説明

妊婦用ファンデーション

【課題】容易に、かつ、確実に、しかも違和感なく妊婦の腹部を支持し、保護することができる妊婦用ファンデーションを提供すること。
【解決手段】少なくとも腹回りを囲む筒状部20を有し、この筒状部の腹部の上側Kに対応した領域に伸縮性を有する腹伸張部22が設けられた妊婦用ファンデーションであって、筒状部の下腹Jに対応した領域には、中心付近から脇腹側に向かうに従って縮幅するようにして厚み方向に弾力性を有するクッション材33が配置された下腹支持部30が設けられ、筒状部の背中Lに対応した領域の上方には、厚み方向に弾力性を有する背面クッション部50が設けられており、筒状部の脇腹Uに対応した領域には、下腹支持部30と背面クッション部50とを連結するように配置され、腹伸張部22よりも強い収縮力を備えた伸縮性のある脇伸張部40が設けられている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、妊婦の腹回りに装着される妊婦用ファンデーションに関する。
【背景技術】
【0002】
妊婦用ファンデーションは、妊婦の少なくとも腹回りに装着されて、腹部を保護したり保温したりすると共に、迫り出した腹部を支える機能を有するガードルや妊婦帯などであって、この妊婦用ファンデーションの一例である妊婦用ガードル等では、ガードル本体の腹部に対応した領域を上から覆うように、ベルトを装着することで、膨らんだ腹部を保護すると共に、下側から支えていた(例えば、特許文献1参照)。すなわち、伸縮性のないベルトの一部がガードル本体の前身頃の中央部の股下側に接合されていて、その両端部には面ファスナが設けられている。そして、ベルトを引っ張る力を調整しながら腹回りに装着して、その両端部を面ファスナで止着し、これにより腹部を支持するようにしていた。
【0003】
しかし、このように伸縮性のないベルトを装着する際、毎回、ベルトの引き回し具合を調整しながら腹部に装着するのは、妊婦にとって面倒な作業である。このため、ガードルの腹部に対応する領域自体を伸縮性のある部材で形成してしまい、特に下腹部側に沿って収縮力の強い帯状部を一体に形成することで、上述したベルトを用いなくても腹部を支持するようにした妊婦用ガードルなども使用されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】実公昭60−25234号公報
【特許文献2】実公昭63−32088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、妊婦の腹部は大きく迫りだすように変化しており、また、その膨らみ方にも個人差がある。そうすると、腹部に対応した領域の伸縮性を大きくしつつ、収縮力をある程度低減しておかなければ、妊婦用ガードルを着用することができず、このため、膨らんだ腹部を確実に支えることができなかった。一方、腹部に対応した領域に収縮力の強い材料を使用した場合、腹部を圧迫してしまう恐れがあり、また、収縮力の強い部分だけでは、腹部の保温や保護が不十分だった。
本発明は上記課題を解消し、容易に、かつ、確実に、しかも違和感なく妊婦の腹部を支持し、保護することができる妊婦用ファンデーションを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、第1の発明によれば、少なくとも腹回りを囲む筒状部を有し、この筒状部の腹部の上側に対応した領域に伸縮性を有する腹伸張部が設けられた妊婦用ファンデーションであって、前記筒状部の下腹に対応した領域には、中心付近から脇腹側に向かうに従って縮幅するようにして、厚み方向に弾力性を有するクッション材が配置された下腹支持部が設けられ、前記筒状部の背中に対応した領域の上方には、厚み方向に弾力性を有する背面クッション部が設けられており、前記筒状部の脇腹に対応した領域には、前記下腹支持部と背面クッション部とを連結するように配置され、前記腹伸張部よりも強い収縮力を備えた伸縮性のある脇伸張部が設けられている妊婦用ファンデーションにより達成される。
【0007】
