説明

太陽電池モジュール用バックシート及び太陽電池モジュール

【課題】充填剤層との接着面に空気等が残存するのを防止し、充填剤層との接着性を向上することができる太陽電池モジュール用バックシート及びこれを用いた太陽電池モジュールの提供を目的とする。
【解決手段】本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、最表面に表面側樹脂フィルムを備え、この表面側樹脂フィルムの表面に複数の凸部を有している。当該太陽電池モジュール用バックシートは、上記表面側樹脂フィルムの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.85μm以上2.65μm以下であることが好ましい。当該太陽電池モジュール用バックシートは、上記表面側樹脂フィルムの表面の最大谷深さ(Rv)が10μm以上40μm以下であることが好ましい。当該太陽電池モジュール用バックシートは、上記表面側樹脂フィルム中に顔料を分散含有しているとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填剤層との接着性に優れる太陽電池モジュール用バックシート及びこれを用いた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化等の環境問題に対する意識の高まりから、クリーンエネルギー源としての太陽光発電が注目され、種々の形態からなる太陽電池が開発されている。この太陽電池は、一般的には直列又は並列に配線された複数枚の太陽電池セルをパッケージングし、ユニット化した複数の太陽電池モジュールから構成されている。
【0003】
かかる太陽電池モジュールは、屋外で長期間使用し得る十分な耐久性、耐候性等が要求される。図5に示すように、一般的な太陽電池モジュール51の具体的な構造としては、ガラス等からなる透光性基板52と、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂からなる表面側充填剤層53と、光起電力素子としての複数枚の太陽電池セル54と、上記表面側充填剤層53と同様の裏面側充填剤層55と、太陽電池モジュール用バックシート56とがこの順に積層されている。
【0004】
また、太陽電池モジュール用バックシート56としては、ガスバリア層57の表面及び裏面に一対の合成樹脂層58を積層した多層構造体等が採用されている。具体的な従来の太陽電池モジュール用バックシート56としては、金属酸化物を蒸着した樹脂フィルムの両面にポリエチレンテレフタレートフィルムが積層される構造のもの(特開2002−100788号公報等参照)等が開発されている。
【0005】
かかる太陽電池モジュールの製造方法としては、一般的には、透光性基板52、表面側充填剤層53、複数枚の太陽電池セル54、裏面側充填剤層55及び太陽電池モジュール用バックシート56を重畳し、真空度を高めつつ圧着する真空加熱ラミネーション法等が採用されている。
【0006】
しかしながら、従来の太陽電池モジュール用バックシート56は、表面側が略平面状に形成されている。そのため、従来の太陽電池モジュール用バックシート56によると、裏面側充填剤層55に重畳され、真空加熱ラミネーション法等によって接着される際に、この裏面側充填剤層55との接着面に閉空間を生じ、この閉空間に存在する空気を除去するための経路を確保できないおそれが存在している。そのため、かかる太陽電池モジュール用バックシート56は、接着面に形成される閉空間に空気等が残存し、これにより接着性が低下し、太陽電池モジュールの耐久性及び寿命の低下を招来するという不都合を抱えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−100788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、充填剤層との接着面に空気等が残存するのを防止し、充填剤層との接着性を向上することができる太陽電池モジュール用バックシート及びこれを用いた太陽電池モジュールの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、
最表面に表面側樹脂フィルムを備え、この表面側樹脂フィルムの表面に複数の凸部を有する太陽電池モジュール用バックシートである。
【0010】
当該太陽電池モジュール用バックシートは、表面側樹脂フィルムの表面に複数の凸部を有している。これにより、当該太陽電池モジュール用バックシートは、重畳される裏面側充填剤層との間の真空度を高めつつこの裏面側充填剤層と接着される際に、この裏面側充填剤層との間に存在する空気等を複数の凸部によって形成される経路から効果的に除去することができる。その結果、当該太陽電池モジュール用バックシートは、裏面側充填剤層と接着された状態で、この裏面側充填剤層との接着面に空気等が残存するのを防止することができ、ひいては裏面側充填剤層との接着性を向上させることができる。
【0011】
当該太陽電池モジュール用バックシートは、上記表面側樹脂フィルムの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.85μm以上2.65μm以下であるとよい。このように、表面側樹脂フィルムの表面の算術平均粗さ(Ra)を上記範囲とすることで、接着される裏面側充填剤層との間に閉空間が形成されるおそれを効果的に防止し、空気等を好適に除去することができる。
【0012】
当該太陽電池モジュール用バックシートは、上記表面側樹脂フィルムの表面の最大谷深さ(Rv)が10μm以上40μm以下であるとよい。このように、表面側樹脂フィルムの表面の最大谷深さ(Rv)を上記範囲とすることで、接着される裏面側充填剤層との間に閉空間が形成されるおそれを効果的に防止し、空気等を好適に除去することができる。
【0013】
当該太陽電池モジュール用バックシートは、上記表面側樹脂フィルムの表面の十点平均粗さ(Rz)が20μm以上70μm以下であるとよい。このように、表面側樹脂フィルムの表面の十点平均粗さ(Rz)を上記範囲とすることで、接着される裏面側充填剤層との間に閉空間が形成されるおそれを効果的に防止し、空気等を好適に除去することができる。
【0014】
当該太陽電池モジュール用バックシートは、上記表面側樹脂フィルムの表面の60°光沢度が50以上80以下であるとよい。このように、光沢度を上記範囲とすることで、表面側樹脂フィルムの表面の凸形状が好適に保たれ、空気等を好適に除去し、裏面側充填剤層との接着性を向上することができる。
【0015】
当該太陽電池モジュール用バックシートは、上記表面側樹脂フィルム中に顔料を分散含有しているとよい。このように表面側樹脂フィルム中に顔料を分散含有することで、表面側樹脂フィルムひいては当該太陽電池モジュール用バックシートの耐熱性、熱的寸法安定性、耐候性、強度、経年劣化防止性等を向上することができる。また、当該太陽電池モジュール用バックシートは、最表面側に配設される表面側樹脂フィルム中に白色顔料を分散含有することで、太陽電池セルを透過した光線を太陽電池セル側に反射させる機能が付加され、より発電効率を高めることができる。
【0016】
当該太陽電池モジュール用バックシートは、上記表面側樹脂フィルムが主成分としてポリオレフィン系樹脂を含有しているとよい。かかるポリオレフィン系樹脂は、裏面側充填剤層に通常使用されるエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)との接着性に優れ、かつ良好な耐加水分解性を有している。その結果、当該太陽電池モジュール用バックシートは、太陽電池モジュールの耐久性を向上し、社会的に要請されている太陽電池モジュールの使用期間の長期化を促進することができる。
