説明

太陽電池用リード線及びその製造方法並びに太陽電池

【課題】セル割れ抑制効果の高い太陽電池用リード線を提供する。
【解決手段】帯板状導電材をダイス加工することによって、上下面a、bには凹面2a、2bを有すると共に側面c、dには凸面3c、3dを有する凹凸導電材4を形成し、凹凸導電材4の凹面2a、2bに溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層5を平坦に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル割れ抑制効果の高い太陽電池用リード線に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池には、半導体基板として多結晶及び単結晶のSiセルが用いられる。図4に示されるように、太陽電池101は、半導体基板102の所定の領域に太陽電池用リード線103をはんだで接合して作成する。太陽電池用リード線103は、半導体基板102の表面に設けられた表面電極104及び裏面電極105にはんだ付けする。半導体基板102内で発電された電力を太陽電池用リード線103を通じて外部へ伝送する。
【0003】
図5に示されるように、従来の太陽電池用リード線111は、帯板状導電材112とその帯板状導電材112の上下面に形成された溶融はんだめっき層113とを備える。帯板状導電材112は、例えば、円形断面の導体を圧延加工して帯板状にしたものであり、平角導体、平角線とも呼ばれる。
【0004】
溶融はんだめっき層113は、帯板状導電材112の上下面に、溶融めっき法により溶融はんだを供給して形成したものである。溶融めっき法は、酸洗等により帯板状導電材112の上下面a、bを清浄化し、その帯板状導電材112を溶融はんだ浴に通すことにより、帯板状導電材112の上下面a、bにはんだを積層していく方法である。溶融はんだめっき層113は、帯板状導電材112の上下面a、bに付着した溶融はんだが凝固する際に表面張力の作用によって、図5に示されるように、幅方向側部から中央部にかけて膨らんだ形状、いわゆる山形に形成される。
【0005】
図5に示した従来の太陽電池用リード線111は、帯板状導電材112の上下面a、bに山形に膨らんだ溶融はんだめっき層113を有する。図4で説明したように、太陽電池用リード線103を半導体基板102の表面電極104にはんだ付けする際、表面電極104には表面電極104と導通する電極帯(図示せず)をあらかじめ形成する。この電極帯に太陽電池用リード線103の溶融はんだめっき層113を接触させ、その状態ではんだ付けを行う。太陽電池用リード線103を半導体基板102の裏面電極105にはんだ付けする場合も同様である。
【0006】
このとき、図5の太陽電池用リード線111(103)は、溶融はんだめっき層113が膨らんでいるため、電極帯と溶融はんだめっき層113との接触面積が小さくなる。電極帯と溶融はんだめっき層113との接触面積が小さいと、半導体基板102から溶融はんだめっき層113への熱伝導が不十分になり、はんだ付け不良が生じる。
【0007】
また、電極帯と溶融はんだめっき層113との接触面積が小さいことは、半導体基板102の表裏両面に太陽電池用リード線111を接合する場合に、表面電極104にはんだ付けする太陽電池用リード線111と裏面電極105にはんだ付けする太陽電池用リード線111との間に位置ズレを生じさせ、その位置ズレが原因でセル割れ(半導体基板102が割れること)が発生する。半導体基板102は高価であるので、セル割れは好ましくない。
【0008】
電極帯と溶融はんだめっき層との接触面積が小さいという問題を解決するために、帯板状導電材の上下面に凹面を形成し、この凹面に溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層を平坦に形成する方法が提案されている(特許文献1)。
【0009】
図6に示されるように、特許文献1の太陽電池用リード線121は、下面bに凹面122を形成した下凹面導電材123を用いる。下凹面導電材123の上面aは、凸面又は平坦面とする。このように下面のみに凹面122を有する下凹面導電材123を溶融はんだ浴に通すことにより、下凹面導電材123の上下面a、bに溶融はんだめっき層124、125を形成する。下凹面導電材123の凹面122に形成された溶融はんだめっき層124は平坦になる。このような太陽電池用リード線121を半導体基板の表面電極又は裏面電極に対して溶融はんだめっき層124の平坦な下面bをはんだ付けすると、太陽電池用リード線121が半導体基板に強固に接合され、太陽電池用リード線121が半導体基板から外れ難く、耐久性に優れる。
【0010】
【特許文献1】国際公開WO2004/105141