第1の発明の構成によれば、筒状部の脇腹に対応した領域には、下腹に対応した領域にある下腹支持部と、背中に対応した領域の上方にある背面クッション部とを連結するように配置された脇伸張部が設けられている。このため、下腹支持部は、脇伸張部を介して、背中側の上方にある背面クッション部に支持され、この下腹支持部に当接した下腹部は、背中上方から支えられるように下側から支持される。そして、この脇伸張部が設けられている脇腹は、腹部のように大きく膨らむ箇所ではないので、身体に装着するために腹伸張部のように伸縮性を大きくする必要がない。したがって、この脇伸張部に腹伸張部よりも強い収縮力を持たせて、下腹支持部を背面クッション部側から支えるように引っ張ることで、大きく膨らんだ腹部を下側から確実に支持しつつ、容易に着脱できる。
しかも、下腹支持部に配置されたクッション材と背面クッション部は、厚み方向に弾力性を有しているので、強い収縮力を有する脇伸張部に引っ張られても、そのクッション性で張力を吸収しながら下腹および背面にフィットするよう当接される。したがって、従来のようにベルトの締め具合を調整するようなことをしなくても、適度な力をもって、違和感なく下腹や背中に密着されることになり、しかも、クッションなので腹部や腰部を保温・保護できる。
そして、これらの下腹支持部、背面クッション部、脇伸張部、及び腹伸張部は、すべて筒状部に設けられているので、この筒状部を装着するだけで、上述のような作用効果を発揮できる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記下腹支持部のクッション材及び/又は背面クッション部は、通気性を有するシート体から形成されていることを特徴とする。
第2の発明の構成によれば、下腹支持部のクッション材及び/又は背面クッション部は、通気性を有するので下腹や背中の蒸れを防ぐことができ、また、シート体から形成されているので縫合が容易であり製造し易い。
【0009】
第3の発明は、第1または第2の発明の構成において、前記脇伸張部は、前記下腹支持部の脇腹側両端部に接続すると共に、前記背面クッション部の脇腹側両端部の高さ方向全域に接続するように配置され、さらに、前記筒状部の上側の開口部に隣接する領域にも配置されていることを特徴とする。
第3の発明の構成によれば、脇伸張部は、下腹支持部の脇腹側両端部に接続すると共に、背面クッション部の脇腹側両端部の高さ方向全域に接続するように配置されているので、下腹支持部の脇腹側両端部を背面クッション部の高さ方向の全域に向けて引っ張り、背中側で一定の幅をもって下腹を支持する方向性をつけることができる。
また、脇伸張部は、筒状部の上側の開口部に隣接する領域にも配置されているので、開口部に隣接した領域にフィットして、曲面状となった妊婦の腹部であっても、筒状部がズレ落ち難く、着用状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、容易に、かつ、確実に、しかも違和感なく妊婦の腹部を支持し、保護することができる妊婦用ファンデーションを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0012】
図1ないし図3は、本発明の実施形態に係る妊婦用ファンデーションの一例として妊婦用ガードル10を示しており、図1はその正面側の概略斜視図、図2は背面側の概略斜視図、図3は概略側面図である。なお、これらの図では、理解の便宜のため、使用者である妊婦M(一点鎖線で示す部分)に妊婦用ガードル10を装着して図示している。
これらの図に示すように、妊婦用ガードル10は、妊婦Mの少なくとも下腹を含む腹回りを囲む筒状部20を有しており、この筒状部20は、本実施形態の場合、下腹Jと腹部の上側Kを含む腹部及びこれに対応する脇腹Uや背中Lを覆い、さらに、臀部Nや太腿Qも覆うようになっている。そして、筒状部20の内周は妊婦Mの腹囲に比べて小さく形成されており、妊婦Mは、筒状部20を引き伸ばしながら、筒状部20の上側の開口部20a側から両脚を入れ、両太腿側の開口部20b,20b側から脚を出して着用し、脱ぐ際には逆の動きで脱ぐようになっている。
【0013】
