説明

太陽電池用裏面側封止材及び太陽電池モジュール

【課題】太陽電池セル及び裏面保護シートとの密着性の低下を抑制しつつ、変換効率を向上させることができる太陽電池用裏面側封止材及び太陽電池モジュールの提供を目的とする。
【解決手段】透明樹脂2a及び透明樹脂2aに分散された光拡散粒子2bを含有する光拡散樹脂層2と、透明樹脂3aを含有し、光拡散樹脂層2の両面側にそれぞれ積層される透明樹脂層3と、を有する太陽電池用裏面側封止材1A。また、太陽電池用裏面側封止材1Aを用いた太陽電池モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関し、特に太陽電池セル間に入射する入射光を有効利用して変換効率を高めることができ、ガラス板や裏面保護シートとの密着性の低下を抑制できる、コスト面に優れた太陽電池用裏面側封止材、及びそれを用いた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に対する関心が高まっており、二酸化炭素の排出抑制のために、種々努力が続けられている。化石燃料の消費量の増大は、大気中の二酸化炭素の増加をもたらし、その温室効果により地球の気温が上昇し、地球環境に重大な影響を及ぼす。該問題の解決策としては、クリーン性、無公害性という点から、特に太陽光発電への期待が高まっている。
太陽電池は、太陽光エネルギーを直接電気に換える太陽光発電システムの心臓部を構成するものであり、単結晶、多結晶、あるいはアモルファスシリコン系の半導体からできている太陽電池セル(太陽電池素子単体)を有する。太陽電池においては、太陽電池セルがそのままの状態で使用されることはなく、一般的に数枚〜数十枚の太陽電池セルが直列、並列に配線される。また、長期間(約20年)にわたって太陽電池セルを保護するために、種々パッケージングが行われ、ユニット化される。このパッケージングに組み込まれたユニットは太陽電池モジュールと呼ばれ、一般的に太陽光が当たる面をガラス面で覆い、熱可塑性プラスチックからなる封止材で間隙を埋め、裏面を裏面保護シートで保護する。
【0003】
しかし、太陽電池モジュールにおいては、複数設置された太陽電池セルと太陽電池セルの隙間に入射した太陽光は、発電に寄与しない。そこで、変換効率を向上させる目的で、該隙間に入射した太陽光を有効利用するための様々な取り組みがなされている。例えば、下記(1)及び(2)の太陽電池モジュールが示されている。
(1)太陽電池セルと太陽電池セルの隙間部分の封止材に凹凸形状を付与し、該凹凸形状の裏面部分にメッキあるいは蒸着を施して光反射面を形成した太陽電池モジュール(特許文献1)。
(2)太陽電池セルの裏面側を封止する裏面側封止材全体に光反射性粒子を含有させた太陽電池モジュール(特許文献2)。
太陽電池モジュール(1)、(2)では、太陽電池セルと太陽電池セルの隙間を通過した光を、前記光反射面もしくは光反射性粒子により反射し、その反射光をガラス面で再度反射させて太陽電池セルに到達させることで、該光を光電変換に利用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−43600号公報
【特許文献2】特開2005−101381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、太陽電池モジュール(1)では、封止材の凹凸形状の裏面に光反射面を形成するメッキあるいは蒸着を行う必要があるため、製造工程が増加して製造が煩雑になる。また、光反射面を形成する位置を、太陽電池セルと太陽電池セルの隙間に対応する位置に合わせることが難しい。
また、太陽電池モジュール(2)では、変換効率を向上させるのに充分な量の光反射性粒子を裏面側封止材に含有させると、該裏面側封止材と太陽電池セル、及び該裏面側封止材と裏面保護シートとの密着性が低下し、太陽電池モジュールの耐候性が低下する問題がある。
【0006】
本発明は、太陽電池セル及び裏面保護シートとの密着性の低下を抑制しつつ、太陽電池セルの隙間に入射した太陽光を有効利用して変換効率を高めることができる太陽電池用裏面側封止材、及び該太陽電池用裏面側封止材を用いた太陽電池モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]透明樹脂及び該透明樹脂に分散された光拡散粒子を含有する光拡散樹脂層と、前記光拡散樹脂層の両面側にそれぞれ積層される、透明樹脂を含有する透明樹脂層と、を有することを特徴とする、太陽電池セルの裏面側を封止する太陽電池用裏面側封止材。
[2]前記光拡散粒子が、平均粒径が0.02〜6μmで、かつ屈折率が1.7〜2.8の光拡散粒子である、前記[1]に記載の太陽電池用裏面側封止材。