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のように、太陽電池用リード線を半導体基板に強固に接合するには、溶融はんだめっき層を平坦に形成するとよい。しかし、特許文献1によれば、帯板状導電材の下面に凹面を形成するために、帯板状導電材に適宜な塑性加工、曲げ加工を施す。例えば、帯板状導電材を型ロールに通すことにより凹面を形成する。また、平板状クラッド材をスリット加工して帯板状導電材を得る際に、回転刃の間隔や回転速度を調節して曲げ加工を施す。このようにして下凹面導電材123を得る。
【0012】
塑性加工、曲げ加工は、断続的処理であるため、量産性に劣る。また、帯板状導電材を型ロールに通すことは、帯板状導電材に対する圧力の調整が難しいため、下凹面導電材は断面寸法の精度に劣る。
【0013】
スリット加工により帯板状導電材に凹面を形成すると、下凹面導電材123にバリが生じる。下凹面導電材123にバリが存在すると、太陽電池用リード線121を半導体基板に接合する際にバリの存在部分に応力集中が起こり、半導体基板にセル割れが発生する。
【0014】
また、特許文献1の太陽電池用リード線121では、第1の半導体基板の裏面電極から第2の半導体基板の表面電極へ、第2の半導体基板の裏面電極から第3の半導体基板の表面電極へと接続される。このようにして半導体基板の表裏両面に太陽電池用リード線121を接合する場合に、表面電極にはんだ付けする太陽電池用リード線121と裏面電極にはんだ付けする太陽電池用リード線121との間に位置ズレが生じるという問題は解決されていない。この位置ズレによって半導体基板にセル割れが発生する問題が残っている。
【0015】
太陽電池のコストの大半を半導体基板が占めるため、半導体基板の薄型化が検討されているが、薄型化された半導体基板は割れやすい。例えば、半導体基板の厚みが200μm以下になるとセル割れが生じる割合が大きくなる。太陽電池用リード線が原因で半導体基板にセル割れが発生するようでは、半導体基板の薄型化は望めない。
【0016】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、セル割れ抑制効果の高い太陽電池用リード線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明の太陽電池用リード線は、導電材の表面に溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層を形成した太陽電池用リード線において、帯板状導電材をダイス加工することによって、上下面には凹面を有すると共に側面には凸面を有する凹凸導電材を形成し、該凹凸導電材の上記凹面に溶融はんだを供給して上記溶融はんだめっき層を平坦に形成したものである。
【0018】
また、本発明の太陽電池用リード線は、導電材の表面に溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層を形成した太陽電池用リード線において、帯板状導電材をダイス加工することによって、上下面には凹面を有すると共に側面には凸面を有する凹凸導電材を形成し、該凹凸導電材の上記凹面に溶融はんだを供給し、上記上下面の凹面に溶融はんだめっき層を平坦に形成したものである。
【0019】
上記帯板状導電材は、体積抵抗率が50μΩ・mm以下の平角線であってもよい。
【0020】
上記帯板状導電材は、Cu、Al、Ag、Auのいずれかからなってもよい。
【0021】
上記帯板状導電材は、タフピッチCu、低酸素Cu、無酸素Cu、リン脱酸Cu、高純度Cu(99.9999%以上)のいずれかからなってもよい。
【0022】
上記溶融はんだめっき層は、Sn系はんだ、又は、第1成分としてSnを用い、第2成分としてPb、In、Bi、Sb、Ag、Zn、Ni、Cuから選択される少なくとも1つの元素を0.1wt%以上含むSn系はんだ合金からなってもよい。
【0023】
また、本発明の太陽電池用リード線の製造方法は、原料導電材を圧延加工又はスリット加工することにより帯板状導電材を形成し、この帯板状導電材をダイス加工することによって、上下面には凹面を有すると共に側面には凸面を有する凹凸導電材を形成し、該凹凸導電材を連続通電加熱炉又は連続式加熱炉又はバッチ式加熱設備で熱処理し、その後、上記凹面に溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層を平坦に形成するものである。
【0024】
また、本発明の太陽電池は、太陽電池用リード線を上記溶融はんだめっき層のはんだによって半導体基板の表面電極及び裏面電極にはんだ付けしたものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0026】
