大きさデータIx(n,m)を用いて計算された全ての差データDe(n,m)のX座標値とY座標値との入替えにより、全ての各データIxy(n,m),θxy(n,m),Iy(n,m),Ix(n,m),De(n,m)を並び換えて元に戻す。
【0129】
また、本実施形態では、取出電極81,82の異常(取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良)を視覚判断できるように、取出電極81,82の対応位置及びその近傍位置(取出電極81,82の間であって取出電極81,82の近傍位置)の差データDe(n,m),De(n+ne,m)のみを、取出電極81,82ごと又は太陽電池セルSCごとに表示するようにするとよい。この場合、ステップS258の処理により抽出した差データDe(n+ne,m)をそれぞれ記憶しておいて、取出電極81,82の近傍位置に関しては、差データDe(n+ne,m)を表示装置78で表示する。また、取出電極81,82の対応位置に関しては、前記値ne分だけ左側又は右側の差データDe(n,m)を表示装置78で表示する。さらに、取出電極81,82の近傍位置及び対応位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+ne,m),Ix(n,m)を同時に表示してもよい。
【0130】
前記ステップS300の処理後、コントローラ70は、ステップS302、S304の判定処理を実行する。ステップS302においては、エラーデータEr1(t,s,ep)(t=1〜tmax,s=1〜smax,ep=1,2)の中に“1”を示すエラーデータが存在するかを調べる。ステップS304においては、エラーデータEr2(t,s)(t=1〜tmax,s=1〜smax)の中に“1”を示すエラーデータが存在するかを調べる。エラーデータEr1(t,s,ep),Er2(t,s)に“1”を示すエラーデータが存在しなければ、コントローラ70は、ステップS302,S304にて「No」と判定して、ステップS306にて表示装置78に「合格」を表示し、ステップS318にてこの評価プログラムの実行を終了する。一方、“1”を示すエラーデータがエラーデータEr1(t,s,ep)、Er2(t,s)のいずれかに存在すると、コントローラ70は、ステップS302又はS304にて「Yes」と判定して、ステップS308にて表示装置78に「不合格」を表示する。
【0131】
前記ステップS308の処理後、エラーデータEr1(t,s,ep)に“1”が含まれていれば、ステップS310にて、エラーデータEr1(t,s,ep)が“1”である変数t,s,epを取り出して、前記表示した画像中の変数t,s,epによって指定される取出電極81,82を欠陥ありとして表示する。また、エラーデータEr2(t,s)に“1”が含まれていれば、ステップS312にて、エラーデータEr1(t,s)が“1”である変数t,sを取り出して、前記表示した画像中の変数t,sによって指定される太陽電池セルSCを欠陥ありとして表示するとともに、前記図8FのステップS282の処理によって記憶したエラー位置データErp(n,m)の変数n,mを取り出して、変数n,mによって指定される太陽電池セルSCの発電面の欠陥位置を表示する。
【0132】
次に、図8BのステップS156にて「Yes」と判定されて、図8GのステップS314,S316の処理に進められた場合について説明する。これらは、入力ミス、検査装置の異常などにより太陽電池セルSCの自動的な合否の判定が不能であったり、不能である可能性が高い場合である。この場合は差データDe(n,m)は計算されていないので、コントローラ70は、ステップS314にて、電流の大きさデータIxy(n,m)、電流の方向データθixy(n,m)、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)及びY方向の電流の大きさデータIy(n,m)(n=1〜N,m=1〜M)から表示用画像データを生成して、表示装置78に画像データによって表された画像を表示する。
【0133】
特に、可能であれば、取出電極81,82の異常(取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良)を視覚判断できるように、取出電極81,82の対応位置及びその近傍位置(取出電極81,82の間であって取出電極81,82の近傍位置)のX方向の電流の大きさデータIx(n,m),Ix(n+ne,m)のみを、取出電極81,82ごと又は太陽電池セルSCごとに表示するようにするとよい。この場合には、取出電極81,82の位置が検出されていないので、作業者が、表示装置78の表示画面を見ながら、表示画像を移動させて取出電極81,82の対応位置及びその近傍位置のX方向の電流の大きさデータIx(n,m),Ix(n+ne,m)を表示させる必要がある。
【0134】
次に、コントローラ70は、ステップS316にて、「取出電極81,82の合否判定は不能」である旨を表示装置78に表示して、ステップS318にてこの評価プログラムの実行を終了する。
【0135】
上記のように動作する太陽電池セル検査装置においては、発光素子52は、発光信号供給回路71及び第1光源駆動回路72の駆動制御により、ステージ20上に載置した太陽電池パネルSPの表面全体にわたって、所定周期で強度が変化する光を均等に照射する。そして、X方向及びY方向移動機構30,40により、磁気センサ10で太陽電池パネルSPの表面全体を走査し、センサ信号取出回路73及びロックインアンプ74が、太陽電池パネルSPに発電によって流れる電流により発生する磁界であって、前記所定周期と等しい周期で強度が変化する磁界を検出する。したがって、外乱光や、外部磁界が存在しても、コストを抑えたうえで、これらの影響を受けずに、太陽電池パネルSPに対向する複数の箇所で磁界を検出することができる。
【0136】
そして、前記検出結果に基づいて、コントローラ70は、ステップS10〜S76,S100〜S124の処理により、太陽電池パネルSPに対向する複数の箇所における磁界の検出結果に基づいて、太陽電池パネルSPの複数の箇所における電流の大きさデータIxy(n,m)、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)及びY方向の電流の大きさデータIy(n,m)を計算する。そして、コントローラ70は、ステップS130、S170〜S210の処理により、太陽電池パネルSP上の複数の太陽電池セルSCの取出電極位置Bxy(n,m)を検出する。さらに、ステップS220〜S242の処理により、太陽電池パネルSP内の複数の太陽電池セルSCのそれぞれに対して、取出電極81,82間の各位置のX方向の電流の大きさデータから、太陽電池セルSCのX方向内側に所定距離(5mm程度)だけ離れた位置のX方向の電流の大きさデータを減算した差データ群De(n,m)を計算する。
【0137】
そして、この差データ群De(n,m)とX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)の中から、ステップS252〜S258の処理により、取出電極81,82の近傍位置における差データ群De(n+ne,m)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m)を抽出する。また、これらの差データ群De(n+ne,m)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m)を用いて、ステップS260の処理により、取出電極81,82の延設方向の沿った前記差データ群De(n,m)の変動を表す評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を計算する。そして、これらの評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を用いて、ステップS262,S264の処理により、取出電極81,82の接続異常を判定する。
【0138】
このような太陽電池セルSCにおいては、図12を用いて説明したように、前記差データ群De(n+ne,m)は取出電極81,82が正常であればほぼ一定値である。しかし、取出電極81,82に接続異常が発生している場合には、接続異常位置において、前記差データ群De(n+ne,m)は一定値から大きく変動する。したがって、上記実施形態によれば、取出電極81,82の接続不良を高精度で簡単に検出することができる。また、発光素子52による太陽電池パネルSPに対する光の照射に対して、磁気センサ10、支持部材31などによる影ができても、5mm程度の短い所定距離だけ隔てた2位置におけるX方向の電流の大きさの差を検出しているために、前記2位置の影の濃淡はほぼ同じであり、影の影響を除外することができて、取出電極81,82の異常を精度よく検出することができる。
【0139】
また、前記差データ群De(n,m)とX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)の中から、ステップS276の処理により、取出電極81,82間の位置における差データ群De(n,m)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)を抽出する。そして、これらの差データ群De(n,m) 及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)を用いて、ステップS278,S280の処理により、前記X方向の電流の大きさデータIx(n,m)に対する差データDe(n,m)の比の値である比率データDer(n,m)が負の値の許容値より小さいことを条件に、太陽電池セルSCの発電面の欠陥を検出する。
【0140】
このような太陽電池セルSCにおいては、図13を用いて説明したように、前記差データDe(n,m)は太陽電池セルSCの発電面が正常であればほぼ「0」である。しかし、太陽電池セルSCの発電面に欠陥がある場合には、欠陥位置において、前記差データDe(n,m)は「0」から負側に大きく変動する。したがって、上記実施形態によれば、太陽電池セルSCの発電面の欠陥を高精度で簡単に検出することができる。また、この場合も、発光素子52による太陽電池パネルSPに対する光の照射に対して、磁気センサ10、支持部材31などによる影ができても、5mm程度の短い所定距離だけ隔てた2位置におけるX方向の電流の大きさの差を検出しているために、前記2位置の影の濃淡はほぼ同じであるため、影の影響を除外することができ、発電面の欠陥を精度よく検出することができる。
【0141】
さらに、上記実施形態においては、支持部材31の両側底面に発光素子51を配置して、太陽電池パネルSPを照射するようにした。この発光素子51の光の照射により、磁気センサ11、支持部材31などの影によって太陽電池セルに抵抗値が高くなる箇所がなくなるので、影の影響をさらに的確に除外することができて、取出電極81,82の接続不良及び太陽電池セルSCの発電面の欠陥をより高精度で検出できる。
【0142】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形も可能である。
【0143】
上記実施形態においては、発光素子52から出射される光を太陽電池パネルSPに照射し、太陽電池パネルSPの発電によって太陽電池パネルSPに流れる電流によって発生される磁界を磁気センサ10で検出するようにした。しかし、これに代えて、外部から太陽電池パネルSPの接続線92,93(図9参照)に、導線L1,L2を介して電圧を印加して、太陽電池パネルSPに電流を流すようにしてもよい。
【0144】
この変形例においては、図15に示すように、上記発光信号供給回路71及び第1光源駆動回路72に代えて、通電信号供給回路71a及び通電回路72aを備えている。通電信号供給回路71aは、上記発光信号供給回路71と同様に構成され、「0」を基準に正負に変化する正弦波信号を通電回路72aに供給するとともに、前記通電信号と同期して「0」を中心として正負に変化する矩形波信号をロックインアンプ74に供給する。通電回路72aは、通電信号供給回路71aから供給される「0」を基準に正負に変化する正弦波信号に正のオフセット電圧を加算して、前記オフセット電圧を中心に正弦波状に変化して常に正の範囲内で変化する通電信号に変換して、太陽電池パネルSPの接続線92,93に導線L1,L2を介して供給する。具体的には、図9に示すように、導線L1を接続線92に接続して正の範囲内で変化する通電信号を供給し、導線L2を接続線93に接続して接地する。この場合、発光素子51及び第2光源駆動回路75はあってもよいし、なくてもよい。その他の構成は、上記実施形態と同じである。
【0145】
これにより、この変形例では、図9の矢印とは逆向きに電流が流れ、すなわち導線L1から取出電極81に向かって電流が流れるとともに、取出電極82から導線L2に向かって電流が流れ、各太陽電池セルSCにおいては、取出電極81から発電セル83を介して取出電極82に向かって電流が流れる(図10A及び図10B参照)。したがって、取出電極81,82に上記実施形態とは逆向きの電流が流れるが、この変形例においても、太陽電池セルSCに異常(取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良)が発生した場合には、図12(C)(D)に示すように、取出電極81,82位置及びそれらの内側近傍位置にてX方向に流れる電流の大きさデータIx(n,m),Ix(n+ne,m)の変動が大きくなる。すなわち、図8FのステップS260の処理によって差データ群De(n+ne,m)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m)を用いて計算される評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)は大きくなる。
【0146】
また、太陽電池セルSCの発電面に欠陥がある場合には、図13(B)に示すように、欠陥位置におけるX方向の電流の大きさIx(n,m)は小さくなるとともに、差データDe(n,m)は大きく負に変化する。すなわち、図8FのステップS278の処理によって前記差データDe(n,m)及びX方向の電流の大きさデータIx(n,m)を用いて計算される比率データDer(n,m)も大きく負に変化する。ただし、これらのX方向に流れる電流及びY方向に流れる電流の向きは上記実施形態とは逆となる。そして、他の構成は上記実施形態と同じであるので、この変形例においても、上記実施形態と同様に、太陽電池セルSCの取出電極81,82の異常及び発電面の欠陥が、コントローラ70によって自動的に検出されるとともに、作業者が視覚的に判断できるようになる。また、この場合も、通電信号供給回路71a、通電回路72a、センサ信号取出回路73及びロックインアンプ74により、外乱光や、外部磁界が存在しても、これらの影響を受けずに、太陽電池パネルSPに対向する複数の箇所で磁界を検出することができる。
【0147】
また、上記実施形態及び変形例では、取出電極81,82の近傍位置のX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m)(又はIx(n−ne,m))から、前記近傍位置から所定距離(5mm:a・ΔX)だけX方向内側に離れた位置のX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne+a,m)(又はIx(n−ne−a,m))を減算した差データ群De(n,m)の変動により太陽電池セルSCの取出電極81,82の異常(取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良)を検出するようにした。しかし、これに代えて、図12(C)に示すように、太陽電池セルSCの取出電極81,82に異常が発生すれば、取出電極81,82位置にてX方向に流れる電流の大きさデータIx(n,m)から、取出電極81,82から所定距離(5mm:a・ΔX)だけX方向内側に離れた位置のX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+a,m)(又はIx(n−a,m))を減算した差データ群De(n,m)も変動する。したがって、この差データDe(n,m)を用いて、太陽電池セルSCの取出電極81,82の異常を検出するようにしてもよい。なお、この場合には、図8FのステップS252〜S256の処理が不要となるとともに、ステップS258においては電極位置座標群Bxy(n,m)に対応した差データ群De(n,m)及びX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)が抽出されて、ステップS260にてデータ群De(n+ne,m),Ix(n+ne,m)に代えてデータ群De(n,m),Ix(n,m)が用いられる。
【0148】
また、上記実施形態及び変形例においては、X方向電極番号gx及びY方向電極番号gyを電極位置座標Bxy(n,m)に割当てる図8C及び図8DのステップS170〜S210の処理において、電流の大きさデータIxy(n,m)を用いて取出電極81,82の位置を検出するようにした。しかし、取出電極81,82位置を流れる電流の向きはほぼY方向であるので、前記電流の大きさデータIxy(n,m)に代えて、Y方向の電流の大きさデータIy(n,m)を用いるようにしてもよい。
【0149】
また、上記実施形態及び変形例では、図8AのステップS104〜S112の処理により、磁気センサ10の検出位置のX方向磁気検出信号の極大値Hx、X方向磁気検出信号の参照信号に対する位相シフト量θx、Y方向磁気検出信号の極大値Hy、Y方向磁気検出信号の参照信号に対する位相シフト量θy、磁界の強さHxy及び磁界の向きθxyを計算して、ステップS112,S114の処理により、磁気センサ10の検出位置の電流の大きさデータIxy(n,m)、前記電流の方向データθixy(n,m)、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)及びY方向の電流の大きさデータIy(n,m)を計算した。そして、図8EのステップS220〜S230の処理により、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)を用いて差データDe(n,m)を計算し、この差データDe(n,m)及びX方向の電流の大きさデータIx(n,m)を用いて取出電極81,82に関する評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を計算して太陽電池セルSCの取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良を検出するとともに、この差データDe(n,m)及びX方向の電流の大きさデータIx(n,m)を用いて太陽電池セルSCの発電面の異常を検出ようにした。しかし、電流の大きさは磁界の大きさに比例しており、電流の方向は磁界の方向とπ/2異なるだけである。したがって、磁界に関する情報を電流に関する情報に変換しなくても、磁気センサ10の各検出位置のY方向磁気検出信号の極大値Hyを、上記実施形態のX方向の電流の大きさIx(n,m)に代えて用いることにより、差データDe(n,m)を計算し、この差データDe(n,m)と前記極大値Hyを用いて、太陽電池セルSCの取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良に関する評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を計算して前記接続不良を検出したり、この差データDe(n,m)及び前記極大値Hyを用いて太陽電池セルSCの発電面の異常を検出するようにしてもよい。
【0150】
また、上記実施形態及び変形例では、取出電極81,82の位置を自動的に検出し、検出した位置及びその近傍位置のX方向の電流の大きさデータIx(n,m),Ix(n+ne,m)から差データDe(n,m),De(n+ne,m),比率データDer(n,m),Der(n+ne,m),評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を計算して、取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良の有無を判定するようにした。しかし、これに代えて、作業者が表示装置78に表示される電流分布の画像を見て取出電極81,82の位置をコントローラ70に指示し、コントローラ70がこの指示された位置及びその近傍のX方向の電流の大きさデータIx(n,m),Ix(n+ne,m)から差データDe(n,m),De(n+ne,m),比率データDer(n,m),Der(n+ne,m),評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を計算して、取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良の有無を判定するようにしてもよい。
【0151】
また、コントローラ70は、取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良の判定まで行わなくて、評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を表示装置78に表示し、作業者に取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良の有無を判定させるようにしてもよい。さらに、コントローラ70は、評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)の計算も行わずに、取出電極81,82の位置及びその近傍位置のX方向の電流の大きさIx(n,m),Ix(n+ne,m)、差データDe(n,m),De(n+ne,m),比率データDer(n,m),Der(n+ne,m)の分布を画像で表示装置78に表示し、作業者はこの表示を見て取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良の有無を判定するようにしてもよい。
【0152】
また、太陽電池セルSCの発電面の結果に関しても、差データ群De(n,m)又は比率データ群Der(n,m)を表示装置78に表示し、作業者に太陽電池セルSCの発電面の欠陥の有無を判定させるようにしてもよい。さらに、コントローラ70は、差データ群De(n,m)又は比率データ群Der(n,m)の計算も行わずに、取出電極81,82間のX方向の電流の大きさIx(n,m)の分布を画像で表示装置78に表示し、作業者はこの表示を見て太陽電池セルSCの発電面の欠陥の有無を判定するようにしてもよい。
【0153】
上記実施形態及び変形例における取出電極81,82の接続異常の検出において、ステップS260の処理により、差データ群De(n+ne,m)をX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m)で除して比率データ群Der(n+ne,m)(=De(n+ne,m)/Ix(n+ne,m))を計算するとともに、この比率データ群Der(n+ne,m)を用いて評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を計算し、ステップS262,S264の判定処理により評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)が許容値よりも大きいことを条件に、取出電極81,82の接続異常の判定するようにした。この場合、差データ群De(n+ne,m)をX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m)で除して比率データ群Der(n+ne,m)を計算することで、取出電極81,82の接続異常の判定精度は向上する。しかし、検査対象の太陽電池セルSCごとのX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m)の変化を小さくすることができ、高い精度を要求しなければ、差データ群De(n+ne,m)をX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)で除することなく、差データ群De(n+ne,m)を用いて評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を計算するようにしてもよい。
【0154】
また、太陽電池セルSCの発電面の欠陥の検出においても、ステップS278の処理により差データ群De(n,m)をX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)で除して比率データ群Der(n,m)(=De(n,m)/Ix(n,m))を計算し、ステップS280にて比率データ群Der(n,m)が許容値(負の所定値)よりも小さいことを条件に発電面の欠陥を判定した。この場合も、差データ群De(n,m)をX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)で除して比率データ群Der(n,m)を計算することで、発電面の欠陥の判定精度は向上する。しかし、検査対象の太陽電池セルSCごとのX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)の変化を小さくすることができ、高い精度を要求しなければ、差データ群De(n,m)をX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)で除することなく、差データ群De(n,m)が所定の負の値よりも小さいことを条件に発電面の欠陥を判定するようにしてもよい。
【0155】
また、上記実施形態又は変形例においては、ステップS220,S222,S230の処理により、座標値(n,m)によって指定される位置におけるX方向の電流の大きさデータIx(n,m)から前記位置の近傍位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m)(又はIx(n−a,m))を減算して、差データDe(n,m)を計算するようにした。しかし、ステップS220,S222,S230の処理により、前記とは逆に、近傍の位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m)(又はIx(n−a,m))から前記座標値(n,m)によって指定される位置におけるX方向の電流の大きさデータIx(n,m)を減算して、差データDe(n,m)を計算するようにしてもよい。この場合には、図13(C)に示すように、異常個所の差データDe(n,m)は正側に変化する。したがって、この場合には、ステップS280の判定処理で、比率データ群Der(n,m)又は差データDe(n,m)が所定の正の値よりも大きいことを条件に発電面の欠陥を検出するようにする。
【0156】
また、この近傍の位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m)(又はIx(n−a,m))から前記座標値(n,m)によって指定される位置におけるX方向の電流の大きさデータIx(n,m)を減算して、差データDe(n,m)を逆に計算した結果は、取出電極81,82の異常の判定にも利用することができる。なぜならば、この逆に計算した差データDe(n,m)は図12(C)(D)の縦軸正負を反対にした結果となるだけで、ステップS260の評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)にはほとんど影響を与えないからである。
【0157】
また、上記実施形態及び変形例における発電面の欠陥の判定においては、座標値(n,m)によって指定される位置におけるX方向の電流の大きさデータIx(n,m)から、前記位置から太陽電池セルSCの内側の近傍位置のX方向の電流の大きさデータIx(n+a,m)(又はIx(n−a,m))を減算して、差データDe(n,m)を計算して、この差データDe(n,m)を発電面の欠陥の判定に用いるようにした。しかし、この場合の座標値(n,m)は太陽電池セルSCの取出電極81,82から例えば8mm(8・ΔX)以上内側の位置である。したがって、この発電面の欠陥の判定に用いる差データDe(n,m)に関しては、座標値(n,m)によって指定される位置におけるX方向の電流の大きさデータIx(n,m)から、前記位置から太陽電池セルSCの外側の近傍位置のX方向の電流の大きさデータIx(n−a,m)(又はIx(n+a,m))を減算して、差データDe(n,m)を計算するようにしてもよい。また、前記変形例の場合のように、前記近傍位置のX方向の電流の大きさデータIx(n−a,m)(又はIx(n+a,m))から、座標値(n,m)によって指定される位置におけるX方向の電流の大きさデータIx(n,m)を減算して、差データDe(n,m)を計算するようにしてもよい。
【0158】
上記実施形態及び変形例においては、1つの磁気センサ10をX方向及びY方向に移動させて、太陽電池セルSCの取出電極81,82の接続不良と発電面の欠陥の検査を行った。しかし、取出電極81,82の接続不良のみを検査したいときには、作業者は、取出電極81,82の近傍位置(取出電極81,82から1〜2mm程度内側位置)に磁気センサ10を目視でセットして、磁気センサ10を取出電極81,82の延設方向に移動させながら磁界の強さを順次測定するとともに、前記磁気センサ10の前記セット位置から取出電極81,82のX方向内側の所定距離(前記5mm程度)だけ離れた位置に磁気センサ10を目視でセットして、磁気センサ10を取出電極81,82の延設方向に移動させながら磁界の強さを順次測定する。そして、これらの測定した磁界の強さを用いて、上述した実施形態の場合と同様にして、前記取出電極81,82の近傍位置のX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne,m)(又はIx(n−ne,m))を計算するとともに、前記近傍位置から所定距離(5mm:a・ΔX)だけX方向に離れた位置のX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+ne+a,m)(又はIx(n−ne−a,m))を計算し、その後に両大きさデータの差を差データ群De(n,m)として計算するようにしてもよい。
【0159】
また、上記変形例のように、取出電極81,82位置のX方向の電流の大きさデータIx(n,m)を用いる場合には、作業者は、取出電極81,82の位置に磁気センサ10を目視でセットして、磁気センサ10を取出電極81,82の延設方向に移動させながら磁界の強さを順次測定するとともに、前記磁気センサ10の前記セット位置から取出電極81,82のX方向内側の所定距離(前記5mm程度)だけ離れた位置に磁気センサ10を目視でセットして、磁気センサ10を取出電極81,82の延設方向に移動させながら磁界の強さを順次測定する。そして、これらの測定した磁界の強さを用いて、上述した実施形態の場合と同様にして、前記取出電極81,82の位置のX方向の電流の大きさデータ群Ix(n,m)を計算するとともに、前記取出電極81,82の位置から所定距離(5mm:a・ΔX)だけX方向に離れた位置のX方向の電流の大きさデータ群Ix(n+a,m)(又はIx(n−a,m))を計算し、その後に両大きさデータの差を差データ群De(n,m)として計算するようにしてもよい。
【0160】
また、X方向移動機構30を構成する支持部材31内をX軸方向に移動する移動部材32の下面に、2つの磁気センサをX方向に前記所定距離(5mm程度)だけ離して配置しておき、取出電極81,82の接続不良検出のために、一方の磁気センサを取出電極81,82の近傍位置又は取出電極81,82の位置にセットし、他方の磁気センサを取出電極81,82の内側の前記所定距離だけ離れた位置にセットされるようにして、2つの磁気センサを取出電極81,82の延設方向に1回だけ移動させて磁界の強さを測定するようにしてもよい。そして、この1回の磁気センサの移動により取得した磁界の強さに基づいて、前記差データ群De(n,m)を計算するようにしてもよい。また、この2つの磁気センサを用いた変形例は、太陽電池の発電面の欠陥のために2つの磁気センサを発電面を走査させるようにしてもよい。
【0161】
また、上記実施形態及び変形例では、複数の太陽電池セルSCを有する太陽電池パネルSPを検査するようにした。しかし、本発明は、これに代えて、太陽電池セルSCを個々に検査する検査装置にも適用できる。
【0162】
また、上記実施形態及び変形例においては、磁気センサ10を固定した移動部材32をX,Y方向に移動するようにした。しかし、これに代えて、太陽電池パネルSP又は太陽電池セルSCをセットするステージ20を複数の発光素子52と共にX,Y方向に移動するようにしてもよい。また、移動部材32とステージ20の双方がX,Y方向に移動するようにしてもよい。さらには、磁気センサ10及び太陽電池パネルSP(又は太陽電池セルSC)をセットするステージを移動させずに、多数の磁気センサ10を、マトリクス状に配置するようにしてもよい。
【0163】
また、上記実施形態及び変形例においては、取出電極81,82に関する評価データB(t,s,ep),C(t,s,ep)を計算して、評価データの値によって取出電極81,82と内部電極86,88との接続不良の有無を判定するとともに、比率データ群Der(n,m)の値によって太陽電池セルSCの発電面の欠陥を判定するようにした。しかし、太陽電池パネルSP又は太陽電池セルSCの形状及び大きさが1つに限定されていれば、検査対象である太陽電池パネルSP又は太陽電池セルSCのX方向の電流の大きさデータIx(n,m)の分布と共に、正常な太陽電池パネルSP又は太陽電池セルSCのX方向の電流の大きさデータIx(n,m)の分布を表示して、作業者に対比観察により取出電極81,82と内部電極86,88との接続の合否判定及び太陽電池セルSCの発電面の欠陥の合否判定を行わせるようにしてもよい。
【0164】
また、上記実施形態においては、複数の発光素子(LED)52をマトリクス状に配置した光源を利用したが、太陽電池パネルSP又は太陽電池セルSCをセットするステージ20上の光量が均一になるならば、どのような光源でもよく、蛍光灯、ランプ等の光源でもよい。
【0165】
また、上記実施形態及び変形例では、磁気センサとして磁気抵抗素子(MR素子)を利用したが、これに代えて、ホール素子、磁気インピーダンス素子効果センサ、フラックスゲート、超伝導量子干渉素子などを利用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0166】
10…磁気センサ、20…ステージ、30…X方向移動機構、34…X方向モータ、40…Y方向移動機構、44…Y方向モータ、51,52…発光素子、70…コントローラ、71…発光信号供給回路、71a…通電信号供給回路、72…第1光源駆動回路、72a…通電回路、73…センサ信号取出回路、74…ロックインアンプ、75…第2光源駆動回路、77…入力装置、78…表示装置、80…基板、81,82…取出電極、83…発電セル、SP…太陽電池パネル、SC…太陽電池セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って配置されるとともに直列接続されてなり、光の照射により発電する複数の発電セルと、
前記第1方向とは直交する第2方向に延設されるとともに、前記複数の発電セルのうちの両端の一対の発電セルにそれぞれ内部電極を介して接続されて、前記複数の発電セルによって発電された電力を取出すための一対の長尺状の取出電極と
を備えた太陽電池セルにおける前記内部電極に対する前記一対の取出電極の接続不良を検査する太陽電池セル検査装置において、
太陽電池セルに対向するように配置されて、太陽電池セルの各部に流れる電流によって発生される磁界を検出する磁気センサと、
太陽電池セルに光を照射することにより太陽電池セルを発電動作させて太陽電池セルの各部に電流を流し、又は前記一対の取出電極に電圧を印加することにより太陽電池セルの各部に電流を流し、太陽電池セルの各部に流れる電流により発生されて前記磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号を取出す磁界信号取出手段と、
前記一対の取出電極位置又はそれらの内側近傍位置を第1検出位置とするとともに、前記第1検出位置からその内側方向に所定距離だけ隔てた位置を第2検出位置とし、前記磁界信号取出手段によって取出された太陽電池セルの各部の磁界信号に基づき、前記第1検出位置における前記第2方向の磁界の強さ又は前記第1方向の電流の大きさを第1検出値とするとともに、前記第2検出位置における前記第2方向の磁界の強さ又は前記第1方向の電流の大きさを第2検出値とし、前記第1検出値と前記第2検出値との差を前記一対の取出電極に沿って検出する差検出手段と
を設けたことを特徴とする太陽電池セル検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載した太陽電池セル検査装置において、さらに、
前記差検出手段によって検出された第1検出値と第2検出値との差の変動を表す特性値を計算する変動特性値計算手段を設けたことを特徴とする太陽電池セル検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載した太陽電池セル検査装置において、さらに、
前記変動特性値計算手段によって計算された特性値が前記差検出手段によって計算された第1検出値と第2検出値との差の変動が大きいことを表すことを条件に、前記取出電極の接続不良を判定する判定手段を設けたことを特徴とする太陽電池セル検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか一つに記載した太陽電池セル検査装置において、さらに、
前記差検出手段によって検出された第1検出値と第2検出値との差の分布を視覚的に示す画像を表示する表示手段を設けたことを特徴とする太陽電池セル検査装置。
【請求項5】
第1方向に沿って配置されるとともに直列接続されてなり、光の照射により発電する複数の発電セルと、
前記第1方向とは直交する第2方向に延設されるとともに、前記複数の発電セルのうちの両端の一対の発電セルにそれぞれ内部電極を介して接続されて、前記複数の発電セルによって発電された電力を取出すための一対の長尺状の取出電極と
を備えた太陽電池セルにおける発電面の欠陥を検査する太陽電池セル検査装置において、
太陽電池セルに対向するように配置されて、太陽電池セルの各部に流れる電流によって発生される磁界を検出する磁気センサと、
太陽電池セルに光を照射することにより太陽電池セルを発電動作させて太陽電池セルの各部に電流を流し、又は前記一対の取出電極に電圧を印加することにより太陽電池セルの各部に電流を流し、太陽電池セルの各部に流れる電流により発生されて前記磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号を取出す磁界信号取出手段と、
前記一対の取出電極間に位置して前記第1方向に所定距離だけ隔てた第1検出位置及び第2検出位置における前記第2方向の磁界の強さ又は前記第1方向の電流の大きさをそれぞれ第1検出値及び第2検出値とし、前記磁界信号取出手段によって取出された太陽電池セルの各部の磁界信号に基づき、前記第1検出値と前記第2検出値との差を検出する差検出手段と
を設けたことを特徴とする太陽電池セル検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載した太陽電池セル検査装置において、さらに、
前記差検出手段によって検出された第1検出値と第2検出値との差が所定値よりも大きいとき、前記発電面の欠陥を判定する判定手段を設けたことを特徴とする太陽電池セル検査装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載した太陽電池セル検査装置において、さらに、
前記差検出手段によって検出された第1検出値と第2検出値との差の分布を視覚的に示す画像を表示する表示手段を設けたことを特徴とする太陽電池セル検査装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか1つに記載した太陽電池セル検査装置において、
前記磁界信号取出手段は、
太陽電池セルを載置するステージと、
前記ステージ上に載置された太陽電池セルに対して発電のために光を照射する第1光照射手段と、
前記ステージと前記第1光照射手段との間にて前記磁気センサを前記ステージに対向させて支持する支持部材とを有し、さらに、
前記支持部材に取付けられて、前記ステージ上に載置された太陽電池の前記支持部材と対向する領域に光を照射する第2光照射手段を設けたことを特徴とする太陽電池セル検査装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のうちのいずれか1つに記載した太陽電池セル検査装置において、
前記磁界信号取出手段は、
太陽電池セルに所定周期で変化する光を照射することにより太陽電池セルを発電動作させて太陽電池セルの各部に電流を流し、又は前記一対の取出電極に所定周期で変化する電圧を印加することにより太陽電池セルの各部に電流を流し、太陽電池セルの各部に流れる電流により発生されて前記磁気センサによって検出される磁界を表す磁界信号であって、前記所定周期で変化する磁界信号を取出すことを特徴とする太陽電池セル検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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