[3]前記光拡散樹脂層中の前記光拡散粒子の含有量が、前記光拡散樹脂層における透明樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部である、前記[1]又は[2]に記載の太陽電池用裏面側封止材。
[4]前記光拡散樹脂層と前記透明樹脂層が多層押出法により成形されてなる、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の太陽電池用裏面側封止材。
[5]太陽電池セルと、前記太陽電池セルを内部に包埋させて封止する封止材層と、前記封止材層における前記太陽電池セルの受光面側に位置するガラス板と、前記封止材層における前記太陽電池セルの裏面側に位置する裏面保護シートと、を有し、前記封止材層が、前記太陽電池セルの表面側を封止する表面側封止材と、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の太陽電池用裏面側封止材により形成されている太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0008】
本発明の太陽電池用裏面封止材は、太陽電池セル及び裏面保護シートとの密着性の低下を抑制しつつ、太陽電池セルの隙間に入射した太陽光を有効利用して変換効率を高めることができる。
本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池用裏面側封止材と、太陽電池セル及び裏面保護シートとの密着性に優れ、かつ変換効率にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の太陽電池用裏面側封止材の実施形態の一例を示した断面図である。
【図2】本発明の太陽電池用裏面側封止材の他の実施形態例を示した断面図である。
【図3】本発明の太陽電池モジュールの実施形態の一例を示した断面図である。
【図4】本発明の太陽電池モジュールの製造方法の一工程を示した断面図である。
【図5】本発明の太陽電池モジュールの製造方法の一工程を示した断面図である。
【図6】本発明の太陽電池モジュールの太陽電池セル間を通過する光の経路を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[太陽電池用裏面側封止材]
本発明の太陽電池用裏面側封止材(以下、単に「裏面側封止材」という。)は、太陽電池モジュールにおいて、太陽電池セルの裏面側を封止する封止材であり、太陽電池セルにおける受光面側(表面側)を封止する表面側封止材と共に用いて、太陽電池セルを内部に包埋させて封止する封止材層を形成するものである。
【0011】
本発明の裏面側封止材は、透明樹脂及び該透明樹脂に分散された光拡散粒子を含有する光拡散樹脂層と、前記光拡散樹脂層の両面側にそれぞれ積層される、透明樹脂を含有する透明樹脂層とを有する。つまり、本発明の裏面側封止材は、1層以上の光拡散樹脂層と、該光拡散樹脂層の両面側に位置する2層以上の透明樹脂層とを有する3層以上の積層体を有する。
【0012】
以下、本発明の裏面側封止材の実施形態の一例を示して詳細に説明する。
本発明の裏面側封止材としては、図1に示すように、透明樹脂層3、光拡散樹脂層2、透明樹脂層3がこの順に積層された3層構成の積層体を有する裏面側封止材1A、又は、図2に示すように、透明樹脂層3、光拡散樹脂層2、透明樹脂層3、光拡散樹脂層2、透明樹脂層3がこの順に積層された5層構成の積層体を有する裏面側封止材1Bが好ましい。
【0013】
光拡散樹脂層2は、透明樹脂2aと、透明樹脂2a内に分散された光拡散粒子2bとを含有している。本発明における透明樹脂とは、厚み1mmにおける標準の光D65線の光の透過率が80%以上の樹脂を意味する。
光拡散樹脂層2は、太陽電池モジュールにおいて、太陽電池セルと太陽電池セルの隙間を通過してきた太陽光を反射する役割を果たす。
【0014】
透明樹脂2aとしては、太陽電池セルを封止する封止材として通常用いられる公知の透明樹脂が使用できる。
透明樹脂2aとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;アイオノマー;エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」という。);ポリフッ化ビニル;ポリ塩化ビニル、または、これらの共重合体が挙げられる。なかでも、透明性に優れ、安価である点から、EVAが好ましく、酢酸ビニル単位の含有量が10〜40質量%のEVAがより好ましい。
【0015】