(1)セル割れ抑制効果が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0028】
図1(a)に示されるように、本発明に係る太陽電池用リード線1は、図1(b)に示した帯板状導電材をダイス加工することによって、上下面a、bには凹面2a、2bを有すると共に側面c、dには凸面3c、3dを有する凹凸導電材4を形成し、凹凸導電材4の凹面2a、2bに溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層5を平坦に形成したものである。
【0029】
図1(b)に示されるように、帯板状導電材は平坦な側面及び上下面を有し、長手方向に延びたものである。この帯板状導電材をダイス加工することによって、横断面を図1(a)のように形成する。なお、図1(b)に示した上面、下面、側面、横断面の定義は、本発明の全ての図に共通である。
【0030】
凹面2a、2bは、溶融はんだを収容するためのものであり、溶融はんだ収容用凹部とも言う。
【0031】
凹面2a、2bは、凹凸導電材4の側面c、dにおいて凹凸導電材4の厚みが厚く、側面c、d間の中央部において凹凸導電材4の厚みが薄くなるよう、側面c、d間にわたり丸みを帯びて窪んだ曲面となっている。
【0032】
凸面3c、3dは、凹凸導電材4の上下面a、bにおいて凹凸導電材4の幅が短く、上下面a、b間の中央部において凹凸導電材4の幅が長くなるよう、丸みを帯びて突き出た曲面となっている。
【0033】
溶融はんだめっき層5は、凹凸導電材4の側面c、d間において幅が均一である。溶融はんだめっき層5の表面(上下面a、b)は平面である。
【0034】
帯板状導電材を凹凸導電材4にダイス加工するためのダイスは、ダイス穴が図1に示した凹凸導電材4の断面と同じ形状を有するものである。このようなダイスに帯板状導電材を通すことにより、凹凸導電材4の横断面形状をダイス穴と同じ形状にすることができる。
【0035】
図7にダイスを示す。図示のように、ダイス71は、図1(a)に示した凹凸導電材4の断面形状と同じように、上辺と下辺が内に向けて凸になっており、側辺が外に向けて凸になっている形状のダイス穴72を有する。ダイス穴72の反対側の挿入口に図1(b)に示した長尺の帯板状導電材を連続的に挿入し、ダイス穴72から長尺の凹凸導電材4を連続的に得ることができる。
【0036】
本発明に係る太陽電池用リード線1は、半導体基板の表面電極及び裏面電極への設置が容易となるよう、及び接合時に必要な熱伝導が十分に確保されるように溶融はんだめっき層5を平坦に形成したものである。これにより、表面電極及び裏面電極に対して整然と設置でき、強固なはんだ付けを可能にすることを目指す。
【0037】
また、本発明に係る太陽電池用リード線1は、側面には凸面3c、3dを設けることにより、セル割れを防止することを目指す。なお、セル割れ防止は、太陽電池用リード線1の側面に凸面3c、3dを設けることによって、直接行うのではなく、はんだを収容する凹面2a、2bの存在により、やむなく存在する凸部を曲面とし、接続時の半導体基板へのストレスを低減させることにより行う。
【0038】
帯板状導電材には、例えば、体積抵抗率が50μΩ・mm以下の平角線を用いる。この平角線をダイス加工することによって図1や後述する図2のような横断面形状の導電材を得る。
【0039】
帯板状導電材は、Cu、Al、Ag、Auのいずれか、あるいは、タフピッチCu、低酸素Cu、無酸素Cu、リン脱酸Cu、高純度Cu(99.9999%以上)のいずれかからなる。
【0040】
溶融はんだめっき層5は、Sn系はんだ(Sn系はんだ合金)を用いる。Sn系はんだは、成分重量が最も重い第1成分としてSnを用い、第2成分としてPb、In、Bi、Sb、Ag、Zn、Ni、Cuから選択される少なくとも1つの元素を0.1wt%以上含むものである。
【0041】
次に、本発明の効果を説明する。
【0042】
太陽電池用リード線1を半導体基板(図示せず)の表面電極及び裏面電極にはんだ付けするに際し、太陽電池用リード線1や半導体基板の加熱温度は、溶融はんだめっき層5のはんだの融点付近の温度に制御される。その理由は、太陽電池用リード線1の凹凸導電材4(例えば、銅)の熱膨張率と半導体基板(Si)の熱膨張率が大きく相違するためである。熱膨張率の相違によって半導体基板にクラックを発生させる原因となる熱応力が生じる。この熱応力を小さくするには、低温接合を行うのがよい。よって、太陽電池用リード線1や半導体基板の加熱温度は、溶融はんだめっき層5のはんだの融点付近の温度に制御される。
【0043】
上記接合時の加熱方法は、半導体基板をホットプレート上に設置し、このホットプレートからの加熱と半導体基板に設置された太陽電池用リード線1の上方からの加熱とを併用するものである。
