説明

太陽電池封止材用フィルム

【課題】
本発明により、密着性に優れ、剥離による不具合が起こりにくく、また太陽電池封止材としての透明性、柔軟性に優れた太陽電池封止材用フィルムを提供する。
【解決手段】
スチレン系エラストマー(A)とポリプロピレン系樹脂(B)とを含む太陽電池封止材用フィルム。前記スチレン系エラストマー(A)とポリプロピレン系樹脂(B)との重量比率(A/B)がA/B=50/50〜90/10である請求項1記載の太陽電池封止材用フィルム。前記スチレン系エラストマー(A)とポリプロピレン系樹脂(B)との重量比率(A/B)がA/B=50/50〜90/10である太陽電池封止材用フィルム

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池素子を保護するために使用される太陽電池用封止材用フィルムであり、各部材との密着性、柔軟性、強度、透明性に優れるため、品質の安定した太陽電池モジュールを作製することができ、そのフィルムを使用した太陽電池モジュールおよび太陽電池として使用することが出来る。
【背景技術】
【0002】
地球環境問題から近年ではクリーンなエネルギーとして太陽電池発電が一般住宅や産業用含めて増加してきているが、今後はさらに数量が増加すると考えられ従来よりも生産安定性を高める必要がある。
【0003】
太陽電池モジュールは多結晶シリコン、シリコン薄膜などにより形成された太陽電池セルを軟質透明樹脂により両面から挟み込むことにより太陽電池セルを封止する。さらにその両面にはガラスやフッ素フィルムなどで積層され太陽電池モジュールとし、複数組み合わせて太陽電池として使用されている。
【0004】
太陽電池封止材としては、太陽電池セルへ十分に光を透過させるための透明性、セルを完全に封止し、衝撃を吸収するための柔軟性、そして耐候性が求められる。また、ガラス、フッ素フィルムなどが太陽電池用部材として用いられることからそれらとの密着性が要求さる。従来はエチレンビニルアセテート(EVA)が太陽電池用封止材として多く使用されていた(例えば、特許文献1)。しかしながらエチレンビニルアセテートを太陽電池封止材フィルムに使用する場合は架橋処理が行われ、それにより耐熱性や他部材との密着性が向上するが、架橋工程にかかる時間が長い問題がある。また、EVA樹脂から発生する酢酸ガスが太陽電池セルに影響を与える可能性があると言われている。
【0005】
また上記の問題点を解決するために、EVA以外の樹脂として、ポリエチレン系やエチレン・αオレフィンなどのオレフィン系エラストマーが検討されているが(特許文献2)柔軟性と強度バランスが十分でなく。また他部材との密着性については従来のEVAと同等レベル以下である場合が多く、改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願平9−182659
【特許文献2】特願2005−292863
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、密着性にすぐれ、剥離による不具合が起こりにくく、また基本的な太陽電池封止材としての透明性、柔軟性に優れる太陽電池封止材用フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る太陽電池封止材用フィルムは、スチレン系エラストマー(A)とポリプロピレン系樹脂(B)とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る太陽電池封止材用フィルムは、前記スチレンエラストマー(A)とポリプロピレン系樹脂(B)との重量比率(A/B)がA/B=50/50〜90/10である。
【0010】
本発明に係る太陽電池封止材用フィルムは、前記スチレンエラストマー(A)がスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体である。
【0011】
本発明に係る太陽電池封止材用フィルムは、シランカップリング剤(C)を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る太陽電池封止材用フィルムはシランカップリング剤としてアミノシランを使用することが出来る。
【0013】
本発明に係る太陽電池封止材用フィルムを使用して太陽電池モジュールを作製することができ、またその太陽電池モジュールを使用して太陽電池を作製することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、密着性に優れ、剥離による不具合が起こりにくく、また太陽電池封止材としての透明性、柔軟性に優れる太陽電池封止材用フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の太陽電池封止材用フィルムを使用して作製した太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る太陽電池封止材用フィルムは太陽電池モジュールとして他部材との一体化されて用いられるものである。例えばガラス、太陽電池封止材用フィルム、太陽電池セル、太陽電池封止材用フィルム、フッ素フィルムを順番に積層し加熱することにより太陽電池封止材用フィルムを溶融し一体化して、太陽電池モジュールとして使用される。
【0017】
本発明によるとスチレン系エラストマーにポリプロピレン系樹脂を配合することにより十分な柔軟性および透明性を発現し、他部材との密着性に優れるため、それが太陽電池封止用フィルムに適することを見出した。
【0018】
(スチレン系エラストマー(A))
本発明に用いるスチレン系エラストマー(A)としてはSBS、SEBS、SIS、SIBSなどを使用することが出来る。耐候性の観点からSEBSなどの水素添加されたスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体が好ましい。また、柔軟性の面ではスチレンとゴム成分との比率としてスチレン比率が30%以下であれば充分な柔軟性があり好適に使用することが出来るが、特にこれに限定されるものではない。
【0019】
(ポリプロピレン系樹脂(B))
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂(B)としてはホモPP、ランダムPP、共重合PPを使用することができるが、特に種類に限定はなくプロピレンの構造単位を含むものであれば良く、柔軟性を発現させる性能から、ランダムPPが好ましい。
【0020】
本発明に用いるスチレン系エラストマー(A)およびポリプロピレン系樹脂(B)との重量比率(A/B)がA/B=50/50〜90/10の範囲内では柔軟性があり、セルなどの他部材との一体化工程および一体化後に割れにくいため好ましい。
【0021】
(シランカップリング剤(C))
本発明にはさらに他部材との密着性を向上するために、シランカップリング剤を添加することが好ましい。シランカップリング剤としては公知のものが使用でき、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが好ましく、そのなかでも特にアミノシラン系のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが好ましいが、アミノシランの種類を限定するものではない。
【0022】
また、シランカップリング剤の量としては樹脂100重量部に対して0.1〜3重量部を添加でき、好ましくは0.3〜1.5重量部添加することが好ましい。前記範囲内であれば好適な透明性および密着性、柔軟性を維持することができる。
【0023】
本発明の太陽電池封止材用フィルムには屋外で使用されるため、耐候性を向上するための耐候剤として紫外線吸収剤やヒンダードアミン系光安定剤を添加することができる。紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ベンゾエート系などを使用することができるが特にこれに限定されるものではない。また、加工時や使用時の酸化劣化を防ぐために酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系やリン系、アミン系、硫黄系の安定剤を添加することができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0024】
(太陽電池封止材用フィルムの使用方法)
本発明の太陽電池封止材用フィルムはガラス、太陽電池封止フィルム、太陽電池セル、太陽電池封止フィルム、フッ素フィルムの順に積層し、加熱プレスにより一体化することにより、太陽電池モジュールとして使用することが出来る。また、一体化された太陽電池モジュールを接続し太陽電池として使用することが出来る。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これは単なる例示であり、本発明はこれにより限定されるものではない。
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ(株)製、品番:タフテックH1221、スチレンコンテント12%)を80重量%とポリプロピレン系樹脂としてランダムPP((株)プライムポリマー製、品番:F327)20重量%とを混合し、さらにアミノ系のシランカップリング剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(東レダウコーニング(株)製、品番:Z6011)を0.8重量%添加した上で、ミキサーで混合し、L/D=25 50mm単軸押出機、300mm幅のコートハンガーダイにより、押出温度240℃で厚さ0.6mm厚のシートを作製した。作製した0.6mm厚のシートを150℃の熱プレスで10分間、低圧でガラスおよびETFEフィルムと積層を行い、JIS Z0237に準拠して、300mm/minの剥離速度で180°剥離試験を行い、フッ素フィルム密着性の評価を行った。剥離強度は1N/mm以上のものを合格とした。
【0026】
上記の0.6mm厚の押出シートの評価として、透明性についてはJIS K7105に準拠して全光線透過率の測定を行い、90%以上のものを合格とした。また柔軟性、強度についてはJIS K7127に準拠して引張り強度および伸びの測定を行い、引張り強度で15MPa以上かつ、伸び率が500%以上のものを合格とした。
【0027】
(実施例2)
スチレン系エラストマーの比率が50重量%、ポリプロピレン系樹脂の比率が50重量%である以外は実施例1と同様に作製、評価を行った。
【0028】
(実施例3)
スチレン系エラストマーの比率が90重量%、ポリプロピレン系樹脂の比率が10重量%である以外は実施例1と同様に作製、評価を行った。
【0029】
(実施例4)
シランカップリング剤の添加量が0.3重量%である以外は実施例1と同様に作製、評価を行った。
【0030】
(実施例5)
シランカップリング剤の添加量が1.5重量%である以外は実施例1と同様に作製、評価を行った。
【0031】
(比較例1)
エチレンビニルアセテート(三井デュポンポリケミカル(株)製、品番:EV260)100重量%に対し架橋剤(日油(株)製、品番:パーヘキサ25B)を2重量%、架橋助剤(日本化成(株)製、品番:TAIC)を0.5重量%、およびシランカップリング剤(東レダウコーニング(株)製、品番:Z6030)を0.5重量%添加し、実施例1から押出機の温度条件だけを変更して0.6mm厚のシートを作製した。
【0032】
(比較例2)
オレフィン系エラストマーとしてEMMA(エチレン−メチルメタクリレート共重合体)(住友化学(株)製、品番:WH206)にシランカップリング剤(ダウコーニングシリコーン社製、品番:Z6030)0.5重量%を添加し実施例1と同様に0.6mm厚のシートを作製し評価を行った。
【0033】
実施例および比較例についての評価結果は表1に示す。
【0034】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の太陽電池封止材用フィルムは密着性に優れ、剥離による不具合が起こりにくく、また太陽電池封止材としての透明性、柔軟性に優れるため、太陽電池封止材用フィルムとして使用することにより、太陽電池モジュールおよびそれを使用した太陽電池として好適に用いることが出来る。
【符号の説明】
【0036】
1・・・ガラス
2・・・太陽電池セル
3・・・フッ素フィルム
4・・・太陽電池封止材用フィルム
10・・太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系エラストマー(A)とポリプロピレン系樹脂(B)とを含む太陽電池封止材用フィルム。
【請求項2】
前記スチレン系エラストマー(A)とポリプロピレン系樹脂(B)との重量比率(A/B)がA/B=50/50〜90/10である請求項1記載の太陽電池封止材用フィルム。
【請求項3】
前記スチレン系エラストマー(A)がスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体である請求項1または2記載の太陽電池封止材用フィルム。
【請求項4】
更にシランカップリング剤(C)を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池封止材用フィルム。
【請求項5】
前記シランカップリング剤がアミノシランである請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池封止材用フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5記載の太陽電池封止材用フィルムを使用した太陽電池モジュール。
【請求項7】
請求項6記載の太陽電池モジュールを使用した太陽電池。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−79849(P2012−79849A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222329(P2010−222329)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】