光拡散粒子2bとしては、光吸収が少なく光反射性に優れた粒子を用いることができ、無機微粒子が好ましい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、酸化チタン、アルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化ストロンチウムなどの無機酸化物粒子、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩化バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、ガラス粒子などの無機微粒子などが挙げられる。なかでも、光反射性に優れる点から、白色の光拡散粒子が好ましく、酸化チタン、酸化マグネシウム、アルミナがより好ましい。
これら光拡散粒子2bは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
光拡散粒子2bの平均粒径は、0.02〜6μmが好ましく、0.02〜2μmがより好ましい。光拡散粒子2bの平均粒径が前記範囲内であれば、太陽光の反射性能が向上するため、太陽電池モジュール内に入射した太陽光のうち太陽電池セルの受光面に到達する太陽光の量が増加し、変換効率が向上する。また、可視光波長域での光吸収が小さくなるため、光の損失を抑制しやすい。さらに、光拡散粒子2bによって裏面側封止材に黄色などの色が出ることを抑制しやすい。
【0017】
光拡散粒子2bの屈折率は、1.7〜2.8が好ましく、2.2〜2.8がより好ましい。光拡散粒子2bの屈折率が1.7以上であれば、透明樹脂2aに比べて高屈折率となるため、透明樹脂2aとの屈折率の差が大きくなって光散乱性が向上し、高い反射性能が得られやすい。そのため、変換効率が向上する。光拡散粒子2bの屈折率が2.8以下であれば、安価で容易に手に入りやすいため、製造コストが抑制できる。
【0018】
光拡散粒子2bは、太陽電池セルの有効波長に応じた優れた光反射性を有する粒子を用いることができる。特に、太陽光のうち波長400〜1000nmの光に対する優れた光反射性を有する光拡散粒子2bが好ましい。
光拡散粒子2bは、平均粒子が0.02〜6μmで、かつ屈折率が1.7〜2.8の光拡散粒子であることが特に好ましい。
【0019】
光拡散樹脂層2における光拡散粒子2bの含有量は、透明樹脂2aの100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、1〜25質量部がより好ましい。光拡散粒子2bの含有量が透明樹脂2aの100質量部に対して0.1質量部以上であれば、優れた光反射性が得られやすく、太陽電池モジュールの変換効率が向上する。光拡散粒子2bの含有量が透明樹脂2aの100質量部に対して30質量部以下であれば、裏面側封止材の製造において、透明樹脂と光拡散粒子を充分に混練することが容易になり、分散状態が良好になりやすい。そのため、均一にシート成形された裏面側封止材が得られやすい。
【0020】
透明樹脂層3は、透明樹脂3aを含有する層である。透明樹脂3aとしては、前記透明樹脂2aで挙げた樹脂と同じ樹脂が挙げられる。透明樹脂3aとしては、EVAが好ましく、酢酸ビニル単位の含有量が10〜40質量%のEVAがより好ましい。
光拡散樹脂層2の透明樹脂2aと、透明樹脂層3の透明樹脂3aは、同じ種類の樹脂であってもよく、異なる種類の樹脂であってもよいが、密着性の点から、同じ種類の樹脂であることが好ましい。
【0021】
本発明の裏面側封止材においては、太陽電池モジュールの耐熱性、物理的強度が向上する点から、封止材中の透明樹脂を熱あるいは光などにより架橋することが好ましい。
熱架橋を行う場合には、各層に有機過酸化物を配合することが好ましい。有機過酸化物としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものが好ましい。
例えば、半減期10時間、分解温度が50℃以上の有機過酸化物として、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロキシパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス−(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0022】
光硬化を行う場合には、各層に光増感剤を配合することが好ましい。例えば、ベンゾフェノン、オルソベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、イソプロピルチオキサントンなどの水素引き抜き型(二分子反応型);ベンゾインエーテル、ベンジルジメチルケタールなどの内部開裂型;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アルキルフェニルグリオキシレート、ジエトキシアセトフェノンなどのα−ヒドロキシアルキルフェノン型;2−メチル−1−[4(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などのα−アミノアルキルフェノン型などが挙げられる。また、アシルフォスフィンオキサイドなどを用いてもよい。