【0044】
半導体基板の表面電極及び裏面電極と溶融はんだめっき層5あるいは導電性ペースト層(接合層)との接触面積を大きくし、半導体基板から溶融はんだめっき層5への熱伝導を十分にするためには、溶融はんだめっき層5を含む太陽電池用リード線1の形状を平角状にして、半導体基板の表面電極及び裏面電極に接する太陽電池用リード線1の側面を平坦にするのがよい。
【0045】
しかし、図5に示した従来の太陽電池用リード線111は、長手方向の中央部が膨らんだ山形をしており、半導体基板の表面電極及び裏面電極にはんだ付けする際に半導体基板の表面電極及び裏面電極と太陽電池用リード線111の溶融はんだめっき層5との接触面積が小さい。このため、熱伝導が不十分になったり、太陽電池用リード線111を表面電極及び裏面電極に設置すると位置が不安定になり、半導体基板の表裏で太陽電池用リード線111の位置がずれたりする。これらにより、セル割れが生じる。
【0046】
本発明は、太陽電池用リード線1の側面となる溶融はんだめっき層5を平坦にしたので、上記従来の問題は解決される。
【0047】
図6に示した特許文献1の太陽電池用リード線121は、下凹面導電材123の凹面122に溶融はんだを収容することにより、溶融はんだめっき層124は平坦になる。しかし、帯板状導電材をスリット加工して下凹面導電材123を形成すると、下凹面導電材123にバリが生じる。バリによって、太陽電池用リード線121と半導体基板との接合部に応力が集中しセル割れが発生する。
【0048】
また、特許文献1の太陽電池用リード線121に用いる下凹面導電材123は、下面bのみ凹面を有し、上面aは平坦面である。このような下凹面導電材123に溶融はんだめっき層124、125を形成すると、下面bの溶融はんだめっき層124は平坦となるが、上面aの溶融はんだめっき層125は山形に膨らむ。すなわち、特許文献1の太陽電池用リード線121は、下面bが平坦で、上面aが山形に膨らんでいる。このような太陽電池用リード線121を半導体基板の表裏両面に接合しようとすると、太陽電池用リード線121の位置が表裏でずれる。この位置ズレによって半導体基板にセル割れが発生する。
【0049】
セル割れが発生する理由を説明する。
【0050】
帯板状導電材としての平角線と半導体基板との接合は、所定の圧力で、平角線と半導体基板とを接合部(表面電極、裏面電極)に合わせて挟み、加熱して接合させる。このとき、平角線にバリが存在すると、バリによって半導体基板に高い圧力が生じてセル割れが発生する。バリがなければ、接合時に平角線から半導体基板にかかる圧力が小さくなるのでセル割れは生じない。また、山形に膨らんだ接合面を有する平角線を半導体基板に接合すると、平角線が表面電極、裏面電極の上でずれやすい。ずれのため半導体基板の表面と裏面とで互い違いに平角線が挟まれ、セル割れが発生する。フラットな接合面を有する平角線を半導体基板に接合すると、平角線が表面電極、裏面電極の上でずれにくい。ずれがなければ、半導体基板の表面と裏面とでほぼ同じ位置に平角線が挟まれ、半導体基板へのストレスが小さくなり、セル割れが発生しない。
【0051】
その点、本発明の太陽電池用リード線1では、帯板状導電材をダイス加工することによって凹凸導電材4を形成するので、上下面には凹面2a、2bを有すると共に側面には凸面3c、3dを有する凹凸導電材4を形成することができる。凸面3c、3dは曲面となる。溶融はんだめっき層5の表面(上下面a、b)は平面となる。これにより、バリがなく、半導体基板との接合面がフラットになる。よって、セル割れが抑制される。
【0052】
接合面の凸部を曲面に加工する方法として切削による面取り可能である。
【0053】
また、本発明は、ダイス穴が凹凸導電材4の断面と同じ形状を有するダイスに帯板状導電材を通すダイス加工により、凹凸導電材4の横断面形状をダイス穴と同じ形状にするので、凹凸導電材4の寸法安定性・量産性に優れている。その結果、本発明は、セル割れ抑制に最も効果を有する太陽電池用リード線1を提供することができる。
【0054】
さらに、本発明は、凹凸導電材4の上下面a、bに凹面2a、2bを形成し、これら凹面2a、2bに溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層5を平坦に形成したので、太陽電池用リード線1は上下面a、bが共に平坦である。よって、半導体基板の表裏両面に太陽電池用リード線1を接合する場合に、表面電極にはんだ付けする太陽電池用リード線1と裏面電極にはんだ付けする太陽電池用リード線1との間に位置ズレが生じない。
【0055】
