説明

太陽電池封止材及びそれを用いた太陽電池モジュール

【課題】 無機顔料を配合する太陽電池封止材の絶縁抵抗の低下を防止する処方を提供する。
【解決手段】 エチレン・極性モノマー共重合体100重量部に、架橋剤5重量部以下、酸化チタンのような白色系無機顔料4〜50重量部及びトリアリルイソシアヌレートのような多不飽和化合物架橋助剤0.1〜5重量部を配合してなる太陽電池封止用エチレン共重合体組成物及び該エチレン共重合体組成物からなる封止材で太陽電池素子を封止してなる太陽電池モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールにおける太陽電池素子を固定するための太陽電池封止用エチレン共重合体組成物及び該エチレン共重合体組成物からなる封止材により太陽電池素子を封止した太陽電池モジュールに関する。さらに詳しくは、柔軟性、加工性、接着性、架橋性、絶縁性に優れ、太陽電池素子の下部側に好適に使用される封止材用エチレン共重合体組成物及び該エチレン共重合体組成物からなる封止材を使用した太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
無尽蔵な自然エネルギーを利用し、二酸化炭素の削減やその他の環境問題の改善が図れる水力発電、風力発電並びに太陽光発電などが脚光を浴びている。このうち太陽光発電は、太陽電池モジュールの発電効率等の性能向上が著しい一方、価格の低下が進んだこと、国や自治体が住宅用太陽光発電システム導入促進事業を進めてきたことから、近年その普及が著しく進んでいる。
【0003】
太陽光発電は、シリコンセル半導体(太陽電池素子)を用いて太陽光エネルギーを直接電気エネルギーに変換するが、ここで用いられている太陽電池素子は直接外気と接触するとその機能が低下するため、太陽電池素子を封止材で挟み、緩衝とともに、異物の混入や水分等の侵入を防いでいる。この封止材は、透明で光による発電を阻害しないこと、熱によって溶け出し、崩れるようなことはしないこと(耐熱性)、保護材であるガラスやバックシートとの接着が良好であること、太陽光によって著しい劣化や黄変を起こさないことなど、様々な性能が求められ、これを満たすために種々の配合処方が検討されている。例えば、透明性、耐熱性、接着性、柔軟性、成形性、耐久性などを勘案した代表的な処方として、エチレン・酢酸ビニル共重合体に有機過酸化物及びシランカップリング剤の配合物を太陽電池封止材として使用することが知られている(例えば特許文献1参照)。この提案における具体的な配合例においては、耐熱性や接着性を重視するところから、有機過酸化物やシランカップリング剤はかなり多量に配合されている。
【0004】
その一方で太陽電池では、発電した電気を確実に配線を経由して取り出せることが必要であり、そのため封止材には、電気がリークしない電気絶縁性が求められている。例えば、JIS C8917においては、モジュールの耐久試験において、高温試験(85℃×1000時間)、耐湿試験(85℃×90±5%RH)で絶縁特性が100MΩ以上あることが規定されている。しかるに上記提案において具体例で示された封止材では、絶縁抵抗率が低下する場合があり、配合処方によっては問題になることがあった。とくに近年、下部保護材側の封止材には、酸化チタンを配合することによって発電効率を高めることが行なわれているが、酸化チタンを配合したエチレン・極性モノマー共重合体封止材、例えば0.5重量%以上の酸化チタンを配合したエチレン・極性モノマー共重合体封止材においては、とくに絶縁抵抗率の低下が大きくなることを見出した。
【0005】
【特許文献1】特公昭62−14111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、酸化チタンのような白色系無機顔料を配合した太陽電池封止材においても、耐熱性、接着性、柔軟性、成形性、耐久性などが優れると共に、絶縁抵抗の低下を防ぎ、絶縁特性に優れた封止材となり得るエチレン共重合体組成物及び該エチレン共重合体組成物からなる封止材により太陽電池素子を封止してなる太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明によれば、エチレン・極性モノマー共重合体に白色系無機顔料、架橋剤及びアリル基及び/又は(メタ)アクリロキシ基を含有する架橋助剤を配合してなる太陽電池封止用エチレン共重合体組成物が提供される。このようなエチレン共重合体組成物には、好ましくはさらにシランカップリング剤が配合される。
【0008】
本発明によればまた、上記エチレン共重合体組成物からなる封止材及び該封止材で太陽電池素子が封止されてなる太陽電池モジュールが提供される。とりわけ太陽電池素子が、無機顔料不含の架橋された透明な太陽電池封止材と白色系無機顔料を含有する上記架橋されたエチレン共重合体組成物からなる封止材とにより封止されてなる太陽電池モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐熱性、接着性、柔軟性、成形性、耐久性などが優れると共に、絶縁特性の優れた白色系太陽電池封止材及び該封止材により太陽電池素子を封止してなる太陽電池モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における太陽電池封止用エチレン共重合体組成物は、エチレン・極性モノマー共重合体に必須成分として白色系無機顔料、架橋剤及びアリル基及び/又は(メタ)アクリロキシ基を有する架橋助剤を必須成分として含有するものである。上記エチレン・極性モノマー共重合体の極性モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル等の不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸、これら不飽和カルボン酸の塩、一酸化炭素、二酸化硫黄などの一種又は二種以上などを例示することができる。不飽和カルボン酸の塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの1価金属、マグネシウム、カルシウム、亜鉛などの多価金属の塩などを挙げることができる。
