説明

太陽電池バックシート用接着剤

【課題】太陽電池バックシート製造時のフィルムへの初期密着性及び養生後の初期接着性が良好であり、高温下での接着性が高く、更に、長期にわたって十分な耐加水分解性を有する、総合的なバランスに優れる太陽電池バックシート用ウレタン接着剤、その接着剤を使用して得られる太陽電池バックシート及び太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】アクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応で得られるウレタン樹脂を含み、アクリルポリオールは、重合性単量体が重合することで得られ、重合性単量体は、水酸基を有する単量体およびその他の単量体を有し、水酸基を有する単量体はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含み、その他の単量体はアクリロニトリル及び(メタ)アクリル酸エステルを含む、太陽電池バックシート用接着剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池バックシート用接着剤に関する。更に、本発明は、その接着剤を用いて得られる太陽電池バックシート、及びその太陽電池バックシートを用いて得られる太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、有用なエネルギー資源として実用化が進んでいる。太陽電池には様々な形態があり、代表的なものとして、シリコン系太陽電池、無機化合物系太陽電池及び有機系太陽電池等が知られている。
【0003】
これらの太陽電池は、一般的に、太陽光が入射する側に、表面を保護する目的で表面保護シートが設けられている。太陽光が入射する面と反対側の面にも、太陽電池セルを保護する目的で裏面保護シート(バックシート)が設けられており、バックシートには太陽電池の長期的な性能劣化を最小限に抑えるために耐候性、耐水性、耐熱性、防湿性及びガスバリア性等の諸物性に優れることが求められている。
【0004】
これら諸物性を有するシートを得るために、種々のフィルムが使用されており、例えば、アルミニウム、銅及び鋼板等の金属箔、金属板及び金属蒸着フィルム、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、フッ素樹脂及びアクリル樹脂等のプラスチックフィルム等を例示することができる。
太陽電池のバックシートとして、更に性能を向上するために、これらのフィルムを積層した積層体も使用される。
【0005】
フィルムを積層した積層体の例を図1に例示する。バックシート10は複数のフィルム11及び12の積層体であり、フィルム11及び12は接着剤13を介して積層される。
フィルムの積層方法として、ドライラミネート法が一般的であり、接着剤13にはフィルム11及び12に対して十分な接着性を有することが要求される。
バックシート10は、封止材20、太陽電池セル30及びガラス板40等と一緒に太陽電池モジュール1を構成する(図3参照)。
【0006】
太陽電池モジュール1は、長期間に渡って屋外に曝されるので、高温、多湿、太陽光に対して十分な耐久性が要求される。特に、接着剤13の性能が低いと、フィルム11及び12が剥がれ、積層されたバックシート10の外観が損なわれる。このため、太陽電池バックシート用接着剤には、長期間暴露されてもフィルムが剥離しないことが要求される。
【0007】
太陽電池バックシート用接着剤の一例としてウレタン接着剤があり、特許文献1〜3では、耐久性、耐加水分解性向上を目的としてアクリルポリオールにイソシアネート等の硬化剤を配合した太陽電池バックシート用接着剤が太陽電池バックシートを製造するために用いられることを開示する。
【0008】
特許文献1及び2は、アクリルポリオールにイソシアネート硬化剤を配合して接着剤を製造し(特許文献1表1及び表2、特許文献2表1及び表2参照)、この接着剤を用いて長期耐候性、耐加水分解性に優れる太陽電池バックシートが製造されることを開示する。
特許文献3は、特定のアクリルポリオールを接着剤原料とすることで、初期接着性と長期耐久性が良好な太陽電池バックシートが製造されることを開示する。
【0009】
しかし、太陽電池バックシート用接着剤に求められる耐久性能は、年々高くなっており、バックシート用接着剤にはより高い接着性が求められる。また、太陽電池モジュールは、主に屋外で使用されるため高温下での高い接着性が望まれる。
【0010】
従って、太陽電池バックシート用接着剤には、十分な耐加水分解性を有するだけでなく、フィルム基材へのより高い接着性、更には、高温下であっても十分な接着性に優れることが重要であり、特許文献1〜3の接着剤は必ずしも上記性能を満足するものではない。特許文献1〜3の接着剤で太陽電池バックシートを製造すると、屋外の環境が厳しい場合、バックシートを構成する複数のフィルムが互いに剥離する可能性がある。
【0011】
太陽電池バックシートは、一般的に適度な粘度を有する接着剤をフィルムに塗布し、乾燥後にフィルムを積層し(ドライラミネート法)、その積層体を数日間養生することで製造される。従って、太陽電池バックシート用接着剤には、塗工に適する溶液粘度およびラミネート時におけるフィルムへの初期密着性が優れることも要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−263193号公報
【特許文献2】特開2010−238815号公報
【特許文献3】特開2011−105819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、かかる課題を解決するためにされたもので、その課題は、太陽電池バックシート製造時のフィルムへの初期密着性及び養生後の初期接着性が良好であり、高温下での接着性が高く、更に、長期にわたって十分な耐加水分解性を有する、総合的なバランスに優れる太陽電池バックシート用ウレタン接着剤、その接着剤を使用して得られる太陽電池バックシート、及びその太陽電池バックシートを用いて得られる太陽電池モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、ウレタン樹脂の原料として特定のアクリルポリオールを用いることで、フィルムへの初期密着性及び養生後の初期接着性が向上し、高温下での接着性が高く、更に、長期的な耐加水分解性に優れ、総合的なバランスに優れる太陽電池バックシート用接着剤が得られることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
