太陽電池モジュール
【課題】軽量で、高い耐湿性を有すると共に、十分な機械的強度を備えた太陽電池モジュール。
【解決手段】ガラス基板上に太陽電池デバイスが形成された太陽電池サブモジュール2と、受光面側封止材31と、背面側封止材32と、受光面側封止材31と太陽電池サブモジュール2の間、及び太陽電池サブモジュール2の端部近傍における受光面側封止材31と背面側封止材32の間に充填される充填材4とからなり、太陽電池サブモジュール2が、受光面側において、充填材4により受光面側封止材31と接着すると共に、背面側において背面側封止材32と直接接着して、受光面側封止材31と背面側封止材32の間に接着保持され、充填材4が、太陽電池サブモジュール2の端部から受光面側封止材31及び背面側封止材32の端部に向かって徐々に薄く充填されると共に、受光面側封止材31と背面側封止材32とが周縁部において直接接着された太陽電池モジュール1。
【解決手段】ガラス基板上に太陽電池デバイスが形成された太陽電池サブモジュール2と、受光面側封止材31と、背面側封止材32と、受光面側封止材31と太陽電池サブモジュール2の間、及び太陽電池サブモジュール2の端部近傍における受光面側封止材31と背面側封止材32の間に充填される充填材4とからなり、太陽電池サブモジュール2が、受光面側において、充填材4により受光面側封止材31と接着すると共に、背面側において背面側封止材32と直接接着して、受光面側封止材31と背面側封止材32の間に接着保持され、充填材4が、太陽電池サブモジュール2の端部から受光面側封止材31及び背面側封止材32の端部に向かって徐々に薄く充填されると共に、受光面側封止材31と背面側封止材32とが周縁部において直接接着された太陽電池モジュール1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池デバイスを所定の封止材により封止した太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、国際的な環境保護に対する取り組みや光電変換効率の向上に伴って、太陽光等を受光して発電する太陽電池モジュールは、一般的な発電装置としてのみならず、電卓、携帯電話用充電器、道路交通標識や街路灯等の電源として、様々な場所で多様な用途に用いられている。
【0003】
用途に応じて要求される太陽電池モジュールの仕様あるいは構成は様々であるが、発電に太陽光等の受光が必要なことから、屋外での厳しい使用環境を想定して、外部からの湿分の浸入を防ぐなど、十分な耐候性を備えることは必須である。
【0004】
一方において、太陽電池モジュールの軽量化や小型化、さらには製造コストの軽減を図る場合等においては、採り得る構造は限られてくるし、太陽電池モジュールに用いる部材にも厳しい条件が課せられることとなって、十分な耐候性を確保することは困難である。
【0005】
この点、軽量化とコストダウンを図ったモジュールとして、特許文献1では、2枚のポリカーボネート板で挟持した太陽電池セルを、有機化酸化物を添加したEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)により接着保持した太陽電池モジュールが提案されている。
また、特許文献2では、EVA樹脂からなるシートで太陽電池セルを挟み込むと共に端部を含む全面にスペーサを配設してラミネートした太陽電池モジュールが提案されている。
また、特許文献3では、樹脂フィルムを太陽電池素子の表面保護シートとして用い、周端部をスペーサで密封した太陽電池モジュールが提案されている。
また、特許文献4では、受光面側フィルムと、受光面側充填材と、裏面側充填材と、裏面側フィルムとを重ねるように順次配設し、前記受光面側フィルムと前記裏面側フィルムの周縁部とを熱融着した太陽電池モジュールが提案されている。
また、特許文献5では、太陽電池セルの受光面側にフロントカバーが、その反対面側にバックカバーが配され、各カバーと太陽電池セルとの間に充填樹脂層が設けられ、前記太陽電池モジュールの周辺部でフロントカバーとバックカバーとが接合された太陽電池モジュールが提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−113077号公報
【特許文献2】特開2006−156873号公報
【特許文献3】特開2006−165434号公報
【特許文献4】特開2006−86390号公報
【特許文献5】特開2002−118276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の太陽電池モジュールでは、側端面において、太陽電池セルを挟持するポリカーボネート板の間からEVAが露出してしまい、この露出したEVA部分から湿分が浸入し、太陽電池セルを腐食してしまうという問題がある。
また、特許文献2及び特許文献3記載の太陽電池モジュールでは、いずれも、側端面にスペーサを配設することで外部からの湿分浸入を防いでいるが、スペーサを用いる分、余計なコストや製造工程を要することになるし、太陽電池セル(太陽電池素子)を覆うシートとスペーサとの密着性を高める手段を講じないと、シートとスペーサとの間から湿分が浸入してしまうという問題がある。
また、特許文献4及び特許文献5記載の太陽電池モジュールでは、いずれも、太陽電池セル(太陽電池素子)を充填材(充填樹脂層)により挟み込んだ構造をとっているため、太陽電池モジュールが厚くなる上、充填材(充填樹脂層)を多く使う分、コストがかかる。一方で、充填材(充填樹脂層)の量を減らした場合には、太陽電池モジュール全体の機械的強度や耐久性を保つことができないという問題を生じる。
【0008】
そこで、本発明は、軽量で、高い耐湿性を有すると共に、十分な機械的強度を備えた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る太陽電池モジュールは、ガラス基板上に太陽電池デバイスが形成された太陽電池サブモジュールと、所定の樹脂材料からなり、上記太陽電池サブモジュールの受光面側を被覆する受光面側封止材と、所定の樹脂材料からなり、上記太陽電池サブモジュールの受光面の反対側である背面側を被覆する背面側封止材と、上記受光面側封止材と上記太陽電池サブモジュールの間、及び上記太陽電池サブモジュールの端部近傍における上記受光面側封止材と上記背面側封止材の間に充填される充填材と、からなる太陽電池モジュールであって、上記受光面側封止材と上記背面側封止材の平面のサイズは、上記太陽電池サブモジュールの平面のサイズより大きく、上記太陽電池サブモジュールが、受光面側において、上記充填材により上記受光面側封止材と接着すると共に、背面側において、上記背面側封止材の表面に塗布された接着剤ないしは熱融着により上記背面側封止材と接着して、上記受光面側封止材と上記背面側封止材の間に接着保持され、上記充填材が、上記太陽電池サブモジュールの端部から上記受光面側封止材及び上記背面側封止材の端部に向かって徐々に薄く充填されると共に、上記受光面側封止材と上記背面側封止材とが、周縁部において直接接着されることにより、上記太陽電池サブモジュールが封止されていることを特徴とする。
