説明

太陽電池パネル吸放熱システム

【課題】ヒートポンプやボイラー等の電力を大量に消費する熱源を使用することなく、かつ簡単な施工で日射量が多く気温の高い季節には太陽電池パネルを冷却することでセル温度上昇による発電効率低下を防止し、また気温の低い季節や降雪の季節には太陽電池パネルを加温し積雪した雪を融雪し太陽電池パネルへの太陽光の入射を常に得ることが可能で、また太陽電池パネル全体の温度分布に斑の無い状態で、経時的に温度を一定に保つことができ、太陽光発電の発電効率と電力の安定性を著しく向上することのできる太陽電池パネル吸放熱システムを提供すること。
【解決手段】熱源管と、熱源管が添設若しくは貫設されたヘッダー管と、ヘッダー管から分岐した複数のヒートパイプ枝管と、を有し、ヒートパイプの上面に伝熱板が配設され、伝熱板の上面に太陽電池パネルが配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置において太陽電池パネルの温度上昇による発電効率低下を防止し、また太陽電池パネルに積雪した雪を融雪して雪による太陽電池パネルへの太陽光の入射阻害を防止し発電効率を著しく向上させた太陽電池パネル吸放熱システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の温室効果ガスやエネルギー問題から、発電時に温室効果ガスの発生が無く、また構成材料のほとんどが再生可能な太陽光発電が注目されている。太陽光はそれ自体半永久的なエネルギー資源であり、これを利用する太陽光発電は社会的な役割が大きく、また需要も拡大している。
従来太陽光発電装置において、単結晶又は多結晶のシリコンを主体としたものやアモルファスシリコンを主体とした太陽電池セル(以下セルと略す)が使用されてきた。しかし、これらのセルの起電力は、セルの基材によって違いはあるが、一般にセル温度が高くなると発電効率が低下(熱暴走)するという欠点がある。この欠点により太陽電池パネルへの日射量が多い場合にはセル温度が上昇して発電の効率が低下し、常に発電効率を最大に保つことが困難となっている。
また、セルの温度上昇による発電効率低下の問題とは別に、特に寒冷地において太陽電池パネルに雪が積もったり、太陽電池パネル表面が凍ったりして太陽光が遮断或いは太陽光の入射量が減少して、発電量に乏しくなるという問題があった。そして、太陽電池パネルに積雪した雪や凍結を除去する作業は、太陽電池パネルを傷つける恐れもあり、実際には作業が困難で、また高所に接地された太陽光発電システムでは作業そのものが危険性の高いものであった。
これらの課題解決のために、(特許文献1)には、太陽電池パネルを海上、湖、沼等の水面に設置する水冷太陽電池パネルが開示されている。
(特許文献2)には、太陽電池アレイに接合された熱交換器と前記熱交換器に熱交換用媒体を循環させるポンプと前記熱交換媒体を冷却するクーラーとよりなる太陽光発電装置が開示されている。
(特許文献3)には、太陽電池モジュールと、集熱管と、該集熱管の熱媒体を集配する上、下ヘッダー管と、該上、下ヘッダー管に接続された低温蓄熱槽と、該低温蓄熱槽に接続された補助ボイラーとから構成された屋根融雪兼用太陽エネルギー収集装置が開示されている。
(特許文献4)には、太陽電池パネルと、空気を前記太陽電池パネルに通風させるための送風手段と、能力可変圧縮機を有したヒートポンプ回路と、前記太陽電池パネルを通過した空気と熱交換する前記ヒートポンプ回路の蒸発器と、圧縮機能力可変制御手段を備えた太陽光熱利用装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−109161号
【特許文献2】特開平4−127582号
【特許文献3】特開平8−94189号
【特許文献4】特開2003−50056号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、次の様な課題を有していた。
(1)(特許文献1)では、温度斑が生じやすいことに加え、冷却能力が弱く、また融雪が困難であるという課題があった。
(2)(特許文献2)では、クーラーで温度調節された熱媒体によって太陽電池アレイを冷却するのみで太陽電池パネルに積雪した雪を融雪することができず、またクーラーの運転に大量の電力を消費してしまい、その電力消費分だけ太陽光発電効率を低下させるという課題があった。
(3)(特許文献3)では、ヒートポンプを使用したり、ボイラーを補助熱源として使用するので大量の電力を消費し、その電力消費分だけ太陽光発電効率を低下させるという課題があった。また、融雪の際には太陽電池パネルの過度な温度上昇を抑えつつ太陽電池パネルを加温しなければならず、その際には日中以外にもヒートポンプを稼働させる必要があり、電力代がかさみ、日中の発電時にのみ融雪しようとすればかなりの高温に設定する必要があるので発電効率が低下し、結局は融雪には不向きであるという課題があった。
(4)(特許文献4)では、(特許文献3)と同様ヒートポンプを使用するので電力を消費し、その電力消費分だけ太陽光発電効率を低下させるという課題があった。また、太陽電池パネルの冷却しか行えない為、融雪したり凍結による太陽光の入射量の減少には対応できないという課題があった。
【0005】
尚これらの先行技術では、太陽電池パネル全体の温度分布を均一にすることが難しく、発生した温度分布の斑によって各々のセルで発電効率が異なり、ヒートポンプの能力制御による温度調節機構を備えていても、最適温度を設定し難いという課題があった。また、太陽電池パネル全体の温度分布の斑や、経時的な温度変化によって発電効率自体にも斑が発生して、発電力の安定性に欠けるという課題もあった。
太陽光発電装置の太陽電池パネルの温度を一定にするためのシステムとしては、(a)発電した電力をヒートポンプやボイラー等の使用により大量に消費し、発電効率を下げず、(b)太陽電池パネルが太陽光により過度に熱をもった場合は冷却し、積雪時には融雪できて、熱による発電効率の低下と、太陽光の遮断を防ぐことができ、(c)太陽電池パネル全体の温度分布に斑が無く、(d)太陽電池パネルの温度変化が経時的に安定していて、発電時の電力の経時的な安定性に優れ、(e)かつ施工が容易であるものが最も理想的である。
しかし、先行技術にこの様な理想的なものは無く、どの様なシステムも結局は十分に満足できるものではなく、これらの改善が強く要望されていた。
【0006】
本発明は上記要望を満たし、更に上記課題を解決するためのもので、ヒートポンプやボイラー等の電力を大量に消費する熱源を使用することなく、かつ簡単な施工で日射量が多く気温の高い季節には太陽電池パネルを冷却することでセル温度上昇による発電効率低下を防止するとともに太陽熱をヒートパイプで地中等に貯蔵し、気温の低い季節や降雪の季節には太陽電池パネルを加温し積雪した雪を融雪し太陽電池パネルへの太陽光の入射を常に得るとともに積雪による被害を防ぎ雪下ろし作業を大幅に削減し、また太陽電池パネル全体の温度分布に斑の無い状態で、経時的に温度を一定に保つことができ、太陽光発電の発電効率と発電時の電力の安定性を著しく向上することのできる太陽電池パネル吸放熱システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の太陽電池パネル吸放熱システムは以下の様な構成を有している。
請求項1に記載の太陽電池パネル吸放熱システムは、太陽電池パネルのバックカバーの下部又は上部にヒートパイプが配設されている太陽電池パネル吸放熱システムであって、前記ヒートパイプが(a)熱源管と、(b)前記熱源管が配設若しくは貫設されたヘッダー管と、(c)前記ヘッダー管から分岐した複数のヒートパイプ枝管と、を備えた構成を有している。
【0008】
この構成により以下の様な作用が得られる。
(1)熱源管に熱媒体を流してヘッダー管に熱を伝えると、ヘッダー管内の作動流体が蒸発し多量の蒸発の潜熱を熱源管から吸収し、蒸発した蒸気はヒートパイプ枝管の各々で凝縮して凝縮熱を放出し、ヘッダー管とヒートパイプ枝管の各々との間に生じた蒸気の圧力勾配によって、ヘッダー管からヒートパイプ枝管に短時間で熱が運ばれるので、ヘッダー管とヒートパイプ枝管との温度差をほとんどなくすことができる。
(2)複数のヒートパイプ枝管を、太陽電池パネル面を広くカバーするようにヘッダー管から分岐させているので、ヘッダー管の長さが短くても太陽電池パネルの広い面積をヒートパイプ枝管で吸放熱できるため、ヘッダー管を短くすることができる。このため、ヘッダー管に貫設又は添設された熱源管の長さも短くすることができ、太陽電池パネルに配設される熱源管の経路が短くなり管摩擦抵抗が小さくなるので、熱媒体を送るポンプは出力の小さなもので済み、ポンプの駆動はわずかなエネルギーで済むのでランニングコストを低下させることができるうえに、ポンプの消費電力が極めて少ないので、ポンプの消費電力分の発電効率の低下が極めて少ない。
(3)太陽電池パネルが長時間強い太陽光の照射を受けても、発生した熱が太陽電池パネルの下部に配設されたヒートパイプへ伝わり、次にヒートパイプ枝管からヘッダー管へ、ヒートパイプ枝管とヘッダー管との温度差が無い程急速に熱が伝わり、さらに熱源管内の熱媒体に熱が伝わるので太陽電池パネル全体の温度が低温で均一化され、熱暴走による発電効率の低下を防ぐことができる。
(4)太陽電池パネルに雪が積もっても、熱源管内の熱媒体の熱がヘッダー管に伝わり、ヘッダー管の熱が、ヒートパイプ枝管とヘッダー管との温度差が無い程急速にヒートパイプ枝管に伝わり、更にヒートパイプから太陽電池パネル全体を加温するので太陽電池パネルに積もった雪を融雪することができ、太陽光の入射を雪に遮られることが無い。
(5)太陽電池パネル全体の温度斑を無くすことができるので、太陽電池パネルの温度状態を正しく把握でき、温度調節時の最適温度を設定し易く電力の安定性に優れる。
(6)熱源として地中熱を利用した場合、夏期の太陽電池パネルの熱を熱源管内の熱媒体に移動させて地中に地熱として蓄え、冬期にはその地熱を太陽電池パネルの融雪に再利用することができ、年間を通して熱媒体を循環させるポンプを駆動するだけの最小限のエネルギーしか消費しないので、発電効率を最大限に引き出すことができる。
(7)ヒートパイプを直接太陽電池パネル内部のバックカバーの上部(セルの下部)に配設することができるのでセルと直接熱交換可能で、吸放熱の際の熱損失や温度斑を著しく抑制し、太陽電池パネル全体での発電効率が安定化し、更に経時的な発電効率も安定化させることができる。
(8)ヒートパイプをバックカバーの上部に配設した場合には冷却エネルギーがセルの温度を調節する必要最小限のものですむので、太陽電池パネル吸放熱システムの駆動による消費エネルギーが著しく低く、発電効率を最大限引き出すことができる。