即ち、本発明は、一の要旨において、
アクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応で得られるウレタン樹脂を含み、
アクリルポリオールは、重合性単量体が重合することで得られ、重合性単量体は、水酸基を有する単量体及びその他の単量体を有し、水酸基を有する単量体はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含み、その他の単量体はアクリロニトリル及び(メタ)アクリル酸エステルを含む、太陽電池バックシート用接着剤を提供する。
【0016】
本発明は、一の態様において、アクリロニトリルは、重合性単量体100重量部当たり、1〜40重量部である上記太陽電池バックシート用接着剤を提供する。
本発明は、他の態様において、アクリルポリオールは、ガラス転移温度が20℃以下である上記太陽電池バックシート用接着剤を提供する。
本発明は、好ましい態様において、アクリルポリオールは、水酸基価が0.5〜45mgKOH/gである上記太陽電池バックシート用接着剤を提供する。
【0017】
本発明は、他の要旨において、上記太陽電池バックシート用接着剤を用いて得られる太陽電池バックシートを提供する。
本発明は、好ましい要旨において、上記太陽電池バックシートを用いて得られる太陽電池モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る太陽電池バックシート用接着剤は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応で得られるウレタン樹脂を含み、アクリルポリオールは重合性単量体が重合することで得られ、重合性単量体は水酸基を有する単量体及びその他の単量体を有し、水酸基を有する単量体はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含み、その他の単量体はアクリロニトリルおよび(メタ)アクリル酸エステルを含むことで、
優れた耐加水分解性を維持したまま、十分なフィルムへの初期密着性を有し、養生後の初期接着性、高温下での接着性が向上し、総合的なバランスに優れる。
【0019】
アクリロニトリルは、重合性単量体100重量部当たり、1〜40重量部であることによって、バックシート製造時に適度な溶液粘度を有し、フィルムへの初期密着性が更に向上した太陽電池バックシート用接着剤が得られる。
本発明の太陽電池バックシート用接着剤は、アクリルポリオールのガラス転移温度が20℃以下である場合、フィルムへの初期密着性、養生後の初期接着性が更に向上して、より好適な接着剤となる。
本発明の太陽電池バックシート用接着剤は、アクリルポリオールの水酸基価が0.5〜45mgKOH/gである場合、耐加水分解性、高温下での接着性が著しく向上し、より好ましい。
【0020】
本発明に係る太陽電池バックシートは、上記太陽電池バックシート用接着剤を用いて得られるので、生産性により優れ、ラミネート初期から長期間の屋外暴露下において、接着剤からフィルムが剥離することを防止できる。
【0021】
本発明に係る太陽電池モジュールは、上記太陽電池バックシートを用いて得られるので生産性に優れ、更に、外観不良を生じ難く、耐久性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の太陽電池バックシートの一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の太陽電池バックシートの別の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の太陽電池モジュールの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る太陽電池バックシート用接着剤は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応で得られるウレタン樹脂を含む。
本発明に係るウレタン樹脂は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応によって得られるポリマーであって、ウレタン結合を有する。アクリルポリオールの水酸基がイソシアネート基と反応する。
【0024】
アクリルポリオールは、重合性単量体の付加重合で得られ、重合性単量体は「水酸基を有する単量体」および「その他の単量体」を有する。
「水酸基を有する単量体」は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含み、1種類のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを使用しても、2種以上のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを組み合わせて使用してもよい。また、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート以外の水酸基を有する単量体とを併用してもよい。
【0025】
「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート」として、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート以外の水酸基を有する重合性単量体」として、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を例示できる。
【0026】
「その他の単量体」は、水酸基を有する単量体以外の「エチレン性二重結合を有するラジカル重合性単量体」である。その他の単量体は、アクリルポリオール中、アクリロニトリルおよび(メタ)アクリル酸エステルのみであっても、アクリロニトリルおよび(メタ)アクリル酸エステル以外のエチレン性二重結合を有するラジカル重合性単量体をさらに含んでもよい。
【0027】
「(メタ)アクリル酸エステル」は、(メタ)アクリル酸とモノアルコールとの縮合反応で得られる化合物であり、エステル結合を有する。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等を例示できる。本発明においては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0028】