【0017】
当該太陽電池モジュール用バックシートは、表面側樹脂フィルムの形成材料として用いられるポリオレフィン系樹脂がポリエチレンであるとよい。かかるポリエチレンは、太陽電池モジュールの裏面側充填剤層に通常使用されるエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)との接着性が高く、加えて耐加水分解性、耐熱性、耐候性等の諸機能面及び価格面のバランスが良好である。
【0018】
当該太陽電池モジュール用バックシートは、上記表面側樹脂フィルムの裏面側に、耐電圧性フィルム及び裏面側樹脂フィルムをこの順に備えるとよい。これにより、当該太陽電池モジュール用バックシートに一定の厚みを持たせることができ、当該太陽電池モジュール用バックシートの強度、耐候性、耐熱性等の基本性能を高めつつ、対応システム電圧の低下を防止することができる。また、当該太陽電池モジュール用バックシートは、一定の厚みを有することにより、取扱容易性を向上させることができる。なお、「システム電圧」とは、直列に接続される複数の太陽電池モジュールを備える太陽電池システムにおける標準動作条件での最大出力点の電圧を意味する。
【0019】
当該太陽電池モジュール用バックシートは、上記表面側樹脂フィルムの裏面側に、バリア性フィルム及び裏面側樹脂フィルムをこの順で備えるとよい。太陽電池モジュールは、通常屋外で使用されるものであり、その材質や構造において耐久性及び耐候性が要求される。特に、太陽電池モジュール用バックシートについては、太陽電池素子が水分に弱いこともあり、耐候性とともに水蒸気透過率が小さいことが重要であり、バリア性に優れていることが好ましい。当該太陽電池モジュール用バックシートは、バリア性フィルムを有することで水蒸気バリア性を向上することができ、ひいては太陽電池モジュールの耐久性、耐候性を向上させ、使用期間の長期化を促進することができる。
【0020】
当該太陽電池モジュール用バックシートは、上記表面側樹脂フィルムの裏面側に、耐電圧性フィルム、バリア性フィルム及び裏面側樹脂フィルムをこの順で備えるとよい。当該太陽電池モジュール用バックシートは、バリア性フィルムを有することでバリア性が向上し、太陽電池モジュールの耐久性、耐候性を向上させ、使用期間の長期化を促進することができる。加えて、当該太陽電池モジュール用バックシートは、耐電圧性フィルムを有することにより当該太陽電池モジュール用バックシートの耐電圧性が向上し、その耐電圧性フィルムの厚さの制御によって太陽電池システムのシステム電圧の高電圧化に効果的に対応することができる。当該太陽電池モジュール用バックシートは、表面側樹脂フィルムとバリア性フィルムとの間に耐電圧性フィルムを備えているので、高い耐電圧性を有し、高いシステム電圧の太陽電池システム用の太陽電池モジュールに対応することができる。
【0021】
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、
透光性基板と、表面側充填剤層と、光起電力素子としての太陽電池セルと、裏面側充填剤層と、当該太陽電池モジュール用バックシートとがこの順に積層されている太陽電池モジュールである。
【0022】
当該太陽電池モジュールは、当該太陽電池モジュール用バックシートの表面側樹脂フィルムの表面に複数の凸部を有している。これにより、当該太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール用バックシートと裏面側充填剤層との間の真空度を高めつつこの太陽電池モジュール用バックシートと裏面側充填剤層とを接着する際に、太陽電池モジュール用バックシートと裏面側充填剤層との間に存在する空気等を複数の凸部によって形成される経路から効果的に除去することができる。その結果、当該太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール用バックシートが裏面側充填剤層と接着された状態で、太陽電池モジュール用バックシートと裏面側充填剤層との接着面に空気等が残存するのを防止することができ、ひいては太陽電池モジュール用バックシートと裏面側充填剤層との接着性を向上させることができる。
【0023】
なお、本発明において、「表面」とは、太陽電池モジュール及びこれを構成する太陽電池モジュール用バックシートの受光面側を意味する。「裏面」とは、上記受光面側と反対側の面を意味する。「算術平均粗さ(Ra)」、「最大谷深さ(Rv)」及び「十点平均粗さ(Rz)」は、JIS B0601−2001に準じた値である。「光沢度」とは、日本電色工業社製「VG2000」を用いて測定される値である。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、充填剤層との間に存在する空気等を効果的に除去しつつこの充填剤層と接着することができる。従って、本発明の太陽電池モジュール用バックシート及びこれを用いた太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール用バックシートと充填剤層との接着面に空気等が残存するのを防止することができ、ひいては太陽電池モジュール用バックシートと充填剤層との接着性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュール用バックシートを示す模式的断面図である。
【図2】図1の太陽電池モジュール用バックシートとは異なる形態に係る太陽電池モジュール用バックシートを示す模式的断面図である。
【図3】図1及び図2の太陽電池モジュール用バックシートとは異なる形態に係る太陽電池モジュール用バックシートを示す模式的断面図である。
【図4】図3の太陽電池モジュール用バックシートを用いた太陽電池モジュールを示す模式的断面図である。
【図5】従来の一般的な太陽電池モジュールを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0027】
図1の太陽電池モジュール用バックシート1は、表面側樹脂フィルム2と、耐電圧性フィルム3と、裏面側樹脂フィルム4とを接着層5を介して表面側から裏面側にこの順で備える積層体である。
【0028】
表面側樹脂フィルム2は、太陽電池モジュール用バックシート1と裏面側充填剤層(図示せず)とを加熱圧着する際に溶融する樹脂フィルムである。表面側樹脂フィルム2は、合成樹脂を主成分として形成されている。この表面側樹脂フィルム2の主成分の合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。なかでも、表面側樹脂フィルム2の主成分の合成樹脂としては、太陽電池モジュールの裏面側充填剤層に通常使用されるエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)との接着性及び耐加水分解性が良好なポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。当該太陽電池モジュール用バックシート1は、表面側樹脂フィルム2の主成分としてポリオレフィン系樹脂を用いることにより、太陽電池モジュールの耐久性を向上し、社会的に要請されている太陽電池モジュールの使用期間の長期化を促進することができる。
【0029】
このポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(例えば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン、エチレン等のオレフィンと他の単量体との共重合体、例えばエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等)、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体(例えばエチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等)、アイオノマー樹脂などが挙げられる。これらの中でも、裏面側充填剤層との接着性、耐加水分解性、耐熱性、耐候性等の諸機能面及び価格面のバランスが良好なポリエチレンや、裏面側充填剤層との接着性に加えて耐熱性、強度、耐候性、耐久性、ガスバリア性等の機能性に優れる環状ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0030】
上記環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えばシクロペンタジエン(及びその誘導体)、ジシクロペンタジエン(及びその誘導体)、シクロヘキサジエン(及びその誘導体)、ノルボルナジエン(及びその誘導体)等の環状ジエンを重合させてなるポリマーや、当該環状ジエンとエチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン系モノマーの1種又は2種以上とを共重合させてなるコポリマー等が挙げられる。これらの環状ポリオレフィン系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるシクロペンタジエン(及びその誘導体)、ジシクロペンタジエン(及びその誘導体)又はノルボルナジエン(及びその誘導体)等の環状ジエンのポリマーが特に好ましい。
【0031】
なお、表面側樹脂フィルム2の形成材料としては、上記合成樹脂を1種又は2種以上混合して使用することができる。また表面側樹脂フィルム2の形成材料中には、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性等を改良、改質する目的で、種々の添加剤等を混合することができる。この添加剤としては、例えば滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料等が挙げられる。また、表面側樹脂フィルム2は、単層構造でもよく、2層以上の多層構造でもよい。
【0032】
表面側樹脂フィルム2の厚さ(平均厚さ)の下限としては、25μmが好ましく、50μmが特に好ましい。一方、表面側樹脂フィルム2の厚さ(平均厚さ)の上限としては、125μmが好ましく、100μmが特に好ましい。表面側樹脂フィルム2の厚さが上記下限未満であると、当該太陽電池モジュール用バックシート1の積層の際の取扱いが困難になり、また顔料を含有させた場合の着色及びその機能性が不十分になる等の不都合が発生する。逆に、表面側樹脂フィルム2の厚さが上記上限を超えると、太陽電池モジュールの薄型化及び軽量化の要請に反することになる。
【0033】
表面側樹脂フィルム2中に顔料を分散含有するとよい。このように表面側樹脂フィルム2中に顔料を分散含有することで、表面側樹脂フィルム2ひいては当該太陽電池モジュール用バックシート1の耐熱性、耐候性、耐久性、熱的寸法安定性、強度等の諸特性を向上することができる。また、表面側樹脂フィルム2中に白色顔料を分散含有することで、太陽電池セルを透過した光線を反射させる機能が付加され、より発電効率を高めることができる。さらに、表面側樹脂フィルム2中に黒色顔料等を分散含有し、表面側樹脂フィルム2を種々の色に着色することで、太陽電池モジュールの意匠性を向上することができる。
【0034】
この白色顔料としては、特に限定されるものではなく、例えば炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸鉛、硫酸バリウムなどを使用することができる。なかでも、合成樹脂層を形成する樹脂材料中への分散性に優れ、合成樹脂層の耐久性、耐熱性、強度等の向上効果が比較的大きい炭酸カルシウムが好ましい。この炭酸カルシウムは、カルサイト、アラゴナイト、バテライトなどの結晶タイプがあり、どの結晶タイプでも使用できる。この炭酸カルシウムは、ステアリン酸、ドデジシルベンゼンスルホン酸ソーダ、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等で表面処理されていてもよく、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン等の不純物が10%以下程度含まれていてもよい。その他の顔料としては、カーボンブラック等の黒色顔料、ウルトラマリン、紺青等の青色顔料、べんがら(酸化鉄赤)、カドミウムレッド、モリブデンオレンジ等の赤色顔料、メタリック光沢を与える金属粉顔料などが挙げられ、太陽電池モジュールの意匠性の向上に寄与する。
【0035】
上記顔料の平均粒子径は、100nm以上30μm以下が好ましく、300nm以上3μm以下が特に好ましい。顔料の平均粒子径が上記下限より小さいと、凝集等によりフィルム中への均一な分散が困難になるおそれがある。一方、顔料の平均粒子径が上記上限を超えると、上述の表面側樹脂フィルム2に対する耐熱性等の諸特性向上効果が低下するおそれがある。
【0036】
上記顔料の含有量としては、8質量%以上30質量%以下が好ましい。顔料の含有量が上記下限より小さいと、表面側樹脂フィルム2の耐久性、耐熱性、強度等の向上効果が小さくなる。一方、顔料の含有量が上記上限を超えると、フィルム中での顔料の分散性が低下し、表面側樹脂フィルム2の強度の低下を招来するおそれがある。
【0037】
表面側樹脂フィルム2は複数の凸部を備える表面6を有している。
【0038】
表面6の算術平均粗さ(Ra)としては、特に限定されないが、例えば0.85μm以上2.65μm以下が好ましく、1μm以上2.5μm以下がより好ましく、1.15μm以上2.35μm以下が特に好ましい。当該太陽電池モジュール用バックシート1は、表面6の算術平均粗さ(Ra)が上記上限を超えると、接着される裏面側充填剤層との間に空気等が残存するおそれが高くなるが、これは真空加熱ラミネート法等による溶融段階で、表面6に形成された凹状領域に空気等が残存するためであると考えられる。一方、表面6の算術平均粗さ(Ra)が上記下限未満であると、接着される裏面側充填剤層との間に空気等が残存するおそれが高くなるが、これは太陽電池モジュール用バックシート1が有する可撓性等により、表面6と裏面側充填剤層との間に閉空間が形成されるためであると考えられる。これに対し、表面6の算術平均粗さ(Ra)が上記範囲内であると、接着される裏面側充填剤層との間に閉空間が形成されるおそれを効果的に防止し、空気等を好適に除去することができる。
【0039】
表面6の最大谷深さ(Rv)としては、特に限定されないが、例えば10μm以上40μm以下が好ましく、15μm以上35μm以下がより好ましく、20μm以上30μm以下が特に好ましい。当該太陽電池モジュール用バックシート1は、表面6の最大谷深さ(Rv)が上記上限を超えると、接着される裏面側充填剤層との間に空気等が残存するおそれが高くなるが、これは真空加熱ラミネート法等による溶融段階で、表面6に形成された凹状領域に空気等が残存するためであると考えられる。一方、当該太陽電池モジュール用バックシート1は、表面6の最大谷深さ(Rv)が上記下限未満であると、接着される裏面側充填剤層との間に空気等が残存するおそれが高くなるが、これは太陽電池モジュール用バックシート1が有する可撓性等により、表面6と裏面側充填剤層との間に閉空間が形成されるためであると考えられる。これに対し、表面6の最大谷深さ(Rv)が上記範囲内であると、接着される裏面側充填剤層との間に閉空間が形成されるおそれを効果的に防止し、空気等を好適に除去することができる。
【0040】