(9)太陽電池パネル内部にヒートパイプを配設した場合、充てん剤の熱劣化を著しく抑制することができ、太陽電池パネルの耐久性を向上させることができる。
【0009】
ここで、ヒートパイプとしては、略平行に配設した複数のヒートパイプ枝管の片側にヘッダー管を配設したもの、ヘッダー管部を中心に左右にヒートパイプ枝管を配設したもの、ヒートパイプ枝管の両側にヘッダー管を配設したもの等を用いることができる。
【0010】
ヘッダー管やヒートパイプ枝管の材質としては、銅製,ステンレス製,アルミニウム製,マグネシウム製,チタン製,真鍮製,銀製,金製等の金属製等や、ポリカーボネート,ABS,ポリサルフォン,ポリエーテルエーテルケトン,高強度ポリエチレン等の強度の高い合成樹脂若しくはこれら合成樹脂を、ガラス繊維やカーボンブラック,炭素繊維,カーボンナノチューブ等のカーボン等をフィラーとして充填して強化したもの等が用いられるが、概ね1/1000〜1/1000000程度の真空度が得られるものであれば特に制限はない。
【0011】
また、表面にシリコン鉱石を粉末,微粉末にして塗布すると、熱交換効率の著しい向上とヒートパイプの全体の温度斑を著しく改善することができる。
使用するシリコン鉱石はシリコンの含有量が80%以上の高純度のものでも良いし、従来粉末,微粉末にして埋め立てるなどして処分されてきた低純度のものでも良い。低純度のものでも、高純度のものと遜色の無い性能を発揮できるので、低純度のものを使用すれば低コストでかつ廃材を再利用可能な熱力学特性に優れたヒートパイプとすることができる。シリコン鉱石の粉末,微粉末の塗布量はヒートパイプの全質量に対して0.01重量%以上、30重量%以下が好ましい。
【0012】
ヒートパイプ枝管やヘッダー管内部に封入される作動流体としては、純粋,アンモニア,炭酸,液体窒素,水銀,アルコール,アセトン,過酸化水素等を使用することができるが、HCFC−141bや142bのHCFC系溶剤,HFC134a等の−30℃前後まで凍結しない不凍性のものを用いることができる。
【0013】
通常ヒートパイプは高熱源よりも放熱先が低い位置にある場合、高熱源の熱を放熱先へ移動できない。よって太陽電池パネルの温度を下げる場合と、太陽電池パネルを加温する場合とで吸放熱システムのヒートパイプの位置関係が全く異なるものとなる。しかし、ヘッダー管やヒートパイプ枝管の内壁の全部又は一部に所定の厚さを有するウィックを設けることで、高熱源よりも放熱先が低い場合でも熱交換を行うことができるようになる。ウィックとしては、焼結金属,金網,金属繊維,ガラス繊維,多数の細い溝等が用いられる。ウィックを設けることで、高熱源が放熱先よりも高い位置にある場合、例えば太陽電池パネルを加温する際に、ヘッダー管がヒートパイプ枝管よりも高い位置にある場合でも、ヒートパイプ枝管で凝縮した作動流体を、毛細管現象を利用してヘッダー管まで戻して再度蒸発させてヒ再びートパイプ枝管まで送ることができドライアウトが発生するのを防止できる。
【0014】
しかし、ウィックを用いた場合は熱移動の指向性がなくなり動作が安定するが、ウィックを用いない場合に比べてヒートパイプとしての出力が弱くなる場合がある。
一方、ヒートパイプの材質自体が熱を伝達する能力を持っているので、高熱源が放熱先より高い位置にある場合でも幾分か熱の交換が行われるが、ヒートパイプの材質に金属等を用いることで高い位置にある高熱源から低い位置にある放熱先への熱伝達効率を向上させることができる。その他、ヒートパイプの表面にシリコン鉱石を粉末,微粉末にしたものを塗布すると熱伝達効率が著しく向上し、高い位置の高熱源から熱を奪い、低い位置の放熱先に熱を放出することができる。
【0015】
よって、ウィックを用いない場合でもヒートパイプの材質に金属を使用し、或いはヒートパイプの表面にシリコン鉱石の粉末,微粉末を塗布することで太陽電池パネルの加温に加えて吸熱も可能となる。
【0016】
また、ヒートパイプ枝管は各々平行に配置したり、非平行に配置することができる。
【0017】
ヘッダー管やヒートパイプ枝管は、太陽電池パネルへの伝熱面積を広げるため、上面が平らになるように、ヘッダー管やヒートパイプ枝管の長手方向に直交する断面を略方形状、略矩形状、略三角状、略長円状、略半円状に形成するのが好ましい。なお、断面が略円形状のヘッダー管やヒートパイプ枝管を用いる場合は、上面に平板を溶接等で固着すれば、上面が平らなヘッダー管やヒートパイプ枝管を用いる場合と同様に、太陽電池パネルへの伝熱面積を広げることができる。
【0018】
ヘッダー管やヒートパイプ枝管は直接太陽電池パネルのバックカバーの下部へ直接配設しても良いし、間隔を空けて配設しても良い。間隔を空けて配設した場合には、ヘッダー管やヒートパイプ枝管とバックカバーとの間に空気の層が形成され、この空気の層によってヒートパイプの熱が均一に太陽電池パネル全体へと伝わり易くなる。しかし、空気の層を形成した場合、太陽電池パネルの冷却時に空気の層の低伝熱性によりヒートパイプとの熱交換が阻害されるが、ヒートパイプと太陽電池パネルとの間に伝熱性部材を配設すれば太陽電池パネルの熱を吸収できる。伝熱部材としては、伝熱板や後述する熱分散部材等と同様の材質で熱伝達率が大きく、断面が略矩形状等の支柱状或いは角棒状等のものである。
【0019】
この他、ヒートパイプに塗布したシリコン鉱石の粉末,微粉末を太陽電池パネルの裏面にも塗布することで、太陽電池パネルが発する遠赤外線の波長と、ヒートパイプが吸収する遠赤外線の波長とが一致して、空気の層を形成していても吸熱作用を得ることができる。太陽電池パネルが発する遠赤外線の波長とヒートパイプが吸収する遠赤外線の波長が一致あるいは近似すればシリコン鉱石以外の物質を塗布することもできる。例えば公知の遠赤外線放射塗料をもちいることができる。
【0020】
また、ヒートパイプをバックカバーの上部に配設することによって太陽電池パネル内部に配設することができ、この場合セルの下部にヒートパイプがあるのでセルとの熱伝達が著しく向上する。
【0021】
熱源管の材質としては、銅製,ステンレス製,アルミニウム製,マグネシウム製,チタン製等の金属製等や、ポリエチレン,ポリプロピレン,ABS,ポリカーボネート,ポリサルフォン,ポリエーテルエーテルケトン等の合成樹脂等が用いられる。
【0022】
熱源管に導入してヘッダー管を加熱する熱媒体としては、地中熱で加温されて年間を通してほぼ一定の水温に保たれた井戸水,温泉水,地下水等を用いることができる。また、河川水、工場や家庭からの排水、水道水も用いることができる。また、地中熱や排水等で加温された不凍液等も用いることができる。
【0023】
これらの地中熱や排水等の排熱を利用した熱媒体を熱源管に導入することで、熱媒体を加温するボイラやヒートポンプ等の熱源が不要になり、ランニングコスト及び電力消費を低減させることができて、太陽光発電の効率を向上させることができる。
熱源管はヘッダー管に貫設又は配設させるが、貫設させるのが好ましい。ヘッダー管に熱源管を貫設させた場合、熱媒体の熱は、熱源管の壁面を通してヒートパイプの作動流体に伝えられるが、ヘッダー管に熱源管を配設させた場合は、熱源管の壁面とヘッダー管の壁面とを通してヒートパイプの作動流体に伝熱されるので、若干の熱損失が生じるからである。
【0024】
本発明の太陽電池パネル吸放熱システムは、一般の家屋の屋根に備えられた太陽光発電システムに導入することができる。この他、太陽光発電施設の様な巨大な太陽光発電システムにも導入することが可能で、しかもヒートポンプやボイラー等の熱源を必要としないので電力等のエネルギーを消費して発電効率を下げる恐れが無い。また、太陽光追尾型の太陽光発電システムにも可動部の熱源管にゴム等の弾性素材等の変形することができる配管やフレキシブル管を用いることで対応可能である。
また、一年を通して日射量が多く気温が高い地域や、一年を通して氷と雪に閉ざされる地域等、地中熱だけでは温度調節に限界がみられる場合、ヒートポンプやボイラー等を補助熱源として利用する方法がある。この場合においても、地中熱を利用するのでヒートポンプ若しくはボイラーだけで太陽電池パネルの温度を調整する場合よりも大幅に燃料等のエネルギーの消費が少なくて済む。
【0025】
太陽電池パネルはJIS C 8918において、その構造が(α)充てん型(β)スーパーストレート型(γ)サブストレート型の3つに分類され、各々の構造にはバックカバー,充てん剤,セル,インターコネクター,フロントカバーを有し、更にモジュール基板によって機械的強度を得ている。しかし、充てん型はフロントカバー(ガラス板)とバックカバーがモジュール基板を兼ね、スーパーストレート型はフロントカバーがモジュール基板を兼ね、サブストレート型はバックカバーがモジュール基板を兼ねて太陽電池パネルとしての機械的強度を得ている。
【0026】
バックカバーにはポリフッ化ビニル等の優れた耐蝕性、対候性、力学的特性を有する合成樹脂や、ガラスエポキシ樹脂やアルミニウム板等の熱伝導性が高く、優れた機械的強度が得られる合成樹脂や金属板等が用いられる。充てん剤にはエチレンビニールアセテート等の透明の樹脂が用いられ、フロントカバーには白板強化ガラス等の機械的強度に優れ、更に割れた際に飛散しないガラス板や、ポリフッ化ビニール等の光透過性に優れ、かつ対候性に優れた樹脂が用いられる。
【0027】
本発明の太陽電池パネル吸放熱システムは、これら太陽電池パネルの構造全てに共通するバックカバーの下部(背面)に直接或いは伝熱板や伝熱性部材等を介して間接的に配接することができる。
太陽電池パネルが日光にさらされると、フロントカバー,充てん剤,バックカバーが熱をおびてセルが高温になり、セルが熱暴走して発電効率が低下する。本発明の太陽電池パネル吸放熱システムはこのセルやフロントカバー,充てん剤,バックカバーの熱を、バックカバーを介してヒートパイプと授受し、太陽電池パネルの温度を下げて熱暴走を抑制して発電効率を向上させる。積雪の際にはバックカバーを介してフロントカバーまでヒートパイプの熱が伝わり、フロントカバーの上部に積もった雪が融雪される。
【0028】
上記太陽電池パネルはゴムや金属等からなるフレームで枠組みされているが、太陽電池パネルの底部や外周(少なくとも底部と側面)に伝熱効率の優れた金属板等を配設したり、太陽電池パネルのフレーム自体に金属等の伝熱効率の良い材質を使用して太陽電池パネルとヒートパイプとの熱交換効率を上げることもできる。
【0029】
請求項2に記載の太陽電池パネル吸放熱システムは、太陽電池パネルのバックカバーの下部又は上部にヒートパイプ板が配設されている太陽電池パネル吸放熱システムであって、前記ヒートパイプ板が、(a)溝を形成した平板と、(b)前記溝を閉塞して空洞を形成する閉塞板と、(c)前記空洞に封入される作動流体と、を有し、(d)前記ヒートパイプ板に熱源管が配設若しくは貫設されている構成を有している。