「アクリロニトリルおよび(メタ)アクリル酸エステル以外のエチレン性二重結合を有するラジカル重合性単量体」として、例えば、(メタ)アクリル酸、スチレン、ビニルトルエン等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
「アクリロニトリル」とは一般式:CH=CH−CNで表される化合物であり、アクリルニトリル、アクリル酸ニトリル、シアン化ビニルとも呼ばれる。
【0029】
重合性単量体中アクリロニトリルは、重合性単量体100重量部当たり、1〜40重量部であることが好ましく、5〜35重量部であることがより好ましく、5〜25重量部であることが特に好ましい。アクリロニトリル量が上記範囲にあることによって、塗工適性、養生後のフィルムへの初期接着性および高温下での接着性のバランスに優れた太陽電池バックシート用接着剤が得られる。
【0030】
尚、本明細書においては、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」ともいい、「アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル」を総称して「(メタ)アクリル酸エステル」又は「(メタ)アクリレート」ともいう。
【0031】
重合性単量体の重合は、本発明が目的とする太陽電池バックシート用接着剤を得られる限り、その重合方法は特に限定されるものではないが、例えば、通常の溶液重合の方法を使用して、有機溶媒中で適宜触媒等を用いて、上述の重合性単量体をラジカル重合することで行うことができる。ここで「有機溶媒」とは重合性単量体を重合するために用いることができ、重合反応後の太陽電池バックシート用接着剤としての特性に実質的に悪影響を与えないものであれば特に限定されるものではない。そのような溶媒として、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒並びにそれらの組み合わせを例示することができる。
【0032】
重合性単量体を重合させる際の反応温度、反応時間、有機溶媒の種類、単量体の種類及び濃度、攪拌速度、並びに触媒の種類及び濃度等の重合反応条件は、目的とする接着剤の特性等によって、適宜選択され得るものである。
【0033】
「触媒」とは、少量の添加によって重合性単量体の重合を促進させることができる化合物であって、有機溶媒中で使用可能なものが好ましい。触媒として、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及び、2,2−アゾビス(2−アミノジプロパン)ジヒドクロリド、及び2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を例示することができ、特に、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が好ましい。
【0034】
本発明における重合には、分子量を調節するために、連鎖移動剤等を適宜用いることができる。「連鎖移動剤」として、当業者に周知の化合物を使用できる。例えば、n−ドデシルメルカプタン(nDM)及びラウリルメチルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類を例示できる。
【0035】
上述のように重合性単量体を重合させることによりアクリルポリオールが得られる。アクリルポリオールの重量平均分子量は、接着剤の塗工適性の観点から、20万以下であることが好ましく、5000〜10万であることがより好ましい。尚、重量平均分子量は、ポリスチレン標準でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。具体的には、下記のGPC装置及び測定方法を用いて値を測定することができる。GPC装置は、東ソー社製のHCL−8220GPCを用い、検出器として、RIを用いる。GPCカラムとして、東ソー社製のTSKgel SuperMultipore HZ−Mを2本用いる。試料をテトラヒドロフランに溶解して、流速を0.35ml/min、カラム温度を40℃にて流し、標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて分子量の換算を行い、Mwを求める。
【0036】
アクリルポリオールのガラス転移温度は、使用する単量体の質量分率を調整することにより、設定することができる。アクリルポリオールのガラス転移温度は、各単量体から得られる単独重合体(ホモポリマー)のガラス転移温度とアクリルポリオール中で使用される単独重合体の質量分率から、下記の計算式(i)を用いて求めることができる。この計算によって求められるガラス転移温度を目安にして単量体組成を決定することが好ましい。
(i):1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
[前記式(i)中、Tgはアクリルポリオールのガラス転移温度を示し、W1、W2、・・・Wnは各単量体の質量分率を示し、Tg1、Tg2、・・・Tgnは対応する各単量体の単独重合体のガラス転移温度を示す。]
【0037】
尚、単独重合体のTgは、文献に記載されている値を用いることができる。そのような文献として、例えば、以下の文献を参照できる:三菱レーヨン社のアクリルエステルカタログ(1997年度版);北岡協三著、「新高分子文庫7、塗料用合成樹脂入門」、高分子刊行会、1997年発行、第168〜169頁;及び「POLYMER HANDBOOK」第3版第209〜277頁、John Wiley & Sons, Inc. 1989年発行。
【0038】
本明細書では、下記の単量体の単独重合体のガラス転移温度は以下のとおりとする。
メチルメタクリレート:105℃
n−ブチルアクリレート:−54℃
エチルアクリレート:−20℃
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル:55℃
アクリル酸2-ヒドロキシエチル:−15℃
グリシジルメタクリレート:41℃
アクリロニトリル:130℃
スチレン:105℃
【0039】
本発明において、アクリルポリオールのガラス転移温度はラミネート時におけるフィルムへの初期密着性の観点から、好ましくは20℃以下であり、-55℃〜10℃であることがより好ましく、−30℃から0℃であることが特に好ましい。