また、本発明は、凹凸導電材4の上下面a、bに凹面2a、2bを形成したので、リード線接合後にSiセル表面電極上に形成されるはんだフィレットを安定した山形の形状にすることも可能である。フィレットとは、ろう付けやはんだ付けを行った継ぎ手の隙間からはみだしたろうやはんだを指す。
【0056】
【表1】

【0057】
帯板状導電材は、体積抵抗率が比較的小さい材料であることが好ましい。表1のように、帯板状導電材にはCu、Al、Ag、Auなどがある。Cu、Al、Ag、Auのうち体積抵抗率が最も低いのはAgである。従って、帯板状導電材としてAgを用いると、太陽電池用リード線1を用いた太陽電池の発電効率を最大限にすることができる。帯板状導電材としてCuを用いると、太陽電池用リード線1を低コストにすることができる。帯板状導電材としてAlを用いると、太陽電池用リード線1の軽量化を図ることができる。
【0058】
帯板状導電材としてCuを用いる場合、そのCuには、タフピッチCu、低酸素Cu、無酸素Cu、リン脱酸Cu、高純度Cu(99.9999%以上)のいずれを用いてもよい。帯板状導電材の0.2%耐力を最も小さくするためには、純度が高いCuを用いるのが有利である。よって、高純度Cu(99.9999%以上)を用いると、帯板状導電材の0.2%耐力を小さくすることができる。タフピッチCu又はリン脱酸Cuを用いると、太陽電池用リード線1を低コストにすることができる。
【0059】
溶融はんだめっき層5に用いるはんだとしては、Sn系はんだ、又は、第1成分としてSnを用い、第2成分としてPb、In、Bi、Sb、Ag、Zn、Ni、Cuから選択される少なくとも1つの元素を0.1wt%以上含むSn系はんだ合金が挙げられる。これらのはんだは、第3成分として1000ppm以下の微量元素を含んでいてもよい。
【0060】
また、凹凸導電材4の凹面2a、2bにはんだめっきをして溶融はんだめっき層5を平坦に形成する代わりに、第1成分としてSnを含み第2成分としてNi、Ag、Zn、Cr、Cu、Au、Pd、In、Bi、Sb、Ru、Ptから選択される少なくとも1つの元素を含む金属材料(第3成分として1000ppm以下の微量元素を含んでいてもよい)による薄めっきを凹凸導電材4の凹面2a、2bに施してもよい。太陽電池用リード線1を半導体基板に接合するとき、あるいはそれ以前に、上記薄めっきが施された凹面2a、2bに導電性接着剤を塗布して、太陽電池用リード線1を半導体基板の表面電極及び裏面電極に接着してもよい。
【0061】
次に、本発明の他の実施形態による太陽電池用リード線を説明する。
【0062】
図2に示されるように、太陽電池用リード線21は、図1の太陽電池用リード線1に加えて、凹凸導電材24の側面c、dの凸面3c、3dに、凹面23c、23dを形成し、その凹面23c、23dに溶融はんだを供給して側部溶融はんだめっき層22c、22dを形成したものである。
【0063】
凹凸導電材24の側面c、dの凸面3c、3dに側部溶融はんだめっき層22c、22dを形成することで、凹凸導電材24と半導体基板との接合に寄与するはんだが十分に表面電極、裏面電極との接合部に供給され、断面形状が山形の良好なフィレットが形成される。これにより、接合信頼性(導電性、接合強度など)に優れる太陽電池用リード線21が得られる。
【0064】
図8に、図2の凹凸導電材24を形成するためのダイスを示す。図示のように、ダイス81は、図2に示した凹凸導電材24の断面形状と同じように、上辺と下辺が内に向けて凸になっており、側辺の上下部分がいったん外に向けて凸になり、中央部分で凹になっている形状のダイス穴82を有する。ダイス穴82の反対側の挿入口に図1(b)に示した長尺の帯板状導電材を連続的に挿入し、ダイス穴82から長尺の凹凸導電材24を連続的に得ることができる。
【0065】
次に、本発明の太陽電池用リード線の製造方法を説明する。
【0066】
まず、原料導電材(図示せず)を圧延加工又はスリット加工することにより帯板状導電材(図示せず)を形成する。この帯板状導電材をダイス加工することによって、図1(a)に示すような上下に凹面2a、2bを有し側面に凸面3c、3dを有する凹凸導電材4を形成する。この凹凸導電材4を連続通電加熱炉又は連続式加熱炉又はバッチ式加熱設備で熱処理する。その後、凹面2a、2bに溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層5を平坦に形成する。
【0067】
一般に、固体や液体の内部では、内部分子同士に分子間力が働いているため、できるだけ小さくなろうとする性質がある。表面の分子は片側が異なる分子に囲まれているため、高い内部エネルギ状態にあり、その過剰なエネルギを安定した状態にしようとする。空気と接するはんだ(液体)の場合、空気中の分子間力ははんだ中の分子間力に比べて極めて小さいため、はんだ表面の分子は空気側の分子からは引っ張られず、はんだ内部の分子からのみ引っ張られることになる。よって、はんだ表面の分子は常にはんだの中に入っていこうとし、その結果、はんだ表面は最も表面積の少ない(はんだを構成する元素の少ない)球状になろうとする。