この筒状部20については、身体の各部位に対応した領域に特有な機能があるため、先ず、その機能についての概略を説明し、その後、特に特徴のある領域について詳細に説明することとする。
最初に、筒状部20の腹部の上側Kに対応した領域について説明する。
筒状部20の腹部の上側Kに対応した略U字状とされた領域には、伸縮性を有する腹伸張部22が設けられている。この腹伸張部22は、腹部を覆って保温・保護する機能を有すると共に、腹部の上側Kの膨らみに応じて容易に妊婦用ガードル10を着用して、柔らかくフィットするようにする機能を有する。
【0014】
すなわち、図1に示すように、腹伸張部22の上部22aは、開口部20aに脚を入れて妊婦用ガードル10を装着する際、前身頃の最も膨らんだ腹部が通る領域であり、腹伸張部22の中心付近22bは、腹部の最も膨らんだ箇所を覆う領域となる。そこで、腹伸張部22は、妊婦用ガードル10を装着するために、いずれの方向に対しても伸縮する材料を使用することで、筒状部20が広がる方向に大きく伸びながらも、収縮力が低減された材料で形成されている。例えば、ポリウレタン等からなる伸縮繊維を、綿等の天然繊維やレーヨン等の再生繊維、ナイロン等の合成繊維等と共に生地とした編物又は織物等を用いて形成されており、ここでは、吸湿性や保温性を持ちながら、表面の滑り性を高めた生地として綿混ヘムの生地を使用して履き易い構成としている。なお、伸縮繊維を使用せずに、編み方等でより伸び易い構成にしてもよい。
また、腹伸張部22の開口部20a側となる腹開口部22bについては、折り返して二重にしたり、他の帯状の伸縮材料を配置したりして収縮力を高め、確実に着用状態を維持できるようにしてもよい。
【0015】
次に、筒状部20の下腹Jに対応した領域、脇腹Uに対応した領域、背中Lに対応した領域について、その機能をまとめて概説する。
筒状部20の下腹Jに対応した領域には下腹支持部30、脇腹Uに対応した領域には脇伸張部40、背中Lに対応した領域には背面クッション部50が設けられている。
なお、下腹支持部30、脇伸張部40、背面クッション部50は、身体に正対して左右対称に設けられており、左右の各部30,40,50はそれぞれ同じ構成であるため、以下、特に説明がない限り、身体に正対して右側の下腹支持部30、脇伸張部40、背面クッション部50についてのみ説明する。
【0016】
下腹支持部30、脇伸張部40、背面クッション部50は、相互に機能しあって、膨らんだ腹部を支持するための役割を主に有する。すなわち、図3に示すように、背面クッション部50と下腹支持部30とが脇伸張部40により連結されている。そして、背面クッション部50は、少なくとも下腹Jよりも上方に配置された部分を有し、筒状部20の背中Lに対応した領域の上方に配置されている。これにより、妊婦Mの腰部に位置する背面クッション部50を基点として、脇伸張部40を介して、下腹支持部30が腹部J,Kを特に下腹Jに対応して下側から支えるようになっている。
【0017】
また、筒状部20の臀部Nに対応した領域には、ヒップバンド60が設けられている。このヒップバンド60は、臀部Nを引き上げる機能を有しており、下腹Jに対応した領域と臀部Nの脚の付け根付近とを連結し、下腹Jに対応した領域を基点として臀部Nを上方に引き上げるよう、表地に弾性を有する生地を縫合して形成されている。なお、このヒップバンド60を形成する生地には、腹伸縮部22と同様にポリウレタン等からなる伸縮繊維を、綿やレーヨン、ナイロン等と共に生地とした材料を用いることができ、特に、腹伸縮部22よりも収縮力が強くなるよう、伸縮繊維の太さや密度、配合比率を大きくしたものが使用される。なお、ヒップバンド60は例えばパワーネットを使用しており、延びる方向(図3の横方向)に対して伸び易く、収縮する構成とされている。
【0018】
次いで、上述のような機能を有する各領域について、特に特徴を有する部分を詳細に説明する。
先ず、筒状部20の脇腹Uに対応した領域に設けた脇伸張部40について説明する。