これにより、太陽電池モジュールの側端面において充填材が露出することがないし、受光面側封止材と背面側封止材とが接着した部分を含め、太陽電池サブモジュールの側端面から太陽電池モジュールの側端面まで一定の距離があるため、湿分が浸入しにくく、高い耐湿性が得られる。
また、周縁部分に受光面側封止材と背面側封止材とが接着した部分が所定の長さだけ設けられていることに加えて、受光面側封止材と背面側封止材とが樹脂材料からなることから、使用時に落としたりしても破損しにくい。
【0010】
また、上記太陽電池デバイスは、CIS系薄膜太陽電池デバイスであるものとしてもよい。
これにより、太陽電池デバイスの一部に影がかかっても、発電が可能である。
【0011】
また、上記受光面側封止材及び上記背面側封止材は、フッ素樹脂からなるものとしてもよい。
フッ素樹脂は、太陽光等による光分解作用や、気温の変化による膨張収縮作用等に対して高い耐候性を持ち合わせている。
これにより、太陽電池モジュールの耐候性をより高めることができるし、表面に傷がつきにくい。
【0012】
また、上記充填材は、EVAからなるものとしてもよい。
なお、EVAとは、エチレン酢酸ビニル共重合体のことであり、比重が小さいために軽量な上、高い柔軟性と弾力性を持ち合わせる。
これにより、太陽電池サブモジュールと、受光面側封止材及び背面側封止材とがしっかりと接着される。また、太陽電池モジュールを軽量化できると共に、使用時における衝撃を吸収することができる。
【0013】
また、上記受光面側封止材ないし上記背面側封止材は、表面にエンボス加工が施されているものとしてもよい。
これにより、クッション性が得られる他、美観もよく、手触りもよい。
【0014】
また、上記受光面側封止材と上記背面側封止材の縁辺は、角部が丸みを帯びた面取り状に形成されているものとしてもよい。
これにより、太陽電池モジュールを取り扱う際に角部分で怪我するのを防ぐことができ、安全である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、太陽電池モジュールを軽量なものとすることができる。また、太陽電池モジュールの側端面に充填材が露出しない上、当該側端面から太陽電池サブモジュールまで一定の長さが確保されているため、優れた耐湿性を備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の第一の実施の形態に係る太陽電池モジュールについて、図を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る太陽電池モジュール1は、太陽光等を受光して発電する太陽電池サブモジュール2と、この太陽電池サブモジュール2全体を封止する封止材3とからなる。
そして、図2に示すように、封止材3に設けられた取付孔33を介して、太陽電池サブモジュール2で発生した電力を外部に出力するためのリボンワイヤ22に、外部負荷と電気的に接続した外部導線5を取り付けることで、太陽電池サブモジュール2で発生した電力を外部負荷に導出することができる。
【0017】
封止材3は、太陽電池サブモジュール2を封止して外部からの湿分流入を防ぐ保護シートである。
この封止材3は、図3及び図4に示すように、太陽電池モジュール1の受光面側を覆う受光面側封止材31と、受光面とは反対側の面(以下、「背面」という。)を覆う背面側封止材32とからなる。
【0018】
この受光面側封止材31と背面側封止材32は、図1及び図2に示すように、その平面のサイズが太陽電池サブモジュール2の平面のサイズよりも大きく、太陽電池サブモジュール2の平面全体を覆うことができる。
【0019】
また、少なくとも背面側封止材32は、表面に接着剤が塗布されており、太陽電池サブモジュール2を受光面側封止材31とで挟んでラミネート処理を施したときに、太陽電池サブモジュール2及び受光面側封止材31と直接接着する。
なお、背面側封止材32を、太陽電池サブモジュール2ないし受光面側封止材31と接着させる方法は、他に、熱融着によるものとしてもよい。熱融着は、背面側封止材32を加熱することにより、その表面を溶融させた上、接着させる太陽電池サブモジュール2ないし受光面側封止材32に圧接させてから冷却することで接着させることができる。
【0020】
また、受光面側封止材31と背面側封止材32の平面のサイズは、ラミネート処理を施す前のシート状の充填材4の平面のサイズよりも大きい。そのため、太陽電池サブモジュール2と充填材4とを、受光面側封止材31と背面側封止材32とで挟み込んでラミネート処理を施した際には、図3及び図4に示すように、熱溶融した充填材4は太陽電池サブモジュール2の端部から外側へ向かって徐々に薄くなるように広がる。
これにより、ラミネート処理が施された太陽電池モジュール1は、図3及び図4に示すように、受光面側封止材31と太陽電池サブモジュール2の間に充填された充填材4が、太陽電池サブモジュール2の端部から外部に向かって徐々に薄くなっていくように隙間なく充填される。また、受光面側封止材31と背面側封止材32とは、周縁部Sにおいて、背面側封止材32の表面に塗布された接着剤、ないしは熱融着によって一体的に接着している。
【0021】
さらに、封止材3には、図2及び図4に示すように、外部負荷と接続した外部導線5を太陽電池サブモジュール2と接続するため、背面側封止材32に取付孔33が設けられている。この取付孔33は、太陽電池サブモジュール2のリボンワイヤ22を覆う位置に設けられており、取付孔33からはリボンワイヤ22が露出する。
そして、図5に示すように、所定の幅を備えるリボンワイヤ22のみを露出させる取付孔33を介して、外部導線5がハンダ6によってリボンワイヤ22に取り付けられ、太陽電池サブモジュール2から外部負荷へ電力が導出される。
【0022】
このような封止材3には、例えば、透光性を有し、熱融着可能な熱可塑性樹脂等を用いることができる。このような材料としては、フッ素樹脂材料等が挙げられる。具体的な例としては、アフレックス(登録商標、旭硝子株式会社製)、テフゼル(登録商標、デュポン株式会社製)、テドラー(登録商標、デュポン株式会社製)、セレール(登録商標、株式会社クレハ製)、KFCフィルム(登録商標、株式会社クレハ製)等を用いることができる。
その他、熱溶融した状態で接着可能な接着剤を表面に塗布したPET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムを用いることもできる。
これらの材料からなる受光面側封止材31と背面側封止材32とを、ラミネート処理の際に、加熱及び加圧することにより、周縁部Sにおいて接着した封止材3とすることができる。