【0040】
アクリルポリオールの水酸基価は、0.5〜45mgKOH/gであることが好ましく、1〜40mgKOH/gであることがより好ましく、5〜35mgKOH/gであることが特に好ましい。アクリルポリオールの水酸基価が上記範囲にあることによって、養生後の初期接着性、高温下での接着性および耐加水分解性に優れた太陽電池バックシート用接着剤が得られる。
【0041】
本明細書で水酸基価とは、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するために要する水酸化カリウムのmg数を示す。
本発明では具体的には、下記式(ii)で算出される。
(ii):水酸基価=(水酸基を有する(メタ)アクリレートの重量/水酸基を有する(メタ)アクリレートの分子量)×水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体1モルに含まれる水酸基のモル数×KOHの式量×1000/アクリルポリオールの重量
【0042】
イソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、芳香族イソシアネートが挙げられ、本発明が目的とする太陽電池バックシート用接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。
【0043】
本明細書では、「脂肪族イソシアネート」とは、鎖状の炭化水素鎖を有し、その炭化水素鎖にイソシアネート基が直接結合している化合物であって、環状の炭化水素鎖を有さない化合物をいう。「脂肪族イソシアネート」は、芳香環を有してもよいが、直接その芳香環と、イソシアネート基は、結合していない。
尚、本明細書では、芳香環は環状の炭化水素鎖に含まれない。
【0044】
「脂環式イソシアネート」とは、環状の炭化水素鎖を有し、鎖状の炭化水素鎖を有してよい化合物である。イソシアネート基は、環状の炭化水素鎖と直接結合しても、有し得る鎖状の炭化水素鎖と直接結合してもよい。「脂環式イソシアネート」は、芳香環を有してもよいが、その芳香環と、イソシアネート基は、直接結合していない。
【0045】
「芳香族イソシアネート」とは、芳香環を有し、かつ、イソシアネート基がその芳香環と直接結合している化合物をいう。従って、たとえ芳香環をその分子内に有していたとしても、イソシアネート基が芳香環に直接結合していない化合物は、脂肪族イソシアネートか、脂環式イソシアネートに分類される。
【0046】
従って、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(OCN−C−CH−C−NCO)は、イソシアネート基が芳香環に直接結合しているので、芳香族イソシアネートに該当する。一方、例えば、キシリレンジイソシアネート(OCN−CH−C−CH−NCO)は、芳香環を有するが、イソシアネート基が芳香環に直接結合せず、メチレン基と結合しているので、脂肪族イソシアネートに該当する。
尚、芳香環は、二つ以上のベンゼン環が縮環していてもよい。
【0047】
脂肪族イソシアネートとして、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(以下、HDI)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(キシリレンジイソシアネート)等を例示できる。
【0048】
脂環式イソシアネートとしては、例えば、5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン等を例示できる。
【0049】
芳香族イソシアネートとして、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート等を例示できる。
これらのイソシアネート化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0050】
本発明において、イシシアネート化合物は、本発明が目的とするウレタン接着剤を得ることができる限り特に限定されないが、耐候性の観点から脂肪族イソシアネート及び脂環式イソシアネートから選択することが好ましい。特に、HDI、イソホロンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートが好ましく、特に、HDIの3量体が好ましい。
【0051】
本発明に係るウレタン樹脂は、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物を反応させることで得ることができる。反応は、既知の方法を用いることができ、通常、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物を混合することで行うことができる。混合方法は、本発明に係るウレタン樹脂を得ることができる限り、特に限定されるものではない。
【0052】
本発明の太陽電池バックシート用接着剤は、長期耐候性を向上させる目的で紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤としてはヒドロキシフェニルトリアジン系化合物および市販の他の紫外性吸収剤を使用することができる。「ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物」とは、トリアジン誘導体の一種であり、トリアジン誘導体の炭素原子にヒドロキシフェニル誘導体が結合したものであり、例えば、BASF株式会社から市販されている、チヌビン400、チヌビン405、チヌビン479、チヌビン477及びチヌビン460(いずれも商品名)等を例示できる。
【0053】
太陽電池バックシート用接着剤は、更に、ヒンダードフェノール系化合物を含有していてもよい。「ヒンダードフェノール系化合物」とは、一般にヒンダードフェノール系化合物とされるものであり、本発明が目的とする太陽電池バックシート用接着剤を得られる限り、特に制限されるものではない。
【0054】
ヒンダードフェノール系化合物は、市販されているものを使用することができる。ヒンダードフェノール系化合物として、例えば、BASF社から市販されている。IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1135、IRGANOX1330及びIRGANOX1520(いずれも商品名)等を例示できる。ヒンダードフェノール系化合物は、酸化防止剤として接着剤に添加され、例えば、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等と組み合わせて使用してもよい。