脇伸張部40は、上述のように、下腹支持部30および背面クッション部50を連結するように配置されており、そして腹伸張部22よりも強い収縮力を備えた伸縮性をもっている。すなわち、脇伸張部40が配置されている脇腹Uは、腹部のように大きく膨らむ領域ではないため、大きく引き伸ばさなくても、妊婦用ガードル10を装着することができる。また、脇伸張部40が収縮しても、腹部Kは弱い収縮力の腹伸縮部22とされているため、腹部Kに強い圧迫を与えることがなく、妊婦Mにとって違和感もない。このため、この脇腹Uの領域に強い収縮力を有する脇伸張部40を配置し、この脇伸張部40の収縮力によって妊婦用ガードル10を装着した際、妊婦用ガードル10のずれを防ぎ、しかも、脇伸張部40の強い収縮力で、背面クッション部50を基点として下腹支持部30を確実に支持できるようにしている。
【0019】
具体的には、図1のB−B線切断端面図である図4(b)に示すように、表地41、裏地42を使って、下腹Jを下腹支持部30で確実に支持できるように強い収縮力をもたせており、本実施形態では、表地41に腹伸張部22と同じ布地を用いて伸縮性を大きくし、これに対して、裏地42には表地41よりも強い収縮力を有するヒップバンド60と同様の材料を用いており、例えばダブルニット編みのパワーネットが用いられている。
さらに、この脇伸張部40の収縮力の強さは、下腹Jを確実に支持できるという基準だけではなく、後述する下腹支持部30に設けられたクッション材33の厚み方向に付与される力を吸収する度合いとの関係において決められることが好ましい。この点については、後で詳細に説明する。
【0020】
また、脇伸張部40は、図3に示されるように、前身頃側では、下腹支持部30の脇腹側両端部30aの上方領域(図1の略U字或いはV字状の下縁の上方領域)に接続されている。また、脇伸張部40は、後身頃側では、背面クッション部50の脇腹側両端部に、その高さ方向における上下領域と同等以上の幅をもって接続されており、ここでは同じ幅とされて、脇腹側両端部の高さ方向全域に接続されている。これにより、下腹支持部30の両端部30aを、背面クッション部50全体に向けて引き上げる。つまり、下腹支持部30は、背面クッション部50の少なくとも上下領域から引き上げられるようになっており、この下腹支持部30に当接した下腹Jを、一定の幅をもって、下側から支持する方向性R1〜R2をつけることができる。なお、背面クッション部50の脇腹側両端部の高さ方向全域の幅W2は、下腹支持部30の脇腹側両端部30aの幅W1よりも大きく形成されている。
【0021】
さらに、脇伸張部40は、筒状部20の脇腹Uに対応した領域であって、筒状部20の上側の開口部20aに隣接する上部領域40aまで配置されている。このため、脇伸張部40は、その収縮力により脇腹Uの上側を引き締めて、筒状部20がズレ落ち難くすることができる。なお、上部領域40aの上端部は折り返して二重としたり、帯状の伸縮材料を配置したりして、よりズレ落ち難くなる構成にしてもよい。
【0022】
次に、筒状部20の下腹に対応した領域に設けた下腹支持部30について説明する。
下腹支持部30には、厚み方向に弾力性を有するクッション材33が配置されている。
具体的には、図1のA−A線切断端面図である図4(a)に示すように、下腹支持部30は、表地31と裏地32との間にクッション材33を挟んで形成されている。なお、表地31は腹伸張部22が延伸されており、裏地32側は、収縮力を有しつつ、通気性を有するネット状の材料として、ヒップバンド60等と同じ生地が使用され、快適性を有しつつ、クッション材33を下腹Jにフィットさせるよう構成されている。
【0023】
そして、このクッション材33は、厚み方向(図4(a)の略左右方向)に所定の厚みを有することで、厚み方向に弾力性を有しており、少なくとも厚み方向に関する外部からの力を吸収できるようになっている。これにより、図3に示すように、下腹支持部30に接続された脇伸張部40の収縮力で、下腹支持部30が背面クッション部50側に引っ張られても、その張力をクッション材33が吸収し、下腹支持部30の下腹Jへの圧迫を抑え、妊婦Mへの違和感を低減することができる。このため、クッション材33は、脇伸張部40の収縮力の強さとの関係において、その仕様が決められることが好ましく、脇伸張部40の収縮力が強ければ強い程、クッション材33の材質や厚みを変えて、厚み方向の力を吸収する力を大きくするようにしている。