【0023】
また、受光面側封止材31及び背面側封止材32の厚さは、使用時における耐久性や軽量化の実現の観点から、厚さ50〜200μm程度が好適である。
【0024】
充填材4は、太陽電池サブモジュール2と受光面側封止材31の間、及び、太陽電池サブモジュール2の端部近傍における受光面側封止材31と背面側封止材32の間を隙間なく埋めると共に、これらを一体的に接着保持する。また、充填材4は、太陽電池サブモジュール2の受光面側に形成されている薄膜をヒートショックや湿分浸入から保護して耐久性を高めると共に、衝撃等の外力を緩和することにより薄膜に傷がつくのを防止して機械的強度を上げている。さらには、外観上の美観を向上させている。一方において、本実施形態における太陽電池モジュール1は、背面側封止材32と太陽電池サブモジュール2の間に充填材4を充填させていない。これは、太陽電池サブモジュール2の背面側にはガラス基板しか表れず、受光面側に形成されている薄膜との絶縁性も保たれているために、受光面側ほど湿分に対処する必要がなく、外力等に対する耐久性も十分に確保されていること、また、太陽電池サブモジュール2がガラス基板を備えることで機械的強度が保たれていることで可能となっている。
この充填材4は、太陽電池サブモジュール2と受光面側封止材31との間に挟み込んだ状態で加熱しながらプレスすることで溶けて広がり、その隙間を埋めると共に、太陽電池サブモジュール2と封止材3とを接着することができる。
この充填材4の材料としては、例えば、シート状のEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)を用いることができる。
【0025】
太陽電池サブモジュール2は、いわゆるCIS系薄膜太陽電池デバイスにより構成され、図6及び図7に示すように、太陽光等を受光して発電する基体21と、この基体21に取り付けられたリボンワイヤ22とからなる。
【0026】
基体21は、図8に示すように、青板ガラス等からなるガラス基板2A上に、モリブデン(Mo)等の金属からなる金属裏面電極層2B、p型CIS光吸収層2C、高抵抗バッファ層2D、n型窓層(透明導電膜)2Eが順次積層したサブストレート構造のpnへテロ接合デバイスを形成してなる。
【0027】
ここで、p型CIS光吸収層2Cは、p型の導電性を有するI−III −VI2 族カルコパイライト構造の厚さ1〜3μmの薄膜であり、例えば、CuInSe2 、Cu(InGa)Se2 、Cu(InGa)(SSe)2 等の多元化合物半導体薄膜である。p型CIS光吸収層2Cとしては、その他、セレン化物系CIS系光吸収層、硫化物系CIS系光吸収層及びセレン化・硫化物系CIS系光吸収層があり、前記セレン化物系CIS系光吸収層は、CuInSe2 、Cu(InGa)Se2 又はCuGaSe2 からなり、前記硫化物系CIS系光吸収層は、CuInS2 、Cu(InGa)S2 、CuGaS2 からなり、前記セレン化・硫化物系CIS系光吸収層は、CuIn(SSe)2 、Cu(InGa)(SSe)2 、CuGa(SSe)2 、また、表面層を有するものとしては、CuIn(SSe)2 を表面層として持つCuInSe2 、CuIn(SSe)2 を表面層として持つCu(InGa)Se2 、CuIn(SSe)2 を表面層として持つCu(InGa)(SSe)2 、CuIn(SSe)2 を表面層として持つCuGaSe2 、Cu(InGa)(SSe)2 を表面層として持つCu(InGa)Se2 、Cu(InGa)(SSe)2 を表面層として持つCuGaSe2 、CuGa(SSe)2 を表面層として持つCu(InGa)Se2 又はCuGa(SSe)2 を表面層として持つCuGaSe2 がある。
このp型CIS光吸収層2Cは、セレン化/硫化法や多元同時蒸着法により製膜されている。
【0028】
リボンワイヤ22は、導電性を有する帯状の金属からなり、基体21において発生した電力を外部負荷に導出するための導線である。このリボンワイヤ22は、発電した電力を外部に出力するために基体21上に形成された取出電極(図示省略)にハンダ付けされると共に、基体21の短辺側の縁辺部分から背面へ回り込むように折り曲げられており、背面側においてリボンワイヤ22と外部導線5とを接続することにより、基体21において発生した電力が外部に導出される。
また、このリボンワイヤ22は、図5に示すように、外部導線5の太さないしは直径に応じて、外部導線5をリボンワイヤ22にハンダ6によって取り付けた際に、外部導線5がリボンワイヤ22からはみ出さないだけの横幅を有している。
【0029】
次に、本実施形態に係る太陽電池モジュール1の製造工程について説明する。
太陽電池モジュール1は、受光面側封止材31、充填材4、太陽電池サブモジュール2、及び背面側封止材32を積層させてラミネート処理を施す工程と、封止材3(背面側封止材32)に取付孔33を設ける工程を経て製造される。
【0030】
ラミネート処理においては、まず、図9に示すように、受光面側封止材31上に太陽電池サブモジュール2と略同じサイズのシート状の充填材4を載せると共に、所定の製膜工程を経て作成された太陽電池サブモジュール2を受光面側が充填材4に当接するように載せ、さらにその上に背面側封止材32を載せて各部材を積層させる。
そして、ラミネート処理装置内に、上記の通り積層した各部材を設置し、当該ラミネート処理装置内を減圧すると共に充填材4の軟化点以上に加熱する。さらに、上記各部材を積層した状態でプレスすることにより、熱溶融した充填材4が、受光面側封止材31と太陽電池サブモジュール2の間、及び、太陽電池サブモジュール2の端部近傍の受光面側封止材31と背面側封止材32の間に隙間なく広がると共に、各部材間が充填材4により一体的に接着される。また、太陽電池サブモジュール2と背面側封止材32の間は、封止材3として熱融着可能な樹脂材料を用いた場合には、背面側封止材32の表面が熱により溶融して両部材を接着し、封止材3の表面に接着剤を塗布した場合には、熱により溶融した接着剤を介して両部材が接着される。
【0031】
また、受光面側封止材31と背面側封止材32が、シート状の充填材4よりも大きいため、図3又は図4に示すように、太陽電池サブモジュール2の端部から外側へ向かって徐々に充填材4が薄くなり、周縁部分Sにおいては、受光面側封止材31と背面側封止材32とは直接接着される。なお、封止材3として熱融着可能な樹脂材料を用いた場合には、受光面側封止材31と背面側封止材32の表面が熱により溶融して互いに接着し、封止材3の表面に接着剤を塗布した場合には、熱により溶融した接着剤を介して受光面側封止材31と背面側封止材32とが接着される。この結果、封止材3の周端部Sの側端面には充填材4が露出しない。
以上のように各部材が接着した状態で温度を低下させると、充填材4が硬化してラミネート処理が完了する。
【0032】
