説明

太陽電池モジュール及びその製造方法

【課題】従来のように半田を用いなくても、太陽電池セル同士を電気的に導通させた状態とすることが可能となる太陽電池モジュール及びその製造方法を提供する。
【解決手段】複数枚の太陽電池セル7を有し、当該太陽電池セル7の縁部7e,7e同士が重ね合わされ電気的に導通している太陽電池モジュールMである。重ね合わされる前記縁部7e,7eの間に介在しかつ導電性を有した導電部5を備えている。導電部5は、縁部7eから押圧力を受けると、この押圧力に抗する力により当該縁部7eに当接し、太陽電池セル7,7同士を電気的に導通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の太陽電池セルが接続されて構成される太陽電池モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー問題に対する意識の向上から、太陽電池モジュールを用いた太陽光発電に対する期待が高まっており、太陽電池モジュールの需要が増加している。そこで、このような需要の増加に伴って、性能の良い太陽電池モジュール及びこれを製造するための技術開発が望まれている。
【0003】
特許文献1に記載の太陽電池モジュールは、複数枚の太陽電池セル(太陽電池素子)を直列に接続することで実用的な電圧を得る構成となっている。このために、特許文献1に記載の太陽電池モジュールでは、短冊形状の太陽電池セルそれぞれの表面及び裏面に導電性を有する材料が設けられていて、図7(a)(b)に示しているように、隣り合う太陽電池セル80,81の縁部80a,81a同士を上下に重ね合わせることにより、電気的に接続させる構成が採用されている。
【0004】
このような太陽電池モジュールの製造は、図7(a)に示しているように、太陽電池セル80の縁部80aの上に、新たに接続する太陽電池セル81の縁部81aを重ね合わせ、この重ね合わせた縁部80a,81a間に介在している半田84を、図7(b)に示しているように、上下のヒータ82,83により加熱して溶融し、その後冷却して凝固させ、電気的に接続することで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−10355号公報(図9、図10参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記製造方法によれば、次のような問題点が発生するおそれがある。すなわち、上下に重ね合わせる太陽電池セル80,81の縁部80a,81a間の半田84を、上側のヒータ82によって、上側の太陽電池セル81を介して加熱すると共に、下側のヒータ83によって、既に複数枚の太陽電池セル79に接続されている下側の太陽電池セル80を介して加熱する。この際、上下のヒータ82,83を用いて、図8(a)に示しているように、半田84の溶融温度Tf以上に太陽電池セル81,80を加熱する必要がある。そして、ヒータ82,83による加熱を停止し、太陽電池セル81,80と共に半田84を凝固温度Tf未満の温度に低下させ、半田84を凝固させる。
【0007】
しかし、この場合において、図7(a)に示しているように、下側の太陽電池セル80は既に複数枚の太陽電池セル79に接続されていることから、全体としての表面積は大きく放熱量が多くなる。これに対して、新たに接続する上側の太陽電池セル81は、1枚のみであるため、その表面積は小さく放熱量が少ない。このため、上下のヒータ82,83により縁部80a,81aを凝固温度Tf以上に一旦加熱し、その後加熱を止め、半田84を冷却させても、半田84が凝固する際に、上側と下側との放熱量の差が原因となって、図8(a)に示しているように、上側の太陽電池セル81と下側の太陽電池セル80との間で温度差Δtが発生する。
すると、この温度差Δtによって、熱膨張による伸び量が太陽電池セル80,81の間で異なっていることから、半田84の凝固後、さらに温度が常温に低下すると、前記伸び量の差によって縮み量も異なるため、太陽電池セル80,81の重ね合わせ部に応力が発生し、図8(b)に示しているようにモジュールMに反りが発生してしまう。
【0008】
そこで本発明は、従来のように半田を用いなくても、太陽電池セル同士を電気的に導通させた状態とすることが可能となる太陽電池モジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明は、複数枚の太陽電池セルを有し、当該太陽電池セルの縁部同士が重ね合わされ電気的に導通している太陽電池モジュールであって、重ね合わされる前記縁部の間に介在しかつ導電性を有した導電部を備え、前記導電部は、前記縁部同士が重ね合わされた状態で前記縁部から押圧力を受けると、この押圧力に抗する力により当該縁部に当接し、前記太陽電池セル同士を電気的に導通させることを特徴とする。
本発明によれば、導電部は、縁部同士が重ね合わされた状態で前記縁部から押圧力を受けると、この押圧力に抗する力により当該縁部に当接し、前記太陽電池セル同士を電気的に導通させるので、前記押圧力に抗する力によって導電部が太陽電池セルの縁部に密に当接した状態が得られる。このため、従来のように半田を用いなくても、太陽電池セルの縁部同士が電気的に導通した状態が得られる。
【0010】
前記導電部の構成としては、様々存在するが、前記導電部は、重ね合わされる前記縁部の一方と電気的に導通した状態で設けられ、前記縁部の他方に対してバネ力を生じさせるバネ片から成る構成とすることができる。
この場合、太陽電池セルの縁部同士が重ね合わされた状態で、縁部の一方に設けられているバネ片が、弾性変形して復元力として前記バネ力を縁部の他方に対して作用させることにより、当該バネ片は他方の縁部に密に当接した状態となることができる。
又は、他の構成として、前記導電部は、重ね合わされる前記縁部の一方と電気的に導通した状態で設けられ、当該一方から他方へ突出している突起から成る構成とすることができる。
この場合、太陽電池セルの縁部同士が重ね合わされた状態で、縁部の一方に設けられている突起が、弾性変形して復元力を他方の縁部に対して作用させることにより、当該突起は他方の縁部に密に当接した状態となることができる。
【0011】
また、前記導電部は、太陽電池セルの縁部の一部から形成されていてもよいが、太陽電池セルとは別体の部材であってもよい。
すなわち、前記導電部は、前記太陽電池セルとは別体であって、重ね合わされる前記縁部の長手方向に沿って設けられ、凹凸形状が連続している板バネから成ることもできる。
この場合、太陽電池セルの縁部同士が重ね合わされた状態で、前記板バネが、弾性変形して復元力(バネ力)を両縁部に対して作用させることにより、当該板バネは重ね合わされる両縁部に密に当接した状態となることができる。
【0012】
また、前記各々の場合において、重ね合わされる前記縁部に、前記導電部が嵌る嵌合部が形成されていてもよく、この場合、導電部が嵌合部に嵌ることで、導電部と縁部との位置ずれが防止される。
【0013】
また、本発明は、太陽電池セルの縁部同士を重ね合わせた状態で当該太陽電池セルを複数枚並べて太陽電池モジュールを製造する製造方法であって、第一の封止部材上で、前記縁部同士を重ね合わせた状態で太陽電池セルを複数枚並べ、かつ、この並べる際に、前記縁部同士を重ね合わせて前記縁部から押圧力を受けるとこの押圧力に抗する力により当該縁部に当接する導電性を有した導電部を介して、前記縁部同士を重ね合わせ、その後、前記第一の封止部材上に並べられた前記複数枚の太陽電池セルを、当該第一の封止部材と第二の封止部材とで挟んで一体化することを特徴とする。
本発明によれば、縁部同士を重ね合わせた状態で太陽電池セルを複数枚並べる際に、縁部同士を重ね合わせて縁部から押圧力を受けるとこの押圧力に抗する力により当該縁部に当接する導電性を有した導電部を介して、縁部同士を重ね合わせるので、前記押圧力に抗する力によって導電部が、太陽電池セルの縁部に密に当接した状態が得られる。このため、従来のように半田を用いなくても、太陽電池セルの縁部同士が電気的に導通した太陽電池モジュールを得ることができる。そして、複数枚の太陽電池セルは、第一の封止部材上で並べられ、その後、第二の封止部材によって挟まれて一体化されるので、これら封止部材によって、太陽電池セル同士の構造的な接続が成され、また、複数枚の太陽電池セルの全体形状の保持が実現される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導電部が、太陽電池セルの縁部に密に当接した状態が得られるため、従来のように半田を用いなくても、太陽電池セルの縁部同士が電気的に導通した状態が得られる。つまり、太陽電池セル同士を電気的に導通させるために、従来のように半田を溶融させるべく加熱する必要がなくなり、常温での作業が可能となる。このため、従来発生していた反りを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの一部を示す説明図である。
【図2】導電部(第一実施形態)の具体的な構成を説明する斜視図である。
【図3】導電部(第二実施形態)の具体的な構成を説明する斜視図である。
【図4】導電部(第三実施形態)の具体的な構成を説明する断面図である。
【図5】太陽電池モジュールの製造方法を説明する説明図である。
【図6】太陽電池モジュールの一部を示している断面図である。
【図7】従来技術を説明する説明図である。
【図8】従来技術による問題点を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の太陽電池モジュールの一部を示す説明図である。まず、太陽電池モジュールM(以下、単にモジュールMともいう)の構成について説明する。
【0017】
このモジュールMは、複数枚の太陽電池セル7(以下、単にセル7ともいう)が一方向に並んで設けられていて、これら複数枚のセル7の両側に電極31が設けられている。これらセル7及び電極31は、その両面から封止部材32,33によって挟まれ、モジュールMは一体のシート状を成している。両面の封止部材32,33は、可撓性を有していて、さらに、この内の少なくとも上面側(太陽光が入射する側)は、太陽光を透過させるフィルム状の樹脂部材から成り、セル7及び電極31の表面及び裏面に密着した状態となっている。
【0018】
各セル7は、導電性を有する導電性基板7a上に、下部電極層7b、半導体層7c及び上部電極層7dがこの順で積層されて構成されている。
隣り合うセル7,7同士は、その縁部7e,7eにおいて重ね合わされた状態にあり、この重ね合わされた縁部7e,7eにおいて電気的に導通した状態となる。なお、この重ね合わされた縁部7e,7eを、重ね合わせ部8と呼ぶ。
縁部7e,7eを電気的に導通した状態とするために、本発明では、重ね合わされる縁部7e,7eの間に、導電性を有している導電部5が介在している。導電部5の具体的な構成については、後に説明する。
【0019】
各セル7は、その配列方向と平行な方向が短尺方向となり、当該配列方向と直交する方向が長尺方向となる短冊形状(細長い薄板形状)を有していて、長尺側にある縁部7eによって前記重ね合わせ部8が構成される。なお、配列方向両端部におけるセル7それぞれは、電極31と電気的に接続されている。
【0020】
以上のような複数枚のセル7を有するモジュールMを製造するためには、後にも説明するが、図5(a)に示しているように、一方向(図5(a)では左右方向)に向かってモジュールMが順次長くなるように、隣り合うセル7,7の縁部7e,7e同士を重ね合わせ、前記導電部5によって、これら縁部7e,7e同士を電気的に接続させればよい。
なお、図5(a)では、既に複数枚(7枚)のセル7が接続されていて、これらを半製品20と呼ぶ。そして、図5(a)は、この半製品20に対して、上から新たにセル7を接続しようとしている状態を示していて、この新たなセル7を接続セル11と呼び、半製品20側に存在していて接続セル11が接続されるセルを被接続セル21と呼ぶ。
【0021】
〔導電部5の具体的な構成(第一実施形態)〕
図2は、導電部5の具体的な構成を説明する斜視図である。このモジュールMは、半製品20側にある被接続セル21の縁部7eの上面側に、導電部5を介して、接続セル11の縁部7eの裏面側を重ね合わせるようにして、構成される。
そして、本実施形態では、被接続セル21の縁部7eに、導電部5としてバネ片15が部分的に設けられていて、バネ片15は被接続セル21の縁部7eに沿って複数形成されている。このバネ片15は、電気的に導通させる相手側となる接続セル11の縁部7eに対してバネ力を生じさせる構成である。
すなわち、被接続セル21の縁部7eに接続セル11の縁部7eを重ね合わせれば、被接続セル21の縁部7eに設けられているバネ片15は、接続セル11の縁部7eから重ね合わせ方向の押圧力を受け、この押圧力によって弾性変形して当該押圧力に抗するバネ力(復元力)が発生した状態となる。そして、バネ片15はこのバネ力が発生した状態で接続セル11の縁部7eに当接し、被接続セル21の縁部7eと接続セル11の縁部7eとを電気的に導通させることができる。
【0022】
バネ片15の構成についてさらに説明する。被接続セル21の縁部7eに切り込みCが形成されることにより、当該縁部7eの一部が上面側に折れ曲がり可能となり、この一部がバネ片15となる。バネ片15の基部15aを塑性変形させることで上面側に折れ曲がっている。本実施形態では、切り込みCが被接続セル21の短尺方向及び長尺方向のL字形に形成され、上面側に折れ曲がって片持ち状態となったバネ片15が構成されている。
また、切り込みCは、被接続セル21の上面から、図1に示している導電性基板7aの裏面にまで達していて、被接続セル21の全厚さにわたって形成されていて、この導電性基板7aは、金属製(例えばステンレス)の薄板から形成されている。このため、バネ片15全体としては、基部15aにおいて塑性変形していることで上面側に折れ曲がっているが、被接続セル21の表裏方向に弾性変形可能な構成を有している。
【0023】
以上より、バネ片15は被接続セル21の縁部7eの一部から成り、基部15aで繋がっているため、バネ片15と被接続セル21とは電気的に導通した状態にある。そして、被接続セル21の縁部7eと接続セル11の縁部7eとが重ね合わされた状態で、被接続セル21に形成されている各バネ片15は、接続セル11の縁部7eの長手方向に沿って部分的に当該縁部7eの裏面に当接し、本実施形態ではさらに、封止部材32,33によって厚さ方向に挟まれて縁部7e,7e同士が押し付けられた状態となるため、各バネ片15は、接続セル11の縁部7eからより大きな押圧力を受けることで、この押圧力に抗する力により当該接続セル11の縁部7eに当接する。そして、各バネ片15は、重ね合わせ方向に弾性変形して復元力が生じている状態となる。これにより、バネ片15が、接続セル11の縁部7eの裏面に密に当接した状態が得られる。特に封止部材32,33によって縁部7e,7e同士が押し付けられるため、この当接した状態が確実に得られる。このため、従来のように半田を用いなくても、接続セル11と被接続セル21との縁部7e,7e同士が電気的に導通した状態が得られる。
【0024】
また、図6(a)は、重ね合わせ部8をセル7の長尺方向に見た断面図であり、この図に示しているように、被接続セル21の縁部7eにはバネ片15が形成されているのに対して、接続セル11の縁部7eには、このバネ片15が嵌る嵌合部17が形成されている。本実施形態では、嵌合部17は、接続セル11の縁部7eの裏面が一部切り欠かれて形成された凹部から成る。この嵌合部17にバネ片15が嵌ることで、当該バネ片15が形成されている被接続セル21と、接続セル11との位置ずれが防止される。
なお、前記嵌合部17は、接続セル11の縁部7eに沿って長く形成された凹溝であってもよく、この場合、この凹溝に複数のバネ片15が嵌合する。これに対して、嵌合部17は、一つのバネ片15が嵌合する独立した凹部であってもよい。
【0025】
本実施形態では、バネ片15が被接続セル21の縁部7eに設けられている場合を説明したが、これとは反対に、図示しないが、接続セル11の縁部7eに、下方へ折り曲げられたバネ片15が設けられていてもよく、この場合、嵌合部17は被接続セル21の縁部7eに形成される。
【0026】
〔導電部5の具体的な構成(第二実施形態)〕
図3は、導電部5の具体的な構成を説明する斜視図である。この太陽電池モジュールMは、前記第一実施形態と同様に、半製品20側にある被接続セル21の縁部7eの上面側に、導電部5を介して、接続セル11の縁部7eの裏面側を重ね合わせるようにして、構成される。
そして、本実施形態では、被接続セル21の縁部7eに、導電部5として突起25が部分的に設けられている。突起25は、当該突起25が形成されている被接続セル21の縁部7eから、電気的に導通させる相手側となる接続セル11の縁部7eへ、突出している構成である。そして、突起25は縁部7eに沿って複数形成されている。
【0027】
すなわち、図3に示しているように、被接続セル21の縁部7eにおいて、例えばパンチ(図示せず)によって裏面から表面へと、有底の穴を形成することにより、当該縁部7eの一部が上面側に突出した状態となり、この一部が突起25となる。
また、突起25は、図1に示している導電性基板7aを塑性変形させることにより構成されていて、また、この導電性基板7aは、金属製(例えばステンレス)の薄板から形成されている。このため、突起25は弾性変形可能な構成を有している。
したがって、被接続セル21の縁部7eに接続セル11の縁部7eを重ね合わせれば、被接続セル21の縁部7eに設けられている突起25は、接続セル11の縁部7eから重ね合わせ方向の押圧力を受け、この押圧力によって弾性変形して当該押圧力に抗するバネ力(復元力)が発生した状態となる。そして、突起25はこのバネ力が発生した状態で接続セル11の縁部7eに当接し、被接続セル21の縁部7eと接続セル11の縁部7eとを電気的に導通させることができる。
【0028】
突起25は被接続セル21の縁部7eの一部から成るため、突起25と被接続セル21とは電気的に導通した状態にある。そして、被接続セル21の縁部7eと接続セル11の縁部7eとが重ね合わされた状態で、被接続セル21に形成されている各突起25は、接続セル11の縁部7eの長手方向に沿って部分的に当該縁部7eの裏面に当接し、本実施形態ではさらに、封止部材32,33によって厚さ方向に挟まれて縁部7e,7e同士が押し付けられた状態となるため、各突起25は、接続セル11の縁部7eからより大きな押圧力を受けることで、この押圧力に抗する力により当該接続セル11の縁部7eに当接する。そして、各突起25は、重ね合わせ方向に僅かではあるが弾性変形して復元力が生じている状態となる。
【0029】
また、図6(b)は、重ね合わせ部8をセル7の長尺方向に見た断面図であり、この図
に示しているように、接続セル11の縁部7eには、前記突起25が嵌る嵌合部27が形成されている。本実施形態では、嵌合部27は、接続セル11の縁部7eを、例えばパンチ(図示せず)により裏面から表面へと有底の穴を形成することにより得られた窪み部から成る。
この実施形態の場合、被接続セル21の縁部7eと接続セル11の縁部7eとが重ね合わされた状態で、嵌合部27に突起25が嵌ることで当該突起25は縮小するように弾性変形して、拡大方向に復元力が生じている状態となる。すなわち、突起25と嵌合部27とで、機械的な締まり嵌めの状態が得られる。
【0030】
このように、弾性復元力によって突起25が、接続セル11の縁部7eの裏面側に密に当接した状態が得られるため、従来のように半田を用いなくても、接続セル11と被接続セル21との縁部7e,7e同士が電気的に導通した状態が得られる。
さらに、嵌合部27に突起25が嵌ることで、当該突起25が形成されている被接続セル21と、接続セル11との位置ずれが防止される。
【0031】
本実施形態では、突起25が被接続セル21の縁部7eにおいて、接続セル11へ向かって突出して設けられている場合を説明したが、これとは反対に、図示しないが、突起25が接続セル11の縁部7eにおいて被接続セル21へ向かって突出して設けられていてもよく、この場合、嵌合部27は被接続セル21に形成される。
【0032】
〔導電部5の具体的な構成(第三実施形態)〕
図4(a)は、導電部5の具体的な構成を説明する断面図であり、重ね合わせ部8をセル7の短尺方向に見た図である。この太陽電池モジュールMは、第一及び第二実施形態と同様に、半製品20側にある被接続セル21の縁部7eの上面側に、導電部5を介して、接続セル11の縁部7eの裏面側を重ね合わせるようにして、構成される。
そして、本実施形態では、導電部5として、接続セル11及び被接続セル21とは別体である板バネ35が、縁部7e,7e間に設けられている。この板バネ35は、重ね合わされる縁部7e,7eの長手方向(図4では左右方向)に沿って設けられ、凹凸波が連続している形状を有している。本実施形態では、縁部7e,7e毎に、単一の板バネ35が当該縁部7e,7eの長手方向に沿って設けられている。
【0033】
板バネ35は、導電性を有する材質から構成されていて、例えば銅製等の金属から成る。なお、被接続セル21の表面側は、例えばITO等の導電性を有する上部電極層7d(図1参照)を有し、接続セル11の裏面側は、金属製(例えばステンレス)等の導電性を有する導電性基板7a(図1参照)を有しているので、両者間に導電性を有する板バネ35が介在することで、接続セル11と被接続セル21との間で、電気的に導通した状態が得られる。
また、板バネ35は、重ね合わされる縁部7e,7eの幅以下の寸法を有する細長い薄板金属から成る。なお、重ね合わされる縁部7eの幅寸法は、例えば1ミリ程度である。
【0034】
そして、板バネ35は金属製から成り、全体が凹凸波形状であるため、セル7の厚さ方向に弾性変形可能な構成を有している。したがって、この板バネ35を間に挟んで被接続セル21の縁部7eに接続セル11の縁部7eを重ね合わせれば、板バネ35は、被接続セル21の縁部7eから及び接続セル11の縁部7eから重ね合わせ方向の押圧力を受け、この押圧力によって弾性変形して当該押圧力に抗するバネ力(復元力)が発生した状態となる。そして、板バネ35はこのバネ力が発生した状態で被接続セル21の縁部7e及び接続セル11の縁部7eに当接し、被接続セル21の縁部7eと接続セル11の縁部7eとを電気的に導通させることができる。
【0035】
以上より、被接続セル21の縁部7eと接続セル11の縁部7eとが重ね合わされた状態で、両者間に設けられている板バネ35は、接続セル11の縁部7eの長手方向に沿って部分的に当該縁部7eの裏面に当接し、かつ、被接続セル21の縁部7eの長手方向に沿って部分的に当該縁部7eの表面に当接する。さらに、図4(b)に示しているように、本実施形態ではさらに、封止部材32,33によってセル7の厚さ方向に挟まれて縁部7e,7e同士が押し付けられた状態となることで、板バネ35は、被接続セル21の縁部7e及び接続セル11の縁部7eからより大きな押圧力を受けることで、この押圧力に抗する力により当該被接続セル21の縁部7e及び当該接続セル11の縁部7eに当接する。そして、板バネ35は、重ね合わせ方向に弾性変形して弾性復元力が生じている状態となる。
【0036】
これにより、板バネ35が、接続セル11の縁部7e及び被接続セル21の縁部7eの双方に密に当接した状態が得られるため、従来のように半田を用いなくても、接続セル11と被接続セル21との縁部7e,7e同士が電気的に導通した状態が得られる。
【0037】
また、図6(c)は、重ね合わせ部8をセル7の長尺方向に見た断面図である。被接続セル21の縁部7e及び接続セル11の縁部7eの内の双方(又は一方)には、板バネ35が嵌る嵌合部37が形成されていてもよい。本実施形態では、嵌合部37は双方に形成されていて、被接続セル21の縁部7eの表面及び接続セル11の縁部7eの裏面が、一部切り欠かれて形成された凹溝から成る。この嵌合部37に板バネ35の凸部分が嵌ることで、当該板バネ35、被接続セル21、及び、接続セル11の位置ずれが防止される。
【0038】
なお、被接続セル21の縁部7eの表面には嵌合部37が形成されておらず、平坦な上部電極層7d(図1参照)そのままであってもよい。この場合には、被接続セル21の縁部7eの表面に嵌合部37を形成することにより、その形成部以外の領域、すなわち、太陽光を受ける面にもクラック等が発生するおそれを回避することができる。
【0039】
〔太陽電池モジュールMの製造方法〕
前記各実施形態に係るモジュールMの製造方法について説明する。図5(a)に示しているように、セル7の縁部7e,7e同士を重ね合わせた状態としながら、次々とセル7を複数枚並べて製造する。具体的には、第一の封止部材32上で、各縁部同士7e,7eを重ね合わせることでセル7を複数枚並べる。
【0040】
そして、このセル7を複数枚並べる際に、前記各実施形態の導電部5を介して、縁部7e,7e同士を重ね合わせ、必要な全てのセル7を第一の封止部材32上で並べ終えると、その後、図5(b)に示しているように、これら複数枚のセル7を、第一の封止部材32と第二の封止部材33とで挟んで一体化する。また、電極31(図1参照)も第一の封止部材32上に設けられ、当該電極31もセル7と一緒に封止部材32,33によって一体化される。なお、前記導電部5は、各実施形態で説明したバネ片15、突起25又は板バネ35であり、導電性を有し、縁部同士7e,7eを重ね合わせて縁部7eから押圧力を受けるとこの押圧力に抗する力により当該縁部7eに当接するものである。
これにより、図1に示しているように、セル7及び電極31は、その両面から封止部材32,33によって挟まれ、モジュールMは一体となるシート状に形成される。
【0041】
封止部材32,33は、可撓性を有し太陽光を透過させるフィルム状の樹脂部材であり、柔軟性と弾性との一方又は双方を備えた材質がよく、例えばEVA樹脂製である。そして、図4(b)に示しているように、封止部材32,33同士が直接、当接する周囲部32a,33aの合わせ面を溶融することにより、両封止部材32,33を一枚化させる。また、封止部材32,33は、必要な全てが並べられた複数枚のセル7の全体輪郭形状よりも大きい輪郭形状を有していて、封止部材32,33によって複数枚のセル7全体が封止されることで、モジュールMは一体化されている。
【0042】
以上の製造方法によって得られるモジュールMによれば、セル7を複数枚並べる際に、各実施形態の導電部5を介して縁部7e,7e同士を重ね合わせるので、この導電部5がセル7の縁部7eに密に当接した状態が得られる。このように導電部5による機械的な接続により、従来の半田を用いなくても、セル7の縁部7e,7e同士が電気的に導通したモジュールMを得ることができる。そして、半田を用いる必要がないので、常温での作業が可能となる。
しかも、複数枚のセル7は、第一の封止部材32上で並べられ、その後、第二の封止部材33によって挟まれて一体化されるので、これら封止部材32,33によって、セル7同士の構造的な接続が成され、かつ、複数枚のセル7の全体形状の保持が実現される。
【0043】
そして、導電部5が、セル7の厚さ方向に弾性変形した状態で封止部材32,33によって挟まれていることにより、両側のセル7,7の縁部7e,7eの隙間g(例えば図4(b)参照)が変化したり、隙間gが位置によって様々であっても、導電部5が弾性的に変形することで当該隙間gの大小に応じて追従することができ、電気的に繋がった状態が確実に得られる。特に、本実施形態のモジュールMは、セル7自身も非常に薄く、封止部材32,33も薄く可撓性を有するため、様々な方向に柔軟に湾曲することができる構成となる。このモジュールMが湾曲すると、セル7,7間の前記隙間gが変化するおそれがあるが、本発明の導電部5によれば、この変化に追従して電気的に繋がった状態が維持される。
【0044】
本発明は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。例えば、モジュールMに含まれるセル7の枚数は変更自在であり、また、電極31の形態は図1に示した以外の構成であってもよく、端に位置するセル7上に形成された金属箔等であってもよい。
また、図3に示している突起25は、二段階に盛り上がった形状であるが、一段のみの形状であってもよい。また、図6に示している嵌合部は、接続セル7の裏面の一部を切り欠いて形成した場合を説明したが、導電部5と嵌合する凸条(図示せず)を当該裏面に設けることにより形成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
5:導電部、 7:太陽電池セル、 7e:縁部、 15:バネ片、 17:嵌合部、 25:突起、 27:嵌合部、 32:第一の封止部材、 32:第二の封止部材、 35:板バネ、 37:嵌合部、 M:太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の太陽電池セルを有し、当該太陽電池セルの縁部同士が重ね合わされ電気的に導通している太陽電池モジュールであって、
重ね合わされる前記縁部の間に介在しかつ導電性を有した導電部を備え、
前記導電部は、前記縁部同士が重ね合わされた状態で前記縁部から押圧力を受けると、この押圧力に抗する力により当該縁部に当接し、前記太陽電池セル同士を電気的に導通させることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記導電部は、重ね合わされる前記縁部の一方と電気的に導通した状態で設けられ、前記縁部の他方に対してバネ力を生じさせるバネ片から成る請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記導電部は、重ね合わされる前記縁部の一方と電気的に導通した状態で設けられ、当該一方から他方へ突出している突起から成る請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記導電部は、前記太陽電池セルとは別体であって、重ね合わされる前記縁部の長手方向に沿って設けられ、凹凸形状が連続している板バネから成る請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
重ね合わされる前記縁部に、前記導電部が嵌る嵌合部が形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
太陽電池セルの縁部同士を重ね合わせた状態で当該太陽電池セルを複数枚並べて太陽電池モジュールを製造する製造方法であって、
第一の封止部材上で、前記縁部同士を重ね合わせた状態で太陽電池セルを複数枚並べ、かつ、この並べる際に、前記縁部同士を重ね合わせて前記縁部から押圧力を受けるとこの押圧力に抗する力により当該縁部に当接する導電性を有した導電部を介して、前記縁部同士を重ね合わせ、
その後、前記第一の封止部材上に並べられた前記複数枚の太陽電池セルを、当該第一の封止部材と第二の封止部材とで挟んで一体化することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−77174(P2011−77174A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225149(P2009−225149)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】