【0068】
このような表面積を小さくするように働く力(表面張力)によって、図5に示した従来の太陽電池用リード線111は、帯板状導電材112の上下面a、bに山形に膨らんだ形状で凝固した溶融はんだめっき層113が形成される。球状になるはずのはんだが球状にならないのは、はんだに帯板状導電材112との界面の相互作用力(はんだと帯板状導電材112の界面張力)がかかっているからである。
【0069】
これに対し、本発明の太陽電池用リード線1は、はんだと接する凹凸導電材4の表面積が大きいため、はんだと凹凸導電材4との界面張力が大きくなり、はんだの球状からの変形がより大きく、はんだが凝固したときに溶融はんだめっき層5を平坦に形成することができる。
【0070】
原料導電材を帯板状導電材に加工する加工方法としては、圧延加工、スリット加工のいずれも適用可能である。圧延加工とは、丸線を圧延して平角化する方式である。圧延加工により帯板状導電材を形成すると、長尺で長手方向に幅が均一なものが形成できる。スリット加工は、種々の幅の材料に対応できる。つまり、原料導電材の幅が長手方向に均一でなくても、幅が異なる多様な原料導電材を使用する場合でも、スリット加工によって長尺で長手方向に幅が均一なものが形成できる。
【0071】
帯板状導電材を凹凸導電材4に形成する加工方法としては、ダイス加工の他にバリを連続的に切削する方法をとることもできる。
【0072】
凹凸導電材4を熱処理することにより、凹凸導電材4の軟化特性を向上させることができる。凹凸導電材4の軟化特性を向上させることは、0.2%耐力を低減させるのに有効である。熱処理方法としては、連続通電加熱、連続式加熱、バッチ式加熱がある。連続して長尺にわたって熱処理するには、連続通電加熱が好ましい。安定した熱処理が必要な場合には、バッチ式加熱が好ましい。酸化を防止する観点から、水素還元雰囲気の炉を用いるのが好ましい。
【0073】
水素還元雰囲気の炉は、連続通電加熱炉又は連続式加熱炉又はバッチ式加熱設備により提供される。
【0074】
次に、本発明の太陽電池について説明する。
【0075】
図3(a)及び図3(b)に示されるように、本発明の太陽電池31は、これまで説明した太陽電池用リード線1(又は21)を溶融はんだめっき層5のはんだによって半導体基板32の表面電極33及び裏面電極34にはんだ付けしたものである。
【0076】
太陽電池用リード線1と表面電極33及び裏面電極34との接合面となる溶融はんだめっき層5が平坦であるため、半導体基板32の表裏において太陽電池用リード線1の位置が安定し、位置ずれが防止されている。
【0077】
本発明の太陽電池31によれば、太陽電池用リード線1と半導体基板との接合強度が高く、かつ、接合時のセル割れを抑制することができるので、太陽電池の歩留まりの向上が図れる。
【実施例】
【0078】
(実施例1)
原料導電材であるCu材料を圧延加工して幅2.0mm、厚さ0.16mmの平角線状の帯板状導電材を形成した。この帯板状導電材をダイス加工して凹面2a、2bを有する凹凸導電材4を作成した。この凹凸導電材4をバッチ式加熱設備で熱処理し、さらに、この凹凸導電材4の周囲にSn−3%Ag−0.5Cuはんだめっきを施して凹凸導電材4の凹面2a、2bに溶融はんだめっき層5を平坦に形成した(導体は熱処理Cu)。以上により、図1の太陽電池用リード線1を得た。
【0079】
(実施例2)
実施例1の太陽電池用リード線1の構成に加え、側面c、dの凸面3c、3dに側部溶融はんだめっき層22c、22dを形成して図2の太陽電池用リード線21を得た。
【0080】
(実施例3)
原料導電材であるCu−インバー−Cu(比率2:1:2)材料をスリット加工して幅2.0mm、厚さ0.16mmの平角線状の帯板状導電材を形成した。この帯板状導電材をダイス加工して凹面2a、2bを有する凹凸導電材4を作成した。この凹凸導電材4の周囲にはんだめっきを施して凹凸導電材4の凹面2a、2bに溶融はんだめっき層5を平坦に形成した。以上により、図1の太陽電池用リード線1を得た。
【0081】
(比較例1)
原料導電材であるCu材料を圧延加工して幅2.0mm、厚さ0.16mmの平角線状の帯板状導電材112を形成した。この帯板状導電材112をバッチ式加熱設備で熱処理し、さらに、この帯板状導電材112の周囲にはんだめっきを施して帯板状導電材112の平坦な上下面に山形に膨らんだ溶融はんだめっき層113を形成した(導体は熱処理Cu)。以上により、図5の太陽電池用リード線111を得た。
【0082】