なお、上記ラミネート処理においては、受光面側封止材31と太陽電池サブモジュール2の間のみならず、太陽電池サブモジュール2と背面側封止材32の間にもシート状の充填材4を挟みこんで各部材を接着することもできる。
【0033】
上記の通りラミネート処理が完了すると、外部導線5を取り付けるための取付孔33を背面側封止材32に形成する。取付孔33は、図10に示すように、リボンワイヤ22上の背面側封止材32に、リボンワイヤ22のみが露出するように形成する。この際、取付孔33の直径がリボンワイヤ22の横幅よりも小さくなるように形成する。
また、取付孔32の形成の仕方は、例えば、封止材3の融点以上に加熱した鏝等を当接させ、当該位置の封止材3を融解する。
これにより取付孔33が設けられ、図5に示すように、この取付孔33を介して、外部導線5をハンダ6によってリボンワイヤ22に取り付けることで、太陽電池サブモジュール2から外部負荷へ電力を供給することができる。
【0034】
以上の工程により完成した太陽電池モジュール1は、部品点数が少ない上に、部材が軽量なため、全体として軽量化が実現されている。特に、太陽電池サブモジュール2と受光面側封止材31の間は充填材4により接着させ、太陽電池サブモジュール2と背面側封止材32の間は、充填材によらず、接着剤ないしは背面側封止材32の表面を溶融させることによる熱融着によって接着させることで、使用する充填材4を少なくし、軽量化とコスト削減が実現されている。一方において、太陽電池サブモジュール2がガラス基板2A上に薄膜を形成してなるため、ガラス基板2Aによって太陽電池モジュール1自体の機械的強度が保たれると共に、受光面側の薄膜との絶縁性も確保され、使用上の耐久性を損なっていない。また、側端面に充填材4が露出しない上、側端面から太陽電池サブモジュール2まで一定の長さが確保されているため、優れた耐湿性を備えている。
【0035】
なお、本発明の実施において、封止材3は表面にエンボス加工を施したものとしてもよい。加工の方法は格別限定されないが、一般的な方法によれば、受光面側封止材31ないし背面側封止材32をゴムのロールと凸凹の加工をした金属のロールの間に通して型押しをすることで表面にエンボス加工が施される。
【0036】
また、本発明においては、太陽電池サブモジュール2として、サブストレート構造のpnへテロ接合デバイスを構成するCIS系薄膜太陽電池を用いているが、これに限らず、スーパーストレート構造や、他の化合物系太陽電池によっても、ガラス基板を用いて機械的強度を保つことができれば、本発明に係る太陽電池モジュールを構成することができる。
【0037】
また、太陽電池モジュール1は、電気二重層コンデンサを一体的に取り付けて、蓄電可能なデバイスとすることもできる。
【0038】
また、本実施形態においては、太陽電池モジュール1を封止する封止材3は、その平面のサイズが太陽電池サブモジュール2の平面のサイズよりも大きく、四角形状の太陽電池サブモジュール2の平面と合同な形状からなるものとしているが、これに限らす、本発明の別の実施形態に係る太陽電池モジュール7においては、図11に示すように、封止材8の角部分を丸く面取りした形状としてもよい。
【0039】
この太陽電池モジュール7は、予め角部分を丸く面取りした形状の封止材8により太陽電池サブモジュール2を封止して作成するものとしてもよいし、封止材3を用いた太陽電池モジュール1において、封止材3の角部分を丸く切り取って作成するものとしてもよい。
これにより、角部分が丸みを帯びて、取り扱う際に角部分で怪我するのを防ぐことができ、安全である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの正面側を示した外観斜視図である。
【図2】本実施形態に係る太陽電池モジュールの背面側を示した外観斜視図である。
【図3】本実施形態に係る太陽電池モジュールの断面を示したA−A’断面図である。
【図4】本実施形態に係る太陽電池モジュールの断面を示したB−B’断面図である。
【図5】本実施形態に係る太陽電池モジュールのC部分を示した部分拡大図である。
【図6】本実施形態に係る太陽電池サブモジュールの正面側を示した外観斜視図である。
【図7】本実施形態に係る太陽電池サブモジュールの背面側を示した外観斜視図である。
【図8】本実施形態に係る基体の積層構造を示した模式図である。
【図9】本実施形態に係る太陽電池モジュールの製造工程における積層状態を示した模式図である。
【図10】本実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、外部導線を取付可能な取付孔を設けた状態を示した外観斜視図である。
【図11】本発明の別の実施形態に係る太陽電池モジュールを示した外観斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 太陽電池モジュール
2 太陽電池サブモジュール
21 基体
22 リボンワイヤ
2A ガラス基板
2B 金属裏面電極層
2C p型CIS系光吸収層
2D 高抵抗バッファ層
2E n型窓層(透明導電膜層)
3 封止材
31 受光面側封止材
32 背面側封止材
33 取付孔
4 充填材
5 外部導線
6 ハンダ
7 太陽電池モジュール
8 封止材
S 周縁部
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池デバイスを所定の封止材により封止した太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、国際的な環境保護に対する取り組みや光電変換効率の向上に伴って、太陽光等を受光して発電する太陽電池モジュールは、一般的な発電装置としてのみならず、電卓、携帯電話用充電器、道路交通標識や街路灯等の電源として、様々な場所で多様な用途に用いられている。
【0003】
用途に応じて要求される太陽電池モジュールの仕様あるいは構成は様々であるが、発電に太陽光等の受光が必要なことから、屋外での厳しい使用環境を想定して、外部からの湿分の浸入を防ぐなど、十分な耐候性を備えることは必須である。
【0004】
一方において、太陽電池モジュールの軽量化や小型化、さらには製造コストの軽減を図る場合等においては、採り得る構造は限られてくるし、太陽電池モジュールに用いる部材にも厳しい条件が課せられることとなって、十分な耐候性を確保することは困難である。
【0005】
この点、軽量化とコストダウンを図ったモジュールとして、特許文献1では、2枚のポリカーボネート板で挟持した太陽電池セルを、有機化酸化物を添加したEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)により接着保持した太陽電池モジュールが提案されている。
また、特許文献2では、EVA樹脂からなるシートで太陽電池セルを挟み込むと共に端部を含む全面にスペーサを配設してラミネートした太陽電池モジュールが提案されている。