【0023】
また、光拡散樹脂層2及び透明樹脂層3には、密着性の向上及び硬化反応を促進する目的でエポキシ基含有化合物が配合されていてもよい。
エポキシ基含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アクリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノールグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテルなどの化合物や、エポキシ基を含有する質量平均分子量が数百から数千のオリゴマー、質量平均分子量が数千から数十万のポリマーなどが挙げられる。
【0024】
また、光拡散樹脂層2及び透明樹脂層3には、封止材の架橋、接着性、機械的強度、耐熱性、耐湿熱性、耐候性などを向上させる目的で、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物又はアリル基含有化合物が配合されていてもよい。
アクリロキシ基含有化合物及びメタクリロキシ基含有化合物としては、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、アミドなどの(メタ)アクリル酸誘導体が好ましい。
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、ドデシル基、ステアリル基、ラウリル基、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸と多官能アルコール(エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど。)とのエステルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸のアミドとしては、アクリルアミドなどが挙げられる。
アリル基含有化合物としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリルなどが挙げられる。
【0025】
その他、光拡散樹脂層2及び透明樹脂層3には、難燃性を付与する無機化合物、耐候性を付与する紫外線吸収剤、酸化劣化を防止する酸化防止剤が配合されていてもよい。
【0026】
本発明の裏面側封止材(裏面側封止材1A、1B)の総厚みは、0.2〜1.0mmが好ましく、0.3〜0.6mmがより好ましい。裏面側封止材の総厚みが0.2mm以上であれば、太陽電池モジュールにおける封止材層と、太陽電池セル及び裏面保護シートとの密着性が向上し、変換効率も向上する。裏面側封止材の総厚みが1.0mm以下であれば、透明樹脂層の透過率を80%以上に充分に確保しやすい。
【0027】
本発明の裏面側封止材(裏面側封止材1A、1B)における光拡散樹脂層2の厚みdと、透明樹脂層3の厚みdの比d/dは、特に限定されず、1/19〜1/1であることが好ましく、1/10〜1/1であることがより好ましい。
比d/dが1/19以上であれば、透明樹脂層3の厚みが薄くなりすぎることを抑制できるため、裏面側封止材の成形が容易になる。比d/dが1/1以下であれば、光拡散樹脂層2の厚みが薄くなりすぎることを抑制しやすいため、光拡散粒子2bの含有量を抑制でき、裏面封止材の成形が容易になる。
【0028】
本発明の裏面側封止材の製造方法としては、複数の押出機を用いて光拡散樹脂層2と透明樹脂層3とを多層押出法により成形する方法が好ましい。すなわち、透明樹脂、光拡散粒子及び必要に応じて各種添加剤を含有する光拡散樹脂組成物と、透明樹脂及び必要に応じて各種添加剤を含有する透明樹脂組成物とをそれぞれ調製し、多層押出法により各層を成形して裏面側封止材を得る方法が好ましい。多層押出法を用いることにより、3層以上の複雑な積層体であるにも関わらず、工程数を増やさずに、より低コストで品質に優れた裏面側封止材を製造できる。
【0029】
本発明の裏面側封止材を用いれば、太陽電池モジュールにおいて、裏面側封止材と太陽電池セル、及び裏面側封止材と裏面保護シートとの密着性の低下を抑制しつつ、変換効率を高めることができる。
なお、本発明の裏面側封止材は、前記裏面側封止剤1A、1Bには限定されない。例えば、7層以上の積層体を有する裏面側封止材であってもよい。
