説明

太陽電池用接着シート

【課題】 本発明は、安定して効率良く成形できる、均一な品質の太陽電池用接着シートを提供する。
【解決手段】 エチレン系共重合体と有機過酸化物よりなる、三層以上の樹脂シートが積層されている太陽電池用接着シートであって、両側最外層はエチレン系共重合体100重量部と有機過酸化物0.05重量部以上、0.3重量部未満よりなり、内層はエチレン系共重合体100重量部と有機過酸化物0.3重量部〜3重量部よりなり、両側最外層の厚みの和が全体の20%以下であることを特徴とする太陽電池用接着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用モジュールを作製する際、太陽電池素子と基板とを接合するのに好適に用いられる太陽電池用接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンやセレンの半導体ウェハーからなる太陽電池モジュールとしては、これらの太陽電池素子の両面にエチレン系共重合体などの接着性シートを積層し、その一面に上部保護材を、他の面に下部基板保護材を重ね合わせ、真空中で脱気すると共に加熱することによりこれれが一体に接着されたものが使用されている。
【0003】
上記接着性シートは、透明性、耐候性、接着性等が要求されるので、エチレン系共重合体と有機過酸化物からなる接着性シートが提案されている。
【0004】
例えば、有機過酸化物を含有するエチレン系共重合体からなる太陽電池モジュール用保護シートにおいて、有機過酸化物として、ジアルキルパーオキサイド(A)と、アルキルパーオキシエステル及びパーオキシケタールからなる群より選ばれる少なくとも1種の過酸化物(B)を、(A)/(B)の重量比が10/90〜90/10の割合で配合したものを用いることを特徴とする太陽電池モジュール用保護シートが提案されており、ジアルキルパーオキサイド(A)の1時間半減期温度が130〜160℃であり、過酸化物(B)の1時間半減期温度が100〜135℃が好ましいとされている(特許文献1参照。)。又、その製造方法としてはTダイによる押出成形方法が記載されている。
【特許文献1】特開平11−26791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エチレン系共重合体をTダイを用いて押出成形する際に、押出機やTダイ内でエチレン系共重合体が滞留すると、長時間の熱履歴により架橋剤が反応して増粘やゲルの生成が起こる。特に、Tダイ内では、エチレン系共重合体が展開されることによりエチレン系共重合体と金型内面の接触面積が増大し、流速の遅い、滞留しやすいエチレン系共重合体層ができる。
【0006】
Tダイが約80〜110℃の場合、エチレン系共重合体の溶融粘度が高いため、Tダイ内面で樹脂が滞留しやすい。又、1時間半減期温度が100〜135℃の有機過酸化物が配合されている場合には、このような温度でも長時間滞留すると架橋反応が進行し、エチレン系共重合体が増粘し、更に滞留しやすくなる。
【0007】
又、Tダイが約110〜130℃の場合、1時間半減期温度が100〜135℃の有機過酸化物を使用した場合にはその一部が反応して、エチレン系共重合体が増粘し、この温度でも滞留しやすくなる。
【0008】
このようにTダイ内でエチレン系共重合体が滞留すると、滞留した部分は熱履歴によって増粘・ゲル化が更に進行する。増粘・ゲル化によりエチレン系共重合体粘度が不均一になると、Tダイ内のエチレン系共重合体の流れが不均一になり、厚み不良を引き起こしたり、更にゲル化が進むと、Tダイ内の一部でエチレン系共重合体が固化したりする。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、安定して効率良く成形できる、均一な品質の太陽電池用接着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の太陽電池用接着シートは、エチレン系共重合体と有機過酸化物よりなる、三層以上の樹脂シートが積層されている太陽電池用接着シートであって、両側最外層はエチレン系共重合体100重量部と有機過酸化物0.05重量部以上、0.3重量部未満よりなり、内層はエチレン系共重合体100重量部と有機過酸化物0.3重量部〜3重量部よりなり、両側最外層の厚みの和が全体の20%以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明で使用されるエチレン系共重合体は、エチレンと、エチレンと共重合しうる共重合性モノマーとの共重合体であり、該共重合性モノマーとしては、接着性、透明性の観点から、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル等が挙げられ、これら共重合性モノマーはエチレンと単独で共重合されていてもよいし、2種以上の共重合性モノマーが共重合されていてもよい。
【0012】
エチレン系共重合体中に含まれる共重合性モノマーの含有量は、特に限定されるものではないが、5〜50重量%であることが好ましい。共重合性モノマーの含有量が5重量%未満であると、太陽電池形成後の透明性が不足し、太陽電池の発電性能が十分でなくなる恐れがあり、50重量%を超えると、製膜が満足にできない、あるいは太陽電池シートの強度が不足する恐れがある。
【0013】
上記エチレン系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、エチレン−酢酸ビニル共重合体は酢酸ビニル含量が5〜50重量部であるのが好ましい。
【0014】
本発明で使用される有機過酸化物としては、例えば、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート等が挙げられ、これら有機過酸化物は単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0015】
本発明の太陽電池用接着シートは、エチレン系共重合体と有機過酸化物よりなる、三層以上の樹脂シートが積層されている太陽電池用接着シートであって、両側最外層はエチレン系共重合体100重量部と有機過酸化物0.05重量部以上、0.3重量部未満よりなる。
【0016】
両側最外層の有機過酸化物の添加量が、0.05重量部未満である場合には、太陽電池の製造工程中に側面から太陽電池用接着シートがはみ出したり、あるいは太陽電池設置後の耐久性が十分でなくなる恐れがある。又、0.3重量部以上添加した場合、押出成形する際に滞留部でゲル化し均一なシートが得られない恐れがある。
【0017】
又、内層はエチレン系共重合体100重量部と有機過酸化物0.3重量部〜3重量部よりなる。有機過酸化物の添加量が0.3重量部未満の場合、太陽電池形成後に十分な耐久性が得られない恐れがあり、3重量部より多く添加した場合には、耐久性はそれほど向上せずに、太陽電池製造時に気泡が発生してしまう、シートが着色しやすくなるなどの問題が発生する恐れがある。
【0018】
本発明の太陽電池用接着シートは両側最外層の厚みの和が全体の20%以下である。両側最外層の厚みの和が20%より大きい場合には、十分な耐久性が得られなくなる恐れがある。
【0019】
本発明の太陽電池用接着シートには、必要に応じて、架橋助剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤がそれぞれ1種もしくは2種以上添加されてもよい。 上記添加剤は公知のものを用いることができ、添加量は本発明の課題達成を損なわない範囲で添加すればよい。
【0020】
本発明の太陽電池接着用シートの成形には、一般的な多層Tダイ押出機を用いることができ、例えば、押出機は2台以上使用し、両側最外層用の樹脂組成物及び内層用の樹脂組成物を、有機過酸化物が実質的に分解しない温度で溶融混練し、多層Tダイ押出機で押出成形し、Tダイから押出された溶融樹脂シートは、冷却ロールで冷却、固化され、巻き取る。
【0021】
溶融混練は、使用する有機過酸化物の1時間半減期温度より10℃以上低い温度で実施するのが好ましい。2種以上の有機過酸化物を使用する場合は、最も低い1時間半減期温度よりも10℃以上低い温度で溶融混練するのが好ましい。
【0022】
本発明の太陽電池接着用シートは太陽電池モジュールのラミネート工程での脱気性を向上させるために、シートの表面にエンボス模様を賦型するのが好ましい。シートの表面にエンボス模様を賦型する方法としては、例えば、溶融樹脂がTダイから押出された直後に、表面にエンボス模様を施した冷却ロールでニップする方法や、一旦冷却されたシートを再加熱して、エンボスロールとゴムロールとでニップする方法等公知のエンボス賦型方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の太陽電池接着用シートの構成は上述の通りであるから、安定して効率良く成形でき、得られる太陽電池接着用シートは品質の均一なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について説明するが、下記の例に限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
(実施例1〜3、比較例1〜4)
エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量28重量%、MFR20g/10min)100重量部、トリアリルイソシアヌレート0.3重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1重量部、2, 6−ジ−t −ブチル−4−メチルフェノール0.1重量部、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン0.3重量部及び表1に示した所定量の有機過酸化物よりなる樹脂組成物を、3台の押出機からフィードブロックに供給し、Tダイ法にて樹脂温度120℃で押出成形して、厚さ0.5mmの3層の太陽電池用接着シートを得た。尚、押出成形後、冷却引取する際に深さ0.2mmのエンボス加工を施した。但し、比較例3については安定した成形ができなかったため一部評価を省略した。
【0026】
得られた太陽電池用接着シートのゲル分率及び耐冷湿熱サイクル試験を下記の方法で行い、結果を表1に示した。
【0027】
(1)ゲル分率 押出開始後1時間後及び24時間後に得られた太陽電池用接着シートの幅方向に2点(端部から5cm及び中央)測定した。又、太陽電池用接着シートを離型シートにはさみ、150℃で10分間加熱して架橋した後のゲル分率を測定した。ゲル分率は、試料0.2gを50mlのキシレンに浸漬して110℃で12時間加熱溶解した後、200メッシュの金網で不溶分をろ別し、80℃で4時間減圧乾燥した後、不溶分の試料に対する重量%で示した。
【0028】
(2)耐冷湿熱サイクル試験 得られた2枚の太陽電池用接着シートの間に、複数個の太陽電池用シリコン半導体ウエハーをインターコネクターを用いて直列に配列し、上側シート上面に透明平板ガラスを、下側シート下面にポリフッ化ビニル樹脂シートをそれぞれ重ね合わせ、加熱温度150℃、減圧度10mmHg、大気圧プレス下で10分間加熱接着して、太陽電池モジュールを作製した。
【0029】
得られた太陽電池モジュールを−20℃で6時間放置した後、−20℃から+85℃まで1時間を要して昇温し、+85℃85%RHの雰囲気下に6時間放置した後、+85℃から−20℃まで1時間を要して冷却する工程を1サイクルとして、10サイクル経過後の太陽電池モジュールの外観を目視で観察し、変色、剥離等の異常の有無を判定した。
【0030】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系共重合体と有機過酸化物よりなる、三層以上の樹脂シートが積層されている太陽電池用接着シートであって、両側最外層はエチレン系共重合体100重量部と有機過酸化物0.05重量部以上、0.3重量部未満よりなり、内層はエチレン系共重合体100重量部と有機過酸化物0.3重量部〜3重量部よりなり、両側最外層の厚みの和が全体の20%以下であることを特徴とする太陽電池用接着シート。