また、特許文献3では、樹脂フィルムを太陽電池素子の表面保護シートとして用い、周端部をスペーサで密封した太陽電池モジュールが提案されている。
また、特許文献4では、受光面側フィルムと、受光面側充填材と、裏面側充填材と、裏面側フィルムとを重ねるように順次配設し、前記受光面側フィルムと前記裏面側フィルムの周縁部とを熱融着した太陽電池モジュールが提案されている。
また、特許文献5では、太陽電池セルの受光面側にフロントカバーが、その反対面側にバックカバーが配され、各カバーと太陽電池セルとの間に充填樹脂層が設けられ、前記太陽電池モジュールの周辺部でフロントカバーとバックカバーとが接合された太陽電池モジュールが提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−113077号公報
【特許文献2】特開2006−156873号公報
【特許文献3】特開2006−165434号公報
【特許文献4】特開2006−86390号公報
【特許文献5】特開2002−118276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の太陽電池モジュールでは、側端面において、太陽電池セルを挟持するポリカーボネート板の間からEVAが露出してしまい、この露出したEVA部分から湿分が浸入し、太陽電池セルを腐食してしまうという問題がある。
また、特許文献2及び特許文献3記載の太陽電池モジュールでは、いずれも、側端面にスペーサを配設することで外部からの湿分浸入を防いでいるが、スペーサを用いる分、余計なコストや製造工程を要することになるし、太陽電池セル(太陽電池素子)を覆うシートとスペーサとの密着性を高める手段を講じないと、シートとスペーサとの間から湿分が浸入してしまうという問題がある。
また、特許文献4及び特許文献5記載の太陽電池モジュールでは、いずれも、太陽電池セル(太陽電池素子)を充填材(充填樹脂層)により挟み込んだ構造をとっているため、太陽電池モジュールが厚くなる上、充填材(充填樹脂層)を多く使う分、コストがかかる。一方で、充填材(充填樹脂層)の量を減らした場合には、太陽電池モジュール全体の機械的強度や耐久性を保つことができないという問題を生じる。
【0008】
そこで、本発明は、軽量で、高い耐湿性を有すると共に、十分な機械的強度を備えた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る太陽電池モジュールは、ガラス基板上に太陽電池デバイスが形成された太陽電池サブモジュールと、所定の樹脂材料からなり、上記太陽電池サブモジュールの受光面側を被覆する受光面側封止材と、所定の樹脂材料からなり、上記太陽電池サブモジュールの受光面の反対側である背面側を被覆する背面側封止材と、上記受光面側封止材と上記太陽電池サブモジュールの間、及び上記太陽電池サブモジュールの端部近傍における上記受光面側封止材と上記背面側封止材の間に充填される充填材と、からなる太陽電池モジュールであって、上記受光面側封止材と上記背面側封止材の平面のサイズは、上記太陽電池サブモジュールの平面のサイズより大きく、上記太陽電池サブモジュールが、受光面側において、上記充填材により上記受光面側封止材と接着すると共に、背面側において、上記背面側封止材の表面に塗布された接着剤ないしは熱融着により上記背面側封止材と接着して、上記受光面側封止材と上記背面側封止材の間に接着保持され、上記充填材が、上記太陽電池サブモジュールの端部から上記受光面側封止材及び上記背面側封止材の端部に向かって徐々に薄く充填されると共に、上記受光面側封止材と上記背面側封止材とが、周縁部において直接接着されることにより、上記太陽電池サブモジュールが封止されていることを特徴とする。
これにより、太陽電池モジュールの側端面において充填材が露出することがないし、受光面側封止材と背面側封止材とが接着した部分を含め、太陽電池サブモジュールの側端面から太陽電池モジュールの側端面まで一定の距離があるため、湿分が浸入しにくく、高い耐湿性が得られる。
また、周縁部分に受光面側封止材と背面側封止材とが接着した部分が所定の長さだけ設けられていることに加えて、受光面側封止材と背面側封止材とが樹脂材料からなることから、使用時に落としたりしても破損しにくい。
【0010】
また、上記太陽電池デバイスは、CIS系薄膜太陽電池デバイスであるものとしてもよい。
これにより、太陽電池デバイスの一部に影がかかっても、発電が可能である。
【0011】
また、上記受光面側封止材及び上記背面側封止材は、フッ素樹脂からなるものとしてもよい。
フッ素樹脂は、太陽光等による光分解作用や、気温の変化による膨張収縮作用等に対して高い耐候性を持ち合わせている。
これにより、太陽電池モジュールの耐候性をより高めることができるし、表面に傷がつきにくい。
【0012】
また、上記充填材は、EVAからなるものとしてもよい。
なお、EVAとは、エチレン酢酸ビニル共重合体のことであり、比重が小さいために軽量な上、高い柔軟性と弾力性を持ち合わせる。
これにより、太陽電池サブモジュールと、受光面側封止材及び背面側封止材とがしっかりと接着される。また、太陽電池モジュールを軽量化できると共に、使用時における衝撃を吸収することができる。
【0013】
また、上記受光面側封止材ないし上記背面側封止材は、表面にエンボス加工が施されているものとしてもよい。
これにより、クッション性が得られる他、美観もよく、手触りもよい。
【0014】
また、上記受光面側封止材と上記背面側封止材の縁辺は、角部が丸みを帯びた面取り状に形成されているものとしてもよい。
これにより、太陽電池モジュールを取り扱う際に角部分で怪我するのを防ぐことができ、安全である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、太陽電池モジュールを軽量なものとすることができる。また、太陽電池モジュールの側端面に充填材が露出しない上、当該側端面から太陽電池サブモジュールまで一定の長さが確保されているため、優れた耐湿性を備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の第一の実施の形態に係る太陽電池モジュールについて、図を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る太陽電池モジュール1は、太陽光等を受光して発電する太陽電池サブモジュール2と、この太陽電池サブモジュール2全体を封止する封止材3とからなる。
そして、図2に示すように、封止材3に設けられた取付孔33を介して、太陽電池サブモジュール2で発生した電力を外部に出力するためのリボンワイヤ22に、外部負荷と電気的に接続した外部導線5を取り付けることで、太陽電池サブモジュール2で発生した電力を外部負荷に導出することができる。
【0017】
封止材3は、太陽電池サブモジュール2を封止して外部からの湿分流入を防ぐ保護シートである。