【0055】
本発明の太陽電池バックシート用接着剤は、更に、ヒンダードアミン系化合物を含んでいてもよい。
「ヒンダードアミン系化合物」とは、一般にヒンダードアミン系化合物とされるものであり、本発明が目的とする太陽電池バックシート用接着剤を得られる限り、特に制限されるものではない。
【0056】
ヒンダードアミン系化合物は、市販されているものを使用することができる。ヒンダードアミン系化合物として、例えば、BAFS社から市販されているチヌビン765、チヌビン111FDL、チヌビン123、チヌビン144、チヌビン152、チヌビン292及びチヌビン5100(いずれも商品名)等を例示できる。ヒンダードアミン系化合物は、光安定剤として接着剤に添加され、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等と組み合わせて使用することができる。
【0057】
本発明の太陽電池バックシート用接着剤は、更にシラン化合物を含んでいてもよい。
シラン化合物として、例えば、(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン類、(メタ)アクリロキシアルキルアルキルアルコキシシラン類、ビニルトリアルコキシシラン類、ビニルアルキルアルコキシシラン類、エポキシシラン類、メルカプトシラン類及びイソシアヌレートシラン類を用いることができるが、これらのシラン化合物のみに限定されることはない。
【0058】
「(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン類」として、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロキエチルトリメトキシシラン等を例示できる。
「(メタ)アクリロキシアルキルアルキルアルコキシシラン類」として、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシエチルメチルジメトキシシラン等を例示できる。
【0059】
「ビニルトリアルコキシシラン類」として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリ(エトキシメトキシ)シラン等が例示できる。
「ビニルアルキルアルコキシシラン類」として、例えば、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルエチルジ(メトキシエトキシ)シラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジエチル(メトキシエトキシ)シラン等を例示できる。
【0060】
「エポキシシラン類」は、例えば、グリシジル系シラン及びエポキシシクロヘキシル系シランに分類できる。「グリシジル系シラン」は、グリシドキシ基を有するもので、具体的には、例えば、3−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエトキシシラン等を例示できる。
【0061】
「エポキシシクロヘキシル系シラン」は、3,4−エポキシシクロヘキシル基を有するもので、具体的には、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等を例示できる。
【0062】
「メルカプトシラン類」として、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等を例示できる。
「イソシアヌレートシラン類」として、例えば、トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート等を例示できる。
【0063】
本発明に係る太陽電池バックシート用接着剤は、目的とする太陽電池バックシート用接着剤を得ることができる限り、更にその他の成分を含むことができる。
「その他の成分」を、太陽電池バックシート用接着剤に添加する時期は、目的とする太陽電池バックシート用接着剤が得られる限り、特に制限されるものではない。その他の成分は、例えば、ウレタン樹脂を合成する際に、アクリルポリオール及びイソシアネート化合物と一緒に添加しても良く、また、まずアクリルポリオールとイソシアネート化合物とを反応させてウレタン樹脂を合成した後に添加してもよい。
【0064】
「その他の成分」として、例えば、粘着付与樹脂、顔料、可塑剤、難燃剤、触媒及びワックス等を例示することができる。
「粘着付与樹脂」として、例えば、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、ロジンエステル、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂(ポリエステルポリオールを除く)等を例示できる。
【0065】
「顔料」として、例えば、酸化チタン及びカーボンブラック等を例示できる。
「可塑剤」として、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソノニルアジペート、ジオクチルアジペート及びミネラルスピリット等を例示できる。
「難燃剤」として、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤及び、金属水酸化物系難燃剤等を例示できる。
【0066】
「触媒」として、金属触媒、例えば、錫触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンマレエート等)、鉛系触媒(オレイン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛等)、そのほかの金属触媒(ナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩等)、及びアミン系触媒、例えばトリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルへキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン類、ジアルキルアミノアルキルアミン類等を例示できる。