【0030】
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池モジュールは、前述した本発明の裏面側封止材を用いて製造した太陽電池モジュールである。以下、本発明の太陽電池モジュールの実施形態の一例として、前記裏面側封止材1Aを用いた太陽電池モジュール10について説明する。
太陽電池モジュール10は、図3に示すように、複数の太陽電池セル12(本実施形態では4つ)と、それら太陽電池セル12を内部に包埋されるように封止する封止材層11と、封止材層11における太陽電池セル12の受光面12a側に位置するガラス板13と、封止材層11における太陽電池セル12の裏面12b側に位置する裏面保護シート14と、を有する。
【0031】
封止材層11は、表面側封止材1Cと裏面側封止材1Aにより形成されている。封止材層11における裏面側封止材1Aは、透明樹脂層3が太陽電池セル12及び裏面保護シート14と接触しており、光拡散樹脂層2が太陽電池セル12と裏面保護シート14の間に位置している。
【0032】
表面側封止材1Cは、太陽電池セル12の受光面12a側を封止する封止材であり、光拡散粒子を含まない公知の封止材が使用できる。表面側封止材1Cにおける透明樹脂としては、前述した透明樹脂2aで挙げた樹脂と同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。また、表面側封止材1Cには、必要に応じて前述した各種添加剤が添加されていてもよい。
【0033】
また、表面側封止材1Cには、ガラス板13との密着性を向上させる目的で、シランカップリング剤が配合されていてもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0034】
表面側封止材1Cの厚みは、0.2〜1.0mmが好ましく、0.3〜0.6mmがより好ましい。
【0035】
太陽電池セル12は、光電効果により受光面に入射した太陽光を電気に変換する機能を有するセルである。太陽電池セル12としては、例えば、単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板などからなり、内部にPN接合が形成され、その受光面12aと裏面12bに電極が設けられ、さらに受光面12aに反射防止膜が設けられたセルなどが挙げられる。
太陽電池セル4の厚みは、通常0.3mm程度、大きさは、多結晶シリコンの太陽電池セルでおよそ150mm角程度のものが多い。
【0036】
ガラス板13としては、例えば、白板ガラス、強化ガラス、倍強化ガラス、熱線反射ガラスなどが挙げられ、白板強化ガラスが好ましい。
ガラス板13の厚みは、3〜5mmが好ましい。
【0037】
裏面保護シート14としては、例えば、太陽電池モジュールの裏面側から水分が透過しないようにアルミニウム箔を挟持した積層構造を有する、優れた耐候性を有するフッ素系樹脂シートや、アルミナ又はシリカを蒸着したポリエチレンテレフタレート(PET)シートなどが挙げられる。
裏面保護シート14の厚みは、15〜400μmが好ましい。
【0038】
太陽電池モジュール10の製造方法としては、本発明の裏面側封止材を用いる以外は公知の製造方法を用いることができ、例えば、図4に示すように、裏面保護シート14、封止材シート1A、太陽電池セル12、封止材シート1C、ガラス板13をこの順に積層して積層体10Aとし、真空ラミネートにより、封止材シート1A、1C内に光電変換セル12を包埋させ、それら封止材の透明樹脂を架橋硬化させて接着一体化することで封止材層11を形成する方法が挙げられる。
【0039】
具体的には、下記工程(1)〜(4)を有する方法が挙げられる。
(1)図5(a)に示すように、加熱された天板100(約120〜160℃)上にガラス板13、表面側封止材1C、電極により接続された複数の太陽電池セル12、裏面側封止材1A、裏面保護シート14をこの順に積層して積層体とする。
(2)チャンバー101及びチャンバー102を真空引きする。
(3)チャンバー102を大気開放し、耐熱性を有するゴムシート103を前記積層体に密着させる。
(4)工程(3)の密着による熱及び圧力により、図5(b)に示すように、封止材であるEVAを溶融し、太陽電池セル12を封止材中に包埋し、ガラス板13及び裏面保護用シート14と接着させながら封止材を架橋・固化させて封止材層11を形成する。
【0040】
工程(4)における架橋反応は、ラミネート後に別ラインに設けたオーブンにて架橋反応させる場合と、ラミネーター内部で架橋反応させる場合とに分類される。前者はスタンダードキュアといわれるタイプであり、後者はファストキュアといわれるタイプであり、所望の方法を使用できる。