この封止材3は、図3及び図4に示すように、太陽電池モジュール1の受光面側を覆う受光面側封止材31と、受光面とは反対側の面(以下、「背面」という。)を覆う背面側封止材32とからなる。
【0018】
この受光面側封止材31と背面側封止材32は、図1及び図2に示すように、その平面のサイズが太陽電池サブモジュール2の平面のサイズよりも大きく、太陽電池サブモジュール2の平面全体を覆うことができる。
【0019】
また、少なくとも背面側封止材32は、表面に接着剤が塗布されており、太陽電池サブモジュール2を受光面側封止材31とで挟んでラミネート処理を施したときに、太陽電池サブモジュール2及び受光面側封止材31と直接接着する。
なお、背面側封止材32を、太陽電池サブモジュール2ないし受光面側封止材31と接着させる方法は、他に、熱融着によるものとしてもよい。熱融着は、背面側封止材32を加熱することにより、その表面を溶融させた上、接着させる太陽電池サブモジュール2ないし受光面側封止材32に圧接させてから冷却することで接着させることができる。
【0020】
また、受光面側封止材31と背面側封止材32の平面のサイズは、ラミネート処理を施す前のシート状の充填材4の平面のサイズよりも大きい。そのため、太陽電池サブモジュール2と充填材4とを、受光面側封止材31と背面側封止材32とで挟み込んでラミネート処理を施した際には、図3及び図4に示すように、熱溶融した充填材4は太陽電池サブモジュール2の端部から外側へ向かって徐々に薄くなるように広がる。
これにより、ラミネート処理が施された太陽電池モジュール1は、図3及び図4に示すように、受光面側封止材31と太陽電池サブモジュール2の間に充填された充填材4が、太陽電池サブモジュール2の端部から外部に向かって徐々に薄くなっていくように隙間なく充填される。また、受光面側封止材31と背面側封止材32とは、周縁部Sにおいて、背面側封止材32の表面に塗布された接着剤、ないしは熱融着によって一体的に接着している。
【0021】
さらに、封止材3には、図2及び図4に示すように、外部負荷と接続した外部導線5を太陽電池サブモジュール2と接続するため、背面側封止材32に取付孔33が設けられている。この取付孔33は、太陽電池サブモジュール2のリボンワイヤ22を覆う位置に設けられており、取付孔33からはリボンワイヤ22が露出する。
そして、図5に示すように、所定の幅を備えるリボンワイヤ22のみを露出させる取付孔33を介して、外部導線5がハンダ6によってリボンワイヤ22に取り付けられ、太陽電池サブモジュール2から外部負荷へ電力が導出される。
【0022】
このような封止材3には、例えば、透光性を有し、熱融着可能な熱可塑性樹脂等を用いることができる。このような材料としては、フッ素樹脂材料等が挙げられる。具体的な例としては、アフレックス(登録商標、旭硝子株式会社製)、テフゼル(登録商標、デュポン株式会社製)、テドラー(登録商標、デュポン株式会社製)、セレール(登録商標、株式会社クレハ製)、KFCフィルム(登録商標、株式会社クレハ製)等を用いることができる。
その他、熱溶融した状態で接着可能な接着剤を表面に塗布したPET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムを用いることもできる。
これらの材料からなる受光面側封止材31と背面側封止材32とを、ラミネート処理の際に、加熱及び加圧することにより、周縁部Sにおいて接着した封止材3とすることができる。
【0023】
また、受光面側封止材31及び背面側封止材32の厚さは、使用時における耐久性や軽量化の実現の観点から、厚さ50〜200μm程度が好適である。
【0024】
充填材4は、太陽電池サブモジュール2と受光面側封止材31の間、及び、太陽電池サブモジュール2の端部近傍における受光面側封止材31と背面側封止材32の間を隙間なく埋めると共に、これらを一体的に接着保持する。また、充填材4は、太陽電池サブモジュール2の受光面側に形成されている薄膜をヒートショックや湿分浸入から保護して耐久性を高めると共に、衝撃等の外力を緩和することにより薄膜に傷がつくのを防止して機械的強度を上げている。さらには、外観上の美観を向上させている。一方において、本実施形態における太陽電池モジュール1は、背面側封止材32と太陽電池サブモジュール2の間に充填材4を充填させていない。これは、太陽電池サブモジュール2の背面側にはガラス基板しか表れず、受光面側に形成されている薄膜との絶縁性も保たれているために、受光面側ほど湿分に対処する必要がなく、外力等に対する耐久性も十分に確保されていること、また、太陽電池サブモジュール2がガラス基板を備えることで機械的強度が保たれていることで可能となっている。
この充填材4は、太陽電池サブモジュール2と受光面側封止材31との間に挟み込んだ状態で加熱しながらプレスすることで溶けて広がり、その隙間を埋めると共に、太陽電池サブモジュール2と封止材3とを接着することができる。
この充填材4の材料としては、例えば、シート状のEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)を用いることができる。
【0025】
太陽電池サブモジュール2は、いわゆるCIS系薄膜太陽電池デバイスにより構成され、図6及び図7に示すように、太陽光等を受光して発電する基体21と、この基体21に取り付けられたリボンワイヤ22とからなる。
【0026】
基体21は、図8に示すように、青板ガラス等からなるガラス基板2A上に、モリブデン(Mo)等の金属からなる金属裏面電極層2B、p型CIS光吸収層2C、高抵抗バッファ層2D、n型窓層(透明導電膜)2Eが順次積層したサブストレート構造のpnへテロ接合デバイスを形成してなる。
【0027】
ここで、p型CIS光吸収層2Cは、p型の導電性を有するI−III −VI2 族カルコパイライト構造の厚さ1〜3μmの薄膜であり、例えば、CuInSe2 、Cu(InGa)Se2 、Cu(InGa)(SSe)2 等の多元化合物半導体薄膜である。p型CIS光吸収層2Cとしては、その他、セレン化物系CIS系光吸収層、硫化物系CIS系光吸収層及びセレン化・硫化物系CIS系光吸収層があり、前記セレン化物系CIS系光吸収層は、CuInSe2 、Cu(InGa)Se2 又はCuGaSe2 からなり、前記硫化物系CIS系光吸収層は、CuInS2 、Cu(InGa)S2 、CuGaS2 からなり、前記セレン化・硫化物系CIS系光吸収層は、CuIn(SSe)2 、Cu(InGa)(SSe)2 、CuGa(SSe)2 、また、表面層を有するものとしては、CuIn(SSe)2 を表面層として持つCuInSe2 、CuIn(SSe)2 を表面層として持つCu(InGa)Se2 、CuIn(SSe)2 を表面層として持つCu(InGa)(SSe)2 、CuIn(SSe)2 を表面層として持つCuGaSe2 、Cu(InGa)(SSe)2 を表面層として持つCu(InGa)Se2 、Cu(InGa)(SSe)2 を表面層として持つCuGaSe2 、CuGa(SSe)2 を表面層として持つCu(InGa)Se2 又はCuGa(SSe)2 を表面層として持つCuGaSe2 がある。
このp型CIS光吸収層2Cは、セレン化/硫化法や多元同時蒸着法により製膜されている。
【0028】
リボンワイヤ22は、導電性を有する帯状の金属からなり、基体21において発生した電力を外部負荷に導出するための導線である。このリボンワイヤ22は、発電した電力を外部に出力するために基体21上に形成された取出電極(図示省略)にハンダ付けされると共に、基体21の短辺側の縁辺部分から背面へ回り込むように折り曲げられており、背面側においてリボンワイヤ22と外部導線5とを接続することにより、基体21において発生した電力が外部に導出される。
また、このリボンワイヤ22は、図5に示すように、外部導線5の太さないしは直径に応じて、外部導線5をリボンワイヤ22にハンダ6によって取り付けた際に、外部導線5がリボンワイヤ22からはみ出さないだけの横幅を有している。
【0029】
次に、本実施形態に係る太陽電池モジュール1の製造工程について説明する。
太陽電池モジュール1は、受光面側封止材31、充填材4、太陽電池サブモジュール2、及び背面側封止材32を積層させてラミネート処理を施す工程と、封止材3(背面側封止材32)に取付孔33を設ける工程を経て製造される。
【0030】
ラミネート処理においては、まず、図9に示すように、受光面側封止材31上に太陽電池サブモジュール2と略同じサイズのシート状の充填材4を載せると共に、所定の製膜工程を経て作成された太陽電池サブモジュール2を受光面側が充填材4に当接するように載せ、さらにその上に背面側封止材32を載せて各部材を積層させる。
そして、ラミネート処理装置内に、上記の通り積層した各部材を設置し、当該ラミネート処理装置内を減圧すると共に充填材4の軟化点以上に加熱する。さらに、上記各部材を積層した状態でプレスすることにより、熱溶融した充填材4が、受光面側封止材31と太陽電池サブモジュール2の間、及び、太陽電池サブモジュール2の端部近傍の受光面側封止材31と背面側封止材32の間に隙間なく広がると共に、各部材間が充填材4により一体的に接着される。また、太陽電池サブモジュール2と背面側封止材32の間は、封止材3として熱融着可能な樹脂材料を用いた場合には、背面側封止材32の表面が熱により溶融して両部材を接着し、封止材3の表面に接着剤を塗布した場合には、熱により溶融した接着剤を介して両部材が接着される。
【0031】
また、受光面側封止材31と背面側封止材32が、シート状の充填材4よりも大きいため、図3又は図4に示すように、太陽電池サブモジュール2の端部から外側へ向かって徐々に充填材4が薄くなり、周縁部分Sにおいては、受光面側封止材31と背面側封止材32とは直接接着される。なお、封止材3として熱融着可能な樹脂材料を用いた場合には、受光面側封止材31と背面側封止材32の表面が熱により溶融して互いに接着し、封止材3の表面に接着剤を塗布した場合には、熱により溶融した接着剤を介して受光面側封止材31と背面側封止材32とが接着される。この結果、封止材3の周端部Sの側端面には充填材4が露出しない。
以上のように各部材が接着した状態で温度を低下させると、充填材4が硬化してラミネート処理が完了する。
【0032】
なお、上記ラミネート処理においては、受光面側封止材31と太陽電池サブモジュール2の間のみならず、太陽電池サブモジュール2と背面側封止材32の間にもシート状の充填材4を挟みこんで各部材を接着することもできる。
【0033】
上記の通りラミネート処理が完了すると、外部導線5を取り付けるための取付孔33を背面側封止材32に形成する。取付孔33は、図10に示すように、リボンワイヤ22上の背面側封止材32に、リボンワイヤ22のみが露出するように形成する。この際、取付孔33の直径がリボンワイヤ22の横幅よりも小さくなるように形成する。
また、取付孔32の形成の仕方は、例えば、封止材3の融点以上に加熱した鏝等を当接させ、当該位置の封止材3を融解する。
これにより取付孔33が設けられ、図5に示すように、この取付孔33を介して、外部導線5をハンダ6によってリボンワイヤ22に取り付けることで、太陽電池サブモジュール2から外部負荷へ電力を供給することができる。
【0034】
以上の工程により完成した太陽電池モジュール1は、部品点数が少ない上に、部材が軽量なため、全体として軽量化が実現されている。特に、太陽電池サブモジュール2と受光面側封止材31の間は充填材4により接着させ、太陽電池サブモジュール2と背面側封止材32の間は、充填材によらず、接着剤ないしは背面側封止材32の表面を溶融させることによる熱融着によって接着させることで、使用する充填材4を少なくし、軽量化とコスト削減が実現されている。一方において、太陽電池サブモジュール2がガラス基板2A上に薄膜を形成してなるため、ガラス基板2Aによって太陽電池モジュール1自体の機械的強度が保たれると共に、受光面側の薄膜との絶縁性も確保され、使用上の耐久性を損なっていない。また、側端面に充填材4が露出しない上、側端面から太陽電池サブモジュール2まで一定の長さが確保されているため、優れた耐湿性を備えている。
【0035】
なお、本発明の実施において、封止材3は表面にエンボス加工を施したものとしてもよい。加工の方法は格別限定されないが、一般的な方法によれば、受光面側封止材31ないし背面側封止材32をゴムのロールと凸凹の加工をした金属のロールの間に通して型押しをすることで表面にエンボス加工が施される。
【0036】
また、本発明においては、太陽電池サブモジュール2として、サブストレート構造のpnへテロ接合デバイスを構成するCIS系薄膜太陽電池を用いているが、これに限らず、スーパーストレート構造や、他の化合物系太陽電池によっても、ガラス基板を用いて機械的強度を保つことができれば、本発明に係る太陽電池モジュールを構成することができる。
【0037】
また、太陽電池モジュール1は、電気二重層コンデンサを一体的に取り付けて、蓄電可能なデバイスとすることもできる。
【0038】
また、本実施形態においては、太陽電池モジュール1を封止する封止材3は、その平面のサイズが太陽電池サブモジュール2の平面のサイズよりも大きく、四角形状の太陽電池サブモジュール2の平面と合同な形状からなるものとしているが、これに限らす、本発明の別の実施形態に係る太陽電池モジュール7においては、図11に示すように、封止材8の角部分を丸く面取りした形状としてもよい。
【0039】
この太陽電池モジュール7は、予め角部分を丸く面取りした形状の封止材8により太陽電池サブモジュール2を封止して作成するものとしてもよいし、封止材3を用いた太陽電池モジュール1において、封止材3の角部分を丸く切り取って作成するものとしてもよい。
これにより、角部分が丸みを帯びて、取り扱う際に角部分で怪我するのを防ぐことができ、安全である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの正面側を示した外観斜視図である。
【図2】本実施形態に係る太陽電池モジュールの背面側を示した外観斜視図である。
【図3】本実施形態に係る太陽電池モジュールの断面を示したA−A’断面図である。
【図4】本実施形態に係る太陽電池モジュールの断面を示したB−B’断面図である。
【図5】本実施形態に係る太陽電池モジュールのC部分を示した部分拡大図である。
【図6】本実施形態に係る太陽電池サブモジュールの正面側を示した外観斜視図である。
【図7】本実施形態に係る太陽電池サブモジュールの背面側を示した外観斜視図である。
【図8】本実施形態に係る基体の積層構造を示した模式図である。
【図9】本実施形態に係る太陽電池モジュールの製造工程における積層状態を示した模式図である。
【図10】本実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、外部導線を取付可能な取付孔を設けた状態を示した外観斜視図である。
【図11】本発明の別の実施形態に係る太陽電池モジュールを示した外観斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 太陽電池モジュール
2 太陽電池サブモジュール
21 基体
22 リボンワイヤ
2A ガラス基板
2B 金属裏面電極層
2C p型CIS系光吸収層
2D 高抵抗バッファ層
2E n型窓層(透明導電膜層)
3 封止材
31 受光面側封止材
32 背面側封止材
33 取付孔
4 充填材
5 外部導線
6 ハンダ
7 太陽電池モジュール
8 封止材
S 周縁部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に太陽電池デバイスが形成された太陽電池サブモジュールと、
所定の樹脂材料からなり、上記太陽電池サブモジュールの受光面側を被覆する受光面側封止材と、
所定の樹脂材料からなり、上記太陽電池サブモジュールの受光面の反対側である背面側を被覆する背面側封止材と、
上記受光面側封止材と上記太陽電池サブモジュールの間、及び上記太陽電池サブモジュールの端部近傍における上記受光面側封止材と上記背面側封止材の間に充填される充填材と、からなる太陽電池モジュールであって、
上記受光面側封止材と上記背面側封止材の平面のサイズは、上記太陽電池サブモジュールの平面のサイズより大きく、
上記太陽電池サブモジュールが、受光面側において、上記充填材により上記受光面側封止材と接着すると共に、背面側において、上記背面側封止材の表面に塗布された接着剤ないしは熱融着により上記背面側封止材と直接接着して、上記受光面側封止材と上記背面側封止材の間に接着保持され、
上記充填材が、上記太陽電池サブモジュールの端部から上記受光面側封止材及び上記背面側封止材の端部に向かって徐々に薄く充填されると共に、上記受光面側封止材と上記背面側封止材とが、周縁部において直接接着されることにより、上記太陽電池サブモジュールが封止されている、
ことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
上記太陽電池デバイスは、CIS系薄膜太陽電池デバイスである、
請求項1記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
上記充填材は、EVAからなる、
請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
上記受光面側封止材ないし上記背面側封止材は、表面にエンボス加工が施されている、
請求項1乃至3いずれかの項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
上記受光面側封止材と上記背面側封止材の縁辺は、角部が丸みを帯びた面取り状に形成されている、
請求項1乃至4いずれかの項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項1】
ガラス基板上に太陽電池デバイスが形成された太陽電池サブモジュールと、
所定の樹脂材料からなり、上記太陽電池サブモジュールの受光面側を被覆する受光面側封止材と、
所定の樹脂材料からなり、上記太陽電池サブモジュールの受光面の反対側である背面側を被覆する背面側封止材と、
上記受光面側封止材と上記太陽電池サブモジュールの間、及び上記太陽電池サブモジュールの端部近傍における上記受光面側封止材と上記背面側封止材の間に充填される充填材と、からなる太陽電池モジュールであって、
上記受光面側封止材と上記背面側封止材の平面のサイズは、上記太陽電池サブモジュールの平面のサイズより大きく、
上記太陽電池サブモジュールが、受光面側において、上記充填材により上記受光面側封止材と接着すると共に、背面側において、上記背面側封止材の表面に塗布された接着剤ないしは熱融着により上記背面側封止材と直接接着して、上記受光面側封止材と上記背面側封止材の間に接着保持され、
上記充填材が、上記太陽電池サブモジュールの端部から上記受光面側封止材及び上記背面側封止材の端部に向かって徐々に薄く充填されると共に、上記受光面側封止材と上記背面側封止材とが、周縁部において直接接着されることにより、上記太陽電池サブモジュールが封止されている、
ことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
上記太陽電池デバイスは、CIS系薄膜太陽電池デバイスである、
請求項1記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
上記充填材は、EVAからなる、
請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
上記受光面側封止材ないし上記背面側封止材は、表面にエンボス加工が施されている、
請求項1乃至3いずれかの項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
上記受光面側封止材と上記背面側封止材の縁辺は、角部が丸みを帯びた面取り状に形成されている、
請求項1乃至4いずれかの項に記載の太陽電池モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−194114(P2009−194114A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32599(P2008−32599)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】
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