【0067】
「ワックス」として、パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス等のワックスが好ましい。
太陽電池バックシート用接着剤の粘度は、回転粘度計(TOKIMEC社製BM型)等を用いて測定される。固形分40%での溶液粘度が4,000mPa・s以上ある場合、接着剤の塗工適性が低下し得、粘度を下げるためにさらに溶剤を加える等を行うと、低い固形分濃度で塗工することとなるので、太陽電池バックシートの生産性を低下させる可能性がある。
【0068】
本発明の太陽電池バックシート用接着剤は、上述のウレタン樹脂、場合により加えられるその他の成分を混合することによって製造することができる。混合方法は、本発明が目的とする太陽電池バックシート用接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。成分を混合する順序等についても、特に限定されるものではない。本発明に係る太陽電池バックシート用接着剤は、特別な混合方法及び特別な混合順序等を要することなく製造することができる。そして得られた太陽電池バックシート用接着剤は、優れた耐加水分解性を維持したまま、十分なフィルムへの初期密着性を有し、養生後の初期接着性、高温下での接着性が向上し、総合的なバランスに優れる。
【0069】
太陽電池モジュールを製造する接着剤には、特に高いレベルで接着性、耐加水分解性が要求されている。本発明の太陽電池バックシート用接着剤は、フィルムへの初期密着性、高温下でのフィルムに対する接着性に優れ、養生後の初期接着性が良好であり、耐加水分解性に優れるので、太陽電池バックシート用接着剤として好適である。
【0070】
太陽電池バックシートを作製する際には、本発明の当該接着剤をフィルムへ塗布する。塗布方法としては、グラビアコート、ワイヤーバーコート、エアナイフコート、ダイコート、リップコート、コンマコートなどの様々な方法により行うことができる。本発明の太陽電池バックシート用ウレタン接着剤が塗布された複数のフィルムを貼り合わせ、太陽電池バックシートが得られる。
【0071】
本発明の太陽電池バックシートの一形態を図1〜3に例示するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の太陽電池バックシートの断面図である。太陽電池バックシート10は、2枚のフィルムとその間の太陽電池バックシート用接着剤13から形成されており、2枚のフィルム11及び12は、太陽電池バックシート用接着剤13によって貼り合わされている。フィルム11及び12は、同一の材料であっても、異なる材料であってもよい。図1では、2枚のフィルム11及び12は、貼り合わされているが、3枚以上のフィルムが貼り合わされていてもよい。
【0072】
本発明に係る太陽電池バックシートの他の形態を図2に示す。図2では、フィルム11と太陽電池バックシート用接着剤13との間に、箔膜11aが形成されている。例えば、フィルム11が、プラスチックフィルムである場合、フィルム11の表面に、金属薄膜11aが形成されている形態を示す。金属薄膜11aは、プラスチックフィルム11の表面に、例えば蒸着によって形成することができ、この金属薄膜11aが形成されたフィルム11とフィルム12を、太陽電池バックシート用接着剤13を介して貼り付けて、図2に係る太陽電池バックシートを得ることができる。
【0073】
プラスチックフィルムに蒸着する金属として、例えば、アルミニウム、鋼及び銅等を例示できる。プラスチックフィルムに蒸着加工を施すことで、フィルムにバリア性を付与することができる。蒸着材料としては、酸化珪素や酸化アルミニウムが用いられる。基材のプラスチックフィルム11は、透明でも、白や黒等に着色されていてもよい。
【0074】
フィルム12として、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、フッ素樹脂、アクリル樹脂から成るプラスチックフィルムが用いられるが、耐熱性、耐候性及び剛性、絶縁性等を付与するためにポリエチレンテレフタレートフィルムやポリブチレンテレフタレートフィルムを用いることが特に好ましい。フィルム11及び12は、透明でも、着色されても良い。
【0075】
フィルム11の蒸着薄膜11aとフィルム12とは、本発明の太陽電池バックシート用接着剤13を用いて貼り付けられるが、フィルム11及び12は、ドライラミネート法によって積層されることが多い。従って太陽電池バックシート用接着剤13には、ラミネート時におけるフィルムへの初期密着性に優れ、養生後におけるフィルムへの初期接着性に優れていることが要求される。
【0076】
図3は、本発明の太陽電池モジュールの一例の断面図を示す。図3では、本発明の太陽電池モジュール1は、ガラス板40、エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)等の封止材20、一般に複数の太陽電池セル30を接続して所望の電圧を発生するもの、及びバックシート10を重ね合わせ、その後スペーサ50でこれらの部材10、20、30及び40を固定して、得ることができる。
【0077】
バックシート10は、上述したように、複数のフィルム11及び12の積層体なので、ウレタン接着剤13には、バックシート10が、たとえ長期間屋外に曝されても、フィルム11及び12が剥離せず、高温環境下での接着性および耐加水分解性に優れていることが要求される。
【0078】
以下、本発明の主な態様を示す。
1.アクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応で得られるウレタン樹脂を含み、アクリルポリオールは、重合性単量体が重合することで得られ、重合性単量体は、水酸基を有する単量体およびその他の単量体を有し、水酸基を有する単量体はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含み、その他の単量体はアクリロニトリルおよび(メタ)アクリル酸エステルを含む太陽電池バックシート用接着剤。
2.アクリロニトリルは、重合性単量体100重量部当たり、1〜40重量部である上記太陽電池バックシート用接着剤。
3.アクリルポリオールは、ガラス転移温度が20℃以下である上記太陽電池バックシート用接着剤
4.アクリルポリオールは、水酸基価が0.5〜45mgKOH/gである上記太陽電池バックシート用接着剤。