【0041】
以上説明した太陽電池モジュール10は、本発明の裏面側封止材を用いることにより、優れた変換効率が得られる。
本発明の太陽電池モジュールでは、図6に示すように、太陽電池セル12と太陽電池セル12の間に入射する太陽光Fが、裏面側封止材1Aにおける光拡散樹脂層2で、光拡散粒子2bにより反射され、さらに反射した太陽光Fがガラス板13で再度反射され、その一部が太陽電池セル12の受光面12aに到達する。このように、太陽電池セル12と太陽電池セル12の間を通過した太陽光Fを発電に利用することができるため、変換効率が向上する。
【0042】
また、本発明の太陽電池モジュールにおいては、裏面側封止材と太陽電池セル、及び裏面側封止材と裏面保護シートとの密着性の低下の抑制と、優れた変換効率とを両立できる。該効果が得られる原因は以下のように考えられる。
特許文献2に記載の従来の太陽電池モジュールでは、裏面側封止材に全体的に光反射性粒子を配合していたため、太陽電池セル及び裏面保護シートとの密着性が低下していたと考えられる。
これに対し、本発明の裏面側封止材は、光拡散粒子を含む光拡散樹脂層と、該光拡散樹脂層の両側に位置する、光拡散粒子を含まない透明樹脂層とを有するので、太陽電池モジュールにおいて、太陽電池セルや裏面保護シートには光拡散粒子を含まない透明樹脂層が接触する。そのため、裏面側封止材と太陽電池セル、及び裏面側封止材と裏面保護シートとの密着性の低下が抑制される。また、裏面側封止材をこのような構成とすることで、太陽電池セルや裏面保護シートとの密着性を低下させることなく、光拡散樹脂層に光拡散粒子を高濃度で配合できるため、変換効率がより高くなる。
【0043】
なお、本発明の太陽電池モジュールは、前述した裏面側封止材1Aを用いたものには限定されない。例えば、前記裏面側封止材1Bを用いたものであってもよい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。なお、本実施例における「部」は「質量部」を意味する。
[実施例1]
裏面側封止材の光拡散樹脂層と透明樹脂層の製造用として、下記光拡散樹脂組成物及び透明樹脂組成物を用い、スクリュー直径65mmの押出機とスクリュー直径40mmの押出機により多層押出を行い、透明樹脂層、光拡散樹脂層、透明樹脂層が順次積層された3層からなるシート状の裏面側封止材を作製した。この際、光拡散樹脂層の厚みが0.40mm、2つの透明樹脂層の厚みがそれぞれ0.05mmになるように調整し、裏面側封止材の総厚みが0.50mmになるように調整した。
光拡散樹脂組成物:
透明樹脂 EVA(酢酸ビニル単位:30質量%) 100部
光拡散粒子 酸化チタン(平均粒径0.2μm、屈折率2.72) 15部
架橋剤 2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン
0.7部
架橋助剤 トリアリルイソシアヌレート 0.7部
紫外線吸収剤 ベンゾフェノン系紫外線吸収剤 0.3部
酸化防止剤 リン系酸化防止剤 0.1部
光安定剤 ヒンダードアミン系光安定剤 0.3部
透明樹脂組成物は、光拡散粒子を含有していない以外は、前記光拡散樹脂組成物と同じ組成とした。
【0045】
[実施例2及び3]
光拡散粒子である酸化チタンの配合量を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして裏面側封止材を作製した。
【0046】
[実施例4]
光拡散樹脂組成物に添加する光拡散粒子を、屈折率1.72、平均粒径0.2μmの酸化マグネシウムの5部に変更した以外は、実施例1と同様にして裏面側封止材を作製した。
【0047】
[実施例5]
光拡散樹脂組成物に添加する光拡散粒子を、屈折率1.77、平均粒径0.2μmのアルミナの5部に変更した以外は、実施例1と同様にして裏面側封止材を作製した。
【0048】
[実施例6]
酸化チタンの配合量を20部に変更し、光拡散樹脂層の厚みを0.20mm、該光拡散樹脂層の両面側の透明樹脂層の厚みをそれぞれ0.15mmに変更した以外は、実施例1と同様にして裏面側封止材を作製した。
【0049】
[比較例1]
実施例1の透明樹脂組成物を用いて、厚み0.50mmの単層の透明樹脂層からなる裏面側封止材を作製した。
【0050】
[実施例2及び3]
実施例1の光拡散樹脂組成物における酸化チタンの配合量を表1に示すとおりに変更した光拡散樹脂組成物を用い、単層の光拡散樹脂層からなる裏面側封止材を作製した。
【0051】
[評価方法]