表面6の十点平均粗さ(Rz)としては、特に限定されないが、例えば20μm以上70μm以下が好ましく、25μm以上65μm以下がより好ましく、30μm以上60μm以下が特に好ましい。当該太陽電池モジュール用バックシート1は、表面6の十点平均粗さ(Rz)が上記上限を超えると、接着される裏面側充填剤層との間に空気等が残存するおそれが高くなるが、これは真空加熱ラミネート法等による溶融段階で、表面6に形成された凹状領域に空気等が残存するためであると考えられる。一方、当該太陽電池モジュール用バックシート1は、表面6の十点平均粗さ(Rz)が上記下限未満であると、接着される裏面側充填剤層との間に空気等が残存するおそれが高くなるが、これは太陽電池モジュール用バックシート1が有する可撓性等により、表面6と裏面側充填剤層との間に閉空間が形成されるためであると考えられる。これに対し、表面6の十点平均粗さ(Rz)が上記範囲内であると、接着される裏面側充填剤層との間に閉空間が形成されるおそれを効果的に防止し、空気等を好適に除去することができる。
【0041】
表面側樹脂フィルム2の表面6の60°光沢度としては、特に限定されないが、例えば50以上80以下が好ましく、55以上75以下がさらに好ましく、60以上70以下が特に好ましい。当該太陽電池モジュール用バックシート1は、表面側樹脂フィルム2の表面6の60°光沢度が上記上限を超えると、接着される裏面側充填剤層との間に空気等が残存するおそれが高くなるが、これは真空加熱ラミネート法等による溶融段階で、表面6に形成された凹状領域に空気等が残存するためであると考えられる。一方、当該太陽電池モジュール用バックシート1は、表面側樹脂フィルム2の表面6の60°光沢度が上記下限未満であると、接着される裏面側充填剤層との間に空気等が残存するおそれが高くなるが、これは太陽電池モジュール用バックシート1が有する可撓性等により、表面6と裏面側充填剤層との間に閉空間が形成されるためであると考えられる。これに対し、当該太陽電池モジュール用バックシート1は、表面側樹脂フィルム2の表面6の60°光沢度が上記範囲内であると、表面側樹脂フィルム2の表面6の凸形状が好適に保たれ、空気等を好適に除去し、裏面側充填剤層との接着性を向上することができる。
【0042】
また、表面側樹脂フィルム2の表面6の20°光沢度としては、特に限定されないが、例えば40以上70以下が好ましく、45以上65以下がさらに好ましく、50以上60以下が特に好ましい。表面側樹脂フィルム2の表面6の85°光沢度としては、特に限定されないが、例えば85以上115以下が好ましく、90以上110以下がさらに好ましく、95以上105以下が特に好ましい。当該太陽電池モジュール用バックシート1は、表面側樹脂フィルム2の表面6の20°光沢度及び85°光沢度を上記範囲内とすることで、表面側樹脂フィルム2と裏面側充填剤層との間の空気等をさらに好適に除去することができる。
【0043】
表面側樹脂フィルム2の製造方法としては、上記構造のものが形成できれば特に限定されるものではなく、種々の方法が採用される。表面側樹脂フィルム2の製造方法としては、フィルムを作成した後にこのフィルムの表面に複数の凸部を形成する方法と、フィルムと複数の凸部とを一体成形する方法とが可能であり、具体的には、
(a)表面6の反転形状を有するシート型に合成樹脂を積層し、そのシート型を剥がすこと表面側樹脂フィルム2を形成する方法、
(b)表面6の反転形状を有する金型に溶融樹脂を注入する射出成型法、
(c)フィルム化された樹脂を再加熱して前記と同様の金型と金属板との間にはさんでプレスして形状を転写する方法、
(d)表面6の反転形状を周面に有するロール型と他のロールとのニップに溶融状態の樹脂を通し、上記形状を転写する押出しシート成形法、
等がある。
【0044】
特に(d)の押出シート成型法によれば、シート形成と複数の凸部の形成とを一体に行うことができるため、加工が容易であるとともに、略均一な表面6を容易に形成することができる。また、反転形状を周面に有するロール型としては、所定表面性状を備えるエンボスロールを用いることができ、他のロール型としては、所定表面性状を備えるゴムロールを用いることができる。
【0045】
耐電圧性フィルム3は、合成樹脂を主成分として形成されている。この耐電圧性フィルム3の主成分の合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。上記樹脂の中でも、高い耐熱性、強度、耐候性、耐久性、水蒸気等に対するガスバリア性等を有するポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂及び環状ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0046】
上記ポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステル系樹脂の中でも、耐熱性、耐候性等の諸機能面及び価格面のバランスが良好なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0047】
上記フッ素系樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。これらのフッ素系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)やテトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)が特に好ましい。
【0048】
なお、耐電圧性フィルム3の形成材料としては、上記合成樹脂を1種又は2種以上混合して使用することができる。耐電圧性フィルム3の形成材料中の添加剤に関しては、上記表面側樹脂フィルム2と同様である。また、耐電圧性フィルム3は、押出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の公知の方法により製造することができる。耐電圧性フィルム3は、単層構造でもよく、2層以上の多層構造でもよい。
【0049】
耐電圧性フィルム3の厚さ(平均厚さ)は、太陽電池モジュール用バックシート1に要求される耐電圧性に応じて適宜選択される。具体的な耐電圧性フィルム3の厚さの下限としては、50μmが好ましく、100μmが特に好ましい。一方、耐電圧性フィルム3の厚さの上限としては、250μmが好ましく、200μmが特に好ましい。耐電圧性フィルム3の厚さが上記下限未満であると、当該太陽電池モジュール用バックシート1の耐電圧性が十分に高められないおそれがある。一方、耐電圧性フィルム3の厚さが上記上限を超えると、太陽電池モジュールの薄型化及び軽量化の要請に反することになる。
【0050】
裏面側樹脂フィルム4は、合成樹脂を主成分として形成されている。裏面側樹脂フィルム4の主成分の合成樹脂としては、耐電圧性フィルム3と同様のものが用いられるが、耐熱性、耐候性等の諸機能面及び価格面のバランスが良好なポリエチレンテレフタレートや、耐加水分解性及び耐熱性に優れるポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましい。なお、裏面側樹脂フィルム4の成形方法や裏面側樹脂フィルム4の形成材料中の添加剤等に関しては、耐電圧性フィルム3と同様である。
【0051】
裏面側樹脂フィルム4の厚さ(平均厚さ)の下限としては、12μmが好ましく、25μmが特に好ましい。また、裏面側樹脂フィルム4の厚さ(平均厚さ)の上限としては、250μmが好ましく、188μmが特に好ましい。裏面側樹脂フィルム4の厚さが上記下限未満であると、当該太陽電池モジュール用バックシート1の強度、耐候性、耐熱性等の基本性能や対応システム電圧が低下するおそれがあり、また裏面側樹脂フィルム4の取扱いが困難になる等の不都合も発生する。逆に、裏面側樹脂フィルム4の厚さが上記上限を超えると、太陽電池モジュールの薄型化及び軽量化の要請に反することになる。