5.上記1〜4のいずれかに記載の太陽電池バックシート用接着剤を用いて得られる太陽電池バックシート。
6.上記5に記載の太陽電池バックシートを用いて得られる太陽電池モジュール。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて説明するが、これらの例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0080】
<アクリルポリオールの合成>
合成例1(アクリルポリオール(ポリマー1))
攪拌翼、温度計、及び還流冷却管を備えた四つ口フラスコに、酢酸エチル(和光純薬((株)製)150gを仕込み、約80℃で還流させた。このフラスコ内に、重合開始剤として2,2−アゾビスイソブチロニトリルを1g加え、表1に示す量の単量体の混合物を1時間30分かけてフラスコ内に連続的に滴下した。さらに2時間加熱した後、アクリルポリオールの不揮発分(固形分)が40.0重量%の溶液を得た。
アクリルポリオール(ポリマー1)の重合性単量体成分の組成及び得られたポリマー1の物性を表1に示す。
【0081】
合成例2〜15
合成例1において、アクリルポリオールの合成に用いる単量体等の組成を表1及び表2に示すように変更したことを除いて、合成例1と同様の方法を用いて、アクリルポリオール(ポリマー2〜ポリマー14)及びアクリルポリマー(ポリマー15)を得た。得られたポリマー2〜15の物性を表1及び表2に示す。
【0082】
表1及び表2に示す重合性単量体及びその他の成分を以下に示す。
・メチルメタクリレート(MMA):和光純薬(株)製
・ブチルアクリレート(BA):和光純薬(株)製
・エチルアクリレート(EA):和光純薬(株)製
・グリシジルメタクリレート(GMA):和光純薬(株)製
・アクリロ二トリル(AN):和光純薬(株)製
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA):和光純薬(株)製
・2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA):和光純薬(株)製
・スチレン(St):和光純薬(株)製
・2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):大塚化学(株)製
・n−ドデシルメルカプタン(nDM):日油(株)製
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
<ポリマーのガラス転移温度(Tg)の算出>
ポリマー1〜15のTgは、各ポリマーの原料である“重合性単量体”の単独重合体(ホモポリマー)のガラス転移温度を用いて、上述の式(i)を用いて計算した。
メチルメタクリレート等、各ホモポリマーのTgは、文献値を用いた。
【0086】
<太陽電池バックシート用接着剤の製造>
実施例及び比較例で使用した太陽電池バックシート用接着剤の原料を以下に記載する。
アクリルポリオール
表1及び表2に記載したポリマー1〜ポリマー12に対応する。
アクリルポリオール’
アクリルポリオール’は、表2記載のポリマー13、14に対応する。
アクリルポリマーは、表2記載のポリマー15に対応する。
イソシアネート化合物
住化バイエルウレタン社製のスミジュールN3300(商品名):脂肪族イソシアネート(1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)の3量体)
尚、アクリルポリオールとイソシアネート化合物が反応することでウレタン樹脂が得られる。
【0087】
下記の実施例1〜12及び比較例1〜3の太陽電池バックシート用接着剤を、上記成分を用いて製造し、得られた太陽電池バックシート用接着剤の性能を評価した。以下に製造方法及び評価方法を示す。
【0088】
実施例1
<太陽電池バックシート用接着剤の製造>
表3に示すように、83.1gのポリマー1[208gのポリマー1の酢酸エチル溶液(固形分40.0重量%)]、16.9gの住化バイエルウレタン社製のスミジュールN3300(商品名)、を秤量して混合し、接着剤溶液を調整した。この調製液を太陽電池バックシート用接着剤として、以下の試験を行った。
【0089】
<接着剤塗布PETシート1、フィルム積層物2の製造>
先ず、実施例1の太陽電池バックシート用接着剤を透明ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(三菱化学ポリエステルフィルム社製のO300EW36(商品名))に固形分重量が10g/mとなるように塗布し、80℃で10分間乾燥させ、接着剤塗布PETシート1を得た。
【0090】
その後、接着剤塗布PETシート1の接着剤塗布面に、表面処理透明ポリオレフィンフィルム(フタムラ化学社製のリニアローデンシティポリエチレンフィルム LL−XUMN #30(商品名))の表面処理された面を被せ、平面プレス機(神藤金属工業社製のASF−5(商品名))を用いて、圧締圧1.0MPa 50℃で30分間、両フィルムをプレスした。プレスしたまま、両フィルムを40℃で1日養生し、その後、さらに60℃で3日間養生して、フィルム積層物2を得た。
【0091】
<評価>
太陽電池バックシート用接着剤の評価を以下の方法で行った。評価結果を、表3に示した。
1.フィルムへの初期密着性の評価
室温環境下、接着剤塗布シート1を15mm幅に切りだし、接着剤塗布シート1の接着剤塗布面に、表面処理透明ポリオレフィンフィルム(フタムラ化学社製のリニアローデンシティポリエチレンフィルム LL−XUMN #30(商品名))の表面処理された面を被せ2kgローラーで1往復し貼りあわせた。その後、引っ張り強度試験機(オリエンテック社製のテンシロンRTM-250(商品名))を用いて、室温環境下、引っ張り速度100mm/min、180°の剥離試験を行った。評価基準は以下のとおりである。
◎:剥離強度が1N/15mm以上
○:剥離強度が0.5N/15mm以上1N/15mm未満
△:剥離強度が0.1N/15mm以上0.5N/15mm未満
×:剥離強度が0.1N/15mm未満
【0092】
2.養生後のフィルムへの初期接着性の測定
フィルム積層物2を15mm幅に切り出し、引っ張り強度試験機(オリエンテック社製のテンシロンRTM-250(商品名))を用いて、室温環境下、引っ張り速度100mm/min、180°の剥離試験を行った。評価基準は以下のとおりである。
◎:剥離強度が10N/15mm以上
○:剥離強度が6N/15mm以上10N/15mm未満
△:剥離強度が1N/15mm以上6N/15mm未満
【0093】
3.高温接着性の評価
フィルム積層物2を15mm幅に切り出し、50℃環境下で10時間放置した後、50℃環境下、手剥離試験を行った。評価基準は以下のとおりである。
◎:ポリオレフィンフィルム材破
○:ポリオレフィンフィルムの伸びを伴う剥離
×:ポリオレフィンフィルムの材破や伸びがない状態での剥離
【0094】
4.耐加水分解性の評価
加圧蒸気を用いた促進評価法により評価を行った。フィルム積層物2を15mm幅に切り出し、ハイプレッシャークッカー(ヤマト科学社製 オートクレーブSP300(商品名))を用いて121℃、0.1MPa加圧環境下で100時間および150時間放置した後とりだし、室温環境下にて一日養生した。サンプルのポリオレフィンフィルム及びPETフィルムの浮き、剥がれを目視にて観察した。評価基準は以下のとおりである。
◎:150時間放置後にフィルムの浮き、剥がれなし
○:100〜150時間でフィルムの浮き、剥がれが発生
×:100時間経過するまでにフィルムの浮き、剥がれが発生
【0095】
5.溶液粘度の評価
実施例1〜12および比較例1〜3の溶液粘度は、回転粘度計(TOKIMEC社製 BM型)を用い、20℃下、スピンドルNo.3、回転数30回転/分で測定した。
◎:500mPa・s未満
○:500mPa・s以上、3000mPa・s未満
△:3000mPa・s以上
【0096】
実施例2〜12および比較例1〜3
太陽電池バックシート用接着剤を表3及び表4に示される組成で、実施例1と同様の方法で製造し、評価した。評価結果を、表3及び表4に示した。
【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
表1〜4に示すように、実施例1〜12の太陽電池バックシート用接着剤は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応で得られるウレタン樹脂を含み、アクリルポリオールを合成する重合性単量体として、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとアクリロ二トリルおよび(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体が重合することで得られているため、塗工時におけるフィルムへの初期密着性、養生後の初期接着性、高温での接着性に優れ、かつ、耐加水分解性にも優れており、総合的にバランスの良い接着剤となっている。従って、実施例の接着剤は、太陽電池バックシート用接着剤として好適である。
特に、実施例3、7及び9の太陽電池バックシート用接着剤は、塗工に好適な粘度を有し、塗工時におけるフィルムへの初期密着性、養生後のフィルムへの初期接着性、高温下での接着性、耐加水分解性の全てに優れ、太陽電池のバックシート用接着剤として最も適したものとなる。
【0100】
これに対し、比較例1の接着剤は、重合性単量体がアクリロニトリルを含まなかったので、養生後のフィルムへ初期接着性が十分ではなく、高温下での接着性が劣る。
比較例2の接着剤は、重合性単量体が(メタ)アクリル酸エステルを含まなかったので、フィルムへの初期密着性および耐加水分解性に劣る。
比較例3の接着剤は、重合性単量体が水酸基を有する単量体を含まなかったので、高温下での接着性、耐加水分解性に劣る。
これらの結果から、アクリルポリオールの原料である重合性単量体がヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アクリロニトリルおよび(メタ)アクリル酸エステルを含むと、太陽電池バックシート用途に適したウレタン接着剤が得られることが立証された。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、太陽電池バックシート用接着剤を提供する。本発明に係る太陽電池バックシート用接着剤は、生産性に優れ、バックシートフィルムへの高い接着性および長期的な耐久性を有し、太陽電池バックシートおよび太陽電池モジュールに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 太陽電池モジュール
10 バックシート
11 フィルム
11a 蒸着薄膜
12 フィルム
13 接着剤層
20 封止材(EVA)
30 太陽電池セル
40 ガラス板
50 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応で得られるウレタン樹脂を含み、
アクリルポリオールは、重合性単量体が重合することで得られ、
重合性単量体は、水酸基を有する単量体およびその他の単量体を有し、
水酸基を有する単量体はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含み、
その他の単量体はアクリロニトリル及び(メタ)アクリル酸エステルを含む、太陽電池バックシート用接着剤。
【請求項2】
アクリロニトリルは、重合性単量体100重量部当たり、1〜40重量部である請求項1に記載の太陽電池バックシート用接着剤。
【請求項3】
アクリルポリオールは、ガラス転移温度が20℃以下である請求項1又は2に記載の太陽電池バックシート用接着剤。
【請求項4】
アクリルポリオールは、水酸基価が0.5〜45mgKOH/gである請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池バックシート用接着剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池バックシート用接着剤を用いて得られる太陽電池バックシート。
【請求項6】
請求項5に記載の太陽電池バックシートを用いて得られる太陽電池モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−115085(P2013−115085A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257268(P2011−257268)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(391047558)ヘンケルジャパン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】