【0011】
好適なエチレン・極性モノマー共重合体としてより具体的には、エチレン・酢酸ビニル共重合体のようなエチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・アクリル酸n−ブチル共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル・メタクリル酸共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体及びそのアイオノマーなどを代表例として例示することができる。これらの中では、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体が特に好ましい。
【0012】
本発明において使用されるエチレン・極性モノマー共重合体における好適な極性モノマー含量は、その種類によっても若干異なる。例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体やエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体の場合には、耐熱性、接着性、柔軟性、成形性、耐久性、絶縁性などを考慮すると、極性モノマー含有量が10〜40重量%、好ましくは15〜30重量%のものが好ましく、またエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマーにおいては、エチレン含量が65〜95重量%、好ましくは70〜90重量%、不飽和カルボン酸含量が2〜20重量%、好ましくは5〜20重量%、中和度が90%以下、好ましくは80%以下のものが好ましい。
【0013】
このようなエチレン・極性モノマー共重合体としては、成形加工性、機械的強度などを考慮すると、JIS K7210−1999、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR、以下同じ)が1〜100g/10分、とくに5〜50g/10分のものを使用するのが好ましい。これらエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体及びエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合により得ることができる。またエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーは、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体と金属化合物を反応させることによって得ることができる。
【0014】
本発明において、上記エチレン・極性モノマー共重合体に配合される白色系無機顔料は、着色あるいは発電効率向上のために配合するものであって、例えば酸化チタン、炭酸カルシウム、亜鉛華、鉛白、リトポン、バライト、沈降性硫酸バリウム、石膏などを例示することができる。とくに太陽電池素子の受光側と反対面の封止材に使用するときに、発電効率の向上に効果的であるところから、酸化チタンを使用するのが好ましい。無機顔料の好適な配合量は、発電効率、絶縁抵抗などを考慮すると、エチレン・極性モノマー共重合体100重量部当たり、0.5〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、特に好ましくは4〜50重量部の範囲である。
【0015】
本発明の太陽電池封止用エチレン共重合体組成物には、太陽電池モジュールに組み込まれた状態における高温使用時の溶融流れ防止等の耐熱性を付与するために、架橋剤が配合される。架橋剤としては、太陽電池モジュールの生産性を考慮すると、分解温度(半減期が1時間である温度)が90〜180℃、とくに100〜150℃の有機過酸化物を用いるのが好ましい。このような有機過酸化物として例えば第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(119℃)、第3ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルイソプロピルカーボネート(121℃)、第3ブチルパーオキシアセテート(123℃)、第3ブチルパーオキシベンゾエート(125℃)、第3ブチルクミルパーオキサイド(142℃)、ジクミルパーオキサイド(135℃)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン(140℃)、ジ第3ブチルパーオキサイド(149℃)、1,3−ビス(2−第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(137℃)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(118℃)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(112℃)、1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(112℃)、1,1−ビス(第3アミルパーオキシ)シクロヘキサン(112℃)、2,2−ビス(第3ブチルパーオキシ)ブタン(112℃)、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、第3ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロルベンゾイルパーオキサイド、第3ブチルパーオキシイソブチレート(102℃)、n−ブチル−4,4−ビス(第3ブチルパーオキシ)バレレート(129℃)、エチル−3,3−ビス(第3ブチルパーオキシ)ブチレート(135℃)、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、ジクロヘキサノンパーオキサイドなどが挙げられる(括弧内の温度は1時間半減期温度)。架橋剤はエチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対し、0.1〜5重量部、とくに0.5〜3重量部の割合で配合するのが効果的である。