【0024】
また、クッション材33は、筒状部20が広がる方向に関しては、少なくとも積極的に伸びる機能を有さず、より好ましくはほとんど伸びず、これによりクッション材33の上に下腹Jが乗っても撓んだりせずに、確実に腹部J,Kを支持できるようになっている。
さらに、本実施形態のクッション材33は通気性を有するようになっており、以上のような機能を合わせもつ材料として、ウレタン等の連続発泡材料からなるスポンジ体や、合成樹脂等からなる剛性を有する糸を立体的にたて編したダブルラッセル、袋体内に綿等を充填したクッション材等を使用することができる。
【0025】
このようなクッション材33は、図1に示す脇伸張部40と隣接した端部(下腹支持部30の脇腹側両端部の上側)30aにおける部分が、表地31および裏地32に縫合されると共に、脇伸張部40に縫合されるなどして連結されている。これにより、脇伸張部40の収縮力が効率よくクッション材33に伝達されるようになっている。また、クッション材33は、ヒップバンド36と隣接した端部33bも、ヒップバンド36に縫合されることで連結されている。
【0026】
一方、クッション材33の腹部の上側Kの端部33cは、どの生地にも縫合されていない。このため、クッション材33の上側の端部33cは、内部空間S内(図4(a)参照)において自由端となり、腹部K,Jの膨張具合に適応して、内部空間S内で変形あるいは変位して、クッション材33が腹部K,Jを圧迫してしまうような事態を防止できる。さらに、クッション材33は、正面視が図1に示すように、中央が下側に窪んだ略V字あるいはU字状にされて、腹部の最も膨らむ中心付近を圧迫せず、脚回りにも干渉しないようになっている。特に、本実施形態の場合、クッション材33は、腹部K,Jを確実に支持できるように、筒状部20が広がる方向にあまり伸びないようになっているので、このような腹部K,Jへの圧迫を防止している。
なお、クッション材33は、両端部33bのみを表地31等に固定し、股部側の端部33dもどの生地にも縫合せずに、内部空間S内において自由端となって、股間の動きに対応できるようにしても良い。
【0027】
また、下腹支持部30は、このクッション材33が中心付近C1から脇腹U側に向かうに従って縮幅された三日月状とすることで、脇腹側両端部(本実施形態では脇伸張部40と隣接した端部と同じ)30aに向かうほど変形し易くなっている。したがって、下腹支持部30は、筒状部20が広がる方向に伸びにくいクッション材33を配置していても、腹部中心よりも動きのある脇腹側の動きに追従して、下腹支持部30の下腹Jに対する密着性を高めることができる。
【0028】
次に、筒状部20の背中Lに対応した領域に設けられた背面クッション部50について説明する。
背面クッション部50は、上述のように腰部に当接することで、脇伸張部40を介して下腹支持部30を支持しており、下腹支持部30を斜め上から引き上げることができるように配置されている。すなわち、背面クッション部50は、筒状部20の背中Lに対応した領域の上方に配置され、具体的には、図3に示すように、脇腹側両端側の下部50bは、下腹支持部30の脇腹側両端部の最上部37と略同等の高さに配置され、脇腹側両端側の上部50aは下腹支持部30の脇腹側両端部の最上部37よりも上方(胸部側)に配置され、下腹支持部30の上方に位置すると共に、一定の高さ方向の幅W2をもって、脇伸張部40を介して下腹支持部30を支持している。
【0029】
そして、背面クッション部50は、下腹支持部30と同様に、厚み方向に弾力性を有しており、このため、強い収縮力を有する脇伸張部40に引っ張られても、上述の下腹支持部30と同様に、そのクッション性で力を吸収しながら背中Lに当接され、適度な力をもって違和感なく背中に密着されることになる。
【0030】
本実施形態の背面クッション部50は、図2のC−C線切断端面である図4(c)に示すように、腹伸張部22と同じ材料で形成された表地56と裏地57の間に縫合されるなどして接合されたクッション材であり、下腹支持部30と同様に、蒸れを防ぐための通気性を有しつつ、筒状部20が広がる方向に少なくとも積極的に伸びる機能を有さず、確実に、下腹支持部30を支持するための基点となっており、例えば、ダブルラッセルや、スポンジ体等を使用することができる。
【0031】
具体的には、背面クッション部50は、図2に示すように、その中心線CL1が背骨に沿うようにされており、背骨の両脇には、互いに平行に高さ方向に延びる複数のボーン52,52が配置されている。ボーン52,52は、下腹支持部30を支持するための基点となる背面クッション部50が容易に変形することを防止する骨格材であり、これにより、下腹支持部30が確実に腹部を支えられるようになる。また、ボーン52,52は、背骨の両脇に高さ方向に延びるように形成することで、背骨に沿って支えると共に、背骨を中心にして腹回り方向にズレないようになっている。
【0032】
このボーン52は、例えばプラスチック等の平板状の部材であり、複数枚のクッション材でボーン52を挟むようにして両脇を縫合することで位置決めされている。なお、ボーン52は、3本以上であっても勿論よい。
【0033】
本発明の実施形態は以上のように構成されており、筒状部20の脇腹Uに対応した領域には、下腹支持部30および背面クッション部50を連結するように配置され、腹伸張部30よりも強い収縮力を備えた伸縮性のある脇伸張部40が設けられているので、下腹支持部30を背面クッション部50側に引き上げ、大きく膨らんだ腹部J,Kの膨らみに応じて、確実に背面クッション部50で支持できる。
しかも、下腹支持部30および背面クッション部50は、厚み方向に弾力性を有するようにしたので、強い収縮力を有する脇伸張部40に引っ張られても、そのクッション性で、適度な力をもって、違和感なく下腹Jや背中Lに密着することができる。
【0034】
さらに、下腹支持部30に配置されたクッション材33は、中心付近から脇腹側両端部に向かうに従って縮幅するようにしているため、脇腹側両端部に向かうほど変形し易くなる。したがって、下腹支持部30は、たとえ身体の動きに追従して変形し難くいクッション材33が配置されていても、中心よりも動きのある脇腹U側の動きに追従して、より密着性を高めることができる。
そして、これらの下腹支持部30、背面クッション部50、脇伸張部40、及び腹伸張部22は、すべて筒状部20に設けられているので、この筒状部20を装着するだけで、腹部J,Kを確実にかつ違和感なく支持しつつ、着用時における位置ずれも防ぐ。
【0035】
図5ないし図7は、本発明の上述した実施形態の変形例に係る妊婦用ガードル12であり、図5はその正面側の概略斜視図、図6は概略側面図、図7は図5のD−D線切断端面図である。
これらの図で図1ないし図4の実施形態で用いた符号と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この妊婦用ガードル12が、図1ないし図4の妊婦用ガードル10と主に異なるのは、脇伸張部40が複数の部材から形成されている点である。
なお、図5および図6では、身体に正対して右側の脇伸張部40のみ図示しているが、左側の脇伸張部も右側と同様であるため、左側の脇伸張部についての説明は省略する。
【0036】
すなわち、脇伸張部40は、前身頃側の前側伸張部45と、後身頃側の後側伸張部46とを有しており、前側伸張部45は、下腹支持部30に接続され、この下腹支持部30から脇腹Uの領域にある開口部に向かって延伸している。また、後側伸張部46は、背面クッション部50と接続され、この背面クッション部50から腹伸張部22に向かって延伸している。具体的には、前側伸張部45および後側伸張部46は、少なくとも腹伸張部22よりも強い収縮力を備えた伸縮性を有しており、前側伸張部45は、下腹支持部30に接続されて、腹伸張部22に沿いながら斜め上方に向かって延び、後側伸張部46は背面クッション部50に接続されて胴囲に沿いながら腹部に向かって延びており、それぞれ異なる方向に向かって収縮するようになっている。
【0037】
本実施形態の場合、前側伸張部45は、一方向に長い帯状となっており、図6に示すように、一方の端部45aが略U字又はV字状の下腹支持部30の下縁と縫合等で接続され、他方の端部45bが脇腹Uの背面クッション部50に近接した開口部20a側端部と縫合等で接続されている。これにより、前側伸張部45は、下腹支持部30を、脇腹Uの背面クッション部50に近接した開口部20a側端部の方向(R3の方向)に、腹伸張部22に沿って引っ張ることとなる。なお、前側伸張部45は、表地に比較的収縮力の強い伸縮性のレース材料を使用することで、脇伸張部40の機能を持ちながら、装飾性を高めた形態としている。
【0038】
これに対して、後側伸張部46は、開口部20aに沿って配置されており、下腹支持部30には直接接続されず、一方が前側伸張部45に接続され、他方が背面クッション部50に接続されて、前側伸張部45を背面クッション部50の方向(R4の方向)に引っ張ることとなる。具体的には、後側伸張部46は、他方が背面クッション部50の高さ方向の全域(上側50aないし下側50b)に接続され、一方が前側伸張部45に重ねられるようにして、腹伸張部22の両端まで配置されている。
【0039】
また、妊婦用ガードル12は、図7に示す下腹支持部30のクッション材39が、所定の間隔をあけて対向するように配置された2枚の布地等の平面地39a,39bを、剛性を有する繊維状の部材39cが連続的に掛け渡すようにして形成された所謂ダブルラッセルとなっている。このクッション材39は、下腹支持部30と同様の形状であり、図5に示すように全体が略半円状となっている。そして、脇伸張部40に隣接する箇所だけではなく、その周縁全域が下腹支持部30の表地31と裏地32に挟まれて縫合されるなどして接合されて、下腹支持部30内においてその位置を確実に保持できるようになっている。
なお、本実施の形態では太腿Qは覆わない、所謂ショート丈のガードルとされている。
【0040】
本発明の実施形態の変形例は以上のように構成されており、脇伸張部40は、複数の部材45,46から形成されており、いずれか一方が、背面クッション部50に接続されずに下腹支持部30と接続されており、他方が下腹支持部30に接続されずに背面クッション部50と接続されており、それぞれ異なる方向R3,R4に向かって収縮するようになっている。このため、下腹支持部30は、一方の部材(前側伸張部)45のR3の方向に向けた収縮力と、他方の部材(後側伸張部)46のR4の方向に向けた収縮力とを合成した方向に引っ張られて、下腹Uの膨らみに適応した方向性を適宜つけることができる。
また、妊婦用ガードル12のクッション材39は、その周縁全域が下腹支持部30の表地31及び/又は裏地32と接合されているので、クッション材39をしっかり保持することができる。
【0041】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の実施形態の変形例に係る妊婦帯14の概略斜視図である図8や、妊婦帯14の背面図である図9に示されるように、本発明の妊婦用ファンデーションは、上述した妊婦用ガードル10,12に限定されず、例えば妊婦帯に用いられても勿論よい。
すなわち、図8および図9に示す妊婦帯14は、少なくとも腹回りを囲む筒状部20を有し、この筒状部20の腹部の上側Kに対応した領域に伸縮性を有する腹伸張部22が配置されている。そして、筒状部20の下腹Jに対応した領域には、中心付近から脇腹側に向かうに従って縮幅するようにして厚み方向に弾力性を有するクッション材(内部に配置されているため図示せず)が配置された下腹支持部30が設けられている。また、筒状部30の背中Lに対応した領域の上方には、厚み方向に弾力性を有する背面クッション部50が設けられている(クッション材は内部に配置されているため図示せず)。また、筒状部20の脇腹Uに対応した領域には、下腹支持部30と背面クッション部50とを連結するように配置され、腹伸張部30よりも強い収縮力を備えた伸縮性のある脇伸張部40が設けられている。
【0042】
また、ここでは全体を腹伸張部22に使用する材料を使用して妊婦帯14の筒状部20を形成し、筒状部20の内面又は外面の一面に、下腹支持部30と背面クッション部50を縫合等で固定し、下腹支持部30と背面クッション部50を連結する位置に脇伸縮部40として機能する収縮力を有する帯状部材を縫合等で固定している。
このため、この図の妊婦帯14は、上述した実施形態に係る妊婦用ガードル10と同様の作用効果を発揮する。
なお、背面クッション部50内に配置された骨格材であるボーン52が、ここでは、一枚の板状部材とされており、使用者の背骨をまたぐようにして配置される骨盤の形状に近い形状とされており、ボーン52の下端縁の幅が上端縁より大きな形状とされ、下端縁の両端から外方に向けて突出する突出部52aを有しており、上端縁側にも同様の突出部52bが形成されている。また、ボーン52の中央には、通気を確保しつつ、背骨の突出位置への刺激を防ぐための楕円形状の穴部52c形成されている。ボーン52をこのような形状とすることで、面状に腰部や背中の形状にフィットするよう当接して、下腹部側を背中で支えることができる。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。また、上記実施形態の各構成は、その一部を省略し、あるいは上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係る妊婦用ファンデーションの一例として妊婦用ガードルの正面側の概略斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る妊婦用ファンデーションの一例として妊婦用ガードルの背面側の概略斜視図。
【図3】本発明の実施形態に係る妊婦用ファンデーションの一例として妊婦用ガードルの概略側面図。
【図4】図4(a)は図1のA−A線切断端面図、(b)は図1のB−B線切断端面図、(c)は図2のC−C線切断端面図。
【図5】本発明の実施形態の変形例に係る妊婦用ガードルの正面側の概略斜視図。
【図6】本発明の実施形態の変形例に係る妊婦用ガードルの概略側面図。
【図7】図5のD−D線切断端面図。
【図8】本発明の実施形態の変形例に係る妊婦帯の概略斜視図。
【図9】本発明の実施形態の変形例に係る妊婦帯の背面図。
【符号の説明】
【0045】
10,12,14・・・妊婦用ファンデーション、20・・・筒状部、22・・・腹伸張部、30・・・下腹支持部、33・・・クッション材、40・・・脇伸張部、50・・・背面クッション部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも腹回りを囲む筒状部を有し、この筒状部の腹部の上側に対応した領域に伸縮性を有する腹伸張部が設けられた妊婦用ファンデーションであって、
前記筒状部の下腹に対応した領域には、中心付近から脇腹側に向かうに従って縮幅するようにして厚み方向に弾力性を有するクッション材が配置された下腹支持部が設けられ、
前記筒状部の背中に対応した領域の上方には、厚み方向に弾力性を有する背面クッション部が設けられており、
前記筒状部の脇腹に対応した領域には、前記下腹支持部と背面クッション部とを連結するように配置され、前記腹伸張部よりも強い収縮力を備えた伸縮性のある脇伸張部が設けられている
ことを特徴とする妊婦用ファンデーション。
【請求項2】
前記下腹支持部のクッション材及び/又は背面クッション部は、通気性を有するシート体から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の妊婦用ファンデーション。
【請求項3】
前記脇伸張部は、前記下腹支持部の脇腹側両端部に接続すると共に、前記背面クッション部の脇腹側両端部の高さ方向全域に接続するように配置され、さらに、前記筒状部の上側の開口部に隣接する領域にも配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の妊婦用ファンデーション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−169820(P2007−169820A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368044(P2005−368044)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【Fターム(参考)】