【0052】
接着剤層5は、重畳される表面側樹脂フィルム2、耐電圧性フィルム3及び裏面側樹脂フィルム4の各フィルム間に積層されている。表面側樹脂フィルム2、耐電圧性フィルム3及び裏面側樹脂フィルム4の各フィルムは、接着剤層5により接着固定され、これにより当該太陽電池モジュール用バックシート1の強度、耐久性、堅牢性等が向上する。
【0053】
接着剤層5を構成する接着剤としては、ラミネート用接着剤又は溶融押出樹脂が用いられる。このラミネート用接着剤としては、例えばドライラミネート用接着剤、ウェットラミネート用接着剤、ホットメルトラミネート用接着剤、ノンソルベントラミネート用接着剤等が挙げられる。これらのラミネート用接着剤のなかでも、接着強度、耐久性、耐候性等に優れるドライラミネート用接着剤が特に好ましい。
【0054】
上記ドライラミネート用接着剤としては、例えばポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル,ブチル,2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマー又はこれらとメタクリル酸メチル,アクリロニトリル,スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル,アクリル酸エチル,アクリル酸,メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂,メラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム,ニトリルゴム,スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート,低融点ガラス等からなる無機系接着剤などが挙げられる。これらのドライラミネート用接着剤の中でも、当該太陽電池モジュール用バックシート1の屋外での長期間使用に起因する接着強度低下やデラミネーションが防止され、さらに接着剤層5の黄変等の劣化が低減されるポリウレタン系接着剤、特にポリエステルウレタン系接着剤が好ましい。また硬化剤としては、熱黄変が少ない脂肪族系ポリイソシアネートが好ましい。
【0055】
上記溶融押出樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、酸変性ポリエチレン系樹脂、酸変性ポリプロピレン系樹脂、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体、サーリン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン−アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂の1種又は2種以上を使用することができる。なお、上記溶融押出樹脂を用いた押出ラミネート法を採用する場合、より強固な接着強度を得るために、上記各フィルムの積層対向面に後述のアンカーコート処理等の表面処理を施すとよい。
【0056】
接着剤層5の積層量(固形分換算)の下限としては、1g/mが好ましく、3g/mが特に好ましい。一方、接着剤層5の積層量(固形分換算)の上限としては、10g/mが好ましく、7g/mが特に好ましい。接着剤層5の積層量が上記下限より小さいと、十分な接着強度が得られないおそれがある。また、接着剤層5の積層量が上記上限を超えると、積層強度や耐久性が低下するおそれがある。
【0057】
なお、接着剤層5を形成するラミネート用接着剤又は溶融押出樹脂中には、取扱性、耐熱性、耐候性、機械的性質等を改良、改質する目的で、例えば溶媒、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料等の種々の添加剤を適宜混合することができる。
【0058】
当該太陽電池モジュール用バックシート1の製造方法としては、一般的には、表面側樹脂フィルム2、耐電圧性フィルム3及び裏面側樹脂フィルム4の積層対向面の一方に接着剤をロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法等の手段でコーティングし、そのコーティング面に他方の積層対向面を貼り合わせる方法を挙げることができる。
【0059】
当該太陽電池モジュール用バックシート1は、表面側樹脂フィルム2の表面6に複数の凸部を有している。これにより、当該太陽電池モジュール用バックシート1は、重畳される裏面側充填剤層との間の真空度を高めつつこの裏面側充填剤層と接着される際に、この裏面側充填剤層との間に存在する空気等を複数の凸部によって形成される経路から効果的に除去することができる。その結果、当該太陽電池モジュール用バックシート1は、裏面側充填剤層と接着された状態で、この裏面側充填剤層との接着面に空気等が残存するのを防止することができ、ひいては裏面側充填剤層との接着性を向上させることができる。
【0060】
当該太陽電池モジュール用バックシート1は、表面側樹脂フィルム2の表面6に複数の凸部を有していることにより、当該太陽電池モジュール用バックシート1の表面6に滑り性を付与することができ、ひいては当該太陽電池モジュール用バックシート1のハンドリング性を向上させることができる。
【0061】
当該太陽電池モジュール用バックシート1は、表面側樹脂フィルム2の裏面側に、耐電圧性フィルム3及び裏面側樹脂フィルム4をこの順に備えることにより、当該太陽電池モジュール用バックシート1に一定の厚みを持たせることができ、当該太陽電池モジュール用バックシート1の強度、耐候性、耐熱性等の基本性能を高めつつ、対応システム電圧の低下を防止することができる。また、当該太陽電池モジュール用バックシート1は、一定の厚みを有することにより、取扱容易性を向上させることができる。
【0062】
図2の太陽電池モジュール用バックシート11は、表面側樹脂フィルム2と、バリア性フィルム12と、裏面側樹脂フィルム4とを接着層5を介して表面側から裏面側にこの順で備える積層体である。表面側樹脂フィルム2、裏面側樹脂フィルム4及び接着剤層5は、図1の太陽電池モジュール用バックシート1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
【0063】
バリア性フィルム12は、基材フィルム13と、基材フィルム13の裏面に積層される無機酸化物層14とを有している。
【0064】
基材フィルム13は、合成樹脂を主成分として形成されている。基材フィルム13の主成分の合成樹脂としては、耐電圧性フィルム3と同様のものが用いられ、なかでも耐熱性、耐候性等の諸機能面及び価格面のバランスが良好なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。基材フィルム13の形成材料としては、上記合成樹脂を1種又は2種以上混合して使用することができる。また基材フィルム13の成形方法や基材フィルム13の形成材料中の添加剤等に関しては、耐電圧性フィルム3と同様である。
【0065】
基材フィルム13の厚さ(平均厚さ)の下限としては、7μmが好ましく、10μmが特に好ましい。また、基材フィルム13の厚さ(平均厚さ)の上限としては、20μmが好ましく、15μmが特に好ましい。基材フィルム13の厚さが上記下限未満であると、無機酸化物層14を形成するための蒸着加工の際にカールが発生しやすくなってしまう、取扱いが困難になる等の不都合が発生する。逆に、基材フィルム13の厚さが上記上限を超えると、太陽電池モジュールの薄型化及び軽量化の要請に反することになる。
【0066】
無機酸化物層14は、酸素、水蒸気等に対するガスバリア性を発現するための層であり、基材フィルム13の裏面に無機酸化物を蒸着することで形成される。この無機酸化物層14を形成する蒸着手段としては、合成樹脂製の基材フィルム13に収縮、黄変等の劣化を招来することなく無機酸化物が蒸着できれば特に限定されるものではなく、(a)真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法;PVD法)、(b)プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法;CVD法)が採用される。これらの蒸着法の中でも、生産性が高く良質な無機酸化物層14が形成できる真空蒸着法やイオンプレーティング法が好ましい。
【0067】
無機酸化物層14を構成する無機酸化物としては、ガスバリア性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば酸化アルミニウム、酸化シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム等が用いられ、中でもガスバリア性及び価格面のバランスが良好な酸化アルミニウム又は酸化シリカが特に好ましい。
【0068】
無機酸化物層14の厚さ(平均厚さ)の下限としては、3Åが好ましく、400Åが特に好ましい。また、無機酸化物層14の厚さ(平均厚さ)の上限としては、3000Åが好ましく、800Åが特に好ましい。無機酸化物層14の厚さが上記下限より小さいと、ガスバリア性が低下するおそれがある。一方、無機酸化物層14の厚さが上記上限を超えると、無機酸化物層14のフレキシビリティーが低下し、クラック等の欠陥が発生しやすくなる。
【0069】
無機酸化物層14は、単層構造でもよく、2層以上の多層構造でもよい。このように無機酸化物層14を多層構造とすることで、蒸着の際に懸かる熱負担の軽減により基材フィルム13の劣化が低減され、さらに基材フィルム13と無機酸化物層14との密着性等を改善することができる。また、上記物理気相成長法及び化学気相成長法における蒸着条件は、基材フィルム13の樹脂種類、無機酸化物層14の厚さ等に応じて適宜設計される。
【0070】
また、基材フィルム13と無機酸化物層14との密接着性等を向上させるため、基材フィルム13の蒸着面に表面処理を施すとよい。このような密着性向上表面処理としては、例えば(a)コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いた酸化処理や、(b)プライマーコート処理、アンダーコート処理、アンカーコート処理、蒸着アンカーコート処理などが挙げられる。これらの表面処理の中でも、無機酸化物層14との接着強度が向上し、緻密かつ均一な無機酸化物層14の形成に寄与するコロナ放電処理及びアンカーコート処理が好ましい。
【0071】
上記アンカーコート処理に用いるアンカーコート剤としては、例えばポリエステル系アンカーコート剤、ポリアミド系アンカーコート剤、ポリウレタン系アンカーコート剤、エポキシ系アンカーコート剤、フェノール系アンカーコート剤、(メタ)アクリル系アンカーコート剤、ポリ酢酸ビニル系アンカーコート剤、ポリエチレンアルイハポリプロピレン等のポリオレフィン系アンカーコート剤、セルロース系アンカーコート剤などが挙げられる。これらのアンカーコート剤の中でも、基材フィルム13と無機酸化物層14との接着強度をより向上することができるポリエステル系アンカーコート剤が特に好ましい。
【0072】
上記アンカーコート剤のコーティング量(固形分換算)の下限としては、0.1g/mが好ましく、1g/mが特に好ましい。一方、当該アンカーコート剤のコーティング量の上限としては、5g/mが好ましく、3g/mが特に好ましい。アンカーコート剤のコーティング量が上記下限より小さいと、基材フィルム13と無機酸化物層14との密着性向上効果が小さくなるおそれがある。一方、当該アンカーコート剤のコーティング量が上記上限を超えると、当該太陽電池モジュール用バックシート11の強度、耐久性等が低下するおそれがある。
【0073】
なお、上記アンカーコート剤中には、密接着性向上のためのシランカップリング剤、基材フィルム13とのブロッキングを防止するためのブロッキング防止剤、耐候性等を向上させるための紫外線吸収剤等の各種添加剤を適宜混合することができる。かかる添加剤の混合量としては、添加剤の効果発現とアンカーコート剤の機能阻害とのバランスから0.1重量%以上10重量%以下が好ましい。
【0074】
当該太陽電池モジュール用バックシート11の製造工程としては、一般的には、(1)基材フィルム13の裏面に無機酸化物を上記PVD法又はCVD法によって蒸着するバリア性フィルム製造工程と、(2)表面側樹脂フィルム2、バリア性フィルム12及び裏面側樹脂フィルム4の積層対向面の一方に接着剤をロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法等の手段でコーティングし、そのコーティング面に他方の積層対向面を貼り合わせる積層工程とを有している。
【0075】
太陽電池モジュールは、通常屋外で使用されるものであり、その材質や構造において耐久性及び耐候性が要求される。特に、太陽電池モジュール用バックシートについては、太陽電池素子が水分に弱いこともあり、耐候性とともに水蒸気透過率が小さいことが重要であり、バリア性に優れていることが好ましい。当該太陽電池モジュール用バックシート11は、バリア性フィルム12を有することで水蒸気バリア性を向上することができ、ひいては太陽電池モジュールの耐久性、耐候性を向上させ、使用期間の長期化を促進することができる。
【0076】
当該太陽電池モジュール用バックシート11は、基材フィルム13の裏面に無機酸化物層14が積層されるバリア性フィルム12を備えることで、高いガスバリア性を有し、金属箔を用いた従来の太陽電池モジュール用バックシートと比較して機械的強度、低コスト性、生産性及び耐電圧性を促進することができる。
【0077】
図3の太陽電池モジュール用バックシート21は、表面側樹脂フィルム2と、耐電圧性フィルム3と、バリア性フィルム22と、裏面側樹脂フィルム4とを接着層5を介して表面側から裏面側にこの順で備える積層体である。表面側樹脂フィルム2、耐電圧性フィルム3、裏面側樹脂フィルム4及び接着層5は、図1の太陽電池モジュール用バックシート1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
【0078】
バリア性フィルム22としては、アルミニウム箔が用いられている。このアルミニウム箔の材質としては、アルミニウム又はアルミニウム合金が挙げられ、アルミニウム−鉄系合金(軟質材)が好ましい。このアルミニウム−鉄系合金における鉄含有量としては、0.3%以上9.0%以下が好ましく、0.7%以上2.0%以下が特に好ましい。この鉄含有量が上記下限未満の場合は、ピンホールの発生の防止の効果が不十分になるおそれがあり、逆に、鉄含有量が上記上限を超える場合は、柔軟性が阻害され、加工性が低下するおそれがある。また、アルミニウム箔の材料としては、しわやピンホールを防止する観点から焼きなまし処理を行った柔軟性アルミニウムが好ましい。
【0079】
アルミニウム箔の厚さ(平均厚さ)の下限としては、6μmが好ましく、15μmが特に好ましい。また、アルミニウム箔の厚さ(平均厚さ)の上限としては、30μmが好ましく、20μmが特に好ましい。アルミニウム箔の厚さが上記下限より小さいと、加工の際にアルミニウム箔の破断が起きやすくなり、またピンホール等に起因してガスバリア性が低下するおそれがある。一方、アルミニウム箔の厚さが上記上限を超えると、加工の際にクラック等が発生するおそれがあり、また当該太陽電池モジュール用バックシート21の厚さや重量が増大して薄型軽量化の社会的要請に反することとなる。
【0080】
アルミニウム箔の表面には、溶解、腐食を防止する観点から例えばクロメート処理、リン酸塩処理、潤滑性樹脂被覆処理等の表面処理が施されてもよく、接着性を促進する観点からカップリング処理等が施されてもよい。
【0081】
当該太陽電池モジュール用バックシート21は、バリア性フィルム22を有することでバリア性が向上し、太陽電池モジュールの耐久性、耐候性を向上させ、使用期間の長期化を促進することができる。加えて、当該太陽電池モジュール用バックシート21は、耐電圧性フィルム3を有することにより当該太陽電池モジュール用バックシート21の耐電圧性が向上し、その耐電圧性フィルムの厚さの制御によって太陽電池システムのシステム電圧の高電圧化に効果的に対応することができる。当該太陽電池モジュール用バックシート21は、表面側樹脂フィルム2とバリア性フィルム22との間に耐電圧性フィルム3を備えているので、高い耐電圧性を有し、高いシステム電圧の太陽電池システム用の太陽電池モジュールに対応することができる。
【0082】
当該太陽電池モジュール用バックシート21は、バリア性フィルム22としてアルミニウム箔が使用されているため、酸素、水蒸気等に対する高いガスバリア性を有し、太陽電池モジュールの寿命及び使用期間の長期化を促進することができる。
【0083】
図4の太陽電池モジュール31は、透光性基板32と、表面側充填剤層33と、複数枚の太陽電池セル34と、裏面側充填剤層35と、当該太陽電池モジュール用バックシート21とが表面側からこの順に積層されている。なお、図4では、裏面側充填剤層35と太陽電池モジュール用バックシート21との接着面は平坦面として図示しているが、この接着面の形状は、表面6の形状によって適宜変りうるものである。
【0084】
透光性基板32は、最表面に積層されるものであり、(a)太陽光に対する透過性及び電気絶縁性を有すること、(b)機械的、化学的及び物理的強度、具体的には耐候性、耐熱性、耐久性、耐水性、水蒸気等に対するガスバリア性、耐風圧性、耐薬品性、堅牢性に優れること、(c)表面硬度が高く、かつ表面の汚れ、ゴミ等の蓄積を防止する防汚性に優れることが要求される。
【0085】
透光性基板32の形成材料としては、ガラス及び合成樹脂が使用される。透光性基板32に使用される合成樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、アセタール系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂が特に好ましい。
【0086】
なお、合成樹脂製の透光性基板32の場合、(a)ガスバリア性等を向上させる目的で上記PVD法又はCVD法によりその一方の面に酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の透明蒸着膜を積層すること、(b)加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性等を改良、改質する目的で、例えば滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、充填剤、強化繊維、補強剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料等の各種添加剤を含有することも可能である。
【0087】
透光性基板32の厚さ(平均厚さ)としては、特に限定されず、使用する材料に応じて所要の強度、ガスバリア性等を具備するよう適宜選択される。合成樹脂製の透光性基板32の厚さとしては6μm以上300μm以下が好ましく、9μm以上150μm以下が特に好ましい。また、ガラス製の透光性基板32の厚さとしては、一般的には3mm程度とされている。
【0088】
表面側充填剤層33及び裏面側充填剤層35は、透光性基板32及び太陽電池モジュール用バックシート21間における太陽電池セル34の周囲に充填されており、(a)透光性基板32及び太陽電池モジュール用バックシート21との接着性や、太陽電池セル34を保護するための耐スクラッチ性、衝撃吸収性等を有している。なお、太陽電池セル34の表面に積層される表面側充填剤層33は、上記諸機能に加え、太陽光を透過する透明性を有している。また、裏面側充填剤層35の裏面は、微細凹凸形状面として形成されている。
【0089】
表面側充填剤層33及び裏面側充填剤層35の形成材料としては、例えばフッ素系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレンフィン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの合成樹脂の中でも、耐候性、耐熱性、ガスバリア性等に優れるフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂又はエチレン−酢酸ビニル系樹脂が好ましい。
【0090】
また、表面側充填剤層33及び裏面側充填剤層35の形成材料としては、特開2000−34376号公報に示される熱可逆架橋性オレフィン系重合体組成物、具体的には(a)不飽和カルボン酸無水物と不飽和カルボン酸エステルとによって変性された変性オレフィン系重合体であって、1分子当たりのカルボン酸無水物基の平均結合数が1個以上で、かつ該変性オレフィン系重合体中のカルボン酸無水物基数に対するカルボン酸エステル基数の比が0.5〜20である変性オレフィン系重合体と、(b)1分子当たりの水酸基の平均結合数が1個以上の水酸基含有重合体とを含み、(a)成分のカルボン酸無水物基数に対する(b)成分の水酸基数の比が0.1〜5のものなども使用される。
【0091】
なお、表面側充填剤層33及び裏面側充填剤層35の形成材料には、耐候性、耐熱性、ガスバリア性等の向上を目的として例えば架橋剤、熱酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、光酸化防止剤等の各種添加剤を適宜含有することができる。また表面側充填剤層33及び裏面側充填剤層35の厚さ(平均厚さ)としては、特に限定されるものではないが、200μm以上1000μm以下が好ましく、350μm以上600μm以下が特に好ましい。
【0092】
太陽電池セル34は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光起電力素子であり、表面側充填剤層33及び裏面側充填剤層35間に配設されている。複数枚の太陽電池セル34は、略同一平面内に敷設され、図示していないが直列又は並列に配線されている。この太陽電池セル34としては、例えば単結晶シリコン型太陽電池素子、多結晶シリコン型太陽電池素子等の結晶シリコン太陽電子素子、シングル接合型やタンデム構造型等からなるアモルファスシリコン太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等の第3〜第5族化合物半導体太陽電子素子、カドミウムテルル(CdTe)や銅インジウムセレナイド(CuInSe)等の第2〜第6族化合物半導体太陽電子素子等を使用することができ、それらのハイブリット素子も使用することができる。なお、複数枚の太陽電池セル34間にも表面側充填剤層33又は裏面側充填剤層35が隙間なく充填されている。
【0093】
太陽電池モジュール31の製造方法としては、特に限定されるもではないが、一般的には(1)透光性基板32、表面側充填剤層33、複数枚の太陽電池セル34、裏面側充填剤層35及び太陽電池モジュール用バックシート21をこの順に重畳する工程と、(2)それらを真空吸引により一体化して加熱圧着する真空加熱ラミネーション法等により一体成形するラミネート工程とを有している。上記太陽電池モジュール31の製造方法において、各層間の接着性等を目的として(a)加熱溶融型接着剤、溶剤型接着剤、光硬化型接着剤等を塗工すること、(b)各積層対向面にコロナ放電処理、オゾン処理、低温プラズマ処理、グロー放電処理、酸化処理、プライマーコート処理、アンダーコート処理、アンカーコート処理等を施すことなどが可能である。太陽電池モジュール31は、上記真空加熱ラミネーション法によれば、裏面側充填層35及び表面側樹脂フィルム2が、真空度を高めつつ溶融され、これらの溶融樹脂が一体的に接合されることにより裏面側充填剤層35及び表面側樹脂フィルム2が接着される。
【0094】
当該太陽電池モジュール31は、当該太陽電池モジュール用バックシート21の表面側樹脂フィルム2の表面6が複数の凸部を有している。これにより、当該太陽電池モジュール31は、太陽電池モジュール用バックシート21と裏面側充填剤層35との間の真空度を高めつつこの太陽電池モジュール用バックシート21と裏面側充填剤層35とを接着する際に、太陽電池モジュール用バックシート21と裏面側充填剤層35の微細凹凸形状面との間に存在する空気等を複数の凸部によって形成される経路から効果的に除去することができる。その結果、当該太陽電池モジュール31は、太陽電池モジュール用バックシート21が裏面側充填剤層と接着された状態で、太陽電池モジュール用バックシート21と裏面側充填剤層35との接着面に空気等が残存するのを防止することができ、ひいては太陽電池モジュール用バックシート21と裏面側充填剤層35との接着性を向上させることができる。
【0095】
当該太陽電池モジュール31は、太陽電池モジュール用バックシート21と裏面側充填剤層35との高い接着性により、耐久性及び寿命をより促進することができる。そのため、当該太陽電池モジュール31は、屋根据え置き型の太陽電池や、腕時計や電卓等の小型電気機器用の太陽電池などに好適に使用することができる。
【0096】
なお、本発明の太陽電池モジュール用バックシート及び太陽電池モジュールは、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。例えば、当該太陽電池モジュール用バックシートは、表面側樹脂フィルム、耐電圧性フィルム、バリア性フィルム及び裏面側樹脂フィルムに加えて他の層(合成樹脂層、金属層、無機酸化物層等)やフィルムが積層されてもよい。このように他の層又はフィルムを積層することで、耐電圧性、ガスバリア性、耐候性、耐久性等の諸特性を格段に向上することができる。また、当該太陽電池モジュール用バックシートは、表面側樹脂フィルムの裏面側に、バリア性フィルム、耐電圧性フィルム及び裏面側樹脂フィルムがこの順で備えられてもよい。当該太陽電池モジュール用バックシートは、表面側樹脂フィルム、耐電圧性フィルム、バリア性フィルム及び裏面側樹脂フィルムが接着剤層を介さずに押出ラミネーション等の手段により直接積層されてもよい。また、当該太陽電池モジュール用バックシートは、基材フィルムの表面に無機酸化物層が積層されたバリア性フィルムを備えることもできる。表面側樹脂フィルムの表面に設けられる複数の凸部の形状は特に限定されず、例えば複数の突起部であってもよく、所定の凹凸形状部であってもよく、ストライプ状に設けられる複数の屋根状部であってもよく、またこれらが併存したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上のように、本発明の太陽電池モジュール用バックシート及びこれを用いた太陽電池モジュールは、裏面側充填剤層との接着性を向上させることができ、家屋屋根据え置き型の太陽電池や電卓等の小型電気機器用の太陽電池などに好適に使用される。
【符号の説明】
【0098】
1 太陽電池モジュール用バックシート
2 表面側樹脂フィルム
3 耐電圧性フィルム
4 裏面側樹脂フィルム
5 接着層
6 表面
11 太陽電池モジュール用バックシート
12 バリア性フィルム
13 基材フィルム
14 無機酸化物層
21 太陽電池モジュール用バックシート
22 バリア性フィルム
31 太陽電池モジュール
32 透光性基板
33 表面側充填剤層
34 太陽電池セル
35 裏面側充填剤層
51 太陽電池モジュール
52 透光性基板
53 表面側充填剤層
54 太陽電池セル
55 裏面側充填剤層
56 太陽電池モジュール用バックシート
57 ガスバリア層
58 合成樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最表面に表面側樹脂フィルムを備え、この表面側樹脂フィルムの表面に複数の凸部を有する太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項2】
上記表面側樹脂フィルムの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.85μm以上2.65μm以下である請求項1に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項3】
上記表面側樹脂フィルムの表面の最大谷深さ(Rv)が10μm以上40μm以下である請求項1又は請求項2に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項4】
上記表面側樹脂フィルムの表面の十点平均粗さ(Rz)が20μm以上70μm以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項5】
上記表面側樹脂フィルムの表面の60°光沢度が50以上80以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項6】
上記表面側樹脂フィルム中に顔料を分散含有している請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項7】
上記表面側樹脂フィルムが主成分としてポリオレフィン系樹脂を含有している請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項8】
上記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレンである請求項7に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項9】
上記表面側樹脂フィルムの裏面側に、耐電圧性フィルム及び裏面側樹脂フィルムをこの順に備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項10】
上記表面側樹脂フィルムの裏面側に、バリア性フィルム及び裏面側樹脂フィルムをこの順で備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項11】
上記表面側樹脂フィルムの裏面側に、耐電圧性フィルム、バリア性フィルム及び裏面側樹脂フィルムをこの順で備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項12】
透光性基板と、表面側充填剤層と、光起電力素子としての太陽電池セルと、裏面側充填剤層と、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシートとがこの順に積層されている太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−80880(P2013−80880A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221263(P2011−221263)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】