この構成により、以下の様な作用が得られる。
(1)ヒートパイプを板状に形成してヒートパイプ板を使用することにより、ヒートパイプ板の一部を加温・冷却すれば、ヒートパイプ板全体が急速に加温・冷却されて太陽電池パネル全体を瞬時に加温・冷却することができ、太陽電池パネルに積もった雪を融雪して太陽光の入射の阻害を防止して日中十分な発電が可能で、またセルを冷却することによってセルの熱暴走を防いで発電効率の低下を抑制することができる。
(2)ヒートパイプ板をバックカバーの上部に配設した場合には冷却エネルギーがセルの温度を調節する必要最小限のものですむので、太陽電池パネル吸放熱システムの駆動による消費エネルギーが著しく低く、発電効率を最大限引き出すことができる。
(3)太陽電池パネル内部にヒートパイプ板を配設した場合、充てん剤の熱劣化を著しく抑制することができ、太陽電池パネルの耐久性を向上させることができる。
【0030】
ヒートパイプ板はヒートパイプを板状に形成したもので、ヒートパイプ板の下部等のヒートパイプ板の一部に熱源管を配設すれば、ヒートパイプ板全体が瞬時に温まる。ここで、平板,閉塞板,作動流体,熱源管には請求項1のヒートパイプで使用するものと同一のものが用いられるので説明を省略する。また、ヒートパイプ板には前述したシリコン鉱石の粉末,微粉末を塗布して熱力学的特性を向上させることができる。この他、ヒートパイプと同様にヒートパイプ板内部の空洞にウィックを設けることで熱伝達の指向性をなくして動作を安定化させることもできる。
【0031】
平板の溝は各々略平行となるように一本ずつ設けたり、一本の溝を蛇行させて形成することができる。
【0032】
請求項3に記載の太陽電池パネル吸放熱システムは、請求項1及び2に記載の太陽電池パネルであって、前記ヒートパイプ又は前記ヒートパイプ板にシリコン鉱石の粉末,微粉末が塗布された構成を有している。
この構成により、請求項1及び2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)シリコン鉱石の粉末,微粉末をヒートパイプ及びヒートパイプ板に塗布することにより、ヒートパイプの熱伝導の指向性がなくなり、太陽電池パネルとの優れた熱交換能力を発揮することができる。
【0033】
請求項4に記載の太陽電池パネル吸放熱システムは、請求項1乃至3に記載の太陽電池パネル吸放熱システムであって、前記ヒートパイプ又は前記ヒートパイプ板の上部に伝熱板が配設されている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3で得られる作用に加え、以下の様な作用が得られる。
(1)太陽電池パネル全体の温度分布を斑無く均一にして太陽電池パネル内部の各々のセルの発電力のばらつきを著しく抑制することが可能で、太陽電池パネルの温度状態を正しく把握でき、最適温度を設定し易く発電時の電力の安定性に著しく優れる。
(2)太陽電池パネルが長時間強い太陽光の照射を受けても、発生した熱がバックカバーの下部に配設された伝熱板へパネル全体の温度分布の斑が無い状態で伝わり、次に伝熱板からヒートパイプへ素早く熱が伝わり、次にヒートパイプ枝管からヘッダー管へ、ヒートパイプ枝管とヘッダー管との温度差が無い程急速に熱が伝わり、さらに熱源管内の熱媒体に熱が伝わるので太陽電池パネル全体の温度が低温で均一化され、熱暴走による発電効率の低下を防ぐことができる。
(3)太陽電池パネルに雪が積もっても、熱源管内の熱媒体の熱がヘッダー管に伝わり、ヘッダー管の熱が、ヒートパイプ枝管とヘッダー管との温度差が無い程急速にヒートパイプ枝管に伝わり、更にヒートパイプから伝熱板へ素早く伝わり、次に伝熱板がバックカバーを介して太陽電池パネル全体を温度分布に斑の無い状態で加温するので太陽電池パネルに積もった雪を融雪することができ、太陽光の入射を雪に遮られることが無い。
(4)バックカバーの上部にヒートパイプが配設され、このヒートパイプの上部に伝熱板が配設されている場合、太陽電池パネル内部を均一に加温・冷却することができ、セルの熱暴走を防ぐとともに充てん剤の熱劣化を抑制し、更に融雪することができる。
(5)伝熱板は一部に与えられた熱が速やかに全体に分散する性質を有しているので、バックカバーの上部に配設されたヒートパイプの上部に伝熱板が配設されている場合、ヒートパイプの構造が簡略化しても太陽電池パネルを均一に加温・冷却することができる。
【0034】
伝熱板としては伝熱率の高い銅等の金属板や、遠赤外線放射板を用いることができる。
遠赤外線放射板としては石油コークス等を原料とした人造黒鉛材料等の炭素材料、炭素繊維、麦飯石や天照石等の天然鉱物、炭素材料や天然鉱物、炭素繊維等と合成樹脂材料とを複合した複合材料等で板状に形成したものや、これらの板材の表面あるいは金属製等の板材の表面に、アルミナ,シリカ,ジルコニア,チタニア,マグネシアやこれらの複合酸化物、窒化ケイ素,炭化珪素等のセラミックス、ケイ素、炭化物、シリコン鉱石の粉末,微粉末を含有した塗膜、溶射膜等が形成されたものを用いることができる。また、アルミナ,シリカ,ジルコニア,チタニア,マグネシアやこれらの複合酸化物、窒化ケイ素,炭化珪素等のセラミックス、ケイ素、炭化物で板状に形成されたものを用いることもできる。
【0035】
遠赤外線放射板は、熱伝導性に優れ、遠赤外線放射板の一部が暖められると直ちに全体に熱が分散されて遠赤外線を放射し得るもので、この特性を活かして太陽電池パネル全体を温度分布に斑の無い状態で吸放熱可能となる。
遠赤外線放射板は、赤外線吸収波長2.5〜7μm領域の遠赤外線放射率50%以上、熱伝導率0.2W/m・K以上、比熱2100J/kg・K以下という特性を満足するものが好適に用いられる。良好な融雪性を発現させるためである。なお、遠赤外線放射率は、分光放射率を測定することによって求められる。また、比熱は、レーザフラッシュ法によって求められる。熱伝導率は、レーザフラッシュ法によって求められた熱拡散率、比熱及び遠赤外線放射板の密度から求められる。
遠赤外線放射率は、水の吸収波長、特に2.66μm、2.73μm、6.27μmにおいて50%以上好ましくは80%以上であるものが特に好ましい。水分子の振動が遠赤外線によって励起され融雪性が増大するからである。
熱伝導率は、0.2W/m・K以上好ましくは0.5W/m・K以上であるものが好適であるが、その理由は、0.2W/m・Kより低くなると、ヒートパイプや熱源管から供給される熱エネルギーの損失が大きくなり、遠赤外線放射板による融雪効果が低下するからである。
比熱が2100J/kg・Kを超えると、遠赤外線放射板の蓄熱量が多く熱移動に時間を要し融雪効果が低下するため好ましくない。
【0036】
伝熱板をバックカバーの下部へ配設する方法としては、バックカバーの下部全体に伝熱板を直接配設しても良いし、伝熱板とバックカバーとの間に空気の層が形成される様に間隔をあけてバックカバーの下部の全体に伝熱板を配設しても良い。また、伝熱板と太陽電池パネルとの間に空気の層を形成する様に間隔をあけてバックカバーの下部の一部分に伝熱板を配設しても良い。
伝熱板を直接バックカバーの下部に直接配設した場合は伝熱板が太陽電池パネルへ直接放熱するが、空気の層を伝熱板とバックカバーとの間に形成した場合は、伝熱板と太陽電池パネルとの熱交換はいったん空気の層を介して行われる。伝熱板は空気への放熱性に優れ、空気は熱を全体へ均一に拡散する特性があるので、伝熱板と空気とを組み合わせることで、伝熱板がバックカバーの下部の一部分のみに配設されていたとしても、太陽電池パネル全体を十分に暖めることができる。
【0037】
しかし、太陽電池パネルを吸熱する際は、空気の低伝熱性により、太陽電池パネルの温度を伝熱板へ効果的に伝えることが難しいため、バックカバーと伝熱板との間に前述の伝熱性部材を配設して太陽電池パネルの熱を吸収する。この他、伝熱板が発する遠赤外線の波長と同一あるいは近似する波長の遠赤外線を発する物質を塗布すれば、太陽電池パネルの熱が原因で発生する遠赤外線を効率よく吸収して太陽電池パネルの熱を下げることができる。例えば、伝熱板と太陽電池パネル下部にシリコン鉱石の粉末,微粉末を塗布すればたとえ空気の層が断熱性を有していたとしても太陽電池パネルが発する遠赤外線を効率よく吸収することにより、太陽電池パネル全体の熱を伝熱板が吸熱することができる。この他公知の遠赤外線放射塗料を用いることもできる。
【0038】
バックカバーの上部に配設されたヒートパイプの上部に伝熱板を配設すると、セルの熱は一端伝熱板を介してヒートパイプに伝わる。伝熱板は一部に与えられた熱を速やかに全体に分散するので、ヒートパイプとの伝熱効率を向上することができ、このためヒートパイプの構造を簡略化することができる。
【0039】
請求項5に記載の太陽電池パネル吸放熱システムは、請求項1乃至3に記載の太陽電池パネル吸放熱システムであって、前記バックカバーが伝熱板からなり、前記伝熱板の下部に前記ヒートパイプ又はヒートパイプ板が配接された構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3で得られる作用に加え、以下の様な作用が得られる。
(1)バックカバーとして伝熱板を用いることで太陽電池パネル内部の温度斑がない状態で加温・冷却が可能で、太陽電池パネルの発電効率を向上させ、更に最適温度を設定し易いので発電効率を常に最良の状態で安定化することができる。
(2)バックカバーとして伝熱板を用いることでヒートパイプとの熱交換効率が向上し、セルの熱暴走を著しく抑制し、更に優れた融雪能力を確保することができる。
【0040】
請求項6に記載の太陽電池パネル吸放熱システムは、請求項1乃至5の内いずれか一項に記載の太陽電池パネル吸放熱システムであって、前記ヘッダー管及び前記ヒートパイプ枝管の長手方向に直交する断面が略矩形状、略方形状、略三角状、略長円状、略半円状の内のいずれかに形成され上面が平坦で幅広に形成されている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至5の内いずれか一項で得られる作用に加え、以下の様な作用が得られる。
(1)ヘッダー管及びヒートパイプ枝管の断面が略矩形状、略方形状、略三角状、略長円状、略半円状の内のいずれかに形成され上面(伝熱面)が平坦で幅広に形成されているので、ヘッダー管とヒートパイプ枝管の太陽電池パネル若しくは伝熱板との伝熱面を大きくすることができ、太陽電池パネルとの熱伝達効率を高めることができる。
【0041】
ここで、ヘッダー管及びヒートパイプ枝管の長手方向に直交する断面を略矩形状又は略方形状にすると、ヘッダー管とヒートパイプ枝管の外周の4面を平らにすることができるので、ヒートパイプの熱を伝えるアルミニウム製等で形成された熱分散部材をヒートパイプ枝管の間に嵌め込む場合、熱分散部材の側面とヒートパイプ枝管の側壁とを面接触させて接触面積を広くすることができ、熱分散部材との熱交換効率を高めることができる。また、ヘッダー管及びヒートパイプ枝管の底面も平らに形成されるので、太陽光発電システムに安定に設置することができ施工性に優れ好ましい。
【0042】
また、ヒートパイプ枝管の各々の両端部が、間隔をあけて配設された2本のヘッダー管の各々に連通した構成にすることができる。この場合、ヘッダー管の熱源管に熱媒体を流してヘッダー管に熱を伝えると、ヘッダー管内の作動流体の蒸発とヒートパイプ枝管での凝縮に伴う潜熱の授受により熱を放出するが、この熱の授受が2本のヘッダー管の各々で行われるので、ヒートパイプの温度斑をさらに少なくすることができ、太陽電池パネル全体を均一に温度分布に斑の無い状態で温度一定にすることができる。
【0043】
請求項7に記載の太陽電池パネル吸放熱システムは、請求項1乃至6の内いずれか一項に記載の太陽電池パネル吸放熱システムであって、上面が前記ヒートパイプ枝管及び前記ヘッダー管の上面と面一乃至はわずかに低く形成され、前記ヒートパイプ枝管の間に配設された熱分散部材を備えている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至6の内いずれか一項で得られる作用に加え、以下の様な作用が得られる。
(1)上面がヒートパイプ枝管及びヘッダー管の上面と面一乃至はわずかに低く形成され、ヒートパイプ枝管の間に熱分散部材が配設されているので、ヒートパイプ枝管及びヘッダー管を介して熱分散部材の上面全体で太陽電池パネル又はセル若しくは伝熱板へ確実に熱伝達させることができる。
(2)熱分散部材の側面とヒートパイプ枝管やヘッダー管の側壁とを接触させ、ヒートパイプの熱を熱分散部材に伝えて吸放熱面積を広くすることができ、太陽電池パネル全体や太陽電池パネル内部の各々のセルの温度斑を小さくすることができる。
(3)ヒートパイプ枝管及びヘッダー管の上面と熱分散部材の上面とが略面一に形成されるので、ヒートパイプと熱分散部材とを面状のパネルのように取り扱うことができ、太陽電池パネルをヒートパイプと熱分散部材の全面で支持できるので、雪の重みで太陽電池パネルが変形したり割れたりするのを防止できる。
【0044】
ここで、熱分散部材としては、銅製,ステンレス製,アルミニウム製,マグネシウム製,チタン製等の金属製、モルタル,コンクリート等の無機材料製等で形成されたものが用いられる。特に、銅製,ステンレス製,アルミニウム製,マグネシウム製,チタン製等の金属製で形成されたものや更にシリコン鉱石を粉末,微粉末にして塗布したものが、熱伝導率が大きく好適である。
【0045】
熱分散部材は、上面がヒートパイプ枝管及びヘッダー管の上面と面一乃至はわずかに低く形成されるが、具体的には、熱分散部材の上面の高さとヒートパイプ枝管及びヘッダー管の上面の高さとの差は、0〜1mm好ましくは0〜0.5mmであるのが好適である。高さの差が0.5mmより大きくなるにつれ、ヒートパイプ枝管及びヘッダー管と熱分散部材の段差のために雪の重みで太陽電池パネルがヒートパイプ枝管やヘッダー管のエッジ部分で変形したり穴が開き易くなる傾向がみられる。1mmより大きくなるとこの傾向が著しくなるため、特に好ましくない。
【0046】
請求項8に記載の太陽電池パネル吸放熱システムは、請求項1乃至7の内いずれか一項に記載の太陽電池パネル吸放熱システムであって、前記ヒートパイプと、前記熱源管に接続され地盤中に形成した孔部から集熱した不凍液を循環させるループ配管と、を備えている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至7の内いずれか一項で得られる作用に加え、以下の様な作用が得られる。
(1)地下約10〜50m程度の年間を通じて約15〜17℃前後と安定した温度の地中熱で不凍液の温度を13℃程度に一定化し、この不凍液を熱源管に循環させるので、ヒートパイプや太陽電池パネルの温度を一定化して太陽電池パネルの冷却や積雪した雪の融雪に利用でき、熱媒体の不凍液を加熱又は冷却するための特別なエネルギーを必要とせず安全で省エネルギー性に優れる。
(2)年間を通して地中熱の温度が安定してるので、太陽電池パネルの経時的な温度変化が無く、発電効率が経時的に安定化して発電時の電力が著しく安定する。
(3)降雪時にはヒートポンプの様に大量の電力を消費し続けながら太陽電池パネルを冷却したり加温して融雪する必要がなく、地中熱の安定した熱源を利用することでポンプを駆動するだけの僅かな電力だけで太陽電池パネルの冷却と融雪を簡単に行える。
(4)地中熱が安定した温度を保っているので不凍液を循環させるポンプが停止した場合でも、不凍液が熱源管等の内部で凍結するのを防止することができる。
(5)日射量の多い時期には太陽電池パネルの熱を地中熱として地下に熱貯蔵し、冬期には融雪するための熱源として熱貯蔵した熱を再利用することができ、ヒートポンプ等の大量の電力を消費する熱源が必要ないので、省エネルギー性に優れる。
【0047】
ここで、地盤中に形成した孔部から集熱するには種々の地中採熱素子を用いることができ、例えば、地下10〜50m程度まで打ち込んだケーシング内に熱媒体を満たしたパイプを配設したボアホールや、螺旋状等のパイプ等で形成された地中熱交換器を用いることができる。ボアホールは二重管タイプ、U字管タイプ等の従来地中熱を採集するために使用されてきたいずれも用いることができる。
【0048】
地中熱は年間を通して温度が安定しており、更に地中では熱が年間50cm程度しか分散しないために蓄熱性が高く、夏場の熱を地中に貯めておいて冬場に再利用することができる。こうすることで、ヒートポンプやボイラー等を使用しなくても吸熱源若しくは放熱源として十分利用することができ、省エネルギー性に優れる。また、地中熱としては土中の熱だけではなく、地下水や井戸の水等も地熱により温度が安定しており、十分に利用することができる。
【0049】
ボアホール内のパイプや地中熱交換器と熱源管とを、断熱材で被覆された往管及び返送管で接続しループ配管を形成することができる。ループ配管に簡単なポンプを配設したとき、少ない揚程で不凍液を容易にボアホールから太陽電池パネル吸放熱システムまで循環させることができる。
【0050】
熱源管には熱媒体として、エチレングリコール,プロピレングリコール,酢酸カリウム水溶液等の不凍液や界面活性剤を含有する水が循環される。
界面活性剤を含有する水を用いた場合、乱流が軽減されて熱交換能力は下がるが、熱源管内と液体との間の摩擦が軽減され、流量が2〜3割程度向上する。流量の向上による熱交換能力の向上は、乱流による熱交換能力の向上よりも大きなものとなるので、界面活性剤を使用することにより更に熱交換能力を向上させることができる。
【0051】
請求項9に記載の太陽電池パネル吸放熱システムは、請求項8に記載の太陽電池パネル吸放熱システムであって、前記ループ配管に密閉式の膨張タンクが接続されている構成を有している。
この構成により、請求項8で得られる作用に加え、以下の様な作用が得られる。
(1)膨張タンクがループ配管内に充填された不凍液の熱膨張・収縮に伴う容積変化を緩衝するので、ループ配管内が不凍液で満たされるため、簡単なポンプを配設して少ない揚程で不凍液を太陽電池パネル吸放熱システムまで循環することができる。
【発明の効果】
【0052】
以上の様に構成された本発明の太陽電池パネル吸放熱システムによれば、以下の様な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下の様な効果を有する。
(1)わずかな温度差があればヘッダー管とヒートパイプ枝管との間を多量の熱が短時間で移動することができ、ヘッダー管とヒートパイプ枝管との温度差をほとんどゼロにすることができるので、太陽電池パネル全体の温度斑を解消して発電効率を安定化するとともに、太陽電池パネルの吸放熱に優れ、熱暴走を抑え、更に融雪することが可能な太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(2)太陽電池パネルに降った雪を、積もると直ちにヒートパイプ枝管とヘッダー管の熱で融かして除去することができ、除雪性に著しく優れ、積雪による太陽光の入射阻害を防ぎ、より持続的で安定した太陽光発電が可能な太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(3)太陽電池パネルの温度が上昇した場合、直ちにヒートパイプ枝管とヘーッダー管が吸熱し、太陽電池パネルを冷却してセルの発電効率低下を抑制することができる太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(4)ヘッダー管から複数のヒートパイプ枝管を分岐させているので、ヘッダー管に貫設又は添設された熱源管の長さも短くすることができ、太陽電池パネルに配設される熱源管の経路が短くなり管摩擦抵抗が小さくなるので、熱媒体を送るポンプは出力の小さなもので済み、ポンプの駆動はわずかなエネルギーで済みランニングコストが小さく、かつポンプの消費電力自体が極めて少ないので、ヒートポンプ等の熱源の駆動による大量の電力消費で太陽光発電効率を低下させる恐れのない太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(5)熱源として地中熱を利用した場合、夏期には太陽電池パネルの温度を地中に蓄え、冬期には地中に蓄えた熱を利用して融雪することができる太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(6)ヒートパイプをバックカバーの上部に配設した場合には冷却エネルギーがセルの温度を調節する必要最小限のものですむので、太陽電池パネル吸放熱システムの駆動による消費エネルギーが著しく低く、太陽電池パネルの発電効率を最大限引き出すことが可能な太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(7)太陽電池パネル内部にヒートパイプを配設した場合、充てん剤の熱劣化を著しく抑制することができ、太陽電池パネルの耐久性を向上させる太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
【0053】
請求項2に記載の発明によれば、以下の様な効果を有する。