(比較例2)
原料導電材であるCu−インバー−Cu(比率2:1:2)材料をスリット加工して幅2.0mm、厚さ0.16mmの下凹面導電材123を形成した。この下凹面導電材123の周囲にはんだめっきを施して下凹面導電材123の凹面122に平坦な溶融はんだめっき層124を形成すると共に、平坦な側面には山形に膨らんだ溶融はんだめっき層125を形成した。以上により、図6の太陽電池用リード線121を得た。
【0083】
これら実施例1、2、3及び比較例1、2の太陽電池用リード線の断面を観察した結果、実施例1、2、3は半導体基板に接合するべき上下面a、bがいずれも平坦であることが確認された。比較例1は、半導体基板に接合するべき上下面a、bがいずれも中央部で膨らんだ山形の断面であった。比較例2は、半導体基板に接合するべき下面bは平坦で上面aは中央部で膨らんだ山形の断面であった。
【0084】
これら実施例1、2、3及び比較例1、2の太陽電池用リード線にロジン系フラックスを適量塗布し、それぞれの太陽電池用リード線を銅板上に設置し、ホットプレート加熱(260℃で30秒間保持)し、太陽電池用リード線を銅板にはんだ付けした。さらに、これら銅板にはんだ付けした太陽電池用リード線の銅板に対する接合力を評価するために、90°剥離試験を行った。また、これらの太陽電池用リード線を縦150mm×横150mm×厚み180μmの半導体基板(Siセル)の両面の電極部位に設置して、10gの錘を載せた状態で同様にホットプレート加熱(260℃で30秒間保持)し、はんだ付けした。そのはんだ付けの際に生じるセル割れの状況を調べた。比較例2については、上面aを接合する場合と下面bを接合する場合を行ってそれぞれの場合についてセル割れの状況を調べた。
【0085】
実施例1、2、3及び比較例1、2の評価結果を表2に示す。
【0086】
【表2】

【0087】
表2の「導体加工」の欄は、原料導電材から平角線状の帯板状導電材を形成する加工方法を示す。「ダイス加工」の欄は、本発明のダイス加工をする(有り)かしない(無し)かを示す。「断面形状」の欄は、どの図に示した断面形状であったかを示す。「接合力」の欄は、90°剥離試験により銅板と太陽電池用リード線を引っ張り、どのくらいの引張力で引っ張ったときに接合が剥がれるか試験を行った結果を示し、◎は引張力20N以上、○は引張力10〜20N、△は引張力10N以下を示す。「セル割れ」の欄は、はんだ付け試験によって調べたときに目視で確認可能な程度のセル割れが1箇所以上あればセル割れ有りと判定し、それ以外ではセル割れ無しと判定し、全接合箇所におけるセル割れ無しの割合が90%以上の場合を○、セル割れ無しの割合が70%以上90%未満の場合を△、セル割れ無しの割合が70%未満の場合を×とした。なお、セル割れ無しの割合は、下記の式により算出した。
【0088】
(セル割れ無しの割合)=
[(割れが生じないセル枚数)
/(はんだ付け試験を行ったセル枚数)]×100
表2に示されるように、実施例1〜3の太陽電池用リード線は、ダイス加工によって上下面a、bに凹面2a、2bを有し側面に凸面3c、3dを有する凹凸導電材4を形成し、凸面3c、3dに溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層5を平坦に形成したので、優れた接合力が得られることが確認された。
【0089】
特に、実施例2の太陽電池用リード線21は、上下面a、bの凹面2a、2bに溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層5を平坦に形成したので、接合に寄与するはんだが十分に供給され、良好なフィレットの形成されたことが高い接合力に繋がっている。
【0090】
実施例2の太陽電池用リード線21は、半導体基板との接合面がフラットなため、従来の太陽電池(図4)のような点接触ではなく、本発明の太陽電池(図3)のような面接触が可能であり、さらに、側面c、dの凸面3c、3dに、凹面23c、23dを形成し、その凹面23c、23dに溶融はんだを供給して側部溶融はんだめっき層22c、22dを形成したので、接合に寄与するはんだが増え、良好なはんだフィレットが形成される。これにより、接合性(強度及び導電性)が向上する。
【0091】
また、表2に示されるように、実施例1〜3の太陽電池用リード線1、21は、ダイス加工によって上下面a、bに凹面2a、2bを有し側面に凸面3c、3dを有する凹凸導電材4を形成し、凸面3c、3dに溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層5を平坦に形成したので、セル割れが抑制されることが確認された。
【0092】
これに対し、圧延加工を行いダイス加工を行わない比較例1では、セル割れが見られないものの、接合力は本発明に比べてやや劣る。スリット加工を行いダイス加工を行わない比較例2では、接合面を平坦な側面bにした場合は、接合力には優れるものの、セル割れが見られる。接合面を膨らんだ側面aにした場合は、セル割れはないものの、接合力は本発明に比べてやや劣る。
【0093】
以上のように、実施例1、2、3及び比較例1、2の評価結果から、本発明はセル割れ抑制効果が高いことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】(a)は本発明の一実施形態を示す太陽電池用リード線の横断面図、(b)は太陽電池用リード線の材料となる帯板状導電材の斜視図である。
【図2】本発明の他の実施形態を示す太陽電池用リード線の横断面図である。
【図3】(a)は本発明の太陽電池の横断面図、(b)は本発明の太陽電池の上面図である。
【図4】(a)は従来の太陽電池の横断面図、(b)は従来の太陽電池の上面図である。
【図5】従来の太陽電池用リード線の横断面図である。
【図6】従来(特許文献1)の太陽電池用リード線の側横断面図である。
【図7】図1の太陽電池用リード線を製造するダイスの斜視図である。
【図8】図2の太陽電池用リード線を製造するダイスの斜視図である。
【符号の説明】
【0095】
1、21 太陽電池用リード線
2a、2b 凹面
3c、3d 凸面
4 凹凸導電材
5 溶融はんだめっき層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電材の表面に溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層を形成した太陽電池用リード線において、帯板状導電材をダイス加工することによって、上下面には凹面を有すると共に側面には凸面を有する凹凸導電材を形成し、該凹凸導電材の上記凹面に溶融はんだを供給して上記溶融はんだめっき層を平坦に形成したことを特徴とする太陽電池用リード線。
【請求項2】
導電材の表面に溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層を形成した太陽電池用リード線において、帯板状導電材をダイス加工することによって、上下面には凹面を有すると共に側面には凸面を有する凹凸導電材を形成し、該凹凸導電材の上記凹面に溶融はんだを供給し、上記上下面の凹面に溶融はんだめっき層を平坦に形成したことを特徴とする太陽電池用リード線。
【請求項3】
上記帯板状導電材は、体積抵抗率が50μΩ・mm以下の平角線であることを特徴とする請求項1又は2記載の太陽電池用リード線。
【請求項4】
上記帯板状導電材は、Cu、Al、Ag、Auのいずれかからなることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の太陽電池用リード線。
【請求項5】
上記帯板状導電材は、タフピッチCu、低酸素Cu、無酸素Cu、リン脱酸Cu、高純度Cu(99.9999%以上)のいずれかからなることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の太陽電池用リード線。
【請求項6】
上記溶融はんだめっき層は、Sn系はんだ、又は、第1成分としてSnを用い、第2成分としてPb、In、Bi、Sb、Ag、Zn、Ni、Cuから選択される少なくとも1つの元素を0.1wt%以上含むSn系はんだ合金からなることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の太陽電池用リード線。
【請求項7】
原料導電材を圧延加工又はスリット加工することにより帯板状導電材を形成し、この帯板状導電材をダイス加工することによって、上下面には凹面を有すると共に側面には凸面を有する凹凸導電材を形成し、該凹凸導電材を連続通電加熱炉又は連続式加熱炉又はバッチ式加熱設備で熱処理し、その後、上記凹面に溶融はんだを供給して溶融はんだめっき層を平坦に形成することを特徴とする太陽電池用リード線の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6いずれか記載の太陽電池用リード線を上記溶融はんだめっき層のはんだによって半導体基板の表面電極及び裏面電極にはんだ付けしたことを特徴とする太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−218560(P2009−218560A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288813(P2008−288813)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【Fターム(参考)】