【0016】
架橋剤として有機過酸化物を使用する代わりに、光によりエチレン共重合体組成物の架橋が可能となるように光増感剤を使用することもできる。光増感剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジベンジル、5−ニトロアセナフテン、ヘキサクロロシクロペンタジエン、パラニトロジフェニル、パラニトロアニリン、2,4,6−トリニトロアニリン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザー1,9−ベンザンスロンなどを上げることができる。これら光増感剤は、エチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対し、0.1〜5重量部、とくに0.5〜3重量部の割合で配合するのが効果的である。
【0017】
本発明において、上記エチレン・極性モノマー共重合体に配合される架橋助剤は、アリル基や(メタ)アクリロキシ基などの不飽和基を1個以上、好ましくは2個以上有する化合物であり、具体的には、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエートのようなポリアリル化合物、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートのようなポリ(メタ)アクリロキシ化合物などを挙げることができる。これらの中では、とくにトリアリルイソシアヌレートやジアリルフタレートが架橋特性、耐久性の点から好適である。このような架橋助剤の配合は、ゲル分率の向上及び絶縁抵抗の低下防止に効果的である。架橋助剤はエチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対し、0.1〜5重量部、とくに0.1〜3重量部の割合で配合するのが効果的である。
【0018】
本発明の太陽電池封止材においては、太陽電池素子や保護材との接着性改良のために上記エチレン・極性モノマー共重合体にシランカップリング剤を適量配合することが好ましい。このようなシランカップリング剤としては、ビニル基や(メタ)アクリロキシ基のような不飽和基、ハロアルキル基、アミノ基、メルカプト基及びエポキシ基から選ばれる基とともに、アルコキシ基、アシル基のような加水分解可能な基を有するシランカップリング剤を挙げることができる。これらの具体例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどを例示することができる。これらの中では、少量の使用で接着性改良効果の大きいことから、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどを使用することが好ましい。これらシランカップリング剤は、接着性改良効果及び絶縁抵抗を考慮すると、エチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対し、0.0001〜1.0重量部、とくに0.01〜1.0重量部の割合で配合するのが効果的である。
【0019】
また太陽光線中の紫外線に基づく封止材の劣化を防ぐために、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤の少なくとも一種を配合するのが効果的である。酸化防止剤として、例えば各種ヒンダードフェノール系やホスファイト系のものが好適に使用することができる。また光安定剤としては、ヒンダードアミン系のものが好適に使用することができる。また紫外線吸収剤としては例えば2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフエノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフエノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2−カルボキシベンゾフエノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフエノンなどのベンゾフエノン系、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第3ブチルフエニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフエニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−第3オクチルフエニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系、フエニルサリチレート、p−オクチルフエニルサリチレートなどのサリチル酸エステル系のものなどが使用できる。これら、酸化防止剤、光安定剤及び紫外線吸収剤は、エチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対し、それぞれ5重量部以下、とくに0.1〜3重量部の割合で配合するのが効果的である。
【0020】
本発明の太陽電池封止用エチレン共重合体組成物にはまた、任意にその他添加剤を配合することができる。例えば変色防止剤として、カドミウム、バリウム等の金属の脂肪酸塩を配合することができる。また下部保護材側の封止材においては、透明性は要求されないので、着色、発電効率向上などの目的で、有機顔料、染料、無機充填剤などを配合することができる。例えばガラスビーズや光拡散剤などを例示することができる。
【0021】
上記本発明のエチレン共重合体組成物は、一般にはシート状に成形して太陽電池封止材として使用される。封止材用シートの成形は、T−ダイ押出機、カレンダー成形機、インフレーション成形機などを使用する公知の方法によって行なうことができる。例えばエチレン・極性モノマー共重合体、白色系無機顔料、有機過酸化物及び架橋助剤、必要に応じて添加されるシランカップリング剤、その他の添加剤を予めドライブレンドして、押出機のホッパーから供給し、有機過酸化物を配合する場合にはそれが実質的に分解しない成形温度でシート状に押出成形することによって得ることができる。勿論、上記各種添加剤は、マスターバッチにより添加することができる。シート厚みは特に規定されないが、通常0.2〜1.2mm程度である。太陽電池素子の封止状態においては、上記本発明のエチレン共重合体組成物は、耐熱性の面から、エチレン共重合体が架橋されていることが好ましい。この場合、エチレン共重合体組成物の架橋度(後述するゲル分率)は、絶縁特性を考慮すると、70〜98%の範囲にあることが好ましく、特に80〜98%の範囲にあることが好ましい。架橋は、本発明のエチレン共重合体組成物を100〜200℃程度に加熱することによって行なうことができる。
【0022】
このような封止材用シートを用い、太陽電池素子を上下の保護材で固定することにより太陽電池モジュールを製作することができる。このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができる。例えば上部透明保護材/封止材用シート/太陽電池素子/封止材用シート/下部保護材のように太陽電池素子の両側から封止材で挟む構成のものを挙げることができる。このような構成の太陽電池モジュールにおいては、下部保護材側の封止材として本発明のものを使用し、上部透明保護材の封止材としては透明性良好なものを使用する必要性があるところから、本発明の封止剤から無機顔料を除いた架橋性エチレン共重合体組成物を用いるのが好ましい。また他のタイプの太陽電池モジュールとして、上部透明保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子、例えばフッ素樹脂系シート上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作成したものの上に封止材用シートと下部保護材を形成させるような構成のものを例示することができ、この封止材用シートとして本発明のエチレン共重合体組成物を使用することができる。
【0023】
太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、ガリウムー砒素、銅ーインジウムーセレン、カドミウムーテルルなどのIIIーV族やIIーVI族化合物半導体系等の各種太陽電池素子を用いることができる。本発明の封止材は、とくにアモルファス太陽電池素子、例えばアモルファスシリコンの封止に有用である。
【0024】
太陽電池モジュールを構成する上部保護材としては、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂などを例示することができる。また下部保護材としては、金属や各種熱可塑性樹脂フイルムなどの単体もしくは多層のシートであり、例えば、錫、アルミ、ステンレススチールなどの金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィンなどの1層もしくは多層のシートを例示することができる。本発明の封止材は、これらの上部又は下部保護材に対して良好な接着性を示す。
【0025】
太陽電池モジュールの製造は、架橋剤が実質的に分解せず、かつ本発明の封止材用シートが溶融するような温度で、太陽電池素子や保護材に該封止材用シートを仮接着し、次いで昇温して充分な接着と架橋を行なえばよい。最終的には耐熱性良好な太陽電池モジュールを得るために、封止材用シート層のゲル分率(試料1gをキシレン100mlに浸漬し、110℃、24時間加熱した後、20メッシュ金網で濾過し未溶融分の重量分率を測定)が、好ましくは70〜98%、特に好ましくは80〜98%程度になるように架橋するのがよい。したがってこれら諸条件を満足できるように添加剤処方を選べばよく、例えば架橋剤等の種類及び配合量を適宜選択すればよい。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。尚、実施例及び比較例で用いた原料及び物性評価方法を以下に示す。
【0027】
1.原料
(1)EVA樹脂A:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量:28重量%、MFR:15g/10分)
(2)EVA樹脂B:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量:19重量%、MFR:15g/10分)
(3)白色MB:TiO60重量%配合マスターバッチ、ベースポリマーは上記EVA樹脂A
(4)架橋剤A:2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、商品名:ルパゾール101、アトフィナ吉富(株)製、1時間半減期温度:140℃
(5)架橋剤B:第3ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、商品名:ルパゾールTBEC、アトフィナ吉富(株)製、1時間半減期温度:121℃
(6)架橋助剤:トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、関東化学(株)製
(7)シランカップリング剤:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、商品名:KBM503、信越化学(株)製
【0028】
2.物性測定方法
(1)ゲル分率の測定
下記例におけるコンパウンドを、150℃の圧縮成形機を用いて15分間加圧下で加熱することにより、厚み1mmの架橋シートを作成した。この架橋シートから約1gを精秤して(W1)、100mlのキシレンに浸漬し、110℃、24時間加熱した後、金網で濾過して不溶解分を捕集して110℃で真空乾燥し、その重量を求めた(W2)。ゲル分率は、以下の式により求めた。
ゲル分率(%)=W2/W1×100
【0029】
(2)絶縁抵抗値
前記(1)の手段により作成した架橋シートを、JIS K−6911に従い、所定のダンベルに打ち抜き、85℃、85%RHの条件に放置し、初期値、1週間後及び3週間後の絶縁抵抗を、体積抵抗率測定機(Aligent Technologies社製)を用いて、1000V、加電時間60秒の条件で測定した。
【0030】
[実施例1]
上記EVA樹脂Aペレットを4585g、白色MBを415g、架橋剤A(商品名:ルパゾール101)を60g、架橋助剤(TAIC)を100g及びシランカップリング剤(商品名:KBM503)を25g混合し、含浸のため一昼夜放置した。得られた含浸ペレットを、押出機(L/D=26、フルフライトスクリュー、圧縮比2.6)を用いて加工温度100℃にて混練し、均一なコンパウンドとした。得られたコンパウンドを用いて、上記(1)〜(2)の方法により、ゲル分率及び絶縁抵抗を評価した。結果を表1に示す。
【0031】
[実施例2]
実施例1において、シランカップリング剤(商品名:KBM503)の使用量を5gに変更した以外は、実施例1と同様に行なった。得られたコンパウンドを用いて、上記(1)〜(2)の方法により、ゲル分率及び絶縁抵抗を評価した。結果を表1に示す。
【0032】
[実施例3]
実施例1において、EVA樹脂A4585gの代わりにEVA樹脂A2292.5g、EVA樹脂Bを2292.5gとし、シランカップリング剤(商品名:KBM503)の使用量を5gに変更した以外は、実施例1と同様に行なった。得られたコンパウンドを用いて、上記(1)〜(2)の方法により、ゲル分率及び絶縁抵抗を評価した。結果を表1に示す。
【0033】
[比較例1]
架橋助剤を配合しなかった以外は、実施例1と同様に行なった。得られたコンパウンドを用いて、上記(1)〜(2)の方法により、ゲル分率及び絶縁抵抗を評価した。結果を表1に示す。
【0034】
[比較例2]
架橋助剤を配合しなかった以外は、実施例2と同様に行なった。得られたコンパウンドを用いて、上記(1)〜(2)の方法により、ゲル分率及び絶縁抵抗を評価した。結果を表1に示す
【0035】
[比較例3]
架橋助剤を配合しなかった以外は、実施例3と同様に行なった。得られたコンパウンドを用いて、上記(1)〜(2)の方法により、ゲル分率及び絶縁抵抗を評価した。結果を表1に示す。
【0036】
[比較例4]
架橋剤Aの代わりに架橋剤B(ルパゾールTBEC)を用い、架橋助剤を配合しなかった以外は、実施例1と同様に行なった。得られたコンパウンドを用いて、上記(1)〜(2)の方法により、ゲル分率及び絶縁抵抗を評価した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・極性モノマー共重合体に白色系無機顔料、架橋剤及びアリル基及び/又は(メタ)アクリロキシ基を含有する架橋助剤を配合してなる太陽電池封止用エチレン共重合体組成物。
【請求項2】
エチレン・極性モノマー共重合体が、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体及びエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の太陽電池封止用エチレン共重合体組成物。
【請求項3】
エチレン・酢酸ビニル共重合体が、酢酸ビニル含量が10〜40重量%の共重合体である請求項2記載の太陽電池封止用エチレン共重合体組成物。
【請求項4】
エチレン・極性モノマー共重合体100重量部当たり、白色系無機顔料が0.5〜50重量部配合されていることを特徴とする請求項1〜3記載の太陽電池封止用エチレン共重合体組成物。
【請求項5】
白色系無機顔料が、酸化チタンである請求項1〜4記載の太陽電池封止用エチレン共重合体組成物。
【請求項6】
架橋剤が、1時間半減期温度が100〜150℃の有機過酸化物である請求項1〜5記載の太陽電池封止用エチレン共重合体組成物。
【請求項7】
エチレン・極性モノマー共重合体100重量部当たり、架橋助剤が0.1〜5重量部配合されていることを特徴とする請求項1〜6記載の太陽電池封止用エチレン共重合体組成物。
【請求項8】
アリル基を含有する架橋助剤が、トリアリルイソシアヌレート又はジアリルフタレートである請求項1〜7記載の太陽電池封止用エチレン共重合体組成物。
【請求項9】
さらにシランカップリング剤が配合されてなる請求項1〜8記載の太陽電池封止用エチレン共重合体組成物。
【請求項10】
シランカップリング剤の配合量が、エチレン・極性モノマー共重合体100重量部当たり、1.0重量部以下である請求項9記載の太陽電池封止用エチレン共重合体組成物。
【請求項11】
さらに紫外線吸収剤、光安定剤及び酸化防止剤から選ばれる添加剤が配合されてなる請求項1〜10記載の太陽電池封止用エチレン共重合体組成物。
【請求項12】
請求項1〜11記載のエチレン共重合体組成物を用いてなる太陽電池封止材。
【請求項13】
請求項1〜11記載のエチレン共重合体組成物を架橋してなる太陽電池封止材。
【請求項14】
請求項13記載の太陽電池封止材により太陽電池素子が封止されてなる太陽電池モジュール。
【請求項15】
架橋された透明な太陽電池封止材と請求項13記載の太陽電池封止材により太陽電池素子が封止されてなる太陽電池モジュール。

【公開番号】特開2006−36876(P2006−36876A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216973(P2004−216973)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】