(1)ヒートパイプを板状に形成したヒートパイプ板を使用することにより、ヒートパイプ板の一部を加温・冷却すれば、ヒートパイプ板全体が急速に加温・冷却されて太陽電池パネル全体を瞬時に加温・冷却することができ、太陽電池パネルに積もった雪を融雪して太陽光の入射の阻害を防止して日中十分な発電が可能で、またセルを冷却することによってセルの熱暴走を防いで発電効率の低下を抑制する太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(2)ヒートパイプ板をバックカバーの上部に配設した場合には冷却エネルギーがセルの温度を調節する必要最小限のものですむので、太陽電池パネル吸放熱システムの駆動による消費エネルギーが著しく低く、発電効率を最大限引き出すことが可能な太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(3)太陽電池パネル内部にヒートパイプ板を配設した場合、充てん剤の熱劣化を著しく抑制することができ、太陽電池パネルの耐久性を向上させる太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(2)熱源として地中熱を利用した場合、夏期には太陽電池パネルの温度を地中に蓄え、冬期には地中に蓄えた熱を利用して融雪することができる太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
【0054】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1及び2の効果に加え以下の様な効果を有する。
(1)シリコン鉱石の粉末,微粉末をヒートパイプ及びヒートパイプ板に塗布することにより、ヒートパイプの熱伝導の指向性がなくなり、太陽電池パネルとの優れた熱交換能力を有する太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
【0055】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の効果に加え以下の様な効果を有する。
(1)太陽電池パネルが長時間強い太陽光の照射を受けても、発生した熱がバックカバーの下部に配設された伝熱板へパネル全体の温度分布の斑が無い状態で伝わり、次に伝熱板からヒートパイプへ素早く熱が伝わり、次にヒートパイプ枝管からヘッダー管へ、ヒートパイプ枝管とヘッダー管との温度差が無い程急速に熱が伝わり、さらに熱源管内の熱媒体に熱が伝わるので太陽電池パネル全体の温度が低温で均一化され、熱暴走による発電効率の低下を防ぐことができ、更に太陽電池パネル内の各々のセルの温度が一定となって経時的にも温度を安定化することができるので、太陽電池パネルの発電力を著しく安定化することが可能な太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(2)太陽電池パネルに雪が積もっても、熱源管内の熱媒体の熱がヘッダー管に伝わり、ヘッダー管の熱が、ヒートパイプ枝管とヘッダー管との温度差が無い程急速にヒートパイプ枝管に伝わり、更にヒートパイプから伝熱板へ素早く伝わり、次に伝熱板がバックシートを介して太陽電池パネル全体を加温するので太陽電池パネルに積もった雪を融雪することができ、太陽光の入射を雪に遮られることが無いのでより持続的な発電が可能で、また太陽電池パネル全体の温度分布に斑が無いので太陽電池パネルの温度状態を正しく把握でき、最適温度を設定し易く、発電力を著しく安定化することが可能な太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(4)バックカバーの上部にヒートパイプが配設され、このヒートパイプの上部に伝熱板が配設されている場合、太陽電池パネル内部を均一に加温・冷却することができ、セルの熱暴走を防ぐとともに充てん剤の熱劣化を抑制し、更に融雪が可能な太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(5)伝熱板は一部に与えられた熱が速やかに全体に分散する性質を有しているので、バックカバーの上部に配設されたヒートパイプの上部に伝熱板が配設されている場合、ヒートパイプの構造が簡略化しても太陽電池パネルを均一に加温・冷却可能な太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
【0056】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至3の効果に加え以下の様な効果を有する。
(1)太陽電池パネル内部の温度斑がない状態で加温・冷却が可能で、太陽電池パネルの発電効率を向上させ、さらに各々のセルの温度斑がなく、最適温度を設定しやすいので発電効率を常に最良の状態で安定化することが可能な太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(2)ヒートパイプとの熱交換効率が向上し、セルの熱暴走を著しく抑制し、更に優れた融雪能力を確保することが可能な太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
【0057】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5の内いずれか一項の効果に加え以下の様な効果を有する。
(1)ヘッダー管及びヒートパイプ枝管の断面が略矩形状、略方形状、略三角状、略長円状、略半円状の内のいずれかに形成され上面(伝熱面)が平坦で幅広に形成されているので、ヘッダー管とヒートパイプ枝管の太陽電池パネル若しくは伝熱板との伝熱面を大きくすることができ、太陽電池パネルとの優れた熱伝達効率を有する太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
【0058】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6の内いずれか一項の効果に加え以下の様な効果を有する。
(1)上面がヒートパイプ枝管及びヘッダー管の上面と面一乃至はわずかに低く形成され、ヒートパイプ枝管の間に熱分散部材が配設されているので、ヒートパイプ枝管及びヘッダー管を介して熱分散部材の上面全体で太陽電池パネル又はセル若しくは伝熱板へ確実に熱伝達させることが可能な太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(2)熱分散部材の側面とヒートパイプ枝管やヘッダー管の側壁とを接触させ、ヒートパイプの熱を熱分散部材に伝えて吸放熱面積を広くすることができ、太陽電池パネル全体や太陽電池パネル内部の各々のセルの温度斑を小さくすることが可能な太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(3)ヒートパイプ枝管及びヘッダー管の上面と熱分散部材の上面とが略面一に形成されるので、ヒートパイプと熱分散部材とを面状のパネルのように取り扱うことができ、太陽電池パネルをヒートパイプと熱分散部材の全面で支持できるので、雪の重みで太陽電池パネルが変形したり割れたりするのを防止できる太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
【0059】
請求項8に記載の発明によれば、請求項1及び3乃至7の効果に加え以下の様な効果を有する。
(1)年間を通して温度が安定した地中熱を用いることでのヒートパイプや太陽電池パネルの温度が経時的に安定して発電時の電力が著しく安定し、更に太陽電池パネルの冷却や積雪した雪の融雪に利用でき、熱媒体の不凍液を加熱又は冷却するための特別なエネルギーを必要とせず安全で省エネルギー性に優れる太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(3)降雪時にはヒートポンプの様に大量の電力を消費し続けながら太陽電池パネルを冷却したり融雪する必要がなく、地中熱の安定した熱源を利用することでポンプを駆動するだけの僅かな電力だけで冷却と融雪を簡単に行える太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(4)地中熱が安定した温度を保っているので不凍液を循環させるポンプが停止した場合でも、不凍液が熱源管等の内部で凍結するのを防止することが可能な太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
(5)日射量の多い時期には太陽電池パネルの熱を地中熱として地下に熱貯蔵し、冬期には融雪するための熱源として熱貯蔵した熱を再利用することができ、ヒートポンプ等の大量の電力を消費する熱源が必要ないので、省エネルギー性に優れる太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
【0060】
請求項9に記載の発明によれば、請求項1及び3乃至9の内いずれか一項の効果に加え、以下の様な効果を有する。
(1)膨張タンクがループ配管内に充填された不凍液の熱膨張・収縮に伴う容積変化を緩衝するので、ループ配管内が不凍液で満たされるため、簡単なポンプを配設して少ない揚程で不凍液を太陽電池パネル吸放熱システムまで循環することが可能な太陽電池吸放熱システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施の形態1における太陽電池パネル吸放熱システムを家屋の屋根に設置した太陽光発電システムの太陽電池パネルへ導入した構造を示す一部破断斜視図
【図2】実施の形態1における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプの平面図
【図3】図1のA−A線における要部断面図
【図4】(a)変形例の太陽電池パネル吸放熱システムの熱分散部材の模式背面側斜視図(b)変形例のB−B線における要部断面図
【図5】実施の形態2における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプの平面図
【図6】(a)実施の形態3における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプの平面図(b)図6(a)のC−C線における要部断面模式図
【図7】実施の形態4における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプの平面図
【図8】実施の形態5における太陽電池パネル吸放熱システムを太陽追尾型太陽光発電システムの太陽電池パネルへ導入した構造を示す一部破断斜視図