下記に示すガラス板13、表面側封止材1C、太陽電池セル12、裏面側封止材1A及び裏面保護シート14を、図4に示すように積層して積層体10Aとした。該積層体10Aを真空ラミネーターにて140℃で加熱、圧着することで、太陽電池セル12を表面側封止材1Cと裏面側封止材1Aに包埋させ、それら封止材の透明樹脂を架橋硬化させて封止材層11を形成し、図3に例示した太陽電池モジュールを作製した。
ガラス板13:白板強化ガラス(厚み3mm)。
表面側封止材1C:実施例1の透明樹脂組成物を用いて作製した封止材(厚み0.5mm)。
裏面側封止材1A:各例で作成した裏面側封止材。
裏面保護シート:厚み38μmのポリフッ化ビニル系樹脂シート(PVF)上に、厚み300nmのアルミニウム蒸着層を有する厚み38μmのポリフッ化ビニル系樹脂シート(PVF)を、アクリル系樹脂の接着剤を介して積層したシート。
【0052】
得られた太陽電池モジュールについて、以下に示すように、密着性及び変換効率の評価を行った。
(封止材層と裏面保護シートとの密着性評価)
得られた太陽電池モジュールを、85℃−85%RH環境で、1000時間保管した後、封止材層と裏面保護シートとの密着性を評価した。前記密着性は、裏面保護シート14と封止材層11の界面にカッターナイフで剥離きっかけとして切り込みを入れ、裏面保護シート14を接着強度測定機のチャックに固定し、90°の角度で裏面側封止材/裏面保護シート間の接着強度を測定し、下記基準で評価した。接着強度測定機としては、株式外社オリエンテック製テンシロン万能試験機RTC−1250を用いた。また、測定条件は、15mm幅の接着強度測定とし、剥離速度は300mm/分とした。
○:接着強度が30N/15mm以上であった。
×:接着強度が30N/15mm未満であった。
【0053】
(変換効率評価)
JIS C8913に準拠した方法で太陽電池モジュールの変換効率を測定した。
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。変換効率については、比較例1で得られた変換効率を「1」としたときの相対値を記載した。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示すように、透明樹脂層、光拡散樹脂層及び透明樹脂層が積層された3層構成からなる本発明の裏面側封止材を用いた実施例1〜6では、太陽電池モジュールにおける封止材層と裏面保護シートとの密着性が優れていた。また、単層の透明樹脂層からなる裏面側封止材を用いた比較例1に比べて、変換効率が優れていた。
一方、単層の光拡散樹脂層からなる裏面側封止材を用いた比較例2では、太陽電池モジュールの変換効率が向上したものの、封止材層と裏面保護シートとの密着性が劣っていた。
また、酸化チタンの配合量が0.1部である比較例3では、封止材層と裏面保護シートとの密着性は優れているものの、変換効率の向上が見られなかった。
【符号の説明】
【0056】
1A、1B 太陽電池用裏面側封止材 2 光拡散樹脂層 2a 透明樹脂 2b 光拡散粒子 3 透明樹脂層 3a 透明樹脂 10 太陽電池モジュール 11 封止材層 12 太陽電池セル 13 ガラス板 14 裏面保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂及び該透明樹脂に分散された光拡散粒子を含有する光拡散樹脂層と、前記光拡散樹脂層の両面側にそれぞれ積層される、透明樹脂を含有する透明樹脂層と、を有することを特徴とする、太陽電池セルの裏面側を封止する太陽電池用裏面側封止材。
【請求項2】
前記光拡散粒子が、平均粒径が0.02〜6μmで、かつ屈折率が1.7〜2.8の光拡散粒子である、請求項1に記載の太陽電池用裏面側封止材。
【請求項3】
前記光拡散樹脂層中の前記光拡散粒子の含有量が、前記光拡散樹脂層における透明樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部である、請求項1又は2に記載の太陽電池用裏面側封止材。
【請求項4】
前記光拡散樹脂層と前記透明樹脂層が多層押出法により成形されてなる、請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用裏面側封止材。
【請求項5】
太陽電池セルと、前記太陽電池セルを内部に包埋させて封止する封止材層と、前記封止材層における前記太陽電池セルの受光面側に位置するガラス板と、前記封止材層における前記太陽電池セルの裏面側に位置する裏面保護シートと、を有し、
前記封止材層が、前記太陽電池セルの表面側を封止する表面側封止材と、請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用裏面側封止材により形成されている太陽電池モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate