説明

太陽電池セル温度測定方法、太陽電池セル温度測定装置及び太陽電池モジュール

【課題】熱電対を用いて太陽電池セルの温度を測定する太陽電池セル温度測定方法、太陽電池セル温度測定装置及び太陽電池モジュールにおいて、基板との温度差による誤差を可及的に排除し、たとえ光受光中であっても、太陽電池セルの温度を精度良く測定できるようにする。
【解決手段】基板2と、基板2上に保持される太陽電池セル1との間に、熱電対100の測温接点Aを配置し、熱電対100に生じる熱起電力にもとづいて、太陽電池セル1の温度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セルの温度を測定する太陽電池セル温度測定方法、太陽電池セル温度測定装置及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、太陽電池セルの電気出力特性には温度依存性がある。
このため、太陽電池セルの電気出力特性を評価する場合や、太陽電池セルの電気出力特性にもとづいて日射強度などを測定する場合においては、太陽電池セルの温度を正確に測定する必要がある。
【0003】
太陽電池セルの温度を測定する方法の一つとしては、例えば、非接触型のサーモグラフィを使用する方法が知られている。
しかしながら、この非接触型のサーモグラフィによる温度測定では、被測定物である太陽電池セルの光学特性を事前にある程度確認しておく必要があった。
また、真空試験槽でサーモグラフィを使用して温度を測定する場合には、試験槽側で特殊な観測窓等の準備が必要であった。
このため、非接触型のサーモグラフィによる太陽電池セルの温度測定は、簡易かつスピーディな測定を行うことが困難であった。
【0004】
一方、太陽電池セルの温度を熱電対で簡易に測定することも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
熱電対100とは、図2に示すように、2種類の金属線101、102の一端同士を電気的に接続したものであり、この接続点を測温接点Aとする一方、他端側を基準温度点Bとして電圧計103に接続する。ここで、測温接点Aと基準温度点Bとの間に温度差が生じると、温度差に応じた熱起電力が熱電対100に発生するので、基準温度点Bの電位差を電圧計103で測定することにより、測温接点Aの温度を知ることができる。
【0005】
図3は、このような熱電対を用いた太陽電池セル温度測定方法の参考例を示す説明図である。
この図に示すように、太陽電池セル104は、基板(サブストレート)105上に接着剤層106を介して実装されている。
太陽電池セル104の温度を熱電対で測定する場合、熱電対の測温接点Aを基板105内に配置して温度測定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−077311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図3に示した熱電対を用いた温度測定方法では、太陽電池セル104を実装(接着)している基板105の温度を測定して太陽電池セル104の温度に代替しているので、太陽電池セル104と基板105との間に温度差がある状況では、測定精度が低下するという問題があった。
特に、光受光中の場合は、太陽電池セル104と基板105の材質、熱容量及び色(太陽光吸収率、熱ふく射率)の違いで温度差が発生し易いので、正確な温度測定が困難であった。
【0008】
本発明の目的は、上述した課題である、熱電対を用いて太陽電池セルの温度を測定するにあたり、基板との温度差による誤差を排除して太陽電池セルの温度を正確に測定するという課題を解決する太陽電池セル温度測定方法、太陽電池セル温度測定装置及び太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明の太陽電池セル温度測定方法は、基板と、前記基板上に保持される太陽電池セルとの間に、熱電対の測温接点を配置し、前記熱電対に生じる熱起電力にもとづいて、前記太陽電池セルの温度を測定する方法としてある。
【0010】
また、本発明の太陽電池セル温度測定装置は、太陽電池セルの温度を測定する熱電対を備え、前記熱電対の測温接点が、基板と、前記基板上に保持される前記太陽電池セルとの間に配置される構成としてある。
【0011】
また、本発明の太陽電池モジュールは、基板と、前記基板上に保持される太陽電池セルと、前記太陽電池セルの温度を測定する熱電対とを備え、前記熱電対の測温接点が、前記基板と前記太陽電池セルとの間に配置される構成としてある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱電対を用いて太陽電池セルの温度を測定するにあたり、基板との温度差による誤差を可及的に排除し、たとえ光受光中であっても、太陽電池セルの温度を精度良く正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池セル温度測定方法が適用される太陽電池モジュール(太陽電池セル温度測定装置)の部分断面図である。
【図2】熱電対の説明図である。
【図3】熱電対を用いた太陽電池セル温度測定方法の参考例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の太陽電池セル温度測定方法、太陽電池セル温度測定装置及び太陽電池モジュールの実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の太陽電池セル温度測定方法が適用される太陽電池モジュール(太陽電池セル温度測定装置)の部分断面図である。
この図に示すように、本発明の太陽電池セル温度測定方法が適用される太陽電池モジュール(太陽電池セル温度測定装置)は、太陽電池セル1と、太陽電池セル1を保持する基板(サブストレート)2と、太陽電池セル1の温度を測定する熱電対100とを備えている。
【0015】
本発明の太陽電池セル温度測定方法では、熱電対100の測温接点Aを基板2と太陽電池セル1との間に配置し、熱電対100に生じる熱起電力にもとづいて、太陽電池セル1の温度を測定する。
【0016】
このような本実施形態の太陽電池セル温度測定方法では、熱電対100を用いて太陽電池セル1の温度を測定するにあたって、基板2の内部で温度を測定するのではなく、基板2と太陽電池セル1との間で温度を測定するようにしてある。
これにより、太陽電池セル1と基板2との温度差による誤差を可及的に排除することが可能となる。
従って、たとえ太陽電池セル1が光受光中等であっても、太陽電池セル1の温度を精度良く正確に測定することが可能となる。
【0017】
また、太陽電池セル1の電気出力特性を評価する場合、上述した本発明の温度測定方法を用いることにより、電気出力特性の評価精度を向上させることができる。
その理由は、温度依存性を有している太陽電池セル1の電気出力特性を、本発明の温度測定方法を用いて測定した正確な太陽電池セル温度にもとづいて評価できるからである。
【0018】
また、熱電対100の測温接点Aを基板2と太陽電池セル1との間に配置し、熱電対100に生じる熱起電力にもとづいて、太陽電池セル1の温度を測定するにあたり、熱電対100の測温接点Aは、太陽電池セル1の下面に接触させることができる。
このようにすると、熱電対100の測温接点Aを太陽電池セル1の下面から離間させる場合や、熱電対100の測温接点Aと太陽電池セル1の下面との間に別部材を介在させる場合に比べて、太陽電池セル1の温度をより正確に測定することができる。
【0019】
また、熱電対100の測温接点Aを基板2と太陽電池セル1との間に配置し、熱電対100に生じる熱起電力にもとづいて、太陽電池セル1の温度を測定するにあたり、熱電対100の測温接点Aは、基板2と太陽電池セル1との間の接着剤層3に実装することができる。
このようにすることで、基板2と太陽電池セル1との間に配置される熱電対100の測温接点Aを、太陽電池セル1を基板2上に実装するための接着剤層3を利用して固定できるので、熱電対100の測温接点Aを別手段で固定する場合に比べ、コストを削減することができる。
【0020】
また、熱電対100の測温接点Aを基板2と太陽電池セル1との間に配置し、熱電対100に生じる熱起電力にもとづいて、太陽電池セル1の温度を測定するにあたり、熱電対100の測温接点Aは、太陽電池セル1の下面における長さ方向や、幅方向の中央位置に配置することができる。
例えば、図1に示すように、太陽電池セル1の左右幅がWである場合、太陽電池セル1の左右端からW/2の位置に熱電対100の測温接点Aを配置する。
このようにすると、太陽電池セル1の温度をその中心部で測定することができるので、太陽電池セル1の下面における温度分布の影響を可及的に排除し、太陽電池セル1の温度をより正確に測定することができる。
【0021】
また、熱電対100の測温接点Aを基板2と太陽電池セル1との間に配置し、熱電対100に生じる熱起電力にもとづいて、太陽電池セル1の温度を測定するにあたり、熱電対100として、極細熱電対線を使用することができる。
ここで、熱電対100の極細熱電対線としては、例えば、直径25μm〜100μmの極細熱電対線を使用することができる。
【0022】
このような極細熱電対線を備えた熱電対100を用いることで、熱電対100自身による熱損失を可及的に小さくすることができ、従って、太陽電池セル1の温度をより正確に測定することが可能となる。
特に、薄くて熱容量が小さい太陽電池セル1の温度を測定する場合、熱電対100自身による熱損失が測定精度に大きく影響するが、極細熱電対線からなる熱電対100によれは、自身による熱損失を抑制し、正確な温度測定が可能となる。
【0023】
また、熱電対100として、直径25μm〜100μm等の極細熱電対線を使用すると、接着剤層3に熱電対100を配置しても、接着剤層3の厚みが大きく変更されることがないので、温度変化に伴う接着剤層3の反り変形を抑制でき、その結果、接着剤層3の反り変形に起因する太陽電池セル1の割れなども防ぐことができる効果も得られる。
【0024】
つぎに、本発明の実施形態に係る太陽電池セル温度測定方法(図1)の作用を、参考例に係る太陽電池セル温度測定方法(図3)と比較して説明する。
太陽光又はその他の光源から光を受けた太陽電池セル1は、電気出力を行うとともに、自身の温度が上昇する。
このとき、同時に光を受光する基板2においても温度上昇が発生するが、太陽電池セル1と基板2との間には、その光学的表面特性の違いにより、温度差が生じる。
【0025】
このため、図3に示す太陽電池セル温度測定方法では、太陽電池セル104を実装(接着)している基板105の温度を測定して太陽電池セル104の温度に代替しているので、太陽電池セル104と基板105との間に温度差がある状況では、測定精度が低下し、正確な温度測定ができない。
【0026】
これに対して、図1に示す本実施形態に係る太陽電池セル温度測定方法によれば、極細熱電対線からなる熱電対100の測温接点Aを、太陽電池セル1と基板2を接着する接着剤層3に実装するとともに、太陽電池セル1の下面に測温接点Aを接触させた状態で、温度測定を行うようにしているため、太陽電池セル104と基板105との間の温度差にかかわらず、太陽電池セル1の温度を正確に測定することが可能になる。
【0027】
以上の説明したように、本実施形態によれば、基板2と、基板2上に保持される太陽電池セル1との間に、熱電対100の測温接点Aを配置し、熱電対100に生じる熱起電力にもとづいて、太陽電池セル1の温度を測定するので、熱電対100を用いて太陽電池セル1の温度を測定するにあたり、基板2との温度差による誤差を可及的に排除し、たとえ光受光中であっても、太陽電池セル1の温度を精度良く測定することができる。
【0028】
また、熱電対100の測温接点Aは、太陽電池セル1の下面に接触されるので、熱電対100の測温接点Aを太陽電池セル1の下面から離間させる場合や、熱電対100の測温接点Aと太陽電池セル1の下面との間に別部材を介在させる場合に比べ、太陽電池セル1の温度をより正確に測定することができる。
また、熱電対100の測温接点Aは、基板2と太陽電池セル1との間の接着剤層3に実装されるので、基板2と太陽電池セル1との間に配置される熱電対100の測温接点Aを、太陽電池セル1を基板2上に実装するための接着剤層3を利用して固定でき、その結果、熱電対100の測温接点Aを別手段で固定する場合に比べ、コストを削減することができる。
【0029】
また、熱電対100の測温接点Aは、太陽電池セル1の下面における長さ方向及び/又は幅方向の中央位置に配置されるので、太陽電池セル1の温度をその中心部で測定することができ、その結果、太陽電池セル1の下面における温度分布の影響を可及的に排除し、太陽電池セル1の温度をより正確に測定することができる。
【0030】
また、熱電対100として、例えば直径25μm〜100μmの極細熱電対線を使用するので、熱電対100自身による熱損失を可及的に小さくし、太陽電池セル1の温度をより正確に測定することができる。特に、薄くて熱容量が小さい太陽電池セル1の温度を測定する場合、熱電対100自身による熱損失が測定精度に大きく影響するが、極細熱電対線からなる熱電対100によれは、自身による熱損失を抑制し、正確な温度測定が可能となる。
さらに、熱電対100として、極細熱電対線を使用すると、接着剤層3に熱電対100を配置しても、接着剤層3の厚みが大きく変更されることがないので、温度変化に伴う接着剤層3の反り変形を抑制でき、その結果、接着剤層3の反り変形に起因する太陽電池セル1の割れなども防ぐことができる。
【0031】
以上、本発明の太陽電池セル温度測定方法、太陽電池セル温度測定装置及び太陽電池モジュールについて、実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、熱電対を用いて太陽電池セルの温度を測定する太陽電池セル温度測定方法、太陽電池セル温度測定装置及び太陽電池モジュールであり、太陽電池セルの温度測定を必要とする用途、例えば、太陽電池セルの電気出力特性を評価する場合や、太陽電池セルの電気出力特性にもとづいて日射強度などを測定する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 太陽電池セル
2 基板
3 接着剤層
100 熱電対
101 金属線
102 金属線
A 測温接点
B 基準温度点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に保持される太陽電池セルとの間に、熱電対の測温接点を配置し、
前記熱電対に生じる熱起電力にもとづいて、前記太陽電池セルの温度を測定することを特徴とする太陽電池セル温度測定方法。
【請求項2】
前記熱電対の測温接点を、前記太陽電池セルの下面に接触させる請求項1記載の太陽電池セル温度測定方法。
【請求項3】
前記熱電対の測温接点を、前記基板と前記太陽電池セルとの間の接着剤層に実装する請求項1又は2記載の太陽電池セル温度測定方法。
【請求項4】
前記熱電対の測温接点を、前記太陽電池セルの下面における長さ方向及び/又は幅方向の中央位置に配置する請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池セル温度測定方法。
【請求項5】
前記熱電対として、極細熱電対線を備えた熱電対を使用する請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽電池セル温度測定方法。
【請求項6】
前記熱電対として、直径25μm〜100μmの極細熱電対線を備えた熱電対を使用する請求項5記載の太陽電池セル温度測定方法。
【請求項7】
太陽電池セルの温度を測定する熱電対を備え、
前記熱電対の測温接点が、基板と、前記基板上に保持される前記太陽電池セルとの間に配置されることを特徴とする太陽電池セル温度測定装置。
【請求項8】
前記熱電対の測温接点が、前記太陽電池セルの下面に接触される請求項7記載の太陽電池セル温度測定装置。
【請求項9】
基板と、
前記基板上に保持される太陽電池セルと、
前記太陽電池セルの温度を測定する熱電対とを備え、
前記熱電対の測温接点が、前記基板と前記太陽電池セルとの間に配置されることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項10】
前記熱電対の測温接点が、前記太陽電池セルの下面に接触される請求項9記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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