【図9】実施の形態5における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプの平面図
【図10】実施の形態6における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプの平面図
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1における太陽電池パネル吸放熱システムを家屋の屋根に設置した太陽光発電システムの太陽電池パネルへ導入した構造を示す一部破断斜視図であり、図2は実施の形態1における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプの平面図であり、図3は図1のA−A線における要部断面図であり、図4(a)は変形例の太陽電池パネル吸放熱システムの熱分散部材の模式斜視図であり、(b)は変形例のB−B線における要部断面図である。
【0063】
図1乃至図3において、1は家屋20の屋根21上に取り付けられた太陽電池パネル吸放熱システム、2は太陽電池パネル吸放熱システム1上に配設された太陽電池パネル、3は太陽電池パネル2の図示しないバックカバーの下部に配設された伝熱板、4は伝熱板の下部に配設され−30℃前後まで凍結しない不凍性の作動流体が封入され並設されたヒートパイプ、5,5は略平行に配設された2本のヘッダー管、6は内壁に金属繊維のウィックを設け両端部が2本のヘッダー管5,5の各々に連通し略平行に配設された複数のヒートパイプ枝管、7aは送流側熱源管、7bは返流側熱源管、8は送流側熱源管7a,返流側熱源管7b間を接続する接続管、9はヒートパイプ4,4の送流側熱源管7a,返流側熱源管7bに接続された継手、10は継手9に接続され並設されたヒートパイプ4,4の送流側熱源管7a,返流側熱源管7b間を連結する連結管、11はヒートパイプ枝管6間やヘッダー管5,5の間を埋める熱分散部材、22aは合板,アルミニウム製等で板状に形成され屋根21の野地板の上面に配置され上面にヒートパイプ4が載置された下地材、22bはヒートパイプの位置を固定する固定部材、22cは太陽電池パネル2と太陽電池パネル吸放熱システム1の周囲を囲むフレームである。
【0064】
12は地盤中に形成された地中採熱素子のボアホール、13は地下10〜50m程度の深さに打ちこまれたケーシング、14はケーシング内に配設された二重管やU字管等の地熱パイプ、15aは図示しない断熱材で被覆され地熱パイプ14と送流側熱源管7aに接続されループ配管を形成する往管、15bは図示しない断熱材で被覆され地熱パイプ14と返流側熱源管7bに接続されループ配管を形成する返送管、16はループ配管を形成する往管15aに配設されたポンプ、17は返送管15bから分岐された分岐管、18は下部が分岐管17に接続され図示しないダイヤフラム等で分岐管17側に熱媒体が収容された密閉式の膨張タンクである。送流側熱源管7a,返流側熱源管7b,接続管8,連結管10,ボアホール12内の地熱パイプ14,往管15a,返送管15b,ポンプ16内には、エチレングリコール,プロピレングリコール,酢酸カリウム水溶液等の不凍性の熱媒体(不凍液)が充填されており、熱源管7,接続管8,連結管10,地熱パイプ14,往管15,ポンプ16内に充填された熱媒体の膨張・収縮に伴う容積変化を膨張タンク18内の熱媒体で緩衝する。
【0065】
本実施の形態1においては、ヘッダ管5,ヒートパイプ枝管6の長手方向に直交する断面が、矩形状の同一の大きさに形成されている。送流側熱源管7a,返流側熱源管7bはヘッダー管5の長手方向に沿って貫設され、ヘッダー管5の両端部は送流側熱源管7a,返流側熱源管7bの外周壁で封着されている。8は送流側熱源管7a,返流側熱源管7bの端部間を接続する接続管である。
【0066】
なお、本実施の形態1においてヒートパイプ4は、ヘッダー管5が太陽電池パネル2の勾配方向に平行に配置され、ヒートパイプ枝管6が太陽電池パネル2の勾配方向に略直交するように配置されている。
なお、ヒートパイプ枝管6は、太陽電池パネル2の勾配方向に対する角度を60〜90°好ましくは70〜90°の範囲になるように配置することができる。これにより、ヒートパイプ枝管6の熱で融かされた融雪水が太陽電池パネル2の上を面状に流れるので、ヒートパイプ枝管6の周囲の雪だけが融けて雪洞が形成され、雪洞の周囲の雪が太陽電池パネルの上に残り締め固められて除雪できなくなるのを防止することができる。
【0067】
図4において、19は熱分散部材11の変形例で、19aはアルミニウム製等の金属製で一面が開口する薄肉で箱状に形成された熱分散部材の伝熱部、19bはグラスウール,ロックウール等の無機繊維系、ウレタンフォーム,発泡ポリスチレン等の合成樹脂系、木質繊維系等の繊維質等で形成され熱分散部材19aの開口部に嵌装された断熱材である。熱分散部材19aは断熱材19bが嵌装された開口を屋根21側に、平坦面を太陽電池パネル2側にして熱分散部材11に代えて配置させることができる。変形例の熱分散部材19は薄肉の箱状に形成されているので軽量化することができ、また開口部に断熱材19bが嵌装されているので、屋根21への放熱を少なくすることができ熱損失を減らすことができる。
【0068】
以上のように構成された本発明の実施の形態1における太陽電池パネル吸放熱システムについて、以下その使用方法を説明する。
まず、融雪の場合について、ボアホール12の地熱パイプ14内の熱媒体は約15〜17℃前後の地中熱によって13℃程度に加温される。加温された地熱パイプ14内の熱媒体(不凍液)を、往管15aに配設されたポンプ16を駆動して、往管15aから太陽電池パネル2に設置されたヒートパイプ4の送流側熱源管7aに導入する。熱媒体は送流側熱源管7aから導入され、接続管8を通って対向する返流側熱源管7bで太陽電池パネル2の傾斜方向を下り、継手9,連結管10を通って隣接するヒートパイプ4の送流側熱源管7aから入り、接続管8を通って対向する返流側熱源管7bを下り、返送管15bを通ってボアホール12の地熱パイプ14へ還流されてループ配管内を循環する。ヒートパイプ4内の凝縮した作動流体は重力でヘッダー管5の太陽電池パネル2の傾斜方向に流下し易いため、まず一方のヘッダー管5を熱媒体で加熱することで、熱媒体の保有する熱が一方のヘッダー管5に与えられてヘッダー管5内の作動流体がヒートパイプ枝管6及び他方のヘッダー管5に向かって蒸発するようになる。作動流体の蒸気はヒートパイプ枝管6内を拡散し凝縮して凝縮熱を放出し、ヒートパイプ枝管6の管壁を通じて熱分散部材11及び太陽電池パネル2のバックカバーへ放熱する。バックカバーへ放熱された熱は充てん材とセルに伝わり、その後フロントカバーに伝熱する。一方のヘッダー管5の送流側熱源管7aを流れた熱媒体は、次に他方のヘッダー管5の返流側熱源管7bに入り、他方のヘッダー管5内の作動流体を蒸発させる。これを繰り返し、熱交換し凝縮した作動流体はヘッダー管5へ還流され、太陽電池パネル2の表面に積もった雪に放熱して融雪する。
【0069】
融雪では、始めに温度の高いヒートパイプ枝管6とヘッダー管5の上の太陽電池パネル2に積もった雪が融かされ、融雪水は屋根勾配に沿って太陽電池パネルの表面を流れるので、ヒートパイプ枝管6,6とヘッダー管5,5とで囲まれた範囲の雪の下面が融雪水によって融かされ、やがて太陽電池パネル2に積雪した雪を除去することができる
【0070】
夏期等日射量が多く気温が高くて太陽電池パネル2の温度が上昇する時期において、太陽電池パネル2を冷却する場合、太陽電池パネル2の熱がバックカバーを介して伝熱板3に伝わり、次に熱分散部材11やヒートパイプ枝管6に伝わる。そしてヒートパイプ枝管6内の作動流体がヒートパイプ枝管6に伝わってきた熱を吸収して蒸発し、毛細管現象で両方のヘッダー管5へ向かって蒸発する。これによって作動流体の保有する熱が両方のヘッダー管5に与えられる。作動流体の蒸気はヘッダー管5内に到達して凝縮し凝縮熱を放出した後、ヘッダー管5内の熱は送流側熱源管7a,返流側熱源管7bへと放熱される。一方、ヘッダー管5で凝縮した作動流体は毛細管現象でヒートパイプ枝管6内へ流動し再度太陽電池パネル2の熱を奪って、ヘッダー管5へ向かって蒸発する。そして送流側熱源管7a,返流側熱源管7bを通る熱媒体によってヘッダー管5の熱が地中へと運ばれ、地熱パイプ14を通って再び低温の熱媒体となってヘッダー管5へ送られるとともに、ボアホール12を中心として地中に熱が貯蔵される。
【0071】
ここで、本実施の形態1においては、下地材22の上に熱分散部材11を別々に設置する場合について説明したが、下地材22と熱分散部材11とをアルミニウム等の金属製や合成樹脂、コンクリート等で一体に形成し、一体形成された窪みにヒートパイプ4のヘッダー管5及びヒートパイプ枝管6を嵌合させる場合もある。これにより、施工性を高めることができるという作用が得られる。
また、風呂の残り湯や工場や家庭からの排水等の排熱を利用して、ループ配管内を流れる不凍液を加温することもできる。この場合は、ポンプ16の下流側の往管15aにジャケットを配設して、排水をジャケットに導入し往管15aの管壁を通じてジャケット内の排水等の排熱と不凍液との熱交換を行い、排水の排熱で不凍液を加温する。これにより、一時的に不凍液の温度を上げて、排熱で太陽電池パネル2上の雪を融かすことができ排熱の有効利用ができる。
【0072】
以上のように、本発明の実施の形態1における太陽電池パネル吸放熱システムは構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)ヒートパイプ枝管6の両端部が、略平行に配設された2本のヘッダー管5,5の各々に連通しており、熱媒体が一方のヘッダー管5の送流側熱源管7aから他方のヘッダー管5の返流側熱源管7bに流されて、双方のヘッダー管5内の作動流体を蒸発させるので、ヘッダー管5内の作動流体の蒸発とヒートパイプ枝管6での凝縮に伴う潜熱の授受による熱の放出が、2本のヘッダー管5,5の各々で行われるので、ヒートパイプ4の温度斑を少なくすることができ、熱暴走の抑制に優れるとともに、太陽電池パネル2に面した雪を斑なく融かすことができる。
(2)家屋20の屋根21に設置された太陽電池パネル2に降った雪は、積もると直ちにヒートパイプ枝管6とヘッダー管5の熱で融かされてブロック状に分割され、締め固まる前の柔らかな状態のうちに太陽電池パネル2から滑落していくため、人の歩行や車の走行の妨げになった歩行者に怪我等をさせたりすることもなく安全に屋根雪を滑落させて除去することができ除雪性に著しく優れる。
(3)ヘッダー管5及びヒートパイプ枝管6が矩形状の断面を有しているので、ヘッダー管5とヒートパイプ枝管6の外周の4面を平らにすることができ、太陽電池パネル2との伝熱面積を大きくすることができる。また、アルミニウム製等で形成された熱分散部材11をヒートパイプ枝管6の間に嵌め込んで、熱分散部材11の側面とヒートパイプ枝管6及びヘッダー管5の側壁とを面接触させて接触面積を広くすることができ熱交換効率を高めて、より効果的に熱暴走を抑制したり融雪能力を向上させることができる。また、ヘッダー管5及びヒートパイプ枝管6の底面が平らに形成されるので、下地材22の上に安定に設置することができ施工性に優れる。
(4)上面がヒートパイプ枝管6及びヘッダー管5の上面と面一乃至はわずかに低く形成され、ヒートパイプ枝管6,6及びヘッダー管5,5の間に配設された熱分散部材11を備え、伝熱板3を備えているので、ヒートパイプ枝管6及びヘッダー管5と太陽電池パネル2との熱伝達を確実にすることができる。
(5)熱分散部材11の側面とヒートパイプ枝管6やヘッダー管5の側壁とを接触させて、ヒートパイプ枝管6やヘッダー管5の熱を熱分散部材11に伝達し吸放熱面積を広くすることができ、更に伝熱板3を備えているので太陽電池パネル2の熱暴走を抑えるとともに温度分布の斑を著しく小さくして発電時の電力の安定性を著しく向上させることができる。
(6)ヒートパイプ枝管6及びヘッダー管5の上面と熱分散部材11の上面とが略面一に形成されるため、太陽電池パネル2をヒートパイプ4と熱分散部材11の全面で支持できるので、雪の重みで太陽電池パネル2が変形するのを防止できる。また、太陽電池パネル2の上に積もった雪の重みで、太陽電池パネル2とヒートパイプ枝管6,ヘッダー管5と熱分散部材11と伝熱板3とが互いに密着するようになり熱伝達が良くなり雪を確実に融かすことができる。
(7)ヒートパイプ枝管6が内壁にウィックを備えているので、熱交換の指向性が無くなって動作が安定し、太陽電池パネル2の加温に加えて吸熱することもでき、また吸放熱が優れるので太陽電池パネル2の温度分布の斑がなく経時的にも温度分布の斑が安定しているので熱暴走による発電効率の低下を抑制し、更に発電時の電力の安定性に著しく優れる。
【0073】
(実施の形態2)
図5は実施の形態2における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプの平面図である。なお、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、4aは実施の形態2における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプ、6aは内壁に金属繊維のウィックを設け一端がヘッダー管5に連通し略平行に配設された複数のヒートパイプ枝管、7´は内部に熱媒体が送流されヘッダー管5の長手方向に添設されてヘッダー管5と略同一の厚さに形成された送返流の熱源管である。
【0074】
以上のように構成された実施の形態2における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプ4aは、ヘッダー管5が太陽電池パネル2の勾配方向に沿って配置され、ヒートパイプ枝管6aが太陽電池パネル2の勾配方向に略直交するように配置されて実施の形態1と同様に施工される。
【0075】
以上のように、本発明の実施の形態2における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプ4aは構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)1本のヘッダー管5にヒートパイプ枝管6aの一端が連通しておりコンパクト化できるので、太陽電池パネル2が小さな場合等、熱媒体の循環経路を簡略化させることができ施工性を高めることができる。
(2)ヘッダー管5と略同一の厚さに形成された送返流の熱源管7´を備えているので、送返流の熱源管7´の管壁を通じて熱媒体と太陽電池パネル2とを直接熱交換させることができ、融雪効率を高めることができる。
(3)ヒートパイプ枝管6a内部にウィックを有するので熱交換の指向性がなくなり動作が安定する。
【0076】
(実施の形態3)
図6(a)は実施の形態3における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプの平面図であり、(b)は図6(a)のC−C線要部断面模式図である。なお、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、4bは実施の形態3における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプ、6bは表面にシリコン鉱石の粉末,微粉末を塗布された塗布層6´を有し一端がヘッダー管5に連通し略平行に配設された複数のヒートパイプ枝管、6cはヒートパイプ枝管6bの他端に連通した均圧管である、7は実施例1における送流側熱源管7a,返流側熱源管7b同様内部に熱媒体が送流されヘッダー管5の長手方向に貫設された送返流の熱源管である。
【0077】
以上のように構成された実施の形態3における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプ4bは、ヘッダー管3が太陽電池パネル2の勾配方向に沿って配置され、ヒートパイプ枝管6bが太陽電池パネル2の勾配方向に略直交するように配置されて実施の形態1と同様に施工される。
【0078】
以上のように、本発明の実施の形態3における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプ4bは構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)1本のヘッダー管5にヒートパイプ枝管6bの一端が連通しておりコンパクト化できるので、太陽電池パネル2が小さな場合等、熱媒体の循環経路を簡略化させることができ施工性を高めることができる。
(2)ヒートパイプ枝管6bの他端に均圧管6cが連通しているので、ヒートパイプ枝管6b内の圧力を均一化でき温度斑を少なくすることができる。
(3)ヒートパイプ枝管6b表面にはシリコン鉱石の粉末,微粉末の塗布層を有しているので太陽電池パネルの加温だけではなく冷却も行うことができ、セルの熱暴走を抑えたり、太陽電池パネルへの積雪,凍結を防ぐとともに融雪することができる。
【0079】
(実施の形態4)
図7は実施の形態4における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプの平面図である。なお、実施の形態1乃至3と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、4cは実施の形態4における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプ、6dは内壁に金属繊維等のウィックを設け、更に表面にシリコン鉱石の微粉末を塗布し一端がヘッダー管3に連通し略平行に配設された複数のヒートパイプ枝管である。
【0080】
以上のように構成された実施の形態4における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプ4cは、ヘッダー管5が太陽電池パネル2の勾配方向に沿って配置され、ヒートパイプ枝管6dが太陽電池パネル2の勾配方向に略直交するように配置されて実施の形態1と同様に施工される。
【0081】
以上のように、本発明の実施の形態4における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプは構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)1本のヘッダー管5にヒートパイプ枝管6bの一端が連通しておりコンパクト化できるので、太陽電池パネル2が小さな場合等、熱媒体の循環経路を簡略化させることができ施工性を高めることができる。
(2)ヒートパイプ枝管6dがヘッダー管5を中心に左右に広がって連通しているので1本のヘッダー管で太陽電池パネルの多くの面積と熱交換が可能。
(3)ヒートパイプ枝管6dの内壁に金属繊維等のウィックを設け、更に表面にシリコン鉱石の粉末,微粉末を塗布しているので熱交換の指向性が無くなって動作が安定化するうえに、熱交換能力が高くなる。
【0082】
(実施の形態5)
図8は実施の形態5における太陽電池パネル吸放熱システムを太陽光追尾型太陽光発電システムの太陽電池パネルへ導入した構造を示す一部破断斜視図であり、図9は実施の形態5における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプの平面図である。尚、実施の形態1と同様のものは同じ符号を付して説明を省略する。
【0083】
図8及び図9において、33は太陽光追尾型発電システム、34は太陽光追尾型発電システム33の支持部、1aは太陽追尾型太陽発電システム33に取り付けられた太陽電池パネル吸放熱システム、23は太陽電池パネル吸放熱システム1aの太陽電池パネル、24は太陽電池パネル23の図示しないバックカバーの下部に配設された伝熱板、25は伝熱板の下部に配設されたヒートパイプ、図9において、26,26は略平行に配設された2本のヘッダー管、27は内壁に金属繊維のウィックを設け両端部が2本のヘッダー管26,26の各々に連通し略平行に配設された複数のヒートパイプ枝管、28aは送流側熱源管、28bは返流側熱源管、29は送流側熱源管28a,返流側熱源管28b間を接続する接続管、30はヒートパイプ25,25の送流側熱源管28a,返流側熱源管28bに接続された継手、31は継手30に接続され並設されたヒートパイプ25,25の送流側熱源管28a,返流側熱源管28b間を連結する連結管、32はヒートパイプ枝管27の間とヘッダー管26の間を埋める熱分散部材(図8)である。
【0084】
本実施の形態においては、ヘッダー管26,ヒートパイプ枝管27の長手方向に直交する断面が、矩形状の同一の大きさに形成されている。送流側熱源管28a,返流側熱源管28bはヘッダー管26の長手方向に沿って貫設され、ヘッダー管26の両端部は送流側熱源管28a,返流側熱源管28bの外周壁で封着されている。
【0085】
なお、本実施の形態5においてヒートパイプ25は、ヘッダー管26が太陽電池パネル23の勾配方向に略直交になるように配置され、ヒートパイプ枝管27が太陽電池パネル23の勾配方向と略平行になるように配置されている。
【0086】
太陽光追尾型発電システム33は地表面に対して水平方向の回転角度及び垂直方向(仰角)の角度を自動調節することで太陽の動きを追尾し、最も入射光量の得られる太陽光発電システムである。この太陽光追尾型発電システム33は可動部を備えているので、その可動部分に位置する往管15aと返流管15bを樹脂あるいはゴム等の弾性素材等の変形可能な材質やフレキシブル管にする。
【0087】
以上のように構成された本発明の実施の形態5における太陽電池パネル吸放熱システムについて、以下その使用方法は実施の形態1と同様である。
【0088】
以上のように、本発明の実施の形態5における太陽電池パネル吸放熱システムは構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)ヒートパイプ枝管27の両端部が、互いに略平行に配設された2本のヘッダー管26,26の各々に連通しており、熱媒体が一方のヘッダー管26の送流側熱源管28aから他方のヘッダー管26の返流側熱源管28bに流れ、双方のヘッダー管26内の作動流体を蒸発させるので、ヘッダー管26内の作動流体の蒸発とヒートパイプ枝管27での凝縮に伴う潜熱の授受による熱の放出が、2本のヘッダー管26,26の各々で行われ、ヒートパイプ27の温度斑を少なくすることができ、太陽電池パネル23全体と温度分布に斑の無い状態で熱交換して、セルの熱暴走を効果的に抑制して発電効率の低下を抑制し、更に積雪した雪を斑なく融かすことができる。
(2)太陽電池パネル23に降った雪は、積もると直ちにヒートパイプ枝管27とヘッダー管26の熱で融かされてブロック状に分割され、締め固まる前の柔らかな状態のうちに太陽電池パネル23から滑落していくため、人の歩行や車の走行の妨げになった歩行者に怪我等をさせたりすることもなく安全に雪を滑落させて除去することができ除雪性に著しく優れる。
(3)ヘッダー管26及びヒートパイプ枝管27が矩形状の断面を有しているので、ヘッダー管26とヒートパイプ枝管27の外周の4面を平らにすることができ、太陽電池パネル23との伝熱面積を大きくすることができる。また、アルミニウム製等で形成された熱分散部材32をヒートパイプ枝管27の間に嵌め込んで、熱分散部材32の側面とヒートパイプ枝管27及びヘッダー管26の側壁とを面接触させて接触面積を広くすることができ熱交換効率を高めることができる。また、ヘッダー管26及びヒートパイプ枝管27の底面が平らに形成されるので、下地材33の上に安定に設置することができ施工性に優れる。
(4)上面がヒートパイプ枝管27及びヘッダー管26の上面と面一乃至はわずかに低く形成され、ヒートパイプ枝管27,27及びヘッダー管26,26の間に配設された熱分散部材32を備え、伝熱板24を備えているので、ヒートパイプ枝管27及びヘッダー管26と太陽電池パネル23との熱伝達を確実にすることができ、太陽電池パネル内のセルの熱暴走を防いで発電効率の低下を著しく抑制し、さらに融雪能力に優れる。
(5)熱分散部材32の側面とヒートパイプ枝管27やヘッダー管26の側壁とを接触させて、ヒートパイプ枝管27やヘッダー管26の熱を熱分散部材32に伝達し吸放熱面積を広くすることができ、更に伝熱板24を備えているので太陽電池パネル23の温度斑を著しく小さくして太陽電池パネル内部の各々のセルの起電力を一定化し電力の安定性を著しく向上させることができる。
(6)ヒートパイプ枝管27及びヘッダー管26の上面と熱分散部材32の上面とが略面一に形成されるため、太陽電池パネル23をヒートパイプ25と熱分散部材32の全面で支持できるので、雪の重みで太陽電池パネル23が変形するのを防止できる。また、太陽電池パネル23の上に積もった雪の重みで、太陽電池パネル23とヒートパイプ枝管27,ヘッダー管26と熱分散部材32と伝熱板24とが互いに密着するようになり熱伝達が良くなり雪を確実に融かすことができる。
(7)ヒートパイプ枝管27が内壁にウィックを備えているので、熱交換の指向性が無くなって動作が安定し、吸放熱に優れるので太陽電池パネル23の温度分布の斑がなく経時的に温度が安定しているので太陽電池パネル内部のそれぞれのセルの発電力が統一され、さらに経時的にセルの発電力が一定となって、発電時の電力の安定性が著しく優れている。
【0089】
(実施の形態6)
図10は実施の形態6における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプの平面図である。なお、実施の形態5と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、25aは金属製のヒートパイプ、37aは往管、37bは返送管である。
【0090】
以上のように構成された実施の形態6における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプ25aは、ヘッダー管26が太陽電池パネル23の勾配方向に略直交して配置され、ヒートパイプ枝管27が太陽電池パネル23の勾配方向に略平行に配置されて実施の形態5と同様に施工される。
【0091】
以上のように、本発明の実施の形態6における太陽電池パネル吸放熱システムのヒートパイプ25aは構成されているので、実施の形態5の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)全体のヘッダー管に同一温度の熱媒体が均一に行き渡るので太陽電池パネル全体の温度分布の斑を著しく抑制することができ、各々のヒートパイプ15aの温度斑が無く、それぞれの太陽電池パネル内のセルの起電力が統一され発電時の電力の安定性に優れ、更に地熱を利用しているので経時的にも温度が安定しており、発電時の電力が経時的にも安定している。
(2)ヒートパイプが金属からなるので太陽電池パネルを加温するだけでなく冷却することもでき、熱暴走を抑えたり、太陽電池パネルへの積雪,凍結を防ぐとともに融雪することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
ヒートポンプやボイラー等の電力を大量に消費する熱源を使用することなく、かつ簡単な施工で日射量が多く気温の高い季節には太陽電池パネルを冷却することでセル温度上昇による発電効率低下を防止し、また気温の低い季節や降雪の季節には太陽電池パネルを加温し積雪した雪を融雪し太陽電池パネルへの太陽光の入射を常に得ることが可能で、また太陽電池パネル全体の温度分布に斑の無い状態で、経時的に温度を一定に保つことができ、太陽光発電の発電効率と電力の安定性を著しく向上することのできる太陽電池パネル吸放熱システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0093】
1、1a 太陽電池パネル吸放熱システム
2、23 太陽電池パネル
3、24 伝熱板
4、4a、4b、4c、25、25a ヒートパイプ
5、26 ヘッダー管
6、6a、6b、6d、27 ヒートパイプ枝管
6c 均圧管
6´ 塗布層
7a、28a 送流側熱源管
7b、28b 返流側熱源管
7、7´ 送返流の熱源管
8、29 接続管
9、30 継手
10、31 連結管
11a、32 熱分散部材
12 ボアホール
13 ケーシング
14 地熱パイプ
15a、37a 往管
15b、37b 返送管
16 ポンプ
17 分岐管
18 膨張タンク
19 変形例の熱分散部材
19a 変形例の熱分散部材の伝熱部
19b 変形例の熱分散部材の断熱材
20 家屋
21 屋根
22a 下地材
22b 固定部材
22c フレーム
31a 送液側連結管
31b 返流側連結管
33 太陽光追尾型発電システム
34 支持部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルのバックカバーの下部又は上部にヒートパイプが配設されている太陽電池パネル吸放熱システムであって、前記ヒートパイプが
(a)熱源管と、
(b)前記熱源管が配設若しくは貫設されたヘッダー管と、
(c)前記ヘッダー管から分岐した複数のヒートパイプ枝管と、を備えていることを特徴とする太陽電池パネル吸放熱システム。
【請求項2】
太陽電池パネルのバックカバーの下部又は上部にヒートパイプ板が配設されている太陽電池パネル吸放熱システムであって、前記ヒートパイプ板が、
(a)溝を形成した平板と、
(b)前記溝を閉塞して空洞を形成する閉塞板と、
(c)前記空洞に封入される作動流体と、を有し、
(d)前記ヒートパイプ板に熱源管が配設若しくは貫設されていることを特徴とする太陽電池パネル吸放熱システム。
【請求項3】
前記ヒートパイプ又は前記ヒートパイプ板にシリコン鉱石の粉末,微粉末が塗布されたことを特徴とする請求項1及び2に記載の太陽電池パネル吸放熱システム。
【請求項4】
前記ヒートパイプ又は前記ヒートパイプ板の上部に伝熱板が配設されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載の太陽電池パネル吸放熱システム。
【請求項5】
前記バックカバーが伝熱板からなり、前記伝熱板の下部に前記ヒートパイプ又はヒートパイプ板が配接されたことを特徴とする請求項1乃至3に記載の太陽電池パネル吸放熱システム。
【請求項6】
前記ヘッダー管及び前記ヒートパイプ枝管の長手方向に直交する断面が略矩形状、略方形状、略三角状、略長円状、略半円状の内のいずれか1の形状に形成され上面が平坦に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の内いずれか一項に記載の太陽電池パネル吸放熱システム。
【請求項7】
上面が前記ヒートパイプ枝管及び前記ヘッダー管の上面と面一乃至はわずかに低く形成され、前記ヒートパイプ枝管の間に配設された熱分散部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至6の内いずれか一項に記載の太陽電池パネル吸放熱システム。
【請求項8】
前記ヒートパイプ又は前記ヒートパイプ板と、前記熱源管に接続され地盤中に形成した孔部から集熱した不凍液を循環させるループ配管と、を備えていることを特徴とする請求項1乃至7の内いずれか一項に記載の太陽電池パネル吸放熱システム。
【請求項9】
前記ループ配管に密閉式の膨張タンクが接続されていることを特徴とする請求項8に記載の太陽電池パネル吸放熱システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−77379(P2011−77379A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228567(P2009−228567)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(301057967)株式会社ジャスト東海 (8)
【Fターム(参考)】